以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する種々の実施形態において、同様の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。まず、図1を参照して、レーザ加工システム10について説明する。
レーザ加工システム10は、レーザ発振器12、レーザ加工ヘッド14、アシストガス供給装置16、及び配置装置18を備える。レーザ発振器12は、内部でレーザ発振し、レーザ光を外部へ出射する。レーザ発振器12は、CO2レーザ発振器、固体レーザ(YAGレーザ)発振器、又はファイバレーザ発振器等、如何なるタイプのものであってもよい。
レーザ加工ヘッド14は、ヘッド本体20、光学レンズ22、レンズ駆動部23、及びノズル24を有する。ヘッド本体20は、中空であって、その基端部に光ファイバ26が接続されている。レーザ発振器12から出射されたレーザ光は、光ファイバ26内を伝搬して、ヘッド本体20の内部に入射する。
光学レンズ22は、コリメートレンズ及びフォーカスレンズ等を有し、ヘッド本体20の内部に入射したレーザ光をコリメート及び集光してワークWへ照射する。光学レンズ22は、光軸Oの方向へ移動可能となるように、ヘッド本体20の内部に収容されている。
レンズ駆動部23は、各々の光学レンズ22を、光軸Oの方向へ移動させる。レンズ駆動部23が光学レンズ22の光軸Oの方向の位置を調整することによって、ノズル24から出射されたレーザ光の焦点の光軸Oの方向の位置を制御できる。
ノズル24は、中空であって、ヘッド本体20の先端部に設けられている。ノズル24は、その基端部から先端部へ向かうにつれて、光軸Oと直交する断面積が小さくなるような円錐台状の外形を有し、その先端部に円形の出射口28を有する。ノズル24及びヘッド本体20の内部には、空洞のチャンバ29が形成されている。光学レンズ22から伝搬したレーザ光は、出射口28から出射される。
アシストガス供給装置16は、ガス供給管30を介して、ノズル24及びヘッド本体20の内部に形成されたチャンバ29にアシストガスを供給する。アシストガスは、例えば、窒素又は空気である。チャンバ29に供給されたアシストガスは、レーザ光の光軸Oに沿って、レーザ光とともに出射口28から噴流として出射される。ノズル24は、出射口28から離れた位置に、噴流の速度の極大点を形成する。
以下、図2及び図3を参照して、ノズル24から出射されるアシストガスの噴流について説明する。図2は、ノズル24の出射口28から出射された噴流を、高速度カメラで撮影した画像である。図3は、図2に示す噴流の画像、及び、噴流の速度Vと、光軸Oに沿って出射口28から離反する方向の位置xとの関係を概略的に示すグラフを示している。
本稿において、噴流の「速度」とは、アシストガスの流速(単位:m/sec)と流量(単位:m3/sec)とを含むパラメータとして定義する。図2及び図3に示す噴流は、チャンバ29への供給圧力が1MPa、出射口28の開口寸法(直径)が2mmの条件で形成されたものである。
図2及び図3に示すように、ノズル24から出射されたアシストガスの噴流においては、出射口28から光軸Oの方向へ離れた位置に、その速度Vが極大となる第1のマッハディスク領域33及び第2のマッハディスク領域35が形成される。第1のマッハディスク領域33に、速度Vの第1の極大点32の位置x1が含まれており、第2のマッハディスク領域35に、速度Vの第2の極大点34の位置x2が含まれている。
より具体的には、図3のグラフに示すように、噴流の速度Vは、出射口28の位置(すなわち、x=0)から光軸Oに沿って離れるにつれて徐々に増加し、位置x1で第1の極大点32となる。なお、図3に示す画像の噴流では、x1≒4mmである。位置x1を含む第1のマッハディスク領域33では、噴流と該噴流の外側の大気との境界で反射したアシストガスの反射波が互いに干渉し合って強め合う、いわゆるマッハディスクが形成されている。
位置x1から光軸Oに沿って出射口28からさらに離れるにつれて、速度Vは、急激に減少し、次いで増加に転じて、位置x2で第2の極大点34となる。位置x2を含む第2のマッハディスク領域35では、第2のマッハディスクが形成されている。
このように、ノズル24から出射された噴流においては、光軸Oの方向に複数のマッハディスクが形成され、これにより、噴流の速度Vは、光軸Oの方向に複数の極大点32、34を有することになる。形成されるマッハディスク(すなわち、極大点)の数は、出射される噴流の速度Vに応じて増加する。
本願発明においては、レーザ加工システム10でワークWをレーザ加工するときに、該ワークW(具体的には、ワークWの加工部位S)をマッハディスク領域33及び35のうちの1つに配置するように、ワークWの加工部位Sに対してノズル24を、極大点32、34の位置x1、x2に基づいて定めた目標位置に配置する。
従来は、ワークWのレーザ加工中にワークWに吹き付けるアシストガスの圧力が、可能な限り大きいことが望ましいとされてきた。アシストガスの圧力は、出射口28の位置で最大となる。そこで、従来、ワークWをレーザ加工するときに、該ワークWを、圧力が最大となる出射口28に、可能な限り近接させていた。具体的には、従来は、ワークWを、図3中の近接領域36に配置させていた。この近接領域36は、第1の極大点32よりも出射口28に近く、アシストガスの圧力が最大値に近い値となっている領域である。
このようにノズル24とワークWとを近接させると、ワークWに対してノズル24を高速移動させつつレーザ加工を行った場合に、ノズル24とワークWとの間でプラズマが発生し易くなる。プラズマが発生すると、ワークWの仕上がり面が粗くなり得る。また、ノズル24とワークWとを近接させると、レーザ加工によって溶融して飛び散ったワークWの粒子が出射口28からノズル24の内部へ進入し、レーザ加工ヘッド14の構成要素(例えば、保護ガラス)を汚染してしまう可能性も増大する。
本発明者は、鋭意検討の結果、ワークWのレーザ加工中に該ワークWに吹き付けるアシストガスの速度Vが大きい程、レーザ光によって溶融したワークWの材料を、該アシストガスによって効果的に吹き飛ばすことができるという知見を得た。
この知見を基に、本発明者は、ノズル24の出射口28からアシストガスの噴流を出射した場合に、上述した極大点32、34が形成されることに着目し、ワークWをレーザ加工するときに該ワークWを1つのマッハディスク領域33又は35に配置すれば、アシストガスを、出射口28の近接領域36よりも大きな速度VでワークWに吹き付けることができることを見出した。
再度、図1を参照して、配置装置18は、ワークW(例えば、加工部位S)をマッハディスク領域33又は35に配置するために、ノズル24を加工部位Sに対して、極大点32又は34の位置x1又はx2に基づいて定めた目標位置に配置する。具体的には、配置装置18は、ワークテーブル38、y軸移動機構40、x軸移動機構42、及びz軸移動機構44を有する。
ワークテーブル38は、作業セルの床の上に固定されている。例えば、ワークテーブル38は、図1中のz軸方向へ延びる複数の針を有し、ワークWは、該複数の針の先端によって形成される設置面に設置される。z軸方向は、例えば、鉛直方向と実質平行である。
y軸移動機構40は、一対のレール機構46及び48と、一対のコラム50及び52とを有する。レール機構46及び48は、例えばサーボモータ及びボールねじ機構(ともに図示せず)を内蔵し、y軸方向へ延在する。レール機構46及び48は、コラム50及び52を、y軸方向へそれぞれ移動させる。
x軸移動機構42は、例えばサーボモータ及びボールねじ機構(ともに図示せず)を内蔵し、コラム50及び52に固定され、該コラム50及び52の間で延在する。x軸移動機構42は、z軸移動機構44をx軸方向へ移動させる。z軸移動機構44は、例えば、サーボモータ及びボールねじ機構(ともに図示せず)を内蔵し、レーザ加工ヘッド14をz軸方向へ移動させる。レーザ加工ヘッド14は、出射するレーザ光の光軸Oがz軸と平行となるように、z軸移動機構44に設けられている。
ワークWを加工するとき、配置装置18は、ノズル24を加工部位Sに対して目標位置に配置する。例えば、レーザ加工システム10に設けられた後述する制御部(図示せず)が配置装置18を制御し、ノズル24とワークWとを目標位置に自動で配置する。又は、オペレータが、手動で配置装置18を動作させて、ノズル24を加工部位Sに対して目標位置に配置してもよい。
次いで、アシストガス供給装置16は、チャンバ29にアシストガスを供給し、出射口28から、マッハディスク領域33及び35を有するアシストガスの噴流を出射する。そして、レーザ発振器12は、レーザ加工ヘッド14にレーザ光を出射し、レーザ加工ヘッド14は、出射口28からレーザ光を出射してワークWに照射する。このとき、レンズ駆動部23は、出射口28から出射されたレーザ光の焦点が加工部位Sに配置されるように、光学レンズ22の光軸Oの方向の位置を調整する。
こうして、噴流のマッハディスク領域33又は35にワークWを配置した状態で、該ワークWをレーザ加工する。この構成によれば、ワークWの加工時に、ノズル24から出射されたアシストガスを、出射口28の近接領域36よりも大きな速度Vで該ワークWに吹き付けることができるので、アシストガスを有効利用して、レーザ光によって溶融したワークWの材料を効果的に吹き飛ばすことができる。
また、ワークWを、出射口28の近接領域36に配置する場合と比べて、上述したプラズマの発生を抑えることができるので、ワークWの仕上がり品質を向上させることができる。また、ワークWを近接領域36に配置する場合と比べて、レーザ加工中に発生したワークWの飛散粒子がノズル24の内部へ進入することを抑制できるので、レーザ加工ヘッド14の構成要素の汚染を抑制できる。
次に、図4及び図5を参照して、噴流観測装置60について説明する。噴流観測装置60は、上述した極大点32、34の位置x1、x2を表す情報を取得する。噴流観測装置60は、制御部62、ダミーワーク64、測定器66、及び、上述の配置装置18を備える。制御部62は、プロセッサ(CPU、GPU等)及び記憶部(ROM、RAM等)等を有し、測定器66及び配置装置18を制御する。
ダミーワーク64は、ワークテーブル38の設置面に設置される。ダミーワーク64は、ワークWと同じ外形(寸法)を有し、加工部位Sに対応するダミー加工部位64aを有する。図4に示す例では、ダミーワーク64は、レーザ加工時のワークWの設置位置とは別の位置に配置される。
測定器66は、ダミー加工部位64aの位置(又は、ダミー加工部位64aから僅かに出射口28の方向へずれた位置)で、出射口28から出射された噴流の速度Vを測定する。例えば、測定器66は、該速度Vを接触式に測定する熱線流速計を有し、該熱線流速計は、噴流内に配置され、該速度Vに応じて抵抗値が変化する熱線を含む。又は、測定器66は、該速度Vを非接触式に測定するレーザ流速計を有し、該レーザ流速計は、噴流に光を照射して速度Vを測定する光学センサを含む。
測定器66は、噴流の速度Vを測定し、出力データ(測定値)αとして、制御部62へ出力する。測定器66は、ダミーワーク64の上に配置されてもよいし、又は、ダミーワーク64から離隔して配置されてもよい。ダミーワーク64は、噴流の流れ方向の前方(すなわち、下流)に配置され、測定器66は、出射口28とダミーワーク64との間の位置で速度Vを測定する。
配置装置18は、ワークテーブル38、y軸移動機構40、x軸移動機構42、及びz軸移動機構44を有し、レーザ加工ヘッド14を、x軸、y軸、及びz軸の方向へ移動させて、これにより、レーザ加工ヘッド14を、ダミーワーク64及び測定器66に対して移動させる。
次に、噴流観測装置60を用いて極大点32、34の位置x1、x2を取得する方法について、説明する。まず、制御部62は、配置装置18を動作させて、レーザ加工ヘッド14を測定初期位置に配置する。レーザ加工ヘッド14が測定初期位置に配置されたとき、図4に示すように、レーザ加工ヘッド14の光軸Oがダミーワーク64のダミー加工部位64aと交差するように、レーザ加工ヘッド14がダミーワーク64及び測定器66に対して位置決めされる。
また、出射口28と測定器66の測定位置(すなわち、ダミー加工部位64aの位置)との距離daは、初期値da0となる。一例として、初期値da0は、測定器66の測定位置が、図3中の近接領域36のような、出射口28の近接位置に配置されるように、設定される。
他の例として、初期値da0は、測定器66の測定位置が、出射口28から最も離れた極大点(図3の例では、第2の極大点34)があると推定される位置から噴流の下流側へ十分に離れた位置に配置されるように、設定される。初期値da0は、オペレータによって予め定められる。
次いで、制御部62は、アシストガス供給装置16に指令を送り、該指令を受けて、アシストガス供給装置16は、チャンバ29に供給圧力PSでアシストガスを供給する。ノズル24は、図2及び図3に示すような、速度Vの極大点32及び34を有するアシストガスの噴流を出射する。
次いで、制御部62は、配置装置18を動作させて、測定器66の測定位置と出射口28との距離daを変化させるように、レーザ加工ヘッド14をz軸方向へ移動させる。一例として、上記の初期値da0が、測定器66の測定位置を出射口28の近接位置に配置するように設定された場合、制御部62は、配置装置18を動作させて、距離daを増大させるように、レーザ加工ヘッド14をz軸プラス方向へ移動させる。
他の例として、上記の初期値da0が、測定器66の測定位置を出射口28から最も離れた極大点の下流側に配置するように設定された場合、制御部62は、配置装置18を動作させて、距離daを減少させるように、レーザ加工ヘッド14をz軸マイナス方向へ移動させる。
配置装置18がレーザ加工ヘッド14をz軸方向へ移動させる間、制御部62は、測定器66に指令を送り、該測定器66に速度Vを連続的に測定させる。例えば、測定器66は、配置装置18がレーザ加工ヘッド14を移動させる間、所定の周期(例えば0.5秒)で、速度Vを連続的に測定する。こうして、測定器66の測定位置は、噴流に沿って相対的に移動され、測定器66は、該噴流に沿って速度Vを連続的に測定する。
測定器66は、測定した速度Vを、出力データα(=V)として、制御部62へ出力する。このようにして測定器66が出力した出力データαと距離daとの関係は、図3に示す速度Vと位置xとの関係に対応することになる。すなわち、測定器66が取得した出力データαは、距離daに応じて変化して、第1の極大点32に対応する位置に第1のピーク値αmax1を有し、第2の極大点34に対応する位置に第2のピーク値αmax2を有することになる。
制御部62は、測定器66が出力する連続した出力データαの第1のピーク値αmax1を、第1の極大点32の位置x1を表す情報として取得し、第2のピーク値αmax2を、第2の極大点34の位置x2を表す情報として取得する。このように、制御部62は、出力データαに基づいて極大点32、34の位置を表す情報を取得する位置取得部68として機能する。
そして、制御部62は、第1のピーク値αmax1を測定したときの測定器66の測定位置(すなわち、ダミー加工部位64aの位置)と出射口28との距離daを、目標距離dTとして取得する。この目標距離dTは、出射口28に対する第1の極大点32の位置を表し、例えば、公知のギャップセンサ又は変位計等を用いて取得することができる。
そして、制御部62は、速度Vを測定したときの出射口28の開口寸法φと供給圧力PSとに関連付けて目標距離dTをデータベース化し、記憶部に記憶する。オペレータは、ノズル24の開口寸法φと供給圧力PSとを様々に変更し、制御部62は、開口寸法φと供給圧力PSを変更する毎に、上述の方法で目標距離dTを取得して、データベース化する。なお、出射口28が円形である場合、開口寸法は、径である。
以下の表1に、開口寸法φ、供給圧力P
S、及び目標距離d
Tのデータベースの例を示す。
表1に示すデータベースにおいては、ノズル24の開口寸法φと供給圧力PSとに関連付けられて、複数の目標距離dTが設定されている。なお、制御部62は、第2のピーク値αmax2を測定したときの出射口28と測定器66の測定位置との距離da_2を、第2の目標距離dT_2として取得し、該第2の目標距離dT_2のデータベースを同様に作成してもよい。また、アシストガスの種類(窒素、空気等)毎に、データベースをそれぞれ作成してもよい。
このように作成された目標距離dTのデータベースは、後述するように、レーザ加工システムでワークWをレーザ加工するときにノズル24を配置すべき目標位置を定めるために、用いられる。例えば、レーザ加工時に用いるノズル24の出射口28の開口寸法φが4mmであり、チャンバ29への供給圧力PSが2.0MPaである場合、dT=10mmというデータが、目標位置を定めるために用いられる。
このように、アシストガスの噴流の速度Vを測定することで、極大点32、34の位置を表す情報を取得することができる。この構成によれば、極大点32、34の位置を測定によって高精度に求めることができる。
また、噴流観測装置60は、ダミーワーク64を備えている。ここで、実際にレーザ加工するときは、ワークWにアシストガスを吹き付けている。噴流観測装置60においては、ワークWの代わりにダミーワーク64にアシストガスを吹き付けて、そのダミー加工部位64aの位置で測定した速度Vから、極大点32、34の位置を測定している。この構成によれば、実際のレーザ加工に近い状態で極大点32、34の位置を測定できるので、該極大点32、34の位置をより高精度に測定できる。
また、ダミーワーク64は、ワークWと同じ外形(寸法)を有している。この構成によれば、実際のレーザ加工により近い状態で極大点32、34の位置を測定できるので、該極大点32、34の位置をさらに高精度に測定できる。なお、ダミーワーク64は、ワークWと異なる外形(寸法)を有してもよい。この場合において、ダミーワーク64は、ワークWと同じz軸方向の厚みと、加工部位Sに対応する部位64aを有してもよい。また、ダミーワーク64を用いることなく、極大点32、34の位置を取得することができる。
次に、図6及び図7を参照して、噴流観測装置70について説明する。噴流観測装置70は、上述した極大点32、34の位置x1、x2を表す情報を取得する。噴流観測装置70は、制御部72、測定器76、及び配置装置18を備える。制御部72は、プロセッサ及び記憶部(図示せず)を有し、測定器76及び配置装置18を制御する。
配置装置18は、ワークテーブル38、y軸移動機構40、x軸移動機構42、及びz軸移動機構44を有し、該ワークテーブル38の上には、物体74が設置されている。配置装置18は、レーザ加工ヘッド14を、x軸、y軸、及びz軸の方向へ移動させて、これにより、ノズル24を物体74に対して移動させる。
物体74には、円形の貫通孔74aが形成されている。この貫通孔74aの開口寸法は、ノズル24から出射されるレーザ光によってワークWを穿孔したときに形成されると推定される貫通孔の開口寸法と、略同じに設定される。物体74は、ワークWと同じ外形(寸法)を有してもよいし、又は、ワークWと異なる外形(寸法)を有してもよい。また、物体74は、ワークWと同じz軸方向の厚みと、加工部位Sに対応する部位とを有してもよい。
測定器76は、貫通孔74aに隣接して配置され、ノズル24の出射口28から出射された噴流が貫通孔74aを通過するときに物体74に衝突することによって発生する音の音圧SP又は周波数fを測定する。なお、本稿において、音の「音圧」とは、音圧(単位:Pa)のみならず、音圧レベル(単位:dB)、音のインテンシティー(単位:W/m2)等を含む。
また、音の「周波数」とは、音の周波数のみならず、音の周波数特性(すなわち、周波数スペクトラム)を含む。この周波数特性には、少なくとも1つの周波数成分(例えば、1Hz)の音圧レベル、又は、所定の周波数帯域(例えば、1kHz〜10kHz)の平均音圧レベル等の情報が含まれる。測定器76は、音を電気信号に変換するマイクロフォン76aと、該電気信号から音の周波数特性を取得する周波数取得部76bとを有する。
次に、噴流観測装置70を用いて極大点32、34の位置x1、x2を取得する方法について、説明する。まず、制御部72は、配置装置18を動作させて、レーザ加工ヘッド14を測定初期位置に配置する。レーザ加工ヘッド14が測定初期位置に配置されたとき、図6に示すように、レーザ加工ヘッド14の光軸Oが貫通孔74aを通過するように、レーザ加工ヘッド14が物体74に対して位置決めされる。また、出射口28と物体74との距離dbは、初期値db0となる。
一例として、初期値db0は、物体74が、図3中の近接領域36のような出射口28の近接位置に配置されるように、設定される。他の例として、初期値db0は、物体74が、出射口28から最も離れた極大点(図3の例では、第2の極大点34)があると推定される位置から噴流の下流側へ十分に離れた位置に配置されるように、設定される。
次いで、制御部72は、アシストガス供給装置16に指令を送り、該指令を受けて、アシストガス供給装置16は、チャンバ29に、供給圧力PSでアシストガスを供給する。ノズル24は、極大点32及び34を有するアシストガスの噴流を出射する。次いで、制御部72は、配置装置18を動作させて、物体74と出射口28との距離dbを変化させるように、レーザ加工ヘッド14をz軸方向へ移動させる。
一例として、上記の初期値db0が、物体74を出射口28の近接位置に配置するように設定された場合、制御部72は、配置装置18を動作させて、距離dbを増大させるように、レーザ加工ヘッド14をz軸プラス方向へ移動させる。
他の例として、上記の初期値db0が、物体74を出射口28から最も離れた極大点の下流側に配置するように設定された場合、制御部72は、配置装置18を動作させて、距離dbを減少させるように、レーザ加工ヘッド14をz軸マイナス方向へ移動させる。
配置装置18がレーザ加工ヘッド14をz軸方向へ移動させて、ノズル24を物体74に対して接近又は離反させる間、制御部72は、測定器76に指令を送り、該測定器76に音圧SP又は周波数fを連続的に測定させる。例えば、測定器76は、配置装置18がレーザ加工ヘッド14を移動させる間、所定の周期(例えば0.5秒)で、音圧SP又は周波数fを連続的に測定する。測定器66は、測定した音圧SP又は周波数fを、出力データβ(=SP又はf)として、制御部72へ順次出力する。
ここで、噴流が貫通孔74aの通過時に物体74に衝突することによって発生する音の音圧SP及び周波数fは、アシストガスの流速VSと高度に相関する。具体的には、噴流が物体74に衝突することによって発生する音の音圧(ピーク値、実効値等)、及び音の周波数特性(例えば、少なくとも1つの周波数成分の音圧レベル)は、アシストガスの流速VSと高度に相関する。
よって、取得した出力データβと距離dbとの関係は、図3に示すグラフに対応することになる。すなわち、測定器76からの出力データβは、距離dbに応じて変化し、第1の極大点32に対応する位置に第1のピーク値βmax1を有し、第2の極大点34に対応する位置に第2のピーク値βmax2を有することになる。
制御部72は、測定器76が出力する連続した出力データβの第1のピーク値βmax1を、第1の極大点32の位置x1を表す情報として取得し、第2のピーク値βmax2を、第2の極大点34の位置x2を表す情報として取得する。このように、制御部72は、出力データβに基づいて極大点32、34の位置を表す情報を取得する位置取得部78として機能する。
そして、制御部72は、第1のピーク値βmax1を測定したときの物体74と出射口28との距離dbを、目標距離dTとして取得する。この目標距離dTは、出射口28に対する第1の極大点32の位置を示し、例えば、公知のギャップセンサ等を用いて取得することができる。
そして、制御部72は、音圧SP及び周波数fを測定したときの出射口28の開口寸法φと供給圧力P
Sとに関連付けて、目標距離d
T及び第1のピーク値β
max1を、データベース化する。以下の表2に、開口寸法φ、供給圧力P
S、第1のピーク値β
max1、及び目標距離d
Tのデータベースの例を示す。
表2に示すデータベースにおいては、ノズル24の開口寸法φと供給圧力PSとに関連付けられて、第1のピーク値βmax1(音圧レベル)及び目標距離dTが、設定されている。なお、制御部72は、第2のピーク値βmax2を測定したときの出射口28と物体74との距離db_2を、第2の目標距離dT_2として取得し、該第2の目標距離dT_2のデータベースを同様に作成してもよい。
また、アシストガスの種類(窒素、空気等)毎に、データベースをそれぞれ作成してもよい。このように作成された目標距離dTのデータベースは、後述するように、レーザ加工システムでワークWをレーザ加工するときにノズル24を配置すべき目標位置を定めるために、用いられる。
以上のように、噴流観測装置70によれば、アシストガスの噴流が物体74に衝突する音に基づいて、極大点32、34の位置x1、x2を表す情報を取得することができる。この構成によれば、極大点32、34の位置x1、x2を測定によって高精度に求めることができる。また、噴流観測装置70は、後述するように、レーザ加工中に、極大点32、34の位置x1、x2を表す情報を取得できる。
次に、図8及び図9を参照して、噴流観測装置80について説明する。噴流観測装置80は、上述の第1の極大点32の位置x1を、所定の演算により取得する。噴流観測装置80は、制御部82及び測定器84を備える。制御部82は、プロセッサ及び記憶部(図示せず)を有し、測定器84を制御する。
測定器84は、アシストガス供給装置16からチャンバ29に供給されているアシストガスの供給流量VVを測定する。測定器84は、ガス供給管30に設置されており、アシストガス供給装置16からチャンバ29へ向かってガス供給管30内を流動するアシストガスの流量VVを測定する。
次に、噴流観測装置80によって第1の極大点32の位置x1を取得する方法について説明する。まず、制御部82は、アシストガス供給装置16に指令を送り、該指令を受けて、アシストガス供給装置16は、チャンバ29にアシストガスを供給する。ノズル24は、極大点32及び34を有するアシストガスの噴流を出射する。
次いで、制御部82は、測定器84に指令を送り、該指令を受けて測定器84は、アシストガス供給装置16からチャンバ29への供給流量VVを測定する。測定器84は、供給流量VVの出力データ(測定値)を、制御部82へ出力する。次いで、制御部82は、測定器84からの出力データVVと、以下の式1とを用いて、第1の極大点32の位置x1の情報として、出射口28から第1の極大点32までの距離dcを算出する。
dc=0.67×φ×(ρVS 2/2)1/2・・・(式1)
ここで、φは、出射口28の開口寸法を示し、ρは、アシストガスの粘性係数を示し、VSは、出力データVVと開口寸法φから求められるアシストガスの流速VSを示す。このように、制御部82は、測定器84の出力データVVから、演算によって、第1の極大点32の位置x1を取得する位置取得部86として機能する。
噴流観測装置80によれば、第1の極大点32の位置x1を、演算によって、高精度且つ迅速に取得できる。また、噴流観測装置80は、後述するように、レーザ加工中に、第1の極大点32の位置x1をリアルタイムで取得できる。
次に、図10及び図11を参照して、レーザ加工システム100について説明する。レーザ加工システム100は、レーザ発振器12、レーザ加工ヘッド14、アシストガス供給装置16、配置装置18、及び制御部102を備える。制御部102は、プロセッサ(図示せず)及び記憶部104を有し、レーザ発振器12、レーザ加工ヘッド14、アシストガス供給装置16、及び配置装置18を制御する。記憶部104は、データベース106を記憶する。データベース106は、例えば、上記の表1又は表2に示すようなデータベースである。
次に、レーザ加工システム100の動作について説明する。まず、制御部102は、使用されるノズル24の出射口28の開口寸法φと、アシストガス供給装置16からチャンバ29へのアシストガスの供給圧力PSの設定値を取得し、開口寸法φ及び供給圧力PSの設定値から、データベース106内の該当する目標距離dTを記憶部104から読み出して取得する。
次いで、制御部102は、配置装置18を動作させてレーザ加工ヘッド14をワークWに対して移動し、出射口28と加工部位Sとの距離dが目標距離dTに一致する目標位置に、ノズル24を配置する。このように、目標位置は、データベース106を用いて定められ、制御部102は、配置装置18(すなわち、移動機構40、42、44)を制御して、ノズル24を該目標位置に配置する移動制御部108として機能する。
次いで、制御部102は、アシストガス供給装置16を動作させて、チャンバ29に供給圧力PSでアシストガスを供給し、ノズル24は、速度Vの極大点32、34を有するアシストガスの噴流を出射する。次いで、制御部102は、レーザ発振器12を動作させて、出射口28からレーザ光を出射し、レンズ駆動部23を動作させて、出射されたレーザ光の焦点が加工部位Sに配置されるように、光学レンズ22の光軸Oの方向の位置を調整する。
その結果、レーザ光によってワークWの加工部位Sに貫通孔が形成され、制御部102は、記憶部104に記憶された加工プログラムに従って配置装置18を動作させて、ノズル24をワークWに対して移動させつつ、ワークWをレーザ加工(具体的には、レーザ切断)する。このとき、ワークWの加工部位Sは、アシストガスの噴流の第1のマッハディスク領域33(具体的には、第1の極大点32の位置)に配置されることになる。
レーザ加工システム100によれば、アシストガスを有効利用して、レーザ光によって溶融したワークWの材料を効果的に吹き飛ばすことができる。また、上述したプラズマの発生を抑えることができるので、ワークWの加工部位Sの仕上がり品質を向上させることができるとともに、レーザ加工ヘッド14の構成要素の汚染を抑制できる。
また、レーザ加工システム100においては、ワークWの加工時にノズル24を配置すべき目標位置を、第1の極大点32の位置のデータベース106を用いて定めている。この構成によれば、ノズル24とワークWとを目標位置に、より迅速且つ容易に位置決めし、レーザ加工を開始することができる。
なお、レーザ加工システム100において、記憶部104は、制御部102とは別の要素として設けられてもよい。この場合において、記憶部104は、制御部102と通信可能に接続された外部装置(サーバ等)に内蔵されてもよいし、制御部102に外付け可能な記憶媒体(ハードディスク又はフラッシュメモリ等)であってもよい。また、制御部102は、ワークWをレーザ加工しているときに、出射口28とワークWとの距離を固定してもよい。
次に、図12及び図13を参照して、レーザ加工システム110について説明する。レーザ加工システム110は、レーザ発振器12、レーザ加工ヘッド14、アシストガス供給装置16、配置装置18、測定器76、及び制御部112を備える。
制御部112は、プロセッサ及び記憶部104を有し、レーザ発振器12、レーザ加工ヘッド14、アシストガス供給装置16、配置装置18、測定器76を制御する。記憶部104には、上記の表2に示すデータベース106が記憶されている。制御部112は、上述の位置取得部78として機能する。すなわち、このレーザ加工システム110においては、配置装置18、測定器76、及び制御部112は、上述の噴流観測装置70を構成する。
次に、図14を参照して、レーザ加工システム110の動作について説明する。図14に示すフローは、制御部112が、オペレータ、上位コントローラ、又は加工プログラムから、加工開始指令を受け付けたときに、開始される。
ステップS1において、制御部112は、ノズル24を加工部位Sに対して初期目標位置に配置する。具体的には、制御部112は、使用されるノズル24の出射口28の開口寸法φと、チャンバ29へのアシストガスの供給圧力PSの設定値を取得し、開口寸法φ及び供給圧力PSの設定値から、データベース106内の該当する目標距離dTを読み出して取得する。次いで、制御部112は、移動制御部108として機能して、配置装置18を動作させてレーザ加工ヘッド14をワークWに対して移動し、出射口28と加工部位Sとの距離dが目標距離dTに一致する初期目標位置に、ノズル24を配置する。
ステップS2において、制御部112は、アシストガス供給装置16からチャンバ29に供給圧力PSでアシストガスを供給し、出射口28からアシストガスの噴流を出射する。また、制御部112は、レーザ発振器12を動作させて出射口28からレーザ光を出射し、レンズ駆動部23を動作させて、出射されたレーザ光の焦点が加工部位Sに配置されるように、光学レンズ22の光軸Oの方向の位置を調整する。その結果、ワークWには、貫通孔H(図12)が形成され、噴流は、該貫通孔Hを通過する。この貫通孔Hは、上述の貫通孔74aに対応する。
ステップS3において、制御部112は、測定器76による測定を開始する。具体的には、制御部112は、測定器76に指令を送り、該指令を受けて、測定器76は、ノズル24の出射口28から出射された噴流が貫通孔Hを通過するときにワークWに衝突することによって発生する音の音圧SP又は周波数fを、連続的に(例えば、所定の周期で)測定する。
制御部112は、位置取得部78として機能して、第1の極大点32の位置x1を表す情報として、測定器76から音圧SP又は周波数fの出力データβを順次取得し、記憶部104に記憶する。上述の噴流観測装置70に関連して説明したように、第1のピーク値βmax1を含む出力データβは、第1の極大点32の位置x1を表す情報に相当する。
ステップS4において、制御部112は、レーザ加工を開始する。具体的には、制御部112は、加工プログラムに従って配置装置18を動作させて、ノズル24をワークWに対して移動させつつ、出射口28から出射されるレーザ光によってワークWをレーザ加工(レーザ切断)する。
ステップS5において、制御部112は、直近に測定器66が取得した出力データβが、予め定められた下限値βminよりも小さいか否かを判定する。この下限値βminは、ノズル24から出射されている噴流の速度Vが異常に小さくなっているか否かの境界を規定するものであって、オペレータによって予め定められる。
ここで、仮に、出射口28の目詰まり、又はアシストガス供給装置16の動作異常(例えば、ガス欠)が生じていた場合、噴流の速度Vが、基準値よりも大幅に低減し得る。この場合、測定器66によって取得された出力データβは、ノズル24から噴流が正常に出射されているときに測定器66によって測定される基準データと異なる(具体的には、小さくなる)。
制御部112は、出力データβが下限値βminよりも小さいか否かを判定することで、出力データβが基準データと異なっているか否かを判定する。このように、制御部112は、出力データβが基準データと異なっているか否かを判定する異常判定部113として機能する。
制御部112は、出力データβが下限値βminよりも小さい(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS6へ進む。一方、制御部112は、出力データβが下限値βmin以上である(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS8へ進む。ステップS6において、制御部112は、レーザ発振器12に指令を送り、レーザ発振動作を停止し、以って、ワークWのレーザ加工を停止する。
ステップS7において、制御部112は、警告を出力する。例えば、制御部112は、「アシストガスの出射に異常があります。ノズルの開口寸法又はアシストガスの供給圧力をチェックしてください」という音声又は画像の形態の警告信号を生成する。そして、制御部112は、スピーカ又は表示部(図示せず)を通して、該警告を出力する。このように、制御部112は、警告を生成する警告生成部118として機能する。
スピーカ又は表示部は、制御部112に設けられてもよいし、又は、制御部112の外部に設けられてもよい。オペレータは、該警告によって、ノズル24又はアシストガス供給に異常があることを直感的に認識し、ノズル24の交換、又はアシストガス供給装置16の動作異常(例えば、ガス欠)の対策を講じることができる。このステップS7を実行した後、制御部112は、図14に示すフローを終了する。
ステップS8において、制御部112は、直近に測定器76が取得した出力データβが、予め定められた閾値βthよりも小さいか否かを判定する。この閾値βthは、上述の下限値βminよりも大きい値である。一例として、この閾値βthは、データベース106に格納されている第1のピーク値βmax1に所定の係数a(0<a<1)を乗算した値として、設定され得る。
例えば、上記の表2に示すデータベース106を用い、開口寸法φ=1.0mm、供給圧力PS=2.0MPa、且つ、a=0.95に設定した場合、閾値βth=120dB×0.95=114dBとなる。出力データβと、出射口28に対するワークWの加工部位Sの位置xとの関係を、図16に概略的に示す。出力データβと位置xとの関係は、図3に示すグラフに対応するものとなる。
閾値βthから第1のピーク値βmax1までの範囲116は、位置x3と位置x4との間の位置範囲114に対応する。この位置範囲114には、第1の極大点32の位置x1が含まれることになる。ここで、上述のステップS1において、ノズル24は、出射口28と加工部位Sとの距離dが目標距離dTに一致する初期目標位置に、配置されている。したがって、ステップS1の終了後は、加工部位Sは、第1の極大点32の位置x1又はその近傍に配置されていると解される。
しかしながら、ワークWのレーザ加工を実行しているときに、何らかの要因で、出射口28と加工部位Sとの距離dが変化する場合がある。この要因としては、例えば、ワークWの加工部位に段差部が形成され、これにより、距離dが変化する場合がある。このように距離dが変化した場合、測定器76の出力データβが閾値βthを下回り得る。
制御部112は、このステップS8において、出力データβが閾値βthよりも小さい(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS9へ進む。一方、制御部112は、出力データβが閾値βth以上である(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS15へ進む。
ステップS9において、制御部112は、ノズル24の目標位置を変更する。具体的には、制御部112は、このステップS9の開始時点でのノズル24の目標位置を、z軸マイナス方向又はz軸プラス方向へ移動させた新たな目標位置へ変更する。そして、制御部112は、移動制御部108として機能して配置装置18を動作させて、ノズル24を、該新たな目標位置へ配置させるべく、z軸マイナス方向又はz軸プラス方向へ移動させる。その結果、ノズル24は、ワークWに対して接近又は離反する。
ステップS10において、制御部112は、ステップS9の直前に測定器66が取得した出力データβが、ステップS9の終了後に測定器66が取得した出力データβよりも増加したか否かを判定する。ここで、仮に、ステップS9でノズル24を移動させた結果、出力データβが減少した場合、図16に示すグラフにおいて、ワークW(具体的には、加工部位S)の位置が、位置範囲114から離れたことになる。したがって、この場合、ワークWの位置を位置範囲114に収めるためには、ステップS9でノズル24を移動させる方向を反転させる必要がある。
一方、仮に、ステップS9でノズル24を移動させた結果、出力データβが増大した場合、図16に示すグラフにおいて、ワークWの位置が、位置x1に接近したことになる。したがって、この場合、ステップS9でノズル24を移動させる方向を変える必要がない。
このステップS10において、制御部112は、ステップS9の直前に測定器66が取得した出力データβが、ステップS9の終了後に測定器66が取得した出力データβよりも増加した(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS12へ進む。一方、制御部112は、ステップS9の直前に測定器66が取得した出力データβが、ステップS9の終了後に測定器66が取得した出力データβよりも減少した(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS11へ進む。
ステップS11において、制御部112は、ノズル24を移動させる方向を反転させる。例えば、直前のステップS9でノズル24をz軸マイナス方向へ移動させた場合、制御部112は、直後に実行するステップS9でノズル24を移動する方向を、z軸プラス方向に反転する。そして、制御部112は、ステップS9へ戻る。
ステップS12において、制御部112は、直近に測定器76が取得した出力データβが閾値βth以上となったか否かを判定する。制御部112は、出力データβが閾値βth以上となった(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS15へ進む。一方、制御部112は、出力データβが依然として閾値βthよりも小さい(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS13へ進む。
ステップS13において、制御部112は、上述のステップS12でNOと判定した回数nが、予め定められた最大回数nmaxを超えたか否かを判定する。この最大回数nmaxは、2以上の整数(例えば、nmax=10)としてオペレータによって定められる。制御部112は、回数nが最大回数nmaxを超えた(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS14へ進む。一方、制御部112は、回数nが最大回数nmaxを超えていない(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS9へ戻る。
このように、制御部112は、図14中のステップS9〜S13のループを実行することによって、ワークWの加工中に、測定器76の出力データβが、位置範囲114を表す出力データの範囲116内に収まるように、ノズル24の目標位置を変更し、変更した目標位置に従って配置装置18をフィードバック制御して、該ノズル24を移動させている。
すなわち、ノズル24の目標位置は、第1の極大点32の位置x1を表す出力データβの第1のピーク値βmax1に基づいて、所定の範囲として定められる。このフィードバック制御により、ワークWの加工中に加工部位Sを第1のマッハディスク領域33に継続して配置させることができる。つまり、レーザ加工システム110における第1のマッハディスク領域33とは、閾値βthによって画定される位置範囲114の領域として定義することができる。
一方、ステップS13でYESと判定した場合、制御部112は、ステップS14において、異常処理プロセスを実行する。ステップS9〜S13のフィードバック制御を回数nmaxだけ繰り返し実行したにも関わらず、β≧βthとならない場合、上述した目詰まり又はガス欠等の異常が発生している可能性がある。
ここで、図16に示す特性は、異常が発生していない状態で、出射口28から噴流が正常に出射されているときに測定器76によって測定される基準データであって、第1のピーク値βmax1は、基準データを構成し、閾値βthは、該基準データに対して設定される。よって、図16中の範囲116は、基準データに基づいて定められた、位置範囲114を表す出力データの範囲である。
制御部112は、異常判定部113として機能して、ステップS13でYESと判定した場合に、測定器76の出力データβが基準データと異なっている判定し、ステップS14の異常処理プロセスを実行する。このステップS14について、図15を参照して説明する。なお、図15に示すフローにおいて、図14に示すフローと同様のプロセスには同じステップ番号を付し、重複する説明を省略する。
ステップS21において、制御部112は、アシストガス供給装置16に指令を送り、チャンバ29へのアシストガスの供給圧力PSを変更する。制御部112は、このステップS21を実行する毎に、供給圧力PSを、所定の圧力(例えば、0.2MPa)だけ、段階的に増加する。このように、制御部112は、供給圧力PSを変更する圧力調整部115として機能する。
次いで、制御部112は、上述のステップS12を実行し、直近に測定器76が取得した出力データβが閾値βth以上となったか否かを判定する。制御部112は、YESと判定した場合、図14中のステップS15へ進む一方、NOと判定した場合、ステップS22へ進む。
ステップS22において、制御部112は、図15中のステップS12でNOと判定した回数mが、予め定められた最大回数mmaxを超えたか否かを判定する。この最大回数mmaxは、2以上の整数(例えば、mmax=5)としてオペレータによって定められる。制御部112は、回数mが最大回数mmaxを超えた(すなわち、YES)と判定した場合、図14中のステップS6へ進む。一方、制御部112は、回数mが最大回数mmaxを超えていない(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS21へ戻る。
再度、図14を参照して、ステップS15において、制御部112は、例えば加工プログラムに基づいて、ワークWのレーザ加工が完了したか否かを判定する。制御部112は、レーザ加工が完了した(すなわち、YES)と判定した場合、レーザ発振器12に指令を送りレーザ発振動作を停止し、図14に示すフローを終了する。一方、制御部112は、レーザ加工が完了していない(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS8へ戻る。
以上のように、制御部112は、ワークWの加工中に測定器76が取得した出力データβに基づいて、加工部位Sを第1のマッハディスク領域33に継続して配置させるように、ノズル24の位置をフィードバック制御している。この構成によれば、何らかの要因で出射口28と加工部位Sとの距離dが変化したとしても、加工部位Sを第1のマッハディスク領域33に配置させた状態で、ワークWをレーザ加工できる。したがって、アシストガスを有効利用できる。
また、制御部112は、ステップS14を実行することによって、出射される噴流の異常を判定している。仮に、目詰まり又はガス欠等の異常が生じていた場合、アシストガス供給装置16からチャンバ29への供給圧力Psを変更したとしても、出射口28から出射される噴流の速度Vは殆ど変化しない。
すなわち、この場合は、測定器76の出力データβも殆ど変化せず、図15中のステップS21〜S22のループを繰り返し実行しても、β≧βth(すなわち、図15中のステップS12でYES)にならないことになる。
制御部112は、異常判定部113として機能し、ステップS21〜S22のループを、所定の回数mmaxだけ繰り返し実行したにも関わらずβ≧βthにならなかった場合、出力データβが基準データと異なっていると判定し、図14中のステップS7で警告を出力している。この構成によれば、オペレータは、ノズル24又はアシストガス供給に異常があることを直感的に認識し、ノズル24の交換、又はアシストガス供給装置16の動作異常(ガス欠)の対策を講じることができる。
その一方で、出射口28の開口寸法若しくはz軸方向の長さの誤差、出射口28のz軸に対する傾き、又は、ノズル24の内部空間(チャンバ29)の設計寸法の誤差等の軽微な異常に起因して、出射口28から出射される噴流の速度Vが基準値よりも僅かに減少してしまう場合がある。このような軽微な異常の場合は、供給圧力Psを変更するのに応じて、噴流の速度が変化するが、ステップS9〜S15のフィードバック制御を繰り返し実行したとしても、β≧βthとならずに、ステップS13でYESと判定される場合がある。
レーザ加工システム110においては、ステップS14において、ステップS21を実行することによってβ≧βthとなったときは、制御部112は、ワークWの加工を継続する。この構成によれば、寸法誤差等の軽微な異常によって噴流の速度Vが基準値よりも減少してしまった場合でも、供給圧力Psを変更する(具体的には、増加する)ことで、十分に大きな速度Vで噴流を加工部位Sに吹き付けている状態で、ワークWの加工を継続できる。
なお、制御部112は、第1のレーザ加工工程においてステップS12でYESと判定する毎に、この時点での出射口28と加工部位Sとの距離dを順次記憶してもよい。そして、制御部112は、第1のレーザ加工工程の次に実行する第2のレーザ加工工程のステップS1の初期目標位置を、第1のレーザ加工工程で記憶した距離dに基づいて設定してもよい。例えば、制御部112は、第1のレーザ加工工程で記憶した距離dの平均値、又は、最後に記憶した距離dを、第2のレーザ加工工程の初期目標位置として設定してもよい。
なお、レーザ加工システム110の変形例として、測定器76の代わりに、上述の測定器66を適用してもよい。この場合、測定器66は、加工部位Sの位置(又は、加工部位Sか出射口28の方向へ僅かにずれた位置)で、噴流の速度Vを非接触式に測定するように構成される。レーザ加工システム110に適用された測定器66と、配置装置18及び制御部112とは、上述の噴流観測装置60を構成する。
本変形例においては、制御部112は、出力データβの代わりに、測定器66の出力データαに基づいて、図14及び図15に示すフローを実行し、ワークWを第1のマッハディスク領域33に配置した状態でワークWをレーザ加工することができる。
次に、図17及び図18を参照して、レーザ加工システム120について説明する。レーザ加工システム120は、レーザ発振器12、レーザ加工ヘッド14、アシストガス供給装置16、配置装置18、ダミーワーク64、測定器66、及び制御部122を備える。
制御部122は、プロセッサ及び記憶部(図示せず)を有し、レーザ発振器12、レーザ加工ヘッド14、アシストガス供給装置16、配置装置18、及び測定器66を制御する。制御部122は、上述の位置取得部68として機能する。すなわち、配置装置18、ダミーワーク64、測定器66、及び制御部122は、上述の噴流観測装置60を構成する。
次に、レーザ加工システム120の動作について説明する。まず、制御部122は、第1の極大点32の位置x1を表す情報を取得する。具体的には、制御部122は、位置取得部68として機能して、上述の噴流観測装置60に関連して説明した方法で、測定器66の出力データαの第1のピーク値αmax1から、目標距離dTを取得する。
次いで、制御部122は、ノズル24を目標位置に配置する。具体的には、制御部122は、移動制御部108として機能して、配置装置18を動作させてレーザ加工ヘッド14をワークWに対して移動し、出射口28と加工部位Sとの距離dが目標距離dTに一致する目標位置に、ノズル24を配置する。
次いで、制御部122は、アシストガス供給装置16を動作させて、チャンバ29にアシストガスを供給圧力PSで供給し、出射口28からアシストガスの噴流を出射する。また、制御部122は、レーザ発振器12を動作させて、出射口28からレーザ光を出射し、レンズ駆動部23を動作させて、出射されたレーザ光の焦点が加工部位Sに配置されるように、光学レンズ22の光軸Oの方向の位置を調整する。
この状態で、制御部122は、加工プログラムに従って配置装置18を動作させて、ノズル24をワークWに対して移動させつつ、ワークWをレーザ加工(レーザ切断)する。このとき、ワークWの加工部位Sは、アシストガスの噴流の第1のマッハディスク領域33に配置されることになる。
上述したように、制御部122は、ワークWの加工前に、噴流観測装置60によって第1の極大点32の位置x1を取得し、取得した第1の極大点32の位置x1に基づいて定めた目標位置にノズル24を配置した状態で、ワークWをレーザ加工している。この構成によれば、ワークWの加工中に加工部位Sを第1のマッハディスク領域33に配置できるので、アシストガスを有効利用できる。
また、レーザ加工システム120によれば、出射口28の開口寸法φ、及びアシストガスの供給圧力PSが未知である場合においても、ワークWの加工前に噴流観測装置60によって第1の極大点32の位置x1を取得し、該第1の極大点32の位置x1に基づいてノズル24の目標位置を定めることができる。
次に、図19及び図20を参照して、レーザ加工システム130について説明する。レーザ加工システム130は、レーザ発振器12、レーザ加工ヘッド14、アシストガス供給装置16、配置装置18、測定器84、及び制御部132を備える。
制御部132は、プロセッサ及び記憶部104を有し、レーザ発振器12、レーザ加工ヘッド14、アシストガス供給装置16、配置装置18、及び測定器84を制御する。記憶部104には、上記の表1に示すデータベース106が記憶されている。制御部132は、上述の位置取得部86として機能する。すなわち、測定器84及び制御部132は、上述の噴流観測装置80を構成する。
次に、図21を参照して、レーザ加工システム130の動作について説明する。図21に示すフローは、制御部132が、オペレータ、上位コントローラ、又は加工プログラムから、加工開始指令を受け付けたときに、開始する。なお、図21に示すフローにおいて、図14に示すフローと同様のプロセスには同じステップ番号を付し、重複する説明を省略する。
ステップS1及びS2を実行した後、ステップS31において、制御部132は、アシストガス供給装置16からチャンバ29へ供給されるアシストガスの供給流量VVの測定を開始する。具体的には、制御部132は、測定器84に指令を送り、測定器84に供給流量VVを連続的に(例えば、所定の周期で)測定させる。また、制御部132は、出射口28と加工部位Sとの距離dの測定を開始する。上述したように、距離dは、公知のギャップセンサ等を用いて取得することができる。
ステップS4の後、ステップS32において、制御部132は、第1の極大点32の位置x1を取得する。具体的には、制御部132は、位置取得部86として機能して、直近に測定器84が取得した出力データVVと、上記の式1とを用いて、第1の極大点32の位置x1の情報として、出射口28から第1の極大点32までの距離dcを算出する。
ステップS33において、制御部132は、距離dと距離dcとの差δが、予め定められた閾値δthよりも大きいか否かを判定する。具体的には、制御部132は、直近に測定された出射口28と加工部位Sとの距離dと、直近のステップS32で取得された距離dcとの差δ(=d−dc)を算出する。
制御部132は、差δの絶対値(|d−dc|)が閾値δthよりも大きい(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS34に進む。一方、制御部132は、差δの絶対値が閾値δth以下である(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS15に進む。この閾値δthは、オペレータによって定められる。
ステップS34において、制御部132は、ノズル24の目標位置を変更する。具体的には、直前のステップS33で算出した差δが正の値である場合、制御部132は、このステップS34の開始時点でのノズル24の目標位置を、z軸マイナス方向へ移動させた新たな目標位置へ変更する。
そして、制御部132は、移動制御部108として機能して、配置装置18を動作させて、ノズル24を、該新たな目標位置へ配置させるべく、z軸マイナス方向へ移動させる。その結果、ノズル24は、ワークWに対して接近し、出射口28と加工部位Sとの距離dが減少する。
一方、ステップS33で算出した差δが負の値である場合、制御部132は、このステップS34の開始時点でのノズル24の目標位置を、z軸プラス方向へ移動させた新たな目標位置へ変更する。そして、制御部132は、配置装置18を動作させて、ノズル24を、該新たな目標位置へ配置させるべく、z軸プラス方向へ移動させる。その結果、ノズル24は、ワークWから離反し、出射口28と加工部位Sとの距離dが増大する。ステップS34を実行した後、制御部132は、ステップS32へ戻る。
一方、ステップS33でNOと判定した場合、制御部132は、上述のステップS15を実行し、YESと判定した場合は、レーザ発振器12に指令を送り、レーザ発振動作を停止して、図21に示すフローを終了する一方、NOと判定した場合は、ステップS32へ戻る。
このように、レーザ加工システム130においては、レーザ加工中に噴流観測装置80によって取得した第1の極大点32の位置x1に基づいてノズル24の目標位置を変更し、変更した目標位置に従って配置装置18をフィードバック制御して、該ノズル24を移動させている。
すなわち、ノズル24の目標位置は、第1の極大点32の位置x1に基づいて、所定の範囲(0≦δ≦δthを満たす範囲)として定められる。このフィードバック制御により、ワークWの加工中に加工部位Sを第1のマッハディスク領域33に継続して配置させることができる。つまり、レーザ加工システム130における第1のマッハディスク領域33とは、第1の極大点32の位置x1からの距離δが、0≦δ≦δthを満たす範囲の領域として、定義することができる。
レーザ加工システム130によれば、何らかの要因で出射口28と加工部位Sとの距離dが変化したとしても、加工部位Sを第1のマッハディスク領域33に配置させた状態で、ワークWをレーザ加工できる。したがって、アシストガスを有効利用できる。
次に、図22を参照して、噴流調整装置140について、説明する。噴流調整装置140は、ノズル24の出射口28から出射された噴流の極大点32、34の位置x1、x2を調整するものであって、囲い142、及び囲い駆動部144を備える。囲い142は、径方向の内寸を有する筒状の部材である。
囲い142は、径方向の内寸としての半径Rを有する可撓性の円筒部材から構成されている。該円筒部材は、例えば、毛材、樹脂材、又はゴム材である。囲い142は、光軸Oに関して出射口28と略同心に配置され、z軸マイナス方向の端部142aと、該端部142aとは反対側の端部142bとを有する。
端部142aは、ワークテーブル38の設置面に載置される。端部142bは、出射口28よりもz軸プラス方向へ離隔した位置に、配置されている。換言すれば、囲い142は、ワーク加工中に端部142bが常に出射口28よりもz軸プラス方向へ離隔して配置されるのに十分なz軸方向の長さを有する。
囲い駆動部144は、囲い142の半径Rを変更するように該囲い142を変形させる機構部146と、該機構部146を駆動する動力を発生させる動力部148とを有する。半径Rを変更可能な囲い142及び機構部146としては、種々の形態が考えられる。以下、図23及び図24を参照して、囲い142及び機構部146の例について説明する。なお、図23及び図24においては、理解の容易の観点から、囲い142を点線表示している。
図23に示す機構部146Aは、いわゆる、カメラ等に用いられる虹彩絞り機構である。具体的には、機構部146Aは、複数の羽根150を有し、これら羽根150は、周方向に回転しつつ、径方向内側に向かって移動するように動作される。囲い142は、複数の羽根150の内縁に連結され、該羽根150の動作に伴って、縮径及び拡径するように変形される。動力部148は、例えばサーボモータを有し、機構部146Aを駆動して、囲い142を縮径及び拡径させる。
一方、図24に示す機構部146Bは、光軸O周りの周方向へ延びるアーム部152と、該アーム部152の重複領域154に設けられたギア156とを有する。重複領域154において互いに対向するアーム部152の周面には、歯部が形成され、ギア156は、該歯部と噛合する。囲い142は、重複領域154以外の、アーム部152の内周に連結されている。
図24(a)に示す状態においては、アーム部152の重複領域154の周方向の長さが大きく、囲い142に弛み158が形成されている。図24(a)に示す状態から、ギア156が一方へ回転するにつれて、アーム部152の重複領域154が縮小し、これに伴って、囲い142の弛み158が徐々に周方向へ引き延ばされ、図24(b)に示す状態へ囲い142が拡径される。
反対に、図24(b)に示す状態から、ギア156が他方へ回転するにつれて、アーム部152の重複領域154が拡大し、これに伴って、囲い142の弛み158が徐々に拡大して、図24(a)に示す状態へ囲い142が縮径される。動力部148は、例えばサーボモータを有し、ギア156を回転駆動して、囲い142を縮径及び拡径させる。
再度、図22を参照して、噴流調整装置140は、囲い142の半径Rを変更することによって、第1の極大点32の位置x1、及び第2の極大点34の位置x2の調整できる。このように極大点32、34の位置x1、x2を調整できる原理について、以下に説明する。
上述したように、出射口28から出射されたアシストガスは、外側の大気との境界で反射し、噴流内にマッハディスクが形成される。囲い142を設置した場合、噴流と囲い142との間に存在する大気層が該噴流によって押圧され、該大気層の粒子密度が増大する。
このように押圧された大気層との境界でアシストガスが反射されると、アシストガスの反射角度及び反射位置が変化し、その結果、囲い142がない場合と比べて、噴流内に形成されるマッハディスクの位置(すなわち、極大点32、34の位置x1、x2)が変化することになる。
囲い142の内寸を変化させると、噴流と囲い142との間に存在する大気層の体積及び粒子密度が変化し、これにより、噴流内に形成されるマッハディスクの位置を変化させることができる。以上のような原理を利用して、噴流調整装置140は、光軸Oの方向における極大点32、34の位置x1、x2を調整する。
具体的には、噴流調整装置140は、囲い142を縮径することによって、極大点32、34の位置x1、x2を、噴流の下流側(すなわち、光軸Oに沿って出射口28から離れる方向)へ、変位させる。一方、噴流調整装置140は、囲い142を拡径することによって、極大点32、34の位置x1、x2を、噴流の上流側へ変位させる。
噴流調整装置140によれば、囲い142の内寸(半径R)を変更することにより、ワーク加工中に、出射口28と加工部位Sとの距離dの変動に応じて、加工部位Sを第1のマッハディスク領域33に配置させるように極大点32、34の位置x1、x2を調整できる。
また、所定の開口寸法φのノズル24の内部に形成されたチャンバ29への供給圧力Psを一定にした状態で、囲い142を縮径した場合、極大点32、34の位置x1、x2が噴流の下流側へ変位するとともに、該位置x1、x2における噴流の速度Vが増大する。すなわち、供給圧力Psを変えずに、ワークWを配置するマッハディスク領域33、35での噴流の速度Vを増大させることができる。
換言すれば、供給圧力Psを低減させても、囲い142を縮径させることで、マッハディスク領域33、35での噴流の速度Vを維持することができる。この構成によれば、アシストガスの消費量を削減することができるので、コストを抑えることができる。なお、囲い駆動部144を省略し、囲い142の内寸を手動で変更してもよい。
次に、図25及び図26を参照して、レーザ加工システム160について説明する。レーザ加工システム160は、レーザ発振器12、レーザ加工ヘッド14、アシストガス供給装置16、配置装置18、測定器84、噴流調整装置140、及び制御部162を備える。
制御部162は、プロセッサ及び記憶部104を有し、レーザ発振器12、レーザ加工ヘッド14、アシストガス供給装置16、配置装置18、測定器84、及び噴流調整装置140(具体的には、動力部148)を制御する。記憶部104には、上記の表1に示すデータベース106が記憶されている。制御部162は、上述の位置取得部86として機能する。すなわち、測定器84及び制御部162は、上述の噴流観測装置80を構成する。
次に、図27を参照して、レーザ加工システム160の動作について説明する。図27に示すフローは、制御部162が、オペレータ、上位コントローラ、又は加工プログラムから、加工開始指令を受け付けたときに、開始する。なお、図27に示すフローにおいて、図21に示すフローと同様のプロセスには同じステップ番号を付し、重複する説明を省略する。
図27に示すフローを開始後、制御部162は、図21に示すフローと同様のステップS1〜S33を実行する。ステップS33でYESと判定した場合、ステップS41において、制御部162は、第1の極大点32の位置x1を制御する。具体的には、直前のステップS33で算出した差δ(=d−dc)が正の値である場合、制御部162は、囲い駆動部144の動力部148に指令を送り、囲い142の内寸(半径R)を減少させる。これにより、第1の極大点32の位置x1は、噴流の下流側へ変位する。
一方、直前のステップS33で算出した差δが負の値である場合、制御部162は、囲い駆動部144を動作させて、囲い142の内寸(半径R)を増大させる。これにより、第1の極大点32の位置x1は、噴流の上流側へ変位する。
このように、制御部162は、位置取得部86がステップS32で取得した第1の極大点32の位置x1の情報に基づいて囲い142の内寸を変更することにより第1の極大点32の位置x1を制御する極大点制御部164として機能する。ステップS41を実行した後、制御部162は、ステップS32へ戻る。
レーザ加工システム160によれば、ノズル24を移動させることなく、囲い142の内寸を変化させることによって、ワークWの加工中に加工部位Sを第1のマッハディスク領域33に継続して配置させることができる。この構成によれば、何らかの要因で出射口28と加工部位Sとの距離dが変化したとしても、加工部位Sを第1のマッハディスク領域33に配置させた状態で、ワークWをレーザ加工できる。したがって、アシストガスを有効利用できる。
なお、レーザ加工システム160において、記憶部104は、ノズル24の開口寸法φと、供給圧力PSと、囲い142の内寸(半径R)とに関連付けて複数の目標距離dTを記憶したデータベースを記憶してもよい。この場合において、制御部162は、上述のステップS41において、開口寸法φ及び供給圧力PSと、ステップS32で算出した距離dcを目標位置距離dTとして該データベースに当て嵌めれば、囲い142の目標内寸を求めることができる。
そして、制御部162は、ステップS41において、囲い駆動部144を動作させて、囲い142の内寸を、データベースから求めた目標内寸へ変更する。これにより、加工部位Sを第1のマッハディスク領域33に高精度に配置させることができる。
また、上述のレーザ加工システム130に図27に示すフローを実行させることもできる。この場合、ステップS41において、制御部132は、チャンバ29への供給圧力Psを変更することによって、極大点32、34の位置x1、x2を制御してもよい。ここで、チャンバ29への供給圧力Psを増大させると、極大点32、34の位置x1、x2は、噴流の下流側(すなわち、光軸Oに沿って出射口28から離れる方向)へ変位する。
一方、チャンバ29への供給圧力Psを減少させると、極大点32、34の位置x1、x2は、噴流の上流側(すなわち、光軸Oに沿って出射口28へ接近する方向)へ変位する。ステップS41において、制御部132は、直前のステップS33で算出した差δ(=d−dc)が正の値である場合、アシストガス供給装置16に指令を送り、供給圧力Psを増大させる。これにより、第1の極大点32の位置x1は、噴流の下流側へ変位する。
一方、直前のステップS33で算出した差δが負の値である場合、制御部132は、アシストガス供給装置16に指令を送り、供給圧力Psを減少させる。これにより、第1の極大点32の位置x1は、噴流の上流側へ変位する。このように、制御部132は、位置取得部86がステップS32で取得した第1の極大点32の位置x1の情報に基づいて供給圧力Psを変更することによって第1の極大点32の位置x1を制御する極大点制御部として機能する。
なお、配置装置18は、上記の構造に限らず、例えば、x−y平面に沿って移動可能なワークテーブルと、ノズル24をz軸に沿って移動させるz軸移動機構とを有してもよい。又は、配置装置は、移動機構を有することなく、単に、ノズル24をワークWに対して、手動で任意の位置に固定するだけのものであってもよい。
また、図4に示す噴流観測装置60のダミーワーク64及び測定器66として、種々の形態がある。以下、図28及び図29を参照して、ダミーワーク64及び測定器66の例について説明する。図28に示す例においては、ダミーワーク64は、上述のダミー加工部位64aに相当する位置に形成された円形の貫通孔64bを有する。この貫通孔64baの開口寸法は、ノズル24から出射されるレーザ光によってワークWを穿孔したときに形成されると推定される貫通孔の開口寸法と、略同じに設定される。
測定器66は、一対の柱部170、及び熱線172を有する。一対の柱部170はダミーワーク64の表面64cからz軸プラス方向へ延出し、互いに対向して配置されている。熱線172は、一対の柱部170の間に直線状に張り渡されており、出射口28から出射される噴流の速度Vに応じて、その抵抗値が変化する。
ここで、一対の柱部170の間で延在する熱線172の長さL(すなわち、一対の柱部170の間の距離)は、例えば、出射口28の開口寸法φ以下、又は、貫通孔64baの開口寸法以下となるように、設定されてもよい。又は、熱線172は、高剛性を有する材料から構成されてもよい。このように長さLを小さく設定するか、又は熱線172を高剛性の材料から構成することによって、熱線172を噴流内に配置したときに、該熱線172が撓んでしまうのを防止できる。
また、ダミーワーク64の表面64cから熱線172までの距離は、例えば、0.5mm以下に設定されてもよい。このように表面64cから熱線172までの距離を小さくすることによって、レーザ加工時のワークWの加工部位Sに近い位置で、噴流の速度Vを測定できる。
図29に示す例においては、測定器66は、貫通孔64bに張り渡された熱線174を有する。熱線174の長さLは、貫通孔64bの開口寸法に一致する。熱線174は、ダミーワーク64の表面64cの位置に配置されている。このような熱線174の配置によれば、レーザ加工時のワークWの加工部位Sに近い位置で、噴流の速度Vを測定できる。以上のように、図28及び図29の測定器66は、熱線流速計を構成する。
なお、上述の実施形態において、ワークWを加工するときに、該ワークWを、第2のマッハディスク領域35(第2の極大点34)、又は第nのマッハディスク領域(nは、3以上の整数)に配置してもよい。また、上述の噴流観測装置60、70、80の代わりに、例えば高速度カメラで図2のような画像を撮影し、該画像に基づいて、極大点32、34の位置x1、x2を測定してもよい。
また、出射口28は、円形に限らず、多角形、楕円形等、如何なる形状でもよい。また、上述した種々の実施形態の特徴を互いに組み合わせることもできる。例えば、噴流観測装置80を、レーザ加工システム110又は120に組み合わせてもよいし、噴流調整装置140を、レーザ加工システム110又は120に組み合わせてもよい。
以上、実施形態を通じて本開示を説明したが、上述の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。