JP6747911B2 - プレススルー包装体 - Google Patents
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Description
従来、薬剤の包装には、樹脂シートを成形して被収容物を収容するポケット部を複数設けた容器と、アルミニウム箔の片面に熱接着層を設けた蓋材とから構成されるPTPが汎用されている。蓋材は、ヒートシールにより容器に貼り合わされ、ポケット部の開口を封止する。PTPのポケット部に収容された薬剤は、ポケット部の膨らみを手指で押し込み、該ポケット部に対応する位置の蓋材を破断させて取り出される。
このようなPTPにおいては、薬剤の取り出しの際、アルミニウム箔の破片が生じることがあり、薬剤を服用する場合に、誤って薬剤と共にアルミニウム箔の破片を飲み込んでしまうという事故が報告されている。そこで、蓋材の誤飲時の人体への負荷を軽減する目的で、蓋材の基材に紙を用いることが提案されている(特許文献1)。
また、病院や調剤薬局などでは、薬剤を飲み方ごとに一つの包装にまとめる所謂一包化対応のため1日に数十〜数百の薬剤を扱う関係上、PTPから薬剤を1つずつ取り出すのは手間がかかり、一度に多数の薬剤を容易に取り出したいという要望がある。そこで、PTPにイージーピール機能を持たせることが提案されている。
たとえばプレススルー機能とイージーピール機能とを併せ持つPTPとして、蓋材の基材として紙基材とアルミニウム箔層の積層材を用い、ポケット部と対応する位置において蓋材の紙基材の部分にのみ切り込みを設け、容器と蓋材の熱接着層との間の剥離強度を特定の範囲内にしたものが提案されている(特許文献2)。
このものでは加工が煩雑であること、また蓋材がアルミニウム箔層を含むため、蓋材の誤飲時の人体への負荷を軽減する効果は不充分である。さらには予め紙基材に切り込みが設けられているため、ポケット部を押し込んで被収容物をひとつずつ取り出す場合に、隣のポケット部まで開封してしまう虞がある。
このものでは、薬剤の取り出しはイージーピールでは行えず、また蓋材を構成する素材にやはりアルミニウムが含まれているため、誤飲時のダメージ軽減効果は低い。
[1]容器と蓋材とを備えた薬剤用プレススルー包装体において、
前記蓋材は、パルプにより構成された基材と前記基材の少なくとも一方の面に設けられた熱接着層を有し、前記容器は、薬剤を収納するための複数のポケット部と、前記熱接着層に接合するフランジ部とを有し、
前記容器の前記複数のポケット部同士の間、または、前記複数のポケット部と前記薬剤用プレススルー包装体の端部との間に、前記薬剤用プレススルー包装体を分割する連続または不連続のハーフカットラインが設けられ、薬剤用プレススルー包装体を平面視したとき、前記ハーフカットラインと直交する方向をX方向、前記ハーフカットラインに平行な方向をY方向としたときに、
JIS P 8113:2006に準じて測定される前記蓋材のX方向の引張強度に対するY方向の引張強度の比が2.00以上であり、
前記蓋材のISO2758に準じて測定される破裂強度が、40〜200kPaであり、
前記薬剤用プレススルー包装体のY方向の端部の少なくとも一部に、前記容器から前記蓋材を引き剥がすことを容易にするための耳部を備え、
前記容器から前記蓋材を引き剥がすことを容易にしないために、前記耳部を前記薬剤用プレススルー包装体から分離除去可能となっていることを特徴とする薬剤用プレススルー包装体。
[2]前記蓋材が、前記基材の少なくとも前記熱接着層側の面にポリアクリルアミド樹脂を含む塗布層を含み、前記熱接着層側の面に設けられた塗布層における前記ポリアクリルアミド樹脂の含有量が0.1〜10.0g/m2である[1]の薬剤用プレススルー包装体。
[3]前記容器が、容器用基材シートの成形品であり、前記容器用基材シートが透明熱可塑性樹脂シートである[1]または[2]に記載の薬剤用プレススルー包装体。
[4]前記容器用基材シートが(a)ポリプロピレンシート、(b)ポリ塩化ビニルシート、(c)環状ポリオレフィンシート、(d)前記(a)〜(c)のいずれか2以上のシートが積層した積層シート、並びに(e)前記(a)〜(d)からなる群から選ばれる1または2以上のシートにポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン及びポリエチレンから選ばれる1または2以上のポリマーのシートをラミネートまたは前記ポリマーをコーティングしたシート容器である[3]の薬剤用プレススルー包装体。
[5]前記容器用基材シートが展延性シートである[1]または[2]の薬剤用プレススルー包装体。
本発明の薬剤用PTPは、容器と蓋材とを備え、前記容器が、薬剤を収容するためのポケット部と、前記蓋材と接合するフランジ部とを備えるものである。
図1は、本発明の薬剤用PTPの第一実施形態を模式的に示す断面図である。図1には、本実施形態の薬剤用PTP10に薬剤が内封された状態を示す。
本実施形態の薬剤用PTP10は、容器1と蓋材3とを備える。熱接着層5は、容器1と基材31との間に配置されている。
フランジ部17の蓋材3側の表面は平面状であり、蓋材3表面の熱接着層5に接着する。
容器1は、複数のポケット部15同士の間または、前記複数のポケット部と前記薬剤用プレススルー包装体の端部との間に、薬剤用プレススルー包装体を分割する連続または不連続のハーフカットライン2がX方向と直交するY方向に設けられており、必要に応じて薬剤用プレススルー包装体をハーフカットラインで分離することができる。
薬剤用プレススルー包装体の使用形態によって、耳部の操作方法が異なる。
病院や調剤薬局などで、薬剤を飲み方ごとに一つの包装にまとめる所謂一包化対応作業を行う場合、耳部4を、ハーフカットラインを折り目として蓋材3側へ折り曲げることによって、容器のフランジ部17と耳部4を切断されるが、蓋材は切断されない。その後、耳部を引っ張って蓋材を容器から引き剥がし、薬剤用プレススルー包装体に収納されていた薬剤すべてを一度に取り出すことができる。
薬剤用プレススルー包装体を患者に配布する場合は、耳部4を、ハーフカットラインを折り目として容器1側へ折り曲げることによって、容器のフランジ部17と耳部4を切断する。このとき、蓋材も引張応力と容器のフランジ部の切断面への接触によってハーフカットラインで切断されるので、薬剤用プレススルー包装体から耳部4を完全に分離除去することができる。
耳部を除去された薬剤用プレススルー包装体は、イージーピールによる薬剤取り出しが困難となり、意図しない蓋材の剥がれや子供のいたずらを防止することができる。
PTPを分割するためのハーフカットラインで折り曲げると折り曲げた部分を起点としてイージーピール適性が生じてしまう場合がある。
本発明のPTPでは、PTPを分割するためのハーフカットラインが蓋材基材の引張強度の小さいX方向と直交するように設計されているため、ハーフカットラインで折り曲げた場合、蓋材を残して容器のみ切断することが極めて困難である。
そのため、本発明の薬剤用プレススルー包装体は分割操作を行ってもイージーピール適性が生じず、誤開封防止効果を維持することができる。
容器1としては特に限定されず、PTP用の容器として公知のものであってよく、たとえば、容器用基材シートの成形品が挙げられる。
容器用基材シートについては、特に限定するものではないが、透明熱可塑性樹脂シートが好ましく、たとえば以下のものが挙げられる。その他、公知の各種の素材が使用できる。
(a)ポリプロピレン(PP)シート、
(b)ポリ塩化ビニル(PVC)シート、
(c)環状ポリオレフィン(COC)シート、
(d)前記(a)〜(c)のいずれか2以上のシートが積層した積層シート、並びに
(e)前記(a)〜(d)からなる群から選ばれる1または2以上のシートにポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)及びポリエチレン(PE)から選ばれる1または2以上のポリマーのシートをラミネートまたは前記ポリマーをコーティングしたシート。
前記(e)のシートとしては、たとえばアクラー(登録商標)(PVC/PCTFE)、スミライト(登録商標)VSL−4610N(PVC/PVDC/PE/PVDC/PVC)等が挙げられる。
また、容器用基材シーとしては、展延性シートが好ましい。展延性シートとしては、アルミニウム箔、ポリマーコーティングしたアルミニウム箔等が挙げられる。
前記蓋材のJIS P 8113:2006に準じて測定される引張強度において、引張強度が最小となるX方向の引張強度に対する引張強度が最大となるY方向の引張強度の比が2.00以上である。
基材31は、基材31の熱接着層5側の面に塗布層を設けてもよい。基材31において、塗布層は通常、少なくとも一部が原紙の表面下に存在し、塗布層の一部が基材31の表面上に存在していてもよい。
塗布層はポリアクリルアミド樹脂を含むことが好ましい。
基材31中の厚さ方向におけるポリアクリルアミド樹脂の濃度は均一でもよく、原紙の表面から内側に向かって濃度が低下していくような濃度勾配を有していてもよい。
一般にパルプの叩解と紙力の関係については、叩解をあまりすすめない状態では紙力は得られにくく、その理由としては、パルプ繊維同士のからみが弱く、繊維間結合(水素結合)のポイントも少ないためと考えられており、ある程度叩解を進めることで紙力は向上する。パルプの標準フリーネスが前記の上限値以下であれば、原紙、ひいては基材31の紙力が充分に高く、蓋材3のイージーピール適性が優れる。
変則フリーネス:パルプ懸濁液の固形分濃度を0.30%±0.01%から0.030%±0.001%に変更した以外は、JIS P 8121−2:2012に準じて測定されるフリーネス。
変則フリーネスは、測定に使用されるパルプの量が標準フリーネスの10分の1であるため、標準フリーネスよりも、叩解がある程度進んだ状態での評価に適している。たとえば変則フリーネスの770mLは、標準フリーネスの380mL程度である。
前述のように、パルプの叩解をある程度進めることで紙力は向上する。しかし、過剰に叩解を進めると逆に、繊維自体の傷みが進むため、紙力低下が起こる。
変則フリーネスが前記範囲の上限値以下であれば、紙力低下が起こり、基材31の破裂強度が低下し、また破れた端部からのケバも発生しにくくなるため優れたプレススルー適性が得られる。ただし、繊維同士のからみも進んでいるため、イージーピール方式での剥離時の材破は比較的起こり難くなっていると考えられる。
変則フリーネスが前記範囲の下限値以上であれば、過剰な紙力低下が生じにくく、イージーピール適性が優れる。また、叩解に要する時間が長くならず、抄紙時の脱水性も良好であり、操業効率に優れる。
基材31は、各種の製紙用内添薬品、歩留向上剤、消泡剤、填料、着色剤等を含んでいてもよい。内添薬品としては、サイズ剤、紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、硫酸バンド、カチオン化デンプン等の各種の定着剤が挙げられる。
パルプスラリーは、パルプを水の存在下で叩解することにより得られる。叩解により得られたパルプスラリーに製紙用内添薬品等が添加され、抄紙原料が調成される。
パルプの叩解方法、叩解装置は特に限定されるものではないが、叩解効率が高いダブルディスクリファイナー(DDR)が好適に使用される。
なお、基材31の製造に使用されたパルプの叩解度(標準フリーネス、変則フリーネス)は、基材31を構成しているパルプの叩解度に等しい。
本発明では蓋材のJIS P 8113:2006に準じて測定される引張強度において、引張強度が最小となるX方向の引張強度に対する引張強度が最大となるY方向の引張強度の比が2.00以上である。より好ましくは2.50以上である。
引張強度の方向性が生じる主な原因は、パルプ繊維の配向によるものと考えられる。通常パルプ繊維は概ね引張強度が最大となるY方向と平行に並んでいる。
逆に基材の引張強度が最小となるX方向と平行に蓋材を剥がす場合は、剥離方向に対して繊維間の空隙の形状は横長となり、基材破壊の起点となる部分が多く生じる。本発明ではこの特性を利用してイージーピールの方向性を得るものである。
基材の超音波伝播速度はたとえば、野村商事社製のソニックシートテスター、機種名:SST−4000等を使用して測定することができる。
基材の超音波伝播速度比については特に限定するものではないが、基材の引張強度が最小となるX方向の引張強度に対する引張強度が最大となるY方向の引張強度の比)と同様2.00以上が好ましく、2.50以上がより好ましい。
なお、それぞれの項目の調整条件については抄紙機ごとで異なるものであり、一概に規定することは困難である。その他、パルプ原料や叩解条件を適宜選択する方法等が挙げられる。
ポリアクリルアミド樹脂は、(メタ)アクリルアミド単位を有する重合体である。「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドおよびメタクリルアミドの総称である。ポリアクリルアミド樹脂は、アクリルアミド単位およびメタクリルアミド単位のいずれか一方を有してもよく、両方を有してもよい。ポリアクリルアミド樹脂は、(メタ)アクリルアミド単位以外の他の単位を有していてもよい。
アニオン性ポリアクリルアミド樹脂は、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、それらの塩等のアニオン性官能基を含有し、たとえば(メタ)アクリルアミドとアニオン性官能基含有モノマー(アクリル酸等)との共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミドの部分加水分解物等が挙げられる。
ポリアクリルアミド樹脂の質量平均分子量が前記の範囲内であれば、原紙のISO2758に準じて測定される破裂強度を上昇させることなく基材表面の毛羽立ちを抑える効果がより優れる。質量平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、熱接着層5が剥離する際の蓋材3(基材31)の表面の毛羽立ちを抑える効果が得られやすい。質量平均分子量が前記範囲の上限値以下であれば、塗布層を形成するための塗布液(後述する塗布層用塗料)の粘度が塗布するのに充分に低く、塗布層用塗料の調製および塗布が容易である。また、塗布層用塗料中のポリアクリルアミド樹脂の濃度を高くでき、目的の塗布量が得られやすい。質量平均分子量が50万を超えるものについては、内添の紙力剤としては用いられるが、溶液の粘度が高くなり、塗布層用塗料の調製および塗布が難しく、また満足な塗布量が得られにくい。
ポリアクリルアミド樹脂の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリエチレンオキシド換算値である。
他の成分としては、特に限定するものではないが、たとえばデンプン、変性デンプン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム、ジイソブチレン・無水マレイン酸共重合体塩、スチレン・無水マレイン酸共重合体塩等の水溶性高分子化合物、スチレン−ブタジエン共重合体エマルション、アクリル酸エステル共重合体エマルション、ウレタン樹脂、尿素樹脂、スチレン−アクリル樹脂エマルション、エチレン−アクリル樹脂エマルション等の水性高分子化合物、離型剤、消泡剤、分散剤、濡れ剤、有色染料、有色顔料、白色顔料等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
基材31の坪量の上限は特に限定されないが、50g/m2以下であることが好ましく、40g/m2以下がより好ましく、35g/m2以下がさらに好ましい。基材31の坪量が前記上限値以下であれば、蓋材3の破裂強度を低く抑えることができ、PTPのポケット部から薬剤を押し出すのに必要な力が少なく、プレススルー適性に優れる。
基材31の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。原紙の坪量も同様である。
基材31の密度は、JIS P 8118:1998に準拠して厚さを測定して、厚さと坪量の測定値から計算で求められる。
塗布層用塗料が原紙の一方の面に塗布される場合、塗布層用塗料が塗布されるのは、熱接着層5が積層される側の面である。
液体媒体としては、ポリアクリルアミド樹脂を溶解するものが好ましく、たとえば水が挙げられる。
塗布層用塗料は、必要に応じて、前述の他の成分を含んでもよい。
原紙の熱接着層5が積層される側の面における塗布層用塗料の塗布量は、ポリアクリルアミド樹脂の量に換算して、0.1〜10g/m2であり、0.2〜3.0g/m2がより好ましい。ポリアクリルアミド樹脂の量に換算した下塗り剤の塗布量は、塗布層におけるポリアクリルアミド樹脂の含有量に等しい。
操業性、生産性を考慮すれば、塗布層用塗料の塗布および乾燥は、オンマシン式で行われることが好ましい。従って、原紙を抄紙する抄紙機の形式については、長網抄紙機、短網抄紙機、円網抄紙機等、特に限定されるものではないが、オンマシンで塗工機が装備されているものを用いることが好ましい。
原紙中のポリアクリルアミド樹脂の濃度(原紙の厚さ方向における濃度)は均一でもよく、原紙の表面から内側に向かって濃度が低下していくような濃度勾配を有していてもよい。
熱接着層5を構成する材料は、特に限定されず、各種熱接着性を発現する材料が使用でき、熱接着層5が熱接着される容器の材質や熱接着条件に応じて適宜選択される。
熱接着性を発現する材料としては、たとえば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、アクリル酸エステル重合体、ポリエチレン、ポリエチレン−ポリブテン混合体等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ヒートシール剤は、上記の材料が水に溶解または分散した水系ヒートシール剤でもよく、上記の材料が溶剤に溶解した溶剤系ヒートシール剤でもよい。
水系ヒートシール剤としては、たとえば、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルション、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体エマルション、アクリル酸エステル重合体エマルション、ポリエチレンエマルション、ポリエチレン−ポリブテン混合体エマルション、ポリ塩化ビニルエマルション、ポリ酢酸ビニルエマルション、ポリプロピレンエマルション等が挙げられる。これらのなかでも、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルション、アクリル酸エステルエマルション、ポリエチレンエマルション、ポリプロピレンエマルションが、安定した剥離力を発現し、且つISO2758に準じて測定した破裂強度を上昇させることなく基材表面のケバ立ちを抑える効果が高いため、好ましい。
乾燥設備については、シリンダードライヤーによる塗布面直接接触方式では、ドライヤーやカンバスが汚染する虞があるため、塗布面と接触しないエアードラーヤーや赤外線ヒーター等の乾燥設備による乾燥が好ましい。
また、乾燥工程と巻き取り工程の間にクーリングロールを通過させることが好ましい。
また、この場合、フランジ部17と蓋材3との貼り合わせは、蓋材3をイージーピール方式で剥離したときに、図2に示すように、フランジ部17と接触している部分で、熱接着層5の一部が基材31から剥離してフランジ部17側に残るように行われることが好ましい。
剥離時に熱接着層5がフランジ部17側に残るかどうかは、基材31の熱接着層5側の面におけるポリアクリルアミド樹脂の塗布量、蓋材3とフランジ部17とを貼り合わせる際の熱接着条件(加熱温度、圧力、時間等)、熱接着層5を構成する材料と被着体の材質との組み合わせ等により調整できる。
前記積層体の破裂強度が200kPa以下であると、薬剤19を取り出すためにポケット部15を押し込んで蓋材3を押し破るのに要する力が大きくならず、非力な人でも負担が小さい。また、力の掛け具合の調節が容易であり、力を掛けたときに薬剤19を飛び出させることなく蓋材3を押し破ることができる。
破裂強度が40kPa以上であると、イージーピールに耐え得る充分な強度を有し、剥離時に基材31の破壊が生じにくい。また、小さな衝撃で薬剤19が押し出されにくく、PTPの取り扱いが容易になる。
前記積層体の破裂強度は、基材31を構成するパルプのフリーネス(標準フリーネス、変則フリーネス)、基材31の坪量、塗布層のポリアクリルアミド樹脂の含有量(塗布層用塗料の塗布量)、熱接着層5の坪量等により調整できる。
上記の剥離強度が前記範囲の上限値以下であれば、イージーピール方式での剥離時に基材の破壊を起こさずに剥離できる。
薬剤用PTP10は、たとえば、以下の工程(α1)〜(α4)を有する製造方法により製造できる。
(α1)パルプを水の存在下で叩解してパルプスラリーを得、該パルプスラリーに製紙用内添薬品を添加して抄紙原料を調成し、該抄紙原料を抄紙することで原紙を得る工程。
(α2)必要に応じて原紙の少なくとも一方の面に表面樹脂層用塗料を塗布し乾燥することで基材31を製造し、蓋材3を得る工程。
(α3)蓋材3の一方の面(塗布層が存在する場合は塗布層が存在する面)にヒートシール剤を塗布し乾燥することで熱接着層5を形成して蓋材を得る工程。
(α4)容器1のポケット部15に薬剤19を収容し、該容器1に、前記蓋材を、熱接着層5側を容器1側に向け、ポケット部15の開口を封止するように重ねて熱接着し、薬剤用PTP10を得る工程。
薬剤19としては、特に限定されず、たとえば錠剤(普通錠、口腔内崩壊錠、チュアブル錠)、丸剤、坐剤、カプセル剤(硬カルセル剤、軟カプセル剤)等が挙げられる。
工程(α4)における熱圧着条件としては、特に限定されない。
蓋材3が紙を主体とするため、従来のアルミニウム箔を用いたものに比べて、蓋材を誤飲したときの人体への負荷が少ない。また、熱接着層により密封されることにより埃等の異物混入を防ぐことができる。
さらには、PTP包装体に、折り割ることで切り離し可能な耳部を付設することにより、誤開封防止特性も合わせ持つことが出来る。
したがって、本発明の薬剤用PTPは、実用上極めて有用なものである。
ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアルコールや疎水化デンプン等の水溶性高分子は、製紙分野で紙力増強剤等として知られているが、本発明者らの検討によれば、ポリアクリルアミド樹脂は、他の水溶性高分子に比べて、上記のような基材破壊や毛羽立ちを抑制する効果に優れる。
また、ポリアクリルアミド樹脂は、原紙の破裂強度(ISO2758に準じて測定)を上昇させにくい。そのため、原紙のプレススルー適性を損なうことなくイージーピール適性を高めることができる。
たとえば、薬剤用PTPを構成する蓋材は、基材31を有するものであればよく、蓋材3に限定されない。
また、容器1の少なくとも片面に印刷層を有してもよい。印刷層上にさらにオーバープリント層を有してもよい。
さらに容器側から視認できるように鏡像図柄の印刷、両面から個別の図柄を視認できるよう鏡像図柄、白ベタ、正像図柄を重ねて印刷することもできる。
[基材の製造]
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)80%と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)20%を混合し、DDRにて、変則フリーネス(パルプ採取量0.3g/L)が200mLになるように叩解し、パルプスラリーを得た。該パルプスラリーに内添薬品として、パルプ質量に対し、絶乾で硫酸バンド1%、濾水性向上剤(商品名:ソフトール(登録商標)3503、油化産業社製)0.07%を添加し、抄紙原料を得た。該抄紙原料を長網抄紙機で抄紙して原紙を得た後、抄紙機に付設されたゲートロールコーターにて、下記の塗布層用塗料(A)を、片面の乾燥後の塗布量が0.4g/m2(両面で0.8g/m2)となるように塗布および乾燥し、オフマシンカレンダーにて平滑化処理を行って、坪量30g/m2、密度1.05g/cm3の基材を得た。なお、得られた基材の野村商事社製のソニックシートテスター、機種:SST−4000のよる超音波伝播速度の縦横比(MD/CD)は、2.14であった。
塗布層用塗料(A):アニオン性ポリアクリルアミド樹脂(質量平均分子量20万)の水溶液(荒川化学工業社製のポリマセット(登録商標)512を水で希釈してアニオン性ポリアクリルアミド樹脂濃度10質量%に調整したもの)。
上記で得られた基材の片面に、バーコーターを用いて、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルション系ヒートシール剤(商品名:EA−H700、東洋インキ社製)を、乾燥後の塗布量が1.4g/m2となるように塗布および乾燥して熱接着層を形成し、蓋材を得た。
以下の容器を用意した。
容器:厚さ250μmのポリ塩化ビニル樹脂フィルムシートを用いて、PTP充填包装機により当該シート上に、直径10mm、深さ5mmの薬剤収納部(ポケット部)を10個(2組×5列)エアーアシストプラグ成形法により設けた。
上記容器のポケット部に薬剤(錠剤の直径9.5mm、厚さ4mm)を充填し、上記で得られた蓋材を熱接着層側の面が容器と接するように重ね、蓋材側ロール(格子状のエンボスロール)のみ加熱された熱ロール式貼合部にて蓋材と容器をポケット部5列が蓋材基材のCD方向に配列するように熱圧着させて、上記薬剤が封緘されたPTPを製造した。
更に、精密裁断機を用いて、容器のポケット部5列の間に蓋材基材のMD方向と平行にハーフカットラインを入れた。
また容器のMD方向の容器の端部に蓋材基材のCD方向と平行にハーフカットラインを入れ、耳部を形成した。
実施例1の基材の製造において、基材の超音波伝播速度の縦横比(MD/CD)を2.85に調整した以外は実施例1と同様にして基材、蓋材および薬剤入りPTPを順次製造した。
実施例1の基材の製造において、基材の超音波伝播速度の縦横比(MD/CD)を1.52に調整した以外は実施例1と同様にして基材、蓋材および薬剤入りPTPを順次製造した。
<比較例2>
実施例1の基材の製造において、基材の坪量を65g/m2に変更した以外は実施例1と同様にして基材、蓋材および薬剤入りPTPを順次製造した。
実施例1、2、比較例1、2それぞれで得た蓋材および薬剤入りPTPについて以下の評価を行い、結果を表2に示した。
各例の蓋材の破裂強度(kPa)を、破裂試験機(型式:MD200、熊谷理機工業社製)を用いて、ISO2758に準じて測定した。
上記、薬剤入りPTPの製造で得られたPTPのフランジ部分を基材の引張強度が最小となるX方向の幅15mmに断裁して、引張強度が最大となるY方向の剥離強度測定用サンプルを作成した。
得られたサンプルの剥離強度(N/m)を、引張試験機(型式:テンシロンRTC1250A、オリエンテック社製)を用いて、JIS P 8113:2006に準じて、サンプルのポリ塩化ビニル樹脂フィルム、蓋材それぞれの端部をチャッキングして180°ピール法で剥離速度300mm/分で測定した。
また、剥離強度の測定の際、蓋材の基材破壊の状態を目視で確認し、以下の基準で評価した。
(剥離試験時の基材破壊の状態の評価基準)
○:基材破壊が起こらなかった。
△:蓋材を剥離できたが、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムに紙片やケバの付着が見られた。
×:基材破壊が発生した。
各例の蓋材と、あらかじめ直径10mmの孔を開けた容器用ポリ塩化ビニル樹脂フィルム(ポケットは未成形)とを、蓋材の熱接着層側の面がポリ塩化ビニル樹脂フィルムと接するように重ねて、熱プレス試験機を用いて、150℃、3.0kgf/cm2、1.1秒間の熱圧着条件で熱圧着物を作成した。
次にテクスチャーアナライザー(型式:TA−XT plus、英弘精機社製)を用いて、直径20mmの孔が開けられたポリカーボネート製の樹脂板(10cm×10cm、厚さ30mm)を、孔の中心が円柱状プローブの中心と重なるようにセットした。
次に、上記樹脂板の上に、樹脂板の孔の中心に上記熱圧着物のポリ塩化ビニル樹脂フィルムに開けられた孔の中心が来るように、またポリ塩化ビニル樹脂フィルムが上になるようにセットした。
次に、テクスチャーアナライザーの円柱状プローブの先端に薬剤(錠剤の直径9.5mm、厚さ4mm)を貼り付け、プローブの下降速度300mm/分で下降させて、薬剤の押し出しに掛かった力(薬剤押し出し力)(N)を測定した。薬剤押し出し力は、プローブ先端の薬剤がPTPの熱接着層および蓋材を押し破ってPTPの下側に押し出されるのに要した力であり、薬剤押し出し力が小さいほど、プレススルー適性が優れる。なお、無理なく押し出せる力としては概ね18N以下程度と考えられる。
得られた薬剤入りPTPについて実際に、以下の基準でプレススルー性およびイージーピール適性を官能評価した。
(プレススルー適性)
○:問題なく薬剤が押し出せた。
×:蓋材が強すぎて薬剤が押し出せなかった。または、薬剤を押し出す前に蓋材が剥がれてしまった。
○:蓋材が問題なくイージーピールできた。
△:蓋材がイージーピールできたが、容器側に紙片やケバの付着が見られた。
×:基材破壊が起こり、イージーピールできなかった。
○:耳部を分離除去した状態または、ポケット部間のハーフカットラインで折り曲げた状態の両方の状態のPTPにおいてイージーピールが不可能であった。
×:耳部を分離除去した状態または、ポケット部間のハーフカットラインで折り曲げた状態のいずれかの状態のPTPにおいてイージーピールが可能であった。
比較例2の薬剤入りPTPは錠剤のプレススルー適性がなく製品として使用できるものではなかった。
2 ハーフカットライン
3 蓋材
4 耳部
5 熱接着層
10 薬剤用PTP(プレススルー包装体)
15 ポケット部
17 フランジ部
19 薬剤
31 基材
32 耳部
Claims (5)
- 容器と蓋材とを備えた薬剤用プレススルー包装体において、
前記蓋材は、パルプにより構成された基材と前記基材の少なくとも一方の面に設けられた熱接着層を有し、前記容器は、薬剤を収納するための複数のポケット部と、前記熱接着層に接合するフランジ部とを有し、
前記容器の前記複数のポケット部同士の間、または、前記複数のポケット部と前記薬剤用プレススルー包装体の端部との間に、前記薬剤用プレススルー包装体を分割する連続または不連続のハーフカットラインが設けられ、薬剤用プレススルー包装体を平面視したとき、前記ハーフカットラインと直交する方向をX方向、前記ハーフカットラインに平行な方向をY方向としたときに、
JIS P 8113:2006に準じて測定される前記蓋材のX方向の引張強度が1.10kN/m以下であり、
JIS P 8113:2006に準じて測定される前記蓋材のY方向の引張強度が2.20kN/m以上であり、
前記蓋材のISO2758に準じて測定される破裂強度が、60〜130kPaであり、
前記薬剤用プレススルー包装体のY方向の端部の少なくとも一部に、前記容器から前記蓋材を引き剥がすことを容易にするための耳部を備え、
前記容器から前記蓋材を引き剥がすことを容易にしないために、前記耳部を前記薬剤用プレススルー包装体から分離除去可能となっていることを特徴とする薬剤用プレススルー包装体。 - 前記容器が、容器用基材シートの成形品であり、
前記容器用基材シートが透明熱可塑性樹脂シートである請求項1に記載の薬剤用プレススルー包装体。 - 前記容器用基材シートが(a)ポリプロピレンシート、(b)ポリ塩化ビニルシート、(c)環状ポリオレフィンシート、(d)前記(a)〜(c)のいずれか2以上のシートが積層した積層シート、並びに(e)前記(a)〜(d)からなる群から選ばれる1または2以上のシートにポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン及びポリエチレンから選ばれる1または2以上のポリマーのシートをラミネートまたは前記ポリマーをコーティングしたシート容器である請求項2に記載の薬剤用プレススルー包装体。
- 前記容器用基材シートが展延性シートである請求項2または3に記載の薬剤用プレススルー包装体。
- 180°ピール法で剥離速度300mm/分にて測定した前記容器と前記蓋材のY方向の剥離強度が、20〜700N/mである請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬剤用プレススルー包装体。
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