以下、本発明を詳細に説明するが、これら説明に限定されるわけではない。
本発明は、有機ケイ素重合体を含有する表層を有し、表面にシリコーンオイルを有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記有機ケイ素重合体は、下記式(RaT3)で表される部分構造を有する重合体であり、
前記トナーを水洗法により洗浄して得られる粒子をトナーAとしたとき、前記トナーAを試料とする29Si−NMRの測定において、
下記式(RaT3)で表される部分構造のピーク面積の割合[SARaT3]と下記式(Me2D2)で表される部分構造のピーク面積の割合[SAMe2D2]が、
0.001≦([SAMe2D2]/[SARaT3])×100≦10.000
の関係を満たすことを特徴とする。
(式中、R
aは炭素数が1以上6以下の炭化水素基又はアリール基を表す。)
本発明においては、有機ケイ素重合体を含有する表層を有し、式(Me2D2)で表わされる部分構造を有する化合物を表面に有するトナー粒子を有するトナーである。前記有機ケイ素重合体は、式(RaT3)で表される部分構造を有することにより、有機構造による疎水性を向上させることができる。また、トナー表面が式(Me2D2)で表わされる部分構造を有する化合物で処理されていることにより、耐久時にトナー表面性の変化が抑制され、環境安定性と転写性に優れたトナーを得ることができる。
また、本発明においては、前記トナーを水洗法により洗浄して得られる粒子をトナーAとしたとき、前記トナーAを試料とする29Si−NMRの測定において、式(RaT3)で表される部分構造のピーク面積の割合[SARaT3]と式(Me2D2)で表される部分構造のピーク面積の割合[SAMe2D2]が、
0.001≦([SAMe2D2]/[SARaT3])×100≦10.000
の関係を満たす。
尚、トナーを水洗法にて洗浄するという処理は、トナー表面に存在する外添剤(有機微粒子または無機微粒子)を取り除く処理である。そのため、この処理を行うことによって、外添する前の粒子(或いは、外添されていない粒子)の性状を確認することができるようになる。
式(RaT3)で表わされる部分構造は、架橋による耐久性を有する。また、式(Me2D2)で表わされる部分構造は、コート均一性、疎水性及び帯電性を有する。
式(RaT3)と式(Me2D2)が0.001≦([SAMe2D2]/[SARaT3])×100≦10.000の関係を満たすことによって、シリコーンオイルのメチル基による帯電性有機ケイ素重合体を含有する表層のシロキサン構造による放電のバランスがとれて環境安定性が向上し、転写ラチチュードが広くなる。特に、転写ラチチュードが狭くなる高速機及び転写紙が厚い紙において問題になりやすい。
前記([SAMe2D2]/[SARaT3])×100の値が0.001未満の場合には、有機ケイ素重合体を含有する表層のシロキサン構造による放電が大きくなり、転写ラチチュードが悪化する。また、耐久によりトナー表面性が劣化しやすくなり現像耐久性が低下する。
([SAMe2D2]/[SARaT3])×100の値が10.000超の場合には、式(Me2D2)で表わされる部分構造の帯電が大きくなり、転写ラチチュードが悪化する。また、部材にシリコーンオイルが転移し易くなり、部材汚染が発生する。
([SAMe2D2]/[SARaT3])×100は、耐久時の環境安定性と転写性が良化するため、0.005≦([SAMe2D2]/[SARaT3])×100≦5.000が好ましく、0.010≦([SAMe2D2]/[SARaT3])×100≦3.000がより好ましい。
トナーAを試料とする29Si−NMRの測定において、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する、上記式(RaT3)で表される部分構造(以下、RaT3構造とも称する。)のピーク面積の割合[SARaT3]×100が、[SARaT3]×100≧20.000の関係を満たすことが好ましい。トナー粒子の表面の表面自由エネルギーを低くすることができるため、環境安定性及び耐部材汚染に優れた効果がある。
また、有機ケイ素重合体のRaT3構造による耐久性と、上記式(RaT3)中のRaの疎水性及び帯電性により、トナーの撹拌性が良化し、環境安定性及び現像耐久性に優れたトナーを得ることができる。
[SARaT3]×100に関し、100.000≧[SARaT3]×100≧20.000の関係を満たすことが好ましく、95.000≧[SARaT3]×100≧30.000の関係を満たすことがより好ましい。保存性、耐久性の観点から[SARaT3]×100は、100.000以下であることが好ましく、95.000以下であることがより好ましく、90.000以下であることがさらに好ましい。
SARaT3は、有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量、並びに、有機ケイ素重合体形成時の加水分解、付加重合及び縮合重合の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
トナーAを試料とする29Si−NMRの測定において、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する、上記式(Me2D2)で表される部分構造(以下、Me2D2構造とも称する。)のピーク面積の割合[SAMe2D2]×100が、10.000≧[SAMe2D2]×100≧0.001の関係を満たすことが好ましい。
トナー粒子の表面自由エネルギーをより均一に低くすることができるため、環境安定性及び耐部材汚染に優れた効果がある。[SAMe2D2]×100に関し、10.000≧[SAMe2D2]×100≧0.001の関係を満たすことが好ましく、5.000≧[SAMe2D2]×100≧0.010の関係を満たすことがより好ましい。
[SAMe2D2]は、シリコーンオイルの量で制御することができる。シリコーンオイル形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量、並びに、有機ケイ素重合体形成時の加水分解、付加重合及び縮合重合の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
本発明において、トナーAを試料とする29Si−NMRの測定において、トナーAの有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する、ケイ素に結合するO1/2の数が2.0である構造(以下、X2構造とも称する。)のピーク面積の割合[SAX2]×100が、50.000>[SAX2]×100≧0.100の関係を満たすことが好ましい。上記[SAX2]×100が50.000>[SAX2]×100≧0.100であることにより、シロキサン構造の架橋構造による耐久性と帯電性のバランスが良好になる。また、結晶化が少なく、薄膜状にすることができる。
そのため、環境安定性、保存安定性や現像耐久性により優れ、様々な環境においてもカブリや画像濃度安定性に優れている。より好ましくは、50.000>[SAX2]×100≧1.000であり、さらに好ましくは、50.000>[SAX2]×100≧10.000の関係を満たすことである。
[SAX2]は、有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量、並びに、有機ケイ素重合体形成時の加水分解、付加重合及び縮合重合の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
また、本発明において式(Me2D2)で表わされる部分構造を有する化合物とは、式(Me2D2)の構造を50モル%以上含む化合物のことである。
前記トナーAをヘキサンにより洗浄して得られる粒子をトナーAhとしたとき、蛍光X線分析による測定において、トナーAのSiO2量MA(質量%)とトナーAhのSiO2量MAh(質量%)の関係が0.00010≦(MA−MAh)/MA≦5.00000であることが好ましい。ヘキサンで抽出されるSiO2成分を含有することによって高湿環境下における転写性が良化する。疎水性の高い成分のためと考えられる。
より好ましくは0.00100≦(MA−MAh)/MA≦2.00000であり、更に好ましくは0.01000≦(MA−MAh)/MA≦1.00000である。
(MA−MAh)/MAは、例えばシリコーンオイルの量で制御することができる。シリコーンオイル形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量、並びに、有機ケイ素重合体形成時の加水分解、付加重合及び縮合重合の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
本発明において、前記トナーAをヘキサンで洗浄して得られる粒子をトナーAhとする。トナーAhを試料とするテトラヒドロフランの不溶分の29Si−NMRの測定において、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する、上記式(RaT3)で表される部分構造のピーク面積の割合[SAhtRaT3]が、[SAhtRaT3]≧0.20の関係を満たすことが好ましい。トナー粒子の表面の表面自由エネルギーを低くすることができるため、環境安定性に優れた効果がある。
[SAhtRaT3]に関し、1.00≧[SAhtRaT3]≧0.20の関係を満たすことが好ましく、0.95≧[SAhtRaT3]≧0.30の関係を満たすことがより好ましい。保存性、耐久性の観点から[SAhtRaT3]は、1.00以下であることが好ましく、0.95以下であることがより好ましく、0.90以下であることがさらに好ましい。
[SAhtRaT3]は、有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量、並びに、有機ケイ素重合体形成時の加水分解、付加重合及び縮合重合の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
本発明において、トナーAhを試料とするテトラヒドロフラン(THF)不溶分の29Si−NMRの測定において、トナーAhのTHF不溶分の有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する、ケイ素に結合するO1/2の数が2.0である構造(以下、X2構造とも称する。)のピーク面積の割合[SAhtX2]が、0.60≧[SAhtX2]≧0.00の関係を満たすことが好ましい。上記[SAhtX2]が0.60≧[SAhtX2]≧0.00であることにより、シロキサン構造の架橋構造による耐久性と帯電性のバランスが良好になる。また、結晶化が少なく、薄膜状にすることができる。そのため、環境安定性、保存安定性や現像耐久性により優れ、様々な環境においてもカブリや画像濃度安定性が優れている。より好ましくは、0.50>[SAhtX2]≧0.01であり、さらに好ましくは、0.50>[SAhtX2]≧0.05の関係を満たすことである。
[SAhtX2]は、有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量、並びに、有機ケイ素重合体形成時の加水分解、付加重合及び縮合重合の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
上記式(RaT3)で表される部分構造において、Raは炭素数が1以上6以下の炭化水素基である。Raの疎水性が大きいと様々な環境において帯電量変動が大きくなる傾向がある。特に環境安定性に優れている、炭素数が1以上5以下の炭化水素基、又はフェニル基が好ましい。
本発明において、上記Raは炭素数が1以上3以下の炭化水素基であることが、帯電性及びカブリ防止のさらなる向上のためにより好ましい態様である。帯電性が良好であると、転写性が良く転写残トナーが少ないためドラム、帯電部材及び転写部材の汚染が良化する。
炭素数が1以上3以下の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、又はビニル基が好ましく例示できる。さらに好ましくは、環境安定性と保存安定性の観点から、Raはメチル基である。
本発明において、トナーAhを試料とするテトラヒドロフラン(THF)不溶分の29Si−NMRの測定において、トナーAhの有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する、ケイ素に結合するO1/2の数が1.0である構造(以下、X1構造とも称する。)のピーク面積の割合[SAhtX1]が、0.25>[SAhtX1]≧0.00の関係を満たすことが好ましい。上記[SAhtX1]が0.25>[SAhtX1]≧0.00であることにより、シロキサン構造の架橋構造による耐久性と帯電性のバランスが良好になる。また、結晶化が少なく、薄膜状にすることができる。そのため、環境安定性、保存安定性や現像耐久性により優れ、様々な環境においてもカブリや画像濃度安定性に優れている。より好ましくは、0.10>[SAhtX1]≧0.00であり、さらに好ましくは、0.05>[SAhtX1]≧0.00の関係を満たすことである。
[SAhtX1]は、有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量、並びに、有機ケイ素重合体形成時の加水分解、付加重合及び縮合重合の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
(式(X1)中のR
i、R
j、R
kはケイ素に結合している有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基またはアルコキシ基)
本発明に用いられる有機ケイ素重合体の代表的な製造例としては、ゾルゲル法と呼ばれる方法が挙げられる。
ゾルゲル法は、金属アルコキシドM(OR)n(M:金属、O:酸素、R:炭化水素、n:金属の酸化数)を出発原料に用いて、溶媒中で加水分解及び縮合重合させ、ゾル状態を経て、ゲル化する方法であり、ガラス、セラミックス、有機−無機ハイブリット、ナノコンポジットを合成する方法に用いられる。この製造方法を用いれば、表層、繊維、バルク体、微粒子などの種々の形状の機能性材料を液相から低温で作製することができる。
トナー粒子の表層に存在する有機ケイ素重合体は、具体的には、アルコキシシランに代表されるケイ素化合物の加水分解及び縮重合によって生成されることが好ましい。
この有機ケイ素重合体を含有する表層をトナー粒子に均一に設けることによって、従来のトナーのように、無機微粒子の固着や付着を行わなくても、環境安定性が向上し、かつ、長期使用時におけるトナーの性能低下が生じにくく、保存安定性に優れたトナーを得ることができる。
さらに、ゾルゲル法は、溶液から出発し、その溶液をゲル化することによって材料を形成しているため、様々な微細構造及び形状をつくることができる。特に、トナー粒子が水系媒体中で製造される場合には、有機ケイ素化合物のシラノール基のような親水基による親水性によってトナー粒子の表面に析出させやすくなる。
しかしながら、有機ケイ素化合物の疎水性が大きい場合(例えば有機ケイ素化合物の炭化水素基の炭素数が6を超える炭化水素基である場合)、トナー粒子の表面上に、トナー粒子の重量平均粒径(μm)の1/10以下である凝集体を形成しやすい傾向がある。一方、有機ケイ素化合物の炭化水素基の炭素数が0の場合には疎水性が弱くなるため、トナーの帯電安定性が悪化する。上記微細構造及び形状は反応温度、反応時間、反応溶媒、pHや有機金属化合物の種類及び量などによって調整することができる。
本発明において、トナー粒子は、上記式(RaT3)で表される部分構造を有する有機ケイ素重合体を含有する表層を有する。
有機ケイ素重合体中に該有機ケイ素重合体のTHF不溶分は、50.0質量%以上であることが好ましい。保存安定性と部材汚染が良化する。より好ましくは75.0質量%以上、さらに好ましくは90.0質量%以上が好ましい。
本発明において、前記トナーの蛍光X線測定(波長分散型蛍光X線分析装置)によるケイ素強度Gと、前記トナーAのSi強度GAが80.00≦(GA/G)×100.00≦100.00であることが好ましい。
(GA/G)×100.00が80.00以上であることによって、粒子表面から外れないため、表面状態の変化が少なく、耐久安定性が向上する。好ましくは90.00≦(GA/G)×100≦100.00である。
前記有機ケイ素重合体は、下記式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物を重合させて得られる有機ケイ素重合体であることが好ましい。
(式(Z)中、R
1は、炭素数1以上6以下の炭化水素基を表し、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基を表す。)
R1の炭化水素基により疎水性を向上することができ、環境安定性に優れたトナー粒子を得ることができる。R1としては、炭素数1以上6以下の炭化水素基であることが好ましい。また、炭化水素基として芳香族炭化水素基であるアリール基、例えばフェニル基を用いることもできる。R1の疎水性が大きい場合、様々な環境において帯電量変動が大きくなる傾向を示すことから、環境安定性を鑑みて、R1は炭素数1以上3以下の炭化水素基であることがより好ましい。
炭素数が1以上3以下の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、又はプロピル基が好ましく例示できる。また、R1としてフェニル基も好ましく例示できる。この場合、帯電性及びカブリ防止が良好となる。さらに好ましくは、環境安定性と保存安定性の観点から、R1はメチル基である。
R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基である(以下、反応基ともいう)。これらの反応基が加水分解、付加重合及び縮合重合させて架橋構造を形成し、耐部材汚染及び現像耐久性に優れたトナーを得ることができる。加水分解性が室温で穏やかであり、トナー粒子の表面への析出性と被覆性の観点から、アルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基やエトキシ基であることがより好ましい。また、R2、R3及びR4の加水分解、付加重合及び縮合重合は、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
本発明に用いられる有機ケイ素重合体を得るには、上記に示す式(Z)中のR1を除く一分子中に3つの反応基(R2、R3及びR4)を有する有機ケイ素化合物(以下、三官能性シランともいう)を1種又は複数種を組み合わせて用いるとよい。
また、本発明において、有機ケイ素重合体の含有量は、トナー粒子中に0.50質量%以上50.00質量%以下であることが好ましく、0.75質量%以上40.00質量%以下であることがより好ましい。
上記式(Z)としては以下のものが挙げられる。
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルメトキシジクロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシラン、のような三官能性のメチルシラン。
エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリヒドロキシシランのような三官能性のシラン。
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシランのような三官能性のフェニルシラン。
本発明に用いられる有機ケイ素重合体において、上記式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物の含有量は、有機ケイ素重合体中に50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは60モル%以上である。式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物の含有量を50モル%以上とすることによって、さらにトナーの環境安定性を向上させることができる。
また、本発明において、本発明の効果を損なわない程度に、式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物とともに、一分子中に4つの反応基を有する有機ケイ素化合物(四官能性シラン)、一分子中に2つの反応基を有する有機ケイ素化合物(二官能性シラン)又は1つの反応基を有する有機ケイ素化合物(一官能性シラン)を併用して得られた有機ケイ素重合体を用いてもよい。併用してもよい有機ケイ素化合物としては以下のようなものが挙げられる。
テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラクロロシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、テトライソシアネートシラン、メチルトリイソシアネートシラン、ビニルトリイソシアネートシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジエトキシメトキシシラン、ビニルエトキシジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメトキシジクロロシラン、ビニルエトキシジクロロシラン、ビニルジメトキシクロロシラン、ビニルメトキシエトキシクロロシラン、ビニルジエトキシクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジアセトキシメトキシシラン、ビニルジアセトキシエトキシシラン、ビニルアセトキシジメトキシシラン、ビニルアセトキシメトキシエトキシシラン、ビニルアセトキシジエトキシシラン、ビニルトリヒドロキシシラン、ビニルメトキシジヒドロキシシラン、ビニルエトキシジヒドロキシシラン、ビニルジメトキシヒドロキシシラン、ビニルエトキシメトキシヒドロキシシラン、ビニルジエトキシヒドロキシシラン、のような三官能性のビニルシラン。
アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリアセトキシシラン、アリルトリヒドロキシシラン、のような三官能性のアリルシラン。
トリメチルクロロシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ブチルジメチルクロロシラン、ブチルジメチルエトキシシラン、ブチルジメチルメトキシシラン、クロロジメチルビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジメチルジエトキシビニルシラン、クロロトリエチルシラン、のような一官能性のシラン。
一般的に、ゾルゲル反応では、反応媒体の酸性度によって生成するシロキサン結合の結合状態が異なることが知られている。具体的には、反応媒体が酸性である場合には、水素イオンが1つの反応基(例えば、アルコキシ基(−OR基))の酸素に親電子的に付加する。次に、水分子中の酸素原子がケイ素原子に配位して、置換反応によってヒドロシリル基になる。水が十分に存在している場合には、H+1つで反応基(例えば、アルコキシ基(−OR基))の酸素を1つ攻撃するため、反応媒体中のH+の含有率が少ないときには、ヒドロキシ基への置換反応が遅くなる。よって、シランに付いた反応基のすべてが加水分解する前に縮重合反応が生じ、比較的容易に、一次元的な線状高分子や二次元的な高分子が生成しやすい。
一方、反応媒体がアルカリ性の場合には、水酸化物イオンがケイ素に付加して5配位中間体を経由する。そのため全ての反応基(例えば、アルコキシ基(−OR基))が脱離しやすくなり、容易にシラノール基に置換される。シラノール基に置換されるとケイ素の電子密度が疎になり、水酸化物イオンを引き寄せるためである。特に、同一シランに3個以上の反応基を有するケイ素化合物を用いた場合には、加水分解及び縮重合が3次元的に生じて、3次元の架橋結合の多い有機ケイ素重合体が形成される。また、反応も短時間で終了する。
従って、有機ケイ素重合体を形成するには、反応媒体がアルカリ性の状態でゾルゲル反応を進めることが好ましく、水系媒体中で製造する場合には、具体的には、pH8.0以上であることが好ましい。これによって、より強度の高い、耐久性に優れた有機ケイ素重合体を形成することができる。また、ゾルゲル反応は、反応温度90℃以上、かつ、反応時間5時間以上で行うことが好ましい。
このゾルゲル反応を上記反応温度及び反応時間で行うことによって、トナー粒子の表面のゾルやゲルの状態のシラン化合物同士が結合した合一粒子の形成を抑制することができる。
さらに、本発明の効果を損なわない程度に、上記有機ケイ素化合物とともに、有機チタン化合物や有機アルミ化合物を用いてもよい。
有機チタン化合物としては、以下のものが挙げられる。
チタンメトキサイド、チタンエトキサイド、チタンn−プロポキサイド、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、チタンイソブトキサイド、チタンブトキシドダイマー、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタニウムジ−2−エチルヘキソキシビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、チタンラクテート、チタンメタクリレートイソプロポキサイド、トリイソプロポキシチタネート、チタンメトキシプロポキサイド、チタンステアリルオキサイド。
有機アルミ化合物としては、以下のものが挙げられる。
アルミニウム(III)n−ブトキサイド、アルミニウム(III)s−ブトキサイド、アルミニウム(III)s−ブトキサイドビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウム(III)t−ブトキサイド、アルミニウム(III)ジ−s−ブトキサイドエチルアセトアセテート、アルミニウム(III)ジイソプロポキサイドエチルアセトアセテート、アルミニウム(III)エトキサイド、アルミニウム(III)エトキシエトキシエトキサイド、アルミニウムヘキサフルオロペンタンジオネート、アルミニウム(III)3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロネート、アルミニウム(III)イソプロポキサイド、アルミニウム−9−オクタデセニルアセトアセテートジイソプロポキサイド、アルミニウム(III)2,4−ペンタンジオネート、アルミニウムフェノキサイド、アルミニウム(III)2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート。
なお、これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。これらを適宜に組み合わせたり、添加量を変えたりすることで、帯電量を調節することができる。
本発明に好ましく用いることができるシリコーンオイルとしてはアミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性の如き反応性シリコーン;ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、脂肪酸変性、アルコキシ変性、フッ素変性の如き非反応性シリコーン;ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ジフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーンの如きストレートシリコーンがあげられる。
これらのシリコーンオイルの中でも、置換基として、アルキル基、アリール基、水素原子の一部または全部がフッ素原子に置換されたアルキル基、水素を置換基として有するシリコーンオイルが好ましい。具体的には、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルである。高湿環境下でもトナーの帯電量を高く維持し、選択現像性を低減する上で好ましい。
これらのシリコーンオイルは、25℃における粘度が1mm2/s以上10,000mm2/s以下であることが好ましく、より好ましくは3mm2/s以上5,000mm2/s以下、さらに好ましくは5mm2/s以上1,000mm2/s以下である。1mm2/s未満では十分な疎水性が得られないことがあり、10,000mm2/sを超える場合には、凝集物ができやすく十分な流動性が得られないことがある。
本発明のトナーは、トナーAhの表層(表面層、最表層)のX線光電子分光分析(ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)を用いた測定において、トナーAhの表層における、ケイ素原子の濃度dSiと酸素原子の濃度dOと炭素原子の濃度dCの合計(dSi+dO+dC)に対するケイ素原子の濃度dSi(dSi/[dSi+dO+dC])が、2.5原子%以上であることが好ましく、より好ましくは5.0原子%以上であり、さらに好ましくは10.0原子%である。
上記ESCAは、トナー粒子の表面からトナー粒子の中心(長軸の中点)に数nmの厚さで存在する表層の元素分析を行うものである。このトナー粒子の表層におけるケイ素原子の濃度(dSi/[dSi+dO+dC])が2.5原子%以上あることで、表層の表面自由エネルギーを小さくすることができる。前記ケイ素原子の濃度を2.5原子%以上に調整することによって、流動性がさらに向上し、部材汚染やカブリの発生をより抑制することができる。より好ましくは5.0原子%以上であり、さらに好ましくは10.0原子%以上、特に好ましくは15.0原子%以上である。
一方、前記トナーAhの表層におけるケイ素原子の濃度(dSi/[dSi+dO+dC])は、帯電性の観点より、33.3原子%以下であることが好ましい。より好ましくは28.6原子%以下である。
前記トナーAhの表層におけるケイ素原子の濃度は、上記式(RaT3)中のRaの構造、有機ケイ素重合体形成時のトナー粒子の製造方法、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。また、有機ケイ素重合体の含有量によっても制御することができる。なお、本発明においてトナー粒子の表層とは、トナー粒子の表面からトナー粒子中心(長軸の中点)に向かって0.0nm以上10.0nm以下の厚さで存在する層を意味する。なお、dSi/[dSi+dO+dC]は、上記式(RaT3)中のRaの構造、有機ケイ素重合体形成時のトナー粒子の製造方法、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
本発明において、トナー粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面観察において、トナー粒子断面の長軸Lと、長軸Lの中心を通りかつ垂直な軸L90の交点を中心にして、トナー粒子断面を均等に16分割し、前記中心からトナー粒子の表面へ向かう分割軸をそれぞれAn(n=1〜32)としたときに、前記分割軸上の32箇所の有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表面層の平均厚みDav.が2.5nm以上150.0nm以下であることが好ましい。本発明において、有機ケイ素重合体を含有する表層とトナー粒子表層以外の部分(いわゆる芯部分)は、隙間なく接していることが好ましい。換言すれば上記特許文献4に開示されているような粒状塊の被覆層でないことが好ましい。また、多面体オリゴシルセスシロキサン化合物及びその誘導体は、数ナノメートルの粒状塊または集合体になりやすい。粒状塊や集合体の隙間から離型剤や樹脂成分が染み出すブリードが発生し易くなる。
これにより、トナー粒子の表層よりも内部の樹脂成分や離型剤等によるブリードの発生が抑えられ、保存安定性、環境安定性及び現像耐久性に優れたトナーを得ることができる。トナー粒子の表層の平均厚みDav.が2.5nm未満ではトナー粒子中の樹脂成分や離型剤等によるブリードが発生しやすい。そのため、トナー粒子の表面性が変化して環境安定性、現像耐久性が悪くなる傾向がある。トナー粒子の表層の平均厚みDav.が150.0nmを超える場合では低温定着性が悪くなる傾向がある。保存安定性の観点から、トナー粒子の表層の平均厚みDav.は5.0nm以上125.0nm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは7.5nm以上100.0nm以下である。前記トナー粒子の表層の平均厚みDav.は、有機ケイ素重合体形成時におけるトナー粒子の製造方法、上記式(RaT3)中の炭化水素基の炭素数、親水性基の数、有機ケイ素重合体形成時の付加重合及び縮合重合の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。また、有機ケイ素重合体の含有量で制御することもできる。
本発明において、トナー粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面観察において、トナー粒子断面の長軸Lと、長軸Lの中心を通りかつ垂直な軸L90の交点を中心にして、トナー粒子断面を均等に16分割し、前記中心からトナー粒子の表面へ向かう分割軸をそれぞれAn(n=1〜32)としたときに、32本存在する各分割軸上における有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合(以下、表層の厚み2.5nm以下の割合ともいう)が、20.0%以下であることが好ましく、より好ましくは10.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下である(図1参照)。
表層の厚み2.5nm以下の割合が上記範囲内である場合、トナー粒子の表層よりも内部の樹脂成分や離型剤等によるブリードの発生を低減することができる。そのため、環境安定性、保存安定性や現像耐久性が良化する。また、表層の厚み2.5nm以下の割合が20.0%以下であることで、様々な環境においてもカブリや画像濃度安定性に優れたトナーを得ることができる。前記表層の厚み2.5nm以下の割合は、有機ケイ素重合体形成時におけるトナー粒子の製造方法、上記式(RaT3)中の炭化水素基の炭素数、親水性基の数、有機ケイ素重合体形成時の付加重合及び縮合重合の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。また、有機ケイ素重合体の含有量で制御することもできる。
また、有機ケイ素重合体はTHFに不溶な有機ケイ素重合体が好ましい。THFに不溶な有機ケイ素重合体のRaT3構造による耐久性と、式(RaT3)中のRaの疎水性及び帯電性により、表層よりも内部に存在する、染み出しやすい低分子量(Mw1000以下)樹脂、及び低Tg(40℃以下)樹脂、並びに、場合によっては離型剤のブリードが抑えられる。その結果、さらにトナーの撹拌性が良化し、保存安定性、並びに、環境安定性及び現像耐久性に優れたトナーを得ることができる。
THFに不溶な有機ケイ素重合体は有機ケイ素重合体中に50.0モル%以上のケイ素濃度であることが好ましい。有機ケイ素化合物が層状に形成し易いためである。THFに不溶な有機ケイ素重合体が有機ケイ素重合体中に50.0モル%以下のケイ素濃度の場合には、有機ケイ素重合体が結晶化し易く粒状になりやすいため、保存安定性が悪化する。より好ましくは25.0モル%以下である。
本発明において、トナーAh中のSiO2量に対するTHFに可溶なSiO2量の割合(%)は、50.0%以上であることが好ましい。保存安定性と部材汚染が良化する。より好ましくは75.0%以上、さらに好ましくは90.0%以上である。
トナーAh中のSiO2量に対するTHFに可溶なSiO2量の割合(%)は、結着樹脂及び有機ケイ素重合体の重合度、架橋度、有機ケイ素重合体の量によって調整することが可能である。
粒子表面を処理する混合機としては、三井ヘンシェルミキサ、メカノフュージョン、サイクロミックス、タービュライザ、フレキソミックス、ハイブリタイゼーション、メカノハイブリット、ノビルタが挙げられる。また、回転周速を早めたり、処理時間を長めにしたりすることによって、粒子表面を式(Me2D2)で表される部分構造を有する化合物で均一に処理することができる。
次に、トナー粒子の製造方法(有機ケイ素重合体をトナー粒子の表層に含有させる具体的態様)について説明するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
第一製法としては、有機ケイ素重合体を形成するための有機ケイ素化合物、及び、結着樹脂を形成するための重合性単量体を含有する重合性単量体組成物の粒子を水系媒体中で形成し、重合性単量体を重合させることによってトナー粒子を得る態様(以下、懸濁重合法とも称する)が挙げられる。
第二製法としては、先にトナー粒子母体を得た後、トナー粒子母体を水系媒体中に投入して、水系媒体中でトナー粒子母体に有機ケイ素重合体の表層を形成する態様が挙げられる。トナー粒子母体は、結着樹脂を溶融混練し、粉砕することによって得られるものであってもよく、結着樹脂粒子を水系媒体中で凝集し、会合することによって得られたものであってもよく、また、結着樹脂を有機溶媒に溶解し製造された有機相分散液を、水系媒体中に懸濁させ、粒子を形成(造粒)し、重合させた後に有機溶媒を除去することによって得られたものであって良い。
第三製法としては、結着樹脂、及び有機ケイ素重合体を形成するための有機ケイ素化合物を、有機溶媒に溶解し製造された有機相分散液を、水系媒体中に懸濁させ、粒子を形成(造粒)し、重合させた後に有機溶媒を除去してトナー粒子を得る態様が挙げられる。
第四製法としては、結着樹脂粒子、及びゾル又はゲル状態の有機ケイ素重合体を形成するための有機ケイ素化合物含有粒子を、水系媒体中で凝集し、会合してトナー粒子を形成する態様が挙げられる。
第五製法としては、トナー粒子母体の表面に、有機ケイ素重合体を形成するための有機ケイ素化合物を含有する溶媒をスプレードライ法によりトナー粒子母体表面に噴射し、熱風及び冷却により表面を重合又は乾燥させて、有機ケイ素重合体をトナー粒子の表層に形成する態様が挙げられる。トナー粒子母体は、結着樹脂を溶融混練し、粉砕して得てもよく、結着樹脂粒子を、水系媒体中で凝集し、会合して得てもよく、結着樹脂を有機溶媒に溶解し製造された有機相分散液を、水系媒体中に懸濁させ、粒子を形成(造粒)し、重合させた後に有機溶媒を除去して得てもよい。
これらの製造方法によって製造されたトナー粒子は、有機ケイ素重合体がトナー粒子の表面近傍で形成されるため、環境安定性(特に、過酷環境下での帯電性)が良好となる。また、過酷環境下においてもトナー内部に存在する樹脂や、必要に応じて添加される離型剤のブリードによるトナー粒子の表面状態の変化が抑制される。
本発明においては、得られたトナー粒子又はトナーを、熱風を用いて表面処理してもよい。熱風を用いてトナー粒子又はトナーの表面処理を行うことによって、トナー粒子の表面近傍の有機ケイ素重合体の縮重合を促進して、環境安定性と現像耐久性を向上させることができる。
上記熱風を用いた表面処理としては、熱風でトナー粒子又はトナーの表面を処理することができ、かつ、熱風で処理されたトナー粒子又はトナーを冷風で冷却できる方式を採用できる手段であればどのようなものであってもよい。
熱風を用いた表面処理を行う装置としては、ハイブリタイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、メカノフージョンシステム(ホソカワミクロン(株)製)、ファカルティ(ホソカワミクロン(株)製)、メテオレインボー MR Type(日本ニューマチック工業(株)製)が挙げられる。
上記製造方法において水系媒体とは、以下のものが挙げられる。
水;メタノール、エタノール、及びプロパノールのようなアルコール類、並びに、これらの混合溶媒である。
本発明のトナー粒子の製造方法として、上述した製造方法の中でも、第一製法である懸濁重合法が好ましい。懸濁重合法では有機ケイ素重合体がトナー粒子の表面に均一に析出しやすく、表層と内部との接着性に優れ、保存安定性、環境安定性及び現像耐久性が良好になる。以下、懸濁重合法についてさらに説明する。
上記重合性単量体組成物には、必要に応じて着色剤、離型剤、極性樹脂、及び低分子量樹脂を添加してもよい。また、重合工程終了後は、生成した粒子を洗浄、濾過により回収し、乾燥させてトナー粒子を得る。なお、上記重合工程の後半に昇温してもよい。さらに、未反応の重合性単量体又は副生成物を除去する為に、重合工程後半又は重合工程終了後に一部分散媒体を反応系から留去することも可能である。
なお、以下に記載される材料は、懸濁重合法にのみ適用されるものではなく、上記他の製法にも適用できるものである。
上記懸濁重合法における重合性単量体として、以下に示すビニル系重合性単量体が好適に例示できる。スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンのようなスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、蟻酸ビニルのようなビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン。
上記重合性単量体の重合に際して、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。
2,2’−アゾビス−(2,4−ジバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ系、又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドのような過酸化物系重合開始剤。これらの重合開始剤は、重合性単量体に対して0.5質量%以上30.0質量%以下の添加が好ましく、単独でも又は併用してもよい。
トナー粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合性単量体の重合に際して、連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤の添加量としては、重合性単量体の0.001質量%以上15.000質量%以下であることが好ましい。
一方、トナー粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合性単量体の重合に際して、架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、以下のものが挙げられる。
ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA 日本化薬)、及び以上のアクリレートをメタクリレートに変えたもの。
また、多官能の架橋剤としては以下のものが挙げられる。
ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシ・ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアクリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリールクロレンデート。架橋剤の添加量としては、重合性単量体に対して0.001質量%以上15.000質量%以下であることが好ましい。
上記重合性単量体の重合の際に用いられる媒体が水系媒体の場合には、重合性単量体組成物の粒子の水系媒体中での分散安定剤として以下のものを使用することができる。
無機分散安定剤として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。
また、有機系分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンが挙げられる。
さらに、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。このような界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。
ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム。
本発明において、難水溶性無機分散安定剤を用い、水系媒体を調製する場合に、これらの分散安定剤の添加量は重合性単量体100.0質量部に対して、0.2質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。また、重合性単量体組成物100質量部に対して300質量部以上3,000質量部以下の水を用いて水系媒体を調製することが好ましい。
本発明において、上記のような難水溶性無機分散剤が分散された水系媒体を調製する場合には、市販の分散安定剤をそのまま用いてもよい。また、細かい均一な粒度を有する分散安定剤を得るためには、水のような液媒体中で、高速撹拌下、難水溶性無機分散剤を生成させてもよい。具体的には、リン酸三カルシウムを分散安定剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸三カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散安定剤を得ることができる。
本発明において、トナー粒子に用いられる結着樹脂は、特段限定されず、従来公知のものを用いることができる。トナー粒子に用いられる結着樹脂はビニル系樹脂、ポリエステル樹脂などが好ましく例示できる。ビニル系樹脂は前述したビニル系重合性単量体の重合により生成するとよい。例えば、ビニル系樹脂は、環境安定性に優れている。また、ビニル系樹脂は、上記式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物を重合させて得られる有機ケイ素重合体をトナー粒子の表面への析出性、表面均一性、長期保存安定性に優れているため好ましい。
一方、ポリエステル樹脂としては、下記に挙げるカルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させたものを用いることができる。
カルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及び、トリメリット酸が挙げられる。
アルコール成分としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、及び、ペンタエリスリトールが挙げられる。
また、ポリエステル樹脂は、ウレア基を含有したポリエステル樹脂であってもよい。
一方、上記ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂及びその他の結着樹脂として、以下の樹脂又は重合体が例示できる。
ポリスチレン、ポリビニルトルエンのようなスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリ酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体のようなスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂。これら結着樹脂は単独或いは混合して使用できる。
本発明のトナーにおいては、高温時におけるトナーの粘度変化の改良を目的として樹脂が重合性官能基を有していてもよい。重合性官能基としては、ビニル基、イソシアナート基、エポキシ基、アミノ基、カルボン酸基、ヒドロキシ基が挙げられる。
本発明において、トナー粒子は、極性樹脂を含有してもよい。前記極性樹脂としては、飽和又は不飽和のポリエステル樹脂が好ましく例示できる。
当該ポリエステル樹脂としては、下記に挙げるカルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させたものを用いることができる。
カルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及び、トリメリット酸が挙げられる。
アルコール成分としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、及び、ペンタエリスリトールが挙げられる。
また、前記ポリエステル樹脂は、ウレア基を含有したポリエステル樹脂であってもよい。
本発明において、極性樹脂の重量平均分子量は、4,000以上100,000未満であることが好ましい。また、極性樹脂の含有量は、トナー粒子に含有される結着樹脂成分を基準として、3.0質量%以上70.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3.0質量%以上50.0質量%以下であり、さらに好ましくは5.0質量%以上30.0質量%以下である。
本発明において、ポリエステル樹脂の他に結晶性ポリエステルを含有しても良い。結晶性ポリエステルとは融点を有するポリエステルのことである。
本発明に用いられる結晶性ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分としては、以下の炭素数2以上16以下の脂肪族ジオール及び芳香族ジオールが挙げられる。以下に示すアルコール成分は2種以上組み合わせて使用してもよい。
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ドデカンジオール、1,12−ウンデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ペンタデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール等。
ビスフェノールA又はビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール。
ここで、融点を有するポリエステル樹脂を得るためには、α,ω−直鎖アルカンジオールが好ましく、1,4−ブタンジオール又は1,6−ヘキサンジオールがより好ましく、1,4−ブタンジオールがさらに好ましい。
炭素数2以上16以下の脂肪族ジオール又は芳香族ジオールの含有量は、アルコール成分中に50モル%以上である。急激な粘度の変化により低温定着性をさらに向上させるためには、好ましくは80モル%以上100モル%であり、より好ましくは90モル%以上100モル%以下である。
また、本発明においては、アルコール成分として上記炭素数2以上16以下の脂肪族アルコール又は芳香族ジオール以外に多価アルコールを併用してもよい。多価アルコール成分としては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコールが挙げられる。これらのアルコール成分は2種以上組み合わせて使用してもよい。
本発明に用いられる結晶性ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分としては、以下の芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。以下に示すカルボン酸成分は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
炭素数2以上16以下の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれらの酸の無水物、並びにそれらのアルキルエステル(炭素数1以上3以下)が挙げられる。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及び、イソプロピル基が挙げられる。テレフタル酸又はテレフタル酸のアルキルエステル(炭素数1以上3以下)はトナーの帯電安定性が良化するため好ましい。
炭素数2以上16以下の脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸が挙げられる。また、それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1以上3以下)エステル等が挙げられる。
炭素数2以上16以下の脂肪族ジカルボン酸は、炭素数2以上16以下の不飽和脂肪族ジカルボン酸であってもよく、フマル酸、マレイン酸等を例示することができる。
上記炭素数2以上16以下の芳香族ジカルボン酸の含有量は、カルボン酸成分中に50モル%以上であり、好ましくは50モル%以上70モル%以下であり、より好ましくは50モル%以上60モル%以下である。
上記炭素数2以上16以下の脂肪族ジカルボン酸の含有量は、カルボン酸成分中に50モル%以上であり、好ましくは70モル%以上100モル%以下であり、より好ましくは90モル%以上100モル%以下である。
なお、上記炭素数2以上16以下の脂肪族ジカルボン酸が、炭素数2以上16以下の不飽和脂肪族ジカルボン酸である場合、カルボン酸成分中に、炭素数2以上16以下の不飽和脂肪族ジカルボン酸の含有量は、50モル%未満であることが好ましく、より好ましくは0.01モル%以上25.0モル%以下であり、さらに好ましくは0.10モル%以上10.0モル%以下である。炭素数2以上16以下の不飽和脂肪族ジカルボン酸の含有量が、カルボン酸成分中に50モル%未満であることで、低温定着性が良化する。
また、本発明においては、カルボン酸成分として、炭素数2以上16以下の芳香族ジカルボン酸又は炭素数2以上16以下の脂肪族ジカルボン酸以外に、3価以上のカルボン酸成分を使用してもよい。
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、トリメリット酸、1,2,4−トリカルボン酸トリ−n−エチル、1,2,4−トリカルボン酸トリ−n−ブチル、1,2,4−トリカルボン酸トリ−n−ヘキシル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリイソブチル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリ−n−オクチル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリ−2−エチルヘキシル及びトリカルボン酸の低級アルキルエステルが挙げられる。3価以上の多価カルボン酸化合物のなかでは、安価で、反応制御が容易なため、トリメリット酸及びトリメリット酸無水物が好ましい。
また、一価のカルボン酸、一価のアルコールを必要に応じて用いてもよい。具体的には、安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸のような一価のカルボン酸;n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、ラウリルアルコール、2−エチルヘキサノール、デカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ドデシルアルコールのような一価のアルコール。これらのカルボン酸成分は、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明に用いられるポリエステル樹脂は、全カルボン酸成分と全アルコール成分の合計(100モル%)に対して全脂肪族ジカルボン酸成分と全脂肪族ジオール成分の合計が25モル%以上であることが好ましい。低温定着性が良化するため50モル%以上がより好ましい。
上記ポリエステル樹脂は、通常のポリエステル合成法で製造することができる。具体的には、多価カルボン酸と多価アルコールとを、エステル化反応、又は、エステル交換反応させた後、低沸点の多価アルコールを減圧下又は窒素ガスを導入して常法に従って縮重合反応を行い、ポリエステル樹脂を得る。エステル化又はエステル交換反応のときには必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウムのような通常のエステル化触媒又はエステル交換触媒を用いることができる。また、重合に関しては、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムのような公知の重合触媒を使用することができる。また、重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、必要に応じて任意に選択すればよい。
本発明において、トナー粒子を構成する材料の1つとして、離型剤を含有することが好ましい。前記トナー粒子に使用可能な離型剤としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムのような石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスのような天然ワックス及びその誘導体、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸のような脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス、シリコ−ン樹脂が挙げられる。
なお、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。
なお、離型剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100.0質量部に対して5.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
本発明において、トナー粒子は着色剤を含有してもよい。前記着色剤としては、特に限定されず、以下に示す公知のものを使用することができる。
黄色顔料としては、黄色酸化鉄、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントイエロー12、1314、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180。
橙色顔料としては以下のものが挙げられる。
パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK。
赤色顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254。
青色顔料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66。
紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。
緑色顔料としては、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGが挙げられる。白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛が挙げられる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、非磁性フェライト、マグネタイト、上記黄色系着色剤、赤色系着色剤及び青色系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。これらの着色剤は、単独又は混合して、さらには固溶体の状態で用いることができる。
また、トナーの製造方法によっては、着色剤の持つ重合阻害性や分散媒体移行性に注意を払う必要がある。必要により、重合阻害のない物質による着色剤の表面処理を施して表面改質を行ってもよい。特に、染料やカーボンブラックは、重合阻害性を有しているものが多いので使用の際に注意を要する。
また、染料を処理する好ましい方法として、あらかじめ染料の存在下に重合性単量体を重合させ、得られた着色重合体を重合性単量体組成物に添加する方法が挙げられる。一方、カーボンブラックについては、上記染料と同様の処理の他、カーボンブラックの表面官能基と反応する物質(例えば、オルガノシロキサン等)で処理を行ってもよい。
なお、着色剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100.0質量部に対して3.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましい。
本発明において、トナー粒子は荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤としては、公知のものが使用できる。特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
荷電制御剤として、トナー粒子を負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。
有機金属化合物及びキレート化合物として、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、又はエステル類、ビスフェノールのようなフェノール誘導体類なども含まれる。さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーンが挙げられる。
一方、トナー粒子を正荷電性に制御する荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。
ニグロシン及び脂肪酸金属塩のようなによるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩のようなオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;樹脂系荷電制御剤。
これら荷電制御剤は単独で或いは2種類以上組み合わせて含有することができる。これら荷電制御剤の中でも、含金属サリチル酸系化合物が好ましく、特にその金属がアルミニウムもしくはジルコニウムが好ましい。最も好ましい荷電制御剤としては、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物である。
また、樹脂系荷電制御剤としては、スルホン酸系官能基を有する重合体が好ましい。スルホン酸系官能基を有する重合体とは、スルホ基(スルホン酸基)、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体である。
スルホ基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体としては、側鎖にスルホ基を有する高分子型化合物等が挙げられる。特にスルホ基含有(メタ)アクリルアミド系モノマーを共重合比で2質量%以上、好ましくは5質量%以上含有し、かつガラス転移温度(Tg)が40℃以上90℃以下のスチレン及び/又はスチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体である高分子型化合物が好ましい。高湿下での帯電安定性が良化する。
上記のスルホ基含有(メタ)アクリルアミド系モノマーとしては、下記式(X)で表せるものが好ましく、具体的には、2−アクリルアミド−2−メチルプロパン酸や2−メタクリルアミド−2−メチルプロパン酸等が挙げられる。
(式(X)中、R
1は、水素原子、又は、メチル基を表し、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、アルケニル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、nは、1以上10以下の整数を表す。)
上記スルホ基を有する重合体は、トナー粒子において、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下含有させることにより、トナー粒子の帯電状態を一層良好なものとすることができる。
これらの荷電制御剤の添加量としては、結着樹脂又は重合性単量体100.00質量部に対して、0.01質量部以上10.00質量部以下であることが好ましい。
本発明のトナーは、各種特性付与を目的として、各種有機微粒子又は無機微粒子でトナー粒子の表面を処理し、トナーとすることができる。前記有機微粒子又は無機微粒子は、トナー粒子に添加した時の耐久性から、トナー粒子の重量平均粒径の1/10以下の粒径であることが好ましい。
有機微粒子又は無機微粒子としては、以下のようなものが用いられる。
(1)流動性付与剤:シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック及びフッ化カーボン。
(2)研磨剤:チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化クロムのような金属酸化物、窒化ケイ素のような窒化物、炭化ケイ素のような炭化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムのような金属塩。
(3)滑剤:フッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素系樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムのような脂肪酸金属塩。
(4)荷電制御性粒子:酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナのような金属酸化物、カーボンブラック。
有機微粒子又は無機微粒子は、トナーの流動性の改良及びトナーの帯電均一化のためにトナー粒子の表面を処理する。有機微粒子又は無機微粒子を疎水化処理することによって、トナーの帯電性の調整、高湿環境下での帯電特性の向上を達成することができるので、疎水化処理された有機微粒子又は無機微粒子を用いることが好ましい。有機微粒子又は無機微粒子の疎水化処理の処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独であるいは併用して用いられてもよい。
その中でも、シリコーンオイルにより処理された無機微粒子が好ましい。より好ましくは、無機微粒子をカップリング剤で疎水化処理すると同時にあるいは処理した後あるいは処理する前に、シリコーンオイルより処理したものである。シリコーンオイルで処理された疎水化処理無機微粒子が高湿環境下でもトナーの帯電量を高く維持し、選択現像性を低減する上で好ましい。
これら有機微粒子又は無機微粒子の添加量は、トナー粒子100.00質量部に対し、0.01質量部以上10.00質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.02質量部以上5.00質量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.03質量部以上1.00質量部以下である。添加量の適正化により、有機微粒子又は無機微粒子のトナー粒子への埋め込みや遊離による部材汚染が良化する。これら有機微粒子又は無機微粒子は、単独で用いてもよいし、複数併用してもよい。
本発明において、有機微粒子又は無機微粒子のBET比表面積は、10m2/g以上450m2/g以下であることが好ましい。
有機微粒子又は無機微粒子の比表面積BETは、BET法(好ましくはBET多点法)に従って、動的定圧法による低温ガス吸着法により求めることができる。例えば、比表面積測定装置(商品名:ジェミニ2375 Ver.5.0、(株)島津製作所製)を用いて、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて測定することにより、BET比表面積(m2/g)を算出することができる。
有機微粒子又は無機微粒子はトナー粒子の表面に強固に固着や付着させてもよい。トナー粒子の表面に有機微粒子又は無機微粒子を強固に固着又は付着させるための外添混合機としては、三井ヘンシェルミキサ、メカノフュージョン、サイクロミックス、タービュライザ、フレキソミックス、ハイブリタイゼーション、メカノハイブリット、ノビルタが挙げられる。また、回転周速を早めたり、処理時間を長めにしたりすることで有機微粒子又は無機微粒子を強く固着や付着することができる。
以下、トナーの物性について説明する。
本発明のトナーにおいて、定荷重押し出し方式の細管式レオメータにより測定された80℃における粘度は、1,000Pa・s以上40,000Pa・s以下であることが好ましい。この80℃粘度が1,000Pa・s以上40,000Pa・s以下であることで、トナーは低温定着性に優れる。80℃粘度は、より好ましくは2,000Pa・s以上20,000Pa・s以下である。なお、本発明において、上記80℃粘度は、低分子量樹脂の添加量や結着樹脂製造時の単量体種、開始剤量、反応温度及び反応時間により調整することができる。
トナーの定荷重押し出し方式の細管式レオメータにより測定された80℃における粘度の値は以下の方法により求めることができる。
装置としては、フローテスターCFT−500D((株)島津製作所製)を用い、下記の条件で測定を行う。
・サンプル:約1.0gのトナーを秤量し、これを100kg/cm2の荷重で1分間加圧成型器を用いて成型してサンプルとする。
・ダイ穴径:1.0mm
・ダイ長さ:1.0mm
・シリンダ圧力:9.807×105(Pa)
・測定モード:昇温法
・昇温速度:4.0℃/分
上記の方法により、30℃以上200℃以下におけるトナーの粘度(Pa・s)を測定し、80℃の粘度(Pa・s)を求める。当該値をトナーの定荷重押し出し方式の細管式レオメータにより測定された80℃粘度とする。
本発明のトナーの重量平均粒径(D4)は、4.0μm以上9.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは5.0μm以上8.0μm以下であり、さらに好ましくは5.0μm以上7.0μm以下である。
本発明のトナーのガラス転移温度(Tg)は35℃以上100℃以下であることが好ましく、より好ましくは40℃以上80℃以下であり、さらに好ましくは45℃以上70℃以下である。ガラス転移温度が上記範囲であることによって、耐ブロッキング性、耐低温オフッセット性、オーバーヘッドプロジェクター用フィルムの透過画像の透明性をさらに向上させることができる。
本発明において、トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された重量平均分子量(Mw)(以下、トナーの重量平均分子量ともいう)は、5,000以上50,000以下であることが好ましい。トナーの重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であることによって、耐ブロッキング性及び現像耐久性と、低温定着性及び画像の高グロスを成立させることができる。なお、本発明において、トナーの重量平均分子量(Mw)は、低分子樹脂の添加量及び重量平均分子量(Mw)やトナー粒子製造時の反応温度、反応時間、重合開始剤量、連鎖移動剤量及び架橋剤量により調整することができる。
本発明において、トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された分子量分布において、重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比[Mw/Mn]は、5.0以上100.0以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以上30.0以下である。[Mw/Mn]が上記範囲内であることによって、定着可能温度領域を広くすることができる。
本発明のトナーのテトラヒドロフラン不溶分の含有量は、トナーの着色剤及び無機微粒子以外のトナー成分に対して50.0質量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.0質量%以上45.0質量%未満であり、さらに好ましくは5.0質量%以上40.0質量%未満である。THF不溶分の含有量を50.0質量%未満とすることによって、低温定着性を向上させることができる。
(トナー粒子又はトナーの物性の測定方法)
(トナー粒子またはトナーのテトラヒドロフラン(THF)不溶分の調整法)
トナー粒子またはトナーのテトラヒドロフラン(THF)不溶分は、以下のように調整した。
測定対象のトナー粒子またはトナー1.0gを秤量し、円筒濾紙(東洋濾紙製No.86R)に入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF200mLを用いて20時間抽出し、円筒濾紙中の濾物を40℃で数時間真空乾燥を行って得られたものをNMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分とした。不溶分が少ない場合には、複数のソックスレー抽出装置で測定対象のトナー粒子またはトナーのテトラヒドロフラン(THF)不溶分の調製をそれぞれ行い、得られた不溶分を合わせたものをトナー粒子またはトナーのテトラヒドロフラン(THF)不溶分とした。
(トナーのTHF不溶分の含有量)
トナーのTHF不溶分の含有量とは、THF溶媒に対して不溶性となった超高分子ポリマー成分(実質的に架橋ポリマー)の質量割合を意味する。本発明において、測定対象のトナーのTHF不溶分の含有量とは、以下のように測定された値である。
測定対象のトナー1.0gを秤量し(W1g)、円筒濾紙(例えば東洋濾紙製No.86R)に入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF200mLを用いて20時間抽出し、溶媒によって抽出された可溶成分を濃縮した後、40℃で数時間真空乾燥を行い、THF可溶樹脂成分量を秤量する(W2g)。トナー中の着色剤のような樹脂成分以外の成分の質量を(W3g)とする。THF不溶分の含有量は、下記式から求められる。
THF不溶分の含有量(質量%)={(W1−(W3+W2))/(W1−W3)}×100
トナーのTHF不溶分の含有量は、結着樹脂及び有機ケイ素重合体の重合度、架橋度、有機ケイ素重合体の量によって調整することが可能である。
(トナーAの調製方法(水洗法))
本発明においては、下記方法によって、トナーAを得る。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学(株)製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに上記ショ糖濃厚液を31.0gと、コンタミノンN(商品名)(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20分で振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて3500rpm、30分の条件で分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥させる。乾燥品をスパチュラで解砕してトナーAを得る。
(トナーAhの調製方法)
また、本発明において、トナーAをヘキサンで洗浄して得られるトナーAhは、以下の方法によって得る。ヘキサン100mLにトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、5分で振とうする。振とう後、溶液を減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥させる。乾燥品をスパチュラで解砕してトナーAhを得る。
(式(RaT3)及び式(Me2D2)で表される部分構造の確認方法)
トナー粒子またはトナーに含有される有機ケイ素重合体における、式(RaT3)及び式(Me2D2)で表される部分構造の確認には以下の方法を用いる。
式(RaT3)のRaで表される炭化水素基の有無は、13C−NMRにより確認した。また、式(RaT3)及び式(Me2D2)の詳細な構造は1H−NMR、13C−NMR及び29Si−NMRにより確認した。使用した装置及び測定条件を以下に示す。
(測定条件)
装置:BRUKER製 AVANCE III 500
プローブ:4mm MAS BB/1H
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(NMR測定用のトナーA及びトナーAhのTHF不溶分)150mgを直径4mmのサンプルチューブに入れた。
当該方法にて、式(RaT3)のRaで表される炭化水素基の有無を確認した。シグナルが確認できたら、式(RaT3)の構造は“あり”とした。
(13C−NMR(固体)の測定条件)
測定核周波数:125.77MHz
基準物質:Glycine(外部標準:176.03ppm)
観測幅:37.88kHz
測定法:CP/MAS
コンタクト時間:1.75ms
繰り返し時間:4s
積算回数:2048回
LB値:50Hz
(29Si−NMR(固体)の測定方法)
(測定条件)
装置:JEOL RESONANCE製 JNM−ECX500II
プローブ:3.2mmφ
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(NMR測定用のトナーA及びトナーAhのTHF不溶分)150mgを直径4mmのサンプルチューブに入れる。
測定核周波数:97.38MHz
基準物質:DSS(外部標準:1.534ppm)
測定法:DD/MAS
29Si 90°
フリップ角 45°
遅延時間 180sec
パルスシーケンス Single pulse dec solid
積算回数:20480回
(RaT3構造、Me2D2構造、X1構造、X2構造、X3構造、X4構造の確認及び定量方法)
RaT3、Me2D2、X1、X2、X3及びX4の部分構造は、1H−NMR、13C−NMR及び29Si−NMRにより確認できる。
トナーの29Si−NMR測定後に下記の構造にピーク分離して、各ピークの面積比から各成分のモル%を算出する。下記式の構造は点線枠内の構造である。カーブフィティングにて、下記一般式(X4)で示されるケイ素に結合するO1/2の数が4.0であるX4構造、下記一般式(X3)で示されるケイ素に結合するO1/2の数が3.0であるX3構造、下記式(X2)で示されるケイ素に結合するO1/2の数が2.0であるX2構造、下記式(X1)で示されるケイ素に結合するO1/2の数が1.0であるX1構造、式(RaT3)で表わされる構造、式(Me2D2)で表わされる構造にピーク分離する。式(RaT3)で表わされる構造はX3構造の一部分であり、式(Me2D2)で表わされる構造はX2構造の一部分である。尚、いずれの構造も、下式で表わされる点線の枠内の構造のことである。
(式(X3)中のR
fはケイ素に結合している有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基またはアルコキシ基)
(式(X2)中のR
g、R
hはケイ素に結合している有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基またはアルコキシ基)
(式(X1)中のR
i、R
j、R
kはケイ素に結合している有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基またはアルコキシ基)
カーブフィティングはJEOL RESONANCE製 JNM−ECX500II用ソフトのJOEL Delta version5.0.4(商品名)を用いる。それぞれのピークをピークアップした。波形分離はガウス型を用いてピーク分離した。その一例を図2に示す。合成ピーク(b)と測定結果(d)の差分である合成ピーク差分(a)のピークが最も小さくなるようにピーク分割を行う。
X1構造の面積、X2構造の面積、X3構造の面積、X4構造の面積を求めて以下の式により[SX1]、[SX2]、[SX3]、[SX4]を求める。
本発明では化学シフト値でシランモノマーを特定して、トナーの29Si−NMRの測定において全ピーク面積からモノマー成分を取り除いたX1構造の面積とX2構造の面積とX3構造の面積とX4構造の面積の合計をトナーの有機ケイ素重合体の全ピーク面積SXとした。
[SX1]+[SX2]+[SX3]+[SX4]=1.00
[SX1]={X1構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
[SX2]={X2構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
[SX3]={X3構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
[SX4]={X4構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
[SRaT3]={RaT3構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
[SMe2D2]={Me2D2構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
X1構造、X2構造、X3構造及びX4構造におけるケイ素の化学シフト値を以下に示す。
X1構造の一例(Ri=Rj=−OC2H5、Rk=−CH3):−47ppm
X2構造の一例(Rg=−OC2H5、Rh=−CH3):−56ppm
X3構造(RaT3構造)の一例(Ra=−CH3):−65ppm
また、X4構造がある場合のケイ素の化学シフト値を以下に示す。
X4構造:−108ppm
Me2D2構造の一例:−22ppm
本発明においては、トナーAをNMR試料とした場合、上記[SX]、[SX1]、[SX2]、[SX3]、[SX4]、[SRaT3]、[SMe2D2]を以下のように変更する。
[SX]を[SAX]、[SX1]を[SAX1]、[SX2]を[SAX2]、[SX3]を[SAX3]、[SX4]を[SAX4]、[SRaT3]を[SARaT3]、[SMe2D2]を[SAMe2D2]に変更した。
本発明においては、トナーAをヘキサンにより洗浄して得られたトナーAhをNMR試料とした場合、上記[SX]、[SX1]、[SX2]、[SX3]、[SX4]、[SRaT3]、[SMe2D2]を以下のように変更した。
[SX]を[SAhX]、[SX1]を[SAhX1]、[SX2]を[SAhX2]、[SX3]を[SAhX3]、[SX4]を[SAhX4]、[SRaT3]を[SAhRaT3]、[SMe2D2]を[SAhMe2D2]に変更した。
本発明においては、トナーAのTHF不溶分をNMR試料とした場合、上記[SX]、[SX1]、[SX2]、[SX3]、[SX4]、[SRaT3]、[SMe2D2]を以下のように変更した。
[SX]を[SAtX]、[SX1]を[SAtX1]、[SX2]を[SAtX2]、[SX3]を[SAtX3]、[SX4]を[SAtX4]、[SRaT3]を[SAtRaT3]、[SMe2D2]を[SAtMe2D2]に変更した。
本発明においては、トナーAをヘキサンにより洗浄して得られたトナーAhのTHF不溶分をNMR試料とした場合、上記[SX]、[SX1]、[SX2]、[SX3]、[SX4]、[SRaT3]、[SMe2D2]を以下のように変更した。
[SX]を[SAhtX]、[SX1]を[SAhtX1]、[SX2]を[SAhtX2]、[SX3]を[SAhtX3]、[SX4]を[SAhtX4]、[SRaT3]を[SAhtRaT3]、[SMe2D2]を[SAhtMe2D2]に変更した。
(蛍光X線測定(波長分散型蛍光X線分析装置)によるSiO2量(質量%)及びケイ素強度Gと前記トナーAのSi強度GAのG/GAの測定法)
蛍光X線の測定は、JIS K 0119−1969に準ずるが、具体的には以下の通りである。
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。尚、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mm、測定時間10秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリングの中にトナー約4gを入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE−32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで、60秒間加圧し、厚さ約2mm、直径約39mmに成型したペレットを用いる。
上記条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置をもとに元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:cps)を測定する。
粒子中のSiO2量(質量%)は、以下のようにして求めた。
ポリスチレン樹脂粒子(Mw20000、Tg=80℃)100質量部に対して、シリカ(SiO2)微粉末を0.10質量部となるように添加し、コーヒーミルを用いて充分混合する。同様にして、シリカ微粉末を0.20質量部、0.50質量部となるようにポリスチレン樹脂粒子(Mw20000、Tg=80℃)とそれぞれ混合し、これらを検量線用の試料とする。
それぞれの試料について、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにして検量線用の試料のペレットを作製し、PETを分光結晶に用いた際に回折角(2θ)=109.08°に観測されるSi−Kα線の計数率(単位:cps)を測定する。この際、X線発生装置の加速電圧、電流値はそれぞれ、24kV、100mAとする。得られたX線の計数率を縦軸に、各検量線用試料中のSiO2添加量を横軸として、一次関数の検量線を得る。
次に、分析対象のトナーを錠剤成型圧縮機で上記のようにしてペレット作製する。次にSi−Kα線の計数率を測定する。そして、上記の検量線から分析対象のトナー中のSiO2含有量(質量%)を求める。
また、本発明において、ケイ素の計数率をケイ素強度という場合もある。
本発明において、前記トナーの蛍光X線測定によるケイ素強度をG(単位:cps)、前記トナーAのケイ素強度をGAとして、G/GAを求めた。
(トナーAh中のSiO2量に対するTHFに可溶なSiO2量の割合(%))
トナーAh中のケイ素化合物に対するTHFに可溶なSiO2量の割合(%)とは、以下のように測定された値である。
トナーAh1.0gを秤量しAhW1(g)、円筒濾紙(例えば東洋濾紙製No.86R)に入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF200mLを用いて20時間抽出し、溶媒によって抽出された可溶成分を濃縮した濃縮物と円筒濾紙中のTHF不溶分を、40℃で数時間真空乾燥を行い、THF可溶成分量AhW2(g)とTHF不溶成分量AhW3(g)を秤量する。蛍光X線測定により、前記検量線を用いて、トナーAh中のSiO2含有量をAhSi1(質量%)、トナーAh中のTHFに可溶な成分中のSiO2含有量(質量%)をAhSi2(質量%)、THFに不溶な成分中のSiO2含有量をAhSi3(質量%)とする。
トナーAh中のSiO2量に対するTHFに可溶なSiO2量の割合(%)は(AhW2)×(AhSi2)/(AhW1)×(AhSi1)×100である。
(透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナー粒子の断面観察によって測定される、トナー粒子の表層の平均厚みDav.及び表層の厚みが2.5nm以下の割合の測定)
本発明において、トナー粒子の断面観察は以下の方法により行う。
トナー粒子の断面を観察する具体的な方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナー粒子を十分分散させた後、40℃の雰囲気下で2日間硬化させる。得られた硬化物からダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い薄片状のサンプルを切り出す。このサンプルを透過型電子顕微鏡(商品名:電子顕微鏡Tecnai TF20XT、FEI社製)(TEM)で1万〜10万倍の倍率に拡大し、トナー粒子の断面を観察する。
本発明においては、用いる樹脂と有機ケイ素化合物の中の原子の原子量の違いを利用し、原子量が大きいとコントラストが明るくなることを利用して確認を行っている。さらに、材料間のコントラストを付けるためには四酸化ルテニウム染色法及び四酸化オスミウム染色法を用いる。トナー粒子中の各種元素の存在状態は、透過型電子顕微鏡を用いて各種元素のマッピングによって確認できる。
当該測定に用いた粒子は、上記TEMの顕微鏡写真より得られたトナー粒子の断面から円相当径Dtemを求め、その値が後述の方法により求めたトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるものとした。
上述のように、透過型電子顕微鏡(商品名:電子顕微鏡Tecnai TF20XT、FEI社製)を用い、加速電圧200kVでトナー粒子断面の明視野像を取得する。次にEELS検出器(商品名:GIF Tridiem、Gatan社製)を用い、Three Window法によりSi−K端(99eV)のEFマッピング像を取得して表層に有機ケイ素重合体が存在することを確認する。
本発明の有機ケイ素重合体は、表層に均一な膜を形成し、樹脂の表層に対して有機ケイ素重合体が平面で接触することが、耐久時の有機ケイ素重合体のはがれや埋め込みが抑制されるため好ましい。
また、本発明の有機ケイ素重合体の形状は、層状、半径50nm以上の半球状の凸、網目状であることが好ましい。
次いで、円相当径Dtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子1個について、トナー粒子断面の長軸Lと、長軸Lの中心を通りかつ垂直な軸L90の交点を中心にして、トナー粒子断面を均等に16分割する(図1参照)。次に、前記中心からトナー粒子の表層へ向かう分割軸をそれぞれAn(n=1〜32)、分割軸の長さをRAn、有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表層の厚みをFRAnとする。
そして、前記分割軸上の32箇所の有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表層の平均厚みDav.を求める。さらに、32本存在する各分割軸上における有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合を求める。
本発明では、平均化するため、トナー粒子10個の測定を行い、トナー粒子1個あたりの平均値を計算した。
(透過型電子顕微鏡(TEM)写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem))
TEM写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)は以下の方法で求める。まず、1つのトナー粒子に対して、TEM写真より得られるトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)を下記式に従って求める。
(TEM写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem))=(RA1+RA2+RA3+RA4+RA5+RA6+RA7+RA8+RA9+RA10+RA11+RA12+RA13+RA14+RA15+RA16+RA17+RA18+RA19+RA20+RA21+RA22+RA23+RA24+RA25+RA26+RA27+RA28+RA29+RA30+RA31+RA32)/16
トナー粒子10個の円相当径を求め、粒子1個あたりの平均値を計算してトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)とする。
〔トナー粒子の有機ケイ素重合体を含有する表層の平均厚みDav.〕
トナー粒子の有機ケイ素重合体を含有する表層の平均厚みDav.は以下の方法で求めた。
まず、1つのトナー粒子の有機ケイ素重合体を含有する表層の平均厚みD(n)を以下の方法で求めた。
D(n)=(軸上の有機ケイ素重合体を含有する表層の厚みの32箇所の合計)/32
この計算をトナー粒子10個に対して行った。得られたトナー粒子の表層の厚みD(n)(nは1から10の整数)から、トナー粒子1つあたりの平均値を下記式に従って計算し、トナー粒子の有機ケイ素重合体を含有する表層の平均厚みDav.を求めた。
Dav.={D(1)+D(2)+D(3)+D(4)+D(5)+D(6)+D(7)+D(8)+D(9)+D(10)}/10
〔有機ケイ素重合体を含有する表層の厚みFRAnが2.5nm以下である有機ケイ素重合体を含有する表層の割合〕
有機ケイ素重合体を含有する表層の厚みFRAnが2.5nm以下である有機ケイ素重合体を含有する表層の割合は、以下の方法で求めた。
まず、1つのトナー粒子に対して、以下の式に基づいて有機ケイ素重合体を含有する表層の厚みFRAnが2.5nm以下である有機ケイ素重合体を含有する表層の割合を求めた。
(有機ケイ素重合体を含有する表層の厚みFRAnが2.5nm以下である有機ケイ素重合体を含有する表層の割合)=((有機ケイ素重合体を含有する表層の厚みFRAnが2.5nm以下の数)/32)×100
この計算をトナー粒子10個に対して行った。得られた有機ケイ素重合体を含有する表層の厚みFRAnが2.5nm以下である有機ケイ素重合体を含有する表層の割合から平均値を求め、トナー粒子の有機ケイ素重合体を含有する表層の厚みFRAnが2.5nm以下である有機ケイ素重合体を含有する表層の割合とした。
(トナー粒子の表層に存在するケイ素元素の濃度(原子%))
トナー粒子の表層に存在するケイ素原子の濃度[dSi](原子%)、炭素原子の濃度[dO](原子%)、及び、酸素原子の濃度[dO](原子%)は、X線光電子分光分析(ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)を用いた表面組成分析を行い算出した。本発明では、ESCAの装置および測定条件は、下記の通りである。
使用装置:ULVAC−PHI社製 Quantum2000
X線光電子分光装置測定条件:X線源 Al Kα
X線:100μm 25W 15kV
ラスター:300μm×200μm
PassEnergy:58.70eV StepSize:0.125eV
中和電子銃:20μA、1V Arイオン銃:7mA、10V
Sweep数:Si 15回、C 10回、O 5回
本発明では、測定された各元素のピーク強度から、ULVAC−PHI社提供の相対感度因子を用いて、トナー粒子の表層に存在する、ケイ素原子の濃度[dSi]、炭素原子の濃度[dC]、及び、酸素原子の濃度[dO](いずれも、原子%(atomic%と同じ。))を算出した。
(トナー(粒子)及び各種樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及びメインピーク分子量(Mp)の測定)
トナー(粒子)及び各種樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及びメインピーク分子量(Mp)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件により測定する。
(測定条件)
・カラム(昭和電工(株)製):Shodex GPC KF−801、KF−802、KF−803、KF−804、KF−805、KF−806、KF−807(直径8.0mm、長さ30cm)の7連
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・温度:40℃
・流速:0.6mL/分
・検出器:RI
・試料濃度及び量:0.1質量%の試料を10μL
(試料調製)
測定対象(トナー(粒子)、各種樹脂)
0.04gをテトラヒドロフラン20mLに分散、溶解後、24時間静置し、0.2μmフィルター(商品名:マイショリディスクH−25−2、東ソー(株)製)で濾過し、その濾液を試料として用いる。
検量線は、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料として、東ソー(株)製TSKスタンダードポリスチレンF−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500を用いる、このとき、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いる。
GPCの分子量分布の作成において、高分子量側はベースラインからクロマトグラムが立ち上がり開始点から測定を始め、低分子量側は分子量約400まで測定する。
(トナー(粒子)、各種樹脂のガラス転移温度(Tg)及び熱量積分値の測定)
トナー(粒子)及び各種樹脂のガラス転移温度(Tg)及び熱量積分値は、示差走査熱量計(DSC)M−DSC(商品名:Q2000、TA−インストルメンツ社製)を用いて、下記手順にて測定する。測定する試料(トナー(粒子)、各種樹脂)3mgを精秤する。これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲20℃以上200℃以下の間で、昇温速度1℃/分、常温常湿下で測定を行う。このときのモジュレーション振幅±0.5℃、周波数1/分で測定する。得られるリバーシングヒートフロー曲線からガラス転移温度(Tg:℃)を計算する。Tgは、吸熱前後のベースラインと吸熱による曲線の接線との交点の中心値をTg(℃)として求めたものである。DSCによって測定される昇温時の吸熱チャートにおいて、吸熱メインピークのピーク面積で表されるトナー(粒子)1g当たりの熱量積分値(J/g)を測定する。トナーのDSC測定によって得られたリバーシングフロー曲線の一例を図3に示す。
熱量積分値(J/g)は、上記の測定から得られたリバーシングフロー曲線を用いて求める。計算には解析ソフト Universal Analysis 2000 forWindows(商品名) 2000/XP Version4.3A(TAインスツルメンツ社製)を用い、Integral Peak Linearの機能を用いて、35℃と135℃での測定点を結ぶ直線と吸熱曲線とで囲まれた領域から熱量積分値(J/g)を求める。
(トナー(粒子)の重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)の測定)
トナー(粒子)の重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置(商品名:コールター・カウンター Multisizer 3、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト(商品名:ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51、ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、ベックマン・コールター社製のISOTON II(商品名)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は(標準粒子10.0μm、ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON II(商品名)に設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れ、この中に分散剤としてコンタミノンN(商品名)(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器(商品名:Ultrasonic Dispersion System Tetora150、日科機バイオス(株)製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンN(商品名)を約2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー(粒子)約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー(粒子)を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
(トナー(粒子)の平均円形度の測定方法)
トナー(粒子)の平均円形度の測定には、フロー式粒子像分析装置である「FPIA−3000型」(シスメックス(株)製)を用い、校正作業時の測定・解析条件で測定する。
イオン交換水20mLに、分散剤として界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩を適量加えた後、測定試料0.02gを加え、発振周波数50kHz、電気的出力150ワットの卓上型の超音波洗浄器分散機(商品名:VS−150、(株)ヴェルヴォクリーア製)を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス(株)製)を使用する。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー(粒子)を計測して、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.98μm以上19.92μm以下に限定し、トナー(粒子)の平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の5100A(商品名)をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
また、トナー(粒子)の円形度分布において、モード円形度が0.98以上1.00以下であると、トナー(粒子)の多くが真球に近い形状を有することを意味している。鏡像力やファンデルワールス力等に起因するトナー(粒子)の感光体への付着力の低下がより一層顕著になり、転写効率が高くなり好ましい。
ここで、モード円形度とは、0.40から1.00までの円形度を、0.40以上0.41未満、0.41以上0.42未満、…0.99以上1.00未満及び1.00のように0.01ごとに61分割し、測定した各粒子の円形度をそれぞれ各分割範囲に割り振り、円形度頻度分布において頻度値が最大となる分割範囲の円形度をいう。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。
本発明で用いる荷電制御樹脂の製造例について述べる。
(荷電制御樹脂(1)の製造例)
還流管、撹拌機、温度計、窒素導入管、滴下装置及び減圧装置を備えた反応容器に、溶媒としてメタノール250質量部、2−ブタノン150質量部及び2−プロパノール100質量部、単量体としてスチレン90質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル6.2質量部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸6.0質量部を添加して撹拌しながら常圧の還流下で加熱した。重合開始剤である2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.0質量部を2−ブタノン20質量部で希釈した溶液を30分かけて滴下して5時間撹拌を継続した。さらに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.0質量部を2−ブタノン20質量部で希釈した溶液を30分かけて滴下して、さらに常圧の還流下で5時間撹拌して重合を終了した。
次に、重合溶媒を減圧留去した後に得られた重合体を150メッシュのスクリーンを装着したカッターミルにて100μm以下に粗粉砕し、さらにジェットミルにより微粉砕した。その微粒子を250メッシュの篩により分級し、60μm以下の粒子を分別して得た。次に前記粒子を10%の濃度になるようにメチルエチルケトンを加え溶解し、得られた溶液をメチルエチルケトンの20倍量のメタノール中に徐々に投じ再沈殿した。得られた沈殿物を再沈殿に使用した量の2分の1のメタノールで洗浄し、濾過した粒子を35℃にて48時間真空乾燥を行った。
さらに前述の真空乾燥後の粒子を10%の濃度になるようにメチルエチルケトンを加え再溶解し、得られた溶液をメチルエチルケトンの20倍量のn−ヘキサン中に徐々に投じ再沈殿した。得られた沈殿物を再沈殿に使用した量の2分の1のn−ヘキサンで洗浄し、濾過した粒子を35℃にて48時間真空乾燥を行った。こうして得られた荷電制御樹脂はTgが約81℃であり、メインピーク分子量(Mp)が19,900、数平均分子量(Mn)が11,800、重量平均分子量(Mw)が20,700であり、酸価は17.6mgKOH/gであった。得られた樹脂を荷電制御樹脂(1)とする。
(ポリエステル樹脂(1)の製造例)
・テレフタル酸:12.2モル部
・ビスフェノールA−プロピレンオキシド2モル付加物:11.0モル部
・ジブチルチンオキサイド:0.07モル部
上記単量体をオートクレーブに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置をオートクレーブに装着した。窒素雰囲気下で、減圧しながら、常法に従って200℃でTgが65℃になるまで反応を行い、ポリエステル樹脂(1)を得た。重量平均分子量(Mw)は7,200、数平均分子量(Mn)は3,120、酸価は10.6mgKOH/g、水酸基価 17.7mgKOH/g、Tg 59.7℃であった。
(ポリエステル樹脂(2)の製造例)
(イソシアネート基含有プレポリマーの合成)
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:11.7モル部
・フタル酸:10.0モル部
・ジブチルチンオキサイド:0.067モル部
上記単量体をオートクレーブに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置をオートクレーブに装着した。窒素雰囲気下で、220℃にて撹拌して7時間反応し、さらに減圧下で5時間反応させた後、80℃まで冷却し、酢酸エチル中にてイソホロンジイソシアネート4.7モル部と2時間反応し、イソシアネート基含有ポリエステル樹脂を得た。イソシアネート基含有ポリエステル樹脂を25質量部とイソホロンジアミン1質量部を50℃で2時間反応させ、ウレア基を含有するポリエステルを主成分とするポリエステル樹脂(2)を得た。得られたポリエステル樹脂(2)の重量平均分子量(Mw)は23500、数平均分子量(Mn)は3100、ピーク分子量は7500、酸価 9.7mgKOH/g、水酸基価 16.2mgKOH/g、Tg 60.4℃であった。
(ポリエステル樹脂(3)の製造例)
・1,6−ヘキサンジオール:400.0質量部
・1,4−ブタンジカルボン酸:484.0質量部
上記単量体をオートクレーブに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置をオートクレーブに装着した。窒素雰囲気下で、190℃で5時間反応を行い、200℃で5時間反応を行い、160℃、9kpaで反応を2時間行い、ポリエステル樹脂(3)を得た。重量平均分子量(Mw)は15、700、数平均分子量(Mn)は3、100,酸価 0.4mgKOH/g,水酸基価 19.7mgKOH/g、融点 58.7℃であった。ポリエステル樹脂(3)は結晶性ポリエステルである。
(ポリエステル樹脂(4)の製造例)
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:10.0モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物:9.6モル部
・テレフタル酸:13モル部
・ドデセニルコハク酸:6モル部
上記単量体をオートクレーブに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置をオートクレーブに装着した。窒素雰囲気下で、1時間で195℃まで上げて、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した。これらモノマーの総質量に対してジステアリン酸スズを0.12モル部投入した。さらに生成する水を留去しながら195℃から5時間かけて240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を行った。次いで、温度を190℃まで下げ、無水トリメリット酸の1モル部を徐々に投入し、190℃で1時間反応を継続した。その結果、ガラス転移温度が53.5℃、酸価が11.7mgKOH/g、水酸基価が22.0mgKOH/g、重量平均分子量が51,200、数平均分子量が5,700、軟化点104℃のポリエステル樹脂(4)を得た。
(トナー粒子(1)の製造例)
還流管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた四つ口容器中にイオン交換水700質量部と0.1mol/LのNa3PO4水溶液1000質量部と1.0mol/LのHCl水溶液24.0質量部を添加し、高速撹拌装置T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社)を用いて13,000rpmで撹拌しながら、60℃に保持した。ここに1.0mol/LのCaCl2水溶液85質量部を徐々に添加し、微細な難水溶性分散安定剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。
・スチレン 69.0質量部
・n−ブチルアクリレート 31.0質量部
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 0.1質量部
・銅フタロシアニン顔料 6.5質量部
(ピグメントブルー15:3)
・ポリエステル樹脂(1) 5.0質量部
・荷電制御樹脂(1) 0.5質量部
・離型剤 10.0質量部
(ベヘン酸ベヘニル、融点:72.1℃)
上記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)で3時間分散させて得られた重合性単量体組成物(1)を60℃で20分保持した。その後、重合性単量体組成物(1)に重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート16.0質量部(トルエン溶液50%)を添加した重合性単量体組成物(1)を上記水系媒体中に投入し、高速撹拌装置の回転数を13,000rpmに維持しつつ10分間造粒した。その後、高速撹拌装置をプロペラ式撹拌器に変えて、メチルトリエトキシシラン 10.0質量部を加えた。内温を70℃に昇温させ、ゆっくり撹拌しながら4時間反応させた。このとき水系媒体のpHは5.1であった。次に、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を10.0質量部加えてpH8.0にし、容器内を温度90℃に昇温して7.5時間維持した。その後、10%塩酸4.0質量部をイオン交換水50質量部に加え、pHを5.1にした。次に、イオン交換水を300質量部添加して、還流管を取り外し、蒸留装置を取り付けた。容器内の温度が100℃の蒸留を5時間行って、重合体スラリー(1)を得た。蒸留留分は300質量部であった。30℃に冷却後の重合体スラリー(1)を含む容器内に希塩酸を添加して分散安定剤を除去した。さらに、濾別、洗浄、乾燥をして重量平均粒径が5.8μmの粒子(1)が得られた。
この粒子(1)100質量部に対し、粘度が100cpsのジメチルシリコーンオイル(信越シリコーン社製、KF−96−100cs) 0.10000質量部を撹拌翼最先端の周速が20.0m/secの三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)で3分間混合して得られたトナー粒子をトナー粒子(1)とする。
トナー粒子(1)の処方及び条件を表1に示した。トナー粒子(1)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。以下の実施例及び比較例においても、同様に有機ケイ素重合体を含有する表層はケイ素マッピングでも確認を行った。
(トナー粒子(2)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いたメチルトリエトキシシラン10.0質量部の代わりにフェニルトリメトキシシラン10.0質量部に変更した以外はトナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(2)を得た。トナー粒子(2)の処方及び条件を表1に示した。トナー粒子(2)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(3)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いたメチルトリエトキシシラン10.0質量部の代わりにエチルトリメトキシシラン10.0質量部に変更した以外はトナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(3)を得た。トナー粒子(3)の処方及び条件を表1に示した。トナー粒子(3)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(4)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いたメチルトリエトキシシラン10.0質量部の代わりにn−プロピルトリエトキシシラン10.0質量部に変更した以外はトナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(4)を得た。トナー粒子(4)の処方及び条件を表1に示した。トナー粒子(4)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(5)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いたメチルトリエトキシシラン10.0質量部の代わりにn−ブチルトリエトキシシラン10.0質量部に変更した以外はトナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(5)を得た。トナー粒子(5)の処方及び条件を表1に示した。トナー粒子(5)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(6)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いたメチルトリエトキシシラン10.0質量部の代わりにメチルトリエトキシシラン7.0質量部、エチルトリクロロシラン1.0質量部、n−ブチルトリエトキシシラン1.0質量部、テトラエトキシシラン1.0質量部に変更した以外はトナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(6)を得た。トナー粒子(6)の処方及び条件を表1に示した。トナー粒子(6)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(7)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いた、粘度が100cpsのジメチルシリコーンオイル 0.10000質量部を0.00140質量部に変更した以外はトナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(7)を得た。トナー粒子(7)の処方及び条件を表1に示した。トナー粒子(7)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(8)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いた、粘度が100cpsのジメチルシリコーンオイル 0.10000質量部を0.01000質量部に変更した以外はトナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(8)を得た。トナー粒子(8)の処方及び条件を表1に示した。トナー粒子(8)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(9)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いた、粘度が100cpsのジメチルシリコーンオイル 0.10000質量部を0.05000質量部に変更した以外はトナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(9)を得た。トナー粒子(9)の処方及び条件を表1に示した。トナー粒子(9)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(10)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いた、粘度が100cpsのジメチルシリコーンオイル 0.10000質量部を1.00000質量部に変更した以外は、トナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(10)を得た。トナー粒子(10)の処方及び条件を表1に示した。トナー粒子(10)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(11)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いた、粘度が100cpsのジメチルシリコーンオイル 0.10000質量部を5.00000質量部に変更した以外は、トナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(11)を得た。トナー粒子(11)の処方及び条件を表2に示した。トナー粒子(11)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(12)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いたメチルトリエトキシシラン10.0質量部の代わりにメチルトリエトキシシラン40.0質量部に変更し、粘度が100cpsのジメチルシリコーンオイル0.10000質量部を0.3000質量部に変更した以外は、トナー粒子1の製造例と同様にしてトナー粒子(12)を得た。トナー粒子(12)の処方及び条件を表2に示した。トナー粒子(12)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(13)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いたメチルトリエトキシシラン10.0質量部の代わりにメチルトリエトキシシラン3.5質量部に変更し、粘度が100cpsのジメチルシリコーンオイル 0.10000質量部を0.05400質量部に変更した以外は、トナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(13)を得た。トナー粒子(13)の処方及び条件を表2に示した。トナー粒子(13)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(14)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いたメチルトリエトキシシラン10.0質量部の代わりにメチルトリエトキシシラン2.8質量部に変更し、粘度が100cpsのジメチルシリコーンオイル 0.10000質量部を0.03500質量部に変更した以外は、トナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(14)を得た。トナー粒子(14)の処方及び条件を表2に示した。トナー粒子(14)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(15)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例において、水系分散媒体の調製で1.0mol/LのHCl水溶液24.0質量部を30.0質量部にして、水系媒体の反応1のpHを4.0に変更し、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液10.0質量部を0.0質量部、10%塩酸4.0質量部を0.0質量部にして、反応2と反応3のpHを4.0に変更した以外はトナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(15)を得た。トナー粒子(15)の処方及び条件を表2に示した。トナー粒子(15)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(16)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例において、水系分散媒体の調製で1.0mol/LのHCl水溶液24.0質量部を27.0質量部添加に変更し、反応1の水系媒体のpHを4.5に変更し、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液10.0質量部を0.0質量部、10%塩酸4.0質量部を0.0質量部に変更し、反応2と反応3のpHを4.5にした以外はトナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(16)を得た。トナー粒子(16)の処方及び条件を表2に示した。トナー粒子(16)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(17)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例において、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液10.0質量部を30.0質量部に変更し、反応1のpHを11.8に変更し、反応2終了後に塩酸を加えてpHを5.1に調整した以外はトナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(17)を得た。トナー粒子(17)の処方及び条件を表2に示した。トナー粒子(17)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(18)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いた粘度が100cpsのジメチルシリコーンオイルを粘度が10cpsのジメチルシリコーンオイル(信越シリコーン社製、KF−96−10cs)(標章))に変更した以外は、トナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(18)を得た。トナー粒子(18)の処方及び条件を表2に示した。トナー粒子(18)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(19)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いた粘度が100cpsのジメチルシリコーンオイルを粘度が9000cpsのジメチルシリコーンオイル(信越シリコーン社製、KF−96−9000)に変更した以外は、トナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(19)を得た。トナー粒子(19)の処方及び条件を表2に示した。トナー粒子(19)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(20)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いた粘度が100cpsのジメチルシリコーンオイルを110cpsの側鎖型のモノアミン変性シリコーンオイル(信越シリコーン社製、KF−865)に変更した以外は、トナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(20)を得た。トナー粒子(20)の処方及び条件を表2に示した。トナー粒子(20)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(21)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いた粘度が100cpsのジメチルシリコーンオイルを90cpsの両末端型のアミノ変性シリコーンオイル(信越シリコーン社製、KF−8012(標章))に変更した以外は、トナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(21)を得た。トナー粒子(21)の処方及び条件を表3に示した。トナー粒子(21)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(22)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いた粘度が100cpsのジメチルシリコーンオイルを130cpsの側鎖型のポリエーテル変性シリコーンオイル(信越シリコーン社製、KF−6015(標章))に変更した以外は、トナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(22)を得た。トナー粒子(22)の処方及び条件を表3に示した。トナー粒子(22)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(27)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例において、銅フタロシアニン6.5質量部をカーボンブラック10.0質量部に変更した以外はトナー粒子1の製造例と同様にしてトナー粒子(27)を得た。トナー粒子(27)の処方及び条件を表3に示した。トナー粒子(27)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(28)の製造例)
還流管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた四つ口容器中にイオン交換水700質量部と0.1mol/LのNa3PO4水溶液1000質量部と1.0mol/LのHCl水溶液24.0質量部を添加し、高速撹拌装置T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社)を用いて13,000rpmで撹拌しながら、60℃に保持した。ここに1.0mol/LのCaCl2水溶液85質量部を徐々に添加し、微細な難水溶性分散安定剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。
・スチレン 58.0質量部
・n−ブチルアクリレート 42.0質量部
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 0.1質量部
・銅フタロシアニン顔料 6.5質量部
(ピグメントブルー15:3)(P.B.15:3)
・ポリエステル樹脂(3) 10.0質量部
・荷電制御樹脂(1) 0.5質量部
・離型剤 10.0質量部
(ベヘン酸ベヘニル、融点:72.1℃)
・ジメチルシリコーンオイル(粘度:100cps、信越シリコーン社製、KF−96−100cs) 0.13810質量部
上記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)で3時間分散させて得られた重合性単量体組成物(1)を60℃で20分保持した。その後、重合性単量体組成物(1)に重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート16.0質量部(トルエン溶液50%)を添加した重合性単量体組成物(1)を上記水系媒体中に投入し、高速撹拌装置の回転数を13,000rpmに維持しつつ10分間造粒した。その後、高速撹拌装置をプロペラ式撹拌器に変えて、メチルトリエトキシシラン 10.0質量部とチタンテトラノルマルプロポキシド1.0質量部を加えた。内温を70℃に昇温させ、ゆっくり撹拌しながら4時間反応させた。このとき水系媒体のpHは5.1であった。次に、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を10.0質量部加えてpH8.0にし、容器内を温度90℃に昇温して7.5時間維持した。その後、10%塩酸4.0質量部をイオン交換水50質量部に加え、pHを5.1にした。次に、イオン交換水を300質量部添加して、還流管を取り外し、蒸留装置を取り付けた。容器内の温度が100℃の蒸留を5時間行って、重合体スラリー(1)を得た。蒸留留分は300質量部であった。30℃に冷却後の重合体スラリー(1)を含む容器内に希塩酸を添加して分散安定剤を除去した。さらに、濾別、洗浄、乾燥をして重量平均粒径が5.9μmの粒子(28)が得られた。この粒子(28)をトナー粒子(28)とする。
トナー粒子(28)の処方及び条件を表3に示した。トナー粒子(28)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(29)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いた銅フタロシアニン(ピグメントブルー15:3)6.5質量部をピグメントレッド122(P.R.122)8.0質量部に変更した以外は、トナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(29)を得た。トナー粒子(29)の処方及び条件を表3に示した。トナー粒子(29)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒(30)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いた銅フタロシアニン(ピグメントブルー15:3)6.5質量部をピグメントイエロー155(P.Y.155)6.0質量部に変更した以外は、トナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(30)を得た。トナー粒子(30)の処方及び条件を表3に示した。トナー粒子(30)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(トナー粒子(31)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いた粘度が100cpsのジメチルシリコーンオイルを粘度が300cpsのフッ素変性シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング社製、DOW CORNING TORAY FS 1265 300CS)に変更した以外は、トナー粒子(1)の製造例と同様にしてトナー粒子(31)を得た。トナー粒子(31)の処方及び条件を表3に示した。トナー粒子(31)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(比較トナー粒子(1)の製造例)
トナー粒子(13)の製造例で用いた粘度が100cpsのジメチルシリコーンオイル0.10000質量部を0.00000質量部に変更した以外はトナー粒子(13)の製造例と同様にして比較トナー粒子(1)を得た。比較トナー粒子(1)の処方及び条件を表4に示した。比較トナー粒子(1)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に少しケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(比較トナー粒子(2)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いた、メチルトリエトキシシランの代わりにn−オクチルトリエトキシシランに変更し、粘度が100cpsのジメチルシリコーンオイル0.10000質量部を0.00000質量部に変更した以外はトナー粒子(1)の製造例と同様にして比較トナー粒子(2)を得た。比較トナー粒子(2)の処方及び条件を表4に示した。比較トナー粒子(2)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一ではないがケイ素原子が存在することを確認した。
(比較トナー粒子(3)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いたメチルトリエトキシシラン10.0質量部の代わりに3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン10.0質量部に変更し、粘度が100cpsのジメチルシリコーンオイル0.10000質量部を0.00000質量部に変更した以外はトナー粒子(1)の製造例と同様にして比較トナー粒子(3)を得た。比較トナー粒子(3)の処方及び条件を表4に示した。比較トナー粒子(3)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に少しケイ素原子が存在することを確認した。
(比較トナー粒子(4)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いた粘度が100cpsのジメチルシリコーンオイル0.10000質量部を8.00000質量部に変更した以外はトナー粒子(1)の製造例と同様にして比較トナー粒子(4)を得た。比較トナー粒子(4)の処方及び条件を表4に示した。比較トナー粒子(4)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に少しケイ素原子が存在することを確認した。
(比較トナー粒子(5)の製造例)
高速撹拌装置T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社)を備えた四つ口フラスコ中に、イオン交換水900質量部とポリビニルアルコール95質量部を添加し、回転数1300rpmにて撹拌しながら、55℃に加熱して水系分散媒とした。
(モノマー分散液の組成)
・スチレン 70.0質量部
・n−ブチルアクリレート 30.0質量部
・カーボンブラック 10.0質量部
・離型剤(ベヘン酸ベヘニル、融点:72.1℃) 10.0質量部
上記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)で3時間分散させた後、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート14.0質量部を添加してモノマー分散液を調製した。
次に、得られたモノマー分散液を、上記の四つ口フラスコ内の分散媒中に投入し、上記の回転数を維持しつつ10分間の造粒を行った。続いて、50rpmの撹拌下において、55℃で1時間、次に、65℃で4時間、さらに、80℃で5時間の重合を行った。上記の重合の終了後、スラリーを冷却し、精製水で洗浄を繰り返すことにより分散剤を除去した。さらに、洗浄、乾燥を行うことにより、母体となる比較ブラックトナー粒子(1)を得た。重量平均粒子径は5.7μmであった。
酢酸イソアミル2質量部とケイ素化合物としてテトラエトキシシラン4.0質量部、メチルトリエトキシシラン0.5質量部を混合した溶液に0.3質量部%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム溶液を3質量部投入し、超音波ホモジナイザーを用いて撹拌することにより、酢酸イソアミル、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシランのシラン混合溶液Aを調製した。
0.3質量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液30質量部に母体の比較ブラックトナー粒子(1)1.0質量部を加えてブラックトナー粒子分散液Aを調製した。次にブラックトナー粒子分散液Aに、上記シラン混合溶液Aを投入し、次いで30質量%NH4OH水溶液5質量部を投入して室温(25℃)で15時間撹拌し反応を行った。得られた反応物をエタノールで洗浄後、精製水で洗浄し、粒子を濾別し、乾燥させることにより、比較トナー粒子(5)を得た。得られたトナー粒子の重量平均粒子径は5.9μmであった。比較トナー粒子(5)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に少しケイ素原子が存在することを確認した。
(比較トナー粒子(6)の製造例)
トナー粒子(1)の製造例で用いたメチルトリエトキシシラン10.0質量部の代わりにビニルトリエトキシシラン3.0質量部に変更し、反応1で1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を8.0質量部加えて、反応1のpH5.1をpH7.0に変更し、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液10.0質量部を0.0質量部に変更し、反応2のpH8.0を7.0に変更し、反応2の90℃を70℃に変更し、反応3の100℃を70℃に変更し、反応3の前で加えた10%塩酸4.0質量部を2.0質量部に変更した以外はトナー粒子(1)の製造例と同様にして比較トナー粒子(6)を得た。比較トナー粒子(6)の処方及び条件を表4に示した。比較トナー粒子(6)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在することを確認した。表層が、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層ではないことを確認した。
(比較トナー粒子(7)の製造例)
(比較中間体ポリエステル(1)の製造例)
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 680質量部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 80質量部
・テレフタル酸 280質量部
・無水トリメリット酸 20質量部
・ジブチルスズオキサイド 2.5質量部
上記原材料を、冷却管、撹拌機および窒索導入管の付いた反応容器中にいれ、常圧、230℃で8時間反応し、さらに、10〜15mmHgの減圧下で5時間反応して、比較中間体ポリエステル(1)を得た。
比較中間体ポリエステル(1)は、数平均分子量2150、重量平均分子量9550、Tg54℃、酸価0.4mgKOH/g、水酸基価45mgKOH/gであった。
(比較プレポリマー(1)の製造例)
・比較中間体ポリエステル(1) 410質量部
・イソホロンジイソシアネート 90質量部
・酢酸エチル 500部
上記材料を冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に入れ、100℃で5時間反応し、比較プレポリマー(1)を得た。比較プレポリマー(1)の遊離イソシアネート重量%は、1.20%であった。
(比較ポリエステル(1)の製造例)
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 220質量部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物 560質量部
・テレフタル酸 220質量部
・アジピン酸 50質量部
・ジブチルスズオキサイド 2.5質量部
上記材料を冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に入れ、常圧、230℃で8時間反応し、さらに、10〜15mmHgの減圧で5時聞反応した。その後、反応容器に無水トリメリット酸45質量部を入れ、180℃、常圧で2時間反応し、比較ポリエステル(1)を得た。比較ポリエステル(1)は、重量平均分子量3700、Tg42℃、酸価24mgKOH/gであった。
(比較マスターバッチの製造例(1))
・C.I.ピグメントブルー15:3 40質量部
・ポリエステル樹脂(1) 60質量部
・水 30質量部
上記材料を三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)で混合し、顔料凝集体中に水が染み込んだ混合物を得た。これをロールの表面温度を130℃に設定した2本ロールで45分間混練し、パルベライザーで平均粒径1mmの大きさに粉砕し、比較マスターバッチ1を得た。
(比較ビニル系共重合樹脂粒子(1)の製造例)
・ドデシル硫酸ナトリウム 2.0質量部
・イオン交換水 500質量部
上記材料を冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に入れ、80℃に加熱した。その後、過硫酸カリウム2.5質量部をイオン交換水100質量部に溶解したものを加え、その15分後に、スチレン60質量部、アクリル酸ブチル20質量部、メタクリル酸20質量部、p−スチリルトリメトキシシラン100質量部、n−オクチルメルカプタン3.5質量部の混合液を90分かけて滴下し、さらに60分間80℃に保った。それから、30℃に冷却して、比較ビニル系共重合樹脂粒子(1)の分散液を得た。比較ビニル系共重合樹脂粒子(1)の平均粒径は、55nmであった。固形物は、数平均分子量10300、重量平均分子量16200、Tg59℃であった。
(比較トナー粒子(7)の作製)
・比較ポリエステル(1) 540部
・パラフィンワックス(1) 80部
・酢酸エチル1 450部
上記材料を撹拌棒および温度計をセットした容器に入れ、撹拌下、80℃に昇温し、80℃で5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次に、容器に、比較マスターバッチ(1) 500質量部、酢酸エチル100質量部を仕込み、1時間混合し、比較原料溶解液(1)を得た。
比較原料溶解液(1) 1500質量部を容器に移し、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時、ディスク周速度7m/秒で、粒径0.5mmのジルコニアビーズを80体積%充填して、上記条件で3回循環させた。次に、比較ポリエステル(1)65質量%酢酸エチル溶液650質量部加え、上記条件のビーズミルで1回循環し、比較顔料・ワックス分散液(1)を得た。なお、比較顔料・ワックス分散液(1)は、固形分濃度(測定条件:130℃、30分)が50質量%となるように酢酸エチルを加えて調整した。
イオン交換水970質量部、分散安定用の樹脂微粒子(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の25質量%水性分散液40質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50.0質量%水溶液エレミノールMON−7(三洋化成工業社製)150質量部、酢酸エチル100質量部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを比較水相(1)とする。
比較顔料・ワックス分散液(1) 980質量部、アミン類として、イソホロンジアミン2.5部を、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社)を用いて、7000rpmで3分間混合した後、比較プレポリマー(1)90質量部を加え、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社)を用いて、7000rpmで3分間混合した。さらに、比較水相(1) 1200質量部を加え、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社)を用いて、12000rpmで15分間混合し、比較乳化スラリー(1)を得た。
撹拌機および温度計をセットした容器に、比較乳化スラリー(1)を投入し、30℃で8時間脱溶剤を行い、比較分散スラリー(1)を得た。
比較分散スラリー(1)に、比較ビニル系共重合樹脂粒子(1)の分散液を固形分比で1:0.12になるように加え、75℃まで30分かけて加熱した。イオン交換水100部に塩化マグネシウム6水和物100質量部を溶解した液を少量ずつ加えながら70℃に保ち、4時間後、塩酸水溶液を加えてpH5に調整した後、80℃に加熱した。2時間後、冷却し、比較分散スラリー(1)を得た。濾別、洗浄、乾燥をして重量平均粒径が5.9μmのトナー粒子が得られた。このトナー粒子を比較トナー粒子(7)とした。
比較トナー粒子(7)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に少しケイ素原子が存在することを確認した。
(比較トナー粒子(8)の製造例)
トナー粒子(25)の製造例の(樹脂粒子分散液(1)のゾルゲル溶液の調製)で用いたメチルトリエトキシシラン20.0質量部の代わりにオクタメチルシルセスキオキサン3.0質量部(シグマ・アルドリッチ社製、PPS−オクタメチル置換体)に変更した以外は、トナー粒子(25)の製造例と同様にして比較トナー粒子(8)を得た。比較トナー粒子(8)の処方及び条件を表4に示した。比較トナー粒子(8)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層にケイ素原子が少し存在することを確認した。表層に、ケイ素化合物を含む粒状塊同士で形成された被覆層が確認された。
(比較トナー粒子(9)の製造例)
トナー粒子(25)の製造例の(樹脂粒子分散液(1)のゾルゲル溶液の調製)で用いたメチルトリエトキシシラン20.0質量部の代わりにオクタビニルシルセスキオキサン3.0質量部(シグマ・アルドリッチ社製、PPS−オクタビニル置換体)に変更した以外は、トナー粒子(25)の製造例と同様にして比較トナー粒子(9)を得た。比較トナー粒子(9)の処方及び条件を表4に示した。比較トナー粒子(9)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層にケイ素原子が少し存在することを確認した。表層に、ケイ素化合物を含む粒状塊同士で形成された被覆層が確認された。
(比較トナー粒子(10)の製造例)
還流管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた四つ口容器中にイオン交換水700質量部と0.1mol/LのNa3PO4水溶液1000質量部と1.0mol/LのHCl水溶液24.0質量部を添加し、高速撹拌装置T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社)を用いて13,000rpmで撹拌しながら、60℃に保持した。ここに1.0mol/LのCaCl2水溶液85質量部を徐々に添加し、微細な難水溶性分散安定剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。
・スチレン 69.0質量部
・n−ブチルアクリレート 31.0質量部
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 0.1質量部
・銅フタロシアニン顔料 6.5質量部
(ピグメントブルー15:3)(P.B.15:3)
・ポリエステル樹脂(1) 5.0質量部
・荷電制御樹脂(1) 0.5質量部
・離型剤 10.0質量部
(ベヘン酸ベヘニル、融点:72.1℃)
上記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)で3時間分散させて得られた重合性単量体組成物(C10)を60℃で20分保持した。その後、重合性単量体組成物(C10)に重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート16.0質量部(トルエン溶液50%)を添加した重合性単量体組成物(C10)を上記水系媒体中に投入し、高速撹拌装置の回転数を13,000rpmに維持しつつ10分間造粒した。その後、高速撹拌装置をプロペラ式撹拌器に変えて、内温を70℃に昇温させ、ゆっくり撹拌しながら4時間反応させた。このとき水系媒体のpHは5.1であった。次に、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を10.0質量部加えてpH8.0にし、容器内を温度90℃に昇温して7.5時間維持した。その後、10%塩酸4.0質量部をイオン交換水50質量部に加え、pHを5.1にした。次に、イオン交換水を300質量部添加して、還流管を取り外し、蒸留装置を取り付けた。容器内の温度が100℃の蒸留を5時間行って、重合体スラリー(C10)を得た。蒸留留分は300質量部であった。30℃に冷却後の重合体スラリー(C10)を含む容器内に希塩酸を添加して分散安定剤を除去した。さらに、濾別、洗浄、乾燥をして重量平均粒径が5.8μmの粒子(C10)が得られた。この粒子(C10)を比較トナー粒子(10)とする。比較トナー粒子(10)の処方及び条件を表4に示した。比較トナー粒子(10)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に少しケイ素原子が存在することを確認した。
(トナー(1)の製造例)
トナー粒子(1) 100質量部に対し、BET法による比表面積が180m2/gであり、ヘキサメチルジシラザン3.0質量%、100cpsのシリコーンオイル3質量%で表面を疎水化処理された疎水性シリカ0.2質量部とBET法による比表面積が50m2/gの酸化アルミニウム0.25質量部を、撹拌翼最先端の周速が15.00m/secの三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)で3分間混合して得られたトナーをトナー(1)とする。物性を表5と9に示した。
(トナー(2)〜(22)、(27)〜(31)の製造例)
トナー(1)の製造例においてトナー粒子(1)をトナー粒子(2)〜(22)、(27)〜(31)に変更した以外はトナー(1)の製造例と同様にしてトナー(2)〜(31)を得た。物性を表5〜7と9〜11に示した。
(比較トナー(1)〜(9)の製造例)
トナー(1)の製造例においてトナー粒子(1)を比較トナー粒子(1)〜(9)に変更した以外はトナー(1)の製造例と同様にして比較トナー(1)〜(9)を得た。物性を表8と12に示した。
(比較トナー(10)の製造例)
比較トナー粒子(10) 100質量部に対し、BET法による比表面積が180m2/gであり、ヘキサメチルジシラザン3.0質量%、100cpsのシリコーンオイル3質量%で表面を疎水化処理された疎水性シリカ2.2質量部とBET法による比表面積が50m2/gの酸化アルミニウム0.25質量部を、撹拌翼最先端の周速が45.0m/secの三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)で10分間混合して得られたトナーを比較トナー(10)とする。物性を表8と12に示した。比較トナー粒子(10)のTEM観察においてケイ素マッピングを行い、ケイ素化合物を含む粒状の無機微粒子がトナー表面に埋め込まれていること確認された。
<実施例1>
トナー(1)を用いて以下の評価を行った。評価結果を表13に示した。
(環境安定性及び現像耐久性の評価)
図4のような構成を有するタンデム方式のキヤノン製レーザービームプリンタLBP9600Cのトナーカートリッジに、トナー(1) 250gを装填した。そして、そのトナーカートリッジを低温低湿L/L(温度10℃/湿度15%RH)、高温高湿H/H(32.5℃/85%RH)の各環境下で24時間放置した。各環境下で24時間放置後のトナーカートリッジを上記LBP9600Cに取り付け、1.0%の印字比率の画像をA4用紙横方向で22,000枚までプリントアウトして、初期と22,000枚出力時のベタ画像濃度(トナー載り量0.40mg/cm2)とカブリ、22,000枚出力時の部材汚染(フィルミング、現像スジ、ドラム融着)の評価を行った。耐久は2枚出力するごとに1秒間停止する間歇耐久で行った。
(トナー粒子及びトナーの摩擦帯電量の測定)
トナー粒子及びトナーの摩擦帯電量は、以下に示す方法によって求めた。
まず、トナー粒子又はトナーと負帯電極性トナー用標準キャリア(商品名:N−01、日本画像学会製)を以下の環境下でそれぞれ所定時間放置した。
低温低湿(10℃/15%RH)では24時間、高温高湿(32.5℃/85%RH)では24時間放置した。上記放置後に、トナー粒子又はトナーと標準キャリアを、トナー粒子又はトナーの質量が5質量%となるように各環境下でターブラミキサを用いて60秒間混合し、二成分現像剤を得た。
次に、この混合後の二成分現像剤を混合後1分以内に常温常湿(25℃/50%RH)の環境下で、底部に目開き20μmの導電性スクリーンを装着した金属製の容器にいれ、吸引機で吸引し、吸引前後の質量差と、容器に接続されたコンデンサに蓄積された電位とを測定した。この際、吸引圧を4.0kPaとした。前記吸引前後の質量差、蓄電された電位、及びコンデンサの容量から、下記式を用いてトナー粒子又はトナーの摩擦帯電量を算出した。
なお、測定に使用した負帯電極性トナー用標準キャリア(商品名:N−01、日本画像学会製)は250メッシュを通過したものを使用した。
Q=(A×B)/(W1−W2)
Q(mC/kg):トナー粒子又はトナーの摩擦帯電量
A(μF):コンデンサの容量
B(V):コンデンサに蓄積された電位差
W1−W2(kg):吸引前後の質量差
(画像濃度の評価)
画像濃度については、SPI補助フィルターを装着した、マクベス濃度計(商品名:RD−914、マクベス社製)を用いて、上記低温低湿(L/L)(10℃/15%RH)、高温高湿(H/H)(32.5℃/85%RH)の環境下で出力した、初期と22,000枚耐久出力後のベタ画像の定着画像部の画像濃度を測定した。
なお、画像濃度の評価基準は下記のとおりである。転写紙は70g/m2のA4サイズを用い、A4横方向に印字した。
A:1.45以上
B:1.40以上1.45未満
C:1.30以上1.40未満
D:1.25以上1.30未満
E:1.20以上1.25未満
F:1.20未満
(カブリの評価)
初期の0%の印字比率の画像及び22,000枚耐久出力後の0%の印字比率の画像において、「リフレクトメータ」((有)東京電色製)により測定した出力画像の白地部分の白色度と転写紙の白色度の差から、カブリ濃度(%)を算出した。また、そのカブリ濃度を下記の基準で画像カブリとして評価した。転写紙は110g/m2のA4サイズを用い、A4横方向に印字した。
A:1.0%未満
B:1.0%以上1.5%未満
C:1.5%以上2.0%未満
D:2.0%以上2.5%未満
E:2.5%以上3.0%未満
F:3.0%以上
(部材汚染評価)
部材汚染は22,000枚耐久出力後に、前半部分をハーフトーン画像(トナー載り量0.25mg/cm2)で出力し、後半部分をベタ画像(トナー載り量0.40mg/cm2)であるミックス画像を出力して、下記基準に従い評価した。なお、転写紙は70g/m2のA4サイズを用い、A4横方向に印字した。
A:現像ローラー上にも、ハーフトーン部、ベタ部の画像上にも排紙方向の縦スジや濃度の異なるポチは見られない。
B:現像ローラーの両端に周方向の細いスジが1本以上2本以下又は感光ドラム上に1個以上3個以下の融着物があるものの、ハーフトーン部、ベタ部の画像上に排紙方向の縦スジや濃度の異なるポチは見られない。
C:現像ローラーの両端に周方向の細いスジが3本以上5本以下又は感光ドラム上に3個以上5個以下の融着物あるものの、ハーフトーン部、ベタ部の画像上に排紙方向の縦スジや濃度の異なるポチがほんの少し見られる。しかし、画像処理で消せるレベル。
D:現像ローラーの両端に周方向の細いスジが6本以上20本以下又は感光ドラム上に6個以上20個以下の融着物があり、ハーフトーン部、ベタ部の画像上にも細かいスジが数本や濃度の異なるポチが見られる。画像処理でも消せない。
E:現像ローラー上とハーフトーン部の画像上に21本以上のスジや濃度の異なるポチが見られ、画像処理でも消せない。
(低温定着性の評価(低温オフセット終了温度))
キヤノン製レーザービームプリンタLBP9600Cの定着ユニットをプロセススピードが調整できるように改造した。この改造後のLBP9600Cを用いて、プロセススピ−ド300mm/secで、トナー載り量が0.40mg/cm2の未定着トナー画像を受像紙にオイルレスで加熱加圧し、受像紙に定着画像を形成した。
定着性は、キムワイプ(商品名:S−200、(株)クレシア)用い、75g/cm2の荷重をかけて定着画像を10回こすり、こすり前後の濃度低下率が5%未満になる温度を低温オフセット終了温度とした。評価は、常温常湿(25℃/50%RH)で実施した。
(保存安定性の評価)
(保存性の評価)
10gのトナーを100mLガラス瓶にいれ、温度50℃、湿度25%で3日間放置した後に目視で判定した。
A:変化なし
B:凝集体があるが、すぐにほぐれる
C:ほぐれにくい凝集体が発生
D:流動性なし
E:明白なケーキングが発生
(長期保存性の評価)
10gのトナーを100mLガラス瓶にいれ、温度45℃、湿度97%で1週間放置した後に目視で判定した。
A:変化なし
B:凝集体があるが、すぐにほぐれる
C:ほぐれにくい凝集体が発生
D:流動性なし
E:明白なケーキングが発生
(転写ラチチュードの評価)
キヤノン製レーザービームプリンタLBP9600Cの感光体と転写ローラー間の電圧差(以下転写バイアスともいう)を調整できるように改造した。
トナーを低温低湿(10℃/15%RH)では24時間、高温高湿(32.5℃/85%RH)では24時間放置した。転写紙としては90g/m2の紙を使用した。感光体と転写ローラーの間に電圧をかけた(以下転写バイアスともいう)。転写ローラーが感光体に対し、転写バイアスが+100Vから+1000Vになるように100Vごとに電圧をかけて、転写バイアスに対する転写効率を測定した。転写性はベタ黒(トナー載り量0.40mg/cm2)の感光体上の転写残トナーの単位面積当たりの重さをDrrM(mg/cm2)とし、転写材に転写したトナーの単位面積当たりの重さをTrM(mg/cm2)とする。DrrMとTrMの合計はベタ黒の感光体上のトナー量を示す。転写効率Tr(%)は、以下のようにして求めた。
Tr=DrrM/(DrrM+TrM)×100
転写効率Tr95%以上が得られる電圧の範囲を転写ラチチュードとした。そのときの転写電圧の値の幅TrVを以下のように評価した。
A:700V以上
B:600V以上700V未満
C:500V以上600V未満
D:400V以上500V未満
E:400V未満
<実施例2〜22、27〜30>
実施例1のトナー(1)をトナー(2)〜(22)、(27)〜(30)に変更した以外は実施例1と同様の評価を行った。その結果を表13〜15に示した。
<比較例1〜10>
実施例1のトナー(1)を比較トナー(1)〜(10)に変更した以外は実施例1と同様の評価を行った。その結果を表16に示した。
<実施例31>
実施例1のトナー(1)をトナー粒子(1)に変更した以外は実施例1と同様の評価を行った。その結果を表15に示した。トナー(1)とトナー粒子(1)の評価結果は遜色ない結果であった。
<実施例32>
実施例1のトナー(1)をトナー(31)に変更した以外は実施例1と同様の評価を行った。その結果を表15に示した。
<実施例33>
図4のような構成を有するタンデム方式のキヤノン製レーザービームプリンタLBP9600Cのトナーカートリッジを用い、トナー(1)(シアン) 250gを装填した。同様にトナー(27)(ブラック)、トナー(29)(マゼンタ)、トナー(30)(イエロー)をそれぞれLBP9600Cのトナーカートリッジに250gずつ充填した。前記4色のカートリッジセットをそれぞれ低温低湿L/L(10℃/15%RH)、高温高湿H/H(32.5℃/85%RH)の各環境下で24時間放置した。各環境下で24時間放置後にシアン、ブラック、マゼンタ、イエローのカートリッジをLBP9600Cにセットして、1.0%の印字比率の画像をA4用紙横方向で22,000枚までプリントアウトして、初期と22,000枚出力時のベタ画像濃度とカブリ、22,000枚出力時の部材汚染(フィルミング、現像スジ、感光ドラムへのトナーの融着)の評価を行った。耐久は2枚出力するごとに1秒間停止する間歇耐久で行った。その結果、実用上問題のなく、良好な結果が得られた。