JP6742719B2 - 状態推定装置及び状態推定方法 - Google Patents
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Description
ここで、ロボット等におけるモータのセンサレス化を図るために、インダクタンスの変化によりモータを備えるロボットの部位の角度を推定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このように、従来の技術においては、センサを用いることなく制御対象の状態を適切に推定することが困難であった。
制御対象となるモータに電力を供給する電源と当該モータとを接続する回路に直列に接続されたインダクタと、
前記インダクタの両端電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電圧検出手段によって検出された前記インダクタの両端電圧に基づいて、前記モータの状態を推定する推定手段と、
を備えることを特徴とする。
初めに、本発明に係る状態推定装置及び状態推定方法に適用される基本的原理について説明する。
[基本的原理]
図1は、本発明の基本的原理を示す回路図である。
図1に示すように、本発明に係る状態推定装置1においては、電源10と、制御対象20と、状態推定用インダクタ30とを含む回路が構成される。
これらのうち、電源10及び状態推定用インダクタ30は、制御対象20とは位置が離れた制御側に設置することができる。例えば、制御対象20が化学物質や放射能等のため立ち入り困難な環境に設置される場合、電源10及び状態推定用インダクタ30は、立ち入り可能な環境にある制御室等に設置することができる。
制御対象20は、例えばアクチュエータ(モータ)等によって構成され、電源10から供給される電力によって動作する。なお、制御対象20は、動作時に負荷に応じた逆起電力を発生する。
状態推定用インダクタ30は、電源10及び制御対象20を含むループに直列に接続され、電源10及び制御対象20を流れる電流と同一の電流(以下、適宜「駆動電流」と呼ぶ。)が流れる構成となっている。状態推定用インダクタ30は、駆動電流が流れることにより、自己インダクタンスに応じた起電力を発生する。
J・dω=Tm−Tl (1)
ただし、dωはωの時間微分である。
Vm=R・I+E (2)
E=Kt・ω (3)
Vm=R・I+Kt・ω (4)
制御対象20の内部抵抗及び逆起電力定数Ktの変化がきわめて微小であり、実質的に一定であるとみなせる場合、式(4)の両辺を時間で微分することで、式(5)が得られる。
dVm=R・dI+Kt・dω (5)
dω=(dVm−R・dI)/Kt (6)
制御対象20と直列に状態推定用インダクタ30を接続した場合、状態推定用インダクタ30のインダクタンスをLとすると、状態推定用インダクタ30に印加される電圧VLは、式(7)のように表される。
VL=L・dI (7)
dω=(ΔVm−R・(VL/L))/Kt
=(ΔVm・L−R・VL)/(Kt・L) (8)
これにより、式(8)から、制御側において取得可能なパラメータ(ΔVm及びVL)によって、制御対象20の角加速度dωを推定することができる。
即ち、本発明の構成では、制御対象20の状態が、制御側に設置された状態推定用インダクタ30に反映されることから、状態推定用インダクタ30の状態に着目することで、制御対象20にセンサを備えることなく、制御側において制御対象20の状態を推定することができる。
また、制御対象20の角加速度dωが求められることにより、ロバスト制御を行うことが可能となるため、制御対象20の位置及び力を高精度に制御することができる。これにより、制御対象20に入力される力覚を制御側に伝達すること等が可能となり、遠隔操作されるロボットにおけるモータのセンサレス化を実現することができる。
さらに、外乱オブザーバ等により制御対象20に加わる外力を推定することができるため、角加速度に基づく角度制御ループ及び推定した外力に基づくトルク制御ループを構成することが可能となる。
次に、本発明を適用した状態推定装置1の具体的構成について説明する。
図2は、本発明を適用した状態推定装置1の具体的構成を示すブロック図である。
図2に示すように、状態推定装置1は、電源10と、制御対象20としてのモータ20aと、状態推定用インダクタ30と、制御部40と、電圧計50とを備えている。
これらのうち、電源10及び状態推定用インダクタ30は、図1における説明を参照することとし、ここでは説明を省略する。
電圧計50は、状態推定用インダクタ30の両端電圧VLを測定し、測定結果を制御部40に出力する。なお、電圧計50によって測定された状態推定用インダクタ30の両端電圧VLは、A/D(Analog to Digital)変換されて制御部40に出力される。
次に、状態推定装置1の動作を説明する。
初めに、制御部40において、モータ20aから出力する力(または位置)の目標値に応じた電源10への指令値を算出し、電源10に指令値を入力する。
すると、電源10は、モータ20aに対して指令値に応じた電圧Vmを印加し、モータ20aは、印加された電圧Vmに応じて、力(または位置)を出力する。
このとき、状態推定装置1には、電源10、モータ20a及び状態推定用インダクタ30に共通する電流Iが流れ、制御部40は、モータ20aの内部抵抗R、逆起電力定数Kt、状態推定用インダクタ30のインダクタンスL、電源10の供給電圧の変化量ΔVm及び状態推定用インダクタ30の両端電圧VLに応じた角加速度dωを算出する(式(8)参照)。
即ち、センサを用いることなくモータ20aの状態をより適切に推定することが可能となる。
これにより、例えば、モータ20aにおける力覚を制御側において再現し、正確な力覚を伝達しながら、バイラテラル制御によってロボットのマニピュレータを制御すること等が可能となる。
なお、本発明をバイラテラル制御に用いる場合、マスタ側及びスレーブ側において加速度の差が実質的にゼロとなり、力覚が適切に伝達される。このとき、マスタ側及びスレーブ側の絶対位置については、カメラ等で操作者が位置を視認しながら操作することから、力覚の伝達を行う上で問題とならない。
このように、リセット用のセンサを備えることで、より高い推定精度を実現することができる。
図3は、本発明を用いて状態を推定した場合の実験結果を示す模式図であり、図3(A)は力の推定結果、図3(B)はトルクの推定結果を示す図である。
図3(A)に示すように、力の指令値(実線)に対して、センサを用いて測定した測定値(一点鎖線)と、本発明を用いて推定した推定値(破線)とがほぼ一致している。
また、図3(B)に示すように、トルクの指令値(実線)に対して、センサを用いて測定した測定値(一点鎖線)と、本発明を用いて推定した推定値(破線)とがほぼ一致している。
そのため、本発明によって、センサ部の故障及び誤検知がなくなるため、耐故障性の向上を図ることができ、また、センサに相当する体積が不要となるため、装置の小型化を図ることができる。さらに、本発明によって、センサに相当する重量がなくなるため、装置の軽量化を図ることができ、また、センサを設置する費用が不要となるため、装置のコスト削減を図ることができる。
次に、状態推定装置1の具体的適用例について説明する。
(1)原子炉内部におけるアクチュエータへの適用
本発明は、原子炉内部で使用されるアクチュエータに適用することができる。
即ち、原子炉内部にアクチュエータを備えたマニピュレータを配置し、原子炉の制御室にマニピュレータの制御部、電源及び状態推定用インダクタンスを配置することができる。
原子炉内でセンサを備えたマニピュレータを使用した場合、センサが放射能によって短期間で故障し、頻繁にマニピュレータを交換する必要が生じる。
これに対し、本発明の構成を適用することで、センサを備えない構成によって、マニピュレータの状態をセンサで測定する場合と同様に推定することができると共に、マニピュレータの交換頻度を低下させることができる。
本発明は、人体内部等、狭小な空間で用いられるアクチュエータに適用することができる。
人体内部での内視鏡手術で用いられるマニピュレータ等、狭小な空間で用いられるマニピュレータには、比較的大きいサイズを有するエンコーダを備えることは困難である。
このような場合に、本発明の構成を適用し、マニピュレータを駆動するアクチュエータと直列に、状態推定用インダクタ30を人体外部に配置することで、マニピュレータの力覚を制御部側に伝えることが可能となる。
人間の身体的行為を実現するために、アクチュエータの現在の状態(加速度、速度あるいは位置等)を入力として、位置(または速度)あるいは力の少なくとも一方の領域における演算を行うことで、アクチュエータの動作を決定することができる(例えば、発明者らによる国際特許出願PCT/JP2014/073083参照)。
このような場合に、本発明を適用し、状態推定用インダクタ30を備えることで、アクチュエータの現在位置を検出するセンサを備えることなく、アクチュエータの現在位置を推定することができる。
本発明は、トンネルの掘削工事等を行う掘削機を駆動するモータに適用することができる。
トンネルの掘削工事においては、地質の変化により岩盤等の硬い層に突き当たることがあり、そのまま掘り進めた場合、掘削機の故障等の原因となる。そのため、掘削の現場では、掘削機を適宜停止させ、例えば数日を費やして地層の確認を行っている。このような地層の確認のために、工事作業の効率が低下することとなる。
これに対し、掘削機を駆動するモータに本発明を適用することにより、モータが地層に対して出力している力を、センサを備えることなく、リアルタイムに推定することができる。なお、このような掘削機にセンサを設置した場合、動作条件が過酷であることから、センサの故障が頻繁に発生することとなる。
これにより、地質の変化があったことがリアルタイムに検出されるため、無用に掘削機を停止させる必要がなくなり、工事作業の効率化を図ることができる。
状態推定用インダクタ30は、制御対象となるモータ20aに電力を供給する電源10と当該モータ20aとを接続する回路に直列に接続される。
電圧計50は、状態推定用インダクタ30の両端電圧を検出する。
制御部40は、電圧計50によって検出された状態推定用インダクタ30の両端電圧に基づいて、モータ20aの状態を推定する。
このような構成により、状態推定装置1には、電源10、モータ20a及び状態推定用インダクタ30に共通する電流が流れ、制御部40は、状態推定用インダクタ30の両端電圧に基づいてモータ20aの状態を推定する。
したがって、センサを用いることなくモータ20aの状態をより適切に推定することが可能となる。
これにより、劣悪な環境等に設置されたモータ20aにセンサを備えることなく、劣悪な環境等の外に設置された状態推定用インダクタ30を用いて、モータ20aの状態を推定することができる。
これにより、容易に取得可能な指令値あるいは測定値によって、モータ20aの状態を推定することが可能となる。
これにより、力覚を伝達するために必要な角加速度または加速度をより適切に推定することが可能となる。
これにより、ロボットのマニピュレータにおける力をより適切に制御することが可能となる。
リセット用のセンサは、制御部40による推定誤差をリセットするためにモータ20aの状態を検出する。
制御部40は、リセット用のセンサの検出結果に基づいて、モータ20aの状態を推定する際の累積誤差をリセットする。
これにより、状態推定装置1において、より高い推定精度を実現することができる。
Claims (7)
- 制御対象となる直流モータに電力を供給する電源と当該直流モータとを接続する回路に直列に接続されたインダクタと、
前記インダクタの両端電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電圧検出手段によって検出された前記インダクタの両端電圧に基づいて、前記直流モータの状態を推定する推定手段と、
を備え、
前記電源、前記直流モータ及び前記インダクタはループを構成し、
前記推定手段は、前記直流モータにおける角加速度または加速度の少なくともいずれかを推定することを特徴とする状態推定装置。 - 前記電源及びインダクタと前記直流モータとは、遠隔的な位置に設置されることを特徴とする請求項1に記載の状態推定装置。
- 前記推定手段は、前記直流モータへの印加電圧の指令値の変化と、前記インダクタの両端電圧とに基づいて、前記直流モータの状態を推定することを特徴とする請求項1または2に記載の状態推定装置。
- 前記推定手段は、前記直流モータへの印加電圧の指令値の変化と、前記インダクタの両端電圧と、予め取得されている前記インダクタのインダクタンスと、前記直流モータの内部抵抗及び逆起電力定数とを用いて前記直流モータにおける角加速度または加速度を推定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の状態推定装置。
- 前記推定手段は、前記直流モータにおけるトルクまたは力を推定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の状態推定装置。
- 前記推定手段による推定誤差をリセットするために前記直流モータの状態を検出する検出手段をさらに備え、
前記推定手段は、前記検出手段の検出結果に基づいて、前記直流モータの状態を推定する際の累積誤差をリセットすることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の状態推定装置。 - 制御対象となる直流モータの状態を推定する状態推定方法であって、
前記直流モータに電力を供給する電源と当該直流モータとを接続する回路に直列に接続されたインダクタの両端電圧を検出し、
前記検出された前記インダクタの両端電圧に基づいて、前記直流モータの状態を推定し、
前記電源、前記直流モータ及び前記インダクタはループを構成し、
前記直流モータにおける角加速度または加速度の少なくともいずれかを推定することを特徴とする状態推定方法。
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