以下、本実施形態について説明する。なお、以下で説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.電子機器
図1Aに本実施形態の無接点電力伝送システムの一例を示す。充電器500(電子機器の1つ)は送電装置10を有する。電子機器510は受電装置40を有する。また電子機器510は、操作用のスイッチ部514(広義には操作部)やバッテリー90を有する。なお図1Aではバッテリー90を模式的に示しているが、このバッテリー90は実際には電子機器510に内蔵されている。図1Aの送電装置10と受電装置40により本実施形態の無接点電力伝送システムが構成される。
充電器500には、電源アダプター502を介して電力が供給され、この電力が、無接点電力伝送により送電装置10から受電装置40に送電される。これにより、電子機器510のバッテリー90を充電し、電子機器510内のデバイスを動作させることができる。
なお充電器500の電源は、USB(USBケーブル)による電源であってもよい。また、本実施形態が適用される電子機器510としては種々の機器を想定できる。例えば補聴器、腕時計、生体情報の測定装置(脈波等を測定するウェアラブル機器)、携帯情報端末(スマートフォン、携帯電話機等)、コードレス電話器、シェーバー、電動歯ブラシ、リストコンピューター、ハンディターミナル、車載用機器、ハイブリッド車、電気自動車、電動バイク、或いは電動自転車などの種々の電子機器を想定できる。例えば本実施形態の制御装置(受電装置等)は、車、飛行機、バイク、自転車、或いは船舶等の種々の移動体に組み込むことができる。移動体は、例えばモーターやエンジン等の駆動機構、ハンドルや舵等の操舵機構、各種の電子機器(車載機器)を備えて、地上や空や海上を移動する機器・装置である。
図1Bに模式的に示すように、送電装置10から受電装置40への電力伝送は、送電側に設けられた1次コイルL1(送電コイル)と、受電側に設けられた2次コイルL2(受電コイル)を電磁的に結合させて電力伝送トランスを形成することなどで実現される。これにより非接触での電力伝送が可能になる。なお無接点電力伝送の方式としては、電磁誘導方式又は磁界共鳴方式等の種々の方式を採用できる。
2.送電装置、受電装置、制御装置の構成
図2に本実施形態の制御装置20、50及びこれを含む送電装置10、受電装置40の構成例を示す。なお、これらの各装置の構成は図2の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素(例えば報知部)を追加したり、接続関係を変更するなどの種々の変形実施が可能である。
図1Aの充電器500などの送電側の電子機器は送電装置10を含む。また受電側の電子機器510は受電装置40と負荷80を含む。負荷80は、バッテリー90、電力供給対象100を含むことができる。電力供給対象100は、例えば処理部(DSP等)などの各種のデバイスである。そして図2の構成により、1次コイルL1と2次コイルL2を電磁的に結合させて送電装置10から受電装置40に対して電力を伝送する無接点電力伝送(非接触電力伝送)システムが実現される。
送電装置10(送電モジュール、1次モジュール)は、1次コイルL1、送電部12、制御装置20を含む。送電部12は、電力伝送時において所定周波数の交流電圧を生成して、1次コイルL1に供給する。送電部12は、1次コイルL1を駆動する送電ドライバーや、送電ドライバーに電源を供給する電源回路(例えば電源電圧制御部)や、1次コイルL1と共に共振回路を構成する少なくとも1つのキャパシター(コンデンサー)を含むことができる。
1次コイルL1(送電側コイル)は、2次コイルL2(受電側コイル)と電磁結合して電力伝送用トランスを形成する。例えば電力伝送が必要なときには、前述した図1A、図1Bに示すように、充電器500の上に電子機器510を置き、1次コイルL1の磁束が2次コイルL2を通るような状態にする。一方、電力伝送が不要なときには、充電器500と電子機器510を物理的に離して、1次コイルL1の磁束が2次コイルL2を通らないような状態にする。
制御装置20は、送電側の各種制御を行うものであり、集積回路装置(IC)などにより実現できる。制御装置20は、制御部24、通信部30を含む。なお送電部12を制御装置20に内蔵させるなどの変形実施も可能である。
制御部24は、送電側の制御装置20の各種の制御処理を実行する。例えば制御部24は、送電部12や通信部30の制御を行う。具体的には制御部24は、電力伝送、通信処理等に必要な各種のシーケンス制御や判定処理を行う。この制御部24は、例えばゲートアレイ等の自動配置配線手法で生成されたロジック回路や、或いはマイクロコンピューターなどの各種のプロセッサーにより実現できる。
通信部30は、受電装置40との間での通信データの通信処理を行う。例えば通信部30は、受電装置40からの通信データを検出して受信するための処理を行う。
受電装置40(受電モジュール、2次モジュール)は、2次コイルL2、制御装置50を含む。制御装置50は、受電側の各種制御を行うものであり、集積回路装置(IC)などにより実現できる。制御装置50は、受電部52、制御部54、通信部46(負荷変調部56)、電力供給部57を含む。また記憶部48を含むことができる。なお、受電部52を制御装置50の外部に設けるなどの変形実施も可能である。
受電部52は、送電装置10からの電力を受電する。具体的には受電部52は、2次コイルL2の交流の誘起電圧を直流の整流電圧(VCC)に変換して、出力する。
電力供給部57は、受電部52が受電した電力に基づいて、負荷80に対して電力を供給する。例えば受電部52が受電した電力を供給して、バッテリー90を充電する。或いはバッテリー90からの電力や、受電部52が受電した電力を、電力供給対象100に供給する。電力供給部57は電力供給スイッチ42を含む。電力供給スイッチ42は、受電部52が受電した電力を、負荷80に供給するスイッチ(スイッチ素子、スイッチ回路)である。例えば電力供給スイッチ42は、受電部52が受電した電力を、負荷80であるバッテリー90に供給して、バッテリー90を充電する。
制御部54は、受電側の制御装置50の各種の制御処理を実行する。例えば制御部54は、通信部46、負荷変調部56、電力供給部57の制御を行う。また受電部52や記憶部48の制御を行うこともできる。制御部54は、例えばゲートアレイ等の自動配置配線手法で生成されたロジック回路や、或いはマイクロコンピューターなどの各種のプロセッサーにより実現できる。
通信部46は、送電装置10に対して通信データを送信する通信を行う。或いは送電装置10から通信データを受信する通信を行ってもよい。例えば通信部46が負荷変調部56を有する場合には、通信部46の通信は、例えば負荷変調部56が負荷変調を行うことにより実現できる。例えば負荷変調部56は電流源を有し、この電流源を用いて負荷変調を行う。但し、通信部46の通信方式は負荷変調には限定されない。例えば通信部46は、1次コイルL1、2次コイルL2を用いて負荷変調以外の方式で通信を行ってもよい。或いは、1次コイルL1、2次コイルL2とは別のコイルを設け、この別のコイルを用いて負荷変調やそれ以外の通信方式で通信を行ってもよい。或いはRFなどの近接無線通信で通信を行ってもよい。
記憶部48は、各種の情報を記憶する。記憶部48は例えば不揮発性メモリーにより実現できるが、これに限定されるものではない。例えば不揮発性メモリー以外のメモリー(例えばROM)により記憶部48を実現してもよい。或いは、ヒューズ素子を用いた回路等により記憶部48を実現してもよい。
負荷80は、バッテリー90と、バッテリー90の電力供給対象100を含む。但し、これらのいずれか一方が設けられない変形実施も可能である。
バッテリー90は例えば充電可能な二次電池であり、例えばリチウム電池(リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池等)、ニッケル電池(ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池等)などである。電力供給対象100は、例えば、処理部(DSP、マイコン)などのデバイス(集積回路装置)であり、受電装置40を内蔵する電子機器510(図1A)に設けられ、例えばバッテリー90の電力供給対象となるデバイスである。なお、受電部52が受電した電力を直接に電力供給対象100に供給してもよい。
3.本実施形態の手法
次に、本実施形態の無接点電力伝送システムにおける受電側の制御装置50及びこれを含む電子機器、無接点電力伝送システムの動作について説明する。
本実施形態の無接点電力伝送システムにおける受電側の制御装置50は、電力供給部57と、負荷変調部56と、電力供給部57及び負荷変調部56を制御する制御部54と、を含む。電力供給部57は、送電装置10から受電装置40内の受電部52が受電した電力に基づいて、負荷80に電力を供給する。
負荷変調部56は、送電装置10の通常送電期間において、負荷変調により、送電装置10に対して、各パケットがNビット(Nは2以上の整数)で構成される複数のパケットを送信する。例えば、負荷変調部56は、後述する図17A及び図17Bに示すようなパケットを複数、送電装置10に送信する。例えば図17Aに示す例では、N=64であるが、本実施形態ではN=64には限定されない。また、負荷変調を行う際の詳細な動作や、負荷変調部の詳細な構成については、図11を用いて後述する。なお、通常送電期間とは、送電装置10が通常送電を行っていると、受電装置40(の制御部54)が判断する期間である。言い換えれば、例えば送電装置10が通常送電を行っていないと、受電装置40の制御部54が判断する期間においては、前述した複数のパケットを送信する処理を行わない。
さらに、本実施形態では、第1のモードにおいては、第i(iは1以上の整数)のパケットと次の第(i+1)のパケットの間にデータ非送信期間が設定されている。
ここで、第1のモードは、例えば低消費電力モードである。低消費電力モードは、例えば受電装置40の制御装置50等において消費する電力を抑制するモードであり、より具体的には言えば、制御装置50を構成するIC等において負荷変調を行うために消費する電力を抑制するためのモードである。低消費電力モードを使用する際には、例えば電力供給対象100が、受電装置40が低消費電力モードとして動作するための設定情報を、制御装置50の記憶部48に書き込み、制御装置50の制御部54が、記憶部48から低消費電力モードの設定情報を読み出して、低消費電力モードで動作することを決定する。低消費電力モードの設定情報は、例えば受電装置40と負荷80において、電力供給対象100から記憶部48に書き込まれても良いし、受電装置40の電源投入時に電力供給対象100から記憶部48に書き込まれても良い。また他にも、工場出荷時に予め記憶部48等に書き込んでおくなどの種々の変形実施が可能である。
そして、受電装置40が低消費電力モード(第1のモード)で動作する場合には、第iのパケットと次の第(i+1)のパケットの間に、少なくともM(Mは2<N<Mの整数)ビット分のデータ非送信期間が設定されている。データ非送信期間は、受電装置40から送電装置10に対してデータを送信しない期間である。データ非送信期間では、負荷変調がオフになり、負荷変調部56が負荷変調を行わない。また、Mビット分のデータ非送信期間とは、例えばMビットの情報を送信又は受信可能な長さのデータ非送信期間であるが、前述したようにこの間に受電装置40から送電装置10へのデータの送信は行われない。
また、第iのパケットとは、受電装置40から送電装置10に対して送信する複数のパケットのうちの1つのパケットである。そして、第(i+1)のパケットとは、前述した複数のパケットのうち、第iのパケットの次に、受電装置40から送電装置10に対して送信するパケットである。通常のモード(後述する第2のモード)では、第iのパケットの後に、間を開けずに第(i+1)のパケットを送信するが、本実施形態の低消費電力モードでは、第iのパケットの後に、すぐには第(i+1)のパケットを送信しない。本実施形態では、この第iのパケットを送信してから、第(i+1)のパケットを送信するまでの間に、前述したデータ非送信期間が設定される。また、後述するダミーデータ送信期間も、この期間に設定されてもよい。
ここで、図3を用いて具体例を説明する。図3では、データ送信期間とデータ非送信期間の関係を示している。具体的に説明すると、図3の例では、1番目の32bit分の期間において、負荷変調がオフに設定されており、2番目の32bitでは、負荷変調をオンにして、後述するダミーデータを送信する。そして、次の64bitでは、引き続き負荷変調をオンにして、送信データを送信する。この送信データが、前述した第iのパケットに相当し、例えば後述する図17A及び図17Bに示すような構成になっている。さらに、2番目の64bit分の期間と、3番目の64bit分の期間では、再び負荷変調がオフに設定される。すなわち、図3の例では、データ非送信期間は、1番目の32bit分の期間と、2番目の64bit分の期間と、3番目の64bit分の期間であり、M=160(=32+64+64)である(N=64、M>N)。また、後述する2番目の32bit分のダミーデータを送信する期間と、1番目の64bit分の送信データを送信する期間は、データ送信期間に相当する。データ送信期間は、受電装置40から送電装置10に対して各種データを送信する期間である。データ送信期間では、負荷変調がオンに設定され、負荷変調部56が負荷変調を行って、各種データを送電装置10に送信する。なお、データ送信期間は、後述するダミーデータ送信期間を含んでも良い。
そして、図3に示すような設定タイミングで第iのパケットを送信した場合には、続けて図3に示すタイミングと同様の設定タイミングで、第(i+1)のパケットを送信する。なお、本実施形態において、低消費電力モードにおけるデータ非送信期間とデータ送信期間の設定は、図3に示す設定には限定されない。
すなわち、本実施形態の低消費電力モードでは、受電装置40が送電装置10に複数のパケットを送信する場合に、負荷変調がオフに設定されて通信を行わない期間(データ非送信期間)と、負荷変調がオンに設定されて通信を行う期間(データ送信期間)とが交互に繰り返される。
一方、低消費電力モードではない通常のモード(第1のモードと異なる第2のモード)では、受電装置40が送電装置10に情報を送信する場合に、後述する図17Aに示すようなパケットを連続して送信するため、常に負荷変調がオンに設定され、負荷変調部56が常に負荷変調を行う。すなわち、第2のモードにおいては、第iのパケットを送信した後、データ非送信期間が非設定である。そして、負荷変調部56は、第2のモードにおいては、第iのパケットを送信した後、所与の期間内に、第(i+1)のパケットを送信する。
以上のように、本実施形態の低消費電力モードでは、受電装置40が負荷変調を行うことにより送電装置10にデータを送信する場合に、通常のモードに比べて、受電装置40の消費電力を抑制することができる。具体的には、負荷変調部56が負荷変調を行う場合には、受電装置40において電力が消費されるが、負荷変調部56が負荷変調を行わない期間(データ非送信期間)があるため、データ非送信期間における消費電力を抑制することができる。さらに、低消費電力モードでは、負荷変調部56が負荷変調を行う期間(データ送信期間)も設定されているため、送電装置10に情報を送信することもできる。また、非連続的に負荷変調を行うことにより、負荷変調を連続して行うことによる制御装置50の発熱も抑制することができる。
一方、第2のモードの設定時には、受電装置40が送電装置10に、第iのパケットと第(i+1)のパケットを連続して送信すること等が可能になる。
また、例えばデータ非送信期間の長さが決まっていない場合などには、送電装置10はデータ非送信期間がいつまでで、データ送信期間がいつかを判定することができない場合がある。その結果、送電装置10は受電装置40からの送信データを受信することができない場合も想定される。これに対して、前述した本実施形態では、Mビット分のデータ非送信期間が設定されていることにより、送電装置10が、データ非送信期間とデータ送信期間とを容易に区別して認識すること等が可能になる。その結果、送電装置10は受電装置40からの送信データを受信すること等が可能になる。
そして、M>Nであることにより、データを送信する期間よりもデータ非送信期間を長くして、消費電力をより低減したり、制御装置50の発熱の抑制効果を高めたりすること等が可能になる。
また、データ非送信期間に負荷変調をオフにすることにより、負荷変調に用いていた電力を、データ非送信期間において削減すること等が可能になる。例えば、図3の例のように、256bit分の周期のうち、160(=M)bit分の期間がデータ非送信期間である場合には62.5%の期間、負荷変調をオフにすることができる。そして、その間は、負荷変調部56が負荷変調を行わないため、制御装置50の発熱を抑制すること等が可能になる。
さらに、図3を用いて前述したように、データ非送信期間と第(i+1)のパケットとの間には、受電装置40が送電装置10にダミーデータを送信するダミーデータ送信期間が設定される。
ここで、ダミーデータは、送電装置10が、受電装置40からの送信データを受信できるように準備するために用いるデータである。そして、ダミーデータ送信期間は、このダミーデータを、受電装置40から送電装置10に送信する期間であり、前述したデータ送信期間に含まれる。ダミーデータ送信期間では、負荷変調がオンに設定され、負荷変調部56が負荷変調を行うことにより、ダミーデータを送電装置10に送信する。
例えば図3の具体例では、ダミーデータは、送電装置10が受電装置40の着地を検出するため、または受電装置40が通信可能状態であることを送電装置10が検出するために用いる32bitのデータである。そして、図3の例では、論理レベルが全て「0」(後述する第2の論理レベル)の32bitのデータをダミーデータとして用いる。例えば送電装置10は、送信された32bitのダミーデータのうち、論理レベルが「0」のbitを8bit連続して受信した場合に、受電装置40が着地状態にあると判定する。なお、図17Aを用いて後述する16bitのダミーデータは、送電装置10と受電装置40が送信データの送受信の同期を取るために用いられるが、このダミーデータについては後述する。
次に、図4のフローチャートを用いて、本実施形態における受電装置40の制御装置50の処理の流れを説明する。
まず、制御装置50の負荷変調部56は、負荷変調をオフに設定して(S101)、データ非送信期間に移行する。次に、制御部54は、データ非送信期間が経過するまで、データ非送信期間が経過したか否かの判定を行う(S102)。
そして、制御部54が、データ非送信期間が経過したと判定した場合には、制御部54は、負荷変調部56に負荷変調をオンに設定させ(S103)、ダミーデータ送信期間に移行させる。
さらに負荷変調部56は、ダミーデータ送信期間において、負荷変調により、送電装置10に対してダミーデータを送信する(S103)。そして、負荷変調部56は、ダミーデータの送信後に、負荷変調により、送電装置10に対して第iのパケット(送信データ)を送信する(S104)。
その後、負荷変調部56は、送電装置10から受電装置40の取り去りがあったか否かを判定し(S105)、取り去りがないと判定した場合には、第iのパケットの送信後のデータ非送信期間(例えば図3の2番目の64bitと3番目の64bitと1番目の32bit)において、負荷変調をオフにする(S101)。以降は取り去りがあるまで、ステップS101〜ステップS105の処理を繰り返す。
一方、負荷変調部56は、送電装置10から受電装置40の取り去りがあったと判定した場合には、負荷変調をオフにして(S106)、処理を終了する。
次に、図5のフローチャートを用いて、本実施形態における送電装置10の制御装置20の処理の流れを説明する。
まず、制御装置20の通信部30は、受電装置40から送信されたダミービットの受信を検出する(S201)。次に、制御装置20の制御部24は、通信部30がダミービットの受信を検出したか否かを判定する(S202)。そして、制御部24が、ダミービットの受信を検出した場合には、通信部30は、受電装置40から送信される送信データを受信する。具体的には、通信部30は、まず送信データのうち、後述する図17Aに示す同期データ用ビット(図17Aの1番目の16bit「0000h」)を受信して(S203)、続けて送信される送信データ用ビットの受信タイミングと同期を取る。その後、通信部30は、送信データのうち、後述する図17Aに示す送信情報用のビット(図17Aの2番目の16bit及び3番目の16bit)を受信し(S204)、ステップS201に戻り、処理を繰り返す。
一方、ステップS202において、制御部24がダミービットの受信を検出できなかったと判定した場合には、データの未受信期間がMビット分以上の期間か否かを判定する(S205)。すなわち、データ非送信期間(Mビット分の期間)よりも長い期間において、データを受信していないのか否かを判定する。そして、送電装置10の制御部24は、M>Nである場合に、少なくともMビット分の期間よりも長い期間において、負荷変調が非検出である場合には、取り去りがあったと判定する。前述した図3の例では、M=160であるが、この場合に例えば180ビット分の期間、データが未受信(負荷変調が非検出)であれば、データ非送信期間であるため、受電装置40がデータを送信してこないのではなく、受電装置40が取り去られたため、データが受信できないと判定する。そして、この場合には、送電装置10の制御部24は、受電装置40への送電を停止し(S206)、処理を終了する。
また、ステップS205において、送電装置10の制御部24が、データの未受信期間がMビット分よりも短いと判定した場合は、ステップS201に戻り、ダミーデータが送信されるのを待ち続ける。
このように、受電装置40がダミーデータを送信した後に、送信データを送信することにより、送電装置10が、受信したダミーデータを用いて、その後に続く送信データの受信処理の準備を行うこと等が可能になる。これにより、送電装置10が確実に送信データを受信すること等が可能になる。また、データ非送信期間の後に、受電装置40がダミーデータを送信することにより、送電装置10に受電装置40が着地状態にあり、引き続き通信が可能であることを通知すること等が可能になる。
また、データ非送信期間よりも長い期間、データが未受信である場合には、送電装置10からの送電を停止することにより、例えば送電装置10から受電装置40が取り去られた場合に電力を送電して、無駄な電力を消費することを抑制すること等が可能になる。
4.送電装置、受電装置、制御装置の詳細な構成例
図6に本実施形態の制御装置20、50及びこれを含む送電装置10、受電装置40の詳細な構成例を示す。なお図6において図2と同様の構成については詳細な説明を省略する。
図6では、送電部12は、1次コイルL1の一端を駆動する第1の送電ドライバーDR1と、1次コイルL1の他端を駆動する第2の送電ドライバーDR2と、電源電圧制御部14を含む。送電ドライバーDR1、DR2の各々は、例えばパワーMOSトランジスターにより構成されるインバーター回路(バッファー回路)などにより実現される。これらの送電ドライバーDR1、DR2は、制御装置20のドライバー制御回路22により制御(駆動)される。即ち、制御部24は、ドライバー制御回路22を介して送電部12を制御する。
電源電圧制御部14は、送電ドライバーDR1、DR2の電源電圧VDRVを制御する。例えば制御部24は、受電側から受信した通信データ(送電電力設定情報)に基づいて、電源電圧制御部14を制御する。これにより、送電ドライバーDR1、DR2に供給される電源電圧VDRVが制御されて、例えば送電電力の可変制御等が実現される。この電源電圧制御部14は、例えばDCDCコンバーターなどにより実現できる。例えば電源電圧制御部14は、電源からの電源電圧(例えば5V)の昇圧動作を行って、送電ドライバー用の電源電圧VDRV(例えば6V〜15V)を生成して、送電ドライバーDR1、DR2に供給する。具体的には、送電装置10から受電装置40への送電電力を高くする場合には、電源電圧制御部14は、送電ドライバーDR1、DR2に供給する電源電圧VDRVを高くし、送電電力を低くする場合には、電源電圧VDRVを低くする。
報知部16(表示部)は、無接点電力伝送システムの各種状態(電力伝送中、ID認証等)を、光や音や画像などを用いて報知(表示)するものであり、例えばLEDやブザーやLCDなどにより実現できる。
送電側の制御装置20は、ドライバー制御回路22、制御部24、通信部30、クロック生成回路37、発振回路38を含む。ドライバー制御回路22(プリドライバー)は、送電ドライバーDR1、DR2を制御する。例えばドライバー制御回路22は、送電ドライバーDR1、DR2を構成するトランジスターのゲートに対して制御信号(駆動信号)を出力し、送電ドライバーDR1、DR2により1次コイルL1を駆動させる。発振回路38は、例えば水晶発振回路などにより構成され、1次側のクロック信号を生成する。クロック生成回路37は、送電周波数(駆動周波数)を規定する駆動クロック信号等を生成する。そしてドライバー制御回路22は、この駆動クロック信号や制御部24からの制御信号などに基づいて、所与の周波数(送電周波数)の制御信号を生成し、送電部12の送電ドライバーDR1、DR2に出力して、制御する。
受電側の制御装置50は、受電部52、制御部54、負荷変調部56、電力供給部57、不揮発性メモリー62、検出部64を含む。
受電部52は、複数のトランジスターやダイオードなどにより構成される整流回路53を含む。整流回路53は、2次コイルL2の交流の誘起電圧を直流の整流電圧VCCに変換して、出力する。
負荷変調部56(広義には通信部)は負荷変調を行う。例えば負荷変調部56は電流源ISを有し、この電流源ISを用いて負荷変調を行う。具体的には、負荷変調部56は電流源IS(定電流源)とスイッチ素子SWを有する。電流源ISとスイッチ素子SWは、例えば整流電圧VCCのノードNVCとGND(広義には低電位側電源)のノードとの間に直列に設けられる。そして、例えば制御部54からの制御信号に基づいてスイッチ素子SWがオン又はオフにされ、ノードNVCからGNDに流れる電流源ISの電流(定電流)をオン又はオフにすることで、負荷変調が実現される。
なお、ノードNVCにはキャパシターCMの一端が接続される。このキャパシターCMは例えば制御装置50の外付け部品として設けられる。またスイッチ素子SWはMOSのトランジスターなどにより実現できる。このスイッチ素子SWは、電流源ISの回路を構成するトランジスターとして設けられるものであってもよい。また負荷変調部56は図6の構成に限定されず、例えば電流源ISの代わりとして抵抗を用いるなどの種々の変形実施が可能である。
電力供給部57は充電部58と放電部60を含む。充電部58は、受電した電力に基づいて、バッテリー90の充電(充電制御)を行う。例えば充電部58は、受電部52からの整流電圧VCC(広義には直流電圧)に基づく電圧が供給されて、バッテリー90を充電する。この充電部58は、電力供給スイッチ42とCC充電回路59を含むことができる。CC充電回路59は、バッテリー90のCC(Constant-Current)充電を行う回路である。
放電部60はバッテリー90の放電動作を行う。例えば放電部60は、バッテリー90の放電動作を行って、バッテリー90からの電力を電力供給対象100に対して供給する。例えば放電部60は、バッテリー90からのバッテリー電圧VBATが供給され、出力電圧VOUTを電力供給対象100に供給する。この放電部60はチャージポンプ回路61を含むことができる。チャージポンプ回路61は、バッテリー電圧VBATを降圧(例えば1/3降圧)して、出力電圧VOUT(VBAT/3)を電力供給対象100に対して供給する。この放電部60(チャージポンプ回路)は、例えばバッテリー電圧VBATを電源電圧として動作する。
不揮発性メモリー62(広義には記憶部)は、各種の情報を記憶する不揮発性のメモリーデバイスである。この不揮発性メモリー62は例えば受電装置40のステータス情報等の各種の情報を記憶する。不揮発性メモリー62としては、例えばEEPROMなどを用いることができる。EEPROMとしては例えばMONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Silicon)型のメモリーを用いることができる。例えばMONOS型のメモリーを用いたフラッシュメモリーを用いることができる。或いはEEPROMとして、フローティングゲート型などの他のタイプのメモリーを用いてもよい。
検出部64は各種の検出処理を行う。例えば検出部64は、整流電圧VCCやバッテリー電圧VBAT等を監視して、各種の検出処理を実行する。具体的には検出部64はA/D変換回路65を有し、整流電圧VCCやバッテリー電圧VBATに基づく電圧や、不図示の温度検出部からの温度検出電圧などを、A/D変換回路65によりA/D変換し、得られたデジタルのA/D変換値を用いて検出処理を実行する。検出部64が行う検出処理としては、過放電、過電圧、過電流、或いは温度異常(高温、低温)の検出処理を想定できる。
そして図6では、負荷変調部56は、受電部52の出力電圧VCCが第1の電圧(VST)よりも高くなって着地が検出された場合に、負荷変調を開始し、取り去りが検出された場合に、負荷変調を停止する。具体的には負荷変調部56は、電子機器510の着地が検出された場合に、負荷変調を開始する。送電装置10(制御部24)は、例えば受電装置40(負荷変調部56)が負荷変調を開始したことを条件に、送電部12による通常送電を開始させる。そして電子機器510の取り去りが検出された場合に、負荷変調部56は負荷変調を停止する。送電装置10(制御部24)は、負荷変調が継続されている間は、送電部12による通常送電を継続させる。即ち、負荷変調が非検出となった場合に、通常送電を停止させ、例えば着地検出用の間欠送電を送電部12に行わせる。この場合に受電側の制御部54は、受電部52の出力電圧VCCに基づいて、着地検出、取り去り検出を行うことができる。
また図6では、図2の通信部46が、負荷変調により通信データを送信する負荷変調部56により実現されている。具体的には、負荷変調部56は、送電装置10(制御装置20)に送信する通信データ(通信データのビット)の第1の論理レベル(例えば「1」)については、第1の負荷状態と第2の負荷状態で構成される負荷変調パターンが第1のパターン(第1のビットパターン)となる負荷変調を行う。一方、送電装置10に送信する通信データ(通信データのビット)の第2の論理レベル(例えば「0」)については、負荷変調パターンが第1のパターンとは異なる第2のパターン(第2のビットパターン)となる負荷変調を行う。
一方、送電側の通信部30は、負荷変調パターンが第1のパターンである場合には、第1の論理レベルの通信データであると判断し、負荷変調パターンが第2のパターンである場合には、第2の論理レベルの通信データであると判断する。
ここで第1のパターンは、例えば第1の負荷状態の期間の幅が第2のパターンに比べて長くなるパターンである。例えば通信部30は、第1のパターンにおける第1の負荷状態の期間内に設定された第1のサンプリングポイントから、所与のサンプリング間隔で負荷変調パターンのサンプリングを行って、所与のビット数(例えば16ビット、64ビット)の通信データを取り込む。
このような負荷変調パターンを用いた手法によれば、負荷変調による負荷変動についての検出感度や検出のノイズ耐性の向上を図れる。これにより、通信開始電圧(負荷変調開始電圧)である第1の電圧を低い電圧に設定することが可能になる。この結果、広い距離範囲で着地を検出して、通信を開始し、バッテリー90の充電のための制御(例えば送電電力制御)を送電側に行わせることが可能になる。
また電力供給部57は、受電部52が受電した電力に基づいて、バッテリー90を充電する充電部58と、バッテリー90の放電動作を行って、バッテリー90からの電力を電力供給対象100に対して供給する放電部60を含む。
そして制御部54(放電系の制御部)は、着地が検出された場合に、放電部60の放電動作を停止する。即ち図1Aにおいて電子機器510の着地が検出された場合に、放電部60の放電動作(VOUTの供給)を停止して、バッテリー90の電力が電力供給対象100に放電されないようにする。そして制御部54は、取り去り期間(電子機器510が取り去られている期間)において、電力供給部57の放電部60に放電動作を行わせる。この放電動作により、バッテリー90からの電力が放電部60を介して電力供給対象100に供給されるようになる。
5.無接点電力伝送システムの動作シーケンス
次に本実施形態の無接点電力伝送システムの動作シーケンスの一例について説明する。図7は動作シーケンスの概要を説明する図である。
図7のA1では、受電装置40を有する電子機器510が、送電装置10を有する充電器500に上に置かれておらず、取り去り状態になっている。この場合にはスタンバイステートとなる。このスタンバイステートでは、送電装置10の送電部12は、着地検出のための間欠送電を行って、電子機器510の着地を検出する状態になる。またスタンバイモードでは、受電装置40では、電力供給対象100への放電動作がオンになっており、電力供給対象100への電力供給がイネーブルになっている。これにより、処理部等の電力供給対象100は、バッテリー90からの電力が供給されて動作可能になる。
図7のA2に示すように、電子機器510が充電器500の上に置かれ、着地が検出されると、通信チェック&充電ステートになる。この通信チェック&充電ステートでは、送電装置10の送電部12は、連続送電である通常送電を行う。この際に、電力伝送の状態などに応じて電力が可変に変化する電力制御を行いながら、通常送電を行う。またバッテリー90の充電状態に基づく制御も行われる。電力伝送の状態は、例えば1次コイルL1、2次コイルL2の位置関係(コイル間距離等)などにより決まる状態であり、例えば受電部52の整流電圧VCCなどの情報に基づいて判断できる。バッテリー90の充電状態は、例えばバッテリー電圧VBATなどの情報に基づいて判断できる。
また通信チェック&充電ステートでは、受電装置40の充電部58の充電動作がオンになり、受電部52が受電した電力に基づいてバッテリー90の充電が行われる。また放電部60の放電動作がオフになり、バッテリー90からの電力が、電力供給対象100に供給されなくなる。また通信チェック&充電ステートでは、負荷変調部56の負荷変調により、通信データが送電側に送信される。例えば電力伝送状態情報(VCC等)や、充電状態情報(VBATや各種のステータスフラグ等)や、温度などの情報を含む通信データが、通常送電期間中の常時の負荷変調により、受電側から送電側に送信される。
図7のA3に示すように、バッテリー90の満充電が検出されると、満充電スタンバイステートになる。この満充電スタンバイステートでは、送電部12は、例えば取り去り検出のための間欠送電を行って、電子機器510の取り去りを検出する状態になる。また放電部60の放電動作はオフのままとなり、電力供給対象100への電力供給もディスエーブルのままとなる。
図7のA4に示すように電子機器510の取り去りが検出されると、A5に示すように電子機器510が使用状態になり、受電側の放電動作がオンになる。具体的には、放電部60の放電動作がオフからオンに切り替わり、バッテリー90からの電力が放電部60を介して電力供給対象100に供給される。これにより、バッテリー90からの電力が供給されて、処理部等の電力供給対象100が動作し、ユーザーが電子機器510を通常に使用できる状態となる。
以上のように本実施形態では図7のA2に示すように、電子機器510の着地が検出されると、通常送電が行われ、この通常送電期間において常時の負荷変調が行われる。また着地が検出されると、放電部60の放電動作が停止する。そして、この常時の負荷変調では、送電側の電力制御のための情報や受電側のステータスを表す情報を含む通信データが、受電側から送電側に送信される。例えば電力制御のための情報(電力伝送状態情報)を通信することで、例えば1次コイルL1と2次コイルL2の位置関係等に応じた最適な電力制御を実現できる。また受電側のステータスを表す情報を通信することで、最適で安全な充電環境を実現できる。そして本実施形態では、負荷変調が継続している間は、通常送電も継続され、放電部60の放電動作もオフのままになる。ただし、前述したように、低消費電力モードに設定されている場合には、データ非送信期間には負荷変調は行われず、データ送信期間にのみ負荷変調が行われる。
また本実施形態では図7のA3に示すように、バッテリー90の満充電が検出されると、通常送電が停止し、取り去り検出用の間欠送電が行われる。そしてA4、A5に示すように、取り去りが検出されて、取り去り期間になると、放電部60の放電動作が行われる。これによりバッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されて、電子機器510の通常動作が可能になる。なお、着地検出や取り去り検出は、受電部52の出力電圧VCCに基づいて行われる。
このように本実施形態では、電子機器510のバッテリー90の充電期間(通常送電期間)においては、電力供給対象100への放電動作がオフになるため、充電期間において電力供給対象100により無駄に電力が消費されてしまう事態を抑制できる。
そして、電子機器510の取り去りが検出されると、通常送電から間欠送電に切り替わると共に、電力供給対象100への放電動作がオンになる。このように放電動作がオンになることで、バッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されるようになり、処理部(DSP)等の電力供給対象100の通常動作が可能になる。このようにすることで、例えば電子機器510が充電器500の上に置かれる充電期間においては動作しないようなタイプの電子機器510(例えば、補聴器、ウェアラブル機器等のユーザーが装着する電子機器)において、好適な無接点電力伝送の動作シーケンスを実現できる。
図8、図9、図10は本実施形態の無接点電力伝送システムの動作シーケンスの詳細を説明するための信号波形図である。
図8のB1は、図7のA1のスタンバイステートであり、着地検出用の間欠送電が行われている。即ち、期間TL1の間隔毎に期間TL2の間隔の送電が行われる。TL1の間隔は例えば3秒であり、TL2の間隔は例えば50ミリ秒である。そして図8のB2、B3では、整流電圧VCCは電圧VST以下(第1の電圧以下)であるため、負荷変調による通信は行われない。
一方、B4では整流電圧VCCが電圧VST(例えば4.5V)を超えたため、B5に示すように負荷変調部56が負荷変調を開始する。即ち、B2、B3ではL1、L2のコイルが十分には電磁的結合状態になっていないが、B4ではL1、L2のコイルが図1Bに示すように適正な電磁的結合状態になっている。このため、整流電圧VCCが上昇して、電圧VSTを超え、B5に示すように負荷変調が開始する。そして、この負荷変調により、B6に示すような通信データが送電側に送信される。このB5の負荷変調は、B7に示す着地検出用の間欠送電により整流電圧VCCが上昇したことにより開始している。
具体的には、受電側は、着地検出用のダミーデータ(例えば図3に示す32ビットの「0」)を送信する。送電側は、このダミーデータを検出(例えば8ビットの「0」の検出)することで、受電側の着地を検出して、B7に示すように通常送電(連続送電)を開始する。
次に受電側は、ID情報や整流電圧VCCの情報を送信する。前述したように、ID情報の送信に対して送電側が応答を行うことで、簡易的な認証処理が実現される。
また送電側は、整流電圧VCCの情報である送電電力設定情報を受信して、送電電力の制御を行う。この送電側の送電電力の制御により、B8に示すように整流電圧VCCが上昇する。そしてB9に示すように、VCCが電圧VCCL(第2の電圧)を超えると、バッテリー90への充電が開始する。
このように本実施形態では、負荷変調(通信)を開始する電圧VSTを低く設定できる。これにより送電側の駆動電圧が高く設定されることによる耐圧異常等の不具合の発生を抑制できる。そして、開始した負荷変調により、送電電力設定情報(VCC)を送電側に送信することで、送電側の送電電力の制御が行われ、この送電電力の制御により、B8に示すように整流電圧VCCが上昇する。そして、整流電圧VCCが上昇して、B9に示すように充電可能電圧である電圧VCCLを超えると、バッテリー90の充電が開始するようになる。従って、広い距離範囲での着地検出と、耐圧異常等の不具合の発生の抑制とを、両立して実現できるようになる。
図9のC1では、バッテリー90の充電が行われる通常送電期間において、電子機器510が取り去られている。このC1の取り去りは、C2、C3に示すように、バッテリー90の満充電前(満充電フラグ=Lレベル)の取り去りである。
このように電子機器510の取り去りが行われると、送電側の電力が受電側に伝達されなくなり、整流電圧VCCが低下する。そしてC4に示すように例えばVCC<3.1Vになると、C5に示すように負荷変調部56による負荷変調が停止する。負荷変調が停止すると、C6に示すように送電部12による通常送電が停止する。
また、整流電圧VCCが低下し、判定電圧である例えば3.1Vを下回ると、不図示の受電側のスタートキャパシターの放電が開始する。このスタートキャパシターは、受電側の放電動作の起動用(起動期間の計測用)のキャパシターであり、例えば受電側の制御装置50の外付け部品として設けられる。そして、整流電圧VCCが判定電圧(3.1V)を下回ってから、起動期間TSTが経過すると、C8に示すように放電部60の放電動作がオフからオンに切り替わり、バッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されるようになる。また送電部12は、通常送電を停止した後、C9に示すように、着地検出用の間欠送電を行うようになる。
なお本実施形態では受電側の制御部54として、充電系の制御部と、放電系の制御部が設けられている。充電系の制御部は、受電部52の整流電圧VCC(出力電圧)による電源電圧が供給されて動作する。一方、放電系の制御部や放電部60は、バッテリー電圧VBATによる電源電圧が供給されて動作する。そしてスタートキャパシターの充放電の制御や、放電部60の放電動作の制御(オン・オフ制御)は、放電系の制御部が行うことになる。
図10のD1では、満充電フラグがアクティブレベルであるHレベルになっており、バッテリー90の満充電が検出されている。このように満充電が検出されると、D2に示すように満充電後の取り去り検出用の間欠送電が行われる。即ち、期間TR1の間隔毎に期間TR2の間隔の送電が行われる。TR1の間隔は例えば1.5秒であり、TR2の間隔は例えば50ミリ秒である。取り去り検出用の間欠送電の期間TR1の間隔は、着地検出用の間欠送電の期間TL1の間隔に比べて、短くなっている。
この取り去り検出用の間欠送電により、図10のD3、D4に示すように整流電圧がVCC>VSTとなり、D5、D6に示すように負荷変調が行われる。送電側は、この負荷変調(空の通信データ等)を検出することで、電子機器510が未だ取り去られていないことを検出できる。
そして、前述のスタートキャパシターにより設定されるD7に示す起動期間TSTの間隔(例えば3秒より長い)に比べて、取り去り検出用の間欠送電の期間TR1の間隔(例えば1.5秒)は短い。従って、電子機器510が取り去られていない状態では、スタートキャパシターの電圧(充電電圧)は、放電動作オンのための閾値電圧VTを下回らず、D8に示すように放電動作のオフからオンへの切り替わりは行われない。
一方、D9では、電子機器510が取り去られている。そして、D4に示す取り去り検出用の間欠送電の期間TR2の終了後に、D10に示すように、整流電圧VCCは判定電圧である3.1Vを下回るため、D7に示す起動期間TSTの計測がスタートする。そしてD11では、スタートキャパシターの電圧が放電動作オンのための閾値電圧VTを下回っており、起動期間TSTの経過が検出されている。これにより、放電部60の放電動作がオフからオンに切り替わり、バッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されるようになる。またD12に示すように、電子機器510の着地検出用の間欠送電が行われるようになる。
以上のように本実施形態では、図8のB5に示すように受電装置40が負荷変調を開始したことを条件に、B7に示すように送電部12による通常送電が開始する。そしてB5の負荷変調が継続されている間は、B7に示す通常送電は継続する。具体的には図9のC5に示すように負荷変調が非検出となった場合に、C6に示すように送電部12による通常送電が停止する。そしてC9に示すように送電部12による着地検出用の間欠送電が行われるようになる。
このように本実施形態では、負荷変調の開始を条件に通常送電を開始し、負荷変調が継続されている間は通常送電を継続し、負荷変調が非検出になると通常送電を停止するという動作シーケンスを採用している。このようにすれば、シンプルで簡素な動作シーケンスで、無接点電力伝送と、負荷変調による通信を実現できるようになる。また、通常送電期間中において、常時の負荷変調による通信を行うことで、電力伝送の状態等に応じた効率的な無接点電力伝送も実現できるようになる。
6.通信手法
図11は、負荷変調による通信手法を説明する図である。図11に示すように、送電側では、送電ドライバーDR1、DR2が、電源電圧制御部14から供給された電源電圧VDRVに基づいて動作して、1次コイルL1を駆動する。
一方、受電側(2次側)では、2次コイルL2のコイル端電圧を受電部52の整流回路53が整流し、ノードNVCに整流電圧VCCが出力される。なお、1次コイルL1とキャパシターCA1により送電側の共振回路が構成され、2次コイルL2とキャパシターCA2により受電側の共振回路が構成されている。
受電側では、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン・オフさせることで、電流源ISの電流ID2をノードNVCからGND側に間欠的に流して、受電側の負荷状態(受電側の電位)を変動させる。
送電側では、負荷変調による受電側の負荷状態の変動により、電源ラインに設けられたセンス抵抗RCSに流れる電流ID1が変動する。例えば送電側の電源(例えば図1Aの電源アダプター502等の電源装置)と電源電圧制御部14との間に、電源に流れる電流を検出するためのセンス抵抗RCSが設けられている。電源電圧制御部14は、このセンス抵抗RCSを介して電源から電源電圧が供給される。そして負荷変調による受電側の負荷状態の変動により、電源からセンス抵抗RCSに流れる電流ID1が変動し、通信部30が、この電流変動を検出する。そして通信部30は、検出結果に基づいて、負荷変調により送信される通信データの検出処理を行う。
図12に通信部30の具体的な構成の一例を示す。通信部30は、電流検出回路32、比較回路34、復調部36を含む。また信号増幅用のアンプAP、フィルター部35を含むことができる。
電流検出回路32は、電源(電源装置)から電源電圧制御部14を介して送電部12に流れる電流ID1を検出する。この電流ID1は、例えばドライバー制御回路22等に流れる電流を含んでいてもよい。電流検出回路32は、IV変換用アンプIVCにより構成される。IV変換用アンプIVCは、センス抵抗RCSに微少の電流ID1が流れることで生成される微少の電圧VC1−VC2を増幅して、検出電圧VDTとして出力する。アンプAPは、基準電圧VRFを基準として検出電圧VDTを増幅した検出電圧VDTAの信号を、比較回路34に出力する。
比較回路34は、電流検出回路32による検出電圧VDTAと、判定用電圧VCP=VRF+VOFFとの比較判定を行い、比較判定結果CQを出力する。比較回路34は、コンパレーターCPにより構成できる。この場合に、例えば判定用電圧VCP=VRF+VOFFの電圧VOFFは、コンパレーターCPのオフセット電圧などにより実現できる。
復調部36は、比較回路34の比較判定結果CQ(フィルター処理後の比較判定結果FQ)に基づいて負荷変調パターンの復調処理を行うことで、通信データを検出し、検出データDATとして出力する。比較回路34と復調部36との間にはフィルター部35が設けられており、復調部36は、フィルター部35によるフィルター処理後の比較判定結果FQに基づいて、負荷変調パターンの復調処理を行う。
フィルター部35、復調部36は、例えば駆動クロック信号FCKが供給されて動作する。駆動クロック信号FCKは、送電周波数を規定する信号であり、ドライバー制御回路22は、この駆動クロック信号FCKが供給されて、送電部12の送電ドライバーDR1、DR2を駆動する。
図13は、受電側の通信構成を説明する図である。受電部52は、2次コイルL2のコイル端信号を整形することで、送電信号波形に対応する矩形波信号を抽出して、通信データ生成部43に供給する。通信データ生成部43は制御部54に設けられており、送電周波数測定部44を含む。送電周波数測定部44は、送電信号波形に対応する矩形波信号の周期を、発振回路45で生成されたクロック信号を用いてカウントすることで、送電周波数を測定する。そして通信データ生成部43は、測定された送電周波数に基づいて、通信データを送信するための制御信号CSWを生成して、負荷変調部56に出力する。そして、制御信号CSWにより例えばスイッチ素子SWのオン・オフ制御を行って、通信データに対応する負荷変調を負荷変調部56に行わせる。
負荷変調部56は、例えば第1の負荷状態、第2の負荷状態というように、受電側の負荷状態(負荷変調による負荷)を変化させることで、負荷変調を行う。第1の負荷状態は、例えばスイッチ素子SWがオンになる状態であり、受電側の負荷状態(負荷変調の負荷)が高負荷(インピーダンス小)になる状態である。第2の負荷状態は、例えばスイッチ素子SWがオフになる状態であり、受電側の負荷状態(負荷変調の負荷)が低負荷(インピーダンス大)になる状態である。
そして、これまでの負荷変調手法では、例えば第1の負荷状態を、通信データの論理レベル「1」(第1の論理レベル)に対応させ、第2の負荷状態を、通信データの論理レベル「0」(第2の論理レベル)に対応させて、受電側から送電側への通信データの送信を行っていた。即ち、通信データのビットの論理レベルが「1」である場合には、スイッチ素子SWをオンにし、通信データのビットの論理レベルが「0」である場合には、スイッチ素子SWをオフにすることで、所定のビット数の通信データを送信していた。
しかしながら、例えばコイル間の結合度が低かったり、コイルが小型であったり、送電電力も低パワーであるような用途では、このような従来の負荷変調手法では、適正な通信の実現が難しい。即ち、負荷変調により受電側の負荷状態を、第1の負荷状態、第2の負荷状態というように変化させても、ノイズ等が原因で、通信データの論理レベル「1」、「0」のデータ検出エラーが発生してしまう。つまり、受電側で負荷変調を行っても、この負荷変調により、送電側のセンス抵抗RCSに流れる電流ID1は、非常に微少な電流となる。このため、ノイズが重畳すると、データ検出エラーが発生し、ノイズ等を原因とする通信エラーが発生してしまう。
例えば図14は、検出電圧VDTA、比較回路34の判定用電圧VCP及び比較判定結果CQの信号波形を模式的に示した図である。図14に示すように、検出電圧VDTAは、基準電圧VRFを基準にして変化する電圧信号になっており、判定用電圧VCPは、この基準電圧VRFにコンパレーターCPのオフセット電圧VOFFを加算した電圧信号になっている。
そして図14に示すように、例えば検出電圧VDTAの信号にノイズが重畳すると、F1、F2に示すように比較判定結果CQの信号のエッジの位置が変化し、期間TM1の幅(間隔)が長くなったり、短くなったりというように変動してしまう。例えば期間TM1が論理レベル「1」に対応する期間であるとすると、期間TM1の幅が変動すると、通信データのサンプリングエラーが発生してしまい、通信データの検出エラーが生じる。特に、通常送電期間において常時の負荷変調を行って通信を行う場合には、通信データに重畳されるノイズが多くなる可能性があり、通信データの検出エラーが発生する確率が高くなってしまう。
そこで本実施形態では、通信データの各ビットの論理レベル「1」(データ1)、論理レベル「0」(データ0)を、負荷変調パターンを用いて、受電側から送信し、送電側において検出する手法を採用している。
具体的には図15に示すように、受電側の負荷変調部56は、送電装置10に送信する通信データの第1の論理レベル「1」については、負荷変調パターンが第1のパターンPT1となる負荷変調を行う。一方、通信データの第2の論理レベル「0」については、負荷変調パターンが第1のパターンPT1とは異なる第2のパターンPT2となる負荷変調を行う。
そして送電側の通信部30(復調部)は、負荷変調パターンが第1のパターンPT1である場合には、第1の論理レベル「1」の通信データであると判断する。一方、負荷変調パターンが第1のパターンPT1とは異なる第2のパターンPT2である場合には、第2の論理レベル「0」の通信データであると判断する。
ここで負荷変調パターンは、第1の負荷状態と第2の負荷状態で構成されるパターンである。第1の負荷状態は、負荷変調部56による受電側の負荷が、例えば高負荷になる状態である。具体的には、図15において、第1の負荷状態の期間TM1は、負荷変調部56のスイッチ素子SWがオンになって、電流源ISの電流がノードNVCからGND側に流れる期間であり、第1、第2のパターンPT1、PT2のHレベル(ビット=1)に対応する期間である。
一方、第2の負荷状態は、負荷変調部56による受電側の負荷が、例えば低負荷になる状態である。具体的には、図15において第2の負荷状態の期間TM2は、負荷変調部56のスイッチ素子SWがオフになる期間であり、第1、第2のパターンPT1、PT2のLレベル(ビット=0)に対応する期間である。
そして図15において、第1のパターンPT1は、第1の負荷状態の期間TM1の幅が第2のパターンPT2に比べて長くなるパターンとなっている。このように第1の負荷状態の期間TM1の幅が、第2のパターンPT2に比べて長い第1のパターンPT1については、論理レベル「1」であると判断される。一方、第1の負荷状態の期間TM1の幅が、第1のパターンPT1に比べて短い第2のパターンPT2については、論理レベル「0」であると判断される。
図15に示すように、第1のパターンPT1は、例えば(1110)のビットパターンに対応するパターンである。第2のパターンPT2は、例えば(1010)のビットパターンに対応するパターンである。これらのビットパターンにおいて、ビット=1は、負荷変調部56のスイッチ素子SWがオンになる状態に対応し、ビット=0は、負荷変調部56のスイッチ素子SWがオフになる状態に対応する。
例えば受電側は、送信する通信データのビットが論理レベル「1」である場合には、第1のパターンPT1に対応する(1110)のビットパターンで、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン又はオフにする。具体的には、スイッチ素子SWを、順に、オン、オン、オン、オフにするスイッチ制御を行う。そして送電側は、負荷変調パターンが、(1110)のビットパターンに対応する第1のパターンPT1であった場合には、通信データのビットの論理レベルは「1」であると判断する。
一方、受電側は、送信する通信データのビットが論理レベル「0」である場合には、第2のパターンPT2に対応する(1010)のビットパターンで、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン又はオフにする。具体的には、スイッチ素子SWを、順に、オン、オフ、オン、オフにするスイッチ制御を行う。そして送電側は、負荷変調パターンが、(1010)のビットパターンに対応する第2のパターンPT2であった場合には、通信データのビットの論理レベルは「0」であると判断する。
ここで、送電部12の送電周波数(駆動クロック信号FCKの周波数)をfckとし、送電周期をT=1/fckとした場合には、第1、第2のパターンPT1、PT2の長さは、例えば512×Tと表すことができる。この場合に、1つのビット区間の長さは、(512×T)/4=128×Tと表される。従って、受電側は、通信データのビットが論理レベル「1」である場合には、例えば128×Tの間隔で、第1のパターンPT1に対応する(1110)のビットパターンで、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン又はオフにする。また受電側は、通信データのビットが論理レベル「0」である場合には、例えば128×Tの間隔で、第2のパターンPT2に対応する(1010)のビットパターンで、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン又はオフにする。
一方、送電側は、例えば図16に示す手法で通信データの検出処理及び取り込み処理を行う。例えば通信部30(復調部)は、第1のパターンPT1における第1の負荷状態の期間TM1内に設定された第1のサンプリングポイントSP1から、所与のサンプリング間隔SIで負荷変調パターンのサンプリングを行って、所与のビット数の通信データを取り込む。
例えば図16のサンプリングポイントSP1、SP2、SP3、SP4、SP5、SP6は、サンプリング間隔SI毎に設定されるサンプリングポイントである。このサンプリング間隔SIは、負荷変調パターンの長さに対応する間隔である。例えば図15では、第1、第2のパターンPT1、PT2の長さは512×T(=512/fck)となっているため、サンプリング間隔SIの長さも512×Tになる。
そして図16では、期間TS1、TS2、TS3、TS4、TS5、TS6での負荷変調パターンは、各々、PT1、PT2、PT1、PT2、PT2、PT2になっている。従って、図16の場合には、第1のサンプリングポイントSP1から、サンプリング間隔SIで負荷変調パターンのサンプリングを行うことで、例えばビット数=6である通信データ(101000)が取り込まれることになる。
具体的には、第1の負荷状態の期間TM1の幅が、第1の範囲幅内(220×T〜511×T)である場合に、図16に示すように、第1の負荷状態の期間TM1内に、第1のサンプリングポイントSP1を設定する。即ち、信号レベルがHレベルとなる期間TM1の幅が、第1の範囲幅内である場合に、ビット同期を行い、その期間TM1内の例えば中心点に、第1のサンプリングポイントSP1を設定する。そして、設定された第1のサンプリングポイントSP1から、サンプリング間隔SI毎にサンプリングを行う。そして取り込んだ信号のレベルが、Hレベル(第1の負荷状態)であれば、論理レベル「1」(第1のパターンPT1)であると判断し、Lレベル(第2の負荷状態)であれば、論理レベル「0」(第2のパターンPT2)であると判断する。
ここで第1の範囲幅(220×T〜511×T)は、第1のパターンPT1における第1の負荷状態の期間TM1(384×T)に対応して設定される範囲幅である。即ち、図14で説明したように、ノイズ等が原因となって、期間TM1の幅は変動してしまう。そして第1のパターンPT1における期間TM1の幅のティピカル値は、3ビット分(111)に対応する幅である128×3×T=384×Tである。従って、この384×Tを含むような第1の範囲幅220×T〜511×Tを設定する。そして、第1の範囲幅220×T〜511×T内であるHレベルの期間については、第1のパターンPT1の期間TM1であると判断し、第1のサンプリングポイントSP1を設定するためのビット同期を行う。このようにすることで、図14に示すようにノイズが信号に重畳している場合にも、適正なビット同期を行って、適切な第1のサンプリングポイントSP1を設定できるようになる。
そして、このように第1のサンプリングポイントSP1を設定した後は、サンプリング間隔SI毎にサンプリングを行い、各サンプリングポイントでの負荷状態(信号レベル)に基づいて、第1、第2のパターンPT1、PT2のいずれなのかを判断する。
例えば図16では、サンプリングポイントSP2での負荷状態は第2の負荷状態(Lレベル)であるため、第2のパターンPT2であると判断され、論理レベルが「0」であると判断される。サンプリングポイントSP3での負荷状態は第1の負荷状態(Hレベル)であるため、第1のパターンPT1であると判断され、論理レベルが「1」であると判断される。サンプリングポイントSP4、SP5、SP6での負荷状態は第2の負荷状態(Lレベル)であるため、第2のパターンPT2であると判断され、論理レベルが「0」であると判断される。
なお、図16の各サンプリングポイントSP2〜SP6において、そのサンプリングポイントを含む負荷状態の期間の幅が、所定の範囲幅内であるか否かを確認するようにしてもよい。
例えば第2のサンプリングポイントSP2において、負荷状態が第1の負荷状態(Hレベル)であり、且つ、第2のサンプリングポイントSP2を含む第1の負荷状態の期間TM1の幅が、第1の範囲幅内(220×T〜511×T)である場合には、第2のサンプリングポイントSP2での負荷変調パターンが第1のパターンPT1(論理レベル「1」)であると判断する。
一方、第2のサンプリングポイントSP2において、負荷状態が第2の負荷状態(Lレベル)であり、且つ、第2のサンプリングポイントSP2を含む第2の負荷状態の期間TM2の幅が、第2の範囲幅内(例えば80×T〜150×T)である場合には、第2のサンプリングポイントSP2での負荷変調パターンが第2のパターンPT2(論理レベル「0」)であると判断する。
ここで第2の範囲幅(80×T〜150×T)は、第2のパターンPT2における第2の負荷状態の期間TM2(128×T)に対応して設定される範囲幅である。期間TM2のティピカル値は、1ビットに対応する幅である128×Tとなるため、この128×Tを含むような第2の範囲幅80×T〜150×Tが設定される。
以上のように本実施形態では、負荷変調パターンを判別して通信データの論理レベルを判定している。例えば従来では、負荷変調部56のスイッチ素子SWがオンになる第1の負荷状態を論理レベル「1」と判断し、スイッチ素子SWがオフになる第2の負荷状態を論理レベル「0」と判断するような手法を採用している。しかしながら、この従来例の手法では、図14で説明したように、ノイズ等が原因で通信データの検出エラーが発生してしまうおそれがある。
これに対して本実施形態では、負荷変調パターンが、例えば図15に示すような第1、第2のパターンPT1、PT2のいずれであるかを判別することで、通信データの各ビットの論理レベルを検出している。従って、図14のようなノイズが多いような状況においても、通信データの適正な検出が可能になる。即ち、図15の第1、第2のパターンPT1、PT2では、例えば第1の負荷状態(Hレベル)の期間TM1の幅が大きく異なっており、本実施形態では、この期間TM1の幅の違いを判別することで、パターンを判別して、通信データの各ビットの論理レベルを検出している。例えば図16の最初のビット同期において、期間TM1の幅が第1の範囲幅内(220×T〜511×T)である場合に、その期間TM1の中心点にサンプリングポイントSP1を設定し、その後のサンプリングポイントSP2、SP3、SP4・・・での信号の取り込みを行っている。従って、例えばノイズが原因でサンプリングポイントSP1での期間TM1の幅等が変動した場合にも、通信データの適正な検出が可能になる。また、以降のサンプリングポイントSP2、SP3、SP4・・・は、サンプリング間隔SIに基づき簡素な処理で設定できるため、通信データの検出処理の処理負荷も軽減できるという利点がある。
図17A、図17Bに、本実施形態で用いられる通信データのフォーマットの例を示す。
図17Aでは、通信データは64ビットで構成され、この64ビットで1つのパケットが構成される。負荷変調部56が送信するパケットは、同期用の複数のビットと、送信データ用の複数のビットと、により構成される。一番目の16ビットは0000hとなっており、この一番目の16ビットが同期用の複数のビットに相当する。例えば受電側の負荷変調を検出して送電側が通常送電(或いは間欠送電)を開始する場合に、通信部30の電流検出回路32等が動作して、通信データを適正に検出できるようになるまでに、ある程度の時間が必要になる。このため、一番目の16ビットには、ダミー(空)のデータである0000hを設定する。送電側は、この1番目の16ビットの0000hの通信期間において、例えばビット同期のために必要な種々の処理を行うことになる。
次の2番目の16ビットと3番目の16ビットは、送信データ用の複数のビットに相当する。そして、送信データ用の複数のビットは、送信情報の種類を示すデータコード用の複数のビットと、送信情報用の複数のビットにより構成される。例えば2番目の16ビットには、データコードと、整流電圧(VCC)の情報が設定される。つまり、2番目の16ビットは、送信情報の種類を示すデータコード用の複数のビットに相当する。データコードは、図17Bに示すように、次の3番目の16ビットで通信されるデータを特定するためのコードである。整流電圧(VCC)は、送電装置10の送電電力設定情報として用いられる。
3番目の16ビットには、データコードでの設定に従って、温度、バッテリー電圧、バッテリー電流、ステータスフラグ、サイクル回数、IC番号・充電実行・オフスタート、或いはIDなどの情報が設定される。温度は例えばバッテリー温度などである。3番目の16ビットは、送信情報用の複数のビットに相当する。バッテリー電圧、バッテリー電流は、バッテリー90の充電状態を表す情報である。ステータスフラグは、例えば温度エラー(高温異常、低温異常)、バッテリーエラー(1.0V以下のバッテリー電圧)、過電圧エラー、タイマーエラー、満充電(ノーマルエンド)などの受電側のステータスを表す情報である。サイクル回数(サイクルタイム)は充電回数を表す情報である。IC番号は、制御装置のICを特定するための番号である。充電実行のフラグ(CGO)は、認証した送電側が適正であり、送電側からの送電電力に基づいて充電を実行することを示すフラグである。4番目の16ビットにはCRCの情報が設定される。
このように、送電装置10が、同期用の複数のビット(1番目の16ビット)の受信を検出することにより、続けて受電装置40から送信される送信データ用の複数のビット(2、3番目の16ビット)を受信し、受信した送信データ用の複数のビットを解析すること等が可能になる。
また、受電装置40が、データコード用の複数のビットと、送信情報用の複数のビットを送電装置10に送信することにより、受電装置40が、送信情報の種類をパケット毎に変更すること等が可能になる。そして、送電装置10は、データコード用の複数のビットを確認することにより、続けて受信される送信情報用の複数のビットが示す情報を解析すること等が可能になる。
また、ダミーデータ送信期間では、ダミーデータとして送信される複数のビットの各ビットが、図15に示す負荷変調パターンの第2のパターンに対応する第2の論理レベルに設定される。
これにより、送電装置10は、受信したダミーデータを用いて、例えば通信データの受信処理の準備を行うことが可能になる。
例えば、ダミーデータを構成する各ビットの論理レベルを全て第2の論理レベル(「0」)に設定することができる。そして例えば前述したように、送電装置10が所与の数だけ連続して、第2の論理レベル(「0」)のビットを受信した場合に、ダミーデータを受信したと判定すること等が可能になる。ただし、本実施形態はこれに限定されず、例えば、ダミーデータとして送信される複数のビットの各ビットの論理レベルが、図15に示す第1の論理レベル(「1」)に設定されていてもよい。
なお本実施形態の通信手法は、図15〜図17B等で説明した手法に限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば図15では第1のパターンPT1に論理レベル「1」を対応づけ、第2のパターンPT2に論理レベル「0」を対応づけているが、この対応づけは逆であってもよい。また、図15の第1、第2のパターンPT1、PT2は負荷変調パターンの一例であり、本実施形態の負荷変調パターンはこれに限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば図15では、第1、第2のパターンPT1、PT2は同じ長さに設定されているが、異なる長さに設定してもよい。また図15では、ビットパターン(1110)の第1のパターンPT1と、ビットパターン(1010)の第2のパターンPT2を用いているが、これらとは異なったビットパターンの第1、第2のパターンPT1、PT2を採用してもよい。例えば第1、第2のパターンPT1、PT2は、少なくとも第1の負荷状態の期間TM1(或いは第2の負荷状態の期間TM2)の長さが異なるパターンであればよく、図15とは異なる種々のパターンを採用できる。また、通信データのフォーマットや通信処理も本実施形態で説明した手法に限定されず、種々の変形実施が可能である。
7.受電部、充電部
図18に、受電部52、充電部58等の詳細な構成例を示す。図18に示すように、受電部52の整流回路53は、整流用のトランジスターTA1、TA2、TA3、TA4と、これらのトランジスターTA1〜TA4を制御する整流制御部51を有する。トランジスターTA1〜TA4の各々のドレイン・ソース間にはボディーダイオードが設けられている。整流制御部51は、トランジスターTA1〜TA4のゲートに対して制御信号を出力して、整流電圧VCCを生成するための整流制御を行う。
整流電圧VCCのノードNVCとGNDのノードとの間には抵抗RB1、RB2が直列に設けられている。整流電圧VCCを、抵抗RB1、RB2で電圧分割した電圧ACH1が、例えばA/D変換回路65に入力される。これにより整流電圧VCCの監視が可能になり、VCCに基づく電力制御や、VCCに基づく通信開始や充電開始の制御を実現できる。
レギュレーター67は、整流電圧VCCの電圧調整(レギュレート)を行って、電圧VD5を出力する。この電圧VD5は、トランジスターTC1を介して、充電部58のCC充電回路59に供給される。トランジスターTC1は、例えばバッテリー電圧VBATが所与の電圧を超える過電圧の検出時において、制御信号GC1に基づいてオフになる。なお制御装置50の各回路(放電部60等の放電系の回路を除く回路)は、この電圧VD5に基づく電圧(VD5をレギュレートした電圧等)を電源電圧として動作する。
CC充電回路59は、トランジスターTC2と、演算増幅器OPCと、抵抗RC1と、電流源ISCを有する。演算増幅器OPCの仮想接地により、抵抗RC1の一端の電圧(非反転入力端子の電圧)と、外付け部品であるセンス抵抗RSの他端の電圧VCS2(反転入力端子の電圧)とが等しくなるように、トランジスターTC2が制御される。信号ICDAの制御により電流源ISCに流れる電流をIDAとし、センス抵抗RSに流れる電流をIRSとする。すると、IRS×RS=IDA×RC1となるように、制御される。即ち、このCC充電回路59では、センス抵抗RSに流れる電流IRS(充電電流)が、信号ICDAにより設定される一定の電流値になるように制御される。これにより、CC(Constant-Current)充電が可能になる。
トランジスターTC3は、CC充電回路59の出力ノードと、バッテリー電圧VBATの供給ノードNBATとの間に設けられる。P型のトランジスターTC3のゲートには、N型のトランジスターTC4のドレインが接続されており、トランジスターTC4のゲートには、制御部54からの充電の制御信号CHONが入力されている。また、トランジスターTC3のゲートとノードNBATの間には、プルアップ用の抵抗RC2が設けられ、トランジスターTC4のゲートとGND(低電位側電源)のノードの間には、プルダウン用の抵抗RC3が設けられている。トランジスターTC3(TC4)により、図2の電力供給スイッチ42が実現される。
充電時には、制御部54が、制御信号CHONをアクティブレベル(Hレベル)にする。これにより、N型のトランジスターTC4がオンになって、P型のトランジスターTC3のゲート電圧がLレベルになる。この結果、トランジスターTC3がオンになり、バッテリー90の充電が行われるようになる。
一方、制御部54が、制御信号CHONを非アクティブレベル(Lレベル)にすると、N型のトランジスターTC4がオフになる。そしてP型のトランジスターTC3のゲート電圧が、抵抗RC2によりバッテリー電圧VBATにプルアップされることで、トランジスターTC3がオフになり、バッテリー90の充電が停止する。
また、充電系の電源電圧が回路の動作下限電圧よりも低くなった場合には、トランジスターTC4のゲート電圧が、抵抗RC3によりGNDにプルダウンされることで、トランジスターTC4がオフになる。そしてトランジスターTC3のゲート電圧が、抵抗RC2によりバッテリー電圧VBATにプルアップされることで、トランジスターTC3がオフになる。このようにすれば、例えば受電側が取り去られ、電源電圧が動作下限電圧よりも低くなった場合に、トランジスターTC3がオフになることで、CC充電回路59の出力ノードとバッテリー90のノードNBATとの間の経路が電気的に遮断される。これにより、電源電圧が動作下限電圧以下になった場合におけるバッテリー90からの逆流が防止されるようになる。
またノードNBATとGNDのノードとの間には抵抗RC4、RC5が直列に設けられており、バッテリー電圧VBATを、抵抗RC4、RC5で電圧分割した電圧ACH2が、A/D変換回路65に入力される。これによりバッテリー電圧VBATの監視が可能になり、バッテリー90の充電状態に応じた各種の制御を実現できる。またバッテリー90の近くには、サーミスターTH(広義には温度検出部)が設けられている。このサーミスターTHの一端の電圧RCTが制御装置50に入力され、これによりバッテリー温度の測定が可能になる。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。また送電側、受電側の制御装置、送電装置、受電装置、電子機器、無接点電力伝送システムの構成・動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。