JP6715027B2 - 焼き菓子用粉末油脂組成物 - Google Patents

焼き菓子用粉末油脂組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP6715027B2
JP6715027B2 JP2016032948A JP2016032948A JP6715027B2 JP 6715027 B2 JP6715027 B2 JP 6715027B2 JP 2016032948 A JP2016032948 A JP 2016032948A JP 2016032948 A JP2016032948 A JP 2016032948A JP 6715027 B2 JP6715027 B2 JP 6715027B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mass
fat composition
oil
baked confectionery
powdery
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016032948A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016163566A (ja
Inventor
裕子 中原
裕子 中原
徹 戸田
徹 戸田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nisshin Oillio Group Ltd
Original Assignee
Nisshin Oillio Group Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nisshin Oillio Group Ltd filed Critical Nisshin Oillio Group Ltd
Publication of JP2016163566A publication Critical patent/JP2016163566A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6715027B2 publication Critical patent/JP6715027B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Edible Oils And Fats (AREA)
  • Bakery Products And Manufacturing Methods Therefor (AREA)

Description

本発明は、焼成後の保形性が良く、ザクザクとした食感があって、しかも、粉感がなく、香り立ちの良い焼き菓子を製造するための焼き菓子用粉末油脂組成物に関する。また、前記のごとき粉末油脂組成物を用いて製造した焼き菓子及びその製造方法にも関する。
焼き菓子とは、穀物粉、油脂、糖類を主原料とし、さらに必要に応じて、塩類、澱粉、乳製品、卵製品、イースト、酵素、膨張剤、食品添加物などを加えて生地を作り、これを成型して焼成した菓子のことである。焼き菓子の具体例としては、例えば、クッキー、ビスケット、クラッカー等を挙げることができるが、それぞれ固有の色合いや食感を有する。
焼き菓子の食感に着目すると、サクサク感のあるクラッカーや、硬くて噛み応えのあるハードビスケット、ソフトでしっとり感のあるソフトクッキーなど、消費者の嗜好に合わせて様々なものが存在している。しかしながら、近年、消費者の嗜好が多様化及び複雑化する中で、従来よく好まれていたサクサクとした食感よりも一層噛み応えのあるザクザクとした食感を有する焼き菓子も求められるようになってきている。
また、焼き菓子は外観の美しさも求められるため、形状が良くひび割れがないことも商品価値として重要な要素の1つである。そのため、従来よりもエッジが立って見た目にもきれいであり、成型時の形状を焼成後も十分によく保つ、保形性の良い焼き菓子も求められている。
そこで、焼き菓子の食感や保形性等を向上させるために、これまで様々な取組みが行われてきた。例えば、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉又はサツマイモ澱粉に難消化性澱粉を併用し、焼き菓子のさくさく感を改善し、同時に保形性を向上させる技術が知られている(特許文献1)。また、サゴ澱粉(特に加工サゴ澱粉)を用いて、焼成後の外観が美しい、すなわち、表面がなめらかで、焼き型又は絞り型の模様がくっきり出ている焼き菓子を得る技術が知られている(特許文献2)。さらに、デキストロース当量(DE)が25以下であり、糖重合度(DP)が20以上の糖類を20重量%以上含むデキストロースを用いて、サクサクとした食感を長時間維持し、さらに成形前の成形性と焼成後の保形性を向上させる技術が知られている(特許文献3)。加えて、穀物粉100部に対し、1〜7重量%のグリセリンを加え、焼成直後の水分値が10%未満となるようにして、ひび割れを生じにくくする技術が知られている(特許文献4)。
しかしながら、これらの技術はいずれも、特定の澱粉、デキストロース、グリセリンを用いるものであり、本発明のように粉末油脂を用いるものでない。焼き菓子の製造において、より簡便な方法で、所望の食感や保形性を達成する技術が求められていた。
特開2010−239893号公報 特開2004−290068号公報 特開2001−321084号公報 特開2010−104259号公報
本発明の課題は、焼成後の保形性が良く、ザクザクとした食感があって、しかも、粉感がなく、香り立ちの良い焼き菓子を製造するための焼き菓子用粉末油脂組成物を提供することである。
本発明者らは、焼成後の保形性が良く、ザクザクとした食感を有する焼き菓子の製造方法について鋭意研究を行った結果、意外にも特定の条件を満たす粉末油脂組成物を用いることによって、焼成後の保形性とザクザクとした食感が得られることを見出し、本発明を完成させた。さらに、このようにして得られた焼き菓子は、粉感がなく、香り立ちが良いことも見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の一態様によれば、次の(a)の条件を満たす粉末状の油脂組成物を含有する、焼き菓子用粉末油脂組成物を提供することができる。
(a)全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するXXX型トリグリセリドを65〜99質量%と、前記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換した1種以上のX2Y型トリグリセリドを35〜1質量%とを含有する油脂組成物であって、前記炭素数xは8〜20から選択される整数であり、前記炭素数yは、それぞれ独立して、x+2〜x+12から選択される整数でありかつy≦22である。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記XXX型トリグリセリドが80〜99質量%と、前記1種以上のX2Y型トリグリセリドの合計が20〜1質量%とを含有する、上記粉末油脂組成物を提供することができる。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記xが10〜18から選択される整数であり、前記yが、それぞれ独立して、x+2〜x+10から選択される整数でありかつy≦22である、上記粉末油脂組成物を提供することができる。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記xが10〜12から選択される整数であり、前記yが、それぞれ独立して、x+4〜x+8から選択される整数でありかつy≦22である、上記粉末油脂組成物を提供することができる。
また、本発明の好ましい態様によれば、ゆるめ嵩密度が0.1〜0.6g/cm3である、上記粉末油脂組成物を提供することができる。
さらに、本発明の一態様によれば、上記粉末油脂組成物を生地中に含有してなる、焼き菓子を提供することができる。
また、本発明の好ましい態様によれば、上記粉末油脂組成物を焼き菓子の生地中に1〜30質量%含有してなる、焼き菓子を提供することができる。
さらに、本発明の一態様によれば、上記粉末油脂組成物を生地中に配合する、焼き菓子の製造法を提供することができる。
また、本発明の好ましい態様によれば、上記粉末油脂組成物を焼き菓子の生地中に1〜30質量%配合する、焼き菓子の製造法を提供することができる。
さらに、本発明の一態様によれば、上記粉末油脂組成物を有効成分とする、焼き菓子用品質改良剤を提供することができる。
本発明によれば、特定の条件を満たす粉末油脂組成物を用いることによって、焼成後の保形性が良く、見た目にも美しい焼き菓子を得ることができる。また、ザクザクとした食感があるので、これまでになく噛み応えのある焼き菓子を提供することができる。しかも、粉感がなく、香り立ちの良い焼き菓子であるので、大変おいしい焼き菓子を提供することができる。また、驚くべきことに、本発明の焼き菓子は、舌にのせると独特の冷涼感もあるため、従来の焼き菓子では満足できなかった人々の需要に応えることができる。
以下、本発明の焼き菓子について順を追って記述する。
<焼き菓子>
本発明において「焼き菓子」とは、穀物粉、油脂、糖類を主原料として焼成されるものであれば特に限定されないが、例えば、クッキー(ロータリーモールドクッキー、ワイヤーカットクッキー、絞りクッキー等)、ビスケット、クラッカー、サブレ、パイ、ウエハース、スナック菓子等を挙げることができる。その中でも、油脂を多く含むことができる、クッキー、サブレ、パイなどが好ましい。
<油脂組成物>
本発明は、全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種類又はそれ以上のXXX型トリグリセリドを65〜99質量%と、前記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換した1種以上のX2Y型トリグリセリドを35〜1質量%とを含有する油脂組成物であって、前記炭素数xは8〜20から選択される整数であり、前記炭素数yは、それぞれ独立して、x+2〜x+12から選択される整数でありかつy≦22である条件から選ばれる、油脂組成物に関する。上記2種類のトリグリセリドを上記質量%にて含む当該油脂組成物は、乳化剤、賦形剤等の添加剤を含めることなく、容易に粉末状の油脂組成物となる。本発明の油脂組成物及び粉末油脂組成物については、先に出願したPCT/JP2015/070850(特願2014−149168号)において詳しく説明されているので、ここでは詳細を割愛する。なお、前記出願の内容は、本明細書の中に取り込まれる。以下、本発明の油脂組成物及び粉末油脂組成物の特徴を要約して説明する。
<XXX型トリグリセリド>
本発明の油脂組成物は、全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、その含有量が65〜99質量%である、単一種又は複数種、好ましくは単一種(1種類)のXXX型トリグリセリドを含む。当該XXX型トリグリセリドは、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するトリグリセリドであり、各脂肪酸残基Xは互いに同一である。ここで、当該炭素数xは8〜20から選択される整数であり、好ましくは10〜18から選択される整数、より好ましくは10〜16から選択される整数、更に好ましくは10〜12から選択される整数である。
脂肪酸残基Xは、飽和あるいは不飽和の脂肪酸残基であってもよい。具体的な脂肪酸残基Xとしては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びアラキジン酸等の残基が挙げられるがこれに限定するものではない。脂肪酸としてより好ましくは、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸であり、さらに好ましくは、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸及びパルミチン酸であり、殊更好ましくは、カプリン酸及びラウリン酸である。
XXX型トリグリセリドは、油脂組成物中の全トリグリセリドを100質量%とした場合、65〜99質量%含まれる。XXX型トリグリセリドの含有量として好ましくは、75〜99質量%であり、より好ましくは80〜99質量%であり、更に好ましくは83〜98質量%であり、特に好ましくは85〜98質量%であり、殊更好ましくは90〜98質量%である。
<X2Y型トリグリセリド>
本発明の油脂組成物は、上記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換したX2Y型トリグリセリドを1種以上含む。ここで、1つのX2Y型トリグリセリドに含まれる各脂肪酸残基Xは互いに同一であり、かつXXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xとも同一である。当該1つのX2Y型トリグリセリドに含まれる脂肪酸残基Yの炭素数yはx+2〜x+12でありかつy≦22である条件から選ばれる整数である。炭素数yは、好ましくはy=x+2〜x+10を満たし、より好ましくはy=x+4〜x+8を満たす条件から選ばれる整数である。また、炭素数yの上限値は、好ましくはy≦20であり、より好ましくはy≦18である。本発明の油脂組成物は複数、例えば、2種類〜5種類、好ましくは3〜4種類のX2Y型トリグリセリドを含んでいてもよく、その場合の各X2Y型トリグリセリドの定義は上述の通りである。各X2Y型トリグリセリドの脂肪酸残基Yの炭素数yは、上述の範囲内から、各X2Y型トリグリセリドごとにそれぞれ独立して選択される。例えば、本発明の油脂組成物を、トリカプリンとパーム核ステアリン極度硬化油とをエステル交換して製造する場合は、xは共通してx=10であるが、yはそれぞれy=12、14、16及び18である4種類のX2Y型トリグリセリドを含む。
脂肪酸残基Yは、飽和あるいは不飽和の脂肪酸残基であってもよい。具体的な脂肪酸残基Yとしては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸及びベヘン酸等の残基が挙げられるがこれに限定するものではない。脂肪酸としてより好ましくは、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸及びベヘン酸であり、さらに好ましくは、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸である。
このX2Y型トリグリセリドの脂肪酸残基Yは、1位〜3位の何れに配置していてもよい。
X2Y型トリグリセリドは、油脂組成物中の全トリグリセリドを100質量%とした場合、35〜1質量%含まれる。X2Y型トリグリセリドの含有量としては、例えば、25〜1質量%であり、好ましくは20〜1質量%であり、より好ましくは17〜1質量%であり、更に好ましくは15〜2質量%であり、殊更好ましくは10〜2質量%である。本発明の油脂組成物に複数のX2Y型トリグリセリドが含まれる場合、上記X2Y型トリグリセリドの量は、含まれるX2Y型トリグリセリドの合計量である。
<その他のトリグリセリド>
本発明の油脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、上記XXX型トリグリセリド及びX2Y型トリグリセリド以外の、その他のトリグリセリドを含んでいてもよい。その他のトリグリセリドは、複数の種類のトリグリセリドであってもよく、合成油脂であっても天然油脂であってもよい。合成油脂としては、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル等が挙げられる。天然油脂としては、例えば、ココアバター、ヒマワリ油、菜種油、大豆油、綿実油等が挙げられる。本発明の油脂組成物中の全トリグリセリドを100質量%とした場合、その他のトリグリセリドは、1質量%以上、例えば、5〜30質量%程度含まれていても問題はない。その他のトリグリセリドの含有量は、例えば、0〜30質量%、好ましくは0〜18質量%、より好ましくは0〜15質量%、更に好ましくは0〜8質量%である。
<その他の成分>
本発明の油脂組成物は、上記トリグリセリドの他、任意に乳化剤、香料、脱脂粉乳、全脂粉乳、ココアパウダー、砂糖、デキストリン等のその他の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、油脂組成物の全質量を100質量%とした場合、0〜70質量%、好ましくは0〜65質量%、より好ましくは0〜30質量%である。その他成分は、その90質量%以上が、平均粒径が1000μm以下である紛体であることが好ましく、平均粒径が500μm以下の紛体であることがより好ましい。なお、ここでいう平均粒径は、レーザー回折散乱法(ISO133201及びISO9276-1)によって測定した値である。
但し、本発明の好ましい油脂組成物は、実質的に油脂のみからなることが好ましい。ここで油脂とは、実質的にトリグリセリドのみからなるものである。また、「実質的に」とは、油脂組成物中に含まれる油脂以外の成分または油脂中に含まれるトリグリセリド以外の成分が、油脂組成物または油脂を100質量%とした場合、例えば、0〜15質量%、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%であることを意味する。
<粉末油脂組成物>
本発明の粉末油脂組成物は、上記油脂組成物中に含まれるトリグリセリドを融解して溶融状態の上記油脂組成物を得、この油脂組成物を冷却することにより、噴霧やミル等の粉砕機による機械粉砕等特別の加工手段を採らなくても、粉末状の油脂組成物(粉末油脂組成物)を得ることができる。より具体的には、上記XXX型トリグリセリドと上記X2Y型トリグリセリドを含有する油脂組成物を任意に加熱・融解して溶融状態の油脂組成物を得、その後冷却して溶融状態の油脂組成物よりも体積が増加した空隙を有する固形物を形成する。得られた該固形物を篩にかける等により外部より軽く衝撃を加えて粉砕する(ほぐす)ことで容易に粉末油脂組成物を得ることができる。
<粉末油脂組成物の物性>
本発明の粉末油脂組成物は、常温(20℃)で粉末状の固体である。
本発明の粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度は、例えば実質的に油脂のみからなる場合、0.1〜0.6g/cm3、好ましくは0.15〜0.5g/cm3であり、より好ましくは0.2〜0.4g/cm3である。ここで「ゆるめ嵩密度」とは、粉体を自然落下させた状態の充填密度である。ゆるめ嵩密度(g/cm3)の測定は、例えば、内径15mm×25mLのメスシリンダーに、当該メスシリンダーの上部開口端から2cm程度上方から粉末油脂組成物の適量を落下させて疎充填し、充填された質量(g)の測定と容量(mL)の読み取りを行い、mL当たりの当該粉末油脂組成物の質量(g)を算出することで求めることができる。また、ゆるめ嵩密度は、(株)蔵持科学器械製作所のカサ比重測定器を使用し、JIS K-6720(又はISO 1060-1及び2)に基づいて測定したカサ比重から算出することもできる。具体的には、試料120mLを、受器(内径40mm×高さ85mmの100mL円柱形容器)の上部開口部から38mmの高さの位置から、該受器に落とす。受器から盛り上がった試料はすり落とし、受器の内容積(100mL)分の試料の質量(Ag)を秤量し、以下の式からゆるめ嵩密度を求めることができる。
ゆるめ嵩密度(g/mL)=A(g)/100(mL)
測定は3回行ってその平均値を取ることが好ましい。
<粉末油脂組成物の製造方法>
本発明の粉末油脂組成物は、以下の工程、
(a)全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するXXX型トリグリセリドを65〜99質量%と、前記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換したX2Y型トリグリセリドを35〜1質量%とを含有する油脂組成物であって、前記炭素数xは8〜20から選択される整数であり、前記炭素数yは、それぞれ独立して、x+2〜x+12から選択される整数でありかつy≦22である、油脂組成物を調製する工程、
(b)前記油脂組成物を加熱し、前記油脂組成物中に含まれるトリグリセリドを融解して溶融状態の前記油脂組成物を得る任意の工程、
(d)溶融状態の前記油脂組成物を冷却して粉末油脂組成物を得る工程、
を含む方法によって製造することができる。
また、上記工程(b)と(d)の間に、工程(c)として粉末生成を促進するための任意工程、例えば(c1)シーディング工程、(c2)テンパリング工程、及び/又は(c3)予備冷却工程を含んでいてもよい。さらに上記工程(d)で得られる粉末油脂組成物は、工程(d)の冷却後に得られる固形物を粉砕して粉末状の油脂組成物を得る工程(e)によって得られるものであってもよい。
(a)油脂組成物の調製工程I
工程(a)で調製される油脂組成物は、上述したとおりのXXX型トリグリセリド(1種類又はそれ以上)とX2Y型トリグリセリド(1種類又はそれ以上)とを、上述した質量%で含有するものである。具体的には、例えば、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するXXX型トリグリセリド(1種類又はそれ以上)と、1位〜3位に炭素数yの脂肪酸残基Yを有するYYY型トリグリセリド(1種類又はそれ以上)とを別々に入手し、XXX型トリグリセリド/YYY型トリグリセリドの質量比で90/10〜99/1にて混合して反応基質を得(ここで、前記炭素数xは8〜20から選択される整数であり、前記炭素数yはx+2〜x+12から選択される整数でありかつy≦22である)、前記反応基質を加熱し、触媒の存在下でエステル交換反応する工程を経て得られる。
(a)油脂組成物の調製工程II
本発明の工程(a)で調製される油脂組成物の製造方法としては、さらに以下に示すようなXXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドを同時かつ直接合成する方法を挙げることができる。すなわち、本調製工程IIは、XXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドを得るために、XXX型トリグリセリドとYYY型トリグリセリドとを別々に合成してエステル交換するということはせず、双方のトリグリセリドを製造するための原料(脂肪酸または脂肪酸誘導体とグリセリン)を、例えば単一の反応容器に投入し、同時かつ直接合成する。
(a)油脂組成物の調製工程III
油脂組成物は、さらに65〜99質量%の範囲外にあるXXX型トリグリセリド及び/または35〜1質量%の範囲外にあるX2Y型トリグリセリドを含む油脂組成物を調製した後、XXX型トリグリセリド又はX2Y型トリグリセリドを更に添加することによって65〜99質量%のXXX型トリグリセリドと35〜1質量%のX2Y型トリグリセリドとを含む油脂組成物を得てもよい(希釈による油脂組成物の調製)。例えば、50〜70質量%のXXX型トリグリセリドと50〜30質量%のX2Y型トリグリセリドとを含む油脂組成物を得た後、所望量のXXX型トリグリセリドを添加して65〜99質量%のXXX型トリグリセリドと35〜1質量%のX2Y型トリグリセリドとを含む油脂組成物を得てもよい。
(b)溶融状態の前記油脂組成物を得る工程
上記(d)工程の前に、上記工程(a)で得られた油脂組成物は、調製された時点で溶融状態にある場合、加熱せずにそのまま冷却されるが、得られた時点で溶融状態にない場合は、任意に加熱され、該油脂組成物中に含まれるトリグリセリドを融解して溶融状態の油脂組成物を得る。
ここで、油脂組成物の加熱は、上記油脂組成物中に含まれるトリグリセリドの融点以上の温度、特にXXX型トリグリセリド及びX2Y型トリグリセリドを融解できる温度、例えば、70〜200℃、好ましくは、75〜150℃、より好ましくは80〜100℃であることが適当である。また、加熱は、例えば、0.5〜3時間、好ましくは、0.5〜2時間、より好ましくは0.5〜1時間継続することが適当である。
(d)溶融状態の油脂組成物を冷却して粉末油脂組成物を得る工程
上記工程(a)又は(b)で得られた溶融状態の油脂組成物は、さらに冷却されて粉末油脂組成物を形成する。
ここで、「溶融状態の油脂組成物を冷却」とは、溶融状態の油脂組成物を、当該油脂組成物の融点より低い温度に保つことを意味する。「油脂組成物の融点より低い温度」とは、例えば、当該融点より1〜30℃低い温度、好ましくは当該融点より1〜20℃低い温度、より好ましくは当該融点より1〜15℃低い温度である。溶融状態にある油脂組成物の冷却は、例えばxが8〜10のときは最終温度が、好ましくは10〜30℃、より好ましくは15〜25℃、更に好ましくは18〜22℃の温度になるように冷却することによって行われる。冷却における最終温度は、例えばxが11又は12のときは、好ましくは30〜40℃、より好ましくは32〜38℃、更に好ましくは33〜37℃であり、xが13又は14のときは、好ましくは40〜50℃、より好ましくは42〜48℃、更に好ましくは44〜47℃であり、xが15又は16のときは、好ましくは50〜60℃、より好ましくは52〜58℃、更に好ましくは54〜57℃であり、xが17又は18のときは、好ましくは60〜70℃、より好ましくは62〜68℃、更に好ましくは64〜67℃であり、xが19又は20のときは、好ましくは70〜80℃、より好ましくは72〜78℃、更に好ましくは74〜77℃である。上記最終温度において、例えば、好ましくは2時間以上、より好ましくは4時間以上、更に好ましくは6時間〜2日間静置することが適当である。場合によっては、例えばXXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの炭素数xが8〜12の場合など、比較的粉体化に時間を要するものは、特に以下の(c)工程を使用しない場合、例えば2〜8日間、具体的には3〜7日間、より具体的には約6日間静置しなければならない場合もある。
(c)粉末生成促進工程
さらに、上記工程(a)又は(b)と(d)との間に、(c)粉末生成を促進するための任意工程として、工程(d)で使用する溶融状態の油脂組成物に対し、シーディング法(c1)、テンパリング法(c2)及び/又は(c3)予備冷却法による処理を行ってもよい。
ここで、シーディング法とは、粉末の核(種)となる成分を溶融状態にある油脂組成物の冷却時に少量添加して、粉末化を促進する方法である。具体的には、例えば、工程(b)で得られた溶融状態にある油脂組成物に、当該油脂組成物中のXXX型トリグリセリドと炭素数が同じXXX型トリグリセリドを好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含む油脂粉末を核(種)となる成分として準備する。この核となる油脂粉末を、溶融状態にある油脂組成物の冷却時、当該油脂組成物の温度が、例えば、最終冷却温度±0〜+10℃、好ましくは+5〜+10℃の温度に到達した時点で、当該溶融状態にある油脂組成物100質量部に対して0.1〜1質量部、好ましくは0.2〜0.8質量部添加することにより、油脂組成物の粉末化を促進する方法である。
テンパリング法とは、溶融状態にある油脂組成物の冷却において、最終冷却温度で静置する前に一度、工程(d)の冷却温度よりも低い温度、例えば5〜20℃低い温度、好ましくは7〜15℃低い温度、より好ましくは10℃程度低い温度に、好ましくは10〜120分間、より好ましくは30〜90分間程度冷却することにより、油脂組成物の粉末化を促進する方法である。
(c3)予備冷却法とは、前記工程(a)又は(b)で得られた溶融状態の油脂組成物を、工程(d)にて冷却する前に、工程(a)又は(b)の溶融状態の温度よりも低く、工程(d)の冷却温度よりも高い温度で一旦予備冷却する方法である。工程(d)の冷却温度より高い温度とは、例えば、工程(d)の冷却温度よりも2〜40℃高い温度、好ましくは3〜30℃高い温度、より好ましくは4〜30℃高い温度、さらに好ましくは5〜10℃程度高い温度であり得る。前記予備冷却する温度を低く設定すればするほど、工程(d)の冷却温度における本冷却時間を短くすることができる。すなわち、予備冷却法とは、シーディング法やテンパリング法と異なり、冷却温度を段階的に下げるだけで油脂組成物の粉末化を促進できる方法であり、工業的に製造する場合に利点が大きい。
(e)固形物を粉砕して粉末油脂組成物を得る工程
上記工程(d)の冷却によって粉末油脂組成物を得る工程は、より具体的には、工程(d)の冷却によって得られる固形物を粉砕して粉末油脂組成物を得る工程(e)によって行われてもよい。
詳細に説明すると、まず、上記XXX型トリグリセリドと上記X2Y型トリグリセリドを含有する油脂組成物を融解して溶融状態の油脂組成物を得、その後冷却して溶融状態の油脂組成物よりも体積が増加した空隙を有する固形物を形成する。空隙を有する固形物となった油脂組成物は、軽い衝撃を加えることで粉砕でき、固形物が容易に崩壊して粉末状となる。
ここで、軽い衝撃を加える手段は特に特定されないが、振る、篩に掛ける等により、軽く振動(衝撃)を与えて粉砕する(ほぐす)方法が、簡便で好ましい。
<粉末油脂組成物に含まれるその他の成分>
本発明の粉末油脂組成物は、任意に乳化剤、タンパク質、澱粉、酸化防止剤等のその他の成分を含んでいてもよい。例えば、粉末油脂組成物に対し、乳化作用のあるものを加えることによって、粉末油脂組成物の水系への分散性を向上させることができる。これらその他の成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、粉末油脂組成物の全質量を100質量%とした場合、0〜70質量%、好ましくは0〜65質量%、より好ましくは0〜30質量%である。
但し、本発明の好ましい粉末油脂組成物は、実質的に油脂のみからなることが好ましい。ここで油脂とは、実質的にトリグリセリドのみからなるものである。また、「実質的に」とは、粉末油脂組成物中に含まれる油脂以外の成分または油脂中に含まれるトリグリセリド以外の成分が、油脂組成物または油脂を100質量%とした場合、例えば、0〜15質量%、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%であることを意味する。
<粉末油脂組成物の含有量>
本発明の焼き菓子には、焼き菓子の生地の全質量を100質量%とした場合、焼き菓子生地中に上記粉末油脂組成物を1〜30質量%となるように含有させる。より好ましくは2〜20質量%、さらに好ましくは5〜15質量%となるように含有させる。
上記粉末油脂組成物が30質量%を超えると、生地のまとまりが悪くなり、成型が難しくなるとともに、食味が悪くなってしまう。一方、上記粉末油脂組成物が1質量%よりも少ないと、所望の効果が得られない。
また、粉末油脂組成物の含有量は、本発明の焼き菓子の生地ではなく、穀物粉に対する割合として表現することもできる。つまり、生地中の穀物粉の全質量を100質量%とした場合、本発明の粉末油脂組成物を10〜50質量%となるように含有させる。より好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは15〜30質量%となるように含有させる。
なお、上記粉末油脂組成物は焼き菓子の製造過程で溶けてしまうので、上記粉末油脂組成物に代えて、溶融状態の上記油脂組成物を加えることも可能である。当該油脂組成物の含有量は上記粉末油脂組成物で定義したのと同様である。
<焼き菓子に含まれる穀物粉>
本発明の「穀物粉」としては、強力粉、中力粉、薄力粉、小麦全粒粉、玄米粉、ライ麦粉、とうもろこし粉、及び米粉等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。焼き菓子に自然な食感を持たせるためには、食物繊維含量が4質量%より少ない穀物粉、例えば、強力粉、中力粉、薄力粉などが好ましい。
焼き菓子の生地中の穀物粉の量は、好ましくは1〜70質量%であり、より好ましくは20〜60質量%であり、さらに好ましくは30〜50質量%である。
<焼き菓子に含まれる食用油脂>
本発明の焼き菓子は、上記粉末油脂組成物のほか、任意に食用油脂を含むことができる。このような食用油脂としては、例えば、食用油、マーガリン、ファットスプレッド、及びショートニングなどが挙げられ、これらの一種又は2種以上を併用することができる。前記油性食品の原料としては、例えば、ヤシ油、パーム核油、パーム油、パーム分別油(パームオレイン、パームスーパーオレイン等)、シア脂、シア分別油、サル脂、サル分別油、イリッペ脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、乳脂、ココアバター等やこれらの混合油、加工油脂等を使用することができる。これら油性食品の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができる。
焼き菓子の生地中の食用油脂の量は、上記粉末油脂組成物と合わせて、3〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることがさらに好ましい。
<焼き菓子に含まれる糖類>
本発明の焼き菓子は、上記粉末油脂組成物、穀物粉、食用油脂のほか、任意に糖類を含むことができる。本発明の「糖類」としては、その性状から大別して、粉末状糖類と液状糖類の2種類がある。そして、粉末状糖類としては、例えば、果糖、ブドウ糖等の粉末状単糖類、ショ糖、麦芽糖、乳糖等の粉末状二糖類、粉末トレハロース及び粉末状糖アルコール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
また、液状糖類としては、例えば、液状ソルビトール、液状マルチトール、還元水あめ等の液状糖アルコールや、ブドウ糖液糖、果糖・ブドウ糖液糖、及びブドウ糖・果糖液糖等の転化型液糖、ショ糖型液糖、並びに液状トレハロース等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。これらの糖類は市販品を使用することができる。
焼き菓子の生地中の糖類の量は、好ましくは5〜30質量%であり、より好ましくは10〜30質量%であり、さらに好ましくは10〜20質量%である。
<焼き菓子に含まれるその他の成分>
本発明の焼き菓子は、焼き菓子の製造において一般的に配合される原料を任意に使用することができる。例えば、ココアパウダー、チョコレート、チョコチップ、キャラメル、チーズ、ナッツ類、及びはちみつ並びにこれらの加工品、コーン澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉及び各種加工澱粉等の澱粉、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、モノグリセリド及び有機酸モノグリセリド等の乳化剤、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンE及びビタミンC等のビタミン類、全脂粉乳、脱脂粉乳、乳パウダー、クリーミングパウダー、デキストリン、オリザノール、鉄分、カルシウム、レシチン、コエンザイムQ、酵母エキス、アミノ酸、卵殻パウダー、レモン砂糖洋酒漬け等の各種果実、乾燥果実、乾燥野菜、フライ果実、フライ野菜、食塩やシーズニング等の各種調味料、増粘多糖類、香料、水、牛乳、豆乳、果汁、及び野菜汁等を配合することができる。
<焼き菓子の製造方法>
本発明のクリーム類は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、オーブン等による焼成調理、電子レンジ等によるマイクロ波調理、過熱水蒸気調理等を用いることが挙げられる。また、本発明の焼き菓子は、従来公知の方法に、上記粉末油脂組成物を配合することにより製造することができる。具体的には、まず、穀物粉に、上記粉末油脂組成物及びその他の原料を添加し、適宜の手段で混合し、生地を調製する。続いて、得られた生地を成形し、焼成して製造する。
<焼き菓子用品質改良剤>
ところで、以上述べたように、本発明に用いる粉末油脂組成物は、従来の焼き菓子を、焼成後の保形性が良く、ザクザクとした食感があって、しかも、粉感がなく、香り立ちの良いものへ改良するから、本発明は、上記粉末油脂組成物を有効成分とする、焼き菓子用の品質改良剤にも関する。以下に示すように、本発明の焼き菓子用品質改良剤を従来の焼き菓子の原料へ配合することにより、焼成後の保形性が良く、ザクザクとした食感があって、しかも、粉感がなく、香り立ちの良いものへ変更する品質改良効果を達成することができる。
本発明の焼き菓子用品質改良剤は、上述の粉末油脂組成物を含有する。本発明の焼き菓子用品質改良剤は、少量で効果を発揮するため、上記の粉末油脂組成物を、好ましくは60質量%以上含有し、より好ましくは80質量%以上含有し、さらに好ましくは100質量%以上含有する。
また、本発明の焼き菓子用品質改良剤は、有効成分であると上述した粉末油脂組成物を含有したものであればよく、この他に本発明の効果を損なわない範囲で、大豆油、菜種油などの油脂、デキストリン、澱粉等の賦形剤、品質改良剤等の他の成分を含有させたものであってもよい。
但し、本発明の好ましい焼き菓子用品質改良剤は、実質的に当該粉末油脂組成物のみからなることが好ましい。また「実質的に」とは、焼き菓子用品質改良剤中に含まれる粉末油脂組成物以外の成分が、焼き菓子用品質改良剤を100質量%とした場合、例えば、0〜15質量%、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%であることを意味する。
次に、実施例および比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。また。以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。
<原料油脂>
(1)粉末油脂組成物(融点約28℃):
〔x=10、y=18、テンパリング法〕
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.1g(0.479mol)と、ステアリン酸(Palmac98−18(アシッドケム社製))25.9g(0.091mol)とカプリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))266.0g(1.544mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を245g得た(XXX型:80.6質量%、X2Y型:17.3質量%)。得られた反応物60gとトリカプリン(日清オイリオグループ株式会社製)140gを混合し原料油脂とした(XXX型:94.0質量%、X2Y型:5.2質量%)。原料油脂を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、10℃恒温槽にて1時間冷却した後、20℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm3、平均粒径116μm)。このようにして製造した粉末油脂組成物を以下の実施例で用いた。
ここで、ゆるめ嵩密度は、(株)蔵持科学器械製作所のカサ比重測定器を使用し、JIS K-6720(又はISO 1060-1及び2)に基づいて測定したカサ比重から算出した。具体的には、試料120mLを、受器(内径40mm×高さ85mmの100mL円柱形容器)の上部開口部から38mmの高さの位置から、該受器に落とした。続いて、受器から盛り上がった試料をすり落とし、受器の内容積(100mL)分の試料の質量(Ag)を秤量し、以下の式からゆるめ嵩密度を求めた。
ゆるめ嵩密度(g/mL)=A(g)/100(mL)
測定は3回行って、その平均値を測定値とした。
ここで、平均粒径は、日機装株式会社製 Microtrac MT3300ExII)でレーザー回折散乱法(ISO133201、ISO9276-1)に基づいて測定した。
<その他の原材料>
下記実施例における、上白糖、全卵、薄力粉、ベーキングパウダーはいずれも市販されているものを用いた。また、マーガリンとして、日清ベジバタ300(業務用:日清オイリオグループ株式会社製)を用いた。
[実施例1]
<クッキーの製造>
下記表1の配合に従って、実施例1、比較例1のクッキーを、常法に従って製造した。より具体的には、室温に戻したマーガリンに上白糖を混合し、全卵を少しずつ加え、さらに混合した。次に、合わせて篩った薄力粉、ベーキングパウダー、粉末油脂組成物を加え、良く混合し、生地を調製した。生地を冷蔵庫に一晩休ませた後に、5mm厚となるように生地を伸ばし、直径5cmの花型で型抜きし、上火が180℃であり、下火が160℃であるオーブンで13分間焼成した。
Figure 0006715027
<焼き菓子の評価>
上記で製造した、実施例1、比較例1の焼き菓子について、以下の評価方法に従って評価した。
<焼き菓子の評価方法>
(1)保形性の評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した。なお、焼成直後に、目視観察により評価した。
○:エッジが立っており、きれいな花型ができている
△:エッジにややダレがみられ、きれいな花型ができていない
×:花型がひび割れ又は崩れており、保形性は不良
(2)食感の評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した。なお、製造後、20℃で1日保存後に喫食して評価した。
○:ザクザクとした噛み応えのある食感が楽しめる
△:ザクザクとした食感が弱く、噛み応えに欠ける
×:ザクザクというよりもサクサクとした食感であり、噛み応えがない
(3)粉感の評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した。なお、製造後、20℃で1日保存後に喫食して評価した。
○:口の中で粉感を全く感じない
△:口の中で粉感をやや感じる
×:口の中で粉感を感じる
(4)香り立ちの評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した。なお、製造後、20℃で1日保存後に嗅覚で評価した。
○:焼き菓子特有の香ばしい香りが立って風味が良い
△:焼き菓子特有の香ばしい香りが弱く、やや風味の良さに欠ける
×:焼き菓子特有の香ばしい香りが立っておらず、風味が悪い
(1)冷涼感の評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した。
○:冷涼感を感じる
△:冷涼感をやや感じる
×:冷涼感を感じない
表1の結果から明らかであるように、本発明の粉末油脂組成物を用いて製造したクッキー(実施例1)は、焼成後の保形性が良く、エッジが立っていた。また、ザクザクとした食感があって、しかも、粉感がなく、香り立ちの良いものとなることがわかった。ザクザクとした噛み応えのある面白い食感だけでなく、見た目にも美しい焼き菓子を簡便に得ることができた。他方、本発明の粉末油脂組成物を用いずに製造したクッキー(比較例1)は、エッジ(縁)にダレが見られ、形状が良くなく、焼成直後の保形性が実施例1よりも劣っていた。食感もサクサクとしたものであり、ザクザクとした噛み応えのある食感とは程遠かった。また、口の中で粉感も感じられ、焼き菓子特有の香ばしい香りが実施例1よりも明らかに劣っていた。さらに、実施例1のクッキーは、独特の冷涼感があり、面白い嗜好性を有していることもわかった。

Claims (7)

  1. 以下の(a)の条件を満たす粉末状の油脂組成物を含有する、焼き菓子用粉末油脂組成物。
    (a)全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1位〜3位に炭素数xの飽和の脂肪酸残基Xを有するXXX型トリグリセリドを90〜98質量%と、前記XXX型トリグリセリドの飽和の脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの飽和の脂肪酸残基Yに置換した1種以上のX2Y型トリグリセリドを10〜2質量%とを含有する油脂組成物であって、前記炭素数xは10及び12から選択される整数であり、前記炭素数yは、それぞれ独立して、x+4〜x+8から選択される整数でありかつy≦22である。
  2. ゆるめ嵩密度が0.1〜0.6g/cm3である、請求項に記載の粉末油脂組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の粉末油脂組成物を焼き菓子の生地中に含有してなる、焼き菓子。
  4. 前記粉末油脂組成物を焼き菓子の生地中に1〜30質量%含有してなる、請求項に記載の焼き菓子。
  5. 請求項1又は2に記載の粉末油脂組成物を生地中に配合する、焼き菓子の製造法。
  6. 前記粉末油脂組成物を焼き菓子の生地中に1〜30質量%配合する、請求項に記載の焼き菓子の製造法。
  7. 請求項1又は2に記載の粉末油脂組成物を有効成分とする、焼き菓子用品質改良剤。
JP2016032948A 2015-02-26 2016-02-24 焼き菓子用粉末油脂組成物 Active JP6715027B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015035957 2015-02-26
JP2015035957 2015-02-26

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016163566A JP2016163566A (ja) 2016-09-08
JP6715027B2 true JP6715027B2 (ja) 2020-07-01

Family

ID=56875764

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016032948A Active JP6715027B2 (ja) 2015-02-26 2016-02-24 焼き菓子用粉末油脂組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6715027B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018056415A1 (ja) * 2016-09-23 2018-03-29 日清オイリオグループ株式会社 粉末油脂含有接着性組成物及びその製造方法
JP2020018177A (ja) * 2018-07-30 2020-02-06 ミヨシ油脂株式会社 焼き菓子練り込み用油脂組成物、焼き菓子の製造方法、焼き菓子の外観性の向上方法
JP7383335B2 (ja) * 2019-07-01 2023-11-20 日清オイリオグループ株式会社 ベーカリー食品用生地及びベーカリー食品

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3930140B2 (ja) * 1998-03-20 2007-06-13 長谷川香料株式会社 粉末油脂組成物
JP2000093071A (ja) * 1998-09-28 2000-04-04 Fuji Oil Co Ltd 焼成スナック菓子の製造方法
JP4627513B2 (ja) * 2006-04-27 2011-02-09 ミヨシ油脂株式会社 粉末油脂

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016163566A (ja) 2016-09-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6571754B2 (ja) クリーム類用粉末油脂組成物
JPWO2016136807A1 (ja) 粉末チョコレート
JP4985165B2 (ja) 被覆チョコレート用油脂組成物
JP6715027B2 (ja) 焼き菓子用粉末油脂組成物
JP6279144B2 (ja) 冷感付与剤、及び食品に冷感を付与する方法
WO2018174203A1 (ja) 製菓製パン用粉末油脂組成物
JP6075731B2 (ja) 焼き菓子
JP6639948B2 (ja) ケーキ類用粉末油脂組成物
JP6762649B2 (ja) 焼きベーカリー製品用粉末油脂組成物
JP6762653B2 (ja) 水産練り製品用粉末油脂組成物
JP6715011B2 (ja) 上掛け生地用粉末油脂組成物
JP6599246B2 (ja) フライバッター液用粉末油脂組成物
JP6595350B2 (ja) 麺皮用粉末油脂組成物
JP6599247B2 (ja) ノンフライ揚げ物用粉末油脂組成物
JP6762652B2 (ja) パン類用粉末油脂組成物
JP2017127254A (ja) スープ類又はソース類用粉末油脂組成物
JP2016082881A (ja) 可塑性油脂組成物
JP6595351B2 (ja) 餅類用粉末油脂組成物
JP7041573B2 (ja) 焼チョコレート様菓子およびその製造方法
JP6257739B2 (ja) 焼菓子中の油分を高油分にする方法
JP2017127249A (ja) 麺類用粉末油脂組成物
BE1024698B1 (nl) Bakstabiele vullingen
JP2021094012A (ja) 焼き菓子用油脂組成物
JP2020145950A (ja) 菓子用穀粉組成物及び菓子の製造方法
JP2020018177A (ja) 焼き菓子練り込み用油脂組成物、焼き菓子の製造方法、焼き菓子の外観性の向上方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180828

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190619

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190702

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190808

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20200107

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200403

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20200413

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200602

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200608

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6715027

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250