JP6744611B2 - 研磨液 - Google Patents

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Description

この発明は、例えば機械研磨などに用いることができる研磨液に関するものである。
例えば、特許文献1に開示のように、金属材料および脆性材料の研磨液として、界面活性剤、分散剤、油脂、脂肪酸および脂肪酸エステルの組成成分を、被加工材や加工条件等に対応して適宜配合したものが広く使用されている。このような研磨液においては、研磨加工速度(研磨レート)を向上させるため、より大きな粒子径の砥粒を使用する、若しくはスラリーの潤滑摩擦特性を低下させることが行われている。しかし、これらの方法では、研磨加工速度の向上に伴って、被研磨体における研磨面の品質が劣化するという問題が生じてしまう。そこで、添加剤によって、研磨加工速度を向上させる試みがなされている。研磨加工速度向上効果が報告されている添加剤としては、ポリオールまたはポリオールアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤(特許文献2および特許文献3参照)、ポリエーテルおよびそのリン酸エステルカリウム塩(特許文献4および特許文献5参照)などが提案されている。しかしながら、特許文献2〜5に開示の添加物は、多量添加しないと研磨加工速度が向上せず、発泡することがあるという欠点がある。
ポリアクリルアミド誘導体が、金属用研磨液の保護膜形成剤として用いられること(特許文献6)、研磨・研削加工液の粘度低下を防止し加工精度あるいは工具の寿命等の低下を改善できること(特許文献7)は知られている。また、特許文献8にポリアクリルアミド誘導体を有効成分とした研磨向上剤があるが、このようなポリアクリルアミド誘導体を添加しても、研磨液では、再分散は起こるものの、送液系のチューブ内や研磨システム内で、砥粒の沈降が起こり、研磨効率が思ったように上がらず、また、残留モノマーの被研磨体への付着が起こるなどの問題が指摘される。特に、ポリアクリルアミド誘導体を有効成分とする添加剤は、アクリルアミドであるため、生分解性がない欠点がある。
そこで、特許文献9に開示のように、セルロースナノファイバーを用いた増粘剤を添加し、セルロースナノファイバーの増粘作用や分散作用により、砥粒の沈降を防ぎながら研磨を行うことが提案されている。
特開平3−97790号公報 特開2000−114212号公報 特開2000−144113号公報 特開2001−110760号公報 特開2002−47484号公報 国際公開00/13217号公報 特開2003−55684号公報 特開2008−55591号公報 国際公開2016/111165号公報
半導体用光学部品やウエハ加工の分野での要素技術の根幹にあるのは、限りなく平面に近い平面創成技術であり、ここに研削・研磨技術の進化が求められている。前述した分野では、耐蝕性が良好で、絶縁破壊電界強度や電子飽和速度などの電気特性に優れていることから、昨今、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)およびGaO(ガリウムナオキサイド)などが使用されている。SiC、GaNおよびGaOなどは、硬度が高く、化学的にも安定であるため、研磨等の加工が非常に困難である。また、SiC、GaNおよびGaOなどを研磨するためにダイヤモンドなどの高価な砥粒が用いられることから、研磨レートの向上が希求されている。
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、研磨レートを向上し得る研磨液を提供することを目的とする。
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る研磨液は、
中性のpH領域においてマイナスの表面電荷を有する砥粒と、
pH7.0においてプラスの表面電荷を有する塩基性多糖類からなる繊維状物であり、研磨液中で前記砥粒と凝集物を形成する多糖ファイバーと、を含み、
前記多糖ファイバーは、その繊維径がナノサイズであり、
研磨液のpHが、5.8〜9.0の範囲に設定されていることを要旨とする。
本発明に係る研磨液によれば、研磨レートを向上させることができる。
本発明に係る研磨液に用いることができる多糖ファイバーのうち、キトサンファイバーを構成するキトサンを示す一般的な構造式である。 本発明に係る研磨液に含まれる凝集物を示すイメージ図である。 キトサンファイバーを用いた実施例および比較例1の研磨液、セルロースファイバーを用いた比較例2の研磨液、TEMPO酸化セルロースファイバーを用いた比較例3の研磨液のそれぞれについて、研磨液のpHによる凝集物のサイズの変化を示す図である。 キトサンファイバーを用いた実施例および比較例1の研磨液について、研磨液のpHによる粘度の変化を示す図である。 セルロースファイバーを用いた比較例2の研磨液について、研磨液のpHによる粘度の変化を示す図である。 TEMPO酸化セルロースファイバーを用いた比較例3の研磨液について、研磨液のpHによる粘度の変化を示す図である。 ダイヤモンドのみの研磨液について、研磨液のpHによる粘度の変化を示す図である。 実施例1の研磨液および参考例2の研磨液をそれぞれ用いて研磨試験をしたときの結果であって、ウエハの厚み変化量を示す図である。 実施例1の研磨液および参考例2の研磨液をそれぞれ用いて研磨試験をしたときの結果であって、ウエハの反りを示す図である。 実施例1の研磨液および参考例2の研磨液をそれぞれ用いて研磨試験をしたときの結果であって、ウエハの表面粗さを示す図である。 沈降試験を示す写真であり、(a)は砥粒を配合した直後であり、(b)は30分静置した後である。 研磨試験の結果を示す図である。
(研磨液の概要)
本開示に係る研磨液は、例えば化学機械研磨(CMP)などの機械研磨等において使用可能なものである。研磨液は、被研磨体に合わせて適宜選択される砥粒(研磨粒子)と、添加物としての多糖ファイバー(例えば図1に示すようなキトサンファイバー)とを含み、砥粒および多糖ファイバーが凝集物(図2)を形成した状態で分散媒に分散するように構成されている。なお、以下の説明において、表面電荷(ゼータ電位)は、レーザードップラー式によるゼータ電位測定装置により測定した場合である。
(砥粒)
砥粒は、中性のpH領域(pH6以上でpH8以下)においてマイナスの表面電荷を有するものを用いることができる。砥粒としては、例えば、ダイヤモンド、セリア(酸化セリウム)などのセリウム系化合物、アルミナ(酸化アルミニウム)、ヒュームドシリカやコロイダルシリカなどのシリカ(酸化ケイ素)、チタニア(酸化チタン)、ジルコニア(二酸化ジルコニウム)、炭化ケイ素、h−ボロンナイトライド、C−ボロンナイトライドなどを選択することができる。砥粒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。砥粒は、被研磨体に合わせて適宜選択されるが、SiCなどの硬い材料が被研磨体である場合、ダイヤモンドが好適である。ダイヤモンドは、単結晶および多結晶の何れであってもよいが、価格の面からは単結晶が好ましく、研磨レート向上の観点からは多結晶が好ましい。研磨液が調製されるすべてのpH領域において、砥粒の表面電荷がマイナスになる必要はない。中性のpH領域において表面電荷がマイナスを示す砥粒は、酸性側に傾くと表面電荷が0に近づくように変化し、アルカリ側に傾くと表面電荷がよりマイナス側へ向かう傾向がある。
(砥粒のサイズ)
砥粒は、各々の工程(粗ラッピング、仕上げラッピング、粗ポリッシングまたは仕上げポリッシングなど)に適したサイズに設定される。例えば、砥粒は、ラッピング用として、その平均粒径が3μm〜30μmの範囲にあることが好ましく、6μm〜9μmの範囲にあることがより好ましい。このように比較的小さい砥粒を用いることで、被研磨体における研磨面の平滑性を良好にすることができる。なお、砥粒のサイズは、フロー方式画像解析法で測定した場合である。
(砥粒の含有量)
砥粒は、研磨液に対して、0.1重量%〜1.0重量%の範囲で含有することが好ましい。砥粒を前述した範囲で含有することで、研磨液によって被研磨体を効率よく研磨することができる。
(多糖ファイバー)
多糖ファイバーは、pH7.0においてプラスの表面電荷を有するものを用いることができる。なお、多糖ファイバーとは、多糖からなる繊維状物である。このような多糖ファイバーを構成する多糖としては、例えば、キトサン、塩基性ムコ多糖、アミノ化セルロース、アミノ化デンプン、アミノ化グルコマンナン、アミノ化アガロース、アミノ化デキストラン等の塩基性多糖類を用いることができ、当該多糖類には、これらの多糖の塩類または誘導体を含んでいる。多糖ファイバーの中でも、キトサンファイバーは、前述した砥粒と好適なサイズの凝集物を形成し得るので好ましく、キトサンファイバーを含む研磨液は、キトサンファイバーの抗菌作用により、研磨後に出る廃液をかび難くすることができる。図1に示すようなキトサンファイバーとしては、例えば、キチン脱アセチル化物やキチン部分脱アセチル化物などであってもよく、またこれらの誘導体であってもよい。キトサンファイバーの脱アセチル化率は、10%〜100%の範囲、好ましくは、50%〜100%の範囲である。キトサンファイバーの脱アセチル化率が前記範囲であると、アミノ基(図1参照)が多くなって荷電をもつ部分が多くなるので、砥粒を凝集する能力が向上するため、研磨レートを向上させることができる。
(多糖ファイバーのサイズ)
多糖ファイバーは、少なくとも繊維径(短径)がナノサイズ(1nm〜999nm)である、所謂多糖ナノファイバーであることが好ましい。多糖ファイバーは、繊維径が4nm〜999nmの範囲であることが好ましく、繊維の長さ(長径)が4nm〜10000nmの範囲であることが好ましい。このように、多糖ファイバーは、ミクロサイズの砥粒と比べて、サイズが小さいものを用いるとよい。前述したサイズの多糖ファイバーであると、砥粒と比べて比重が小さい多糖ファイバーが、砥粒と適度なサイズの凝集物を形成して、砥粒の沈降を防止する良好な沈降防止性を付与し得る。また、多糖ファイバーと砥粒との凝集により、適度なサイズの凝集物を形成して、研磨液によって被研磨体を効率よく研磨することができる。なお、多糖ファイバーのサイズは、電界放出型走査透過型電子顕微鏡(STEM)で測定した場合である。
(多糖ファイバーの表面電荷)
多糖ファイバーは、研磨液が調製されるすべてのpH領域において、表面電荷がプラスになる必要はなく、pH7.0にある際に表面電荷がプラスであればよい。このようなpH7.0において表面電荷がプラスを示す多糖ファイバーは、酸性側に傾くと表面電荷がよりプラス側へ向かい、アルカリ側に傾くと表面電荷が0に近づくように変化する傾向がある。
(多糖ファイバーの含有量)
多糖ファイバーは、研磨液に対して、0.01重量%〜1.0重量%の範囲で含有していることが好ましく、0.025重量%〜0.5重量%の範囲で含有することがより好ましい。多糖ファイバーを前述した範囲で含むことで、砥粒の沈降を防止する良好な沈降防止性を付与できると共に、砥粒と共に適度なサイズの凝集物を形成でき、研磨液によって被研磨体を効率よく研磨することができる。
(分散媒)
分散媒は、液体であれば特に制限されないが、通常、水を主体とする水系媒体、すなわち水、アルコールアミン類などの防錆剤、および水溶性有機溶剤を主成分としたものを用いるとよい。水以外の分散媒としては水溶性有機溶剤とするのが好ましく、例えばエタノール、ノルマルプロパノール、2−プロパノールなどのアルコール類、ピロリドン系溶剤などが挙げられる。
(研磨液のpH)
研磨液は、pH5.8以上に設定されており、またpH5.8以上で研磨に使用される。研磨液のpHは、より好ましくは5.8〜9.0の範囲である。中性のpH領域で表面電荷がマイナスである砥粒と、pH7.0で表面電荷がプラスである多糖ファイバーとを含んでいることで、pH5.8以上の研磨液中において凝集物のサイズが顕著に大きくなるから、大きなサイズの凝集物により研磨レートを向上し得ると共に、沈降防止効果を向上することができる。多糖ファイバーは、研磨液のpHが5.8より低くなると、研磨液に溶解する傾向を示すようになり、砥粒と多糖ファイバーとの凝集が起こり難くなると考えられる。例えば、キトサンファイバーである場合、キトサンは中性およびアルカリ性条件において水溶性ではないが、弱酸性条件下においてアミノ基(図1参照)がプロトン化して水溶性となる。換言すると、多糖ファイバーとしては、pH5.8以上の研磨液中において溶けないあるいは溶け難いものを用いることが望ましく、例えばキトサンファイバーのように当該pH領域において溶け難いまたは不溶であると、多糖ファイバーの添加によって研磨液の粘度が高くならないメリットがある。
(pH調整剤)
研磨液のpHを調整するpH調整剤としては、塩酸、硫酸、または酢酸や乳酸やリンゴ酸などの有機酸等を用いることができ、研磨定盤の保護の観点から、有機酸を用いることが好ましい。また、pH調整剤としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩基を用いることができる。
(凝集物のサイズ)
研磨液中に形成される砥粒と多糖ファイバーとの凝集物は、そのサイズ(見掛け平均粒子径)が、65μm以上になるようにすることが好ましく、70μm〜200μmの範囲がより好ましい。凝集物のサイズを前記範囲にすることで、砥粒よりも見掛け粒子径が大きい凝集物によって研磨レートを向上させることができる。なお、凝集物のサイズは、フロー方式画像解析法で測定した場合である。
研磨液は、砥粒の平均粒径に対して7倍以上のサイズの凝集物を含んでいることが好ましい。砥粒に対する凝集物のサイズを前記範囲にすることで、砥粒よりも見掛けの粒子径が大きい凝集物によって研磨レートを向上させることができる。
(凝集物の表面電荷)
研磨液中において、凝集物の見掛けの表面電荷がプラスになるように設定することが好ましい。このように、見掛けの表面電荷がプラスである凝集物であると、SiC等の被研磨体の多くがマイナスの荷電を有していることから、研磨に際して発生した研磨屑を、研磨屑と凝集物との静電相互作用により、凝集物に捕集させることができる。研磨屑を凝集物で捕集することで、被研磨体の研磨面の平滑性を向上することができる。研磨液は、例えば、中性のpH領域において表面電荷が異なる砥粒に対して、pH7.0において表面電荷がプラスである多糖ファイバーを、電荷的に均衡する量を越えて過剰になるように配合することで、凝集物の表面電荷をプラスにすることができる。
前述した砥粒、多糖ファイバーおよび凝集物の表面電荷は、中性(pH6以上、pH8以下)のpH領域に調製された液状媒体中でのゼータ電位のピーク値の極性をいう。ゼータ電位は、粒子表面がどれだけの電荷を持っているかを表す指標であるが、ゼータ電位は粒子を分散させている液状媒体のpHによって変動するので、本開示では、中性のpH領域に調製した研磨液(液状媒体)を測定したときの値で表している。従って、本開示に係る研磨液を、砥粒、多糖ファイバーまたは凝集物のゼータ電位を測定したpHに常に調製するという意味ではない。
特に、研磨液のpHが、5.8〜9.0の範囲であると、凝集物における見掛けの表面電荷をプラスにすることができるので好ましい。このように、見掛けの表面電荷がプラスである凝集物であると、SiC等の被研磨体の多くがマイナスの荷電を有していることから、研磨に際して発生した研磨屑を、研磨屑と凝集物との静電相互作用により、凝集物に捕集させることができる。このように、研磨屑を凝集物で捕集することで、被研磨体の研磨面の平滑性を向上することができる。
研磨液には、多糖ファイバーの他に、分散剤や研磨促進剤などの適宜の添加剤を含んでいてもよい。
(研磨液の製造方法)
中性のpH領域で表面電荷がマイナスである砥粒と、pH7.0で表面電荷がプラスである多糖ファイバーとのそれぞれを、pHが中性である分散媒に添加する。また、必要に応じて添加剤を添加する。そして、砥粒および多糖ファイバーが添加された混合液を撹拌するなど、適宜操作を行い、砥粒と多糖ファイバーとを凝集させて凝集物を形成する。ここで、砥粒および多糖ファイバーが添加された混合液は、例えば7.9程度の中性のpH領域にあるので基本的にpH調整不要であるが、必要に応じてpH調整剤を添加することでpHを5.8以上になるように調製して、pHが5.8以上である研磨液を得る。
本開示の研磨液は、表面電荷がマイナスである砥粒と、表面電荷がプラスである多糖ファイバーとが、静電相互作用によって凝集して凝集物(図2参照)を形成するので、大きなサイズの凝集物が形成されると考えられる。特に、研磨液のpHが5.8以上であると、凝集物のサイズが顕著に大きくなる。セルロースファイバーは、従来から沈降防止剤として用いられているが、中性のpH領域において表面電荷がマイナスになり、当該pH領域で表面電荷がマイナスとなる本開示の砥粒と同じである。すなわち、セルロースファイバーは、本開示の研磨液と異なり、静電相互作用で砥粒を捕集するのではなく、砥粒を繊維に絡めるように取り込み、また研磨液の粘度を向上させることで砥粒を沈降防止していると考えられる。また、ポリオールアルキレンオキサイド等の合成高分子からなる沈降防止剤(後述する参考例2として挙げた市販クーラントの沈降防止成分)は、研磨液の粘度を高くすることで、砥粒の沈降を防止している。これに対して、本開示の研磨液では、多糖ファイバーが砥粒を繊維に絡めるように取り込むだけでなく、前述したように、砥粒と多糖ファイバーとの間の静電相互作用により、砥粒と多糖ファイバーとが凝集しているので、凝集物のサイズを大きくすることができる。従って、本開示の研磨液は、砥粒と多糖ファイバーとで形成される凝集物が、粒径が大きい疑似的な砥粒として作用するので、研磨レートを向上できる。しかも、凝集物は、砥粒同士が凝集したものではなく、砥粒と多糖ファイバーとで形成されるものであるから、凝集物の見掛け比重が軽く、研磨液中において沈降し難い。このように、本開示の研磨液によれば、研磨レートの向上と砥粒の好適な沈降防止とを両立し得る。
特に、中性のpH領域において砥粒および多糖ファイバーを添加することで、砥粒の表面電荷がマイナスであると共に、多糖ファイバーの表面電荷がプラスにある状態で混合されることになるので、両者の静電相互作用により凝集物を好適に形成し得るので好ましい。
(研磨液の作用効果)
本開示の研磨液によれば、砥粒を多糖ファイバーで静電的に捕集して大きなサイズの凝集物を形成するので、砥粒よりも見掛けの粒径が大きい凝集物が疑似的に研磨剤として作用することによって、研磨レートを向上させることができる。SiC等の被研磨体の研磨速度は、砥粒の粒子サイズの増大に伴って向上することが知られている。しかしながら、砥粒の粒子サイズを単純に大きくすると、ダメージを受ける層(加工変質層)の層厚が大きくなったり、被研磨体に加工痕が大きく残って平滑性が悪化したりするなど、様々な不都合が生じる。また、研磨工程の次の工程において、加工変質層をエッチングもしくは研磨で除去することになるが、SiC等のエッチングは危険な溶融水酸化カリウム(KOH)を使用する必要があり、設備および操業面から工業的には困難である。従って、小さいサイズの砥粒によって研磨するしかなく、一般にはその際に砥粒として用いられるダイヤモンド粒子のサイズが、前述した本発明に係る砥粒のサイズになる。本開示の研磨液が含む凝集物は、柔らかいので、被研磨体における研磨面の表面粗さを小さくすることができ、多糖ファイバー特有の緩和作用により、研磨面のスクラッチを少なくすることができる。しかも、砥粒のサイズよりも見掛けサイズが大きくなった凝集物により、研磨速度が向上し、結果として、加工変質層の厚みの低減化を実現できる。このように、本発明に係る研磨液によれば、砥粒自体のサイズを大きくすることなく研磨レートを向上でき、砥粒のサイズ自体が大きい訳ではないので、加工変質層の層厚を抑えて、被研磨体の平滑性を向上できる。
本開示に係る研磨液は、見掛けの比重が小さくなるので、砥粒が取り込まれた凝集物を沈降し難くすることができる。このように、研磨液は、凝集物が沈降し難いので、研磨装置における研磨液の供給経路で凝集物が沈降することを防止して、凝集物(砥粒)を被研磨体(ワーク)に効率よく届けることができる。従って、本開示の研磨液によれば、研磨に要する砥粒の量を少なくすることができ、ダイヤモンドなどの高価な砥粒を用いるSiCやGaN等の硬質材料の研磨のコスト低下に寄与し得る。更に、研磨液は、分散媒や添加物による粘度の上昇によって砥粒の沈降防止を図るものではなく、砥粒を多糖ファイバーで静電的に捕集して大きなサイズの凝集物を形成する構成であるから、研磨液の粘度を低く抑えることができ、例えば純水と同程度の粘度にすることも可能である。粘度の低い研磨液は、研磨時の動摩擦係数を高くできるので、研磨レートを向上させることができる。しかも、粘度の低い研磨液は、研磨装置における研磨液の供給経路での流通抵抗が小さくなり、被研磨体に効率的に供給することができる。
(研磨液の用途)
本開示の研磨液は、鋳鉄、合金鋼、銅、銅合金、アルミ、アルミ合金、超硬合金等の金属材料、およびSiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)およびGaO(ガリウムナオキサイド)、シリコンウエハ、セラミック、水晶、ガラス等の脆性材料の平面研削、円筒研削、内面研削、ホーニング、センタレス、スライシング、ラッピング、ポリッシング等において使用することができる。この中でも、研磨レートを向上できることから、ラッピングに好適であり、特に、SiC(シリコンカーバイド)などの硬い材料のラッピングに好適である。
次に、本開示に係る研磨液につき、好適な実施例を挙げて、以下に説明する。
(研磨液の調製)
実施例および比較例に係る研磨液は、砥粒および添加物としての多糖ファイバーを分散媒としての純水に添加し、必要に応じてpH調整剤によってpHを調整した後に、所定の撹拌条件によって撹拌して調製したものである。なお、砥粒および多糖ファイバーの配合量は、表1〜4に示す通りである。また、表1〜4に示す砥粒、多糖ファイバーおよび凝集物のゼータ電位は、研磨液が調整されたpHにおける値である。表1〜4に示す凝集物のサイズは、フロー式粒子画像分析装置(Malvern Panalytical製 FPIA-3000S)により測定しており、多糖ファイバーのサイズは、電界放出型走査透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製 SU8000)により測定している。また、ゼータ電位は、レーザードップラー式によるゼータ電位測定装置(Malvern Panalytical製 ゼータサイザーナノZS)により測定している。
実施例および比較例1の研磨液は、砥粒(ダイヤモンド)および多糖ファイバー(キトサンファイバー)を分散媒に分散してpH調製する前が、pH7.91である。比較例2の研磨液は、砥粒(ダイヤモンド)および多糖ファイバー(セルロースファイバー)を分散媒に分散してpH調製する前が、pH6.30である。比較例3の研磨液は、砥粒(ダイヤモンド)および多糖ファイバー(TEMPO酸化セルロースファイバー)を分散媒に分散してpH調製する前が、pH7.12である。実施例および比較例の研磨液は、調製前pHから酸性側に調製するときはpH調整剤として乳酸を用い、調製前pHからアルカリ側に調製するときはpH調整剤として水酸化ナトリウムを用いている。
実施例、比較例および参考例は、共通の砥粒を用いており、砥粒の条件は以下の通りである。
・砥粒の種類:多結晶ダイヤモンド(Diaと表記する場合もある。) ダイヤマテリアル株式会社
・砥粒のサイズ:平均粒径9μm(メーカー表示値)
なお、当該砥粒を含む原液のpHは、5.6である。
実施例および比較例において、多糖ファイバーの条件は以下の通りである。
(実施例および比較例1)
・多糖ファイバーの種類:キトサンファイバー(ChNFと表記する場合もある。)
・多糖ファイバーのサイズ:繊維径20nm、繊維の長さ2000nm
(比較例2)
・多糖ファイバーの種類:セルロースファイバー(CNFと表記する場合もある。)
・多糖ファイバーのサイズ:繊維径20nm、繊維の長さ1000nm
(比較例3)
・多糖ファイバーの種類:TEMPO酸化セルロースファイバー(TEMPOと表記する場合もある。)
・多糖ファイバーのサイズ:繊維径3nm、繊維の長さ不明
ここで、TEMPO酸化セルロースファイバーとは、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル(TEMPO)、このTEMPOを適宜の官能基で修飾した誘導体である、4−アミノTEMPO、4−アセトアミドTEMPO、4−カルボキシTEMPO、4−ヒドロキシTEMPO、4−ホスホオキシTEMPO、4−オキシTEMPOなどのニトロキシラジカルまたはニトロキシラジカル誘導体を触媒として、セルロースの6位にある炭素および水酸基を酸化して、該多糖の6位および末端基のみをカルボキシ基に変換したものをいう。なお、比較例3では、TEMPOを用いている。
参考例1の研磨液は、多糖ファイバーなどの研磨レートや沈降防止性を向上する添加物が配合されていない場合であり、参考例2の研磨液は、研磨レートを向上する添加物として、市販クーラント(コスモテクノ・コーポレーション株式会社製、PRG-3004、主成分:プロピレングリコール)を配合している。また、参考例3の研磨液は、添加物としてポリエチレンイミン(Polyethyleneimine;PEI)を含んでいる。なお、参考例の砥粒および添加物の配合量は、表2に示す通りである。
(pHと凝集物との関係)
実施例および比較例の研磨液について、研磨液のpHと研磨液中で形成される凝集物のサイズとの関係を確認した。その結果を表1〜4および図3に示す。なお、凝集物のサイズは、フロー粒子画像分析装置を用いて凝集物を撮像して、フロー方式画像解析法(体積基準)により算出した。
(沈降防止性)
実施例および比較例の研磨液について、沈降防止性を確認した。沈降防止性は、研磨液を撹拌し、30分静置し、目視により凝集物の沈降度合いを確認した。参考例1よりも沈降していない場合は「〇」と評価し、参考例1よりも沈降している場合は「×」と評価した。なお、比較例2は、実施例と同程度の沈降防止性を示すが、実施例よりも研磨液の粘度を上昇させてしまうので、「△」に分類している。
(研磨試験)
実施例、比較例および参考例の研磨液を用いて、被研磨体の研磨を行い、研磨レートを測定した。研磨装置は、鋳鉄製の定盤(φ300溝付き)を有する片面研磨装置(ムサシノ電子(株)製 商品名 MA300E)を用いた。チューブポンプにより流量7ml/分で研磨液を流しつつ、荷重3.9kgf(単位面積圧力50.4kgf/cm)、定盤回転数30rpmおよび加工時間30分の条件で、1枚の被研磨体(4H−SiC(4インチ))のC面を研磨した。研磨後に、被研磨体の研磨量を測定し、研磨量に基づいて研磨レートを算出した。その結果を表1〜4に示す。
(評価)
評価は、参考例1よりも研磨レートおよび沈降防止性が向上している場合は、「〇」と評価し、参考例1よりも研磨レートおよび沈降防止性の何れかが劣っている場合は、「×」と評価する。なお、比較例2−5は、参考例1よりも研磨レートがわずかに向上しているが、上昇度合いがわずかであるので、「△」に分類している。
(結果)
表1の実施例3に示すように、ダイヤモンドは、中性のpH6においてゼータ電位のピーク値がマイナスにあり、当該pHにおいて表面電荷がマイナスである。また、キトサンファイバーは、中性のpH6においてゼータ電位のピーク値がプラスにあり、当該pHにおいて表面電荷がプラスである。そして、表1および図3に示すように、キトサンファイバーを配合した実施例の研磨液は、pH5.8以上において凝集物のサイズが顕著に大きくなることが確認できる。これに対して、表2の比較例1が示すように、キトサンファイバーを配合しても、pH5.8より酸性側のpH領域では、凝集物が大きくならないことが判る。また、表3の比較例2および表4の比較例3が示すように、セルロースファイバーおよびTEMPO酸化セルロースファイバーは、pHが変化しても凝集物のサイズがほぼ変わらない。なお、実施例2において凝集物のサイズが「※」になっているが、これは凝集物のサイズが測定装置の測定可能範囲を越えて大きいためであり、140μmよりも大きいといえる。
表1に示すように、実施例の研磨液は、9μmのダイヤモンドとナノサイズのキトサンファイバーとからなる凝集物のサイズが、ダイヤモンドのサイズの7倍以上になっており、凝集物がダイヤモンドの15倍以上のサイズになることも確認できる。表3および表4に示すように、比較例2および比較例3の研磨液は、9μmのダイヤモンドとナノサイズのセルロースファイバー(TEMPO酸化セルロースファイバー)とからなる凝集物のサイズが、ダイヤモンドのサイズの7倍未満であり、実施例の凝集物のサイズに及ばない。特に、TEMPO酸化セルロースファイバーによる凝集物は、ダイヤモンドの2倍以下であり、サイズが非常に小さい。
表1に示すように、実施例の研磨液は、ダイヤモンドとナノサイズのキトサンファイバーとからなる凝集物のサイズが、65μm以上になっており、凝集物が140μm以上のサイズになることも確認できる。表3および表4に示すように、比較例2および3の研磨液は、ダイヤモンドとナノサイズのセルロースファイバー(TEMPO酸化セルロースファイバー)とからなる凝集物のサイズは、65μmよりも小さく、実施例の凝集物のサイズに及ばない。特に、TEMPO酸化セルロースファイバーによる凝集物は、18μmよりも小さく、サイズが非常に小さい。
表1において実施例1、3、6および7に示すように、凝集物のサイズが大きいことで、参考例1の2倍以上の研磨レートを示し、市販クーラントを配合した参考例2やポリエチレンイミンを配合した参考例3よりも、研磨レートが向上していることが判る。特に、実施例の研磨液は、25重量%の市販クーラントを配合している参考例2の研磨液よりも、キトサンファイバーの配合量が0.5重量%と非常に少なく、少ない配合量によって、研磨レートの向上に寄与し得ることが判る。なお、表3の比較例2および表4の比較例3に示すように、セルロースファイバーおよびTEMPO酸化セルロースファイバーは、研磨レートの向上に寄与していない。特に、セルロースファイバーは、砥粒との凝集物のサイズが比較的大きくなるが、比較例2−5および2−11に示すように研磨レートは向上していない。
表1〜4に示すように、砥粒として用いたダイヤモンドは、ゼータ電位のピーク値がマイナスになる。表1および2に示すように、実施例および比較例1で用いたキトサンファイバーは、弱酸性領域から中性領域においてゼータ電位のピーク値がプラスであり、ダイヤモンドと表面電荷の符号が逆の関係にある。なお、実施例および比較例1で用いたキトサンファイバーは、弱アルカリ側に調整することで、ゼータ電位のピーク値がマイナスになる。これに対して、セルロースファイバーは、表3に示すように、ゼータ電位のピーク値がマイナスであり、ダイヤモンドと表面電荷の符号が同じ関係にある。従って、実施例と比較例2とでは、凝集物の形成機構が異なっていると推測される。
表1に示すように、実施例の研磨液は、キトサンファイバーによる凝集物についてゼータ電位のピーク値がプラスであり、SiC等の被研磨体が有するマイナスの荷電と符号が逆である。従って、実施例の凝集物は、研磨時に生じた研磨屑を取り込むように作用し、これも平滑性を向上させる一因であると考えられる。これに対して、表3に示すように、比較例2の研磨液は、セルロースファイバーによる凝集物についてゼータ電位のピーク値がマイナスであり、SiC等の被研磨体が有するマイナスの荷電と符号が同じである。このため、比較例2の凝集物は、研磨屑を取り込むように作用しないと考えられる。
表1に示すように、実施例の研磨液は、pH5.8〜pH9の範囲において、キトサンファイバーによる凝集物についてゼータ電位のピーク値がプラスであることが確認できる。これに対して、表3に示すように、比較例2の研磨液は、セルロースファイバーによる凝集物についてゼータ電位のピーク値が、pH5.8およびpH9においてマイナスである。
図4に示すように、実施例の研磨液は、pH5.8以上において粘度が顕著に低くなる。また、図4および図7に示すように、実施例の研磨液は、添加剤を含んでいないダイヤモンドのみの参考例1の研磨液(粘度:1.09mPa・s)と同等の低粘度であることが判る。表1の実施例(図4)と、表3の比較例2(図5)および表4の比較例3(図6)とを対比すると、実施例の研磨液は、比較例2および比較例3の研磨液よりも粘度が非常に低いことが確認できる。このように、実施例の研磨液によれば、粘度の上昇を抑えつつ、砥粒(凝集物)の沈降防止性を向上することができる。また、実施例の研磨液は、前述の如く比較的少ない配合量のキトサンファイバーによって研磨レートを向上させることができ、併せて沈降防止性を向上させることもできる。しかも、実施例の研磨液は、良好な沈降防止性を示しつつ粘度が低いので、研磨時の動摩擦係数を向上させて、研磨レートを向上できると共に、研磨装置での流通抵抗が小さくなり、被研磨体に効率的に供給できるなど、研磨液の粘度を上昇させてしまう沈降防止剤と比べて様々なメリットがある。
図8〜図10は、実施例1の研磨液および参考例2の研磨液のそれぞれについて、研磨試験の結果を対比したものである。図8に示すように、同じ条件で研磨した際に、被研磨体(ウエハ)の厚み変化量が、C面およびSi面の何れにおいても、実施例1のほうが参考例2よりも大きく、実施例1の研磨液は、研磨効率に優れていることが判る。図9に示すように、同じ条件で研磨した際に、被研磨体(ウエハ)の反り量が、C面を下にして研磨しても、Si面を下にして研磨しても、実施例1のほうが参考例2よりも小さく、実施例1の研磨液は、平滑性の向上に寄与していることが判る。図10に示すように、同じ条件で研磨した際に、被研磨体(ウエハ)の表面粗さが、C面を下にして研磨しても、Si面を下にして研磨しても、実施例1のほうが参考例2よりも小さく、実施例1の研磨液は、平滑性の向上に寄与していることが判る。
表1に示すように、実施例の研磨液は、凝集物(砥粒)が沈降し難いことが確認できる。図11(a)および(b)の1は、実施例と同じキトサンファイバーを純水に対して1重量%になるように添加した溶液であり、(a)はキトサンファイバーを添加して撹拌した直後であり、(b)は30分静置した後である。図11(a)および(b)の2は、実施例と同じキトサンファイバーを純水に対して1重量%になるように添加し、それに実施例と同じダイヤモンドを0.1重量%になるように添加した溶液であり、(a)はダイヤモンドを添加して撹拌した直後であり、(b)は30分静置した後である。図11(a)および(b)の3は、参考例2と同じ市販クーラントを純水に対して1重量%になるように添加し、それに実施例と同じダイヤモンドを0.1重量%になるように添加した溶液であり、(a)はダイヤモンドを添加して撹拌した直後であり、(b)は30分静置した後である。図11に示すように、キトサンファイバーが存在することでダイヤモンド(凝集物)が沈降し難く、純水による砥粒の沈降防止性が非常に低いことが判る。
実施例の研磨液は、ダイヤモンドとキトサンファイバーとからなる比較的サイズの大きい凝集物が、疑似的な砥粒として作用して研磨レートを向上し得るので、砥粒の配合量を減らすことができる。しかも、前述したように、研磨液の粘度が低く、凝集物が沈降し難いので、砥粒(凝集物)を被研磨体に効率よく供給することができる。従って、高価な砥粒であるダイヤモンドの使用量を抑えることができ、研磨にかかるコストを抑えることができる。
砥粒として前述したダイヤモンドを用い、キトサンファイバーとして前述したものを用いて作成した研磨液を用いて研磨試験を行った。その結果を表5および図12に示す。なお、砥粒の配合量はすべて同じであり、添加物の配合量は、表5に記載の通りである。なお、市販クーラントの配合量は、25重量%である。表5に示す研磨液による研磨条件は、すべて同じであり、前述した実施例、比較例および参考例と同様である。
表5および図12に示すように、キトサンファイバーを含む研磨液は、良好な研磨レートを示すことが判る。また、キトサンファイバーは、配合量の大小による研磨レートの変化が小さいことが確認できる。更に、キトサンファイバーは、キトサン乳酸溶液よりも研磨レートに優れており、ファイバーであることで利点があると考えられる。

Claims (6)

  1. 中性のpH領域においてマイナスの表面電荷を有する砥粒と、
    pH7.0においてプラスの表面電荷を有する塩基性多糖類からなる繊維状物であり、研磨液中で前記砥粒と凝集物を形成する多糖ファイバーと、を含み、
    前記多糖ファイバーは、その繊維径がナノサイズであり、
    研磨液のpHが、5.8〜9.0の範囲に設定されている
    ことを特徴とする研磨液。
  2. 前記砥粒の平均粒径の7倍以上となった見掛け平均粒径の前記凝集物を含んでいる請求項1記載の研磨液。
  3. 見掛け平均粒径が65μm以上である前記凝集物を含んでいる請求項1または2記載の研磨液。
  4. 前記凝集物は、研磨液中での見掛けの表面電荷がプラスになっている請求項1〜の何れか一項に記載の研磨液。
  5. 前記多糖ファイバーを、0.01重量%〜1.0重量%の範囲で含んでいる請求項1〜の何れか一項に記載の研磨液。
  6. 前記砥粒が、ダイヤモンドであり、前記多糖ファイバーは、キトサンファイバーである請求項1〜の何れか一項に記載の研磨液。
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