以下、本発明の第一実施形態に係る記録計を、添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の各実施形態において同一または対応する部分には同一の参照符号を付しており、これらの部分の構成についての説明は、基本的には繰り返さない。
図1に示すように、記録計1は、チャート紙(連続紙)9を、チャート紙9の連続方向に沿って送り出す紙送り機構2と、チャート紙9に線図を記録する記録装置3と、チャート紙9に設けられたQRコード(登録商標)10を読み取る2つの読取装置4と、紙送り装置2の駆動を制御する制御装置5と、記録計1の状態を表示する状態表示装置6と、現在時刻を表示する時刻表示装置7と、警報を音声出力する警報装置8と、を備える。
チャート紙9は、チャート紙9の連続方向に対して直交する幅方向の両端部にそれぞれ、連続方向に沿って並設された多数の送り穴9aを有する。チャート紙9は、連続方向に沿って一定間隔ごとに折り目を有している。そのため、記録前のチャート紙9は、記録前の収納位置に折り畳まれた状態で配置され、記録後のチャート紙9も、記録後の収納位置に折り畳まれた状態で配置されている。そして、記録前の収納位置から記録後の収納位置までチャート紙9が送り出される間、チャート紙9は引き延ばされる。
チャート紙9は、チャート紙9の幅方向の両端部にそれぞれ、連続方向に沿って設けられた複数のQRコード10を備える。
図2を参照して、チャート紙9及びQRコード10をさらに説明する。チャート紙9は、24時間の記録が行われる長さの領域を一単位とする複数の単位を有している。連続方向で異なる位置にあるQRコード10は、基本的に異なる目標時刻の情報を有する。ただし、24時間周期で同一の位置にあるコード同士は、同一の目標時刻の情報を有する。つまり、目標時刻は、02時05分などの24時間内の時点を指し、24時間周期で繰り返される時点であり、年、月などの1日を超える期間内の時点を特定しない。
チャート紙9には、基本的には、正時に対応する目標時刻が指定されたQRコード10が設けられている。正時は、12時ちょうどの時刻など、分や秒の端数のつかない時刻を示す。チャート紙9には、さらに、正時の前後5分間に1分刻みで異なる目標時刻が指定された調整用QRコード10aも設けられている。調整用QRコード10aは、チャート紙9を位置合わせする際に用いられる。
各QRコード10は、このQRコード10が読取装置4によって読み取られたときに記録装置3によって記録が行われる位置に記録が行われるべき目標時刻に関する目標時刻情報を有する。例えば、あるQRコード10は、目標時刻として2時0分の情報を有する。このQRコード10が読み取られたときに、印字部31は、チャート紙9上のいずれかの位置に接触している。この位置が、2時0分の目標時刻に対応する位置である。現在時刻が2時0分のときに、目標時刻が2時0分のQRコード10が読み取られたならば、現在時刻が2時0分のときに、目標時刻が2時0分の位置に正しく記録が行われたことになる。
また、QRコード10は、該QRコード10が設けられているチャート紙9と他のチャート紙9とを識別するためのチャート識別情報と、チャート紙9の残量に関する残量情報とを有する。
図1に示すように、紙送り機構2は、チャート紙9に接触してチャート紙9を送り出す駆動ローラ21と、駆動ローラ21を駆動させるモータ22と、を備える。駆動ローラ21の軸方向両端部のそれぞれには、駆動ローラ21の周方向に沿って多数の送り爪21aが設けられている。チャート紙9の送り穴9aに駆動ローラ21の送り爪21aが入り込むように取り付けられると、チャート紙9が駆動ローラ21に保持される。そして、駆動ローラ21の回転に伴って、チャート紙9が、駆動ローラ21に対して滑ることなく送り出される。
記録装置3は、チャート紙9に印字可能な印字部31と、駆動ローラ21に保持されたチャート紙9の幅方向に印字部31を移動させる駆動部32と、を備える。駆動部32は、記録計1の外部から入力される信号に基づいて、印字部31を前記幅方向に移動させる。外部から入力される信号は、外部機器、例えば、プラント内の機器の動作状態に対応する信号である。記録装置3は、チャート紙9が所定の基準速度で送り出されるのに伴って、駆動部32により印字部31を前記幅方向に移動させる。そして、移動する印字部31がチャート紙9に印字することにより、チャート紙9に線図が記録される。
2つの読取装置4は、それぞれ、駆動ローラ21に保持されたチャート紙9の幅方向の両端部に配置されている。ここで、目標時刻が同一である2つのQRコードを読むために、2つの読取装置4が幅方向で異なる位置に配置されている。そのため、一方の読取装置4がQRコード10の読み取りに失敗した場合にも、他方の読取装置4がQRコード10を読み取ることができる。つまり、2つの読取装置4は、QRコード10の読取不良をできるだけ避けるために、設けられている。
制御装置5は、現在時刻を計時するタイマー51と、記録計1の状態が正常であるか異常であるかを判定する判定部52と、チャート紙9の送り出し速度を制御する駆動制御部53と、を備える。制御装置5は、2つの読取装置4によって読み取られたQRコード10の目標時刻情報と、タイマー51によって特定される現在時刻に関する現在時刻情報とに基づいて、紙送り機構2の駆動、状態表示装置6の表示、時刻表示装置7の表示、および警報装置8の駆動を制御する。
状態表示装置(告知装置)6は、記録計1の状態について制御装置5によって判定された結果に対応する表示を出力する。この表示は、例えば、「正常」又は「異常」のような文字である。オペレータなどの記録計1の周囲にいる人間は、この表示を見ることで、記録計1の状態を把握できる。
時刻表示装置7は、タイマー51によって計時される現在時刻を表示する。
警報装置(告知装置)8は、記録計1の状態について制御装置5によって判定された結果に対応する警報を出力する。警報は、例えば、ブザー音である。オペレータなどの記録計1の周囲にいる人間は、この警報を聞くことで、記録計1の状態を把握できる。
図3から図6を参照して、チャート紙の監視処理を説明する。記録計1が起動されると、チャート紙の監視処理が開始される。この監視処理は、記録計1において、チャート紙9に関係する異常が発生しているか否かを判定し、オペレータの対応を待つことなく対処が可能ならば、その異常を自動で解消する処理である。この監視処理は、チャート紙9の送り出しに遅れ又は進みが発生しているか否かを判定する判定処理を含んでいる。
図3には、現在時刻と目標時刻との関係について、3つの状況P1、P2、P3が示されている。図3中左端の縦軸は、現在時刻を示し、目盛りの位置が正時に設定されている。この縦軸に沿ってチャート紙9が送られる。3つの状況P1、P2、P3は、それぞれ、現在時刻が正時に到達したときの読取装置4の読取位置とQRコード10の位置との関係を示している。図3において、横方向の一点鎖線は、読取装置4の読取位置を示している。図3において、丸印の番号が付された横方向の実線は、チャート紙9におけるQRコード10の位置を示している。
状況P1では、現在時刻が正時になったときに、QRコード10が読み取られている。例えば、現在時刻が01時00分であるときに、目標時刻が01時00分であるQRコード10が読み取られている。そのため、01時00分になったときに、印字部31が、チャート紙9において01時00分に記録が行われるべき位置に接触し、位置ずれなく正しく記録が行われている。つまり、状況P1は、チャート紙9の送り出しが正常な状況である。
一方、状況P2、P3は、チャート紙9の送り出しが異常な状況である。状況P2では、現在時刻が正時となったときには、QRコード10が既に読み取られて、先に送り出されている。この場合、例えば、現在時刻が01時58分であるときに、目標時刻が02時00分のQRコード10が読まれる。状況P2では、現在時刻が正時となったときに、QRコード10の位置が、目標時刻における正規の読取位置に対して、幅w2だけ、チャート紙9の送り出し方向にずれている。つまり、状況P2は、QRコード10の読み取りに進みが発生している状況であって、現在時刻に対して目標時刻が進んだ状況である。状況P3では、現在時刻が正時となったときに、QRコード10が未だ読み取られていない。この場合、例えば、現在時刻が02時03分であるときに、目標時刻が02時00分のQRコード10が読まれる。状況P3では、現在時刻が正時となったときに、QRコード10の位置が、目標時刻における正規の読取位置に対して、幅w3だけ、チャート紙9の送り出し方向と反対方向にずれている。つまり、状況P3は、QRコード10の読み取りに遅れが発生している状況であって、現在時刻に対して目標時刻が遅れた状況である。状況P2、P3は、チャート紙9の送り出しが異常な状況である。
図4から図6を参照して、チャート紙の監視処理のフローを説明する。このフローの開始前には、記録計1は停止しており、紙送り装置2の駆動も停止している。記録計1の起動に先立って、記録計1のチャート紙9が交換される。このとき、新たなチャート紙9は、いずれかのQRコード10の位置が、読取装置4の読取位置と一致するように、配置される。
まず、図4を参照して、メインルーチンを説明する。記録計1が起動されると、制御装置5は、チャート紙9の監視処理を開始する(ステップS1)。記録計1の起動に伴って、読取装置4は、QRコード10の読み取りを開始する。ステップS1の次のステップS2では、制御装置5の判定部52は、2つの読取装置4の少なくとも一方によって読み取られたQRコード10に基づいて、記録計1に配置されたチャート紙9が、今回の記録作業に対応した適正なチャート紙であるか否かを判定する。最終的には、判定部52は、読み取られたQRコード10が有するチャート識別情報が、制御装置5に記憶されたチャート紙情報であって、今回使用するチャート紙として選択又は設定されたチャート紙情報と一致するか否かを判定する。チャート識別情報とチャート紙情報とが一致していて、配置されたチャート紙9が適正である場合、処理がステップS4に進む。チャート識別情報とチャート紙情報とが一致しておらず、配置されたチャート紙9が適正でない場合、処理がステップS3に進む。
ステップS3では、制御装置5は、チャート紙9が不適正である旨の表示を、状態表示装置6に出力させ、チャート紙9が不適正である旨のブザー音を、警報装置8に出力させる。ステップS3の次のステップS13では、記録計1の起動が停止され、フローが終了する。このようにして、記録計1は、オペレータによる対応を待機する。
ステップS4では、制御装置5の駆動制御部53は、QRコード10の目標時刻がタイマー51の現在時刻に時間的に一致するのに合わせて、紙送り機構2の駆動を基準送りで開始させる。ここで、基準送りとは、紙送り機構2が、送り出し速度を、使用するチャート9紙に適した一定速度である基準速度にした状態で、チャート紙9を送り出すことを示している。ステップS4の次のステップS5では、制御装置5は、読み取られたQRコード10が有する残量情報に基づいて、チャート紙の残量が72時間に相当する量以下であるか否かを判定する。チャート紙の残量が72時間に相当する量以下である場合、処理がステップS6に進み、チャート紙の残量が72時間に相当する量よりも多い場合、処理がステップS7に進む。ステップS6では、制御装置5は、チャート紙の残量が72時間以下に相当する量まで減っていることを示す表示を、状態表示装置6に出力させる。ステップS6の次に、ステップS7が実行される。
ステップS6でチャート紙9の残量が表示された場合、オペレータは、チャート紙の残量を見て、残量が24時間に相当する量よりも少ない場合に、記録計1を停止させ、チャート紙9の交換を行う。
ステップS7では、制御装置5は、チャート紙9の送り出しに伴って、起動時のQRコード10に後続するQRコード10が、2つの読取装置4の少なくとも一方によって読み取られたか否かを、判定する。2つの読取装置4の少なくとも一方によってQRコード10が読み取られた場合、処理がステップS10に進み、2つの読取装置4の両方によってQRコード10が読み取られなかった場合、処理がステップS8に進む。ステップS8では、制御装置5は、先行するQRコード10が読み取られた時刻から、所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過している場合、処理がステップS9に進み、所定時間が経過していない場合、処理がステップS7に戻る。ステップS8の判定は、例えば、チャート紙9の送り出しが停止しているか否かを判定するために設けられている。
ステップS9では、制御装置5は、QRコード10が読み取られていない旨の表示を、状態表示装置6に出力させ、QRコード10が読み取られていない旨のブザー音を、警報装置8に出力させる。ステップS9が終了すると、処理がステップS7に戻る。すなわち、オペレータによりチャート紙9の送り出しが正常に修正されるまで、ステップS7からステップS9が繰り返される。
ステップS10では、制御装置5の判定部52は、読み取られたQRコード10の目標時刻が、QRコード10が読み取られたときのタイマー51の現在時刻に時間的に一致しているか否かを、判定する。QRコード10の目標時刻がタイマー51の現在時刻に時間的に一致している場合、チャート紙9が正常に送り出されているとして処理がステップS5に戻り、QRコード10の目標時刻がタイマー51の現在時刻に時間的に一致していない場合、処理がステップS11に進む。
ステップS11では、制御装置5は、チャート紙9に位置ずれが発生している旨の表示を、状態表示装置6に出力させ、チャート紙9に位置ずれが発生している旨のブザー音を、警報装置8に出力させる。
ステップS11の次のステップS12では、制御装置5の判定部52は、読み取られたQRコード10の目標時刻が、QRコード10が読み取られたときのタイマー51の現在時刻よりも遅れているか否かを、判定する。QRコード10の目標時刻がタイマー51の現在時刻よりも遅れている場合、処理が、遅れ解消サブルーチンのステップS101に進み、QRコード10の目標時刻がタイマー51の現在時刻よりも進んでいる場合、処理が、進み解消サブルーチンのステップS201に進む。
次に、図5を参照して、遅れ解消サブルーチンを説明する。遅れ解消サブルーチンは、上述したように、メインルーチンのステップS12の判定において、QRコード10の目標時刻がタイマー51の現在時刻よりも遅れている場合に、開始される。具体的には、目標時刻が02時00分で、現在時刻が02時03分のような場合である。
ステップS101では、制御装置5は、メインルーチンのステップS7において読み取られたQRコード10について、読み取られたQRコード10の目標時刻と、QRコード10が読み取られたときのタイマー51の現在時刻との時間差Aを導出する。ステップS101の次のステップS102では、制御装置5は、時間差Aだけ基準速度で送り出したときにチャート紙9が進む距離を、高速送りするのに要する時間Bを導出する。ここで、高速送りとは、紙送り機構2が、送り出し速度を基準速度よりも増大された高速速度で、チャート紙9を送り出すことを示している。ステップS102の次のステップS103では、制御装置5は、高速送り時間Cを導出する。高速送り時間Cは、ステップS101で導出された時間差Aと、ステップS102で導出された時間Bとの和である。
ステップS103の次のステップS104では、制御装置5の駆動制御部53は、紙送り機構2に、基準送りを中断させて、高速送りを開始させる。このようにして、紙送り機構2は、時間差Aの遅れを取り戻しつつ、高速送りに要する時間Bだけ更に遅れてしまうことを防止するように、チャート紙9を、基準速度よりも増大された高速速度で送り出す。ステップS104の次のステップS105では、制御装置5は、ステップS104における高速送りの開始から、ステップS103で導出された高速送り時間Cが経過したか否かを判定する。高速送り時間Cが経過した場合、処理がステップS106に進み、高速送り時間Cが経過していない場合、処理がステップS105に戻る。ここで、ステップS105がループ処理から外れて終了するまでに、遅れを解消するように高速送りが実行される。そのため、ステップS105の終了時点では、遅れが解消したと仮定される。
ステップS106では、制御装置5の駆動制御部53は、紙送り機構2に高速送りを終了させ、基準送りを再開させる。
ステップS106の次のステップS107では、制御装置5の判定部52は、ステップS7で読み取られたQRコード10に後続する調整用QRコード10aについて、その調整用QRコード10aが有する目標時刻が、その調整用QRコード10aが読み取られたときのタイマー51の現在時刻に時間的に一致しているか否かを判定する。その調整用QRコード10aについて、目標時刻が現在時刻に一致している場合、処理が、ステップS108に進み、目標時刻が現在時刻に一致していない場合、処理が、メインルーチンのステップS11に戻る。このように、遅れが完全に解消されるまで、遅れ解消サブルーチンでの処理が繰り返される。
ステップS108では、制御装置5は、遅れ解消サブルーチンによりチャート紙9の位置調整を行って、不一致が解消された旨を、記録装置3を駆動してチャート紙に記録させる。なお、ステップS108における記録は、線図を作成する記録装置3とは別の記録装置により行われてもよい。目標時刻が現在時刻に一致している場合のステップS108が終了すると、処理が、メインルーチンのステップS5に戻る。
つまり、図5に示す遅れ解消サブルーチンでは、発生した遅れを解消するために、メインルーチンのステップS7において読み取られたQRコード10に後続する他のQRコード10について、該他のQRコード10の目標時刻が、そのQRコード10が読み取られたときの現在時刻に一致するまで、紙送り機構2による送り出し速度が、基準速度よりも増加されている。
次に、図6を参照して、進み解消サブルーチンを説明する。進み解消サブルーチンは、上述したように、メインルーチンのステップS12の判定において、QRコード10の目標時刻がタイマー51の現在時刻よりも進んでいる場合に、開始される。具体的には、目標時刻が02時00分で、現在時刻が01時57分のような場合である。
ステップS201では、制御装置5の駆動制御部53は、紙送り機構2を停止させる。ステップS201の次のステップS202では、制御装置5は、図4に示すメインルーチンのステップS7において読み取られたQRコード10について、読み取られたQRコード10の目標時刻が、読取後の現在時刻に一致するか否かを判定する。目標時刻が現在時刻に一致する場合、処理がステップS203に進み、目標時刻が現在時刻に一致しない限り、処理がステップS202に戻る。
ステップS203では、制御装置5の駆動制御部53は、停止していた紙送り機構2を再び駆動させ、紙送り機構2に基準送りを再開させる。ステップS203の次のステップS204では、制御装置5は、進み解消サブルーチンによりチャート紙9の位置調整を行って、不一致が解消された旨を、記録装置3を駆動してチャート紙に記録させる。ステップS204が終了すると、処理が、メインルーチンのステップS5に戻る。
つまり、図6に示す進み解消サブルーチンでは、発生した進みを解消するために、図4に示すメインルーチンのステップS7において読み取られたQRコード10について、読み取られたQRコード10の目標時刻が、読取後の現在時刻に一致するまで、紙送り機構2の駆動が停止される。このように、進みが完全に解消されるまで、進み解消サブルーチンでの処理が繰り返される。
なお、チャート紙9の位置調整のために、図4に示すメインルーチンのステップS5からステップS12までの処理が、進み解消サブルーチン又は遅れ解消サブルーチンを経由して、複数回繰り返される場合、2回目以降にステップS7で読み取られるQRコードは、正時の目標時刻を有するQRコード10ではなく、調整用QRコード10aである。2回目以降の処理では、この調整用QRコード10aに関連する判定を基準として、チャート紙9の位置調整が行われる。
第二実施形態に係る記録計1を、図7を参照しつつ説明する。第二実施形態と第一実施形態との間で同様の構成には、同一符号を用いると共に、詳細な説明を繰り返さず、異なる構成についてのみ詳細に説明する。第二実施形態に係る記録計1では、第一実施形態に係る図6に示す進み解消サブルーチンの代わりに、図7に示す進み解消サブルーチンを用いて、チャート紙の監視処理が行われている。
QRコード10が有する目標時刻が、そのQRコード10が読み取られたときの読取時刻よりも進んでいる場合、その進みを解消するために、紙送り装置2を逆転駆動させることによって目標時刻を遅らせることが考えられる。しかし、この場合、逆転駆動された分だけチャート紙9の同一領域を線図が往復し、時間と記録とが一致しない線図が作成されてしまう。そのため、チャート紙9の送り出しに伴って線図を記録する記録計1においては、紙送り装置2を逆転駆動させることは、好ましくない。そこで、図7に示す進み解消サブルーチンは、進みを解消するために、24時間以上の時間に相当する距離を基準速度よりも大幅に大きな高速速度で送り出すことによって、進みが生じたQRコード10の目標時刻に対して、略24時間遅れた目標時刻を有するQRコード10を現在時刻に合わせて位置調整し、それにより、目標時刻を実質的に遅らせるように設定されている。この場合、チャート紙9において24時間に近い時間に相当する長さの領域が消費されてしまうが、時間と記録とが一致しない線図が作成されることを防止できる。以下、相違点である図7に示す進み解消サブルーチンを説明する。
ステップS301では、制御装置5の駆動制御部53は、紙送り機構2に高速送りを開始させる。ステップS301の次のステップS302では、制御装置5は、23時間50分だけ基準速度で送り出したときにチャート紙9が送り出される距離を、高速送りするのに要する時間(所定の高速送り時間)が経過したか否かを、判定する。所定の高速送り時間が経過している場合、処理がステップS303に進み、所定の高速送り時間が経過していない場合、処理がステップS302に戻る。
ステップS303では、制御装置5の駆動制御部53は、紙送り機構2に高速送りを終了させ、基準送りを再開させる。
ステップS303の次のステップS304では、制御装置5の判定部52は、ステップS7で読み取られたQRコード10に後続する調整用QRコード10aについて、その調整用QRコード10aが有する目標時刻が、その調整用QRコード10aが読み取られたときのタイマー51の現在時刻に時間的に一致しているか否かを判定する。その調整用QRコード10aについて、目標時刻が現在時刻に一致している場合、処理が、ステップS305に進み、目標時刻が現在時刻に一致していない場合、処理が、メインルーチンのステップS11に戻る。
ステップS304をより詳しく説明する。ステップS304では、制御装置5の判定部52は、ステップS7で読み取られたQRコード10よりも24時間遅れたQRコード10の直前に並ぶ調整用QRコード10aが有する目標時刻が、現在時刻と一致するか否かを判定する。目標時刻が現在時刻に一致している場合、進みが解消されている。目標時刻が現在時刻に一致していない場合、ステップS11の後にステップS12が実行され、調整用QRコード10aの目標時刻が現在時刻に対して遅れているか否かが判定される。ここで、高速送りは、23時間50分だけしか実行されていないため、ほとんどの場合、調整用QRコード10aの目標時刻は、現在時刻に対して遅れることになる。そうすると、ステップS12の判定結果がYESとなり、遅れ解消サブルーチン(S101−S108)が実行され、遅れが解消される。こうして、ステップS7で読み取られたQRコード10よりも24時間遅れたQRコード10が有する目標時刻及びそれ以降のQRコード10が有する目標時刻は、現在時刻に一致することになる。
ステップS305では、制御装置5は、進み解消サブルーチンによりチャート紙9の位置調整を行って、不一致が解消された旨を、記録装置3を駆動してチャート紙9に記録させる。目標時刻が現在時刻に一致している場合のステップS305が終了すると、処理が、メインルーチンのステップS5に戻る。
第三実施形態に係る記録計1を、図8を参照しつつ説明する。第三実施形態と第一実施形態との間で同様の構成には、同一符号を用いると共に、詳細な説明を繰り返さず、異なる構成についてのみ詳細に説明する。第三実施形態に係る記録計1では、第一実施形態に係る図6に示す進み解消サブルーチンの代わりに、図8に示す進み解消サブルーチンを用いて、チャート紙の監視処理が行われている。
図8に示す進み解消サブルーチンは、進みを解消するために、24時間に相当する距離を基準速度よりも大幅に大きな高速速度で送り出すことによって、目標時刻を実質的に遅らせるように、設定されている。
ステップS401では、制御装置5は、メインルーチンのステップS7において読み取られたQRコード10について、読み取られたQRコード10の目標時刻と、QRコード10が読み取られたときのタイマー51の現在時刻との時間差Aを導出する。ステップS401の次のステップS402では、制御装置5は、基準速度で24時間送り出したときにチャート紙9が進む距離を、時間差Aで、高速送りするのに要する高速速度を導出する。
ステップS403の次のステップS404では、制御装置5の駆動制御部53は、紙送り機構2に高速送りを開始させる。ステップS404の次のステップS405では、制御装置5は、ステップS404における高速送りの開始から、ステップS401で導出された時間差Aが経過したか否かを判定する。時間差Aが経過している場合、処理がステップS406に進み、時間差Aが経過していない場合、処理がステップS405に戻る。ここで、ステップS405がループ処理から外れて終了するまでに、進みを解消するように高速送りが実行される。そのため、ステップS405の終了時点では、進みが解消したと仮定される。
ステップS406では、制御装置5の駆動制御部53は、紙送り機構2に高速送りを終了させ、基準送りを再開させる。
ステップS406の次のステップS407では、制御装置5の判定部52は、ステップS7で読み取られたQRコード10に後続する調整用QRコード10aについて、その調整用QRコード10aが有する目標時刻が、その調整用QRコード10aが読み取られたときのタイマー51の現在時刻に時間的に一致しているか否かを判定する。その調整用QRコード10aについて、目標時刻が現在時刻に一致している場合、処理が、ステップS408に進み、目標時刻が現在時刻に一致していない場合、処理が、ステップS409に進む。
ステップS407をより詳しく説明する。ステップS407では、制御装置5の判定部52は、ステップS7で読み取られたQRコード10より24時間遅れたQRコード10の直後に並ぶ調整用QRコード10aが有する目標時刻が、現在時刻と一致するか否かを判定する。目標時刻が現在時刻に一致している場合、進みが解消されている。目標時刻が現在時刻に一致していない場合、ステップS11の後にステップS12が実行され、遅れが発生しているか、又は進みが発生しているかに応じて、遅れ解消サブルーチンか、又は進み解消サブルーチンが実行される。こうして、ステップS7で読み取られたQRコード10よりも24時間遅れたQRコード10が有する目標時刻及びそれ以降のQRコード10が有する目標時刻は、現在時刻に一致することになる。
ステップS408では、制御装置5は、進み解消サブルーチンによりチャート紙9の位置調整を行って、不一致が解消された旨を、記録装置3を駆動してチャート紙に記録させる。目標時刻が現在時刻に一致している場合のステップS408が終了すると、処理が、メインルーチンのステップS5に戻る。
第一から第三実施形態のそれぞれに係る記録計1は、チャート紙9を前記チャート紙9の連続方向に沿って送り出す紙送り機構2と、前記チャート紙9が所定の基準速度で送り出されるのに伴って、前記チャート紙9に線図を記録する記録装置3と、を備える。前記チャート紙9には、少なくとも1つのQRコードが設けられる。前記QRコードは、前記チャート紙9の前記QRコードに対応する位置に記録が行われるべき目標時刻に関する目標時刻情報を有する。前記記録計1は、前記チャート紙9が送り出されるのに伴って、前記QRコードを読み取る読取装置4と、現在時刻に関する現在時刻情報を計時するタイマー51と、を備える。前記記録計1は、読み取られた前記QRコードが有する前記目標時刻情報が、前記QRコードが読み取られたときの前記現在時刻情報に時間的に一致するか否かを判定する判定部52を備える。前記記録計1は、前記判定部52による判定結果が不一致である場合に、前記判定結果が不一致である旨を告知する状態表示装置6及び警報装置8を備える。
第一から第三実施形態のそれぞれに係る記録計1によれば、判定部52による判定において、読み取られたQRコードが有する目標時刻情報が、QRコードが読み取られたときの現在時刻情報に時間的に一致しない場合に、判定結果が不一致である旨が告知される。ここで、読取装置4がQRコードを読み取ったときの現在時刻情報は、チャート紙9のQRコードが有する位置に記録が行われた記録時刻情報である。そのため、第一から第三実施形態のそれぞれに係る記録計1は、目標時刻情報が記録時刻情報に一致しない場合に、不一致の発生を自動で告知できる。
第一から第三実施形態のそれぞれに係る記録計1は、前記紙送り装置2による前記チャート紙9の送り出し速度を制御する駆動制御部53を備え、前記チャート紙9には、前記連続方向に並んで複数の前記QRコードが設けられ、各QRコードは、前記連続方向において後続する他のQRコードの前記目標時刻情報よりも時間的に進んだ前記目標時刻情報を有し、前記判定部52による判定結果が不一致である場合、前記駆動制御部53は、前記判定結果に関連する前記QRコードに後続するいずれか1つの他のQRコードが読み取られるときに、前記他のQRコードが有する前記目標時刻情報が、前記他のQRコードが読み取られたときの前記現在時刻情報に時間的に一致するように、前記送り出し速度を制御する。
第一から第三実施形態のそれぞれに係る記録計1によれば、判定部52による判定において、読み取られたQRコードが有する目標時刻情報が、QRコードが読み取られたときの現在時刻情報に時間的に一致しない場合に、そのQRコードに後続するいずれか1つの他のQRコードが読み取られるときに、目標時刻情報が、読み取られたときの現在時刻情報に一致するように、送り出し速度が制御される。そのため、他のQRコードが読み取られた後に、記録時刻情報が目標時刻情報に一致するようになる。したがって、第一から第三実施形態のそれぞれに係る記録計1は、記録時刻情報が目標時刻情報に一致しない状況が発生しても、そのような不一致が継続することを防止できる。
第一から第三実施形態のそれぞれに係る記録計1において、読み取られた前記QRコードが有する前記目標時刻情報が、前記読取装置4が前記QRコードを読み取ったときの前記現在時刻情報よりも時間的に遅れていたことにより、前記判定部52による判定結果が不一致である場合、前記駆動制御部53は、前記他のQRコードが前記読取装置4に読み取られたときに、前記他のQRコードの前記目標時刻情報が、読み取られたときの前記現在時刻情報に時間的に一致するように、時間的な遅れに基づいて、前記基準速度よりも増加するように前記送り出し速度を制御する。
第一から第三実施形態のそれぞれに係る記録計1によれば、QRコードが有する目標時刻情報が、そのQRコードが読み取られたときの現在時刻情報よりも遅れている場合に、時間的な遅れに基づいて送り出し速度を増加させることで、他のQRコードが有する目標時刻情報が、他のQRコードが読み取られたときの現在時刻情報に一致する。したがって、第一から第三実施形態のそれぞれに係る記録計1は、目標時刻情報が記録時刻情報よりも遅れた状況が発生しても、その状況を自動で解消できる。
第一から第三実施形態のそれぞれに係る前記記録計1は、前記紙送り装置2による前記チャート紙9の送り出し速度を制御する駆動制御部53を備える。読み取られた前記QRコードが有する前記目標時刻情報が、前記読取装置4が前記QRコードを読み取ったときの前記現在時刻情報よりも時間的に進んでいたことにより、前記判定部52による判定結果が不一致である場合、前記駆動制御部53は、読み取られた前記QRコードが有する目標時刻情報と、前記判定結果が不一致であると判定された後に前記タイマーが計時した前記現在時刻情報とが時間的に一致するまで、前記紙送り装置2の駆動を停止させる。
第一実施形態に係る記録計1によれば、QRコードが有する目標時刻情報が、そのQRコードが読み取られたときの現在時刻情報よりも進んでいた場合に、紙送り装置2の駆動の停止により、QRコードが有する目標時刻情報が、QRコードが読み取られたときの現在時刻情報に一致する。したがって、第一から第三実施形態のそれぞれに係る記録計1は、目標時刻情報が記録時刻情報よりも進んだ状況が発生しても、その状況を自動で解消できる。
第二及び第三実施形態のそれぞれに係る記録計1において、読み取られた前記QRコードが有する前記目標時刻情報が、前記読取装置が前記QRコードを読み取ったときの前記現在時刻情報よりも時間的に進んでいたことにより、前記判定部52による判定結果が不一致である場合、読み取られたQRコードに後続する他のQRコードであって、読み取られたQRコードが有する前記目標時刻情報に対して24時間以上遅れた前記目標時刻情報を有する他のQRコードが前記読取装置に読み取られたときに、前記他のコードが有する前記目標時刻情報が、該他のコードが読み取られたときの前記現在時刻情報に時間的に一致するように、時間的な進みに基づいて、前記基準速度よりも増加するように前記送り出し速度を制御してもよい。
第二及び第三実施形態のそれぞれに係る記録計1によれば、QRコードが有する目標時刻情報が、そのQRコードが読み取られたときの現在時刻情報よりも進んでいた場合に、時間的な進みに基づいて送り出し速度を増加させることで、他のQRコードが有する目標時刻情報が、他のQRコードが読み取られたときの現在時刻情報に一致する。したがって、第二及び第三実施形態のそれぞれに係る記録計1は、目標時刻情報が記録時刻情報よりも進んだ状況が発生しても、その状況を自動で解消できる。
なお、本発明の記録計は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
第一から第三実施形態では、記録の行われる対象物は、チャート紙9であるが、このような対象物は、チャート紙9に限定されるものではない。連続紙であれば、チャート紙以外の他の記録紙に記録が行われてもよい。目標時刻を情報として有するコードとして、QRコードが用いられている。目標時刻を情報として有するコードは、QRコードに限定されるものではなく、目標時刻を識別可能な媒体であれば、他の媒体を利用することができる。第一から第三実施形態では、コードの一例としてのQRコードは、24時間表記で表現される時刻としての目標時刻そのものを目標時刻情報として有しているが、この構成に限定されない。目標時刻情報は、基準とする時刻から該当するQRコードが読まれるまでの累積時間であってもよい。基準とする時刻は、例えば、記録開始後最初にQRコードが読み取られたときの時刻を採用できる。
なお、本明細書において、時間的に一致するとは、時刻の完全な一致を指すものではなく、電子機器の制御遅れなどの時間差を考慮して設定された一定の時間幅を有するものである。