JP6725513B2 - ヘルパー株媒介型真菌ゲノム改変用の組成物および方法 - Google Patents

ヘルパー株媒介型真菌ゲノム改変用の組成物および方法 Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、全体が参照により本明細書に援用される米国仮出願第62/092,444号明細書(2014年12月16日に出願されている)に対する優先権を主張する。
配列表
(37C.F.R.§1.52(e)に従って)EFSを介して提出した配列表を参照により本明細書に援用する。EFSを介して提出した配列表テキストファイルには、2015年12月11日に作成したファイル「40692−WO−PCT−4_2015−579 final_ST25.txt」(100キロバイトのサイズである)が含まれている。
ヘルパー株(helper strain)概念を真菌ゲノム改変に適用するための必要条件は、2種の異なる細胞型:ヘルパー株(HS)および標的株(TS)を融合させることにより異核共存体を形成する能力である。一部の真菌細胞(例えばN.クラッサ(N.crassa))では、この融合を、HSの胞子およびTSの胞子を単純に混合し、これらの胞子を選択培地上で一緒に発芽させることにより達成することができる。その他の真菌細胞(例えばT.リーゼイ(T.reesei)では、細胞融合はそのように容易には起こらず、融合を容易にするためにはプロトプラストを作製する必要がある。HSからの細胞およびTSからの細胞が融合されると、細胞質の共有により、HSが提供する利益をTSが利用することが可能になる。N.クラッサ(N.crassa)では、これらの細胞は、細胞質および細胞小器官が細胞コンパートメント間を遊走することを可能にする合胞体へと結合される(Roper,M.Simonin,A.,Hickey,P.C.,Leeder,A.,and Glass,N.L.2013.Nuclear dynamics in fungal chimera.Proc.Nat.Acad.Sci.110(32),12875−12880)。その結果、HS核により産生される有益な成分が菌糸体全体にわたって自由に分布する。その一方で、T.リーゼイ(T.reesei)のコンパートメントは、細胞成分の遊走を制限する隔膜により区切られている。
異核共存体からの利益が利用されると、構成している株を分離する必要がある。このことは、異核共存体を胞子形成させ、個々の分生子をプレーティングし、単一の単核胞子に由来する株を検証することにより達成される。N.クラッサ(N.crassa)では、ヨード酢酸を含む培地上で小分生子(単一核を含む)を作ることができる(Ebbole,D.and Sachs,M.S.1990.A rapid and simple method for isolation of Neurospora crassa homokaryons using microconidia.Fungal Genet.Newslett.37)が、一部のT.リーゼイ(T.reesei)株は多核分生子を主に有する。T.リーゼイ(T.reesei)では、多核分生子を作る株を単核分生子を作る株で置き換えることができない場合には胞子精製(spore−purification)を更に実施する必要があり、手順が長くなる。
これらの相違およびその他の相違の結果として、ヘルパー株概念は、T.リーゼイ(T.reesei)での日常的操作および株の改善の方法に組み込まれていない。
そのため、T.リーゼイ(T.reesei)等の多くの真菌宿主細胞のための効率的で効果的なヘルパー株媒介型ゲノム改変の方法および組成物を開発することが依然として必要とされている。
真菌宿主細胞(例えば糸状真菌細胞)中での遺伝子変更を促進するためにヘルパー株システムを用いる組成物および方法が提供される。
本開示の態様は、真菌細胞(例えば糸状真菌細胞)中でのゲノム遺伝子座とドナーDNAとの相同組換え用の組成物および方法に関する。
従って、本開示の態様は、真菌細胞中でのゲノム遺伝子座とドナーDNAとの相同組換えの方法であって、(a)ヘルパー真菌株と標的真菌株との間で異核共存体を生じさせることであって、ヘルパー真菌株が、非相同末端結合(NHEJ)メカニズムを沈黙させる発現構築物を含む、生じさせること、(b)異核共存体にドナーDNAを導入することであって、ドナーDNAが、標的株中におけるゲノム遺伝子座での相同組換えに十分なゲノム遺伝子座に対する相同領域を含む、導入すること、(c)(b)の異核共存体細胞から胞子を生じさせてプレーティングすること、ならびに(d)プレーティングした胞子から、(i)ドナーDNAがゲノム遺伝子座での相同組換えによりゲノムに組み込まれているおよび(ii)非相同末端結合(NHEJ)メカニズムを沈黙させる発現構築物が存在しない細胞を同定することを含む方法を含む。
ある特定の実施形態では、発現構築物はku80、ku70、rad50、mre11、xrs2、lig4およびxrsの内の1種または複数種を沈黙させる。ある特定の実施形態では、発現構築物はku80、ku70または両方を沈黙させる。
ある特定の実施形態では、この方法は、異核共存体に機能的Cas/ガイドRNA複合体を導入することであって、Cas/ガイドRNA複合体がゲノム遺伝子座内で標的部位を有する、導入することを更に含む。ある特定の実施形態では、CasはCasニッカーゼである。ある場合では、Casエンドヌクレアーゼは、1種または複数種の核ターゲティングシグナル(核局在化シグナル/配列とも称される、NLS)に作動可能に連結されている。配列番号1および配列番号2はそれぞれ、N末端およびC末端でNLS配列を有する糸状真菌細胞最適化Cas9遺伝子の一例とコードされるアミノ酸配列とを提供する。真核生物では多くの異なるNLSが知られている。このNLSとして、1分節(monopartite)型、2分節(bipartite)型および3分節(tripartite)型が挙げられる。あらゆる好都合なNLSを使用することができるが、例としてSV40 NLS(配列番号9)、T.リーゼイ(T.reesei)blr2(青色光制御因子(blue light regulator)2;配列番号10)遺伝子に由来するNLSまたは両方の組み合わせが挙げられる1分節型がやや好都合である。
ある特定の実施形態では、ドナーDNAは目的のポリヌクレオチド配列を含み、ゲノム遺伝子座での相同組換えにより目的のポリヌクレオチド配列がゲノム遺伝子座に挿入される。
ある特定の実施形態では、CasエンドヌクレアーゼはCas9エンドヌクレアーゼまたはこの変異体である。ある特定の実施形態では、Cas9エンドヌクレアーゼまたはこの変異体は、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、S.ピオゲネス(S.pyogenes)、S.ミュータンス(S.mutans)、S.サーモフィルス(S.thermophilus)、カンピロバクター(Campylobacter)種、C.ジェジュニ(C.jejuni)、ナイセリア(Neisseria)種、N.メニンジティデス(N.meningitides)、フランシセラ(Francisella)種、F.ノビシダ(F.novicida)およびパスツレラ(Pasteurella)種、P.ムルトシダ(P.multocida)からなる群から選択される種由来の完全長Cas9またはこの機能的断片を含む。
ある特定の実施形態では、異核共存体に機能的Cas/ガイドRNA複合体を導入することは、Casエンドヌクレアーゼ用の発現カセットを含むDNA構築物を真菌細胞に導入することを含む。
ある特定の実施形態では、異核共存体に機能的Cas/ガイドRNA複合体を導入することは、ガイドRNA用の発現カセットを含むDNA構築物を真菌細胞に導入することを含む。
ある特定の実施形態では、導入する工程は、真菌細胞にCasエンドヌクレアーゼを直接導入することを含む。
ある特定の実施形態では、導入する工程は、真菌細胞にガイドRNAを直接導入することを含む。
ある特定の実施形態では、真菌細胞は糸状真菌細胞である。ある特定の実施形態では、真菌細胞はユウミコチニア(Eumycotina)真菌細胞またはペジゾミコチニア(Pezizomycotina)真菌細胞である。ある特定の実施形態では、真菌細胞は、トリコデルマ(Trichoderma)、ペニシリウム(Penicillium)、アスペルギルス(Aspergillus)、フミコーラ(Humicola)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、フサリウム(Fusarium)、マイセリオフトラ(Myceliophthora)、ニューロスポラ(Neurospora)、ヒポクレア(Hypocrea)およびエメリセラ(Emericella)からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、真菌細胞はトリコデルマ(Trichoderma)種の細胞である。ある特定の実施形態では、真菌細胞はトリコデルマ(Trichoderma)種であり、例えばトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)である。
一部の実施形態では、ドナーDNAは真菌細胞のゲノム遺伝座でゲノムに部分的に組み込まれている。一部の実施形態では、ドナーDNAは真菌細胞のゲノム遺伝子座でゲノムに完全に組み込まれている。
ある特定の実施形態では、ドナーDNAの組込みによりゲノム遺伝子座が改変される。特定の実施形態では、この改変は、1個または複数個のヌクレオチドの欠失、1個または複数個のヌクレオチドの挿入、目的のタンパク質をコードする発現カセットの挿入、1個または複数個のヌクレオチドの置換およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
ある特定の実施形態では、同定する工程は、ゲノム遺伝子座でのドナーDNAの組込みまたはゲノム遺伝子座の改変を選択するためのまたはスクリーニングするための条件下で工程(c)からの胞子から成長した細胞を培養することを含む。
本開示の態様は、上記で説明した方法により製造されている組換え真菌細胞と、この方法の実施において親細胞として使用するための組換え真菌細胞とに関する。
本開示の方法および組成物の更なる実施形態を本明細書で示す。
下記の詳細な説明および本出願の一部を形成する添付図面から、本開示をより完全に理解することができる。
NHEJが沈黙しているヘルパー株を使用して、標的としたDNAカセットの相同組込みを改善する戦略の概略を示す図である。NHEJsil=非相同末端サイレンシングカセット、GR=遺伝子置換配列、amdS=アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)由来のアセトアミダーゼをコードする遺伝子、his3=ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.23)、T.リーゼイ(T.reesei)由来のホスホリボシル−ATP−ピロホスホヒドロラーゼ(EC3.6.1.31)およびホスホリボシル−AMPシクロヒドロラーゼ(EC3.5.4.19)をコードする多ドメイン構造遺伝子(multidomain structural gene)、hph=大腸菌(E.coli)由来のハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼをコードする遺伝子、pyr2=オロチジン5’−モノホスフェートピロホスホリラーゼをコードする遺伝子。 Ku80サイレンシング構築物:pAVTrku80sil(図2A)、pAVTrku70ku80sil(図2B)およびpAVTrku70lig4ku80sil(図2C)を説明する図である。 Ku80サイレンシング構築物:pAVTrku80sil(図2A)、pAVTrku70ku80sil(図2B)およびpAVTrku70lig4ku80sil(図2C)を説明する図である。 Ku80サイレンシング構築物:pAVTrku80sil(図2A)、pAVTrku70ku80sil(図2B)およびpAVTrku70lig4ku80sil(図2C)を説明する図である。 his3欠失構築物pAVdelta−his3を説明する図である。hph=大腸菌(E.coli)由来のハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼをコードするハイグロマイシン耐性遺伝子、kan(R)=ホスホトランスフェラーゼをコードするカナマイシン耐性遺伝子。 遺伝子置換(GR)構築物pAV GR pyr2を示す図である。pyr2=オロチジン5’−モノホスフェートピロホスホリラーゼをコードする遺伝子、Apr=β−ラクタマーゼをコードするアンピシリン耐性遺伝子、F1 ORI=複製のF1開始点、URA3=オロチジン5’−ホスフェートデカルボキシラーゼをコードするサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)遺伝子、2MICRON=S.セレビシエ(S.cerevisiae)2ミクロンプラスミド開始配列(2−micron plasmid−originating sequence)。 多数の株が構築物で同時に形質転換される異核共存体の形質転換を示す図である。 creリコンビナーゼ遺伝子を含むテロメアベクター(発現クローン/pTrex−Tel−pyrG13/pDONR221/0927853cre)を示す図である。 コロニー増殖を補完するためのおよび対立遺伝子の優性を決定するためのヘルパー株の使用を示す図である。図5および図7での略語: his3=ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.23)、T.リーゼイ(T.reesei)由来のホスホリボシル−ATP−ピロホスホヒドロラーゼ(EC3.6.1.31)およびホスホリボシル−AMPシクロヒドロラーゼ(EC3.5.4.19)をコードする多ドメイン構造遺伝子; hph=大腸菌(E.coli)由来のハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼをコードする遺伝子; ad3A=T.リーゼイ(T.reesei)由来のホスホリボシルアミノイミダゾール−スクシノカルボキサミドシンターゼ(EC6.3.2.6)をコードする遺伝子 pyr2=オロチジン5’−モノホスフェートピロホスホリラーゼ遺伝子 his3欠失構築物pAVdelta−his3を説明する図である。
真菌宿主細胞(例えば糸状真菌細胞)中での遺伝子変更を促進するためにヘルパー株システムを用いる組成物および方法が提供される。
本組成物および本方法をより詳細に説明する前に、本組成物および本方法は説明されている特定の実施形態に限定されず、当然のことながらそれ自体が変わり得ることを理解すべきである。本組成物および本方法の範囲は添付した特許請求の範囲によってのみ限定され得ることから、本明細書で使用する用語は特定の実施形態を説明することを目的とするのみであり、限定することを意図されていないことも理解すべきである。
ある範囲の値が記載されている場合、この範囲の上限と下限との間に介在する各値(別途文脈が明確に指示しない限り下限の単位の10分の1まで)ならびにこの言及した範囲中におけるあらゆるその他の言及した値または間に介在する値が本組成物および本方法に包含されることが理解される。言及した範囲における任意の特定の除外された限度を条件として、これらのより小さい範囲の上限および下限は独立して、より小さい範囲にふくまれ得、本組成物および本方法にも包含され得る。言及した範囲が一方のまたは両方の限度を含む場合、これらの含まれた限度のいずれかまたは両方を除外する範囲も本組成物および本方法に含まれる。
本明細書では、ある特定の範囲が用語「約」に先行される数値で示される。用語「約」は本明細書において、この用語が先行する正確な数およびこの用語が先行する近いまたは近似的な数である数を文字通り補強するために使用される。ある数が具体的に列挙された数に近い数または近似的な数であるかどうかの判定では、列挙されていない近いまたは近似的な数は、この数が示されている文脈において、具体的に列挙された数の実質的な等価を提供する数であり得る。例えば、ある数値に関して、用語「約」は、この用語が文脈において別途明確に定義されていない限り、この数値の−10%〜+10%の範囲を意味する。別の例では、語句「約6のpH値」は、pH値が別途具体的に定義されていない限り、5.4〜6.6のpH値を意味する。
本明細書に記載した見出しは、本明細書全体の参照により有することができる本組成物および本方法の様々な態様または実施形態を限定するものではない。従って、真下で定義する用語は、本明細書全体の参照により更に完全に定義される。
本文書は、読みやすくするために多くの節に分かれているが、読者は、ある節での記載をその他の節に適用することができることを認識するだろう。このように、本開示の様々な節に使用される見出しは限定的に解釈されるべきではない。
別途定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本組成物および本方法が属する分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。本組成物および本方法の実施または試験では、本明細書で説明するものと類似のまたは等価のあらゆる方法および材料も使用することができるが、代表例の方法および材料をこれより説明する。
本明細書で引用する全ての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が参照により援用されると具体的におよび個々に示されたかのように参照により本明細書に援用され、引用される刊行物に関連する方法および/または材料を開示するためにおよび説明するために参照により本明細書に援用される。引用したあらゆる刊行物はその開示が本出願日前であるが、本組成物および本方法が先行発明によりそのような刊行物に先行する権利がないということを認めると解釈すべきはない。更に、記載されている公開日は、個々に確認する必要があるであろう実際の公開日とは異なる場合がある。
この詳細な説明に従って、下記の略語および定義を適用する。単数形「a」、「an」および「the」は別途文脈が明確に指示しない限り複数の指示対象を含むことに留意されたい。そのため、例えば「酵素」への言及には複数のそのような酵素が含まれ、「投与量」への言及には、1回または複数回の投与量および当業者に既知のこの等量等への言及が含まれる。
あらゆる任意選択的な要素を除外するように特許請求の範囲を作成することができることに更に留意されたい。そのため、この記載は、特許請求の範囲の要素の列挙または「消極的な(negative)」限定の使用に関連して「のみ(solely)」、「のみ(only)」および同類のもののような排他的な用語を使用するための先行する根拠として機能することが意図されている。
本開示を読む際に当業者に明らかであるように、本明細書で説明されているおよび示されている個々の実施形態はそれぞれ、個別の成分と、本明細書で説明する本組成物および本方法の範囲および趣旨から逸脱することなくその他のいくつかの実施形態の内のいずれかの特徴から容易に分離され得るまたはこの特徴と容易に組み合わされ得る特徴とを有する。任意の列挙された方法を、列挙した事象の順序でまたは論理的に可能であるあらゆるその他の順序で実行することができる。
定義
用語「機能的断片」、「機能的に等価である断片」、「機能的に等価な断片」および同類のものは互換的に使用され、親ポリペプチドの定性的な酵素活性を保持する親ポリペプチドの一部または部分配列を意味する。機能的断片は親ポリペプチドと比較して定量的な酵素活性が変更されている場合があることに本明細書では留意されたい。
用語「機能的変異体」、「機能的に等価である変異体」、「機能的に等価な変異体」および同類のものは互換的に使用され、親ポリペプチドの定性的な酵素活性を保持する親ポリペプチドの変異体を意味する。機能的変異体は親ペプチドと比較して定量的な酵素活性が変更されている場合があることに本明細書では留意されたい。
断片および変異体を、部位特異的な変異誘発および合成構築等のあらゆる好都合な方法により得ることができる。
用語「ゲノム」は、真菌細胞に適用する場合、核内で見出される染色体DNAだけでなく、細胞の細胞内成分(例えばミトコンドリア)内で見出される細胞小器官DNAも包含する。
「コドン改変遺伝子」または「コドン優先(codon−preferred)遺伝子」または「コドン最適化遺伝子」とは、宿主細胞の好ましいコドン使用頻度を模倣するように設計されているコドン使用頻度を有する遺伝子のことである。遺伝子をコドン最適化するために行われる核酸変更は、親遺伝子のコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変更しないことを意味する「同義」である。しかしながら、天然遺伝子および変異遺伝子の両方を特定の宿主細胞用にコドン最適化することができ、従って、これに関して制限は意図されていない。
「コーディング配列」は、特定のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を意味する。「制御配列」は、コーディング配列の上流(5’−非コーディング配列)、コーディング配列内またはコーディング配列の下流(3’−非コーディング配列)に位置するヌクレオチド配列を意味しており、関連するコーディング配列の転写、RNAプロセシングまたは安定性または翻訳に影響を及ぼす。制御配列として、プロモーター、翻訳リーダー配列、5’非翻訳配列、3’非翻訳配列、イントロン、ポリアデニル化標的配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステム−ループ構造を挙げることができるがこれらに限定されない。
「プロモーター」は、コーディング配列または機能的RNAの発現を制御することができるDNA配列を意味する。プロモーター配列は近位のおよびより遠位の上流エレメントからなり、後者のエレメントはエンハンサーと称されることが多い。「エンハンサー」はプロモーター活性を刺激することができるDNA配列であり、プロモーターの固有のエレメントであってもよいしプロモーターのレベルまたは組織特異性を増強するために挿入された異種エレメントであってもよい。プロモーターは、その全体が天然遺伝子に由来していてもいし天然に見出される異なるプロモーターに由来する異なるエレメントで構成されていてもよく、および/または合成DNAセグメントを含んでもよい。様々なプロモーターが、様々な組織型もしくは細胞型で、または様々な発達段階で、または様々な環境条件に応じて、遺伝子の発現を誘導することができることが当業者に理解される。ほとんどの場合では制御配列の正確な境界が完全には定義されていないことから、いくつかのバリエーションのDNA断片が同一のプロモーター活性を有する場合があることが更に認識される。当分野で公知であるように、プロモーターを、このプロモーターの強度および/またはこのプロモーターが活性である条件に従って、例えば構成的プロモーター、強力なプロモーター、弱いプロモーター、誘導性/抑制性プロモーター、組織特異的に/発達的に制御されるプロモーター、細胞周期依存性プロモーター等に分類することができる。
「RNA転写物」は、RNAポリメラーゼにより触媒されるDNA配列の転写により生じる産物を意味する。「メッセンジャーRNA」または「mRNA」は、イントロンを有しておらず細胞によりタンパク質に翻訳され得るRNAを意味する。「cDNA」は、mRNAテンプレートに相補的であるおよび逆転写酵素を使用してmRNAテンプレートから合成されるDNAを意味する。「センス」RNAは、mRNAを含むおよび細胞内でまたはin vitroでタンパク質に翻訳され得るRNA転写物を意味する。「アンチセンスRNA」は、標的一次転写物またはmRNAの全部または一部に対して相補的であるおよびある特定の条件下で標的遺伝子の発現をブロックするRNA転写物を意味する(例えば米国特許第5,107,065号明細書を参照されたい)。アンチセンスRNAの相補性は、特定の遺伝子転写物の任意の部分(即ち5’非コーディング配列、3’非コーディング配列、イントロンまたはコーディング配列)との相補性であることができる。「機能的RNA」は、アンチセンスRNA、リボザイムRNAまたはポリペプチドに翻訳され得ないがそれにもかかわらず細胞内プロセスに影響を及ぼすその他のRNAを意味する。用語「相補体」および「逆相補体」はmRNA転写物に関して本明細書において互換的に使用され、メッセージのアンチセンスRNAを定義することが意図されている。
本明細書で使用する場合、「機能的に付着している」または「作動可能に連結されている」は、既知のまたは所望の活性を有するポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列の制御領域または機能的ドメイン(例えばプロモーター、エンハンサー領域、ターミネーター、シグナル配列、エピトープタグ等)が、この既知のまたは所望の活性に従って、制御領域または機能的ドメインが標的(例えば遺伝子またはポリペプチド)の発現、分泌または機能を制御することを可能にするような様式でこの標的に付着しているまたは連結されていることを意味する。例えば、プロモーターは、コーディング配列の発現を制御することができる場合には、このコーディング配列に作動可能に連結されている(即ち、このコーディング配列はプロモーターの転写制御下にある)。
用語「組換え」は、生物学的な成分または組成物(例えば細胞、核酸、ポリペプチド/酵素、ベクター等)に関して使用される場合、この生物学的な成分または組成物が天然では見出されない状態にあることを示す。換言すると、この生物学的な成分または組成物は、ヒトの介入により天然の状態から改変されている。例えば、組換え細胞には、天然の親(即ち非組換え)細胞中で見出されない1種もしくは複数種の遺伝子を発現する細胞、天然の親細胞とは異なる量で1種もしくは複数種の天然遺伝子を発現する細胞、および/または天然の親細胞とは異なる条件下で1種もしくは複数種の天然遺伝子を発現する細胞が包含される。組換え核酸は、1個もしくは複数個のヌクレオチドで天然配列と異なり得る、異種配列(例えば異種プロモーター、非天然のもしくは変異のシグナル配列をコードする配列等)に作動可能に連結され得る、イントロン配列を欠くことができる、および/または単離型であり得る。組換えポリペプチド/酵素は、1個もしくは複数個のアミノ酸で天然配列と異なり得る、異種配列と融合され得る、トランケートされ得る、もしくはアミノ酸の内部欠失を有し得る、天然細胞中では見出されない様式で発現され得る(例えば、このポリペプチドをコードする発現ベクターの細胞中の存在に起因して、このポリペプチドを過剰発現する組換え細胞から発現され得る)、および/または単離型であり得る。一部の実施形態では、組換えポリヌクレオチドまたは組換えポリペプチド/酵素は、野生型対応物と同一であるが非天然型(例えば単離型または富化型)である配列を有することが強調される。
用語「プラスミド」、「ベクター」、および「カセット」は、目的のポリヌクレオチド配列(例えば、細胞中で発現させる目的の遺伝子)を担持する染色体外エレメント(「発現ベクター」または「発現カセット」)を意味する。そのようなエレメントは概して、二本鎖DNAの形態であり、多くのヌクレオチド配列が連結されているまたは目的のポリヌクレオチドを細胞に導入することができる固有の構築物に組み換えられている(任意の起源に由来する)一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAの(線状のまたは環状の)自律的に複製する配列、ゲノム組込み配列、ファージまたはヌクレオチド配列であることができる。目的のポリヌクレオチド配列は、標的細胞中で発現させようとするポリペプチドまたは機能的RNAをコードする遺伝子であることができる。発現カセット/ベクターは概して遺伝子を含み、この遺伝子は、この遺伝子の宿主細胞中での発現を可能にするエレメントに作動可能に連結されている。
本明細書で使用する場合、「Casエンドヌクレアーゼ」と称されるまたは「Casエンドヌクレアーゼ活性」を有するポリペプチドは、Cas遺伝子によりコードされるCRISPR関連(Cas)ポリペプチドに関し、Casタンパク質は、1種または複数種のガイドポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に標的DNA配列を切断することができる(例えば「CRISPR−Cas systems and methods for altering expression of gene products」という表題の米国特許第8697359号明細書を参照されたい)。ガイドポリヌクレオチド依存性のエンドヌクレアーゼ活性を保持するCasエンドヌクレアーゼの変異体もこの定義に含まれ、この変異体として、ニッキングエンドヌクレアーゼ活性を有する(即ち二本鎖DNA標的部位で一本鎖ニックを導入する)Cas変異体が挙げられる(下記の定義を参照されたい)。(これまで同定されている野生型Casエンドヌクレアーゼは標的部位で二本鎖切断を導入することに留意されたい)。Casエンドヌクレアーゼは、ガイドポリヌクレオチドにより導かれて二本鎖DNA中の特定の標的部位(例えば細胞のゲノム中の標的部位)を認識して切断する。いくつかの異なる型のCRISPR−Casシステムが説明されており、I型CRISPR−Casシステム、II型CRISPR−CasシステムおよびIII型CRISPR−Casシステムに分類され得る(例えばLiu and Fan,CRISPR−Cas system:a powerful tool for genome editing.Plant Mol Biol(2014)85:209−218での説明を参照されたい)。ある特定の態様では、CRISPR−Casシステムは、Cas9エンドヌクレアーゼまたはこの変異体(例えばCasニッカーゼ等)を用いるII型CRISPR−Casシステムである。Cas9エンドヌクレアーゼは、あらゆる好都合なCas9エンドヌクレアーゼであることができ、下記の細菌種由来のCas9エンドヌクレアーゼおよびこの機能的断片が挙げられるがこれらに限定されない:ストレプトコッカス(Streptococcus)種(例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)、S.ミュータンス(S.mutans)およびS.サーモフィルス(S.thermophilus))、カンピロバクター(Campylobacter)種(例えばC.ジェジュニ(C.jejuni))、ナイセリア(Neisseria)種(例えばN.メニンジティデス(N.meningitides))、フランシセラ(Francisella)種(例えばF.ノビシダ(F.novicida))ならびにパスツレラ(Pasteurella)種(例えばP.ムルトシダ(P.multocida))。Cas9に関して多くのその他の種を使用することができる。例えば、機能的Casエンドヌクレアーゼまたはこの変異体であって、配列番号2、8および11〜16のいずれか一つに対して少なくとも70%の同一性を有し、例えば配列番号2、8および11〜16のいずれか一つに対して少なくとも80%の同一性を有し、少なくとも90%の同一性を有し、少なくとも95%の同一性を有し、少なくとも96%の同一性を有し、少なくとも97%の同一性を有し、少なくとも98%の同一性を有し、少なくとも99%の同一性を有し、例えば最大で100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む機能的Casエンドヌクレアーゼまたはこの変異体を用いることができる。その他の実施形態では、Casエンドヌクレアーゼまたはこの変異体は、II型CRISPR−CasシステムのCpf1エンドヌクレアーゼである。Cpf1は、Cas9とは異なる特徴により頑強なDNA干渉を媒介する。Cpf1はtracrRNAを欠いており、Tリッチなプロトスペーサー隣接モチーフを用いる。Cpf1は、千鳥足状のDNA二本鎖切断を介してDNAを切断する。例えばZetsche etal.,Cell(2015)163:759−771を参照されたい。
本明細書で使用する場合、「Casニッカーゼ」は、1種または複数種のガイドポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に標的の二本鎖DNA配列中に一本鎖ニックを導入することができるCasエンドヌクレアーゼである。(例えば部位特異的変異誘発により)親Casエンドヌクレアーゼ中の2つのヌクレアーゼドメインの内の一方を不活性化することによって、Casニッカーゼを組換えにより生成することができる。Casニッカーゼの非限定的な一例は、D10A変異によりRuvCドメインが不活性化されている、SanderおよびJoung(Nature Biotechnology,2013,1−9)で説明されているCas9ニッカーゼである。上述したように、一般的用語「Casエンドヌクレアーゼ」には、二本鎖切断CasポリペプチドおよびニッキングCasポリペプチドの両方が包含される。例えば、ガイドRNAがCasエンドヌクレアーゼを所望の標的部位に誘導することができると説明されている場合、二本鎖切断CasエンドヌクレアーゼおよびニッキングCasポリペプチド(下記で定義する)の両方に関してそうすることができることになる。
本明細書で使用する場合、用語「ガイドポリヌクレオチド」は、Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成することができるおよびCasエンドヌクレアーゼがDNA標的部位を認識して切断することを可能にするポリヌクレオチド配列に関する。このガイドポリヌクレオチドは単分子または二重分子であることができる。ガイドポリヌクレオチド配列は、RNA配列、DNA配列またはこれらの組み合わせ(RNA−DNA組み合わせ配列)であることができる。リボ核酸のみを含むガイドポリヌクレオチドは「ガイドRNA」とも称される。
このガイドポリヌクレオチドは、標的DNA中のヌクレオチド配列(下記において「プロトスペーサー」または「標的部位」とも呼ばれる)に相補的である第1のヌクレオチド配列ドメイン(可変ターゲティングドメインまたはVTドメインとも称される)と、Casエンドヌクレアーゼポリペプチドと相互作用する第2のヌクレオチド配列ドメイン(Casエンドヌクレアーゼ認識ドメインまたはCERドメインと称される)とを含む二重分子(二本鎖ガイドポリヌクレオチドとも称される)であることができる。この二重分子ガイドポリヌクレオチドのCERドメインは、相補領域に沿ってハイブリダイズされる2個の別々の分子を含む。この2個の別々の分子は、RNA配列、DNA配列および/またはRNA−DNA組み合わせ配列であることができる。一部の実施形態では、CERドメインに連結されているVTドメインを含む二本鎖ガイドポリヌクレオチドの第1の分子は、(DNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成されている場合には)「crDNA」と称され、(RNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成されている場合には)「crRNA」と称され、(DNAヌクレオチドとRNAヌクレオチドとの組み合わせで構成されている場合には)「crDNA−RNA」と称される。crヌクレオチドは、細菌中におよび古細菌中に天然に存在するcrRNAの断片を含むことができる。一実施形態では、本明細書で開示するcrヌクレオチド中に存在する細菌中におよび古細菌中に天然に存在するcrRNAの断片のサイズは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個またはより多くのヌクレオチドから変動することができるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、CERドメインを含む二本鎖ガイドポリヌクレオチドの第2の分子は、(RNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成されている場合には)「tracRNA」と称され、(DNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成されている場合には)「tracrDNA」と称され、(DNAヌクレオチドとRNAヌクレオチドとの組み合わせで構成されている場合には)「tracrDNA−RNA」と称される。ある特定の実施形態では、RNA/Cas9エンドヌクレアーゼ複合体を誘導するRNAは、二本鎖crRNA−tracrRNAを含む二本鎖RNAである。
ガイドポリヌクレオチドはまた、標的DNA中のヌクレオチド配列に相補的である第1のヌクレオチド配列ドメイン(可変ターゲティングドメインまたはVTドメインと称される)と、Casエンドヌクレアーゼポリペプチドと相互作用する第2のヌクレオチドドメイン(Casエンドヌクレアーゼ認識ドメインまたはCERドメインと称される)とを含む単分子であることもできる。「ドメイン」は、RNA配列、DNA配列および/またはRNA−DNA組み合わせ配列であることができるヌクレオチドの連続ストレッチを意味する。単一ガイドポリヌクレオチドのVTドメインおよび/またはCERドメインは、RNA配列、DNA配列またはRNA−DNA組み合わせ配列を含むことができる。一部の実施形態では、単一ガイドポリヌクレオチドは、tracrヌクレオチド(CERドメインを含む)に連結されているcrヌクレオチド(CERドメインに連結されているVTドメインを含む)を含み、この連結は、RNA配列、DNA配列またはRNA−DNA組み合わせ配列を含むヌクレオチド配列である。crヌクレオチド由来の配列およびtracrヌクレオチド由来の配列で構成されている単一ガイドポリヌクレオチドを、(RNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成されている場合には)「単一ガイドRNA」と称することができ、(DNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成されている場合には)「単一ガイドDNA」と称することができ、(RNAヌクレオチドとDNAヌクレオチドとの組み合わせで構成されている場合には)「単一ガイドRNA−DNA」と称することができる。本開示の一実施形態では、単一ガイドRNAは、II型Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成することができるII型CRISPR/CasシステムのcrRNAまたはcrRNA断片およびtracrRNAまたはtracrRNA断片を含み、このガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、Casエンドヌクレアーゼを真菌細胞ゲノム標的部位へと誘導することができ、Casエンドヌクレアーゼがこのゲノム標的部位に二本鎖切断を導入することを可能にする。
二本鎖ガイドポリヌクレオチドと対比して単一ガイドポリヌクレオチドを使用する一態様は、標的細胞中で単一ガイドポリヌクレオチドを発現させるために作製する必要がある発現カセットが1種のみであるということである。
用語「可変ターゲティングドメイン」または「VTドメイン」は本明細書において互換的に使用され、二本鎖DNA標的部位の一方の鎖(ヌクレオチド配列)に相補的であるヌクレオチド配列を含む。第1のヌクレオチド配列ドメイン(VTドメイン)と標的配列との間の相補性の%は少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、63%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%である、または100%相補的である。VTドメインは、少なくとも12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個または30個のヌクレオチドの長さであることができる。一部の実施形態では、VTドメインは12〜30個のヌクレオチドの連続ストレッチを含む。VTドメインは、DNA配列、RNA配列、改変DNA配列、改変RNA配列またはこれらの任意の組み合わせで構成され得る。
ガイドポリヌクレオチドの用語「Casエンドヌクレアーゼ認識ドメイン」または「CERドメイン」は本明細書において互換的に使用され、Casエンドヌクレアーゼポリペプチドと相互作用するヌクレオチド配列(例えば、ガイドポリヌクレオチドの第2のヌクレオチド配列ドメイン)を含む。CERドメインは、DNA配列、RNA配列、改変DNA配列、改変RNA配列(例えば本明細書で説明する改変を参照されたい)またはこれらの任意の組み合わせで構成され得る。
単一ガイドポリヌクレオチドのcrヌクレオチドとtracrヌクレオチドとを連結するヌクレオチド配列は、RNA配列、DNA配列またはRNA−DNA組み合わせ配列を含むことができる。一実施形態では、単一ガイドポリヌクレオチドのcrヌクレオチドとtracrヌクレオチドとを連結するヌクレオチド配列は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100個のヌクレオチドの長さであることができる。別の実施形態では、単一ガイドポリヌクレオチドのcrヌクレオチドとtracrヌクレオチドとを連結するヌクレオチド配列は、限定されないがGAAAテトラループ配列等のテトラループ配列を含むことができる。
本明細書で使用する場合、用語「ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステム」(および等価物)には、DNA標的部位で二本鎖切断を誘導することができる、Casエンドヌクレアーゼとガイドポリヌクレオチド(単一または二重)との複合体が含まれる。Casエンドヌクレアーゼは、DNA標的部位の極めて近くでDNA二本鎖をほどき、ガイドRNAによる標的配列の認識時に両方のDNA鎖を切断するが、但し、正しいプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)が標的配列の3’末端で適切に配向されている場合に限られる。
用語「発現」は、本明細書で使用する場合、前駆体または成熟型のいずれかでの機能的最終産物(例えばmRNA、ガイドRNAまたはタンパク質)の産生を意味する。
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの細胞への挿入(例えば組換えDNA構築物/発現構築物)に関する「導入される」は、そのような課題を実施するためのあらゆる方法を意味しており、所望の生体分子の導入を達成するための「遺伝子導入」、「形質転換」、「形質導入」、物理的手段または同類のものの内のいずれかの手段を含む。
「成熟」タンパク質は、翻訳後にプロセシングされたポリペプチド(即ち、一次翻訳産物中に存在する任意のプレペプチドまたはプロペプチドが除去されているポリペプチド)を意味する。「前駆体」タンパク質は、mRNAの翻訳の一次産物(即ち、プレペプチドおよびプロペプチドが依然として存在している)を意味する。プレペプチドおよびプロペプチドは細胞内局在化シグナルであり得るがこれに限定されない。
「安定した形質転換」は、核ゲノムおよび細胞小器官ゲノムの両方が挙げられる宿主生物のゲノム中への核酸断片の移動を意味しており、遺伝的に安定した遺伝がもたらされる。対照的に、「一過性の形質転換」は、組み込まれることなくまたは安定して遺伝することなく遺伝子が発現される、宿主生物の核中へのまたはその他のDNA含有細胞小器官中への核酸断片の移動を意味している(本明細書では「不安定な形質転換」と称される場合もある)。形質転換された核酸断片を含む宿主生物を「トランスジェニック」生物と称する。
「真菌細胞」、「真菌」、「真菌宿主細胞」および同類のものは、本明細書で使用する場合、子嚢菌(Ascomycota)門、担子菌(Basidiomycota)門、ツボカビ(Chytridiomycota)門および接合菌(Zygomycota)門(Hawksworth et al.,In,Ainsworth and Bisby’s Dictionary of The Fungi,8th edition,1995,CAB International,University Press,Cambridge,UKにより定義される)と、卵菌門(Oomycota)(Hawksworth et al.,上記を参照、で言及されている)および全ての栄養胞子形成(mitosporic)真菌((Hawksworth et al.,上記を参照)とを含む。ある特定の実施形態では、真菌宿主細胞は酵母細胞であり、「酵母」は、有子嚢胞子酵母(エンドミケス目(Endomycetales))、担子菌酵母(basidiosporogenous yeast)、および不完全菌(不完全酵母菌類(Blastomycetes))に属する酵母を意味する。従って、酵母宿主細胞として、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)、ピチア(Pichia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、シゾサッカロマイセス(SchizoSaccharomyces)またはヤロウイア(Yarrowia)の細胞が挙げられる。酵母の種として、下記のものが挙げられるがこれらに限定されない:サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ジアスタティクス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロマイセス・ドウグラシイ(Saccharomyces douglasii)、サッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロマイセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、サッカロマイセス・オビフォルミス(Saccharomyces oviformis)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の細胞。
用語「糸状真菌細胞」は、ユウミコチニア(Eumycotina)亜門の全ての糸状形態を含む。糸状真菌属の適切な細胞として、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギルス(Aspergillus)、アウレオバシジウム(Aureobasidium)、ブジェルカンデラ(Bjerkandera)、セリポリオプシス(Ceriporiopsis)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、コプリナス(Coprinus)、コリオルス(Coriolus)、コリナスカス(Corynascus)、ケトミウム(Chaertomium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、フィロバシディウム(Filobasidium)、フサリウム(Fusarium)、ジベレラ(Gibberella)、フミコーラ(Humicola)、マグナポルテ(Magnaporthe)、ムコール(Mucor)、マイセリオフトラ(Myceliophthora)、ムコール(Mucor)、ネオカリマスティクス(Neocallimastix)、ニューロスポラ(Neurospora)、ペシロマイセス(Paecilomyces)、ペニシリウム(Penicillium)、ファネロケーテ(Phanerochaete)、フレビア(Phlebia)、ピロミセス(Piromyces)、プレウロタス(Pleurotus)、シタリジウム(Scytaldium)、シゾフィラム(Schizophyllum)、スポロトリクム(Sporotrichum)、タラロミセス(Talaromyces)、サーモアスカス(Thermoascus)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)、トラメテス(Trametes)およびトリコデルマ(Trichoderma)の細胞が挙げられるがこれらに限定されない。糸状真菌種として、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フォエティダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、フサリウム・バクトリジオイデス(Fusarium bactridioides)、フサリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フサリウム・クロックウェレンズ(Fusarium crookwellense)、フサリウム・クルモラム(Fusarium culmorum)、フサリウム・グラミネアルム(Fusarium graminearum)、フサリウム・グラミナム(Fusarium graminum)、フサリウム・ヘテロスポラム(Fusarium heterosporum)、フサリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フサリウム・レチキュラタム(Fusarium reticulatum)、フサリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、フサリウム・サムブシウム(Fusarium sambucinum)、フサリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フサリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フサリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フサリウム・トルロサム(Fusarium torulosum)、フサリウム・トリコセシオイデス(Fusarium trichothecioides)、フサリウム・ベネナタム(Fusarium venenatum)、ブジェルカンデラ・アダスタ(Bjerkandera adusta)、セリポリオプシス・アネイリナ(Ceriporiopsis aneirina)、セリポリオプシス・アネイリナ(Ceriporiopsis aneirina)、セリポリオプシス・カレギエア(Ceriporiopsis caregiea)、セリポリオプシス・ギルベスセンス(Ceriporiopsis gilvescens)、セリポリオプシス・パンノシンタ(Ceriporiopsis pannocinta)、セリポリオプシス・リブローサ(Ceriporiopsis rivulosa)、セリポリオプシス・スブルファ(Ceriporiopsis subrufa)、セリポリオプシス・スブヴェルミスポラ(Ceriporiopsis subvermispora)、コプリナス・シネレウス(Coprinus cinereus)、コリオルス・ヒルスツス(Coriolus hirsutus)、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)、フミコーラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)、マイセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、ニューロスポラ・インターメディア(Neurospora intermedia)、ペニシリウム・プルプロゲナム(Penicillium purpurogenum)、ペニシリウム・カネスセンス(Penicillium canescens)、ペニシリウム・ソリタム(Penicillium solitum)、ペニシリウム・フニクロスム(Penicillium funiculosum)、ファネロケーテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、フレビア・ラジエート(Phlebia radiate)、プレウロタス・エリンギ(Pleurotus eryngii)、タラロマイセス・フラバス(Talaromyces flavus)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、トラメテス・ビローサ(Trametes villosa)、トラメテス・ベルシコロル(Trametes versicolor)、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンジブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)およびトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)の細胞が挙げられるがこれらに限定されない。
Cas/ガイドポリヌクレオチドシステムの文脈で使用される場合、用語「標的部位」、「標的配列」、「ゲノム標的部位」、「ゲノム標的配列」(および等価物)は本明細書において互換的に使用され、Casエンドヌクレアーゼ切断が望ましい真菌細胞のゲノム中のポリヌクレオチド配列を意味する。しかしながら、この用語が使用される文脈では、この用語の意味がわずかに変更され得る。例えば、Casエンドヌクレアーゼ用の標的部位は一般に非常に特異的であり、正確なヌクレオチド配列/位置に定義され得ることが多いが、ある場合では、所望のゲノム改変用の標的部位は、DNA切断が起こる部位のみと比べて広く定義され得る(例えば、相同組換えが望ましいゲノム遺伝子座または領域)。そのため、ある特定の場合(Cas/ガイドRNAの活性により起こるゲノム改変)では、DNA切断が「標的部位でまたは標的部位付近で」起こると説明される。標的部位は真菌細胞ゲノム中の内在性部位であり得る、或いは、標的部位は真菌細胞に対して異種であり得、そのためゲノム中に天然には存在していない、または標的部位を、天然で生じる場所と比較して非相同のゲノム位置で見出すことができる。
本明細書で使用する場合、「核酸」はポリヌクレオチドを意味しており、デオキシリボヌクレオチド塩基またはリボヌクレオチド塩基の一本鎖ポリマーまたは二本鎖ポリマーを含む。核酸はまた、断片および改変ヌクレオチドも含むことができる。そのため、用語「ポリヌクレオチド」、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」および「核酸断片」は、一本鎖または二本鎖であるRNAおよび/またはDNAのポリマーを示すために互換的に使用され、合成ヌクレオチド塩基、非天然ヌクレオチド塩基または改変ヌクレオチド塩基を任意選択で含む。ヌクレオチド(通常は5’−モノフォスフェート形態で見出される)は下記のように一文字記号で言及される:アデノシンまたはデオキシアデノシン(それぞれRNAまたはDNAの場合)の場合の「A」、シトシンまたはデオキシシトシンの場合の「C」、グアノシンまたはデオキシグアノシンの場合の「G」、ウリジンの場合の「U」、デオキシチミジンの場合の「T」、プリンの場合の「R」(AまたはG)、ピリミジンの場合の「Y」(CまたはT)、GまたはTの場合の「K」、AまたはCまたはTの場合の「H」、イノシンの場合の「I」およびあらゆるヌクレオチドの場合の「N」。
用語「に由来する」は、用語「を起源とする」、「から得られる」、「から入手可能である」、「から単離される」および「から生成される」を包含しており、別の特定の材料中に起源が見出されるまたは別の特定の材料を参照して説明され得る特徴を有するある特定の材料を一般に示す。
本明細書で使用する場合、用語「ハイブリダイゼーション条件」は、ハイブリダイゼーション反応を行う条件を意味する。この条件は概して、ハイブリダイゼーションが測定される条件の「ストリンジェンシー」の程度により分類される。このストリンジェンシーの程度は、例えば核酸結合複合体またはプローブの融解温度(Tm)をベースとすることができる。例えば、典型的には、「最高ストリンジェンシー」は約Tm−5℃(プローブのTmよりも5℃下)で起こり、「高ストリンジェンシー」はTmよりも約5〜10℃下で起こり、「中間ストリンジェンシー」はプローブのTmよりも約10〜20℃下で起こり、「低ストリンジェンシー」はTmよりも約20〜25℃下で起こる。或いは、または加えて、ハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーションの塩強度条件もしくはイオン強度条件ならびに/または1回もしくは複数回のストリンジェンシー洗浄(例えば、6×SSC=非常に低いストリンジェンシー、3×SSC=低〜中間のストリンジェンシー、1×SSC=中間ストリンジェンシーおよび0.5×SSC=高ストリンジェンシー)をベースとすることができる。機能上、最高ストリンジェンシー条件を使用してハイブリダイゼーションプローブとの厳密な同一性またはほぼ厳密な同一性を有する核酸配列を同定することができ、高ストリンジェンシー条件が使用されるとプローブと約80%以上の配列同一性を有する核酸配列が同定される。高選択性を必要とする用途の場合、ハイブリッドを形成するのに比較的ストリンジェントな条件を使用することが概して望ましい(例えば、比較的に低い塩条件および/または高い温度条件が使用される)。
本明細書で使用する場合、「ハイブリダイゼーション」は、当分野で既知であるように、核酸の鎖が塩基対合により相補鎖と結合するプロセスを意味する。より具体的には、「ハイブリダイゼーション」は、ブロットハイブリダイゼーション技術中におよびPCR技術中に起こるように核酸の一本鎖が相補鎖と二本鎖(即ち塩基対)を形成するプロセスを意味する。中間〜高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件および洗浄条件の下で2種の配列が互いに特異的にハイブリダイズする場合、核酸配列は参照核酸配列に対して「選択的にハイブリダイズ可能」であると考えられる。ハイブリダイゼーション条件は、核酸が結合する複合体またはプローブの融解温度(Tm)をベースとする。例えば、典型的には、「最高ストリンジェンシー」は約Tm−5℃(プローブのTmよりも5℃下)で起こり、「高ストリンジェンシー」はTmよりも約5〜10℃下で起こり、「中間ストリンジェンシー」はプローブのTmよりも約10〜20℃下で起こり、「低ストリンジェンシー」はTmよりも約20〜25℃下で起こる。機能上、最高ストリンジェンシー条件を使用してハイブリダイゼーションプローブとの厳密な同一性またはほぼ厳密な同一性を有する配列を同定することができ、中間のまたは低いストリンジェンシー条件を使用してポリヌクレオチド配列相同体を同定することができる、または検出することができる。
中間ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件および高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は当分野で公知である。例えば、中間ストリンジェンシーハイブリダイゼーションを、20%のホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%の硫酸デキストランおよび20mh/mLの変性されて剪断されたサケ***(denatured sheared salmon sperm)DNAを含む溶液中で37℃にて一晩インキュベートし、続いて約37〜50℃にて1×SSCでフィルタを洗浄することにより実行することができる。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、65℃および0.1×SSC(1×SSC=0.15MのNaCl、0.015Mのクエン酸Na、pH7.0)でのハイブリダイゼーションであることができる。或いは、高ストリンジェンシー条件を、50%のホルムアミド、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%のSDSおよび100μg/mLの変性担体DNA中で約42oCにて実行することができ、続いて、室温にて2×SSCおよび0.5%のSDSで2回洗浄し、42oCにて0.1×SSCおよび0.5×SDSで更に2回洗浄する。そして、非常に高いストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、68℃および0.1×SSCでのハイブリダイゼーションであることができる。プローブ長および同類のもの等の因子を適応させるために、必要に応じて温度、イオン強度等を調整する方法が当業者に知られている。
少なくとも2種の核酸またはポリペプチドの文脈における語句「実質的に類似」または「実質的に同一」は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、親配列もしくは参照配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは更に少なくとも99%同一である配列を含むこと、または機能性を付加することなく本明細書を回避するためにのみ行われるアミノ酸の置換、挿入、欠失もしくは修飾を含まないことを意味する。
核酸配列またはポリペプチド配列の文脈における「配列同一性」または「同一性」は、特定の比較ウィンドウ全体にわたり最大の一致のためにアラインされた場合に同一である2種の配列における核酸塩基またはアミノ酸残基を意味する。
用語「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウ全体にわたり2種の適切にアラインされた配列を比較することにより決定される値を意味しており、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の部分は、これら2種の配列を最適にアラインさせるために、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して付加または欠失(即ちギャップ)を含む場合がある。このパーセンテージは、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列中に存在する位置の数を決定して一致した位置の数を得、この一致した位置の数を比較ウィンドウ中の位置の総数で除算し、結果を100で乗算して配列同一性のパーセンテージを得ることにより算出される。配列同一性パーセントの有用な例として、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%または50%〜100%の任意の整数パーセンテージが挙げられるがこれらに限定されない。この同一性を、本明細書で説明するプログラムのいずれかを使用して決定することができる。
配列アラインメントおよび同一性パーセントまたは類似性計算を、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングサイト(DNASTAR Inc.、Madison、WI)のMegAlign(商標)プログラムが挙げられるがこれに限定されない相同配列を検出するために設計された様々な比較方法を使用して決定することができる。本出願の文脈内では、配列分析ソフトウェアを分析に使用する場合、別途指定しない限り、分析結果は、言及したプログラムの「デフォルト値」をベースとすることが理解されるだろう。本明細書で使用する場合、「デフォルト値」は、最初に初期化された場合にソフトウェアで最初にロードされる値またはパラメータの任意のセットを意味することができる。
「アラインメントのClustal V方法」は、Clustal V(Higgins and Sharp,(1989)CABIOS 5:151−153、Higgins et al.,(1992)Comput Appl Biosci 8:189−191により説明されている)と標識されているおよびLASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングサイト(DNASTAR Inc.、Madison、WI)のMegAlign(商標)プログラム中で見出されるアラインメント方法に対応する。多重アラインメントの場合、デフォルト値は、GAP PENALTY=10およびGAP LENGTH PENALTY=10に対応する。Clustal方法を使用するタンパク質配列のペアワイズアラインメント(pairwise alignment)用のおよび同一性パーセントの算出用のデフォルトパラメータは、KTUPLE=1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5およびDIAGONALS SAVED=5である。核酸の場合、これらのパラメータは、KTUPLE=2、GAP PENALTY=5、WINDOW=4およびDIAGONALS SAVED=4である。Clustal Vプログラムを使用した配列のアラインメントの後、同じプログラム中の「配列距離」表を調べることにより、「同一性パーセント」を得ることができる。
「アラインメントのClustal W方法」は、Clustal W(Higgins and Sharp,(1989)CABIOS 5:151−153、Higgins et al.,(1992)Comput Appl Biosci 8:189−191により説明されている)と標識されているおよびLASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングサイト(DNASTAR Inc.、Madison、WI)のMegAlign(商標)v6.1プログラム中で見出されるアラインメント方法に対応する。多重アラインメント用のデフォルトパラメータ(GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=0.2、Delay Divergen Seqs(%)=30、DNA Transition Weight=0.5、Protein Weight Matrix=Gonnet Series、DNA Weight Matrix=IUB)。Clustal Wプログラムを使用した配列のアラインメントの後、同じプログラム中の「配列距離」表を調べることにより、「同一性パーセント」を得ることができる。
別途述べない限り、本明細書で提供される配列の同一性/類似性の値は、下記のパラメータを使用するGAP Version 10(GCG、Accelrys、San Diego、CA)を使用して得られた値を意味する:ギャップ生成ペナルティの重み(penalty weight)50、ギャップ長伸長ペナルティの重み3およびnwsgapdna.cmpスコアリングマトリックスを使用するヌクレオチド配列に関する同一性%および類似性%;GAP生成ペナルティの重み8およびギャップ長伸長ペナルティの重み2およびBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915)を使用するアミノ酸配列に関する同一性%および類似性%。GAPは、Needleman and Wunsch,(1970)J Mol Biol 48:443−53のアルゴリズムを使用して、一致の数を最大化するおよびギャップの数を最小限に抑える2種の配列全体のアラインメントを見出す。GAPは、全ての可能なアラインメントおよびギャップ位置を考慮し、一致した塩基の単位でギャップ生成ペナルティおよびギャップ伸長ペナルティを使用して、一致した塩基の最大数および最小のギャップを有するアラインメントを作成する。
多くのレベルの配列同一性が、その他の種からのまたは天然にもしくは合成により改変されているポリペプチド(そのようなポリペプチドは同一のまたは類似した機能または活性を有する)の同定で有用であることが当業者に理解されるだろう。同一性パーセントの有用な例として、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%または50%〜100%の任意の整数パーセンテージが挙げられるがこれらに限定されない。実際に、50%〜100%の任意の整数のアミノ酸同一性は本開示の説明に有用であり得、例えば51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であり得る。
「遺伝子」は、機能的分子(限定されないが、例えば特定のポリペプチド(例えば酵素)または機能的RNA分子(例えば、ガイドRNA、アンチセンスRNA、リボザイム等))をコードし、または発現させることができ、このコーディング配列に先行する制御配列(5’−非コーディング配列)および/または後続する制御配列(3’−非コーディング配列)を含む核酸断片を含む。「天然遺伝子」は、それ自体の制御配列と共に天然で見出される遺伝子を意味する。組換え遺伝子は、異なる生物または同一の生物に由来するであろう別の遺伝子の制御配列により制御される遺伝子を意味する。
「変異遺伝子」とは、人の介入により変更されている遺伝子のことである。そのような「変異遺伝子」は、少なくとも1個のヌクレオチドの付加、欠失または置換により、対応する非変異遺伝子の配列とは異なる配列を有する。本開示のある特定の実施形態では、この変異遺伝子は、本明細書で開示するガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステムの結果として生じる変更を含む。変異真菌細胞とは、変異遺伝子を含む真菌細胞のことである。
本明細書で使用する場合、「標的型変異」は、本明細書で開示するまたは当分野で既知である標的配列のDNA中で二本鎖切断を導入することができる二本鎖切断誘導剤を含む方法を使用して、天然遺伝子内の標的とされる配列を変更することにより行われた天然遺伝子中の変異のことである。
用語「ドナーDNA」または「ドナー核酸配列」または「ドナーポリヌクレオチド」は、標的細胞ゲノムに挿入される目的のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを意味する。そのため、ドナーDNA中の目的のポリヌクレオチド配列は、標的部位でもしくは標的部位付近で挿入される新規の領域および/または標的部位でもしくは標的部位付近で置き換えられる/編集されるヌクレオチドと比較した場合に改変されているポリヌクレオチド配列を含むことができる。ある特定の実施形態では、ドナーDNA構築物は、目的のポリヌクレオチド配列に隣接する相同の第1のおよび第2の領域を更に含む。ドナーDNAの相同の第1のおよび第2の領域は、それぞれが真菌細胞ゲノム存在する第1のおよび第2のゲノム領域に対する相同性を共有する。「相同性」は、類似するDNA配列を意味する。例えば、ドナーDNA上で見出される「ゲノム領域に対する相同領域」とは、真菌細胞ゲノムの所与の「ゲノム領域」と類似する配列を有するDNAの領域のことである。相同領域は、切断される標的部位での相同組換えを促進するのに十分である任意の長さであることができる。例えば、相同領域は、この相同領域が、対応するゲノム領域との相同組換えを受けるのに十分な相同性を有するように、少なくとも5〜10、5〜15、5〜20、5〜25、5〜30、5〜35、5〜40、5〜45、5〜50、5〜55、5〜60、5〜65、5〜70、5〜75、5〜80、5〜85、5〜90、5〜95、5〜100、5〜200、5〜300、5〜400、5〜500、5〜600、5〜700、5〜800、5〜900、5〜1000、5〜1100、5〜1200、5〜1300、5〜1400、5〜1500、5〜1600、5〜1700、5〜1800、5〜1900、5〜2000、5〜2100、5〜2200、5〜2300、5〜2400、5〜2500、5〜2600、5〜2700、5〜2800、5〜2900、5〜3000、5〜3100個またはより多い塩基の長さを含むことができる。「十分な相同性」は、2種のポリヌクレオチド配列が相同組換え反応用の基質として作用するのに十分な構造的類似性を有することを示す。この構造的類似性は、各ポリヌクレオチド断片の全長とポリヌクレオチドの配列類似性とを含む。配列類似性を、配列の全長にわたる配列同一性パーセントで、ならびに/または100%配列同一性を有する連続ヌクレオチド等の局在化した類似性を含む保存領域および配列の長さの一部にわたる配列同一性パーセントで説明することができる。
標的およびドナーポリヌクレオチドにより共有される相同性または配列同一性の量は多様であり得、約1〜20bp、20〜50bp、50〜100bp、75〜150bp、100〜250bp、150〜300bp、200〜400bp、250〜500bp、300〜600bp、350〜750bp、400〜800bp、450〜900bp、500〜1000bp、600〜1250bp、700〜1500bp、800〜1750bp、900〜2000bp、1〜2.5kb、1.5〜3kb、2〜4kb、2.5〜5kb、3〜6kb、3.5〜7kb、4〜8kb、5〜10kbの範囲で単位整数値を有する全長および/または全領域を含む、または最大で標的部位の全長を含む。これらの範囲にはこの範囲内の全ての整数が含まれ、例えば1〜20bpの範囲には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20bpが含まれる。相同性の量を、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性パーセントを含む2種のポリヌクレオチドの完全にアラインされた長さ全体にわたる配列同一性パーセントで説明することもできる。十分な相同性は、ポリヌクレオチドの長さと、全体的な配列同一性パーセントと、任意選択で連続ヌクレオチドの保存領域または局所的な配列同一性パーセントとの任意の組み合わせを含み、例えば、十分な相同性を、標的遺伝子座の領域に対して少なくとも80%の配列同一性を有する75〜150bpの領域として説明することができる。十分な相同性を、高ストリンジェンシー条件下で2種のポリヌクレオチドの特異的にハイブリダイズする予想された能力により説明することもでき、例えばSambrook et al.,(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY)、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,Eds(1994)Current Protocols,(Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc)およびTijssen(1993)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Acid Probes,(Elsevier,New York)を参照されたい。
本明細書で使用する場合、真菌細胞(例えば、標的細胞)のゲノム中の染色体のセグメントのことである。このゲノム領域は、少なくとも5〜10、5〜15、5〜20、5〜25、5〜30、5〜35、5〜40、5〜45、5〜50、5〜55、5〜60、5〜65、5〜70、5〜75、5〜80、5〜85、5〜90、5〜95、5〜100、5〜200、5〜300、5〜400、5〜500、5〜600、5〜700、5〜800、5〜900、5〜1000、5〜1100、5〜1200、5〜1300、5〜1400、5〜1500、5〜1600、5〜1700、5〜1800、5〜1900、5〜2000、5〜2100、5〜2200、5〜2300、5〜2400、5〜2500、5〜2600、5〜2700、5〜2800.5〜2900、5〜3000、5〜3100個またはより多くの塩基を含むことができ、その結果、このゲノム領域は、対応する相同領域との相同組換えを受けるのに十分な相同性を有する。ゲノム領域は、ゲノム中のCas/ガイドRNA標的部位を囲む領域を含むことができる。
本明細書で使用する場合、「相同組換え」は、相同部位での2種のDNA分子間でのDNA断片の交換を含み、当分野で十分に説明されている。
表現型マーカーとは、陽性選択可能マーカーであるか陰性選択可能マーカーであるかにかかわらず、視覚マーカーおよび選択可能マーカーが挙げられるスクリーニング可能なまたは選択可能なマーカーのことである。あらゆる表現型マーカーを使用することができる。具体的には、選択可能なまたはスクリーニング可能なマーカーは、多くの場合は特定の条件下で、ある分子もしくはこの分子を含む細胞を同定すること、この分子もしくは細胞を有利にもしくは不利に選択すること、またはスクリーニングすることを可能にするDNAセグメントを含む。これらのマーカーは活性(限定されないが、RNA、ペプチドもしくはタンパク質の産生等)をコードすることができる、またはRNA、ペプチド、タンパク質、無機化合物および有機化合物もしくは組成物および同類のものの結合部位を提供することができる。
選択可能マーカーの例として、制限酵素部位を含むDNAセグメント;クロリムロンエチル、ベノミル、バスタおよびハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT)等の別の毒性化合物および抗生物質に対する耐性を付与する生成物をコードするDNAセグメント;普通はレシピエント細胞で欠失している生成物(例えば、tRNA遺伝子、栄養要求性マーカー、優性異種マーカー−amdS)をコードするDNAセグメント;容易に同定され得る生成物(例えば、β−ガラクトシダーゼ、GUS等の表現型マーカー;緑色蛍光タンパク質(GRP)、青緑色(CFP)、黄色(YFP)、赤色(RFP)および細胞表面タンパク質等の蛍光タンパク質)をコードするDNAセグメント;PCR用の新たなプライマー部位の生成(例えば、以前は並置されていない2種のDNA配列の並置)、制限エンドヌクレアーゼおよびその他のDNA改変酵素、化学物質等が作用するまたは作用しないDNA配列の包含;ならびに同定を可能にする特定の改変(例えばメチル化)に必要なDNA配列の包含が挙げられるがこれらに限定されない。
真菌細胞ゲノムを改変するための方法および組成物
上記でまとめたように、本開示は、真菌宿主細胞(例えば糸状真菌宿主細胞)中での遺伝子変更を促進するためにヘルパー株システムを用いるための組成物および方法を提供する。
本開示の態様を説明する前に、多数の細胞プロセス(例えば、老化を制御する分子プロセス)が異なる真菌細胞種の間(例えばT.リーゼイ(T.reesei)とN.クラッサ(N.crassa)との間)で異なる方法で実行されるまたは制御されることに留意することが重要である。N.クラッサ(N.crassa)では、ユビキチンリガーゼ複合体の一部であるF−ボックスタンパク質であるmus−10(Kato,et al.,2010,Genetics 185,1257−1269)またはマイトフジン(mitofuzin)であるfzo−1(Kurashima,et al.,2013,Eukaryot.Cell 12(2),233−243)への変異の導入により、細胞死で終わる老化が起きる。同じ変異がT.リーゼイ(T.reesei)のmus−10相同体およびfzo−1相同体に導入される場合には細胞死は観察されない。従って、1つの種(例えばN.クラッサ(N.crassa))で実証されているプロセスをその他全て(例えばT.リーゼイ(T.reesei))に自動的に外挿することはできない。
T.リーゼイ(T.reesei)は、DNA断片がT.リーゼイ(T.reesei)のゲノムに組み込まれる2種の主要な様式(即ち相同組込みおよび異所的組込み)を有する。異所的組込みには非相同末端結合(NHEJ)機構が重要であり、この機構の成分が欠失している場合には相同組込みの割合が著しく増加する(Guangtao,et al.,2009,J.Biotechnol.139,146−151)。
従って、標的株中でのDNA断片の相同組換えを増加させる代替方法は、1種または複数種のNHEJ成分が沈黙しているヘルパー株を使用することである(図1)。最初に、NHEJ遺伝子サイレンシング構築物(amdS選択マーカー、アセトアミダーゼを含む)と、第1の栄養マーカー(Δhis、株はヒスチジノールデヒドロゲナーゼを欠いている)とを含むヘルパー株(HS)を製造する。この株を、第2の異なる栄養マーカー(Δpyr2)を含む標的株(TS)に融合させる。便宜上および標的株とヘルパー株との区別を容易にするために劣性の特徴(例えばコロニーの形態または胞子の色の変化)を標的株に付加することができるが、この付加は任意選択である。最少培地上では、強制型異核共存体(forced heterokaryon)の共有されている細胞質により両方の株中のNHEJサイレンシングが可能になる。次いで、この異核共存体を、標的株ゲノムDNA(GR)に対して相同な配列と標的株の栄養マーカー欠損を補完する選択マーカー(pyr2、この構築物をGR::pyr2として示す)とを含むDNA断片で形質転換する。形質転換体を選択培地上でプレーティングし、主に単核分生子を回収する。分生子を、あらゆる栄養補完剤を含まない選択最少培地上でプレーティングする。遺伝子置換が相同的に組み込まれている標的株核を有する胞子に由来するコロニー(GR::pyr2)は選択最少培地上で増殖することができる。なぜならば、この選択最少培地は第2の栄養マーカー欠損(Δpyr)が補完されているからである。このコロニーはまた、劣性表現型(例えばコロニーの形態または胞子の色の変化)を有することもできる。ヘルパー株核のみを有する胞子は増殖することができない。なぜならば、この最少培地は第1の栄養マーカー補完剤(この場合はL−ヒスチジン)を含まないからである。異核共存体胞子に由来するコロニーは最少培地上で増殖することができるが、このコロニーの表現型が優性であり(例えば野生型コロニーの形態または野生型胞子の色)、このコロニーを除去することができる。
NHEJ機構が沈黙しているヘルパー株の使用により、標的株のゲノムが改変されることなく相同組み換えの増加を達成することができ、株の開発に必要な面倒で時間がかかる工程の数が低減される。
本開示の態様は、真菌細胞(例えば糸状真菌細胞)中でのゲノム遺伝子座とドナーDNAとの相同組み換え用の組成物および方法に関する。
従って、本開示の態様は、真菌細胞中でのゲノム遺伝子座とドナーDNAとの相同組み換えの方法であって、(a)ヘルパー真菌株と標的真菌株との間で異核共存体を生じさせることであって、ヘルパー真菌株が、非相同末端結合(NHEJ)メカニズムを沈黙させる発現構築物を含む、生じさせること、(b)異核共存体にドナーDNAを導入することであって、ドナーDNAが、標的株中におけるゲノム遺伝子座での相同組換えに十分なゲノム遺伝子座に対する相同領域を含む、導入すること、(c)(b)の異核共存体細胞から胞子を生じさせてプレーティングすること、ならびに(d)プレーティングした胞子から、(i)ドナーDNAがゲノム遺伝子座での相同組換えによりゲノムに組み込まれているおよび(ii)非相同末端結合(NHEJ)メカニズムを沈黙させる発現構築物が存在しない細胞を同定することを含む方法を含む。
ある特定の実施形態では、発現構築物はku80、ku70、rad50、mre11、xrs2、lig4およびxrsの内の1種または複数種を沈黙させる。ある特定の実施形態では、発現構築物はku80、ku70または両方を沈黙させる。
ある特定の実施形態では、CasエンドヌクレアーゼはCas9エンドヌクレアーゼまたはこの変異体である。ある特定の実施形態では、Cas9エンドヌクレアーゼまたはこの変異体は、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、S.ピオゲネス(S.pyogenes)、S.ミュータンス(S.mutans)、S.サーモフィルス(S.thermophilus)、カンピロバクター(Campylobacter)種、C.ジェジュニ(C.jejuni)、ナイセリア(Neisseria)種、N.メニンジティデス(N.meningitides)、フランシセラ(Francisella)種、F.ノビシダ(F.novicida)およびパスツレラ(Pasteurella)種、P.ムルトシダ(P.multocida)からなる群から選択される種由来の完全長Cas9またはこの機能的断片を含む。
ある特定の実施形態では、異核共存体に機能的Cas/ガイドRNA複合体を導入することは、Casエンドヌクレアーゼ用の発現カセットを含むDNA構築物を真菌細胞に導入することを含む。
ある特定の実施形態では、異核共存体に機能的Cas/ガイドRNA複合体を導入することは、ガイドRNA用の発現カセットを含むDNA構築物を真菌細胞に導入することを含む。
ある特定の実施形態では、導入する工程は、真菌細胞にCasエンドヌクレアーゼを直接導入することを含む。
あ特定の実施形態では、導入する工程は、真菌細胞にガイドRNAを直接導入することを含む。
ある特定の実施形態では、真菌細胞は糸状真菌細胞である。ある特定の実施形態では、真菌細胞はユウミコチニア(Eumycotina)真菌細胞またはペジゾミコチニア(Pezizomycotina)真菌細胞である。ある特定の実施形態では、真菌細胞は、トリコデルマ(Trichoderma)、ペニシリウム(Penicillium)、アスペルギルス(Aspergillus)、フミコーラ(Humicola)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、フサリウム(Fusarium)、マイセリオフトラ(Myceliophthora)、ニューロスポラ(Neurospora)、ヒポクレア(Hypocrea)およびエメリセラ(Emericella)からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、真菌細胞はトリコデルマ(Trichoderma)種の細胞である。ある特定の実施形態では、真菌細胞はトリコデルマ(Trichoderma)種であり、例えばトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)である。
一部の実施形態では、ドナーDNAは真菌細胞のゲノム遺伝子座でゲノムに部分的に組み込まれている。一部の実施形態では、ドナーDNAは真菌細胞のゲノム遺伝子座でゲノムに完全に組み込まれている。「部分的に組み込まれている」には、ドナーDNAの一部(例えば、真菌細胞のゲノムに組み込まれているドナーDNAの20〜50bp、50〜100bp、75〜150bp、100〜250bp、150〜300bp、200〜400bp、250〜500bp、300〜600bp、350〜750bp、400〜800bp、450〜900bp、500〜1000bp、600〜1250bp、700〜1500bp、800〜1750bp、900〜2000bp、1〜2.5kb、1.5〜3kb、2〜4kb、2.5〜5kb、3〜6kb、3.5〜7kb、4〜8kb、5〜10kbまたはより多く)が真菌細胞のゲノムと組み換えられているシナリオが含まれ得る。
ある特定の実施形態では、ドナーDNAの組込みによりゲノム遺伝子座が改変される。特定の実施形態では、この改変は、1個または複数個のヌクレオチドの欠失、1個または複数個のヌクレオチドの挿入、目的のタンパク質をコードする発現カセットの挿入、1個または複数個のヌクレオチドの置換およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態では、この改変はドナーDNA中に元々存在する。ある特定の実施形態では、発現カセットによりコードされる目的のタンパク質は酵素である。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラチナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マンナナーゼ、ベータ−グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、これらの変異体、これらの機能的断片またはこれらの内の2種以上のハイブリッドもしくは混合物である。更にその他の特定の実施形態では、目的のタンパク質は、ペプチドホルモン、増殖因子、凝固因子、ケモカイン、サイトカイン、リンホカイン、抗体、受容体、接着分子、微生物抗原、これらの変異体、これらの機能的断片またはこれらの内の2種以上のハイブリッドもしくは混合物である。
ある特定の実施形態では、同定する工程は、ゲノム遺伝子座でのドナーDNAの組込みまたはゲノム遺伝子座の改変を選択するためのまたはスクリーニングするための条件下で工程(c)からの胞子から成長した細胞を培養することを含む。これらの態様それぞれの更に詳細を下記に記載する。
Casエンドヌクレアーゼ、ガイドポリヌクレオチドおよびドナーDNAの導入を、遺伝子導入技術、形質導入技術、形質転換技術、電気穿孔技術、粒子衝突技術、細胞融合技術等が挙げられるあらゆる好都合な方法で行うことができる。これらの成分それぞれを、使用者が望むように同時にまたは順次に導入することができる。例えば、最初に、真菌細胞をCas発現DNA構築物で安定的に遺伝子導入し、続いて、安定した遺伝子導入体に(直接的にまたはガイドポリヌクレオチド発現DNA構築物を使用して)ガイドポリヌクレオチドを導入することができる。この仕組みは、使用者が、様々なガイドポリヌクレオチドを独立して導入することができる(ある場合では、複数種のガイドポリヌクレオチドを、このことが望まれるべき同一の細胞に導入することができる)安定したCas遺伝子導入真菌細胞の集団を生成することができることから有利でさえあり得る。一部の実施形態では、Cas発現真菌細胞は使用者により得られ、そのため、使用者は、この細胞に、Casエンドヌクレアーゼを発現することができる組換えDNA構築物を導入する必要がなく、むしろこのCax発現細胞にガイドポリヌクレオチド導入することのみが必要である。
ある特定の実施形態では、ガイドポリヌクレオチドをコードする発現カセット(または遺伝子)を含む組換えDNA構築物を導入することにより、ガイドポリヌクレオチドを真菌細胞/異核共存体に導入する。一部の実施形態では、この発現カセットは真核生物のRNApolIIIプロモーターに作動可能に連結されている。このプロモーターは、RNApolII依存性プロモーターからRNAポリメラーゼIIによる転写時に起こる5’キャップ構造の付加またはポリアデニル化をRNApolIIIによる転写が生じないことから特に興味深い。ある特定の実施形態では、RNApolIIIプロモーターは、糸状真菌細胞のU6ポリメラーゼIIIプロモーター(例えば、配列番号3およびこの機能的変異体(例えば配列番号4)、下記で更に詳細に説明する)である。ある特定の実施形態では、U6ポリメラーゼIIIプロモーターにより制御される遺伝子は、U6遺伝子のイントロン(配列番号5)および/またはU6遺伝子の転写ターミネーター(配列番号6)を含む。
本発明者らは、糸状真菌では、二本鎖切断での形質転換DNAの非相同挿入が、二本鎖切断での染色体DNAの2つの末端の間の単純な末端結合よりも高度に有利であることを発見した。従って、発現カセット含有DNA構築物による形質転換によりCasエンドヌクレアーゼまたはガイドRNAが提供される場合では、このDNA構築物またはこの断片が高頻度にて二本鎖切断で挿入される。この挿入は、Casエンドヌクレアーゼ上のまたはガイドRNA発現構築物上のDNA配列と二本鎖切断の周りの配列との間に相同性がない場合に起こる。このプロセスはまた、ドナーDNAとゲノム遺伝子座との間の相同組み換えが望ましい場合には、ドナーDNA全体の挿入が相同組み換えよりも有利であることから問題もある。本発明者らは、形質転換DNAが、真菌細胞中で自律的に維持されることが期待されているテロメア配列を含むベクターの形態であっても、この形質転換DNAの望ましくない挿入が起こることを発見した。
本開示のある特定の実施形態は、ヘルパー株のゲノム中でCasエンドヌクレアーゼ発現カセット(および任意選択で選択可能マーカー)を組み込んで、Casエンドヌクレアーゼを発現するヘルパー株を製造することを含む。このヘルパー細胞を様々な手段で用いて、例えば標的株のゲノムとドナーDNAとの相同組み換え等の標的株中での目的の遺伝子改変を得ることができる。
例として、Casエンドヌクレアーゼ発現宿主細胞を使用して、「標的株」にCasエンドヌクレアーゼをin transで供給することができる「ヘルパー株(helper strain)」を生成することができる。簡潔に言うと、例えば、各株からのプロトプラストの融合により、または糸状真菌の種に応じた菌糸の吻合により、このヘルパー株と標的株との間で異核共存体を生成することができる。異核共存体の維持は、適切な栄養またはその他のマーカー遺伝子または各親株中の変異、および親株は増殖することができないが異核共存体は相補性に起因して増殖することができるような適切な選択培地上での増殖に依存するだろう。異核共存体形成時またはその後のいずれかで、ガイドRNA(および任意選択でドナーDNA)を遺伝子導入により導入する。ガイドRNAを直接導入してもよいし、Casエンドヌクレアーゼ発現カセットおよび選択可能マーカー遺伝子を有するDNA構築物を介して導入してもよい。Casエンドヌクレアーゼはヘルパー株の核中で遺伝子から発現され、異核共存体の細胞質中に存在する。Casエンドヌクレアーゼは、ガイドRNAと会合してゲノム中の所望の標的部位を標的とする活性複合体を生成する。その後、この異核共存体から胞子を回収し、標的部位でまたは標的部位付近で改変(例えばゲノム遺伝子座でのドナーDNAとの相同組換え)を有する標的株を回収するために選択またはスクリーニングにかける。発現カセットを使用してガイドRNAを導入する場合、ガイドRNA発現構築物が安定的に維持されていない異核共存体を選択する。
上記で述べたように、本開示の方法は、DNA構築物を、染色体DNA領域(例えばCas/ガイドRNA複合体の標的部位の各側上)とのDNA配列相同性を有する細胞(またはドナーDNA)に導入することを含む。目的は、標的細胞ゲノムへの相同組込み/組換えによりDNA断片(例えば線状DNA断片)を組み込むことである。
真菌細胞でのDNA修復に関して、本発明者らは、機能しているNHEJ経路の存在下では、エラーを起こしやすい修復が二本鎖切断部位での相同組換えよりも高度に有利であることを発見した。換言すると、糸状真菌細胞での二本鎖切断(例えば、Cas/ガイドRNA複合体により標的部位で導入された二本鎖切断)のDNA修復に関して、本発明者らは、機能しているNHEJ経路の存在下では、切断でのDNAの非相同挿入が(1)DNA挿入を伴わない非相同末端結合および(2)ドナーDNAによる二本鎖切断部位での相同組換えよりも高度に有利であることを発見した。従って、本発明のある特定の態様では、集団中の真菌細胞中における標的部位での非相同末端結合(NHEJ)経路の機能は抑制されている、活性化されていない、機能していない、または低下している。このことをあらゆる好都合な方法で達成することができ、この方法の一部を下記で説明する。
ある場合では、ドナーDNAは、真菌細胞のゲノム中の対応する第1のおよび第2の領域に対して相同である第1の領域および第2の領域を含む。例えば、これらの相同領域は、ゲノムDNAがCasエンドヌクレアーゼにより切断される標的部位を含むことができる、またはこの標的部位を囲むことができる。これらの相同領域は、対応するゲノムの相同領域との相同組換えを促進し、この相同組換えにより、ドナーDNAとゲノムとの間でDNAが交換される。そのため、この提供される方法により、異核共存体の標的細胞ゲノム中での相同領域でドナーDNAの目的のポリヌクレオチドが組み込まれ、適切な胞子形成/選択基準を異核共存体に適用すると、標的細胞中でゲノムの改変が生じる。
所与のゲノム領域とドナーDNA上に見出される対応する相同領域との間の構造的類似性は、相同組換えが起こることを可能にする任意の程度の配列同一性であることができる。例えば、ドナーDNAの「相同領域」および真菌細胞ゲノムの「ゲノム領域」により共有される相同性または配列同一性の量は、配列が相同組換えを受けるように、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または更に100%の配列同一性であることができる。
(本明細書の他の箇所で論じているように)ドナーDNAをあらゆる好都合な手段で導入することができる。
Cas/ガイドRNAシステムが用いられるある特定の実施形態では、CasエンドヌクレアーゼはCas9エンドヌクレアーゼである(例えば「RNA−directed DNA Cleavage by the Cas9−crRNA Complex」という表題の国際公開第2013141680号パンフレットを参照されたい)。Casエンドヌクレアーゼの例として、ストレプトコッカス(Streptococcus)種(例えばS.ピオゲネス(S.pyogenes)、S.ミュータンス(S.mutans)およびS.サーモフィルス(S.thermophilus))、カンピロバクター(Campylobacter)種(例えばC.ジェジュニ(C.jejuni))、ナイセリア(Neisseria)種(例えばN.メニンジティデス(N.meningitides))、フランシセラ(Francisella)種(例えばF.ノビシダ(F.novicida))ならびにパスツレラ(Pasteurella)種(例えばP.ムルトシダ(P.multocida))に由来するものが挙げられる(例えば、配列番号8および11〜16、これらの機能的断片、および機能活性を保持する、これらの配列のいずれか一つに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列)(例えば、Fonfara et al.,Nucleic Acids Res.,2013,pages1−14(参照により本明細書に援用される)で説明されているCas9エンドヌクレアーゼを参照されたい)。一部の実施形態では、Casエンドヌクレアーゼは、例えば真菌細胞中での発現に最適化されている最適化Cas9エンドヌクレアーゼ遺伝子(例えば、下記で説明するように配列番号7を含むCas9コーディング遺伝子(例えば配列番号1))によりコードされる。
ある特定の場合では、Casエンドヌクレアーゼ遺伝子は、核局在化シグナルをコードする1種または複数種のポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、その結果、細胞中で発現されるCasエンドヌクレアーゼ/ガイドポリヌクレオチド複合体は核へと効率的に運ばれる。あらゆる好都合な核局在化シグナル、例えばCasコドン領域の上流およびこのCasコドン領域を含むフレーム中に存在するSV40核局在化シグナルをコードするポリヌクレオチド、ならびにCasコドン領域の下流およびこのCasコドン領域を含むフレーム中に存在するT.リーゼイ(T.reesei)blr2(青色光制御因子(blue light regulator)2)遺伝子に由来する核局在化シグナルをコードするポリヌクレオチドを使用することができる。その他の核局在化シグナルを用いることができる。例えば、Casエンドヌクレアーゼを、1種または複数種の核ターゲティングシグナル(核局在化シグナル/配列とも称される、NLS)に作動可能に連結することができる。配列番号1および配列番号2はそれぞれ、N末端およびC末端でNLS配列を有する糸状真菌細胞最適化Cas9遺伝子の一例とコードされるアミノ酸配列とを提供する。真核生物では多くの異なるNLSが知られている。このNLSとして、1分節(monopartite)型、2分節(bipartite)型および3分節(tripartite)型が挙げられる。あらゆる好都合なNLSを使用することができるが、例としてSV40 NLS、T.リーゼイ(T.reesei)blr2(青色光制御因子2)遺伝子に由来するNLSまたは両方の組み合わせが挙げられる1分節型がやや好都合である。
本開示のある特定の実施形態では、ガイドポリヌクレオチドは、II型Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成することができるII型CRISPR/CasシステムのcrRNA領域(またはcrRNA断片)およびtracrRNA(またはtracrRNA断片)を含むガイドRNAである。上記で示したように、ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体はCasエンドヌクレアーゼを真菌細胞のゲノム標的部位へと誘導することができ、Casエンドヌクレアーゼがゲノム標的部位に二本鎖切断を導入することを可能にする。ある場合では、RNA/Cas9エンドヌクレアーゼ複合体を誘導するRNAは、crRNAと独立したtracrRNAとを含む二本鎖である。その他の場合では、ガイドRNAは、crRNA領域およびtracrRNA領域の両方を含む単一RNA分子(本明細書において融合ガイドRNAと称される場合がある)である。二本鎖crRNA−tracrRNAに対して融合ガイドRNAを使用する利点の1つは、融合ガイドRNAを発現させるために作製する必要がある発現カセットが1種のみであるということである。
標的部位が必要なプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を含む限り、本開示の方法を使用して真菌細胞ゲノム中の実質的にいかなる標的部位もCasエンドヌクレアーゼにより標的とすることができる。S.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9の場合、PAMは配列NGG(5’から3’へ、NはA、G、CまたはTである)を有し、そのため、ゲノム中の標的部位の選択に対する相当な制限を加えない。その他の既知のCas9エンドヌクレアーゼは異なるPAM部位を有する(例えば、Fonfara et al.,Nucleic Acids Res.,2013,pages1−14(参照により本明細書に援用される)で説明されているCas9エンドヌクレアーゼPAM部位を参照されたい)。
標的部位の長さは変動することができ、例えば、少なくとも12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個またはより多くのヌクレオチドの長さである標的部位が挙げられる。標的部位は回文構造であることができ、換言すれば、一方の鎖上の配列が相補鎖上で反対方向に同じものを読み取ることが更に可能である。切断部位は標的配列内に存在することができる、または切断部位は標的配列の外側に存在する可能性がある。別のバージョンでは、切断が互いに直接向かい合ったヌクレオチド位置で起きて平滑末端切断が起きる可能性があり、その他の場合では、切り込みが千鳥足状となり、5’オーバーハングまたは3’オーバーハングのいずれかであることができる一本鎖オーバーハング(「粘着末端」とも呼ばれる)を生じさせる可能性がある。
ある場合では、真菌細胞のゲノム中の活性変異体標的配列も使用することができ、このことは、標的部位が(ガイドポリヌクレオチドのcrRNA配列内の)ガイドポリヌクレオチド中の関連配列と100%同一ではないことを意味する。そのような活性変異体は、所与の標的部位に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはより高い配列同一性を含むことができ、活性変異体標的配列は生物学的活性を保持しており、従ってCasエンドヌクレアーゼにより認識されて切断され得る。エンドヌクレアーゼによる標的部位の二本鎖切断を確認するためのアッセイは当分野で既知であり、一般には、認識部位を含むDNA基質への薬剤の全体的な活性および特異性を測定する。
目的の標的部位として、目的の遺伝子の領域内に位置する標的部位が挙げられる。目的の遺伝子内の領域の非限定的な例として、オープンリーディングフレーム、プロモーター、転写制御エレメント、翻訳制御エレメント、転写ターミネーター配列、mRNAスプライス部位、タンパク質コーディング配列、イントロン部位およびイントロン強化モチーフ(intron enhancing motif)が挙げられる。ある特定の場合では、ドナーDNAが、真菌細胞のゲノム遺伝子座に対する相同領域を含む場合、この真菌細胞に導入されるCasエンドヌクレアーゼおよびガイドRNAは、Casエンドヌクレアーゼが真菌細胞のゲノム遺伝子座中のまたはこのゲノム遺伝子座付近の標的部位で作用することを可能にする複合体を形成することができる。一部の実施形態では、ゲノムDNA上のCasエンドヌクレアーゼ切断部位(または標的部位)は、相同組換えが起こり得るドナーDNAとゲノム遺伝子座との間の相同領域中に存在する。その他の実施形態では、この切断部位はドナーDNAとゲノム遺伝子座との間の相同領域付近であり、この相同領域付近は、相同領域から1bp〜約10kbの範囲で離れることができ、例えば相同領域の部位から1bp、2bp、5bp、10bp、20bp、50bp、100bp、250bp、500bp、1kb、2kb、3kb、4kb、5kb、6kb、7kb、8kb、9kbまたは10kb離れることができる。
ある特定の実施形態では、真菌細胞のゲノム改変により検出可能な表現型効果が生じ、多くの場合には使用者の所望の結果である。非限定的な例として、選択可能な細胞増殖表現型(例えば抗生物質に対する耐性または感度、栄養要求性特性の獲得または喪失、増殖率の増加または低下等)、検出可能マーカー(例えば蛍光マーカー、細胞表面分子、発色酵素等)の発現、および培養上清中で活性が検出され得る酵素の分泌が挙げられる。
真菌細胞のゲノムの改変により表現型効果が生じる場合、表現型マーカーである(または表現型マーカーをコードする)目的のポリヌクレオチドを含むドナーDNAを用いることが多い。あらゆる好都合な表現型マーカーを使用することができ、この表現型マーカーとして、任意の選択可能なまたはスクリーニング可能なマーカーであって、多くの場合は特定の培養条件下で、このマーカーを含む真菌細胞を同定すること、この真菌細胞を有利にもしくは不利に選択すること、またはスクリーニングすることを可能にするマーカーが挙げられる。そのため、本発明の一部の態様では、所望のゲノム改変を有する真菌細胞の同定は、標的部位で改変を有する細胞を選択するためのまたはスクリーニングするための条件下で、Casエンドヌクレアーゼおよびガイドポリヌクレオチド(ならびに任意選択でドナーDNA)が与えられている真菌細胞集団を培養することを含む。真菌細胞中の酵素活性(選択可能マーカーとも称される)の獲得または喪失(例えば抗生物質耐性の取得または栄養要求性マーカーの獲得/喪失)に関して評価すること等のあらゆるタイプの選択システムを用いることができる。
ある場合では、真菌細胞中でのゲノム改変をあらゆる好都合な方法を使用して直接検出し、この方法として、シークエンシング、PCR、サザンブロット、制限酵素分析および同類のもが挙げられ、そのような方法の組み合わせも挙げられる。
一部の実施形態では、特定の遺伝子を本開示の方法を使用して改変の標的とし、この遺伝子として、酵素(例えば、アセチルエステラーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、アラビナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エピメラーゼ、エステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、α−グルカナーゼ、グルカンリアーゼ、エンド−β−グルカナーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ、ヘミセルラーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロラーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、リアーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、オキシドレダクターゼ、ペクテートリアーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ペクチンデポリメラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、フィターゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテアーゼ、ラムノ−ガラクツロナーゼ、リボヌクレアーゼ、トランスフェラーゼ、輸送タンパク質、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、ヘキソースオキシダーゼおよびこれらの組み合わせ)をコードする遺伝子が挙げられる。
本開示の態様は、上記で説明した方法により製造されている組換え真菌細胞と、この方法の実施において親宿主細胞として使用するための組換え真菌細胞とに関する。
本開示の方法および組成物の追加の実施形態を本明細書で示す。本明細書で開示する方法および組成物の非限定的な例または実施形態は下記の通りである。
1.真菌細胞中でのゲノム遺伝子座とドナーDNAとの相同組換えの方法であって、
(a)ヘルパー真菌株と標的真菌株との間で異核共存体を生じさせることであって、前記ヘルパー真菌株が、非相同末端結合(NHEJ)メカニズムを沈黙させる発現構築物を含む、生じさせること、
(b)前記異核共存体にドナーDNAを導入することであって、前記ドナーDNAが、前記標的株中におけるゲノム遺伝子座での相同組換えに十分な前記ゲノム遺伝子座に対する相同領域を含む、導入すること、
(c)前記(b)の異核共存体細胞から胞子を生じさせてプレーティングすること、ならびに
(d)前記プレーティングした胞子から、(i)前記ドナーDNAが前記ゲノム遺伝子座での相同組換えによりゲノムに組み込まれているおよび(ii)前記非相同末端結合(NHEJ)メカニズムを沈黙させる前記発現構築物が存在しない細胞を同定すること
を含む方法。
2.前記発現構築物がku80、ku70、rad50、mre11、xrs2、lig4およびxrsの内の1種または複数種を沈黙させる、実施形態1に記載の方法。
3.前記発現構築物がku80、ku70または両方を沈黙させる、実施形態2に記載の方法。
4.前記異核共存体に機能的Cas/ガイドRNA複合体を導入することであって、前記Cas/ガイドRNA複合体が前記ゲノム遺伝子座内で標的部位を有する、導入することを更に含む実施形態1〜3のいずれか一つに記載の方法。
5.前記CasがCasニッカーゼである、実施形態4に記載の方法。
6.前記ドナーDNAが目的のポリヌクレオチド配列を含み、前記ゲノム遺伝子座での相同組換えにより前記ゲノム遺伝子座中で前記目的のポリヌクレオチド配列が挿入される、実施形態1〜5のいずれか一つに記載の方法。
7.前記CasエンドヌクレアーゼがCas9エンドヌクレアーゼまたはこの変異体である、実施形態1〜6のいずれか一つに記載の方法。
8.前記Cas9エンドヌクレアーゼまたはこの変異体が、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、S.ピオゲネス(S.pyogenes)、S.ミュータンス(S.mutans)、S.サーモフィルス(S.thermophilus)、カンピロバクター(Campylobacter)種、C.ジェジュニ(C.jejuni)、ナイセリア(Neisseria)種、N.メニンジティデス(N.meningitides)、フランシセラ(Francisella)種、F.ノビシダ(F.novicida)およびパスツレラ(Pasteurella)種、P.ムルトシダ(P.multocida)からなる群から選択される種由来の完全長Cas9またはこの機能的断片を含む、実施形態7に記載の方法。
9.前記異核共存体に前記機能的Cas/ガイドRNA複合体を導入することが、前記Casエンドヌクレアーゼ用の発現カセットを含むDNA構築物を前記真菌細胞に導入することを含む、実施形態4〜8のいずれか一つに記載の方法。
10.前記異核共存体に前記機能的Cas/ガイドRNA複合体を導入することが、前記ガイドRNA用の発現カセットを含むDNA構築物を前記真菌細胞に導入することを含む、実施形態4〜9のいずれか一つに記載の方法。
11.前記導入する工程が、前記真菌細胞に前記Casエンドヌクレアーゼを直接導入することを含む、実施形態4〜8のいずれか一つまたは実施形態10に記載の方法。
12.前記導入する工程が、前記真菌細胞に前記ガイドRNAを直接導入することを含む、実施形態4〜9のいずれか一つまたは実施形態11に記載の方法。
13.前記真菌細胞が糸状真菌細胞である、実施形態1〜12のいずれか一つに記載の方法。
14.前記真菌細胞がユウミコチニア(Eumycotina)真菌細胞またはペジゾミコチニア(Pezizomycotina)真菌細胞である、実施形態1〜13のいずれか一つに記載の方法。
15.前記糸状真菌細胞が、トリコデルマ(Trichoderma)、ペニシリウム(Penicillium)、アスペルギルス(Aspergillus)、フミコーラ(Humicola)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、フサリウム(Fusarium)、マイセリオフトラ(Myceliophthora)、ニューロスポラ(Neurospora)、ヒポクレア(Hypocrea)およびエメリセラ(Emericella)からなる群から選択される、実施形態1〜14のいずれか一つに記載の方法。
16.前記真菌細胞がトリコデルマ(Trichoderma)種の細胞である、実施形態1〜15のいずれか一つに記載の方法。
17.前記トリコデルマ(Trichoderma)種がトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)である、実施形態16に記載の方法。
18.前記ドナーDNAが前記ゲノム遺伝座で前記ゲノムに部分的に組み込まれている、実施形態1〜17のいずれか一つに記載の方法。
19.前記ドナーDNAの組込みにより前記ゲノム遺伝子座が改変される、実施形態1〜18のいずれか一つに記載の方法。
20.前記改変が、1個または複数個のヌクレオチドの欠失、1個または複数個のヌクレオチドの挿入、目的のタンパク質をコードする発現カセットの挿入、1個または複数個のヌクレオチドの置換およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態19に記載の方法。
21.前記同定する工程が、前記ゲノム遺伝子座での前記ドナーDNAの組込みまたは前記ゲノム遺伝子座の改変を選択するためのまたはスクリーニングするための条件下で前記工程(c)からの胞子から成長した細胞を培養することを含む、実施形態1〜20のいずれか一つに記載の方法。
22.実施形態1〜21のいずれか一つに記載の方法により製造されている組換え真菌細胞。
下記の実施例では、別途明記しない限り、部および割合は重量によるものであり、度は摂氏である。この実施例は本開示の実施形態を示すが例示のみを目的として提示されることを理解すべきである。上記の議論およびこの実施例から、当業者は本開示の様々な変更および改変を行って本開示を様々な用法および条件に適合させることができる。そのような改変も、添付した特許請求の範囲に含まれるものとする。
このヘルパー株をベースとする概念は、T.リーゼイ(T.reesei)または別の糸状真菌を宿主として使用するおよび高い割合の相同組込みが必要とされるあらゆるプロジェクトに利益をもたらすことができる。
実施例1:コロニー増殖を補完するためのおよび対立遺伝子の優性を決定するためのヘルパー株の使用
コロニー増殖を補完するためにおよび対立遺伝子の優性を決定するためにヘルパー株を使用する実験を実施した。そのような実験の内の一つのワークフローおよび結果を図7に示す。実験の工程は下記を含む。
1)ヘルパー株(HS)と標的株(CS、または図7中のコロニー株)とを融合させて異核共存体にする、
2)この異核共存体から分生子を生じさせる、
3)分生子を回収して適切な濃度まで希釈する、
4)選択培地上で分生子をプレーティングし、コロニーを計数して表現型および栄養要求性に印を付ける、
5)得られた株を確認する。
この特定の実験では、ヘルパー株(HS)は、野生型コロニー増殖速度および分生子形成を有するRL−P37 Δcbh1 Δcbh2 Δegl1 Δegl2 Δhis3株であり、標的コロニー株(CS)は、目的の特徴(この実験では、目的の特徴は正常なコロニー増殖率および分生子形成であり、従って遺伝子欠失株はコロニー増殖率および分生子形成が低下している)を変化させる目的の遺伝子の欠失を有するRL−P37 Δcbh1 Δcbh2 Δegl1 Δegl2 Δpyr2株である。HS株およびCS株のプロトプラストを、ソルビトールを補充した最少培地プレート上で共播種した。これらの株を融合させて異核共存体を形成して増殖を開始させた後、この異核共存体を、栄養補完剤を含まない最少培地プレートに移し、28℃および12時間の明暗サイクルにて分生子の産生を促進する条件下で増殖させた。異核共存体は、ヘルパー株と同等の野生型コロニー増殖および分生子形成を有しており、このことは、CS株のコロニー増殖および分生子形成の低下が補完されているおよび目的の遺伝子の変異が劣性であることを示す。異核共存体から成熟分生子を回収し、分生子の連続希釈物を、ヒスチジンまたはウリジンのいずれかを補充した選択最少培地上でプレーティングした。最少培地に移すとすぐに増殖したコロニーを異核共存体と同定して除去した。ヒスチジンを補充した最少培地上で増殖した全ての株は野生型コロニー増殖および分生子形成を有しており、これらの特徴はヘルパー株と関連している。ウリジンを補充した最少培地上で増殖した全ての株はコロニー増殖および分生子形成が低下しており、これらの特徴は目的の遺伝子の劣性変異と関連している。このことは、目的の遺伝子の劣性変異を含む、コロニー増殖および分生子が準最適に低下している株を異核共存体から救出することができることを示した。
実施例2:DNA構築物による真菌細胞中のNHEJメカニズムのサイレンシング
構築物
ku80を沈黙させるためのpAVTrku80sil構築物(図2A)は、イントロン配列で中断されているセンスku80 DNA配列およびアンチセンスku80 DNA配列を含み、分岐プロモーター(divergent promoter)により駆動される。この分岐プロモーターはまた、プチロサルカス(Ptilosarcus)種の緑色蛍光タンパク質(PtGFP)の発現も駆動させ、緑色蛍光タンパク質はアンチセンスカセット発現の指標と機能する。この構築物はamdS選択マーカーも含む。
ku80およびku70の両方を沈黙させるための中間構築物(pAVTrku70ku80sil、図2B)ならびにku70、lig4およびku80を沈黙させるための別の構築物(pAVTrku70lig4ku80sil、図2C)を生成して検証した。これらの構築物は、それぞれの遺伝子の約500bpのセンス配列、イントロン配列および等価のアンチセンス配列、続いて酵母pRS426ベクター骨格中のku70ターミネーター配列を含む。
pRS426ベクターに組み込まれている遺伝子置換構築物をin vitroで組み立てて酵母中でクローニングした。この構築物から、pyr2マーカーを含む遺伝子置換カセットを増幅させることができる。

T.リーゼイ(T.reesei)株(RL−P37 Δcbh1 Δcbh2 Δegl1 Δegl2)を、T.リーゼイ(T.reesei)ku80遺伝子サイレンシング構築物(図2A)で形質転換した。強力なGFPシグナルを有する6個の安定した候補を選択し、検証し、胞子精製した。6個の候補それぞれからの4個の胞子精製済単離株を24ウェルプレート中で増殖させ、サイレンシングのレベルを示すGFPシグナルの強度を評価した。最高のGFPシグナルを有する各候補からの1個の胞子精製済単離株を、Δhis3::hph欠失構築物による形質転換用に選択した。
プロトコル
最高レベルのGFP発現を有するサイレンシング構築物を含む上記からの胞子精製済株を、hph選択マーカーを含む線状his3欠失カセット(図3)による形質転換での相同組込みの効率に関して試験した。最高レベルのNHEJサイレンシングを示すΔhis3欠失(60%)を含む形質転換体の割合が最も高いサイレンシング株を選択し、ヘルパー株として使用することができる。ヘルパー株を、機能していないpyr2遺伝子座(栄養マーカー)および任意選択でコロニー形態の変化(劣性の特徴)を有する宿主株と融させることができる。次いで、最少培地上で増殖した強制型異核共存体を、選択マーカーとして機能的pyr2マーカー(このマーカーは栄養マーカーでもある)を含む線状の遺伝子置換構築物(図4)でのPEG形質転換により形質転換し、最少培地上でプレーティングした。分生子を回収し、連続希釈物を最少培地上でプレーティングすることができる。最少培地上で増殖するコロニー(および、コロニー形態の変化という特徴が含まれた場合にはこの変化を有する)を欠失構築物の相同組換えに関して評価することができ、相同組換えの効率を決定することができる。
ヘルパー株組成物および方法をどのようにして用いることができるかの具体的で非限定的な例を下記で説明する。
実施例3:標的細胞中のDNA断片の除去のためのヘルパー株中でのまたは異核共存体中でのcreリコンビナーゼの使用
一実施形態では、使用者は、ヘルパー株中でcreリコンビナーゼを発現させて、loxP部位が隣接している標的細胞中の任意のDNA断片の除去に使用することができる。
別の実施形態では、使用者は、creリコンビナーゼを発現するテロメアベクターを異核共存体に導入することができ、同時に、ヘルパー株および標的株それぞれにおいてloxP部位が隣接している1種または複数種のDNA断片を除去することができる。概要例を図5に示す。相同組換えにより、2個の欠失株(それぞれが、野生型株のad3A(株2)またはhis3(株1)遺伝子座で2個のloxP部位が隣接しているhphマーカーを含む欠失カセットを有する)を得た。hphマーカーを再利用して一方または両方の株から同時に除去するために、実施例1で説明した手順を使用して、最初に株1および株2を融合させて強制型異核共存体にした。次いで、異核共存体を、微粒子銃またはPEG形質転換により、amdSマーカーを担持するcre含有テロメアベクター(図6)で形質転換し、次いで、適切なアセトアミド含有プレート上で増殖させてベクターを維持した。選択中に、テロメアベクターは、ゲノムに組み込まれることなく両方の構成株にCreを提供し、一方または両方の寄与しているゲノム中においてloxP部位での組換えおよびhphマーカーのループアウトを可能にした。形質転換された異核共存体から分生子を回収し、アデニンおよびヒスチジンを補充したPDA培地上でプレーティングした。補充PDA培地上での規定回数の移動の後、個々のコロニーを、栄養要求性およびハイグロマイシンBに対する耐性に関して試験した。hphカセットがループアウトしているad3A欠失およびhis3欠失を有する株は、ハイグロマイシンBに対して耐性を示さなかった。ゲノムへのテロメアベクターの組込みというまれな事象が起きていないことを確認するために、PCR分析によりテロメアベクターDNA断片の存在に関して株を試験し、cre含有テロメアベクターが組み込まれている候補を除去した。野生型Δhis3 Δhph株を診断用PCRで確認した。この結果は、異核共存体に導入されているテロメアベクターから発現されたcreリコンビナーゼが、ベクターがゲノムに組み込まれることなくヘルパー株および標的株それぞれにおいてloxP部位が隣接している1種または複数種のDNA断片を成功裏に除去することができたことを示す。
実施例4:標的細胞中で標的とする二本鎖DNA切断を生じさせるためのヘルパー株中でのCasRNA誘導型エンドヌクレアーゼ(Cas RNA−guided endonuclease)の使用
別の実施形態では、使用者は、好ましくはNHEJが沈黙しているヘルパー株中でCasRNA誘導型エンドヌクレアーゼを発現させて、このCasRNA誘導型エンドヌクレアーゼを使用して標的細胞中において標的とする二本鎖DNA切断を生じさせることができる。1つの利点は、標的部位での相同組換えによるドナーDNA断片の組込みを二本鎖DNA切断が刺激するということである。NHEJを沈黙させることにより、NHEJ経路を介してドナーDNA断片が組み込まれる頻度が最小限に抑えられる。一実験では、実施例2で説明したNHEJサイレンシングDNA構築物を含むおよび効率的な相同組換えを示しているヘルパー株を、PCT出願第PCT/CN2014/093914号(2014年12月16日に出願された、参照により本明細書に援用される)で開示されているものと類似したCas9発現ベクター(図8)で形質転換する。このベクターは、選択可能マーカーとしてのクロリムロンエチルに対する耐性を付与するT.リーゼイ(T.reesei)als1遺伝子の変異バージョンを使用し、このベクターが染色体DNAに安定的に組み込まれている形質転換体を新規のヘルパー株として選択する。このヘルパー株を標的株(機能していないpyr2遺伝子を有する)と融合させて、ヒスチジンおよびウリジンを欠いている選択培地上で強制型異核共存体を作製する。次いで、この異核共存体を、sgRNA(単一ガイドRNA)と標的細胞のゲノム内の定義された標的部位での組込みが望ましいドナーDNA断片との混合物で共形質転換する。sgRNAを、前記定義された標的部位にcas9エンドヌクレアーゼを誘導するように設計し、PCT出願第PCT/CN2014/093916号(2014年12月16日に出願された、参照により本明細書に援用される)で説明されているin vitroでの転写反応を使用して生成する。T.リーゼイ(T.reesei)のad3A遺伝子、グルコアミラーゼ(TrGA)遺伝子またはpyr2遺伝子にCas9を誘導するにように設計されているsgRNAの配列の例を下記に示す。
sgRNA:gAd3A TS1;配列番号17
Figure 0006725513
sgRNA:gTrGA TS2;配列番号18
Figure 0006725513
sgRNA:gTrGA TS11;配列番号19
Figure 0006725513
sgRNA:gPyr2 TS6;配列番号20
Figure 0006725513
或いは、sgRNAの代わりに、sgRNA発現カセットを含むDNA構築物が共形質転換に含まれる。定義された標的部位での組込みが望ましいDNA断片は、cas9標的部位のいずれか側上で隣接するDNA領域と相同の末端領域を含む。このDNA断片はまた、選択可能マーカー(例えばpyr2)および目的の遺伝子用の発現カセットも含む。異核共存体の胞子形成時におよび胞子のプレーティング時に、標的細胞表現型を有するがウリジンに関して原栄養性である(pyr2+)胞子コロニーを単離し、標的部位でのDNA断片の組込みに関してスクリーニングする。好都合なことに、この方法は、同じ標的部位で組み込まれた異なる目的の遺伝子を有する形質転換体の効率的な生成を可能にする。
上述の組成物および方法は、理解を明確にするために例示および実施例により若干詳細に説明されているが、本明細書の教示を考慮して、添付した特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく上述の組成物および方法に対してある程度の変更および改変を行うことができることは当業者に容易に明らかである。
従って、上述は本組成物および本方法の原理を単に例示しているにすぎない。本明細書で明確に説明されていないまたは示されていないが本組成物および本方法の原理を具体化するならびに本組成物および本方法の趣旨および範囲に含まれる様々な構成を当業者は考案することができることが認識されるだろう。更に、本明細書で列挙した全ての例および条件付き文言は、本組成物および本方法の原理ならびに当分野の促進に寄与する本発明者らによる概念の理解で読者を助けることが主に意図されており、そのように具体的に列挙された例および条件に限定されないと解釈すべきである。更に、本明細書において本組成物および本方法の原理、態様および実施形態を列挙する全ての記載ならびにこの具体例は、この構造および機能の両方の等価物を包含することが意図される。加えて、そのような等価物が、現在知られている等価物と将来創出される等価物(即ち、構造にかかわらず同じ機能を発揮する、創出されるあらゆる要素)との両方を含むことが意図される。従って、本発明および本組成物の範囲は、本明細書で示されたおよび説明された典型的な実施形態に限定されることが意図されていない。
配列
配列番号1
コドン最適化ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)Cas9コーディング遺伝子;N末端NLS配列およびC末端NLS配列あり
Figure 0006725513
Figure 0006725513
配列番号2
配列番号1によりコードされるストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)Cas9、N末端NLS配列およびC末端NLS配列あり
Figure 0006725513
配列番号3
完全なU6遺伝子プロモーター配列(転写開始部位を含まない)
Figure 0006725513
配列番号4
トランケートされた/短いU6遺伝子プロモーター配列(転写開始部位を含まない)
Figure 0006725513
配列番号5
U6遺伝子のイントロン
Figure 0006725513
配列番号6
U6遺伝子の転写ターミネーター配列
TTTTTTTTCTCTT
配列番号7
糸状真菌細胞コドン最適化ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)Cas9コーディング遺伝子、NLSなし
Figure 0006725513
Figure 0006725513
Figure 0006725513
配列番号8
配列番号7によりコードされるストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)Cas9、NLSなし
Figure 0006725513
配列番号9
SV40 NLS
PKKKRKV
配列番号10
T.リーゼイ(T.reesei)blr2(青色光制御因子2)遺伝子のNLS
KKKKLKL
配列番号11
ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)LMD−9 Cas9
Figure 0006725513
配列番号12
ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)UA159 Cas9
Figure 0006725513
配列番号13
カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)Cas9
Figure 0006725513
配列番号14
ナイセリア・メニンジティデス(Neisseria meningitides)Cas9
Figure 0006725513
配列番号15
フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)亜種ノビシダ(novicida)Cas9
Figure 0006725513
配列番号16
パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)Cas9
Figure 0006725513
配列番号17
sgRNA:gAd3A TS1
Figure 0006725513
配列番号18
sgRNA:gTrGA TS2
Figure 0006725513
配列番号19
sgRNA:gTrGA TS11
Figure 0006725513
配列番号20
sgRNA:gPyr2 TS6
Figure 0006725513

Claims (20)

  1. 真菌細胞中でのゲノム遺伝子座とドナーDNAとの相同組換えの方法であって、
    (a)ヘルパー真菌株と標的真菌株との間で異核共存体を生じさせることであって、前記ヘルパー真菌株が、非相同末端結合(NHEJ)メカニズムを沈黙させる発現構築物を含む、生じさせること、
    (b)前記異核共存体にドナーDNAを導入することであって、前記ドナーDNAが、前記標的株中におけるゲノム遺伝子座での相同組換えに十分な前記ゲノム遺伝子座に対する相同領域を含む、導入すること、
    (c)前記(b)の異核共存体細胞から胞子を生じさせてプレーティングすること、ならびに
    (d)前記プレーティングした胞子から、(i)前記ドナーDNAが前記ゲノム遺伝子座での相同組換えによりゲノムに組み込まれているおよび(ii)前記非相同末端結合(NHEJ)メカニズムを沈黙させる前記発現構築物が存在しない細胞を同定すること
    を含むとともに、前記発現構築物がku80、ku70、およびlig4の内の1種または複数種を沈黙させる、
    方法。
  2. 前記発現構築物がku80、ku70両方を沈黙させる、請求項に記載の方法。
  3. 前記異核共存体に機能的Cas/ガイドRNA複合体を導入することであって、前記Cas/ガイドRNA複合体が前記ゲノム遺伝子座内で標的部位を有する、導入することを更に含む請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記CasがCasニッカーゼである、請求項に記載の方法。
  5. 前記ドナーDNAが目的のポリヌクレオチド配列を含み、前記ゲノム遺伝子座での相同組換えにより前記ゲノム遺伝子座中で前記目的のポリヌクレオチド配列が挿入される、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  6. CasエンドヌクレアーゼがCas9エンドヌクレアーゼまたはこの多様体である、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記Cas9エンドヌクレアーゼまたはこの多様体が、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、S.ピオゲネス(S.pyogenes)、S.ミュータンス(S.mutans)、S.サーモフィルス(S.thermophilus)、カンピロバクター(Campylobacter)種、C.ジェジュニ(C.jejuni)、ナイセリア(Neisseria)種、N.メニンジティデス(N.meningitides)、フランシセラ(Francisella)種、F.ノビシダ(F.novicida)およびパスツレラ(Pasteurella)種、P.ムルトシダ(P.multocida)からなる群から選択される種由来の完全長Cas9またはこの機能的断片を含む、請求項に記載の方法。
  8. 前記異核共存体に前記機能的Cas/ガイドRNA複合体を導入することが、前記Casエンドヌクレアーゼ用の発現カセットを含むDNA構築物を前記真菌細胞に導入することを含む、請求項3〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記異核共存体に前記機能的Cas/ガイドRNA複合体を導入することが、前記ガイドRNA用の発現カセットを含むDNA構築物を前記真菌細胞に導入することを含む、請求項3〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記導入する工程が、前記真菌細胞に前記Casエンドヌクレアーゼを直接導入することを含む、請求項3〜7または請求項のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記導入する工程が、前記真菌細胞に前記ガイドRNAを直接導入することを含む、請求項3〜8または請求項10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記真菌細胞が糸状真菌細胞である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記真菌細胞がユウミコチニア(Eumycotina)真菌細胞またはペジゾミコチニア(Pezizomycotina)真菌細胞である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 糸状真菌細胞が、トリコデルマ(Trichoderma)、ペニシリウム(Penicillium)、アスペルギルス(Aspergillus)、フミコーラ(Humicola)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、フサリウム(Fusarium)、マイセリオフトラ(Myceliophthora)、ニューロスポラ(Neurospora)、ヒポクレア(Hypocrea)およびエメリセラ(Emericella)からなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記真菌細胞がトリコデルマ(Trichoderma)種の細胞である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記トリコデルマ(Trichoderma)種がトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)である、請求項15に記載の方法。
  17. 前記ドナーDNAが前記ゲノム遺伝座で前記ゲノムに部分的に組み込まれている、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記ドナーDNAの組込みにより前記ゲノム遺伝子座が改変される、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記改変が、1個または複数個のヌクレオチドの欠失、1個または複数個のヌクレオチドの挿入、目的のタンパク質をコードする発現カセットの挿入、1個または複数個のヌクレオチドの置換およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
  20. 前記同定する工程が、前記ゲノム遺伝子座での前記ドナーDNAの組込みまたは前記ゲノム遺伝子座の改変を選択するためのまたはスクリーニングするための条件下で前記工程(c)からの胞子から成長した細胞を培養することを含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
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