[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る干渉型光ファイバセンサの構成及び多重伝送によるパルス波形を示す模式図である。図2は、図1の干渉型光ファイバセンサによる雑音及びクロストークの低減メカニズムの説明図である。図1及び図2を参照して、本第1実施形態における干渉型光ファイバセンサの構成及び動作を説明する。
図1に示すように、干渉型光ファイバセンサ100は、パルス光源10と、遅延補償干渉計20と、光サーキュレータ30と、光ロータリージョイント40と、センシング干渉計50と、光電変換器(O/E変換器)60と、復調器70と、を有している。パルス光源10は、前段第1光カプラ21Aと接続されており、一定の光周波数νのパルス光を所定の周期で前段第1光カプラ21Aに出力するものである。
遅延補償干渉計20は、パルス光がセンシング干渉計50を通過する前と、パルス光がセンシング干渉計50を通過した後とのそれぞれにおいて、センシング干渉計50で生じる伝搬時間差を補償するものである。遅延補償干渉計20は、センシング干渉計50の前段に設けられた前段遅延補償干渉計21と、センシング干渉計50の後段に設けられた後段遅延補償干渉計22と、を有している。
前段遅延補償干渉計21は、前段第1光カプラ21Aと、前段第2光カプラ21Bと、前段遅延補償ファイバ21Cと、を有している。前段第1光カプラ21A及び前段第2光カプラ21Bは、入力されたパルス光を分岐したり、同一ファイバに結合したりするものである。前段第1光カプラ21Aは、パルス光源10に接続された入力ポートと、前段第2光カプラ21Bに接続された出力ポートと、前段遅延補償ファイバ21Cに接続された出力ポートと、を有している。すなわち、前段第1光カプラ21Aは、パルス光源10から出力されたパルス光を分岐させ、一方のパルス光を前段第2光カプラ21Bに出力し、他方のパルス光を前段遅延補償ファイバ21Cに出力するものである。
前段第2光カプラ21Bは、前段第2光カプラ21Bに接続された入力ポートと、前段遅延補償ファイバ21Cに接続された入力ポートと、光サーキュレータ30に接続された出力ポートと、を有している。すなわち、前段第2光カプラ21Bは、前段第1光カプラ21Aから出力されるパルス光と前段遅延補償ファイバ21Cから出力されるパルス光とを同一ファイバに結合し、光サーキュレータ30に出力するものである。前段遅延補償ファイバ21Cは、前段第1光カプラ21Aで分岐して入力するパルス光を遅延させるものである。
後段遅延補償干渉計22は、多ポートカプラ22Aと、第1遅延ミラー22Bと、後段遅延補償ファイバ22Cと、第2遅延ミラー22Dと、を有している。第1遅延ミラー22B及び第2遅延ミラー22Dは、パルス光を反射するものである。後段遅延補償ファイバ22Cは、多ポートカプラ22Aで分岐して入力するパルス光を遅延させるものである。
多ポートカプラ22Aは、入力されたパルス光を分岐したり、同一ファイバに結合したりするものである。多ポートカプラ22Aは、光サーキュレータ30に接続された入力ポートと、第1遅延ミラー22Bに接続された出力ポートと、後段遅延補償ファイバ22Cに接続された出力ポートと、光電変換器60に接続された2つの出力ポートと、を有している。すなわち、多ポートカプラ22Aは、光サーキュレータ30から出力されたパルス光を分岐させ、一方のパルス光を第1遅延ミラー22Bに出力し、他の一方のパルス光を後段遅延補償ファイバ22Cに出力するものである。また、多ポートカプラ22Aは、第1遅延ミラー22Bで反射したパルス光と、後段遅延補償ファイバ22Cを通過して第2遅延ミラー22Dで反射した後、さらに後段遅延補償ファイバ22Cを通過したパルス光とを、対向するポートの光ファイバそれぞれに出力し、光電変換器60へ出力するものである。
光サーキュレータ30は、パルス光の伝送方向を調整する伝送方向調整手段である。より具体的に、光サーキュレータ30は、パルス光の伝送方向を切り替えるものである。本第1実施形態において、光サーキュレータ30は、前段遅延補償干渉計21から入力したパルス光を光ロータリージョイント40に出力するものである。また、光サーキュレータ30は、センシング干渉計50を経由して光ロータリージョイント40から出力されるパルス光を後段遅延補償干渉計22に出力するものである。ここで、干渉型光ファイバセンサ100は、光サーキュレータ30の代わりに、光サーキュレータ30と同様に機能する光カプラ等の伝送方向調整手段を有していてもよい。
光ロータリージョイント40は、光サーキュレータ30と光カプラ51との間に設けられ、光ファイバを介して光サーキュレータ30と光カプラ51とに接続されている。光ロータリージョイント40は、光ファイバの撚りを戻すものである。
センシング干渉計50は、物理量を検知する少なくとも1つのセンシングファイバを含み、センシングファイバによってパルス光の伝搬経路に伝搬時間差を生じさせるものである。本第1実施形態において、センシング干渉計50は、光カプラ51と、光カプラ52と、ミラー53と、ミラー54と、ミラー55と、センシングファイバ56と、センシングファイバ57と、を有している。ミラー53、ミラー54、及びミラー55は、パルス光を反射するものである。
光カプラ51は、光ロータリージョイント40に接続された入力ポートと、ミラー53に接続された出力ポートと、センシングファイバ56に接続された出力ポートと、を有している。光カプラ52は、センシングファイバ56に接続された入力ポートと、ミラー54に接続された出力ポートと、センシングファイバ57に接続された出力ポートと、を有している。
センシングファイバ56は、光カプラ51と光カプラ52との間に設けられ、光ファイバを介して光カプラ51と光カプラ52とに接続されている。センシングファイバ57は、光カプラ52とミラー55との間に設けられている。センシングファイバ56及びセンシングファイバ57は、物理量を検知するものである。すなわち、センシングファイバ56及びセンシングファイバ57は、加わる物理量に応じて生じる歪みにより、通過するパルス光を位相変調するものである。図1には、センシングファイバ56が信号1を検知し、センシングファイバ57が信号2を検知する場合を例示している。
上記の通り、干渉型光ファイバセンサ100は、パルス光源10と光サーキュレータ30との間に前段遅延補償干渉計21を有し、光サーキュレータ30と光電変換器60との間に後段遅延補償干渉計22を有している。これにより、干渉型光ファイバセンサ100は、センシング干渉計50以外の伝送路に形成されるパルス光の伝搬経路が4通りとなっている。
また、干渉型光ファイバセンサ100は、前段遅延補償ファイバ21Cを通る経路の伝搬遅延時間と後段遅延補償ファイバ22Cを通る経路の伝搬遅延時間との和が、センシングファイバ56を通る経路の伝搬遅延時間と同等になるように構成されている。センシングファイバ57の伝搬遅延時間も、前段遅延補償ファイバ21Cを通る経路の伝搬遅延時間と後段遅延補償ファイバ22Cを通る経路の伝搬遅延時間との和と同等になるように構成されている。
ところで、パルス光源10が出力するパルス光のパルス幅(パルス光源10のパルス幅)は、前段遅延補償ファイバ21Cを通る経路の伝搬遅延時間と、後段遅延補償ファイバ22Cを通る経路の伝搬遅延時間とが異なるように設定されている場合、両者のうちの短い方の伝搬遅延時間と同等に設定し、他方の経路を伝搬したパルス光が干渉しないようにする。
ここで、遅延補償干渉計20は、パルス光がセンシング干渉計50を通過する前と、パルス光がセンシング干渉計50を通過した後とで、センシング干渉計50での伝搬時間差を均等に補償するように構成するとよい。つまり、干渉型光ファイバセンサ100は、前段遅延補償ファイバ21Cを通る経路の伝搬遅延時間と、後段遅延補償ファイバ22Cを通る経路の伝搬遅延時間とが等しくなるように構成するとよい。
具体的には、図1に示すように、センシングファイバ56又はセンシングファイバ57における伝搬遅延時間をTとした場合、前段遅延補償ファイバ21Cを通る経路の伝搬遅延時間と、後段遅延補償ファイバ22Cを通る経路の伝搬遅延時間とをT/2にすれば理想的な設定となる。このように、前段遅延補償ファイバ21Cを通る経路の伝搬遅延時間と、後段遅延補償ファイバ22Cを通る経路の伝搬遅延時間とをT/2にする場合、パルス光源10のパルス幅はT/2以下とする。非特許文献2に示されたサンプリングを多くする設定を採用する場合、パルス光源10のパルス幅は、サンプルリングの倍数に応じて短く設定する。
センシング干渉計50において、ミラー53で反射したパルス光と、ミラー54で反射したパルス光との間には、伝搬遅延時間Tに相当する伝搬時間差が生じる。また、ミラー53で反射したパルス光と、ミラー55で反射したパルス光との間には、伝搬遅延時間Tの2倍に相当する伝搬時間差が生じる。加えて、ミラー54で反射したパルス光と、ミラー55で反射したパルス光との間には、伝搬遅延時間Tに相当する伝搬時間差が生じる。
光電変換器60は、多ポートカプラ22Aに接続され、多ポートカプラ22Aから出力される干渉光を電気信号に変換するものである。復調器70は、光電変換器60から入力した電気信号をもとに、物理量としての信号1及び信号2を復調するものである。より具体的に、復調器70は、経路AB0CD1EF0Gを通過したパルス光と、経路AB1CD0EF1Gを通過したパルス光とが入力するタイミングにサンプリングして信号1を復調するものである。また、復調器70は、経路AB0CD2EF0Gを通過したパルス光と、経路AB1CD1EF1Gを通過したパルス光とが入力するタイミングにサンプリングして信号2を復調するものである。
(動作の説明)
パルス光源10から出力されたパルス光は、前段第1光カプラ21Aにおいて、前段第2光カプラ21B側と、前段遅延補償ファイバ21C側とに分岐され、前段第2光カプラ21Bにおいて同一ファイバに結合されて、光サーキュレータ30に出力される。前段第2光カプラ21Bから出力され、光サーキュレータ30を通過したパルス光は、光ロータリージョイント40を通過してセンシング干渉計50の光カプラ51に入力する。
光カプラ51で分岐した一方のパルス光は、ミラー53で直接反射し、光カプラ51を介して光ロータリージョイント40に戻る。光カプラ51で分岐した他方のパルス光は、センシングファイバ56を通過して、光カプラ52に入力する。光カプラ52で分岐した一方のパルス光は、ミラー54で反射し、光カプラ52を介してセンシングファイバ56に戻る。光カプラ52で分岐した他方のパルス光は、センシングファイバ57を通過して、ミラー55で反射し、センシングファイバ57に戻る。
すなわち、光ロータリージョイント40を通過したパルス光は、光カプラ51と光カプラ52とにおいて分割される。分割された各パルス光は、それぞれ、ミラー53、ミラー54、又はミラー55で反射する。ミラー54で反射するパルス光は、センシングファイバ56を通過するため、Tに相当する伝搬遅延時間が生じる。ミラー55で反射するパルス光は、センシングファイバ56及びセンシングファイバ57を通過するため、2Tに相当する伝搬遅延時間が生じる。
ミラー53、ミラー54、又はミラー55で反射したパルス光は、光カプラ51で1本の光ファイバに結合され、光サーキュレータ30に戻り、多ポートカプラ22Aに送られて再度分岐する。多ポートカプラ22Aにおいて分岐されて出力されるパルス光のうち、一方のパルス光はすぐに第1遅延ミラー22Bで反射し、他の一方のパルス光は後段遅延補償ファイバ22Cを介して第2遅延ミラー22Dで反射する。第1遅延ミラー22Bで反射したパルス光と、第2遅延ミラー22Dで反射して後段遅延補償ファイバ22Cを通過したパルス光とは、多ポートカプラ22Aで再び結合した後、分岐して光電変換器60で電気信号に変換され、復調器70で復調される。
ここで、図2を参照して、干渉型光ファイバセンサ100で発生する、光ロータリージョイント40の振動などによる雑音、及びセンシングファイバ56で検出した信号1のクロストークの低減メカニズムについて説明する。復調対象以外の信号が漏れこむクロストークと信号以外の雑音では発生場所などに違いがあるが、クロストークと雑音の低減メカニズムが共通するため、説明は統一する。ここで、クロストークとは、センシングファイバ56で検出した信号1によるクロストークであり、センシングファイバ57で検出した信号2の復調出力に現れるものである。図2では、光サーキュレータ30と光カプラ52との間の各構成部材と、復調器70とを省略している。ところで、光サーキュレータ30と光カプラ52との間では、伝送路の長さが変化するため、その間における任意の点を伝送路の長さが変化する点Lcと定め、以下の説明を行う。
光サーキュレータ30と光カプラ52との間の長さ変化による光の位相変化の振幅、角周波数をそれぞれA、ωとし、センシングファイバ57での位相変化をφ2とする。また、伝送路の長さが変化する点Lcからミラー54までの間を往復するパルスの伝搬時間をτとし、ミラー54で反射したパルス光の光周波数をνとする。さらに、センシングファイバ57での伝搬遅延時間をTとし、前段遅延補償ファイバ21C及び後段遅延補償ファイバ22Cでの伝搬遅延時間をT/2とする。
この場合、経路AB1CD1EF1Gを伝搬したパルス光の電界E11は、下記式(5)で表される。また、経路AB0CD2EF0Gを伝搬したパルス光の電界E12は、下記式(6)で表される。
E11とE12とが干渉して、光電変換された出力は、下記式(7)のように表される。
一般に、光サーキュレータ30と光カプラ52との間の伝送路の長さ変化の周期は、パルス光の伝搬時間τ及び伝搬遅延時間Tより長くなることから、ωT≪1、ωτ≪1とすると、上記式(7)は、下記式(8)のように近似することができる。
復調器70は、式(8)右辺の大括弧([ ])内の要素を抽出する。つまり、復調器70による復調処理の出力には、センシングファイバ57で検出した信号2(φ2)と、雑音及びクロストークである「AωT(ωτ/2)sinω(t+τ/2+T/2)」が現れる。
本第1実施形態に係る式(8)の大括弧([ ])内に示した雑音及びクロストークである「AωT(ωτ/2)sinω(t+τ/2+T/2)」は、従来技術に係る式(4)の大括弧内に示した雑音及びクロストークである「AωTcosω(t+T/2)」と比べると、振幅Aにωτ/2が掛かっている点で異なっている。ここで、ωτについては、ωτ≪1の関係が成り立つため、干渉型光ファイバセンサ100は、従来の干渉型光ファイバセンサ1000よりも、信号検出の妨げとなる雑音及びクロストークのレベルを低下させることができる。したがって、干渉型光ファイバセンサ100によれば、レベルの低い信号を検出することができると共に、多重伝送する信号の数を増やすことができる。
[第2実施形態]
図3は、本発明の第2実施形態に係る干渉型光ファイバセンサの構成及び多重伝送によるパルス波形を示す模式図である。本第2実施形態では、図3を参照して、PGCを用いる復調方式を採用した干渉型光ファイバセンサの構成例及び動作について説明する。前述した第1実施形態の干渉型光ファイバセンサ100と同等の構成部材には同一の符号を用いて説明は省略する。
図3に示すように、干渉型光ファイバセンサ200は、パルス光源10と、光サーキュレータ30と、遅延補償干渉計120と、光ロータリージョイント40と、センシング干渉計50と、光電変換器160と、復調器170と、を有している。パルス光源10は、光サーキュレータ30を介して往復第1光カプラ120Aと接続されており、パルス光を所定の周期で往復第1光カプラ120Aに出力するものである。
遅延補償干渉計120は、光サーキュレータ30とセンシング干渉計50との間に設けられている。遅延補償干渉計120は、パルス光がセンシング干渉計50を通過する前と、パルス光がセンシング干渉計50を通過した後とのそれぞれにおいて、センシング干渉計50で発生する伝搬時間差を補償するものである。図3の例において、遅延補償干渉計120は、光サーキュレータ30と光ロータリージョイント40との間に設けられ、光ファイバを介して光サーキュレータ30と光ロータリージョイント40とに接続されている。
遅延補償干渉計120は、図3に示すように、往復第1光カプラ120Aと、往復第2光カプラ120Bと、往復遅延補償ファイバ120Cと、圧電子120Dと、PGC信号発生器120Eと、を有している。往復第1光カプラ120Aは、光サーキュレータ30に接続された入出力ポートと、往復第2光カプラ120Bに接続された入出力ポートと、往復遅延補償ファイバ120Cに接続された入出力ポートと、を有している。往復第2光カプラ120Bは、往復第1光カプラ120Aに接続された入出力ポートと、往復遅延補償ファイバ120Cに接続された入出力ポートと、光ロータリージョイント40に接続された入出力ポートと、を有している。
往復遅延補償ファイバ120Cは、往復第1光カプラ120Aで分岐して入力するパルス光を遅延させるものである。ここで、遅延補償干渉計120は、パルス光がセンシング干渉計50を通過する前と、パルス光がセンシング干渉計50を通過した後とで、センシング干渉計50での伝搬時間差を均等に補償するように構成されている。
すなわち、干渉型光ファイバセンサ200は、往復遅延補償ファイバ120Cを通る経路の片道の伝搬遅延時間が、センシングファイバ56又はセンシングファイバ57を通る経路の伝搬遅延時間の1/2となるように設定されている。つまり、往復遅延補償ファイバ120Cは、往復の伝搬遅延時間が、センシング干渉計50の伝搬時間差と等しくなっている。また、干渉型光ファイバセンサ200において、パルス光源10のパルス幅は、往復遅延補償ファイバ120Cを通る経路を伝搬したパルス光と、往復遅延補償ファイバ120Cを通らない経路を伝搬したパルス光とが干渉しないように設定されている。
具体的には、図3に示すように、センシングファイバ56又はセンシングファイバ57での伝搬遅延時間をTとした場合、往復遅延補償ファイバ120Cによる伝搬遅延時間は、片道でT/2となるように設定されており、パルス光源10のパルス幅は、T/2以下となるように設定されている。非特許文献2に示されたサンプリングを多くする設定を採用する場合、パルス光源10のパルス幅は、サンプルリングの倍数に応じて短く設定する。
圧電子120Dは、往復遅延補償ファイバ120Cに設定周波数の正弦波状の歪みを加えるものである。PGC信号発生器120Eは、PGC信号を発生させると共に、発生させたPGC信号を、圧電子120Dを介して往復遅延補償ファイバ120Cに供給するものである。すなわち、遅延補償干渉計120において、往復遅延補償ファイバ120Cには圧電子120Dが取り付けられており、圧電子120DにはPGC信号発生器120Eから正弦波電圧が印加される。よって、往復遅延補償ファイバ120Cには、圧電子120Dによって正弦波状の歪みが加えられる。
本第2実施形態において、光サーキュレータ30は、パルス光源10から入力したパルス光を遅延補償干渉計120に出力するものである。また、光サーキュレータ30は、光ロータリージョイント40及びセンシング干渉計50を経由して遅延補償干渉計120から出力されるパルス光を光電変換器160に出力するものである。ここで、干渉型光ファイバセンサ200は、光サーキュレータ30の代わりに、光サーキュレータ30と同様に機能する光カプラ等の伝送方向調整手段を有していてもよい。本第2実施形態において、光ロータリージョイント40は、往復第2光カプラ120Bと光カプラ51との間に設けられ、光ファイバを介して往復第2光カプラ120Bと光カプラ51とに接続されている。
光電変換器160は、光サーキュレータ30に接続され、光サーキュレータ30から出力される干渉光を電気信号に変換するものである。往復遅延補償ファイバ120Cには、圧電子120Dによって正弦波状の歪が加えられているため、干渉光にはPGCが発生する。
復調器170は、光電変換器160から入力した電気信号をもとに、物理量としての信号1及び信号2を復調するものである。より具体的に、復調器170は、経路AB0CD1CB0Eを通過したパルス光と、経路AB1CD0CB1Eを通過したパルス光とが入力するタイミングにサンプリングして信号1を復調するものである。また、復調器70は、経路AB0CD2CB0Eを通過したパルス光と、経路AB1CD1CB1Eを通過したパルス光とが入力するタイミングにサンプリングして信号2を復調するものである。
ところで、前述した第1実施形態の干渉型光ファイバセンサ100は、パルス光源10から出力されるパルス光が前段遅延補償干渉計21を通過した後、センシング干渉計50を経由して光サーキュレータ30から出力されるパルス光が、後段遅延補償干渉計22を通過するように構成されている。したがって、パルス光が遅延補償干渉計20を通過する経路は4通りとなっている。
この点、干渉型光ファイバセンサ200は、遅延補償干渉計120を1つだけ有しているが、遅延補償干渉計120は、光サーキュレータ30とセンシング干渉計50との間に設けられている。そのため、光サーキュレータ30から出力されるパルス光は、センシング干渉計50への往路と復路において、遅延補償干渉計120を1回ずつ通過するようになっている。すなわち、干渉型光ファイバセンサ200において、パルス光源10から出力されるパルス光は、遅延補償干渉計120を2回通過して光電変換器160に入力される。したがって、遅延補償干渉計120をパルス光が通過する経路、つまり、センシング干渉計50以外の伝送路に形成されるパルス光の伝搬経路は、第1実施形態と同じ4通りとなっている。
(動作の説明)
上記の通り、干渉型光ファイバセンサ200は、第1実施形態の干渉型光ファイバセンサ100とは一部の構成が異なっているため、パルス光が各構成部材を通過する順序も干渉型光ファイバセンサ100とは異なっている。また、干渉型光ファイバセンサ200と、干渉型光ファイバセンサ100とは、例示した復調方式が異なるため、両者の復調処理も異なっている。しかし、こうした点を除けば、干渉型光ファイバセンサ200は、干渉型光ファイバセンサ100と同様に動作する。
すなわち、パルス光源10から出力されたパルス光は、光サーキュレータ30を通過した後、往復第1光カプラ120Aにおいて、往復第2光カプラ120B側と、往復遅延補償ファイバ120C側とに分岐され、往復第2光カプラ120Bにおいて同一ファイバに結合されて、光ロータリージョイント40に出力される。往復第2光カプラ120Bから出力され、光ロータリージョイント40を通過したパルス光は、センシング干渉計50に入力する。
センシング干渉計50に入力したパルス光は、光カプラ51と光カプラ52とにおいて分割される。分割された各パルス光は、それぞれ、ミラー53、ミラー54、又はミラー55で反射する。ミラー53、ミラー54、又はミラー55で反射したパルス光は、光カプラ51で同一ファイバに結合され、光ロータリージョイント40を通過して遅延補償干渉計120に戻る。
遅延補償干渉計120に入力したパルス光は、往復第2光カプラ120Bにおいて、往復第1光カプラ120A側と、往復遅延補償ファイバ120C側とに分岐され、往復第1光カプラ120Aにおいて同一ファイバに結合されて、光サーキュレータ30に出力される。光サーキュレータ30を通過したパルス光は、光電変換器60において電気信号に変換され、復調器70で復調される。
以上のように、干渉型光ファイバセンサ200は、前述した第1実施形態の干渉型光ファイバセンサ100と同様、パルス光がセンシング干渉計50を通過する前後のそれぞれにおいて、センシング干渉計50での伝搬時間差を補償する遅延補償干渉計120を有している。そのため、干渉型光ファイバセンサ200は、信号検出の妨げとなる雑音及びクロストークを低減することができる。よって、干渉型光ファイバセンサ200によれば、レベルの低い信号を検出すると共に、多重伝送する信号の数を増やすことができる。
[第3実施形態]
図4は、本発明の第3実施形態に係る干渉型光ファイバセンサの構成及び多重伝送によるパルス波形を示す模式図である。図4を参照して、干渉型光ファイバセンサの構成及び動作を説明する。上述した第1及び第2実施形態の干渉型光ファイバセンサ100及び200と同等の構成部材には同一の符号を用いて説明は省略する。
図4に示すように、干渉型光ファイバセンサ300は、パルス光源10と、遅延補償干渉計220と、光サーキュレータ30と、光ロータリージョイント40と、センシング干渉計50と、光電変換器160と、復調器270と、を有している。
遅延補償干渉計220は、パルス光がセンシング干渉計50を通過する前と、パルス光がセンシング干渉計50を通過した後とのそれぞれにおいて、センシング干渉計50で発生する伝搬時間差を補償するものである。遅延補償干渉計220は、センシング干渉計50の前段に設けられた前段遅延補償干渉計221と、センシング干渉計50の後段に設けられた後段遅延補償干渉計222と、を有している。
前段遅延補償干渉計221は、前段第1光カプラ21Aと、前段第2光カプラ21Bと、前段遅延補償ファイバ21Cと、前段オシレータ221Dと、前段光周波数シフタ221Eと、を有している。前段第1光カプラ21Aは、パルス光源10に接続された入力ポートと、前段光周波数シフタ221Eに接続された出力ポートと、前段遅延補償ファイバ21Cに接続された出力ポートと、を有している。前段第2光カプラ21Bは、前段光周波数シフタ221Eに接続された入力ポートと、前段遅延補償ファイバ21Cに接続された入力ポートと、光サーキュレータ30に接続された出力ポートと、を有している。
前段オシレータ221Dは、周波数fFの正弦波信号を前段光周波数シフタ221Eへ出力し、前段光周波数シフタ221Eを通過するパルス光の光周波数をfFだけシフトさせるものである。前段光周波数シフタ221Eは、前段オシレータ221Dから出力される周波数fFの正弦波信号をもとに、前段第1光カプラ21Aから出力されるパルス光の光周波数をfFだけシフトさせるものである。以降では、前段光周波数シフタ221Eがシフトさせる周波数fFを前段シフト周波数fFともいう。
後段遅延補償干渉計222は、後段第1光カプラ222Aと、後段第2光カプラ222Bと、後段遅延補償ファイバ222Cと、後段オシレータ222Dと、後段光周波数シフタ222Eと、を有している。後段第1光カプラ222Aは、光サーキュレータ30に接続された入力ポートと、後段第2光カプラ222Bに接続された出力ポートと、後段光周波数シフタ222Eに接続された出力ポートと、を有している。後段第2光カプラ222Bは、後段第1光カプラ222Aに接続された入力ポートと、後段遅延補償ファイバ222Cに接続された入力ポートと、光電変換器160に接続された出力ポートと、を有している。
後段遅延補償ファイバ222Cは、後段第1光カプラ222Aで分岐し、後段光周波数シフタ222Eを通過して入力するパルス光を遅延させるものである。後段オシレータ222Dは、周波数fBの正弦波信号を後段光周波数シフタ222Eへ出力し、後段光周波数シフタ222Eを通過するパルス光の光周波数をfBだけシフトさせるものである。後段光周波数シフタ222Eは、後段オシレータ222Dから出力される周波数fBの正弦波信号をもとに、後段第1光カプラ222Aから出力されるパルス光の光周波数をfBだけシフトさせるものである。以降では、後段光周波数シフタ222Eがシフトさせる周波数fBを後段シフト周波数fBともいう。
ここで、図4では、前段遅延補償干渉計221の前段遅延補償ファイバ21Cがない経路に前段光周波数シフタ221Eを設け、後段遅延補償干渉計222の後段遅延補償ファイバ222Cがある経路に後段光周波数シフタ222Eを設けた場合を例示しているが、これに限定されるものではない。例えば、遅延補償干渉計220は、前段遅延補償干渉計221の前段遅延補償ファイバ21Cがある経路に前段光周波数シフタ221Eを設け、後段遅延補償干渉計222の後段遅延補償ファイバ222Cがない経路に後段光周波数シフタ222Eを設けた構成としてもよい。このようにしても、信号1及び信号2を好適に復調するための条件を満たす。すなわち、本第3実施形態における干渉型光ファイバセンサ300は、前段遅延補償ファイバ21Cを含む前段遅延補償干渉計221の少なくとも一方の経路と、後段遅延補償ファイバ222Cを含む後段遅延補償干渉計222の少なくとも一方の経路とに、それぞれ、パルス光の光周波数をシフトする光周波数シフタが設けられていればよい。
また、干渉型光ファイバセンサ300は、前段遅延補償干渉計221に設けられた前段光周波数シフタ221Eと後段遅延補償ファイバ222Cとの両方を通る経路を伝搬したパルス光の光周波数と、後段遅延補償干渉計222に設けられた前段光周波数シフタ221Eと後段遅延補償ファイバ222Cとの何れも通らない経路を伝搬したパルス光の光周波数との間に差を持たせるように構成されている。前段遅延補償ファイバ21C及び後段遅延補償ファイバ222Cにおける伝搬遅延時間は、第1実施形態における前段遅延補償ファイバ21C及び後段遅延補償ファイバ22Cにおける伝搬遅延時間と同様に設定する。
そして、パルス光源10のパルス幅は、センシングファイバ56又はセンシングファイバ57における伝搬遅延時間Tと同等以下に設定する。すなわち、干渉型光ファイバセンサ300は、パルス光の光周波数を前段シフト周波数fFだけシフトさせる前段光周波数シフタ221Eと、パルス光の周波数を前段シフト周波数fFとは異なる後段シフト周波数fBだけシフトさせる後段光周波数シフタ222Eとを有している。そのため、干渉型光ファイバセンサ300は、パルス光源10のパルス幅を、第1実施形態の干渉型光ファイバセンサ100のように、T/2以下に設定する必要はない。
本第3実施形態において、光サーキュレータ30は、前段遅延補償干渉計221から入力したパルス光を光ロータリージョイント40に出力するものである。また、光サーキュレータ30は、センシング干渉計50を経由して光ロータリージョイント40から出力されるパルス光を後段遅延補償干渉計222に出力するものである。ここで、干渉型光ファイバセンサ300は、光サーキュレータ30の代わりに、光サーキュレータ30と同様に機能する光カプラ等の伝送方向調整手段を有していてもよい。
干渉型光ファイバセンサ300は、パルス光源10と光サーキュレータ30との間に前段遅延補償干渉計221を有し、光サーキュレータ30と光電変換器60との間に後段遅延補償干渉計222を有している。そのため、干渉型光ファイバセンサ300は、センシング干渉計50以外の伝送路に形成されるパルス光の伝搬経路が4通りとなっている。
光電変換器160は、後段第2光カプラ222Bに接続され、後段第2光カプラ222Bから出力される干渉光を電気信号に変換するものである。復調器270は、光電変換器160から入力した電気信号をもとに、物理量としての信号1及び信号2を復調するものである。より具体的に、復調器270は、経路AB0CD1EF0Gを通過したパルス光と、経路AB1CD0EF1Gを通過したパルス光とが入力するタイミングにサンプリングし、これらの経路を伝搬したパルス光の周波数差である周波数fF−fBのビートを抽出して信号1を復調するものである。また、復調器70は、経路AB0CD2EF0Gを通過したパルス光と、経路AB1CD1EF1Gを通過したパルス光とが入力するタイミングにサンプリングし、これらの経路を伝搬したパルス光の周波数差である周波数fF−fBのビートを抽出して信号2を復調するものである。
(動作の説明)
パルス光源10から出力されたパルス光は、前段第1光カプラ21Aにおいて、前段光周波数シフタ221E側と、前段遅延補償ファイバ21C側とに分岐され、前段第2光カプラ21Bにおいて同一ファイバに結合されて、光サーキュレータ30に出力される。光サーキュレータ30を通過したパルス光は、光ロータリージョイント40を通過してセンシング干渉計50に入力する。
センシング干渉計50に入力したパルス光は、光カプラ51と光カプラ52とにおいて分割される。分割された各パルス光は、それぞれ、ミラー53、ミラー54、又はミラー55で反射する。ミラー53、ミラー54、又はミラー55で反射したパルス光は、光カプラ51で1本の光ファイバに結合され、光サーキュレータ30に戻り、後段第1光カプラ222Aに送られて、後段第2光カプラ222B側と、後段光周波数シフタ222E側とに分岐され、後段第2光カプラ222Bにおいて同一ファイバに結合される。後段第2光カプラ222Bにおいて同一ファイバに結合されたパルス光は、光電変換器160で電気信号に変換され、復調器270で復調される。
本第3実施形態の干渉型光ファイバセンサ300では、信号1を復調する経路AB0CD1EF0Gを通過したパルス光と、経路AB1CD0EF1Gを通過したパルス光とが、復調器270に入力するタイミングにおいて、他の経路を伝搬したパルス光が重なるため、不要な干渉が発生する。しかし、他の経路を伝搬したパルス光の干渉で発生するビートの周波数は、周波数fF−fBとは異なる周波数になるため、復調器270は、他の経路を伝搬したパルス光の影響を受けずに信号1を復調することができる。復調器270は、信号2についても同様に、経路AB0CD2EF0Gを通過したパルス光と、経路AB1CD1EF1Gを通過したパルス光とが入力するタイミングにおいて、周波数fF−fBのビートを抽出することにより、他の経路を伝搬したパルス光の影響を受けることなく復調することができる。
以上のように、干渉型光ファイバセンサ300は、パルス光がセンシング干渉計50を通過する前後のそれぞれにおいて、センシング干渉計50での伝搬時間差を補償する遅延補償干渉計220を有している。そのため、干渉型光ファイバセンサ300は、信号検出の妨げとなる雑音及びクロストークを低減することができる。よって、干渉型光ファイバセンサ300によれば、レベルの低い信号を検出すると共に、多重伝送する信号の数を増やすことができる。
また、干渉型光ファイバセンサ300は、パルス光の周波数を前段シフト周波数fFだけシフトさせる前段光周波数シフタ221Eと、パルス光の周波数を後段シフト周波数fBだけシフトさせる後段光周波数シフタ222Eとを有している。そのため、干渉型光ファイバセンサ300は、上述した第1実施形態のようにパルス光源10のパルス幅を狭くすることなく、センシングファイバ57で検出した信号2の復調出力に現れる雑音及びクロストークを低減させることができる。
ここで、上述した各実施形態は、干渉型光ファイバセンサにおける好適な具体例であり、本発明の技術的範囲は、これらの態様に限定されるものではない。例えば、第1実施形態では、多ポートカプラを用いる復調方式を例示したが、これに限らず、干渉型光ファイバセンサ100は、PGCを用いる復調方式を採用して構成してもよい。また、第2実施形態では、PGCを用いる復調方式を例示したが、これに限らず、干渉型光ファイバセンサ200は、多ポートカプラを用いる復調方式を採用して構成してもよい。
さらに、第1実施形態では、2つの光カプラを含む前段遅延補償干渉計21と、1つの光カプラ及び2つのミラーを含む後段遅延補償干渉計22とを有する遅延補償干渉計20を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、前段遅延補償干渉計21は、1つの光カプラ及び2つのミラーを含む後段遅延補償干渉計22と同様の干渉計であってもよい。後段遅延補償干渉計22は、2つの光カプラを含む前段遅延補償干渉計21と同様の干渉計であってもよい。
また、第2実施形態では、2つの光カプラを含んで構成された遅延補償干渉計120を例示したが、これに限らず、遅延補償干渉計120は、1つの光カプラ及び2つのミラーを含んで構成された干渉計であってもよい。加えて、第3実施形態では、2つの光カプラを含んで構成された前段遅延補償干渉計221及び後段遅延補償干渉計222を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、前段遅延補償干渉計221及び後段遅延補償干渉計222のうちの少なくとも一方は、1つの光カプラ及び2つのミラーを含んで構成された干渉計であってもよい。
さらに、センシングファイバを複数接続する方法として、従来技術に示された別の方法を採用し、センシング干渉計50を構成してもよい。また、図1、図3、及び図4では、干渉型光ファイバセンサ100、200、及び300が、2つのセンシングファイバを有する例を示したが、干渉型光ファイバセンサ100、200、及び300は、3つ以上のセンシングファイバを有するようにしてもよい。
加えて、上記各実施形態では、センシングファイバを含むセンシング干渉計が、光カプラとミラーとを含んで構成された場合を例示しているが、これに限定されるものではない。センシング干渉計50は、例えば、FBG(Fiber Bragg Grating)などの他の構成部材を用いて、パルス光を分岐させ且つ反射させるようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、センシング干渉計50が2つのセンシングファイバを有する場合を例示したが、これに限らず、センシング干渉計50は、1つのセンシングファイバを有するものであってもよく、3つ以上のセンシングファイバを有するものであってもよい。