JP6753591B1 - 樹脂組成物、熱膨張性のシート状又はパテ状の耐火製品及び樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

樹脂組成物、熱膨張性のシート状又はパテ状の耐火製品及び樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熱膨張性黒鉛と樹脂成分とを含む樹脂組成物を用いて形成した耐火製品が、火災の際に、より優れた延焼防止効果を期待できるものになる、簡便で経済性に優れる実用性に高い、新規な熱膨張性黒鉛の改質技術を提供すること。【解決手段】改質された膨張性黒鉛と樹脂成分とを含む樹脂組成物であって、前記樹脂成分100質量部を基準にして、前記改質された膨張性黒鉛を5〜300質量部含み、前記改質された膨張性黒鉛が、熱膨張性黒鉛原料を予め加熱処理することで、カサ体積倍率が、加熱前の原料のカサ体積に比べて1.05〜3.0倍に増加しており、且つ、加熱処理済のカサ体積が増加した状態の熱膨張性黒鉛にポリイソシアナートが付与された状態のものである樹脂組成物、熱膨張性のシート状又はパテ状の耐火製品、及び樹脂組成物の製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、熱膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物において、樹脂組成物によって形成した製品の燃焼時における膨張特性の改善を、樹脂組成物の構成成分である熱膨張性黒鉛の改質によって達成した、樹脂組成物、熱膨張性のシート状又はパテ状の耐火製品及び樹脂組成物の製造方法に関する。
樹脂組成物に熱膨張性黒鉛を配合することによって、該樹脂組成物が、燃焼時に膨張する特性をもつものになることは既に知られている。この性質を利用し、熱膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物からシート状の成形体を得、該成形体を建具の部品などに装着することで火災の際における延焼防止効果を期待した、耐火シートなどの各種の製品が提供されている。また、熱膨張性黒鉛を含有した樹脂組成物をパテ状の製品に仕上げて、住宅等の外部と内部の隙間に挿入し、火の通過を防ぐ用途にも用いられている。これ等の用途に期待されている熱膨張性黒鉛の最大の性能は、熱膨張性黒鉛を含有してなる樹脂組成物によって得られる製品の燃焼時の膨張特性である。
通常、火災時の温度は500℃以上になるので、樹脂組成物を構成している樹脂成分やその他有機物は大部分が燃焼消失してしまう。そして、極少量の炭化物、リン化合物、窒素化合物が複合化されて膨張した残渣物(膨張体)を形成する。この残渣物(膨張体)の形状、特に体積が延焼防止や火の通過阻止に極めて大きな要素となる。即ち、本分野における製品に対し習慣的(一般的)に求められている膨張特性である。
しかしながら、熱による膨張は体積の増加を意味するが、この性質を開放状態で評価するのは極めて困難である。即ち、樹脂組成物を用いて得られたシート状の成形体やパテ等の製品の膨張特性についての比較を、空間的制限の無い開放状態で評価するのは、極めて難しい。その理由は、開放状態で熱膨張をさせた場合、膨張体は不定形の塊となり、正確な体積の測定ができないからである。
このため、本分野でよく用いられている膨張特性の測定法としては、例えば、下記のような方法がある。4方向と底部が閉じられて上方のみが開放となっている上方開放型の容器の底部に、評価対象の成形体のシートを置き、電気炉で、500℃ないし600℃で所定の時間燃焼を実施し、冷却後に容器から残渣物(膨張体)を取り出し、体積の増加を調べて評価を行う。評価方法は、試験前の評価対象の成形体の厚みと燃焼後の高さの比から求めるのが一般的である。この場合は、評価対象の成形体の比重、即ち、重さ(質量)については考察外となる。他の評価方法としては、上記容器の底辺に置く評価対象の成形体の厚みはできるだけ均一にするが、評価の基準は、試験前の重さを一定にし、得られた膨張体の高さ、及び、高さの違いによる体積の増加を評価する場合もある。両者の視点の違いは、評価対象の成形体の試験前の容積と、残渣物(膨張体)の容積との比を、厚みを基に評価するか、或いは、試験に供した評価対象である成形体の同一質量を基にした膨張体の容積の比較を重視するかの点である。
特に、多様な材料の使用が可能な樹脂組成物は、その配合によって比重が大きく変わる。例えば、樹脂が塩化ビニル系の場合とオレフィン系とではその比重が大きく異なる。このため、本発明では、評価対象の成形体についての熱による膨張特性を、下記の方法で評価した。
先に述べた4方向と底部が閉じられている上方開放型の容器の底部に、評価対象のシート状などの成形体を一定の重さとなる量で置き、所定の加熱条件で得られた容器から取り出した膨張体の体積の比較で、評価対象である成形体の形成に用いた樹脂組成物における膨張特性の評価を行った。従って、測定値の単位は、ml/gとして表示した。例えば、評価対象の成形体の形成物(樹脂組成物)の加熱試験前の質量が1.48gであり、容器の底辺寸法が21mm×46mmで、その高さが50mmとして、加熱後に得られた膨張体の高さの測定値が34mmであれば、その膨張倍率は下記式で求められるように、22.2ml/gとする。
(2.1×4.6×3.4)/1.48=22.2ml/g
上記膨張倍率に与える最大の因子は、樹脂組成物を構成する熱膨張性黒鉛に依存する。市販されている熱膨張性黒鉛は、主に天然物として採掘された黒鉛や熱分解黒鉛原料を、洗浄、粉砕後に、硫酸、硝酸などの無機酸と過塩素酸、過酸化水素などの酸化剤で処理して黒鉛の層間に酸を挿入している。酸化剤により黒鉛の六員環が部分的にカチオン化され、このカチオンに酸根のアニオンが配位する。この挿入された物質をインターカレートと称し、加熱により急激にガス化して体積の膨張を引き起す。このインターカレートの物質の種類や量が大きな因子となる。この事由により、市販されている熱膨張性黒鉛の特性表示に、体積の膨張開始温度とガスの量が記載されている。また、樹脂組成物の製造上の面から粒度の範囲も記載されている。熱膨張性黒鉛の組成内容が全く同じでも、粒度が異なると膨張倍率に大きく影響することはよく知られており、また、一般的に粒度の大きい程、膨張倍率は大きくなる。粒度を粒径として表現する場合も有る。
熱膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物から得られる成形体やパテ等の製品の目的・用途によっては、火災時の膨張開始温度が重要視される場合もある。例えば、火災の初期の段階で膨張を生起させる必要がある場合は、膨張開始温度を低くしなければならない。このような目的のためには、ガス化の温度を下げるためにインターカレートの物質に低分子の有機酸等が良いとされている(非特許文献1参照)。また、ペルオキソ硫酸アンモニウムと過酸化水素を添加した濃硫酸で黒鉛を処理すると、熱膨張性黒鉛の膨張開始温度を200℃以下にできるという文献もある(特許文献1参照)。
他方、樹脂組成物を製造する場合に使用する樹脂成分の溶融温度が高い時には、含有する熱膨張性黒鉛の膨張開始温度をその溶融温度より高くしなければならない。特許文献2では、この目的のために、アルカリ土類金属化合物を重合体100部に5〜30重量%の割合で含有させれば、膨張開始温度を300℃以上に高くすることができるとしている。また、特許文献3では、過酸化水素を含む酸化剤で処理することで260℃以上の高い膨張開始温度の熱膨張性黒鉛が得られるとしている。同様の目的で、特許文献4では、硫酸と酸化剤の反応溶液にリン酸を添加することで、膨張開始温度を250℃以上にすることができるとしている。
特開平11−268908号公報 特開2007−63434号公報 特開2012−193053公報 特開平10−33010号公報
炭素材料学会誌、総説、豊田昌宏、「膨張黒鉛とその応用」、2008[No.233]、160頁
しかしながら、これ等の文献はいずれも、熱膨張性黒鉛の膨張開始温度の変化を指向し、この点を技術課題としている。これに対して、熱膨張性黒鉛の重要な特性でもある、熱膨張性黒鉛を含む樹脂組成物から得られる成形体の膨張体積、即ち、本発明が問題としている膨張特性の増加についての先行文献は見出されていない。
一般的に膨張特性の増加の因子として考えられているのは、樹脂組成物の原料に用いられる熱膨張性黒鉛の層間にインターカレートされている物質の種類と量、及び、インターカレートの物質の単位質量当たりのガス体積である。
膨張特性の増加にかかわる他の因子としては、加熱により発生したガスの放出経過と、樹脂組成物の燃焼炭化の進行状況との相関性が考えられる。即ち、本発明が課題としている膨張特性の増加を達成するためには、熱膨張性黒鉛を含む樹脂組成物から得られる成形体から燃焼によって発生したガスを、できるだけホールドしながら燃焼炭化が進行するのが望ましいと考えられる。本願の出願人らが提案した特許第5992589号公報、特許第6228658号公報に記載しているように、例えば、樹脂成分として塩化ビニル樹脂を用いる場合は、燃焼によって塩化ビニル樹脂が可塑剤を消失しながら固化すると共に、塩化ビニル樹脂の塩素と水素が脱塩化水素反応を起こして架橋と炭化をするので、膨張特性の増加を達成するためには、これ等の諸変化とガスの発生経過が重要な要素になると考えられる。
本発明は、膨張性黒鉛と樹脂成分とを含む樹脂組成物において、該樹脂組成物を用いて得られた火災の際における延焼防止効果を期待した各種の製品において、構成する熱膨張性黒鉛を改質することで、上記製品の膨張特性の向上を達成することを実現することを目的とする。本発明の目的は、簡便な方法で熱膨張性黒鉛を改質し、該熱膨張性黒鉛と樹脂成分とを含む樹脂組成物を用いて、火災の際における優れた延焼防止効果を期待した各種の製品を構成することで、従来製品に比べて膨張特性がより向上した耐火製品の提供を可能にすることである。本発明の主たる技術的な課題は、改質した膨張性黒鉛と樹脂成分とを含む樹脂組成物を用いて形成した耐火製品が、火災の際に、より優れた延焼防止効果を期待できるものになる、簡便で経済性に優れる実用性に高い、新規な熱膨張性黒鉛の改質技術を提供することである。
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、以下の樹脂組成物を提供する。
[1]改質された膨張性黒鉛と樹脂成分とを含む樹脂組成物であって、
前記樹脂成分100質量部を基準にして、前記改質された膨張性黒鉛を5〜300質量部含み、
前記改質された膨張性黒鉛が、熱膨張性黒鉛原料を予め加熱処理することで、下記式で求められるカサ体積倍率が、加熱前の原料のカサ体積に比べて1.05〜3.0倍に増加しており、且つ、加熱処理済のカサ体積が増加した状態の熱膨張性黒鉛にポリイソシアナートが付与された状態のものであることを特徴とする樹脂組成物。
カサ体積倍率
=加熱後の熱膨張性黒鉛のカサ体積/加熱前の熱膨張性黒鉛原料のカサ体積
上記した樹脂組成物の好ましい形態としては、下記の構成のものが挙げられる。
[2]前記改質された膨張性黒鉛の粒子の形態が、最大長が100〜1000μmの範囲内で、且つ、最大の厚みが5〜150μmの範囲内である上記[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記樹脂成分が、熱可塑性樹脂及び熱硬化樹脂から選ばれるいずれかの樹脂である上記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
また、本発明は、下記の熱膨張性のシート状又はパテ状の耐火製品を提供する。
[4]改質された膨張性黒鉛と樹脂成分とを含む樹脂組成物からなる成形物である、熱膨張性のシート状又はパテ状の耐火製品であって、
前記樹脂成分100質量部を基準にして、前記改質された膨張性黒鉛を5〜300質量部含み、
該改質された膨張性黒鉛が、熱膨張性黒鉛原料を予め加熱処理することで、下記式で求められるカサ体積倍率が、加熱前の原料のカサ体積に比べて1.05〜3.0倍に増加しており、且つ、加熱処理済のカサ体積が増加した状態の熱膨張性黒鉛にポリイソシアナートが付与された状態のものであることを特徴とする熱膨張性のシート状又はパテ状の耐火製品。
カサ体積倍率
=加熱後の熱膨張性黒鉛のカサ体積/加熱前の熱膨張性黒鉛原料のカサ体積
上記した熱膨張性のシート状又はパテ状の耐火製品の好ましい形態としては、下記の構成ものが挙げられる。
[5]前記改質された膨張性黒鉛の粒子の形態が、最大長が100〜1000μmの範囲で、且つ、最大の厚みが5〜150μmの範囲である上記[4]に記載の熱膨張性のシート状又はパテ状の耐火製品。
[6]前記樹脂成分が、熱可塑性樹脂及び熱硬化樹脂から選ばれるいずれかの樹脂である上記[4]又は[5]に記載の熱膨張性のシート状又はパテ状の耐火製品。
また、本発明は、下記の樹脂組成物の製造方法を提供する。
[7]改質工程で熱膨張性黒鉛原料を改質し、得られた改質された膨張性黒鉛と樹脂成分とを混合して、樹脂成分100質量部を基準にして、改質された膨張性黒鉛を5〜300質量部含む樹脂組成物を得る樹脂組成物の作製方法であって、
前記改質工程が、熱膨張性黒鉛原料を100℃〜250℃の温度で加熱処理し、加熱処理前に比べて加熱処理後の、下記式で求められるカサ体積倍率が1.05〜3.0倍になるように熱膨張性黒鉛原料の体積を増加させる体積の増加工程と、該体積の増加工程で、カサ体積を増加させた状態の加熱処理済の熱膨張性黒鉛に、常温下でポリイソシアナートを添加し、その後に130℃以下の温度に加温する、ポリイソシアナートの付与工程とを有することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
カサ体積倍率
=加熱後の熱膨張性黒鉛のカサ体積/加熱前の熱膨張性黒鉛原料のカサ体積
上記した樹脂組成物の製造方法の好ましい形態としては、下記の構成のものが挙げられる。
[8]前記ポリイソシアナートの付与工程で、前記加熱処理済の膨張性黒鉛100質量部に、ポリイソシアナートを1〜10質量部の範囲内で添加する上記[7]に記載の樹脂組成物の製造方法。
[9]前記加熱処理済の膨張性黒鉛の粒子の形態が、最大長が100〜1000μmの範囲で、且つ、最大の厚みが5〜150μmの範囲である上記[7]又は[8]に記載の樹脂組成物の製造方法。
本発明によれば、樹脂組成物中の膨張性黒鉛の含有比率を増加させることや、膨張性黒鉛の粒度を大きくすることなく、熱膨張性黒鉛に簡便な前処理を施すことで改質し、改質した膨張性黒鉛を含む樹脂組成物を用いて、火災の際における延焼防止効果を期待した各種の製品を形成することで、上記製品の膨張特性の向上を達成することを実現することができる。本発明が提供する熱膨張性黒鉛の改質技術によって提供される膨張性黒鉛を用いることで、樹脂組成物中における熱膨張性黒鉛の含有比率を高めた場合や、熱膨張性黒鉛の粒径を大きくした場合に生じる、樹脂成分への配合時の混合の操作が困難となり、均一にするのに長時間を要するといった問題を生じることはない。また、本発明が提供する熱膨張性黒鉛の改質技術によって提供される膨張性黒鉛を用いることで、粒径の大きい熱膨張性黒鉛を使用した場合に生じる、樹脂成分との混合時に、熱膨張性黒鉛が樹脂組成物の粘性抵抗によって粒子が細く裂けてしまい、目的の性能を発揮できないことが起こるといった基本性能にかかわる重大な問題が生じるといったこともない。さらに、熱膨張性黒鉛は非常に高価な材料であるので、樹脂組成物中における膨張性黒鉛の含有比率を高めることは、原料コスト的に不利であるのに対し、本発明の技術によれば、経済性に優れた樹脂組成物、該樹脂組成物を用いて形成した各種製品を提供することが可能になり、実用上の大きな課題である経済性の問題も解決できる。
3種の熱膨張性黒鉛の市販品について、それぞれ200℃で加熱を行った時の30分毎の質量の減少を示すグラフである。 3種の熱膨張性黒鉛の市販品について、190〜255℃の温度領域で加熱した時のカサ体積倍率の変化を示すグラフである。
以下、好ましい実施形態を挙げて本発明を詳細に説明する。本発明者らは、改質した熱膨張性黒鉛と樹脂成分とを含む樹脂組成物を用いて形成した耐火製品が、火災の際に、より優れた延焼防止効果を期待できるものになる、従来にない、簡便で経済性に優れる実用性に高い、新規な熱膨張性黒鉛の改質技術を提供するべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
まず、膨張性黒鉛を含む樹脂組成物からなる製品の、火災などによる燃焼時における膨張倍率、即ち膨張特性を高める手段としては、樹脂組成物中の熱膨張性黒鉛の含有比率を増加させるのが一般的である。また、樹脂組成物に含有させる熱膨張性黒鉛の粒度(以下、粒径と記す)が大きいと、膨張倍率を高めることが知られている。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、樹脂組成物中における熱膨張性黒鉛の含有比率を高めた場合や、熱膨張性黒鉛の粒径を大きくした場合は、配合時の混合の操作が困難となり均一にするのに長時間を要するという問題がある。さらに、粒径の大きい熱膨張性黒鉛を使用した場合は、樹脂成分と混合して樹脂組成物とする時に、熱膨張性黒鉛が樹脂組成物の粘性抵抗によって粒子が細く裂けてしまい、目的の性能を発揮できないこともあるという致命的な問題が生じることが懸念される。
上記した種々の問題点に対し、本発明者らは、熱膨張性黒鉛原料に簡便な前処理を施すことで、製品の膨張特性の向上を図ることができる新規の方法を見出した。具体的には、本発明者らが見出した、「熱膨張性黒鉛原料を予め加熱処理することで、カサ体積倍率が、加熱前の原料のカサ体積に比べて1.05〜3.0倍に増加しており、且つ、加熱処理済のカサ体積が増加した状態の熱膨張性黒鉛にポリイソシアナートが付与された状態のもの」とした本発明で規定する改質された膨張性黒鉛を用いることで、従来技術における種々の問題は一挙に解決できる。即ち、本発明で規定する改質された膨張性黒鉛を用いることで、通常の樹脂組成物の作製操作を用いて、リーズナブルなコストで、より膨張特性の優れた製品が容易に提供できるようになる。以下に、本発明を特徴づける改質された膨張性黒鉛について詳細に説明する。本発明では、本発明を構成する、熱膨張性黒鉛原料を加熱することで、加熱済の熱膨張性黒鉛のカサ体積倍率が1.05〜3.0倍と、原料に比べて若干体積が増加した状態の熱膨張性黒鉛のことを「膨張黒鉛」と呼ぶ。また、この加熱処理済の「膨張黒鉛」にポリイソシアナートを付与したものを「改質膨張性黒鉛」と呼ぶ。
本発明を特徴づけ、顕著な効果を実現できる改質された膨張性黒鉛は、下記の簡便な改質工程で熱膨張性黒鉛原料から容易に得ることができる。即ち、本発明を特徴づける熱膨張性黒鉛原料の改質工程では、まず、体積の増加工程で、熱膨張性黒鉛原料を100℃〜250℃の温度で加熱処理し、加熱処理前に比べて加熱処理後の、下記式で求められるカサ体積倍率が1.05〜3.0倍になるように熱膨張性黒鉛原料の体積を増加させて「膨張黒鉛」を得る。使用する熱膨張性黒鉛原料にもよるが、例えば、熱膨張性黒鉛原料を190℃〜230℃程度の温度で加熱処理することで、カサ体積倍率が1.05〜3.0倍の「膨張黒鉛」を得ることができる。
カサ体積倍率
=加熱後の熱膨張性黒鉛のカサ体積/加熱前の熱膨張性黒鉛原料のカサ体積
次に、ポリイソシアナートの付与工程で、上記体積の増加工程で、カサ体積を1.05〜3.0倍になるように増加させた状態の加熱処理済の熱膨張性黒鉛の「膨張黒鉛」に、常温下でポリイソシアナートを添加する。そして、その後に、130℃以下の温度に加温する、という極めて簡便な操作で得ることができる。この際の加温温度は、例えば、80℃〜100℃程度でよい。
次に、上記した本発明で規定する、樹脂組成物の構成材料として極めて有用な改質された膨張性黒鉛を見出すことに至った経緯について説明する。本発明者らの検討によれば、熱膨張性黒鉛原料を100〜250℃程度の比較的低温に加熱すると、黒鉛の層間が若干広がり、低倍率ながら個々の黒鉛粒子の体積の増加となる。本発明者らは、この点について、さらに詳細な検討を行うことで本発明の目的を達成できないかと考えた。そのためには、比較的低温で加熱することによって、どの程度、熱膨張性黒鉛原料が膨張したかを知る必要がある。
比較的低温での加熱で熱膨張性黒鉛の粒子に生じる程度の若干の体積の増加の測定法としては、理論的には、個々の黒鉛粒子の各層間の広がりを測定して算出して、その平均値を求めることが考えられる。しかし、この測定方法は現実的ではなく、極めて困難である。また、本発明が問題としていることは、このような個々の黒鉛粒子に現れるミクロ的な現象ではなく、樹脂組成物を構成する熱膨張性黒鉛原料における、比較的低温に加熱することで生じるマクロ的な挙動である。そこで、本発明の目的に叶った、しかも、極めて容易で且つ客観的な測定方法として、本発明では、カサ体積倍率を使用した。カサ体積倍率は、下記式で求められる、加熱前の熱膨張性黒鉛原料の採取サンプルのカサ体積と、加熱後に膨張した採取サンプルのカサ体積の比率である。それぞれのカサ体積は、メスシリンダーを用いれば簡単に計測できる。
カサ体積倍率
=加熱後の熱膨張性黒鉛のカサ体積/加熱前の熱膨張性黒鉛原料のカサ体積
このカサ体積倍率によって求められる値で1.05〜3.0倍程度の、比較的低温での加熱によって生じる熱膨張性黒鉛の低倍率の体積増加の因子は、熱膨張性黒鉛の製造時に、黒鉛粒子の表面に付着した酸や酸化物、或いは水分等が比較的低温の加熱で気散することに依ると推定される。図1は、3種の熱膨張性黒鉛の市販品についての、それぞれ200℃で加熱を行い、30分毎に黒鉛をサンプリングして測った時の重量の減少曲線を示す。図1に示されている通り、いずれの熱膨張性黒鉛でも、初期の30分間域で1〜2%の重量減少を示すが、その後の180分間の加熱では進行しないことから、黒鉛の層間にインターカレートされた酸のガス化とは異なると判断される。
図2のグラフは、図1と同様の3種の熱膨張性黒鉛の市販品について、190〜255℃の温度領域で加熱した時のカサ体積倍率の変化を示したものである。図2のグラフの縦軸のカサ体積倍率は、図2のグラフの横軸に示した各温度表示の測定点で30分間ホールドの条件で加熱して、それぞれの測定点でのカサ体積を測定し、(加熱後の熱膨張性黒鉛のカサ体積/加熱前(室温)の熱膨張性黒鉛原料のカサ体積)で求めた値である。図2に示されている通り、いずれの市販品も、この温度域では比較的に緩やかなカサ体積倍率の増加曲線であった。本発明の樹脂組成物を構成する、樹脂成分と混合させるための、カサ体積倍率の値が1.05〜3.0倍である、カサ体積が若干増加した状態の加熱処理済の熱膨張性黒鉛は、100℃〜250℃の温度領域で、例えば、例示した市販品の熱膨張性黒鉛原料の場合では、図2のグラフから、熱膨張性黒鉛原料を190℃〜230℃程度の温度で加熱処理することで容易に得ることができる。
本発明の樹脂組成物の技術的特徴は、樹脂組成物を構成する、樹脂成分と混合させるための熱膨張性黒鉛が、加熱処理済の、カサ体積倍率が1.05〜3.0倍である体積が若干増加した熱膨張性黒鉛(「膨張黒鉛」)であること、且つ、この体積が若干増加した状態の加熱処理済の「膨張黒鉛」にポリイソシアナートが付与された状態のものであることにある。先に述べた通り、加熱することで熱膨張性黒鉛の体積が若干増加させた状態とすると、この操作で黒鉛粒子の層間が広がった状態になる。本発明では、この体積が若干増加した状態の「膨張黒鉛」に、液状のポリイソシアナートを添加して付与し、このような構成の改質させた膨張性黒鉛(改質膨張性黒鉛)を樹脂組成物の構成成分としたことを特徴とする。本発明者らの検討によれば、「膨張黒鉛」のカサ体積倍率は、1.05〜3.0倍、熱膨張性黒鉛原料にもよるが、例えば、1.1〜2.0倍程度の「膨張黒鉛」を用いることで、良好な効果が得られる。
上記のように構成したことで、添加されたポリイソシアナートは、「膨張黒鉛」粒子の広がった割れ目に付着した状態になる。ここで、「膨張黒鉛」に添加され付与されたポリイソシアナートの量、より詳しくは、黒鉛粒子表面に濡れ密着した量と、黒鉛粒子の層間の中まで含浸した量の割合は不明であるが、上記した方法で得られた、体積が若干増加した「膨張黒鉛」にポリイソシアナートが付与された状態の改質された膨張性黒鉛(改質膨張性黒鉛)を、本発明の樹脂組成物を構成する膨張性黒鉛として配合すると、該樹脂組成物を用いて得た成形体は、極めて高い膨張性能を示すものになることが確認され、本発明に至った。本発明者らの検討によれば、本発明の樹脂組成物と比較して、樹脂組成物全体としての各成分の使用量を同じにして、未加熱の状態の熱膨張性黒鉛原料に、ポリイソシアナートを添加した構成の比較用の樹脂組成物の場合や、ポリイソシアナートを樹脂成分に添加して均一に分散させた後、この樹脂成分に、本発明で使用する加熱済の「膨張黒鉛」を添加して均一混合した構成の比較用の樹脂組成物の場合は、いずれの場合も、特に優れた膨張特性を示さなかった。これらのことから、本発明の樹脂組成物の新規な構成に対する有効性が確認された。この点については後述する。
本発明の樹脂組成物に用いる膨張性黒鉛原料は、工業的に入手可能な市販品であればいずれのものでもよく、特に制限はない。即ち、天然黒鉛、熱分解黒鉛、キャッシュ黒鉛などを原料として、酸と酸化剤の使用で黒鉛の層間に酸成分がインターカレートされ、洗浄精製されていればよい。取扱上の観点から、黒鉛粒子の粒径が20〜1000μm範囲のものが望ましい。黒鉛粒子の厚みに特別な制限は無いが、取扱上の観点から、5〜150μmの範囲のものが望ましい。本願明細書でいう膨張性黒鉛の黒鉛粒子の厚みとは、黒鉛粒子の層状の底面から上面までの平均の距離を指す。厚みの測定法は、黒鉛粒子の最大長(長径)に平行な垂直面を電子顕微鏡で撮影し、その平面投射面積を計算して得られた面積をその平面投射の平行な距離で割った値を厚みとした。また、膨張性黒鉛の黒鉛粒子の粒径とは、最大長(長径)とも称し、黒鉛粒子の層状の上面又は底面の、厚み方向と直角な方向での最大値の距離を指す。黒鉛粒子の厚みと粒径は、一般的な高性能光学顕微鏡や電子顕微鏡で容易に測定できる。
本発明を特徴づける、カサ体積倍率が、加熱前の原料のカサ体積に比べて1.05〜3.0倍に増加した、加熱処理済の熱膨張性黒鉛(「膨張黒鉛」)を得るための具体的な方法について説明する。比較的に低温の加熱温度で、カサ体積倍率が加熱前の原料のカサ体積に比べて1.05〜3.0倍に増加した低倍率の黒鉛を簡便に安定して得る方法としては、例えば、熱膨張性黒鉛原料を適切な容器に入れて、熱風炉又は電気炉等に入れてその周囲から加熱することが挙げられる。100℃〜250℃程度の比較的低温で、例えば、190℃〜230℃程度の温度で、熱膨張性黒鉛原料を加熱することで、目的とする倍率の「膨張黒鉛」を得ることができる。且つ、先に説明した図2からも判るように、その体積の増加は極めてゆるやかな増加曲線なので、極めてコントロールがし易いため、本発明で使用する「膨張黒鉛」を簡便に得ることができる。参考とした図1、図2は、設定された加熱条件下での曲線であり、実施の方法によって加熱条件が異なるので、加熱時間の指定は無い。即ち、熱膨張性黒鉛原料を加熱することで、加熱済の熱膨張性黒鉛のカサ体積倍率が1.05〜3.0倍になればよく、特に、加熱方法や加熱条件や、その他の条件には拘らない。
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分に混合させる膨張性黒鉛として、カサ体積倍率が1.05〜3.0倍になった「膨張黒鉛」に、ポリイソシアナートを付与した状態の改質された膨張性黒鉛を用いたことを特徴とする。「膨張黒鉛」にポリイソシアナートを付与する具体的な方法としては、下記のようにする。予め熱膨張性黒鉛原料を加熱して得た「膨張黒鉛」に、常温でポリイソシアナートを添加し、その後に130℃以下の温度で加温する。これにより、カサ体積倍率の増加にともなって開いた黒鉛粒子の層間にポリイソシアナートが含浸された状態又は黒鉛粒子の表面に濡れ密着された状態の「改質膨張性黒鉛」になる。本発明の樹脂組成物では、この状態の「改質膨張性黒鉛」を樹脂成分に含有させる必須の構成成分として用いる。
本発明者らは、上記した処理操作で得られた「改質膨張性黒鉛」を含む樹脂組成物は、該樹脂組成物を用いて得た製品が、高温での燃焼後に残る膨張体の体積が増加すること、即ち、膨張特性が高くなることを見出した。本発明者らの検討によれば、「膨張黒鉛」へのポリイソシアナートの添加量は、質量基準で、膨張黒鉛100質量部に対して、1〜10質量部の範囲が好ましい。1質量部以下では効果が少なく、10質量部超では、樹脂成分に「改質膨張性黒鉛」を混合させた際に、樹脂組成物の均一な組成が得られ難い。
また、本発明者らの検討によれば、ポリイソシアナートを添加する「膨張黒鉛」のカサ体積倍率が1.05倍未満では、ポリイソシアナートを添加したことによる効果が少なく、一方、3.0倍超になると、「膨張黒鉛」が脆くなり、樹脂成分に混合した際に細かく砕けて効果が少なくなる。本発明を構成する「膨張黒鉛」のカサ体積倍率は、1.1〜2.0倍、特に、1.1〜1.6倍の範囲であることが好ましい。
本発明で用いられるポリイソシアナートは、分子中にイソシアナート基を2個以上有する化合物を指す。ポリイソシアナートの構造や分子量に特別な制限はないが、膨張した黒鉛粒子の層間に含浸又は濡れ付着性が良好になるのを目的としているので、比較的分子量の小さい、即ち、粘度の低いものが好ましい。例えば、4,4’ジフェニルメタンジイソシアナート(M.D.I)、トルエンジイソシアナート(T.D.I)、キシリレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等が挙げられる。又、これ等のジイソシアナートの多量体でもよく、例えば、クルードM.D.IとしてMS−20(商品名、BASF IONACポリウレタン社製)、脂肪族イソシアナートの多量体のコロネートHX(商品名、東ソー社製)等が挙げられる。
粘度が特に高いポリイソシアナートを使用する場合は、少量の低沸点溶剤を添加して粘度を下げて使用することもできる。但し、一般的にポリイソシアナートは、活性が強いので作業上から揮発性の低いものが望ましい。また、溶剤を添加した場合、溶剤の残存が懸念されるので、できれば使用しないことが望まれる。これらの点から、クルードM.D.IやM.D.I及びコロネートHXが最も望ましい。
本発明によって達成できた膨張特性の向上という効果の発現に対し、本発明を特徴づける「改質膨張性黒鉛」において、「膨張黒鉛」の層間に含浸又は濡れ付着したポリイソシアナートが何等かの反応を生起したか否かは、確認できていない。しかしながら、後述する通り、実施例及び比較例の対比から、予めこの操作をした「改質膨張性黒鉛」を配合した構成の本発明の樹脂組成物は、その他の構成の樹脂組成物と比較して、明らかに優れた膨張特性を示すことを確認した。
即ち、まず、本発明を構成する低倍率に体積が増加した、黒鉛粒子の層間が開いた状態ではなく、原料のままの非加熱の熱膨張性黒鉛に、ポリイソシアナートを予め添加した状態の熱膨張性黒鉛を用いて作成した樹脂組成物を用いて得た成形体は、燃焼後の膨張体(残存物)の膨張特性が、本発明の、層間が開いた「膨張黒鉛」にポリイソシアナートを予め添加した状態の「改質膨張性黒鉛」を用いて得た成形体の場合に得られる膨張特性に比べて、劣ることが確認された。また、「膨張黒鉛」を用いたとしても、ポリイソシアナートを「膨張黒鉛」に添加して付与した「改質膨張性黒鉛」とせずに、単にポリイソシアナートを樹脂組成物に均一に添加しても、本発明が目的とする膨張特性の向上効果を得ることができないことが確認された。
なお、実施例及び比較例の樹脂組成物について、効果を評価するに当たり、膨張性黒鉛として、原料のままの熱膨張性黒鉛、低倍率に膨張させた黒鉛粒子の層間を開いた「膨張黒鉛」、及び、該「膨張黒鉛」にポリイソシアナートを付与させてなる「改質膨張性黒鉛」を適宜に用いた。「改質膨張性黒鉛」は、「膨張黒鉛」に、所定のポリイソシアナートを常温で添加後に、例えば、130℃で20分間加熱して、熱膨張性黒鉛にポリイソシアナートをなじませたものを用いた。これらの膨張性黒鉛と、樹脂成分と混合して樹脂組成物を作製した。
また、実施例及び比較例の樹脂組成物についての効果を評価する際に用いた、樹脂組成物から、燃焼時における膨張特性確認用の試験体シート試料の作成などの諸条件は、実施例、比較例に記載した。そして、本発明が目的とする膨張特性については、下記のようにして測定し、評価に用いた。シート状の各試験体試料を燃焼用容器に入れ、600℃の電気炉で30分間燃焼させてから室温まで冷却して、容器から取り出した膨張体の高さを計測し、これにより体積を算出して、得られた算出値を、加熱前の試験体試料の重さ(質量)で割った数値を膨張特性として表現した。この数値を用いて、膨張特性を相対的に評価した。
上記で用いた燃焼用容器は、底辺が、21mm×46mmで、高さが50mmの、上方が開放され、底部及び四方が閉じた長方形の形状である。この容器の底部にシート状の試験体を、20〜21mm×45〜46mmで、重さ(質量)が1.48gになるように切りだしてセットした。ここで、試験体試料の比重が正確には異なり、且つ、シートの厚みも正確には若干バラツキがあり、異なるので、膨張特性を試験体試料のシート厚みと燃焼後の膨張体の高さの比で表現すると効果の判定にいくつかの要素を加味し複雑になる。従って、本発明では、上記の如く試験体試料は、ほぼ同厚のシート状で作成するが、最終的な調整は、重さ(質量)を同じ値にした試料を用い、燃焼後に得られた膨張体の体積を試料の重さ(質量)で割った値を、比較評価用の膨張特性と定めた。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。「部」とあるのは、特に限定がない限り、質量基準である。
[「膨張黒鉛」の調製]
熱膨張性黒鉛原料には、下記の銘柄の市販品を使用した。以下、商品名で説明する。
・SYZR802(商品名):三洋貿易社製、1000℃膨張度230ml/g
・SYZR502(商品名):三洋貿易社製、1000℃膨張度250ml/g
・EG−E300(商品名)別名(Expanded graphite):Qingdao Yanhai carbon materiaIs社製、1000℃膨張度270ml/g
実施例では、上記熱膨張性黒鉛原料を100℃〜250℃の温度範囲で加熱して、カサ体積が増加してカサ体積の倍率(カサ体積倍率)が、それぞれ表1に示した値になった、若干膨張した加熱処理済の黒鉛を「膨張黒鉛」として試験に供した。なお、カサ体積倍率は、それぞれに測定した試料のカサ体積を用い、「加熱後の熱膨張性黒鉛のカサ体積/加熱前の熱膨張性黒鉛原料のカサ体積」で求めた算出値である。この式で用いたカサ体積の測定は、メスシリンダーに、加熱前の熱膨張性黒鉛原料と、当該原料を上記温度範囲で加熱して、体積が若干増加した加熱処理済の「膨張黒鉛」試料を各々入れて、軽く2回タップして、それぞれの体積を測定することで行った。
Figure 0006753591
[実施例1−1〜実施例1−4、比較例1](樹脂成分:ポリ塩化ビニル系樹脂)
樹脂組成物を調製する際に使用した、先に述べた方法で調製した加熱処理済の熱膨張性黒鉛である「膨張黒鉛」以外の成分として、下記の成分を表2に示した量で用いた。表2に示した通り、この例では、樹脂成分としてポリ塩化ビニル樹脂を用いた。表2中でPVCと略記したポリ塩化ビニル樹脂には、リューロンペースト772A(商品名、東ソー社製、以下PVCと略す)を用いた。先に調製した「膨張黒鉛」に付与するためのポリイソシアナートには、クルードM.D.I(以下、MS−20と略す)を用いた。本実施例では、その他の添加剤として、下記のものを用いた。可塑剤としてジオクチルフタレート(以下、DOPと略す)を用い、難燃剤としてポリリン酸アンモニウム(APPと略す)を用い、その他に、炭酸カルシウムを用いた。なお、DOP、APP及び炭酸カルシウムについては、試薬をそのまま用いた。
本例では、「膨張黒鉛」として、カサ体積倍率が1.42のSYZR502を使用した。そして、下記のようにして、ポリイソシアナートが付与された「改質膨張性黒鉛」を得、これらを実施例1−1〜実施例1−4で用いた。即ち、「膨張黒鉛」100部に対して、表2に示した1部〜4部の配合となるように、常温下でMS−20をそれぞれに添加して混和後、130℃で20分間加熱することで、「膨張黒鉛」にポリイソシアナートを付着及び含浸等させて、MS−20を付与した。これに対し、比較例1では、「膨張黒鉛」をそのまま用いた。上記した「改質膨張性黒鉛」又は「膨張黒鉛」をそれぞれに用いて、表2に示した配合で、他の樹脂成分及び添加剤成分と混合して、実施例1−1〜実施例1−4、比較例1の樹脂組成物を調製した。
Figure 0006753591
[樹脂組成物の評価方法]
<燃焼試験用の試料の作製>
まず、上記のようにして調製した各樹脂組成物を良く撹拌して、それぞれ均一な流動液にする。この流動液をそれぞれに用い、離型板の上に所定の厚みにコーティングして、その後、160℃、10分間の加熱でシート状に固化させた。上記厚みは、約1.0〜2.0mmになるようにした。得られたシート状の成形体を、実施例及び比較例の各樹脂組成物についての燃焼試験に用いる試料とした。
具体的には、上記のようにして得た燃焼試験に用いるシート状の試料を、それぞれ重さが一定になるようにカットして試験用の試料を得、得られた試料を用いて燃焼試験を行い、実施例及び比較例の樹脂組成物についての膨張特性をそれぞれ評価した。上記で、燃焼試験に用いるシート状の試料を、それぞれ重さが一定になるようにカットする際に、燃焼試験に使用する容器に入るように、約20〜21mm×45〜46mmの範囲内で長方形にカットし、燃焼試験用の試料の重さ(質量)が1.48gで一定になるようにそれぞれ調整した。
<燃焼試験>
上記のようにして得た燃焼試験用の試料を用い、下記のように燃焼試験を行った。まず、底辺が、21mm×46mmで、高さが50mmの、上方が開放され、底部及び四方が閉じた長方形の形状をした鉄製容器の底部に、燃焼試験用の試料を置いた。次に、燃焼試験用の試料が載置された鉄製容器を、600℃の電気炉内に30分間置いて試料を燃焼させ、燃焼後の残渣として膨張体をそれぞれに得た。室温まで冷却した後に、膨張体の体積をそれぞれ計測して、加熱前の燃焼試験用の試料の重さ、1.48gで割った数値(ml/g)である膨張特性を、表2中に示した。また、得られた数値を、相対的に比較して、実施例及び比較例の樹脂組成物についての膨張特性の優劣を判定するための基準として用いた。実施例1では、「膨張黒鉛」をポリイソシアナートのMS−20で処理して改質することによって生じる膨張特性への影響を確認した。表2中に、比較例1の膨張特性の数値を基準値として、実施例1−1〜1−4の膨張特性の数値を用いて算出した膨張特性の比率(向上率)を示した。その結果、表2に示されている通り、「膨張黒鉛」をMS−20で改質することによって、明らかに膨張特性の向上効果が得られることを確認した。
[比較例2](非加熱の熱膨張性黒鉛を用いた例)
比較例2−1では、実施例1及び比較例1で用いたと同様の熱膨張性黒鉛原料SYZR502を、加熱処理せずに非加熱のまま用いた。そして、比較例2−2〜2−4では実施例1で用いたと同様のポリイソシアナートMS−20を、常温下、表3に示した量で非加熱処理の熱膨張性黒鉛原料に添加して混和した。その後、実施例1で行ったと同様に、130℃で20分間加熱した。それ以外の操作は、実施例1と同様にして、樹脂組成物をそれぞれに調製し、各樹脂組成物を用いて燃焼試験用のシート状の成形体試料を得、得られた試料をカットして燃焼試験用の試料を調製し、さらに、得られた試料を用いて、それぞれ燃焼試験を行った。
実施例1で行ったと同様の樹脂組成物の評価方法を実施して、燃焼試験で得られる膨張特性の値を算出し、表3中に示した。そして、得られた膨張特性を示す算出値を用い、まず、実施例1と同様に、MS−20を「膨張黒鉛」に付与したことによる膨張特性に及ぼす影響を、比較例2−1の膨張特性の数値を基準値とし、比較例2−2〜2−4の膨張特性の数値を用いて膨張特性の比率をそれぞれ算出し、表3中に「膨張特性の評価1(向上率)」として示した。この結果、表3に示した通り、加熱処理をしない非加熱の熱膨張性黒鉛原料にポリイソシアナートを添加しても、膨張特性の向上効果を得ることはできないことがわかった。
さらに、実施例1における加熱処理済の「膨張黒鉛」にポリイソシアナートのMS−20を付与して改質した「改質膨張性黒鉛」を使用した場合における、表2に示した膨張特性の値と、加熱処理せずに非加熱のままの熱膨張性黒鉛原料を用い、同量のポリイソシアナートを添加した比較例2の場合における、表3に示した膨張特性の値とを用い、膨張特性の向上効果を比較するため、MS−20を同量配合した例同士で「表3の膨張特性の値/表2の膨張特性の値」をそれぞれ算出した比率を、「膨張特性の評価2」として表3中に示した。この結果、表3中の「膨張特性の評価2」に示されている通り、樹脂組成物を構成する膨張性黒鉛に、熱膨張性黒鉛原料を加熱処理した「膨張黒鉛」を用いたことで初めて、ポリイソシアナートを付与することによる膨張特性の向上効果を得ることができることが確認された。
Figure 0006753591
[比較例3]
本比較例では、樹脂組成物に配合する膨張性黒鉛に、体積が若干増加した状態の加熱処理済の熱膨張性黒鉛である「膨張黒鉛」として、実施例1と同様の、カサ体積倍率が1.42のSYZR502を使用した。また、ポリイソシアナートとしてMS−20を用いた。しかし、実施例1の場合とは異なり、「膨張黒鉛」にMS−20を付着及び含浸させて、ポリイソシアナートが付与された状態の「改質膨張性黒鉛」を樹脂成分に配合をするのではなく、本比較例では、MS−20を単に樹脂組成物中に添加して、ブレンドして「膨張黒鉛」と併用する構成とした。具体的には、表4に示した成分中のMS−20を除く配合をまず良く混合し、その状態にしてからMS−20を添加して均一にして本比較例の樹脂組成物とした。即ち、本比較例の樹脂組成物は、「膨張黒鉛」のSYZR502と、MS−20のポリイソシアナートは、他の添加剤と同様に、樹脂組成物中に単に併存している状態となる。
それ以外の操作は、実施例1と同様にして、表4に示した配合の樹脂組成物をそれぞれに調製し、各樹脂組成物を用いて燃焼試験用のシート状の成形体試料を得、得られた試料をカットして燃焼試験用の試料を調製し、さらに、得られた試料を用いて、実施例1と同様にして、それぞれ燃焼試験を行った。また、実施例1の場合と同様の方法で、燃焼試験で得られる膨張特性の値を算出し、表4中に示した。また、実施例1における、加熱処理済の「膨張黒鉛」にポリイソシアナートのMS−20を付与して改質させた構成の「改質膨張性黒鉛」を使用した場合における、表2に示した膨張特性の値と、「膨張黒鉛」に、単にポリイソシアナートをブレンドして併存させた構成の比較例3の場合における膨張特性の値を用い、その向上効果を比較する目的で、MS−20を同量配合した例同士で、それぞれ「表4の膨張特性の値/表2の膨張特性の値」を算出した比率を、「膨張特性の評価3」として表4中に示した。表4中の「膨張特性の評価3」の結果に示されている通り、熱膨張性黒鉛原料を加熱処理して「膨張黒鉛」とし、さらに、この「膨張黒鉛」にポリイソシアナートが付与された「膨張黒鉛」をMS−20で改質した構成の膨張性黒鉛を樹脂組成物に用いた実施例1の構成とすることによって初めて、より高い膨張特性の向上効果が得られることが確認された。
Figure 0006753591
[膨張特性の向上効果についての評価結果のまとめ]
表2〜表4に示した通り、表2の実施例1の樹脂組成物で実現される、燃焼試験における膨張特性は、表3、表4に示した、本発明で規定する、「膨張黒鉛」をポリイソシアナートで改質した「改質膨張性黒鉛」を用いない、比較例2、3の樹脂組成物を用いて行った燃焼試験における膨張特性と明らかに相違しており、膨張特性の向上効果が得られることを確認した。即ち、加熱処理によりカサ体積を若干増加させた「膨張黒鉛」であるSYZR502に、ポリイソシアナートを添加して改質させ、「改質膨張性黒鉛」を樹脂組成物の構成成分として用いることで、膨張特性を向上させることができる。一方、加熱処理をしない非加熱の熱膨張性黒鉛原料にポリイソシアナートを添加させた構成のものを使用した、比較例2の樹脂組成物の場合や、加熱処理してカサ体積を若干増加させている「膨張黒鉛」を使用しているものの、「膨張黒鉛」をさらにポリイソシアナートで改質させて用いるのではなく、単に、樹脂組成物中にポリイソシアナートをブレンドさせただけの構成の比較例3の樹脂組成物の場合は、膨張特性が効果的に改善されないことが確認された。
[実施例2、比較例4]
ポリイソシアナートに4,4’ジフェルメタンジイソシアナート(M.D.Iと略す)を用い、熱膨張性黒鉛原料にSYZR802を用いたこと以外の操作は、実施例1と同様にして、実施例2の樹脂組成物を調製した。また、ポリイソシアナートをM.D.Iに替えて、加熱処理しない熱膨張性黒鉛原料をそのまま用いた、前記した比較例2と同様にした例を比較例4−1及び4−2とした。また、ポリイソシアナートをM.D.Iに替えて、加熱処理した「膨張黒鉛」を用い、前記した比較例3と同様に、M.D.Iを単にブレンドさせたて併用した例を比較例4−3及び4−4とした。実施例1と同様に燃焼試験をそれぞれ行って、同様にして膨張特性を算出した。表5に、樹脂組成物の配合と、燃焼試験をして求めた膨張特性を示した。
そして、実施例2で得られた膨張特性の値について、同様の配合量で得た上記比較例4におけるそれぞれの膨張特性の値を基準として、比率を算出して膨張特性の向上効果を確認した。表5に示した通り、実施例1と同様の処理を行って、加熱により体積を若干増加させた「膨張黒鉛」を、ポリイソシアナートのM.D.Iを使用して改質させた「改質膨張性黒鉛」を使用して樹脂組成物とした実施例2の場合も、比較例4と比べて明らかに膨張特性が向上することが確認された。
Figure 0006753591
[実施例3、比較例5〜7](樹脂成分:不飽和ポリエステル樹脂)
表6に示した配合で、樹脂組成物の樹脂成分として、PVCに替えて不飽和ポリエステル樹脂を用い、さらに、熱膨張性黒鉛原料にSYZ802を用いたこと以外は実施例1と同様に操作して、実施例3の樹脂組成物を調製した。また、表6に示した配合で、樹脂組成物の樹脂成分に不飽和ポリエステル樹脂を用い、熱膨張性黒鉛原料をSYZ802に替えたこと以外は比較例1と同様に操作して、比較例5の樹脂組成物を調製した。また、表6に示した配合で、樹脂組成物の樹脂成分として、PVCに替えて不飽和ポリエステル樹脂を用い、加熱処理をせずに用いた熱膨張性黒鉛原料をSYZ802に替えたこと以外は比較例2と同様に操作して、比較例6、7の樹脂組成物を調製した。不飽和ポリエステル樹脂には、日本特殊塗料社製の手積用ポリエステルを主剤99/硬化剤1の比率で混合して使用した。熱膨張性黒鉛原料にSYZ802を用いて、比較例6、7では加熱処理をせずに非加熱の原料をそのままで用い、実施例3及び比較例5では、先に説明したようにしてカサ体積倍率1.50倍に膨張させた「膨張黒鉛」を用いた。
上記のようにしてそれぞれ調製した表6の配合の各樹脂組成物を用いて、それぞれ燃焼試験を行った。本例では、樹脂成分にPVCを用いた実施例1の場合と異なり、燃焼試験用の試料の作製の際に、離形板に所定の厚みでコーティング後、60℃で20分間加熱して固化させて試料とした。それ以降の燃焼試験の操作及び評価方法は、実施例1で行ったのと同様である。表6に、樹脂組成物の配合と、燃焼試験で得られたそれぞれの膨張特性の値、及び、各比較例の膨張特性の値に対する実施例3の膨張特性の値についての比率を求め、その相対評価の結果を示した。
表6に示した通り、樹脂成分を不飽和ポリエステル樹脂に変更した場合も、樹脂組成物を構成する膨張性黒鉛として、本発明で規定するように「膨張黒鉛」にポリイソシアナートを付与して改質させた「改質膨張性黒鉛」を使用する構成とすることで、明らかに膨張特性の向上効果が得られることが確認された。
Figure 0006753591
[実施例4、比較例8〜10](樹脂成分:アクリル樹脂)
表7に示した配合で、樹脂組成物の樹脂成分として、PVCに替えてアクリル樹脂を用い、さらに、熱膨張性黒鉛原料にEG−E300を用い、ポリイソシアナートとしてコロネートHX(商品名、東ソー社製)を用いたこと以外は実施例1と同様に操作して、実施例4の樹脂組成物を調製した。また、表7に示した配合で、樹脂組成物の樹脂成分にアクリル樹脂を用い、熱膨張性黒鉛原料をEG−E300に替えたこと以外は比較例1と同様にして、比較例8の樹脂組成物を調製した。また、表7に示した配合で、樹脂組成物の樹脂成分として、アクリル樹脂を用い、加熱処理をせずに用いた熱膨張性黒鉛原料をEG−E300に替えたこと以外は比較例2と同様に操作して、比較例9、10の樹脂組成物を調製した。アクリル樹脂には、藤倉化成社製のMH101−5(商品名)を酢酸エチルに30%溶液で溶解して使用した。熱膨張性黒鉛原料としてEG−E300を用いて、比較例9、10では加熱処理をせずに非加熱の原料をそのままで用い、実施例4及び比較例8では、カサ体積倍率1.47倍に膨張させた「膨張黒鉛」を用いた。
実施例4では、燃焼試験用の試料を下記のようにして作製した。まず、前記したアクリル樹脂をトルエンに30%濃度に溶解した。そして、この溶解液に、EG−E300原料を加熱することで得た、カサ体積1.47倍の「膨張黒鉛」に、常温下で、ポリイソシアナートとしてコロネートHXを、表7に示した量でそれぞれ添加して混和後、130℃で20分間加熱することで、「膨張黒鉛」にポリイソシアナートを付着及び含浸等させて、コロネートHXを付与して「改質膨張性黒鉛」を得た。そして、得られた「改質膨張黒鉛」を他の配合物とよく混合して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして、離形板に所定の厚みにコーティングして、燃焼試験に用いるシート状の成形体を得た。シート状の成形体を得る際に、20〜30℃で24時間放置して溶剤を蒸発させ固化させた。その他は、実施例1と同様にしてシート状の試料を用いて燃焼試験を行って、膨張特性を求めた。比較例8〜10の樹脂組成物も、上記に準じて燃焼試験を行って、膨張特性を求めた。
表7に、樹脂組成物の配合と、燃焼試験をして求めた膨張特性を示した。表7に、樹脂組成物の配合と、燃焼試験で得られたそれぞれの膨張特性の値、及び、各比較例の膨張特性の値に対する実施例4の膨張特性の値についての比率を求め、その相対評価の結果を示した。
表7に示した通り、樹脂成分をアクリル樹脂に変更した場合も、樹脂組成物を構成する膨張性黒鉛として、本発明で規定するように「膨張黒鉛」にポリイソシアナートを付与して改質させた「改質膨張性黒鉛」を使用する構成とすることで、明らかに膨張特性の向上効果が得られることが確認された。表7中のアクリル樹脂は、固形分100%として記載した。
Figure 0006753591

Claims (8)

  1. 黒鉛粒子からなる熱膨張性黒鉛成分と樹脂成分とを含む樹脂組成物であって、
    前記樹脂成分100質量部を基準にして、前記膨張性黒鉛成分を5〜300質量部含み、
    記熱膨張性黒鉛成分が、熱膨張性黒鉛原料を加熱処理したことで改質された黒鉛粒子を含んでなる、下記式で求められるカサ体積倍率が、加熱前の熱膨張性黒鉛原料のカサ体積に比べて1.05〜3.0倍に増加した状態の熱膨張性黒鉛にポリイソシアナートが付与されてなるものであることを特徴とする樹脂組成物。
    カサ体積倍率
    =加熱後の熱膨張性黒鉛のカサ体積/加熱前の熱膨張性黒鉛原料のカサ体積
  2. 前記改質された黒鉛粒子の形態が、最大長が100〜1000μmの範囲内で、且つ、最大の厚みが5〜150μmの範囲内である請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記カサ体積が増加した状態の熱膨張性黒鉛100質量部に、前記ポリイソシアナートが1〜10質量部の範囲内で付与されている請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 黒鉛粒子からなる熱膨張性黒鉛成分と樹脂成分とを含む樹脂組成物からなる成形物である、熱膨張性のシート状又はパテ状の耐火製品であって、
    前記樹脂組成物が、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物であることを特徴とする熱膨張性のシート状又はパテ状の耐火製品
  5. 前記樹脂成分が、熱可塑性樹脂及び熱硬化樹脂から選ばれるいずれかの樹脂である請求項4に記載の熱膨張性のシート状又はパテ状の耐火製品。
  6. 改質工程で熱膨張性黒鉛原料を改質し、該改質工程で得られた改質された黒鉛粒子を含んでなる熱膨張性黒鉛成分樹脂成分とを混合して、樹脂成分100質量部を基準にして、前記熱膨張性黒鉛成分を5〜300質量部含む樹脂組成物を得るための樹脂組成物の作製方法であって、
    前記改質工程が、熱膨張性黒鉛原料を100℃〜250℃の温度で加熱処理して熱膨張性黒鉛原料の体積を増加させて、前記加熱処理前に比べて、前記加熱処理後の下記式で求められるカサ体積倍率が1.05〜3.0倍になるようにする、熱膨張性黒鉛原料の体積の増加工程と、該体積の増加工程で、カサ体積を増加させた加熱処理済の熱膨張性黒鉛に、常温下でポリイソシアナートを添加し、その後に130℃以下の温度に加温するポリイソシアナートの付与工程とを有することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
    カサ体積倍率
    =加熱後の熱膨張性黒鉛のカサ体積/加熱前の熱膨張性黒鉛原料のカサ体積
  7. 前記ポリイソシアナートの付与工程で、前記加熱処理済の膨張性黒鉛100質量部に、ポリイソシアナートを1〜10質量部の範囲内で添加する請求項に記載の樹脂組成物の製造方法。
  8. 前記改質された黒鉛粒子の形態が、最大長が100〜1000μmの範囲で、且つ、最大の厚みが5〜150μmの範囲である請求項又はに記載の樹脂組成物の製造方法。
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