本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
厚さ方向を有し、前記厚さ方向の肌側に位置する肌側シートと、前記厚さ方向の非肌側に位置する非肌側シートと、前記厚さ方向における前記肌側シートと前記非肌側シートとの間に配置された伸縮性不織布と、を備えた使い捨ておむつであって、前記厚さ方向において、前記肌側シート、前記伸縮性不織布、及び前記非肌側シートは、点在する複数の接合部によって接合されており、前記伸縮性不織布は、伸縮性を有する伸縮性繊維、及び前記伸縮性繊維よりも収縮性の低い伸長性繊維を含み、前記肌側シートの繊維密度と前記非肌側シートの繊維密度とが異なっている使い捨ておむつが明らかとなる。
このような使い捨ておむつによれば、伸縮性不織布が収縮することにより、隣り合う接合部の間において厚さ方向に突出する皺が形成されるが、このとき、皺の内部では伸縮性不織布に含まれる伸長性繊維が厚さ方向に突出してクッションの役割を担うため、肌当たりが良くなる。そして、肌側シートと非肌側シートとにおいて繊維密度に差を設けることにより、着用者の身体の凹凸に合わせてシート部材が変形しやすくなるため、おむつのフィット性が向上する。以上により、おむつの装着性を良好にすることが可能となる。
かかる使い捨ておむつであって、前記肌側シートの繊維密度は、前記非肌側シートの繊維密度よりも低いことが望ましい。
このような使い捨ておむつによれば、着用者の肌に接触する肌側シートの繊維密度を非肌側シートの繊維密度よりも低くすることによって肌側シートの方が非肌側シートよりも柔軟性を有し、肌触りが良くなりおむつの装着性が向上する。
かかる使い捨ておむつであって、隣り合う前記接合部の間では、前記肌側シートが前記肌側に突出し、前記非肌側シートが前記非肌側に突出しており、前記厚さ方向において、前記肌側シートの突出した頂部と、前記接合部のうちの最も薄い薄肉部との間の平均距離は、前記非肌側シートの突出した頂部と前記薄肉部との間の平均距離よりも長いことが望ましい。
このような使い捨ておむつによれば、非肌側シートの非肌側への突出量よりも肌側シートの肌側への突出量が多いため、肌側においてクッション性が向上して着用者への肌当たりが良好となる。また、肌側では、非肌側よりも着用者の肌との間に隙間が生じやすく、当該隙間を介して空気が外部(非肌側)へ逃げやすくなるため、通気性を向上させることができる。
かかる使い捨ておむつであって、前記肌側シートを形成する繊維は、前記非肌側シートを形成する繊維よりも細いことが望ましい。
このような使い捨ておむつによれば、非肌側シートを形成する繊維よりも細い繊維を用いて肌側シートを形成することにより、シート部材の製造過程において製造装置の設定を変更する等の作業を必要とすることなく、肌側シートの繊維密度を非肌側シートの繊維密度よりも低くすることができる。
かかる使い捨ておむつであって、前記非肌側シートの繊維密度は、前記肌側シートの繊維密度よりも低いことが望ましい。
このような使い捨ておむつによれば、外部に面する非肌側シートの繊維密度を肌側シートの繊維密度よりも低くすることによって非肌側シートの方が肌側シートよりも繊維間に隙間を有し、熱の通り道ができやすくなる。したがって、放熱性が良好となり、おむつの装着性が向上する。
かかる使い捨ておむつであって、隣り合う前記接合部の間では、前記肌側シートが前記肌側に突出し、前記非肌側シートが前記非肌側に突出しており、前記厚さ方向において、前記非肌側シートの突出した頂部と、前記接合部のうちの最も薄い薄肉部との間の平均距離は、前記肌側シートの突出した頂部と前記薄肉部との間の平均距離よりも長いことが望ましい。
このような使い捨ておむつによれば、肌側シートの肌側への突出量よりも非肌側シートの非肌側への突出量が多いため、肌側では着用者の肌に密着させて吸熱しやすくし、非肌側では各シート間に溜まった熱を外部に放出しやすくして、放熱性をより向上させることができる。
かかる使い捨ておむつであって、前記伸縮性不織布の繊維密度は、前記肌側シートの繊維密度及び前記非肌側シートの繊維密度よりも低いことが望ましい。
このような使い捨ておむつによれば、肌側シートと非肌側シートとの間に挟まれた伸縮性不織布の繊維密度を低くすることによって繊維間の隙間を増やして熱の通り道を作ることができるため、肌側シートと非肌側シートとの間に熱が溜まりにくくなり、おむつの装着性が向上する。
かかる使い捨ておむつであって、着用者の脚を通すための脚回り開口を一対有し、前記脚回り開口の縁を含む前記脚回り開口に沿った所定の領域には、前記脚回り開口に沿って伸縮可能な弾性部材が設けられていることが望ましい。
このような使い捨ておむつによれば、脚回り開口の周縁領域では、伸縮性不織布に加えて弾性部材が設けられていることにより収縮力が大きくなる。このため、伸長性繊維が厚さ方向に突出しやすく、クッション性が高くなり、脚回り開口の周縁領域における着用者の脚への肌当たりが良くなると共に、脚回りにおけるフィット性が向上する。
かかる使い捨ておむつであって、前記厚さ方向に交差する上下方向を有し、上端から前記上下方向に所定の幅を有する上端領域では、前記所定の領域における剛性よりも高い剛性を有することが望ましい。
このような使い捨ておむつによれば、胴回り開口側に位置する上端領域の剛性が脚回り開口側の所定の領域の剛性よりも高くすることによって、形成される皺の形状が綺麗に維持されて着用者の肌に密着しやすくなるため、脚回りだけでなく胴回りにおいてもフィット性が向上しておむつがずれ落ちなくなる。
かかる使い捨ておむつであって、前記厚さ方向において、前記上端領域におけるシート部材の積層枚数は、前記所定の領域におけるシート部材の積層枚数よりも多いことが望ましい。
このような使い捨ておむつによれば、積層枚数を増やすことにより上端領域における剛性を所定の領域の剛性よりも高くしているため、剛性の高いシート部材を用意する等の手間をかける必要がない。
かかる使い捨ておむつであって、前記上端領域では、前記非肌側シートの上端部が肌側に向かって折り返されて前記肌側シートに重なっていることが望ましい。
このような使い捨ておむつによれば、上端領域では、非肌側シートを折り返すことにより積層枚数を増やしているため、剛性を高くするためのシート部材を別途用意する必要がない。
かかる使い捨ておむつであって、前記伸縮不織布は、前記伸縮性繊維としてのポリウレタン、及び前記伸長性繊維としてのポリオレフィンを含むことが望ましい。
このような使い捨ておむつによれば、伸縮性繊維としてポリウレタンを用いることにより伸縮不織布の伸縮性を向上させることができると共に、伸長性繊維としてポリオレフィンを用いることにより肌側シートと非肌側シートとの溶着性を向上させることができる。
===第1実施形態===
本発明の第1実施形態に係る使い捨ておむつ(以下では、単に「おむつ1」とする)の一例として、主に高齢者を対象としたパンツ型の使い捨ておむつについて説明する。
(おむつ1の全体構成)
まず、おむつ1の全体構成について、図1、図2、図3A〜C、及び図4A〜Cを参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るおむつ1の一構成例を示す概略斜視図である。図2は、展開かつ伸長状態のおむつ1を厚さ方向の非肌側から見た概略平面図である。図3Aは図2のIIIA−IIIA線断面模式図、図3Bは図2のIIIB−IIIB線断面模式図、図3Cは図2のIIIC−IIIC線断面模式図である。図4Aは厚さ方向における肌側シート31,41の断面模式図、図4Bは厚さ方向における伸縮性不織布33,43の断面模式図、図4Cは厚さ方向における非肌側シート32,42の断面模式図である。
おむつ1は、図1及び図2に示すように、「上下方向」と、上下方向に交差する「横方向」と、を有すると共に、図3A〜Cに示すように、各部材が積層された方向である「厚さ方向」を有する。上下方向のうち、着用者がおむつ1を着用した状態において着用者の胴側となる方を「上側」とし、着用者の股下となる方を「下側」とする。厚さ方向のうち、着用者がおむつ1を着用した状態において着用者の肌と接触する側を「肌側」とし、その反対側を「非肌側」とする。以下では、厚さ方向の肌側を単に「肌側」とし、厚さ方向の非肌側を単に「非肌側」とする。また、おむつ1は、図1に示すように、着用する際に着用者の腹側となる方を「前側」とし、着用者の背側となる方を「後側」とする「前後方向」を有している。
図1に示すように、おむつ1は、着用時において着用者の腹側に対応する前身頃部30と、着用者の背側(臀部を含む)に対応する後身頃部40と、着用者の股下に対応する股下部50と、を有する。このおむつ1は、尿等の液体を吸収する帯状の吸収性本体10と、吸収性本体10の非肌側に位置する外装体20と、を備えており、外装体20が、前身頃部30と、後身頃部40と、股下部50と、を有している。
図2に示すように、おむつ1を展開して伸長させた状態において、股下部50は、前身頃部30と後身頃部40との間に架け渡されるように設けられ、例えば接着剤等によって前身頃部30及び後身頃部40のそれぞれに接合されている。また、図3Aに示すように、股下部50は、前身頃部30及び後身頃部40よりも肌側に位置している。
なお、おむつ1の「伸長状態」とは、おむつ1が備える各弾性部材(例えば、糸ゴムや伸縮性を有するシート部材)を伸長させることにより、おむつ1全体(製品全体)を皺なく伸長させた状態、具体的には、おむつ1を構成する各部材(例えば、前身頃部30及び後身頃部40や股下部50を構成するシート部材等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い寸法になるまで伸長させた状態のことをいう。
吸収性本体10は、長手方向の一端側が前身頃部30に位置し、他端側が後身頃部40に位置しており、厚さ方向において前身頃部30、後身頃部40、及び股下部50と重なるように、例えば接着剤等によって外装体20に接合されている。
おむつ1は、図2に示す展開状態から、吸収性本体10の長手方向における所定位置CL(図2において一点鎖線で示す)を折り位置として吸収性本体10及び外装体20が二つ折りされる。当該二つ折りの状態において、前身頃部30の横方向の両端部に設けられた端部接合領域30eと、後身頃部40の横方向の両端部に設けられた端部接合領域40eとが、それぞれ接合される。これにより、前身頃部30と後身頃部40とが環状につながって、図1に示すような1つの胴回り開口1a及び一対の脚回り開口1bが形成され、パンツ型のおむつとなる。
図1及び図2に示すように、端部接合領域30e,40eは、上下方向に沿って設けられており、前身頃部30の端部接合領域30eと後身頃部40の端部接合領域40eとの接合手段としては、例えば超音波溶着等が挙げられる。
吸収性本体10は、図2に示すように、短手方向(短辺)がおむつ1の横方向に沿った平面視略長方形状である。そして、図3Aに示すように、吸収性本体10は、長手方向に沿った吸収性コア11と、吸収性コア11の肌側に配置されたトップシート12と、吸収性コア11の非肌側に配置されたバックシート13と、を有している。なお、図2において、吸収性コア11を二点鎖線で示す。
吸収性コア11は、尿等の液体を吸収して保持する部材であり、例えば高吸収性ポリマー(SAP)が混入したパルプ繊維等の液体吸収性繊維により形成される。なお、吸収性コア11は、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性のシート部材によって、外周面が覆われていてもよい。
トップシート12は、着用時において着用者の肌に接触し得る液透過性のシート部材であり、例えば親水性のエアスルー不織布やスパンボンド不織布等により形成される。バックシート13は、吸収性コア11に吸収された尿等の液体が外部に漏れ出すことを抑制するための液不透過性シート13aと、液不透過性シート13aの非肌側に配置された液透過性シート13bと、を備えた二層構造で形成されている。液不透過性シート13aとしては、例えば樹脂フィルム等が用いられ、液透過性シート13bとしては、例えば柔軟性を有する不織布等が用いられる。
吸収性本体10の横方向の両端部にはそれぞれ、長手方向に沿った弾性部材が横方向に間隔を空けて複数設けられている(図1参照)。弾性部材には例えば糸ゴム等を用いることができ、弾性部材が長手方向に収縮することにより吸収性本体10が着用者の脚回りに沿って収縮してフィットする。これにより、尿等の漏れを抑制することが可能となる。なお、図2では、説明の便宜上、当該弾性部材の図示を省略している。
外装体20は、図2に示すように、股下部50において横方向内側に向かって最も括れており、当該最も括れた部分では、横方向における股下部50の外側に吸収性本体10が露出している。股下部50は、長手方向の中央部分が横方向内側に括れた略砂時計状であり、図3Aに示すように、厚さ方向に積層された2枚の不織布51,52を有している。前身頃部30及び後身頃部40はそれぞれ、上下方向において、端部接合領域30e,40eが設けられた領域では横方向に長辺を有する略長方形状であり、端部接合領域30e,40eの下端よりも下側(股下部50側)では略等脚台形状を有している。この略等脚台形は、台形の脚となる一組の対辺(横方向の外縁)が、股下部50側に向かうにつれて横方向外側から内側へ傾斜している。
以下の説明において、前身頃部30のうち、上下方向において、端部接合領域30eが設けられた領域(略長方形状の領域)を前身頃胴回り側領域301とし、前身頃胴回り側領域301よりも下側の領域(略等脚台形状の領域)を前身頃股下側領域302とする。また、前身頃部30と同様に、後身頃部40のうち、上下方向において、端部接合領域40eが設けられた領域(略長方形状の領域)を後身頃胴回り側領域401とし、後身頃胴回り側領域401よりも下側の領域(略等脚台形状の領域)を後身頃股下側領域402とする。
図3A〜Cに示すように、前身頃部30及び後身頃部40はそれぞれ、肌側に位置する肌側シート31,41と、非肌側に位置する非肌側シート32,42と、厚さ方向における肌側シート31,41と非肌側シート32,42との間に設けられた伸縮性不織布33,43と、を備えている。
図2に示すように、肌側シート31,41、伸縮性不織布33,43、及び非肌側シート32,42は、点在する複数の接合部241,242によって厚さ方向に接合されている。おむつ1が図1に示すようなパンツ型の状態であるときには、伸縮性不織布33,43が収縮して隣り合う接合部241,242の間において厚さ方向に突出する皺(ひだ)が形成されている。このように、前身頃部30及び後身頃部40に複数の皺を形成することによって、おむつ1の着用時における違和感を軽減している。複数の接合部241,242、及び形成される複数の皺の詳細については後述する。
肌側シート31,41及び非肌側シート32,42はそれぞれ、例えばスパンボンド不織布やSMS不織布等により形成された柔軟なシート部材である。図4A及び図4Cに示すように、肌側シート31,41及び非肌側シート32,42はそれぞれ、熱的若しくは機械的な作用、又は化学的な作用によって繊維同士が接着又は絡み合うことにより形成されている。
伸縮性不織布33,43は、伸縮性を有する伸縮性繊維、及び伸縮性繊維よりも収縮性の低い伸長性繊維を含んでおり、ギア延伸等の適宜な延伸処理が施された不織布である。本実施形態では、伸縮性繊維として、弾性を有する熱可塑性エラストマーの一種であるポリウレタン系エラストマーの繊維が用いられ、伸長性繊維として、非弾性を有する熱可塑性樹脂の一種であるポリオレフィン系樹脂のポリプロピレン(PP)の繊維が用いられている。
伸縮性不織布33,43は、互いの外周面を対向させつつ回転する一対のギアロールの間を通過させることにより延伸処理が施される。一対のギアロールはそれぞれ、外周面に凹凸を有しており、一方のギアロールの凸部と他方のギアロールの凹部とが噛み合い、一方のギアロールの凹部と他方のギアロールの凸部とが噛み合うように設定されている。このロール機構を通過した伸縮性不織布33,43は、図4Bに示すように、低収縮領域Rと高収縮領域Dとが、おむつ1の横方向に沿って交互に並んだ状態となっている。
伸縮性不織布33,43を構成する繊維のうち伸長性繊維は、延伸処理によって部分的に引き延ばされて伸縮性繊維の弾性的な変形を阻害し得ない状態となっており、伸縮性不織布33は伸縮性繊維の弾性変形に基づいて伸縮性を発現している。なお、高収縮領域Dでは伸縮性繊維が網目状に絡み合い、上下方向及び横方向について低収縮領域Rにおける収縮力よりも大きな収縮力が発生している。
これにより、おむつ1は、伸縮性の調整を柔軟に行うことができ、着用時におけるフィット性を向上させている。なお、この延伸処理は、互いに直交する方向に延伸処理を行うものであってもよいし、所定の方向にのみ延伸処理を行うものであってもよい。仮に、所定の方向にのみ延伸処理を行った場合であっても、必ずしも全ての繊維の配向が所定の方向に沿っているとは限らないため、所定の方向と直交する方向にも伸縮性が発現する場合がある。
本実施形態では、図2に示すように、脚回り開口1b(図1参照)の縁を含む脚回り開口1bに沿った所定の領域25(以下、単に「脚回り領域25」とする)に、脚回り開口1bに沿って伸縮可能な脚回り弾性部材250が設けられている。
この「脚回り領域25」とは、外装体20のうち脚回り開口1bの周縁領域であり、おむつ1を着用した状態において着用者の鼠径部に接触し、当該鼠径部に沿って太腿を一周する領域である(図2において砂地模様で示す)。したがって、脚回り領域25は、前身頃部30の一部、股下部50の一部、及び後身頃部40の一部をそれぞれ有している。
脚回り領域25では、前身頃部30に相当する部分に伸縮性不織布33が配置され、後身頃部40に相当する部分に伸縮性不織布43が配置されていることから、脚回り弾性部材250の弾性力に加えて伸縮性不織布33,43の弾性力が作用して脚回り領域25における収縮力が大きくなる。これにより、おむつ1の着用時において、着用者の脚回りのフィット性が向上する。
なお、本実施形態では、図2に示すように、脚回り弾性部材250は、前身頃脚回り弾性部材250a、後身頃脚回り弾性部材250b、及び股下脚回り弾性部材250cの3つに分かれた状態で脚回り開口1bに沿って断続的に設けられているが、必ずしも脚回り弾性部材250が3つに分かれた状態で設けられている必要はない。
前身頃部30(前身頃胴回り側領域301)及び後身頃部40(後身頃胴回り側領域401)はそれぞれ、上端から上下方向に所定の幅を有する上端領域300,400を有している。上端領域300,400では、図3A〜Cに示すように、非肌側シート32,42の上端部が肌側へ折り返されて、肌側シート31,41の肌側に位置している。
したがって、図3A及び図3Bに示すように、前身頃部30の上端領域300は、肌側シート31、伸縮性不織布33、及び折り返された非肌側シート32の計4枚が厚さ方向に積層された部分を有している。一方、前身頃部30のうちの脚回り領域25では、肌側シート31、非肌側シート32、及び伸縮性不織布33の計3枚が厚さ方向に積層されており、前身頃部30の厚さ方向において、上端領域300におけるシート部材の積層枚数が、脚回り領域25におけるシート部材の積層枚数よりも多くなっている。
同様にして、図3A及び図3Cに示すように、後身頃部40の上端領域400は、肌側シート41、伸縮性不織布43、及び折り返された非肌側シート42の4枚が厚さ方向に積層された部分を有している。一方、後身頃部40のうちの脚回り領域25では、肌側シート41、非肌側シート42、及び伸縮性不織布43の3枚が厚さ方向に積層されており、後身頃部40の厚さ方向において、上端領域400におけるシート部材の積層枚数が、脚回り領域25におけるシート部材の積層枚数よりも多くなっている。
このように、厚さ方向において、上端領域300,400におけるシート部材の積層枚数を脚回り領域25におけるシート部材の積層枚数よりも多くすることによって、胴回り開口1a側の剛性が脚回り開口1b側の剛性よりも高くなっている。
ここで、「剛性」とは、肌側シート31,41及び非肌側シート32,42が外力を受けた場合の変形のしやすさをいい、剛性の高低を比較するための剛性値としては、例えば、ガーレー剛軟度によって測定された値をサンプル片の長さで割った値を例示できる。ガーレー剛軟度の測定は、(株)安田精機製作所製のNo311のガーレー式柔軟度試験機を用いて、JIS−L1096に準拠して測定することが可能である。
前身頃部30及び後身頃部40において、胴回り開口1a側の剛性が脚回り開口1b側の剛性よりも高いため、伸縮性不織布33,43が収縮することにより形成された皺の形状が胴回り側において維持されやすくなる。そのため、着用者の肌に皺が密着しやすくなり、脚回りだけでなく胴回りにおいてもフィット性が向上する。これにより、おむつ1の着用時において、おむつ1の上下方向のずれ落ちを抑制することができる。
本実施形態では、非肌側シート32,42の上端部を肌側へ折り返すことにより上端領域300,400における厚さ方向の積層枚数を増やして、上端領域300,400の剛性を脚回り領域25の剛性より高くしているため、剛性を高くするためのシート部材を別途用意したり、剛性の高い資材で形成されたシート部材を用いたりする等の手間を省くことができる。
また、本実施形態では、上端領域300,400において肌側シート31,41及び伸縮性不織布33,43の上端が折り返し位置30L,40Lに位置しておらず、折り返し位置30L,40Lと肌側シート31,41及び伸縮性不織布33,43の上端との間にそれぞれ隙間を有している。そして、当該隙間には、横方向に沿って伸縮可能な糸ゴム30a,40aが上下方向に間隔を空けて複数設けられている。
このように、上端領域300,400に複数の糸ゴム30a,40aを設けることによって腹側胴回り開口1aの周辺部におけるおむつ1のフィット性を向上させて、おむつ1の上下方向のずれ落ちをより抑制することができる。一方、複数の糸ゴム30a,40aが配置された部分よりも下側では、伸縮性不織布33,43によって面全体で緩やかに着用者の肌にフィットさせることができる。また、複数の糸ゴム30a,40aが設けられた部分では肌側シート31,41が設けられていないため、複数の糸ゴム30a,40aの伸縮力が着用者に伝わりやすくなっている。
(各シート部材の繊維密度の関係)
次に、各シート部材(肌側シート31,41、非肌側シート32,42、及び伸縮性不織布33,43)の繊維密度の関係について、図4A〜Cを参照して説明する。
本実施形態では、肌側シート31の繊維密度は非肌側シート32の繊維密度よりも低く、伸縮性不織布33,43の繊維密度は肌側シート31,41の繊維密度及び非肌側シート32,42の繊維密度よりも低い。すなわち、非肌側シート32,42、肌側シート31,41、伸縮性不織布33,43の順で繊維密度が低くなっている。
なお、ここでいう「繊維密度」とは、各シート部材における「平均の繊維密度」のことをいう。これは、肌側シート31,41及び非肌側シート32,42のそれぞれを構成する繊維が必ずしも一様に分布しているとは限らないこと、ならびに、前述したように伸縮性不織布33,43は低収縮領域R及び高収縮領域Dを有しているため(図4B参照)、低収縮領域Rにおける繊維密度と高収縮領域Dにおける繊維密度とが異なっていることによるものである。したがって、例えば、伸縮性不織布33,43の高収縮領域Dにおける繊維密度と肌側シート31,41のある部分における繊維密度とを部分的に比較した場合には、伸縮性不織布33,43の方が肌側シート31,41よりも高いことがある。
肌側シート31,41の平均繊維密度を非肌側シート32,42の平均繊維密度よりも低くすることにより、着用者の肌に直接触れる肌側シート31,41の方が非肌側シート32,42よりも柔軟性を有する。これにより、おむつ1の着用時における肌触りが良くなり、おむつ1の装着性が向上する。
さらに、肌側シート31,41を形成する各繊維は、非肌側シート32,42を形成する各繊維よりも細いものを用いることが望ましい。これにより、おむつ1の製造過程において、肌側シート31,41の平均繊維密度と非肌側シート32,42の平均繊維密度とを調節するために製造装置の設定を変更する等の作業を必要とすることなく、肌側シート31,41の平均繊維密度を非肌側シート32,42の平均繊維密度よりも低くすることができる。
また、肌側シート31,41と非肌側シート32,42との間に挟まれた伸縮性不織布33,43の平均繊維密度を、肌側シート31,41の平均繊維密度及び非肌側シート32,42の平均繊維密度よりも低くすることにより、肌側シート31,41と非肌側シート32,42との間において繊維間の隙間が増えて、熱の通り道を作ることができる。これにより、肌側シート31,41と非肌側シート32,42との間に熱が溜まりにくくなり、おむつ1の装着性が良好となる。
なお、必ずしも肌側シート31,41の平均繊維密度が非肌側シート32,42の平均繊維密度よりも低く、伸縮性不織布33,43の平均繊維密度が肌側シート31,41の平均繊維密度及び非肌側シート32,42の平均繊維密度よりも低い必要はなく、少なくとも肌側シート31,41の平均繊維密度と非肌側シート32,42の平均繊維密度とが異なっていればよい。
仮に、肌側シート31,41と非肌側シート32,42とが同じ柔軟性を有している場合には、一方のシート部材の動きに他方のシート部材が追従しやすくなるため、各シート部材における変形の自由度が少なくなるおそれがある。しかしながら、肌側シート31,41と非肌側シート32,42とにおいて平均繊維密度に差をつけることにより、一方のシート部材の動きに他方のシート部材が追従しにくく、着用者の身体の凹凸に合わせて各シート部材が独立して自由自在に変形しやすくなる。これにより、おむつ1のフィット性が向上し、おむつ1の装着性を良好にすることができる。
本実施形態では、肌側シート31,41の平均繊維密度が非肌側シート32,42の平均繊維密度よりも低い場合について説明したが、反対に、非肌側シート32,42の平均繊維密度が肌側シート31,41の平均繊維密度よりも低い場合については、第2実施形態として後述する。
(複数の接合部241,242及び皺について)
次に、複数の接合部241,242、及び隣り合う接合部241,242の間に形成される皺について、図2、図5A及び図5B、並びに図6A及び図6Bを参照して説明する。
図5Aは第2接合部242の形成時の様子を説明する説明図であり、図5Bは第2接合部242の形成直後における自然状態の第2点在領域Yの断面模式図である。図6Aは厚さ方向における第2点在領域Yの断面模式図、図6Bは比較例に係るおむつの厚さ方向における前身頃部及び後身頃部の断面模式図である。
図2に示すように、前身頃部30及び後身頃部40はそれぞれ、複数の第1接合部241が点在する第1点在領域Xと、複数の第2接合部242が点在する第2点在領域Yと、を有している。
具体的には、第1点在領域Xは、前身頃部30のうち吸収性本体10が厚さ方向に重ねられた領域、及び後身頃部40のうち吸収性本体10が厚さ方向に重ねられた領域であって、複数の第1接合部241が点在する領域である。第2点在領域Yは、前身頃部30のうち第1点在領域X、上端領域300、及び脚回り領域25の一部を構成する領域を除いた領域、ならびに後身頃部40のうち第1点在領域X、上端領域400、及び脚回り領域25の一部を構成する領域を除いた領域であって、複数の第2接合部242が点在する領域である。
複数の第1接合部241は、肌側シート31,41、伸縮性不織布33,43、及び非肌側シート32,42に対して超音波振動及び圧力を加えて超音波接合された部分である。第1接合部241は、略同一の大きさの略長方形状に形成されており、横方向に沿って直立した当該略長方形を45°傾けたものと、−45°傾けたものが規則正しくそれぞれ配置されている。複数の第1接合部241は、肌側シート31,41、伸縮性不織布33,43、及び非肌側シート32,42を厚さ方向に接合しつつ、吸収性本体10の過剰な収縮を抑制して、尿等の***物が外部に漏れるのを防いでいる。
複数の第2接合部242は、複数の第1接合部241と同様に、肌側シート31,41、伸縮性不織布33,43、及び非肌側シート32,42に対して超音波振動及び圧力を加えて超音波接合された部分である。第2接合部242は、略同一の大きさの円形状に形成されており、第2点在領域Yにおいて等間隔に略均一に分布している。
本実施形態では、第1接合部241及び第2接合部242は、その形成方法が同様であり、また、隣り合う第1接合部241の間に形成される皺、及び隣り合う第2接合部242の間に形成される皺についても、その形成方法が同様であるため、以下では、第2接合部242(第2点在領域Y側)を例に挙げて説明する。さらに、前身頃部30における第2接合部242の構成と後身頃部40における第2接合部242の構成とは同様であるため、図5A、図5B、及び図6Aでは前身頃部30側のみを示している。
図5Aに示すように、肌側シート31、伸縮性不織布33、及び非肌側シート32を厚さ方向に重ね合わせた積層体L1を、アンビルM1と超音波ホーンM2との間に挟んで超音波振動による溶着作業を行うことで、第2接合部242を形成する。なお、このとき、伸縮性不織布33は、横方向及び上下方向に伸長させた状態、すなわち伸縮性を発現していない状態である。
アンビルM1は、凸部M11及び凹部M12を有しており、すなわち表面が凹凸状であり、回転ドラムD1の外周面に取り付けられている。本実施形態では、アンビルM1が取り付けられた回転ドラムD1は、積層体L1の肌側に設置されている。したがって、アンビルM1の凸部M11は、積層体L1の肌側に向かって突出している。超音波ホーンM2は、表面が平らであり、本実施形態では、積層体L1の非肌側に設置されている。
回転ドラムD1と超音波ホーンM2との間に積層体L1が搬送され、回転ドラムD1が回転することにより(図5Aにおいて矢印Rで示す)アンビルM1と超音波ホーンM2との間に積層体L1が挟まれた状態となる。この状態において、超音波ホーンM2は積層体L1を介してアンビルM1に押し当てられ、超音波が出力される。これにより、積層体L1は、アンビルM1の凸部M11と超音波ホーンM2との間において超音波振動を受けながら厚さ方向に圧縮されて肌側シート31、伸縮性不織布33、及び非肌側シート32が互いに溶着し、第2接合部242が形成される。このとき、積層体L1では、アンビルM1の凸部M11によって圧縮される部分の両側が、アンビルM1の凹部M12内へ向かって盛り上がる。
本実施形態では、伸縮性不織布33がポリオレフィンを含有しているため、肌側シート31及び非肌側シート32との溶着性(接合性)を向上させることができる。特に、肌側シート31及び非肌側シート32がそれぞれ、ポリオレフィン系の繊維であるPP繊維の不織布であり、伸縮性不織布33に含有されている伸長性繊維がポリオレフィン系樹脂のポリプロピレン(PP)であるため、溶着時の溶融においてより強固に溶着される。また、伸縮性繊維がポリウレタンであることにより、伸縮性不織布33に上下方向及び横方向への伸縮性を与えることができる。
図5Bに示すように、溶着後における自然長の第2点在領域Yでは、伸縮性不織布33が収縮して(図5Bにおいて矢印で示す)、隣り合う第2接合部242の間の非接合部243において肌側シート31が肌側へ向かって湾曲して突出すると共に、非肌側シート32が非肌側へ向かって湾曲して突出して皺が形成される。このとき、図5B及び図6Aに示すように、伸縮性不織布33は、伸縮性繊維と比べて収縮性の低い伸長性繊維が厚さ方向に突出することにより、非接合部243における肌側シート31と非肌側シート32との間で厚さ方向に膨らんだ状態となる。
ここで、図6Bに示す比較例に係るおむつについて説明する。このおむつの前身頃部及び後身頃部では、厚さ方向における肌側シート91と非肌側シート92との間に伸縮性フィルム93が配置されている。そして、本実施形態に係るおむつ1と同様に、肌側シート91、伸縮性フィルム93、及び非肌側シート92が複数の接合部911によって厚さ方向に接合(溶着)されている。
隣り合う接合部911の間の非接合部912では、伸縮性フィルム93が収縮すると、本実施形態と同様に肌側シート91が肌側に向かって湾曲して突出すると共に、非肌側シート92が非肌側に向かって湾曲して突出して皺が形成される。しかしながら、本実施形態と異なり、非接合部912において、肌側シート91と伸縮性フィルム93との間、及び非肌側シート93と伸縮性フィルム93との間に、それぞれ隙間が生じてしまう。そのため、例えば肌側シート91が着用者の肌に接触した場合、図6Bにおいて矢印で示したように、肌側シート91が伸縮性フィルム93側に向かって押し潰されて、皺が凹んでしまう可能性がある。
一方、本実施形態に係るおむつ1では、非接合部243において形成された皺の内部にて、伸縮性不織布33に含まれる伸長性繊維が厚さ方向に突出して膨らんでいるため、当該膨らみによって肌側シート31及び非肌側シート32が支持されている。そのため、肌側シート31や非肌側シート32が着用者の肌や着衣に接触したような場合であっても、形成された皺が容易に凹んでしまうことが抑制され、皺の形状を維持することができる。
また、比較例における伸縮性フィルム93のように、伸縮性を発現するシート部材の剛性が高い場合には、当該シート部材が着用者の脚(肌)に当たったり擦れたりして着用者が違和感を覚えやすい。しかしながら、本実施形態では、柔軟性を有する伸縮性不織布33を用いており、さらに、伸縮性不織布33の厚さ方向への膨らみがクッションの役割を担うことにより、肌当たりが良くなり装着性を向上させることができる。
本実施形態では、第2接合部242を形成する際に、前身頃部30及び後身頃部40(図5Aにおける積層体L1)の肌側の面がそれぞれ、複数の凸部M11及び複数の凹部M12を有するアンビルM1によって押圧されている。そのため、厚さ方向において、肌側シート31の突出した頂部と第2接合部242のうちの最も薄い薄肉部242aとの間の平均距離が、非肌側シート32の突出した頂部と当該薄肉部242aとの間の平均距離よりも長くなっている。
ここで、厚さ方向における「平均距離」について説明する。図6Aに示すように、左側の非接合部243Lにおいて形成された皺と、右側の非接合部243Rにおいて形成された皺とは、厚さ方向の突出量(突出高さ)が異なっている。すなわち、隣り合う第2接合部242の間に形成される皺の大きさは一定ではない。
より具体的には、厚さ方向において、左側の非接合部243Lにおける肌側シート31の突出した頂部N1と薄肉部242aとの間の距離H1、及び右側の非接合部243Rにおける肌側シート31の突出した頂部N2と薄肉部242aとの間の距離H2は同じではない(H1≠H2)。同様に、厚さ方向において、左側の非接合部243Lにおける非肌側シート32の突出した頂部n1と薄肉部242aとの間の距離h1、及び右側の非接合部243Rにおける非肌側シート32の突出した頂部n2と薄肉部242aとの間の距離h2は同じではない(h1≠h2)。
したがって、肌側シート31の突出した頂部と薄肉部242aとの間の距離を複数箇所で測定して平均した距離と、非肌側シート32の突出した頂部と薄肉部242aとの間の距離を複数箇所で測定して平均した距離と、を比較している。
また、図6Aに示すように、第2接合部242は、横方向(又は上下方向)の両端部における厚みが中央部における厚みよりも厚い場合がある。すなわち、第2接合部242の厚みは、横方向(又は上下方向)において一定でない場合がある。そのため、厚みが最も薄い部分(図6Aでは中央部)を薄肉部242aとして、当該薄肉部242aを基準として厚さ方向の距離(図6Aにおける距離H1,H2,h1,h2)を測定している。なお、各皺における頂部N1,N2,n1,n2は、隣り合う第2接合部242の間の横方向の中央及び上下方向の中央である交点部分である。
厚さ方向において、肌側シート31の突出した頂部と薄い薄肉部242aとの間の平均距離が、非肌側シート32の突出した頂部と当該薄肉部242aとの間の平均距離よりも長いとは、非肌側シート32の非肌側への平均突出量よりも肌側シート31の肌側への平均突出量の方が多いことを示している。これにより、前身頃部30及び後身頃部40の肌側においてクッション性が向上し、着用時における着用者への肌当たりが良好になる。また、前身頃部30及び後身頃部40の肌側では、非肌側よりも着用者の肌との間に隙間が生じやすくなるため、当該隙間を介して空気が外部(非肌側)へ逃げやすくなり、おむつ1の通気性を向上させることができる。
===第2実施形態===
次に、本発明の第2実施形態にかかるおむつについて、図7A及び図7B、図8A及び図8B、ならびに図9を参照して説明する。
図7A及び図7B、図8A及び図8B、ならびに図9において、第1実施形態に係るおむつ1の構成について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図7Aは本実施形態に係るおむつの厚さ方向における肌側シート310,410の断面模式図、図7Bは厚さ方向における非肌側シート320,420の断面模式図である。図8Aは本実施形態に係るおむつの第2接合部242の形成時の様子を説明する説明図であり、図8Bは第2接合部242の形成直後における自然状態の第2点在領域Yの断面模式図である。図9は、本実施形態に係るおむつの厚さ方向における第2点在領域Yの断面模式図である。
なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、前身頃部30における第2接合部242の構成と後身頃部40における第2接合部242の構成とは同様であるため、図8A、図8B、及び図9では前身頃部30側のみを示している。
本実施形態にかかるおむつでは、肌側シート310,410の繊維密度と非肌側シート320,420の繊維密度との関係が第1実施形態にかかるおむつ1と異なっている。具体的には、第1実施形態では、肌側シート31,41の繊維密度が非肌側シート32,42の繊維密度よりも低かったのに対して、本実施形態では、図7A及び図7Bに示すように、非肌側シート320,420の繊維密度が肌側シート310,410の繊維密度よりも低くなっている。
このように、おむつの外部に面する非肌側シート320,420の繊維密度を、着用者の肌に直接触れる肌側シート310,410の繊維密度よりも低くすることによって肌側シート310,410よりも非肌側シート320,420の方が多くの隙間を繊維間に有することになる。これにより、非肌側において熱の通り道ができやすくなり、放熱性が良好となるため、おむつの装着性を向上させることができる。
なお、ここでいう「繊維密度」とは、第1実施形態と同様に、肌側シート310,410及び非肌側シート320,420のそれぞれにおける「平均の繊維密度」のことをいう。
また、本実施形態では、図8Aに示すように、第2接合部242を形成する際に、積層体L2の非肌側の面が、凸部M11及び凹部M12を有するアンビルM1によって押圧される。すなわち、肌側シート310、伸縮性不織布330、及び非肌側シート320を溶着する際、積層体L2の肌側に超音波ホーンM2が設置されており、積層体L2の非肌側にアンビルM1が取り付けられた回転ドラムD1が設置されている。したがって、本実施形態では、超音波ホーンM2は、積層体L2の非肌側から超音波を出力する。
図8Bに示すように、溶着後における自然長の第2点在領域Yでは、厚さ方向において、肌側シート310の肌側への平均突出量よりも非肌側シート320の非肌側への平均突出量の方が多い。すなわち、第1実施形態と異なり、厚さ方向において、非肌側シート320の突出した頂部と接合部242のうちの薄肉部242aとの間の平均距離が、肌側シート310の突出した頂部と当該薄肉部242aとの間の平均距離よりも長くなっている。
なお、図9に示すように、本実施形態においても、隣り合う接合部242の間に形成される皺の大きさは一定ではなく、厚さ方向において、左側の非接合部243Lにおける肌側シート310の突出した頂部N3と薄肉部242aとの間の距離H3、及び右側の非接合部243Rにおける肌側シート310の突出した頂部N4と薄肉部242aとの間の距離H4は同じではない(H3≠H4)。同様に、厚さ方向において、左側の非接合部243Lにおける非肌側シート320の突出した頂部n3と薄肉部242aとの間の距離h3、及び右側の非接合部243Rにおける非肌側シート320の突出した頂部n4と薄肉部242aとの間の距離h4は同じでない(h3≠h4)。
第1実施形態と反対に、厚さ方向において、肌側シート310の肌側への平均突出量よりも非肌側シート320の非肌側への平均突出量の方が多いため、肌側においては着用者の肌に密着させて吸熱しやすくなり、非肌側においては各シート部材間に溜まった熱をおむつの外部に放出しやすくなる。これにより、おむつの放熱性を向上させることができる。
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
上記の実施形態では、複数の第1接合部241及び複数の第2接合部242や端部接合領域30e,40eにおける接合はそれぞれ、超音波溶着による接合手段を用いたがこれに限られない。例えば、熱溶着や融着等の熱や圧力を加えるその他の接合手段を用いてもよい。
上記の実施形態では、上端領域300,400のうち複数の糸ゴム30a,40aが配置された領域では伸縮性不織布33,43が配置されていなかったがこれに限られない。例えば、上端領域300,400に、複数の糸ゴム30a,40a及び伸縮性不織布33,43の両方を配置してもよいし、伸縮性不織布33,43のみを配置してもよい。
上記の実施形態では、複数の第1接合部241及び複数の第2接合部242の2種類の接合部が前身頃部30及び後身頃部40のそれぞれに設けられていたがこれに限られない。例えば、1種類の接合部によって各シート部材が接合されていてもよいし、3種類以上の接合部によって各シート部材が接合されていてもよい。また、接合部の形状自体も、特に制限はない。
上記の実施形態では、外周面に凹凸を有するギアによって伸縮性不織布33,43に延伸処理を施して伸縮力を発現させていたがこれに限られない。例えば、外周面に凹凸を有さないドラム等によって伸縮性不織布33,43に延伸処理を施して伸縮力を発現させてもよい。
上記の実施形態では、伸縮性不織布33,43,330について、弾性を有する熱可塑性エラストマー製繊維として、ポリウレタン系エラストマーを用い、非弾性を有する熱可塑性樹脂性繊維として、PPを用いたがこれに限られない。弾性を有する熱可塑性エラストマー製繊維としてポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等であってもよく、非弾性を有する熱可塑性樹脂繊維として、PE、エチレン―αオレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂を含む繊維であってもよい。
上記の実施形態では、肌側シート31,41,310,410及び非肌側シート32,42,320,420は、PP繊維のスパンボンド繊維を用いたがこれに限られない。ポリエチレン(PE)、ポリエステル、ポリアミド等の繊維からなるスパンボンド不織布、SMS不織布、エアスルー不織布等を用いてもよい。繊維の構造については、単一の熱可塑性樹脂からなる単独繊維に限るものではなく、例えば、芯材がPPで鞘材がPEの芯鞘構造の複合繊維であってもよく、これら以外の構造の繊維であってもよい。ただし、単一繊維からなる不織布であることが好ましく、肌側シート31,41,310,410、非肌側シート32,42,320,420、及び伸縮性不織布33,43,330に用いる熱可塑性樹脂繊維が同じ繊維であることが最も好ましい。同じ成分からなる繊維が溶融されて固化されることによって、溶着がより強固になるからである。
上記の実施形態に係るおむつ1は、大人を着用対象としたが、これに限定されるものではなく、新生児、乳児、幼児等の子供を着用対象としてもよい。