JP6764565B2 - 動力伝達チェーン - Google Patents
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Description
特許文献1では、リテーナピンの耐久性を向上する目的で、端部リンクプレートの径方向内端に、軸方向外側に突出する突起部が設けられている。具体的には、端部リンクプレートがクレードルピンに対して軸方向外側へ移動するときに、突起部がプーリ面と先に接触することで、端部リンクプレートがリテーナピンと接触することが回避されている。
本発明の目的は、ピンからのリンクの抜けを抑制するフェールセーフ効果の高い動力伝達チェーンを提供することである。
請求項2のように、前記複数の突起は、前記最外側リンクに接続された基端部と、先端部と、前記基端部から延びる第1片部と、前記先端部から延びる第2片部と、前記第1片部と前記第2片部とを屈曲状に接続する屈曲部と、を有し、前記カム面は、前記第2片部の外面によって形成されていてもよい。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る動力伝達チェーンを備える動力伝達装置としてのチェーン式無段変速機(以下では、単に無段変速機ともいう)の要部構成を模式的に示す斜視図である。
固定シーブ72および可動シーブ73は、入力軸71の軸方向に対向する一対のシーブ面72a,73aをそれぞれ有している。一対のシーブ面72a,73aは、互いに逆向きに傾斜する円錐面状の傾斜面を含む。一対のシーブ面72a,73a間に、動力伝達チェーン1が嵌まる断面V字形形状の溝が区画される。動力伝達チェーン1は、一対のシーブ面72a,73aによって強圧に挟まれる。
図3は、動力伝達チェーン1の要部の断面図である。動力伝達チェーン1のチェーン進行方向に沿う方向を「チェーン進行方向X」と言い、チェーン進行方向Xと直交し、且つ動力伝達チェーン1の幅方向に沿う方向を「チェーン幅方向W」と意う。
図3に示すように、動力伝達チェーン1は、チェーン進行方向Xおよびチェーン幅方向Wに並ぶ複数のリンク2と、これらのリンク2を屈曲可能に連結しチェーン幅方向Wに延びる第1連結部材11および第2連結部材12とを備えている。
各リンク2は、両貫通孔5,6をチェーン進行方向Xの前後に挟んで配置された第1外柱7および第2外柱8と、第1貫通孔5および第2貫通孔6間を仕切る中間柱9とを含む。第1外柱7は、第2外柱8よりもチェーン進行方向X側に配置されている。
図3に示すように、各連結部材11,12の第1ピン3および第2ピン4は、第2ピン4が前側(チェーン進行方向X側)に配置され、第1ピン3が後側(チェーン進行方向Xの反対側XB)に配置された状態で、互いに対向している。これら第1ピン3および第2ピン4は、対応するリンク2同士の屈曲に伴い互いに転がり摺動接触する。転がり摺動接触とは、転がり接触およびすべり接触の少なくとも一方を含む接触のことをいう。
第1ピン3の長手方向(チェーン幅方向W)の一対の端部17および 第2ピン4の長手方向(チェーン幅方向W)の一対の端部19が、チェーン幅方向Wの一対の端部に配置されるリンク2からチェーン幅方向Wにそれぞれ突出している。長手方向(チェーン幅方向W)に関して、第1ピン3は、第2ピン4よりも長くされている。また、チェーン進行方向Xに関して、第2ピン4は、第1ピン3よりも薄肉に形成されている。
具体的には、第1ピン3の端面18の一部に設けられる接触領域Eが、各プーリ70,80のシーブ面72a,73a(82a,83a)に潤滑油膜を介して動力伝達可能に摩擦係合する。第1ピン3は、シーブ面72a,73a(82a,83a)間に挟持され、これにより、第1ピン3と各プーリ70,80との間で動力が伝達される。第1ピン3は、その端面18によって直接動力伝達に寄与するため、例えば、軸受用鋼(SUJ2)等の高強度耐摩耗材料で形成されている。
第2貫通孔6の内周6aは、第1ピン3が圧入固定される第1ピン固定部15を含む。第2貫通孔6において、第1ピン固定部15に圧入固定された第1ピン3によって占められている部分を除く空間が、第2ピン4が移動可能に嵌め合わせられる第2ピン可動部16とされている。
第1ピン3を基準とした第1ピン3(の前部3a)と第2ピン4(の後部4b)との接触部Aの軌跡は、円のインボリュートとされている。本実施形態では、第1ピン3の接触面が、インボリュート形状を有し、第2ピン4の接触面が平坦面(断面形状が直線)とされている。なお、接触部Aの軌跡は、インボリュートに限定されるものではなく、インボリュート以外の他の曲線であってもよい。
図3に示すように、動力伝達チェーン1は、チェーン進行方向Xに関する同位相でチェーン幅方向Wに並ぶ複数のリンク2でそれぞれ構成される第1リンク列91、第2リンク列92および第3リンク列93をこの順でチェーン進行方向Xに並べて1つのリンクモジュール90としている。リンクモジュール90をチェーン進行方向Xに複数連結して、無端状をなす動力伝達チェーン1が形成されている。
リンクモジュール90において、一対の第1外側リンク21は、一対の第3外側リンク23よりもチェーン幅方向Wの内側に配置されている。一対の第3外側リンク23は、一対の第2外側リンク(最外側リンク22)よりも、チェーン幅方向Wの内側に配置されている。このため、リンクモジュール90において、最外側リンク22(第2外側リンク)のピン3,4からの抜脱を抑制することにより、リンクモジュール90の全リンク2の抜脱の抑制が可能である。
図3に示すように、第1突起30は、第1外柱7に例えば直交状に接続された基端部31と、先端部32と、基端部31から延びる第1片部33と、先端部32から延びる第2片部34と、第1片部33と第2片部34とを屈曲状に接続する屈曲部35と、第2片部34の外面によって形成されたカム面36とを含む。カム面36は、屈曲部35から先端部32側に向かうにしたがってチェーン進行方向Xの反対側XBに変位する傾斜面である。
各突起30,40のカム面36,46は、最外側リンク22がピン3,4の正規位置からチェーン幅方向Wの外側へずれた状態で、一対のシーブ面72a,73a(又は82a,83a)間に進入するときに、対応するシーブ面72a,73a(又は82a,83a)と当接して最外側リンク22を正規位置側へ押し戻す働きをする。
また、突起30,40がリンク2に一体で設けられるので、部品点数の増加を抑制して製造コストを安くすることができる。
また、各突起30,40が、弾性舌片で形成されるので、シーブ面72a,73a(又は82a,83a)と衝突するときに、弾性舌片が弾性変形される。カム面36,46の働きに付加して、弾性舌片の弾性復元力で、最外側リンク22が、正規位置側へ押し戻される。このため、フェールセーフ効果が高い。
なお、本実施形態において、屈曲部に代えて、湾曲部を用いてもよい。また、カム面36,46は、チェーン進行方向Xに対して傾斜するだけでなく、対応するシーブ面の傾斜と同じ傾斜角度で直交方向Vに対して傾斜していてもよい。また、第1突起30および第2突起40の少なくとも一方が、各外側リンク22に複数設けられてもよい。また、各外側リンク22において第1突起30および第2突起40の何れか一方が無くてもよい。
(第2実施形態)
図7(a)は本発明の第2実施形態に係る最外側リンク22Pの正面図である。本実施形態では、最外側リンク22Pの外面22Paに、チェーン進行方向Xおよびチェーン幅方向Wの双方と直交する直交方向Vに離隔する大突起50および小突起60が設けられている。大突起50はチェーン外径側V2に配置され、小突起60はチェーン内径側V1に配置されている。大突起50および小突起60は、中間柱9を直交方向Vに挟んだ両側に配置されている
各突起50,60は、チェーン進行方向Xに延びる板部である。各突起50,60は、プレス成形品からなる最外側リンク22Pと単一の材料で一体に形成された折り曲げ突起であり、台形板状をしている。
具体的には、大突起50と小突起60とを用いることで、傾斜状のシーブ面72a,73a(82a,83a)と各突起50,60との距離が均一化されるので、各突起50,60のカム面53,63がシーブ面72a,73a(82a,83a)と当接することで、最外側リンク22Pが、直交方向Vに対する傾斜を抑制されつつ、正規位置側へ押し戻される。
本発明は各前記実施形態に限定されるものではなく、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせてもよい。また、第1ピン3および第2ピン4の双方が、シーブ面72a,73a;82a,83aに接触する動力伝達ピンとして機能してもよい。その他、本発明は特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
Claims (3)
- 相対向する一対のシーブ面をそれぞれ有する一対のプーリ間に巻き掛けられ、前記シーブ面に接触して動力を伝達する無端状の動力伝達チェーンであって、
チェーン進行方向に並ぶ一対の貫通孔をそれぞれ含み、前記チェーン進行方向および前記チェーン進行方向と直交するチェーン幅方向に並ぶ複数のリンクと、
前記チェーン幅方向に延びて各前記リンクの前記一対の貫通孔に挿通され、前記複数のリンクを相互に連結するピンと、を備え、
前記複数のリンクは、前記チェーン幅方向の最も外側に配置され、前記チェーン幅方向に関して前記ピンの正規位置に圧入保持される最外側リンクを含み、
前記最外側リンクは、前記チェーン幅方向の外側へ突出し、前記チェーン進行方向に離隔し、且つ弾性舌片で形成される複数の突起を含み、
前記複数の突起は、前記最外側リンクが前記ピンの前記正規位置から前記チェーン幅方向の外側へずれた状態で、前記一対のシーブ面間に進入するときに、対応するシーブ面と当接して前記最外側リンクを前記正規位置側へ押し戻すカム面をそれぞれ含み、
前記複数の突起は、それぞれ当該突起の先端部側に向かうにしたがって前記チェーン進行方向の反対側に変位する前記カム面としての傾斜面を含む動力伝達チェーン。 - 請求項1に記載の動力伝達チェーンにおいて、前記複数の突起は、前記最外側リンクに接続された基端部と、先端部と、前記基端部から延びる第1片部と、前記先端部から延びる第2片部と、前記第1片部と前記第2片部とを屈曲状に接続する屈曲部と、を有し、
前記カム面は、前記第2片部の外面によって形成されている動力伝達チェーン。 - 請求項1に記載の動力伝達チェーンにおいて、前記弾性舌片は、弾性変形可能な屈曲部または湾曲部を含む動力伝達チェーン。
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