JP6747641B2 - 水蒸気分圧を制御した第5族元素及び/又は第6族元素の溶解、回収方法と装置 - Google Patents
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Description
(1)溶融アルカリ金属水酸化物が存在する雰囲気の水蒸気分圧が低い場合、対極である陰極でナトリウムが発生し、電流効率が大幅に低下する恐れがあるとともに電解に余計な電圧が必要となり、結果として消費電力が増大する。
(2)溶融アルカリ金属水酸化物が存在する雰囲気の水蒸気分圧が低い場合、溶融アルカリ金属水酸化物におけるタングステン等の対象元素の溶解度が低く、早い段階で飽和に達し、電解をさらに進めるには電解槽の溶融アルカリ金属水酸化物を頻繁に入れ替える必要があり、一定量の対象元素を処理するために必要な薬剤およびエネルギー量が膨大になる。
また、本発明は、前記溶解方法を利用した対象元素の回収方法や溶解、回収装置を提供することを課題とする。
(A)溶融物中において、対象元素を電解して溶解する際、溶融物中の含水率(乃至水蒸気分圧)を高くすると、対極である陰極の反応がナトリウム発生よりも容易に進行する水素発生になり、電圧が低くても電解による対象元素の溶解を進めることができるので、電解に必要な消費電力を低減することができる。
(B)溶融物中の含水率を高くすると、溶融物における対象元素の溶解度が向上するので、必要とする溶融アルカリ金属水酸化物などの溶融物量を低減することができ、その後の回収プロセスに必要な中和処理等の薬剤量なども低減することができる。
(C)高含水率の溶融物中で対象元素を溶解した後、溶融物の含水率を低下したり、溶融物の温度を低下することにより対象元素をNa2WO4等の対象元素のオキソ酸塩として沈殿させて回収することができる。
<1>アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、これらの混合水酸化物、又は、前記水酸化物のいずれかを主成分として含むものの溶融物中において、第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質を電解して第5族元素及び/又は第6族元素を前記溶融物中に溶解する第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法であって、前記溶融物の含水率を0.2〜5.0wt%とすることを特徴とする溶解方法。
<2>前記溶融物の含水率の調整に、水蒸気若しくは水蒸気を含有するガスを前記溶融物中に通すか、又は、前記溶融物を収容した電解槽の気相中に供給することを特徴とする<1>に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
<3>アルカリ金属水酸化物として水酸化ナトリウムを用いる<1>又は<2>に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
<4>第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質が、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタルのうちの少なくとも1種を含むものである<1>〜<3>のいずれか1項に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
<5><1>〜<4>のいずれか1項に記載の溶解方法により得られた第5族元素及び/又は第6族元素の濃度の増加した溶融物を水に溶解させて第5族元素及び/又は第6族元素のオキソ酸塩の水溶液とする第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
<6><1>〜<4>のいずれか1項に記載の溶解方法を用いて第5族元素及び/又は第6族元素を前記溶融物中に溶解した後、第5族元素及び/又は第6族元素を含む化合物の前記溶融物中での飽和溶解度を低下することにより前記化合物を沈殿させて回収する第5族元素及び/又は第6族元素の回収方法。
<7>前記溶融物の飽和溶解度の低下を、前記溶融物の含水率の低下及び/又は溶融温度の低下により行う<6>に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の回収方法。
<8>溶融物の含水率が0.2〜5.0wt%の電解槽と、溶融物の含水率が電解槽に比較して低い回収槽とを設け、電解により第5族元素及び/又は第6族元素の濃度の増加した溶融物を回収槽に移送して第5族元素及び/又は第6族元素を含む化合物を沈殿させ、回収槽の第5族元素及び/又は第6族元素の濃度の低下した溶融物を電解槽に返送することを特徴とする<6>又は<7>に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の回収方法。
<9>陰極と、第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質を保持する陽極とを備え、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、これらの混合水酸化物、又は、前記水酸化物のいずれかを主成分として含むものの溶融物を収容した電解槽と、前記溶融物の含水率を調整する含水率調整手段とを具備することを特徴とする第5族元素及び/又は第6族元素の溶解又は溶解・回収装置。
<10>陰極と、第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質を保持する陽極とを備え、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、これらの混合水酸化物、又は、前記水酸化物のいずれかを主成分として含むものの溶融物を収容した電解槽と、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、これらの混合水酸化物、又は、前記水酸化物のいずれかを主成分として含むものの溶融物を収容した回収槽と、電解槽に収容した溶融物の含水率を高く保持する高含水率調整手段と、回収槽に収容した溶融物の含水率を電解槽より低く保持する低含水率調整手段及び/又は回収槽に収容した溶融物の溶融温度を電解槽より低く保持する溶融温度調整手段と、電解槽中の第5族元素及び/又は第6族元素の濃度の増加した溶融物を回収槽に移送する溶融物移送手段と、回収槽中の第5族元素及び/又は第6族元素の濃度の低下した溶融物を電解槽に返送する返送手段を具備することを特徴とする第5族元素及び/又は第6族元素の溶解・回収装置。
<11>第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質が、使用済みの超硬工具、触媒、及び/又は、おもりである<1>〜<4>のいずれか1項に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
<12>第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質を予め、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、これらの混合水酸化物、又は、前記水酸化物のいずれかを主成分として含むものの溶融物中に浸漬する予備浸漬工程を具備する、<1>〜<4>、<11>のいずれか1項に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
<13>水蒸気を含有するガスは、ガスを20〜100℃の水浴に通じたものである<2>に記載の溶解方法。
<14><11>〜<13>のいずれか1項に記載の溶解方法により得られた第5族元素及び/又は第6族元素の濃度の増加した溶融物を水に溶解させて第5族元素及び/又は第6族元素のオキソ酸塩の水溶液とする第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
<15><11>〜<13>のいずれか1項に記載の溶解方法を用いて第5族元素及び/又は第6族元素を前記溶融物中に溶解した後、第5族元素及び/又は第6族元素を含む化合物の前記溶融物中での飽和溶解度を低下することにより前記化合物を沈殿させて回収する第5族元素及び/又は第6族元素の回収方法。
<16> 前記溶融物中での飽和溶解度の低下を、前記溶融物の含水率の低下及び/又は溶融物の温度の低下により行う<15>に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の回収方法。
<17>前記含水率調整手段は、水蒸気若しくは水蒸気を含有するガスを前記溶融物中に通すか、又は、前記溶融物を収容した電解槽の気相中に供給するものである<9>に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解又は溶解・回収装置。
<18>前記含水率調整手段は、20〜100℃の水浴に通じたガスを供給するものである<17>に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解又は溶解・回収装置。
<19>前記高含水率調整手段は、水蒸気若しくは水蒸気を含有するガスを前記溶融物中に通すか、又は、前記溶融物を収容した電解槽の気相中に供給するものである<10>に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解・回収装置。
<20>前記高含水率調整手段は、20〜100℃の水浴に通じたガスを供給するものである<19>に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解・回収装置。
また、本発明によれば、前記溶融物中の含水率(水蒸気分圧)を適切に制御することで、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物やアルカリ土類水酸化物の使用量を低減できるので、その後の中和処理等に用いる試薬も同様に低減することができる。
また、前記溶融物中の含水率(水蒸気分圧)を適切に制御したり、溶融物の温度を適切に制御することにより対象元素の前記溶融物中での飽和溶解度を調整すれば、電解を止めることなくタングステン酸ナトリウム等の第5,6族元素のオキソ酸化合物を回収することが可能となるので、第5,6族元素回収プロセスを効率化できるとともに、アルカリ金属水酸化物や中和処理用試薬等の各種薬剤の使用量をさらに抑制することができる。
これらの元素を含む溶解乃至回収対象の物質としては、該元素を金属として含むものでも、また、炭化物等として含むものであってもよく、使用済みの超硬工具、各種金属製品、触媒、及びこれらの製造工程で出る工程内廃棄物が挙げられるが、これらに限定されず、これらの元素の少なくとも1種を含む物質であり、陽極として電圧を印加できる形態であれば、どのようなものでもよい。
そのような対象元素を含む物質は、各種プラスチック等の有機物を表面被覆材等として具備乃至含有していてもよいし、また、対象元素以外の元素で構成されるセラミックスを表面被覆材やバインダーの主成分乃至副成分として具備乃至含有していてもよい。対象元素以外の元素で構成されるセラミックスとしては、チッ化チタン、チッ化アルミ、アルミナ、シリカ、炭化チタン、炭窒化チタン、チタンアルミナイトライド、アルミクロムナイトライド等が挙げられる。
これらの水酸化物は、単体でも、また、混合したもの(混合水酸化物)であってもよいし、さらに、陽極酸化や溶解性を大きく低下させない範囲で、他の成分や不純物が混合乃至混入してもよい。混合される他の成分としては、粘度や導電性の調整等のための他の水酸化物や電解質等が挙げられる。
本発明において、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、これらの混合水酸化物、又は、前記水酸化物のいずれかを主成分として含むものは、溶融状態で用いられるが、その温度は、一般的には融点以上であればよく、使用温度は、対象元素の溶解性、拡散性、用いる装置材料の耐熱性、経済性、ランニングコスト等から決定される。前記溶融物の温度は、高温にするほど対象元素の溶解性、拡散性が高くなる点で有利であるが、一方で、装置材料の耐熱性、経済性等の点で不利であるため、実用的には、通常200〜600℃程度が好適に使用できる。
また、前記溶融浴中における含水率を高めることにより、前記溶融物中における対象元素の飽和溶解度を向上し、電解による溶解を効率化することもできる。
さらに、対象元素の飽和溶解度の含水率依存性や溶融温度依存性を利用し、対象元素の回収に利用することもできる。すなわち、溶融浴中における含水率を例えば1.5〜2.0wt%に高めた状態で対象元素を溶解した後、前記含水率及び/又は溶融温度を前記溶解時より低くすることにより対象元素の化合物(タングステン酸ナトリウム等の第5,6族元素のオキソ酸塩)を沈澱させて回収可能となる。その際、含水率や溶融温度の高い電解槽と含水率や溶融温度の低い回収槽を設け、電解槽において電解により対象元素を溶解して対象元素の溶解濃度の高くなった溶融物を回収槽に移送し、対象元素の化合物を沈澱させて回収し、対象元素の溶解濃度の低下した溶融物を電解槽に返送するようにして、電解を中断することなく対象元素化合物の連続的回収を可能にすることができる。なお、回収時又は回収槽における含水率は、0wt%か又はそれに近い方が沈殿、回収を効率化する上で望ましいが、含水率を十分低下させるために要する時間等を総合的に判断して決定することができる。回収時又は回収槽における溶融温度は、低い方が沈殿、回収を効率化するうえで望ましいが、溶融温度を下げ過ぎると溶融状態を維持できなくなるリスクが高まるうえ消費エネルギーも増大するため、これらを総合的に判断して決定することができる。
また、溶融浴の飽和含水率は、溶融浴の雰囲気や溶融槽の気相の圧力を高めることにより向上することができるので、前記圧力の制御により対象元素の溶解度を大気圧下よりもさらに高めることができる。
前記ガスとしては、Ar等の希ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス等の不活性ガスに限らず、空気の外、不活性ガスや空気に酸素を富化した酸化性ガスを使用することもできる。ガス中の酸素は、対象元素の一部の酸化、溶解に寄与し、消費電力削減に繋がると考えられる。
陽極酸化の際に陰極との間に印加する電圧は、一般に、高すぎると陽極酸化の電流効率低下と望ましくない副反応が起こり、さらには消費エネルギーも増加する。逆に低すぎると十分な反応速度が得られないため、これらを総合的に考慮して決定することができる。本発明では、溶融浴中における含水率を0.2〜5.0wt%(下限は、好ましくは0.5wt%以上、より好ましくは1.0wt%以上)にするので、電解に必要な電圧を低減することができ、それに伴い、望ましくない副反応を抑制して電流効率を比較的高くすることができる。
溶解をバッチ式で行う場合、処理期間中印加する電圧を一定にしても良いが、処理時間短縮のため、溶解処理が制御可能な範囲で印加する電圧を変化させることもできる。また、電流を一定にしても良いが、この場合は電圧を確認して電流値や処理時間、処理物質の供給量等を調整する必要がある。
また、対象元素が溶解され、それら元素の濃度の増加した前記溶融物は、水に容易に溶解させることができ、その結果、対象元素のオキソ酸塩の水溶液を得ることもできる。前記溶融物は、水に溶解する際、安全性の観点からは、その温度を予め融点未満、望ましくは100℃未満、より望ましくは50℃未満に低下しておくことが良い。
このような表面に露出するチッ化チタン、チッ化アルミ、アルミナ、シリカ、炭窒化チタン、チタンアルミナイトライド、アルミクロムナイトライドを始めとしたセラミックスを溶解する溶解方法は、前述のような陽極酸化、溶解方法の予備処理としてだけでなく、第5,6族元素を含む物質から第5,6族元素を回収するための様々な処理方法においても、前記セラミックスを溶解除去するために採用することができる。
なお、このような通電しない予備浸漬処理において、対象元素は、金属や炭化物である場合にはほとんど溶解せず、窒化物や酸化物である場合には多少溶解するものの、通電して陽極酸化する場合に較べ溶解量は少ないので、その後の陽極酸化・溶解工程における溶解量に大きな影響を及ぼさないと考えられる。
ガスの供給口と大気に連通した排出口とを有する反応容器(電解槽)を準備し、水酸化ナトリウムを収容して450℃で溶融した。単位時間当たりの流量が一定のArガスを所定温度に保った水浴を通じた後に前記供給口から反応容器に定常的に供給し、前記水浴の温度を変化させることで水酸化ナトリウム溶融浴中の含水率(乃至水蒸気分圧)を調整した。水酸化ナトリウム溶融浴中の含水率は、定常状態となったと考えられる水温変更から24時間後に滴定により求めた。具体的には、溶融試料中に含まれる水酸化ナトリウム重量を酸-塩基滴定により求め、全重量との差分を含水量として評価した。その結果、水酸化ナトリウム溶融浴中の含水率は、水浴の温度が室温(20℃付近)の場合0.2〜0.6wt%の範囲内であり、また、水浴の温度が90℃の場合約2wt%であった。水浴を通じることなくArガスを反応容器に供給する場合には、溶融水酸化ナトリウム中の含水率の定量は困難であるが、0.2wt%未満であることは明らかである。
参考例1で使用したと同様の反応容器(電解槽)やArガス供給設備を用い、水浴温度を90℃(水酸化ナトリウム溶融浴中の含水率約2wt%)とした。被覆無しのタングステン合金製超硬チップ1個(0.6g、タングステンカーバイドとして90wt%程度、コバルトが5wt%程度)をNi製のプレート上に設置して陽極とし、ニッケル板を陰極として、450℃で溶融した水酸化ナトリウム中において、0.4 Vの定電圧条件で電解を行った。電流値がほぼゼロになった時点(チップが全溶解した状態)で電解を終了した。電流効率はほぼ100%であった。その結果を図1の実線で示す。0.4 Vの比較的低い電圧でありながら5時間程度の比較的短時間で全溶解した。
定電圧を1Vとしたこと、及び、Arガスを水浴を通じずに反応容器に供給したこと(水酸化ナトリウム溶融浴中の含水率0.2wt%未満)以外は実施例1と全く同様にして電解を行った。電流効率はほぼ100%であった。その結果を図1の破線で示す。水酸化ナトリウム溶融浴中の含水率が約0.2wt%未満と低い場合、全溶解に電圧1Vでかつ14時間程度必要であった。
上記実施例1と比較例1の結果から、水酸化ナトリウム溶融浴中の含水率(水蒸気分圧)を高くすることにより、電解に必要な電圧を1Vから0.4Vに低減できるとともに、溶解に要する時間を約1/3程度と効率的な溶解を行うことができることが明らかとなった。
電解開始前の水酸化ナトリウム溶融浴中にArガス雰囲気下での飽和量を超えるWO3(NaOH:WO3=5:1)を添加したこと以外は比較例1と全く同様にして電解を行った。その結果を図2の実線で示す。比較のため、比較例1の結果を併せて破線で示す。このことから、水酸化ナトリウム溶融浴中のタングステン濃度が増加するとタングステンの溶解が阻害され、電解を効率的に行うことができなくなると言える。なお、比較例2は、水蒸気無し(水浴を通じずにArガスを反応容器に供給したもので、溶融水酸化ナトリウムの含水率0.2wt%未満)の条件下での結果であるが、水酸化ナトリウム溶融浴中のタングステン濃度が増加すると溶解が阻害され、電解を効率的に行うことができなくなるとの傾向は、水酸化ナトリウム溶融浴の含水率が高くても同様であると考えられる。
電解開始前の水酸化ナトリウム溶融浴にWO3を添加した後、次の(1)〜(3)のいずれかの条件で電解を行った。
(1)実施例2A:水浴温度90℃(水酸化ナトリウム溶融浴中の含水率約2wt%)、電圧0.4V、NaOH:WO3=5:1(Arガス雰囲気下での飽和量を超えるWO3を添加)
(2)実施例2B:水浴温度23℃(水酸化ナトリウム溶融浴中の含水率約0.2〜0.6wt%)、電圧1V、NaOH:WO3=4:1(この条件での飽和量を超えるWO3を添加)
(3)比較例2:水浴を介さず(水酸化ナトリウム溶融浴中の含水率0.2wt%未満)、電圧1V、NaOH:WO3=5:1(Arガス雰囲気下での飽和量を超えるWO3を添加)
これら実施例2A、2B、比較例2の結果を図3に示す。
上記実施例2Aと比較例2は含水率のみを変えた条件での結果であり、これらの比較から、水酸化ナトリウム溶融浴中の含水率を高くすることにより、タングステンの飽和溶解度を向上させて電解の阻害要因を減らすことができ、結果として効率的な電解を行えることが明らかとなった。また、実施例2Bと比較例2はともにタングステンが飽和した状態で含水率のみを変えた条件での結果であり、タングステンの飽和した状態であっても、水酸化ナトリウム溶融浴中の含水率を高くすることで、電流値の増加が多少なりとも見込めることが明らかとなった。上記実施例2A,2Bや比較例2以外に水浴温度が20℃や50℃の場合についても同様の電解実験を行った結果では、水浴温度20℃、50℃、90℃における水酸化ナトリウム水浴中のタングステンの飽和溶解度(W純分の質量%)は、それぞれ13wt%、26wt%、40wt%以上と推算された。
Claims (10)
- アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、これらの混合水酸化物、又は、前記水酸化物のいずれかを主成分として含むものの溶融物中において、第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質を電解して第5族元素及び/又は第6族元素を前記溶融物中に溶解する第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法であって、前記溶融物の含水率を0.2〜5wt%とすることを特徴とする溶解方法。
- 前記溶融物の含水率の調整に、水蒸気若しくは水蒸気を含有するガスを前記溶融物中に通すか、又は、前記溶融物を収容した電解槽の気相中に供給することを特徴とする請求項1に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
- アルカリ金属水酸化物として水酸化ナトリウムを用いる請求項1又は2に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
- 第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質が、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタルのうちの少なくとも1種を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶解方法により得られた第5族元素及び/又は第6族元素の濃度の増加した溶融物を水に溶解させて第5族元素及び/又は第6族元素のオキソ酸塩の水溶液とする第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶解方法を用いて第5族元素及び/又は第6族元素を前記溶融物中に溶解した後、第5族元素及び/又は第6族元素を含む化合物の前記溶融物中での飽和溶解度を低下することにより前記化合物を沈殿させて回収する第5族元素及び/又は第6族元素の回収方法。
- 前記溶融物の飽和溶解度の低下を、前記溶融物の含水率の低下及び/又は溶融温度の低下により行う請求項6に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の回収方法。
- 溶融物の含水率が0.2〜5.0wt%の電解槽と、溶融物の含水率が電解槽に比較して低い回収槽とを設け、電解により第5族元素及び/又は第6族元素の濃度の増加した溶融物を回収槽に移送して第5族元素及び/又は第6族元素を含む化合物を沈殿させ、回収槽の第5族元素及び/又は第6族元素の濃度の低下した溶融物を電解槽に返送することを特徴とする請求項6又は7に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の回収方法。
- 陰極と、第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質を保持する陽極とを備え、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、これらの混合水酸化物、又は、前記水酸化物のいずれかを主成分として含むものの溶融物を収容した電解槽と、前記溶融物の含水率を調整する含水率調整手段とを具備することを特徴とする第5族元素及び/又は第6族元素の溶解又は溶解・回収装置。
- 陰極と、第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質を保持する陽極とを備え、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、これらの混合水酸化物、又は、前記水酸化物のいずれかを主成分として含むものの溶融物を収容した電解槽と、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、これらの混合水酸化物、又は、前記水酸化物のいずれかを主成分として含むものの溶融物を収容した回収槽と、電解槽に収容した溶融物の含水率を高く保持する高含水率調整手段と、回収槽に収容した溶融物の含水率を電解槽より低く保持する低含水率調整手段及び/又は回収槽に収容した溶融物の溶融温度を電解槽より低く保持する溶融温度調整手段と、電解槽中の第5族元素及び/又は第6族元素の濃度の増加した溶融物を回収槽に移送する溶融物移送手段と、回収槽中の第5族元素及び/又は第6族元素の濃度の低下した溶融物を電解槽に返送する返送手段を具備することを特徴とする第5族元素及び/又は第6族元素の溶解・回収装置。
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