JP6724287B2 - 核酸の配列決定方法及びシステム - Google Patents

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Description

核酸配列情報の決定は生物学的及び医学的研究の重要部分である。配列情報は、疾患と表現型の遺伝子関連性を同定し、薬剤の潜在的な標的を同定し、疾患の発症及び進行の機構を理解するのに有用である。配列情報は、個別化医療の重要部分であり、これを用いて特定の被験体の疾患の診断、治療または予防を最適化することができる。
概要
本明細書では、鋳型核酸分子の配列決定方法を提供する。本方法は、一般的に、非標識ヌクレオチドの組込みの前に検査工程を含む。より具体的には、検査工程は、プライマーでプライミングした鋳型核酸分子を提供し、プライミングした鋳型核酸分子を、ポリメラーゼ及び少なくとも1つの非標識ヌクレオチド分子を含む第一の反応混合物に接触させ、非標識ヌクレオチド分子の存在下で、プライミングした鋳型核酸分子への核酸分子の化学的組込みを伴わずに、ポリメラーゼとプライミングした鋳型核酸との相互作用をモニタリングし、ならびに、非標識ヌクレオチド分子の存在下で、モニタリングしたポリメラーゼとプライミングした鋳型核酸分子との相互作用に基づいて、鋳型核酸中の後続塩基を同定することを含む。
結合または検査工程中におけるマグネシウム存在下または非存在下での非標識光学検出法を用いた実験の結果を示すグラフである。 Bst2.0酵素及びdNTPを用いて正しい塩基を決定するためのBst酵素結合反応速度を用いた配列決定を示すグラフである。 FORTEBIO(登録商標)octet instrument(メンローパーク、カリフォルニア州)上でのバイオレイヤー干渉法を用いての、マッチ及びミスマッチ塩基識別効果に対する塩濃度の影響を示すグラフである。 phiX_matchC及びFP2プライマー及びKlenowまたはBst2.0酵素、ならびにSrClを用いた場合の、洗浄工程中の、すなわちポリメラーゼの解離中の塩基識別を示すグラフである。 様々な濃度のSrCl(0mM〜14mM)を用いた場合の、核酸ポリメラーゼ複合体の安定化に与える洗浄の効果を示すグラフである。 DNA pol Iの3′−5′エキソヌクレアーゼ活性が、配列決定に与える効果を示すグラフである。 HIV−1逆転写酵素、NNRTI化合物7及び図中のdNTPを用いたヒトALKゲートキーパー領域の配列決定を示すグラフである。図7Aは、配列決定の連続サイクルの時系列変化を示すグラフである。 HIV−1逆転写酵素、NNRTI化合物7及び図中のdNTPを用いたヒトALKゲートキーパー領域の配列決定を示すグラフである。図7Bは、前回のサイクルからバックグラウンドを差し引いた後の個々のパネルの第1〜第12サイクルを示すグラフである。予想される読取り配列はCAGCAGGA(配列番号1)であり、観測した読取り配列はCAGCAGG(配列番号2)であった。 HIV−1逆転写酵素、NNRTI化合物18及び様々なdNTPを用いたヒトALKゲートキーパー領域の配列決定を示すグラフである。 SPRiバイオセンサーを用いたphiX_matchA鋳型の配列決定を示すセンサーグラムである。グレー表示した領域は正しい塩基の読み上げに対応する。点線は、正しいKlenow/dNTPの組合せの場合の結合を判定するために使用する強度変化閾値を示す。 Bacillus stearothermophilus由来のBst DNAポリメラーゼを用いたニックトランスレーションによるdsDNAの配列決定を示すグラフである。結合緩衝液中、図中のdNTPの存在下または非存在下において、1つの塩基ギャップを有する二本鎖DNAをBst DNA Polで処理した。dNTPを組込むためにバイオセンサーを反応緩衝液に移し、続いて、120秒間にわたって非鋳型鎖を5′−3′エキソヌクレアーゼ切断するために、Bst DNA Polを含有し、dNTPを含まない反応緩衝液に移した。 Bacillus stearothermophilus由来のBst DNAポリメラーゼを用いたニックトランスレーションによるdsDNAの配列決定を示すグラフである。結合緩衝液中、図中のdNTPの存在下または非存在下において、1つの塩基ギャップを有する二本鎖DNAをBst DNA Polで処理した。dNTPを組込むためにバイオセンサーを反応緩衝液に移し、続いて、60秒間にわたって非鋳型鎖を5′−3′エキソヌクレアーゼ切断するために、Bst DNA Polを含有し、dNTPを含まない反応緩衝液に移した。 Bacillus stearothermophilus由来のBst DNAポリメラーゼを用いたニックトランスレーションによるdsDNAの配列決定を示すグラフである。対照として、Bst DNA Polを用いて、プライミングした鋳型ssDNAへの結合、dNTPの組込み、続いて5′−3′エキソヌクレアーゼ処理を60秒間行うことによって配列決定した。 E.coli DNAポリメラーゼのKlenow(3′→5′exo−)断片を用いた鎖置換による5′フラップを有するdsDNAの配列決定を示すグラフである。鋳型DNAを、MgCl2を含まない結合緩衝液中、図中のdNTPの存在下または非存在下において、Klenow exo− DNA Polで処理した。触媒反応のためにMgCl2を含む洗浄緩衝液にバイオセンサーを移し、続いて酵素またはdNTPの非存在下、結合緩衝液中で再平衡化した。図中に示すように、個々のdNTPごとにサイクルを繰り返した。図11A:一本鎖DNA。 E.coli DNAポリメラーゼのKlenow(3′→5′exo−)断片を用いた鎖置換による5′フラップを有するdsDNAの配列決定を示すグラフである。鋳型DNAを、MgCl2を含まない結合緩衝液中、図中のdNTPの存在下または非存在下において、Klenow exo− DNA Polで処理した。触媒反応のためにMgCl2を含む洗浄緩衝液にバイオセンサーを移し、続いて酵素またはdNTPの非存在下、結合緩衝液中で再平衡化した。図中に示すように、個々のdNTPごとにサイクルを繰り返した。図11B:1つの塩基ギャップを有する二本鎖DNA。 E.coli DNAポリメラーゼのKlenow(3′→5′exo−)断片を用いた鎖置換による5′フラップを有するdsDNAの配列決定を示すグラフである。鋳型DNAを、MgCl2を含まない結合緩衝液中、図中のdNTPの存在下または非存在下において、Klenow exo− DNA Polで処理した。触媒反応のためにMgCl2を含む洗浄緩衝液にバイオセンサーを移し、続いて酵素またはdNTPの非存在下、結合緩衝液中で再平衡化した。図中に示すように、個々のdNTPごとにサイクルを繰り返した。図11C:1つの塩基対ギャップの下流の5′−オリゴ−dTフラップを有する二本鎖DNA。 E.coli DNAポリメラーゼのKlenow(3′→5′exo−)断片によるssDNAの配列決定が、塩成分によって促進されることを示すグラフである。結合緩衝液は、200mMのグルタミン酸を含有する。反応緩衝液はグルタミン酸を含有せず、MgCl2を含有する。各サイクルにおいて添加するdNTP(「dNTP」)を、図中の最上部のテキスト行(配列番号14)に示す。Klenow(exo−)の結合を、図中の第2テキスト行(配列番号15)の観測配列(「観測」)に示す。鋳型に基づく「予想」配列を、図中の第3テキスト行(配列番号16)に示す。 E.coli DNAポリメラーゼのKlenow(3′→5′exo−)断片によるssDNAの配列決定が、塩成分によって促進されることを示すグラフである。結合緩衝液は、100mMのグルタミン酸を含有する。反応緩衝液はグルタミン酸を含有せず、MgCl2を含有する。各サイクルにおいて添加するdNTP(「dNTP」)を、図中の最上部のテキスト行(配列番号14)に示す。Klenow(exo−)の結合を、図中の第2テキスト行(配列番号17)の観測配列(「観測」)に示す。鋳型に基づく「予想」配列を、図中の第3テキスト行(配列番号18)に示す。 E.coli DNAポリメラーゼのKlenow(3′→5′exo−)断片によるssDNAの配列決定が、塩成分によって促進されることを示すグラフである。結合緩衝液は、50mMのグルタミン酸を含有する。反応緩衝液はグルタミン酸を含有せず、MgCl2を含有する。各サイクルにおいて添加するdNTP(「dNTP」)を、図中の最上部のテキスト行(配列番号14)に示す。Klenow(exo−)の結合を、図中の第2テキスト行(配列番号19)の観測配列(「観測」)に示す。鋳型に基づく「予想」配列を、図中の第3テキスト行(配列番号20)に示す。 ALK野生型をバックグラウンドとしたヒトALK C4493A変異体のセンス鎖のKlenow exo− DNAポリメラーゼによる配列決定のグラフである。図13Aは、野生型及びC4493A変異体のssDNA混合物における配列決定を示すセンサーグラムである。 ALK野生型をバックグラウンドとしたヒトALK C4493A変異体のセンス鎖のKlenow exo− DNAポリメラーゼによる配列決定のグラフである。図13Bは、ssDNA混合物において、第4サイクル(T)に示すC4493A突然変異体の線形定量、及び第3サイクル(G)に示す野生型ALKの線形定量を示すグラフである。 ALK野生型をバックグラウンドとしたヒトALK C4493A変異体のセンス鎖のKlenow exo− DNAポリメラーゼによる配列決定のグラフである。図13Cは、dsDNA−フラップ混合物において、C4493A変異体の線形定量を第4サイクル(T)に示し、野生型ALKの略線形定量を第3サイクル(G)に示すグラフである。 ヒトALK C4493A変異体へのKlenow exo−及びdCTPの二価陽イオンを介した結合及び触媒金属(MgCl)の存在下または非存在下での解離のグラフである。図14Aは、プライマー/鋳型への結合及び非触媒金属の存在下での解離を示すグラフである。 ヒトALK C4493A変異体へのKlenow exo−及びdCTPの二価陽イオンを介した結合及び触媒金属(MgCl)の存在下または非存在下での解離のグラフである。図14Bは、プライマー/鋳型への結合及び触媒金属の存在下での解離を示すグラフである。 Klenow exo−によるヒトALK C4493A変異体の配列決定のグラフであり、そこにおいて、低濃度のCoClによって結合が媒介され、高濃度のCoClによって組込みが媒介される。 Klenow exo−によるヒトALK C4493A変異体の配列決定のグラフであり、そこにおいて、Ni(II)SOによって結合が媒介され、MgClによって組込みが影響を受ける。ヌクレオシド二リン酸キナーゼ及びADPの存在下でのみ、ベースラインへの解離が認められ、これは遊離dNTPを一掃し、したがって、Klenow exo−及びプライマー/鋳型の複合体へのdNTPの再結合を防止する。 ヒトALK C4493A変異体のBsu Pol I(ラージフラグメント)配列決定の間のホモポリマー分解能を示すグラフである。Ni(II)SOによって結合が、MgClによって組込みが、及びdNDPの存在下または非存在下で解離が媒介される。図17Aは、Octet QKシステムを用いた配列決定のセンサーグラムである。 ヒトALK C4493A変異体のBsu Pol I(ラージフラグメント)配列決定の間のホモポリマー分解能を示すグラフである。Ni(II)SOによって結合が、MgClによって組込みが、及びdNDPの存在下または非存在下で解離が媒介される。図17Bは、2つの連続するGピークの分解能が、反応緩衝液中のdNDPの濃度に依存することを示すグラフである。 ヒト野生型ALKのBsu Pol I(ラージフラグメント)配列決定の間のホモポリマー分解能を示すグラフである。図18Aは、鋳型ALK−G1、ALK−G2及びALK−G3上でのポリメラーゼのNi促進性結合のセンソグラムである。 ヒト野生型ALKのBsu Pol I(ラージフラグメント)配列決定の間のホモポリマー分解能を示すグラフである。図18Bは、鋳型ALK−G4上でのポリメラーゼのNi促進性結合のセンソグラムである。 ヒト野生型ALKのBsu Pol I(ラージフラグメント)配列決定の間のホモポリマー分解能を示すグラフである。図18Cは、Ni及びMgを含有する反応緩衝液の添加後の組込み/解離時間のセンソグラムである。 ヒト野生型ALKのBsu Pol I(ラージフラグメント)配列決定の間のホモポリマー分解能を示すグラフである。図18Dは、鋳型のCホモポリマー位置を埋めるために必要とされるプライマー鎖中のGヌクレオチドの数に対してプロットした検査フェーズのパラメータを示すグラフである。対照は単一のG組込み(G)であり、「**」はp<0.01で、統計的に有意な結果であることを示す。 ヒト野生型ALKのBsu Pol I(ラージフラグメント)配列決定の間のホモポリマー分解能を示すグラフである。図18Eは、図中に示すBsuポリメラーゼ濃度についてプロットした組込み/解離フェーズの間に観測した初期速度を示すグラフである。対照は単一のG組込み(G)である。
詳細な説明
ハイスループットで費用対効果の高い核酸の配列決定は、研究と個別化医療の新しい時代を導く可能性を秘めている。いくつかの市販の配列決定プラットフォームが利用可能であり、それらはゲノム全体の規模で配列決定を行うが、遺伝子解析の大量消費市場においてまだまだ高価である。配列決定コストを削減することにより、種間及び個体間の遺伝的変異を詳細に解析し、個別化医療の基礎を提供し、ならびに遺伝子型と表現型の間の関連性を特定することが可能になる。試薬と人件費の削減に加えて、配列決定技術の目標にはスループットの拡大と精度の向上が含まれる。
現在、様々な配列決定技術は、sequencing by synthesis(SBS)またはsequencing by incorporationとして知られる方法を利用する。一般的なSBS法では、同定用のタグで修飾したヌクレオチドまたは短いオリゴヌクレオチドを提供し、ポリメラーゼなどの酵素を使用して、配列決定するDNA鎖に相補的なDNA鎖を合成し、それによって、合成の進行とともにヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを検出する。検出は、ヌクレオチドを組込んだ際に検出するリアルタイム方式であってもよい。リアルタイム方式は、高度に反復する配列及びホモポリマー領域を含む領域の読取りが不正確になるという問題を抱えている。また、検出は、停止及び進行工程の反復で進行してもよく、その場合、合成中の所与の時間において、制御された反応条件及び/または試薬によって、反応を可逆的に停止及び開始する。
sequencing by synthesis法による配列決定を行うために開発されたか、または現在開発中のいくつかのシステム及び機器が存在する。これらの方法は、類似の反応アプローチを用いるが、異なる識別タグの使用及び/またはヌクレオチド組込みの検出方法などに違いがある。これらの配列決定システムでは、一般的に、100〜数百塩基程度の短い可読長しか得られないが、同じ基質上で数千のDNAセグメントを同時に配列決定する大規模並列化によってこの制限を克服する。
多くのsequencing by synthesis技術は蛍光検出に基づいているため、ヌクレオチドの蛍光標識が必要であり、その発光及び光学系とともにシステムを複雑かつ高価なものにしている。蛍光標識技術は労働集約的であったり、技術集約的な標識プロセスを必要としたりする場合がある。また、蛍光ベースの方法の定量精度は、蛍光標識体の光退色感受性及び蛍光不純物からのスペクトル干渉があるため、貧弱な場合がある。さらに、いくつかの方法では、それぞれを異なる波長で検出する複数の蛍光標識(すなわち、dATP、dCTP、dGTP、dTTPの各々に1つ)を用いる必要があり、コスト及び検出機器を増大させる。一例として、sequencing by synthesis(SBS)法は、組込まれたヌクレオチドを検出するために蛍光標識dNTPをしばしば必要とし、それによって鋳型核酸配列を同定する;しかしながら、標識ヌクレオチドを使用する現在のSBS反応は、数百塩基後にエラーを起こしやすいため、標識ヌクレオチドの使用は精度の点で限界がある。全ゲノムを配列決定する場合、1%の誤差でも配列決定結果の有意性を損なう可能性がある。単一のラベルの検出ミスによる欠損エラーが発生するか、または漂遊分子の検出による挿入エラーが発生する場合に、精度が低下する可能性がある。退色したフルオロフォアは偽陰性を引き起こす。さらに、標識dNTPへの非標識dNTP(例えば、不純物または加水分解産物)の混入は、偽陰性を引き起こし得る。さらに、構造化された表面に非特異的に結合する標識dNTPからの浮遊シグナルは、挿入エラーまたは高いシグナル対ノイズ比に寄与する。修飾ヌクレオチドの使用は、酵素反応速度を有意に低下させ、配列決定反応を非常に遅くする。標識ヌクレオチドに伴う別の課題は、標識を検出した後に標識を除去または不活性化する必要があるという点であり、そうすることによってバックグラウンドシグナルを伴わずに次の添加を観察することができる。したがって、長い可読長を得るためには、各添加に実質的に100%の化学的、酵素的または光分解的な工程が続き、次の添加のために基質のブロッキングを解除するか、または色素を除去する必要がある。
本明細書において提供する組成物、システム、及び方法は、現在のsequencing by synthesis法に関連する1つ以上の問題を克服または軽減する。提供する方法は、検出可能に標識したヌクレオチドの非存在下で行うことができる。場合により、本方法は、検出可能な標識の非存在下で、例えばヌクレオチド、ポリメラーゼまたは配列決定する鋳型上で実施する。本明細書において提供する方法は、後続の鋳型塩基を同定する検査工程と、プライマーの3′末端に1つ以上の相補的ヌクレオチドを添加する組込み工程とを含む、結合反応による配列を使用する。組込み工程は、検査工程と並行させてもよいし、別個であってもよい。検査工程は、ヌクレオチドの存在下で、ポリメラーゼと配列決定する核酸(鋳型核酸)との間の相互作用をモニタリングすることを含む。場合により、相互作用は安定化剤の存在下にあってもよく、それによってポリメラーゼ−核酸相互作用は、後続の正しいヌクレオチドの存在下で安定化剤によって安定化される。検査工程は、ヌクレオチド組込み及び/または標識ヌクレオチドを必要とせずに鋳型核酸塩基の同一性を判定する。検査工程は、ヌクレオチドの組込みを減弱または達成するように調節してもよい。ヌクレオチドの組込みを減弱させる場合、別個の組込み工程を実施してもよい。検査工程中に塩基が識別されているため、別個の組込み工程は、モニタリングを必要とせずに達成し得る。検査の間にヌクレオチドの組込みを進行させる場合、組込み後の核酸上にポリメラーゼを捕捉する安定化剤によって、その後に起こるヌクレオチドの組込みを減弱させてもよい。また、可逆性の終止ヌクレオチドを使用してその後のヌクレオチドの添加を防止してもよい。sequencing by binding methodによる配列決定は、ポリメラーゼと鋳型核酸との間の相互作用をヌクレオチド上の標識を用いずにモニタリングすることができるため、標識ヌクレオチドを必要とせずに鋳型核酸塩基の制御された決定を可能にする。制御されたヌクレオチド組込みはまた、標識ヌクレオチドの使用を必要とせずに、反復及びホモポリマー領域の正確な配列情報を提供することができる。したがって、本明細書において提供する組成物、システム及び方法は、蛍光ベースのSBS検出に必要な標識ヌクレオチドを必要としないため、精度が高いことに加え、時間効率及び費用対効果が高い。本明細書においてさらに提供するように、鋳型核酸分子は、固相支持体への鋳型核酸またはポリメラーゼ付着を用いる必要のない検査条件下で配列決定し得る。本明細書の組成物、方法及びシステムは、制御された反応条件、明確な配列決定、長い可読長、全試薬コストの低さ、及び機器コストの低さなど、従来のシステムよりも多くの利点を提供する。本開示は、他に特段の指示のない限り、従来の分子生物学及びバイオセンサー技術を用い、これは当業分野の範囲内である。他に特段の定義のない限り、本明細書中で使用するすべての技術用語及び科学用語は、当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。
本明細書では、鋳型核酸分子の配列決定方法を提供する。本方法は:プライマーでプライミングした鋳型核酸分子を提供し、プライミングした鋳型核酸分子を、ポリメラーゼ及び少なくとも1つの非標識ヌクレオチド分子を含む第一の反応混合物に接触させ;非標識ヌクレオチド分子の存在下で、プライミングした鋳型核酸分子へのヌクレオチド分子の化学的組込みを伴わずに、ポリメラーゼとプライミングした鋳型核酸分子との相互作用をモニタリングし;モニタリングした相互作用に基づいて鋳型核酸中の後続塩基を同定することを含む検査工程を含む。場合により、プライマーは伸長可能なプライマーである。場合により、接触は、ヌクレオチドがプライミングした鋳型核酸分子の後続塩基に相補的である場合に、ポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸分子及びヌクレオチドの間で形成する三元複合体の形成を安定化させる条件下で行う。場合により、接触は、ヌクレオチドがプライミングした鋳型核酸分子の後続塩基に相補的でない場合に、ポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸及びヌクレオチドの間で形成し得る二元複合体の形成よりも三元複合体の形成が選好される条件下で行う。場合により、同定は、プライミングした鋳型核酸の後続塩基に相補的なヌクレオチドを同定することを含む。
検査工程を含む鋳型核酸分子の配列決定方法を提供し、工程は、プライマーでプライミングした鋳型核酸分子を提供し;プライミングした鋳型核酸分子を、ポリメラーゼ及び第一非標識ヌクレオチド分子を含む第一の反応混合物に接触させることを含み、そこにおいて、第一の非標識ヌクレオチド分子がプライミングした鋳型核酸分子の後続塩基に相補的である場合、プライミングした鋳型核酸分子、ポリメラーゼ及び第一の非標識ヌクレオチド分子は、三元複合体を形成することができ、第一の非標識ヌクレオチド分子がプライミングした鋳型核酸分子の後続塩基に相補的でない場合には、プライミングした鋳型核酸分子及びポリメラーゼは二元複合体を形成することができる。本方法はさらに、第一の非標識ヌクレオチド分子の存在下で、プライミングした鋳型核酸分子のプライマーへの第一の非標識ヌクレオチド分子の化学的組込みを伴わずに、ポリメラーゼとプライミングした鋳型核酸分子との相互作用をモニタリングし;モニタリングした相互作用によって、プライミングした鋳型核酸分子の後続塩基に相補的なヌクレオチドを同定することを含む。場合により、接触は、三元複合体の形成を安定化及び/または二元複合体の形成を不安定化する条件下で行う。これらの工程は1回以上繰り返すことができる。例えば、接触工程とモニタリング工程を1回以上繰り返すことができる。場合により、第一の反応混合物を使用して接触工程とモニタリング工程を繰り返す。場合により、ポリメラーゼ及び第二の非標識ヌクレオチド分子を含む第二の反応混合物を使用して接触工程とモニタリング工程を繰り返す。場合により、ポリメラーゼ及び第三の非標識ヌクレオチド分子を含む第三の反応混合物を使用して接触工程とモニタリング工程を繰り返す。場合により、ポリメラーゼ及び第四の非標識ヌクレオチド分子を含む第四の反応混合物を用いて接触工程とモニタリング工程を繰り返す。場合により、接触は、二元複合体の形成を不安定化させる条件下で行う。
また、鋳型核酸分子の配列決定方法を提供し、方法は検査工程を含み、検査工程は、プライマーでプライミングした鋳型核酸分子を提供し;プライミングした鋳型核酸分子を、非標識ポリメラーゼ、第一の非標識ヌクレオチド分子及び第二の非標識ヌクレオチド分子を含む反応混合物に接触させ、第一及び第二の非標識ヌクレオチド分子は互いに異なるとともに、異なる濃度で反応混合物中に存在し、第一及び/または第二の非標識ヌクレオチド分子がプライミングした鋳型核酸分子の後続塩基に相補的である場合、プライミングした鋳型核酸分子、非標識ポリメラーゼならびに第一及び/または第二の非標識ヌクレオチド分子は、三元複合体を形成することができ、第一及び/または第二の非標識ヌクレオチド分子が、プライミングした鋳型核酸分子の後続塩基に相補的でない場合には、プライミングした鋳型核酸分子及び非標識ポリメラーゼが、二元複合体を形成することができる。場合により、接触は、三元複合体の形成を安定化させる条件下で行う。本方法はまた、第一及び第二の非標識ヌクレオチド分子の存在下で、プライミングした鋳型核酸のプライマーへの第一または第二の非標識ヌクレオチド分子の化学的組込みを伴わずに、非標識ポリメラーゼと、プライミングした鋳型核酸分子との相互作用をモニタリングし;工程(c)のモニタリングした相互作用によって、プライミングした鋳型核酸分子の後続塩基に相補的なヌクレオチドを同定することを含む。場合により、反応混合物は、第三の非標識ヌクレオチド分子をさらに含み、第三の非標識ヌクレオチド分子は、第一及び第二の非標識ヌクレオチド分子とは異なるとともに、第一及び第二の非標識ヌクレオチド分子と異なる濃度で反応混合物中に存在する。場合により、反応混合物は、第四の非標識ヌクレオチド分子をさらに含み、第四の非標識ヌクレオチド分子は、第一、第二及び第三の非標識ヌクレオチド分子とは異なるとともに、第一、第二及び第三の非標識ヌクレオチド分子と異なる濃度で反応混合物中に存在する。場合により、第一の反応混合物は、プライミングした鋳型核酸分子のプライマーへ組込み可能な1つ以上の第一の非標識ヌクレオチド分子と、組込み不可能な1つ以上の第一の非標識ヌクレオチド分子とを含む。場合により、第二の反応混合物は、プライミングした鋳型核酸分子のプライマーへ組込み可能な1つ以上の第二の非標識ヌクレオチド分子と、組込み不可能な1つ以上の第二の非標識ヌクレオチド分子とを含む。場合により、第三の反応混合物は、プライミングした鋳型核酸分子のプライマーへ組込み可能な1つ以上の第三の非標識ヌクレオチド分子と、組込み不可能な1つ以上の第三の非標識ヌクレオチド分子とを含む。場合により、第四の反応混合物は、プライミングした鋳型核酸分子のプライマーへ組込み可能な1つ以上の第四の非標識ヌクレオチド分子と、組込み不可能な1つ以上の第四の非標識ヌクレオチド分子とを含む。
場合により、提供する方法は、洗浄工程をさらに含む。洗浄工程は、本方法における他の工程の前または後に行うことができる。場合により、洗浄工程は、モニタリング工程の前及び/または同定工程の前に実施する。場合により、洗浄工程は、任意の二元複合体を除去する。場合により、洗浄工程は、三元複合体を安定化させる条件下で行う。場合により、条件には安定化剤が含まれる。場合により、安定化剤は非触媒金属イオンである。場合により、非触媒金属イオンは、ストロンチウム、スズ、またはニッケルである。場合により、三元複合体は半減期を有し、そこにおいて、非標識ヌクレオチド分子がプライミングした鋳型核酸分子の後続塩基に相補的な塩基を提供する場合に形成される三元複合体の半減期より短い持続時間で洗浄工程を実施する。
場合により、工程(d)に続くリロード工程をさらに含み、リロード工程は、プライミングした鋳型核酸と、ポリメラーゼ及び第一の、または場合により第二、第三及び第四の非標識ヌクレオチド分子を含むリロード混合物とを、三元複合体を安定化させる条件下で接触させる工程を含む。
場合により、本明細書において提供する方法は、組込み工程をさらに含む。一例として、組込み工程は、鋳型核酸の後続塩基に相補的な単一の非標識ヌクレオチドを、プライミングした鋳型核酸分子のプライマーに組込むことを含む。場合により、組込み工程は、プライミングした鋳型核酸分子、ポリメラーゼ及びヌクレオチドを組込み反応混合物と接触させる工程を含む。組込み反応混合物は、場合により、触媒金属イオンを含む。提供する方法は、組込み工程後に次の検査工程のためにプライミングした鋳型核酸分子を調製することをさらに含み得る。場合により、調製は、プライミングした鋳型核酸または核酸/ポリメラーゼ複合体を1回以上の洗浄工程;温度変化;機械的振動;pH変化;または光刺激に供することを含む。場合により、洗浄工程は、プライミングした鋳型核酸またはプライミングした鋳型核酸/ポリメラーゼ複合体を、1つ以上の緩衝液、界面活性剤、タンパク質変性剤、プロテアーゼ、酸化剤、還元剤、またはポリメラーゼの内部架橋もしくはポリメラーゼと核酸との間の架橋を解放可能な他の薬剤と接触させることを含む。場合により、本方法は、検査工程と組込み工程を繰り返して鋳型核酸分子を配列決定することをさらに含む。検査工程は、組込み工程を実施する前に1回以上繰り返してもよい。場合により、2つの連続した検査工程は、異なる非標識ヌクレオチド分子を有する反応混合物を含む。場合により、プライミングした鋳型核酸分子に単一の非標識ヌクレオチドを組込む前に、第一の反応混合物を、ポリメラーゼ及び1、2、3または4種類の非標識ヌクレオチド分子を含む第二の反応混合物に置換する。場合により、ヌクレオチド分子は、dATP、dTTP、dCTP、及びdGTPから選択される。
提供する配列決定方法において、少なくとも1つの非標識ヌクレオチドは、3′ヒドロキシル基を含み、これは例えば、遊離3′ヒドロキシル基であり得る。場合により、少なくとも1つの非標識ヌクレオチド分子の3′ヒドロキシル基を、3′ターミネーター部分を含むように修飾する。3′ターミネーター部分は、可逆的ターミネーターであってもよく、または不可逆的ターミネーターであってもよい。場合により、少なくとも1つの非標識ヌクレオチド分子の可逆的ターミネーターを、検査工程後に置換または除去する。
本明細書で提供する配列決定方法では、ポリメラーゼは、少なくとも1つの非標識ヌクレオチド分子の存在下で、プライミングした鋳型核酸分子と相互作用して、閉鎖複合体を形成する。場合により、非標識ヌクレオチド分子は、プライミングした鋳型核酸分子中のプライマーの3′末端の下流にある鋳型核酸分子の塩基に相補的なヌクレオチドである。場合により、非標識ヌクレオチド分子は後続の正しいヌクレオチドであり;後続の正しいヌクレオチドは、プライミングした鋳型核酸分子中のプライマーの3′末端の下流にある鋳型核酸分子の塩基に相補的なヌクレオチドであり、閉鎖複合体は、プライミングした鋳型核酸分子、ポリメラーゼ、及び後続の正しいヌクレオチドを含む三元閉鎖複合体である。場合により、三元閉鎖複合体の形成は、プライミングした鋳型核酸とポリメラーゼとの間の二元複合体の形成よりも好ましい。第一の反応混合物が高濃度の塩を含む場合、三元閉鎖複合体の形成は、二元複合体の形成よりも好ましい場合がある。場合により、第一の反応混合物は50〜1500mMの塩を含有する。第一の反応混合物が高pHを有する緩衝液を含有する場合には、三元閉鎖複合体の形成は、二元複合体の形成より好ましい場合がある。場合により、pHは7.4〜9.0である。好極限性細菌環境から抽出した特定のポリメラーゼについては、第一の反応混合物が低pHの緩衝液を含有する場合に、三元閉鎖複合体の形成が二元複合体の形成より好ましい場合がある。場合により、pHは4.0〜7.0である。また、反応温度及び/または有機及び無機添加剤を用いて、ポリメラーゼとプライミングした鋳型核酸分子との間の親和性を調節してもよい。
本明細書において提供する配列決定方法において、第一の反応混合物は、1、2、3、または4種類の非標識ヌクレオチド分子を含み得る。場合により、ヌクレオチドは、dATP、dTTP、dCTP、及びdGTPから選択される。場合により、反応混合物は、1つ以上の三リン酸ヌクレオチド及び1つ以上の二リン酸ヌクレオチドを含む。場合により、プライミングした鋳型核酸、ポリメラーゼ、及び4種の非標識ヌクレオチド分子のいずれか1種の間で閉鎖複合体を形成し、それによって4種類の閉鎖複合体を形成してもよい。ポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸及びヌクレオチドを含む閉鎖複合体は、本明細書中では三元閉鎖複合体または三元複合体と呼ぶことができる。三元複合体及び三元閉鎖複合体は、本明細書中では同じ意味で使用する。
非標識ヌクレオチド分子の存在下で、プライミングした鋳型核酸分子とポリメラーゼとの相互作用をモニタリングすることは、プライミングした鋳型核酸、ポリメラーゼ、及び4種の非標識ヌクレオチド分子のいずれか1種の間の相互作用の会合反応速度を測定することを含み得る。非標識ヌクレオチド分子の存在下で、ポリメラーゼとプライミングした鋳型核酸分子との相互作用をモニタリングすることは、4種の非標識ヌクレオチドのいずれか1種の存在下で、ポリメラーゼとプライミングした鋳型核酸分子との間の平衡結合定数、すなわち、鋳型核酸に対するポリメラーゼの平衡結合定数を測定することを含む。したがって、例えば、モニタリングは、4種の非標識ヌクレオチドのいずれか1種の存在下で、プライミングした鋳型核酸に対するポリメラーゼの平衡結合定数を測定することを含む。非標識ヌクレオチド分子の存在下で、プライミングした鋳型核酸分子とポリメラーゼとの相互作用をモニタリングする工程は、4種の非標識ヌクレオチドのいずれか1種の存在下で、プライミングした鋳型核酸からのポリメラーゼの解離反応速度を測定する工程を含む。場合により、非標識ヌクレオチド分子の存在下で、ポリメラーゼとプライミングした鋳型核酸分子との相互作用をモニタリングすることは、閉鎖複合体の解離、すなわちプライミングした鋳型核酸、ポリメラーゼ、4種の非標識ヌクレオチド分子のいずれか1種の解離の解離反応速度を測定することを含む。場合により、測定される会合反応速度は、非標識ヌクレオチド分子の同一性に応じて異なる。場合により、ポリメラーゼは、4種類の非標識ヌクレオチド分子のそれぞれに対して異なる親和性を有する。場合により、ポリメラーゼは、各種類の閉鎖複合体における4種類の非標識ヌクレオチド分子のそれぞれについて異なる解離定数を有する。会合、平衡及び解離反応速度は公知であり、当業者であれば容易に決定することができる。例えば、Markiewicz et al.,Nucleic Acids Research 40(16):7975−84(2012);Xia et al.,J.Am.Chem.Soc.135(1):193−202(2013);Brown et al.,J.Nucleic Acids,Article ID 871939,11 pages(2010);Washington,et al.,Mol.Cell.Biol.24(2):936−43(2004);Walsh and Beuning,J.Nucleic Acids,Article ID 530963,17 pages(2012);及びRoettger,et al.,Biochemistry 47(37):9718−9727(2008)を参照されたく、これらの文献はその全体を参照として本明細書に援用する。したがって、モニタリング工程は、第一の非標識ヌクレオチド分子の存在下で、プライミングした鋳型核酸分子のプライマーへの第一の非標識ヌクレオチド分子の化学的組込みを伴わずに、プライミングした鋳型核酸分子とポリメラーゼの定常状態での相互作用をモニタリングすることを含み得る。場合により、モニタリングは、第一の非標識ヌクレオチド分子の存在下で、プライミングした鋳型核酸分子のプライマーへの第一の非標識ヌクレオチド分子の化学的組込みを伴わずに、プライミングした鋳型核酸分子とポリメラーゼの解離をモニタリングすることを含む。場合により、モニタリングは、第一の非標識ヌクレオチド分子の存在下で、プライミングした鋳型核酸分子のプライマーへの第一の非標識ヌクレオチド分子の化学的組込みを伴わずに、プライミングした鋳型核酸分子とのポリメラーゼの会合をモニタリングすることを含む。
本明細書において提供する配列決定方法では、反応混合物中に触媒金属イオンが存在しないか、またはポリメラーゼの活性部位に触媒金属イオンが存在しないことにより、プライミングした鋳型核酸へのヌクレオチド分子の化学的組込みが妨げられる。場合により、第一の反応混合物中の触媒金属イオンのキレート化は、プライミングした鋳型核酸へのヌクレオチド分子の化学的組込みを妨げる。場合により、非触媒金属イオンは、後続の正しいヌクレオチドの存在下で三元閉鎖複合体の安定化剤として作用する。場合により、第一の反応混合物中の触媒金属イオンを非触媒金属イオンで置換することにより、プライミングした鋳型核酸へのヌクレオチド分子の化学的組込みが妨げられる。場合により、触媒金属イオンはマグネシウムである。ポリメラーゼの金属イオン機構は、低濃度の金属イオンがポリメラーゼ−ヌクレオチド−DNA結合相互作用を安定化させるのに必要であると仮定している。例えば、Section 27.2.2,Berg JM,Tymoczko JL,Stryer L,[Biochemistry 5th Edition],WH Freeman Press,2002を参照されたい。本明細書中で使用する場合、触媒金属イオンとは、核酸(例えばプライマー)の3′OHと後続ヌクレオチドのリン酸との間のホスホジエステル結合の形成に必要な金属イオンを指す。金属イオン(複数可)の濃度は、核酸(例えば、プライマー)の3′OHと後続ヌクレオチドのリン酸との間のホスホジエステル結合の形成に必要な金属イオン(複数可)の量を指す。場合により、第一の反応混合物中の低濃度の触媒イオンは、プライミングした鋳型核酸へのヌクレオチド分子の化学的組込みを妨げる。場合により、低濃度は約1μM〜約100μMである。場合により、低濃度は約0.5μM〜約5μMである。場合により、第一の反応混合物はコバルトを含み、組込みは、第一の反応混合物中のコバルト濃度より高濃度のコバルトを含む組込み反応混合物と接触させることを含む。
場合により、組込み反応混合物を含む提供する反応混合物は、組込み不可能なヌクレオチドであるか、または核酸鎖に組込むことができないヌクレオチドである少なくとも1つの非標識ヌクレオチド分子を含む。換言すれば、提供する反応混合物は、プライミングした鋳型核酸分子のプライマーに組込むことができない1つ以上の非標識ヌクレオチド分子を含み得る。そのような組込み不可能なヌクレオチドとして、例えば、二リン酸ヌクレオチドが挙げられる。例えば、ヌクレオチドに、ヌクレオチドを組込み不可能にする三リン酸基の修飾を施してもよい。組込み不可能なヌクレオチドの例は、米国特許第7,482,120号に記載されており、この文献はその全体を参照として本明細書に援用する。場合により、プライマーは、その3′末端に遊離ヒドロキシル基を含有しない場合があり、これによりヌクレオチドを組込むことができず、したがって任意のヌクレオチドを組込み不可能にする。
本明細書において提供する配列決定方法において、必要に応じて、第一の反応混合物にポリメラーゼ阻害剤を添加して、後続の正しいヌクレオチドに結合する際にポリメラーゼを核酸に捕捉させることができる。場合により、ポリメラーゼ阻害剤はピロリン酸類似体である。場合により、ポリメラーゼ阻害剤はアロステリック阻害剤である。場合により、ポリメラーゼ阻害剤は、ポリメラーゼ中の触媒イオン結合部位と競合する。場合により、ポリメラーゼ阻害剤は逆転写酵素阻害剤である。ポリメラーゼ阻害剤は、HIV−1逆転写酵素阻害剤またはHIV−2逆転写酵素阻害剤であってもよい。HIV−1逆転写酵素阻害剤は、(4/6−ハロゲン/MeO/EtO置換ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)チアゾリジン−4−オンであってもよい。
場合により、鋳型核酸を表面に固定化する。表面は、平面基板、ヒドロゲル、ナノホールアレイ、微粒子、またはナノ粒子であってもよい。場合により、第一の反応混合物は、クローニング増幅した複数の鋳型核酸分子を含有する。場合により、第一の反応混合物は、複数の識別可能な鋳型核酸を含む。
本明細書中で使用する場合、核酸とは、DNA、RNA、またはそれらの任意の組合せなどのポリヌクレオチドであり、核酸合成中に重合酵素がこれらに作用し得る。RNAは、コードRNA、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)を含み得る。場合により、RNAは非コードRNAである。場合により、非コードRNAは、トランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、snoRNA、マイクロRNA、siRNA、snRNA、exRNA、piRNA及び長鎖ncRNAである。核酸は、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。場合により、二本鎖核酸は、核酸合成を妨害し得る二次構造を最小化するため、利点を有する。二本鎖核酸は、一本鎖ニックまたはギャップを有し得る。配列決定は、5′−3′エキソヌクレアーゼ活性(ニックトランスレーション)または鎖置換活性を有するポリメラーゼを用いることにより、遊離3′−ヒドロキシル末端から開始することができる。場合により、異なるポリメラーゼを、ニックトランスレーションまたは鎖置換及び結合による配列決定に使用してもよい。場合により、二本鎖核酸は、一本鎖ニックまたはギャップを有する場合があり、そのニックまたはギャップの5′末端は一本鎖フラップである。核酸は、単一の、複数の、またはクローニング増幅した核酸分子の集団を表す場合がある。
鋳型核酸とは、本明細書に開示する任意の配列決定方法を用いて配列決定する核酸である。鋳型核酸は、プライマーでプライミングしてもよく、そこにおいてプライマーは、鋳型核酸の少なくとも一部に相補的な配列を有する5′末端及び3′末端を備えたオリゴヌクレオチドである。プライミングした鋳型核酸は、鋳型核酸に結合した相補的プライマーを含む。場合により、鋳型核酸とは、特に、鋳型核酸、ポリメラーゼ、及びヌクレオチドの複合体に言及する場合、プライミングした鋳型核酸を指す。鋳型核酸に結合したプライマーの3′末端のすぐ下流に位置する鋳型核酸ヌクレオチドは、後続鋳型ヌクレオチドまたは後続塩基と呼ぶ。後続塩基に相補的なヌクレオチドは、後続の正しいヌクレオチドと呼ぶ。後続塩基に相補的でないヌクレオチドは、誤ったヌクレオチドと呼ぶ。
場合により、鋳型は二本鎖核酸分子である。したがって、第一の鋳型核酸鎖及びニックまたはギャップを有する第二の核酸鎖を含む二本鎖核酸分子を提供し;ヌクレオチドが第一の鋳型核酸鎖の後続塩基に相補的である場合に、ポリメラーゼ、二本鎖核酸分子及びヌクレオチドの間に形成される三元複合体の形成を安定化させる条件下で、二本鎖核酸分子を、ポリメラーゼ及び少なくとも1つの非標識ヌクレオチド分子を含む第一の反応混合物に接触させ;非標識ヌクレオチド分子の存在下で、第二鎖へのヌクレオチド分子の組込みを伴わずに、ポリメラーゼと第一の鋳型核酸鎖との相互作用をモニタリングし;モニタリングした相互作用に基づいて鋳型核酸鎖中の後続塩基を同定することを含む検査工程を含む二本鎖核酸分子の配列決定方法も提供する。場合により、ポリメラーゼは鎖置換活性を有する。場合により、二本鎖核酸分子の第二鎖はフラップを有する。
本明細書中で使用する場合、ヌクレオチドとは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、ヌクレオシド、修飾ヌクレオチド、または、鋳型核酸もしくは配列決定プロセスの一部として合成する核酸を含む任意のモノマー成分を指す。ヌクレオチドは、窒素含有塩基、五炭糖(リボースまたはデオキシリボース)、及び少なくとも1つのリン酸基を有する。場合により、リン酸基を部分で修飾する。この部分は、検出可能な標識を含む場合がある。場合により、ヌクレオチドの3′OH基を、部分で修飾する。この部分は3′可逆的または不可逆的ターミネーターであってもよい。ヌクレオチドは、アデニン、シトシン、グアニン、チミンまたはウラシルであってもよい。場合により、ヌクレオチドは、イノシン、キサンタニン、ヒポキサンタニン、イソシトシン、イソグアニン、ニトロピロール(3−ニトロピロールを含む)またはニトロインドール(5−ニトロインドールを含む)塩基を有する。ヌクレオチドとして、ATP、UTP、CTP、GTP、ADP、UDP、CDP、GDP、AMP、UMP、CMP、GMP、dATP、dTTP、dCTP、dGTP、dADP、dTDP、dCDP、dGDP、dAMP、dTMP、dCMP及びdGMPが挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。ヌクレオチドはまた、ddNTP(ddGTP、ddATP、ddTTP及びddCTP)と略記されるDNAポリメラーゼ、ジデオキシヌクレオチドまたは2′,3′ジデオキシヌクレオチドの終結阻害剤を含む場合がある。
本明細書中で使用する場合、ポリメラーゼとは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、プライマー及びトランスフェラーゼを含むが必ずしもこれらに限定されない核酸合成酵素の総称である。一般的には、ポリメラーゼは1つ以上の活性部位を有し、そこでヌクレオチド重合におけるヌクレオチド結合及び/または触媒作用が生じ得る。ポリメラーゼは、相補的な核酸鎖に結合したプライマーの3′末端へのヌクレオチドの重合を触媒し得る。例えば、ポリメラーゼは、ホスホジエステル結合を介してプライマーの3′OH基への後続の正しいヌクレオチドの添加を触媒し、それによってヌクレオチドをプライマーに化学的に組込む。場合により、提供する方法で使用するポリメラーゼは、プロセッシブポリメラーゼである。場合により、提供する方法で使用するポリメラーゼは、ディストリビューティブポリメラーゼである。
ポリメラーゼは、天然型ポリメラーゼ、ならびに、突然変異体、組換え体、融合体、遺伝子改変体、化学的改変体、合成体、及び類似体を含むが必ずしもこれらに限定されないその改変型変異体を含み得る。天然型ポリメラーゼ及びその改変型変異体は、重合反応を触媒する能力を保持するポリメラーゼに必ずしも限定するものではない。場合により、それらの天然型及び/または改変型変異体は、重合反応を触媒する能力を保持する。場合により、天然型及び/または改変型変異体は、核酸への結合親和性の向上、核酸への結合親和性の低下、触媒速度の向上、触媒速度の低下などのDNAの配列決定能力を高める特殊な特性を有する。変異型ポリメラーゼには、1つ以上のアミノ酸を他のアミノ酸(天然または非天然の)で置換し、及び1つ以上のアミノ酸を挿入または欠失させたポリメラーゼが含まれる。改変型ポリメラーゼには、外部タグを有するポリメラーゼが含まれ、これを用いてポリメラーゼの存在及び相互作用をモニタリングすることができる。場合により、ポリメラーゼからの固有シグナルを用いて、それらの存在及び相互作用をモニタリングすることができる。したがって、提供する方法は、ポリメラーゼからの固有シグナルを検出することによってポリメラーゼ、ヌクレオチド及び鋳型核酸の相互作用をモニタリングすることを含み得る。場合により、固有シグナルは光散乱シグナルである。例えば、固有シグナルは、トリプトファンなどの特定のアミノ酸の天然蛍光を含み、ポリメラーゼからの固有シグナルの変化は、閉鎖複合体の形成を示し得る。したがって、提供する方法では、ポリメラーゼは非標識ポリメラーゼであり、モニタリングはポリメラーゼに付随する検出可能な標識の非存在下で行う。特定の反応条件下で、いくつかの改変型ポリメラーゼまたは天然型ポリメラーゼは、単一のヌクレオチドのみを組込む場合があり、単一のヌクレオチドの組込み後にプライマー−鋳型に結合したままの場合がある。場合により、ポリメラーゼのサム及びフィンガードメインは、ポリメラーゼの閉形態におけるその物理的近接性に起因して、一過性または共有結合性の架橋を形成し得る。架橋は、例えば、サム及びフィンガードメイン上の適切な位置にある天然型または改変型システインによって形成され得る。
本明細書中で使用する場合、用語ポリメラーゼ及びその変異体は、互いに連結された少なくとも2つの部分を有する融合タンパク質をも指し、そこでは、例えば核酸鎖へのヌクレオチドの重合を触媒可能なペプチドを含む1つの部分が、レポーター酵素またはプロセシング性改変ドメインなどの第二の部分を含む別の部分に連結している。例えば、T7 DNAポリメラーゼは、核酸重合ドメイン及びチオレドキシン結合ドメインを有し、ここでチオレドキシン結合はポリメラーゼのプロセシング性を高める。チオレドキシン結合が存在しない場合、T7 DNAポリメラーゼは、わずか1〜数塩基のプロセシング性を有するディストリビューティブポリメラーゼである。DNAポリメラーゼは、細部では様々に異なるものの、それらはフィンガー、パーム、及びサムと呼ばれる特定の領域を有する類似の全体形状;ならびにサム及び/またはフィンガードメインの移動を含む核酸合成中の同様の全体構造変化を有する。
DNAポリメラーゼとして、細菌DNAポリメラーゼ、真核生物DNAポリメラーゼ、古細菌DNAポリメラーゼ、ウイルスDNAポリメラーゼ及びファージDNAポリメラーゼが挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。細菌DNAポリメラーゼとして、E.coli DNAポリメラーゼI、II及びIII、IV及びV、E.coli DNAポリメラーゼのKlenow断片、Clostridium stercorarium(Cst)DNAポリメラーゼ、Clostridium thermocellum(Cth)DNAポリメラーゼならびにSulfolobus solfataricus(Sso)DNAポリメラーゼが挙げられる。真核生物DNAポリメラーゼとして、DNAポリメラーゼα、β、γ、δ、ε、η、ζ、λ、σ、μ及びk、ならびにRev1ポリメラーゼ(末端デオキシシチジルトランスフェラーゼ)及び末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)が挙げられる。ウイルスDNAポリメラーゼとして、T4 DNAポリメラーゼ、phi−29 DNAポリメラーゼ、GA−1、phi−29様DNAポリメラーゼ、PZA DNAポリメラーゼ、phi−15 DNAポリメラーゼ、Cpl DNAポリメラーゼ、Cp7 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、及びT4ポリメラーゼが挙げられる。古細菌DNAポリメラーゼとして、Thermus aquaticus(Tag)DNAポリメラーゼ、Thermus filiformis(Tfi)DNAポリメラーゼ、Thermococcus zilligi(Tzi)DNAポリメラーゼ、Thermus thermophilus(Tth)DNAポリメラーゼ、Thermus flavusu(Tfl)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus woesei(Pwo)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus furiosus(Pfu)DNAポリメラーゼ及びTurbo Pfu DNAポリメラーゼ、Thermococcus litoralis(Tli)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus種GB−Dポリメラーゼ、Thermotoga maritima(Tma)DNAポリメラーゼ、Bacillus stearothermophilus(Bst)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus Kodakaraensis(KOD)DNAポリメラーゼ、Pfx DNAポリメラーゼ、Thermococcus種JDF−3(JDF−3)DNAポリメラーゼ、Thermococcus gorgonarius(Tgo)DNAポリメラーゼ、Thermococcus acidophilium DNAポリメラーゼ;Sulfolobus acidocaldarius DNAポリメラーゼ;Thermococcus種 go N−7 DNAポリメラーゼ;Pyrodictium occultum DNAポリメラーゼ;Methanococcus voltae DNAポリメラーゼ;Methanococcus thermoautotrophicum DNAポリメラーゼ;Methanococcus jannaschii DNAポリメラーゼ;Desulfurococcus株TOK DNA polymerase(D.Tok Pol);Pyrococcus abyssi DNAポリメラーゼ;Pyrococcus horikoshii DNAポリメラーゼ;Pyrococcus islandicum DNAポリメラーゼ;Thermococcus fumicolans DNAポリメラーゼ;Aeropyrum pernix DNAポリメラーゼ;ならびにヘテロ二量体型DNAポリメラーゼDP1/DP2から単離されたDNAポリメラーゼなどの熱安定性及び/または好熱性DNAポリメラーゼが挙げられる。
RNAポリメラーゼとして、例えばT7 RNAポリメラーゼ、T3ポリメラーゼ、SP6ポリメラーゼ、及びK11ポリメラーゼなどのウイルスRNAポリメラーゼ;RNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼII、RNAポリメラーゼIII、RNAポリメラーゼIV、及びRNAポリメラーゼVなどの真核生物RNAポリメラーゼ;ならびに古細菌RNAポリメラーゼが挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。
逆転写酵素として、ヒト免疫不全ウイルス1型(PDB1HMV)由来のHIV−1逆転写酵素、ヒト免疫不全ウイルス2型由来のHIV−2逆転写酵素、モロニーマウス白血病ウイルス由来のM−MLV逆転写酵素、トリ骨髄芽球症ウイルス由来のAMV逆転写酵素、及び真核生物染色体のテロメアを維持するテロメラーゼ逆転写酵素が挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。
本明細書中で使用する場合、ヌクレオチド類似体は、ポリメラーゼ−プライミング鋳型核酸複合体に一時的に結合する場合があるが、核酸重合反応に組込むことはできない(または実質的に組込み不可能である)。本明細書中で使用する場合、ヌクレオチド類似体は、ポリメラーゼ−プライミング鋳型核酸複合体に結合し、核酸重合反応に組込まれる(または実質的に組込まれる)ようになる場合がある。ヌクレオチド類似体は、窒素塩基、五炭糖及びリン酸基を含む天然型のヌクレオチドと類似の構造を有するか、または有していない場合がある。修飾ヌクレオチドは、天然型ヌクレオチドの成分のいずれかを置換及び/または修飾する部分のような修飾を有する場合がある。組込み不可能なヌクレオチドは、α−リン酸修飾ヌクレオチド、α−βヌクレオチド類似体、β−リン酸修飾ヌクレオチド、β−γヌクレオチド類似体、γ−リン酸修飾ヌクレオチド、ケージドヌクレオチド、またはddNTPであり得る。ヌクレオチド類似体のいくつかの例は、米国特許第8,071,755号に記載されており、この文献はその全体を参照として本明細書に援用する。
本明細書中で言及するように、ブロッキング部分とは、ヌクレオチドを参照するために用いる場合、核酸重合反応の組込み工程において、ヌクレオチドが第二のヌクレオチド(例えば、プライマーヌクレオチドの3′OH)に対して共有結合を形成することを阻害または防止するヌクレオチドの一部分である。ブロッキング部分はヌクレオチドから取り除くことができ、ヌクレオチドの組込みが可能になる。
本明細書中で使用する場合、後続の正しいヌクレオチドとは、プライマーの3′末端の下流のプライミングした鋳型核酸の後続塩基に相補的なヌクレオチドのことである。誤ったヌクレオチドとは、プライマーの3′末端の下流の鋳型核酸中の後続塩基に相補的ではないヌクレオチドのことである。
本明細書中で使用する場合、二元複合体は、ポリメラーゼと核酸の複合体である。場合により、核酸は鋳型核酸である。場合により、核酸はプライミングした鋳型核酸であり、そこにおいてポリメラーゼは、プライマーの3′末端において、プライミングした鋳型核酸の重合部位に結合する。本明細書中において「ポリメラーゼ−ヌクレオチド複合体」または「ポリメラーゼ−ヌクレオチド二元複合体」と呼ぶ、ポリメラーゼとヌクレオチドの複合体も形成し得る。本明細書中で使用する場合、三元複合体とは、ポリメラーゼ、核酸、及びヌクレオチドの複合体である。場合により、核酸は、配列決定する鋳型核酸である。場合により、三元複合体中の核酸は、プライミングした鋳型核酸であり、そこにおいてポリメラーゼは、プライマーの3′末端において、プライミングした鋳型核酸の重合部位に結合する。触媒金属イオンとは、核酸(例えば、プライマー)の3′OH基と後続ヌクレオチドのリン酸基との間の反応を触媒するためにポリメラーゼが必要とする金属イオンを指す。触媒金属イオンは、金属イオンの非触媒濃度と呼ばれる、ポリメラーゼ、ヌクレオチド及び核酸間の複合体の形成を安定化させるのに必要な濃度で存在することができる。金属イオンの触媒濃度とは、核酸(例えば、プライマー)の3′OH基と後続ヌクレオチドのリン酸基との間の反応を触媒するためにポリメラーゼが必要とする金属イオンの量を指す。
提供する方法において、プライミングした鋳型核酸分子と、ポリメラーゼ及び1つ以上の非標識ヌクレオチド分子を含む反応混合物との接触は、三元複合体の形成を安定化させる条件下で行い得る。場合により、接触は、二元複合体の形成を不安定化させる条件下で行う。場合により、条件は、プライミングした核酸分子と浸透圧を調節する緩衝液とを接触させることを含む。場合により、第一の反応混合物は、浸透圧を調節する緩衝液を含む。場合により、緩衝液は高塩濃度緩衝液である。場合により、緩衝液は、グルタミン酸カリウムを含有する。場合により、三元複合体の形成を安定化させる条件は、プライミングした核酸分子を安定化剤に接触させることを含む。場合により、第一の反応混合物は安定化剤を含有する。場合により、安定化剤は非触媒金属イオンである。場合により、非触媒金属イオンは、ストロンチウム、スズ、またはニッケルである。場合により、第一の反応混合物は0.01mM〜30mMの塩化ストロンチウムを含有する。
本明細書において、ポリメラーゼに基づく結合反応による核酸の配列決定方法を記載し、そこにおいてポリメラーゼは、反応の別個の工程の間に、開構造と閉構造との間で立体構造を変換する。1つの工程において、ポリメラーゼは、プライミングした鋳型核酸に結合し、本明細書でプレ挿入構造とも呼ぶ二元複合体を形成する。続く工程では、後続ヌクレオチドが結合し、ポリメラーゼフィンガーが閉じて、ポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸及びヌクレオチドを含む化学工程前の立体構造を形成し;結合ヌクレオチドは組込まれていない。本明細書において検査工程とも呼ぶこの工程の後に、ヌクレオチドからの付随するピロリン酸の切断に伴ってリン酸ジエステル結合が形成する化学的工程が続く(ヌクレオチド組込み)。ポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸及び新たに組込まれたヌクレオチドは、化学的工程後、翻訳工程前の立体構造を生じる。化学工程前の立体構造及び転位前の立体構造は、いずれもポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸及びヌクレオチドを含み、ポリメラーゼは閉状態にあり、いずれの立体構造も、本明細書では閉鎖複合体または三元閉鎖複合体と呼ぶ場合がある。挿入前の閉状態では、Mg2+などの二価触媒金属イオンは、プライマー末端の3′ヒドロキシルによるピロリン酸(PPi)の求核置換を含む迅速な化学的工程を媒介する。ポリメラーゼは、転位後の工程であるPPiの遊離で開状態に戻り、転位は次の反応を開始させる。二価触媒金属イオン(例えば、Mg2+)の非存在下で閉鎖複合体は形成し得るが、ヌクレオチドの化学的添加は二価金属イオンの存在下で可能である。Mg2+などの触媒金属イオンのレベルが低いか不足していると、緊密な閉鎖複合体中で後続の正しいヌクレオチドが非共有結合的(物理的)に隔離される傾向がある。この閉鎖複合体は、安定化または捕捉した閉鎖複合体と呼ぶ場合がある。上記の任意の反応工程において、ポリメラーゼ配置及び/または核酸との相互作用を検査工程中にモニタリングして、核酸配列中の後続の正しい塩基を同定してもよい。
本明細書中で使用する場合、核酸の配列決定用の反応混合物、すなわち反応混合物は、ポリメラーゼに基づく核酸合成反応において一般的に存在する試薬を含有する。反応混合物試薬として、酵素(例えばポリメラーゼ)、dNTP、鋳型核酸、プライマー核酸、塩、緩衝液、小分子、補因子、金属、及びイオンが挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。イオンは、触媒イオン、二価触媒イオン、非触媒イオン、非共有金属イオン、またはそれらの組合せであってもよい。反応混合物は、NaCl、KCl、K−酢酸、NH−酢酸、K−グルタミン酸、NHClまたは(NHHSO)のような塩を含み得る。反応混合物は、Mg2+もしくはMn2+ Mg−酢酸、Co2+、Cd2+またはBa2+などのイオン源を含み得る。反応混合物は、スズ、Ca2+、Zn2+、Cu2+、Co2+、Fe(II)SOまたはNi2+を含み得る。緩衝液は、トリス、トリシン、HEPES、MOPS、ACES、MES、リン酸系緩衝液、及び酢酸系緩衝液を含み得る。反応混合物は、EDTA、EGTAなどのキレート剤を含み得る。場合により、反応混合物は架橋試薬を含む。本明細書では、場合により検査工程の間に使用する第一の反応混合物、ならびにヌクレオチド組込みの間に使用する1つ以上の前述の薬剤を含み得る組込み反応混合物を提供する。検査中に使用する場合の第一の反応混合物は、本明細書では検査反応混合物と呼ぶことが可能である。場合により、第一の反応混合物は、高濃度の塩;高pH;1、2、3、4種類、またはそれ以上の非標識ヌクレオチド;グルタミン酸カリウム;キレート剤;ポリメラーゼ阻害剤;触媒金属イオン;非触媒金属イオン;またはそれらの任意の組合せを含有する。第一の反応混合物は、10mM〜1.6Mのグルタミン酸カリウムまたは10mM〜1.6Mの間の任意の量を含み得る。場合により、組込み反応混合物は、触媒金属イオン;1、2、3、4種類、またはそれ以上の非標識ヌクレオチド;塩化カリウム;非触媒金属イオン;またはそれらの任意の組合せを含有する。
本明細書中で使用する場合、閉鎖複合体は、ポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸、及びヌクレオチドの間の三元複合体であり得る。閉鎖複合体は、ヌクレオチドが隔離されているが組込まれていない化学工程前の立体構造であってもよい。閉鎖複合体は、プライミングした鋳型核酸中のプライマーの3′末端とのホスホジエステル結合の形成によってヌクレオチドを組込む、転位前の立体構造であってもよい。閉鎖複合体は、触媒金属イオンの非存在下または触媒金属イオンが不十分なレベルである場合に形成し得るものであって、それによってポリメラーゼ活性部位内の後続の正しいヌクレオチドを、化学的組込みを伴わずに物理的に隔離する。場合により、隔離したヌクレオチドは、組込み不可能なヌクレオチドであってもよい。閉鎖複合体は触媒金属イオンの存在下で形成する場合があり、そこでは閉鎖複合体は組込まれるヌクレオチド類似体を含むが、PPiを遊離させることができない。この場合、閉鎖複合体は、転位前の立体構造で安定化する。場合により、ポリメラーゼを化学的に架橋することによって転位前の立体構造を安定化する。場合により、外部手段によって閉鎖複合体を安定化してもよい。いくつかの例では、小分子のアロステリック結合によって閉鎖複合体を安定化する場合がある。場合により、活性部位の近傍に高親和性で結合し、ポリメラーゼの転位を防止するホスホノギ酸を含むが必ずしもこれに限定されないピロリン酸類似体によって閉鎖複合体を安定化してもよい。
本明細書中で使用する場合、安定化した閉鎖複合体または安定化した三元複合体とは、閉構造におけるサム及びフィンガードメインの架橋、ポリメラーゼが開構造に戻ることを防止するアロステリック阻害剤の結合、転位前の工程でポリメラーゼを捕捉するピロリン酸類似体の結合、ポリメラーゼの活性部位に触媒金属イオンが存在しないこと、ならびに触媒金属イオンの代替としてニッケル、バリウム、スズ及びストロンチウムなどの金属イオンを添加することを含むが必ずしもこれらに限定されない1つの手段または手段の組合せによって、プライミングした鋳型核酸の重合開始部位(プライマーの3′末端)に捕捉したポリメラーゼを指す。このように、ヌクレオチドの組込み後であっても、ポリメラーゼを重合開始部位に捕捉し得る。したがって、化学工程前の構造、転位前の工程、転位後の工程、またはそのいずれかの中間工程において、ポリメラーゼを捕捉し得る。このようにして、後続の正しいヌクレオチドまたは塩基の十分な検査及び同定が可能になる。
本明細書中に記載するように、ポリメラーゼに基づく結合反応による配列決定方法は、一般的に、プライミングした鋳型核酸を提供し、プライミングした鋳型核酸にポリメラーゼ及び1種類以上のヌクレオチドを提供することを含み、そこにおいてヌクレオチドは、プライミングした鋳型核酸の後続塩基に相補的であるかまたは相補的でない場合があり、方法はさらに、プライミングした鋳型核酸へのヌクレオチドの化学的組込みが、化学工程前の立体構造において阻害されるか、もしくは著しく阻害される条件下で、または1つ以上の相補的なヌクレオチドの組込みがプライマーの3′末端で起こる条件下で、ポリメラーゼとプライミングした鋳型核酸との相互作用を検査することを含む。場合により、好ましくは安定化剤を使用して、ヌクレオチド組込みの前に化学工程前の立体構造を安定化させ、検査工程後に個別組込み工程が続き、単一のヌクレオチドをプライマーの3′末端に組込む。場合により、単一のヌクレオチドの組込みが起こる場合、転位前の立体構造を安定化させて、検査を容易にし、及び/またはその後のヌクレオチド組込みを防止してもよい。
説明を容易にするために、単一の鋳型核酸分子を記載する場合があるが、本明細書中で提供する配列決定方法は、複数の鋳型核酸を容易に包含し、複数の核酸とは、単一の核酸をクローニング増幅したコピー、または異種核酸であってもよく、これには、組合せ、例えばクローニング増幅した異種核酸の集団なども含まれる。
核酸を配列決定するために提供する方法は、検査工程を含む。検査工程は、1つ以上のヌクレオチドを含有する反応混合物中のプライミングした鋳型核酸の重合開始部位にポリメラーゼを結合させ、相互作用をモニタリングすることを含む。場合により、封入したヌクレオチドのポリメラーゼによる組込みを減弱または阻害する条件下で、ポリメラーゼでプライミングした鋳型核酸複合体内にヌクレオチドを隔離させ、閉鎖複合体を形成する。場合により、安定化剤を添加し、後続の正しいヌクレオチドの存在下で三元複合体を安定化させる。この閉鎖複合体は、安定化、またはポリメラーゼを捕捉した化学工程前の立体構造である。閉鎖複合体は、封入したヌクレオチドの組込みを可能にするが、その後のヌクレオチドの組込みを可能としない。この閉鎖複合体は、安定化または捕捉した転位前の立体構造にある。場合により、限定するものではないが、ポリメラーゼドメインの架橋、ポリメラーゼの核酸への架橋、小分子によるアロステリック阻害、不拮抗阻害剤、競合阻害剤、非競合阻害剤、及び変性などの手段の1つまたは組合せによって、ポリメラーゼを閉鎖複合体の重合部位で捕捉し;そこにおいて、捕捉した閉鎖複合体の形成により、核酸鋳型上の後続塩基の同一性に関する情報が得られる。
後続の正しい塩基またはヌクレオチドの同一性は、三元複合体または閉鎖複合体の存在、形成、及び/または解離をモニタリングすることによって判定することができる。後続塩基の同一性は、プライマーの3′末端への後続の正しいヌクレオチドの化学的組込みを伴わずに判定し得る。場合により、添加したヌクレオチドの存在下でプライミングした核酸鋳型に対するポリメラーゼの親和性をモニタリングすることによって、後続塩基の同一性を判定する。場合により、後続の正しいヌクレオチドの存在下でプライミングした鋳型核酸に対するポリメラーゼの親和性を用いて、鋳型核酸上の後続の正しい塩基を判定してもよい。場合により、誤ったヌクレオチドの存在下でプライミングした核酸鋳型に対するポリメラーゼの親和性を用いて、鋳型核酸上の後続の正しい塩基を判定してもよい。
検査工程は、核酸の後続塩基の同一性の判定を可能にする一方で、ヌクレオチドの化学的組込みを防止する反応条件を提供することによって部分的に制御し得る。そのような反応条件は、検査反応条件と呼ばれ得る。場合により、検査条件の下で三元複合体または閉鎖複合体を形成する。場合により、検査条件下で、または化学工程前の立体構造で、安定化した三元複合体または閉鎖複合体を形成する。場合により、安定化した閉鎖複合体は転位前の立体構造にあり、そこにおいては、封入したヌクレオチドが組込まれているが、閉鎖複合体は、その後のヌクレオチドを組込むことができない。場合により、検査条件は、異なるヌクレオチドの存在下でプライミングした鋳型核酸に対するポリメラーゼの親和性の差を強調する。場合により、検査条件は、異なるヌクレオチドの存在下でプライミングした鋳型核酸に対するポリメラーゼの示差的な親和性を引き起こす。例として、異なるヌクレオチドの存在下でプライミングした鋳型核酸に対するポリメラーゼの示差的な親和性を引き起こす検査条件に、高塩濃度及びグルタミン酸カリウムが挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。プライミングした鋳型核酸に対するポリメラーゼの親和性を変化させるために用い得るグルタミン酸カリウムの濃度として、10mM〜1.6Mのグルタミン酸カリウムまたは10mM〜1.6Mの間の任意の量が挙げられる。場合により、高塩濃度とは、50〜1500mMの塩濃度を指す。
検査は、一般的には、鋳型核酸とのポリメラーゼ相互作用を検出することを含む。検出には、光学的、電気的、熱的、音響的、化学的及び機械的手段が含まれ得る。場合により、検査を洗浄工程の後に行い、洗浄工程は、未結合の試薬、例えば、未結合のポリメラーゼ及び/またはヌクレオチドなどを観測領域から除去する。場合により、洗浄工程中に検査を行い、それによって、ポリメラーゼ−核酸またはポリメラーゼ−核酸−ヌクレオチド複合体の解離反応速度をもとに後続塩基の同一性を判定してもよい。場合により、検査反応混合物または第一の反応混合物の添加中に検査を行い、それによって核酸に対するポリメラーゼの会合反応速度をもとに、核酸上の後続塩基の同一性を判定してもよい。場合により、検査は、ポリメラーゼと核酸の二元複合体から閉鎖複合体を区別することを含む。場合により、検査は、測定した親和性が平衡親和性である平衡条件下で行う。異なるかまたは同様の検査試薬を含む複数の検査工程を順次実行して、後続の鋳型塩基の同一性を確認してもよい。複数の鋳型核酸を1つの配列決定反応において同時に配列決定していて、異なる核酸が異なる検査試薬に異なる反応を示す場合には、複数の検査工程を利用してもよい。場合により、複数の検査工程は、後続塩基決定の精度を向上させる場合がある。
本明細書中に記載する配列決定方法は、場合により、組込み工程を含む。組込み工程は、鋳型核酸に結合したプライマーの3′末端に1つ以上のヌクレオチドを化学的に組込む工程を含む。場合により、単一のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドをプライマーの3′末端に組込む。場合により、同じ種類の複数のヌクレオチドをプライマーの3′末端に組込む。場合により、異なる種類の複数のヌクレオチドをプライマーの3′末端に組込む。ポリメラーゼは、ヌクレオチド組込み後に重合開始部位から解離することができるか、または組込み後に重合開始部位に保持することができる。したがって、例えば、転位前の状態、転位後の状態、その中間状態、または二元複合体状態における組込み反応の後、ポリメラーゼをプライマーの3′末端に捕捉し得る。組込み反応は、組込み反応混合物によって可能になり得る。場合により、組込み反応混合物は、検査反応とは異なるヌクレオチド組成を含む。例えば、検査反応は1つの種類のヌクレオチドを含み、組込み反応は別の種類のヌクレオチドを含む。別の例として、検査反応は1種類のヌクレオチドを含み、組込み反応は4種類のヌクレオチドを含み、またはその逆である。場合により、検査反応混合物は、組込み反応混合物によって変更または置換される。場合により、組込み反応混合物は、触媒金属イオン、塩化カリウム、またはそれらの組合せを含む。
反応混合物中に存在するが、閉鎖複合体内に隔離されていないヌクレオチドは、複数のヌクレオチド挿入を引き起こし得る。このように、化学的組込み工程の前に洗浄工程を用いて、確実に、捕捉した閉鎖複合体内に隔離したヌクレオチドのみを組込み工程の間に組込むことができる。場合により、遊離ヌクレオチドは、ホスファターゼなどの酵素によって除去し得る。捕捉したポリメラーゼ複合体は、ポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸及び後続の正しいヌクレオチドを含む閉鎖複合体、安定化した閉鎖複合体または三元複合体であってもよい。
場合により、検査工程の閉鎖複合体内に封入したヌクレオチドを、組込み工程の間に鋳型核酸プライマーの3′末端に組込む。例えば、検査工程の安定化した閉鎖複合体は、組込まれる後続の正しいヌクレオチドを含む。場合により、検査工程の閉鎖複合体内に封入したヌクレオチドは、検査工程中に組込まれるが、閉鎖複合体はその後のヌクレオチドの組込みを許容せず;この場合、閉鎖複合体は組込み工程の間に遊離し、その後のヌクレオチドの組込みが可能になる。
場合により、組込み工程は、検査工程からのヌクレオチドを置換し(例えば、そのヌクレオチドが誤ったヌクレオチドである)、別のヌクレオチドを鋳型核酸プライマーの3′末端に組込む工程を含む。組込み工程は、閉鎖複合体内からヌクレオチドを遊離させ(例えば、ヌクレオチドが修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体である)、鋳型核酸プライマーの3′末端に異なる種類のヌクレオチドを組込むことを含み得る。場合により、遊離したヌクレオチドを除去し、後続の正しいヌクレオチドを含む組込み反応混合物に置換する。
組込みに適した反応条件は、検査反応混合物を組込み反応混合物で置換することを含み得る。場合により、検査反応混合物中に存在するヌクレオチドを、組込み反応混合物中の1つ以上のヌクレオチドで置換する。場合により、検査工程の間に存在するポリメラーゼを、組込み工程の間に置換する。場合により、検査工程の間に存在するポリメラーゼを、組込み工程中に修飾する。場合により、検査工程の間に存在する1つ以上のヌクレオチドを、組込み工程の間に修飾する。検査工程の間に存在する反応混合物及び/または反応条件を、組込み工程中の任意の手段によって変更してもよい。これらの手段として、試薬の除去、試薬のキレート化、試薬の希釈、試薬の添加、導電率またはpHなどの反応条件の変更、及びそれらの任意の組合せが挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。ポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸、及びヌクレオチドの任意の組合せを含む反応混合物中の試薬は、検査工程及び/または組込み工程の間に修飾してもよい。
場合により、組込み工程は、競合阻害剤を含み、競合阻害剤は、複数の組込みの発生を低減する。一実施形態では、競合阻害剤は、組込み不可能なヌクレオチドである。一実施形態では、競合阻害剤はアミノグリコシドである。競合阻害剤は、活性部位のヌクレオチドまたは触媒金属イオンのいずれかを置換することができ、その結果、第一の組込み後に、競合阻害剤が活性部位を占め、第二の組込みを妨げる。いくつかの実施形態では、組込み可能なヌクレオチドと競合阻害剤の両方を組込み工程に導入し、組込み可能なヌクレオチドと阻害剤との比を調節して、プライマーの3′末端に確実に単一のヌクレオチドを組込むことができる。
提供する配列決定方法では、組込み工程の前に後続塩基を同定することにより、組込み工程における標識試薬及び/またはモニタリングが必要ではなくなる。したがって、提供する方法において、ヌクレオチドは、場合により、結合させる検出可能なタグまたは標識を有さない。場合により、ヌクレオチドは検出可能な標識を有するが、標識は本方法では検出されない。場合により、正しいヌクレオチドは検出可能な標識を有さず;しかしながら、後続塩基に対する誤った、または相補的ではないヌクレオチドは、検出可能な標識を有する。
配列決定反応の検査工程は、組込み工程の前に1、2、3、4回またはそれ以上繰り返してもよい。検査及び組込み工程は、鋳型核酸の所望の配列が得られるまで繰り返してもよい。
閉鎖複合体または安定化した閉鎖複合体の形成を用いて、配列決定の1サイクルにつき、確実に1つのヌクレオチドのみを鋳型核酸プライマーに添加するようにすることができ、そこにおいて、添加したヌクレオチドを閉鎖複合体内で配列決定する。配列決定1サイクルにつき、単一のヌクレオチドになるように制御して組込むことにより、ホモポリマーリピートを含む核酸領域の配列決定精度が高まる。
場合により、提供する方法において、1つ以上の検査及び/または組込み工程の後に、ヌクレオチドのサブセットを添加してフェーズを減少またはリセットする。したがって、方法は、ヌクレオチドのサブセット及び核酸分子の鋳型鎖反対鎖にヌクレオチドを組込むための酵素を含む組成物に、配列決定する鋳型核酸分子を接触させる1つ以上の工程を含み得る。接触は、核酸分子におけるフェージングを減少させる条件下で行うことができる。場合により、鋳型核酸分子を接触させる工程は、組込み工程の後及び/または検査工程の後に行う。場合により、接触は、配列決定の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、もしくは100ラウンドまたはそれ以上、すなわち、検査及び組込みのラウンドの後に行う。場合により、30〜60ラウンドの配列決定の後に接触させる。場合により、接触は、各ラウンドの配列決定の後、すなわち1回の検査及び組込み工程の後に行う。場合により、複数回の接触工程を、各ラウンドの配列決定後に行い、各接触工程はヌクレオチドの異なるサブセットを含む場合がある。場合により、本方法は、接触後の1つ以上の洗浄工程をさらに含む。場合により、サブセットは2または3ヌクレオチドを含む。場合により、サブセットは3つのヌクレオチドを含む。場合により、ヌクレオチドのサブセットは、dATP、dGTP、dCTP、dTTPまたはその誘導体のうちの3つから選択される。場合により、3つのヌクレオチドは、アデノシン、シトシン、及びグアニンを含む。場合により、3つのヌクレオチドは、アデノシン、シトシン、及びチミンを含む。場合により、3つのヌクレオチドは、シトシン、グアニン及びチミンを含む。場合により、3つのヌクレオチドは、アデノシン、グアニン及びチミンを含む。場合により、接触の各ラウンドは、ヌクレオチドの同じサブセットまたは異なるサブセットを含む。場合により、核酸鋳型の配列決定をモニタリングし、フェージングの検出時にヌクレオチドのサブセットとの接触を行う。例えば、米国特許第8,236,532号を参照されたく、この文献はその全体を参照として本明細書に援用する。
場合により、配列決定反応は複数の鋳型核酸、ポリメラーゼ及び/またはヌクレオチドを含み、そこにおいて複数の閉鎖複合体をモニタリングする。クローニング増幅した鋳型核酸を共に配列決定してもよく、そこにおいてクローンは近接して局在化し、配列決定時のモニタリングを向上させることができる。場合により、閉鎖複合体の形成は、クローニング増幅した複数の鋳型核酸における塩基伸長の同時性を保証する。塩基伸長の同時性によって、1回の配列決定サイクルにつき1塩基の付加が可能になる。
提供する方法は、核酸重合反応の任意の成分が表面に局在するプラットフォーム上で行うことができる。場合により、鋳型核酸を、平面基板、ナノホールアレイ、微粒子、またはナノ粒子に付着させる。場合により、すべての反応成分を、反応混合物中に自由に懸濁させる。
提供する方法は、検査工程中に閉鎖複合体の形成及び安定化を調節する反応条件下で行う。検査工程の反応条件は、ヌクレオチドを封入した閉鎖複合体の形成及び/または安定化を支持し、二元複合体の形成及び/または安定化を妨げる。ポリメラーゼと鋳型核酸との間の二元相互作用は、イオン強度、pH、温度、もしくはそれらの任意の組合せなどの配列決定反応パラメータを調節することによって、または二元複合体不安定化剤を反応物に添加することによって操作し得る。場合により、高塩濃度(例えば、50〜1500mM)及び/またはpH変化を利用して、二元複合体を不安定化する。場合により、ヌクレオチドの存在にかかわらず、配列決定反応の検査または組込み段階の間に、ポリメラーゼと鋳型核酸との間に二元複合体を形成してもよい。場合により、反応条件は、三元閉鎖複合体の安定化及び二元複合体の不安定化を選好する。一例として、検査反応混合物のpHを、4.0〜10.0に調節して、三元閉鎖複合体の安定化及び二元複合体の不安定化を促進することができる。場合により、検査反応混合物のpHは4.0〜6.0である。場合により、検査反応混合物のpHは6.0〜10.0である。
本明細書中に開示する配列決定方法は、後続塩基の同一性を明らかにする様式で、ポリメラーゼと、ヌクレオチド及び鋳型核酸との相互作用を促進し、その一方でヌクレオチドの化学的添加を制御する。場合により、本方法は、検出可能に標識したヌクレオチドが存在しないか、または標識したヌクレオチドが存在するがその標識が検出されない条件下で行う。
検査反応混合物の条件下で、プライミングした鋳型核酸に結合したポリメラーゼ及びポリメラーゼ鋳型核酸複合体内に封入したヌクレオチドを含む閉鎖複合体の形成及び/または安定化のための方法を本明細書において提供する。検査反応条件は、ヌクレオチド組込みを阻害または減弱し得る。場合により、封入したヌクレオチドの組込みを阻害し、複合体を化学工程前の立体構造または三元複合体に安定化または捕捉する。場合により、封入したヌクレオチドを組込み、その後のヌクレオチド組込みを阻害する。この場合、複合体を、転位前の立体構造に安定化または捕捉する。本明細書で提供する配列決定反応のために、検査工程中に閉鎖複合体を安定化し、制御下でのヌクレオチド組込みを可能にする。場合により、安定化した閉鎖複合体は、検査工程中に、封入したヌクレオチドの組込みを、一時的に(例えば、複合体を検査してヌクレオチドを組込むために)、または永続的に(例えば、検査のみのために)減弱させる複合体である。場合により、安定化した閉鎖複合体は、封入したヌクレオチドの組込みを可能にするが、その後のヌクレオチドの組込みを可能にしない。場合により、鋳型核酸中の後続塩基の同定を目的として、ヌクレオチドの存在下でポリメラーゼと鋳型核酸との任意の相互作用をモニタリングするために、閉鎖複合体を安定化させる。
場合により、封入したヌクレオチドは、閉鎖複合体中の鋳型核酸への結合が著しく低いか、または結合できない。場合により、封入したヌクレオチドは、後続塩基において鋳型核酸と塩基対形成する。場合により、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、プライマー、鋳型核酸、またはそれらの任意の組合せの同一性は、閉鎖複合体における封入ヌクレオチドと鋳型核酸との間の相互作用に影響を及ぼす。
場合により、封入したヌクレオチドは、閉鎖複合体のポリメラーゼに結合する。場合により、封入したヌクレオチドは、閉鎖複合体のポリメラーゼと弱く会合している。場合により、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、プライマー、鋳型核酸、またはそれらの任意の組合せの同一性は、閉鎖複合体における封入したヌクレオチドとポリメラーゼとの間の相互作用に影響を及ぼす。所与のポリメラーゼについて、各ヌクレオチドは、別のヌクレオチドよりもポリメラーゼに対して異なる親和性を有する。場合により、この親和性は、部分的に鋳型核酸及び/またはプライマーに依存する。
閉鎖複合体は一時的に形成させてもよい。場合により、封入したヌクレオチドは後続の正しいヌクレオチドである。いくつかの方法では、後続の正しいヌクレオチドの存在は、部分的に、閉鎖複合体の安定化に寄与する。場合により、封入したヌクレオチドは後続の正しいヌクレオチドではない。
場合により、検査反応条件は、複数のプライミングした鋳型核酸、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、またはそれらの任意の組合せを含む。場合により、複数のヌクレオチドは、1、2、3、4種、またはそれ以上の異なる種類のヌクレオチド、例えばdATP、dTTP、dGTP、及びdCTPを含む。場合により、複数の鋳型核酸は鋳型核酸のクローン集団である。
検査反応混合物は、他の分子を含むことができ、これには酵素が含まれるが、必ずしもこれに限定するものではない。場合により、検査反応混合物は、核酸重合反応において一般に存在する任意の試薬または生体分子を含む。反応成分として、塩、緩衝液、低分子、界面活性剤、密集剤、金属、及びイオンが挙げられ得るが、必ずしもこれらに限定するものではない。場合により、反応混合物の特性は、例えば、電気的に、磁気的に、及び/または振動を用いて操作してもよい。
場合により、閉鎖複合体は、本明細書で提供する配列決定方法の検査工程の間に一時的に形成する。場合により、閉鎖複合体を検査工程中に安定化させる。安定化した閉鎖複合体は、検査工程中の重合反応におけるヌクレオチドの組込みを可能としない場合があり、これは、封入ヌクレオチドの組込み及び/または封入したヌクレオチドのその後のヌクレオチドの組込みを含む。閉鎖複合体の安定性を調節し得る反応条件として、触媒金属イオンの利用可能性、最適以下または阻害性金属イオン、イオン強度、pH、温度、ポリメラーゼ阻害剤、架橋試薬、及びそれらの任意の組合せが挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。閉鎖複合体の安定性を調節し得る反応試薬として、組込み不可能なヌクレオチド、誤ったヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、改変型ポリメラーゼ、非伸長性重合開始部位を有する鋳型核酸、及びそれらの任意の組合せが挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。
場合により、閉鎖複合体をその捕捉または安定化した立体構造から遊離させ、これによって、プライマー−鋳型核酸二本鎖中のプライマーの3′末端へのヌクレオチド組込みを可能にしてもよい。閉鎖複合体は、反応条件の組成を調節することによって不安定化及び/または遊離し得る。さらに、閉鎖複合体は、電気的、磁気的、及び/または機械的手段によって不安定化し得る。機械的手段として、例えば、超音波攪拌を用いる機械的攪拌が挙げられる。機械的振動は、閉鎖複合体を不安定化し、ポリメラーゼのDNAへの結合を抑制する。したがって、検査反応混合物を組込み混合物で置換する洗浄工程ではなく、機械的攪拌を用いて鋳型核酸からポリメラーゼを除去し、連続組込み工程でサイクル化し、工程ごとに単一のヌクレオチドを添加できるようにしてもよい。
閉鎖複合体の安定化または閉鎖複合体の遊離の反応条件の任意の組合せ及び/または方法を組み合わせてもよい。例えば、閉鎖複合体を安定化するポリメラーゼ阻害剤は、閉鎖複合体を遊離させるように機能する触媒イオンとともに、検査反応において存在し得る。上記の例では、ポリメラーゼ阻害剤の特性及び濃度、触媒金属イオンの濃度、他の試薬及び/または反応混合物の条件、ならびにそれらの任意の組合せに応じて、閉鎖複合体を安定化または遊離させ得る。
閉鎖複合体は、プライミングした鋳型核酸中のプライマーの3′末端へのヌクレオチドの共有結合を減弱させる反応条件下で安定化することができる。場合により、閉鎖複合体は、化学工程前の立体構造または三元複合体の状態にある。場合により、閉鎖複合体は、転位前の立体構造の状態にある。この閉鎖複合体の形成は、反応混合物中の閉鎖複合体の遊離及び/またはプライマーへのヌクレオチドの化学的組込みを可能にする触媒金属イオンの利用可能性を調節することによって開始及び/または安定化することができる。金属イオンの例として、マグネシウム、マンガン、コバルト、及びバリウムが挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。触媒性イオンは、任意の配合物、例えば、MgCl、Mg(C、及びMnClなどの塩であってもよい。
触媒金属イオンの選択及び/または濃度は、配列決定反応におけるポリメラーゼ及び/またはヌクレオチドに基づいてもよい。例えば、HIV逆転写酵素は、ヌクレオチドを組込むためにマグネシウムを利用する(N Kaushik 1996 Biochemistry 35:11536−11546、及びH P Patel 1995 Biochemistry 34:5351−5363、これらの全体を参照として本明細書に援用する)。閉鎖複合体形成の速度は、マグネシウムを用いる場合とマンガンを用いる場合とでは、ポリメラーゼ及びヌクレオチドの同一性に応じて異なる可能性がある。したがって、閉鎖複合体の安定性は、触媒金属イオン、ポリメラーゼ、及び/またはヌクレオチドの同一性に応じて異なる可能性がある。さらに、閉鎖複合体安定化に必要な触媒イオンの濃度は、触媒金属イオン、ポリメラーゼ及び/またはヌクレオチドの同一性に応じて様々に異なる場合があり、本明細書で提供する指針を用いて容易に決定することができる。例えば、ヌクレオチドの組込みは、1つの金属イオンの高い触媒イオン濃度で生じ得るが、同じ金属イオンの低濃度では生じないか、またはその逆であり得る。したがって、金属イオンの同一性、金属イオン濃度、ポリメラーゼの同一性、及び/またはヌクレオチドの同一性を改変することにより、制御された検査反応条件が可能になる。
閉鎖複合体の遊離及び/または化学的組込みが起こらないように、配列決定反応の検査工程中に触媒金属イオンを隔離、除去、還元、除外、及び/またはキレート化することによって、閉鎖複合体を形成及び/または安定化してもよい。キレート化には、EDTA及び/またはEGTAを使用することを含む、ヌクレオチド組込みに触媒金属イオンを利用できないようにする任意の手順が含まれる。還元には、反応混合物中の触媒金属イオンの濃度を希釈することが含まれる。反応混合物は、閉鎖複合体形成を可能にするが、ヌクレオチド組込みを阻害する非触媒イオンを含む溶液で希釈または置換することができる。非触媒イオンとして、カルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレン、ロジウム、及びストロンチウムが挙げられる。場合により、検査反応にNi2+を提供し、閉鎖複合体形成を促進する。場合により、検査反応にSr2+を提供し、閉鎖複合体形成を促進する。場合により、非触媒金属イオンと触媒金属イオンの両方を反応混合物中に存在させ、一方のイオンを他方よりも高い有効濃度で存在させる。提供する方法では、コバルトなどの非触媒イオンが高濃度で触媒性になる、すなわちヌクレオチド組込みを促進することができる。したがって、場合により、低濃度の非触媒金属イオンを用いて三元複合体形成を促進し、より高い濃度の非触媒金属イオンを用いて組込みを促進する。
検査条件下で非触媒イオンを反応混合物に添加してもよい。本反応にはあらかじめヌクレオチドを含ませておいてもよい。場合により、非触媒イオンを1つ以上のヌクレオチドと複合体化させ、複合体化したヌクレオチドを反応混合物に添加する。非触媒イオンは、高温(約80℃)でヌクレオチドを非触媒イオンと混合することによってヌクレオチドと複合体化することができる。例えば、クロムヌクレオチド複合体を混合物に添加して、閉鎖複合体形成及び安定化を促進してもよい。場合により、クロムヌクレオチド複合体は、クロム単座、二座、または三座複合体である。場合により、クロムヌクレオチド複合体は、α単座、またはβ−γ−二座ヌクレオチドである。
場合により、Sr2+を含む反応条件下で、ポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸、及びヌクレオチドの間で閉鎖複合体を形成し、そこにおいてSr2+は閉鎖複合体の形成を誘導する。Sr2+が存在することにより、誤ったヌクレオチドを含む複合体の形成よりも、後続の正しいヌクレオチドを含む閉鎖複合体が有利に形成し得る。Sr2+は、約0.01mM〜約30mMの濃度で存在し得る。場合により、Sr2+は10mM SrClとして存在する。検査条件下で閉鎖複合体の形成をモニタリングし、閉鎖複合体の鋳型核酸中の後続塩基を同定する。Sr2+の存在下で、各dNTP(例えば、dATP、dTTP、dCTP、dGTP)に対するポリメラーゼ(例えば、E.coli DNAポリメラーゼI、BstのKlenow断片)の親和性は異なる可能性がある。したがって、検査は、dNTPに対するポリメラーゼ−鋳型核酸の結合親和性を測定することを含むことができ;そこにおいて結合親和性は、鋳型核酸中の後続塩基を指し示す。場合により、結合相互作用は、ポリメラーゼとプライミングした鋳型核酸との間の二元相互作用を不安定化させる条件下で行ってもよい。場合により、結合相互作用は、ポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸、及び後続の正しいヌクレオチドの間の三元相互作用を安定化させる条件下で行ってもよい。検査後、洗浄工程により未結合のヌクレオチドを除去し、Mg2+を反応に添加し、ヌクレオチドの組込み及びピロリン酸(PPi)の遊離を誘導する。場合により、洗浄工程はSr2+を含み、三元複合体の安定性を維持し、三元複合体の解離を防止する。反応は、所望の配列読取り長が得られるまで繰り返してもよい。
場合により、Ni2+を含む反応条件下で、ポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸、及びヌクレオチドの間で閉鎖複合体を形成し、そこにおいてNi2+は閉鎖複合体の形成を誘導する。Ni2+が存在することにより、誤ったヌクレオチドを含む複合体の形成よりも、後続の正しいヌクレオチドを含む閉鎖複合体が有利に形成し得る。Ni2+は、約0.01mM〜約30mMの濃度で存在し得る。場合により、Ni2+は10mM NiClとして存在する。検査条件下で閉鎖複合体の形成をモニタリングし、閉鎖複合体の鋳型核酸中の後続塩基を同定する。Sr2+の存在下で、各dNTP(例えば、dATP、dTTP、dCTP、dGTP)に対するポリメラーゼ(例えば、E.coli DNAポリメラーゼI、BstのKlenow断片)の親和性は異なる可能性がある。したがって、検査は、dNTPに対するポリメラーゼ−鋳型核酸の結合親和性を測定することを含むことができ;そこにおいて結合親和性は、鋳型核酸中の後続塩基を指し示す。場合により、結合相互作用は、ポリメラーゼとプライミングした鋳型核酸との間の二元相互作用を不安定化させる条件下で行ってもよい。場合により、結合相互作用は、ポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸、及び後続の正しいヌクレオチドの間の三元相互作用を安定化させる条件下で行ってもよい。検査後、洗浄により未結合のヌクレオチド及びポリメラーゼを除去し、Mg2+を反応に添加し、ヌクレオチドの組込み及びピロリン酸の遊離を誘導する。場合により、洗浄用緩衝液はNi2+を含み、三元複合体の安定性を維持し、三元複合体の解離を防止する。反応は、所望の配列読取り長が得られるまで繰り返してもよい。
場合により、非触媒濃度のCo2+を含む反応条件下で、ポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸、及びヌクレオチドの間で閉鎖複合体を形成し、そこにおいてCo2+は閉鎖複合体の形成を誘導する。非触媒濃度のCo2+が存在することにより、誤ったヌクレオチドを含む複合体の形成よりも、後続の正しいヌクレオチドを含む閉鎖複合体が有利に形成し得る。Co2+は、約0.01mM〜約0.5mMの濃度で存在し得る。場合により、Co2+は0.5mM CoClとして存在する。検査条件下で閉鎖複合体の形成をモニタリングし、閉鎖複合体の鋳型核酸中の後続塩基を同定する。Co2+の存在下で、各dNTP(例えば、dATP、dTTP、dCTP、dGTP)に対するポリメラーゼ(例えば、E.coli DNAポリメラーゼI、BstのKlenow断片)の親和性は異なる可能性がある。したがって、検査は、dNTPに対するポリメラーゼ−鋳型核酸の結合親和性を測定することを含むことができ;そこにおいて結合親和性は、鋳型核酸中の後続塩基を指し示す。場合により、結合相互作用は、ポリメラーゼとプライミングした鋳型核酸との間の二元相互作用を不安定化させる条件下で行ってもよい。場合により、結合相互作用は、ポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸、及び後続の正しいヌクレオチドの間の三元相互作用を安定化させる条件下で行ってもよい。検査後、洗浄により未結合のヌクレオチド及びポリメラーゼを除去し、触媒濃度のCo2+を反応に添加し、ヌクレオチドの組込み及びピロリン酸の遊離を誘導する。場合により、洗浄用緩衝液は、非触媒量のCo2+を含み、三元複合体の安定性を維持し、三元複合体の解離を防止する。反応は、所望の配列読取り長が得られるまで繰り返してもよい。
場合により、触媒金属イオンは閉鎖複合体の形成を促進する場合があり、そこではその後のヌクレオチドの組込み及び閉鎖複合体の遊離が生じない。場合により、反応混合物中の0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10μMのMg2+濃度は、ポリメラーゼの構造変化を誘導して閉鎖複合体を形成することができ、そこではその後のヌクレオチドの組込み、PPi及び閉鎖複合体の遊離は生じない。場合により、Mg2+濃度は、約0.5μM〜約10μM、約0.5μM〜約5μM、約0.5μM〜約4μM、約0.5μM〜約3μM、約μM〜約5μM、約1μM〜約4μM、及び約1μM〜約3μMである。
場合により、配列決定反応においてヌクレオチドの組込みを可能にするために必要な触媒金属イオン濃度は、約.001mM〜約10mM、約0.01mM〜約5mM、約0.01mM〜約3mM、約0.01〜約2mM、約0.01mM〜約1mM、約0.05〜約10mM、約0.05mM〜約5mM、約0.05mM〜約3mM、約0.05mM〜約2mM、または 約0.05mM〜約1mMである。場合により、触媒金属イオン濃度は5〜50mMである。場合により、触媒金属イオン濃度は、5〜15mMまたは約10mMである。
以下の任意の反応工程の前、最中または後のいずれかの段階で、反応混合物に非触媒イオンを添加してもよい:プライミングした鋳型核酸の提供、ポリメラーゼの提供、二元複合体の形成、ヌクレオチドの提供、化学工程前の閉鎖複合体の形成、ヌクレオチドの組込み、転位前の閉鎖複合体の形成、及び転位後の立体構造の形成。非触媒イオンは、洗浄工程中に反応混合物に添加してもよい。非触媒イオンは、反応混合物中の反応を介して存在してもよい。例えば、非触媒金属イオンを希釈する濃度で反応混合物に触媒イオンを添加し、ヌクレオチドの組込みを可能にする。
ヌクレオチドの組込みを調節する触媒及び非触媒イオンの能力は、pH、イオン強度、キレート剤、化学的架橋、改変型ポリメラーゼ、組込み不可能なヌクレオチド、機械的または振動エネルギー、及び電場などを含むが必ずしもこれらに限定されない反応混合物中の条件に依存する場合がある。
場合により、配列決定反応においてヌクレオチドの組込みを伴わない閉鎖複合体の形成を可能にするのに必要な非触媒金属イオン濃度は、約0.1mM〜約50mM、約0.1mM〜約40mM、約0.1mM〜約30mM、約0.1mM〜約20mM、約0.1mM〜約10mM、約0.1mM〜約5mM、約0.1〜約1mM、約1mM〜約50mM、約1mM〜約40mM、約1mM〜約30mM、約1mM〜約20mM、約1mM〜約10mM、約1mM〜約5mM、約2mM〜約30mM、約2mM〜約20mM、約2mM〜約10mM、またはこれらの範囲内の任意の濃度である。
検査反応混合物にポリメラーゼ阻害剤を添加することによって、閉鎖複合体を形成及び/または安定化してもよい。阻害剤分子であるホスホノアセテート(ホスホノ酢酸)及びホスホノホルメート(ホスホノギ酸、一般名Foscarnet)、スラミン、アミノグリコシド、INDOPY−1及びタゲチトキシンは、ポリメラーゼ活性の不拮抗または非競合阻害剤の非限定的な例である。酵素の活性部位近くに阻害剤分子を結合させることにより、ヌクレオチドの組込みサイクルの転位前または転位後の工程のいずれかにおいて、ポリメラーゼを捕捉し、ヌクレオチドの組込みの前または後にポリメラーゼをその閉鎖複合体の立体構造で安定化させ、阻害剤分子が除去、希釈またはキレート化によって反応混合物中で利用できなくなるまで、ポリメラーゼを鋳型核酸に強制的に結合させる。
したがって、鋳型核酸分子の配列決定方法を提供し、方法は、プライマーでプライミングした鋳型核酸分子を提供し;プライミングした鋳型核酸分子を、ポリメラーゼ、ポリメラーゼ阻害剤及び少なくとも1つの非標識ヌクレオチド分子を含む第一の反応混合物と接触させ;非標識ヌクレオチド分子の存在下で、プライミングした鋳型核酸分子のプライマーへのヌクレオチドの組込みを伴わずに、ポリメラーゼとプライミングした鋳型核酸分子との相互作用をモニタリングし;モニタリングした相互作用によって、プライミングした鋳型核酸分子の後続塩基に相補的なヌクレオチドを同定することを含む検査工程を含む。ポリメラーゼ阻害剤は、プライマー鋳型核酸のプライマーへの非標識ヌクレオチド分子の組込みを防止する。場合により、阻害剤は、非競合阻害剤、アロステリック阻害剤、または不拮抗アロステリック阻害剤である。場合により、ポリメラーゼ阻害剤は、ポリメラーゼ中の触媒イオン結合部位と競合する。
アミノグリコシドは、Klenowポリメラーゼ中のマグネシウム結合部位を置換することによってポリメラーゼ活性を非競合的に阻害する。ヌクレオチド結合に関する相互作用の非競合的性質は、ポリメラーゼが鋳型核酸及びヌクレオチドと相互作用することを可能にし、ヌクレオチドの組込みの触媒工程のみに影響を及ぼす。
1つの阻害剤分子は薬剤エファビレンツであり、これはHIV−1逆転写酵素に対する非競合阻害剤として作用する。この薬剤は、ポリメラーゼの閉鎖複合体配置に対して高い親和性及び低い解離速度を有し、その結果、一旦ポリメラーゼが後続の正しいヌクレオチドを組込むと、薬剤がポリメラーゼに結合し、ポリメラーゼがそのフィンガーを開けてその後のヌクレオチドを結合及び/または組込み可能にするのを防止する。反応が、二元複合体の形成よりも三元閉鎖複合体形成に有利な条件下で起こる場合、非特異的なポリメラーゼ−鋳型核酸相互作用を排除することができ、そこにおいてポリメラーゼが結合するということは、添加したヌクレオチドが後続の鋳型塩基に相補的であるということを表している。反応が検査反応条件下で起こる場合、後続の正しいヌクレオチドを含む鋳型核酸へのポリメラーゼの高親和性結合を用いて、ポリメラーゼと鋳型核酸とのランダムな非特異的相互作用と、三元閉鎖複合体とを区別することができる。場合により、ポリメラーゼの高親和性結合はヌクレオチドの組込みを表しており、別個の組込み工程を必要としない。一旦ポリメラーゼが結合し、結合を検出すると、過剰のヌクレオチド及びポリメラーゼを反応混合物から除去または隔離してもよい。検査反応条件下で後続ヌクレオチドを添加し、所望の読取り長の配列決定が完了するまで、すべてのヌクレオチドの種類について、またはランダムもしくは所定の順序で周期的にプロセスを繰り返してもよい。
任意のポリメラーゼを選択し、ハイスループットスクリーニング(HTS)プロセスを用いて、適切な非競合阻害剤を明らかにしてもよい。ポリメラーゼ阻害剤のHTSプロセスの多くの例が文献に見出され、そこにおいて特定のスクリーニング基準は非競合ポリメラーゼ阻害剤に関するものである。一般的な概念として、ポリメラーゼがその閉構造にある場合にのみ露出する結合部位を有するようにこれらの阻害剤をスクリーニングし、これらの阻害剤は高い親和性及び非常に低い解離速度で結合し、その結果、阻害剤の結合により、閉構造にあるポリメラーゼが安定化する。そのような阻害剤は、単一塩基の組込みを可能にし、その後、阻害剤の結合は、ポリメラーゼが広がって別のヌクレオチドを受け取るのを妨げる。配列決定反応において次の工程(検査または組込み)を開始する前に、ポリメラーゼを含む系全体を洗い流すことができる。
場合により、HIV−1逆転写酵素ポリメラーゼの阻害に有効であることが判明したポリメラーゼ阻害剤を用いて、閉鎖複合体を安定化させる。場合により、阻害剤は、HIV−2逆転写酵素の阻害剤である。HIV−1逆転写酵素阻害剤には、ヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NRTI)及び非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)が含まれる。NRTiとして、COMBIVIR(ラミブジン及びジドブジン;GlaxoSmithKline、ミドルセックス州、イギリス)、EMTRIVA(エムトリシタビン;Gilead Sciences、フォスターシティ、カリフォルニア州)、EPIVIR(ラミブジン;GlaxoSmithKline、ミドルセックス州、イギリス)、EPZICOM(硫酸アバカビル及びラミブジン;GlaxoSmithKline、ミドルセックス州、イギリス)、HIVID(ザルシタビン;Hoffmann−La Roche、ナットリー、ニュージャージー州)、RETROVIR(ジドブジン;GlaxoSmithKline、ミドルセックス州、イギリス)、TRIZIVIR(硫酸アバカビル、ジドブジン、ラミブジン;GlaxoSmithKline、ミドルセックス州、イギリス)、TRUVADA(エムトリシタビン/フマル酸テノホビルジソプロキシル、ギリアド・サイエンシズ、フォスターシティ、カリフォルニア州)、VIDEX EC(腸溶性ジダノシン;Bristol Myers−Squibb、ニューヨーク、ニューヨーク州)、VIDEX(ジダノシン;ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社、ニューヨーク、ニューヨーク州)、VIREAD(フマル酸テノホビルジソプロキシル、Gilead Sciences、フォスターシティ、カリフォルニア州)、ZERIT(スタブジン;Bristol Myers−Squibb、ニューヨーク、ニューヨーク州)、及びZIAGEN(硫酸アバカビル、GlaxoSmithKline、ミドルセックス州、イギリス)が挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。NNRTIの例として、VIRAMUNE(ネビラピン;Boehringer Ingelheim、ライン州、ドイツ)、SUSTIVA(エファビレンツ、Bristol Myers−Squibb、ニューヨーク、ニューヨーク州)、DELAVIRDINE(レスクリプター;Pfizer、ニューヨーク、ニューヨーク州)、及びINTELENCE(エトラビリン;Tibotec Therapeutics、イーストゲート・ビリッジ、アイルランド)が挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。場合により、NNRTiは、サブユニットp66上のRNAポリメラーゼ活性部位の近傍に位置するアロステリック中心に結合する非競合ポリメラーゼ阻害剤である。
場合により、HIV−1逆転写酵素ポリメラーゼ阻害剤は、(4/6−ハロゲン/MeO/EtO置換ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)チアゾリジン−4−オンである。表1は、19種の(4/6−ハロゲン/MeO/EtO置換ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)チアゾリジン−4−オン阻害剤のリストを含む(E.Pitta et. al.,Synthesis and HIV−1 RT inhibitory action of novel (4/6−substituted benzo[d]thiazol−2−yl)thiazolidin−4−ones. Divergence from the non−competitive inhibition mechanism,Journal of Enzyme Inhibition and Medicinal Chemistry,February 2013,Vol.28,No.1,Pages 113−122より適用)。(4/6−ハロゲン/MeO/EtO−置換ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)チアゾリジン−4−オン阻害剤は、以下の式を有する:

ポリメラーゼ阻害剤とポリメラーゼ変異体との任意の適切な組合せを、それらが閉鎖複合体を捕捉/安定化し、場合により、1サイクル内に複数のヌクレオチドを組込むことを防止する限り、使用してもよい。
提供する反応混合物は、100nM〜1mMのポリメラーゼ阻害剤または100nM〜1mMの任意の量の阻害剤を含むことができる。場合により、提供する反応混合物は、1〜200μMのポリメラーゼ阻害剤または任意の量を含み得る。場合により、反応混合物は30〜150μMのポリメラーゼ阻害剤を含む。場合により、反応混合物は30〜70μMのポリメラーゼ阻害剤を含む。場合により、反応混合物は、60〜140μMのポリメラーゼ阻害剤を含む。
場合により、ピロリン酸類似体または他の関連分子を使用することによって、閉鎖複合体のポリメラーゼがそのフィンガードメインを広げて、後続の鋳型核酸位置に転位することを妨げる。ピロリン酸類似体は、ポリメラーゼの活性ポケット内の三リン酸結合部位の近傍部位を占有することによってポリメラーゼを閉鎖複合体に構成する。ポリメラーゼが、開構造を呈し、後続の鋳型核酸位置に転位し、後続ヌクレオチドを受け入れるためには、ピロリン酸(PPi)の遊離が重要である。ホスカルネット(ホスホノホルメート)、ホスホノアセテートまたは他のピロリン酸類似体などの非競合阻害剤は、そのフィンガー閉構造でポリメラーゼを捕捉する。場合により、PPiアナログの結合は可逆的であり、ポリメラーゼ活性は、反応混合物中の阻害剤を洗い流し、希釈し、または隔離することによって完全に回復する。概して、ポリメラーゼ活性の任意の非競合阻害剤を配列決定反応中に使用してもよい。
場合により、閉鎖複合体を安定化するポリメラーゼ阻害剤と、マグネシウムまたはマンガンなどの触媒金属イオンの存在が挙げられるが必ずしもこれに限定するものではない閉鎖複合体を通常、遊離させる反応条件とを組み合わせる。場合により、閉鎖複合体は触媒金属イオンの存在下であっても安定化する。場合により、閉鎖複合体はポリメラーゼ阻害剤の存在下であっても遊離する。場合により、閉鎖複合体の安定化は、濃度、安定化試薬の同一性、遊離試薬の同一性、及びそれらの任意の組合せに部分的に依存する。場合により、ポリメラーゼ阻害剤を用いた閉鎖複合体の安定化と、触媒金属イオンの隔離、除去、還元、除外、及び/またはキレート化、閉鎖複合体中の改変型ポリメラーゼの存在;閉鎖複合体中の組込み不可能なヌクレオチド;ならびにそれらの任意の組合せを含むが必ずしもこれらに限定されない閉鎖複合体を同じく安定化するように機能するさらなる反応条件とを組み合わせる。
ポリメラーゼを改変して、本明細書に記載の配列決定方法の検査工程の間に閉鎖複合体形成及び/または安定化を促進してもよい。したがって、提供する方法において、改変型ポリメラーゼを使用してもよい。ポリメラーゼの改変として、閉鎖複合体内のメンバーを架橋剤によって架橋するか、またはポリメラーゼ内にジスルフィド結合を形成して、閉鎖複合体を維持することが挙げられる。
場合により、閉鎖複合体の形成時にシステイン同士が近接して少なくとも1つのジスルフィド結合を形成するようにシステインを配置し、閉構造においてポリメラーゼを捕捉する。場合により、ポリメラーゼのフィンガー及び親ドメインを、それぞれ1つ以上のシステインを含むように改変し、その結果、閉鎖複合体において、対向するフィンガー上のシステインが相互作用してジスルフィド結合を形成し、その閉構造においてポリメラーゼを捕捉する。ジスルフィド結合形成を誘導するためにシステインをポリメラーゼ上の適切な位置に導入することは、タンパク質工学の当業者に周知の方法を用いて達成することができる。還元剤、例えば、2−メルカプトエタノール(BME)、システイン−HCl、ジチオスレイトール(DTT)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、またはそれらの任意の組合せなどを用いて、ジスルフィド結合を還元し、ポリメラーゼを遊離させてもよい。場合により、システイン修飾ポリメラーゼに加えて、ヌクレオチドを、別個の検査段階において一度に1つずつ順次添加し、その場合、閉鎖複合体の形成及び/または安定化に有利なさらなる検査反応条件の必要性は任意である。場合により、1つの検査工程において、システイン修飾ポリメラーゼに加えて1、2、3、4種またはそれ以上のヌクレオチド(例えば、dATP、dTTP、dCTP、及びdGTP)を組み合わせて添加し、その場合、閉鎖複合体の形成及び/または安定化に有利なさらなる検査反応条件の必要性は任意である。
場合により、システイン修飾ポリメラーゼは、閉鎖複合体を形成している間、正しいヌクレオチドを組込むことなく鋳型核酸に結合する。閉鎖複合体中では、ポリメラーゼのシステイン同士が、空間内で十分に近接して少なくとも1つのジスルフィド結合を形成し、それによって閉鎖複合体を安定化する。この例では、ポリメラーゼは捕捉され、ヌクレオチドの組込みは妨げられる。
場合により、検査反応混合物中に存在するヌクレオチドは後続の正しいヌクレオチドであり、システイン修飾ポリメラーゼは鋳型核酸に結合し、後続の正しいヌクレオチドを組込み、閉鎖複合体を形成し;閉鎖複合体中では、ポリメラーゼのシステイン同士が、空間内で十分に近接して少なくとも1つのジスルフィド結合を形成し、それによって閉鎖複合体を安定化する。閉鎖複合体の安定化及びモニタリングの後、組込み工程を行うことができ、そこにおいては、還元剤がジスルフィド結合を破壊し、閉鎖複合体からポリメラーゼを遊離させる。次いで、還元剤を除去、希釈、または隔離してもよく、別の検査工程を行ってもよい。
場合により、ジスルフィド安定化閉鎖複合体のヌクレオチドは、閉鎖複合体を安定化する前または最中に組込む。組込み工程は、ジスルフィド結合を還元して、その後のヌクレオチドの組込み及び/または追加の検査工程を可能にすることによって行ってもよい。
場合により、検査工程中に1種類のヌクレオチドを反応混合物に添加する。場合により、検査工程中に1、2、3、4種またはそれ以上のヌクレオチドを反応混合物に添加する。場合により、後続の正しいヌクレオチドを閉鎖複合体内に封入する。場合により、誤ったヌクレオチドを閉鎖複合体内に封入する。
場合により、ポリメラーゼは、閉鎖複合体の形成後に分子内でジスルフィド結合を形成する場合がある。ポリメラーゼは、閉鎖複合体の形成後に、プライミングした鋳型核酸とジスルフィド結合を形成することができる。閉鎖複合体は、後続塩基と塩基対形成し、及び/またはプライミングした鋳型核酸のプライマーに組込む後続の正しいヌクレオチドを含む場合がある。場合により、閉鎖複合体は誤ったヌクレオチドを含み、その場合、後続塩基への結合及び/または組込みは減弱する。
場合により、閉鎖複合体のポリメラーゼに対する架橋法によってポリメラーゼを安定化する。ポリメラーゼは、他の手段、例えば、酵素的もしくは化学的切断、変性またはそれらの任意の組合せを用いて核酸から解離可能であるため、架橋法は可逆的である必要はない。変性剤として、酢酸、もしくはトリクロロ酢酸などの酸;エタノールもしくはメタノールなどの溶媒;尿素、塩化グアニジニウム、過塩素酸リチウムなどのカオトロピック剤;ドデシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤;またはそれらの任意の組合せが挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。化学的切断として、1つ以上の天然型、改変型、または市販のプロテアーゼの使用が挙げられる。架橋ポリメラーゼを遊離させるためのさらなる方法として、pH、温度、イオン強度、またはそれらの任意の組合せの変更が挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。
閉鎖複合体は、反応の検査段階の間に封入したヌクレオチドを組込まずに形成する。場合により、任意の時点の検査反応混合物は架橋剤を含み、閉鎖複合体を架橋する。この例では、ポリメラーゼは捕捉され、ヌクレオチドの組込みが妨げられる。場合により、検査反応混合物中に存在するヌクレオチドは後続の正しいヌクレオチドであり、ポリメラーゼは鋳型核酸に結合し、後続の正しいヌクレオチドを組込み、閉鎖複合体を形成し;閉鎖複合体内では、架橋剤を利用して閉鎖複合体を捕捉することができる。閉鎖複合体の安定化及びモニタリングの後、組込み工程を実施することができ、そこにおいて閉鎖複合体をその閉構造から遊離する。場合により、閉鎖複合体を形成し、鋳型核酸プライマーに後続の正しいヌクレオチドを組込む。架橋は、ポリメラーゼが後続塩基位置に転位するのを阻害し、ポリメラーゼがもはや架橋状態ではなくなるまでの間、後続ヌクレオチドを添加することはできない。場合により、架橋により安定化した閉鎖複合体のヌクレオチドは、閉鎖複合体の安定化の前または安定化中に組込まれる。組込み工程は、架橋を切断し、及び/またはポリメラーゼを変性させ、その後のヌクレオチドの組込み及び/または追加の検査工程を可能にすることによって、実施してもよい。
場合により、閉鎖複合体の形成後に、ポリメラーゼを分子内で架橋してもよい。したがって、閉鎖複合体の形成後に、プライミングした鋳型核酸にポリメラーゼを架橋することができる。閉鎖複合体は、後続塩基と塩基対形成し、及び/またはプライミングした鋳型核酸のプライマーに組込む後続の正しいヌクレオチドを含む場合がある。場合により、閉鎖複合体は誤ったヌクレオチドを含み、その場合、その後続塩基への結合及び/または組込みは減弱する。
場合により、二元複合体の形成よりも閉鎖複合体の形成を選好するようにポリメラーゼを改変する。ポリメラーゼの改変は、遺伝子改変であってもよい。ポリメラーゼを、鋳型核酸に対するそれらの選択的結合親和性に基づいて選択してもよい。ポリメラーゼを、ヌクレオチドに対して高い親和性を有するように選択または改変してもよく、そこにおいては、ポリメラーゼは、鋳型核酸への結合の前にヌクレオチドに結合する。例えば、アフリカブタコレラウイルス由来のDNAポリメラーゼXは、基質結合の順序が変化しており、そこではポリメラーゼは、最初にヌクレオチドに結合し、次に鋳型核酸に結合する。最初にヌクレオチドに結合するポリメラーゼを利用して、新規配列決定スキームを開発してもよい。本明細書中に開示する方法において、ポリメラーゼ改変は、閉鎖複合体中のポリメラーゼを捕捉するように設計してもよい。ポリメラーゼは、永続的または一時的に捕捉される場合がある。
場合により、閉鎖複合体の安定化を可能にする改変型ポリメラーゼを、遊離試薬(例えば、マグネシウムまたはマンガンなどの触媒金属イオン)を含むが必ずしもこれに限定されない閉鎖複合体を通常、遊離させるための反応条件と組み合わせる。場合により、閉鎖複合体は、触媒金属イオンの存在下であっても安定化する。場合により、閉鎖複合体は、架橋剤の存在下であっても遊離する。場合により、閉鎖複合体の安定化は、部分的に、安定化試薬及び/または遊離試薬の濃度及び/または同一性、ならびにそれらの任意の組合せに依存する。場合により、1つ以上の改変型ポリメラーゼを用いた閉鎖複合体の安定化を、触媒金属イオンの隔離、除去、還元、除外、及び/またはキレート化;ポリメラーゼ阻害剤、または組込み不可能なヌクレオチドの存在;ならびにそれらの任意の組合せを含むが必ずしもこれらに限定されない閉鎖複合体を安定化するためのさらなる反応条件と組み合わせる。
場合により、検査工程の閉鎖複合体は、閉鎖複合体の安定化を促進するヌクレオチド類似体または修飾ヌクレオチドを含む。場合により、ヌクレオチド類似体は、窒素含有塩基、五炭糖、及びリン酸基を含み;そこにおいてヌクレオチドの任意の成分を修飾及び/または置換してもよい。ヌクレオチド類似体は、組込み不可能なヌクレオチドであってもよい。組込み不可能なヌクレオチドを、配列決定方法における任意の時点で組込み可能になるように改変してもよい。
ヌクレオチド類似体として、α−リン酸修飾ヌクレオチド、α−βヌクレオチド類似体、β−リン酸修飾ヌクレオチド、β−γヌクレオチド類似体、γ−リン酸修飾ヌクレオチド、ケージドヌクレオチド、またはddNTPが挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。ヌクレオチド類似体の例は、米国特許第8,071,755号に記載されており、その全体を参照として本明細書に援用する。
ヌクレオチド類似体には、プライマーの3′末端へのヌクレオチド組込みを可逆的に防止するターミネーターを含ませることができる。可逆的ターミネーターの1つの種類は、3′−O−ブロック化可逆的ターミネーターである。このターミネーターを、ヌクレオチドの五炭糖の3′OH末端の酸素原子に連結させる。可逆的ターミネーターの別の種類は、3′非ブロック化可逆ターミネーターである。このターミネーターを、ヌクレオチドの窒素塩基に連結させる。ターミネーターを有するヌクレオチド類似体の総説については、例えば、Mu,R.,et al.,“The History and Advances of Reversible Terminators Used in New Generations of Sequencing Technology,”Genomics,Proteomics&Bioinformatics 11(1):34−40(2013)を参照されたい。
場合により、ヌクレオチドを、プライマーの3′末端へのヌクレオチド組込みを不可逆的に防止するターミネーターを有する修飾ヌクレオチド類似体に置換する。不可逆的ヌクレオチド類似体として、2′,3′ジデオキシヌクレオチド、ddNTP(ddGTP、ddATP、ddTTP、ddCTP)が挙げられる。ジデオキシヌクレオチドは、ポリメラーゼを介した合成に必須であるdNTPの3′−OH基を欠いている。
場合により、組込み不可能なヌクレオチドは、核酸重合反応の組込み工程の間にヌクレオチドが第二のヌクレオチド(プライマーの3′OH)と共有結合を形成することを阻害または防止するブロッキング部分を含む。ブロッキング部分はヌクレオチドから除去することができ、これにより、ヌクレオチドの組込みが可能になる。
場合により、閉鎖複合体中に存在するヌクレオチド類似体は閉鎖複合体を安定化する。場合により、ヌクレオチド類似体は組込み不可能である。場合により、ヌクレオチド類似体を遊離させ、天然のヌクレオチドを組込む。場合により、閉鎖複合体を遊離させ、ヌクレオチド類似体を修飾し、修飾ヌクレオチド類似体を組込む。場合により、閉鎖複合体中のヌクレオチド類似体を修飾及び/または不安定化する反応条件下で、閉鎖複合体を遊離させる。
場合により、閉鎖複合体中に存在するヌクレオチド類似体を組込み、閉鎖複合体を安定化させる。ヌクレオチド類似体によって、または例えば、本明細書中に開示する任意の安定化方法によって、閉鎖複合体を安定化してもよい。場合により、ヌクレオチド類似体は、その後のヌクレオチドの組込みを許容しない。例えば本明細書中に記載する任意の方法によって閉鎖複合体を遊離させることができ、そしてヌクレオチド類似体を修飾する。修飾ヌクレオチド類似体によって、その後のその3′末端へのヌクレオチドの組込みを可能にしてもよい。
場合により、ヌクレオチド類似体は、検査工程中に反応混合物中に存在する。例えば、検査工程中に、1、2、3、4種またはそれ以上のヌクレオチド類似体が反応混合物中に存在する。場合により、組込み工程中に、ヌクレオチド類似体を置換、希釈、または隔離する。場合により、ヌクレオチド類似体を天然のヌクレオチドで置換する。天然のヌクレオチドは、後続の正しいヌクレオチドを含む場合がある。場合により、組込み工程中にヌクレオチド類似体を修飾する。修飾ヌクレオチド類似体は、天然のヌクレオチドと同様であるか同一であり得る。
場合により、ヌクレオチド類似体は、天然ヌクレオチドに対するものとは異なる結合親和性をポリメラーゼに対して有する。場合により、ヌクレオチド類似体は、後続塩基に対して天然ヌクレオチドとは異なる相互作用を有する。ヌクレオチド類似体及び/または組込み不可能なヌクレオチドを、鋳型核酸の相補塩基と塩基対形成させてもよい。
場合により、ヌクレオチド類似体は、ポリメラーゼ融合型の修飾または天然ヌクレオチドである。場合により、複数のヌクレオチド類似体は、複数のポリメラーゼとの融合体を含み、そこにおいて各ヌクレオチド類似体は異なるポリメラーゼを含む。
ヌクレオチドは、二元複合体の形成よりも閉鎖複合体の形成を選好するように修飾することができる。ヌクレオチド修飾は、遺伝子改変であってもよい。ヌクレオチドを、ポリメラーゼに対して高い親和性を有するように選択または修飾してもよく、そこにおいてポリメラーゼは、鋳型核酸に結合する前にヌクレオチドに結合する。
閉鎖複合体中のポリメラーゼを捕捉する任意のヌクレオチド修飾を、本明細書中に開示する方法において使用してもよい。ヌクレオチドは、永続的または一時的に捕捉される場合がある。場合により、ヌクレオチド類似体は、閉鎖複合体を安定化する手段ではない。任意の閉鎖複合体安定化方法を、ヌクレオチド類似体を利用する反応において組み合わせてもよい。
場合により、閉鎖複合体を安定化できるヌクレオチド類似体を、閉鎖複合体を通常、遊離させる反応条件と組み合わせる。反応条件として、遊離試薬(例えば、マグネシウムまたはマンガンなどの触媒金属イオン)の存在が挙げられるが、必ずしもこれに限定するものではない。場合により、閉鎖複合体は、触媒金属イオンの存在下であっても安定化する。場合により、閉鎖複合体は、ヌクレオチド類似体の存在下であっても遊離する。場合により、閉鎖複合体の安定化は、安定化試薬及び/または遊離試薬の濃度及び/または同一性、ならびにそれらの任意の組合せに部分的に依存する。場合により、ヌクレオチド類似体を用いた閉鎖複合体の安定化を、触媒金属イオンの隔離、除去、還元、除外、及び/またはキレート化;ポリメラーゼ阻害剤、架橋剤の存在;ならびにそれらの任意の組合せを含む閉鎖複合体を安定化するように機能するさらなる反応条件と組み合わせる。
例示的な配列決定反応において、検査工程は、ポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸、及びヌクレオチドを含む閉鎖複合体の形成及び/または安定化を含む。閉鎖複合体の形成及び/または遊離の特性をモニタリングして、封入したヌクレオチド、したがって鋳型核酸中の後続塩基を同定する。閉鎖複合体の特性は、配列決定反応の成分(例えば、ポリメラーゼ、プライマー、鋳型核酸、ヌクレオチド)及び/または反応混合物の成分及び/または条件に依存し得る。場合により、閉鎖複合体は、化学工程前の立体構造にある。場合により、閉鎖複合体は、転位前の立体構造にある。場合により、閉鎖複合体は転位後の立体構造にある。
検査工程は、ヌクレオチドの存在下でポリメラーゼと鋳型核酸との相互作用をモニタリングすることを含む。閉鎖複合体の形成をモニタリングしてもよい。場合により、閉鎖複合体の形成がないことをモニタリングする。場合により、閉鎖複合体の解離をモニタリングする。場合により、組込み工程は、ヌクレオチドの組込みをモニタリングすることを含む。場合により、組込み工程は、ヌクレオチドの組込みがないことをモニタリングすることを含む。
検査及び/または組込み工程の任意のプロセスをモニタリングしてもよい。場合により、ポリメラーゼは検出可能なタグを有する。場合により、配列決定反応の成分を検出可能に標識しない。場合により、ポリメラーゼ上の検出可能なタグまたは標識は除去可能である。場合により、ヌクレオチドまたはポリメラーゼは検出可能な標識を有するが、配列決定中に標識を検出しない。
ヌクレオチドの組込みを可能にし得るか、または可能にしない条件下で、正しい及び誤ったヌクレオチドの存在下で、鋳型核酸に対するポリメラーゼの親和性の変化をモニタリングし、これを利用して核酸の配列を決定してもよい。修飾または標識ヌクレオチドを含む異なるヌクレオチドの存在下での鋳型核酸に対するポリメラーゼの親和性を、様々なヌクレオチドの存在下でのポリメラーゼ−核酸相互作用の解離速度としてモニタリングすることができる。様々なマッチ/正しい、ミスマッチ/誤った、及び修飾ヌクレオチドに対する多くの標準ポリメラーゼの親和性及び解離速度は、当該技術分野で公知である。Klenowポリメラーゼの単分子イメージングは、異なるヌクレオチド型について、そのヌクレオチド型の組込みが妨げられている場合の鋳型核酸からの解離速度が、明確に、及び測定可能に異なることを明らかにしている。
場合により、プライミングした鋳型核酸の存在下で、特定の種類のヌクレオチドをポリメラーゼが利用できるようにする。反応をモニタリングし、ヌクレオチドが後続の正しいヌクレオチドである場合、ポリメラーゼは安定化して閉鎖複合体を形成し得る。ヌクレオチドが誤ったヌクレオチドである場合も、閉鎖複合体を形成し得る;しかしながら、安定化剤または反応条件(例えば、触媒イオン、ポリメラーゼ阻害剤、塩の非存在下)による追加的な補助がなければ、閉鎖複合体は解離してしまう場合がある。解離速度は、ポリメラーゼ、鋳型核酸、及びヌクレオチドの特定の組合せに基づく親和性、ならびに反応条件に依存する。場合により、親和性を解離速度として測定する。場合により、親和性は、閉鎖複合体についての異なるヌクレオチド間で異なる。例えば、プライマーの3′末端の下流の鋳型核酸中の後続塩基がGである場合、解離速度として測定するポリメラーゼ−核酸親和性は、dATP、dCTP、dGTPまたはdTTPのいずれを添加するかによって異なると考えられる。この場合、dCTPは最も遅い解離速度を有し、他のヌクレオチドは相互作用に対して異なる解離速度を与えると考えられる。場合により、解離速度は、反応条件、例えば安定化剤の存在(例えば、マグネシウムまたは阻害性化合物の非存在下)または反応条件(例えば、ヌクレオチド修飾または改変型ポリメラーゼ)によって異なる可能性がある。一旦、後続の正しいヌクレオチドの同一性を決定すると、閉鎖複合体の形成を特異的に標的とする条件下で、1、2、3、4種またはそれ以上の種類のヌクレオチドを反応混合物に同時に導入してもよい。余剰のヌクレオチドを反応混合物から除去し、反応条件を調節して、閉鎖複合体の後続の正しいヌクレオチドを組込んでもよい。この配列決定反応は、配列決定サイクルごとに1つのヌクレオチドのみが組込まれることを保証する。
場合により、複数の鋳型核酸を表面に係留させ、1種類(またはそれ以上)のdNTPを連続的に流す。親和性のスペクトルは、後続の正しいヌクレオチド、したがって鋳型核酸中の後続塩基の同一性を明らかにする。場合により、反応混合物の状態を除去及び置換する、すなわち洗浄工程を必要とせずに、親和性を測定する。例えば、測定した結合相互作用の強度の自己相関は、相互作用の動態を容易に明らかにし、解離速度を測定するための洗浄工程を必要とせずに親和性を明らかにする。
ポリメラーゼと核酸との動的相互作用を測定することができる任意の技術を用いて、親和性を測定し、本明細書に開示する配列決定反応法を可能にしてもよい。
場合により、ヌクレオチドに対するポリメラーゼの親和性は、プライミングした鋳型核酸中の後続塩基の同一性及び/またはヌクレオチドの同一性に部分的に依存する。場合により、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、プライマー、鋳型核酸、またはそれらの任意の組合せを改変することによって、親和性を改変することができる。場合により、反応混合物の状態及び/または追加の成分が親和性値に影響を及ぼす。
本明細書において、ヌクレオチド及び後続塩基の様々な可能な組合せについてのポリメラーゼ−核酸親和性の表を作成する方法を提供する。これらの親和性は、核酸鋳型上のヌクレオチド及び後続塩基のみが関与するポリメラーゼ活性部位での相互作用に主に影響を受けるため、内容物に特異的な影響は無視してもよい。内容物に特異的な影響には、核酸の二次構造及び鋳型核酸上の後続塩基のさらに下流の配列の塩基の寄与が含まれ得る。親和性の表により、天然または修飾ヌクレオチドの決定が可能となり、それは、異なる鋳型塩基についての最も広く最も容易に測定される親和性の分散を導出する。場合により、鋳型塩基は、塩基dATP、dTTP、dCTP、及びdGTPのうちの1、2、3、または4種類である。最も強い親和性が、ヌクレオチドに相補的な塩基に対して存在することは理解されている。本明細書中で使用する場合、分散とは、特に、他の3種の誤った、非相補的塩基に対する親和性の変動を指す。場合により、ヌクレオチド組込みを阻害する検査条件下で各親和性を測定する。場合により、ポリメラーゼを改変または選択し、親和性が広い分散を有するようにする。遺伝子改変型または天然のポリメラーゼは、好ましくないエラー特性または配列決定用酵素としての他の好ましくない性質を有し得るが、このポリメラーゼは非組込み条件下でのみ使用するため、このことは必ずしも重要ではない。ポリメラーゼを、異なる鋳型塩基に対して容易に測定可能で明瞭な親和性を提供するその能力に関して、特別に選択してもよい。所望の特性を有するポリメラーゼの進化またはスクリーニングは、当該技術分野における標準的な手順である(例えば、修飾ヌクレオチドに対して高い親和性を有するポリメラーゼのスクリーニング)。場合により、組込み工程のためにポリメラーゼを高忠実度のポリメラーゼに置き換える。場合により、鋳型塩基にとって最も好都合な親和性を提供するポリメラーゼとヌクレオチドの組合せを選択し、それにより、選択したヌクレオチドの存在下で、選択したポリメラーゼの鋳型核酸に対する親和性を測定する配列決定方法の実行が可能になる。構築した親和性の表に、鋳型塩基に対する親和性のスペクトルが提供されているため、測定した親和性から核酸上の後続塩基が決定される。親和性は、ポリメラーゼ−核酸相互作用の、結合速度、解離速度、または結合速度と解離速度の組合せであり得る。
ヌクレオチドの存在下での鋳型核酸に対するポリメラーゼの親和性は、当業者に周知の複数の方法で測定することができる。場合により、親和性を解離速度として測定し、解離速度は、反応物を洗浄緩衝液で洗浄する際に、鋳型核酸からのポリメラーゼの遊離をモニタリングすることによって測定する。場合により、親和性を解離速度として測定し、解離速度は、平衡結合条件、特にポリメラーゼ結合速度が低いか、または拡散律速である平衡結合条件下での鋳型核酸からのポリメラーゼの遊離をモニタリングすることによって測定する。ポリメラーゼの結合速度は、十分に低いポリメラーゼ濃度において拡散律速であってもよく、ポリメラーゼがDNA−ポリメラーゼ複合体から脱落すると、すぐには積戻しは起こらず、そのため、ポリメラーゼが複合体から遊離したことを検出するのに十分な時間が存在し得る。より高い親和性相互作用では、ポリメラーゼは核酸からゆっくりと遊離するが、低い親和性相互作用では、ポリメラーゼは、より迅速に遊離する結果となる。この場合、親和性のスペクトルは異なる解離速度に変換され、解離速度は動的洗浄条件または平衡状態で測定する。最小の解離速度は、添加したヌクレオチドに相補的な塩基に対応し、他の解離速度は、選択したポリメラーゼとヌクレオチドの組合せに応じて、既知の様式で様々に異なる。
場合により、反応混合物中にポリメラーゼとヌクレオチドを提供した後、解離速度を平衡シグナル強度として測定し、そこにおいて最も低い解離速度(最も高い親和性)のヌクレオチドとの相互作用は、最も強いシグナルを生じ、その一方で、他の、様々な解離速度のヌクレオチドとの相互作用は、測定可能な異なる強度のシグナルを生成する。非限定的な例として、好ましくは全内部反射(TIRF)条件下で測定した蛍光標識ポリメラーゼは、適切に選択した時間枠内で表面固定化核酸分子に結合したポリメラーゼ分子の数に応じて、異なる測定蛍光強度を生じる。ポリメラーゼの自家蛍光、例えばトリプトファン蛍光もまた、利用してもよい。高い解離速度での相互作用は、選択した時間枠における結合ポリメラーゼ分子の数が非常に少ないため、低い測定強度を生じ、そこにおいて高い解離速度は、ポリメラーゼの大部分が核酸から解離していることを示す。標識または蛍光スキームを含むが必ずしもこれらに限定されない任意の表面局在測定スキームを用いてもよい。平衡条件下で親和性を測定する適切な測定スキームとして、結合質量、屈折率、表面電荷、誘電率、及び当該技術分野で公知のスキームが挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。場合により、結合速度及び解離速度の改変を組み合わせることによって、提案するスキームにおいてより高い忠実度で検出が可能になる。非限定的な例として、一様に低い結合速度と、塩基依存性の様々な解離速度により、未結合のポリメラーゼは長期間にわたって未結合のままであり、これにより、解離速度及び測定強度の変動の識別性を高めることができる。添加するポリメラーゼ、ヌクレオチド、またはポリメラーゼとヌクレオチドの両方の濃度を低下させることによって、結合速度を操作してもよい。
場合により、ポリメラーゼに結合した検出可能なタグを介して、ポリメラーゼと核酸との相互作用をモニタリングする。タグは、光学的、電気的、熱的、質量、大きさ、電荷、振動、及び圧力を含むが必ずしもこれらに限定されない検出方法によってモニタリングしてもよい。標識は、磁性、蛍光性または荷電性であってもよい。外部及び内部標識スキームについては、蛍光異方性を用いて、閉鎖複合体中の核酸へのポリメラーゼの安定な結合を決定してもよい。
一例として、ポリメラーゼをフルオロフォアでタグ標識し、そこにおいて閉鎖複合体形成を、安定な蛍光シグナルとしてモニタリングする。誤ったヌクレオチドの存在下でのポリメラーゼと鋳型核酸との不安定な相互作用は、後続の正しいヌクレオチドの存在下で形成する閉鎖複合体に比べて、かなり弱いシグナルをもたらす。
場合により、ポリメラーゼを化学発光タグでタグ標識し、そこにおいて閉鎖複合体形成を、適切な発光トリガーの存在下で安定な発光シグナルとしてモニタリングする。誤ったヌクレオチドの存在下でのポリメラーゼと鋳型核酸との不安定な相互作用は、後続の正しいヌクレオチドの存在下で形成する閉鎖複合体に比べて、かなり弱いシグナルをもたらす。さらに、発光を誘起する前の洗浄工程は、安定した閉鎖複合体に結合していないすべてのポリメラーゼ分子を除去することができる。
場合により、ポリメラーゼを光散乱タグでタグ標識し、そこにおいて閉鎖複合体形成を、安定な光散乱シグナルとしてモニタリングする。誤ったヌクレオチドの存在下でのポリメラーゼと核酸との不安定な相互作用は、後続の正しいヌクレオチドの存在下で形成する閉鎖複合体に比べて、かなり弱いシグナルをもたらす。
場合により、ポリメラーゼをプラズモニックナノ粒子タグでタグ標識し、そこにおいて閉鎖複合体の形成を、閉鎖複合体の非存在下、または誤ったヌクレオチドを含む閉鎖複合体の存在下でのプラズモン共鳴とは異なるプラズモン共鳴のシフトとしてモニタリングする。プラズモン共鳴の変化は、閉鎖複合体内の局所的な誘電環境の変化によるものであり得るか、またはクローニング増幅した核酸分子のクラスター上でのプラズモニックナノ粒子の同期的凝集もしくは閉鎖複合体構成においてプラズモンに異なった影響を及ぼす別の手段に起因し得る。
場合により、ポリメラーゼをラマン散乱タグでタグ標識し、そこにおいて閉鎖複合体形成を、安定ラマン散乱シグナルとしてモニタリングする。誤ったヌクレオチドの存在下でのポリメラーゼと核酸との不安定な相互作用は、後続の正しいヌクレオチドの存在下で形成する閉鎖複合体に比べて、かなり弱いシグナルをもたらす。
場合により、ヌクレオチドに対して高い親和性を有するように選択または改変したポリメラーゼ上のタグによって、後続の正しいヌクレオチドを同定し、そこにおいてポリメラーゼは鋳型核酸に結合する前にヌクレオチドに結合する。例えば、アフリカブタコレラウイルス由来のDNAポリメラーゼXは、基質結合の順序が変化しており、そこではポリメラーゼは、最初にヌクレオチドに結合し、次に鋳型核酸に結合する。場合により、ポリメラーゼを、別個の区画内の各種ヌクレオチドと共にインキュベートし、そこでは、各区画が異なる型のヌクレオチドを含み、そこでは、共にインキュベートするヌクレオチドに応じて異なるタグでポリメラーゼを標識する。これらの条件下では、非標識ヌクレオチドは、異なる標識化ポリメラーゼに結合する。ポリメラーゼは、各種ヌクレオチドに結合した同じ種類のポリメラーゼであってもよいし、各種ヌクレオチドに結合した異なるポリメラーゼであってもよい。示差的にタグ標識したポリメラーゼ−ヌクレオチド複合体は、配列決定反応の任意の段階に同時に添加してもよい。各ポリメラーゼ−ヌクレオチド複合体は、その後続塩基がポリメラーゼ−ヌクレオチド複合体中のヌクレオチドに相補的である鋳型核酸に結合する。ヌクレオチドを保有するポリメラーゼ上のタグによって、後続の正しいヌクレオチドを同定する。標識したポリメラーゼ−ヌクレオチド複合体による後続鋳型塩基の照合を、非組込み及び/または検査条件下で実施してもよく、そこでは、一旦、後続鋳型塩基の同一性を決定すると、複合体を不安定化して除去、隔離、及び/または希釈し、別個の組込み工程を、確実に1つのヌクレオチドのみを組込む方式で行う。
ポリメラーゼ上に検出可能なタグを導入するための一般的な方法は、ポリメラーゼの非活性領域に存在するアミンまたはシステインへの化学的複合体化を含む。そのような複合体化法は当該分野で周知である。非限定的な例として、n−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHSエステル)を一般的に用いて、酵素上に見出され得るアミン基を標識する。システインはチオールまたはマレイミド基と容易に反応するが、カルボキシル基はEDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)で活性化することによってアミンと反応し得る。場合により、N末端アミンのみが反応性となるpH範囲(例えば、pH7)でN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)化学を使用して、1個のポリメラーゼにつき単一のタグを付加するようにする。
場合により、ポリメラーゼに結合させるタグは荷電性タグであり、鋳型核酸周辺の局所的電荷密度の変化を測定することによる電気的手段によって安定した閉鎖複合体の形成を検出することができる。電荷の検出方法は、当該技術分野で周知であり、とりわけ電界効果トランジスタ、誘電率測定、インピーダンス測定、及びpH測定などの方法を含む。電界効果トランジスタとして、イオン感応電界効果トランジスタ(ISFET)、電荷変調電界効果トランジスタ、絶縁ゲート電界効果トランジスタ、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ及び半導体単層カーボンナノチューブを用いて製造する電界効果トランジスタが挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。
場合により、荷電性タグは、約4以下または約10以上の等電点を有するペプチドタグである。場合により、ペプチドタグを有するポリメラーゼは、約5以下または約9以上の全等電点を有する。荷電性タグは、正または負に荷電した任意の部分であってもよい。荷電性タグは、質量、及び/または色素などの標識を有する追加の部分を有していてもよい。場合により、荷電性タグは、pHの変化などの特定の反応条件の下でのみ正または負の電荷を有する。
場合により、電界効果トランジスタ(FET)を、閉鎖複合体を検出するためのバイオセンサーとして構成する。FETのゲート端子を、鋳型核酸の付加によって修飾する。荷電性タグを有するポリメラーゼの結合により、電気化学的シグナルに変化が生じる。後続の正しいヌクレオチドを有するポリメラーゼの鋳型核酸への結合は、他の誤ったヌクレオチドの存在下で鋳型核酸に結合するポリメラーゼとは異なるシグナルを提供し、各々の誤ったヌクレオチドもまた、異なるシグナルを提供し得る。場合により、ポリメラーゼと鋳型核酸との相互作用は、ポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸、またはヌクレオチド上の標識タグを使用せずに、FETを用いてモニタリングする。場合により、組込み反応中のHイオンの遊離により生じるpH変化を、FETを用いて検出する。場合により、ポリメラーゼは、FETによって検出する連続的なHイオンを生成するタグを有する。場合により、連続Hイオン生成タグはATPシンターゼである。場合により、連続Hイオン生成タグは、パラジウム、銅または他の触媒である。場合により、ヌクレオチド組込み後のPPiの遊離を、FETを用いて検出する。例えば、一度に1種類のヌクレオチドを反応に供してもよい。一旦、後続の正しいヌクレオチドを添加し、組込み可能な条件になると、PPiが切断され、遊離し、FETを用いてこれを検出し、後続の正しいヌクレオチド及び後続塩基を同定する。場合により、鋳型核酸をナノチューブの壁に結合させる。場合により、ポリメラーゼをナノチューブの壁に結合させる。FETは、小型で低分子量であることから配列決定用センサーとしての使用に効果的であり、ポータブル配列決定用のモニタリング成分としての使用に適している。分子間相互作用のFET検出の詳細は、Dong−Sun Kim et al.,“An FET−Type Charge Sensor for Highly Sensitive Detection of DNA Sequence,”Biosensors and Bioelectronics,Microsensors and Microsystems 2003,20,no.1(July 30,2004):69−74,doi:10.1016/j.bios.2004.01.025及びAlexander Star et al.,“Electronic Detection of Specific Protein Binding Using Nanotube FET Devices,”Nano Letters 3,no.4(April 1,2003):459−63,doi:10.1021/nl0340172に記載されており、これらの文献はその全体を参照として本明細書に援用する。
一例として、ポリメラーゼは蛍光タグを有する。高いシグナル対ノイズ比を有するポリメラーゼ−核酸相互作用をモニタリングするために、エバネッセント照明または共焦点イメージングを用いてもよい。局在化した鋳型核酸上での閉鎖複合体の形成は、例えば、バックグラウンドに比べて高い蛍光として観察される場合があるが、いくつかの例では、局所的な極性環境の消光または変化による蛍光の減少として観察される場合もある。場合により、ポリメラーゼ分子のある画分をフルオロフォアでタグ標識してもよく、その一方で別の画分を同じ反応混合物中のクエンチャーでタグ標識してもよく;そこにおいて核酸の局在化クローン集団上での閉鎖複合体の形成は、バックグラウンドに比べて低い蛍光として示される。核酸のクローン集団を、支持体表面、例えば平面基板、微粒子、またはナノ粒子に結合させてもよい。場合により、ポリメラーゼを、フルオロフォア、ルミノフォア、ケミルミノフォア、クロモフォア、またはバイオルミノフォアでタグ標識する。
ポリメラーゼを、フルオロフォア及び/またはクエンチャーで標識してもよい。場合により、核酸を、フルオロフォア及び/またはクエンチャーで標識する。場合により、1つ以上のヌクレオチドを、フルオロフォア及び/またはクエンチャーで標識する。フルオロフォアの例として、蛍光ナノクリスタル;量子ドット;ジクロロ[R110]、ジクロロ[R6G]、ジクロロ[TAMRA]、ジクロロ[ROX]などを含むd−ローダミン受容体色素;フルオレセイン、6−FAMなどを含むフルオレセイン供与体色素;Cy3Bなどのシアニン色素;Alexa色素、SETA色素、Cy3BとFRET対を形成するatto647NのようなAtto色素などが挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。フルオロフォアとして、MDCC(7−ジエチルアミノ−3−[([2−マレイミジル]エチル]アミノ]カルボニル]クマリン)、TET、HEX、Cy3、TMR、ROX、Texas Red、Cy5、LC red705及びLC red640が挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。フルオロフォア、ならびにポリメラーゼ及び他の分子への結合を含むそれらの使用方法は、The Molecular Probes(登録商標)Handbook(Life Technologies、カールスバド カリフォルニア州)及びFluorophores Guide(Promega、マディソン、ウィスコンシン州)に記載されており、これらの文献はその全体を参照として本明細書に援用する。クエンチャーの例として、ZEN、IBFQ、BHQ−1、BHQ−2、DDQ−I、DDQ−11、Dabcyl、Qxlクエンチャー、Iowa Black RQ、及びIRDye QC−1が挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。
場合により、ポリメラーゼの重合能力または忠実度に影響を及ぼすことなく、ポリメラーゼの活性部位の近くに立体構造感受性色素を付加してもよく;そこにおいて、閉鎖複合体の形成による立体構造の変化または極性環境の変化が、色素の蛍光または吸光特性の変化として反映される。cy3及びフルオレセインなどの一般的なフルオロフォアは、閉鎖複合体の形成をポリメラーゼ−核酸二元複合体とはっきりと区別できる程度に、ポリメラーゼの結合及び閉鎖複合体の形成に対して強いソルバトクロミック応答を示すことは周知である。場合により、閉鎖複合体は、立体構造感受性色素からの蛍光シグナルまたは吸光シグナルの差異に基づいて、二元複合体と区別することができる。場合により、ソルバトクロミック色素を用いて立体構造の遷移をモニタリングしてもよく;そこにおいて、立体構造の変化によって誘発される局所的な極性環境の変化をレポーターシグナルとして用いることができる。ソルバトクロミック色素として、Reichart色素、IR44、メロシアニン色素(例えば、メロシアニン540)、4−[2−N置換−1,4−ヒドロピリジン−4−イリジン]エチリデン]シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−オン、赤色ピラゾロン色素、アゾメチン色素、インドアニリン色素、ジアザメロシアニン色素、インジゴによって例示されるインジゴイド色素、及び他の色素ならびにそれらの混合物が挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。ポリメラーゼの特定の部位に色素またはフルオロフォアを導入する方法は、当該技術分野で周知である。非限定的な例として、色素によるT7 DNAポリメラーゼの部位特異的標識の手順が、Yu−Chih Tsai,Zhinan Jin,and Kenneth A. Johnson,“Site−Specific Labeling of T7 DNA Polymerase with a Conformationally Sensitive Fluorophore and Its Use in Detecting Single−Nucleotide Polymorphisms,”Analytical Biochemistry 384,no.1(January 1,2009):136−44に記載されており、この文献はその全体を参照として本明細書に援用する。
場合により、反応を妨害することなく閉鎖複合体の形成を感知可能な位置において、ポリメラーゼをフルオロフォアでタグ標識する。ポリメラーゼは、天然型または改変型ポリメラーゼであってもよい。改変型ポリメラーゼには、1つ以上のアミノ酸突然変異、付加、及び/または欠失を有するものが含まれる。場合により、1か所以上だが全箇所ではないシステインアミノ酸をアラニンなどの別のアミノ酸に突然変異させる。この場合、フルオロフォアとの部位特異的複合体化のために、残りの1か所以上のシステインを使用する。あるいは、1つ以上のアミノ酸を、フルオロフォアとの複合体化に適した反応性アミノ酸、例えばシステインまたは第一級アミンを含むアミノ酸に突然変異させる。
場合により、正しいヌクレオチドの存在下でのポリメラーゼと鋳型核酸との結合は、蛍光の減少を誘導する場合があるが、一方で誤ったヌクレオチドとの結合は、蛍光の増加を引き起こす。正しいヌクレオチドの存在下でのポリメラーゼと鋳型核酸との結合は、蛍光の増加を誘導する場合があるが、一方で誤ったヌクレオチドとの結合は、蛍光の減少を引き起こす。蛍光シグナルを用いて、ヌクレオチド誘導による立体構造変化の速度をモニタリングし、鋳型核酸配列中の後続塩基を同定してもよい。
場合により、ポリメラーゼまたはポリメラーゼに結合したタグ、例えばナノ粒子タグに由来するシグナルを散乱させることによって、ポリメラーゼ/核酸相互作用をモニタリングしてもよい。
場合により、識別及び/または検出可能なタグまたは標識を用いて、1つ以上のヌクレオチドを標識することができるが、そのようなタグまたは標識は、検査中、塩基の同定中または塩基の組込み中には検出されず、そのようなタグまたは標識は、本明細書に記載の配列決定方法の実行中に検出されることはない。タグは、蛍光、ラマンスペクトル、電荷、質量、屈折率、発光、長さ、または任意の他の測定可能な特性の差によって区別してもよい。タグは、ポリメラーゼ−核酸複合体への結合の忠実度が十分に維持され、鋳型核酸上の相補的塩基の同定を正確に可能にする限り、ヌクレオチド上の1つ以上の異なる位置に結合させてもよい。場合により、タグは、ヌクレオチドの核酸塩基の位置に結合させる。適切な反応条件下で、タグ標識ヌクレオチドを、ポリメラーゼとプライミングした鋳型核酸との閉鎖複合体内に封入してもよい。あるいは、ヌクレオチドのγリン酸位置にタグを結合させる。
場合により、ヌクレオチド存在下でのポリメラーゼと鋳型核酸との間の相互作用を、ラマンシグネチャー、トリプトファン、2−アミノプリンまたは他の自家蛍光を含むが必ずしもこれらに限定されないポリメラーゼからの固有シグナルを利用してモニタリングする。ポリメラーゼのアミノ酸の自家蛍光を利用して、本明細書に開示する配列決定方法の1つ以上の工程、例えば閉鎖複合体の形成または遊離の間に起こるポリメラーゼの立体構造変化を検出することができる。自家蛍光を有するアミノ酸として、トリプトファン、チロシン及びフェニルアラニンが挙げられる。場合により、1つ以上のポリメラーゼのアミノ酸を、トリプトファン、チロシン、またはフェニルアラニン残基を有するように突然変異させる。自家蛍光を有するアミノ酸をさらに含むように、ポリメラーゼを、遺伝子または化学修飾を含む任意の手段によって改変してもよい。場合により、自家蛍光は、プロトン化基を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)のような、蛍光の消光を引き起こし得る他のアミノ酸の近接性に影響を受ける。場合により、ポリメラーゼのトリプトファン残基は、ポリメラーゼが閉鎖複合体を構成する場合には疎水性コアに隠れ、ポリメラーゼが遊離するか、または閉鎖複合体の立体構造に関与しない場合には、水性環境に露出する。トリプトファンの発光スペクトルは、環境(親水性または疎水性)によって異なり、これによって閉鎖複合体の検出が可能になる。場合により、ポリメラーゼの自家蛍光を用いて、配列決定反応の間の立体構造変化を同定する。一例では、その全体を参照として本明細書に援用するYu−Chih Tsai,Zhinan Jin,and Kenneth A. Johnson,“Site−Specific Labeling of T7 DNA Polymerase with a Conformationally Sensitive Fluorophore and Its Use in Detecting Single−Nucleotide Polymorphisms,”Analytical Biochemistry 384,no.1(January 1,2009):136−44に記載されている技術と同様の技術を用いて、ポリメラーゼのトリプトファン残基からの自家蛍光による発光をモニタリングする。
ヌクレオチド存在下でのポリメラーゼと鋳型核酸との相互作用は、タグ標識を使用せずにモニタリングすることができる。屈折率、電荷検出、ラマン散乱検出、エリプソメトリー検出、pH検出、サイズ検出、質量検出、表面プラズモン共鳴、導波モード共鳴、ナノポア光干渉法、ウィスパリングギャラリーモード共振、ナノ粒子散乱、フォトニック結晶、水晶振動子マイクロバランス、バイオレイヤー干渉法、振動検出、圧力検出、及び閉鎖複合体内でのポリメラーゼと鋳型核酸との結合に起因する付加的な質量または屈折率を検出する他の標識フリーの検出スキームなどにおける変化を検出することによって、配列決定反応をモニタリングしてもよい。
場合により、ポリメラーゼのラマンシグネチャーを利用して、本明細書に開示する配列決定方法の1つ以上の工程、例えば閉鎖複合体の形成または遊離の間に起こるポリメラーゼの立体構造変化を検出する。場合により、本明細書に記載の核酸の配列決定方法の1つ以上の工程の間に、配列決定反応混合物に、可視、近赤外、または近紫外領域の光を照射する。光は、反応における分子振動または他の励起と相互作用し、その結果、光エネルギーがシフトする。エネルギーシフトは、反応の振動モードに関する情報を提供し、したがって、反応成分(例えば、ポリメラーゼ)の構成に関する情報を提供する。本開示の配列決定方法では、表面増強ラマン、共鳴ラマン、チップ増強型ラマン、偏光ラマン、誘導ラマン、透過ラマン、空間オフセットラマン、及び超ラマン分光法を用いて検出してもよい。
場合により、屈折率における変化の検出は、表面プラズモン共鳴検出、局在プラズモン共鳴検出、プラズモン−光子結合検出、サブ波長ナノホールによる透過検出(強化した光透過)、フォトニック結晶検出、インターフェロメトリー検出、屈折検出、導波モード共鳴検出、リング共振器検出、またはエリプソメトリー検出を含むが必ずしもこれらに限定されない手段の1つまたは組合せで達成される。場合により、核酸分子を表面に局在させてもよく、そこにおいて様々なヌクレオチド存在下でのポリメラーゼと核酸との相互作用を、局所的な屈折率の変化として測定してもよい。
場合により、鋳型核酸を、表面上または表面近傍に、適切に係留または局在させ、その結果、ヌクレオチド存在下でのポリメラーゼと鋳型核酸との相互作用によって、表面を透過するかまたは表面から反射する光が変化する。表面はナノ構造を有していてもよい。場合により、表面はプラズモンまたはプラズモン共鳴を維持することができる。場合により、表面は、共振空洞、共振リングまたはフォトニック結晶スラブに限定されないフォトニック基板である。場合により、表面は、導波モード共鳴センサーである。場合により、ナノホールアレイ、ナノ粒子または微粒子の上またはその近傍に核酸を適切に係留または局在させ、その結果、核酸存在下でのポリメラーゼと鋳型核酸との相互作用によって、微粒子またはナノ粒子と相互作用する光の吸光度、散乱、反射または共鳴が変化する。
場合により、金表面上のナノホールアレイを屈折率センサーとして使用する。DNAを増幅するためのPCR反応において使用するプライマーの1つにチオール基を組込む標準的なチオール化学によって、鋳型核酸を金属表面に結合させてもよい。入射光に対してナノホールアレイの寸法を適切に調整する場合、ヌクレオチド存在下での鋳型核酸へのポリメラーゼの結合は、ナノホールを透過する光の変化としてモニタリングすることができる。標識及び標識フリーの両方のスキームについて、安定した閉鎖複合体の形成を、平衡シグナル強度の単純で直接的な測定によって明らかにしてもよい。
場合により、核酸分子を、表面プラズモンを維持可能な表面に局在化させ、そこにおいて局在させた核酸とポリメラーゼとの相互作用によって生じる屈折率の変化を、表面プラズモンの特性の変化を介してモニタリングしてもよく、そこにおいてさらに、前記表面プラズモンの特性の変化には、表面プラズモン共鳴が含まれ得る。表面プラズモン、局在表面プラズモン(LSP)、または表面プラズモンポラリトン(SPP)は、電磁波と表面電荷のプラズマ振動との結合から生じる。LSPはナノ粒子表面に閉じ込められ、一方、SPPは高電子移動度表面と誘電体媒体との間の界面で高電子密度表面に閉じ込められる。表面プラズモンは、界面の方向に沿って伝搬する場合があるが、エバネッセント様式でのみ誘電体媒体に浸透する。表面プラズモン共鳴条件は、入射電磁放射線の周波数が表面電子の固有振動周波数に一致する場合に確立される。界面における例えば結合または分子クラウディングによる誘電特性の変化は、表面電子の振動に影響を与え、それによって表面プラズモン共鳴波長を変化させる。表面プラズモン共鳴が可能な表面として、限定するものではないが、ナノ粒子、ナノ粒子のクラスター及び凝集体、連続平面、ナノ構造表面、ならびに微細構造表面が挙げられる。金、銀、アルミニウム、高導電性金属酸化物(例えば、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛、酸化タングステン)などの材料は、その表面で表面プラズモン共鳴をサポートすることができる。
場合により、単一の核酸分子または核酸の複数のクローンコピーをナノ粒子に結合させ、それによって、核酸へのポリメラーゼの結合によって、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)をシフトさせる。ナノ粒子への入射光は、内部の伝導電子を誘起して、ナノ粒子の大きさ、形状及び組成に応じた共鳴周波数で集合的に振動させる。関心対象のナノ粒子は、球状ナノ粒子、ナノロッド、ナノピラミッド、ナノダイヤモンド、及びナノディスクを含む様々な形状を取り得る。これらのLSPRモードの結果、ナノ粒子は光を強力に吸収及び散乱させるため、暗視野(光学散乱)顕微鏡法を用いて単一のナノ粒子が目視で容易に観察される。例えば、単一の80nm銀ナノ球体は、(3×10−2)mの散乱断面を有する445nmの青色光を散乱させ、フルオレセイン分子の蛍光断面積より100万倍大きく、自己消光限界までフルオレセインで満たした同様のサイズのナノ球体の断面積よりも約1000倍大きい。場合により、ナノ粒子は、可視スペクトルの随所に散乱ピークを有する超高輝度、ナノサイズの光散乱体として構成されたプラズモン共鳴粒子である。プラズモン共鳴粒子は、退色しないため、効果的である。場合により、プラズモン共鳴粒子を調製し、鋳型核酸でコーティングし、ポリメラーゼと1種以上のヌクレオチドとを含む反応混合物中に提供し、そこにおいてポリメラーゼ−鋳型核酸−粒子間の相互作用を検出する。前述の工程の1つ以上は、Sheldon Schultz et al.,“Single−Target Molecule Detection with Nonbleaching Multicolor Optical Immunolabels,”Proceedings of the National Academy of Sciences 97,no.3(February 1,2000):996−1001に開示されている1つ以上の方法に基づくか、または由来するものであってもよい。
共鳴波長での吸光係数が非常に大きいため、貴金属ナノ粒子は、表面近傍相互作用に関する非常に強い標識として作用することができる。場合により、ポリメラーゼと、ナノ粒子に局在するDNAとの相互作用の結果、共鳴波長がシフトする。結合または結合相互作用に起因する共鳴波長の変化は、多くの方法のうちの1つで測定することができる。場合により、ある範囲の波長にわたって発光をスキャンし、画像化装置において最大散乱が観察される波長を同定する。場合により、画像化装置の近傍の分散素子と共に広帯域の照明光を利用し、それによって共鳴ピークを分光学的に同定する。場合により、ナノ粒子系に対して、その共鳴波長またはその共鳴波長付近で照射を行ってもよく、新しい共鳴波長が照射波長から離れる方向にシフトするにつれて、任意の結合相互作用が、散乱する光の強度の低下として観察され得る。照射波長の位置に依存して、共鳴ピークが照射波長に向かってシフトすると、相互作用が、ナノ粒子の散乱の増加として現れることさえある。場合により、DNAを結合させたナノ粒子は、表面に局在させてもよく、あるいは、DNAを結合させたナノ粒子を溶液中に懸濁させてもよい。ナノ粒子を用いたバイオセンシングの包括的な概説は、Jeffrey N.Anker et al.,“Biosensing with Plasmonic Nanosensors,”Nature Materials 7,no.6(June 2008):442−53に記載されており、前記文献はその全体を参照として本明細書に援用する。
場合により、LSPRが可能なナノフィーチャを、平面基板上にリソグラフィによってパターン化する。ナノフィーチャの二次元パターニングは、多数の異なる核酸分子の多重化及び高スループット分析において利点を有する。場合により、金ナノポストは、ポリメラーゼ−鋳型核酸相互作用を表面プラズモン共鳴イメージングによって検出するための基質であり、ナノポストには核酸が結合している。ナノ構造のサイズ及び期間は、表面プラズモン共鳴シグナルの増強に影響を与えることができ、場合により、対照フィルムに比べて2、3、4、5、6、7、8倍またはそれ以上のシグナル増幅をもたらし得る。
場合により、表面プラズモン共鳴を、平面において維持してもよい。クレッチマン配置(例えば、Biacore、ウプサラ、スウェーデン)及び表面プラズモン共鳴イメージング(例えば、GWC Technologies、マディソン、ウィスコンシン州、またはHoriba、京都、日本)に基づく多くの市販の装置は、市場で容易に入手可能であり、単一スポット及び多重アレイパターンの両方において、それらの表面にDNAを結合させるための十分に確立されたプロトコールを備えている。クレッチマン配置では、金属膜、一般的には金をプリズム側面に蒸着させ、ある角度で入射光を放射して表面プラズモンを励起する。エバネッセント波は、金属膜を貫通して反対側のプラズモンを励起し、それを利用して金膜の近傍の表面近傍及び表面相互作用をモニタリングしてもよい。共鳴角度において、プリズム−金界面から反射した光は、激しく減弱する。固定波長での照射を仮定すると、共鳴角度に近い固定角度での反射光の強度をモニタリングすること、ならびに表面プラズモン共鳴条件(最小反射率)を確立するために必要な入射角の変化をモニタリングすることの両方によって、結合の相互作用を調べてもよい。CCDまたはCMOSカメラなどの2D撮像装置を利用して反射光をモニタリングする場合、照射領域全体を高解像度で撮像し得る。本方法は、表面プラズモン共鳴イメージング(SPRi)と呼ばれる。本方法により、表面上の独立した領域の高スループット解析を同時に行うことができる。固定角度の構成で広帯域の照明光を使用してもよく、そこにおいて表面プラズモン共鳴につながる波長を、反射スペクトル中の窪みを探すことによって分光学的に同定する。表面相互作用は、共鳴波長のシフトによってモニタリングする。
表面プラズモン共鳴は、タンパク質−核酸相互作用をモニタリングするための非常によく確立された方法であり、核酸の結合及びデータ分析の両方のための多くの標準的なプロトコールが存在する。文献からの例示的な参考文献として、Bongsup Cho et al.,“Binding Kinetics of DNA−Protein Interaction Using Surface Plasmon Resonance,”Protocol Exchange,May 22,2013、及び、Jennifer M.Brockman,Anthony G.Frutos,and Robert M.Corn,“A Multistep Chemical Modification Procedure To Create DNA Arrays on Gold Surfaces for the Study of Protein−DNA Interactions with Surface Plasmon Resonance Imaging,”Journal of the American Chemical Society 121,no.35(September 1,1999):8044−51が挙げられ、これらの文献はその全体を参照として本明細書に援用する。
ポリメラーゼ/核酸相互作用を、局在表面プラズモンを維持可能なナノ構造表面上でモニタリングしてもよい。場合により、ポリメラーゼ/核酸相互作用を、表面プラズモンポラリトンを維持可能なナノ構造表面上でモニタリングしてもよい。
場合により、ポリメラーゼ/核酸相互作用を、局在表面プラズモンを維持可能なナノ構造表面上でモニタリングしてもよい。場合により、ポリメラーゼ/核酸相互作用を、表面プラズモンポラリトンを維持可能なナノ構造表面上でモニタリングしてもよい。
場合により、ナノホールアレイを介した異常光透過(EOT)を用いて、核酸/ポリメラーゼ相互作用をモニタリングしてもよい。プラズモン金属膜のサブ波長ナノホールを透過する光は、古典的な電磁気理論による予想よりも高い。この増強された光透過は、入射光にプラズモン共鳴を結びつけて考えることによって説明してもよく、それにより、共振波長において予想より多くの割合の光が金属ナノホールを透過する。増強された光透過は、ナノホールの寸法及びピッチ、金属の特性、ならびにナノホールを有する金属フィルムの両側の媒体の誘電特性に依存する。バイオセンサーとの関連において、金属ナノホールアレイの透過性は、金属膜と接触する媒体の屈折率に依存し、これを用いて、例えば、金属表面に結合した核酸とのポリメラーゼの相互作用を、ナノホールアレイを透過する光の強度の変化としてモニタリングしてもよい。EOT/プラズモニックナノホールアレイ手法の優れている点は、表面プラズモン共鳴の機器使用及び配置要件が、非常にコンパクトな光学及び撮像素子で置き換えられる可能性があることである。例えば、堅牢なEOTプラズモンセンサーを実装するのに、低電力のLED照明と安価なCMOSまたはCCDカメラがあれば事足りる可能性がある。ナノホールアレイに基づく例示的な表面プラズモン共鳴検出装置は、C.Escobedo et al.,“Integrated Nanohole Array Surface Plasmon Resonance Sensing Device Using a Dual−Wavelength Source,”Journal of Micromechanics and Microengineering 21,no.11(November 1,2011):115001に記載されており、前記文献はその全体を参照として本明細書に援用する。
プラズモニックナノホールアレイは、ガラス表面上に堆積させた光学的に不透明な金の層(厚さ50nm超)上にパターニングしてもよい。場合により、プラズモニックナノホールアレイは、ガラス上に堆積させた光学的に厚いアルミニウムまたは銀のフィルム上にパターニングしてもよい。場合により、ナノホールアレイは、低屈折率プラスチック上に堆積させた光学的に厚い金属層上にパターニングする。低屈折率プラスチック上にプラズモニックナノホールアレイをパターニングすることは、金属層の2つの側面上の屈折率をよりよく一致させることによって、屈折率変化に対する装置の感度を高める。場合により、ナノホールアレイの屈折率感度は、ホール間の距離を増加させることによって高まる。場合により、ナノホールアレイは、例えば、エンボス加工、キャスティング、インプリント−リソグラフィ、またはテンプレートストリッピングによって複製することによって製造する。場合により、ナノホールアレイは、コロイドを用いた自己組織化によって製造する。場合により、ナノホールアレイは、レーザー干渉リソグラフィなどのプロジェクションダイレクトパターニングによって製造する。
ナノバケット構成は、ナノホール構成よりも好ましい場合がある。ナノホール構成では、ナノフィーチャの底部はガラスもしくはプラスチックまたは他の適切な誘電体であるが、ナノバケット構成では、ナノフィーチャの底部はプラズモン金属を含む。ナノバケットアレイ構成は、局所的な屈折率に対する透過感度を維持する一方で、大量生産方式での製造がより容易である可能性がある。
場合により、安価な方法で大面積の撮像を行うために、ナノホールアレイプラズモン検出を、レンズフリーホログラフィックイメージングと組み合わせる。場合により、プラズモニックバイオセンシングプラットフォームは、ナノホールアレイを有するプラズモンチップ、チップを照射するように構成された発光ダイオードソース、及び表面上の分子結合事象によって変調し、ナノホールの回折パターンを記録するCMOSイメージャチップを含む。結合事象は、ヌクレオチド存在下でのポリメラーゼと鋳型核酸との間の閉鎖複合体の形成であってもよい。
どちらの検出スキームも、核酸を結合させる必要がある同様の金属表面を使用するため、表面プラズモン共鳴を検出するために表面を官能化する方法(核酸結合のための)は、EOTナノホールアレイに直接適用してもよい。
場合により、ポリメラーゼ/核酸相互作用に関連する屈折率変化を、プラズモンを支持しないナノ構造表面上でモニタリングしてもよい。場合により、導波モード共鳴を用いて、ポリメラーゼ/核酸相互作用をモニタリングしてもよい。導波モード共鳴または導波路モード共鳴は、回折格子またはプリズムなどの位相整合素子を導入することによって、光導波路の導波モードを励起し、同時に抽出することができる現象である。このような導波モードは、導波されたままではなく、一次元及び二次元のフォトニック結晶スラブにおいて観察されるため、「リーキーモード」とも呼ばれる。導波モード共鳴は、回折モードを、互いに隣接してまたは重ね合わせて配置された2つの光学構造の導波モードに結合させることと捉えてもよい。例えば、光導波路の上部に配置した回折格子の場合、回折モードの1つを、光導波路の導波モードに正確に結合させてもよく、その結果、導波路に沿ってそのモードが伝搬する。オフ共鳴状態の場合、光は導波路に結合しないため、構造は完全に透過性に見える場合がある(誘電体導波路を使用する場合)。共振時には、共振波長が導波路に強く入力結合し、格子−導波路界面からの下流の要素に応じて構造から出力結合する場合がある。格子結合器が導波路の全面にわたって延在する場合、入力結合した光が次の格子素子で出力結合するため、光を導波することができない。したがって、格子導波路構造では、共振は強い反射ピークとして観察されるが、構造は、オフ共振状態に対して透過性である。共振状態は、入射光の角度、格子特性、偏光及び波長に依存する。例えば格子が導波路の表面全体へ結合しているために導波モードの伝搬が存在しない場合、共振モードは、強力な光閉じ込め及び導波路層から横方向に延在する放射のエバネッセント伝搬の観点からリーキーモード共振とも呼ばれる。例えば生体分子の結合に起因する格子付近の誘電特性の変化は、導波路への入力結合に影響を及ぼし、それによって共振状態が変化する。場合により、核酸分子を格子導波路構造の表面に結合させる場合、ポリメラーゼ/核酸相互作用を、リーキーモード共鳴の波長の変化としてモニタリングし得る。
回折素子は、導波路素子を明白に必要とせずに、透過性基板上に直接用いてもよい。格子ナノ構造近傍での相互作用による共振状態の変化は、反射光または透過光の共鳴波長のシフトとしてモニタリングしてもよい。
核酸を結合させた導波モード共鳴センサーからの反射光を用いて、ポリメラーゼ/核酸相互作用をモニタリングしてもよい。照射用に広帯域の照明光を使用してもよく、反射光を分光検査することによって、ポリメラーゼ結合に起因する局所的な屈折率の変化を明らかにすることができる。
場合により、広帯域の照明光を使用し、透過光を調べて、ポリメラーゼ相互作用に起因する共鳴シフトを同定してもよい。直線偏光した狭帯域照明光を使用してもよく、交差偏光子を介して透過光をフィルタリングしてもよい。透過光は、偏光が変化したリーキーモード応答を除いて、交差偏光子によって完全に減弱する。本実施形態は、屈折率モニタリングを、安価な撮像システムでモニタリングし得る単純な透過アッセイに変換する。公表された刊行物には、光学部品の組立てが記載されている。Yousef Nazirizadeh et al.,“Low−Cost Label−Free Biosensors Using Photonic Crystals Embedded between Crossed Polarizers,”Optics Express 18,no.18(August 30,2010):19120−288を参照されたく、前記文献はその全体を参照として本明細書に援用する。
ナノ構造の表面に加えて、屈折率変調をモニタリングするために、平坦で非構造の表面も効果的に使用してもよい。場合により、干渉法を用いて、非構造の、光学的に透過性の基板に結合した核酸とのポリメラーゼの相互作用をモニタリングしてもよい。核酸分子は、ガラススライドの上面に(当該分野で公知の任意の手段によって)結合させてもよく、本システムは、スライドガラスの底面から照射する。本構成には2つの反射面が存在し、1つはガラススライドの底面からの反射、もう1つは上面からの反射であり、上面には核酸分子が結合している。2つの反射波は、互いに干渉して、経路長差に基づいて建設的または相殺的な干渉を引き起こし、結合した核酸分子に起因する誘電率の変化によって(及びその後の、結合した核酸分子とポリメラーゼとの相互作用によって)変調した上面から波を反射する。底面からの反射が変化しないため、核酸分子への任意の結合が、上面及び底面から反射したビーム間の位相差に反映される場合があり、これが今度は、観測される干渉パターンに影響を及ぼす。場合により、バイオレイヤー干渉法を用いて核酸/ポリメラーゼ相互作用をモニタリングする。バイオレイヤー干渉法は、Pall Forte Bio corporation(メンローパーク、カリフォルニア州)が販売する装置のような市販の装置で実施してもよい。
場合により、上面からの反射光は、集束光学系を用いて選択的に選択する。底面からの反射光は、焦点面にないため、無視する。核酸が結合した上面のみに着目すると、集束レンズによって集めた光は、部分反射した入射光に相当する平面波と、焦点面の分子によって収集方向へ散乱した光に相当する散乱波とを含む。これらの2つの成分は、入射光がコヒーレントである場合には干渉させてもよい。この散乱ベースの干渉検出は非常に感度が高く、単一のタンパク質分子を検出するために使用することができる。
閉鎖複合体の形成を介して後続塩基の同一性を確認した検査工程の後、オプションの組込み工程または追加の検査工程に備えて、反応条件を適切にリセット、リチャージまたは改変してもよい。場合により、ヌクレオチドを化学的に組込むことなく、後続塩基の同一性を同定した。場合により、後続塩基の同一性を、ヌクレオチドの化学的組込みによって同定し、そこにおいてその後のヌクレオチド組込みを阻害する。場合により、配列決定中の鋳型核酸を除いて検査工程のすべての成分を除去または洗い流し、系を検査前の状態に戻す。場合により、検査工程の部分的な成分を除去する。場合により、追加の成分を検査工程に追加する。
場合により、可逆的ターミネーターヌクレオチドを組込み工程で使用して、1サイクルにつき、確実に1つ、及び1つのヌクレオチドのみが組込まれるようにする。塩基同一性が検査工程で判明するため、可逆的ターミネーターヌクレオチドには標識は必要ない。非蛍光標識可逆的ターミネーターは、市販の供給元から容易に入手可能である。非標識可逆的ターミネーターヌクレオチドは、標識した可逆的ターミネーターに比べて、より小さい立体的フットプリントを有し、及び天然ヌクレオチドと同様のサイズであるため、はるかに速い組込み速度を有すると予想される。
本明細書において試薬サイクルシークエンシング法を部分的に開示し、そこにおいては、検査及び/または組込みのサイクル毎に配列決定試薬を次々に導入する。場合により、配列決定反応混合物は、ポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸、及び少なくとも1種類のヌクレオチドを含有する。場合により、ヌクレオチド及び/またはポリメラーゼは、配列決定反応混合物に周期的に導入する。場合により、配列決定反応混合物は、複数のポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸、及びヌクレオチドを含有する。場合により、複数のヌクレオチド及び/または複数のポリメラーゼを、配列決定反応混合物に周期的に導入する。場合により、配列決定反応の検査工程は、配列決定反応の組込み工程とは異なる組成を有する。
本明細書中で提示する場合、ポリメラーゼは、単一のポリメラーゼまたは複数のポリメラーゼを指す。本明細書で提示する場合、プライミングした鋳型核酸または鋳型核酸は、単一のプライミングした鋳型核酸もしくは単一鋳型核酸、または複数のプライミングした鋳型核酸もしくは複数の鋳型核酸を指す。本明細書中で提示する場合、ヌクレオチドは、1つのヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドを指す。本明細書中で提示する場合、単一のヌクレオチドは1ヌクレオチドである。場合により、配列決定反応のヌクレオチドには、以下のヌクレオチドのうちの1、2、3、または4種類が含まれるが、必ずしもこれらに限定するものではない:dATP、dGTP、dCTP、及びdTTP。場合により、試薬サイクリングは、鋳型核酸をプラットフォームに固定化し、現在の反応混合物を洗い流し、新しい反応混合物を鋳型核酸に添加することを含む。
場合により、1種以上のヌクレオチドを配列決定反応に連続的に添加し、そして除去する。場合により、1、2、3、4種、またはそれ以上の種類のヌクレオチドを反応混合物に添加し、そして除去する。例えば、1つの種類のヌクレオチドを配列決定反応に加え、除去し、別の種類のヌクレオチドに置き換える。場合により、検査工程中に存在するヌクレオチドの種類は、組込み工程中に存在するヌクレオチドの種類とは異なる。場合により、1つの検査工程中に存在するヌクレオチドの種類は、連続検査工程中に存在するヌクレオチドの種類とは異なる(すなわち、連続検査工程を組込み工程の前に実施する)。場合により、1、2、3、4種またはそれ以上の種類のヌクレオチドが検査反応混合物中に存在し、そして1、2、3、4種またはそれ以上の種類のヌクレオチドが組込み反応混合物中に存在する。
場合により、ポリメラーゼを、周期的に配列決定反応に添加し、そして除去する。1つ以上の異なる種類のポリメラーゼを、周期的に配列決定反応に添加し、除去してもよい。場合により、検査工程中に存在するポリメラーゼの種類は、組込み工程中に存在するポリメラーゼの種類とは異なる。1つの検査工程中に存在するポリメラーゼの種類は、連続検査工程中に存在するポリメラーゼの種類とは異なる場合がある(すなわち、連続検査工程を組込み工程の前に実施する)。
場合により、試薬の存在、pH、温度、及びイオン強度などの試薬条件を、配列決定反応を通して変化させる。場合により、金属を配列決定反応に周期的に添加し、そして除去する。例えば、触媒金属イオンを、検査工程中に存在させず、組込み工程中に存在させてもよい。あるいは、ポリメラーゼ阻害剤を、検査工程中に存在させ、組込み工程中に存在させなくてもよい。場合により、配列決定反応中に消費される反応成分を、配列決定反応中の任意の時点で新しい成分を添加することによって補充する。
一度に1つの種類のヌクレオチドを、ポリメラーゼとともに閉鎖複合体形成に有利な反応条件で添加することができる。後続の正しいヌクレオチドが存在する場合、ポリメラーゼは鋳型核酸にのみ結合する。各ヌクレオチド添加後の洗浄工程により、すべての余剰のポリメラーゼ及び閉鎖複合体に関与しないヌクレオチドを反応混合物から確実に除去することができる。ヌクレオチドを既知の順序で一度に1つずつ添加する場合、添加したヌクレオチドが後続の正しいヌクレオチドである場合、鋳型核酸上の後続塩基を閉鎖複合体の形成によって判定する。閉鎖複合体は、立体構造変化及びポリメラーゼ−鋳型核酸−ヌクレオチド相互作用の安定性の増加の両方によって同定してもよい。場合により、後続の正しいヌクレオチドの存在下で形成する閉鎖複合体の安定性は、誤ったヌクレオチドの存在下でのポリメラーゼと鋳型核酸との不安定な相互作用よりも少なくとも1桁大きい。洗浄工程を用いることにより、未結合のヌクレオチド及びポリメラーゼが確実に存在せず、反応物中に存在する唯一のヌクレオチドが、ポリメラーゼと鋳型核酸との閉鎖複合体中に隔離されたヌクレオチドであることが保証される。一旦、鋳型核酸上の後続塩基が決定すると、閉鎖複合体中に隔離した後続の正しいヌクレオチドを、閉鎖複合体の解離または不安定化に有利な反応条件で流し、鋳型核酸プライマー鎖を1塩基伸長させることによって、組込んでもよい(組込み)。したがって、洗浄工程によって、組込む唯一のヌクレオチドが閉鎖複合体に由来する後続の正しいヌクレオチドであることが保証される。この試薬サイクリング法を繰り返し、核酸配列を決定してもよい。この試薬サイクリング法は、単一の鋳型核酸分子、またはPCR産物もしくはローリングサークル増幅DNAなどのクローン集団の収集に適用してもよい。多くの異なる鋳型を、それらを例えば固体支持体上に配列させている場合、並行して配列決定することができる。場合により、洗浄工程は、二元複合体形成を不安定化させる。場合により、洗浄は、二元複合体を確実に除去し、安定化した閉鎖複合体を反応混合物中に残すことが保証される期間にわたって行う。場合により、洗浄工程は、反応物を高イオン強度または高pH溶液で洗浄することを含む。
場合により、組込み工程は3段階工程である。第一段階では、閉鎖複合体の形成に有利な反応条件において、高忠実度のポリメラーゼとともにプライミングした鋳型核酸を含む反応物に4種類のヌクレオチドすべてを導入し、後続の正しいヌクレオチドは、鋳型核酸と安定な複合体を形成する。第二段階では、余剰のヌクレオチド及び未結合のポリメラーゼを洗い流す。第三段階では、閉鎖複合体が不安定化し、閉鎖複合体内の隔離したヌクレオチドが鋳型核酸プライマーの3′末端に組込まれるように反応条件を改変する。例えば、非特異的DNA結合ドメインをポリメラーゼ(例えば、Phusionポリメラーゼ)に融合させること、及び高濃度のヌクレオチドを利用して閉鎖複合体内に確実に正しいヌクレオチドを常に存在させることなどによって、組込み工程において緊密なポリメラーゼ−核酸複合体を形成させることができる。
ポリメラーゼ分子は、ポリメラーゼ合成反応に通常必要とされる二価金属イオンが存在しない場合でも、後続の正しいヌクレオチドの存在下、フィンガー閉構造で、プライミングした核酸分子に結合する。立体構造変化により、後続の鋳型塩基に相補的なヌクレオチドをポリメラーゼの活性部位内に捕捉する。場合により、閉鎖複合体の形成に基づいて、鋳型核酸上の後続塩基の同一性を決定してもよい。場合により、ポリメラーゼの存在下、触媒二価金属イオンの非存在下で、プライミングした鋳型核酸に異なるヌクレオチドを連続的に接触させてもよく;そこにおいて閉鎖複合体が形成する場合、それは鋳型核酸と現在接触しているヌクレオチドが、鋳型核酸上の後続塩基に対する相補的ヌクレオチドであることを示している。既知の順序で鋳型核酸にヌクレオチドを接触させる(ポリメラーゼの存在下、触媒金属イオンの非存在下で)ことにより、特定の位置で閉鎖複合体形成が誘導される順序に基づいて相補的なヌクレオチドを容易に同定できる。場合により、各ヌクレオチド添加後に適切な洗浄工程を実施して、すべての余剰の酵素及びヌクレオチドを確実に除去し、活性部位に後続の正しいヌクレオチドを保有する閉鎖複合体内の核酸に結合するポリメラーゼのみを残す。閉構造状態のポリメラーゼの立体構造変化を明示することによって、またはポリメラーゼ−核酸二元複合体に比べて、もしくはポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸、及び誤ったヌクレオチドの間の不安定な相互作用に比べてポリメラーゼ/核酸/後続の正しいヌクレオチドの複合体の安定性が高いことを明示することによって、閉鎖複合体の同定を行ってもよい。
場合により、後続の相補的ヌクレオチドを同定する工程(検査工程)は、ヌクレオチドの化学的組込みを阻害する条件下で、固定化したプライミングした鋳型核酸を、ポリメラーゼ及び1種類のヌクレオチドを含む検査混合物に接触させ、洗浄工程により未結合の試薬を除去し、固定化した核酸上のポリメラーゼ閉鎖複合体の存在を検出し、及び閉鎖複合体の形成を検出するまで異なる種類のヌクレオチドで連続的にa〜cの工程を繰り返す工程を含む。閉鎖複合体は、立体構造変化及びポリメラーゼ/核酸/後続の正しいヌクレオチド複合体の安定性の増加の両方によって同定してもよい。連続的なヌクレオチド添加時の洗浄工程は、閉鎖複合体の形成を高い忠実度で検出することができる検出機構、例えばエバネッセント波検出法または閉鎖複合体からのシグナルを選択的にモニタリングする方法を用いて省略することができる。上記の検査工程の後に、閉鎖複合体を触媒金属イオンと接触させて、閉鎖複合体内に隔離したヌクレオチドをプライマーの3′末端に共有結合的に添加することを含む組込み工程を行ってもよい。場合により、組込み工程は、ヌクレオチドの化学的組込みを阻害する条件下で、複数の種類のヌクレオチドとポリメラーゼとの組合せを含有するプレ組込み混合物と固定化した核酸とを接触させる工程を含む場合があり;このプレ組込み混合物は、高効率の閉鎖複合体形成を確実にするための添加剤及び溶液条件を含む場合がある(例えば、低塩濃度条件)。この方法はまた、未結合試薬を除去するための洗浄工程を実施し、触媒金属イオンを含む組込み混合物とともに固定化した複合体を提供し、ポリメラーゼの活性部位内に隔離したヌクレオチドを化学的に組込むことを含む場合がある。プレ組込み混合物は非常に効率的な閉鎖複合体の形成を保証し、一方、洗浄工程及び組込み混合物はプライマーの3′末端に確実に単一のヌクレオチドを添加することを保証する。場合により、1つの種類のヌクレオチドが添加されたことを検査した後に、組込み工程を直接行う場合がある。例えば、配列決定に用いる繰り返しパターンは、以下の手順パターン(i)dATP+/ポリメラーゼ、(ii)洗浄、(iii)Mg、(iv)洗浄、(v)dTTP+/ポリメラーゼ、(vi)洗浄、(vii)Mg、(viii)洗浄、(ix)dCTP+/ポリメラーゼ、(x)洗浄、(xi)Mg、(xii)洗浄、(xiii)dGTP+/ポリメラーゼ、(xiv)洗浄、(xv)Mg、(xvi)洗浄を含む場合がある。場合により、配列決定に用いる繰り返しパターンは、(i)dATP+/ポリメラーゼ、(ii)洗浄、(iii)dTTP+/ポリメラーゼ、(iv)洗浄、(v)dGTP+/ポリメラーゼ、(vi)洗浄、(vii)dCTP+/ポリメラーゼ、(viii)洗浄、(ix)プレ組込み混合物、(x)洗浄、(xi)Mg、(xii)洗浄を含む場合がある。洗浄工程は、通常、金属イオンキレート剤及び他の小分子を含み、検査工程中の偶発的な組込みを防止する。組込み工程後、プライマー鎖が、通常1塩基伸長する。このプロセスを繰り返すことにより、核酸の連続核酸塩基を同定し、核酸配列を効果的に決定し得る。場合により、検査工程を、高塩濃度条件、例えば50mM〜1500mMの塩濃度条件下で実施する。
配列決定用途では、流体の利用及び試薬の交換を最小限に留めるかまたは排除することが有効であり得る。ポンプ、バルブ、及び試薬容器を取り払うことにより、より小型で安価な装置が可能となる。本明細書では、「オールイン」型配列決定方法を部分的に開示し、本方法では、検査及び/または組込みのサイクルごとに試薬を次々に導入する必要性はなくなる。試薬は反応物に一度だけ添加し、sequencing−by−synthesis法を、配列決定用反応物中に既に封入した試薬を操作することによって行う。このようなスキームには、異なるヌクレオチドを区別する方法、核酸のクローン集団及び/または異なる核酸分子にわたってヌクレオチドの組込みを同期させる方法、及び1サイクルにつき1つのヌクレオチドのみを確実に添加する方法が必要である。場合により、配列決定反応混合物は、ポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸、及び少なくとも1つの種類のヌクレオチドを含有する。場合により、配列決定反応用混合物は、複数のポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸、及びヌクレオチドを含有する。本明細書中で提示する場合、ポリメラーゼは、単一のポリメラーゼまたは複数のポリメラーゼを指す。本明細書中で提示する場合、プライミングした鋳型核酸または鋳型核酸は、単一のプライミングした鋳型核酸もしくは単一の鋳型核酸、または複数のプライミングした鋳型核酸もしくは複数の鋳型核酸を指す。本明細書中で提示する場合、ヌクレオチドは、1つのヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドを指す。本明細書中で提示する場合、単一のヌクレオチドは1ヌクレオチドである。場合により、配列決定反応用のヌクレオチドとして、以下のヌクレオチドのうちの1、2、3、または4種類が挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない:dATP、dGTP、dCTP、及びdTTP。
場合により、検査工程及び組込み工程は、単一の配列決定反応混合物中で行う。
場合により、1、2、3、4種またはそれ以上の種類のヌクレオチド(例えばdATP、dGTP、dCTP、dTTP)が反応混合物中に同時に存在し、そのうちの1種類のヌクレオチドが後続の正しいヌクレオチドである。反応混合物は、少なくとも1つのポリメラーゼ及び少なくとも1つのプライミングした鋳型核酸をさらに含む。場合により、鋳型核酸は鋳型核酸のクローン集団である。場合により、ポリメラーゼ、プライミングした鋳型核酸、及びヌクレオチドは、検査反応条件下で閉鎖複合体を形成する。
提供する方法では、4種類のヌクレオチドを別個の異なる濃度で存在させることができ、そこにおいて鋳型核酸に対するポリメラーゼの拡散及び結合時間は、後続の正しいヌクレオチドとなるべき4種類のヌクレオチドの濃度が異なっているため、4種類のヌクレオチドのそれぞれについて異なっている。例えば、最高濃度のヌクレオチドは鋳型核酸上のその相補的塩基に短時間で結合し、最低濃度のヌクレオチドは鋳型核酸上のその相補的塩基により遅い時間で結合し;そこにおいて鋳型核酸上の相補的塩基への結合は、閉状態の閉鎖複合体内に後続の正しいヌクレオチドを有する鋳型核酸へのポリメラーゼの結合を指す。したがって、後続の正しいヌクレオチドの同一性は、閉鎖複合体内の鋳型核酸へのポリメラーゼの結合の速度または時間をモニタリングすることによって決定される。場合により、4種類のヌクレオチドをそれらの濃度によって区別してもよく、そこにおいて異なる濃度のヌクレオチドは、核酸へのポリメラーゼの結合に対する測定可能な異なる結合速度をもたらす。場合により、4種類のヌクレオチドをそれらの濃度によって区別してもよく、そこにおいて異なる濃度のヌクレオチドは、安定化した閉鎖複合体の形成のための測定可能な異なる結合速度をもたらす。場合により、ポリメラーゼを標識する。いくつかの例では、ポリメラーゼを標識せず、本明細書に開示するか、または当該技術分野で公知の任意の標識フリー検出法を用いる。場合により、ポリメラーゼが有する検出可能な特徴を介して、ポリメラーゼの核酸への結合をモニタリングする。場合により、ポリメラーゼが有する検出可能な特徴を介して、安定化した閉鎖複合体の形成をモニタリングする。ポリメラーゼが有する検出可能な特徴として、光学的、電気的、熱的、比色定量的な特徴、質量、及びそれらの任意の組合せが挙げられ得るが、必ずしもこれらに限定するものではない。
場合により、1、2、3、4種、またはそれ以上の種類のヌクレオチド(例えば、dATP、dTTP、dCTP、dGTP)を1、2、3、4種、またはそれ以上の異なるポリメラーゼに係留させ;そこにおいて各種ヌクレオチドを異なるポリメラーゼに係留させ、各ポリメラーゼは、他のポリメラーゼとは異なるタグまたは特徴を有し、同定可能である。係留したすべての種類のヌクレオチドは、係留したヌクレオチド−ポリメラーゼを含む閉鎖複合体を形成する配列決定反応混合物に一緒に添加することができ;閉鎖複合体をモニタリングしてポリメラーゼを同定し、それによってポリメラーゼが係留している後続の正しいヌクレオチドを同定する。係留は、ヌクレオチドのγリン酸において、多重リン酸基及びリンカー分子を介して起こり得る。そのようなγリン酸連結方法は当該分野で標準的であり、そこにおいてフルオロフォアをγリン酸リンカーに結合させる。タグとして、光学的、電気的、熱的、比色定量的な特徴、質量、または他の検出可能な特徴が挙げられ得るが、必ずしもこれらに限定するものではない。場合により、異なる種類のヌクレオチドを識別可能なタグによって同定する。場合により、識別可能なタグを、各ヌクレオチドのγリン酸の位置に結合させる。
場合により、配列決定反応混合物は、触媒金属イオンを含む。場合により、触媒金属イオンは、一過性の様式で配列決定反応の任意の時点でポリメラーゼと反応するために利用可能である。ロバストな配列決定を保証するために、短時間の間、触媒金属イオンが利用可能であり、これによって組込み工程の間に、鋳型核酸中の後続塩基に相補的な単一のヌクレオチドをプライマーの3′末端に組込むことが可能になる。この場合、他のヌクレオチド、例えば鋳型核酸中の後続塩基の下流の塩基に相補的なヌクレオチドなどが組込まれることはない。場合により、触媒金属イオンマグネシウムを、配列決定反応混合物中に光ケージド複合体(例えばDM−ニトロフェン)として存在させ、それによって、局所的UV照射によりマグネシウムを遊離させ、ポリメラーゼをヌクレオチド組込みに利用できるようにする。さらに、配列決定反応混合物にEDTAを含有させてもよく、そこにおいてマグネシウムは、触媒ヌクレオチド組込み後にポリメラーゼ活性部位から遊離し、配列決定反応混合物中のEDTAに捕捉され、それによってマグネシウムは、その後のヌクレオチド組込みを触媒することができなくなる。
したがって、提供する方法において、配列決定反応物中にキレート化またはケージド形態で触媒金属イオンを存在させることができ、トリガーによってそこから遊離させることができる。例えば、触媒金属イオンは、閉鎖複合体における後続の正しいヌクレオチドの組込みを触媒し、触媒金属イオンは、活性部位から遊離すると、第二のキレート剤またはケージング剤によって隔離され、金属イオンはその後の組込みを触媒することができなくなる。キレート化またはケージド複合体からの触媒金属イオンの局所的な遊離は、エバネッセント波照射または構造化照明のような局所的非ケージングまたは非キレート化スキームを用いることによって保証される。触媒金属イオンの徐放は、例えば、熱的手段によって行ってもよい。光ケージド複合体からの触媒金属イオンの徐放は、閉じ込め光学場、例えば導波路または全反射照明顕微鏡などのエバネッセント照射によって鋳型核酸の近傍に局所的に遊離させてもよい。触媒金属イオンの徐放は、例えば、鋳型核酸の近傍の溶液のpHを変化させることによって行ってもよい。EDTA及びEGTAのようなキレート剤はpH依存性である。5未満のpHでは、二価陽イオンMg2+及びMn2+はEDTAによって効果的にキレート化されない。鋳型核酸の近傍でpHを制御可能に操作する方法により、触媒金属イオンをキレート剤から徐放することが可能になる。場合により、核酸が付着している表面に電圧を印加することによって、局所的なpH変化を誘導する。pHに基づく方法は、pHがキレート化範囲に戻った場合に、金属がそのキレート化形態に戻るという利点を提供する。
場合により、触媒金属イオンはポリメラーゼの活性部位に強く結合し、そのため、単一のヌクレオチド組込み後に鋳型核酸からポリメラーゼを除去する必要がある。ポリメラーゼの除去は、各ヌクレオチドの添加後に合成した鎖(プライマー)の3′末端から脱離する高度にディストリビューティブなポリメラーゼを用いて達成してもよい。未結合のポリメラーゼをさらに電場または磁場に供して核酸分子の近傍から除去してもよい。ポリメラーゼに結合した任意の金属イオンを、配列決定反応混合物中に存在するキレート剤によって、またはポリメラーゼの活性部位への結合に関して金属イオンと競合する分子によって、閉鎖複合体の形成を妨げることなく隔離してもよい。配列決定(すなわち、検査及び組込み)をもう1ラウンド行うために、鋳型核酸からポリメラーゼを除去または移動させる力(例えば、電場、磁場、及び/またはキレート剤)を停止させて、ポリメラーゼが鋳型核酸に近づけるようにしてもよい。次のラウンドの配列決定は、非限定的な例では、閉鎖複合体を形成し、鋳型核酸及び/または閉鎖複合体の近傍から未結合のポリメラーゼを除去し、触媒金属イオンの遊離を制御して、閉鎖複合体内に隔離した単一のヌクレオチドを組込み、単一の組込み後に鋳型核酸から解離したポリメラーゼを鋳型核酸の近傍から除去し、キレート剤または競合結合剤を用いて遊離の触媒金属イオンを隔離し、及びポリメラーゼが鋳型核酸に近づいて配列決定の次のサイクルを行うことを可能にすることを含む。
本明細書では、核酸配列を同定するためのポリメラーゼ−核酸結合反応を提供する。核酸配列の同定は、核酸修飾に関する情報を含む場合がある。核酸修飾には、メチル化及びヒドロキシメチル化が含まれる。メチル化は、鋳型核酸のシトシン塩基上で生じる場合がある。DNAメチル化は、遺伝子の発現を安定的に変化させる可能性がある。DNAメチル化はまた、様々な種類の癌、アテローム性動脈硬化症、及び老化の進行においても示される。したがって、DNAメチル化は、ヒト疾患のエピジェネティックバイオマーカーとして機能し得る。
場合により、本明細書で提供する結合方法による配列決定の間に、鋳型核酸上の1つ以上のシトシンメチル化を同定する。配列決定する前に鋳型核酸をクローニング増幅してもよく、増幅産物はそれらの鋳型核酸と同じメチル化を有する。鋳型核酸の増幅は、DNAメチルトランスフェラーゼを用いて増幅産物のメチル化を達成することを含む場合がある。ポリメラーゼ及び1種類以上のヌクレオチドを含有する反応混合物に鋳型核酸または増幅した鋳型核酸を加え、ポリメラーゼと核酸との相互作用をモニタリングする。場合により、メチル化シトシン存在下でのポリメラーゼと鋳型核酸との相互作用は、未修飾シトシン存在下での相互作用とは異なる。したがって、ポリメラーゼ−核酸相互作用の検査に基づいて、修飾ヌクレオチドの同一性を決定する。
本明細書では、とりわけ、ヌクレオチド存在下でポリメラーゼとプライミングした鋳型核酸との相互作用を検査し、鋳型核酸配列中の後続塩基を同定するか、または配列決定中に遭遇するホモポリマー領域を埋める必要があるヌクレオチドの数を同定することを含む、配列決定反応を行うためのシステムを提供する。場合により、検査は、ヌクレオチド存在下で、プライミングした鋳型核酸に対するポリメラーゼの親和性をモニタリングすることを含む。場合により、ポリメラーゼは核酸と一時的に結合し、結合反応速度及び親和性は鋳型核酸上の後続塩基の同一性に関する情報を提供する。場合により、閉鎖複合体が形成し、そこにおいて閉鎖複合体の形成に関与する反応条件は、核酸上の後続塩基に関する情報を提供する。場合により、必ずしも限定するものではないが、ポリメラーゼドメインの架橋、ポリメラーゼの核酸への架橋、低分子によるアロステリック阻害、不拮抗阻害剤、競合阻害剤、非競合阻害剤、及び変性などの手段の1つまたは組合せによって、ポリメラーゼをその閉鎖複合体の重合部位に捕捉し;そこにおいて、捕捉したポリメラーゼ複合体の形成は、核酸鋳型上の後続塩基の同一性に関する情報を提供する。
また、本明細書に開示する任意の配列決定方法の1つ以上の工程を実行するためのシステムも提供する。場合により、システムは、ヌクレオチド存在下でポリメラーゼと鋳型核酸との結合アッセイを実施するために必要な成分及び試薬を含み、鋳型核酸をナノ構造上に提供する。場合により、システムは、鋳型DNA分子をナノ構造に結合させるために必要な1つ以上の試薬及び指示書を含む。例えば、システムは、表面プラズモン共鳴と共に用いて結合反応速度を測定するように構成されたチップなどのナノ構造を提供する。そのようなチップの一例は、CM5センサーSチップ(GE Healthcare、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)である。システムは、SPR機器(例えば、Biacore)のような機器を提供してもよい。システムは、ストレプトアビジン及び/またはビオチンを提供してもよい。場合により、システムは、ビオチン化鋳型DNAを調製するためのビオチン−DNA、DNAリガーゼ、緩衝液、及び/またはDNAポリメラーゼを提供する。場合により、システムは、ビオチン化DNA精製のためのゲルまたは試薬(例えば、フェノール:クロロホルム)を提供する。あるいは、システムは、ビオチン化鋳型DNAの特徴決定、例えば、質量分析またはHPLC用の試薬を提供する。場合により、システムは、ストレプトアビジン、チップ、試薬、機器、及び/またはチップ上のストレプトアビジンの固定化に関する指示書を含む。場合により、あらかじめ鋳型DNAのコーティング用に構成されたチップをシステムに提供し、そこにおいて鋳型核酸または修飾した鋳型核酸(例えば、ビオチン化鋳型DNA)に結合可能な試薬でチップを固定化する。場合により、システムは、チップ再生用の試薬を提供する。
また、本明細書に開示する任意の配列決定方法の1つ以上の工程を実行するためのシステムも提供する。場合により、システムは、ヌクレオチド存在下でポリメラーゼと鋳型核酸との結合アッセイを実施するために必要な成分及び試薬を含み、鋳型核酸をナノ粒子上に提供する。場合により、システムは、鋳型DNA分子をナノ粒子に結合させるために必要な1つ以上の試薬及び指示書を含む。ナノ粒子は、例えば、金ナノ粒子を用いることによって、核酸−ポリメラーゼ相互作用の電気化学的検出用に構成してもよい。場合により、水性金コロイド溶液と、遊離チオールまたはジスルフィド基をその末端に有する鋳型DNA分子との間でDNA−ナノ粒子複合体を形成させる。複合体は、同じ核酸配列を有するか、または有していない場合があるクローニング増幅したDNA分子集団を含む場合がある。場合により、ナノ粒子複合体を、高温(例えば>60℃)及び高イオン強度(例えば1M Na)での凝集及び沈殿に対して安定化させる。場合により、システムは、ジスルフィドまたはチオールを有する鋳型DNA分子を生成することを含む、ナノ粒子に付着させるための鋳型DNA分子の調製用の試薬を提供する。ジスルフィドを含有する鋳型核酸は、例えば、3′−チオール修飾剤であるコントロールド・ポアガラス(CPG)を使用するか、またはユニバーサル担体CPGで開始し、ジスルフィド修飾剤ホスホロアミダイトを配列中の第一モノマーとして添加することによって合成してもよい。システムは、ジスルフィド修飾した鋳型核酸を得るための核酸合成試薬及び/または指示書を提供してもよい。チオール含有鋳型核酸はまた、5′−トリチルチオール修飾剤ホスホロアミダイトを用いた核酸合成中にも生成し得る。システムは、例えば、電気泳動または遠心分離を用いてナノ粒子複合体を精製するための試薬及び/または指示書を提供してもよい。場合により、ナノ粒子複合体を用いて、ポリメラーゼ−鋳型核酸間の相互作用を比色定量的にモニタリングする。この場合、ナノ粒子複合体の融解温度は、強力なポリメラーゼ結合の存在下で上昇する。したがって、DNA結合の強さを、この融解転移の変化によって測定することができ、これは色の変化によって観察できる。
また、本明細書に開示する任意の配列決定方法の1つ以上の工程を実行するためのシステムも提供する。場合により、システムは、検出可能なポリメラーゼを用いて、ヌクレオチド存在下でポリメラーゼと鋳型核酸との結合アッセイを行うのに必要な成分及び試薬を含む。場合により、ポリメラーゼを検出可能に標識する。場合により、ポリメラーゼの固有の性質、例えば芳香族アミノ酸を用いてポリメラーゼを検出する。場合により、ポリメラーゼ及び鋳型核酸を、溶液中で使用するために支持体への複合体化を行わずに構成する。ポリメラーゼ上の検出可能な標識はフルオロフォアであってもよく、そこにおいて蛍光を用いてポリメラーゼ−鋳型核酸間の結合事象をモニタリングする。場合により、検出可能なポリメラーゼを、溶液中の鋳型核酸、または支持構造に結合させた鋳型核酸と組み合わせて用いてもよい。場合により、ポリメラーゼの1つ以上のシステイン残基をCy3−マレイミドまたはCy3−ヨードアセトアミドで標識する。場合により、システムは、蛍光標識したポリメラーゼ分子を調製するために必要な試薬及び/または指示書を含む。システムは、蛍光標識したポリメラーゼを精製するための試薬及び/または指示書を含む場合がある。
開示する方法及び組成物に対して使用することができ、併用することができ、調製に用いることができ、またはその産物である物質、組成物、及び成分を開示する。これらの物質及び他の物質を本明細書に開示し、これらの物質の組合せ、サブセット、相互作用、グループなどを開示する場合、これらの化合物のそれぞれの様々な個別及び集合的な組合せならびに順列の具体的な参照は明示的に開示し得るものではないが、それぞれを具体的に想定して本明細書に記載する。例えば、方法を開示し、検討し、その方法を含む多くの分子に対してなし得る多数の改変について検討する場合、方法のそれぞれの組合せ及び順列、ならびに可能な改変は、それに反するような特段の指定のない限り、具体的に想定される。同様に、これらの任意のサブセットまたは組合せも具体的に考慮し、開示する。本概念は、開示する組成物を使用する方法における工程を含むが必ずしもこれらに限定されない本開示のすべての態様に適用される。したがって、実行可能な追加の工程が多岐に渡る場合、これらの追加の工程のそれぞれは、開示する方法の任意の特定の方法の工程または方法の工程の組合せで実行し得ること、及びそのようなそれぞれの組合せまたは組合せのサブセットを具体的に考慮し、開示するものとみなすべきであることを理解されたい。
本明細書に引用する刊行物及びそれらを引用する資料は、その全体を参照として具体的に本明細書に援用する。本明細書中で言及するすべての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも個々の刊行物、特許、または特許出願のそれぞれを、具体的かつ個別に参照として援用することを示すかのように、参照として本明細書に援用する。
多くの実施形態を記載してきた。それにもかかわらず、様々な改変をなし得ることが理解されるであろう。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲内にある。
実施例1.結合工程におけるマグネシウム存在下または非存在下での塩基配列の決定
方法及び材料。ポリメラーゼ緩衝液:20mMトリス、pH8、300mM NaCl、5mM DTT、100μM dNTP、150nM Klenow、0.01% BSA、0.02% tween−20、10mM MgCl2。検査緩衝液:20mMトリス、pH8、300mM NaCl、5mM DTT、100μM dNTP、150nM Klenow、0.01% BSA、0.02% tween−20。組込み緩衝液:20mMトリス、pH8、300mM NaCl、5mM DTT、0.01% BSA、0.02% tween−20,10mM MgCl2。洗浄緩衝液:20mMトリス、pH8、300mM NaCl、5mM DTT、0.01% BSA、0.02% tween−20。
図1は、結合または検査工程中にマグネシウムが存在するか、または存在しない場合の非標識光学検出法を用いた実験の結果を示す。第一の流れはdCTP(C:Tミスマッチ)であり、第二の流れはdATP(A:Tマッチ)であった。図1の実線は、ポリメラーゼ緩衝液による結果を示す。プレ定常状態の速度定数は、マッチA及びミスマッチC工程に対してそれぞれ0.0106及び0.0084であった。差異が小さすぎるため、同種塩基を正確に区別できない。図1の破線は、検査緩衝液中でのマグネシウム非存在下での検査工程を示し、これに続いて組込み緩衝液への浸漬を行う。1.1nmのシグナル閾値は、正しい塩基を正確に決定することができた。これらの結果は、検査時に緩衝液中にマグネシウムが含まれる場合、検出プラットフォームが、塩基のマッチとミスマッチとを識別しうる一過性の動態を捕捉することができず、配列決定ができないであろうことを示している(ポリメラーゼ緩衝液、実線、図1)。対照的に、マグネシウム非存在下での結合では、正しい塩基と誤った塩基とを非常によく識別することができた(検査緩衝液、破線、図1)。正しい塩基配列は、結合速度ではなくシグナル閾値によって判定された。
実施例2:Bst酵素結合反応速度を用いた配列決定
結合反応速度を用いて、検査工程中、すなわちポリメラーゼ、DNA鋳型、及びヌクレオチドの間の三元複合体の形成中に正しい塩基またはヌクレオチドを決定することができる。これを図2に示す。Bst酵素は、正しい塩基が存在する場合には二峰性の結合曲線を示し、誤った塩基が存在する場合には指数関数的な結合挙動を示す(図2)。したがって、配列決定中に正しい塩基またはヌクレオチドの識別及び検出が可能になる。
実験条件。FORTEBIO(登録商標)(メンローパーク、カリフォルニア州)Octet instrument(Red384またはqk)は、バイオレイヤー干渉法を使用して、光ファイバーチップの表面で結合反応を測定する。チップをストレプトアビジン(SA)で官能化し、鋳型の3′末端近くの配列に相補的なプライマーとハイブリダイズした5′ビオチン標識DNA鋳型に結合できるようにした。PhiX_matchC及びphiX_matchAを個々のチップにロードした。プライマー−鋳型を、0.01〜0.02%のBSA及び0.01〜0.02%のtween20(ローディングバッファー)を含有する1〜2×PBS中で100〜500nMのチップにロードした。FP2プライマーは鋳型に対して1.25〜2倍過剰であった。シグナルの変化によってローディングをモニタリングし、これは通常30℃で5分以内にプラトーに達した。チップをローディングバッファー中に1〜5分間浸漬し、未結合のDNA物質を除去した。塩基読上げのために、一般的には、0.01〜0.02%のBSA及び0.01〜0.02%のtween20(LS緩衝液)を補充した1×Taq緩衝液(10mM Tris−HCl、50mM KCl、25℃でpH8.3、マグネシウムフリー)、100nMのポリメラーゼ酵素、100μMのヌクレオチド、ならびに50〜300mMの様々な濃度の追加のNaClを含む溶液にチップを浸漬した。本実験では、正しい塩基を決定するために、30nMのBst2.0酵素、100μMのdNTP、及び150mMのNaClを含有するLS緩衝液を使用した。phiX_matchC二重鎖は三元複合体を形成し、正しい後続ヌクレオチド(同種)が存在するため、結合シグナルの増加を示す。phiX_matchAは、誤ったヌクレオチド(異種)であるため、そうはならない。検査工程の後、5mMのMgを含有するLS緩衝液にセンサーを浸漬して、ポリメラーゼがヌクレオチドを組込むことができるようにし、続いて150mMのNaClを含有するLS緩衝液で洗浄した。
結果。反復サイクリングの結果、この方法が配列決定に使用できることが明らかになった。以下の表は、最初の3塩基がこの検査方法によって正しく同定されたことを示している。4塩基目は、検査方法による読上げはなく、複数個の付加が生じたことを反映している可能性がある。これは、その後の塩基が正しく同定されたという事実によって裏付けられる。全体として、6塩基中5塩基が正しく同定された。さらに、誤った塩基の誤った組込みも観察されなかった。
実施例3:結合による配列決定
本実施例では、検査工程の間に高濃度の塩を用いて配列決定反応を行い、次いで組込み工程を行った。
実験条件。使用した結合/検査緩衝液は、250mM NaCl、100μM dGTP、dCTP、dATP、またはdTTP、1.5mM Sr、100nM Klenow exo−ポリメラーゼを含むLS緩衝液であった。使用した組込み緩衝液は、50mM NaCl、50mM MgClを含有するLS緩衝液であり、使用した洗浄緩衝液は、250mM NaClを含有するLS緩衝液であった。FORTEBIO(登録商標)Octet Red384システム(メンローパーク、カリフォルニア州)を使用し、SAセンサーチップに結合したビオチンphiX_matchC鋳型及びFP2プライマー配列を用いて配列決定サイクルを行った。配列決定工程は、以下のものからなった:a)dATPによる検査、b)組込み、c)洗浄;d)dGTPによる検査、e)組込み、f)洗浄;g)dCTPによる検査、h)組込み、i)洗浄;j)dTTPによる検査、k)組込み、l)洗浄、続いてa)からのこれらの工程の繰り返し。塩基読上げについては、検査工程は、前回の洗浄工程におけるベースライン及び/または対照配列と比較して、それらを上回る検出可能なシグナルを生成した。
結果。本方法を用いて、12塩基を正しく同定した。結合シグナルが低すぎたために同定されなかった2つの塩基が存在していた。本実験では、以下の表に示すように12/14の塩基を正しく同定した。
実施例4:マッチ/ミスマッチ塩基識別における塩濃度
FORTEBIO(登録商標)Octet instrument(Red 384またはqk)(メンローパーク、カリフォルニア州)は、バイオレイヤー干渉法を使用して、光ファイバーチップの表面で結合反応を測定する。本実施例では、チップをストレプトアビジン(SA)で官能化し、鋳型の3′末端付近の配列に相補的なプライマーとハイブリダイズした5′ビオチン標識DNA鋳型に結合できるようにした。
実験条件。PhiX_matchC及びphiX_matchAを個々のチップにロードした。プライマー−鋳型を、0.01〜0.02%のBSA及び0.01〜0.02%のtween20(ローディングバッファー)を含有する1〜2×PBS中で100〜500nMのチップにロードした。FP2プライマーは鋳型に対して1.25〜2倍過剰であった。ローディングはシグナルの変化によってモニタリングし、通常、30℃で5分以内にプラトーに到達した。ローディングバッファーにチップを1〜5分間浸漬して未結合のDNA物質を除去した。塩基読上げのために、0.01〜0.02%のBSA及び0.01〜0.02%のtween20(LS緩衝液)を補充した1×Taq緩衝液(10mM Tris−HCl、50mM KCl、25℃でpH 8.3、マグネシウムフリー)、100nMのポリメラーゼ酵素、100μMのNTP、及び50〜300mMの様々な濃度の追加のNaClを含む溶液にチップを浸漬した。phiX_matchC二重鎖は三元複合体を形成し、正しい後続ヌクレオチド(同種)が存在するため、結合シグナルの増加を示す。phiX_matchAは、誤ったヌクレオチド(異種)であるため、そうはならない。
結果。標準的な反応条件では、両方の鋳型がポリメラーゼ酵素に結合する。しかしながら、塩濃度が増加すると、異種複合体の結合親和性が減少する一方で、同種複合体の結合親和性は高いままである。このように、塩基識別のシグナル対ノイズ比(SNR)が増加し、その結果、本検査工程の間に後続の正しい塩基を容易に識別できる(図3)。本実施例では、塩化ナトリウム(NaCl)を使用したが、KCL、NH(SO)、グルタミン酸カリウム、及び当業者に周知の他の塩を使用することができる。正しいヌクレオチドと誤ったヌクレオチドとの結合親和性に差異を示すポリメラーゼには、klenow、Bst2.0、Bsu、及びTaqが含まれていた。
実施例5:解離/洗浄工程中の塩基の識別
会合工程中及び解離工程中の両方において検査を共に使用して、配列の忠実度を改善することができる。したがって、解離反応速度を評価し、その評価を用いて塩基の同一性を決定し、配列の忠実度を高めることができるかどうかを判定した。
実験条件。本実験では、上記のように、phiX_matchC及びFP2プライマーをSAセンサーチップにロードした。100μMのdGTP、dCTP、dATP、もしくはdTTP、及び100nMのKlenowまたはBst2.0酵素、ならびに1mMのSrClを含むLS緩衝液中でポリメラーゼ複合体を形成させた。
結果。低塩濃度では、ポリメラーゼは同種ヌクレオチドが存在するか否かに関わらず効率的にDNA鋳型プライマーに結合する。洗浄緩衝液(LS緩衝液+50mMまたは100mMの追加のNaCl)中では、すべての複合体が解離し、追加のNaClが存在する場合、SrClでさえ安定化することはできない。しかしながら、結合緩衝液中にある同じ50μMのdNTPを洗浄緩衝液に添加すると、誤ったヌクレオチドを有する複合体のみが解離し、正しい三元複合体は安定化した(図4)。さらに、dNTPは結合工程においては不要であり、洗浄中に含まれ得ることが見出された。結合した二元複合体は、依然として、正しいdNTPをその後に導入する場合に、正しい塩基が入って三元複合体を形成することができる。さらに、忠実度は、誤ったヌクレオチドの存在による影響を受けなかった。したがって、ポリメラーゼの解離速度を利用して、dNTPの混合物中の正しい塩基を、例えば異なる速度で解離する異なる濃度において決定することもできる。
実施例6:洗浄緩衝液中の核酸−ポリメラーゼ複合体の安定化
ホモポリマー領域における複数回の付加の可能性を最小限に抑えるために、組込み前に洗浄工程を実施することができる。カルシウム及びストロンチウムなどの金属陽イオンは、マグネシウムのようなポリメラーゼ複合体を安定化することができるが、ヌクレオチドの組込みをもたらすホスホジエステル結合の触媒作用をサポートすることができない。本実験では、洗浄緩衝液(LS緩衝液)に様々な濃度のSrCl(0mM〜14mM)を添加した。ポリメラーゼ複合体は、洗浄緩衝液中で、わずか3.5mMのSr(最低濃度)の存在下においてもはるかに安定していた。さらに、結合工程中に正しいまたは誤ったヌクレオチドが存在する場合、複合体の安定性は顕著に影響されず、Srに関連するポリメラーゼの安定性が三元複合体に限定されるものではないことが示された。結果を図5に示す。
実施例7:3′−5′エキソヌクレアーゼ活性を有さないDNA pol Iの使用
本実験では、DNA Pol Iの3′−5′エキソヌクレアーゼ活性の効果を調べた。ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性によって提供される校正機能が誤った塩基またはフラップを除去するため、エキソヌクレアーゼ活性は忠実度を向上させる。しかしながら、この活性は、潜在的に正しい塩基を切断して誤った配列読取り結果を導く可能性がある。3′末端にミスマッチを有するプライマーを鋳型にハイブリダイズさせて、ほつれ末端またはフラップ構築物を作製した。Klenow exo−ポリメラーゼはこの末端を伸長させることができない。しかしながら、DNA pol Iラージフラグメントはエキソヌクレアーゼ活性を有し、そしてミスマッチ塩基を除去することができ、一旦除去すると、klenow exo−ポリメラーゼまたはDNAポリメラーゼによってプライマーを正常に伸長することができる。
実験条件。配列決定を行うために、フラップ構造を有する2つのセンサーをDNAポリメラーゼまたはklenow exo−ポリメラーゼのいずれかに曝露した。次いで、センサーを正しい順序で鋳型配列に曝露した。DNAポリメラーゼセンサーは塩基を付加することができたが、klenow断片のセンサーはフラップ構造を有しているために塩基を付加することができなかった。DNAポリメラーゼによる3′−5′エキソ活性は、塩基付加と配列との同期を失わせる要因となる。
結果:DNAポリメラーゼによるミスマッチ塩基の切断により、その後の塩基付加が可能になる。塩基は4サイクルまで正確であった。エキソヌクレアーゼ活性がない場合、klenow exo(−)は鋳型を伸長することができなかった。結果を図6に示す。見かけのエキソヌクレアーゼ活性が有害である場合、競合的、不拮抗的または非競合的化合物または類似体によってエキソヌクレアーゼを阻害することができる。NaFはDNAポリメラーゼエキソヌクレアーゼ機能の競合阻害剤である(Potapova et al.,FEBS Letters,277(1−2):109−111(1990))。
実施例8:HIV逆転写酵素(RT)及び非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)化合物7及び18を用いた配列決定
EML4−ALK融合は、非小細胞肺癌の患者の4〜5%に見出される(Soda et al.,Nature 448:561−6(2007);Mano,Cancer Sci.99:2349−55(2008);及びHorn and Pao,J.Clin.Oncol.27:4232−5(2009))。臨床肺腫瘍において、ALK C4493A突然変異が同定されており、この変異は、ALKタンパク質中にL1196M「ゲートキーパー」突然変異を生じさせ、化学療法薬であるクリゾチニブに対する耐性を付与する(Choi et al.,N.Engl.J.Med.18:1734−9(2010))。4496−4509ASプライマーは、ゲートキーパー突然変異を有する領域の配列決定を可能にする。鋳型オリゴヌクレオチド配列は、野生型ヒトALK遺伝子(ヌクレオチド番号4460−4509)に由来していた。プライマー配列は、ヒトALK遺伝子(ヌクレオチド番号4496−4509)に相補的であった。
3′逆位dTを有する鋳型オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509SのDNA配列:
ビオチン−5′−GTGAGCCTGCAATCCCTGCCCCGGTTCATCCTGCTGGAGCTCATGGCGGG−3′− (3′−dT−5′)(配列番号9)
プライマーオリゴヌクレオチド4496−4509ASのDNA配列:5′−CCCGCCATGAGCTC−3′(配列番号10)
試薬調製。Integrated DNA Technologies(コーラルビル、アイオワ州)により、鋳型オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509S及びプライマーオリゴヌクレオチド4496−4509ASを合成し、分析した(液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)及びエレクトロスプレーイオン化(ESI))。TE緩衝液(10mMトリスpH8.0、0.1mM EDTA)中でオリゴヌクレオチドを100μMに調製した。アニーリング緩衝液(10mMトリスpH8.0、0.1mM EDTA、80mM KCl)を含むチューブ中で、プライマー及び鋳型オリゴヌクレオチドを混合した(各鎖10μM)。プライマー−鋳型溶液を含有するチューブを乾燥ヒートブロックにロードし(95℃で5分間)、ブロックをベンチトップに移して、DNA鎖を周囲温度まで徐冷することによってアニーリングした。不拮抗NNRTI化合物(Pitta et al.,J.Enzyme Inhib.Med.Chem.28(10):113−22(2013)、前記文献はその全体を参照として本明細書に援用する)は、Epigen Biosciences,Inc.(サンディエゴ、カリフォルニア州)より入手した。NNRTI化合物7(3−4−クロロ−ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−2−(2−クロロ−6−フルオロフェニル)チアゾリジン−4−オン)及び18(3−(6−エトキシ−ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−2−(2−クロロ−6−フルオロフェニル)チアゾリジン−4−オン)をジメチルスルホキシド(DMSO)にそれぞれ25.0mM及び15.0mMの濃度で溶解した。組換え精製HIV逆転写酵素(HIV RT)はWorthington Biochemical Corp(レイクウッド、ニュージャージー州)から入手した。超高純度ウシ血清アルブミン(BSA)はAmbion(フォスターシティ、カリフォルニア州)から入手した。すべての試薬及び溶液は分子生物学グレードであった。
実験条件。プライマー−鋳型二本鎖をアニーリング緩衝液に希釈した(100μM)。あらかじめ使用直前に、HIV逆転写酵素を酵素希釈液(50mMトリス、pH8.0、8mM MgCl)中に希釈した。結合緩衝液(50mM Tris、pH8.0、160mM KCl、0.5mM EDTA、11mM MgCl、0.3%(v/v)Triton X−100、5.3mMジチオスレイトール(DTT)、100μg/mLウシ血清アルブミン(BSA)、100μM dNTP(dATP、dTTP、dGTPまたはdCTP)、100nMのHIV RT)。NNRTI化合物は、結合緩衝液に添加する直前にあらかじめDMSOで希釈した。反応緩衝液は、結合緩衝液からNNRTI、dNTPまたはHIV RT酵素を除いたものであった。プライマー−鋳型(PT)を含有する緩衝液、PT洗浄緩衝液、1種類のdNTPを含有する結合緩衝液、及び反応緩衝液を、Greiner 96ウェルブラックマイクロプレート(Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州;カタログ番号M9685)にロードした(200μL/ウェル)。ストレプトアビジン(SA)バイオセンサー(Pall ForteBio Corp.、メンローパーク、カリフォルニア州;カタログ番号18−5019)を、使用前におよそ10分間、アニーリング緩衝液中で再水和させた。Octet QKバイオセンサーシステム(Pall ForteBio Corp.、メンローパーク、カリフォルニア州)を30℃で動作するように設定し、プライマー−鋳型でバイオセンサーをコーティングし、未結合のプライマー−鋳型をPT洗浄緩衝液で洗い流すようにプログラムした。バイオセンサーを、HIV RT+dCTP±NNRTIを含む結合緩衝液に(会合フェーズ)、続いて反応緩衝液に移した(dCTP組込み及び解離フェーズ)。同様に、示すように、個々のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dGTP、dCTPまたはdTTP)を含有する溶液に、周期的にバイオセンサーを移した。結合及び組込みのサイクルを複数回繰り返した。
データ分析。データを、表示するためにMicrosoft Excel及びPrismソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、CA)にインポートした。結合及び解離反応の進行は、19.4秒のウィンドウ内で平均化することにより、またはPrismソフトウェア(19.4秒のウィンドウ及び6次平滑化多項式)によって平滑化した。
結果。報告によれば不拮抗阻害様式を有するとされる非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)を、HIV逆転写酵素のDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を介したDNA配列決定に利用した。プライマー−鋳型でコーティングしたバイオセンサーへの結合アッセイでは、HIV逆転写酵素、正しいdNTP及びNNRTI化合物7(40μM)の組合せは、会合フェーズでの結合に対して明確なピークを示し、その後の解離フェーズの間、洗浄緩衝液中で、結合を低下させた(図7A、丸印)。NNRTIで安定化したHIV RT−dNTP混合物とは異なり、HIV RT及び正しいdNTPを含む反応物は明白な結合ピークを生ぜず(図7A、三角)、対照もまた同様であった(40μMのNNRTI化合物7存在下または非存在下でのHIV RT;図7A、実線及び破線)。結合及び解離の時系列変化による最初の6サイクル(ヌクレオチド配列CAGCAG)の配列決定を図7Aに例示する。誤ったヌクレオチドdCTP及びdATPを用いた第7サイクル及び第8サイクルは、それぞれ結合ピークを生成しなかった。第9サイクルは正しいヌクレオチドdGTPを用いた(図7A)。図7Bの各サイクルについて、結合(0〜5分)及び解離(5〜10分)の時系列変化を示す。
同様に、HIV RT及びNNRTI化合物18を用いた配列決定についても、配列決定結果を得た。プライマー−鋳型でコーティングしたバイオセンサーへの結合アッセイでは、HIV逆転写酵素、正しいdNTP及びNNRTI化合物18(80μM)の組合せは、会合フェーズでの結合に対して明確なピークを示し、解離フェーズの間に洗浄緩衝液中での結合を低下させる(図8、菱形)。NNRTIで安定化したHIV RT−dNTP混合物とは異なり、HIV RT及び正しいdNTPを含む反応は、明白な結合ピークを生ぜず(図8、三角)、対照もまた同様であった(80μMのNNRTI化合物18存在下でのHIV RT;図8、破線)。第1〜第3サイクルにおいて、結合ピークは、正しいヌクレオチド及び化合物18存在下でのHIV RTの配列CAGへの結合を示した(図8)。HIV RT、誤ったヌクレオチドであるdTTP及び化合物18を用いた第4サイクルは結合ピークを示さなかった(図8)。その後のサイクルは、配列決定分析のためのさらなるピークを示さなかった。これらの結果は、配列決定中にポリメラーゼ阻害剤を使用することに関する適性を示している。
実施例9.表面プラズモン共鳴(SPR)イメージングバイオセンサー上でのDNA配列決定
材料及び試薬。SPRセンサーチップ:20mm×20mm×1mm高屈折率(1.61)スライド(NanoSPR、シカゴ、イリノイ州)。アルカンチオール、PEG6:モノチオアルカン(C11)PEG6−OH(11−メルカプトウンデシルヘキサエチレングリコール(カタログ番号、SPT−0011P6);及びBAT:ビオチニル化アルカンPEGチオール(カタログ番号、SPT−0012D)は、Sensopath technologies(ボーズマン、モンタナ州)から入手した。塩基緩衝液(洗浄):300mM KCl、20mMトリスHCl(pH8.0)、0.01% Tween−20、1mM SrCl2、検査緩衝液:塩基緩衝液+50nM Klenow断片+100nM dNTP。組込み緩衝液:塩基緩衝液+10mM MgCl2。
実験前に、1×10−4Mの最終混合濃度まで100%EtOHで希釈した18%BATと82%PEG6との混合SAMを用いて、AuコーティングSPRスライドをコーティングした。SPRスライドを、アルカンチオール溶液中で一晩、室温でインキュベートした。インキュベーション後、SPRスライドを新鮮な100%EtOH、続いて脱イオン水中の50%EtOH、及び脱イオン水ですすいだ。次いで、スライドを空気中で乾燥させた。スライドを、流体制御及び画像取得及びデータ定量を提供するカスタムビルドのSPRイメージングシステムに取り付けた。塩基緩衝液中に10μg/mlのストレプトアビジンを含有する溶液をフローセルに注入した。得られたストレプトアビジン層の結合を、SPRチップから反射した光の変化をおよそ180秒間測定し、続いて過剰の塩基緩衝液で洗浄することによって、モニタリングした。あらかじめハイブリダイズさせたプライマーFP2/PhiX_matchA鋳型DNAを、次にフローセルに注入し、ストレプトアビジン層におよそ180秒間結合させた後、過剰の塩基緩衝液で洗浄した。配列決定のために、100nMのdATP、dCTP、dTTP、またはdGTPのいずれかを有する塩基緩衝液中で、50nMのKlenow断片を含有する溶液を調製した。dNTP溶液をフローセルに(G、A、A、T、C、Gの順に)個々に注入し、SPRi応答を調べるためにおよそ180秒間インキュベートした。シグナルの変化がない/低い場合、フローセルを過剰の塩基緩衝液で洗浄した。SPRシグナルが塩基のマッチを示した場合、フローセルを組込み緩衝液(10mM Mg2+を含む)で30秒間洗浄して正しいdNTPを組込み、続いて塩基緩衝液で洗浄した。検査、組込み、及び洗浄工程を繰り返した。
図9は、3つのミスマッチ塩基及び3つの正しい塩基の同定のために記録したセンサーグラムを示す。アニーリングしたプライマー配列の後のphiX_matchA鋳型の最初の3つの正しい複合体塩基は、A、T、及びGであった。センサー上を流れる第一の溶液は、ポリメラーゼ及びdGTPを含有していたが、これは塩基対のミスマッチに対応する。得られたセンサーの追跡結果は、ベースライン反射率にほとんど変化がないことを示し、このことはポリメラーゼ分子がプライミングした鋳型鎖に結合しなかったことを示している。センサー上を流れる後続の溶液は、ポリメラーゼ及びdATPを含有していたが、これは正しい複合体塩基に対応していた。得られた追跡結果(灰色のボックスで強調表示)は、プライミングした鋳型鎖にポリメラーゼが結合したことを表す反射光の強い増加と、それによってSPRの位置がシフトしたことを示した。ポリメラーゼ溶液をおよそ180秒間インキュベート(利用可能な結合部位を確実に飽和させるために)した後、10mM Mg2+を含有する組込み溶液をフローセルに導入した。Mg2+の導入により、鋳型に結合したプライマー鎖に結合したdATPを、ポリメラーゼが組込むことが可能になった。dATPの組込みを確実にするために、ポリメラーゼ−dATP溶液を再びセンサーチップ上に流した。しかしながら、この時点では、それ以前ほどには反射光の量は大きく増加せず、このことは正しい同種塩基がもはやAではないため、ポリメラーゼが鋳型鎖に結合しなかったことを示している。後続の正しい塩基を調べるために、ポリメラーゼとdTTPをセンサー上に流した。再度、反射光の強度は閾値を超えて増加し、このことはdATPの組込みが成功し、後続の正しい塩基が予想通りTであることを示した。組込み緩衝液をセンサーチップ上に流して塩基を組込んだ。ミスマッチ(ポリメラーゼ−dCTP)と、続いてマッチ(ポリメラーゼ−dGTP)を用いて、このプロセスを2回繰り返した。両方の場合において、期待される応答が観察され、このことは、後続の正しい複合体塩基が実際にGであることを示していた。
これらの結果は、SPRiバイオセンサー上のKlenow/dNTP結合アッセイによってDNAを正確に配列決定する能力を実証している。SPRiバイオセンサーは、複数の検査/組込みラウンドにわたってDNA配列決定を行うために必要な異なる工程を検出するのに十分な感度及び耐久性を有する。本明細書では、60bp鎖内の3つの塩基対の配列決定を示す。本技術は、任意の数の配列決定サイクルまで拡張可能である。
実施例10.ニックトランスレーションによる二本鎖DNAの配列決定
3′逆位dTを有する鋳型オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509SのDNA配列:
ビオチン−5′−GTGAGCCTGCAATCCCTGCCCCGGTTCATCCTGCTGGAGCTCATGGCGGG−3′−(3′−dT−5′)(配列番号9)
プライマーオリゴヌクレオチド4496−4509ASのDNA配列:
5′−CCCGCCATGAGCTC−3′(配列番号10)
オリゴヌクレオチド4460−4494ASのDNA配列:
5′−AGCAGGATGAACCGGG/i5NitInd/CAGGGATTGCAGGCTCAC−3′(配列番号11)、ここで、「/i5NitInd/」は5−ニトロインドール−2′−デオキシリボース残基である。5−ニトロインドールは、本文脈においては、グアニン四重鎖の形成を防止することを意図しており、ユニバーサル塩基として機能する。
試薬調製。TE緩衝液(10mMトリスpH8.0、0.1mM EDTA)中でオリゴヌクレオチドを100μMに調製した。ssDNAプライマー/鋳型を調製するために、オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509S及び4496−4509ASを、アニーリング緩衝液(10mMトリスpH8.0、0.1mM EDTA、80mM KCl)を含むチューブ中で混合した(各鎖10μM)。1塩基対ギャップを有するdsDNAプライマー/鋳型を調製するために、オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509S、4496−4509AS及び4460−4494ASを、アニーリング緩衝液を含むチューブ中で混合した(各鎖10μM)。オリゴヌクレオチド溶液を含むチューブを乾燥ヒートブロックにロードし(95℃で5分間)、ブロックをベンチトップに移して周囲温度まで徐冷して鎖をアニーリングした。Bacillus stearothermophilusにコードされる全長DNAポリメラーゼ(「Bst DNAポリメラーゼ」、Escherichia coliから精製した組換え酵素)は、New England Biolabs(イプスウィッチ、マサチューセッツ州;カタログ番号M0328L)から購入した。超高純度ウシ血清アルブミン(BSA)はAmbion(フォスターシティ、カリフォルニア州)から購入した。すべての試薬及び溶液は分子生物学グレードであった。
実験条件。プライマー−鋳型二本鎖をアニーリング緩衝液に希釈した(100μM)。結合緩衝液は、50mMトリス、pH8.0、300mM KCl、0.1%(v/v)Triton−X100、100μg/mLのウシ血清アルブミンであった。反応緩衝液は、10mM MgClを含有する結合緩衝液であった。Greiner 96ウェルブラックマイクロプレート(Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州;カタログ番号M9685)にプライマー−鋳型(PT)を含有する緩衝液、1種類のdNTPを含有する結合緩衝液、及び反応緩衝液をロードし(200μL/ウェル)、PCRグレードのミネラルオイル(Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州;カタログ番号M8662)を加えた(75μL/ウェル)。ストレプトアビジン(SA)バイオセンサー(Pall ForteBio Corp.、メンローパーク、カリフォルニア州;カタログ番号18−5019)を、使用前に約10分間、アニーリング緩衝液中で再水和させた。Octet QKバイオセンサーシステム(Pall ForteBio Corp.、メンローパーク、カリフォルニア州)を30℃で動作するように設定しし、プライマー−鋳型でバイオセンサーをコーティングし、未結合のプライマー−鋳型を結合緩衝液で洗い流すようにプログラムした。バイオセンサーを、示すように、136ユニット/mLのBst DNAポリメラーゼ及び200μMのdNTP(dATP、dTTP、dGTPまたはdCTP)を含む結合緩衝液に(会合フェーズ)、続いてdNTPを組込むための反応緩衝液に移した。Bst DNAポリメラーゼ(136 Unit/mL)を含み、dNTPを含まない反応緩衝液にバイオセンサーを移し、5′−3′エキソヌクレアーゼ活性を介してニックトランスレーションを促進した。酵素またはマグネシウムを含まない反応緩衝液にバイオセンサーを移した(解離フェーズ)。同様に、示すように、個々のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dGTP、dCTPまたはdTTP)を含む溶液に、周期的にバイオセンサーを移した。結合及び組込みのサイクル及び5′−3′エキソヌクレアーゼ切断を複数回繰り返して配列決定を評価した。
データ分析。データを、表示するためにMicrosoft Excel及びPrismソフトウェア(GraphPad Software、サンディエゴ、カリフォルニア州)にインポートした。
結果。プライマー−鋳型でコーティングしたバイオセンサーへの結合アッセイでは、Bst DNAポリメラーゼと正しい2′−デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dCTP)との組合せは、会合フェーズでの結合に対して明確なピークを示す(図10A、10B、及び10C、dCTP「C」)。第1サイクルは、dsDNA鋳型(図10A及び10B)中の1つの塩基対ギャップへの結合及び組込み、ならびに対照ssDNA鋳型におけるプライマー下流への正しいヌクレオチドの組込みを示す(図10C)。dNTPを欠く対照は、最も低い結合を示す(図10A、10B、及び10C、第1〜第7サイクル)。第2サイクルは、後続の正しいヌクレオチドであるdATPと組み合わせたdsDNA鋳型へのポリメラーゼの結合を示し(図10A及び10B、dATP「A」)、これは妨げられていないssDNA鋳型への結合より低く(図10C、dATP「A」)、相補鎖のエキソヌクレアーゼ切断が完全ではなかったことを示している。結合及び解離の時系列変化は、dsDNA(図10A及び10B)ならびにssDNA(図10C)の最初の3サイクル(ヌクレオチド配列CAG)の配列決定を例示する。予想通り、誤ったヌクレオチドdTTPを用いた第4サイクルは結合ピークを生じなかった(図10A、10B、及び10C)。これらの結果は、DNAポリメラーゼ及びBst DNAポリメラーゼの5′−3′エキソヌクレアーゼ活性を用いて、ニックトランスレーションによって二本鎖DNAの配列決定を行う能力を示している。
実施例11.鎖置換による二本鎖DNAの配列決定
3′逆位dTを有する鋳型オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509SのDNA配列:
ビオチン−5′−GTGAGCCTGCAATCCCTGCCCCGGTTCATCCTGCTGGAGCTCATGGCGGG−3′−(3′−dT−5′)(配列番号9)
プライマーオリゴヌクレオチド4496−4509ASのDNA配列:
5′−CCCGCCATGAGCTC−3′(配列番号10)
オリゴヌクレオチド4460−4494ASのDNA配列:
5′−AGCAGGATGAACCGGG/i5NitInd/CAGGGATTGCAGGCTCAC−3′(配列番号11)、ここで「/i5NitInd/」は5−ニトロインドール−2′−デオキシリボース残基である。5−ニトロインドールは、本文脈においては、グアニン四重鎖の形成を防止することを意図しており、ユニバーサル塩基として機能する。
オリゴヌクレオチド4460−4494AS−T8のDNA配列:
5′−TTTTTTTTAGCAGGATGAACCGGG/i5NitInd/CAGGGATTGCAGGCTCAC−3′(配列番号12)、ここで「/i5NitInd/」は5−ニトロインドール−2′−デオキシリボース残基である。5−ニトロインドールは、本文脈においては、グアニン四重鎖の形成を防止することを意図しており、ユニバーサル塩基として機能する。
試薬調製。Integrated DNA Technologies(コーラルビル、アイオワ州)により、オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509S、4460−4494AS、4496−4509AS及び4460−4494AS−T8を合成し、分析した(液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS)及びエレクトロスプレーイオン化(ESI))。TE緩衝液(10mMトリス pH8.0、0.1mM EDTA)中でオリゴヌクレオチドを100μMに調製した。ssDNAプライマー/鋳型を調製するために、アニーリング緩衝液(10mMトリスpH8.0、0.1mM EDTA、80mM KCl)を含有するチューブ中で、オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509Sと4496−4509ASを混合した(各鎖10μM)。1塩基ギャップを有するdsDNAプライマー/鋳型を調製するために、アニーリング緩衝液を含むチューブ中で、オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509S、4496−4509AS及び4460−4494ASを混合した(各鎖10μM)。5′−オリゴ−dTフラップ及び1塩基ギャップを有するdsDNAプライマー/鋳型を調製するために、アニーリング緩衝液を含有するチューブ中で、オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509S、4496−4509AS及び4460−4494−AS−T8を混合した(各鎖10μM)。オリゴヌクレオチド溶液を含むチューブを乾燥ヒートブロックにロードし(95℃で5分間)、ブロックをベンチトップに移して周囲温度まで徐冷して鎖をアニーリングした。E.coli DNAポリメラーゼのKlenow(3′→5′exo−)断片は、Enzymatics(ビバリー、マサチューセッツ州;カタログ番号P7010−LC−L)から購入した。超高純度ウシ血清アルブミン(BSA)はAmbion(フォスターシティ、カリフォルニア州)から購入した。すべての試薬及び溶液は分子生物学グレードであった。
実験条件。プライマー−鋳型二本鎖をアニーリング緩衝液に希釈した(50nM)。結合緩衝液は、20mMトリス、pH8.0、300mM KCl、0.01%(v/v)Tween−20、100μg/mLウシ血清アルブミン、1.0mMジチオスレイトールであった。反応緩衝液は、50mM KCl及び10mM MgClを含有する結合緩衝液であった。Greiner 96ウェルブラックマイクロプレート(Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州;カタログ番号M9685)に、プライマー−鋳型(PT)を含有する緩衝液、1種類のdNTPを含有する結合緩衝液、及び反応緩衝液をロードし(200μL/ウェル)、PCRグレードのミネラルオイル(Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州;カタログ番号M8662)を加えた(75μL/ウェル)。ストレプトアビジン(SA)バイオセンサー(Pall ForteBio Corp.、メンローパーク、カリフォルニア州;カタログ番号18−5019)を、使用前に約10分間、アニーリング緩衝液中で再水和させた。Octet QKバイオセンサーシステム(Pall ForteBio Corp.、メンローパーク、カリフォルニア州)を30℃で動作するように設定し、プライマー−鋳型でバイオセンサーをコーティングし、未結合のプライマー−鋳型を結合緩衝液で洗い流すようにプログラムした。バイオセンサーを、示すように、Klenow exo−(68ユニット/mL)及び100μM dNTP(dATP、dTTP、dGTPまたはdCTP)を含有する結合緩衝液へ(会合フェーズ)、続いてdNTPを組込むための反応緩衝液へ移した。バイオセンサーを、酵素またはマグネシウムを含まない反応緩衝液に移した(解離フェーズ)。同様に、示すように、個々のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dGTP、dCTPまたはdTTP)を含有する溶液に、周期的にバイオセンサーを移した。結合及び組込みのサイクルを複数回繰り返して、配列決定を評価した。
データ分析。データを、表示のためにMicrosoft Excel及びPrismソフトウェア(GraphPad Software、サンディエゴ、カリフォルニア州)にインポートした。
結果。ssDNAプライマー−鋳型でコーティングしたバイオセンサーへの結合アッセイでは、正しい個々のdNTPの存在下でKlenow exo−による結合ピークが得られたが、誤ったdTTPヌクレオチドの存在下では得られなかった(図11A、黒のトレースライン)。対照的に、陰性対照(dNTP非存在下での酵素)は、一貫して平坦な結合応答によって示されるように結合できなかった(図11A、グレーのトレースライン)。したがって、Klenow exo−によって、予想される配列(CAGCAGGA(配列番号1))と88%の同一性を有するCAGCAG(C?)A(配列番号13)の配列が得られた。アンチセンスプライマーと下流のアンチセンス鎖との間に1塩基のギャップを有するdsDNAプライマー−鋳型でコーティングしたバイオセンサーへの結合アッセイでは、Klenow exo−によって最初の正しい個々のdCTPヌクレオチドの存在下でのみ結合ピークが得られた(図11B、黒のトレースライン)。陰性対照(dNTP非存在下での酵素)は、一貫して平坦な結合応答によって示されるように結合できなかった(図11B、グレーのトレースライン)。したがって、Klenow exo−により、ギャップの第1の塩基が正しいヌクレオチドで満たされた「C」の配列が得られた。しかしながら、その後のサイクルでは、二本鎖DNA領域へのさらなる結合または重合はブロックされる。このさらなる配列決定の阻害は、Klenow exo−の5′−3′エキソヌクレアーゼドメイン(ニックトランスレーションのための)、またはDNAの下流二本鎖ヘリックスを破壊することができない(鎖置換)ことに起因するようである。したがって、鎖置換のためのより良い基質をKlenow exo−に提供するために5′−オリゴ−dTフラップを導入した。アンチセンスプライマーと下流のアンチセンス鎖との間に1塩基のギャップを有する5′−オリゴ−dTフラップを備えたdsDNAプライマー−鋳型で、バイオセンサーをコーティングした。Klenow exo−によって、第1サイクルの1塩基ギャップ(C)において結合ピークが得られ、第2、第3及び第5サイクルの配列AGCを提供するdsDNA領域においてさらなる結合ピークが観察された(図11C、黒のトレースライン)。誤ったdNTPを用いた第4、第6、第7及び第8サイクルは、固定化DNAへの酵素の結合は得られなかった(図11C)。陰性対照(dNTP非存在下での酵素)は、平坦な結合応答によって示されるように結合できなかった(図11C、グレーのトレースライン)。したがって、Klenow exo−によって100%正しい「CAGC」の配列が得られ、そこにおいてギャップの第1塩基が正しいヌクレオチドで満たされ、3つのさらなる塩基について二本鎖DNA領域への結合または重合がさらに観察された。二本鎖DNA領域に隣接する5′フラップによってKlenow exo−が鎖置換によって配列決定することができたが(図11C)、一方、5′フラップがない場合、dsDNA領域の配列決定はブロックされた(図11B)。これらの結果は、DNAポリメラーゼのKlenow exo−断片を用いて、鎖置換機構によって二本鎖DNAを配列決定する能力を実証している。
実施例12.一本鎖DNA配列決定に対する陰イオンの効果
ssDNAプライマー/鋳型を調製するために、オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509S(配列番号9)及び4496−4509AS(配列番号10)を、アニーリング緩衝液(10mMトリス pH8.0、0.1mM EDTA、80mM KCl)を含有するチューブ中で混合した。オリゴヌクレオチド溶液を含むチューブを乾燥ヒートブロック(95℃で5分間)にロードし、ブロックをベンチトップに移して周囲温度まで徐冷して鎖をアニーリングした。E.coli DNAポリメラーゼのKlenow(3′→5′exo−)断片は、Enzymatics(ビバリー、マサチューセッツ州;カタログ番号P7010−LC−L)から購入した。グルタミン酸カリウムは、(Teknova、ホリスター、カリフォルニア州;カタログ番号P2000)から購入した。超高純度ウシ血清アルブミン(BSA)はAmbion(フォスターシティ、カリフォルニア州)から購入した。すべての試薬及び溶液は分子生物学グレードであった。
実験条件。結合緩衝液は、20mMトリス、pH8.0、300mM KCl、0.01%(v/v)Tween−20、100μg/mLウシ血清アルブミン、1.0mMジチオスレイトールであった。反応緩衝液は、50mM KCl及び10mM MgClを含有する結合緩衝液であった。試験する各レベルのグルタミン酸カリウムについて、結合緩衝液を、0、50、100または200mMのグルタミン酸カリウムを含有するように調製した。反応緩衝液はグルタミン酸カリウムを含んではいなかった。Octet QKバイオセンサーシステムを、実施例11に記載したように設定した。示すように、バイオセンサーを、Klenow exo−(68ユニット/mL)及び100μMのdNTP(dATP、dTTP、dGTPまたはdCTP)を含有する結合緩衝液へ(会合フェーズ)、続いてdNTPを組込むための反応緩衝液へ移した。バイオセンサーを、マグネシウムを含有し、酵素を含まない反応緩衝液に移した(解離フェーズ)。酵素またはdNTPを含まないが、各濃度のグルタミン酸カリウムを含む結合緩衝液にバイオセンサーを移し、再平衡化した。同様に、示すように、個々のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dGTP、dCTPまたはdTTP)を含有する溶液に、周期的にバイオセンサーを移した。結合及び組込みのサイクルを複数回繰り返して、配列決定を評価した。
データ分析。データを、表示のためにMicrosoft Excel及びPrismソフトウェア(GraphPad Software、サンディエゴ、カリフォルニア州)にインポートした。
結果。ssDNAプライマー−鋳型でコーティングしたバイオセンサーへの結合アッセイでは、Klenow exo−(グルタミン酸を含まないKCl)によって、200mMのグルタミン酸を含有するKCl中の酵素と同様に、正しいヌクレオチドを用いて配列決定の結合ピークが得られた(図12A、それぞれ点線及び実線)。しかしながら、グルタミン酸を含まない緩衝液は、200mMのグルタミン酸を含有する配合物に比べて、バックグラウンドの増加と結合ピークの振幅の減少を示した(図12A)。KCl+200mMのグルタミン酸配合物中で、8.25時間の時間経過にわたって酵素及び正しいdNTP(しかし、誤ったdNTPではない)を含有する混合物の相対的なピークの高さに基づいて、正しい配列が観察された(図12A)。ホモポリマーの連続は、これらの条件下で単一のピークとして検出されるようである(図12A、12B、及び12C)。KCl+100mMのグルタミン酸を含有する緩衝液中では、対照(dNTP非存在下での酵素)はピークを示さず、バックグラウンドが徐々に増加したが、酵素+正しいdNTPでは、7時間にわたって強いピークシグナルで、正しい配列が観察された(図12B)。KCl+50mMのグルタミン酸を含有する緩衝液は、7時間にわたって正しい配列を示したが、dNTP非存在下での対照酵素は、結合ピークは得られず、平坦で安定したバックグラウンドが得られた(図12C)。これらの結果は、グルタミン酸カリウムによる促進及びミネラルオイル添加による蒸発からの保護の下で、DNAポリメラーゼのKlenow exo−断片を用いて一本鎖DNAを配列決定する能力を実証している。
実施例13.一本鎖DNA及び二本鎖5′−フラップDNAの配列決定による野生型バックグラウンドにおける点突然変異の検出
3′逆位dTを有する鋳型オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509SのDNA配列:
ビオチン−5′−GTGAGCCTGCAATCCCTGCCCCGGTTCATCCTGCTGGAGCTCATGGCGGG−3′−(3′−dT−5′)(配列番号9)
3′逆位dTを有する鋳型オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509S C4493AのDNA配列:
ビオチン−5′−GTGAGCCTGCAATCCCTGCCCCGGTTCATCCTGATGGAGCTCATGGCGGG−3′−(3′−dT−5′)(配列番号21)
プライマーオリゴヌクレオチド4496−4509ASのDNA配列:
5′−CCCGCCATGAGCTC−3′(配列番号10)
オリゴヌクレオチド4460−4494AS−T8のDNA配列:
5′−TTTTTTTTAGCAGGATGAACCGGG/i5NitInd/CAGGGATTGCAGGCTCAC−3′(配列番号12)、ここで「/i5NitInd/」は5−ニトロインドール−2′−デオキシリボース残基である。5−ニトロインドールは、本文脈においてグアニン四重鎖の形成を防止することを意図しており、ユニバーサル塩基として機能する。
試薬調製。Integrated DNA Technologies(コーラルビル、アイオワ州)により、オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509S、Btn−4460−4509S C4493A、4496−4509AS及び4460−4494AS−T8を合成し、分析した(液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS)及びエレクトロスプレーイオン化(ESI))。TE緩衝液(10mMトリス pH8.0、0.1mM EDTA)中でオリゴヌクレオチドを100μMに調製した。ssDNAプライマー/鋳型を調製するために、アニーリング緩衝液(10mMトリス pH8.0、0.1mM EDTA、80mM KCl)を含有するチューブ中で、オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509S(またはC4493A)及び4496−4509ASを混合した(各鎖10μM)。5′−オリゴ−dTフラップ及び1塩基ギャップを有するdsDNAプライマー/鋳型を調製するために、オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509S(またはC4493A)、4496−4509AS及び4460−4494−AS−T8(各10μM鎖)を、アニーリング緩衝液を含有するチューブ中で混合した。オリゴヌクレオチド溶液を含有するチューブを乾燥ヒートブロックにロードし(95℃で5分間)、ブロックをベンチトップに移して周囲温度まで徐冷して鎖をアニーリングした。E.coli DNAポリメラーゼのKlenow(3′→5′exo−)断片は、Enzymatics(ビバリー、マサチューセッツ州;カタログ番号P7010−LC−L)から購入した。超高純度ウシ血清アルブミン(BSA)及び超高純度サケ***DNA溶液はLife Technologies(フォスターシティ、カリフォルニア州)から購入した。硫酸ニッケル(II)六水和物(カタログ番号467901)、dCDP、dGDP及びdTDPは、Sigma(セントルイス、ミズーリ州)から購入した。すべての試薬及び溶液は分子生物学グレードであった。
実験条件。プライマー−鋳型二本鎖をアニーリング緩衝液に希釈した(50nM)。洗浄緩衝液は、20mMトリス、pH8.0、200mM KCl、200mMグルタミン酸カリウム、0.01%(v/v)、Tween−20、100μg/mLウシ血清アルブミン、1.0mMジチオスレイトールであった。結合緩衝液は、2.0mMのNi(II)SOを含有する洗浄緩衝液であった。反応緩衝液は、20mMトリス、pH8.0、50mM KCl、MgCl(10mM)、0.01%(v/v)Tween−20、100μg/mLウシ血清アルブミン、1.0mMジチオスレイトールであった。EDTA洗浄緩衝液は、100μM EDTAを含有する結合緩衝液であった。プライマー−鋳型(PT)を含有する緩衝液、1種類のdNTP及び反応緩衝液を含有する結合緩衝液をGreiner 96ウェルブラックマイクロプレート(Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州;カタログ番号M9685)にロードし(200μL/ウェル)、PCRグレードのミネラルオイル(Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州;カタログ番号M8662)を加えた(75μL/ウェル)。高精度ストレプトアビジンバイオセンサー(Pall ForteBio Corp.、メンローパーク、カリフォルニア州;カタログ番号18−5117)を、使用前に約10分間、アニーリング緩衝液で再水和させた。Octet QKバイオセンサーシステム(Pall ForteBio Corp.、メンローパーク、カリフォルニア州)を30℃で動作するように設定し、プライマー−鋳型でバイオセンサーをコーティングし、未結合のプライマー−鋳型を洗浄緩衝液で洗い流すようにプログラムした。バイオセンサーを、示すように、Klenow exo−(68ユニット/mL)、Ni(II)SO(1.5mM)及び100μM dNTP(dATP、dTTP、dGTPまたはdCTP)を含有する結合緩衝液に移し(会合フェーズ)、続いてMgCl(10mM)を含有する反応緩衝液中でdNTPを組込んだ(解離フェーズ)。バイオセンサーをEDTA洗浄緩衝液に移し、続いて、酵素、ヌクレオチドまたは二価陽イオンを含まない反応緩衝液中で再平衡化した。同様に、示すように、個々のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dGTP、dCTPまたはdTTP)を含有する溶液に、周期的にバイオセンサーを移した。各dNTPについて結合及び組込みサイクルを繰り返し、配列決定を評価した。
データ分析。データを、表示のためにMicrosoft Excel及びPrismソフトウェア(GraphPad Software、サンディエゴ、カリフォルニア州)にインポートした。
結果。ssDNAプライマー−鋳型でコーティングしたバイオセンサーへの結合アッセイにおいて、Klenow exo−酵素は、第1〜第2サイクルにおいて正しいdNTPの存在下でバイオセンサーに強く結合した(図13A)。第3サイクルにおける「G」ピークは、高濃度のALK野生型鋳型を含む混合物においてピークの高さが増加したことを示す(図13A)。第4サイクルの「T」ピークは、高濃度のALK C4493A変異体を含有する混合物においてピークの高さが増加したことを示す。第4サイクルでの「T」読み出しは、C4493A変異体のアンチセンスヌクレオチドに対応する。ALK野生型及びC4493A鋳型の両方とも、第5及び第6サイクルにおいて完全高さのピーク「C」及び「A」を生成する。ピークは、図13AのALK野生型(CAGCA)及びALK C4493A(CATCA)についての正しい配列を示す。
配列決定中のピーク強度から、野生型配列を含む混合物中の突然変異対立遺伝子の定量が可能になる。第4サイクルのピーク(T)の強度は、ssDNA(図13B)及びdsDNAフラップ(図13C)のALK野生型バックグラウンドにおけるALK C4493A変異体配列の量に比例していた。同様に、第3サイクルのピーク(G)はssDNA鋳型の変異体濃度の増加に伴って直線的に減少し(図13B)、ピーク3の強度はdsDNA−フラップ鋳型の変異体濃度と共に減少した(図13C)。野生型のバックグラウンドでは、変異体配列のわずか5%がssDNAまたはdsDNA−フラップ鋳型のいずれかで検出可能であった。これらの結果は、ssDNAまたはdsDNA鋳型を用いて同様のDNA配列の存在下で少量の変異体配列を検出する能力を実証している。
実施例14.三元複合体及びポリメラーゼ触媒の安定化に対する二価陽イオンの効果
3′逆位dTを有する鋳型オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509S C4493AのDNA配列:
ビオチン−5′−GTGAGCCTGCAATCCCTGCCCCGGTTCATCCTGATGGAGCTCATGGCGGG−3′−(3′−dT−5′)(配列番号21)
プライマーオリゴヌクレオチド4496−4509ASのDNA配列:
5′−CCCGCCATGAGCTC−3′(配列番号10)
試薬調製。Integrated DNA Technologies(コーラルビル、アイオワ州)により、オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509S C4493A及び4496−4509ASを合成し、分析した(液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)及びエレクトロスプレーイオン化(ESI))。TE緩衝液(10mMトリス pH8.0、0.1mM EDTA)中でオリゴヌクレオチドを100μMに調製した。ssDNAプライマー/鋳型を調製するために、オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509S C4493A及び4496−4509ASを、アニーリング緩衝液(10mMトリス pH8.0、0.1mM EDTA、80mM KCl)を含有するチューブ中で混合した(各鎖10μM)。オリゴヌクレオチド溶液を含むチューブを乾燥ヒートブロックにロードし(95℃で5分間)、ブロックをベンチトップに移して周囲温度まで徐冷して鎖をアニーリングした。E.coli DNAポリメラーゼのKlenow(3′→5′exo−)断片は、Enzymatics(ビバリー、マサチューセッツ州;カタログ番号P7010−LC−L)から購入した。超高純度ウシ血清アルブミン(BSA)及び超高純度サケ***DNA溶液はLife Technologies(フォスターシティ、カリフォルニア州)から購入した。塩化ストロンチウム、塩化カルシウム、塩化マンガン、塩化バリウム、塩化コバルト、塩化亜鉛、塩化銅(II)、硫酸鉄アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸ニッケル(II)六水和物、dCDP、dGDP及びdTDPは、Sigma(セントルイス、ミズーリ州)から購入した。すべての試薬及び溶液は分子生物学グレードであった。
実験条件。プライマー−鋳型二本鎖をアニーリング緩衝液に希釈した(100nM)。洗浄緩衝液は、20mMトリス、pH8.0、50mM KCl、0.01%(v/v)Tween−20、100μg/mLウシ血清アルブミン、1.0mMジチオスレイトールであった。結合緩衝液は、20mMトリス、pH8.0、200mM KCl、200mMグルタミン酸カリウム、0.01%(v/v)Tween−20、100μg/mLウシ血清アルブミン、1.0mMジチオスレイトールであった。反応緩衝液は、20mMトリス、pH8.0、50mM KCl、0.01%(v/v)Tween−20、100μg/mLウシ血清アルブミン、1.0mMジチオスレイトール及び指定の二価陽イオンであった。EDTA洗浄緩衝液は、100μMのEDTAを含有する結合緩衝液であった。プライマー−鋳型(PT)を含有する緩衝液、1種類のdNTPを含有する結合緩衝液、及び反応緩衝液をGreiner 96ウェルブラックマイクロプレート(Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州;カタログ番号M9685)にロードし(200μL/ウェル)、PCRグレードのミネラルオイル(Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州;カタログ番号M8662)を加えた(75μL/ウェル)。高精度ストレプトアビジンバイオセンサー(Pall ForteBio Corp.、メンローパーク、カリフォルニア州;カタログ番号18−5117)を、使用前に約10分間、アニーリング緩衝液で再水和させた。Octet QKバイオセンサーシステム(Pall ForteBio Corp.、メンローパーク、カリフォルニア州)を30℃で動作するように設定し、プライマー−鋳型でバイオセンサーをコーティングし、未結合のプライマー−鋳型を洗浄緩衝液で洗い流すようにプログラムした。
組込まれていないプライマー/鋳型の初期レベルを測定するために、Klenow exo−(68ユニット/mL)、SrCl(2.0mM)及び100μM dCTPを含有する結合緩衝液へ(会合フェーズ)、続いてSrCl(2.0mM)とサケ***DNA捕捉剤(500μg/mL)とを含有し、MgClを含まない洗浄緩衝液へ移した。センサーを、サケ***DNA捕捉剤(500μg/mL)を含有し、MgClを含まない洗浄緩衝液へ、続いてEDTA洗浄緩衝液に移し、結合緩衝液で再平衡化した。
組込まれていないプライマー/鋳型への結合を測定し、二価陽イオンフリーの結合緩衝液中の三元複合体の安定性をモニタリングした。バイオセンサーを、Klenow exo−(68ユニット/mL)、CoCl(1.0mM)または指定の二価陽イオン(2.0mM)、及び100μM dCTPを含有する結合緩衝液へ(会合フェーズ)、続いて同じ濃度の二価陽イオン及びサケ***DNA捕捉剤(500μg/mL)を含有し、MgClを含まない洗浄緩衝液へ移した。センサーを、サケ***DNA捕捉剤(500μg/mL)を含有し、MgClを含まない洗浄緩衝液へ、続いてEDTA洗浄緩衝液へ移し、結合緩衝液中で再平衡化した。
様々な二価陽イオンを含有し、dNTPを含まない結合緩衝液中の三元複合体の安定化を測定した。バイオセンサーをKlenow exo−(68ユニット/mL)、CoCl(1.0mM)または指定の二価陽イオン(2.0mM)、及び100μM dCTPを含有する結合緩衝液に移し(会合フェーズ)、続いて同じ二価陽イオン及びサケ***DNA捕捉剤(500μg/mL)を含有し、MgClを含まない洗浄緩衝液へ移した。センサーを、サケ***DNA捕捉剤(500μg/mL)と10mM MgClとを含有する洗浄緩衝液へ、続いてEDTA洗浄緩衝液へ移し、結合緩衝液中で再平衡化した。
最後に、ヌクレオチドの組込みを、組込まれずに残ったプライマー/鋳型を測定することによって測定した。バイオセンサーを、Klenow exo−(68ユニット/mL)、SrCl(2.0mM)及び100μM dCTP(会合フェーズ)を含有する結合緩衝液へ、続いてSrCl(2.0mM)及びサケ***DNA捕捉剤(500μg/mL)を含有し、MgClを含まない洗浄緩衝液へ移した。センサーを、サケ***DNA捕捉剤(500μg/mL)を含有し、MgClを含まない洗浄緩衝液へ、続いてEDTA洗浄緩衝液へ移し、結合緩衝液中で再平衡化した。
データ分析。データを、表示のためにMicrosoft Excel及びPrismソフトウェア(GraphPad Software、サンディエゴ、カリフォルニア州)にインポートした。
結果。ssDNAプライマー−鋳型でコーティングしたバイオセンサーへのポリメラーゼ及びdCTPの結合について、アッセイを実施した。最初の非触媒サイクルでは、Klenow exo−酵素は、正しいヌクレオチド(dCTP)及びSrClの存在下でバイオセンサーに強く結合し、続いて洗浄を行い、ベースラインに戻る(図14A、ピーク#1)。第2(非触媒)サイクルでは、センサーは、Ni(II)SO、BaCl及びSrClの存在下では酵素及びdCTPによって強く結合するが、EDTAの存在下では結合しない(図BBBB A、ピーク#2〜3)。Ni(II)SOを含有する洗浄緩衝液は、10分かけて三元複合体を安定化させる(図14A、ピーク#2〜3)。シグナルは、Mg2+の存在下で減少し(図14A、ピーク#3、解離)、これはKlenow exo−及びdCTPによるSr2+を介した結合レベルの低さによって証明されるように、組込みに対応する(図14A、ピーク#4)。これらの結果は、dNTP非存在下の緩衝液中でKlenow exo−、dNTP及びssDNAプライマー/鋳型の三元複合体を安定化するNi2+の能力を示しており、この安定化はDNAポリメラーゼによるヌクレオチドの酵素的組込みに適合する。
Klenow exo−は、マグネシウムイオン以外の他の二価陽イオンの存在下でポリメラーゼ活性を示す。アッセイは、ssDNAプライマー−鋳型でコーティングしたバイオセンサーへのポリメラーゼ及びdCTPの結合について実施した。最初の非触媒サイクルでは、Klenow exo−酵素は、正しいヌクレオチド(dCTP)及びSrClの存在下でバイオセンサーに強く結合し、続いて洗浄を行い、ベースラインに戻る(図14B、ピーク#1)。第2の結合サイクルでは、SrClまたは硫酸アンモニウムの存在下でセンサーは酵素及びdCTPに強く結合する(図14B、ピーク#2〜3)。しかしながら、いくつかの二価陽イオン(Cu2+、Ca2+、Co2+、Fe2+、Zn2+)は、結合緩衝液中でKlenow exo−及びdCTPによって固定化したプライマー/鋳型への結合に対して一過性のピークを示した(図14B、ピーク2)。同じ二価陽イオンとサケ***DNA捕捉剤または捕捉剤のみを含有する洗浄緩衝液は、一過性ピーク(Ca2+、Co2+、Fe2+、Zn2+)またはフラットピーク(Mn2+)の消失後、図14A(ピーク#2)の結合シグナルをさらに減少させることはなかった(ベースラインへ戻ったCa2+を除く)。第3サイクルでは、酵素、dCTP及び二価陽イオンCa2+、Co2+、Fe2+、Zn2+へのバイオセンサーの第2の曝露は、顕著な結合を示さず(図14B、ピーク3)、標準的なSr2+を介した結合対照も同様であった(図14B、ピーク4)。Cu2+への第二の曝露(図14B、ピーク3)は第一のCu2+結合よりも低かったため(図14B、ピーク2)、程度としては低いが、Cu2+もまた、Klenow exo−によるポリメラーゼ活性を増強するようである。酵素+dNTPへの第一の曝露後の二価陽イオン(Ca2+、Co2+、Fe2+、Zn2+、Mn2+)に対する結合シグナルの欠如、及び結合を支持するSr2+を介した対照条件の失敗は、完全なヌクレオチドの組込みが、Mg2+の非存在下で、ある種の二価陽イオン(Ca2+、Co2+、Fe2+、Zn2+、Mn2+)を用いて達成され、これらの一時的なピークをDNA配列決定に使用できることを示唆している。
実施例15.CoClを介した結合及び触媒作用を用いた一本鎖DNAの配列決定による長い読取り長
鋳型オリゴヌクレオチドphiX_100mismatchのDNA配列:
ビオチン−5′−GGCAAATCACCAGAAGGCGGTTCCTGAATGAATGGGAAGCCTTCAAGAA−GGTGATAAGCAGGAGAAACATACGAAGCATCATAACGATACCACTGACCC−3′(配列番号22)
プライマーオリゴヌクレオチドFP2のDNA配列:
5′−GAGGGTCAGTGGTATCGTTATG−3′(配列番号5)
試薬調製。Integrated DNA Technologies(コーラルビル、アイオワ州)により、オリゴヌクレオチドを合成し、分析した(液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)及びエレクトロスプレーイオン化(ESI))。TE緩衝液(10mMトリス pH8.0、0.1mM EDTA)中でオリゴヌクレオチドを100μMに調製した。ssDNAプライマー/鋳型を調製するために、アニーリング緩衝液(10mMトリス pH8.0、0.1mM EDTA、80mM KCl)を含有するチューブ中でオリゴヌクレオチド「phiX_100mismatch」及び「FP2」を混合した(各鎖10μM)。オリゴヌクレオチド溶液を含有するチューブを乾燥ヒートブロックにロードし(95℃で5分間)、ブロックをベンチトップに移して、周囲温度まで徐冷することによって鎖をアニーリングした。E.coli DNAポリメラーゼのKlenow(3′→5′exo−)断片は、Enzymatics(ビバリー、マサチューセッツ州;カタログ番号P7010−LC−L)から購入した。超高純度ウシ血清アルブミン(BSA)及び超高純度サケ***DNA溶液はLife Technologies(フォスターシティ、カリフォルニア州)から購入した。Saccharomyces cerevisiaeヌクレオシド二リン酸キナーゼ(NDPK)酵素(カタログ番号N0379)、アデノシン二リン酸(ADP)及び塩化コバルト(II)六水和物(カタログ番号255599)をSigma(セントルイス、ミズーリ州)から購入した。すべての試薬及び溶液は分子生物学グレードであった。
実験条件。プライマー−鋳型二本鎖をアニーリング緩衝液に希釈した(100nM)。洗浄緩衝液は、20mMトリス、pH8.0、200mM KCl、200mMグルタミン酸カリウム、0.01%(v/v)Tween−20、100μg/mLウシ血清アルブミン、1.0mMジチオスレイトールであった。結合緩衝液は、低CoCl(0.050mM)を含有する洗浄緩衝液であった。反応緩衝液は、高CoCl(15mM)を含有する結合緩衝液であった。EDTA洗浄緩衝液は、1.0mMのEDTAを含有する結合緩衝液であった。Greiner 96ウェルブラックマイクロプレート(Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州、カタログ番号M9685)に、プライマー−鋳型(PT)を含有する緩衝液、1種類のdNTPを含有する結合緩衝液、及び反応緩衝液をロードし(200μL/ウェル)、PCRグレードのミネラルオイル(Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州;カタログ番号M8662)を加えた(75μL/ウェル)。高精度ストレプトアビジンバイオセンサー(Pall ForteBio Corp.、メンローパーク、カリフォルニア州;カタログ番号18−5117)を、使用前に約10分間、アニーリング緩衝液中で再水和した。Octet QKバイオセンサーシステム(Pall ForteBio Corp.、メンローパーク、カリフォルニア州)を30℃で動作するように設定し、プライマー−鋳型でバイオセンサーをコーティングし、未結合のプライマー−鋳型を洗浄緩衝液で洗い流すようにプログラムした。示すように、Klenow exo−(68ユニット/mL)、CoCl(100μM)及び100μM dNTP(dATP、dTTP、dGTPまたはdCTP)を含有する結合緩衝液へ移し(会合フェーズ)、続いてCoCl(15mM)、NDPK、ADP(1mM)及びサケ***DNA(500μg/mL)を含有する反応緩衝液中でdNTPを組込んだ(解離フェーズ)。バイオセンサーをEDTA洗浄緩衝液に移し、続いて酵素、ヌクレオチドまたは二価陽イオンを含まない反応緩衝液中で再平衡化した。同様に、示すように、個々のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dGTP、dCTPまたはdTTP)を含有する溶液に周期的にバイオセンサーを移した。各dNTPについて結合及び組込みの二重サイクルを繰り返し、配列決定を評価した。
データ分析。データを、表示のためにMicrosoft Excel及びPrismソフトウェア(GraphPad Software、サンディエゴ、カリフォルニア州)にインポートした。
結果。ssDNAプライマー−鋳型でコーティングしたバイオセンサーへの結合アッセイでは、Klenow(exo−)酵素はdNTPの非存在下ではバイオセンサーにほとんど結合しなかった(図15、斜線の棒)。各ホモポリマーが単一のピークに圧縮されていると仮定すると、正しい個々のdNTPの存在下で、最初の40サイクルに強いピークが観察され(図15、黒のバー)、これは最初の30ヌクレオチドの100%正しいDNA配列に対応する。その後、識別可能な配列に対応しなかった第41サイクル以降では小さなピーク高さが観察された。これらの結果は、DNAポリメラーゼのKlenow exo−断片を用いて、低Co2+濃度によって媒介される検査フェーズにおける酵素−dNTP−プライマー/鋳型三元複合体の結合とその後の高Co2+濃度存在下でのdNTP組込みとを用いて二本鎖DNAを配列決定する能力を実証している。
実施例16.ポリメラーゼ捕捉剤及びdNTP除去酵素の存在下でのニッケル促進性結合、マグネシウム交換及び触媒作用を用いた一本鎖DNAの配列決定による長い読取り長
3′逆位dTを有する鋳型オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509S C4493AのDNA配列:
ビオチン−5′−GTGAGCCTGCAATCCCTGCCCCGGTTCATCCTGATGGAGCTCATGGCGGG−3′−(3′−dT−5′)(配列番号21)
プライマーオリゴヌクレオチド4496−4509ASのDNA配列:
5′−CCCGCCATGAGCTC−3′(配列番号10)
試薬調製。Integrated DNA Technologies(コーラルビル、アイオワ州)により、オリゴヌクレオチドを合成し、分析した(液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)及びエレクトロスプレーイオン化(ESI))。TE緩衝液(10mMトリス pH8.0、0.1mM EDTA)中でオリゴヌクレオチドを100μMに調製した。ssDNAプライマー/鋳型を調製するために、アニーリング緩衝液(10mMトリス pH8.0、0.1mM EDTA、80mM KCl)を含有するチューブ中で、オリゴヌクレオチド「Btn−4460−4509S C4493A」及び「4496−4509AS」を混合した(各鎖10μM)。オリゴヌクレオチド溶液を含有するチューブを乾燥ヒートブロックにロードし(95℃で5分間)、ブロックをベンチトップに移して、周囲温度まで徐冷することによって鎖をアニーリングした。E.coli DNAポリメラーゼのKlenow(3′→5′exo−)断片は、Enzymatics(ビバリー、マサチューセッツ州;カタログ番号P7010−LC−L)から購入した。超高純度ウシ血清アルブミン(BSA)及び超高純度サケ***DNA溶液はLife Technologies(フォスターシティ、カリフォルニア州)から購入した。Saccharomyces cerevisiaeヌクレオシド二リン酸キナーゼ(NDPK)酵素(カタログ番号N0379)、アデノシン二リン酸(ADP)及び硫酸ニッケル(II)六水和物(カタログ番号467901)はSigma(セントルイス、ミズーリ州)から購入した。すべての試薬及び溶液は分子生物学グレードであった。
実験条件。プライマー−鋳型二本鎖をアニーリング緩衝液に希釈した(100nM)。洗浄緩衝液は、20mMトリス、pH8.0、200mM KCl、200mMグルタミン酸カリウム、0.01%(v/v)、Tween−20、100μg/mLウシ血清アルブミン、1.0mMジチオスレイトールであった。結合緩衝液は、2.0mMのNi(II)SOを含有する洗浄緩衝液であった。反応緩衝液は、MgCl(10mM)を含有する結合緩衝液であった。EDTA洗浄緩衝液は、1.0mMのEDTAを含有する結合緩衝液であった。プライマー−鋳型(PT)を含有する緩衝液、1種類のdNTPを含有する結合緩衝液及び反応緩衝液をGreiner 96ウェルブラックマイクロプレート(Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州;カタログ番号M9685)にロードし(200μL/ウェル)、PCRグレードのミネラルオイル(Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州;カタログ番号M8662)を加えた(75μL/ウェル)。高精度ストレプトアビジンバイオセンサー(Pall ForteBio Corp.、メンローパーク、カリフォルニア州;カタログ番号18−5117)を、使用前に約10分間、アニーリング緩衝液中で再水和した。Octet QKバイオセンサーシステム(Pall ForteBio Corp.、メンローパーク、カリフォルニア州)を30℃で動作するように設定し、プライマー−鋳型でバイオセンサーをコーティングし、未結合のプライマー−鋳型を洗浄緩衝液で洗い流すようにプログラムした。示すように、Klenow exo−(68ユニット/mL)、Ni(II)SO(2.0mM)及び100μM dNTP(dATP、dTTP、dGTPまたはdCTP)を含有する結合緩衝液へバイオセンサーを移し(会合フェーズ)、続いてMgCl(10mM)、NDPK、ADP(1mM)及びサケ***DNA(500μg/mL)を含有する反応緩衝液中でdNTPを組込んだ(解離フェーズ)。バイオセンサーをEDTA洗浄緩衝液に移し、続いて酵素、ヌクレオチドまたは二価陽イオンを含まない反応緩衝液中で再平衡化した。同様に、示すように、個々のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dGTP、dCTPまたはdTTP)を含有する溶液へ、周期的にバイオセンサーを移した。各dNTPについて結合及び組込みの二重サイクルを繰り返し、配列決定を評価した。
データ分析。データを、表示のためにMicrosoft Excel及びPrismソフトウェア(GraphPad Software、サンディエゴ、カリフォルニア州)にインポートした。
結果。ssDNAプライマー−鋳型でコーティングしたバイオセンサーへの結合アッセイでは、Klenow(exo−)酵素はdNTP非存在下ではバイオセンサーにほとんど結合しなかった(図16、「Klenow」)。各ホモポリマーが単一のピークに圧縮されていると仮定すると、正しい個々のdNTPの存在下で、最初の32ヌクレオチド(CATCAGGATGAACCGGGGCAGGGATTGCAGGC(配列番号23))の100%正しいDNA配列に対応する強いピークが観察された(図16、「Klenow+dNTP」)。750分後、シグナルは最小であり、最後の4ヌクレオチド(TCAC)については、識別可能な配列は得られなかった。
ホモポリマー圧縮は、反応緩衝液中でポリメラーゼが1塩基より多くのdNTPを組込むことから生じ得る。2つの方法を用いて、シングルターンオーバーでの組込みをサポートするように意図した条件によってホモポリマー圧縮を防止した。第一に、遊離Klenowがプライマー/鋳型に再結合して第二のdNTPを組込まないようにするために、ポリメラーゼ捕捉剤として過剰量のサケ***DNAをいくつかの反応緩衝液に含有させる。第二に、反応緩衝液中の遊離dNTPがKlenowプライマー/鋳型複合体に再結合し、酵素により新生鎖に組込まれることがないようにするために、NDPK及びADPを含む反応緩衝液を用いて遊離dNTPをdNDPとATPとに変換し、その結果、ポリメラーゼはdNDPを組込むことができない。(会合フェーズ)中に三元複合体が形成し、その後、反応緩衝液中で解離した。ポリメラーゼ捕捉剤を含有する反応緩衝液は、結合時の振幅が解離時の振幅を上回ることによって証明されるように、バイオセンサーチップ上への蓄積を示した(図16、「Klenow+dNTP」)。対照的に、NDPK及びADPを含有する反応緩衝液は、解離後にベースラインへ回帰し、このことは解離フェーズが完全であったことを示唆している(図16「NDPK+ADP+Klenow+dNTP」)。これらの結果は、ポリメラーゼ−プライマー/鋳型複合体への再結合において、キャップ化し、非生産的に配列決定を終結させ得るdNTPの役割を示唆している。NDPK及びADPを含有する反応緩衝液は、触媒作用の間に遊離dNTPのプールを枯渇させることによって、これらの非生産的なキャップ生成物を防止するようである。サケ***DNA、NDPK及びADPの存在下であってもホモポリマーの圧縮が観察されたため、シングルターンオーバーでの組込みは達成されず;図16に示すように、期待される配列(CATCA[G]ATG[A]CA[G]A[T]GCA[G]CTCAC(配列番号24))は、連続ジヌクレオチド(GG、AA、CCもしくはTT)、トリヌクレオチド(GGG)またはテトラヌクレオチド(GGGG)を含まないCATCA[G]ATG[ACG]CA[G]A[T]GCA[G]C(配列番号25)として検出された。
まとめると、これらの結果は、DNAポリメラーゼのKlenow exo−断片を用いて一本鎖DNAを配列決定する能力を示しており、検査フェーズにおいてNi2+イオンを介して酵素−dNTP−プライマー/鋳型三元複合体を結合させ、続いて二価陽イオンからMgClへの交換を介してdNTPを組込み、触媒作用によってヌクレオチドをプライマー−鋳型へ組込む。
実施例17.ポリメラーゼ捕捉剤及び2′−デオキシリボヌクレオシド二リン酸の存在下でのニッケル(II)促進性結合、マグネシウム交換及び触媒作用を用いた一本鎖DNAの配列決定によるホモポリマー分割
3′逆位dTを有する鋳型オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509S C4493AのDNA配列:
ビオチン−5′−GTGAGCCTGCAATCCCTGCCCCGGTTCATCCTGATGGAGCTCATGGCGGG−3′−(3′−dT−5′)(配列番号21)
プライマーオリゴヌクレオチド4496−4509ASのDNA配列:
5′−CCCGCCATGAGCTC−3′(配列番号10)
試薬調製。Integrated DNA Technologies(コーラルビル、アイオワ州)により、オリゴヌクレオチドを合成し、分析した(液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)及びエレクトロスプレーイオン化(ESI))。TE緩衝液(10mMトリス pH8.0、0.1mM EDTA)中でオリゴヌクレオチドを100μMに調製した。ssDNAプライマー/鋳型を調製するために、アニーリング緩衝液(10mMトリス pH8.0、0.1mM EDTA、80mM KCl)を含有するチューブ中で、オリゴヌクレオチド「Btn−4460−4509S C4493A」及び「4496−4509AS」を混合した(各鎖10μM)。オリゴヌクレオチド溶液を含有するチューブを乾燥ヒートブロックにロードし(95℃で5分間)、ブロックをベンチトップに移して、周囲温度まで徐冷して鎖をアニーリングした。エキソヌクレアーゼ活性を欠損するBacillus subtilis由来のBsu DNAポリメラーゼI(ラージフラグメント)は、New England Biolabs(イプスウィッチ、マサチューセッツ州;カタログ番号M0330L)から購入した。超高純度ウシ血清アルブミン(BSA)及び超高純度サケ***DNA溶液はLife Technologies(フォスターシティ、カリフォルニア州)から購入した。硫酸ニッケル(II)六水和物(カタログ番号467901)、dCDP、dGDP及びdTDPは、Sigma(セントルイス、ミズーリ州)から購入した。すべての試薬及び溶液は分子生物学グレードであった。
実験条件。プライマー−鋳型二本鎖をアニーリング緩衝液に希釈した(100nM)。洗浄緩衝液は、20mMトリス、pH8.0、200mM KCl、200mMグルタミン酸カリウム、0.01%(v/v)、Tween−20、100μg/mLウシ血清アルブミン、1.0mMジチオスレイトールであった。結合緩衝液は、2.0mMのNi(II)SOを含有する洗浄緩衝液であった。反応緩衝液は、20mMトリス、pH8.0、50mM KCl、MgCl(10mM)、0.01%(v/v)Tween−20、100μg/mLウシ血清アルブミン、1.0mMジチオスレイトールであった。EDTA洗浄緩衝液は、1.0mMのEDTAを含有する結合緩衝液であった。プライマー−鋳型(PT)を含有する緩衝液、1種類のdNTPを含有する結合緩衝液及び反応緩衝液をGreiner 96ウェルブラックマイクロプレート(Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州;カタログ番号M9685)にロードし(200μL/ウェル)、PCRグレードのミネラルオイル(Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州;カタログ番号M8662)を加えた(75μL/ウェル)。高精度ストレプトアビジンバイオセンサー(Pall ForteBio Corp.、メンローパーク、カリフォルニア州;カタログ番号18−5117)を、使用前に約10分間、アニーリング緩衝液中で再水和させた。Octet QKバイオセンサーシステム(Pall ForteBio Corp.、メンローパーク、カリフォルニア州)を30℃で動作するように設定し、プライマー−鋳型でバイオセンサーをコーティングし、未結合のプライマー−鋳型を洗浄緩衝液で洗い流すようにプログラムした。示すように、Bsu Pol I(68ユニット/mL)、Ni(II)SO(1.0mM)及び100μM dNTP(dATP、dTTP、dGTPまたはdCTP)を含有する結合緩衝液へバイオセンサーを移し(会合フェーズ)、続いてMgCl(10mM)、サケ***DNA(500μg/mL)及び対応するdNDP(使用していないdADPを除く)を含有する反応緩衝液中でdNTPを組込んだ(解離フェーズ)。バイオセンサーをEDTA洗浄緩衝液に移し、続いて、酵素、ヌクレオチドまたは二価陽イオンを含まない反応緩衝液中で再平衡化した。同様に、示すように、個々のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dGTP、dCTPまたはdTTP)を含有する溶液に周期的にバイオセンサーを移した。各dNTPについて結合サイクル及び組込みサイクルを繰り返し、配列決定を評価した。
データ分析。データを、表示のためにMicrosoft Excel及びPrismソフトウェア(GraphPad Software、サンディエゴ、カリフォルニア州)にインポートした。
結果。ssDNAプライマー−鋳型でコーティングしたバイオセンサーへの結合アッセイにおいて、Bsu Pol I酵素は、正しいdNTPの存在下でバイオセンサーに強く結合した(図17A)。過剰量のdNDP(3.0mM)を含有する反応緩衝液におけるシグナルピークは、CATCAGGの正しいDNA配列に対応し、ホモポリマーの2つのGGを、2つの別個のピークの検出により分割する(図17A、矢印)。対照的に、反応緩衝液中のdNDP非存在下での対照(図17A、「対照」)に対するホモポリマーのシグナルピークについては分割に失敗することが観察され、これについてはGGホモポリマーが単一のGピークに圧縮されていると仮定した場合には、CATCAGGATの正しいDNA配列に対応する。ホモポリマーの分割に対するdNDPの影響を、2つの手段によって評価する:(1.)GGジヌクレオチドの第二のGピークの高さは、反応緩衝液中のdNDPの濃度に依存し(図17A、第2の矢印)、(2.)GGホモポリマーに続く後続ヌクレオチド(A及びT)は、反応緩衝液中のdNDP濃度に反比例する。
ホモポリマーの圧縮は、反応緩衝液中においてポリメラーゼが1塩基より多くのdNTPを組込むことから生じ得る。2つの方法を用いて、シングルターンオーバーでの組込みをサポートするように意図した条件によってホモポリマー圧縮を防止した。第一に、遊離のBsu Pol Iがプライマー/鋳型に再結合して、第二のdNTPを組込まないようにするために、ポリメラーゼ捕捉剤として過剰量のサケ***DNAを反応緩衝液に含有させる。第二に、反応緩衝液中の遊離dNTPがBsu Polプライマー/鋳型複合体に再結合し、酵素により新生鎖に組込まれることがないようにするために、遊離dNTPによるポリメラーゼ結合に競合させるためのdNDPを含有する反応緩衝液は、Bsu Polプライマー/鋳型複合体に結合してさらなる組込みをブロックし、したがってホモポリマー圧縮をブロックすると考えられる。GGホモポリマーの第二のピークは、第一のGピークのサイズの60.1%であり(図17B)、ホモポリマー圧縮による後続の2つのヌクレオチド(A及びT)の結合がそれぞれ73.4%及び92.0%減少した(図17B)ことから、シングルターンオーバーでの組込みの目標はほぼ達成されている。
これらの結果は、BsuI Pol I(ラージフラグメント)を用いた一本鎖DNAを配列決定する能力を実証しており、検査フェーズにおいてNi2+イオンを介して酵素−dNTP−プライマー/鋳型三元複合体を結合させ、続いて二価陽イオンからMgClへの交換を介してdNTPを組込み、触媒作用によってヌクレオチドをプライマー−鋳型へ組込み、その一方で、反応緩衝液中で競合するdNDPを用いてホモポリマーの分解能を向上させる。
実施例18.2′−デオキシリボヌクレオシド二リン酸及び競合基質の存在下でのニッケル(II)促進性結合、マグネシウム交換及び触媒作用を用いた一本鎖DNAの配列決定によるホモポリマー分割の速度論的方法
3′逆位dTを有する野生型ALK鋳型オリゴヌクレオチドBtn−4460−4509SのDNA配列:
ビオチン−5′−GTGAGCCTGCAATCCCTGCCCCGGTTCATCCTGCTGGAGCTCATGGCGGG−3′−(3′−dT−5′)(配列番号7)
ALK−G1プライマーオリゴヌクレオチド4494−4509ASのDNA配列:
5′−CCCGCCATGAGCTCCA−3′(配列番号26)
ALK−G2プライマーオリゴヌクレオチド4491−4509ASのDNA配列:
5′−CCCGCCATGAGCTCCAGCA−3′(配列番号27)
ALK−G3プライマーオリゴヌクレオチド4476−4509ASのDNA配列:
5′−CCCGCCATGAGCTCCAGCAGGATGAACC/ideoxyI/GGGCA−3′(配列番号28)、ここで、「/ideoxyI/」は、2′−デオキシイノシン残基である。
ALK−G4プライマーオリゴヌクレオチド4482−4509ASのDNA配列:
5′−CCCGCCATGAGCTCCAGCAGGATGAACC−3′(配列番号29)
試薬調製。Integrated DNA Technologies(コーラルビル、アイオワ州)により、オリゴヌクレオチドを合成し、分析した(液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)及びエレクトロスプレーイオン化(ESI))。TE緩衝液(10mMトリス pH8.0、0.1mM EDTA)中でオリゴヌクレオチドを100μMに調製した。ssDNAプライマー/鋳型を調製するために、オリゴヌクレオチド「Btn−4460−4509S」及び「4494−4509AS」、「4491−4509AS」、「4476−4509AS」または「4482−4509AS」(それぞれ、ALK−G1、ALK−G2、ALK−G3またはALK−G4二本鎖)を、アニーリング緩衝液(10mMトリス pH8.0、0.1mM EDTA、80mM KCl)を含有するチューブ中で混合した(各鎖10μM)。オリゴヌクレオチド溶液を含有するチューブを乾燥ヒートブロックにロードし(95℃で5分間)、ブロックをベンチトップに移して周囲温度まで徐冷して鎖をアニーリングした。エキソヌクレアーゼ活性を欠損するBacillus subtilis由来のBsu DNAポリメラーゼI(ラージフラグメント)は、New England Biolabs(イプスウィッチ、マサチューセッツ州;カタログ番号M0330L)から購入した。超高純度ウシ血清アルブミン(BSA)及び超高純度サケ***DNA溶液はLife Technologies(フォスターシティ、カリフォルニア州)から購入した。基質アナログ2′−デオキシアデノシン−5′−O−(1−チオ三リン酸)(「α−S−dATP」)、2′−デオキシシチジン−5′−O−(1−チオ三リン酸)(「α−S−dCTP」)、2′−デオキシグアノシン−5′−O−(1−チオ三リン酸)(「α−S−dGTP」)及び2′−デオキシチミジン−5′−O−(1−チオ三リン酸)(「α−S−dTTP 」)は、TriLink Biotechnologies,Inc.(サンディエゴ、カリフォルニア州)から購入した。硫酸ニッケル(II)六水和物(カタログ番号467901)はSigma(セントルイス、ミズーリ州)から購入した。すべての試薬及び溶液は分子生物学グレードであった。
実験条件。プライマー−鋳型二本鎖をアニーリング緩衝液に希釈した(100nM)。洗浄緩衝液は、30mMトリス、pH8.0、160mM KCl、160mMグルタミン酸カリウム、0.01%(v/v)、Tween−20、100μg/mLウシ血清アルブミン、1.0mMジチオスレイトールであった。結合緩衝液は、洗浄緩衝液に、Bsu Pol I(68ユニット/mL)、100μM dGTP+1.0mM Ni(II)SOを加えたものであった。反応緩衝液は、洗浄緩衝液に、Bsu(1U/mL)、MgCl(80μM)、dGTP(28.1μM)、α−S−dGTP(162μM)を加えたものであった。EDTA洗浄緩衝液は、洗浄緩衝液からNi(II)SOを除き、1.0mM EDTAを加えたものであった。Greiner 96ウェルブラックマイクロプレート(Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州;カタログ番号M9685)に、プライマー−鋳型(PT)を含有する緩衝液、結合緩衝液及び反応緩衝液をロードし(200μL/ウェル)、PCRグレードのミネラルオイル(Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州;カタログ番号M8662)を加えた(75μL/ウェル)。高精度ストレプトアビジンバイオセンサー(Pall ForteBio Corp.、メンローパーク、カリフォルニア州;カタログ番号18−5117)を、使用前に約10分間、アニーリング緩衝液中で再水和させた。Octet QKバイオセンサーシステム(Pall ForteBio Corp.、メンローパーク、カリフォルニア州)を30℃で動作するように設定し、プライマー−鋳型でバイオセンサーをコーティングし、未結合のプライマー−鋳型を洗浄緩衝液で洗い流すようにプログラムした。バイオセンサーを結合緩衝液に移し(会合フェーズ)、続いて反応緩衝液中でdNTPを組込んだ(解離フェーズ)。バイオセンサーをEDTA洗浄緩衝液に移し、続いて酵素、ヌクレオチドまたはMgClを含まない反応緩衝液中で再平衡化した。
データ分析。データを、表示のためにMicrosoft Excel及びPrismソフトウェア(GraphPad Software、サンディエゴ、カリフォルニア州)にインポートした。会合フェーズの時系列を、Prismソフトウェアを用いて単一の指数関数会合方程式にフィッティングさせた。対照状態としてGを単体で組込むDunnett検定を用いて、InStat統計ソフトウェア(GraphPad Software、サンディエゴ、カリフォルニア州)により、会合フェーズの反応速度パラメータ(kobs及び振幅)を分析した。解離フェーズの時系列を、Prismソフトウェアを用いて二重指数関数解離方程式にフィッティングさせた。
結果。ssDNAプライマー−鋳型でコーティングしたバイオセンサーへの結合アッセイにおいて、Bsu Pol I酵素は、正しいdGTPの存在下でプライマー/鋳型でコーティングしたバイオセンサーに強く結合した(図18A及び18B)。ALK−G1への結合シグナル(図18A)は、ALK−G2、ALK−G3及びALK−G4への結合よりも高かった(図18A及び18B)。三元複合体でコーティングしたバイオセンサーを、ポリメラーゼ、dGTP及びα−S−dGTP、Ni2+及びMg2+を含有する組込み緩衝液に移した後、ALK鋳型に応じて異なる解離の時系列変化が観察された(図18C)。プライマー/鋳型のホモポリマーへの組込みに対して、会合反応速度パラメータがヌクレオチド数からどのように影響を受け得るかについて、三元複合体の形成に関する会合フェーズを分析した。ホモポリマーに組込むための複数(2〜4)のヌクレオチドを有するプライマー/鋳型は、会合に関して、対照の単一の組込みよりも振幅が低く(図18D)、これはDunnett検定によると、統計学的に有意であった(p<0.01)。同様に、ホモポリマーに組込むための複数(2〜4)のヌクレオチドを有するプライマー/鋳型は、対照の単一の組込みに比べて高い見かけ上の会合反応速度定数(kobs)を有し(図18D)、これはDunnett検定によると、統計学的に有意であった(p<0.01)。この知見は、単一の組込みが、ホモポリマー鋳型における複数の組込みと速度論的に区別可能であることを示している。最後に、ALK−G2<ALK−G3<ALK−G4〜ALK−G1の順番で組込みのためのヌクレオチドの数が増加するにつれて観察される解離速度(反応緩衝液への移行後0〜8秒)は増加し、ここでBsuポリメラーゼ濃度は0.13〜1U/mLの間である(図18E)。
これらの結果は、ホモポリマー鋳型への単一及び複数の組込みを2工程の方法で定量的に検出する能力を実証している。第一に、三元複合体の会合反応速度パラメータは、複数の組込み(ALK−G2、ALK−G3、ALK−G4)に比べて、単一の組込み(ALK−G1)では異なる。第二に、三元複合体でコーティングしたバイオセンサーチップを反応緩衝液に移した後、初期速度での解離(0〜8秒)により、ホモポリマー鋳型(ALK−G2、ALK−G3、ALK−G4)において2個、3個または4個のヌクレオチドを組込み、定量的に認識することが可能となる。

Claims (23)

  1. 鋳型核酸分子の配列決定方法であって:
    (a)プライマーでプライミングした鋳型核酸分子を提供し;
    (b)前記プライミングした鋳型核酸分子を、ポリメラーゼ及び第一の非標識ヌクレオチド分子を含む第一の反応混合物と接触させ、
    そこにおいて、前記第一の非標識ヌクレオチド分子が前記プライミングした鋳型核酸分子の後続塩基に相補的である場合、前記プライミングした鋳型核酸分子、前記ポリメラーゼ及び前記第一の非標識ヌクレオチド分子が、三元複合体を形成することができ、
    前記接触は、前記プライミングした鋳型核酸分子、前記第一の非標識ヌクレオチド分子及び前記ポリメラーゼ間の、三元複合体の形成を安定化する条件下で行い
    (c)前記ポリメラーゼ及び前記プライミングした鋳型核酸分子間で形成された任意の二元複合体を除去する洗浄工程を実施し;
    (d)前記第一の非標識ヌクレオチド分子の存在下で、前記プライミングした鋳型核酸分子の前記プライマーへの前記第一の非標識ヌクレオチド分子の化学的組込みを伴わずに、前記ポリメラーゼと、前記プライミングした鋳型核酸分子との相互作用をモニタリングし;ならびに
    (e)工程(d)の前記モニタリングした相互作用によって、前記プライミングした鋳型核酸分子の前記後続塩基に相補的なヌクレオチドを同定することを含む検査工程を含
    工程(b)及びモニタリング工程(d)が触媒金属イオンの非存在下で行われる、前記配列決定方法。
  2. 工程(b)(c)及び(d)を1回以上繰り返すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 工程(b)を、前記ポリメラーゼ及び第二の非標識ヌクレオチド分子を含む第二の反応混合物を使用して繰り返す、請求項2に記載の方法。
  4. 前記ポリメラーゼ及び第三の非標識ヌクレオチド分子を含む第三の反応混合物を用いて工程(b)を繰り返す工程をさらに含む、請求項3に記載の方法。
  5. 前記ポリメラーゼ及び第四の非標識ヌクレオチド分子を含む第四の反応混合物を用いて工程(b)を繰り返す工程をさらに含む、請求項4に記載の方法。
  6. 前記第一の反応混合物が、前記三元複合体の形成を安定化する非触媒金属イオンを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記条件が安定化剤を含み、かつ前記安定化剤が非触媒金属イオンである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記非触媒金属イオンが、ストロンチウム、スズ、またはニッケルである、請求項6またはに記載の方法。
  9. 前記三元複合体が半減期を有し、非標識ヌクレオチド分子が前記プライミングした鋳型核酸分子の前記後続塩基に相補的な塩基を提供する場合に形成する前記三元複合体の前記半減期よりも短い期間、前記洗浄工程を実施する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記ポリメラーゼがプロセッシブポリメラーゼである、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記ポリメラーゼがディストリビューティブポリメラーゼである、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  12. 工程()の後にリロード工程をさらに含み、前記リロード工程が、前記三元複合体を安定化させる条件下で、前記プライミングした鋳型核酸と、前記ポリメラーゼ及び第一の非標識ヌクレオチド分子を含むリロード混合物とを接触させる工程を含む、請求項1〜1のいずれか一項に記載の方法。
  13. 工程()の後に組込み工程をさらに含み、前記組込み工程が、前記プライミングした核酸分子の前記後続塩基に相補的な前記非標識ヌクレオチドを前記プライマーに組込む工程を含む、請求項1〜1のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記組込みが、組込み反応混合物と接触させることを含み、前記組込み反応混合物が、前記プライミングした鋳型核酸分子の前記プライマーに組込み可能な1つ以上の非標識ヌクレオチド分子及び組込み不可能な1つ以上の非標識ヌクレオチド分子を含む、請求項1に記載の方法。
  15. モニタリング工程()を、表面プラズモン共鳴センサー上で実行する、請求項1〜1のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記プライマーでプライミングした鋳型核酸分子を、前記表面プラズモン共鳴センサー上に配置する、請求項1に記載の方法。
  17. モニタリング工程()を、前記ポリメラーゼからの固有シグナルの検出を介して行う、請求項1〜1のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記ポリメラーゼが非標識ポリメラーゼであり、モニタリング工程()を、前記ポリメラーゼに付随する検出可能な標識の非存在下で行う、請求項1〜1のいずれか一項に記載の方法。
  19. モニタリング工程()が、前記第一の非標識ヌクレオチド分子の存在下で、前記プライミングした鋳型核酸分子の前記プライマーへの前記第一の非標識ヌクレオチド分子の化学的組込みを伴わずに、前記ポリメラーゼと前記プライミングした鋳型核酸分子との定常状態相互作用をモニタリングする工程を含む、請求項1〜1のいずれか一項に記載の方法。
  20. 前記プライマーが、ブロッキング部分を含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 前記第一の反応混合物がポリメラーゼ阻害剤を含む、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
  22. 前記非標識ヌクレオチド分子がブロッキング部分を含む、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
  23. 前記ポリメラーゼが検出可能なタグを含む、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
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