以下、電子部品装着機13を備える電子部品装着システム1について図面を参照して説明する。
(1.電子部品装着システム1の構成)
図1に示すように、本実施形態の電子部品装着システム1は、基板の搬送及び複数の作業、即ち、半田印刷、部品装着、リフロー等を順次実行することにより基板上に電子部品を装着するシステムである。電子部品装着システム1は、生産ライン2を構成する各種装置にホストコンピュータ3を接続して構成されている。
生産ライン2は、半田印刷装置11、複数の電子部品装着機(以下、「装着機」と省略する場合がある)13、装着検査装置14及びリフロー装置15がこの順で上流側から下流側に向かって連結されている。半田印刷装置11は、基板に対し部品接合用の半田を印刷する。複数の装着機13は、半田印刷装置11によって半田印刷された基板上に電子部品を装着する。装着検査装置14は、装着機13によって電子部品を装着した基板を検査し、不良基板の判別を実行する。リフロー装置15は、装着検査装置14によって装着が良好であると判定された基板を所定温度で加熱し、基板に電子部品を半田接合する。生産ライン2を構成する各装置等(半田印刷装置11や装着機13など)は、通信ネットワーク6を介してホストコンピュータ3によって統括的に制御される。
(2.電子部品装着機13の構成)
次に、装着機13の構成について説明する。図2に示すように、装着機13は、搬送装置21と、部品供給装置22と、移載装置23とを備えている。以下の説明では、装着機13の水平幅方向(図2の左右方向)をX軸方向とし、装着機13の水平奥行き方向(図2の上下方向)をY軸方向とし、X軸方向及びY軸方向に垂直な方向をZ軸方向とする。
搬送装置21は、ベルトコンベアなどを備え、上流の装置から搬入した基板BdをX軸方向へと順次搬送し、所定の位置に位置決めする。搬送装置21は、位置決めした所定位置での電子部品の装着作業が終了すると、基板Bdを装着機13の機外に搬出する。部品供給装置22は、複数のテープフィーダ22Aを備え、各テープフィーダ22Aから基板Bdに装着する電子部品を供給位置Psに供給する。
移載装置23は、ヘッド駆動装置23Aと、移動台23Bとを備えている。ヘッド駆動装置23Aは、直動機構により移動台23BをXY軸方向に移動させる。移動台23Bには、装着ヘッド24が固定されている。従って、装着ヘッド24は、移動台23Bの移動とともに、XY軸方向に移動する。また、移動台23Bには、マークカメラ25が取り付けられている。マークカメラ25は、基板Bdに設けられたマークや装着後の電子部品を撮影するためのカメラである。マークカメラ25は、移載装置23により移動台23Bが移動させられることで、基板Bd上の任意の位置の表面を撮像可能となっている。
また、装着ヘッド24には、図示しない複数の吸着ノズルが着脱可能に設けられている。各吸着ノズルは、装着ヘッド24に対する昇降位置や角度、負圧の供給状態を制御される。各吸着ノズルは、例えば、負圧を供給されることにより、テープフィーダ22Aの供給位置Psに供給された電子部品を吸着して保持する。また、装着ヘッド24には、パーツカメラ26が取り付けられている。パーツカメラ26は、吸着ノズルに吸着保持された電子部品を撮像するためのカメラである。
(3.電子部品装着機13の通信の構成)
次に、装着機13における多重通信及び多重通信回線を介した産業用ネットワークの通信について説明する。図3は、装着機13の通信の構成を示している。図3に示すように、装着機13は、上記した搬送装置21、移載装置23、装着ヘッド24等の動作を制御する制御部31を備えている。
(3−1.多重通信の構成)
まず、多重通信の構成について説明する。装着機13は、制御部31、搬送装置21、移載装置23及び装着ヘッド24の間のデータ伝送を多重通信によって実行する。制御部31は、CPU40を主体として構成されており、多重処理部41、GbE―PHY43、画像処理部44等を備えている。多重処理部41は、GbE―PHY43と接続されている。GbE―PHY43は、論理層と物理層のインターフェースとして機能するICである。GbE―PHY43は、搬送装置21が備えるGbE―PHY61とLANケーブル110を介して接続されている。
GbE―PHY61は、搬送装置21が備える第一多重処理部63及び第二多重処理部64を介してGbE―PHY62と接続されている。GbE―PHY62は、移載装置23が備えるGbE―PHY81とLANケーブル111を介して接続されている。GbE―PHY81は、移載装置23が備える第三多重処理部83及び第四多重処理部84を介してGbE―PHY82と接続されている。GbE―PHY82は、装着ヘッド24が備えるGbE―PHY101とLANケーブル112を介して接続されている。上記したLANケーブル110,111,112は、例えば、Gigabit Ethernet(登録商標)の通信規格に準拠したLANケーブルである。GbE―PHY101は、装着ヘッド24の第五多重処理部102と接続されている。従って、本実施形態の多重処理部41等は、制御部31から装着ヘッド24に向かって順に、多重処理部41、第一多重処理部63、第二多重処理部64、第三多重処理部83、第四多重処理部84、及び第五多重処理部102の順に接続されている。
制御部31の多重処理部41は、後述する産業用ネットワークの制御データCDやマークカメラ25の画像データ等を、例えば、時分割多重化方式(TDM:Time Division Multiplexing)で多重化した多重化データMDとして送受信する。多重処理部41は、LANケーブル110,111,112を介して他の多重処理部(第一多重処理部63など)との間で多重化データMDを送受信する。多重処理部41は、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの論理回路で構築されている。なお、多重処理部41は、論理回路に限らず、例えば、通信制御に特化した特定用途向け集積回路(ASIC)でもよく、これら集積回路と論理回路とを組み合わせたものでもよい。
また、搬送装置21が備える2つの多重処理部(第一多重処理部63、第二多重処理部64)のうち、移載装置23と接続される第二多重処理部64は、通信異常検出部64Aを備えている。通信異常検出部64Aは、例えば、FPGA内の1つの論理ブロックで構築されている。同様に、移載装置23が備える2つの多重処理部(第三多重処理部83、第四多重処理部84)のうち、装着ヘッド24と接続される第四多重処理部84は、通信異常検出部84Aを備えている。通信異常検出部64A,84Aは、多重通信回線における産業用ネットワークの制御データCDのデータ誤りを検出し、データ誤りを検出したことを第一スレーブ65及び第二スレーブ85に通知するものである。なお、通信異常検出部64A,84Aの詳細については後述する。
また、制御部31の画像処理部44は、マークカメラ25及びパーツカメラ26で撮像した画像データを画像処理する。画像処理部44は、制御部31が備えるPHY42A,42Bを介して多重処理部41と接続されている。PHY42Aは、装着ヘッド24のパーツカメラ26に対応しており、パーツカメラ26の画像データ等を伝送する。また、PHY42Bは、移載装置23のマークカメラ25に対応しており、マークカメラ25の画像データ等を伝送する。
装着ヘッド24のパーツカメラ26は、第五多重処理部102と接続されている。パーツカメラ26は、例えば、画像伝送規格であるGigE-vision(登録商標)規格に準拠した通信方式で第五多重処理部102と通信を実行する。パーツカメラ26は、制御部31の画像処理部44から多重通信回線を介して撮像の開始を示すトリガ信号を受信する。パーツカメラ26は、トリガ信号の受信に応じて撮像を実行し、撮像した画像データを第五多重処理部102に出力する。
多重処理部41は、第五多重処理部102から受信した多重化データMDを非多重化し、パーツカメラ26の画像データを分離する。多重処理部41は、分離した画像データを、GigE-vision(登録商標)規格に準拠した通信方式でPHY42Aを介して画像処理部44に出力する。画像処理部44は、入力されたパーツカメラ26の画像データを画像処理することによって、吸着ノズルにおける電子部品の保持位置の誤差等を検出する。同様に、移載装置23のマークカメラ25は、撮像した画像データを第三多重処理部83に出力する。制御部31の画像処理部44は、多重処理部41からPHY42Bを介して入力したマークカメラ25の画像データを画像処理し、基板Bd(図2参照)に関する情報、電子部品の装着位置の誤差等を検出する。
(3−2.産業用ネットワークの構成)
次に、産業用ネットワークの構成について説明する。制御部31は、上記した多重処理部41等の他に、マスター45を備えている。また、搬送装置21は、制御部31のマスター45によって制御される第一スレーブ65を備えている。また、移載装置23は、マスター45によって制御される第二スレーブ85を備えている。また、装着ヘッド24は、マスター45によって制御される第三スレーブ103を備えている。
マスター45は、産業用ネットワークにおける通信によって、第一〜第三スレーブ65,85,103との間で送受信される制御データCDの伝送を統括的に制御する。第一〜第三スレーブ65,85,103は、制御データCDに基づいた制御を実行する。ここでいう産業用ネットワークとは、例えば、MECHATROLINK(登録商標)−III規格やProfinet(登録商標)規格など、イーサネット(登録商標)規格に準拠した通信方式を用いて制御データCDの伝送を行う、いわゆる産業用イーサネット(登録商標)である。なお、産業用ネットワークは、イーサネット(登録商標)技術を用いないネットワークでもよい。
マスター45及び第一〜第三スレーブ65,85,103は、例えば、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、複合プログラマブルロジックデバイス(CPLD)といった論理回路の構築に使用されるIPコアである。なお、マスター45等は、論理回路に限らず、例えば、ASICでもよい。
制御部31のCPU40は、上記した画像処理部44の画像処理によって検出した検出結果の他に、マスター45によって収集した制御データCDを入力する。CPU40は、入力したデータに基づいて、装着作業における次の制御内容等を決定する。CPU40は、決定した制御内容に基づいて搬送装置21のベルトコンベアを駆動するモータ等を制御する。また、CPU40は、決定した制御内容に応じた制御データCDをマスター45に出力する。マスター45は、2つのPHY47,48を介して多重処理部41と接続されている。PHY47,48は、LANケーブル49を介して互いに接続されている。マスター45は、CPU40から入力した制御データCDを、多重通信回線を介した産業用ネットワークによって第一〜第三スレーブ65,85,103に送信する。
搬送装置21は、上記した第一多重処理部63や第一スレーブ65の他に、CPU67、リレー68、センサ69、及びDUMMY−PHY(以下、「仮想PHY」という)71,72(信号生成部)を備えている。なお、図3に示すセンサ69は、様々な用途で使用される複数のセンサ69を、まとめて1つのセンサ69として図示している。リレー68についても同様に図示している。CPU67は、搬送装置21に取り付けられたリレー68やセンサ69などの各種素子において入出力される信号を処理する。リレー68やセンサ69は、例えば、搬送装置21によって搬送される基板Bdの位置等を検出するためのものである。また、移載装置23は、上記した第三多重処理部83や第二スレーブ85の他に、CPU87、リレー88、センサ89、及び仮想PHY91,92を備えている。また、装着ヘッド24は、上記した第五多重処理部102や第三スレーブ103の他に、CPU105、リレー106、センサ107、及び仮想PHY108を備えている。なお、移載装置23及び装着ヘッド24の産業用ネットワークに係る構成は、搬送装置21と同様となっているため、その説明を適宜省略する。
第一スレーブ65は、制御部側の第一多重処理部63と仮想PHY71を介して接続されている。また、第一スレーブ65は、移載装置23側の第二多重処理部64と仮想PHY72を介して接続されている。仮想PHY71,72は、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの論理回路で構築されている。本実施形態の第一多重処理部63、第二多重処理部64(通信異常検出部64A)、第一スレーブ65及び仮想PHY71,72は、同一のFPGA60(多重通信装置)の論理回路内に組み込まれている。好適には、第一多重処理部63等は、FPGA60の同一の基板上に集約して実装される。同様に、移載装置23の第三多重処理部83等は、同一のFPGA80の論理回路内に組み込まれている。
本実施形態の産業用ネットワークにおいて、マスター45から送信された制御データCDは、第一〜第三スレーブ65,85,103の各々を循環するようにループ通信回線RLを伝送される。具体的には、第一多重処理部63は、制御部31の多重処理部41から受信した多重化データMDから制御データCDを分離し、分離した制御データCDを第一スレーブ65に出力する。マスター45から各スレーブ(第一スレーブ65等)へ送信する制御データCDには、各スレーブ用のデータを格納する位置が設定されている。
第一スレーブ65は、第一多重処理部63(マスター45)から入力した制御データCDにおける第一スレーブ65用の読み込みデータの格納位置からデータをコピーし、コピーしたデータをCPU67に出力する。CPU67は、第一スレーブ65から入力したデータに基づいてリレー68やセンサ69を駆動する。また、CPU67は、リレー68やセンサ69の出力信号に係わるデータを第一スレーブ65に出力する。例えば、CPU67は、リレー68の駆動の完了を示すデータやセンサ69の検出データを第一スレーブ65に出力する。
第一スレーブ65は、例えば、搬送装置21の動作を制御するデータ(コンベアデータ)をCPU67を介して入出力する。より具体的には、第一スレーブ65は、例えば、コンベアデータとして、搬送装置21のベルトコンベアを駆動するモータ(図示略)の回転角度等を検出するエンコーダ(センサ69)に対してエンコーダ情報(回転角度など)を送信する指示データや、リレー68を駆動する指示データをCPU67へ出力する。また、第一スレーブ65は、例えば、コンベアデータとして、エンコーダ(センサ69)のエンコーダ情報や、ベルトコンベアを基板Bdが通過したか否かを検出するセンサ69の検出データをCPU67から入力する。制御部31のCPU40は、例えば、第一スレーブ65から取得したエンコーダ情報に基づいて、搬送装置21のモータへ供給する電力等を変更し回転方向、角度、及び速度等を制御する。これにより、第一スレーブ65は、装着機13(作業機)による基板Bd(ワーク)の搬送作業を制御することが可能となる。
第一スレーブ65は、制御データCDにおける第一スレーブ65用の書き込みデータの格納位置にCPU67から入力したデータを書き込んで、第二多重処理部64へ出力する。第二多重処理部64は、第一スレーブ65から入力した制御データCDを他のデータと多重化し、多重化した多重化データMDを移載装置23の第三多重処理部83へ送信する。なお、第一多重処理部63は、第一スレーブ65で必要となるデータ(制御データCDなど)のみを第一スレーブ65へ出力する構成でもよい。また、第一多重処理部63は、第一スレーブ65で必要でないデータ(マークカメラ25へのトリガ信号など)を、第一スレーブ65を介さずに第二多重処理部64へ直接転送してもよい。
移載装置23の第二スレーブ85は、搬送装置21の第一スレーブ65と同様に、第三多重処理部83から入力した制御データCDにおける第二スレーブ85用のデータの格納位置に対する読み込み又は書き込み処理を実行する。第二スレーブ85は、例えば、移載装置23の動作を制御するデータ(スライダデータ)をCPU87を介して入出力する。より具体的には、第二スレーブ85は、例えば、スライダデータとして、移載装置23のヘッド駆動装置23Aを駆動するモータの回転角度等を検出するエンコーダ(センサ89)に対してエンコーダ情報を送信する指示データや、リレー88を駆動する指示データをCPU87へ出力する。また、第二スレーブ85は、例えば、スライダデータとして、エンコーダ(センサ89)のエンコーダ情報をCPU87から入力する。制御部31のCPU40は、例えば、第二スレーブ85から取得したエンコーダ情報に基づいて、ヘッド駆動装置23Aのモータへ供給する電力等を変更し回転方向等を制御する。これにより、第二スレーブ85は、装着機13(作業機)による基板Bd(ワーク)に対する装着作業を制御することが可能となる。
第二スレーブ85は、処理後の制御データCDを、第四多重処理部84及び多重通信回線(LANケーブル112)を介して装着ヘッド24の第五多重処理部102(第三スレーブ103)に送信する。第三スレーブ103は、第二スレーブ85と同様に、制御データCDにおける第三スレーブ103用のデータの格納位置に対する読み込み又は書き込み処理を実行する。第三スレーブ103は、例えば、装着ヘッド24の動作を制御するデータ(ヘッドデータ)をCPU105を介して入出力する。より具体的には、第三スレーブ103は、例えば、ヘッドデータとして、装着ヘッド24の吸着ノズルの昇降位置や回転位置を変更するモータの回転角度等を検出するエンコーダ(センサ107)に対してエンコーダ情報を送信する指示データや、リレー106を駆動する指示データをCPU105へ出力する。また、第三スレーブ103は、例えば、ヘッドデータとして、エンコーダ(センサ107)のエンコーダ情報や、吸着ノズルの回転位置を検出するセンサ107の検出データをCPU105から入力する。制御部31のCPU40は、例えば、第三スレーブ103から取得したエンコーダ情報に基づいて、装着ヘッド24のモータへ供給する電力等を変更し回転方向等を制御する。これにより、第三スレーブ103は、装着機13(作業機)による基板Bd(ワーク)に対する装着作業を制御することが可能となる。
第三スレーブ103は、処理後の制御データCDを、第二スレーブ85及び第一スレーブ65を介してマスター45へ送信する。この際、第二スレーブ85及び第一スレーブ65は、第三スレーブ103からマスター45へ転送する制御データCDに対して必要に応じて書き込み処理等を実行してもよい。このようにして第一〜第三スレーブ65,85,103は、制御データCDに対する読み込み処理及び書き込み処理を順番に行いつつ、制御データCDを高速で転送する。制御データCDは、図2に示すループ通信回線RLを循環するように伝送される。なお、図2に示すループ通信回線RLは、制御データCDを循環させる通信路を模式的に示している。そして、マスター45は、複数の第一〜第三スレーブ65,85,103との間で制御データCDを伝送する産業用ネットワークを構築し、配線の統合(削減)等を実現する。
(4.比較例の構成)
次に、比較例の構成について説明する。図8は、比較例の装着機13Aの構成を示している。なお、図8は、制御部31及び装着ヘッド24の図示を省略している。図8に示すように、比較例の装着機13Aは、上記した実施形態の装着機13とは異なり、仮想PHYを備えていない。装着機13Aの搬送装置21が備える第一多重処理部63は、PHY201を備えている。PHY201は、イーサネット(登録商標)規格に準拠したケーブル202を介して第一スレーブ65が備えるPHY203と接続されている。比較例の第一多重処理部63は、上記した装着機13の仮想PHY71(論理回路)とは異なり、物理層のインターフェース(PHY201,203)及びケーブル202を介して第一スレーブ65と接続されている。
同様に、搬送装置21の第二多重処理部64は、2つのPHY204,206及びケーブル207を介して第一スレーブ65と接続されている。同様に、移載装置23の第三多重処理部83は、2つのPHY209,211及びケーブル210を介して第二スレーブ85と接続されている。同様に、移載装置23の第四多重処理部84は、2つのPHY212,214及びケーブル213を介して第二スレーブ85と接続されている。これら4箇所の接続部分の構成は、同様の構成となっている。このため、以下の説明では、第一多重処理部63と第一スレーブ65との接続部分の構成について説明し、他の部分についての説明を適宜省略する。
PHY201,203は、論理層と物理層のインターフェースとして機能する。PHY201は、第一多重処理部63から入力したデジタル信号を一旦アナログ信号に変換し、ケーブル202を介してPHY203に出力する。PHY203は、ケーブル202から入力したアナログ信号を、再度デジタル信号に変換して第一スレーブ65に出力する。また、PHY201,203は、第一スレーブ65から第一多重処理部63に向けた信号に対しても同様の処理を実行する。
ここで、産業用ネットワークで使用されるスレーブ用のIPコア(第一スレーブ65など)では、外部装置と接続することを前提としており、外部インターフェースとして、上記したPHY203を標準で搭載していることが多い。また、この種のIPコアでは、PHY201,203間で通信を確立(リンクアップ)した後でなければ、外部装置(この場合、第一多重処理部63)と通信を開始しない設定となっている。このため、産業用ネットワークで使用されるスレーブ用のIPコア(第一スレーブ65など)を用いて、本実施形態の第一多重処理部63のような外部装置を接続する場合、第一スレーブ65は、2つのPHY201,203及びケーブル202を介して第一多重処理部63と接続する必要がある。
(5.仮想PHYの構成)
これに対し、図3に示す本実施形態の装着機13において、第一多重処理部63は、仮想PHY71を介して第一スレーブ65と接続されている。また、第二多重処理部64は、仮想PHY72を介して第一スレーブ65と接続されている。仮想PHY71,72は、例えば、MII(Media Independent Interface)の通信規格に準拠した信号を生成し、生成した信号を第一スレーブ65に送信して通信の確立を実行する。なお、他の仮想PHY91,92,108は、仮想PHY71,72と同様の構成となっている。また、搬送装置21の移載装置23側の第二多重処理部64は、通信異常検出部64Aを備える点で、制御部31側の第一多重処理部63と異なっている。このため、以下の説明では、移載装置23側の第二多重処理部64、仮想PHY72、及び第一スレーブ65を中心に説明する。
図4は、第二多重処理部64及び仮想PHY72の構成を示している。第二多重処理部64は、移載装置23の第三多重処理部83から送信されたデータを多重受信処理部121で受信する。多重受信処理部121は、受信したデータから多重化データMDを生成し、生成した多重化データMDを非多重化部122に出力する。非多重化部122は、多重化データMDの非多重化処理を行う。非多重化部122は、非多重化処理により分離したデータを仮想PHY72のMII受信データ処理部131に出力する。このデータは、例えば、移載装置23の第二スレーブ85から受信した制御データCDである。仮想PHY72が備えるMIIインターフェース132は、第一スレーブ65と接続されるインターフェースであり、MII規格に準拠した通信を実行する。MII受信データ処理部131は、非多重化部122から入力したデータを、MIIインターフェース132を介して第一スレーブ65に出力する。第一スレーブ65は、例えば、第二スレーブ85から受信した制御データCDに対する読み込み処理等を実行し、処理後の制御データCDを、仮想PHY71や第一多重処理部63を介して制御部31のマスター45へ送信する。
一方、仮想PHY72のMII送信データ処理部133は、MIIインターフェース132を介して第一スレーブ65からデータを入力する。このデータは、例えば、マスター45から受信した制御データCDに対して第一スレーブ65によって書き込み処理等がなされたものである。MII送信データ処理部133は、第一スレーブ65から入力したデータを第二多重処理部64の多重化部123に出力する。多重化部123は、MII送信データ処理部133から入力したデータを多重化して多重化データMDを生成する。多重化部123は、生成した多重化データMDを多重送信処理部124に出力する。多重送信処理部124は、多重化部123から入力した多重化データMDを、LANケーブル111を介して移載装置23の第三多重処理部83へ送信する。これにより、マスター45から第一スレーブ65へ送信された制御データCDは、第二スレーブ85へ転送される。
また、MIIインターフェース132は、第一スレーブ65との間で送受信するデータを、図4に示すTXD信号(送信データ)あるいはRXD信号(受信データ)として送受信する。MIIインターフェース132は、この信号の他に、各種の制御用の信号を第一スレーブ65との間で送受信する。例えば、MIIインターフェース132は、TX_CLK信号などの送信クロック信号、後述するマネージメント制御用のMDIO(Media Dependent Input/Output)信号、MDIO信号のクロック信号であるMDC信号などを送受信する。
上記したように、産業用ネットワークで使用されるスレーブ用のIPコアは、図8に示すように、PHY204,206の間で通信を確立した後でなければ、外部装置(第二多重処理部64など)と通信を開始しない。具体的には、図8に示すPHY206は、他方のPHY204との間で通信を確立したか否かを示す情報を記憶するレジスタを備えている。そして、第一スレーブ65は、MDIO信号をPHY206に送信し、PHY206のレジスタに記憶された情報を取得する。第一スレーブ65は、取得したレジスタの値が通信確立(リンクアップ)を示す値であった場合、PHY204,206を介した第二多重処理部64との通信を開始する。一方、第一スレーブ65は、取得したレジスタの値が通信切断(リンクダウン)を示す値である間、即ち、通信確立を示すレジスタの値を取得できるまでの間は、第二多重処理部64と通信を開始しない。
これに対し、図4に示す第二多重処理部64は、多重通信の状態を監視する通信異常検出部64Aを備えている。また、仮想PHY72は、MII通信の規格に準拠した信号を生成する疑似信号生成処理部134を備えている。疑似信号生成処理部134は、通信確立又は通信切断を示す情報を記憶するレジスタ135(記憶部)を備えている。通信異常検出部64Aは、多重受信処理部121及び多重送信処理部124の動作状態を監視し、多重通信が確立したか否かを判定する。通信異常検出部64Aは、多重通信が確立したことを検出すると、その旨を疑似信号生成処理部134に出力する。
疑似信号生成処理部134は、通信異常検出部64Aから多重通信を確立した旨を入力するまでの間はレジスタ135の値を通信切断を示す値に設定する。MIIインターフェース132が第一スレーブ65からMDIO信号による問い合わせを入力すると、疑似信号生成処理部134は、通信切断(リンクダウン)を示すレジスタ135の値を設定したMDIO信号を生成し、MIIインターフェース132を介して第一スレーブ65へ出力する。これにより、仮想PHY72と第一スレーブ65との通信は、開始されない。従って、第一スレーブ65と第二多重処理部64との間の通信は、切断された状態となる。
また、疑似信号生成処理部134は、MII受信データ処理部131及びMII送信データ処理部133によるデータ転送の開始又は停止を制御可能となっている。疑似信号生成処理部134は、通信異常検出部64Aから多重通信を確立した旨を入力するまでの間は、MII受信データ処理部131等によるデータ転送を停止する。
一方、疑似信号生成処理部134は、通信異常検出部64Aから多重通信を確立した旨を入力するとレジスタ135の値を通信確立を示す値に設定する。MIIインターフェース132が第一スレーブ65からMDIO信号による問い合わせを入力すると、疑似信号生成処理部134は、通信確立(リンクアップ)を示すレジスタ135の値を設定したMDIO信号を生成し、MIIインターフェース132を介して第一スレーブ65へ出力する。また、疑似信号生成処理部134は、MII受信データ処理部131等によるデータ転送を開始させる。これにより、仮想PHY72(第二多重処理部64)と第一スレーブ65との通信が開始される。また、第一スレーブ65は、多重通信が確実に確立された後で多重通信回線を介したデータの送信処理を開始できる。
(6.多重通信確立時、制御データCDの誤り検出時、及び多重通信切断時の動作)
次に、多重通信の確立時、制御データCDの誤り検出時、及び多重通信切断時の動作について説明する。図5は、多重通信の確立時等における装着機13の処理動作であって、特に、第二多重処理部64、仮想PHY72及び第一スレーブ65の処理動作の内容を示している。
まず、搬送装置21のFPGA60は、装着機13の電源が投入されると、第二多重処理部64、仮想PHY72及び第一スレーブ65等の論理回路を構築するコンフィグレーションを実行する。論理回路が構築されると、図5のステップ(以下、単に「S」と表記する)11において、仮想PHY72の疑似信号生成処理部134は、レジスタ135(図4参照)の値を設定する。疑似信号生成処理部134は、初期状態ではレジスタ135にリンクダウンを示す値を設定する(S11)。この状態では、仮想PHY71は、第一スレーブ65からMDIO信号による問い合わせがあっても、リンクダウンを示すレジスタの値を応答する。また、疑似信号生成処理部134は、通信異常検出部64Aから通信を確立した旨を入力するまでの間は、MII受信データ処理部131及びMII送信データ処理部133の転送動作を停止させる。
なお、疑似信号生成処理部134は、S11において、通信状態を通知する処理を実行してもよい。例えば、疑似信号生成処理部134は、リンクダウンの状態では、FPGA60の回路基板上に設けたリンク状態を示すLEDを消灯し、リンクダウン中である旨を作業者等に通知してもよい。また、通信異常検出部64Aから通信を確立した旨を入力するまでの間において、疑似信号生成処理部134は、第一スレーブ65から各種の問い合わせがあった場合に、これに応答する処理を実行してもよい。具体的には、疑似信号生成処理部134は、第一スレーブ65との間におけるデータの転送速度の初期設定について、第一スレーブ65から問い合わせがあった場合に、これに応答して適切な転送速度を設定するなど、いわゆるオートネゴシエーションを実行してもよい。
次に、通信異常検出部64Aは、多重通信の状態を監視する(S12)。通信異常検出部64Aは、多重通信が確立されるまでの間は、疑似信号生成処理部134へ通信確立の通知をしない(S12:NO)。疑似信号生成処理部134は、リンクダウンの状態を維持する。
一方、通信異常検出部64Aは、多重通信が確立されたことを検出すると、その旨を疑似信号生成処理部134に通知する(S12:YES)。疑似信号生成処理部134は、通信異常検出部64Aから多重通信を確立した旨を入力すると、レジスタ135にリンクアップを示す値を設定する(S13)。これにより、疑似信号生成処理部134は、第一スレーブ65からMDIO信号による問い合わせがあると、リンクアップを示すレジスタ135の値を応答する。また、疑似信号生成処理部134は、回路基板上のリンクLEDを点灯させてリンクアップの状態を報知する(S13)。
また、疑似信号生成処理部134は、MII受信データ処理部131及びMII送信データ処理部133に対して転送処理を開始させる(S14)。これにより、MII送信データ処理部133は、第一スレーブ65から入力したデータを多重化部123に転送する処理を開始する。また、MII受信データ処理部131は、非多重化部122から入力したデータを、第一スレーブ65に転送する処理を開始する。このようにして、仮想PHY72は、多重通信の確立に合わせて第二多重処理部64と第一スレーブ65との間のデータの転送を開始することが可能となっている。
次に、通信異常検出部64Aは、多重通信回線におけるデータ転送が開始されると、移載装置23の第三多重処理部83から受信した多重化データMDに多重化された制御データCDについて、データの誤りがあるか否かを判定する(S15)。通信異常検出部64Aは、例えば、非多重化部122によって多重化データMDから分離された制御データCDについて、データの誤りを判定する。通信異常検出部64Aは、制御データCDに付与された誤り訂正符号(CRC符号など)を用いてデータの誤りを判定する。この誤り訂正符号は、採用する産業用ネットワークの通信規格で規定されたものを使用してもよい。あるいは、誤り訂正符号は、通信規格の誤り訂正符号とは別に通信異常検出部64Aによる誤り検出用に制御データCDに付与したものを使用してもよい。
通信異常検出部64Aは、誤り判定において所定条件を満たしたことに応じて(S15:NO)、S17以降の処理を開始する。ここでいう所定条件は、例えば、連続して受信した制御データCDの誤り判定において、4回連続で誤りを検出する条件を設定できる。なお、所定条件は、これに限らず、例えば、誤りを1回検出する条件でもよい。
一方、通信異常検出部64Aは、誤り判定において所定条件を満たさない場合(S15:YES)、多重通信の切断の有無を判定する(S16)。通信異常検出部64Aは、例えば、多重受信処理部121の受信信号レベルや移載装置23の第三多重処理部83からの応答の有無を判定することによって、多重通信の切断の有無を判定することができる(S16)。通信異常検出部64Aによって制御データCDのデータ誤りや多重通信の切断が検出されるまでの間は(S15:YES、S16:NO)、多重通信回線を介した多重化データMDの転送処理は、継続される。一方で、通信異常検出部64Aは、多重通信の切断を検出すると(S16:YES)、S17以降の処理を開始する。
S17において、通信異常検出部64Aは、疑似信号生成処理部134に通知を行ってレジスタ135の値をリンクダウンを示す値に変更させ、回路基板上のリンクLEDを消灯させる(S17)。また、第一スレーブ65は、多重通信が確立された後も、MDIO信号による問い合わせ処理を定期的に実行し、レジスタ135の状態を監視している。このため、第一スレーブ65は、レジスタ135の値を定期的に取得することによって、制御データCDの誤りの発生や多重通信の切断の発生の有無を判定することができる。
図6は、一例として、搬送装置21と移載装置23とを接続するLANケーブル111にノイズ141が発生し、制御データCDに誤りが発生した状態を示している。なお、図6は、図面が煩雑となるのを避けるために制御部31やGbE―PHY43等の図示を省略している。第一スレーブ65は、MDIO信号による問い合わせを実行しレジスタ135の値がリンクダウンを示す値に変更されたことを検出すると、第二多重処理部64との間の通信を切断する。第一スレーブ65は、第二多重処理部64との間の通信を切断した後にマスター45から受信した制御データCDを第二スレーブ85へ送信する処理を中止し、制御データCDをマスター45へ送信(返信)する。本実施形態の第一スレーブ65では、マスター45から受信した制御データCDを、自身で折り返して再びマスター45へ送信する通信(以下、「折り返し通信」という)を開始する(図5のS18、図6中の矢印143参照)。
第一スレーブ65は、折り返し通信を開始すると、マスター45から第一多重処理部63を介して受信した制御データCDの送信先を第二スレーブ85からマスター45へ書き換えてマスター45へ送信する(S18)。また、第一スレーブ65は、折り返し通信を開始する際に、異常(データ誤りや回線切断)が発生した多重通信回線を識別するための回線情報LD(この場合は、LANケーブル111の識別情報)を制御データCDに設定し、マスター45へ送信する(S18)。これにより、マスター45は、第一スレーブ65から受信した制御データCD内の回線情報LDを判定することで、異常が発生した多重通信回線の位置等を検出することができる。なお、第一スレーブ65は、制御データCDに設定する方法以外の方法で回線情報LDをマスター45へ送信してもよい。例えば、第一スレーブ65は、多重化データMDに多重化される制御データCD以外のデータを用いてマスター45へ回線情報LDを送信してもよい。
マスター45は、第一スレーブ65から制御データCD(回線情報LD)を受信すると、異常が発生した多重通信回線を回復させる処理を実行する(図5のS19)。マスター45は、第一スレーブ65に向けてリセット信号RTを送信する。マスター45は、例えば、制御データCDにリセット信号RTを設定し、第一スレーブ65に送信する。
第一スレーブ65は、マスター45からリセット信号RTを受信すると再起動を実行する。また、第一スレーブ65は、再起動を実行する旨を、通信異常が発生した第二多重処理部64へ通知する。第二多重処理部64は、第一スレーブ65の再起動に合わせて再起動を実行する。なお、第一スレーブ65及び第二多重処理部64の再起動は、FPGA60の論理回路を再構築するコンフィグレーションによって実行してもよい。
第二多重処理部64は、再起動後に多重通信回線(LANケーブル111)の再接続を移載装置23の第三多重処理部83と開始する。これにより、マスター45は、データ誤りや回線切断の異常が発生した多重通信回線を迅速且つ的確に回復させることができる。なお、マスター45は、再起動後に多重通信回線が回復しない場合に、その旨を作業者に通知してもよい。例えば、マスター45は、装着機13の表示部やホストコンピュータ3(図1参照)に回復しない旨を通知してもよい。
また、マスター45は、第一スレーブ65から制御データCD(回線情報LD)を受信したことに応じて、基板Bd(図2参照)に対する電子部品の装着作業を中止して搬送装置21による基板Bdの搬送作業を優先して実行する(S19)。図6に示すように、第一スレーブ65で折り返し通信を実行した場合、装着機13は、少なくとも搬送装置21のリレー68等(図3参照)を、多重通信回線を介して制御することができる。換言すれば、マスター45は、搬送装置21に対する制御を実行することができる。そこで、本実施形態のマスター45は、折り返し通信を実行した場合、装着作業を中止して、搬送装置21によって生産ライン2(図1参照)における下流の装着機13に基板Bdを搬送する作業を優先して実行する。これにより、図1に示す複数の装着機13のうちの一台の装着機13で折り返し通信を実行し装着作業を中止した場合でも、他の装着機13が、装着作業を中止した装着機13の作業内容を代わり実行することで生産ライン2の停止を防ぐことが可能となる。なお、マスター45は、多重通信回線が回復した場合に、装着作業を再開してもよい。
また、マスター45は、通信異常が発生した多重通信回線の位置に応じて、S19における処理内容を変更してもよい。図7は、移載装置23と装着ヘッド24とを接続するLANケーブル112にノイズ145が発生した場合を示している。この場合、第四多重処理部84の通信異常検出部84Aは、LANケーブル112を介して受信した制御データCDの誤りを検出すると、仮想PHY92のレジスタ135(図4参照)の値をリンクダウンを示す値に変更する。第二スレーブ85は、仮想PHY92のレジスタ135の値がリンクダウンを示す値に変更されたことに応じて、第四多重処理部84との間の通信を切断し、折り返し通信を開始する(図7中の矢印147参照)。マスター45は、第二スレーブ85から制御データCD(回線情報LD)を受信と、第二スレーブ85及び第四多重処理部84の再起動を実行する。また、マスター45は、基板Bdに対する電子部品の装着作業を中止して搬送装置21による基板Bdの搬送作業を優先して実行する。さらに、LANケーブル112で通信異常が発生した場合、マスター45は、移載装置23に対する制御を実行することができる。このため、マスター45は、例えば、移載装置23を所定の待避位置に移動させる。これにより、作業者が通信異常の原因を調査するために装着機13内を確認する際に、移載装置23を待避させたことで、作業者は、確認作業を適切に実施することができる。このようにして、本実施形態の装着機13は、多重通信回線の異常に応じて、適切な対応を実行することが可能となっている。
(7.実施形態の構成による効果)
上記した実施形態のループ通信回線RLは、産業用ネットワークにおけるマスター45から第一スレーブ65に送信された制御データCDを、多重通信回線を介して第二スレーブ85へ送信し、第二スレーブ85から多重通信回線を介して第一スレーブ65で受信し、さらに、マスター45で受信する通信回線である。FPGA60(多重通信装置)は、第一スレーブ65、第二多重処理部64(第一スレーブ側多重処理部)、及び通信異常検出部64Aを備える。第一スレーブ65は、ループ通信回線RLに接続されマスター45から制御データCDを受信し、受信した制御データCDに基づいた処理を実行する。第二多重処理部64(第一スレーブ側多重処理部)は、少なくとも第一スレーブ65から入力した制御データCDを多重化した多重化データMDを生成し、多重通信回線を介して第二スレーブ85に接続された第三多重処理部83(第二スレーブ側多重処理部)へ多重化データMDを送信する。通信異常検出部64Aは、第二多重処理部64が第三多重処理部83から多重通信回線を介して受信した多重化データMD内の制御データCDにおける誤りを検出し、誤りを検出したことに応じて第一スレーブ65へ異常情報を通知する(レジスタ135の値を変更する)。
本実施形態では、制御データCDは、マスター45、第一スレーブ65、第二スレーブ85、及び第三スレーブ103を接続するループ通信回線RLを循環するように伝送される。ここで、制御データCDにデータ誤りが発生しても多重通信回線が接続されていれば、第二多重処理部64は、第三多重処理部83から多重化データMD(制御データCD)を受信することができる。この場合、通信異常検出部64Aを備えていない構成では、第一スレーブ65が、第二多重処理部64からデータ誤りのある制御データCDを入力し、マスター45へ転送する虞がある。その結果、マスター45は、データ誤りのある制御データCDしか受信できず、制御データCDに基づいて適切な処理を実行できなくなってしまう。これに対し、本実施形態の通信異常検出部64Aは、第三多重処理部83(第二スレーブ側多重処理部)から第二多重処理部64(第一スレーブ側多重処理部)へ送信した多重化データMD内の制御データCDにおける誤りを検出する。通信異常検出部64Aは、制御データCDに誤りがあることを検出すると、第一スレーブ65に異常情報を通知する。これにより、第一スレーブ65は、通知を受けることで、マスター45から受信した制御データCDを、第二スレーブ85と接続された多重通信回線、即ち、データ誤りが発生する多重通信回線を経由させずにマスター45へ返信することができる。マスター45は、データ誤りが発生していない制御データCDを受信することができ、制御データCDの内容に従って適切な処理を実行することができる。
さらに、FPGA60は、異常情報を記憶するレジスタ135(記憶部)を、さらに備える。通信異常検出部64Aは、制御データCDの誤りを検出したことに応じて、レジスタ135に異常情報(リンクダウンを示す値)を記憶する。第一スレーブ65は、レジスタ135から異常情報を取得することによって、制御データCDにおける誤りの発生の有無を判定する。
これによれば、通信異常検出部64Aは、レジスタ135に異常情報を記憶することによって、制御データCDの誤りを検出したこと(異常情報)を第一スレーブ65に通知できる。従って、第一スレーブ65は、所定のタイミングごとにレジスタ135の異常情報の取得を試みれば、制御データCDの誤りが発生したか否かを判定できる。
さらに、FPGA60は、第一スレーブ65と第二多重処理部64(第一スレーブ側多重処理部)との間に接続され、産業用ネットワークにおける通信規格(MIIの通信規格)に準拠した信号を生成する仮想PHY72(信号生成部)を、さらに備える。仮想PHY72は、多重通信回線の通信が確立されたこと応じて、通信規格に準拠した信号を第一スレーブ65に送信して第一スレーブ65との間の通信を確立し、第二多重処理部64と第一スレーブ65との間において制御データCDを転送する。また、仮想PHY72は、通信異常検出部64Aによってレジスタ135(記憶部)に異常情報(リンクダウンを示す値)が記憶されたことに応じて、通信規格に準拠した信号を用いて異常情報を第一スレーブ65に送信し、第一スレーブ65と第二多重処理部64との間の通信を切断する。
これによれば、仮想PHY72(信号生成部)は、多重通信の確立に応じて、産業用ネットワークの通信規格に準拠した信号を第一スレーブ65に送信し、第一スレーブ65との間の通信を確立する。仮想PHY72は、第一スレーブ65との通信を確立した後、第一スレーブ65と第二多重処理部64(第一スレーブ側多重処理部)との間において制御データCDを転送する。このような構成では、第一スレーブ65と第二多重処理部64との間にPHY204,206及び2つのPHY204,206を接続するケーブル207(図8参照)を配置する必要がなくなり、仮想PHY72を介して第一スレーブ65と第二多重処理部64との間で制御データCDの受け渡しを実行できる。また、PHYの数を減らすことでFPGA60の基板実装面積を削減し、FPGA60の小型化、ひいてはFPGA60を備える搬送装置21の小型化を図ることができる。また、第二多重処理部64と第一スレーブ65とのデータの送受信において一旦アナログ信号に変換する処理を省略できるため、制御データCDの転送時間が短縮可能となる。その結果、制御データCDを産業用ネットワークで循環させる場合に、制御データCDが産業用ネットワークを一周するのに必要な転送時間(1サイクルの時間)が短縮でき、ネットワークに接続するスレーブの数を増やすことができる。
また、仮想PHY72は、通信異常検出部64Aによってレジスタ135に異常情報が記憶されると、通信規格に準拠した信号を用いて異常情報を第一スレーブ65に送信し、第一スレーブ65と第二多重処理部64との間の通信を切断する。これにより、仮想PHY72は、通信異常検出部64Aによるデータ誤りの検出に応じて、適切な通信方式で第一スレーブ65と第二多重処理部64との間の通信を切断できる。
さらに、第一スレーブ65は、通信異常検出部64Aから異常情報の通知を受けたことに応じて、第二多重処理部64(第一スレーブ側多重処理部)との間の通信を切断し、切断した後にマスター45から受信した制御データCDを第二スレーブ85へ送信する処理を中止し、制御データCDをマスター45へ送信する。
これによれば、第一スレーブ65は、第二多重処理部64との通信を切断した後、マスター45から受信した制御データCDを、データ誤りが発生する多重通信回線(LANケーブル111)を経由させずにマスター45へ返信することができる。マスター45は、データ誤りが発生していない制御データCDを受信することができる。
さらに、第一スレーブ65は、通信異常検出部64Aから異常情報の通知を受けたことに応じて、制御データCDの誤りを検出した多重通信回線を識別するための回線情報LDを制御データCDに設定しマスター45へ送信する。
これによれば、マスター45は、第一スレーブ65から受信した制御データCD内の回線情報LDを判定することでデータ誤りが発生した多重通信回線を識別でき、適切な対応を実行することが可能となる。
さらに、第一スレーブ65は、回線情報LDを制御データCDに設定しマスター45へ送信した後に(図5のS18)、マスター45からリセット信号RTを受信したことに応じて再起動を実行する(S19)。第二多重処理部64(第一スレーブ側多重処理部)は、第一スレーブ65の再起動に合わせて再起動を実行する。
これによれば、回線情報LDを受信したマスター45は、第一スレーブ65に対してリセット信号RTを送信する。第一スレーブ65は、マスター45からリセット信号RTを受信したことに応じて再起動する。第二多重処理部64は、第一スレーブ65の再起動に合わせて再起動する。これにより、FPGA60(多重通信装置)は、制御データCDのデータ誤りが発生した際に、第一スレーブ65及び第二多重処理部64を再起動することによって、誤りが発生した多重通信回線を再接続することができる。
さらに、装着機13(作業機)は、基板Bd(ワーク)を搬送し基板Bdに対する作業を実行するものである。第一スレーブ65は、装着機13による基板Bdの搬送作業を制御するものである。第二スレーブ85は、装着機13による基板Bdに対する作業を制御するものである。
これによれば、多重通信回線における制御データCDのデータ誤りが発生した場合に、マスター45は、例えば、折り返し通信によって、データ誤りが発生していない制御データCDを第一スレーブ65から受信でき、第一スレーブ65に対する制御(搬送作業)を継続できる。従って、ワークの搬送作業を制御する第一スレーブ65と、ワークに対する作業を制御する第二スレーブ85とを多重通信回線で接続する作業機に本願発明を適用することは有効である。
さらに、装着機13(作業機)は、ワークとして基板Bdを搬送し、ワークに対する作業として基板Bdに電子部品を装着する装着作業を実行する電子部品装着機であり、通信異常検出部64Aから第一スレーブ65へ異常情報が通知されたことに応じて、電子部品の装着作業を中止して基板Bdの搬送作業を優先して実行する。
これによれば、装着機13は、装置内の多重通信回線において制御データCDのデータ誤りが発生した場合に、装着作業を中止して基板Bdの搬送作業を優先する。これにより、複数の装着機13を連結して生産ライン2を構築した場合(図1参照)、データ誤りが発生した装着機13は、装着作業を停止するものの、基板Bdの搬送を継続する。生産ライン2の他の装着機13は、基板Bdの搬送が継続されるため、装着作業を継続することができる。例えば、装着作業を中止した装着機13より下流の装着機13は、装着作業を中止した上流の装着機13の作業内容を代わりに実行することが可能となる。その結果、生産ライン2の稼働を可能な限り継続し、生産性を維持することができる。
さらに、産業用ネットワークにおける通信規格は、イーサネット(登録商標)規格である。また、仮想PHY72(信号生成部)は、MIIのインターフェースが行う通信規格に準拠した信号を生成する。
これによれば、仮想PHY72は、産業用ネットワークにおいて広く利用されている通信規格であるイーサネット(登録商標)において使用されるMII通信規格に準拠した信号を生成する。このような構成の仮想PHY72では、様々な産業用イーサネット(登録商標)に適用することが可能となる。
さらに、第二多重処理部64、第一スレーブ65及び仮想PHY72は、同一のFPGA60(プログラマブル論理デバイス)内に構築された論理回路である。
これによれば、第二多重処理部64、第一スレーブ65及び仮想PHY72を同一のFPGA60の論理回路内に組み込むことで、基板実装面積を削減し装置の小型化を図ることができる。
(8.実施形態の変形態様)
上記実施形態において、産業用ネットワークに適用される通信規格は、イーサネット(登録商標)に限らず、他の通信規格でもよい。また、インターフェースの規格は、MIIに限らず、GMII(Gigabit Media Independent Interface)やRMII(Reduced Media Independent Interface)でもよい。
また、上記実施形態では、第二多重処理部64は、仮想PHY72を介して第一スレーブ65と接続される構成であったが、図8に示すPHY204、ケーブル207、及びPHY206を介して第一スレーブ65と接続される構成でもよい。即ち、第二多重処理部64を、仮想PHY72を用いずに第一スレーブ65と接続してもよい。この場合、第二多重処理部64の通信異常検出部64Aは、例えば、制御データCDの誤りを検出した場合に、通信の異常の発生(異常情報)を第一スレーブ65へ直接通知してもよい。
また、第一スレーブ65は、異常(制御データCDの誤りなど)が発生した場合に、回線情報LDをマスター45へ送信せずに、折り返し通信のみを実行してもよい。
また、第二多重処理部64、第一スレーブ65、及び仮想PHY72を、別々の回路基板に実装してもよい。
また、多重通信回線は、LANケーブルに限らず、光ケーブルを用いて構築してもよい。また、多重通信は、有線通信に限らず、無線通信でもよい。
また、上記実施形態では特に言及していないが、第一多重処理部63は、第二多重処理部64と同様に、通信異常検出部64Aを備え、多重通信回線(LANケーブル110)の確立、制御データCDの誤り及び多重通信回線の切断を検出し、仮想PHY71のレジスタの値を変更してもよい。あるいは、第一多重処理部63は、多重通信回線の確立及び切断のみを検出して仮想PHY71のレジスタの値を変更してもよい。
また、第二多重処理部64は、制御データCDを他のデータ(トリガ信号など)と多重化する構成であったが、制御データCDのみを多重化する構成でもよい。
また、上記実施形態では、1つのマスター45に対して3つのスレーブ(第一〜第三スレーブ65,85,103)を接続したが、これに限らない。マスター45は2以上の複数個でもよい。また、スレーブは、2又は4以上の複数個でもよい。
また、上記実施形態では、本願における作業機として、電子部品を基板Bdに装着する電子部品装着機13を採用した例について説明したが、本願における作業機はこれに限定されるものではなく、半田印刷装置11などの他の基板Bdに作業を行う作業機を採用することができる。また、作業機としては、対基板作業に限らず、切削作業や二次電池(太陽電池や燃料電池など)等の組立て作業を実施する作業機を採用してもよい。
例えば、切削作業を実行する工作機械において、第一スレーブ65は、工作機械によるワークの搬送作業を制御するものとして採用できる。より具体的には、第一スレーブ65は、ワークの搬入や搬出を行うローダーの制御を実行してもよい。また、第二スレーブ85は、工作機械によるワークに対する切削作業を制御するものとして採用できる。より具体的には、第二スレーブ85は、ローダーからワークを受け取って加工時にワークを保持するチャックや、ワークを削るバイトを外周に取り付けたタレットの制御を実行してもよい。この場合においても、第一スレーブ65は、マスター45から受信した制御データCDを、第二スレーブ85と接続されたデータ誤りが発生する多重通信回線を経由させずにマスター45へ返信することができる。従って、上記実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。