まず、本発明に至った経緯について説明する。
図1は、CABACにより符号化されたバイナリ列を解析する処理の一部を示すフローチャートである。具体的には、図1は、CABAC(2値化処理を含む)によってある変数SE(Syntax Element)の値を符号化することにより出力されるバイナリ列を解析する処理“CABAC prasing process for slice data”(非特許文献1のFig.9−1、H.264(09)_F9−1)の一部を抜粋したフローチャートである。
H.264においては、CABACによる符号化は、画像の実体部分に対応する部分のデータ構造に含まれる変数群(ae(v)型で定義される)に適用されている。画像の実体部分に対応するデータ構造とは、現時点では、スライスデータ以下のレイヤのデータ(スライスデータ(7.3.4節)、マクロブロックレイヤ(7.3.5節))等である。
逆に、スライスデータについての制御パラメータを与える、スライスデータより上のレイヤ(スライスヘッダ(7.3.3節)、スライスについての制御パラメータを与えるピクチャパラメータセット等の変数)には適用されない。尚、変数は、データ構造の規定により与えられる変数、あるいは、データ構造の規定により導出される変数である。本発明において、変数は、符号化ストリームのデータ構造に含まれる変数である。尚、本明細書においてSEとは、Syntax Elementのことであり、変数(変数名)である。
さて、ステップS502にて、ある変数(SE)が、値を問わずスライス中で最初の変数(SE)であるか否かが判定される(S502)。この判定は、変数に対応するコンテキスト変数の初期化が必要か否かの判定である。例えば、スライス中に複数のマクロブロックが存在する場合に、1つ目のマクロブロックに関する変数であれば、判定結果はYESとなる。2つ目以降のマクロブロックに関する変数であって、1つ目のマクロブロックに関する変数と同じ種類の変数(SE)であれば、判定結果はNOとなる。これは、変数の値が異なる値であったとしても、既にこの種類の変数の初期化が完了しているからである。
ステップS502の判定結果がYESである場合、変数に対応するctxIdxが示すコンテキスト変数(variables)の初期化(Initialization of context variables)が実行される(S503)。
図2は、変数(SE)とctxIdxとの対応関係を説明するための図である。具体的には、図2は、従来技術(H.264)における変数とコンテキストインデクス(ctxIdx)との対応関係を示す表である。表の上段が変数(信号種別、SE)を示し、表の下段が、上段の変数に対応するctxIdxを示す。
例えば、SEが5の変数がCoded_block_pattern(luma)であると仮定した場合、この変数には、コンテキストインデクス70..72(70以上72以下、以下範囲について同表現を用いる)のコンテキストが対応付けられている。また、次の、SEが6の変数がCoded_block_pattern(chroma)であると仮定とした場合、他の変数とは重複しないように、この変数には、コンテキストインデクス73..76が割り振られている。同様に、変数(配列型)Significant_coeffと、変数(配列型)Last_significant_coeffとには、データ構造で表現された変数をグルーピングする複数の区分に対して、互いに重複しないように別のコンテキストインデクスがそれぞれ割り振られている。
図3Aおよび図3Bは、所定の変数に対応するコンテキスト変数の初期化方法を説明するための図である。具体的には、図3Aは、図1のステップS503(Initialization of context variables)において導出される各コンテキストインデクスによって指定されるコンテキスト変数の初期化方法を示すフローチャートである。また、図3Bは、コンテキスト変数の初期化方法における計算方法を示す図である。つまり、図3Bは、H.264において、すべてのctxIdx(0〜1023)に対して適用される計算式を示す。
この初期化方法では、(1)確率の系列が0〜63までの64通りのどの系列に該当するかを示すpStateIdxの初期値と、(2)「0」と「1」との2つの値のうち確率が高い方の値はどちらであるかを示すvalMPSの初期値とが、実質1つの動的な制御パラメータSliceQPyにより導出される。
尚、図3Bに示すように、preStateIdx(0..63)を決定するためにpreCtxState(1..126)が最初に導出される。ここで、mとnとは、preCtxState(y)をSliceQPy(x)の一次関数として表した場合における傾き(m)と切片(n)とを与える定数であり、事前に静的に決定されている。従って、この初期化方法は、実質1つの制御パラメータ(SliceQPy)による1つの初期化方法といえる。
H.264における、SliceQPyは、スライス毎にスライスヘッダで指定されるpic_init_qp_minus26変数の値によって、そのスライスに対して適用されるQPyの初期値である。これは、スライスに適用される輝度用の量子化パラメータの初期値を抽象する変数である(H.264規格書式8−422等)。
従って、この輝度用の値のみを制御パラメータとして用いて、色差に関する変数であるcoded_block_pattern (chroma)などに対応するコンテキスト変数を初期化することは適切とは言えない。つまり、必ずしもこの輝度用の変数QPyのみから定まる1つの初期化方法を用いてコンテキスト変数を初期化することが適切とはいえない。
更に、我々は、関連する技術について以下の検討を行っている。
具体的には、データ構造で規定された個々の変数(係数位置が異なる場合も1つの変数と数える場合も含む)とは別の観点で集合(第1の区分〜第nの区分)を形成することを検討している。集合を形成するための1つの観点が、「制御パラメータの種別」である。この検討において、制御パラメータの種別(#1〜#n)に基づいて形成された区分(第1〜第nの区分)に属する変数は、制御パラメータ「QPy」(輝度用の量子化パラメータ)を静的に用いる前述の初期化が最適ではないことに気がついた。
また、画像データ部分(スライスデータ以下のレイヤのデータ)に適用していた算術符号化を、上のレイヤのパラメータ(制御パラメータであるQP自体を含む)にも拡張して適用することを検討している際に、QPとは異なる最適な初期化方法を与える他の制御パラメータが必要となることに気がついた。
そこで、本発明の一態様に係る算術復号方法は、所定の変数の値に対応する2値配列に含まれる個々の配列要素が取りうる値の発生確率を特定するためのコンテキスト変数を初期化し、前記コンテキスト変数を用いて前記2値配列を算術復号する算術復号方法であって、前記所定の変数または前記所定の変数が属する区分に対応する初期化方法を、複数の初期化方法の中から前記コンテキスト変数の初期化方法として決定する決定ステップと、決定された前記初期化方法を用いて、前記コンテキスト変数を初期化する初期化ステップとを含む。
また、本発明の別の一態様に係る算術復号方法において、前記複数の初期化方法のうちの少なくとも1つは、色差の量子化ステップに依存することが好ましい。
また、本発明の別の一態様に係る算術復号方法において、複数の初期化方法のうちの少なくとも1つは、参照ピクチャの最大枚数に依存することが好ましい。
また、本発明の別の一態様に係る算術復号方法において、複数の初期化方法のうちの少なくとも1つは、ピクチャの解像度に依存することが好ましい。
また、本発明の別の一態様に係る算術復号方法において、複数の初期化方法のうちの少なくとも1つは、スライスの位置に依存することが好ましい。
また、本発明の一態様に係る算術符号化方法は、所定の変数の値に対応する2値配列に含まれる個々の配列要素が取りうる値の発生確率を特定するためのコンテキスト変数を初期化し、前記コンテキスト変数を用いて前記2値配列を算術符号化する算術符号化方法であって、前記所定の変数または前記所定の変数が属する区分に対応する初期化方法を、複数の初期化方法の中から前記コンテキスト変数の初期化方法として決定する決定ステップと、決定された前記初期化方法を用いて、前記コンテキスト変数を初期化する初期化ステップとを含む。
また、本発明の別の一態様に係る算術符号化方法において、前記複数の初期化方法のうちの少なくとも1つは、色差の量子化ステップに依存することが好ましい。
また、本発明の別の一態様に係る算術符号化方法において、複数の初期化方法のうちの少なくとも1つは、参照ピクチャの最大枚数に依存することが好ましい。
また、本発明の別の一態様に係る算術符号化方法において、複数の初期化方法のうちの少なくとも1つは、ピクチャの解像度に依存することが好ましい。
また、本発明の別の一態様に係る算術符号化方法において、複数の初期化方法のうちの少なくとも1つは、スライスの位置に依存することが好ましい。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示す。つまり、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、本発明の一例であり、本発明を限定する主旨ではない。本発明は、請求の範囲の記載に基づいて特定される。したがって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素は、本発明の課題を達成するために必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成する構成要素として説明される。
(実施の形態1)
図4は、本発明の実施の形態1に係る画像復号装置400の構成の一例を示すブロック図である。また、図5は、本発明の実施の形態1に係る算術復号部300の構成の一例を示すブロック図である。
なお、本実施の形態に係る算術復号部300は、圧縮符号化された符号化画像データを復号する画像復号装置400に備えられる。まず、図4に示す画像復号装置400について説明する。
画像復号装置400は、圧縮符号化された符号化画像データを復号する。例えば、画像復号装置400は、符号化画像データがブロック毎に復号対象信号として入力される。画像復号装置400は、入力された復号対象信号に、エントロピー復号、逆量子化および逆変換を行うことで、画像データを復元する。
図4に示すように、画像復号装置400は、エントロピー復号部410と、逆量子化・逆変換部420と、加算器425と、デブロッキングフィルタ430と、メモリ440と、イントラ予測部450と、動き補償部460と、イントラ/インター切換スイッチ470とを備える。
エントロピー復号部410は、入力信号(入力ストリーム)をエントロピー復号することで、量子化係数を復元する。なお、ここで、入力信号(入力ストリーム)は、復号対象信号であり、符号化画像データのブロック毎のデータに相当する。また、エントロピー復号部410は、入力信号から動きデータを取得し、取得した動きデータを動き補償部460に出力する。
逆量子化・逆変換部420は、エントロピー復号部410によって復元された量子化係数を逆量子化することで、変換係数を復元する。そして、逆量子化・逆変換部420は、復元した変換係数を逆変換することで、予測誤差を復元する。
加算器425は、復元された予測誤差と予測信号とを加算することで、復号画像を生成する。
デブロッキングフィルタ430は、生成された復号画像にデブロッキングフィルタ処理を行う。デブロッキングフィルタ処理された復号画像は、復号信号として出力される。
メモリ440は、動き補償に用いられる参照画像を格納するためのメモリである。具体的には、メモリ440は、デブロッキングフィルタ処理が施された復号画像を格納する。
イントラ予測部450は、イントラ予測を行うことで、予測信号(イントラ予測信号)を生成する。具体的には、イントラ予測部450は、加算器425によって生成された復号画像における、復号対象ブロック(入力信号)の周囲の画像を参照してイントラ予測を行うことで、イントラ予測信号を生成する。
動き補償部460は、エントロピー復号部410から出力された動きデータに基づいて動き補償を行うことで、予測信号(インター予測信号)を生成する。
イントラ/インター切換スイッチ470は、イントラ予測信号およびインター予測信号のいずれかを選択し、選択した信号を予測信号として加算器425に出力する。
以上の構成により、本実施の形態に係る画像復号装置400は、圧縮符号化された符号化画像データを復号する。
なお、図4において、図5に示す本実施の形態に係る算術復号部300は、エントロピー復号部410に備えられる。すなわち、算術復号部300は、入力ストリームISとして、予測符号化が実行された符号化画像データを算術復号および多値化する。また、信号種別情報SEは、量子化係数の位置、動きデータ、又は、イントラ予測部450が用いるイントラ予測方向などを示す情報である。
ここで、図5に示す算術復号部300について説明する。
図5に示すように、算術復号部300は、2値算術復号器301と、シンボル発生確率格納部302と、コンテキスト制御部303と、多値化部304とを備える。
2値算術復号器301は、シンボル発生確率格納部302から出力される発生確率情報PEを用いて入力ストリームISを算術復号することにより、2値信号OBINを出力する。
シンボル発生確率格納部302は、発生確率を特定するためのコンテキスト変数をコンテキストごとに格納している。そして、シンボル発生確率格納部302は、コンテキスト制御部303からの指示に従って、発生確率PEを2値算術復号器301に出力する。
コンテキスト制御部303は、変数SEに対応するコンテキストを特定し、当該コンテキストのコンテキスト変数によって特定される発生確率PEを、シンボル発生確率格納部302に出力させる。また、コンテキスト制御部303は、2値信号OBINの値に従って発生確率を更新するために、シンボル発生確率格納部302に格納されているコンテキスト変数を更新する。
さらに、コンテキスト制御部303は、コンテキスト変数の初期化が必要な場合に、シンボル発生確率格納部302に格納されているコンテキスト変数を初期化する。このコンテキスト変数の初期化の詳細については後述する。
多値化部304は、2値信号OBINを多値化することにより、量子化係数または動きデータなどを出力する。
なお、本実施の形態におけるコンテキスト変数の初期化処理は、コンテキスト制御部303にて実行される。なお、他の処理部(例えば、コンテキスト区分制御部(図示せず)等)は、制御信号の値により区分を決定または変更する処理を行い、変数(あるいは変数の集合(第1〜n区分))を、コンテキスト制御部303に与えることができる。
尚、符号化装置側と復号装置側とは、共通の確率(あるいは確率の更新モデル)を用いなければならない。1つのレンジ(数直線上の区間を抽象する値)を生成する符号化装置側と、この値(区間)を解釈する復号装置側とが、同じ確率モデル(初期確率値、更新ルール)を用いなければ、算術符号化・復号の枠組みが破綻するためである。従って、符号化装置側でも、制御パラメータの値が決定された後に、復号装置側で実行されるのと同じコンテキスト初期化処理が行われる。
図6は、本発明の実施の形態1に係るコンテキスト変数の初期化処理を示すフローチャートである。この初期化処理は、コンテキスト制御部303において、算術符号化される変数対応するコンテキスト変数を初期化する必要がある場合に実行される。
まず、ステップS101にて、コンテキスト制御部303は、解析対象の変数(所定の変数)が第1〜第nの区分のいずれに属するかを判定する(S101)。例えば、図7に示すような変数の区分が利用される。
尚、区分は、変数の集合に対して設定されてもよいし、コンテキストの集合に対して設定されてもよい。また、区分は、必ずしも静的に設定されている必要はなく、動的に変化してもよい。区分が動的に変化する(あるいは符号化側で指定する)場合は、区分は、インデクスを利用して特定されることもできる。
次に、区分が1、2、・・・等である場合に、コンテキスト制御部303は、その区分に応じて異なる初期化方法(第1〜第nの初期化方法(nは2以上の整数)のいずれか)を実行する(S103、S105・・・)。つまり、コンテキスト制御部303は、まず、複数の初期化方法の中から、判定された区分に対応する初期化方法を決定する。そして、コンテキスト制御部303は、決定された初期化方法を用いて、解析対象の変数に対応するコンテキスト変数を初期化する。
なお、ここでは、複数の初期化方法は、区分に対応付けられていたが、必ずしも区分に対応付けられる必要はない。例えば、初期化方法は、解析対象の変数に対応付けられてもよい。つまり、コンテキスト制御部303は、解析対象の変数に対応する初期化方法を、複数の初期化方法の中から決定しても構わない。
また、コンテキスト制御部303は、例えば、区分あるいは変数と初期化方法とが対応付けられた情報を参照して、区分あるいは変数に対応する初期化方法を決定すればよい。この情報は、例えば図示しない記憶部(メモリ)などに記憶されればよい。
図8は、第1〜第nの初期化方法(init_method[1..i])と各々の初期化方法で用いる0個以上の制御パラメータの組み合わせとの対応関係を示す図である。この図8に示すテーブルでは、行が初期化方法の番号に対応し、列が制御パラメータの番号(第1〜第jの制御パラメータ)に対応する。行列番号で指定される係数a(i,j)は、例えば「0」または「1」の値をとる。コンテキスト制御部303は、このテーブルを参照することにより、第1〜第nの初期化方法がどのパラメータを用いるかを特定することができる。
例えば、第1の初期化方法(init_method[1])では、第1の制御パラメータ(param#1)のみが制御パラメータとして用いられる。この場合、a(1,1)=1、a(1,2..j)=0と設定されればよい。
このようにして、任意の複数の初期化方法(第1〜第nの初期化方法)において用いられる制御パラメータ(param#1〜#j)の有効/無効あるいは度合いを事前に与えることができる。
次に、各制御パラメータの具体例を以下に説明する。なお、以下に説明する制御パラメータは、例示であり、本発明に係る制御パラメータは、以下に説明する制御パラメータに限定されない。
第1の制御パラメータ(param#1)は、例えば「輝度の量子化ステップ」である。つまり、第1〜第nの初期化方法のうちの少なくとも1つは、輝度の量子化ステップに依存してもよい。これにより、従来と同様に、2値配列と輝度の量子化ステップとの相関度合いを初期化処理に反映させることができる。
第2の制御パラメータ(param#2)は、例えば「色差の量子化ステップ」である。つまり、第1〜第nの初期化方法のうちの少なくとも1つは、色差の量子化ステップに依存してもよい。
これにより、従来では、2値配列と輝度の量子化ステップとの相関度合いのみを初期化処理に反映させることしかできなかったが、色差信号に関連する符号化情報を用いて、2値配列と色差の量子化ステップとの相関度合いを初期化処理に反映させることが可能となる。その結果、色差の量子化ステップが小さい場合には、色差関連の情報量が大きくなるという傾向を利用して初期化処理を行うことができ、符号化効率をさらに向上させることができる。
ここで、色差信号に関連する符号化情報とは、例えば色差の予測モードに関連する情報、あるいは色差の量子化係数の符号化に関連する情報である。より具体的には、色差信号に関連する符号化情報とは、係数のゼロ、非ゼロを区別するための情報、あるいは非ゼロ係数が変換ブロックのどの位置まであるかを示す情報である。
第3の制御パラメータ(param#3)は、例えば「参照フレームの最大枚数」である。つまり、第1〜第nの初期化方法のうちの少なくとも1つは、参照ピクチャの最大枚数に依存してもよい。
これにより、従来では、2値配列と輝度の量子化ステップとの相関度合いのみを初期化処理に反映させることしかできなかったが、参照フレームの最大枚数に関連する符号化情報を用いて、2値配列と参照フレームの最大枚数との相関度合いを初期化処理に反映させることが可能となる。その結果、参照フレームの最大枚数が多ければ、時間方向の予測に関連する情報が小さくなることを利用して初期化処理を行うことができ、符号化効率をさらに向上させることができる。
ここで、参照フレームの最大枚数に関連する符号化情報とは、例えば動き予測に関連する情報、あるいは動きベクトルの符号化に関連する情報である。より具体的には、参照フレームの最大枚数に関連する符号化情報とは、例えば、予測参照方向、動きベクトルの大きさ、または参照されるフレームのインデクスを示す情報である。
なお、この例では、第3の制御パラメータ(param#3)は、「参照フレームの最大枚数」であったが、例えば、時間方向の予測に関連する情報に代替されてもよい。また例えば、第3の制御パラメータ(param#3)は、入力画像信号のフレームレートを示す情報であってもよい。この場合であっても、フレームレートが高い場合には、時間方向の相関性が高いことを利用して、初期値を調整することが可能となり、符号化効率をさらに向上させることができる。
第4の制御パラメータ(param#4)は、例えば所定のパラメータで与えられる「このスライスが属するピクチャの解像度」である。つまり、第1〜第nの初期化方法のうちの少なくとも1つは、ピクチャの解像度に依存してもよい。
これにより、従来では、2値配列と輝度の量子化ステップとの相関度合いのみを初期化処理に反映させることしかできなかったが、入力信号の解像度に関連する符号化情報を用いて、2値配列と入力画像の解像度の相関度合いを初期化処理に反映させることが可能となる。その結果、解像度が高い場合には、処理ブロックの単位が大きくなるという傾向、あるいは1つの処理ブロックに含まれる情報量が少なくなるという傾向を利用して初期化処理を行うことができ、符号化効率をさらに向上させることができる。
ここで、入力信号の解像度に関連する符号化情報とは、例えば符号化処理の単位に関連する情報、あるいは量子化係数の符号化に関連する情報である。より具体的には、入力信号の解像度に関連する符号化情報とは、例えば、係数のゼロ、非ゼロを区別するための情報、あるいは非ゼロ係数が変換ブロックのどの位置まであるかを示す情報である。
第5の制御パラメータ(param#5)は、例えば「スライスの違いを示す信号」(復号対象のスライスの空間上の位置)である。つまり、第1〜第nの初期化方法のうちの少なくとも1つは、ピクチャ内におけるスライスの位置に依存してもよい。
これにより、従来では、2値配列と輝度の量子化ステップとの相関度合いのみを初期化処理に反映させることしかできなかったが、スライスの特性に関連する符号化情報を用いて、2値配列とスライスの特性との相関度合いを初期化処理に反映させることが可能となる。その結果、非参照(別のスライスから参照されない)スライスでは、より画質劣化が大きくなるという傾向を利用して初期化処理を行うことができ、符号化効率をさらに向上させることができる。
ここで、スライスの特性に関連する符号化情報とは、例えばスライス位置情報、あるいはスライスの符号化方法の違いに関連する情報である。
尚、制御パラメータを固定値としてもよい。この固定値をn(制御パラメータの数)と同じ値としてもよい。
ここで、第1〜第nの制御パラメータが互いに独立であるとしてもよい。また、第1の制御パラメータから他の制御パラメータが一意に定まる関数の関係でないとしてもよい。
尚、制御パラメータを、このスライス中の他の変数であって、既に算術復号して得られた信号種別(の値)としてもよい。
このように、本実施の形態によれば、所定の区分(複数のコンテキストIdx)に対するコンテキスト変数の初期化に、その情報種別(群)に適切な制御パラメータを用いた初期化方法に切り替えて確率の初期値を設定することができる。
また、これらの区分等の情報は、符号化する信号種別毎にどの処理単位を用いるかをあらかじめきめておいてもよいし、ヘッダ情報(例えばプロファイルを示す情報や、別の制御パラメータを伝送、復号)によって切り替えてもよい。これにより、さらに入力信号の特性に合わせて初期化方法を切り替えることができ、さらに符号化効率を向上させることができる。
尚、区分とインデクスとの対応については、インデクスと区分との包含関係はどちらが他方を包含する関係であっても良い。要は、変数とインデクスと初期化方法との関係において、変数の値(あるいは2値配列等に配列化された要素の個々の値)が初期化方法で用いられる制御パラメータの値と相関が強い(正負問わず0に近くない)ことが重要である。例えば、制御パラメータQPの値に対して、その相関が第1の変数より弱い第2の変数については、図3Aおよび図3Bに示すQPを用いたH.264の初期化方法とは異なる初期化方法を適用する。尚、本発明H.264と同じ確率モデルに適用させるためには、複数のインデクスを1つの区分が包含するようにするとよい。
H.264に習い、配列の1つ1つの要素が0、1の2値のどちらかを使う例を説明したが、nビット多値を取る場合も、3値いずれかを取る場合であっても、発生確率の初期化に用いるパラメータを適切な制御パラメータに応じて変える点で、本発明が適用できることはいうまでもない。
なお、本実施の形態に係るコンテキスト変数の初期化方法は、算術符号化方法にも適用できる。つまり、算術符号化方法においても、図6〜図8に示すように、コンテキスト変数を初期化することができる。これにより、上記の算術復号方法と同様の効果を奏することができる。
(実施の形態2)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法(画像符号化方法)または動画像復号化方法(画像復号方法)の構成を実現するためのプログラムを記憶メディアに記録することにより、上記各実施の形態で示した処理を独立したコンピュータシステムにおいて簡単に実施することが可能となる。記憶メディアは、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、ICカード、半導体メモリ等、プログラムを記録できるものであればよい。
さらにここで、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法(画像符号化方法)や動画像復号化方法(画像復号方法)の応用例とそれを用いたシステムを説明する。当該システムは、画像符号化方法を用いた画像符号化装置、および画像復号方法を用いた画像復号装置からなる画像符号化復号装置を有することを特徴とする。システムにおける他の構成について、場合に応じて適切に変更することができる。
図9は、コンテンツ配信サービスを実現するコンテンツ供給システムex100の全体構成を示す図である。通信サービスの提供エリアを所望の大きさに分割し、各セル内にそれぞれ固定無線局である基地局ex106、ex107、ex108、ex109、ex110が設置されている。
このコンテンツ供給システムex100は、インターネットex101にインターネットサービスプロバイダex102および電話網ex104、および基地局ex106からex110を介して、コンピュータex111、PDA(Personal Digital Assistant)ex112、カメラex113、携帯電話ex114、ゲーム機ex115などの各機器が接続される。
しかし、コンテンツ供給システムex100は図9のような構成に限定されず、いずれかの要素を組合せて接続するようにしてもよい。また、固定無線局である基地局ex106からex110を介さずに、各機器が電話網ex104に直接接続されてもよい。また、各機器が近距離無線等を介して直接相互に接続されていてもよい。
カメラex113はデジタルビデオカメラ等の動画撮影が可能な機器であり、カメラex116はデジタルカメラ等の静止画撮影、動画撮影が可能な機器である。また、携帯電話ex114は、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、W−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式、若しくはLTE(Long Term Evolution)方式、HSPA(High Speed Packet Access)の携帯電話機、またはPHS(Personal Handyphone System)等であり、いずれでも構わない。
コンテンツ供給システムex100では、カメラex113等が基地局ex109、電話網ex104を通じてストリーミングサーバex103に接続されることで、ライブ配信等が可能になる。ライブ配信では、ユーザがカメラex113を用いて撮影するコンテンツ(例えば、音楽ライブの映像等)に対して上記各実施の形態で説明したように符号化処理を行い(即ち、本発明の画像符号化装置として機能する)、ストリーミングサーバex103に送信する。一方、ストリーミングサーバex103は要求のあったクライアントに対して送信されたコンテンツデータをストリーム配信する。クライアントとしては、上記符号化処理されたデータを復号化することが可能な、コンピュータex111、PDAex112、カメラex113、携帯電話ex114、ゲーム機ex115等がある。配信されたデータを受信した各機器では、受信したデータを復号化処理して再生する(即ち、本発明の画像復号装置として機能する)。
なお、撮影したデータの符号化処理はカメラex113で行っても、データの送信処理をするストリーミングサーバex103で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。同様に配信されたデータの復号化処理はクライアントで行っても、ストリーミングサーバex103で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。また、カメラex113に限らず、カメラex116で撮影した静止画像および/または動画像データを、コンピュータex111を介してストリーミングサーバex103に送信してもよい。この場合の符号化処理はカメラex116、コンピュータex111、ストリーミングサーバex103のいずれで行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。
また、これら符号化・復号化処理は、一般的にコンピュータex111や各機器が有するLSIex500において処理する。LSIex500は、ワンチップであっても複数チップからなる構成であってもよい。なお、動画像符号化・復号化用のソフトウェアをコンピュータex111等で読み取り可能な何らかの記録メディア(CD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスクなど)に組み込み、そのソフトウェアを用いて符号化・復号化処理を行ってもよい。さらに、携帯電話ex114がカメラ付きである場合には、そのカメラで取得した動画データを送信してもよい。このときの動画データは携帯電話ex114が有するLSIex500で符号化処理されたデータである。
また、ストリーミングサーバex103は複数のサーバや複数のコンピュータであって、データを分散して処理したり記録したり配信するものであってもよい。
以上のようにして、コンテンツ供給システムex100では、符号化されたデータをクライアントが受信して再生することができる。このようにコンテンツ供給システムex100では、ユーザが送信した情報をリアルタイムでクライアントが受信して復号化し、再生することができ、特別な権利や設備を有さないユーザでも個人放送を実現できる。
なお、コンテンツ供給システムex100の例に限らず、図10に示すように、デジタル放送用システムex200にも、上記各実施の形態の少なくとも動画像符号化装置(画像符号化装置)または動画像復号化装置(画像復号装置)のいずれかを組み込むことができる。具体的には、放送局ex201では映像データに音楽データなどが多重化された多重化データが電波を介して通信または衛星ex202に伝送される。この映像データは上記各実施の形態で説明した動画像符号化方法により符号化されたデータである(即ち、本発明の画像符号化装置によって符号化されたデータである)。これを受けた放送衛星ex202は、放送用の電波を発信し、この電波を衛星放送の受信が可能な家庭のアンテナex204が受信する。受信した多重化データを、テレビ(受信機)ex300またはセットトップボックス(STB)ex217等の装置が復号化して再生する(即ち、本発明の画像復号装置として機能する)。
また、DVD、BD等の記録メディアex215に記録した多重化データを読み取り復号化する、または記録メディアex215に映像信号を符号化し、さらに場合によっては音楽信号と多重化して書き込むリーダ/レコーダex218にも上記各実施の形態で示した動画像復号化装置または動画像符号化装置を実装することが可能である。この場合、再生された映像信号はモニタex219に表示され、多重化データが記録された記録メディアex215により他の装置やシステムにおいて映像信号を再生することができる。また、ケーブルテレビ用のケーブルex203または衛星/地上波放送のアンテナex204に接続されたセットトップボックスex217内に動画像復号化装置を実装し、これをテレビのモニタex219で表示してもよい。このときセットトップボックスではなく、テレビ内に動画像復号化装置を組み込んでもよい。
図11は、上記各実施の形態で説明した動画像復号化方法および動画像符号化方法を用いたテレビ(受信機)ex300を示す図である。テレビex300は、上記放送を受信するアンテナex204またはケーブルex203等を介して映像データに音声データが多重化された多重化データを取得、または出力するチューナex301と、受信した多重化データを復調する、または外部に送信する多重化データに変調する変調/復調部ex302と、復調した多重化データを映像データと、音声データとに分離する、または信号処理部ex306で符号化された映像データ、音声データを多重化する多重/分離部ex303を備える。
また、テレビex300は、音声データ、映像データそれぞれを復号化する、またはそれぞれの情報を符号化する音声信号処理部ex304、映像信号処理部ex305(本発明の画像符号化装置または画像復号装置として機能する)を有する信号処理部ex306と、復号化した音声信号を出力するスピーカex307、復号化した映像信号を表示するディスプレイ等の表示部ex308を有する出力部ex309とを有する。さらに、テレビex300は、ユーザ操作の入力を受け付ける操作入力部ex312等を有するインタフェース部ex317を有する。さらに、テレビex300は、各部を統括的に制御する制御部ex310、各部に電力を供給する電源回路部ex311を有する。インタフェース部ex317は、操作入力部ex312以外に、リーダ/レコーダex218等の外部機器と接続されるブリッジex313、SDカード等の記録メディアex216を装着可能とするためのスロット部ex314、ハードディスク等の外部記録メディアと接続するためのドライバex315、電話網と接続するモデムex316等を有していてもよい。なお記録メディアex216は、格納する不揮発性/揮発性の半導体メモリ素子により電気的に情報の記録を可能としたものである。テレビex300の各部は同期バスを介して互いに接続されている。
まず、テレビex300がアンテナex204等により外部から取得した多重化データを復号化し、再生する構成について説明する。テレビex300は、リモートコントローラex220等からのユーザ操作を受け、CPU等を有する制御部ex310の制御に基づいて、変調/復調部ex302で復調した多重化データを多重/分離部ex303で分離する。さらにテレビex300は、分離した音声データを音声信号処理部ex304で復号化し、分離した映像データを映像信号処理部ex305で上記各実施の形態で説明した復号化方法を用いて復号化する。復号化した音声信号、映像信号は、それぞれ出力部ex309から外部に向けて出力される。出力する際には、音声信号と映像信号が同期して再生するよう、バッファex318、ex319等に一旦これらの信号を蓄積するとよい。また、テレビex300は、放送等からではなく、磁気/光ディスク、SDカード等の記録メディアex215、ex216から多重化データを読み出してもよい。次に、テレビex300が音声信号や映像信号を符号化し、外部に送信または記録メディア等に書き込む構成について説明する。テレビex300は、リモートコントローラex220等からのユーザ操作を受け、制御部ex310の制御に基づいて、音声信号処理部ex304で音声信号を符号化し、映像信号処理部ex305で映像信号を上記各実施の形態で説明した符号化方法を用いて符号化する。符号化した音声信号、映像信号は多重/分離部ex303で多重化され外部に出力される。多重化する際には、音声信号と映像信号が同期するように、バッファex320、ex321等に一旦これらの信号を蓄積するとよい。なお、バッファex318、ex319、ex320、ex321は図示しているように複数備えていてもよいし、1つ以上のバッファを共有する構成であってもよい。さらに、図示している以外に、例えば変調/復調部ex302や多重/分離部ex303の間等でもシステムのオーバフロー、アンダーフローを避ける緩衝材としてバッファにデータを蓄積することとしてもよい。
また、テレビex300は、放送等や記録メディア等から音声データ、映像データを取得する以外に、マイクやカメラのAV入力を受け付ける構成を備え、それらから取得したデータに対して符号化処理を行ってもよい。なお、ここではテレビex300は上記の符号化処理、多重化、および外部出力ができる構成として説明したが、これらの処理を行うことはできず、上記受信、復号化処理、外部出力のみが可能な構成であってもよい。
また、リーダ/レコーダex218で記録メディアから多重化データを読み出す、または書き込む場合には、上記復号化処理または符号化処理はテレビex300、リーダ/レコーダex218のいずれで行ってもよいし、テレビex300とリーダ/レコーダex218が互いに分担して行ってもよい。
一例として、光ディスクからデータの読み込みまたは書き込みをする場合の情報再生/記録部ex400の構成を図12に示す。情報再生/記録部ex400は、以下に説明する要素ex401、ex402、ex403、ex404、ex405、ex406、ex407を備える。光ヘッドex401は、光ディスクである記録メディアex215の記録面にレーザスポットを照射して情報を書き込み、記録メディアex215の記録面からの反射光を検出して情報を読み込む。変調記録部ex402は、光ヘッドex401に内蔵された半導体レーザを電気的に駆動し記録データに応じてレーザ光の変調を行う。再生復調部ex403は、光ヘッドex401に内蔵されたフォトディテクタにより記録面からの反射光を電気的に検出した再生信号を増幅し、記録メディアex215に記録された信号成分を分離して復調し、必要な情報を再生する。バッファex404は、記録メディアex215に記録するための情報および記録メディアex215から再生した情報を一時的に保持する。ディスクモータex405は記録メディアex215を回転させる。サーボ制御部ex406は、ディスクモータex405の回転駆動を制御しながら光ヘッドex401を所定の情報トラックに移動させ、レーザスポットの追従処理を行う。システム制御部ex407は、情報再生/記録部ex400全体の制御を行う。上記の読み出しや書き込みの処理はシステム制御部ex407が、バッファex404に保持された各種情報を利用し、また必要に応じて新たな情報の生成・追加を行うと共に、変調記録部ex402、再生復調部ex403、サーボ制御部ex406を協調動作させながら、光ヘッドex401を通して、情報の記録再生を行うことにより実現される。システム制御部ex407は例えばマイクロプロセッサで構成され、読み出し書き込みのプログラムを実行することでそれらの処理を実行する。
以上では、光ヘッドex401はレーザスポットを照射するとして説明したが、近接場光を用いてより高密度な記録を行う構成であってもよい。
図13に光ディスクである記録メディアex215の模式図を示す。記録メディアex215の記録面には案内溝(グルーブ)がスパイラル状に形成され、情報トラックex230には、予めグルーブの形状の変化によってディスク上の絶対位置を示す番地情報が記録されている。この番地情報はデータを記録する単位である記録ブロックex231の位置を特定するための情報を含み、記録や再生を行う装置において情報トラックex230を再生し番地情報を読み取ることで記録ブロックを特定することができる。また、記録メディアex215は、データ記録領域ex233、内周領域ex232、外周領域ex234を含んでいる。ユーザデータを記録するために用いる領域がデータ記録領域ex233であり、データ記録領域ex233より内周または外周に配置されている内周領域ex232と外周領域ex234は、ユーザデータの記録以外の特定用途に用いられる。情報再生/記録部ex400は、このような記録メディアex215のデータ記録領域ex233に対して、符号化された音声データ、映像データまたはそれらのデータを多重化した多重化データの読み書きを行う。
以上では、1層のDVD、BD等の光ディスクを例に挙げ説明したが、これらに限ったものではなく、多層構造であって表面以外にも記録可能な光ディスクであってもよい。また、ディスクの同じ場所にさまざまな異なる波長の色の光を用いて情報を記録したり、さまざまな角度から異なる情報の層を記録したりなど、多次元的な記録/再生を行う構造の光ディスクであってもよい。
また、デジタル放送用システムex200において、アンテナex205を有する車ex210で衛星ex202等からデータを受信し、車ex210が有するカーナビゲーションex211等の表示装置に動画を再生することも可能である。なお、カーナビゲーションex211の構成は例えば図11に示す構成のうち、GPS受信部を加えた構成が考えられ、同様なことがコンピュータex111や携帯電話ex114等でも考えられる。
図14(a)は、上記実施の形態で説明した動画像復号化方法および動画像符号化方法を用いた携帯電話ex114を示す図である。携帯電話ex114は、基地局ex110との間で電波を送受信するためのアンテナex350、映像、静止画を撮ることが可能なカメラ部ex365、カメラ部ex365で撮像した映像、アンテナex350で受信した映像等が復号化されたデータを表示する液晶ディスプレイ等の表示部ex358を備える。携帯電話ex114は、さらに、操作キー部ex366を有する本体部、音声を出力するためのスピーカ等である音声出力部ex357、音声を入力するためのマイク等である音声入力部ex356、撮影した映像、静止画、録音した音声、または受信した映像、静止画、メール等の符号化されたデータもしくは復号化されたデータを保存するメモリ部ex367、又は同様にデータを保存する記録メディアとのインタフェース部であるスロット部ex364を備える。
さらに、携帯電話ex114の構成例について、図14(b)を用いて説明する。携帯電話ex114は、表示部ex358および操作キー部ex366を備えた本体部の各部を統括的に制御する主制御部ex360に対して、電源回路部ex361、操作入力制御部ex362、映像信号処理部ex355、カメラインタフェース部ex363、LCD(Liquid Crystal Display)制御部ex359、変調/復調部ex352、多重/分離部ex353、音声信号処理部ex354、スロット部ex364、メモリ部ex367がバスex370を介して互いに接続されている。
電源回路部ex361は、ユーザの操作により終話および電源キーがオン状態にされると、バッテリパックから各部に対して電力を供給することにより携帯電話ex114を動作可能な状態に起動する。
携帯電話ex114は、CPU、ROM、RAM等を有する主制御部ex360の制御に基づいて、音声通話モード時に音声入力部ex356で収音した音声信号を音声信号処理部ex354でデジタル音声信号に変換し、これを変調/復調部ex352でスペクトラム拡散処理し、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して送信する。また携帯電話ex114は、音声通話モード時にアンテナex350を介して受信した受信データを増幅して周波数変換処理およびアナログデジタル変換処理を施し、変調/復調部ex352でスペクトラム逆拡散処理し、音声信号処理部ex354でアナログ音声信号に変換した後、これを音声出力部ex357から出力する。
さらにデータ通信モード時に電子メールを送信する場合、本体部の操作キー部ex366等の操作によって入力された電子メールのテキストデータは操作入力制御部ex362を介して主制御部ex360に送出される。主制御部ex360は、テキストデータを変調/復調部ex352でスペクトラム拡散処理をし、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して基地局ex110へ送信する。電子メールを受信する場合は、受信したデータに対してこのほぼ逆の処理が行われ、表示部ex358に出力される。
データ通信モード時に映像、静止画、または映像と音声を送信する場合、映像信号処理部ex355は、カメラ部ex365から供給された映像信号を上記各実施の形態で示した動画像符号化方法によって圧縮符号化し(即ち、本発明の画像符号化装置として機能する)、符号化された映像データを多重/分離部ex353に送出する。また、音声信号処理部ex354は、映像、静止画等をカメラ部ex365で撮像中に音声入力部ex356で収音した音声信号を符号化し、符号化された音声データを多重/分離部ex353に送出する。
多重/分離部ex353は、映像信号処理部ex355から供給された符号化された映像データと音声信号処理部ex354から供給された符号化された音声データを所定の方式で多重化し、その結果得られる多重化データを変調/復調部(変調/復調回路部)ex352でスペクトラム拡散処理をし、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して送信する。
データ通信モード時にホームページ等にリンクされた動画像ファイルのデータを受信する場合、または映像およびもしくは音声が添付された電子メールを受信する場合、アンテナex350を介して受信された多重化データを復号化するために、多重/分離部ex353は、多重化データを分離することにより映像データのビットストリームと音声データのビットストリームとに分け、同期バスex370を介して符号化された映像データを映像信号処理部ex355に供給するとともに、符号化された音声データを音声信号処理部ex354に供給する。映像信号処理部ex355は、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法に対応した動画像復号化方法によって復号化することにより映像信号を復号し(即ち、本発明の画像復号装置として機能する)、LCD制御部ex359を介して表示部ex358から、例えばホームページにリンクされた動画像ファイルに含まれる映像、静止画が表示される。また音声信号処理部ex354は、音声信号を復号し、音声出力部ex357から音声が出力される。
また、上記携帯電話ex114等の端末は、テレビex300と同様に、符号化器・復号化器を両方持つ送受信型端末の他に、符号化器のみの送信端末、復号化器のみの受信端末という3通りの実装形式が考えられる。さらに、デジタル放送用システムex200において、映像データに音楽データなどが多重化された多重化データを受信、送信するとして説明したが、音声データ以外に映像に関連する文字データなどが多重化されたデータであってもよいし、多重化データではなく映像データ自体であってもよい。
このように、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法あるいは動画像復号化方法を上述したいずれの機器・システムに用いることは可能であり、そうすることで、上記各実施の形態で説明した効果を得ることができる。
また、本発明はかかる上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形または修正が可能である。
(実施の形態3)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置と、MPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1など異なる規格に準拠した動画像符号化方法または装置とを、必要に応じて適宜切替えることにより、映像データを生成することも可能である。
ここで、それぞれ異なる規格に準拠する複数の映像データを生成した場合、復号する際に、それぞれの規格に対応した復号方法を選択する必要がある。しかしながら、復号する映像データが、どの規格に準拠するものであるか識別できないため、適切な復号方法を選択することができないという課題を生じる。
この課題を解決するために、映像データに音声データなどを多重化した多重化データは、映像データがどの規格に準拠するものであるかを示す識別情報を含む構成とする。上記各実施の形態で示す動画像符号化方法または装置によって生成された映像データを含む多重化データの具体的な構成を以下説明する。多重化データは、MPEG−2トランスポートストリーム形式のデジタルストリームである。
図15は、多重化データの構成を示す図である。図15に示すように多重化データは、ビデオストリーム、オーディオストリーム、プレゼンテーショングラフィックスストリーム(PG)、インタラクティブグラフィックスストリームのうち、1つ以上を多重化することで得られる。ビデオストリームは映画の主映像および副映像を、オーディオストリーム(IG)は映画の主音声部分とその主音声とミキシングする副音声を、プレゼンテーショングラフィックスストリームは、映画の字幕をそれぞれ示している。ここで主映像とは画面に表示される通常の映像を示し、副映像とは主映像の中に小さな画面で表示する映像のことである。また、インタラクティブグラフィックスストリームは、画面上にGUI部品を配置することにより作成される対話画面を示している。ビデオストリームは、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠した動画像符号化方法または装置によって符号化されている。オーディオストリームは、ドルビーAC−3、Dolby Digital Plus、MLP、DTS、DTS−HD、または、リニアPCMのなどの方式で符号化されている。
多重化データに含まれる各ストリームはPIDによって識別される。例えば、映画の映像に利用するビデオストリームには0x1011が、オーディオストリームには0x1100から0x111Fまでが、プレゼンテーショングラフィックスには0x1200から0x121Fまでが、インタラクティブグラフィックスストリームには0x1400から0x141Fまでが、映画の副映像に利用するビデオストリームには0x1B00から0x1B1Fまで、主音声とミキシングする副音声に利用するオーディオストリームには0x1A00から0x1A1Fが、それぞれ割り当てられている。
図16は、多重化データがどのように多重化されるかを模式的に示す図である。まず、複数のビデオフレームからなるビデオストリームex235、複数のオーディオフレームからなるオーディオストリームex238を、それぞれPESパケット列ex236およびex239に変換し、TSパケットex237およびex240に変換する。同じくプレゼンテーショングラフィックスストリームex241およびインタラクティブグラフィックスex244のデータをそれぞれPESパケット列ex242およびex245に変換し、さらにTSパケットex243およびex246に変換する。多重化データex247はこれらのTSパケットを1本のストリームに多重化することで構成される。
図17は、PESパケット列に、ビデオストリームがどのように格納されるかをさらに詳しく示している。図17における第1段目はビデオストリームのビデオフレーム列を示す。第2段目は、PESパケット列を示す。図17の矢印yy1,yy2,yy3,yy4に示すように、ビデオストリームにおける複数のVideo Presentation UnitであるIピクチャ、Bピクチャ、Pピクチャは、ピクチャ毎に分割され、PESパケットのペイロードに格納される。各PESパケットはPESヘッダを持ち、PESヘッダには、ピクチャの表示時刻であるPTS(Presentation Time−Stamp)やピクチャの復号時刻であるDTS(Decoding Time−Stamp)が格納される。
図18は、多重化データに最終的に書き込まれるTSパケットの形式を示している。TSパケットは、ストリームを識別するPIDなどの情報を持つ4ByteのTSヘッダとデータを格納する184ByteのTSペイロードから構成される188Byte固定長のパケットであり、上記PESパケットは分割されTSペイロードに格納される。BD−ROMの場合、TSパケットには、4ByteのTP_Extra_Headerが付与され、192Byteのソースパケットを構成し、多重化データに書き込まれる。TP_Extra_HeaderにはATS(Arrival_Time_Stamp)などの情報が記載される。ATSは当該TSパケットのデコーダのPIDフィルタへの転送開始時刻を示す。多重化データには図18下段に示すようにソースパケットが並ぶこととなり、多重化データの先頭からインクリメントする番号はSPN(ソースパケットナンバー)と呼ばれる。
また、多重化データに含まれるTSパケットには、映像・音声・字幕などの各ストリーム以外にもPAT(Program Association Table)、PMT(Program Map Table)、PCR(Program Clock Reference)などがある。PATは多重化データ中に利用されるPMTのPIDが何であるかを示し、PAT自身のPIDは0で登録される。PMTは、多重化データ中に含まれる映像・音声・字幕などの各ストリームのPIDと各PIDに対応するストリームの属性情報を持ち、また多重化データに関する各種ディスクリプタを持つ。ディスクリプタには多重化データのコピーを許可・不許可を指示するコピーコントロール情報などがある。PCRは、ATSの時間軸であるATC(Arrival Time Clock)とPTS・DTSの時間軸であるSTC(System Time Clock)の同期を取るために、そのPCRパケットがデコーダに転送されるATSに対応するSTC時間の情報を持つ。
図19はPMTのデータ構造を詳しく説明する図である。PMTの先頭には、そのPMTに含まれるデータの長さなどを記したPMTヘッダが配置される。その後ろには、多重化データに関するディスクリプタが複数配置される。上記コピーコントロール情報などが、ディスクリプタとして記載される。ディスクリプタの後には、多重化データに含まれる各ストリームに関するストリーム情報が複数配置される。ストリーム情報は、ストリームの圧縮コーデックなどを識別するためストリームタイプ、ストリームのPID、ストリームの属性情報(フレームレート、アスペクト比など)が記載されたストリームディスクリプタから構成される。ストリームディスクリプタは多重化データに存在するストリームの数だけ存在する。
記録媒体などに記録する場合には、上記多重化データは、多重化データ情報ファイルと共に記録される。
多重化データ情報ファイルは、図20に示すように多重化データの管理情報であり、多重化データと1対1に対応し、多重化データ情報、ストリーム属性情報とエントリマップから構成される。
多重化データ情報は図20に示すようにシステムレート、再生開始時刻、再生終了時刻から構成されている。システムレートは多重化データの、後述するシステムターゲットデコーダのPIDフィルタへの最大転送レートを示す。多重化データ中に含まれるATSの間隔はシステムレート以下になるように設定されている。再生開始時刻は多重化データの先頭のビデオフレームのPTSであり、再生終了時刻は多重化データの終端のビデオフレームのPTSに1フレーム分の再生間隔を足したものが設定される。
ストリーム属性情報は図21に示すように、多重化データに含まれる各ストリームについての属性情報が、PID毎に登録される。属性情報はビデオストリーム、オーディオストリーム、プレゼンテーショングラフィックスストリーム、インタラクティブグラフィックスストリーム毎に異なる情報を持つ。ビデオストリーム属性情報は、そのビデオストリームがどのような圧縮コーデックで圧縮されたか、ビデオストリームを構成する個々のピクチャデータの解像度がどれだけであるか、アスペクト比はどれだけであるか、フレームレートはどれだけであるかなどの情報を持つ。オーディオストリーム属性情報は、そのオーディオストリームがどのような圧縮コーデックで圧縮されたか、そのオーディオストリームに含まれるチャンネル数は何であるか、何の言語に対応するか、サンプリング周波数がどれだけであるかなどの情報を持つ。これらの情報は、プレーヤが再生する前のデコーダの初期化などに利用される。
本実施の形態においては、上記多重化データのうち、PMTに含まれるストリームタイプを利用する。また、記録媒体に多重化データが記録されている場合には、多重化データ情報に含まれる、ビデオストリーム属性情報を利用する。具体的には、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置において、PMTに含まれるストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報に対し、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示す固有の情報を設定するステップまたは手段を設ける。この構成により、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成した映像データと、他の規格に準拠する映像データとを識別することが可能になる。
また、本実施の形態における動画像復号化方法のステップを図22に示す。ステップexS100において、多重化データからPMTに含まれるストリームタイプ、または、多重化データ情報に含まれるビデオストリーム属性情報を取得する。次に、ステップexS101において、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された多重化データであることを示しているか否かを判断する。そして、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものであると判断された場合には、ステップexS102において、上記各実施の形態で示した動画像復号方法により復号を行う。また、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠するものであることを示している場合には、ステップexS103において、従来の規格に準拠した動画像復号方法により復号を行う。
このように、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報に新たな固有値を設定することにより、復号する際に、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法または装置で復号可能であるかを判断することができる。従って、異なる規格に準拠する多重化データが入力された場合であっても、適切な復号化方法または装置を選択することができるため、エラーを生じることなく復号することが可能となる。また、本実施の形態で示した動画像符号化方法または装置、または、動画像復号方法または装置を、上述したいずれの機器・システムに用いることも可能である。
(実施の形態4)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法および装置、動画像復号化方法および装置は、典型的には集積回路であるLSIで実現される。一例として、図23に1チップ化されたLSIex500の構成を示す。LSIex500は、以下に説明する要素ex501、ex502、ex503、ex504、ex505、ex506、ex507、ex508、ex509を備え、各要素はバスex510を介して接続している。電源回路部ex505は電源がオン状態の場合に各部に対して電力を供給することで動作可能な状態に起動する。
例えば符号化処理を行う場合には、LSIex500は、CPUex502、メモリコントローラex503、ストリームコントローラex504、駆動周波数制御部ex512等を有する制御部ex501の制御に基づいて、AV I/Oex509によりマイクex117やカメラex113等からAV信号を入力する。入力されたAV信号は、一旦SDRAM等の外部のメモリex511に蓄積される。制御部ex501の制御に基づいて、蓄積したデータは処理量や処理速度に応じて適宜複数回に分けるなどされ信号処理部ex507に送られ、信号処理部ex507において音声信号の符号化および/または映像信号の符号化が行われる。ここで映像信号の符号化処理は上記各実施の形態で説明した符号化処理である。信号処理部ex507ではさらに、場合により符号化された音声データと符号化された映像データを多重化するなどの処理を行い、ストリームI/Oex506から外部に出力する。この出力された多重化データは、基地局ex107に向けて送信されたり、または記録メディアex215に書き込まれたりする。なお、多重化する際には同期するよう、一旦バッファex508にデータを蓄積するとよい。
なお、上記では、メモリex511がLSIex500の外部の構成として説明したが、LSIex500の内部に含まれる構成であってもよい。バッファex508も1つに限ったものではなく、複数のバッファを備えていてもよい。また、LSIex500は1チップ化されてもよいし、複数チップ化されてもよい。
また、上記では、制御部ex501が、CPUex502、メモリコントローラex503、ストリームコントローラex504、駆動周波数制御部ex512等を有するとしているが、制御部ex501の構成は、この構成に限らない。例えば、信号処理部ex507がさらにCPUを備える構成であってもよい。信号処理部ex507の内部にもCPUを設けることにより、処理速度をより向上させることが可能になる。また、他の例として、CPUex502が信号処理部ex507、または信号処理部ex507の一部である例えば音声信号処理部を備える構成であってもよい。このような場合には、制御部ex501は、信号処理部ex507、またはその一部を有するCPUex502を備える構成となる。
なお、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてありえる。
(実施の形態5)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データを復号する場合、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データを復号する場合に比べ、処理量が増加することが考えられる。そのため、LSIex500において、従来の規格に準拠する映像データを復号する際のCPUex502の駆動周波数よりも高い駆動周波数に設定する必要がある。しかし、駆動周波数を高くすると、消費電力が高くなるという課題が生じる。
この課題を解決するために、テレビex300、LSIex500などの動画像復号化装置は、映像データがどの規格に準拠するものであるかを識別し、規格に応じて駆動周波数を切替える構成とする。図24は、本実施の形態における構成ex800を示している。駆動周波数切替え部ex803は、映像データが、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものである場合には、駆動周波数を高く設定する。そして、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行する復号処理部ex801に対し、映像データを復号するよう指示する。一方、映像データが、従来の規格に準拠する映像データである場合には、映像データが、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものである場合に比べ、駆動周波数を低く設定する。そして、従来の規格に準拠する復号処理部ex802に対し、映像データを復号するよう指示する。
より具体的には、駆動周波数切替え部ex803は、図23のCPUex502と駆動周波数制御部ex512から構成される。また、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行する復号処理部ex801、および、従来の規格に準拠する復号処理部ex802は、図23の信号処理部ex507に該当する。CPUex502は、映像データがどの規格に準拠するものであるかを識別する。そして、CPUex502からの信号に基づいて、駆動周波数制御部ex512は、駆動周波数を設定する。また、CPUex502からの信号に基づいて、信号処理部ex507は、映像データの復号を行う。ここで、映像データの識別には、例えば、実施の形態3で記載した識別情報を利用することが考えられる。識別情報に関しては、実施の形態3で記載したものに限られず、映像データがどの規格に準拠するか識別できる情報であればよい。例えば、映像データがテレビに利用されるものであるか、ディスクに利用されるものであるかなどを識別する外部信号に基づいて、映像データがどの規格に準拠するものであるか識別可能である場合には、このような外部信号に基づいて識別してもよい。また、CPUex502における駆動周波数の選択は、例えば、図26のような映像データの規格と、駆動周波数とを対応付けたルックアップテーブルに基づいて行うことが考えられる。ルックアップテーブルを、バッファex508や、LSIの内部メモリに格納しておき、CPUex502がこのルックアップテーブルを参照することにより、駆動周波数を選択することが可能である。
図25は、本実施の形態の方法を実施するステップを示している。まず、ステップexS200では、信号処理部ex507において、多重化データから識別情報を取得する。次に、ステップexS201では、CPUex502において、識別情報に基づいて映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものであるか否かを識別する。映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものである場合には、ステップexS202において、駆動周波数を高く設定する信号を、CPUex502が駆動周波数制御部ex512に送る。そして、駆動周波数制御部ex512において、高い駆動周波数に設定される。一方、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、ステップexS203において、駆動周波数を低く設定する信号を、CPUex502が駆動周波数制御部ex512に送る。そして、駆動周波数制御部ex512において、映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものである場合に比べ、低い駆動周波数に設定される。
さらに、駆動周波数の切替えに連動して、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を変更することにより、省電力効果をより高めることが可能である。例えば、駆動周波数を低く設定する場合には、これに伴い、駆動周波数を高く設定している場合に比べ、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を低く設定することが考えられる。
また、駆動周波数の設定方法は、復号する際の処理量が大きい場合に、駆動周波数を高く設定し、復号する際の処理量が小さい場合に、駆動周波数を低く設定すればよく、上述した設定方法に限らない。例えば、MPEG4−AVC規格に準拠する映像データを復号する処理量の方が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置により生成された映像データを復号する処理量よりも大きい場合には、駆動周波数の設定を上述した場合の逆にすることが考えられる。
さらに、駆動周波数の設定方法は、駆動周波数を低くする構成に限らない。例えば、識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合には、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を高く設定し、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を低く設定することも考えられる。また、他の例としては、識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合には、CPUex502の駆動を停止させることなく、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、処理に余裕があるため、CPUex502の駆動を一時停止させることも考えられる。識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合であっても、処理に余裕があれば、CPUex502の駆動を一時停止させることも考えられる。この場合は、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合に比べて、停止時間を短く設定することが考えられる。
このように、映像データが準拠する規格に応じて、駆動周波数を切替えることにより、省電力化を図ることが可能になる。また、電池を用いてLSIex500またはLSIex500を含む装置を駆動している場合には、省電力化に伴い、電池の寿命を長くすることが可能である。
(実施の形態6)
テレビや、携帯電話など、上述した機器・システムには、異なる規格に準拠する複数の映像データが入力される場合がある。このように、異なる規格に準拠する複数の映像データが入力された場合にも復号できるようにするために、LSIex500の信号処理部ex507が複数の規格に対応している必要がある。しかし、それぞれの規格に対応する信号処理部ex507を個別に用いると、LSIex500の回路規模が大きくなり、また、コストが増加するという課題が生じる。
この課題を解決するために、上記各実施の形態で示した動画像復号方法を実行するための復号処理部と、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する復号処理部とを一部共有化する構成とする。この構成例を図27(a)のex900に示す。例えば、上記各実施の形態で示した動画像復号方法と、MPEG4−AVC規格に準拠する動画像復号方法とは、エントロピー符号化、逆量子化、デブロッキング・フィルタ、動き補償などの処理において処理内容が一部共通する。共通する処理内容については、MPEG4−AVC規格に対応する復号処理部ex902を共有し、MPEG4−AVC規格に対応しない、本発明特有の他の処理内容については、専用の復号処理部ex901を用いるという構成が考えられる。特に、本発明は、逆量子化に特徴を有していることから、例えば、逆量子化については専用の復号処理部ex901を用い、それ以外のエントロピー符号化、デブロッキング・フィルタ、動き補償のいずれか、または、全ての処理については、復号処理部を共有することが考えられる。復号処理部の共有化に関しては、共通する処理内容については、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行するための復号処理部を共有し、MPEG4−AVC規格に特有の処理内容については、専用の復号処理部を用いる構成であってもよい。
また、処理を一部共有化する他の例を図27(b)のex1000に示す。この例では、本発明に特有の処理内容に対応した専用の復号処理部ex1001と、他の従来規格に特有の処理内容に対応した専用の復号処理部ex1002と、本発明の動画像復号方法と他の従来規格の動画像復号方法とに共通する処理内容に対応した共用の復号処理部ex1003とを用いる構成としている。ここで、専用の復号処理部ex1001、ex1002は、必ずしも本発明、または、他の従来規格に特有の処理内容に特化したものではなく、他の汎用処理を実行できるものであってもよい。また、本実施の形態の構成を、LSIex500で実装することも可能である。
このように、本発明の動画像復号方法と、従来の規格の動画像復号方法とで共通する処理内容について、復号処理部を共有することにより、LSIの回路規模を小さくし、かつ、コストを低減することが可能である。