JP6772592B2 - 透光性ジルコニア焼結体及びその製造方法並びにその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、高い透明性を有する透光性ジルコニア焼結体及びその製造方法に関する。
透光性ジルコニア焼結体は、ガラスに匹敵する高い光学的性質を示すため、光学用途や電子機器外装部品用途などの用途での適用が期待されています。
これまで、イットリアで安定化されたジルコニアにチタニア(TiO)を含有させることで、より光透過性に優れる透光性ジルコニア焼結体が得られることが報告されている(引用文献1〜4)。
引用文献1では、Y 2モル%以上、TiO 3〜20モル%および残りZrOからなる成形体を酸素含有雰囲気中で焼成し、ホツトアイソスタテイツク処理し、ついで酸化処理することで得られた透光性ジルコニア焼結体が開示されている。当該焼結体は、試料厚みが0.8mmにおける波長600nmの光に対する直線透過率が40〜66%であり、透光性を有するジルコニア焼結体であり、一部は透明性をも有する焼結体であった。
引用文献2では、かつ、平均結晶粒子径を5〜300μmとし、なおかつ、フッ素元素を含有するTiO含有ジルコニア焼結体が、試料厚さ5mmにおける波長500nmの光に対する直線透過率が59〜74%となることが開示されている。引用文献2では、TiOを含有しない透光性ジルコニア焼結体も開示されているが、いずれのジルコニア焼結体のフッ素を含有することを必須としていた。
引用文献3では、試料厚みが1.0mmにおける波長600nmの光に対する直線透過率が61.2〜71.6%と高く、なおかつ、三点曲げ強度が281〜309MPaである、透光性と強度とを兼備した透光性ジルコニア焼結体が開示されている。
特許文献4では、フッ素元素を使用することなく、試料厚さ1mmにおける波長600nmの光に対する直線透過率が73〜75%であり、チタニアを含有し、透明性の高いジルコニア焼結体が得られている。
特開昭62−091467号 特開2010−047460号 特開2011−102227号 特開2011−011970号
特許文献1乃至4の透光性ジルコニア焼結体は、いずれもチタニアを含有することで高い光透過率が得られている。チタニアを含有するジルコニア焼結体は、その製造方法において、還元雰囲気下で焼結及びその後の再酸化を必要とする。しかしながら、再酸化中のチタンの酸化挙動は制御が難しいため、再酸化中に亀裂や割れが生じるなど、歩留まりが低く、生産性の向上が必要であった。特に、亀裂や割れなどの発生は焼結体の透明性に大きく影響する。
また、フッ素化合物を必須とする特許文献2の透光性ジルコニア焼結体の製造には、耐食性の高い設備を必要とする。そのため、この透明性の高い透光性ジルコニア焼結体は特殊な製造設備がないと製造できないものであり、広く使用することはできない。
これらの課題に鑑み、本発明は、チタニア含有透光性ジルコニア焼結体に匹敵する透明性を有するジルコニア焼結体であって、フッ素化合物を必須とせず、なおかつ、従来のチタニア含有透光性ジルコニア焼結体よりも安定して生産することができる透光性ジルコニア焼結体を提供することを目的とする。
本発明者等は、透明性を有するジルコニア焼結体について検討した。その結果、特定量のイットリア以外の安定化剤と、イットリアとをジルコニアに固溶させることで結晶構造を立方晶で安定化することができること、これにより、チタニアを使用することなく、高い透明性を有する透光性ジルコニア焼結体が得られることを見出した。
すなわち、本発明のジルコニア焼結体は、2.5mol%以上25mol%以下のカルシア又はマグネシアの少なくともいずれかとイットリアが固溶したジルコニアからなり、CuKα線を線源とするXRD測定において、2θ=30±2°のピークの半値幅から算出される平均結晶子径が400nm以下であることを特徴とするジルコニア焼結体である。
以下、本発明のジルコニア焼結体について説明する。
本発明のジルコニア焼結体(以下、「本発明の焼結体」ともいう。)は焼結体中にカルシア(CaO)又はマグネシア(MgO)の少なくともいずれか(以下、「カルシア等」ともいう。)を含み、更にはカルシア又はマグネシアのいずれか、また更にはカルシアを含む。本発明の焼結体は焼結体中にカルシア等を単に含むものではなく、ジルコニアにカルシア等が固溶したジルコニア焼結体である。カルシア等が固溶することで、焼結体の結晶粒子の組織構造が微細になる。
本発明の焼結体において、カルシア等がジルコニアに固溶していることは粉末X線回折(以下、「XRD」とする。)パターンから確認することができる。本発明の焼結体はCuKα線(λ=0.15418nm)を線源とするXRD測定において、2θ=30±2°のピーク(以下、「メインピーク」ともいう。)を有する。メインピークは正方晶ジルコニアのXRDピーク(2θ=30.0±2°)及び立方晶ジルコニアのXRDピーク(2θ=29.6±2°)が重複したピークであり、なおかつ、本発明の焼結体のXRDパターンにおける回折強度が最も強いXRDピークである。本発明の焼結体においてカルシア等がジルコニアに固溶していることは、カルシア等が固溶していないジルコニアと比べてメインピークから求められる格子定数が変化していることから確認できる。カルシアを固溶している場合、イットリアのみを固溶するジルコニアよりも格子定数が大きくなり、メインピークは低角度側にシフトする。一方、マグネシアを固溶する場合、イットリアのみを固溶するジルコニアよりも格子定数が小さくなり、格子定数が小さくなる。例えば、本発明の焼結体がジルコニアにカルシア等と3mol%のイットリアとを含有する場合、その格子定数は、同量のイットリアのみを含有するジルコニア焼結体の格子定数よりも大きくなる。
さらに、本発明の焼結体は、ジルコニアにカルシア等とジルコニウムとからなる複合酸化物又はカルシア等の酸化物(以下、「カルシア酸化物等」ともいう。)を実質的に含有しないことが好ましい。カルシア酸化物等を含まないことで、本発明の焼結体が、より透光性の高い焼結体となる。カルシア酸化物等を含まないことは、本発明の焼結体のXRDパターンにおいて、ジルコニアのXRDピーク以外に相当するXRDピークを有さないことから確認することができる。カルシア酸化物等としてはCaO、MgO、CaZrO及びMgZrOを例示することができる。
本発明の焼結体はカルシア等を含む。カルシア等はイットリアと共存してジルコニアに固溶することで焼結体の結晶相を立方晶に安定する。これにより、焼結後に再酸化をした場合であっても、焼結体に亀裂や割れが生じにくく、高い透明性を有する透光性ジルコニア焼結体が高い歩留まり、生産性で得ることができる。
本発明の焼結体はカルシア等を2.5mol%以上25mol%以下、更には4.0mol%以上25mol%以下含有する。
カルシア等がこれらの量を下回る場合、得られるジルコニア焼結体の結晶相が安定せず、立方晶のみとなる場合もある一方、立方晶と正方晶との混晶となる場合がある。これにより、チタニア含有透光性ジルコニア焼結体に匹敵する透明性が得られない焼結体となる可能性が高くなる。カルシア等が多くなりすぎると、本発明の焼結体がカルシア酸化物等を含むようになりやすく、ジルコニアが立方晶以外の構造を含みやすくなる。その結果、透明性が無くなり、更には透光性が無くなる場合がある。そのため、カルシア等は25mol%以下、更には21mol%以下であればよい。
本発明の焼結体の透明性がより高くなる傾向があるため、カルシア等がカルシアである場合、カルシア含有量は8mol%以上25mol%以下であることが好ましく、本発明の焼結体のカルシア等がマグネシアである場合、マグネシア含有量は8mol%以上20mol%以下、更には15mol%以上20mol%以下であることが好ましい。
カルシア等の含有量(mol%)は、焼結体中のジルコニア、イットリア及び酸化物換算したカルシア等(CaO又はMgO)の合計に対する、カルシア等のモル割合である。
本発明の焼結体はイットリアを含む。イットリアは安定化剤としてジルコニア中に固溶する。カルシア等及びイットリアがジルコニアに固溶することで、室温等の低温環境下においても、本発明の焼結体が、立方晶の結晶相を有し、なおかつ、再酸化等によっても亀裂や割れが生じにくくなる。
本発明の焼結体が含むイットリアは、2mol%以上4mol%以下、更には2mol%以上3.5mol%以下、また更には2.1mol%以上3.0mol%以下であることが挙げられる。
なお、イットリア含有量(mol%)は、焼結体中のジルコニア、イットリア及び酸化物換算したカルシア等(CaO又はMgO)の合計に対する、イットリアのモル割合である。
本発明の焼結体は、ハフニア(HfO)等の不可避不純物以外を含まないことが好ましく、カルシア等、ジルコニア及びイットリア以外の元素含有量は0.1mol%以下であることが好ましい。特に、フッ素(F)を含まないことが好ましいが、測定誤差等を考慮すると、本発明の焼結体のフッ素含有量は100ppm以下であればよい。
カルシア等がカルシアである場合の本発明の焼結体の好ましい組成として、以下のモル組成を挙げることができる。
ジルコニア :75mol%以上86mol%以下
イットリア :2mol%以上4mol%以下
カルシア :12mol%以上21mol%以下
カルシア等がマグネシアである場合の本発明の焼結体の好ましい組成として、以下のモル組成を挙げることができる。
ジルコニア :76mol%以上83mol%以下
イットリア :2mol%以上4mol%以下
マグネシア :15mol%以上20mol%以下
本発明の焼結体は、メインピークの半値幅(以下、「FWHM」とする。)から算出される平均結晶子径(以下、単に「平均結晶子径」ともいう。)が400nm以下であることが好ましい。平均結晶子径が400nm以下、更には350nm以下であることで透明性が高くなりやすく、チタニア含有透光性ジルコニアに匹敵する透明性が得られる。さらに、平均結晶子径が130nm以上、350nm以下であることで、光散乱がより抑制される。これにより本発明の焼結体の透明性がより高くなりやすい。さらに、カルシア等がカルシアである場合、平均結晶子径は、150nm以上400nm以下、更には150nm以上350nm以下であること、カルシア等がマグネシアである場合、平均結晶子径は130nm以上200nm以下であることが挙げられる。
本発明の焼結体の平均結晶子径が400nm以下であることは、本発明の焼結体のXRDパターンにおいてFWHMが0.141°以上であることをもって、確認することができる。そのため、本発明の焼結体はFWHMが0.141°以上あることが好ましい。FWHMが大きくなるほど、平均結晶子径が小さくなる。例えば、FWHMは、平均結晶子径が400nm以下の場合は0.141°以上、350nm以下の場合は0.144°以上となる。結晶性が高くなるほどXRDピークのFWHMは小さくなるが、通常のXRD測定において測定できるFWHMは40°程度までである。本発明の焼結体のメインピークのFWHMとして1°以下、更には0.7°以下であることが挙げられる。
本発明の焼結体は、カルシア等を含有し、なおかつ、上記の平均結晶粒子径を有することで、その結晶相が立方晶蛍石型構造となる。
本発明の焼結体の平均結晶粒子径は50μm以上、180μm以下、更には60μm以上、170μm以下であることが挙げられる。平均結晶粒子径がこの範囲であることで透光性が高い焼結体となる。本発明において、平均結晶粒子径はプラニメトリック法により測定することができる。
本発明の焼結体は密度が高いことが好ましい。カルシア等の種類及び量、並びにイットリアの量により、密度は異なる。本発明の焼結体の密度は5.3g/cm以上6.0g/cm以下を例示することができる。
本発明の焼結体はチタニア含有ジルコニア焼結体に匹敵する透明性を有する。そのため、本発明の焼結体は、試料厚さ1mmとし、D65光線を線源とする直線透過率(以下、単に「直線透過率」又は「PT」ともいう。)が20%以上、更には40%以上、また更には60%以上であることにより、より透明性が高い焼結体となるため好ましい。
本発明の焼結体の透光性は上記の直線線透過率を満たせばよいが、試料厚さ1mmとし、D65光線を線源とする全光線透過率(以下、単に「全光線透過率」又は「TT」ともいう。)が60%以上、更には65%以上、また更には70%であることが好ましい。本発明の焼結体の全光線透過率の上限は80%以下であることが例示できる。一方、本発明の焼結体の試料厚さ1mmとし、D65光線を線源とする拡散透過率(以下、単に「拡散透過率」ともいう。)は1%以上、50%以下を例示することができる。
本発明の焼結体の色調は無色であることにより、より高い透明感を得ることができる。このような色調として、色相がLが80以上、aが−1.0以上0.5以下、かつ、bが0.0以上4.0以下であること、更にはLが80以上、aが−1.0以上0.2以下、かつ、bが1.5以上4.0以下であることが挙げられる。
本発明における強度は、ISO/DIS6872に準じて測定される二軸曲げ強度として250MPa以上500MPa以下、更には270MPa以上450MPa以下であることが挙げられる。
次に、本発明のジルコニア焼結体の製造方法について説明する。
本発明のジルコニア焼結体は、カルシア原料又はマグネシア原料の少なくともいずれか、ジルコニア原料及びイットリア原料を混合して混合粉末を得る混合工程、得られた混合粉末を成形して成形体を得る成形工程、得られた成形体を1650℃以上の焼結温度で焼結して焼結体を得る焼結工程、及び、焼結温度から1000℃までを1℃/min超の降温速度で降温する降温工程、を含むことを特徴とする製造方法、により製造することができる。
混合工程では、カルシア源又はマグネシア源の少なくともいずれか(以下、「カルシア源等」ともいう。)、ジルコニア原料及びイットリア原料を混合して混合粉末を得る。カルシア源等、ジルコニア原料及びイットリア原料が均一に混合されれば、混合方法は湿式混合又は乾式混合のいずれであってもよい。より均一な混合粉末が得られるため、混合方法は湿式混合であることが好ましく、湿式ボールミル又は湿式攪拌ミルの少なくともいずれかによる湿式混合であることがより好ましい。
ジルコニア原料は、ジルコニア又はその前駆体であり、BET比表面積が4〜20m/gであるジルコニア粉末を挙げることができる。
イットリア原料はイットリアの粉末又はその前駆体を挙げることができる。
さらに、ジルコニア原料はイットリアを含むジルコニア粉末であることが好ましい。このようなジルコニア粉末は、ジルコニア原料及びイットリア原料となる。イットリア含有ジルコニア粉末として、2mol%〜7mol%のイットリアを含有するジルコニア粉末、更にはBET比表面積が4〜20m/gであり2mol%〜7mol%のイットリアを含有するジルコニア粉末であることが好ましい。イットリア含有ジルコニア粉末が含有するイットリア量は2mol%〜5mol%、更には2mol%〜4mol%であることが好ましい。
カルシア原料は、カルシアを含む化合物を挙げることができ、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム及び炭酸カルシウムからなる群の少なくとも1種を挙げることができ、好ましくは酸化カルシウムである。
マグネシア原料は、マグネシアを含む化合物を挙げることができ、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム及び炭酸マグネシウムからなる群の少なくとも1種を挙げることができ、好ましくは酸化カルシウムである。
混合粉末の組成は所望の割合であればよい。カルシア原料等がカルシア原料である場合の混合粉末の好ましい組成として、以下のモル組成を挙げることができる。
ジルコニア :75mol%以上86mol%以下
イットリア :2mol%以上4mol%以下
カルシア :12mol%以上21mol%以下
カルシア原料等がマグネシア原料である場合の混合粉末の好ましい組成として、以下のモル組成を挙げることができる。
ジルコニア :76mol%以上83mol%以下
イットリア :2mol%以上4mol%以下
マグネシア :15mol%以上20mol%以下
成形工程では、混合粉末を成形して成形体を得る。所望の形状の成形体が得られれば成形方法は任意である。成形方法として、プレス成形、射出成形、シート成形、押出成形、及び鋳込み成形からなる群の少なくとも1種を挙げることができ、プレス成形又は射出成型の少なくともいずれかであることが好ましい。
また、得られる成形体の形状は任意であるが、例えば、円板状、円柱状、及び多面体状などの形状や、歯列矯正ブラケットや半導体製造治具、その他の複雑形状を例示することができる。
焼結工程においては、成形体を焼結することにより、結晶構造が立方晶等の高温型の結晶構造である焼結体を得る。そのため、焼結工程において、得られた成形体を1650℃以上の焼結温度で焼結する。1650℃以上で焼結することで、焼結体の結晶構造が高温型の結晶構造になると考えられる。高温型の結晶構造を有する焼結体が降温工程を経ることにより、結晶粒子中の結晶構造が立方晶ドメインと正方晶ドメインとが生成し、本発明の焼結体の結晶構造を含む焼結体を得ることができる。焼結温度は1700℃以上であることが好ましく、更には1725℃以上、また更には1750℃以上であることが好ましい。汎用の焼成炉を使用する場合、焼結温度は2000℃以下、更には1800℃以下であることが挙げられる。
上記の焼結温度で焼結すれば、焼結方法は任意である。焼結方法として、例えば、常圧焼結、加圧焼結及び真空焼結からなる群の少なくともいずれかを挙げることができ、常圧焼結及び加圧焼結であることが好ましい。
本発明の製造方法における、好ましい焼結工程として、成形体を1000℃以上1650℃未満で焼成して一次焼結体を得る一次焼結及び該一次焼結体を1650℃以上で焼結する二次焼結を含む焼結工程(以下、「二段焼結法」ともいう。)を挙げることができる。
二段焼結法は、成形体を一次焼結することにより一次焼結体とし、当該一次焼結体を二次焼結する。一次焼結は、成形体を1000℃以上1650℃未満で焼結することが好ましい。一次焼結の雰囲気は酸化雰囲気又は還元雰囲気の少なくともいずれかであることが好ましく、大気雰囲気であることが好ましい。好ましい一次焼結として、大気中1000℃以上1650℃未満、更には1400℃以上1520℃以下の常圧焼結を挙げることができる。これにより、得られる一次焼結体の組織が微細となる。これに加え、一次焼結体の結晶粒子内に気孔が生成しにくくなる。
二次焼結は、一次焼結体を1650℃以上、更には1700℃以上、また更には1725℃以上、また更には1750℃以上で焼結する。高い強度を有する焼結体を得るため、二次焼結温度は2000℃以下、更には1800℃以下であることが好ましい。二次焼結温度を2000℃以下とすることで、粗大な結晶粒子が生成しにくくなる。
より高密度な焼結体を得るために、二次焼成は熱間静水圧プレス(以下、「HIP」とする。)処理であることが好ましい。
HIP処理の時間(以下、「HIP時間」とする。)は、少なくとも10分であることが好ましい。HIP時間が少なくとも10分であれば、HIP処理中に、焼結体の気孔が十分に除去される。
HIP処理の圧力媒体(以下、単に「圧力媒体」ともいう。)は、アルゴンガス、窒素ガス、酸素などが例示できるが、一般的なアルゴンガスが簡便である。
HIP処理の圧力(以下、「HIP圧力」ともいう。)は、5MPa以上、更には50MPa以上であることが好ましい。HIP圧力が5MPa以上であることで、焼結体中の気孔の除去がより促進される。圧力の上限に関しては特に指定はないが、通常のHIP装置を使用した場合、HIP圧力は200MPa以下である。
HIP処理では、非還元性の材質からなる容器に成形体又は一次焼結体を配置することが好ましい。これにより、発熱体等のHIP装置の材質に由来する還元成分による焼結体の局所的な還元が抑制される。非還元性の材質としては、アルミナ、ジルコニア、ムライト、イットリア、スピネル、マグネシア、窒化ケイ素及び窒化ホウ素からなる群の少なくとも1種、更にはアルミナ又はジルコニアの少なくともいずれかが例示できる。
降温工程では、焼結温度から1000℃までを1℃/min超の降温速度で降温することが好ましい。降温速度を1℃/min超とすることで、透明性の高い焼結体が得られやすい。降温速度が1℃/min以下の場合は、析出物や単斜晶が生成するため、得られる焼結体が透明性の低いものとなる。これにより得られる焼結体の透明性が著しく低いものとなる。より高い透明性を有するジルコニア焼結体を得るため、焼成温度から1000℃への降温は、降温速度を10℃/min以上、更には50℃/min以上とすることが好ましい。
本発明の製造方法では、降温工程後の焼結体を熱処理するアニール工程を有していてもよい。焼結体をアニール工程に供することで、焼結体の透明性をより高くすることができる。アニール工程は、酸化雰囲気中、900℃以上1200℃以下、更には980℃以上1030℃以下で焼結体を処理することが挙げられる。本発明の製造方法では、この様なアニール処理を施しても、亀裂や割れなど焼結体の欠陥が生じにくい。
本発明により、チタニア含有透光性ジルコニア焼結体に匹敵する透明性を有するジルコニア焼結体であって、フッ素化合物を必須とせず、なおかつ、従来のチタニア含有透光性ジルコニア焼結体よりも安定して生産することができる透光性ジルコニア焼結体を提供することができる。
さらに、本発明により、チタンやフッ素を使用することなく、高い透明性を有する透光性ジルコニア焼結体を提供することができる。
実施例2のジルコニア焼結体のXRDパターン。 実施例2のジルコニア焼結体のSEM観察図。(図中スケールは50μm) 実施例2のジルコニア焼結体の外観。 実施例2のジルコニア焼結体のUV−VISスペクトル。 (a:分光全光線透過率、b:分光直線透過率)
比較例4のジルコニア焼結体のXRDパターン。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。しかしながら、本発明は実施例に限定されるものではない。
(密度の測定)
焼結体試料の実測密度はアルキメデス法による水中重量を測定することにより求めた。
(平均結晶粒径の測定)
焼結体試料を平面研削した後、9μm、6μm及び1μmのダイアモンド砥粒を順に用いて鏡面研磨した。研磨面を1400℃で1時間保持し、熱エッチングした後、SEM観察し、得られたSEM観察図からプラニメトリック法により平均結晶粒径を求めた。
(結晶構造の同定)
焼結体試料のXRD測定によって得られたXRDパターンを同定分析することで、各焼結体試料の結晶構造の同定、及び、不純物層の有無を確認した。XRD測定は、一般的な粉末X線回折装置(装置名:UltimaIII、リガク社製)を用い、鏡面研磨をした焼結体試料について行った。XRD測定の条件は以下のとおりである。
線源 : CuKα線(λ=0.15418nm)
測定モード : ステップスキャン
スキャン条件: 毎秒0.04°
発散スリット: 0.5deg
散乱スリット: 0.5deg
受光スリット: 0.3mm
計測時間 : 1.0秒
測定範囲 : 2θ=20°〜80°
XRDパターンの同定分析には、XRD解析ソフトウェア(商品名:JADE7、MID社製)を用いた。
(平均結晶子径の測定)
結晶相の同定と同様な測定方法で得られたXRDパターンの2θ=29°〜31°の範囲について、シェラー式を使用して焼結体試料の平均結晶子径を求めた。
D=K×λ/((β−B)×cosθ)
上記式において、Dは平均結晶子径(nm)、Kはシェラー定数(1.0)、λはCuKαの波長(0.15418nm)、βは半値幅(°)、Bは装置定数(0.1177°)、及びθはメインピークの回折角(°)である。
なお、メインピークは、ジルコニアの立方晶(111)面に相当するピークであった。
また、半値幅は、Rigaku社製Integral Analysis for Windows(Version 6.0)を用いて求めた。
(透過率の測定)
JIS K321−1の方法に準じた方法によって、試料の全光線透過率、拡散透過率、及び直線透過率を測定した。標準光D65を測定試料に照射し、当該測定試料を透過した光束を積分球によって検出することによって、光透過率を測定した。測定には一般的なヘーズメーター(装置名:ヘーズメーターNDH2000、NIPPON DENSOKU製)を用いた。
測定試料には直径16mm、厚さ1.0mmの円板状成形体を用いた。測定に先立ち、測定試料の両面を研磨し、表面粗さRaを0.02μm以下に鏡面研磨した。
(二軸曲げ強度の測定)
ISO/DIS6872に準じた二軸曲げ強度測定によって、試料の二軸曲げ強度を測定した。測定試料は両面鏡面研磨し、試料厚みは1mmとした。
(透過率の波長依存性の測定)
焼結体試料の透過率の波長依存性をUV−VISにより測定した。測定条件は以下のとおりである。
光源 :重水素ランプ、及び、ハロゲンランプ
測定波長 :200〜800nm
測定ステップ :1nm
UV−VIS測定には、一般的なダブルビーム方式の分光光度計(装置名:V−650型、日本分光社製)を使用した。
測定試料には直径16mm、厚さ1.0mmの円板状成形体を用いた。測定に先立ち、測定試料の両面を研磨し、表面粗さRaを0.02μm以下に鏡面研磨した。
実施例1
3mol%イットリア含有ジルコニア粉末(BET比表面積7m/g、商品名:3YS、東ソー製)及びカルシア粉末(純度99.9%、和光純薬工業製)を混合して混合粉末を得た。
混合は、ジルコニア粉末の重量に対するカルシア粉末の重量が10重量%となるようにジルコニア粉末にカルシア粉末を添加した後、エタノール溶媒中、168時間で、粉砕媒体として直径10mmのジルコニアボールを用いたボールミルにより行った。
得られた混合粉末を大気中、80℃で乾燥して原料粉末とした。原料粉末を一軸加圧で成形して予備成形体とした後、成形圧200MPaで冷間静水圧プレス(以下、「CIP」とする。)処理し、直径20mm及び厚さ3mmの円板状成形体を得た。
円板状成形体を、大気中、昇温速度を100℃/hr、焼結温度を1450℃、及び焼結時間2時間で一次焼結することで一次焼結体を得た。
ジルコニア製の蓋付き容器に配置した一次焼結体をHIP処理することで、HIP処理体を得た。HIP処理条件は、99.9%のアルゴン雰囲気中、昇温速度600℃/hr、HIP温度1750℃、HIP圧力150MPa、HIP温度での保持時間1時間、及び、
HIP温度から1000℃までの降温速度は83℃/minであった。
得られたHIP処理体を、大気中、1000℃で1時間熱処理することで本実施例のジルコニア焼結体を得た。本実施例のジルコニア焼結体の評価結果を表1に示す。
得られた焼結体は、結晶相が立方晶蛍石型構造であり、なおかつ、色調はL=87.17、a=−0.41及びb=1.64であり、無色で透光性及び透明性を有する焼結体であった。
実施例2
ジルコニア粉末の重量に対するカルシア粉末の重量が7重量%となるようにジルコニア粉末にカルシア粉末を添加したこと以外は実施例1と同様な方法で本実施例のジルコニア焼結体を得た。本実施例のジルコニア焼結体の評価結果を表1に示す。
本実施例のジルコニア焼結体のXRDパターンを図1に示した。図1より、2θ=30.2°にメインピークが確認され、また、ジルコニア以外のXRDピークが確認されなかった。これより、得られた焼結体は結晶相が立方晶蛍石型構造であり、なおかつ、色調はL=86.01、a=−0.25及びb=1.93であり、無色で透光性及び透明性を有する焼結体であった。これより、本実施例のジルコニア焼結体は、カルシア及びイットリアがジルコニアに完全に固溶し、なおかつ、結晶相が立方晶蛍石型構造であることが確認できた。
本実施例のジルコニア焼結体は平均結晶粒子径が150μmと大きいもかかわらず、二軸曲げ強度は372MPaと高い値を示した。
実施例3
ジルコニア粉末の重量に対するカルシア粉末の重量が4重量%となるようにジルコニア粉末にカルシア粉末を添加したこと以外は実施例1と同様な方法で本実施例のジルコニア焼結体を得た。本実施例のジルコニア焼結体の評価結果を表1に示す。
得られた焼結体は結晶相が立方晶蛍石型構造であり、なおかつ、色調はL=83.98、a=−0.29及びb=2.63であり、無色で透光性及び透明性を有する焼結体であった。これより、本実施例のジルコニア焼結体は、カルシア及びイットリアがジルコニアに完全に固溶し、なおかつ、結晶相が立方晶蛍石型構造であることが確認できた。
本実施例のジルコニア焼結体は平均結晶粒子径が160μmと大きいにもかかわらず、二軸曲げ強度は411MPaと高い値を示した。
実施例4
ジルコニア粉末の重量に対するカルシア粉末の重量が2重量%となるようにジルコニア粉末にカルシア粉末を添加したこと以外は実施例1と同様な方法で本実施例のジルコニア焼結体を得た。本実施例のジルコニア焼結体の評価結果を表1に示す。
得られた焼結体は結晶相が立方晶蛍石型構造であり、なおかつ、色調はL=82.93、a=0.80及びb=7.26であり、無色で透光性及び透明性を有する焼結体であった。これより、本比較例のジルコニア焼結体は、カルシア及びイットリアがジルコニアに完全に固溶し、なおかつ、結晶相が立方晶蛍石型構造であることが確認できた。
本実施例のジルコニア焼結体は平均結晶粒子径が145μmであり、二軸曲げ強度は184MPaであった。
比較例1
ジルコニア粉末の重量に対するカルシア粉末の重量が1重量%となるようにジルコニア粉末にカルシア粉末を添加したこと以外は実施例1と同様な方法で本比較例のジルコニア焼結体を得た。本比較例のジルコニア焼結体の評価結果を表1に示す。
得られた焼結体は結晶相が立方晶と正方晶との混晶であり、なおかつ、色調はL=80.57、a=0.46及びb=−1.88であり、無色であったがすりガラスの様な曇った焼結体であった。
本比較例のジルコニア焼結体は平均結晶粒子径が146μmであり、二軸曲げ強度は248MPaであった。
Figure 0006772592
表1より、カルシア含有量が2.5mol%以上である実施例のジルコニア焼結体の全光線透過率も65%以上と高い透光性を有しており、なおかつ、直線透過率も20%で透明性を有することが分かる。さらに、カルシア含有量が8mol%以上では直線透過率が60%を超え、高い透明性を有する透光性ジルコニア焼結体であることが分かる。これに対し、カルシア含有量が低い比較例1では、全光線透過率が56%未満であり透光性を有するが、直線透過率が3%以下と透明性がないことが確認できた。
実施例5
3mol%イットリア含有ジルコニア粉末及びマグネシア粉末(関東化学製)を混合して混合粉末を得たこと、及び、ジルコニア粉末の重量に対するマグネシア粉末の重量が6重量%となるようにジルコニア粉末にマグネシア粉末を添加したこと以外は比較例1と同様な方法で本比較例のジルコニア焼結体を得た。得られたジルコニア焼結体の評価結果を表2に示す。
得られた焼結体は結晶相が立方晶蛍石型構造であり、なおかつ、色調はL=84.13、a=−0.08及びb=3.88であり、無色で透光性及び透明性を有する焼結体であった。これより、本実施例のジルコニア焼結体は、マグネシア及びイットリアがジルコニアに完全に固溶し、なおかつ、結晶相が立方晶蛍石型構造であることが確認できた。
本実施例のジルコニア焼結体は二軸曲げ強度は382MPaであった。
実施例6
3mol%イットリア含有ジルコニア粉末及びマグネシア粉末を混合して混合粉末を得たこと、及び、ジルコニア粉末の重量に対するマグネシア粉末の重量が3重量%となるようにジルコニア粉末にマグネシア粉末を添加したこと以外は実施例1と同様な方法で本比較例のジルコニア焼結体を得た。得られたジルコニア焼結体の評価結果を表2に示す。
得られた焼結体は結晶相が立方晶蛍石型構造であり、なおかつ、色調はL=78.74、a=0.17及びb=5.38であり、無色で透光性及び透明性を有する焼結体であった。
実施例7
3mol%イットリア含有ジルコニア粉末及びマグネシア粉末を混合して混合粉末を得たこと、及び、ジルコニア粉末の重量に対するマグネシア粉末の重量が1.5重量%となるようにジルコニア粉末にマグネシア粉末を添加したこと以外は実施例1と同様な方法で本比較例のジルコニア焼結体を得た。得られたジルコニア焼結体の評価結果を表2に示す。
得られた焼結体は結晶相が立方晶蛍石型構造であり、なおかつ、色調はL=80.12、a=0.22及びb=3.81であり、無色で透光性及び透明性を有する焼結体であった。
比較例2
3mol%イットリア含有ジルコニア粉末及びマグネシア粉末を混合して混合粉末を得たこと、及び、ジルコニア粉末の重量に対するマグネシア粉末の重量が0.8重量%となるようにジルコニア粉末にマグネシア粉末を添加したこと以外は実施例1と同様な方法で本比較例のジルコニア焼結体を得た。得られたジルコニア焼結体の評価結果を表2に示す。
得られた焼結体は、結晶相は立方晶と正方晶との混晶であり、なおかつ、色調はL=84.99、a=−1.32及びb=−1.25であり、透光性はあるが、透明性がほとんどない白っぽい焼結体であった。
比較例3
3mol%イットリア含有ジルコニア粉末及びマグネシア粉末を混合して混合粉末を得たこと、及び、ジルコニア粉末の重量に対するマグネシア粉末の重量が10重量%となるようにジルコニア粉末にカルシア粉末を添加したこと以外は実施例1と同様な方法で本比較例のジルコニア焼結体を得た。得られたジルコニア焼結体の評価結果を表2に示す。
得られた焼結体は、結晶相は立方晶と正方晶との混晶であり、なおかつ、平均結晶粒径が5μmと微細な結晶粒からなっていた。また、色調はL=78.74、a=0.17及びb=5.38であり、透光性がほとんどない白っぽい焼結体であった。
Figure 0006772592
表2より、実施例のマグネシア固溶ジルコニア焼結体は直線透過率が30%を超え、高い透明性を有していた。これに対し、マグネシアが少ない比較例2は透光性を有しているものの、直線透過率が低く透明性を有していなかった。また、比較例3よりマグネシアが25mol%を超えると透光性ジルコニア焼結体が得られないことが確認できた。
比較例4
3mol%イットリア含有ジルコニア粉末及び酸化ストロンチウム粉末を混合して混合粉末を得たこと、及び、ジルコニア粉末の重量に対する酸化ストロンチウム粉末の重量が7重量%となるようにジルコニア粉末に酸化ストロンチウム粉末を添加したこと以外は実施例1と同様な方法で本比較例のジルコニア焼結体を得た。得られたジルコニア焼結体は、以下の組成を有しており、焼結体密度が6.000g/cm及び平均結晶子径が122.0nmであった。
さらに、本比較例のジルコニア焼結体のXRDパターンを図5に示す。図5より、本比較例のジルコニア焼結体の結晶相はSrZrOを含むことが確認できた。また、当該ジルコニア焼結体は、全光線透過率が34.5%であり若干の透光性を有するが、直線透過率が0.07%であり透明性がなかった。
比較例5
3mol%イットリア含有ジルコニア粉末及び酸化バリウム粉末を混合して混合粉末を得たこと、及び、ジルコニア粉末の重量に対する酸化バリウム粉末の重量が10重量%となるようにジルコニア粉末に酸化バリウム粉末を添加したこと以外は実施例1と同様な方法で混合、成形及び一次焼結し、一次焼結体を得た。
得られた一次焼結体の結晶相はBaZrOを含むことが確認できた。不純物を含むジルコニアは透光性が得られず、なおかつ、当該不純物はHIP処理では消失しないため、HIP処理を行わなかった。
比較例4及び5より、イットリアと、カルシア又はマグネシア以外のアルカリ土類金属とを共存して固溶させた場合は、透明性を有する透光性ジルコニア焼結体が得られないことが確認できた。
実施例8
実施例1と同様な方法でジルコニア焼結体を繰り返し製造した。その結果、得られた焼結体の直線透過率は73.44〜73.51%であり、歩留まりは100%であった。
実施例9
実施例2と同様な方法でジルコニア焼結体を繰り返し製造した。その結果、得られた焼結体の直線透過率は72.92〜73.26%であり、歩留まりは100%であった。
実施例10
実施例3と同様な方法でジルコニア焼結体を繰り返し製造した。その結果、得られた焼結体の直線透過率は59.47〜60.26%であり、歩留まりは100%であった。
実施例11
実施例5と同様な方法でジルコニア焼結体を繰り返し製造した。その結果、得られた焼結体の直線透過率は65.73〜67.47%であり、歩留まりは100%であった。
比較例6
以下の方法で、チタニアを含有するジルコニア焼結体を繰り返し製造した。
10mol%イットリア含有ジルコニア粉末(商品名:TZ−10Y、東ソー製)及びチタニア粉末(商品名:PT−401M、石原産業製)を混合して混合粉末を得た。
混合は、ジルコニア粉末の重量に対するチタニア粉末が10mol%となるようにジルコニア粉末にカルシア粉末を添加した後、エタノール溶媒中、168時間で、粉砕媒体として直径10mmのジルコニアボールを用いたボールミルにより行った。
得られた混合粉末を大気中、80℃で乾燥して原料粉末とした。
得られた原料粉末を用いて実施例1と同様な方法で円板状成形体を得、当該成形体を、大気中、昇温速度を100℃/hr、焼結温度を1300℃、及び焼結時間10時間で一次焼結することで一次焼結体を得た。
蓋付きのカーボン製の容器に配置した一次焼結体をHIP処理することで、HIP処理体を得た。HIP処理条件は、99.9%のアルゴン雰囲気中、昇温速度600℃/hr、HIP温度1650℃、HIP圧力150MPa及びHIP処理温度での保持時間1時間とした。得られたHIP処理体を、大気中、1000℃で2時間熱処理することで、本比較例のジルコニア焼結体を得た。
得られた焼結体の直線透過率は73.57〜73.66%であり、高い透明性を有する焼結体が得られたが、その一方、割れや欠けなどを含み透過率が測定できない焼結体も得られ、歩留まりは70%程度であった。
当該比較例より、本発明の焼結体はチタニア含有透光性ジルコニア焼結体に匹敵する透明性を有するのみならず、生産性にも優れることが確認できた。
本発明のジルコニア焼結体は、高い透光性を有するため、時計用部品、装飾部材、光学レンズ等の光学部材、審美歯科部品に使用することができる。

Claims (7)

  1. 2.5mol%以上25mol%以下のカルシア又はマグネシアの少なくともいずれかとイットリアが固溶したジルコニアからなり、CuKα線を線源とするXRD測定において、2θ=30±2°のピークの半値幅から算出される平均結晶子径が400nm以下であることを特徴とするジルコニア焼結体。
  2. カルシア含有量が8mol%以上25mol%以下である請求項1に記載のジルコニア焼結体。
  3. マグネシア含有量が8mol%以上20mol%以下であること請求項1又は2に記載のジルコニア焼結体。
  4. イットリア含有量が2mol%以上4mol%以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
  5. 試料厚さ1mmとし、D65光線を線源とする直線透過率が20%以上である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
  6. カルシア原料又はマグネシア原料の少なくともいずれか、ジルコニア原料及びイットリア原料を混合して混合粉末を得る混合工程、得られた混合粉末を成形して成形体を得る成形工程、得られた成形体を1650℃以上の焼結温度で焼結して焼結体を得る焼結工程、及び、焼結温度から1000℃までを10℃/min以上の降温速度で降温する降温工程、を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
  7. 前期焼結工程が、1000℃以上1500℃未満で焼結して一次焼結体を得る一次焼結工程、及び、該一次焼結体を1500℃以上で焼結する二次焼結を含む請求項6に記載の製造方法。
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