(本発明の基礎となった知見)
本発明者は、「背景技術」の欄において記載した、画像を符号化する画像符号化装置、または画像を復号する画像復号装置に関して、以下の問題が生じることを見出した。
近年、デジタル映像機器の技術進歩が著しく、ビデオカメラ又はテレビチューナから入力された映像信号(時系列順に並んだ複数のピクチャ)が圧縮符号化され、得られたデータがDVD又はハードディスク等の記録メディアに記録される機会が増えている。画像符号化規格としてはH.264/AVC(MPEG−4 AVC)があるが、次世代の標準規格としてHEVC(High Efficiency Video Coding)規格(非特許文献1)が規格化された。
HEVC規格(非特許文献1)における画像符号化方法は、符号化画像を予測するステップと、予測画像と符号化対象画像との差分を求めるステップと、差分画像を周波数係数に変換するステップと、周波数係数及び予測情報を算術符号化するステップとを含む。算術符号化では、画像符号化装置は、まず符号化対象信号を多値信号から二値信号(0と1の信号)に変換(二値化)し、二値信号(bin)を算術符号化することで符号列を生成する。また、算術符号化では、画像符号化装置は、符号化対象の信号毎にコンテキストを選択し、コンテキストに応じたシンボル発生確率を基に区間を設定して符号列を送出する。また、画像符号化装置は、符号化された対象信号の値に応じてコンテキストのシンボル発生確率を更新するとともに、算術符号化器内の区間の幅を示すRangeと区間の下の位置を示すLow位置とを更新していく。
ここで、算術符号化では前述したとおりコンテキスト、Range、及びLow位置の更新が逐次必要であるため、並列処理が困難である。近年、画像のサイズが4K又は8Kという風に大きくなってきており、また、マルチコアなプロセッサが多く存在してきたため、処理を分散して高速処理を実現したいという要望が多かった。HEVC規格ではそれを解決する手段としてスライス分割、タイル分割、及びWPP(ウェーブフロント・パラレル・プロセッシング)のツールがある。スライス分割及びタイル分割はスライス又はタイル間のコンテキスト、Range及びLow位置の依存関係を排除することによって並列処理を可能にするツールである。
また、WPPは符号ブロックが画面左端の場合に右上の符号ブロックの符号化後のコンテキストをコピーして使用するツールである。WPPでは、画面左端の符号ブロックは右上の符号ブロックの符号化後に符号化をスタートできる。これにより、コンテキストの学習効率と並列処理とを両立できる。また、非独立スライスセグメントというツールもあり、これはコンテキストの依存関係を残したまま、スライス分割を行うツールである。
しかしながら、スライス分割及びタイル分割ではコンテキストの依存関係を排除するため、前に学習したシンボル発生確率を利用できない。これにより、符号化効率が低下してしまうという課題があった。また、WPPではRange及びLow位置は符号ブロック列毎に独立に更新しなければならないため、符号ブロック列の終端(画面右端ブロック)で算術符号化器内部のビット吐き出し処理が必要である。これにより、符号化効率が低下するという課題があった。
本発明の一態様に係る画像符号化方法は、画像信号に対して算術符号化を行なう画像符号化方法であって、前記算術符号化に用いるコンテキスト、並びに区間を示すRange及び前記区間の最小位置を示すLow位置の少なくとも何れかを導出するための情報を符号化する符号化ステップと、前記画像信号の算術符号化開始時に、前記情報に基づき前記算術符号化の初期化を行う初期化ステップとを含む。
例えば、前記情報は、コンテキストの複数の初期値のセットのうちいずれかを指定するインデックスを含み、前記初期化ステップでは、前記インデックスで指定される初期値のセットを用いて前記初期化を行ってもよい。
例えば、前記情報は、予め定められた固定値により初期値を設定するモードと、符号列内の情報を基に初期値を設定するモードとを切り替えるためのフラグを含み、前記初期化ステップでは、前記フラグで指定されるモードを用いて前記初期化を行ってもよい。
また、本発明の一態様に係る画像復号方法は、画像を符号化して生成されるビットストリームに対して算術復号を行なう画像復号方法であって、前記算術復号に用いるコンテキスト、並びに区間を示すRange及び前記区間の最小位置を示すLow位置の少なくとも何れかを導出するための情報を復号する復号ステップと、前記ビットストリームの算術復号開始時に、前記情報に基づき前記算術復号の初期化を行う初期化ステップとを含む。
例えば、前記情報は、コンテキストの複数の初期値のセットのうちいずれかを指定するインデックスを含み、前記初期化ステップでは、前記インデックスで指定される初期値のセットを用いて前記初期化を行ってもよい。
例えば、前記情報は、予め定められた固定値により初期値を設定するモードと、符号列内の情報を基に初期値を設定するモードとを切り替えるためのフラグを含み、前記初期化ステップでは、前記フラグで指定されるモードを用いて前記初期化を行ってもよい。
また、本発明の一態様に係る画像符号化装置は、画像信号に対して算術符号化を行なう画像符号化装置であって、前記算術符号化に用いるコンテキスト、並びに区間を示すRange及び前記区間の最小位置を示すLow位置の少なくとも何れかを導出するための情報を符号化する符号化部と、前記画像信号の算術符号化開始時に、前記情報に基づき前記算術符号化の初期化を行う初期化部とを備える。
また、本発明の一態様に係る画像復号装置は、画像を符号化して生成されるビットストリームに対して算術復号を行なう画像復号装置であって、前記算術復号に用いるコンテキスト、並びに区間を示すRange及び前記区間の最小位置を示すLow位置の少なくとも何れかを導出するための情報を復号する復号部と、前記ビットストリームの算術復号開始時に、前記情報に基づき前記算術復号の初期化を行う初期化部とを備える。
なお、これらの全般的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。
(実施の形態1)
<全体構成>
図1は、本実施の形態における画像符号化装置100の構成を示すブロック図である。図1に示す画像符号化装置100は、符号ブロック分割部101と、減算部102と、変換部103と、可変長符号化部104と、逆変換部105と、加算部106と、フレームメモリ107と、予測部108とを備える。
<動作(全体)>
次に、図2を参照しつつ、符号化処理全体のフローについて説明する。
まず、符号ブロック分割部101は、入力画像を符号ブロックに分割し、符号ブロックを順次、減算部102及び予測部108に出力する(S111)。
次に、予測部108は予測ブロックを生成する(S112)。減算部102は符号ブロックから予測ブロックを減算することで差分ブロックを生成する(S113)。変換部103は、差分ブロックを周波数変換することで量子化係数を生成する(S114)。逆変換部105は、量子化係数を逆周波数変換することで復号差分ブロックを生成する(S115)。
加算部106は、予測ブロックと復号差分ブロックとを加算することで復号ブロックを生成する(S116)。この復号ブロックは、フレームメモリ107に格納され、予測部108による予測処理に用いられる。また、可変長符号化部104は、量子化係数を可変長符号化することで符号列を生成する(S117)。また、画像符号化装置100は、符号化対象画像内の全符号ブロックの符号化が完了するまでS112からS117を繰り返す(S118)。
以降、特徴的な可変長符号化部104について詳細を説明する。
<可変長符号化部104の構成>
図3は、可変長符号化部104の構成を示すブロック図である。可変長符号化部104は、二値化部111と、算術符号化部112と、コンテキスト格納部113と、コンテキスト初期値設定部114と、算術符号化器データ格納部115と、算術符号化器初期値設定部116と、ゴロム符号化部117とを備える。
算術符号化は、符号化対象となる二値信号における各ビットの発生確率(コンテキスト値)を用いた符号化であり、確率値で区間を分割及び更新することで信号の高圧縮化を実現する。例えば、二値信号のあるビットが「0」となる確率が0.7であり、「1」となる確率が0.3の場合、「0」が符号化されると、ビットの符号化に用いられた当該区間の下から70%の部分が新しい区間に設定される。また、「1」が符号化されると、当該区間の上から30%の部分が、新しい区間に設定される。算術符号化では、この区間更新が繰り返されることで、区間は順次短くなり、最終区間に含まれる実数値の二進数表現を用いて、算術符号化部112の出力信号が生成される。
<可変長符号化処理>
次に、図4を参照しつつ、可変長符号化処理(S117)について説明する。
まず、コンテキスト初期値設定部114は、算術符号化時に使用する確率に対応するコンテキストの初期値を設定する(S131)。算術符号化器初期値設定部116は、算術符号化時に使用する区間を示すRangeの初期値と区間の最小位置を示すLow位置の初期値とを設定する(S132)。
次に二値化部111は、符号化するシンタックス要素を二値化することで二値信号を生成する(S133)。算術符号化部112は二値信号を算術符号化する(S134)。算術符号化部112は、算術符号化において、Range、Low位置及びコンテキストの更新、並びに正規化(ビット送出)を行う。
次に、コンテキスト格納部113及び算術符号化器データ格納部115は、更新されたコンテキスト、Range及びLow位置を格納する(S135及びS136)。
可変長符号化部104は、符号ブロック内の全シンタックス要素の符号化が完了するまでS131からS136を繰り返す(S137)。
以降、特徴的なコンテキスト初期値設定処理(S131)、算術符号化器初期値設定処理(S132)、コンテキスト格納処理(S135)、及び算術符号化器データ格納処理(S136)について詳細を説明する。
<コンテキスト初期値設定処理>
図5を参照しつつ、コンテキスト初期値設定処理(S131)について説明する。
まず、コンテキスト初期値設定部114は、処理対象のシンタックス要素が、独立スライスセグメントまたはタイルの最初のシンタックス要素である場合(S141でYes)、コンテキストインデックスを設定する(S142)。このコンテキストインデックスはゴロム符号化部117によって符号化される(S143)。コンテキスト初期値設定部114は、そのコンテキストインデックスに応じた値をコンテキスト初期値として算術符号化部112に設定する(S144)。
ここで独立スライスセグメントとは前述した非独立スライスセグメントではないスライスセグメントであり、先に符号化したスライスセグメントとコンテキストの依存関係が無いスライスセグメントである。コンテキストインデックスとは、いくつか設けられているコンテキスト群の初期値のセットのうち、そのどれを使うかを示す情報である。
図6は、コンテキストインデックスの一例を示す図である。この例ではコンテキストインデックスが0の場合はコンテキスト番号が「0」、「1」、「2」のコンテキストには初期値「153」、「200」、「185」が使用される。コンテキストの数値により、MPS(発生確率が高いシンボル(0または1))の情報(HEVC規格のvalMps)と、発生確率を導出するための番号(HEVC規格のpStateIdx)とを含む情報が示される。
コンテキスト初期値設定部114は、コンテキストインデックスを入力画像の特徴等を用いて決定する。また、コンテキスト初期値設定部114は、暫定的に1度符号化を行い、効率のよいコンテキストをある程度見極めてからコンテキストインデックスを決定してもよい。
一方、処理対象のシンタックス要素が、WPP時の画面左端符号ブロックの最初のシンタックス要素である場合(S145でYes)、または非独立スライスセグメントの最初のシンタックス要素である場合(S146でYes)、コンテキスト格納部113に格納されている格納コンテキストをコンテキスト初期値として算術符号化部112に設定する(S147)。なお、コンテキスト格納処理については後述する。
<算術符号化器初期値設定処理>
図7を参照しつつ、算術符号化器初期値設定処理(S132)について説明する。
処理対象のシンタックス要素が、スライスセグメントまたはタイルの最初のシンタックス要素である場合(S151でYes)、またはWPP時の画面左端符号ブロックの最初のシンタックス要素の場合(S152でYes)、算術符号化器初期値設定部116は、算術エンジン初期化タイプフラグを設定し(S153)、算術エンジン初期化タイプフラグのビットを符号列に送出する(S154)。ここでスライスセグメントは独立及び非独立両方のスライスセグメントを含む。また、算術エンジン初期化タイプフラグは、HEVCの方法と、格納Range及び格納Low位置をコピーして使用する方法とを切り替えるためのフラグである。例えば、算術符号化器初期値設定部116は、算術エンジン初期化タイプフラグを、スライス又はタイルの分割数及び入力画像の特徴等を用いて決定する。なお、算術エンジン初期化タイプフラグを、符号化を実施するユーザが任意に設定してもよい。
次に、算術エンジン初期化タイプフラグが「0」の場合(S155でYes)、算術符号化器初期値設定部116は、「510」をRange初期値として、「0」をLow位置初期値として算術符号化部112に設定する(S156及びS157)。つまり、算術符号化器初期値設定部116は、固定値をRange及びLow位置の初期値に設定する。
一方、算術エンジン初期化タイプフラグが「1」の場合(S155でNo)、ゴロム符号化部117は、算術符号化器データ格納部115に格納されている格納RangeをRange初期値として、算術符号化器データ格納部115に格納されている格納Low位置をLow位置初期値としてゴロム符号化を行う(S158及びS159)。なお、算術符号化器データ格納処理については後述する。
次に、算術符号化器初期値設定部116は、上記のRange初期値及びLow位置初期値を算術符号化部112に設定する(S160及びS161)。
<コンテキスト格納処理>
図8を参照しつつ、コンテキスト格納処理(S135)について説明する。
処理対象のシンタックス要素が、WPP時の左端から2番目の符号ブロックの最後のシンタックス要素である場合(S161でYes)、またはスライスセグメントの最後のシンタックス要素である場合(S162でYes)、コンテキスト格納部113は、更新されたコンテキストを格納コンテキストにコピー(退避)する(S163)。これはWPP時の次の符号ブロック列の先頭ブロック(左端ブロック)、または次の非独立スライスセグメントの先頭でこの格納コンテキストを使用するためである。この格納コンテキストは、図5のS147でコンテキスト初期値として使用される。
<算術符号化器データ格納処理>
図9を参照しつつ、算術符号化器データ格納処理(S136)について説明する。
処理対象のシンタックス要素が、スライスセグメントまたはタイルの最後のシンタックス要素である場合(S171でYes)、またはWPP時の右端の符号ブロックの最後のシンタックス要素である場合(S172でYes)であって、かつ、算術エンジン初期化タイプフラグが0の場合(S173でYes)、算術符号化器データ格納部115は、算術符号化器内に残ったビットを吐き出す送出処理を行う(S174)。また、算術エンジン初期化タイプフラグが0ではない場合(1の場合)(S173でNo)、算術符号化器データ格納部115は、更新されたRange及びLow位置を格納Range及び格納Low位置にコピー(退避)する(S175及びS176)。これは次のスライスセグメントの先頭またはWPP時の次の符号ブロック列の先頭ブロック(左端ブロック)で格納Range及び格納Low位置を使用するためである。この格納Range及び格納Low位置は、図7のS158、S159、S160及びS161でRange初期値及びLow位置初期値として使用される。
<効果>
以上、本実施の形態によれば、Range及びLow位置を符号化することにより、スライス分割、タイル分割又はWPPを用いた場合の符号化効率の低下を抑制することができる。より具体的には、Range及びLow位置を符号化することにより、次に符号化するスライス、タイル又は符号ブロック列に対して算術符号化器の内部状態を引き続き使用することができる。これにより、スライス、タイル又は符号ブロック列終端の内部ビット吐き出し処理が不要となる。内部ビットを吐き出す処理を無くすことによって発生符号量を減らすことができ、スライス、タイル又は符号ブロック列が多い場合でも符号化効率の低下を抑制することができる。
また、コンテキスト初期値の種類を増やすことにより、スライス分割、タイル分割又はWPPを用いた場合の符号化効率の低下を抑制することができる。より具体的には、コンテキストインデックスに応じてコンテキストの初期値にバリエーションを持たせている。入力画像に応じてコンテキストインデックスを切り替えることにより、より画像に合致したシンボル発生確率を使用できる。これにより、スライス、タイル又は符号ブロック列が多い場合であり、コンテキストの学習効率を上げられない場合でも発生符号量を抑えることができる。
また、算術エンジン初期化タイプフラグによってRange及びLow位置の初期値設定方法を切り替え可能にし、発生符号量の小さい方法を状況に応じて選択可能にしている。これにより、算術符号化器内部のビット吐き出し処理による発生符号量とRange及びLow位置を符号化する場合の発生符号量とのうち、発生符号量が小さい方を選択することができるので、より符号化効率を向上させることが可能となる。
図10にコンテキスト、Range及びLow位置の初期値に関するシンタックスを示す。ここでfirst_syntax_element_in_independent_sliceは、対象シンタックス要素が独立スライスセグメント時の先頭シンタックス要素である場合に1となるフラグである。first_syntax_element_in_tileは、対象シンタックス要素がタイルの先頭シンタックス要素の場合に1となるフラグである。cabac_context_indexはコンテキストインデックスを示す。first_syntax_element_in_slice_segmentは、対象シンタックス要素が独立/非独立を含めたスライスセグメントの先頭シンタックス要素の場合に1となるフラグである。first_syntax_element_in_left_block_WPPは、対象シンタックス要素がWPP時の画面左端符号ブロックの先頭シンタックス要素の場合に1となるフラグである。init_cabac_engine_type_flagは算術エンジン初期化タイプフラグである。init_cabac_engine_rangeはRange初期値を示す。init_cabac_engine_lowはLow位置初期値を示す。Descriptorは符号列の記述子を示し、ueは符号なしゴロム符号を示し、uは符号なし整数値を示す。括弧内の数値はビット量を示し、vは可変長であることを示す。
なお、本実施の形態では、処理対象のシンタックス要素が、スライスセグメントまたはタイルの最初のシンタックス要素の場合、またはWPP時の画面左端符号ブロックの最初のシンタックス要素の場合に算術エンジン初期化タイプフラグを符号化しているが、算術エンジン初期化タイプフラグを、ピクチャ先頭で1回、もしくはシーケンス先頭で1回設定し、全スライス、全タイル、又は全符号ブロック列で算術エンジン初期化タイプフラグを共通に使用してもよい。そうすれば算術エンジン初期化タイプフラグの符号化回数を減らすことができるので符号量を削減することができる。
また、上記説明では、画像符号化装置100は、WPP時には右上の符号ブロックのコンテキストをコンテキスト初期値として使用しているが、その限りではなく、上の符号ブロック又は任意の場所の符号ブロックのコンテキストを使用してもよい。符号化対象の符号ブロックとの相関が高い符号ブロックのコンテキストを使用することによって符号化効率を向上させることができる。
また、上記説明では、画像符号化装置100は、図5のS143、図6のS158及びS159でコンテキストインデックス、Range初期値及びLow位置初期値をゴロム符号化しているが、他の符号化方法を用いてもよく、例えば固定長で符号化してもよい。また、画像符号化装置100は、特定の値との差分を符号化してもよい。例えば、画像符号化装置100は、「510」からRange初期値を減算した数値を符号化してもよい。画像符号化装置100は、その減算の対象となる特定の値をピクチャ単位、スライス単位、又はタイル単位で設定しておいてもよいし、予測手段を用いてコンテキストインデックス、Range初期値、及びLow位置初期値を予測し、予測値を減算対象となる特定の値に設定してもよい。そうすることにより符号化するデータに偏りを持たせることができるので、発生頻度の高いデータを短い符号長で符号化することができる。
また、上記説明では、画像符号化装置100は、WPP時又は非独立スライスセグメントの場合には格納コンテキストをコンテキスト初期値に設定しているが、独立スライスセグメント又はタイルと同様にコンテキストインデックスを用いてコンテキスト初期値を設定してもよい。コピーする対象の右上の符号ブロック又はスライスセグメントと符号化対象の符号ブロックとの相関が異なる場合はこうすることによって符号化効率を高めることができる。
更に、本実施の形態における処理は、ソフトウェアで実現してもよい。そして、このソフトウェアをダウンロード等により配布してもよい。また、このソフトウェアをCD−ROMなどの記録媒体に記録して流布してもよい。なお、このことは、本明細書における他の実施の形態においても該当する。
(実施の形態2)
<全体構成>
図11は、本実施の形態における画像復号装置200の構成を示すブロック図である。図11に示す画像復号装置200は、可変長復号部201と、逆変換部202と、加算部203と、復号ブロック結合部204と、フレームメモリ205とを備える。
<動作(全体)>
次に、図12を参照しつつ、復号処理全体のフローについて説明する。
まず、可変長復号部201は、符号列を可変長復号することで周波数変換された符号ブロックを取得する(S211)。
次に、逆変換部202は、周波数変換された符号ブロックを逆周波数変換することで復号差分ブロックを生成する(S212)。加算部203は、復号差分ブロックと、動き補償ブロックとを加算することで復号ブロックを生成する(S213)。画像復号装置200は、復号対象画像内の全符号ブロックの復号が完了するまでS211からS213を繰り返す(S214)。
次に、復号ブロック結合部204は、復号対象画像内の復号ブロックを結合することで画像を復号する(S215)。また、得られた画像及び復号ブロックはフレームメモリ205に格納される。
以降、特徴的な可変長復号部201について詳細を説明する。
<可変長復号部201の構成>
図13は、可変長復号部201の内部構成を示すブロック図である。図13に示すように可変長復号部201は、ゴロム復号部211と、算術復号器初期値設定部212と、算術復号部213と、コンテキスト格納部214と、コンテキスト初期値設定部215と、多値化部216とを備える。
<可変長復号処理>
次に、図14を参照しつつ、可変長復号処理について説明する。
まず、コンテキスト初期値設定部215は、算術復号時に使用するコンテキストの初期値を設定する(S231)。算術復号器初期値設定部212は、算術復号時に使用するRangeの初期値及びLow位置の初期値を設定する(S232)。
次に算術復号部213は、符号列を算術復号することで二値信号を生成する(S233)。多値化部216は、二値信号から多値信号であるシンタックス要素を取得する(S234)。算術復号部213は、算術復号において、Range、Low位置及びコンテキストの更新、正規化、並びにビット取得を行う。
次に、コンテキスト格納部214は、更新されたコンテキストを格納する(S235)。
可変長復号部201は、符号ブロック内の全シンタックス要素の復号が完了するまでS231からS235を繰り返す(S236)。
以降、特徴的なコンテキスト初期値設定処理(S231)、算術復号器初期値設定処理(S232)について詳細を説明する。なお、コンテキスト格納処理(S235)は実施の形態1のコンテキスト格納処理と同様であるため、説明を省略する。
<コンテキスト初期値設定処理>
図15を参照しつつ、コンテキスト初期値設定処理(S231)について説明する。
処理対象のシンタックス要素が、独立スライスセグメントまたはタイルの最初のシンタックス要素である場合(S241でYes)、ゴロム復号部211は、コンテキストインデックスをゴロム復号によって復号する(S242)。コンテキスト初期値設定部215は、そのコンテキストインデックスに応じた値をコンテキスト初期値として算術復号部213に設定する(S243)。
一方、処理対象のシンタックス要素が、WPP時の画面左端符号ブロックの最初のシンタックス要素である場合(S244でYes)、または非独立スライスセグメントの最初のシンタックス要素である場合(S245でYes)、コンテキスト初期値設定部215は、コンテキスト格納部に格納されている格納コンテキストをコンテキスト初期値として算術復号部213に設定する(S246)。
<算術復号器初期値設定処理>
図16を参照しつつ、算術復号器初期値設定処理(S232)について説明する。
処理対象のシンタックス要素が、スライスセグメントまたはタイルの最初のシンタックス要素である場合(S251でYes)、またはWPP時の画面左端符号ブロックの最初のシンタックス要素である場合(S252でYes)、算術復号器初期値設定部212は、算術エンジン初期化タイプフラグを符号列から取得する(S253)。ここでスライスセグメントは独立及び非独立両方のスライスセグメントを含む。
次に、算術エンジン初期化タイプフラグが「0」の場合(S254でYes)、算術復号器初期値設定部212は、「510」をRange初期値として、「0」をLow位置初期値として算術復号部213に設定する(S255及びS256)。つまり、算術復号器初期値設定部212は、固定値をRange及びLow位置の初期値に設定する。
算術エンジン初期化タイプフラグが「1」の場合(S254でNo)、ゴロム復号部211は、Range初期値及びLow位置初期値をゴロム復号する(S257及びS258)。算術復号器初期値設定部212は、Range初期値及びLow位置初期値を算術復号部213に設定する(S259及びS260)。
<効果>
以上により、本実施の形態に係る画像復号装置200は、実施の形態1と同様の効果を実現できる。
以上、実施の形態に係る画像符号化方法に及び画像復号方法ついて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
また、上記実施の形態に係る画像符号化装置及び画像復号装置に含まれる各処理部は典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。
また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
言い換えると、画像符号化装置及び画像復号装置は、処理回路(processing circuitry)と、当該処理回路に電気的に接続された(当該処理回路からアクセス可能な)記憶装置(storage)とを備える。処理回路は、専用のハードウェア及びプログラム実行部の少なくとも一方を含む。また、記憶装置は、処理回路がプログラム実行部を含む場合には、当該プログラム実行部により実行されるソフトウェアプログラムを記憶する。処理回路は、記憶装置を用いて、上記実施の形態に係る画像符号化方法又は画像復号方法を実行する。
さらに、本発明は上記ソフトウェアプログラムであってもよいし、上記プログラムが記録された非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体であってもよい。また、上記プログラムは、インターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
また、上記で用いた数字は、全て本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
また、上記の予測画像生成方法、符号化方法又は復号方法に含まれるステップが実行される順序は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
また、各実施の形態において説明した処理は、単一の装置(システム)を用いて集中処理することによって実現してもよく、あるいは、複数の装置を用いて分散処理することによって実現してもよい。また、上記プログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
以上、本発明の一つ又は複数の態様に係る予測画像生成装置、符号化装置及び復号装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
(実施の形態3)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法(画像符号化方法)または動画像復号化方法(画像復号方法)の構成を実現するためのプログラムを記憶メディアに記録することにより、上記各実施の形態で示した処理を独立したコンピュータシステムにおいて簡単に実施することが可能となる。記憶メディアは、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、ICカード、半導体メモリ等、プログラムを記録できるものであればよい。
さらにここで、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法(画像符号化方法)や動画像復号化方法(画像復号方法)の応用例とそれを用いたシステムを説明する。当該システムは、画像符号化方法を用いた画像符号化装置、及び画像復号方法を用いた画像復号装置からなる画像符号化復号装置を有することを特徴とする。システムにおける他の構成について、場合に応じて適切に変更することができる。
図17は、コンテンツ配信サービスを実現するコンテンツ供給システムex100の全体構成を示す図である。通信サービスの提供エリアを所望の大きさに分割し、各セル内にそれぞれ固定無線局である基地局ex106、ex107、ex108、ex109、ex110が設置されている。
このコンテンツ供給システムex100は、インターネットex101にインターネットサービスプロバイダex102および電話網ex104、および基地局ex106からex110を介して、コンピュータex111、PDA(Personal Digital Assistant)ex112、カメラex113、携帯電話ex114、ゲーム機ex115などの各機器が接続される。
しかし、コンテンツ供給システムex100は図17のような構成に限定されず、いずれかの要素を組合せて接続するようにしてもよい。また、固定無線局である基地局ex106からex110を介さずに、各機器が電話網ex104に直接接続されてもよい。また、各機器が近距離無線等を介して直接相互に接続されていてもよい。
カメラex113はデジタルビデオカメラ等の動画撮影が可能な機器であり、カメラex116はデジタルカメラ等の静止画撮影、動画撮影が可能な機器である。また、携帯電話ex114は、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、W−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式、若しくはLTE(Long Term Evolution)方式、HSPA(High Speed Packet Access)の携帯電話機、またはPHS(Personal Handyphone System)等であり、いずれでも構わない。
コンテンツ供給システムex100では、カメラex113等が基地局ex109、電話網ex104を通じてストリーミングサーバex103に接続されることで、ライブ配信等が可能になる。ライブ配信では、ユーザがカメラex113を用いて撮影するコンテンツ(例えば、音楽ライブの映像等)に対して上記各実施の形態で説明したように符号化処理を行い(即ち、本発明の一態様に係る画像符号化装置として機能する)、ストリーミングサーバex103に送信する。一方、ストリーミングサーバex103は要求のあったクライアントに対して送信されたコンテンツデータをストリーム配信する。クライアントとしては、上記符号化処理されたデータを復号化することが可能な、コンピュータex111、PDAex112、カメラex113、携帯電話ex114、ゲーム機ex115等がある。配信されたデータを受信した各機器では、受信したデータを復号化処理して再生する(即ち、本発明の一態様に係る画像復号装置として機能する)。
なお、撮影したデータの符号化処理はカメラex113で行っても、データの送信処理をするストリーミングサーバex103で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。同様に配信されたデータの復号化処理はクライアントで行っても、ストリーミングサーバex103で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。また、カメラex113に限らず、カメラex116で撮影した静止画像および/または動画像データを、コンピュータex111を介してストリーミングサーバex103に送信してもよい。この場合の符号化処理はカメラex116、コンピュータex111、ストリーミングサーバex103のいずれで行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。
また、これら符号化・復号化処理は、一般的にコンピュータex111や各機器が有するLSIex500において処理する。LSIex500は、ワンチップであっても複数チップからなる構成であってもよい。なお、動画像符号化・復号化用のソフトウェアをコンピュータex111等で読み取り可能な何らかの記録メディア(CD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスクなど)に組み込み、そのソフトウェアを用いて符号化・復号化処理を行ってもよい。さらに、携帯電話ex114がカメラ付きである場合には、そのカメラで取得した動画データを送信してもよい。このときの動画データは携帯電話ex114が有するLSIex500で符号化処理されたデータである。
また、ストリーミングサーバex103は複数のサーバや複数のコンピュータであって、データを分散して処理したり記録したり配信するものであってもよい。
以上のようにして、コンテンツ供給システムex100では、符号化されたデータをクライアントが受信して再生することができる。このようにコンテンツ供給システムex100では、ユーザが送信した情報をリアルタイムでクライアントが受信して復号化し、再生することができ、特別な権利や設備を有さないユーザでも個人放送を実現できる。
なお、コンテンツ供給システムex100の例に限らず、図18に示すように、デジタル放送用システムex200にも、上記各実施の形態の少なくとも動画像符号化装置(画像符号化装置)または動画像復号化装置(画像復号装置)のいずれかを組み込むことができる。具体的には、放送局ex201では映像データに音楽データなどが多重化された多重化データが電波を介して通信または衛星ex202に伝送される。この映像データは上記各実施の形態で説明した動画像符号化方法により符号化されたデータである(即ち、本発明の一態様に係る画像符号化装置によって符号化されたデータである)。これを受けた放送衛星ex202は、放送用の電波を発信し、この電波を衛星放送の受信が可能な家庭のアンテナex204が受信する。受信した多重化データを、テレビ(受信機)ex300またはセットトップボックス(STB)ex217等の装置が復号化して再生する(即ち、本発明の一態様に係る画像復号装置として機能する)。
また、DVD、BD等の記録メディアex215に記録した多重化データを読み取り復号化する、または記録メディアex215に映像信号を符号化し、さらに場合によっては音楽信号と多重化して書き込むリーダ/レコーダex218にも上記各実施の形態で示した動画像復号化装置または動画像符号化装置を実装することが可能である。この場合、再生された映像信号はモニタex219に表示され、多重化データが記録された記録メディアex215により他の装置やシステムにおいて映像信号を再生することができる。また、ケーブルテレビ用のケーブルex203または衛星/地上波放送のアンテナex204に接続されたセットトップボックスex217内に動画像復号化装置を実装し、これをテレビのモニタex219で表示してもよい。このときセットトップボックスではなく、テレビ内に動画像復号化装置を組み込んでもよい。
図19は、上記各実施の形態で説明した動画像復号化方法および動画像符号化方法を用いたテレビ(受信機)ex300を示す図である。テレビex300は、上記放送を受信するアンテナex204またはケーブルex203等を介して映像データに音声データが多重化された多重化データを取得、または出力するチューナex301と、受信した多重化データを復調する、または外部に送信する多重化データに変調する変調/復調部ex302と、復調した多重化データを映像データと、音声データとに分離する、または信号処理部ex306で符号化された映像データ、音声データを多重化する多重/分離部ex303を備える。
また、テレビex300は、音声データ、映像データそれぞれを復号化する、またはそれぞれの情報を符号化する音声信号処理部ex304、映像信号処理部ex305(本発明の一態様に係る画像符号化装置または画像復号装置として機能する)を有する信号処理部ex306と、復号化した音声信号を出力するスピーカex307、復号化した映像信号を表示するディスプレイ等の表示部ex308を有する出力部ex309とを有する。さらに、テレビex300は、ユーザ操作の入力を受け付ける操作入力部ex312等を有するインタフェース部ex317を有する。さらに、テレビex300は、各部を統括的に制御する制御部ex310、各部に電力を供給する電源回路部ex311を有する。インタフェース部ex317は、操作入力部ex312以外に、リーダ/レコーダex218等の外部機器と接続されるブリッジex313、SDカード等の記録メディアex216を装着可能とするためのスロット部ex314、ハードディスク等の外部記録メディアと接続するためのドライバex315、電話網と接続するモデムex316等を有していてもよい。なお記録メディアex216は、格納する不揮発性/揮発性の半導体メモリ素子により電気的に情報の記録を可能としたものである。テレビex300の各部は同期バスを介して互いに接続されている。
まず、テレビex300がアンテナex204等により外部から取得した多重化データを復号化し、再生する構成について説明する。テレビex300は、リモートコントローラex220等からのユーザ操作を受け、CPU等を有する制御部ex310の制御に基づいて、変調/復調部ex302で復調した多重化データを多重/分離部ex303で分離する。さらにテレビex300は、分離した音声データを音声信号処理部ex304で復号化し、分離した映像データを映像信号処理部ex305で上記各実施の形態で説明した復号化方法を用いて復号化する。復号化した音声信号、映像信号は、それぞれ出力部ex309から外部に向けて出力される。出力する際には、音声信号と映像信号が同期して再生するよう、バッファex318、ex319等に一旦これらの信号を蓄積するとよい。また、テレビex300は、放送等からではなく、磁気/光ディスク、SDカード等の記録メディアex215、ex216から多重化データを読み出してもよい。次に、テレビex300が音声信号や映像信号を符号化し、外部に送信または記録メディア等に書き込む構成について説明する。テレビex300は、リモートコントローラex220等からのユーザ操作を受け、制御部ex310の制御に基づいて、音声信号処理部ex304で音声信号を符号化し、映像信号処理部ex305で映像信号を上記各実施の形態で説明した符号化方法を用いて符号化する。符号化した音声信号、映像信号は多重/分離部ex303で多重化され外部に出力される。多重化する際には、音声信号と映像信号が同期するように、バッファex320、ex321等に一旦これらの信号を蓄積するとよい。なお、バッファex318、ex319、ex320、ex321は図示しているように複数備えていてもよいし、1つ以上のバッファを共有する構成であってもよい。さらに、図示している以外に、例えば変調/復調部ex302や多重/分離部ex303の間等でもシステムのオーバフロー、アンダーフローを避ける緩衝材としてバッファにデータを蓄積することとしてもよい。
また、テレビex300は、放送等や記録メディア等から音声データ、映像データを取得する以外に、マイクやカメラのAV入力を受け付ける構成を備え、それらから取得したデータに対して符号化処理を行ってもよい。なお、ここではテレビex300は上記の符号化処理、多重化、および外部出力ができる構成として説明したが、これらの処理を行うことはできず、上記受信、復号化処理、外部出力のみが可能な構成であってもよい。
また、リーダ/レコーダex218で記録メディアから多重化データを読み出す、または書き込む場合には、上記復号化処理または符号化処理はテレビex300、リーダ/レコーダex218のいずれで行ってもよいし、テレビex300とリーダ/レコーダex218が互いに分担して行ってもよい。
一例として、光ディスクからデータの読み込みまたは書き込みをする場合の情報再生/記録部ex400の構成を図20に示す。情報再生/記録部ex400は、以下に説明する要素ex401、ex402、ex403、ex404、ex405、ex406、ex407を備える。光ヘッドex401は、光ディスクである記録メディアex215の記録面にレーザスポットを照射して情報を書き込み、記録メディアex215の記録面からの反射光を検出して情報を読み込む。変調記録部ex402は、光ヘッドex401に内蔵された半導体レーザを電気的に駆動し記録データに応じてレーザ光の変調を行う。再生復調部ex403は、光ヘッドex401に内蔵されたフォトディテクタにより記録面からの反射光を電気的に検出した再生信号を増幅し、記録メディアex215に記録された信号成分を分離して復調し、必要な情報を再生する。バッファex404は、記録メディアex215に記録するための情報および記録メディアex215から再生した情報を一時的に保持する。ディスクモータex405は記録メディアex215を回転させる。サーボ制御部ex406は、ディスクモータex405の回転駆動を制御しながら光ヘッドex401を所定の情報トラックに移動させ、レーザスポットの追従処理を行う。システム制御部ex407は、情報再生/記録部ex400全体の制御を行う。上記の読み出しや書き込みの処理はシステム制御部ex407が、バッファex404に保持された各種情報を利用し、また必要に応じて新たな情報の生成・追加を行うと共に、変調記録部ex402、再生復調部ex403、サーボ制御部ex406を協調動作させながら、光ヘッドex401を通して、情報の記録再生を行うことにより実現される。システム制御部ex407は例えばマイクロプロセッサで構成され、読み出し書き込みのプログラムを実行することでそれらの処理を実行する。
以上では、光ヘッドex401はレーザスポットを照射するとして説明したが、近接場光を用いてより高密度な記録を行う構成であってもよい。
図21に光ディスクである記録メディアex215の模式図を示す。記録メディアex215の記録面には案内溝(グルーブ)がスパイラル状に形成され、情報トラックex230には、予めグルーブの形状の変化によってディスク上の絶対位置を示す番地情報が記録されている。この番地情報はデータを記録する単位である記録ブロックex231の位置を特定するための情報を含み、記録や再生を行う装置において情報トラックex230を再生し番地情報を読み取ることで記録ブロックを特定することができる。また、記録メディアex215は、データ記録領域ex233、内周領域ex232、外周領域ex234を含んでいる。ユーザデータを記録するために用いる領域がデータ記録領域ex233であり、データ記録領域ex233より内周または外周に配置されている内周領域ex232と外周領域ex234は、ユーザデータの記録以外の特定用途に用いられる。情報再生/記録部ex400は、このような記録メディアex215のデータ記録領域ex233に対して、符号化された音声データ、映像データまたはそれらのデータを多重化した多重化データの読み書きを行う。
以上では、1層のDVD、BD等の光ディスクを例に挙げ説明したが、これらに限ったものではなく、多層構造であって表面以外にも記録可能な光ディスクであってもよい。また、ディスクの同じ場所にさまざまな異なる波長の色の光を用いて情報を記録したり、さまざまな角度から異なる情報の層を記録したりなど、多次元的な記録/再生を行う構造の光ディスクであってもよい。
また、デジタル放送用システムex200において、アンテナex205を有する車ex210で衛星ex202等からデータを受信し、車ex210が有するカーナビゲーションex211等の表示装置に動画を再生することも可能である。なお、カーナビゲーションex211の構成は例えば図19に示す構成のうち、GPS受信部を加えた構成が考えられ、同様なことがコンピュータex111や携帯電話ex114等でも考えられる。
図22Aは、上記実施の形態で説明した動画像復号化方法および動画像符号化方法を用いた携帯電話ex114を示す図である。携帯電話ex114は、基地局ex110との間で電波を送受信するためのアンテナex350、映像、静止画を撮ることが可能なカメラ部ex365、カメラ部ex365で撮像した映像、アンテナex350で受信した映像等が復号化されたデータを表示する液晶ディスプレイ等の表示部ex358を備える。携帯電話ex114は、さらに、操作キー部ex366を有する本体部、音声を出力するためのスピーカ等である音声出力部ex357、音声を入力するためのマイク等である音声入力部ex356、撮影した映像、静止画、録音した音声、または受信した映像、静止画、メール等の符号化されたデータもしくは復号化されたデータを保存するメモリ部ex367、又は同様にデータを保存する記録メディアとのインタフェース部であるスロット部ex364を備える。
さらに、携帯電話ex114の構成例について、図22Bを用いて説明する。携帯電話ex114は、表示部ex358及び操作キー部ex366を備えた本体部の各部を統括的に制御する主制御部ex360に対して、電源回路部ex361、操作入力制御部ex362、映像信号処理部ex355、カメラインタフェース部ex363、LCD(Liquid Crystal Display)制御部ex359、変調/復調部ex352、多重/分離部ex353、音声信号処理部ex354、スロット部ex364、メモリ部ex367がバスex370を介して互いに接続されている。
電源回路部ex361は、ユーザの操作により終話及び電源キーがオン状態にされると、バッテリパックから各部に対して電力を供給することにより携帯電話ex114を動作可能な状態に起動する。
携帯電話ex114は、CPU、ROM、RAM等を有する主制御部ex360の制御に基づいて、音声通話モード時に音声入力部ex356で収音した音声信号を音声信号処理部ex354でデジタル音声信号に変換し、これを変調/復調部ex352でスペクトラム拡散処理し、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して送信する。また携帯電話ex114は、音声通話モード時にアンテナex350を介して受信した受信データを増幅して周波数変換処理およびアナログデジタル変換処理を施し、変調/復調部ex352でスペクトラム逆拡散処理し、音声信号処理部ex354でアナログ音声信号に変換した後、これを音声出力部ex357から出力する。
さらにデータ通信モード時に電子メールを送信する場合、本体部の操作キー部ex366等の操作によって入力された電子メールのテキストデータは操作入力制御部ex362を介して主制御部ex360に送出される。主制御部ex360は、テキストデータを変調/復調部ex352でスペクトラム拡散処理をし、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して基地局ex110へ送信する。電子メールを受信する場合は、受信したデータに対してこのほぼ逆の処理が行われ、表示部ex358に出力される。
データ通信モード時に映像、静止画、または映像と音声を送信する場合、映像信号処理部ex355は、カメラ部ex365から供給された映像信号を上記各実施の形態で示した動画像符号化方法によって圧縮符号化し(即ち、本発明の一態様に係る画像符号化装置として機能する)、符号化された映像データを多重/分離部ex353に送出する。また、音声信号処理部ex354は、映像、静止画等をカメラ部ex365で撮像中に音声入力部ex356で収音した音声信号を符号化し、符号化された音声データを多重/分離部ex353に送出する。
多重/分離部ex353は、映像信号処理部ex355から供給された符号化された映像データと音声信号処理部ex354から供給された符号化された音声データを所定の方式で多重化し、その結果得られる多重化データを変調/復調部(変調/復調回路部)ex352でスペクトラム拡散処理をし、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理及び周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して送信する。
データ通信モード時にホームページ等にリンクされた動画像ファイルのデータを受信する場合、または映像およびもしくは音声が添付された電子メールを受信する場合、アンテナex350を介して受信された多重化データを復号化するために、多重/分離部ex353は、多重化データを分離することにより映像データのビットストリームと音声データのビットストリームとに分け、同期バスex370を介して符号化された映像データを映像信号処理部ex355に供給するとともに、符号化された音声データを音声信号処理部ex354に供給する。映像信号処理部ex355は、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法に対応した動画像復号化方法によって復号化することにより映像信号を復号し(即ち、本発明の一態様に係る画像復号装置として機能する)、LCD制御部ex359を介して表示部ex358から、例えばホームページにリンクされた動画像ファイルに含まれる映像、静止画が表示される。また音声信号処理部ex354は、音声信号を復号し、音声出力部ex357から音声が出力される。
また、上記携帯電話ex114等の端末は、テレビex300と同様に、符号化器・復号化器を両方持つ送受信型端末の他に、符号化器のみの送信端末、復号化器のみの受信端末という3通りの実装形式が考えられる。さらに、デジタル放送用システムex200において、映像データに音楽データなどが多重化された多重化データを受信、送信するとして説明したが、音声データ以外に映像に関連する文字データなどが多重化されたデータであってもよいし、多重化データではなく映像データ自体であってもよい。
このように、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法あるいは動画像復号化方法を上述したいずれの機器・システムに用いることは可能であり、そうすることで、上記各実施の形態で説明した効果を得ることができる。
また、本発明はかかる上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形または修正が可能である。
(実施の形態4)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置と、MPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1など異なる規格に準拠した動画像符号化方法または装置とを、必要に応じて適宜切替えることにより、映像データを生成することも可能である。
ここで、それぞれ異なる規格に準拠する複数の映像データを生成した場合、復号する際に、それぞれの規格に対応した復号方法を選択する必要がある。しかしながら、復号する映像データが、どの規格に準拠するものであるか識別できないため、適切な復号方法を選択することができないという課題を生じる。
この課題を解決するために、映像データに音声データなどを多重化した多重化データは、映像データがどの規格に準拠するものであるかを示す識別情報を含む構成とする。上記各実施の形態で示す動画像符号化方法または装置によって生成された映像データを含む多重化データの具体的な構成を以下説明する。多重化データは、MPEG−2トランスポートストリーム形式のデジタルストリームである。
図23は、多重化データの構成を示す図である。図23に示すように多重化データは、ビデオストリーム、オーディオストリーム、プレゼンテーショングラフィックスストリーム(PG)、インタラクティブグラフィックスストリームのうち、1つ以上を多重化することで得られる。ビデオストリームは映画の主映像および副映像を、オーディオストリーム(IG)は映画の主音声部分とその主音声とミキシングする副音声を、プレゼンテーショングラフィックスストリームは、映画の字幕をそれぞれ示している。ここで主映像とは画面に表示される通常の映像を示し、副映像とは主映像の中に小さな画面で表示する映像のことである。また、インタラクティブグラフィックスストリームは、画面上にGUI部品を配置することにより作成される対話画面を示している。ビデオストリームは、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠した動画像符号化方法または装置によって符号化されている。オーディオストリームは、ドルビーAC−3、Dolby Digital Plus、MLP、DTS、DTS−HD、または、リニアPCMのなどの方式で符号化されている。
多重化データに含まれる各ストリームはPIDによって識別される。例えば、映画の映像に利用するビデオストリームには0x1011が、オーディオストリームには0x1100から0x111Fまでが、プレゼンテーショングラフィックスには0x1200から0x121Fまでが、インタラクティブグラフィックスストリームには0x1400から0x141Fまでが、映画の副映像に利用するビデオストリームには0x1B00から0x1B1Fまで、主音声とミキシングする副音声に利用するオーディオストリームには0x1A00から0x1A1Fが、それぞれ割り当てられている。
図24は、多重化データがどのように多重化されるかを模式的に示す図である。まず、複数のビデオフレームからなるビデオストリームex235、複数のオーディオフレームからなるオーディオストリームex238を、それぞれPESパケット列ex236およびex239に変換し、TSパケットex237およびex240に変換する。同じくプレゼンテーショングラフィックスストリームex241およびインタラクティブグラフィックスex244のデータをそれぞれPESパケット列ex242およびex245に変換し、さらにTSパケットex243およびex246に変換する。多重化データex247はこれらのTSパケットを1本のストリームに多重化することで構成される。
図25は、PESパケット列に、ビデオストリームがどのように格納されるかをさらに詳しく示している。図25における第1段目はビデオストリームのビデオフレーム列を示す。第2段目は、PESパケット列を示す。図25の矢印yy1,yy2,yy3,yy4に示すように、ビデオストリームにおける複数のVideo Presentation UnitであるIピクチャ、Bピクチャ、Pピクチャは、ピクチャ毎に分割され、PESパケットのペイロードに格納される。各PESパケットはPESヘッダを持ち、PESヘッダには、ピクチャの表示時刻であるPTS(Presentation Time−Stamp)やピクチャの復号時刻であるDTS(Decoding Time−Stamp)が格納される。
図26は、多重化データに最終的に書き込まれるTSパケットの形式を示している。TSパケットは、ストリームを識別するPIDなどの情報を持つ4ByteのTSヘッダとデータを格納する184ByteのTSペイロードから構成される188Byte固定長のパケットであり、上記PESパケットは分割されTSペイロードに格納される。BD−ROMの場合、TSパケットには、4ByteのTP_Extra_Headerが付与され、192Byteのソースパケットを構成し、多重化データに書き込まれる。TP_Extra_HeaderにはATS(Arrival_Time_Stamp)などの情報が記載される。ATSは当該TSパケットのデコーダのPIDフィルタへの転送開始時刻を示す。多重化データには図26下段に示すようにソースパケットが並ぶこととなり、多重化データの先頭からインクリメントする番号はSPN(ソースパケットナンバー)と呼ばれる。
また、多重化データに含まれるTSパケットには、映像・音声・字幕などの各ストリーム以外にもPAT(Program Association Table)、PMT(Program Map Table)、PCR(Program Clock Reference)などがある。PATは多重化データ中に利用されるPMTのPIDが何であるかを示し、PAT自身のPIDは0で登録される。PMTは、多重化データ中に含まれる映像・音声・字幕などの各ストリームのPIDと各PIDに対応するストリームの属性情報を持ち、また多重化データに関する各種ディスクリプタを持つ。ディスクリプタには多重化データのコピーを許可・不許可を指示するコピーコントロール情報などがある。PCRは、ATSの時間軸であるATC(Arrival Time Clock)とPTS・DTSの時間軸であるSTC(System Time Clock)の同期を取るために、そのPCRパケットがデコーダに転送されるATSに対応するSTC時間の情報を持つ。
図27はPMTのデータ構造を詳しく説明する図である。PMTの先頭には、そのPMTに含まれるデータの長さなどを記したPMTヘッダが配置される。その後ろには、多重化データに関するディスクリプタが複数配置される。上記コピーコントロール情報などが、ディスクリプタとして記載される。ディスクリプタの後には、多重化データに含まれる各ストリームに関するストリーム情報が複数配置される。ストリーム情報は、ストリームの圧縮コーデックなどを識別するためストリームタイプ、ストリームのPID、ストリームの属性情報(フレームレート、アスペクト比など)が記載されたストリームディスクリプタから構成される。ストリームディスクリプタは多重化データに存在するストリームの数だけ存在する。
記録媒体などに記録する場合には、上記多重化データは、多重化データ情報ファイルと共に記録される。
多重化データ情報ファイルは、図28に示すように多重化データの管理情報であり、多重化データと1対1に対応し、多重化データ情報、ストリーム属性情報とエントリマップから構成される。
多重化データ情報は図28に示すようにシステムレート、再生開始時刻、再生終了時刻から構成されている。システムレートは多重化データの、後述するシステムターゲットデコーダのPIDフィルタへの最大転送レートを示す。多重化データ中に含まれるATSの間隔はシステムレート以下になるように設定されている。再生開始時刻は多重化データの先頭のビデオフレームのPTSであり、再生終了時刻は多重化データの終端のビデオフレームのPTSに1フレーム分の再生間隔を足したものが設定される。
ストリーム属性情報は図29に示すように、多重化データに含まれる各ストリームについての属性情報が、PID毎に登録される。属性情報はビデオストリーム、オーディオストリーム、プレゼンテーショングラフィックスストリーム、インタラクティブグラフィックスストリーム毎に異なる情報を持つ。ビデオストリーム属性情報は、そのビデオストリームがどのような圧縮コーデックで圧縮されたか、ビデオストリームを構成する個々のピクチャデータの解像度がどれだけであるか、アスペクト比はどれだけであるか、フレームレートはどれだけであるかなどの情報を持つ。オーディオストリーム属性情報は、そのオーディオストリームがどのような圧縮コーデックで圧縮されたか、そのオーディオストリームに含まれるチャンネル数は何であるか、何の言語に対応するか、サンプリング周波数がどれだけであるかなどの情報を持つ。これらの情報は、プレーヤが再生する前のデコーダの初期化などに利用される。
本実施の形態においては、上記多重化データのうち、PMTに含まれるストリームタイプを利用する。また、記録媒体に多重化データが記録されている場合には、多重化データ情報に含まれる、ビデオストリーム属性情報を利用する。具体的には、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置において、PMTに含まれるストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報に対し、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示す固有の情報を設定するステップまたは手段を設ける。この構成により、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成した映像データと、他の規格に準拠する映像データとを識別することが可能になる。
また、本実施の形態における動画像復号化方法のステップを図30に示す。ステップexS100において、多重化データからPMTに含まれるストリームタイプ、または、多重化データ情報に含まれるビデオストリーム属性情報を取得する。次に、ステップexS101において、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された多重化データであることを示しているか否かを判断する。そして、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものであると判断された場合には、ステップexS102において、上記各実施の形態で示した動画像復号方法により復号を行う。また、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠するものであることを示している場合には、ステップexS103において、従来の規格に準拠した動画像復号方法により復号を行う。
このように、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報に新たな固有値を設定することにより、復号する際に、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法または装置で復号可能であるかを判断することができる。従って、異なる規格に準拠する多重化データが入力された場合であっても、適切な復号化方法または装置を選択することができるため、エラーを生じることなく復号することが可能となる。また、本実施の形態で示した動画像符号化方法または装置、または、動画像復号方法または装置を、上述したいずれの機器・システムに用いることも可能である。
(実施の形態5)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法および装置、動画像復号化方法および装置は、典型的には集積回路であるLSIで実現される。一例として、図31に1チップ化されたLSIex500の構成を示す。LSIex500は、以下に説明する要素ex501、ex502、ex503、ex504、ex505、ex506、ex507、ex508、ex509を備え、各要素はバスex510を介して接続している。電源回路部ex505は電源がオン状態の場合に各部に対して電力を供給することで動作可能な状態に起動する。
例えば符号化処理を行う場合には、LSIex500は、CPUex502、メモリコントローラex503、ストリームコントローラex504、駆動周波数制御部ex512等を有する制御部ex501の制御に基づいて、AV I/Oex509によりマイクex117やカメラex113等からAV信号を入力する。入力されたAV信号は、一旦SDRAM等の外部のメモリex511に蓄積される。制御部ex501の制御に基づいて、蓄積したデータは処理量や処理速度に応じて適宜複数回に分けるなどされ信号処理部ex507に送られ、信号処理部ex507において音声信号の符号化および/または映像信号の符号化が行われる。ここで映像信号の符号化処理は上記各実施の形態で説明した符号化処理である。信号処理部ex507ではさらに、場合により符号化された音声データと符号化された映像データを多重化するなどの処理を行い、ストリームI/Oex506から外部に出力する。この出力された多重化データは、基地局ex107に向けて送信されたり、または記録メディアex215に書き込まれたりする。なお、多重化する際には同期するよう、一旦バッファex508にデータを蓄積するとよい。
なお、上記では、メモリex511がLSIex500の外部の構成として説明したが、LSIex500の内部に含まれる構成であってもよい。バッファex508も1つに限ったものではなく、複数のバッファを備えていてもよい。また、LSIex500は1チップ化されてもよいし、複数チップ化されてもよい。
また、上記では、制御部ex501が、CPUex502、メモリコントローラex503、ストリームコントローラex504、駆動周波数制御部ex512等を有するとしているが、制御部ex501の構成は、この構成に限らない。例えば、信号処理部ex507がさらにCPUを備える構成であってもよい。信号処理部ex507の内部にもCPUを設けることにより、処理速度をより向上させることが可能になる。また、他の例として、CPUex502が信号処理部ex507、または信号処理部ex507の一部である例えば音声信号処理部を備える構成であってもよい。このような場合には、制御部ex501は、信号処理部ex507、またはその一部を有するCPUex502を備える構成となる。
なお、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。このようなプログラマブル・ロジック・デバイスは、典型的には、ソフトウェア又はファームウェアを構成するプログラムを、ロードする又はメモリ等から読み込むことで、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法、又は動画像復号化方法を実行することができる。
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてありえる。
(実施の形態6)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データを復号する場合、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データを復号する場合に比べ、処理量が増加することが考えられる。そのため、LSIex500において、従来の規格に準拠する映像データを復号する際のCPUex502の駆動周波数よりも高い駆動周波数に設定する必要がある。しかし、駆動周波数を高くすると、消費電力が高くなるという課題が生じる。
この課題を解決するために、テレビex300、LSIex500などの動画像復号化装置は、映像データがどの規格に準拠するものであるかを識別し、規格に応じて駆動周波数を切替える構成とする。図32は、本実施の形態における構成ex800を示している。駆動周波数切替え部ex803は、映像データが、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものである場合には、駆動周波数を高く設定する。そして、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行する復号処理部ex801に対し、映像データを復号するよう指示する。一方、映像データが、従来の規格に準拠する映像データである場合には、映像データが、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものである場合に比べ、駆動周波数を低く設定する。そして、従来の規格に準拠する復号処理部ex802に対し、映像データを復号するよう指示する。
より具体的には、駆動周波数切替え部ex803は、図31のCPUex502と駆動周波数制御部ex512から構成される。また、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行する復号処理部ex801、および、従来の規格に準拠する復号処理部ex802は、図31の信号処理部ex507に該当する。CPUex502は、映像データがどの規格に準拠するものであるかを識別する。そして、CPUex502からの信号に基づいて、駆動周波数制御部ex512は、駆動周波数を設定する。また、CPUex502からの信号に基づいて、信号処理部ex507は、映像データの復号を行う。ここで、映像データの識別には、例えば、実施の形態4で記載した識別情報を利用することが考えられる。識別情報に関しては、実施の形態4で記載したものに限られず、映像データがどの規格に準拠するか識別できる情報であればよい。例えば、映像データがテレビに利用されるものであるか、ディスクに利用されるものであるかなどを識別する外部信号に基づいて、映像データがどの規格に準拠するものであるか識別可能である場合には、このような外部信号に基づいて識別してもよい。また、CPUex502における駆動周波数の選択は、例えば、図34のような映像データの規格と、駆動周波数とを対応付けたルックアップテーブルに基づいて行うことが考えられる。ルックアップテーブルを、バッファex508や、LSIの内部メモリに格納しておき、CPUex502がこのルックアップテーブルを参照することにより、駆動周波数を選択することが可能である。
図33は、本実施の形態の方法を実施するステップを示している。まず、ステップexS200では、信号処理部ex507において、多重化データから識別情報を取得する。次に、ステップexS201では、CPUex502において、識別情報に基づいて映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものであるか否かを識別する。映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものである場合には、ステップexS202において、駆動周波数を高く設定する信号を、CPUex502が駆動周波数制御部ex512に送る。そして、駆動周波数制御部ex512において、高い駆動周波数に設定される。一方、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、ステップexS203において、駆動周波数を低く設定する信号を、CPUex502が駆動周波数制御部ex512に送る。そして、駆動周波数制御部ex512において、映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものである場合に比べ、低い駆動周波数に設定される。
さらに、駆動周波数の切替えに連動して、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を変更することにより、省電力効果をより高めることが可能である。例えば、駆動周波数を低く設定する場合には、これに伴い、駆動周波数を高く設定している場合に比べ、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を低く設定することが考えられる。
また、駆動周波数の設定方法は、復号する際の処理量が大きい場合に、駆動周波数を高く設定し、復号する際の処理量が小さい場合に、駆動周波数を低く設定すればよく、上述した設定方法に限らない。例えば、MPEG4−AVC規格に準拠する映像データを復号する処理量の方が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置により生成された映像データを復号する処理量よりも大きい場合には、駆動周波数の設定を上述した場合の逆にすることが考えられる。
さらに、駆動周波数の設定方法は、駆動周波数を低くする構成に限らない。例えば、識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合には、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を高く設定し、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を低く設定することも考えられる。また、他の例としては、識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合には、CPUex502の駆動を停止させることなく、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、処理に余裕があるため、CPUex502の駆動を一時停止させることも考えられる。識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合であっても、処理に余裕があれば、CPUex502の駆動を一時停止させることも考えられる。この場合は、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合に比べて、停止時間を短く設定することが考えられる。
このように、映像データが準拠する規格に応じて、駆動周波数を切替えることにより、省電力化を図ることが可能になる。また、電池を用いてLSIex500またはLSIex500を含む装置を駆動している場合には、省電力化に伴い、電池の寿命を長くすることが可能である。
(実施の形態7)
テレビや、携帯電話など、上述した機器・システムには、異なる規格に準拠する複数の映像データが入力される場合がある。このように、異なる規格に準拠する複数の映像データが入力された場合にも復号できるようにするために、LSIex500の信号処理部ex507が複数の規格に対応している必要がある。しかし、それぞれの規格に対応する信号処理部ex507を個別に用いると、LSIex500の回路規模が大きくなり、また、コストが増加するという課題が生じる。
この課題を解決するために、上記各実施の形態で示した動画像復号方法を実行するための復号処理部と、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する復号処理部とを一部共有化する構成とする。この構成例を図35Aのex900に示す。例えば、上記各実施の形態で示した動画像復号方法と、MPEG4−AVC規格に準拠する動画像復号方法とは、エントロピー符号化、逆量子化、デブロッキング・フィルタ、動き補償などの処理において処理内容が一部共通する。共通する処理内容については、MPEG4−AVC規格に対応する復号処理部ex902を共有し、MPEG4−AVC規格に対応しない、本発明の一態様に特有の他の処理内容については、専用の復号処理部ex901を用いるという構成が考えられる。特に、本発明の一態様は、エントロピー符号化に特徴を有していることから、例えば、エントロピー符号化については専用の復号処理部ex901を用い、それ以外の逆量子化、デブロッキング・フィルタ、動き補償のいずれか、または、全ての処理については、復号処理部を共有することが考えられる。復号処理部の共有化に関しては、共通する処理内容については、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行するための復号処理部を共有し、MPEG4−AVC規格に特有の処理内容については、専用の復号処理部を用いる構成であってもよい。
また、処理を一部共有化する他の例を図35Bのex1000に示す。この例では、本発明の一態様に特有の処理内容に対応した専用の復号処理部ex1001と、他の従来規格に特有の処理内容に対応した専用の復号処理部ex1002と、本発明の一態様に係る動画像復号方法と他の従来規格の動画像復号方法とに共通する処理内容に対応した共用の復号処理部ex1003とを用いる構成としている。ここで、専用の復号処理部ex1001、ex1002は、必ずしも本発明の一態様、または、他の従来規格に特有の処理内容に特化したものではなく、他の汎用処理を実行できるものであってもよい。また、本実施の形態の構成を、LSIex500で実装することも可能である。
このように、本発明の一態様に係る動画像復号方法と、従来の規格の動画像復号方法とで共通する処理内容について、復号処理部を共有することにより、LSIの回路規模を小さくし、かつ、コストを低減することが可能である。