JP6754744B2 - マイクロ波アシスト記録用磁気記録媒体、磁気記録装置および磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Description
以上説明したように、高密度記録化、磁化の熱的安定性および書き込み容易性の3つの特性を満たすことはきわめて困難である。このことは、磁気記録のトリレンマと呼ばれ、今後更なる高密度記録化を進めるうえで大きな課題となっている。
まずサーボヘッドにより、磁性層に形成されているサーボパターンを読み取る(即ち、サーボ信号を再生する)。サーボパターンを読み取ることにより得られた値に応じて、ドライブ内で磁気ヘッドの位置を制御する。これにより、データ情報の記録および/または再生のためにドライブ内で磁気記録媒体を搬送する際、磁気記録媒体の位置が変動しても、磁気ヘッドがデータトラックに追従する精度を高めることができる。例えば、テープ状の磁気記録媒体(即ち磁気テープ)をドライブ内で搬送してデータ情報の記録および/または再生を行う際、磁気テープの位置が磁気ヘッドに対して幅方向に変動しても、ヘッドトラッキングサーボを行うことにより、ドライブ内で磁気テープの幅方向における磁気ヘッドの位置を制御することができる。こうして、ドライブにおいて磁気テープに正確にデータ情報を記録すること、および/または、磁気テープに記録されているデータ情報を正確に再生すること、が可能となる。
非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、
上記磁性層は、30.0GHz以上の固有強磁性共鳴周波数および35%以下の異方性磁界分布を示す、マイクロ波アシスト記録用磁気記録媒体、
に関する。
磁気記録媒体と、
マイクロ波アシスト記録用磁気ヘッドと、
を含み、
上記磁気記録媒体は、非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、
上記磁性層は、30.0GHz以上の固有強磁性共鳴周波数および35%以下の異方性磁界分布を示す、磁気記録装置、
に関する。
磁性層にサーボパターンを有する磁気記録媒体の製造方法であって、
上記マイクロ波アシスト記録用磁気記録媒体の磁性層にマイクロ波アシスト記録によりサーボパターンを形成することを含む、磁気記録媒体の製造方法、
に関する。
本発明の一態様は、非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、 上記磁性層は30.0GHz以上の固有強磁性共鳴周波数および35%以下の異方性磁界分布を示すマイクロ波アシスト記録用磁気記録媒体に関する。
X軸方向に対し0°でサンプルに+800kA/mで磁界を印加して飽和させ、印加磁界をゼロとし、X軸方向およびY軸方向の残留磁化を測定する。次いで、サンプルを10°回転させた状態で+8kA/mで磁界を印加し、磁界をゼロとし、サンプルを0°に戻し、X軸方向およびY軸方向の残留磁化を測定する。更にサンプルを10°回転させた状態で前回印加した強度に+8kA/m加えた磁界を印加し、磁界をゼロとし、サンプルを0°に戻し、X軸方向およびY軸方向の残留磁化を測定する。
以上の操作を、印加磁界が+800kA/mに達するまで繰り返し、印加磁界に対するY軸方向の残留磁界の差分の値をグラフにプロットする。このグラフにおいて、連続する20個のプロットのデータを用いて2次曲線近似により2次曲線を得る。連続する20個のプロット中の印加磁界(横軸)の値が小さい側から数えて10個目または11個目のプロットが、グラフ中のプロットにおける極大値となるように、上記20個のプロットを選択する。得られた2次曲線において極大値となる磁界(Hpeak)をピークとし、ピークの1/2となる磁界(高磁界側を「High」、低磁界側を「Low」と記載する。)を計算する。異方性磁界分布は、下記式:
異方性磁界分布(%)={(High−Low)/Hpeak}×100
により算出される。測定対象が磁気テープの場合には、サンプルにおいて、このサンプルを切り出した磁気テープにおいて長手方向であった方向をX軸方向とし、幅方向であった方向をY軸方向とする。磁気ディスク等のその他の形態の磁気記録媒体から切り出したサンプルについては、任意の方向をX軸方向およびY軸方向とする。
また、上記のようにプロットして得られたグラフに極大値が2つ以上ある場合には、それぞれの極大値に関して上記方法によって2次曲線を得て、得られた2次曲線を用いて上記の通り異方性磁界分布を算出する。
また、マイクロ波アシスト記録においては、高密度記録化に対応するために、より短時間のマイクロ波磁界の印加によって磁化反転をアシストして磁化パターンを形成できることが望まれる。また、サーボパターンの形成についても、より短時間のマイクロ波磁界の印加によって磁化反転をアシストして磁化パターンを形成できることは、サーボパターンの形成工程の短時間化の観点から望ましい。以上の点に関し、異方性磁界分布の値が小さい磁性層は、固有強磁性共鳴周波数の分布がシャープであると考えられる。固有強磁性共鳴周波数の分布がシャープであると、磁性層のマイクロ波の吸収効率が高まると推察される。35%以下の異方性磁界分布を示す磁性層は、マイクロ波吸収効率が高いため短時間のマイクロ波磁界の印加によって磁化反転をアシストして磁化パターンを形成することができると考えられる。
以上の通り、本発明の一態様にかかるマイクロ波アシスト記録用磁気記録媒体は、磁性層が30.0GHz以上の固有強磁性共鳴周波数および35%以下の異方性磁界分布を示すことにより、マイクロ波アシスト記録によりデータ情報を記録するために、および/または、サーボパターンを形成するために、好適な塗布型磁気記録媒体である。
(固有強磁性共鳴周波数)
上記磁性層が示す固有強磁性共鳴周波数は、30.0GHz以上である。30.0GHz以上の固有強磁性共鳴周波数を示す磁性層は、マイクロ波磁界によって磁化反転をアシストすることにより磁化パターンを形成することができる。磁化パターンの形成とは、一態様ではデータ情報の記録であり、他の一態様ではサーボパターンの形成である。また、30.0GHz以上の固有強磁性共鳴周波数を示す磁性層は熱揺らぎの影響を受け難い傾向があり熱的安定性に優れるため、磁性層が30.0GHz以上の固有強磁性共鳴周波数を示すことは、記録の保持性を向上するために好ましい。上記磁性層が示す固有強磁性共鳴周波数は、30.0GHz以上であって、例えば50.0GHz以下または40.0GHz以下であることができる。ただし、高い固有強磁性共鳴周波数を示す磁性層ほど記録の保持性に優れるため、磁性層の固有強磁性共鳴周波数は、50.0GHz超であっても40.0GHz超であってもよい。また、上記磁性層は、2以上の異なる固有強磁性共鳴周波数を示すこともでき、2以上の異なる固有共鳴周波数を示す単層の磁性層であることもできる。上記磁性層が2以上の異なる固有強磁性共鳴周波数を示す場合、2以上の異なる固有強磁性共鳴周波数の1つ以上が30.0GHz以上である。後述するようにマイクロ波アシスト記録によって単層の磁性層に2以上の異なる情報を記録(即ち多重記録)することを可能にする観点からは、単層の磁性層が示す2以上の固有強磁性共鳴周波数の少なくとも2つが30.0GHz以上であることが好ましく、単層の磁性層が示す固有強磁性共鳴周波数のより多くが30.0GHz以上であることが好ましく、単層の磁性層が示すすべての固有強磁性共鳴周波数が30.0GHz以上であることが最も好ましい。上記磁性層が示す固有強磁性共鳴周波数の詳細については、更に後述する。
上記磁性層は、35%以下の異方性磁界分布を示す。35%以下の異方性磁界分布を示す磁性層は、マイクロ波の吸収効率が高く、短時間のマイクロ波磁界の印加により磁化反転をアシストして磁化パターンを形成することを可能にすることに寄与すると推察される。マイクロ波の吸収効率の更なる向上の観点からは、上記磁性層が示す異方性磁界分布は、33%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることが更に好ましい。また、上記磁性層が示す異方性磁界分布は、例えば10%以上であることができ、12%以上または15%以上であることもできる。異方性磁界分布の値が小さい磁性層ほどマイクロ波の吸収効率は高いと考えられるため、上記磁性層の異方性磁界分布は、10%を下回ることもできる。また、上記磁性層は、2以上の異なる異方性磁界分布を示すこともでき、2以上の異なる異方性磁界分布を示す単層の磁性層であることもできる。上記磁性層が2以上の異なる異方性磁界分布を示す場合、2以上の異なる異方性磁界分布の1つ以上が35%以下である。後述するようにマイクロ波アシスト記録によって単層の磁性層に2以上の異なる情報を記録(即ち多重記録)する際に短時間でのマイクロ波磁界の印加によりマイクロ波アシスト記録を可能にする観点からは、単層の磁性層が示す2以上の異方性磁界分布の少なくとも2つが35%以下であることが好ましく、単層の磁性層が示す異方性磁界分布のより多くが35%以下であることが好ましく、単層の磁性層が示すすべての異方性磁界分布が35%以下であることが最も好ましい。
上記マイクロ波アシスト記録用磁気記録媒体は塗布型磁気記録媒体であり、強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する。強磁性粉末としては、六方晶フェライト、ε−酸化鉄等の金属酸化物の粉末、金属粉末、FePt、NdFeB等の合金粉末、またはFe16N2等の窒化物の粉末等を挙げることができる。磁性層が示す固有強磁性共鳴周波数は、一般に、磁性層に含まれる強磁性粉末の保磁力Hcが高いほど、高くなる傾向がある。強磁性粉末の保磁力Hcは、一態様では、210kA/m以上であることが好ましい。強磁性粉末の保磁力Hcは、例えば20000kA/m以下であることができる。ただし、20000kA/m超であってもよい。一般に、保磁力Hcが高い強磁性粉末ほど、異方性定数Kuが高く、熱的安定性(記録の保持性)の観点から好ましい傾向がある。強磁性粉末の保磁力Hcは、振動試料型磁束計等の公知の磁気特性測定装置により求めることができる。
粉末を、透過型電子顕微鏡を用いて撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントして粉末を構成する粒子の写真を得る。得られた粒子の写真から目的の粒子を選びデジタイザーで粒子の輪郭をトレースし粒子(一次粒子)のサイズを測定する。一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。
以上の測定を、無作為に抽出した500個の粒子について行う。こうして得られた500個の粒子の粒子サイズの算術平均を、粉末の平均粒子サイズとする。上記透過型電子顕微鏡としては、例えば日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いることができる。また、粒子サイズの測定は、公知の画像解析ソフト、例えばカールツァイス製画像解析ソフトKS−400を用いて行うことができる。
本発明および本明細書において、強磁性粉末およびその他の粉末についての平均粒子サイズとは、上記方法により求められる平均粒子サイズをいうものとする。
(1)針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粒子を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、
(2)板状または柱状(ただし、厚みまたは高さが板面または底面の最大長径より小さい)の場合は、その板面または底面の最大長径で表され、
(3)球形、多面体状、不特定形等であって、かつ形状から粒子を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。
そして、上記粒子サイズの定義(1)の場合、平均粒子サイズは平均長軸長とも呼ばれ、同定義(2)の場合、平均粒子サイズは平均板径とも呼ばれる。同定義(3)の場合、平均粒子サイズは平均直径(または平均粒径もしくは平均粒子径)とも呼ばれる。
上記磁性層は、強磁性粉末とともに結合剤を含む。結合剤とは、一種以上の樹脂であり、樹脂はホモポリマーであってもコポリマー(共重合体)であってもよい。磁性層に含まれる結合剤としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等を共重合したアクリル樹脂、ニトロセルロース等のセルロース樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルキラール樹脂等から選択した単独の樹脂を使用することができ、または複数の樹脂を混合して使用することもできる。これらの中で好ましいものはポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂および塩化ビニル樹脂である。これらの樹脂は、後述する非磁性層および/またはバックコート層においても結合剤として使用することができる。以上の結合剤については、特開2010−24113号公報の段落0029〜0031を参照できる。結合剤として使用される樹脂の平均分子量は、重量平均分子量として、例えば10,000以上200,000以下であることができる。なお本発明および本明細書における重量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)により測定され、標準ポリスチレン換算により求められる値をいうものとする。測定条件としては、下記条件を挙げることができる。
GPC装置:HLC−8120(東ソー社製)
カラム:TSK gel Multipore HXL−M(東ソー社製、7.8mmID(Inner diameter(内径))×30.0cm)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
磁性層は、必要に応じて一種以上の添加剤を含むことができる。添加剤の一例として、例えば、磁性層形成時、上記結合剤として使用可能な樹脂とともに硬化剤を使用することもできる。硬化剤は、一態様では加熱により硬化反応(架橋反応)が進行する化合物である熱硬化性化合物であることができ、他の一態様では光照射により硬化反応(架橋反応)が進行する光硬化性化合物であることができる。なお硬化剤は、磁性層形成工程の中で硬化反応が進行することにより、少なくとも一部は、結合剤等の他の成分と反応(架橋)した状態で磁性層に含まれ得る。好ましい硬化剤は、熱硬化性化合物であり、ポリイソシアネートが好適である。ポリイソシアネートの詳細については、特開2011−216149号公報の段落0124〜0125を参照できる。硬化剤は、磁性層形成用組成物中に、結合剤100.0質量部に対して、例えば0〜80.0質量部、磁性層の強度向上の観点からは好ましくは50.0〜80.0質量部の量で添加し使用することができる。
次に非磁性層について説明する。
上記マイクロ波アシスト記録用磁気記録媒体は、非磁性支持体上に直接磁性層を有していてもよく、非磁性支持体と磁性層との間に非磁性粉末と結合剤を含む非磁性層を有していてもよい。非磁性層に含まれる非磁性粉末は、無機粉末でも有機粉末でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機粉末としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の粉末が挙げられる。これらの非磁性粉末は、市販品として入手可能であり、公知の方法で製造することもできる。その詳細については、特開2010−24113号公報の段落0036〜0039を参照できる。
上記マイクロ波アシスト記録用磁気記録媒体は、非磁性支持体の磁性層を有する側とは反対側にバックコート層を有することもできる。バックコート層には、カーボンブラックおよび/または無機粉末が含有されていることが好ましい。バックコート層形成のための結合剤および各種添加剤については、磁性層、非磁性層およびバックコート層に関する公知技術を適用できる。
非磁性支持体(以下、単に「支持体」とも記載する。)としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリアミドが好ましい。
これらの支持体には、あらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理等を行ってもよい。
非磁性支持体および各層の厚みについては、非磁性支持体の厚みは、好ましくは3.0〜80.0μmであり、より好ましくは3.0〜20.0μmであり、更に好ましくは3.0〜10.0μmである。
周波数Aのマイクロ波磁界を印加することにより磁化反転がアシストされる強磁性粉末(以下、「強磁性粉末α」という。);および
周波数Bのマイクロ波磁界を印加することにより磁化反転がアシストされる強磁性粉末(以下、「強磁性粉末β」という。)、
という二種の強磁性粉末が含まれる場合を例に説明する。固有強磁性共鳴周波数αは、強磁性粉末αによってもたらされ、固有強磁性共鳴周波数βは、強磁性粉末βによってもたらされるものとする。強磁性粉末αおよび強磁性粉末βは、通常、保磁力Hcが異なる強磁性粉末ロットから採取された強磁性粉末である。マイクロ波磁界は、磁化反転をアシストするために、磁化反転前の磁化方向と逆方向に印加される。マイクロ波磁界の周波数の値は、マイクロ波磁界の磁界強度に依存し、磁界強度を大きくするほど周波数は低くなる。強磁性粉末αと強磁性粉末βは、磁化反転がアシストされる周波数が異なるものとする。強磁性粉末αの磁化反転をアシストするためには、好ましくは固有強磁性共鳴周波数α以下、より好ましくは固有強磁性共鳴周波数αよりも低い周波数のマイクロ波磁界を印加する。強磁性粉末βの磁化反転をアシストするためには、好ましくは固有強磁性共鳴周波数β以下、より好ましくは固有強磁性共鳴周波数βよりも低い周波数のマイクロ波磁界を印加する。したがって、周波数Aは、固有強磁性共鳴周波数α以下であることが好ましく、αよりも低いことがより好ましい。周波数Bは、固有強磁性共鳴周波数β以下であることが好ましく、βよりも低いことがより好ましい。A≠Bであり、強磁性粉末αの磁化反転をアシストするために周波数Aのマイクロ波磁界を印加することによっては強磁性粉末βの磁化反転はアシストされず、強磁性粉末βの磁化反転をアシストするために周波数Bのマイクロ波磁界を印加することによっては強磁性粉末αの磁化反転はアシストされない。
以上の性質を利用することによって、単層の磁性層に異なる2情報(以下、「情報α」および「情報β」という。)を記録することができる。詳しくは、次の通りである。強磁性粉末αおよび強磁性粉末βを含む磁性層に「情報α」に対応する記録磁界を印加する際、強磁性粉末αの磁化反転をアシスト可能な周波数Aのマイクロ波磁界を印加すれば、強磁性粉末αの磁化反転がアシストされることにより、強磁性粉末αの磁化反転を起こして強磁性粉末αに情報αを記録することができる。ここでは強磁性粉末βの磁化反転はアシストされないため、強磁性粉末βには情報αは記録されない。一方、強磁性粉末αおよび強磁性粉末βを含む磁性層に「情報β」に対応する記録磁界を印加する際、強磁性粉末βの磁化反転をアシスト可能な周波数Bのマイクロ波磁界を印加すれば、強磁性粉末βの磁化反転がアシストされることにより、強磁性粉末βの磁化反転を起こして強磁性粉末βに情報βを記録することができる。ここでは強磁性粉末αの磁化反転はアシストされないため、強磁性粉末αには情報βは記録されない。こうして、単層の磁性層(同一磁性層)に、異なる2情報を多重記録することができる。
上記の例では、異なる2情報を多重記録する例を説明した。ただし多重記録される情報は、2情報に限定されず、3情報、4情報、または5情報以上(例えば5〜10情報)であってもよい。異なる周波数のマイクロ波磁界を印加してマイクロ波アシスト記録を行うことにより、単層の磁性層に、最大で、この磁性層が示す固有強磁性共鳴周波数の数と同数の情報を多重記録することができる。これに対し、金属薄膜型磁気記録媒体は、蒸着等により磁性層を形成するという製造上の理由から、2以上の固有強磁性共鳴周波数を示す単層の磁性層を形成することは困難である。そのため、同一の金属薄膜型磁気記録媒体に異なる2以上の情報をマイクロ波アシスト記録によって多重記録するためには、異なる固有強磁性共鳴周波数を示す二層以上の重層磁性層を設けることになる。これに対し、塗布型磁気記録媒体によれば、上記のようにマイクロ波アシスト記録によって単層の磁性層への多重記録が可能である。これにより、例えば、単層の磁性層に異なるデータ情報を多重記録することが可能となる。また、例えば、単層の磁性層の同一領域に異なるヘッドトラッキングサーボ情報を記録することが可能となる。また、例えば、単層の磁性層の同一領域または異なる領域に、マイクロ波アシスト記録によってサーボパターンを形成し、かつマイクロ波アシスト記録によってデータ情報を記録することが可能となる。
磁性層、非磁性層またはバックコート層を形成するための組成物を製造する工程は、通常、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程を含むことができる。個々の工程はそれぞれ二段階以上に分かれていてもかまわない。各種成分は、どの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の成分を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、結合剤を混練工程、分散工程、および分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。上記マイクロ波アシスト記録用磁気記録媒体を製造するためには、従来の公知の製造技術を一部または全部の工程に用いることができる。例えば、混練工程では、オープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダ等の強い混練力をもつものを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については、特開平1−106338号公報および特開平1−79274号公報を参照できる。また、各層形成用の組成物を分散するために、分散ビーズとしてガラスビーズを用いることができる。また、分散ビーズとしては、高比重の分散ビーズであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、およびスチールビーズも好適である。これら分散ビーズの粒径と充填率は最適化して用いることができる。分散機は公知のものを使用することができる。各層形成用組成物を、塗布工程に付す前に公知の方法によってろ過してもよい。ろ過は、例えばフィルタろ過によって行うことができる。ろ過に用いるフィルタとしては、例えば孔径0.01〜3μmのフィルタ(例えばガラス繊維製フィルタ、ポリプロピレン製フィルタ等)を用いることができる。
本発明の一態様は、磁気記録媒体とマイクロ波アシスト記録用磁気ヘッドとを含む磁気記録装置であって、上記磁気記録媒体は非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、上記磁性層は30.0GHz以上の固有強磁性共鳴周波数および35%以下の異方性磁界分布を示す磁気記録装置に関する。
以下、上記磁気記録装置について、更に詳細に説明する。
上記磁気記録装置に含まれる磁気記録媒体は、非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、上記磁性層は30.0GHz以上の固有強磁性共鳴周波数および35%以下の異方性磁界分布を示す。即ち、上記磁気記録装置に含まれる磁気記録媒体は、上記の本発明の一態様にかかるマイクロ波アシスト記録用磁気記録媒体である。その詳細は、先に記載した通りである。上記磁気記録装置によれば、塗布型磁気記録媒体である本発明の一態様にかかるマイクロ波アシスト記録用磁気記録媒体に、マイクロ波アシスト記録によってデータ情報を記録することができる。
上記磁気記録装置に含まれるマイクロ波アシスト記録用磁気ヘッドは、特に限定されるものではなく、マイクロ波アシスト記録が可能なものであればよい。マイクロ波アシスト記録によれば、記録すべき情報に対応する記録磁界を磁性層に印加する際、記録磁界の印加によっては磁化反転しない強磁性粉末の磁化反転をマイクロ波磁界を印加してアシストすることにより、上記強磁性粉末を磁化反転させて情報を記録することができる。このような磁化反転のアシストは、磁性層に含まれる強磁性粉末を磁気共鳴状態とすることによって実現することができる。そのためには、磁性層が示す固有強磁性共鳴周波数と同じ周波数またはその近傍の周波数のマイクロ波磁界を、磁性層に印加することが好ましい。磁性層が示す固有強磁性共鳴周波数を「X」GHzとすると、(X−15.0)GHz〜XGHzの範囲の周波数のマイクロ波磁界を印加することがより好ましく、(X−15.0)GHz以上XGHz未満の周波数のマイクロ波磁界を印加することが更に好ましい。また、単層の磁性層が30.0GHz以外の2以上の異なる固有強磁性共鳴周波数を示す場合、多重記録をより良好に行う観点からは、異なる固有強磁性共鳴周波数は、5.0GHz以上(例えば5.0GHz〜10.0GHz)、異なることが好ましい。
本発明の一態様は、磁性層にサーボパターンを有する磁気記録媒体の製造方法であって、本発明の一態様にかかるマイクロ波アシスト記録用磁気記録媒体の磁性層にマイクロ波アシスト記録によりサーボパターンを形成することを含む。
表1に示す10種の強磁性粉末を用いて、下記の磁気記録媒体サンプルの作製および評価を行った。各強磁性粉末の作製方法は後述する。
表1に示す保磁力Hcは、振動試料型磁束計(東英工業社製)を用い、印加磁界1194kA/m(15kOe)で測定した。
表1に示す強磁性粉末の異方性磁界分布は、アクリル樹脂製のサンプル瓶を用いて、振動試料型磁束計(東英工業社製)により、先に記載の方法により求めた。アクリル樹脂は反磁性を有するため、反磁性補正を行って異方性磁界分布の値を求めた。
以下において、「BaFe」は六方晶バリウムフェライト粉末、「SrFe」は六方晶ストロンチウムフェライト粉末、「ε酸化鉄」はε−酸化鉄粉末を示す。
以下の方法により、表2または表3に示す各磁気記録媒体サンプルを作製した。
表1に示す各強磁性粉末を、結合剤含有組成物である紫外線硬化性樹脂組成物(Dow社製フォトレジストMICROPOSIT S1813G)に添加し分散させて磁性層形成用組成物を調製した。調製した磁性層形成用組成物を、熱酸化膜付きシリコン基板上にスピンコートにより塗布し(乾燥後の厚み:150nm)、塗布面に対して垂直方向に磁界を印加し垂直配向処理を施した後、乾燥させた。乾燥後、マスク露光および現像を行い矩形にパターニングし、磁性層を形成した。
表3に示す各磁気記録媒体サンプルは、表2に記載の2種類の強磁性粉末を1:1(質量比)の割合で使用して作製した。
各磁気記録媒体サンプルについて、以下の記録を行うためのサンプル、固有強磁性共鳴周波数を測定するためのサンプル、および異方性磁界分布の測定を行うためのサンプルの合計3つのサンプルを作製した。
各磁気記録媒体サンプルの磁性層上に、スパッタ法によりSiO2膜を厚み100nmで製膜した後、リフトオフ法により厚み5nmのTi膜と厚み300nmのAu膜が積層された平面導波路を形成した。
こうして平面導波路が形成された磁気記録媒体サンプルの概略図を、図3に示す。図3に示す磁気記録媒体サンプル2は、磁性層20をシリコン基板21上に有し、平面導波路22が形成されている。
ベクトルネットワークアナライザとしてアンリツ社製MS4647Bを用いて、ケーブルおよびプローバとして非磁性部材を用いて、各磁気記録媒体サンプルの磁性層の固有強磁性共鳴周波数を測定した。後述の吸収ピーク周波数も、同様に測定した。固有強磁性共鳴周波数は、磁性層の厚み方向のシリコン基板側をマイナス方向、他方をプラス方向として、プラス方向に1034.8kA/m(13kOe)の磁界を印加し磁性層の磁化を飽和させた後、印加磁界をゼロにしたときにベクトルネットワークアナライザにより測定される磁性層の吸収ピーク周波数として求めた。求められた固有強磁性共鳴周波数を表2または表3に示す。表3に示す各磁気記録媒体サンプルでは、表3に記載の2つの固有強磁性共鳴周波数が確認された。
各磁気記録媒体サンプルから測定用サンプルを切り出し、磁性層の異方性磁界分布を、振動試料型磁束計(東英工業社製)を用いて先に記載の方法により求めた。求められた磁性層の異方性磁界分布を、表2または表3に示す。表3に示す各磁気記録媒体サンプルでは、表3に記載の2つの異方性磁界分布の値が得られた。ここでの測定において、測定用サンプルのサイズは、3cm×3cmとした。ただし測定用サンプルのサイズは、振動試料型磁束計によって残留磁化が測定できるサイズであればよい。
磁気記録媒体サンプルに、このサンプルに含まれる強磁性粉末の保磁力以下の磁界強度の外部磁界を印加すると、外部磁界と磁性層中の強磁性粉末の磁化方向が同一方向の場合は吸収ピーク周波数が高くなり、逆方向の場合は低くなる。即ち、磁気記録媒体サンプルに含まれる強磁性粉末の保磁力以下の外部磁界を印加することによって固有強磁性共鳴周波数から吸収ピーク周波数がどのように変化するかにより、強磁性粉末の磁化方向(即ち、磁化反転が起こるか否か)を確認することができる。そこで、表2に示す各磁気記録媒体サンプルの磁性層の磁化をプラス方向に磁界を印加して飽和させた後、159.2kA/m(2kOe)の磁界強度の磁界(記録磁界)をマイナス方向に印加することによって、磁化反転が起こるか否かを確認した。
その結果、表2中、記録結果の欄に「外部磁界のみで磁化反転」と記載された磁気記録媒体サンプルでは、強磁性粉末の一部で磁化反転が起こり、固有強磁性共鳴周波数よりも高い周波数にも吸収ピーク周波数が確認された。即ち、外部磁界の印加のみによって磁化反転が起きた。
これに対して、表2中、記録結果の欄に「外部磁界のみで磁化反転」と記載された磁気記録媒体サンプル以外の磁気記録媒体サンプルでは、強磁性粉末の磁化反転が起こらず、固有強磁性共鳴周波数よりも低い周波数にのみ吸収ピーク周波数が確認された。
次に、外部磁界のみでは磁化反転しなかった磁気記録媒体サンプルにおいて、磁性層の磁化をプラス方向に磁界を印加して飽和させた後、159.2kA/m(2kOe)の磁界強度の磁界(記録磁界)をマイナス方向に印加した状態で、表2に示す周波数のマイクロ波磁界を増幅器を通して表2に示す時間(単位:ns(ナノ秒))、印加した。その後、磁性層の吸収ピーク周波数を測定した。表2中、記録結果の欄に「磁化反転」と記載されているものは、磁気記録媒体サンプルの磁性層の固有強磁性共鳴周波数より高い周波数が測定された。このことから、159.2kA/m(2kOe)の磁界強度の記録磁界(外部磁界)の印加のみでは磁化反転(情報の記録)が起こらなかった磁気記録媒体サンプルにおいて、マイクロ波磁界の印加によって磁化反転がアシストされ、磁化反転が起こった(情報が記録された)ことが確認できる。
これに対し、表2中、記録結果の欄に「磁化反転せず」と記載されているものは、磁性層の吸収ピーク波長を測定したところ、磁気記録媒体サンプルの磁性層の固有強磁性共鳴周波数と同じ値の周波数が測定された。このことから、表2に記載のマイクロ波磁界印加時間では磁化反転を起こすことができなかったことが確認できる。
なお上記の例では、磁性層の厚み方向に記録磁界を印加しているため、記録方式は垂直記録である。
以上の評価結果に基づき、各磁気記録媒体サンプルのマイクロ波アシスト記録特性を、以下の基準で評価した。評価結果を表2に示す。
A:マイクロ波磁界印加時間50ns以下でマイクロ波アシスト記録が可能
B:マイクロ波磁界印加時間50ns以下ではマイクロ波アシスト記録不可
C:外部磁場のみで情報記録が可能
表3に示す磁気記録媒体サンプルA−7において、磁性層の磁化をプラス方向に磁界を印加して飽和させた後、159.2kA/m(2kOe)の磁界強度の磁界(記録磁界)をマイナス方向に印加したところ、固有強磁性共鳴周波数(38.5GHzおよび48.0GHz)よりも低い周波数である34.5GHzおよび44.2GHzという2つの吸収ピーク周波数が確認された。この結果から、磁気記録媒体サンプルA−7では、159.2kA/m(2kOe)の磁界強度の記録磁界の印加のみでは磁化反転(情報の記録)は起こらなかったことが確認できる。
次に、磁気記録媒体サンプルA−7において、磁性層の磁化をプラス方向に磁界を印加して飽和させた後、159.2kA/m(2kOe)の磁界強度の磁界(記録磁界)をマイナス方向に印加した状態で、周波数34.5GHzのマイクロ波磁界を増幅器を通して表3に示す時間、印加した。その後、磁性層の吸収ピーク周波数を測定したところ、吸収ピーク周波数が、周波数42.5GHzと44.2GHz近傍に確認された。吸収ピーク周波数42.5GHzは、強磁性粉末No.8によってもたらされた固有強磁性共鳴周波数(38.5GHz)が変化した吸収ピーク周波数であり、吸収ピーク周波数44.2GHzは、強磁性粉末No.10によってもたらされた固有強磁性共鳴周波数(48.0GHz)であると考えられる。このことから、マイクロ波磁界の印加によって、強磁性粉末No.8が選択的に磁化反転したこと、即ち強磁性粉末No.8に選択的に情報が記録されたことが確認できる。また、磁気記録媒体サンプルNo.A−7に、上記マイクロ波磁界の周波数とは異なる周波数のマイクロ波磁界を印加して磁化反転をアシストすることにより、強磁性粉末No.10を選択的に磁化反転させることができる。このように強磁性粉末No.10を選択的に磁化反転させる際、強磁性粉末No.8を選択的に磁化反転させた際と異なる磁界(記録磁界)を印加して情報を記録することにより、同一の単層の磁性層に、異なる情報を記録することができる。
以上の通り、マイクロ波アシスト記録によって、同一の単層の磁性層に多重記録を行うことができることも示された。こうして異なるデータ情報を多重記録することができる。また、こうして多重記録される情報の少なくとも1つをヘッドトラッキングサーボ情報とすることにより、即ち、規格により定められた形状および配置でサーボパターンを形成することにより、マイクロ波アシスト記録により形成されたサーボパターンを磁性層に有する磁気記録媒体を製造することができる。
これに対し、表3に示す磁気記録媒体サンプルB−7に対して、上記の磁気記録サンプルA−7に対して行った方法と同様に、表3に示す印加時間でマイクロ波磁界を印加して多重記録試験を行ったところ、マイクロ波磁界の印加時間100nsでは、磁気記録媒体サンプルA−7について行われた上記の多重記録試験と同様に、吸収ピーク周波数が、周波数42.5GHzと44.2GHz近傍に確認された。このことから、強磁性粉末No.7が選択的に磁化反転したことが確認できる。他方、マイクロ波磁界の印加磁界を50nsまたは25nsとした場合には、強磁性粉末No.7についても強磁性粉末No.9についても、磁化反転は確認されなかった。
一方、表3に示す磁気記録媒体サンプルB−8は、159.2kA/m(2kOe)の磁界強度の記録磁界の印加のみで、表3に示す固有強磁性共鳴周波数25.8GHzより高い周波数、および表3に示す固有強磁性共鳴周波数28.8GHzより高い周波数に、それぞれ吸収ピーク周波数が確認された。即ち、外部磁界の印加のみで磁化反転が起きたことが確認された。
以上の結果を、各磁気記録媒体サンプルのマイクロ波アシスト記録特性を先に記載した基準により評価した結果とともに、表3に示す。
(1)強磁性粉末No.1〜6(BaFe)の作製
酸化物換算で表4に示す原料組成になるように、B2O3に対応するH3BO3、Al2O3に対応するAl(OH)3、BaOに対応するBaCO3と、Fe2O3とFeを置換する元素Nbに対応するNb2O5、Feを置換する元素Znに対応するZnOを所定量秤量し、ミキサーにて混合したものを容量2Lの白金ルツボに仕込み、溶融後、表4に示す出湯量で水冷ロール上に連続出湯し、水冷ロールにて冷却し非晶質体を得た。出湯量は、ガラス粘性に応じてノズル径および加圧力で調整した。
得られた非晶質体600gを電気炉に仕込み、表4に示す結晶化温度まで3時間で昇温して、5時間保持して六方晶フェライトを結晶化させた。次いで六方晶フェライトを含む結晶化物を乳鉢で粗粉砕し、3Lのポットミルに入れ、直径5mmZrO2ボール5kgと純水1.2kgとともにボールミルにて4時間粉砕処理を行った後、粉砕液をボールと分離し5Lステンレスビーカーに入れた。粉砕液を8質量%酢酸水溶液中で液温85℃で2時間反応させた後、デカンテーション洗浄を繰り返すことにより不要なガラス成分を除去し、乾燥させて六方晶フェライト粉末を得た。得られた粉末についてはX線回折分析を行い、六方晶フェライト(バリウムフェライト)であることを確認した。
SrCO3を1725g、H3BO3を666g、Fe2O3を1332g、Al(OH)3を52g、CaCO3を238gとなるよう秤量し、ミキサーにて混合し原料混合物を得た。
得られた原料混合物を、白金ルツボで溶融温度1380℃で溶解し、融液を撹拌しつつ白金ルツボの底に設けた出湯口を加熱し、融液を約6g/秒で棒状に出湯させた。出湯液を水冷双ロールで急冷圧延して非晶質体を作製した。
得られた非晶質体280gを電気炉に仕込み、645℃の結晶化温度まで昇温し、同温度で5時間保持し六方晶フェライト粒子を析出(結晶化)させた。
次いで六方晶フェライト粒子を含む結晶化物を乳鉢で粗粉砕し、ガラス瓶に直径1mmのジルコニアビーズ1000gと1質量%酢酸水溶液を800ml加えてペイントシェーカーにて3時間分散処理を行った後、分散液をビーズと分離させステンレスビーカーに入れた。分散液を液温100℃で3時間処理した後、遠心分離器で沈澱させてデカンテーションを繰り返して洗浄し、炉内温度110℃の加熱炉内で6時間乾燥させて六方晶フェライト粉末を得た。得られた粉末についてはX線回折分析を行い、六方晶フェライト(ストロンチウムフェライト)であることを確認した。
原料混合物の調製において、ZnOを14gおよびNb2O5を22g添加した点以外は上記(2)と同様に行い、六方晶フェライト粉末を得た。得られた粉末についてはX線回折分析を行い、六方晶フェライト(ストロンチウムフェライト)であることを確認した。
純水90gに、硝酸鉄(III)9水和物8.3g、硝酸ガリウム(III)8水和物1.3g、硝酸コバルト(II)6水和物190mg、および硫酸チタン(IV)150mgを溶解させたものを、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、大気雰囲気中、雰囲気温度25℃の条件下で、25質量%のアンモニア水溶液4.0gを添加し、そのまま2時間撹拌した。得られた溶液に、クエン酸1gを純水9gに溶解させて得たクエン酸水溶液を加え、1時間撹拌した。撹拌後に沈殿した粉末を遠心分離によって採集し、純水で洗浄し、炉内温度80℃の加熱炉内で乾燥させた。
乾燥させた粉末に純水800gを加えて再度粉末を水に分散させて分散液を得た。得られた分散液を液温50℃に昇温し、撹拌しながら25質量%アンモニア水溶液を40g滴下した。50℃の液温を保ったまま1時間撹拌した後、テトラエトキシシラン(TEOS;tetraethoxysilane)14mLを滴下し、24時間撹拌して反応溶液を得た。得られた反応溶液に、硫酸アンモニウム50gを加え、沈殿した粉末を遠心分離によって採集し、純水で洗浄し、炉内温度80℃の加熱炉内で24時間乾燥させ、強磁性粉末の前駆体を得た。
得られた強磁性粉末の前駆体を、大気雰囲気下、炉内温度1030℃の加熱炉内に装填し、4時間の熱処理を施した。
熱処理した強磁性粉末の前駆体を、4モル/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に投入し、液温を70℃に維持して24時間撹拌することにより、熱処理した強磁性粉末の前駆体から不純物であるケイ酸化合物を除去した。
その後、遠心分離処理により、ケイ酸化合物を除去した強磁性粉末を採集し、純水で洗浄を行い、強磁性粉末を得た。
得られた強磁性粉末の組成を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−OES;Inductively Coupled Plasma−Optical Emission Spectrometry)により確認したところ、Ga、CoおよびTi置換型ε−酸化鉄(ε−Ga0.24Co0.05Ti0.05Fe1.66O3)であった。また、粉末X線回折(XRD;X‐ray diffraction)を行い、XRDパターンのピークから、得られた強磁性粉末は、α相およびγ相の結晶構造を含まないε相の単相の結晶構造を有することが確認された。
純水90gに、硝酸鉄(III)9水和物8.9g、硝酸ガリウム(III)8水和物1.3gを溶解させたものを、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、大気雰囲気中、雰囲気温度25℃の条件下で、25質量%のアンモニア水溶液4.0gを添加し、そのまま2時間撹拌した。得られた溶液に、クエン酸1gを純水9gに溶解させて得たクエン酸水溶液を加え、1時間撹拌した。撹拌後に沈殿した粉末を遠心分離によって採集し、純水で洗浄し、炉内温度80℃の加熱炉内で乾燥させた。
乾燥させた粉末に純水800gを加えて再度粉末を水に分散させて分散液を得た。得られた分散液を液温50℃に昇温し、撹拌しながら25質量%アンモニア水溶液を40g滴下した。50℃の液温を保ったまま1時間撹拌した後、テトラエトキシシラン(TEOS)14mLを滴下し、24時間撹拌して反応溶液を得た。得られた反応溶液に、硫酸アンモニウム50gを加え、沈殿した粉末を遠心分離によって採集し、純水で洗浄し、炉内温度80℃の加熱炉内で24時間乾燥させ、強磁性粉末の前駆体を得た。
得られた強磁性粉末の前駆体を、大気雰囲気下、炉内温度980℃の加熱炉内に装填し、4時間の熱処理を施した。
熱処理した強磁性粉末の前駆体を、4モル/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に投入し、液温を70℃に維持して24時間撹拌することにより、熱処理した強磁性粉末の前駆体から不純物であるケイ酸化合物を除去した。
その後、遠心分離処理により、ケイ酸化合物を除去した強磁性粉末を採集し、純水で洗浄を行い、強磁性粉末を得た。
得られた強磁性粉末の組成を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−OES;Inductively Coupled Plasma−Optical Emission Spectrometry)により確認したところ、Ga置換型ε−酸化鉄(ε−Ga0.24Fe1.76O3)であった。また、粉末X線回折(XRD)を行い、XRDパターンのピークから、得られた強磁性粉末は、α相およびγ相の結晶構造を含まないε相の単相の結晶構造を有することが確認された。
Claims (12)
- 非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、
前記磁性層は、30.0GHz以上50.0GHz以下の固有強磁性共鳴周波数および10%以上35%以下の異方性磁界分布を示す、マイクロ波アシスト記録用磁気記録媒体。 - 前記強磁性粉末は、金属酸化物粉末である、請求項1に記載のマイクロ波アシスト記録用磁気記録媒体。
- 前記金属酸化物粉末は、フェライト粉末である、請求項2に記載のマイクロ波アシスト記録用磁気記録媒体。
- 前記磁性層は2以上の異なる固有強磁性共鳴周波数を示す単層の磁性層であり、
前記2以上の異なる固有強磁性共鳴周波数の1つ以上が30.0GHz以上50.0GHz以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロ波アシスト記録用磁気記録媒体。 - 前記磁性層は2以上の異なる異方性磁界分布を示す単層の磁性層であり、
前記2以上の異なる異方性磁界分布の1つ以上が10%以上35%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のマイクロ波アシスト記録用磁気記録媒体。 - 磁気記録媒体と、
マイクロ波アシスト記録用磁気ヘッドと、
を含む磁気記録装置であって、
前記磁気記録媒体は、非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、
前記磁性層は、30.0GHz以上50.0GHz以下の固有強磁性共鳴周波数および10%以上35%以下の異方性磁界分布を示す、磁気記録装置。 - 前記強磁性粉末は、金属酸化物粉末である、請求項6に記載の磁気記録装置。
- 前記金属酸化物粉末は、フェライト粉末である、請求項7に記載の磁気記録装置。
- 前記磁性層は2以上の異なる固有強磁性共鳴周波数を示す単層の磁性層であり、
前記2以上の異なる固有強磁性共鳴周波数の1つ以上が30.0GHz以上50.0GHz以下である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の磁気記録装置。 - 前記マイクロ波アシスト記録用磁気ヘッドは、前記磁性層に2以上の異なる周波数のマイクロ波磁界を印加することを含むマイクロ波アシスト記録により、前記磁性層に2以上の異なる情報を記録する、請求項9に記載の磁気記録装置。
- 前記磁性層は2以上の異なる異方性磁界分布を示す単層の磁性層であり、
前記2以上の異なる異方性磁界分布の1つ以上が10%以上35%以下である、請求項6〜10のいずれか1項に記載の磁気記録装置。 - 磁性層にサーボパターンを有する磁気記録媒体の製造方法であって、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のマイクロ波アシスト記録用磁気記録媒体の磁性層にマイクロ波アシスト記録によりサーボパターンを形成することを含む、磁気記録媒体の製造方法。
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