JP6740829B2 - 二酸化ルテニウム粉末とその製造方法、厚膜抵抗体ペースト、及び、厚膜抵抗体 - Google Patents

二酸化ルテニウム粉末とその製造方法、厚膜抵抗体ペースト、及び、厚膜抵抗体 Download PDF

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Description

本発明は、二酸化ルテニウム粉末とその製造方法、厚膜抵抗体ペースト、及び、厚膜抵抗体に関する。
厚膜抵抗体は、チップ抵抗器、厚膜ハイブリッドICや抵抗ネットワーク等に広く用いられている。厚膜抵抗体は、導電粒子やガラス粉末を、ビヒクルと呼ばれる有機媒体中に分散させた厚膜抵抗体ペーストを基板上に塗布し焼成することにより製造される。厚膜抵抗体中の導電粒子は、厚膜抵抗体の電気的特性を決定する最も重要な役割を有しており、従来、ルテニウム酸鉛などが使用されていた。
近年、環境を保護するために電子部品の鉛フリー化が進み、厚膜抵抗体についても、鉛を含まない導電粒子やガラス粉末を用いることが望まれている。鉛フリーの導電粒子として、例えば、酸化ルテニウム粉末が用いられており、その製造方法についても、いくつか報告されている。
例えば、特許文献1には、4価より上の原子価をもつルテニウム塩の水溶液を、還元性を有する水溶性有機物で還元した微粉末状ルテニウム含水酸化物を脱水し、均一粒径の微粉末状の二酸化ルテニウムの製造方法が記載されている。
また、例えば、特許文献2には、ルテニウム化合物とバリウム化合物の混合物を、酸化雰囲気かつ400℃以上の温度で熱処理してルテニウムとバリウムの板状複合酸化物を合成する工程と、次に、得られた板状複合酸化物に酸化ホウ素もしくはホウ酸を混合した後、500℃以上の温度で熱処理を行って板状複合酸化物を板状の酸化ルテニウム粉末と酸化ホウ素と酸化バリウムの溶融物中に生成させる工程と、得られた溶融物に溶剤を添加し、酸化ホウ素と酸化バリウムを溶解して板状酸化ルテニウム粉末を回収する工程と、からなる板状酸化ルテニウム粉末の製造方法が記載されている。また、この製造方法により得られる板状酸化ルテニウム粉末は、径が1μm〜5μmの六角板状で、厚みが0.15μm〜0.5μmであることが記載されている。
特開H06−345441号公報 特開2013−53030号公報
しかしながら、本発明者の検討によると、特許文献1のように、従来の湿式法で製造された二酸化ルテニウムは、一般的に、粒状(球状を含む)の一次粒子を有するため、厚膜抵抗体の導電粒子として、この粒状の二酸化ルテニウムを用いた場合、導電粒子間の接点が多くなり、電流雑音が問題となることがあった。また、特許文献2に記載される酸化ルテニウムは、板状であるため、導電粒子間で面接触をすることができるが、製造工程が煩雑となり易かった。
本発明は、このような状況に鑑み、従来の粒状の二酸化ルテニウムと比較して、粒子間の接点の数を減少させることができる二酸化ルテニウム粉末と、その簡便な製造方法を提供する。また、本発明は、二酸化ルテニウム粉末を、厚膜抵抗体の導電粒子として用いた場合、従来の粒状の二酸化ルテニウムを用いた場合と比較して、電流雑音を低減させた厚膜抵抗体及び厚膜抵抗体ペーストを提供することを目的とする。
本発明者は、上述した従来の課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、従来の粒状の二酸化ルテニウムを、ビスマス化合物の存在下で熱処理をすることにより、棒状の形状を有する二酸化ルテニウム粉末を製造できること、棒状の形状を有する二酸化ルテニウム粉末を用いた厚膜抵抗体は、電流雑音が低減されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の第1の態様では、ビスマス化合物の存在下、粒状の二酸化ルテニウムを600℃以上900℃以下の温度で熱処理して、棒状の二酸化ルテニウムを形成すること、を備える、二酸化ルテニウム粉末の製造方法が提供される。
また、粒状の二酸化ルテニウムは、一次粒径が100nm以下であることが好ましい。また、ビスマス化合物は、酸化ビスマス、塩化ビスマス、及び、オキシ塩化ビスマスから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、ビスマス化合物を、粒状の二酸化ルテニウムに対して、モル比で0.1倍以上5倍以下の範囲で、粒状の二酸化ルテニウムと混合した後、熱処理をすることが好ましい。また、棒状の二酸化ルテニウムは、長軸方向に対して垂直な断面の短径が100nm以下であり、前記長軸方向の長径と、前記断面における短径との比(長軸方向における長径/断面における短径)が2以上であることが好ましい。
さらに、上記二酸化ルテニウム粉末の製造方法は、棒状の二酸化ルテニウムを形成した後、ビスマス化合物を溶媒に溶解させて得られた溶液中から、棒状の二酸化ルテニウムを固液分離すること、を備えることが好ましい。また、溶媒が酸性水溶液であることが好ましい。
さらに、上記二酸化ルテニウム粉末の製造方法は、棒状の二酸化ルテニウムを固液分離した後、ビスマス化合物を溶解させた溶液を、濃縮乾燥して、ビスマス化合物を回収することと、回収されたビスマス化合物を含むビスマス化合物の存在下、粒状の二酸化ルテニウムを熱処理して、棒状の二酸化ルテニウムを形成すること、を備えることが好ましい。
本発明の第2の態様では、棒状の形状を有し、長軸方向に対して垂直な断面の最小径が100nm以下であり、長軸方向における長径と、断面における短径との比(長軸方向における長径/断面における短径)が2以上である、二酸化ルテニウム粉末が提供される。
また、上記二酸化ルテニウム粉末は、長軸方向に対して垂直な断面における、長径と短径との比(断面における長径/断面における短径)が2未満である、ことが好ましい。また、厚膜抵抗体の導電粒子として用いられることが好ましい。
本発明の第3の態様では、上記二酸化ルテニウム粉末と、ガラス粉末と、有機ビヒクルとを含む厚膜抵抗体ペーストが提供される。
本発明の第4の態様では、上記二酸化ルテニウム粉末を含む厚膜抵抗体が提供される。

本発明は、従来の粒状の二酸化ルテニウムと比較して、粒子間の接点の数を減少させることができる二酸化ルテニウム粉末と、その簡便な製造方法を提供する。また、本発明の厚膜抵抗体及び厚膜抵抗体ペーストは、上記二酸化ルテニウム粉末を、厚膜抵抗体の導電粒子として用いており、従来の粒状の二酸化ルテニウムを用いたものと比較して、電流雑音を低減することができる。
図1は、本実施形態の二酸化ルテニウム粉末の製造方法の一例を示すフローである。 図2(A)は、粒状の二酸化ルテニウム(原料)の一例を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、図2(B)は、棒状の二酸化ルテニウムとビスマス化合物との混合物(第2の混合物)の一例を示すSEM写真である。 図3は、本実施形態の二酸化ルテニウム粉末の一例を示す模式図である。 図4は、本実施形態の二酸化ルテニウム粉末の一例をSEM写真である。 図5は、実施例又は比較例の二酸化ルテニウム粉末を用いた評価用厚膜抵抗体の抵抗値と電流雑音との関係を示すグラフである。
以下、図面を参照して、本実施形態の二酸化ルテニウム粉末とその製造方法、それを用いた厚膜抵抗体ペースト、及び、厚膜抵抗体について説明する。なお、図面においては、各構成をわかりやすくするために、一部を強調して、あるいは一部を簡略化して表しており、実際の構造または形状、縮尺等が異なっている場合がある。
1.二酸化ルテニウム粉末の製造方法
図1は、本実施形態の二酸化ルテニウム粉末の製造方法の一例を示すフロー図であり、図2〜4は、原料となる粒状の二酸化ルテニウム粉末(図2(A))、及び、得られる棒状の二酸化ルテニウム粉末(図2(B)、図3〜図4)の一例を示す図である。
本実施形態の二酸化ルテニウム粉末の製造方法は、図1に示すように、ビスマス化合物の存在下、粒状の二酸化ルテニウムを熱処理して、棒状の二酸化ルテニウムを形成する工程(ステップS10)を備える。また、棒状の二酸化ルテニウムを形成した後、ビスマス化合物を溶媒に溶解させて得られた溶液中から、棒状の二酸化ルテニウムを固液分離する工程(ステップS20)を備えてもよい。
また、図1に示すように、棒状の二酸化ルテニウムを固液分離した後、ビスマス化合物を溶解させた溶液を、濃縮乾燥して、ビスマス化合物を回収する工程(ステップS30)、及び、回収されたビスマス化合物を含むビスマス化合物の存在下、粒状の二酸化ルテニウムを熱処理して、棒状の二酸化ルテニウムを形成する工程(ステップS31)を備えてもよい。以下、図1〜図4を参照して、各工程の具体例について説明する。なお、以下の説明は、製造方法の一例であって、製造方法を限定するものではない。
(1)棒状の二酸化ルテニウム形成工程(ステップS10)
図1に示すように、棒状の二酸化ルテニウムの形成工程(ステップS10)は、粒状の二酸化ルテニウムとビスマス化合物とを混合して第1の混合物を得る混合工程(ステップS11)と、第1の混合物を熱処理して第2の混合物を得る工程(ステップS12)とを含むことができる。以下、各工程について、説明する。
(1−1)混合工程(ステップS11)
まず、粒状の二酸化ルテニウムとビスマス化合物とを混合して第1の混合物を得る(ステップS11)。以下、第1の混合物を構成する各材料について、具体的に説明する。
(粒状の二酸化ルテニウム)
原料となる粒状の二酸化ルテニウムは、従来の公知の製造方法で得られた粒状の二酸化ルテニウムを用いることができる。粒状の二酸化ルテニウムは、例えば、公知の湿式合成されたルテニウム酸化物の水和物を、酸化雰囲気中で焙焼して得られた二酸化ルテニウムを使用することができる。ルテニウム酸化物の水和物を合成する合成法には、代表的な方法として、ルテニウム酸カリウム水溶液にエタノールなどのアルコールや有機化合物を加える方法や、塩化ルテニウム水溶液を水酸化カリウムなどのアルカリ性化合物で中和する方法が挙げられる。これらの方法で製造された二酸化ルテニウムは、通常、一次粒子が粒状の形状を有する粉末となる。
なお、粒状の二酸化ルテニウムの製造方法については、例えば、特許文献1、特許文献2などに開示されており、詳細な条件についてはこれらの文献を参照して条件を適宜、調整することができる。湿式合成して得られた粒状の二酸化ルテニウムは、通常、一次粒子の平均粒径が10nm以上300nm以下程度となる。なお、原料として、湿式合成されたルテニウム酸化物の水和物(ルテニウム水酸化物)を用いてもよい。この場合、後述する熱処理工程(ステップS12)で、粒状の二酸化ルテニウムに変換された後、棒状の二酸化ルテニウムが形成されてもよい。
図2(A)は、後述する実施例1で用いた粒状の二酸化ルテニウム(原料)のSEM写真である。粒状の二酸化ルテニウムは、図2(A)に示すように、球状、略球状、楕円粒状、略楕円球状などの形状を有する一次粒子を含む。ここで、一次粒子とは、例えば、図2(A)の破線で囲んだ部分に示すように、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した際に、明確な輪郭を有する最小粒子をいう。粒状の二酸化ルテニウムは、例えば、SEMを用いて観察される一次粒子の平均粒径が100nm以下であり、アスペクト比(一次粒子像の長径/短径)が2未満であることが好ましい。上記形状を有する二酸化ルテニウムを原料として用いた場合、厚膜抵抗体の導電粒子として好適に用いることのできる棒状の二酸化ルテニウムを容易に得ることができる。
また、粒状の二酸化ルテニウムは、結晶性粉末でもよく、アモルファス状の粉末であってもよい。また、粒状の二酸化ルテニウムは、結晶性粉末及びアモルファス状の粉末の両方を用いてもよい。粒状の二酸化ルテニウムは、容易に製造できるという観点から、アモルファス状の二酸化ルテニウムが好ましい。また、アモルファス状の二酸化ルテニウムを用いた場合、後述する熱処理工程(ステップS12)で、結晶性の二酸化ルテニウムに変換された後、棒状の二酸化ルテニウムが形成されてもよい。
(ビスマス化合物)
ビスマス化合物は、ビスマスを含む化合物であり、熱処理の際に、二酸化ルテニウムと合金化しないものであれば、公知のビスマス化合物を用いることができる。ビスマス化合物は、例えば、塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、酸化ビスマス、これらの混合物などを用いることができる。中でも、塩化ビスマス及びオキシ塩化ビスマスのうち少なくとも一つを用いることが好ましく、オキシ塩化ビスマスを用いることがより好ましい。
ビスマス化合物は、その形状や製造方法は特に限定されないが、粉末状であることが好ましい。ビスマス化合物は、例えば、市販されている塩化ビスマス粉末やオキシ塩化ビスマス粉末をそのまま用いてもよいし、硫酸ビスマスなど非塩化物系の化合物を塩酸に溶解したものを濃縮乾燥して用いてもよい。
(第1の混合物の調製)
第1の混合物は、上記粒状の二酸化ルテニウムと、上記ビスマス化合物とを混合して得られる。粒状の二酸化ルテニウムとビスマス化合物との混合比率は、粒状の二酸化ルテニウムに対するビスマス化合物のモル比が、例えば、0.1倍以上5倍以下であり、0.5倍以上3倍以下が好ましく、0.5倍以上2倍以下がより好ましい。ビスマス化合物の混合比率が大きい場合、棒状の二酸化ルテニウムの合成はできるが、後述する固液分離工程(ステップS20)において、ビスマス化合物と棒状の二酸化ルテニウムとの分離に時間がかかる。よって、生産性を向上させるという観点から、ビスマス化合物の混合比率は上記範囲内で、小さい方が好ましい。
粒状の二酸化ルテニウムとビスマス化合物とを混合する方法は、両者が十分に混合できる方法であれば特に限定されず、公知の混合装置を用いて混合することができる。たとえば、ボールミル、ライカイ機、シェーカーミキサーなどの一般的な混合装置を用いて、混合することができる。
(1−2)熱処理工程(ステップS12)
次に、第1の混合物を熱処理して、棒状のルテニウムを含む第2の混合物を得る(ステップS12)。第2の混合物は、棒状の二酸化ルテニウムとビスマス化合物とを含む。棒状の二酸化ルテニウムは、ビスマス化合物と分離した状態で成長する。そのメカニズムの詳細は不明であるが、ビスマス化合物の存在下、熱処理することにより、粒状の二酸化ルテニウムから棒状の二酸化ルテニウムを形成することができる。
熱処理は、棒状の二酸化ルテニウムが得られる、例えば、酸化性雰囲気下600℃以上900℃以下の温度で行うことができる。熱処理温度を上記範囲で調整することにより、得られる棒状の二酸化ルテニウムの長さや太さを容易に制御することができる。熱処理温度が600℃未満の場合、原料とした粒状の二酸化ルテニウムの形状に変化はなく、棒状の二酸化ルテニウムが得られないことがある。例えば、原料として、アモルファス状の二酸化ルテニウムを使用した場合、熱処理温度が600℃未満であると、結晶性の二酸化ルテニウムとなるが、一次粒子の形状は、粒状のまま変化しないことがある。一方、熱処理温度が900℃を超える場合、二酸化ルテニウムとビスマス化合物との合金化が進行し、パイロクロア構造であるルテニウム酸ビスマス(BiRu7−δ(0≦δ<1))が合成されることがある。この場合、二酸化ルテニウムとビスマス化合物との分離ができない。
なお、熱処理の条件は、原料となる粒状の二酸化ルテニウム及びビスマス化合物の種類や形状、混合割合などに応じて、棒状の二酸化ルテニウムが得られる範囲で適宜調整することができる。例えば、熱処理の雰囲気は、酸化性雰囲気下とすることができ、大気雰囲気で行うことができる。なお、酸化性雰囲気とは、酸素を10容積%以上を含む気体をいい、例えば、空気を使用することができる。また、熱処理時間は、特に限定されず、所望の形状を有する棒状の二酸化ルテニウムが得られるように適宜調整することができ、例えば、1時間以上4時間以下程度とすることができ、1時間以上3時間未満とすることが好ましい。熱処理時間が上記範囲である場合、容易に棒状の二酸化ルテニウムを得ることができる。
図2(B)は、後述する実施例1で作製した第2の混合物の粒状のSEM写真である。第2の混合物は、図2(B)に示すように、球状のビスマス化合物(図2(B)の左下の破線部分)と、棒状の形状を有する一次粒子からなる二酸化ルテニウムとを含む。なお、第2の混合物のそれぞれの粉末の組成は、EDX定性分析、及び、XRD分析により検出することができる。また、粉末の形状はSEMを用いて観察することができる。
ここで棒状の二酸化ルテニウムとは、RuOの組成を有し、かつ、SEM観察した場合、その一次粒子の形状が棒状であるものをいう。図3は、棒状の形状を有する一次粒子の一例を示した模式図である。棒状の一次粒子とは、図3に示すように、長軸方向の最大径(長径b)と、長軸方向に対して垂直な断面の最小径(短径a)とのアスペクト比(長径b/短径a)が2以上の一次粒子をいう。また、短径aが100nm以下である場合、アスペクト比(長径b/短径a)がより大きくなり、明確な棒状の形状を有しやすい。なお、一次粒子の形状は、棒状の形状を有するものであれば、図3に示す形状に限定されない。例えば、長軸方向に対して垂直な断面の形状は、正方形や長方形を含む矩形状であってもよく、円状、楕円状、不定形などであってもよい。棒状の二酸化ルテニウムの形状は、上述したように、熱処理温度や熱処理時間を適宜調整することにより、所望の棒状の形状を有する二酸化ルテニウムを得ることができる。また、棒状のルテニウムは、多結晶であってもよい。
(2)棒状の二酸化ルテニウムの分離工程(ステップS20)
次いで、図1に示すように、第2の混合物(棒状の二酸化ルテニウム及びビスマス化合物とを含む混合粉末)に含まれるビスマス化合物を溶剤に溶解させた後、得られた溶液中から、棒状の二酸化ルテニウムを固液分離する(ステップS20)。
ビスマス化合物の溶解に用いられる溶剤は、二酸化ルテニウムを溶解せずにビスマス化合物のみを溶解するものであれば、特に限定されず、例えば、無機物化合物の酸(鉱酸)や有機酸などが使用できる。中でも、硝酸や塩酸は、薬品コストや使用後の処理の容易さなどから好適に使用できる。また、硝酸や塩酸などは一般的な濃度の試薬を水で10〜50%に希釈したものが作業安全性の点からも使い易い。
ビスマス化合物を溶剤に溶解させる際の条件は、特に限定されず、ビスマス化合物が溶剤に十分溶ければよい。例えば、溶解時の液温は、30〜60℃程度とすることができる。溶解時の液温が60℃を超える場合、安全衛生面で作業性が悪い。また液温が30℃未満である場合、ビスマス化合物の溶解速度が遅くなり、溶解に時間がかかる。溶解時間は、第2の混合物からビスマス化合物が完全に溶解できればよく、使用する溶剤や洗浄時の液温によって調整することができる。
溶剤へのビスマス化合物の溶解後、棒状の二酸化ルテニウム粉末を分散させた、ビスマス化合物を溶解して含む溶液が得られる。得られた溶液から、棒状の二酸化ルテニウムを固液分離する。棒状の二酸化ルテニウムを固液分離する方法は特に限定されず、例えば、遠心分離法や真空吸引法、クロスフローろ過法などから選択することが可能である。また、固液分離により得られた棒状の二酸化ルテニウム粉は、純水でリパルプ洗浄し、ビスマス化合物を完全に除去することが好ましい。
固液分離して得られた棒状の二酸化ルテニウム粉末は、電気炉などで乾燥を行う。乾燥温度や時間は、水分が除去できる温度であれば良く、乾燥温度は、例えば、80℃以上150℃以下であると、作業性がよく好ましい。
(3)ビスマス化合物の回収工程(ステップS30)
また、ビスマス化合物が溶解している洗浄液は、必要に応じて塩酸を添加した後、洗浄液を濃縮乾燥することによって、ビスマス化合物(例えば、塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマスまたは、その混合物)が得られる。また、これらのビスマス化合物は回収し、ビスマス化合物の原料として再利用してもよい(ステップS31)。
2.二酸化ルテニウム粉末
本実施形態の二酸化ルテニウム粉末は、棒状の形状を有し、長軸方向に対して垂直な断面の最小径(短径a)が100nm以下であり、長軸方向における最大径(長径b)と、断面における最小径(短径a)との比(長径b/短径a)が2以上である(図3参照)。上記のような形状を有する二酸化ルテニウムを厚膜抵抗体の導電粒子として用いた場合、従来の球状の二酸化ルテニウムを用いた厚膜抵抗体と比較して、電流雑音を低減することができる。これは、厚膜抵抗体に使用する導電粉末の形状を球状ではなく、棒状にすることにより、導電粉末同士の接触点が減り、厚膜抵抗体の電流雑音が低減されると考えられる。なお、長径b/短径aは、特に限定されないが、例えば、25以下である。
また、本実施形態の二酸化ルテニウム粉末は、長軸方向に対して垂直な断面における、最小径(短径a)と、短径aと垂直な最長径(長径c)との比(長径c/短径a)が2未満であることが好ましい(図3参照)。なお、本実施形態の二酸化ルテニウム粉末の形状は、図3に示す形状に限定されない。例えば、二酸化ルテニウム粉末は、長軸方向に対して垂直な断面の形状が、正方形や長方形を含む矩形状であってもよく、円状、楕円状、不定形などであってもよい。
また、本実施形態の二酸化ルテニウム粉末は、例えば、長軸方向における最大径(長径b)が40nm以上500nm以下であり、断面における最小径(短径a)が20nm以上100nm以下である。
3.厚膜抵抗体ペースト
厚膜抵抗体ペーストは、導電粒子とガラス粉末などの無機成分と、有機ビヒクル等から構成される。上述した本実施形態の二酸化ルテニウム粉末は、棒状の形状を有するため、厚膜抵抗体の導電粒子として用いた場合、粉同士の接点の数を減らして、電流雑音を低減させることができる。以下、厚膜抵抗体ペーストの構成成分について、説明する。
(導電粒子)
厚膜抵抗体ペーストは、上述した棒状の二酸化ルテニウム粉末を含む。また、厚膜抵抗体ペーストは、必要に応じて、棒状の二酸化ルテニウム粉末以外の導電粒子を含んでも良い。導電粒子としては、パイロクロア型やペロブスカイト型の結晶構造を有するルテニウム酸化合物や、銀、パラジウムなどが挙げられる。
(ガラス粉末)
ガラス粉末は、鉛を含まないものであれば良く、その組成は特に限定されない。ガラス粉末は、例えば、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類酸化物を混合、溶融して急冷したものを粉砕して用いることができる。また、ガラス粉末の平均粒径は5μm以下であることが好ましい。平均粒径が上記範囲である場合、厚膜抵抗体中の導電パスが微細なものとなり、抵抗値のばらつきやノイズの悪化を防ぐことができる。
ガラス粉末は、例えば、ホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸アルカリ土類ガラス、ホウケイ酸アルカリガラス、ホウケイ酸亜鉛ガラス、ホウケイ酸ビスマスガラスなどを用いることができる。
(有機ビヒクル)
厚膜抵抗体ペーストは、溶剤に樹脂成分を溶解した有機ビヒクル中に、上記成分を分散させて調整される。厚膜抵抗体ペーストに用いる樹脂成分としては、エチルセルロース、マレイン酸樹脂、ロジンなどが用いられる。また、溶剤は、ターピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等が一般に用いられる。これらの樹脂と溶剤により調合されるビヒクルの配合比は、所望する粘度によって適宜調整して良い。また、厚膜抵抗体ペーストの連続印刷性を考慮すると、沸点が高い溶剤を加えて、乾燥速度を制御することもできる。
(任意の添加成分)
本実施形態の厚膜抵抗体ペーストは、導電粒子やガラス粉末の他に、面積抵抗値や抵抗温度係数の調整、膨張係数の調整、耐電圧性の向上やその他の改質を目的とし、上記以外のその他の無機成分である微量添加剤を含んでもよい。添加剤としては、二酸化マンガンや酸化銅、二酸化チタン、二酸化ケイ素などが一般に用いられる。
また、本実施形態の厚膜抵抗体ペーストは、分散剤を含んでもよい。二次粒子の形成を抑制するには、例えば、分散剤として脂肪酸を用いることができる。脂肪酸は、飽和、不飽和を問わないが、二酸化ルテニウムを分散させ、再び凝集するのを防ぐ観点から、炭素数12以上の高級脂肪酸がより好ましい。
(厚膜抵抗体ペーストの調製方法)
厚膜抵抗体ペーストを製造する方法は、公知の技術を用いれば良く、たとえば、スリーロールミル、遊星ミル、ビーズミルなどを用いることができる。
厚膜抵抗体ペーストでは、導電粒子、ガラス粉末、その他の無機成分などの凝集を解し、有機ビヒクル中に分散することが望ましい。一般的に、粉末の粒径が小さくなると凝集力が強くなり、二次粒子を形成し易くなる。脂肪酸は、無機原料粉末を有機ビヒクル中に分散させる際に加えても良い。あるいは、予め二酸化ルテニウム粉末の表面に付着させた後、有機ビヒクル中に分散させても良い。厚膜抵抗体ペーストに対する有機ビヒクルの割合は特に限定されないが、厚膜抵抗体ペーストの重量に対して30〜80%が一般的である。
厚膜抵抗体ペースト中の導電性粒子は、混合比率が多いと抵抗体の電流雑音が増加することがある。そのため、配合比率は抵抗体に必要な特性に応じて適宜、調整できる。
また、棒状の二酸化ルテニウム粉末を含む導電粒子とガラス粉末との配合比は、目的とする面積抵抗値によって任意に調整することができる。すなわち、目的とする抵抗値が高い場合は、棒状二酸化ルテニウム粉を少なく配合し、目的とする抵抗値が低い場合は、棒状の二酸化ルテニウム粉を多く配合することができる。ただし、ガラス粉末に比べ導電粒子の割合が多すぎると、出来上がる抵抗膜が脆くなってしまうため、二酸化ルテニウム粉末を含む導電粒子はガラス粉末に比べて等倍以下であることが望ましい。
また、その他の無機成分の添加剤の割合は、二酸化ルテニウム粉末とガラス粉末の重量の合計に対して0.05〜20%が一般的である。
4.厚膜抵抗体
本実施形態の厚膜抵抗体は、上記の棒状の二酸化ルテニウムを導電粒子として含む。本実施形態の厚膜抵抗体は、上記の厚膜抵抗体ペーストを、基板上で焼成して形成される。なお、二酸化ルテニウムは、焼結しないため、厚膜抵抗体中でもその形状を維持していると考えられる。
以下、実施例を用いて本発明による棒状の二酸化ルテニウム粉の製造方法を説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
(粒状の二酸化ルテニウムの作製)
金属ルテニウム粉末:100g、水酸化カリウム:800g、硝酸カリウム:100gを混合し、銀坩堝中において700℃、3時間溶融し、ルテニウム酸カリウム(KRuO)を得た。このルテニウム酸カリウムを純水に溶解した後、エタノール100mlを加えることで、二酸化ルテニウムを生成した。さらに、生成した二酸化ルテニウムの水洗、乾燥を行い、1molの二酸化ルテニウム粉末を得た。得られた二酸化ルテニウムは、SEM観察およびXRD分析の結果、粒径約50nmの粒状の一次粒子を有する二酸化ルテニウムであり、アモルファス状であることを確認した。図2(A)に、得られた粒状の二酸化ルテニウム(アモルファス状)のSEM写真を示す。なお、図2(A)中の破線で囲った部分は、粒状の二酸化ルテニウムの一次粒子の一例を示す。
(棒状の二酸化ルテニウムの作製)
次に、得られた粒状の二酸化ルテニウム1molと、オキシ塩化ビスマス(和光純薬工業(株)製)1molを混合して第1の混合物を作製した。第1の混合物をアルミナ坩堝に充填し、空気中800℃で2時間焙焼して第2の混合物を得た。得られた第2の混合物中の粉末のSEM観察およびEDX定性分析、さらにXRD分析を行った。その結果、第2の混合物は、棒状の二酸化ルテニウム粉末と球状のオキシ塩化ビスマスとの混合粉末であることが確認された。図2(B)に、得られた第2の混合物のSEM写真を示す。なお、図2(B)の左下の破線は、オキシ塩化ビスマスの粉末を示す。
(棒状の二酸化ルテニウムの分離)
その後、得られた第2の混合物を4Lの純水と1Lの硝酸の混合溶液に入れ、50℃で2時間の撹拌洗浄を行った。沈殿した粉末をろ過、水洗、乾燥した後、得られた粉末のSEM観察およびXRD分析した。その結果、得られた粉末は、棒状の二酸化ルテニウムの粉末であることが確認された。図4に得られた棒状の二酸化ルテニウム粉末のSEM写真を示す。図4に示すように、得られた二酸化ルテニウム粉末は、棒状であり、長軸方向に垂直な断面の形状が正方形を含む矩形状の一次粒子を含む。
(ビスマス化合物の回収)
また、上記洗浄に使用した硝酸水溶液を乾燥した結果、約230gの白色の粉末を得た。この粉末をXRD分析した結果、オキシ塩化ビスマスの粉末であることを確認した。
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、粒径約50nmの粒状の一次粒子を有するアモルファス状の二酸化ルテニウム(原料)を作製した。得られた粒状の二酸化ルテニウム1molと、オキシ塩化ビスマス(和光純薬工業(株)製1.5molとを混合して第1の混合物を作製した。第1の混合物をアルミナ坩堝に充填し、空気中800℃で2時間焙焼して第2の混合物を得た。その後、得られた第2の混合物をSEM観察およびEDX定性分析、さらにXRD分析を行った。その結果、棒状の二酸化ルテニウム粉末と球状オキシ塩化ビスマスの混合粉末であることが確認された。
その後、得られた第2の混合物を4Lの純水と1Lの硝酸の混合溶液に入れ、50℃で2時間の撹拌洗浄を行った。沈殿した粉末をろ過、水洗、乾燥した後、SEM観察およびXRD分析した。その結果、得られた粉末は、棒状の二酸化ルテニウム粉末であることを確認した。
(実施例3)
実施例1と同様の方法で、粒径約50nmの粒状の一次粒子を有するアモルファス状の二酸化ルテニウムを作製した。得られた粒状の二酸化ルテニウム1molと、オキシ塩化ビスマス(和光純薬工業(株)製2.0molを混合して第1の混合物を作製した。第1の混合物をアルミナ坩堝に充填し、空気中800℃で2時間焙焼して、第2の混合物を得た。その後、得られた第2の混合物をSEM観察およびEDX定性分析、さらにXRD分析を行った。その結果、棒状の二酸化ルテニウム粉末と球状オキシ塩化ビスマスの混合粉末であることが確認された。
その後、得られた第2の混合物を4Lの純水と1Lの硝酸の混合溶液に入れ、50℃で2時間の撹拌洗浄を行った。沈殿した粉末をろ過、水洗、乾燥したのち、SEM観察およびXRD分析した。その結果、得られた粉末は、棒状の二酸化ルテニウム粉末であることを確認した。
(実施例4)
実施例1と同様の方法で、粒径約50nmの粒状の一次粒子を有するアモルファス状の二酸化ルテニウム(原料)を作製した。得られた粒状の二酸化ルテニウム1molと、オキシ塩化ビスマス(和光純薬工業(株)製0.5molを混合し、アルミナ坩堝に充填し、空気中800℃で2時間焙焼して、第2の混合物を得た。その後、得られた第2の混合物をSEM観察およびEDX定性分析、さらにXRD分析を行った。その結果、棒状の二酸化ルテニウム粉末と球状オキシ塩化ビスマスの混合粉末であることが確認された。
その後、得られた第2の混合物を4Lの純水と1Lの硝酸の混合溶液に入れ、50℃で2時間の撹拌洗浄を行った。沈殿した粉末をろ過、水洗、乾燥したのち、SEM観察およびXRD分析した。その結果、得られた粉末は、棒状の二酸化ルテニウム粉末であることを確認した。
(実施例5)
実施例1と同様の方法で、粒径約50nmの粒状の一次粒子を有するアモルファス状の二酸化ルテニウム(原料)を作製した。得られた粒状の二酸化ルテニウム1molと、オキシ塩化ビスマス(和光純薬工業(株)製3.0molを混合し、アルミナ坩堝に充填し、空気中800℃で2時間焙焼して、第2の混合物を得た。その後、得られた第2の混合物をSEM観察およびEDX定性分析、さらにXRD分析を行った。その結果、棒状の二酸化ルテニウム粉末と球状オキシ塩化ビスマスの混合粉末であることが確認された。
その後、得られた第2の混合物を4Lの純水と1Lの硝酸の混合溶液に入れ、50℃で2時間の撹拌洗浄を行った。沈殿した粉末をろ過、水洗、乾燥したのち、SEM観察およびXRD分析した。その結果、得られた粉末は、棒状の二酸化ルテニウム粉末であることを確認した。
(実施例6)
実施例1と同様の方法で、粒径約50nmの粒状の一次粒子を有するアモルファス状の二酸化ルテニウム(原料)を作製した。得られた粒状の二酸化ルテニウム1molと、オキシ塩化ビスマス(和光純薬工業(株)製)1molを混合し、アルミナ坩堝に充填し、空気中800℃で3時間焙焼した。得られた粉末のSEM観察およびEDX定性分析、さらにXRD分析を行った。その結果、短径aが100nm以上であり、長径bと短径aとに差が小さく(長径bと短径aの比:2以上3以下)、球状に近い棒状の二酸化ルテニウムと球状のオキシ塩化ビスマスの混合粉末であることを確認した。
(比較例1)
実施例1と同様の方法で、粒径約50nmの粒状の一次粒子を有するアモルファス状の二酸化ルテニウム(原料)を作製した。得られ二酸化ルテニウムをアルミナ坩堝に充填し、空気中700℃で2時間焙焼した。得られた粉末のSEM観察およびEDX定性分析、さらにXRD分析を行った。その結果、粒径約80nmの球状二酸化ルテニウムであることを確認した。
(比較例2)
実施例1と同様の方法で、粒径約50nmの粒状の一次粒子を有するアモルファス状の二酸化ルテニウム(原料)を作製した。得られたアモルファス状二酸化ルテニウム1molと、オキシ塩化ビスマス(和光純薬工業(株)製)1molを混合し、アルミナ坩堝に充填し、空気中500℃で5時間焙焼した。得られた粉末のSEM観察の結果、2種類の大きさの異なる球状粉の混合物であることを確認した。EDX定性分析およびXRD分析の結果、小粒径が結晶性の二酸化ルテニウム粉であり、それより粒径の大きな球状粉がオキシ塩化ビスマスであることを確認した。
(比較例3)
実施例1と同様の方法で、粒径約50nmの粒状の一次粒子を有するアモルファス状の二酸化ルテニウム(原料)を作製した。得られたアモルファス状二酸化ルテニウム1molと、オキシ塩化ビスマス(和光純薬工業(株)製)1molを混合し、アルミナ坩堝に充填し、空気中1000℃で2時間焙焼した。得られた粉をSEM観察した結果、球状粉が得られた。XRD分析を行った結果、単体のBiRu粉末であることが確認された。
[厚膜抵抗体の作製と評価]
以下、実施例7〜9及び比較例4〜6は、実施例1又は比較例1で製造した二酸化ルテニウム粉末を使用して厚膜抵抗体を作製し、その抵抗値と電流雑音を評価した。表2に、それぞの実施例及び比較例の厚膜抵抗体ペーストの組成と厚膜抵抗体作製時の膜厚を示す。また、図5に測定した抵抗値と電流雑音の結果をまとめて示す。
得られた厚膜抵抗体ペーストを、事前に銀ペーストを用いて電極を形成したアルミナ基板上に、サイズ1×1mm、厚さ7μmの抵抗体パターンで印刷した。これを乾燥(250℃×15分)した後、ピーク温度850℃、ピーク時間9分のベルト焼成炉によって焼成し、厚膜抵抗体を形成した。得られた厚膜抵抗体の抵抗値と電流雑音とを測定した。抵抗値は4端子法による測定を行った。また電流雑音は、(株)ノイズ研究所製の電流雑音測定器「RCN−2011」によって測定を行った。
(実施例8)
実施例1で得られた棒状の二酸化ルテニウム粉末6重量%、鉛フリーガラス粉末(二酸化ケイ素:35重量%、酸化ほう素:20重量%、酸化アルミニウム:5重量%、酸化カルシウム:5重量%、酸化バリウム:20重量%、酸化亜鉛:15重量%)54重量%と、有機ビヒクル(エチルセルロースをターピネオールに溶解したもの)40重量%を3本ロールミルによって混練し、評価用の厚膜抵抗体ペーストを作製した。得られた厚膜抵抗体ペーストの特性を実施例6と同様に測定した。
(実施例9)
実施例1で得られた棒状の二酸化ルテニウム粉末9重量%、鉛フリーガラス粉末(二酸化ケイ素:35重量%、酸化ほう素:20重量%、酸化アルミニウム:5重量%、酸化カルシウム:5重量%、酸化バリウム:20重量%、酸化亜鉛:15重量%)51重量%と、有機ビヒクル(エチルセルロースをターピネオールに溶解したもの)40重量%を3本ロールミルによって混練し、評価用の厚膜抵抗体ペーストを作製した。得られた厚膜抵抗体ペーストの特性を実施例6と同様に測定した。
(比較例4〜6)
比較例1で作製した球状の二酸化ルテニウム粉末を用いた以外は、実施例7〜9と同様の方法で厚膜抵抗体を作製し、それぞれ比較例4〜6の評価用の厚膜抵抗体ペーストとした。得られた厚膜抵抗体ペーストの特性を、実施例6と同様に測定した。
(評価)
実施例1〜実施例6では、棒状の二酸化ルテニウム粉末が得られた。また、実施例5は、棒状の二酸化ルテニウムを製造できたが、固液分離工程において分離しきれないビスマス化合物が多く残留した。また、実施例6では、長軸方向の長径bと、長軸方向に垂直な断面の短径aとのアスペクト比が、他の実施例と比較して小さくなった。
実施例7〜8及び比較例4〜6は、実施例1で製造した棒状の二酸化ルテニウム粉末と比較例1で製造した球状の二酸化ルテニウム粉末(従来法)とを使用して厚膜抵抗体を作製し、作製した厚膜抵抗体の抵抗値と電流雑音を評価した。その結果、球状の二酸化ルテニウム(比較例1)を用いた厚膜抵抗体では、抵抗値100kΩ/□で電流雑音が0dB以上となるところ、棒状の二酸化ルテニウム粉末(実施例1)を用いた抵抗ペーストの場合、抵抗値1MΩ/□まで電流雑音がマイナス値となることがわかった。このことから、棒状の二酸化ルテニウム粉末を使用した厚膜抵抗体は、従来の球状の二酸化ルテニウムを使用した厚膜抵抗体よりも電流雑音を低下させる効果があることが示された。
10…棒状の二酸化ルテニウム
a…長軸方向と垂直な断面における短径
b…長軸方向の最大径(長径)
c…長軸方向と垂直な断面における短径に垂直な最長径(長径)

Claims (13)

  1. ビスマス化合物の存在下、粒状の二酸化ルテニウムを600℃以上900℃以下の温度で熱処理して、棒状の二酸化ルテニウムを形成すること、を備える、二酸化ルテニウム粉末の製造方法。
  2. 前記粒状の二酸化ルテニウムは、一次粒径が100nm以下である、請求項1に記載の二酸化ルテニウム粉末の製造方法。
  3. 前記ビスマス化合物は、酸化ビスマス、塩化ビスマス、及び、オキシ塩化ビスマスから選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は請求項2に記載の二酸化ルテニウム粉末の製造方法。
  4. 前記ビスマス化合物を、前記粒状の二酸化ルテニウムに対して、モル比で0.1倍以上5倍以下の範囲で、前記粒状の二酸化ルテニウムと混合した後、前記熱処理をする、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の二酸化ルテニウム粉末の製造方法。
  5. 前記棒状の二酸化ルテニウムは、長軸方向に対して垂直な断面の短径が100nm以下であり、前記長軸方向における長径と、前記断面における短径との比(長軸方向における長径/断面における短径)が2以上である、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の二酸化ルテニウム粉末の製造方法。
  6. さらに、前記棒状の二酸化ルテニウムを形成した後、前記ビスマス化合物を溶媒に溶解させて得られた溶液中から、前記棒状の二酸化ルテニウムを固液分離すること、を備える、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の二酸化ルテニウム粉末の製造方法。
  7. 前記溶媒が酸性水溶液である、請求項6に記載の二酸化ルテニウム粉末の製造方法。
  8. さらに、前記棒状の二酸化ルテニウムを固液分離した後、前記ビスマス化合物を溶解させた溶液を、濃縮乾燥して、前記ビスマス化合物を回収することと、前記回収されたビスマス化合物を含むビスマス化合物の存在下、粒状の二酸化ルテニウムを熱処理して、棒状の二酸化ルテニウムを形成すること、を備える、請求項6又は請求項7に記載の二酸化ルテニウム粉末の製造方法。
  9. 棒状の形状を有し、長軸方向に対して垂直な断面の短径が100nm以下であり、前記長軸方向における長径と、前記断面における短径との比(長軸方向における長径/断面における短径)が2以上である、二酸化ルテニウム粉末。
  10. 前記長軸方向に対して垂直な断面における、長径と短径との比(断面における長径/断面における短径)が2未満である、請求項に記載の二酸化ルテニウム粉末。
  11. 厚膜抵抗体の導電粒子として用いられる、請求項又は請求項10に記載の二酸化ルテニウム粉末。
  12. 請求項〜請求項11のいずれか一項に記載の二酸化ルテニウム粉末と、ガラス粉末と、有機ビヒクルとを含む厚膜抵抗体ペースト。
  13. 請求項〜請求項11のいずれか一項に記載の二酸化ルテニウム粉末を含む厚膜抵抗体。
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