以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.第1の実施形態>
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る軸受構造11について説明する。図1は、第1の実施形態に係る軸受構造11の構成の一例を示す断面図である。具体的には、図1は、軸受構造11における軸部材110の中心軸を含む断面についての断面図である。
軸受構造11は、モータ80に連結される軸部材110を回転支持するための構造である。モータ80は、例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HEV)において、車両の駆動輪を駆動するための駆動源として設けられる駆動モータである。そして、軸受構造11は、これらの車両においてモータ80から出力される回転動力を伝達することにより動作する駆動系に適用され得る。なお、上述したモータ80の用途はあくまでも一例に過ぎず、軸受構造11は種々の用途のモータについての駆動系に適用され得る。
モータ80は、図1に示したように、固定子810と、回転子820と、を備える。固定子810及び回転子820は、例えば、略円筒形状を有し、互いに空隙を介して対向して設けられる。また、固定子810及び回転子820の中心軸は略一致する。
固定子810は、回転子820より外周側に位置し、後述するハウジング150に固定される。固定子810には、複数の電機子が周方向に沿って配設される。具体的には、固定子810には、積層された複数の銅板からなる鉄心と、当該鉄心の内周部に設けられた複数のスロットの各々に巻回されたコイルとが設けられ、複数の電機子はこのような鉄心及びコイルによって形成される。固定子810のコイルは、インバータ装置を介してバッテリと電気的に接続されており、当該コイルへ電力が供給されることによって、固定子810の周方向に沿って回転する回転磁界が発生する。
回転子820には、複数の永久磁石が交互に異なる極性となるように周方向に沿って配設される。固定子810により上述したように回転磁界が発生することによって、回転子820の永久磁石へ磁力が作用する。それにより、回転子820は、固定子810に対して相対的に回転し得る。モータ80は、インバータ制御によって駆動される。それにより、回転子820の回転数が制御される。回転子820の内周部には、軸部材110が挿通された状態で固定される。ゆえに、軸部材110には、モータ80の回転子820が一体として回転可能に接続される。このように、軸部材110は、モータ80と直接的に連結され得る。軸部材110は、モータ80によって直接的に回転駆動される当該モータ80の出力軸に相当する。軸部材110は、例えば、鋳鉄等の鉄系材料によって形成され得る。
軸受構造11は、図1に示したように、上述した軸部材110と、一対の軸受130a,130bと、ハウジング150と、を備える。図1に示したように、上述したモータ80は、ハウジング150内に収容され、軸部材110は、一対の軸受130a,130bによって回転支持される。軸部材110におけるモータ80より一側(図1における左側)の部分はハウジング150内に収容され、モータ80より他側(図1における右側)の部分はハウジング150内から外側へ向けて延在する。なお、以下では、モータ80より一側及び他側を、それぞれ単に一側及び他側とも称する。図1では、ハウジング150より外側における軸部材110の他側の部分の詳細について、図示を省略しているが、軸部材110の他側の部分は、例えば、軸受構造11が適用される駆動系の一部を構成する他の軸部材と、ギヤやクラッチ等の機械要素を介して接続される。
軸受130a,130bの各々は、具体的には、玉軸受である。軸受130a,130bの各々は、内側の軌道輪である内輪131a,131bと、外側の軌道輪である外輪132a,132bと、内輪131a,131bと外輪132a,132bとの間に介在する金属製の転動体133a,133bと、を含む。内輪131a,131b、外輪132a,132b、及び転動体133a,133bは、例えば、SUJ材等の軸受鋼によって形成され得る。転動体133a,133bは、周方向に沿って複数配設され、内輪131a,131bと外輪132a,132bとが互いに相対的に回転する際に、当該複数の転動体133a,133bが自転することによって、軸受130a,130bの内部における各部材間の摩擦の低減が実現される。
また、軸受130a,130bの内部には潤滑油が注入されており、当該潤滑油によって、転動体133a,133bと内輪131a,131b及び外輪132a,132bの各々との間に油膜が形成される。それによって、軸受130a,130bの内部における各部材間の摩擦の低減が実現される。なお、以下では、軸受130a及び軸受130bを、特に区別しない場合には、単に軸受130とも称する。また、内輪131a及び内輪131bを、特に区別しない場合には、単に内輪131とも称する。また、外輪132a及び外輪132bを、特に区別しない場合には、単に外輪132とも称する。
一対の軸受130a,130bは、軸部材110に、軸方向に間隔をあけて配設される。なお、当該軸方向は、軸部材110の中心軸に沿った方向であり、以下では、このような方向を、単に軸方向と称する。また、軸受130a,130bの内輪131a,131bは、軸部材110の外周面に嵌合される。具体的には、軸受構造11において、軸受130aの内輪131aは、軸部材110の一側の端部の外周面111に嵌合される。一方、軸受130bの内輪131bは、軸部材110の他側の外周面113に嵌合される。第1の実施形態では、内輪131の軸方向についての軸部材110との相対的な移動は規制される。具体的には、内輪131a,131bは、軸部材110の外周面111,113に、しまりばめの状態で嵌合される。なお、軸部材110の中央側の外周面112には、モータ80の回転子820が嵌合される。
軸部材110には、内輪131が嵌合される外周面から径方向外側へ延在する軸部材延在部が設けられる。具体的には、軸部材110の一側において、外周面111から径方向外側へ延在する延在部114が設けられる。一方、軸部材110の他側において、外周面113から径方向外側へ延在する延在部115が設けられる。軸部材110において、延在部114及び延在部115が、上記の軸部材延在部に相当する。
延在部114は、内輪131aに対して他方の軸受としての軸受130b側に位置し、延在部114の内輪131a側の端面116は、内輪131aの軸受130b側の側面と当接する。換言すると、延在部114は内輪131aに対して他側に位置し、端面116は内輪131aの他側の側面と当接する。それにより、軸受130aの軸部材110に対する軸方向についての位置決めをすることができる。一方、延在部115は、内輪131bに対して他方の軸受としての軸受130a側に位置し、延在部115の内輪131b側の端面117は、内輪131bの軸受130a側の側面と当接する。換言すると、延在部115は内輪131bに対して一側に位置し、端面117は内輪131bの一側の側面と当接する。それにより、軸受130bの軸部材110に対する軸方向についての位置決めをすることができる。
ハウジング150は、各種部材を収容する部材である。ハウジング150は、例えば、アルミニウム合金によって形成され得る。ハウジング150は、具体的には、軸部材110の一部、一対の軸受130a,130b、及びモータ80を収容する。ハウジング150の他側の端部には、軸部材110の他側の部分が挿通する開口部が設けられる。また、ハウジング150の中央側には、モータ80の形状に対応した形状を有する凹部153が設けられる。ゆえに、ハウジング150の内径は、軸方向についての中央側において、他の部分と比較して大きくなっている。
ハウジング150には、軸受130a,130bの外輪132a,132bが取り付けられる。それにより、ハウジング150は、軸部材110に対して、一対の軸受130a,130bを介して、相対的に回転自在に設けられる。軸受130a,130bの外輪132a,132bは、具体的には、ハウジング150の内周面に嵌合される。より具体的には、軸受構造11において、軸受130aの外輪132aは、ハウジング150の一側の内周面152に嵌合される。一方、軸受130bの外輪132bは、ハウジング150の他側の内周面154に嵌合される。第1の実施形態では、外輪132は、ハウジング150に対して、軸方向に相対的に移動自在に設けられる。具体的には、外輪132a,132bは、ハウジング150の内周面152,154に、すきまばめの状態で嵌合される。
また、ハウジング150には、外輪132が嵌合される内周面から径方向内側へ延在するハウジング延在部が設けられる。具体的には、ハウジング150の一側の端部には、軸方向に直交する方向に延在する底部151が設けられる。ハウジング150の内部空間の一側は、底部151によって外部から離隔される。底部151は、外輪132aが嵌合される内周面152から径方向内側へ延在する。一方、ハウジング150の他側の端部には、外輪132bが嵌合される内周面154から径方向内側へ延在する延在部155が設けられる。ハウジング150において、底部151及び延在部155が、上記のハウジング延在部に相当する。第1の実施形態では、当該ハウジング延在部は外輪132に対して他方の軸受130側と逆側に位置する。また、当該ハウジング延在部の外輪132側の端面と外輪132の側面との間には、後述するように膨張部材170が設けられる。
具体的には、底部151は、外輪132aに対して他方の軸受としての軸受130b側と逆側に位置する。ゆえに、底部151の外輪132a側の端面158は、外輪132aの軸受130b側と逆側の側面と対向する。換言すると、底部151は外輪132aに対して一側に位置し、端面158は外輪132aの一側の側面と対向する。一方、延在部155は、外輪132bに対して他方の軸受としての軸受130a側と逆側に位置する。ゆえに、延在部155の外輪132b側の端面159は、外輪132bの軸受130a側と逆側の側面と対向する。換言すると、延在部155は外輪132bに対して他側に位置し、端面159は外輪132bの他側の側面と対向する。このように、ハウジング150には、外輪132の側面と対向する対向面に相当する端面158及び端面159が設けられる。
外輪132の側面と、ハウジング150の端面158,159の各々との間には、膨張部材170a,170bが設けられる。具体的には、外輪132aの一側の側面と端面158との間には、170aが設けられる。一方、外輪132bの他側の側面と端面159との間には、170bが設けられる。膨張部材170a,170bは、例えば、熱膨張時において軸方向に沿って伸長可能である。ゆえに、第1の実施形態では、膨張部材170a,170bは、熱膨張することによって外輪132a,132bを軸方向に沿って押圧可能である。なお、以下では、膨張部材170a及び膨張部材170bを、特に区別しない場合には、単に膨張部材170とも称する。
膨張部材170は、具体的には、略円筒形状を有し、ポリイミド樹脂やナイロン等の樹脂によって形成され得る。膨張部材170を形成する樹脂として、耐熱性や耐油性が比較的高い樹脂が利用されることが好ましい。膨張部材170の中心軸は、軸受130の中心軸と略一致してもよい。なお、膨張部材170の内径及び外径は、外輪132の内径及び外径とそれぞれ略一致し得る。また、膨張部材170a,170bは、ハウジング150の内周面152,154に内接して設けられ得る。
図1では、モータ80にかかる負荷が比較的低い低負荷時における膨張部材170が実線によって示されており、モータ80にかかる負荷が比較的高い高負荷時における膨張部材170が破線によって示されている。モータ80の高負荷時には、低負荷時と比較して、モータ80へ供給される電流が増大することによって、モータ80における発熱量が増大する。それにより、モータ80の高負荷時において、軸受構造11を構成する各部材の温度は、低負荷時と比較して高くなる。ゆえに、モータ80の高負荷時において、膨張部材170の温度は比較的高くなるので、膨張部材170が熱膨張することによって、外輪132は軸方向に沿って押圧される。具体的には、外輪132aの一側の側面とハウジング150の端面158の間に設けられた膨張部材170aが熱膨張することによって、外輪132aは、他側へ押圧される。一方、外輪132bの他側の側面とハウジング150の端面159の間に設けられた膨張部材170bが熱膨張することによって、外輪132bは、一側へ押圧される。
ところで、軸部材110及びハウジング150は、例えば、軸受構造11の中央側においてモータ80に対して固定される。ゆえに、モータ80の高負荷時において、軸部材110及びハウジング150は、一側及び他側においてモータ80から離れる方向へ熱膨張し得る。ここで、軸部材110及びハウジング150は、上述したように、例えば鋳鉄及びアルミニウム合金によってそれぞれ形成され得る。また、アルミニウム合金の熱膨張係数は、一般的に鋳鉄と比較して大きい。ゆえに、モータ80の高負荷時において、軸部材110及びハウジング150の熱膨張係数の差に起因して、ハウジング150の底部151の端面158と、外輪132aの一側の側面との距離は、低負荷時と比較して長くなり得る。また、モータ80の高負荷時において、同様に、ハウジング150の延在部155の端面159と、外輪132bの他側の側面との距離は、低負荷時と比較して長くなり得る。
よって、ハウジング150の各端面と外輪132の側面との間に設けられる膨張部材170の熱膨張係数が仮に過剰に小さい場合には、モータ80の高負荷時において、膨張部材170によって外輪132は押圧されない、又は、外輪132を押圧する力が不足し得る。ここで、第1の実施形態に係る軸受構造11の膨張部材170は、具体的には、上述したように樹脂によって形成されるので、比較的大きい熱膨張係数を有する。ゆえに、モータ80の高負荷時において、膨張部材170によって外輪132を軸方向に沿って、より確実に押圧することが可能となる。なお、膨張部材170を形成する樹脂の種類及び寸法は、モータ80の高負荷時において、膨張部材170によって外輪132を軸方向に沿って押圧可能となるように適宜設定される。具体的には、膨張部材170を形成する樹脂の種類及び寸法は、軸部材110及びハウジング150を形成する材料や軸部材110及びハウジング150の寸法等に基づいて、適宜設定され得る。
第1の実施形態に係る軸受構造11では、外輪132は、上述したように、ハウジング150に対して軸方向に相対的に移動自在に設けられる。よって、モータ80の高負荷時において、外輪132は、膨張部材170により軸方向に押圧されることによって、軸方向に沿って移動する。具体的には、外輪132aは、膨張部材170aにより他側へ押圧されることによって、他側へ移動する。一方、外輪132bは、膨張部材170bにより一側へ押圧されることによって、一側へ移動する。それにより、軸受130において、内輪131及び外輪132の双方に接触する転動体133の数を増大させることができる。また、転動体133と内輪131及び外輪132の各々との間に介在する油膜の膜厚を薄くすることができる。ゆえに、軸受130の内輪131と外輪132との間で電流を流れやすくすることができる。
ところで、モータ80は、具体的には、上述したようにインバータ制御によって駆動される。また、軸部材110は、モータ80と連結される。ゆえに、軸部材110には、モータ80の駆動に伴い、高周波誘導によって電圧が発生し得る。それにより、軸部材110を回転支持する軸受の130の内輪131と外輪132との間に電位差が生じる。
ここで、第1の実施形態によれば、上述したように、当該電位差が増大しやすくなるモータ80の高負荷時において、軸受130の内輪131と外輪132との間で電流を流れやすくすることができる。それにより、軸受130内部の油膜において絶縁破壊が生じ得る電圧に当該電位差が到達するより以前において、軸受130の内輪131と外輪132との間で電流を流すことができる。ゆえに、軸受130の内輪131と外輪132との間に過大な電流が流れることを適切に防止することができる。よって、軸受130における電食の発生をより効果的に防止することができる。
また、モータ80の低負荷時には、高負荷時と比較して、モータ80における発熱量は低下する。それにより、膨張部材170の温度が比較的低くなる。ゆえに、第1の実施形態によれば、モータ80の低負荷時には、膨張部材170によって外輪132は押圧されない、又は、外輪132を押圧する力は比較的小さくなる。よって、軸受の130の内輪131と外輪132との間に生じる電位差が比較的小さくなるモータ80の低負荷時において、外輪132が膨張部材170に押圧されることにより軸受130の内部における各部材間の摩擦が増大することを抑制することができる。
なお、上記では、一対の軸受130a,130bの双方において、外輪132がハウジング150に対して軸方向に相対的に移動自在に設けられる例について説明したが、外輪132がハウジング150に対して軸方向に相対的に移動自在に設けられる軸受130は、一対の軸受130a,130bのいずれか一方であってもよい。そのような場合であっても、一方の軸受130について、高負荷時において、軸受130の内輪131と外輪132との間で電流を流れやすくすることができるので、軸受130における電食の発生をより効果的に防止することができる。また、そのような場合には、外輪132の軸方向についてのハウジング150との相対的な移動が規制される軸受130については、ハウジング延在部及び膨張部材170が設けられなくてもよい。なお、電食の発生を防止する効果を向上させる観点では、一対の軸受130a,130bの双方において、外輪132がハウジング150に対して軸方向に相対的に移動自在に設けられ、軸受130a,130bの双方についてハウジング延在部及び膨張部材170が設けられることがより好ましい。
<2.第2の実施形態>
続いて、図2を参照して、本発明の第2の実施形態に係る軸受構造12について説明する。図2は、第2の実施形態に係る軸受構造12の構成の一例を示す断面図である。具体的には、図2は、軸受構造12における軸部材210の中心軸を含む断面についての断面図である。第2の実施形態では、図1を参照して説明した第1の実施形態と比較して、軸受130の周囲の構成が異なる。具体的には、第2の実施形態では、上述した第1の実施形態と異なり、ハウジング250において外輪132が嵌合される内周面から径方向内側へ延在するハウジング延在部が外輪132に対して他方の軸受130側に位置する。また、第2の実施形態では、当該ハウジング延在部の外輪132側の端面と外輪132の側面との間に膨張部材170が設けられる。
軸受構造12は、図2に示したように、軸部材210と、一対の軸受130a,130bと、ハウジング250と、を備える。
軸部材210は、上述した第1の実施形態と同様に、モータ80の回転子820の内周部に挿通された状態で固定され、回転子820と一体として回転可能である。また、軸部材210は、一対の軸受130a,130bによって回転支持される。また、軸部材210における一側の部分はハウジング250内に収容され、他側の部分はハウジング250内から外側へ向けて延在する。
軸受130a,130bの内輪131a,131bは、軸部材210の外周面に嵌合される。具体的には、軸受構造12において、軸受130aの内輪131aは、軸部材210の一側の外周面211に嵌合される。一方、軸受130bの内輪131bは、軸部材210の他側の外周面213に嵌合される。また、第2の実施形態では、上述した第1の実施形態と同様に、内輪131の軸方向についての軸部材210との相対的な移動は規制される。具体的には、内輪131a,131bは、軸部材210の外周面211,213に、しまりばめの状態で嵌合される。なお、軸部材210の中央側の外周面212には、モータ80の回転子820が嵌合される。
軸部材210には、内輪131が嵌合される外周面から径方向外側へ延在する軸部材延在部が設けられる。具体的には、軸部材210の一側の端部には、外周面211から径方向外側へ延在する延在部214が設けられる。一方、軸部材210の他側において、外周面213から径方向外側へ延在する延在部215が設けられる。軸部材210において、延在部214及び延在部215が、上記の軸部材延在部に相当する。
延在部214は、内輪131aに対して他方の軸受としての軸受130b側と逆側に位置し、延在部214の内輪131a側の端面216は、内輪131aの軸受130b側と逆側の側面と当接する。換言すると、延在部214は内輪131aに対して一側に位置し、端面216は内輪131aの一側の側面と当接する。それにより、軸受130aの軸部材210に対する軸方向についての位置決めをすることができる。一方、延在部215は、内輪131bに対して他方の軸受としての軸受130a側と逆側に位置し、延在部215の内輪131b側の端面217は、内輪131bの軸受130a側と逆側の側面と当接する。換言すると、延在部215は内輪131bに対して他側に位置し、端面217は内輪131bの他側の側面と当接する。それにより、軸受130bの軸部材210に対する軸方向についての位置決めをすることができる。
ハウジング250は、上述した第1の実施形態と同様に、軸部材210の一部、一対の軸受130a,130b、及びモータ80を収容する。また、ハウジング250の他側の端部には、軸部材210の他側の部分が挿通する開口部が設けられる。また、ハウジング250の中央側には、モータ80の形状に対応した形状を有する凹部253が設けられる。ゆえに、ハウジング250の内径は、軸方向についての中央側において、他の部分と比較して大きくなっている。また、ハウジング250の一側の端部には、軸方向に直交する方向に延在する底部251が設けられる。ハウジング250の内部空間の一側は、底部251によって外部から離隔される。ハウジング250には、軸受130a,130bの外輪132a,132bが取り付けられる。それにより、ハウジング250は、軸部材210に対して、一対の軸受130a,130bを介して、相対的に回転自在に設けられる。
軸受130a,130bの外輪132a,132bは、ハウジング250の内周面に嵌合される。具体的には、軸受構造12において、軸受130aの外輪132aは、ハウジング250の一側の内周面252に嵌合される。一方、軸受130bの外輪132bは、ハウジング250の他側の内周面254に嵌合される。第2の実施形態では、上述した第1の実施形態と同様に、外輪132は、ハウジング250に対して、軸方向に相対的に移動自在に設けられる。具体的には、外輪132a,132bは、ハウジング250の内周面252,254に、すきまばめの状態で嵌合される。
ハウジング250には、外輪132が嵌合される内周面から径方向内側へ延在するハウジング延在部が設けられる。具体的には、ハウジング250の一側において、内周面252から径方向内側へ延在する延在部255が設けられる。一方、ハウジング250の他側において、外輪132bが嵌合される内周面254から径方向内側へ延在する延在部256が設けられる。ハウジング250において、延在部255及び延在部256が、上記のハウジング延在部に相当する。第2の実施形態では、第1の実施形態と異なり、当該ハウジング延在部は外輪132に対して他方の軸受130側に位置する。また、当該ハウジング延在部の外輪132側の端面と外輪132の側面との間に、膨張部材170が設けられる。
具体的には、延在部255は、外輪132aに対して他方の軸受としての軸受130b側に位置する。ゆえに、延在部255の外輪132a側の端面258は、外輪132aの軸受130b側の側面と対向する。換言すると、延在部255は外輪132aに対して他側に位置し、端面258は外輪132aの他側の側面と対向する。一方、延在部256は、外輪132bに対して他方の軸受としての軸受130a側に位置する。ゆえに、延在部256の外輪132b側の端面259は、外輪132bの軸受130a側の側面と対向する。換言すると、延在部256は外輪132bに対して一側に位置し、端面259は外輪132bの一側の側面と対向する。このように、ハウジング250には、外輪132の側面と対向する対向面に相当する端面258及び端面259が設けられる。
外輪132の側面と、ハウジング250の端面258,259の各々との間には、膨張部材170a,170bが設けられる。具体的には、外輪132aの他側の側面と端面258との間には、170aが設けられる。一方、外輪132bの一側の側面と端面259との間には、170bが設けられる。ゆえに、第2の実施形態では、上述した第1の実施形態と同様に、膨張部材170は、熱膨張することによって外輪132を軸方向に沿って押圧可能である。
図2では、モータ80の低負荷時における膨張部材170が実線によって示されており、モータ80の高負荷時における膨張部材170が破線によって示されている。モータ80の高負荷時において、膨張部材170の温度は比較的高くなるので、膨張部材170が熱膨張することによって、外輪132は軸方向に沿って押圧される。具体的には、外輪132aの他側の側面とハウジング250の端面258の間に設けられた膨張部材170aが熱膨張することによって、外輪132aは、一側へ押圧される。一方、外輪132bの一側の側面とハウジング250の端面259の間に設けられた膨張部材170bが熱膨張することによって、外輪132bは、他側へ押圧される。
第2の実施形態に係る軸受構造12では、外輪132は、上述したように、ハウジング250に対して軸方向に相対的に移動自在に設けられる。よって、モータ80の高負荷時において、外輪132は、膨張部材170により軸方向に押圧されることによって、軸方向に沿って移動する。具体的には、外輪132aは、膨張部材170aにより一側へ押圧されることによって、一側へ移動する。一方、外輪132bは、膨張部材170bにより他側へ押圧されることによって、他側へ移動する。
よって、第2の実施形態によれば、上述した第1の実施形態と同様に、軸受の130の内輪131と外輪132との間に生じる電位差が増大しやすくなるモータ80の高負荷時において、軸受130の内輪131と外輪132との間で電流を流れやすくすることができる。それにより、軸受130内部の油膜において絶縁破壊が生じ得る電圧に当該電位差が到達するより以前において、軸受130の内輪131と外輪132との間で電流を流すことができる。ゆえに、軸受130の内輪131と外輪132との間に過大な電流が流れることを適切に防止することができる。よって、軸受130における電食の発生をより効果的に防止することができる。
また、第2の実施形態によれば、上述した第1の実施形態と同様に、モータ80の低負荷時には、膨張部材170によって外輪132は押圧されない、又は、外輪132を押圧する力は比較的小さくなる。よって、軸受の130の内輪131と外輪132との間に生じる電位差が比較的小さくなるモータ80の低負荷時において、外輪132が膨張部材170に押圧されることにより軸受130の内部における各部材間の摩擦が増大することを抑制することができる。
なお、上記では、一対の軸受130a,130bの双方において、外輪132がハウジング250に対して軸方向に相対的に移動自在に設けられる例について説明したが、上述した第1の実施形態と同様に、外輪132がハウジング250に対して軸方向に相対的に移動自在に設けられる軸受130は、一対の軸受130a,130bのいずれか一方であってもよい。そのような場合であっても、一方の軸受130について、高負荷時において、軸受130の内輪131と外輪132との間で電流を流れやすくすることができるので、軸受130における電食の発生をより効果的に防止することができる。
<3.第3の実施形態>
続いて、図3を参照して、本発明の第3の実施形態に係る軸受構造13について説明する。図3は、第3の実施形態に係る軸受構造13の構成の一例を示す断面図である。具体的には、図3は、軸受構造13における軸部材310の中心軸を含む断面についての断面図である。第3の実施形態では、図1を参照して説明した第1の実施形態と比較して、軸受130の周囲の構成が異なる。具体的には、第3の実施形態では、上述した第1の実施形態と異なり、内輪131が軸部材310に対して、軸方向に相対的に移動自在に設けられる。また、第3の実施形態では、軸部材310において内輪131が嵌合される外周面から径方向外側へ延在する軸部材延在部の内輪131側の端面と内輪131の側面との間に膨張部材170が設けられる。
軸受構造13は、図3に示したように、軸部材310と、一対の軸受130a,130bと、ハウジング350と、を備える。
軸部材310は、上述した第1の実施形態と同様に、モータ80の回転子820の内周部に挿通された状態で固定され、回転子820と一体として回転可能である。また、軸部材310は、一対の軸受130a,130bによって回転支持される。また、軸部材310における一側の部分はハウジング350内に収容され、他側の部分はハウジング350内から外側へ向けて延在する。
ハウジング350は、上述した第1の実施形態と同様に、軸部材310の一部、一対の軸受130a,130b、及びモータ80を収容する。また、ハウジング350の他側の端部には、軸部材310の他側の部分が挿通する開口部が設けられる。また、ハウジング350の中央側には、モータ80の形状に対応した形状を有する凹部353が設けられる。ゆえに、ハウジング350の内径は、軸方向についての中央側において、他の部分と比較して大きくなっている。また、ハウジング350の一側の端部には、軸方向に直交する方向に延在する底部351が設けられる。ハウジング350の内部空間の一側は、底部351によって外部から離隔される。ハウジング350には、軸受130a,130bの外輪132a,132bが取り付けられる。それにより、ハウジング350は、軸部材310に対して、一対の軸受130a,130bを介して、相対的に回転自在に設けられる。
軸受130a,130bの外輪132a,132bは、ハウジング350の内周面に嵌合される。具体的には、軸受構造13において、軸受130aの外輪132aは、ハウジング350の一側の内周面352に嵌合される。一方、軸受130bの外輪132bは、ハウジング350の他側の内周面354に嵌合される。第3の実施形態では、上述した第1の実施形態と異なり、外輪132の軸方向についてのハウジング350との相対的な移動は規制される。具体的には、外輪132a,132bは、ハウジング350の内周面352,354に、しまりばめの状態で嵌合される。
ハウジング350には、外輪132が嵌合される内周面から径方向内側へ延在するハウジング延在部が設けられる。具体的には、ハウジング350の一側において、内周面352から径方向内側へ延在する延在部355が設けられる。一方、ハウジング350の他側において、外輪132bが嵌合される内周面354から径方向内側へ延在する延在部356が設けられる。ハウジング350において、延在部355及び延在部356が、上記のハウジング延在部に相当する。
延在部355は、外輪132aに対して他方の軸受としての軸受130b側に位置し、延在部355の外輪132a側の端面358は、外輪132aの軸受130b側の側面と当接する。換言すると、延在部355は外輪132aに対して他側に位置し、端面358は外輪132aの他側の側面と当接する。一方、延在部356は、外輪132bに対して他方の軸受としての軸受130a側に位置し、延在部356の外輪132b側の端面359は、外輪132bの軸受130a側の側面と当接する。換言すると、延在部356は外輪132bに対して一側に位置し、端面359は外輪132bの一側の側面と当接する。それにより、軸受130bのハウジング350に対する軸方向についての位置決めをすることができる。
軸受130a,130bの内輪131a,131bは、軸部材310の外周面に嵌合される。具体的には、軸受構造13において、軸受130aの内輪131aは、軸部材310の一側の外周面311に嵌合される。一方、軸受130bの内輪131bは、軸部材310の他側の外周面313に嵌合される。また、第3の実施形態では、上述した第1の実施形態と異なり、内輪131が軸部材310に対して、軸方向に相対的に移動自在に設けられる。具体的には、内輪131a,131bは、軸部材310の外周面311,313に、すきまばめの状態で嵌合される。なお、軸部材310の中央側の外周面312には、モータ80の回転子820が嵌合される。
軸部材310には、内輪131が嵌合される外周面から径方向外側へ延在する軸部材延在部が設けられる。具体的には、軸部材310の一側の端部には、外周面311から径方向外側へ延在する延在部314が設けられる。一方、軸部材310の他側において、外周面313から径方向外側へ延在する延在部315が設けられる。軸部材310において、延在部314及び延在部315が、上記の軸部材延在部に相当する。第3の実施形態では、当該軸部材延在部は内輪131に対して他方の軸受130側と逆側に位置する。また、当該軸部材延在部の内輪131側の端面と内輪131の側面との間に、膨張部材170が設けられる。
具体的には、延在部314は、内輪131aに対して他方の軸受としての軸受130b側と逆側に位置する。ゆえに、延在部314の内輪131a側の端面316は、内輪131aの軸受130b側と逆側の側面と対向する。換言すると、延在部314は内輪131aに対して一側に位置し、端面316は内輪131aの一側の側面と対向する。一方、延在部315は、内輪131bに対して他方の軸受としての軸受130a側と逆側に位置する。ゆえに、延在部315の内輪131b側の端面317は、内輪131bの軸受130a側と逆側の側面と対向する。換言すると、延在部315は内輪131bに対して他側に位置し、端面317は内輪131bの他側の側面と対向する。このように、軸部材310には、内輪131の側面と対向する対向面に相当する端面316及び端面317が設けられる。
第3の実施形態では、内輪131の側面と、軸部材310の端面316,317の各々との間に、膨張部材170a,170bが設けられる。具体的には、内輪131aの一側の側面と端面316との間には、170aが設けられる。一方、内輪131bの他側の側面と端面317との間には、170bが設けられる。ここで、膨張部材170は、上述したように、熱膨張時において軸方向に沿って伸長可能である。ゆえに、第3の実施形態では、膨張部材170は、熱膨張することによって内輪131を軸方向に沿って押圧可能である。なお、第3の実施形態では、膨張部材170の内径及び外径は、内輪131の内径及び外径とそれぞれ略一致し得る。また、膨張部材170a,170bは、軸部材310の外周面311,313に外接して設けられ得る。
図3では、モータ80の低負荷時における膨張部材170が実線によって示されており、モータ80の高負荷時における膨張部材170が破線によって示されている。モータ80の高負荷時において、膨張部材170の温度は比較的高くなるので、膨張部材170が熱膨張することによって、内輪131は軸方向に沿って押圧される。具体的には、内輪131aの一側の側面と軸部材310の端面316の間に設けられた膨張部材170aが熱膨張することによって、内輪131aは、他側へ押圧される。一方、内輪131bの他側の側面と軸部材310の端面317の間に設けられた膨張部材170bが熱膨張することによって、内輪131bは、一側へ押圧される。
第3の実施形態に係る軸受構造13では、内輪131は、上述したように、軸部材310に対して軸方向に相対的に移動自在に設けられる。よって、モータ80の高負荷時において、内輪131は、膨張部材170により軸方向に押圧されることによって、軸方向に沿って移動する。具体的には、内輪131aは、膨張部材170aにより他側へ押圧されることによって、他側へ移動する。一方、内輪131bは、膨張部材170bにより一側へ押圧されることによって、一側へ移動する。それにより、軸受130において、内輪131及び外輪132の双方に接触する転動体133の数を増大させることができる。また、転動体133と内輪131及び外輪132の各々との間に介在する油膜の膜厚を薄くすることができる。
よって、第3の実施形態によれば、上述した第1の実施形態と同様に、軸受の130の内輪131と外輪132との間に生じる電位差が増大しやすくなるモータ80の高負荷時において、軸受130の内輪131と外輪132との間で電流を流れやすくすることができる。それにより、軸受130内部の油膜において絶縁破壊が生じ得る電圧に当該電位差が到達するより以前において、軸受130の内輪131と外輪132との間で電流を流すことができる。ゆえに、軸受130の内輪131と外輪132との間に過大な電流が流れることを適切に防止することができる。よって、軸受130における電食の発生をより効果的に防止することができる。
また、第3の実施形態によれば、モータ80の低負荷時には、膨張部材170によって内輪131は押圧されない、又は、内輪131を押圧する力は比較的小さくなる。よって、軸受の130の内輪131と外輪132との間に生じる電位差が比較的小さくなるモータ80の低負荷時において、内輪131が膨張部材170に押圧されることにより軸受130の内部における各部材間の摩擦が増大することを抑制することができる。
なお、上記では、一対の軸受130a,130bの双方において、内輪131が軸部材310に対して軸方向に相対的に移動自在に設けられる例について説明したが、上述した第1の実施形態と同様に、内輪131が軸部材310に対して軸方向に相対的に移動自在に設けられる軸受130は、一対の軸受130a,130bのいずれか一方であってもよい。そのような場合であっても、一方の軸受130について、高負荷時において、軸受130の内輪131と外輪132との間で電流を流れやすくすることができるので、軸受130における電食の発生をより効果的に防止することができる。
<4.第4の実施形態>
続いて、図4を参照して、本発明の第4の実施形態に係る軸受構造14について説明する。図4は、第4の実施形態に係る軸受構造14の構成の一例を示す断面図である。具体的には、図4は、軸受構造14における軸部材410の中心軸を含む断面についての断面図である。第4の実施形態では、図3を参照して説明した第3の実施形態と比較して、軸受130の周囲の構成が異なる。具体的には、第4の実施形態では、上述した第3の実施形態と異なり、軸部材410において内輪131が嵌合される外周面から径方向外側へ延在する軸部材延在部が内輪131に対して他方の軸受130側に位置する。また、第4の実施形態では、当該軸部材延在部の内輪131側の端面と内輪131の側面との間に膨張部材170が設けられる。
軸受構造14は、図4に示したように、軸部材410と、一対の軸受130a,130bと、ハウジング450と、を備える。
軸部材410は、上述した第3の実施形態と同様に、モータ80の回転子820の内周部に挿通された状態で固定され、回転子820と一体として回転可能である。また、軸部材410は、一対の軸受130a,130bによって回転支持される。また、軸部材410における一側の部分はハウジング450内に収容され、他側の部分はハウジング450内から外側へ向けて延在する。
ハウジング450は、上述した第3の実施形態と同様に、軸部材410の一部、一対の軸受130a,130b、及びモータ80を収容する。また、ハウジング450の他側の端部には、軸部材410の他側の部分が挿通する開口部が設けられる。また、ハウジング450の中央側には、モータ80の形状に対応した形状を有する凹部453が設けられる。ゆえに、ハウジング450の内径は、軸方向についての中央側において、他の部分と比較して大きくなっている。また、ハウジング450の一側の端部には、軸方向に直交する方向に延在する底部451が設けられる。ハウジング450の内部空間の一側は、底部451によって外部から離隔される。ハウジング450には、軸受130a,130bの外輪132a,132bが取り付けられる。それにより、ハウジング450は、軸部材410に対して、一対の軸受130a,130bを介して、相対的に回転自在に設けられる。
軸受130a,130bの外輪132a,132bは、ハウジング450の内周面に嵌合される。具体的には、軸受構造14において、軸受130aの外輪132aは、ハウジング450の一側の内周面452に嵌合される。一方、軸受130bの外輪132bは、ハウジング450の他側の内周面454に嵌合される。第4の実施形態では、上述した第3の実施形態と同様に、外輪132の軸方向についてのハウジング450との相対的な移動は規制される。具体的には、外輪132a,132bは、ハウジング450の内周面452,454に、しまりばめの状態で嵌合される。
ハウジング450には、外輪132が嵌合される内周面から径方向内側へ延在するハウジング延在部が設けられる。具体的には、ハウジング450の一側において、内周面452から径方向内側へ延在する延在部455が設けられる。より具体的には、延在部455は、内周面が底部451の他側の端面と直交して接続するように設けられる。一方、ハウジング450の他側の端部において、外輪132bが嵌合される内周面454から径方向内側へ延在する延在部456が設けられる。ハウジング450において、延在部455及び延在部456が、上記のハウジング延在部に相当する。
延在部455は、外輪132aに対して他方の軸受としての軸受130b側と逆側に位置し、延在部455の外輪132a側の端面458は、外輪132aの軸受130b側と逆側の側面と当接する。換言すると、延在部455は外輪132aに対して一側に位置し、端面458は外輪132aの一側の側面と当接する。一方、延在部456は、外輪132bに対して他方の軸受としての軸受130a側と逆側に位置し、延在部456の外輪132b側の端面459は、外輪132bの軸受130a側と逆側の側面と当接する。換言すると、延在部456は外輪132bに対して他側に位置し、端面459は外輪132bの他側の側面と当接する。それにより、軸受130bのハウジング450に対する軸方向についての位置決めをすることができる。
軸受130a,130bの内輪131a,131bは、軸部材410の外周面に嵌合される。具体的には、軸受構造14において、軸受130aの内輪131aは、軸部材410の一側の端部の外周面411に嵌合される。一方、軸受130bの内輪131bは、軸部材410の他側の外周面413に嵌合される。第4の実施形態では、上述した第3の実施形態と同様に、内輪131が軸部材410に対して、軸方向に相対的に移動自在に設けられる。具体的には、内輪131a,131bは、軸部材410の外周面411,413に、すきまばめの状態で嵌合される。なお、軸部材410の中央側の外周面412には、モータ80の回転子820が嵌合される。
軸部材410には、内輪131が嵌合される外周面から径方向外側へ延在する軸部材延在部が設けられる。具体的には、軸部材410の一側において、外周面411から径方向外側へ延在する延在部414が設けられる。一方、軸部材410の他側において、外周面413から径方向外側へ延在する延在部415が設けられる。軸部材410において、延在部414及び延在部415が、上記の軸部材延在部に相当する。第4の実施形態では、当該軸部材延在部は内輪131に対して他方の軸受130側に位置する。また、当該軸部材延在部の内輪131側の端面と内輪131の側面との間に、膨張部材170が設けられる。
具体的には、延在部414は、内輪131aに対して他方の軸受としての軸受130b側に位置する。ゆえに、延在部414の内輪131a側の端面416は、内輪131aの軸受130b側の側面と対向する。換言すると、延在部414は内輪131aに対して他側に位置し、端面416は内輪131aの他側の側面と対向する。一方、延在部415は、内輪131bに対して他方の軸受としての軸受130a側に位置する。ゆえに、延在部415の内輪131b側の端面417は、内輪131bの軸受130a側の側面と対向する。換言すると、延在部415は内輪131bに対して一側に位置し、端面417は内輪131bの一側の側面と対向する。このように、軸部材410には、内輪131の側面と対向する対向面に相当する端面416及び端面417が設けられる。
第4の実施形態では、内輪131の側面と、軸部材410の端面416,417の各々との間に、膨張部材170a,170bが設けられる。具体的には、内輪131aの他側の側面と端面416との間には、170aが設けられる。一方、内輪131bの一側の側面と端面417との間には、170bが設けられる。ゆえに、第4の実施形態では、上述した第3の実施形態と同様に、膨張部材170は、熱膨張することによって内輪131を軸方向に沿って押圧可能である。なお、第4の実施形態では、上述した第3の実施形態と同様に、膨張部材170の内径及び外径は、内輪131の内径及び外径とそれぞれ略一致し得る。また、膨張部材170a,170bは、軸部材410の外周面411,413に外接して設けられ得る。
図4では、モータ80の低負荷時における膨張部材170が実線によって示されており、モータ80の高負荷時における膨張部材170が破線によって示されている。モータ80の高負荷時において、膨張部材170の温度は比較的高くなるので、膨張部材170が熱膨張することによって、内輪131は軸方向に沿って押圧される。具体的には、内輪131aの他側の側面と軸部材410の端面416の間に設けられた膨張部材170aが熱膨張することによって、内輪131aは、一側へ押圧される。一方、内輪131bの一側の側面と軸部材410の端面417の間に設けられた膨張部材170bが熱膨張することによって、内輪131bは、他側へ押圧される。
第4の実施形態に係る軸受構造14では、内輪131は、上述したように、軸部材410に対して軸方向に相対的に移動自在に設けられる。よって、モータ80の高負荷時において、内輪131は、膨張部材170により軸方向に押圧されることによって、軸方向に沿って移動する。具体的には、内輪131aは、膨張部材170aにより一側へ押圧されることによって、一側へ移動する。一方、内輪131bは、膨張部材170bにより他側へ押圧されることによって、他側へ移動する。
よって、第4の実施形態によれば、上述した第1の実施形態と同様に、軸受の130の内輪131と外輪132との間に生じる電位差が増大しやすくなるモータ80の高負荷時において、軸受130の内輪131と外輪132との間で電流を流れやすくすることができる。それにより、軸受130内部の油膜において絶縁破壊が生じ得る電圧に当該電位差が到達するより以前において、軸受130の内輪131と外輪132との間で電流を流すことができる。ゆえに、軸受130の内輪131と外輪132との間に過大な電流が流れることを適切に防止することができる。よって、軸受130における電食の発生をより効果的に防止することができる。
また、第4の実施形態によれば、上述した第3の実施形態と同様に、モータ80の低負荷時には、膨張部材170によって内輪131は押圧されない、又は、内輪131を押圧する力は比較的小さくなる。よって、軸受の130の内輪131と外輪132との間に生じる電位差が比較的小さくなるモータ80の低負荷時において、内輪131が膨張部材170に押圧されることにより軸受130の内部における各部材間の摩擦が増大することを抑制することができる。
なお、上記では、一対の軸受130a,130bの双方において、内輪131が軸部材410に対して軸方向に相対的に移動自在に設けられる例について説明したが、上述した第1の実施形態と同様に、内輪131が軸部材410に対して軸方向に相対的に移動自在に設けられる軸受130は、一対の軸受130a,130bのいずれか一方であってもよい。そのような場合であっても、一方の軸受130について、高負荷時において、軸受130の内輪131と外輪132との間で電流を流れやすくすることができるので、軸受130における電食の発生をより効果的に防止することができる。
<5.変形例>
続いて、図5〜図8を参照して、各種変形例について説明する。
(5−1.第1の変形例)
まず、図5〜図7を参照して、第1の変形例に係る軸受構造60について説明する。図5は、第1の変形例に係る軸受構造60の構成の一例を示す断面図である。具体的には、図5は、軸受構造60における軸部材110の中心軸を含む断面についての断面図である。なお、図5では、軸受構造60の他側の部分の図示は省略されている。図6は、第1の変形例に係る膨張部材670の構成の一例を示す断面図である。図7は、第1の変形例に係る膨張部材670の構成の一例を示す斜視図である。第1の変形例では、図1を参照して説明した第1の実施形態と比較して、膨張部材670の構成が異なる。ゆえに、以下では、主に膨張部材670について説明する。
第1の変形例では、上述した第1の実施形態と同様に、内輪131の軸方向についての軸部材110との相対的な移動は規制される。具体的には、内輪131aは、軸部材110の外周面111に、しまりばめの状態で嵌合される。また、外輪132は、ハウジング150に対して、軸方向に相対的に移動自在に設けられる。具体的には、外輪132aは、ハウジング150の内周面152に、すきまばめの状態で嵌合される。また、底部151の外輪132a側の端面158は、外輪132aの一側の側面と対向する。また、膨張部材670は、外輪132aの一側の側面と、ハウジング150の端面158との間に設けられる。
図5では、モータ80の低負荷時における膨張部材670が実線によって示されており、モータ80の高負荷時における膨張部材670が破線によって示されている。第1の変形例に係る膨張部材670は、図5に示したように、熱膨張時において軸方向へ曲げ変形可能である。膨張部材670は、例えば、モータ80の低負荷時において、一側から他側へ向かうにつれて縮径するテーパ管形状を有している。膨張部材670の一側の端部に相当する大径部675がハウジング150の端面158と当接し、膨張部材670の他側の端部に相当する小径部676が軸受130aの一側の側面と当接する。
膨張部材670は、具体的には、熱膨張係数の異なる2種類の金属部材を貼り合わせて形成されるバイメタルである。例えば、膨張部材670は、図6及び図7に示したように、外周側に位置する第1金属部材671と、内周側に位置する第2金属部材672と、を積層して形成される。第1金属部材671及び第2金属部材672は互いに異なる熱膨張係数を有しており、第1金属部材671の内周部と第2金属部材672の外周部とが互いに貼り合されている。具体的には、第2金属部材672は、第1金属部材671と比較して、大きな熱膨張係数を有する。ゆえに、モータ80の高負荷時には、図6及び図7に示したように、膨張部材670の温度の上昇に起因して、小径部676が大径部675から遠ざかる方向に曲げ変形し得る。
よって、膨張部材670は、図5に示したように、熱膨張時に相当するモータ80の高負荷時において、軸方向へ曲げ変形可能である。従って、膨張部材670は、熱膨張することによって外輪132aを軸方向に沿って押圧可能である。ゆえに、第1の変形例では、モータ80の高負荷時において、外輪132は、膨張部材670により軸方向に押圧されることによって、軸方向に沿って移動する。それにより、第1の変形例によれば、上述した第1の実施形態と同様の効果を奏することが可能である。
なお、上記では、第1の実施形態に係る軸受構造11における膨張部材170を熱膨張時において軸方向へ曲げ変形可能な膨張部材670へ置き換えた例について説明したが、第2〜第4の実施形態に係る軸受構造12〜14における膨張部材170を膨張部材670へ置き換えてもよい。そのような場合であっても、第1の実施形態に係る軸受構造11における膨張部材170を膨張部材670へ置き換えた場合と同様の効果を奏することが可能である。
(5−2.第2の変形例)
続いて、図8を参照して、第2の変形例に係る軸受構造70について説明する。図8は、第2の変形例に係る軸受構造70の構成の一例を示す断面図である。具体的には、図8は、軸受構造70における軸部材710の中心軸を含む断面についての断面図である。また、図8では、モータ80の低負荷時における膨張部材170が実線によって示されており、モータ80の高負荷時における膨張部材170が破線によって示されている。第2の変形例では、図1を参照して説明した第1の実施形態と異なり、軸部材710が間接的にモータ80に連結される。
軸受構造70は、図8に示したように、軸部材710と、一対の軸受130a,130bと、ハウジング750と、を備える。
軸部材710は、ハウジング750内において、一対の軸受130a,130bによって回転支持される。また、軸部材710における一側の部分及び他側の部分は、ハウジング750内から外側へ向けて延在する。ゆえに、ハウジング750の一側及び他側の端部には、軸部材710の一側の部分及び他側の部分が挿通する開口部がそれぞれ設けられる。図8では、ハウジング750より外側における軸部材710の一側の部分の詳細について、図示を省略しているが、例えば、軸部材710の一側の部分は、軸受構造70が適用される駆動系の一部を構成する他の軸部材と、ギヤやクラッチ等の機械要素を介して接続される。
また、ハウジング150より外側における軸部材710の他側の部分は、モータ80の出力軸910と、例えばクラッチC10を介して接続されている。このように、第2の変形例に係る軸部材710は、間接的にモータ80に連結される。モータ80は、ケース920に収容されており、出力軸910は回転子820と直接的に連結している。モータ80から出力される回転動力は、出力軸910及びクラッチC10を介して軸部材710へ伝達される。
第2の変形例では、上述した第1の実施形態と同様に、内輪131の軸方向についての軸部材710との相対的な移動は規制される。具体的には、内輪131a及び内輪131bは、軸部材710の一側の外周面711及び他側の外周面713に、しまりばめの状態でそれぞれ嵌合される。また、軸部材710の一側及び他側において、外周面711及び外周面713から径方向外側へそれぞれ延在する延在部714及び延在部715が設けられる。内輪131a及び内輪131bは、延在部714の一側の端面716及び延在部715の他側の端面717と当接して位置決めされる。
また、外輪132は、ハウジング750に対して、軸方向に相対的に移動自在に設けられる。具体的には、外輪132a及び外輪132bは、ハウジング750の一側の内周面752及び他側の内周面754に、すきまばめの状態でそれぞれ嵌合される。また、ハウジング750の一側及び他側の端部には、内周面752及び内周面754から径方向内側へそれぞれ延在する延在部755及び延在部756が設けられる。延在部755及び延在部756は、外輪132aの一側の側面及び外輪132bの他側の側面と対向する。また、延在部755と外輪132aの一側の側面との間及び延在部756と外輪132bの他側の側面との間には、膨張部材170a及び膨張部材170bがそれぞれ設けられる。なお、延在部755及び延在部756は、ハウジング750において外輪132が嵌合される内周面から径方向内側へ延在するハウジング延在部に相当する。
第2の変形例では、軸部材710は、上述したように、モータ80と間接的に連結される。このような場合においても、モータ80の駆動に伴って、軸部材710を回転支持する軸受の130の内輪131と外輪132との間に電位差が生じ得る。また、軸部材710は出力軸910及びクラッチC10を介してモータ80と連結されるので、モータ80の高負荷時において、軸受構造70を構成する各部材の温度は、低負荷時と比較して高くなり得る。ゆえに、モータ80の高負荷時において、膨張部材170の温度は比較的高くなるので、図8に示したように膨張部材170が熱膨張することによって、外輪132は軸方向に沿って押圧される。よって、モータ80の高負荷時において、外輪132は、膨張部材170により軸方向に押圧されることによって、軸方向に沿って移動する。それにより、第2の変形例によれば、上述した第1の実施形態と同様の効果を奏することが可能である。
なお、上記では、ハウジング延在部が外輪132に対して他方の軸受130側と逆側に位置する例について説明したが、ハウジング延在部は外輪132に対して他方の軸受130側に位置してもよい。その場合にも、上述した第1の実施形態と同様の効果を奏することが可能である。また、上記では、外輪132が軸部材710に対して、軸方向に相対的に移動自在に設けられる例について説明したが、内輪131が軸部材710に対して、軸方向に相対的に移動自在に設けられてもよい。その場合には、軸部材延在部の内輪131側の端面と内輪131の側面との間に膨張部材170が設けられる。それにより、上述した第1の実施形態と同様の効果を奏することが可能である。
<6.むすび>
以上説明したように、各実施形態によれば、一対の軸受130a,130bのうちの少なくとも一方の軸受130において、内輪131及び外輪132のいずれか一方の軌道輪は、当該一方の軌道輪が嵌合される嵌合部材としての軸部材又はハウジングに対して、軸方向に相対的に移動自在に設けられる。また、当該嵌合部材には、当該一方の軌道輪の側面と対向する対向面が設けられる。また、当該一方の軌道輪の側面と、当該嵌合部材の対向面との間には、熱膨張することによって当該一方の軌道輪を軸方向に沿って押圧可能な膨張部材171が設けられる。
ゆえに、膨張部材170の温度が比較的高くなるモータ80の高負荷時において、膨張部材170が熱膨張することによって当該一方の軌道輪は軸方向に沿って押圧される。各実施形態では、当該一方の軌道輪は、上述したように、当該嵌合部材に対して軸方向に相対的に移動自在に設けられる。よって、モータ80の高負荷時において、当該一方の軌道輪は、膨張部材170により軸方向に押圧されることによって、軸方向に沿って移動する。それにより、軸受130において、内輪131及び外輪132の双方に接触する転動体133の数を増大させることができる。また、転動体133と内輪131及び外輪132の各々との間に介在する油膜の膜厚を薄くすることができる。ゆえに、軸受130の内輪131と外輪132との間で電流を流れやすくすることができる。
従って、軸受130内部の油膜において絶縁破壊が生じ得る電圧に当該電位差が到達するより以前において、軸受130の内輪131と外輪132との間で電流を流すことができる。ゆえに、軸受130の内輪131と外輪132との間に過大な電流が流れることを適切に防止することができる。よって、軸受130における電食の発生をより効果的に防止することができる。
また、各実施形態によれば、モータ80の低負荷時には、膨張部材170によって当該一方の軌道輪は押圧されない、又は、当該一方の軌道輪を押圧する力は比較的小さくなる。よって、軸受の130の内輪131と外輪132との間に生じる電位差が比較的小さくなるモータ80の低負荷時において、外輪132が膨張部材170に押圧されることにより軸受130の内部における各部材間の摩擦が増大することを抑制することができる。
なお、第1の実施形態及び第2の実施形態では、外輪132が上記の一方の軌道輪に該当し、ハウジングが上記の嵌合部材に該当する。ゆえに、第1の実施形態及び第2の実施形態では、外輪132がハウジングに対して軸方向に相対的に移動自在に設けられる軸受構造に用いられる軸受130における電食の発生をより効果的に防止することができる。一方、第3の実施形態及び第4の実施形態では、内輪131が上記の一方の軌道輪に該当し、軸部材が上記の嵌合部材に該当する。ゆえに、第3の実施形態及び第4の実施形態では、内輪131が軸部材に対して軸方向に相対的に移動自在に設けられる軸受構造に用いられる軸受130における電食の発生をより効果的に防止することができる。
また、上記では、図面を参照して、膨張部材170,670について説明したが、上記の一方の軌道輪の側面と、上記の嵌合部材の対向面との間に設けられる膨張部材は、係る例に限定されず、熱膨張することによって上記の一方の軌道輪を軸方向に沿って押圧可能であれば他の構成を有してもよい。
また、上記では、各軸受構造が一対の軸受130a,130bを含む例について説明したが、各軸受構造は、軸受130a,130bと異なる他の軸受を含んでもよく、軸部材は、当該他の軸受によって回転支持されてもよい。
また、上記では、各図面を参照して、各軸受構造の各構成要素について説明したが、各構成要素の形状は各図面に対応する例に限定されず、図面に示した形状は一例に過ぎない。例えば、各構成要素の形状は、軸方向について対称でなくともよく、中心軸について回転対称でなくともよい。また、各構成要素は、複数の部材によって形成されてもよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。