JP6714381B2 - 光導波路型デバイス - Google Patents

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Description

本発明は、光導波路型デバイスの基板に挿入された薄膜素子を持つ光回路およびそれを用いて実現する光デバイスに関する。
スマートフォン・携帯型タブレット端末などの爆発的普及や、映像配信サービスの開始を背景として、光ネットワークの伝送容量増大への要求が日増しに高まっている。光通信技術はこの要求に対応してさらに発展することが求められており、光通信システムで使用される部品の小型化、低コスト化を実現する技術が益々重要となっている。光通信システム用の部品を実現するのに重要な役割を果たしてきた技術として、導波路型デバイスが挙げられる。導波路型デバイスでは、光の干渉原理を応用することによって、光信号の分岐結合器、波長合分波器、インターリーブフィルタ、光スイッチ、可変光減衰器(VOA:Variable Optical Attenuator)などさまざまな基本的機能が実現されている。これらデバイスは導波路型の構造を持つことから、回路設計に柔軟性があり、大規模化かつ高集積化が容易であるという特徴を持つ。さらに、導波路型デバイスはLSIなどの半導体部品製造プロセスを流用して製造されるため、量産性に優れたデバイスとしても大きく期待されている。導波路部分の材料としては、半導体や高分子材料などさまざまなものが実用化されている。特に、シリコン基板上に作製された石英系光導波路は、低損失であって安定性および光ファイバとの整合性に優れるといった特徴を持っており、実用化が最も進んだ導波路型デバイスの一つである。
上述の光ネットワークの伝送容量増大の要求に応えるため、デジタルコヒーレント光伝送技術が普及してきている。導波路型デバイスを用いて構成される光通信用部品の中で、デジタルコヒーレント光伝送に用いられる光送受信器がとりわけ着目される。この光送受信器は、波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)された光信号において、1波長当たりの伝送レートが100Gb/sの高速動作を実現するに至っている。
デジタルコヒーレント光伝送技術において主に用いられる光信号変調方式は、位相変調である。具体的には、位相シフトキーイング(PSK:Phase Shift Keying)、または、強度変調と組み合わせられた位相変調方式である直角位相振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)方式が用いられている。さらにデジタルコヒーレント光伝送技術では、位相変調に加えて、位相変調された複数の光信号を直交する2つの光偏波によって多重化する偏波多重方式を組み合わせることによって、上述の高速の伝送レートを実現している。
デジタルコヒーレント光伝送システムにおける光受信器は、そのフロントエンドに光信号のままで信号処理を行う光干渉回路を備えている。光干渉回路から得られた干渉光を受光素子(PD:Photo Detector)によって検出して電気信号に変換し、受信信号が得られる。光干渉回路からの受信信号は、さらに後続のデジタル信号処理を経て、偏波多重された位相変調信号の復調が実現される。
上述の光干渉回路には光導波路型デバイスが広く用いられており、信号光の光強度を調整するVOA、信号光の偏波を分離する偏波ビームスプリッタ(PBS:Polarization Beam Splitter)、信号光または局発光の偏波を回転する偏波ローテータ(偏波回転器)、信号光および局発光の間の干渉によって位相差を検波する90度ハイブリッドなどの基本的な機能要素から構成される。取り分け、石英系光導波路を用いた光導波路型デバイスは一般に平面光波回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)とも呼ばれる。今後のさらなるデジタルコヒーレント光伝送システムの普及および大容量化を実現するにあたって、PLCを含む光受信器は鍵になる部品となっている。
図1は、PLCによって構成された従来技術の光受信器における光干渉回路の構成を示した図であって、光干渉回路が構成されたシリコン基板の基板面を見た上面図である。ここではその詳細な動作説明は省略するが、図1では光干渉回路の異なる機能を実現する光導波路型デバイスの各機能要素の外形に概ねしたがって描かれている。光受信器100は、主な機能要素として、VOA15、PBS12、偏波ローテータ13、90度ハイブリッド16a、16bなどを備えている。さらに、信号光の入力導波路11、局部光の入力導波路14、干渉光の出力導波路18a、18b、信号光モニタ導波路17なども備えている。PLCで構成され、図1に示したような異なる機能を実現する各機能要素の組み合わせを含む光干渉回路では、小型化が非常に重要な技術課題となっている。
PLCにおいてPBSまたは偏波ローテータを実現するために、光導波路を横切るように、光波長板を光干渉回路内に挿入する構成を用いることができる。光波長板は、これを通過する光信号の偏波に応じて、光信号に位相差を生じさせる素子であり、例えばポリイミドフィルムを用いて作製されたものが広く知られている。
図1を再び参照すれば、PBS12および偏波ローテータ13では、光導波路を横切るようにして光波長板を挿入するための溝3が形成されている。それぞれの光導波路を伝搬する光が光波長板を通過するように、この溝3の内部に光波長板が挿入される。このような基板面上に溝を備えた構成によって、光波長板を透過した光偏波に回転を生じさせることが可能となる。例えば、PBS12を構成するためには、2本の光導波路によって構成されるマッハ・ツェンダー光干渉回路で、各光導波路にそれぞれλ/4波長板を互いの複屈折光学軸が直交するように挿入すれば良い。また、偏波ローテータ13を実現するためには、対象となる光導波路中に複屈折光学軸が45度となるような向きでλ/2波長板をすれば良い(非特許文献1)。
特許第2614365号公報 明細書
S. Tsunashima, et. al., "Silica-based, compact and variable-optical-attenuator integrated coherent receiver with stable optoelectronic coupling system", November 19, 2012/Vol. 20, No. 24/OPTICS EXPRESS 27174 Implementation Agreement for Integrated Dual Polarization Intradyne Coherent, IA # OIF-DPC-RX-01.2 Receivers, November 14, 2013
しかしながら、上述の光波長板を溝内に挿入する構成の光導波路型デバイスにおいては、デバイスの小型化において、以下に述べるような問題があった。PLCにおいて光波長板を挿入するための溝は、例えば特許文献1にも記載されているように、ダイシング装置を用いた機械加工によって形成されていた。図1の下方には、光受信器100の基板面および溝3の長手方向に対して垂直な断面を見たときの溝3近傍の構造を示している。溝3は、光干渉回路の最上面から、光導波路が形成されるコア層およびクラッド層を含む導波路層2を越えて、シリコン基板1にまで達するように、所定の値まで切断深さを調整しながら加工されていた。しかしながらこのような機械加工による方法では、ダイシングブレードの大きさによって決まる溝加工を行うための作業エリア内(ワークサイズ)には、他の回路を構成することができない。ダイシング装置自体の加工精度、加工作業に必要なワークサイズを考慮すると、溝の周辺では、1mm×5mm程度の面積にわたって回路配置の禁止領域が必要となってしまう。
ダイシングブレードは光導波路に対して非常に大きく、作業エリアと各機能要素とのレイアウトの干渉のため、異なる大きさの多数の溝を基板上に形成することはできなかった。基板上に形成した溝のために、本来溝が不要な光導波路が切断されてしまえば、その溝で無駄な光損失を生じてしまう。結局、溝加工を行うための作業エリア内には、波長板挿入が必要な光導波路を除いて、他の機能要素の回路を近接して柔軟に配置することができなかった。このような状況下ではまず溝の配置が優先され、図1に示したように単一の共通の溝を形成し、これに合わせて単一の溝内の異なる部分を利用して異なる機能の光回路を構成していた。
図1の溝3の他の形成方法として、レーザ加工を利用することもできる。しかしながら、レーザ加工ではガラス(SiO2)を熱で溶かして溝を形成するため、加工された部分の熱収縮によって応力が発生したり、溝内面が荒れたりするなどの問題が生じ得る。波長板挿入部における光損失を最小限に留める形状に加工することが難しく、加工によって生じる光導波路部分の歪による光学特性劣化も懸念される。ダイシングおよびレーザのいずれの機械加工手段によっても、その加工精度やワークサイズの点から光回路の小型化の制約となっていた。結局、機械加工によって形成される光導波路への薄膜挿入溝はその加工形状による制約から、溝から1mm以上離れた位置に、溝のない隣接する導波路が配置されることが通常で、そのため光回路の小型化を制約する要因となっていた。
光干渉回路の基板上に溝を形成する技術としては、ドライエッチングまたはウェットエッチングによるウェハプロセスを用いることもできる。これらのエッチング方法は、加工精度および形状制御のいずれの点でも、光波長レベルでの制御が可能なため、溝形成の方法として有望である。しかしながら、光波長板などの薄膜を挿入する深い溝を形成するのに適した加工方法である必要がある。具体的には、加工形状については溝の深さ方向への垂直性が求められ、光導波路と溝の境界面の粗さを抑えおよび溝開口の加工トレランスが精緻な技術が必要である。引用文献1記載された光干渉回路の構成例では、水平方向と深さ方向との間でエッチングされる比率(選択比)の差のため、十分な精度で深い溝を加工する時には溝の長さおよび幅のサイズを一定値以上の大きさにする必要があった。光導波路を作製する一般的なエッチング技術では、基板面に垂直な深さ方向のエッチング速度は、基板面に平行な水平方向のエッチング速度に比べて遅い。このため、光波長板を挿入するのに十分な深い垂直な溝を形成するには、溝の幅または長さを、光波長板を挿入するために本来必要なサイズよりも大きくする必要があった。結局、光波長板を溝内に挿入するための小さな溝を形成することは、光導波路を作製する一般的なドライエッチングまたはウェットエッチングでは難しかった。
したがって特許文献1に記載されているように、例えば隣接する光導波路間の距離を500μm以下に近づけて配置しようとする場合には、複数の光導波路に渡って1つの連続した溝を配置するなどの工夫が必要となる。特に光回路の小型化が必要な場合、損失を止むを得ないものとして許容して本来溝を必要としない光導波路にまで渡って溝を形成するか、溝を避けるようなレイアウト上の工夫をしながら光回路を配置する必要があり、回路の小型化、回路設計の柔軟性および光学的な性能上での大きな制約があった。
近年、ディープエッチングと呼ばれる深さ方向のエッチング速度を向上させたシリコン深堀り技術が実現されている。このようなエッチング技術の向上によって光導波路ごとに別個の溝を作ることが可能になった。溝を複数の光導波路に配置する必要がある場合でも、最小の溝面積で光導波路ごとに溝の配置が可能となったため、従来と比べ光導波路同士をさらに近接して配置することができるようになった。しかしながら、溝が形成された光導波路と溝の無い光導波路とを近接して構成する場合、溝の無い(溝が横切らない)光導波路において、隣接する溝によって解放される基板水平方向の応力の分布の影響を受け、溝の無い光導波路を伝搬する光の偏波状態が変化してしまう問題が生じることになった。特に、その溝の無い光導波路が単一偏波の光を伝搬する回路を構成する場合に、その回路の偏波消光比が劣化してしまう問題が生じることとなった。
また、特許文献1に開示された応力解放溝を用いた偏波制御光導波路デバイスなどのように、溝の形成によって解放される応力の不均衡を無くすために、ダミーの溝を配置する場合がある。隣接する光導波路に対して導波路回路パターンの対称性を保つため、ダミーの溝および薄膜素子を挿入するための溝を同時に形成しようとしても、小型化が要請されると、溝の配置そのものが困難となり得る。上述のように、薄膜素子を挿入するための溝によって応力が解放されることで、溝の無い隣接する光導波路の偏波保持性が損なわれることが新たな技術的課題となっている。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、デジタルコヒーレント通信に用いられる小型光受信器を構成するときの、薄膜素子を挿入するための溝と、隣接する溝の無い光導波路との距離の範囲を明らかにする。特定の回路配置の条件で、所定の大きさの基板上でPLC回路を用いて光受信器を実現するときの、薄膜素子を挿入する溝と隣接する導波路との距離の最適範囲を明らかにし、指標を与える。光波長板などの薄膜素子を挿入する溝を有する光干渉回路の小型化を実現する溝の構成を提案し、より集積度の高い光干渉回路、光導波路型デバイスを提供する。
のような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、シリコン基板上に構成された石英系材料の光導波路型デバイスにおいて、2本のアーム導波路と、前記2本のアーム導波路をそれぞれのみを横切るように構成され、λ/4波長板を挿入可能な2つの溝とを有する偏波ビームスプリッタ(PBS)であって、前記2本のアーム導波路に対して垂直よりも傾けて、当該垂直より傾けた方向で前記2つの溝の一部が相対するよう配置された、PBSと、λ/2波長板を挿入できる溝を備えた第1の導波路と、溝の無い第2の導波路とを有する偏波ローテータと、各々が、2つの光分岐器および2つの光結合器の間に4本の導波路を含み、前記4本の導波路の内側の2本が交差するよう構成された、2つの90度ハイブリッドを有するミキサとを備え、前記PBS、前記偏波ローテータおよび前記ミキサは、この順に縦続して、それぞれの間を光学的に接続する2つの折り返し導波路部を介して、概ねS字または逆S字状に配置され、前記PBS、前記偏波ローテータおよび前記ミキサの各々の前記導波路は、少なくとも一部で相互に平行となるように構成されており、前記平行な方向をY軸、前記Y軸に垂直な方向をX軸とするとき、前記偏波ローテータにおいて、前記第1の導波路を横切る前記溝の前記第2の導波路側の端部と、前記第2の導波路との、X軸上の溝―導波路間間隔dは、0.25<d(mm)の範囲にあることを特徴とする光導波路型デバイスである。
請求項の発明は、請求項1の光導波路型デバイスであって、前記シリコン基板のX軸方向の長さをX0、前記90度ハイブリッドのX軸方向の長さの最小値をX1min、前記90度ハイブリッドの前記偏波ローテータ側の一方と、前記偏波ローテータとの間を接続する前記第2の導波路の前記折り返し導波路部の、折り返しの両端部間のX軸方向の距離をX4min、前記PBSの前記第1の導波路を横切る前記溝の前記第2の導波路側の前記端部と、前記PBSの出力側との間を接続する前記第1の導波路の前記折り返し導波路部の、折り返しの両端部間のX軸方向の距離をX3min、前記PBSの前記偏波ローテータ側の前記アーム導波路から、もう一方のアーム導波路上を横切る前記溝の遠い端部までのX軸方向の距離をX2minとし、Xtotal=X1min×2+X4min+X3min+X2minとするとき、前記溝―導波路間間隔dは、0.25<d<X0−Xtotal(mm)の範囲にあることを特徴とする。
請求項の発明は、請求項1または2の光導波路型デバイスであって、前記シリコン基板のX軸方向の長さをX0とすると、前記溝―導波路間間隔dは、0.25<d <X0−10.5(mm)の範囲にあることを特徴とする。
請求項の発明は、請求項1乃至いずれかの光導波路型デバイスであって、前記PBS、前記偏波ローテータおよび前記ミキサは、デジタルコヒーレント通信用光受信器の一部を構成することを特徴とする。
以上説明したように、本発明によって光波長板などの薄膜素子を挿入する溝を有する光干渉回路の小型化を実現することができる。特定の回路配置の条件で、所定の大きさの基板上でPLC回路を用いて光受信器を実現するときの、薄膜素子を挿入する溝と隣接する導波路との距離の指標を与える。
図1は、PLCによって構成された従来技術の光受信器における光干渉回路の構成を示した図である。 図2は、本発明の光導波路型デバイスの実施例の構成を示す図である。 図3は、溝の端部および隣接する導波路間の距離と、PER劣化量の関係を示す図である。 図4は、90度ハイブリッド回路における交差角度を説明する図である。 図5は、90度ハイブリッド回路の交差角度と導波路間距離Gの関係を示した図である。 図6は、90度ハイブリッド回路における導波路交差角度Θと交差により生じる損失との関係を示す図である。 図7は、本発明のデジタルコヒーレント光伝送用の光受信器おける機能要素に関連する最小値の定義を説明する図である。
本発明の光導波路型デバイスは、溝の形成のために近年のウェハプロセス技術の進展に伴って可能となったディープエッチング技術を用いる。これまで光導波路型デバイスで使用されてきたウェットエッチングまたはドライエッチング技術は、基板面に水平方向のエッチング速度に比べて垂直方向のエッチング速度(深さ方向の選択比)が非常に小さいものであった。近年では、基板面の垂直方向、すなわち深さ方向に選択比の高いエッチングプロセスが開発されており、ボッシュプロセスとしてシリコン基板に広く適用されている。本発明の光導波路型デバイスでは導波路の構成材料であるSiO2に対して深さ方向の選択比が大きいディープエッチング技術を使用して、薄膜素子を挿入するための溝を形成する。ディープエッチング技術によって、薄膜素子を適切に挿入できる必要最小限の開口部のサイズと、十分な垂直深さを確保した溝を形成することができる。
本発明の光導波路型デバイスでは、少なくとも1つの溝は、薄膜素子を挿入する対応する1本の導波路のみを横切り、この対応する1本の導波路に隣接する他の導波路を横切らないよう構成される。この溝は、概ね矩形状をしており、溝内に薄膜素子を安定して保持・固定できるように、挿入される薄膜素子のサイズに適合した最小のものとすることができる。
通常、PLCで作製される光回路は、異なる機能を実現する複数の機能要素からなっている。本発明の薄膜素子を挿入するための溝を用いることで、溝が必要な機能要素において導波路ごとに必要な溝を形成することが可能となる。さらに、溝が必要な機能要素の小型化が可能となるのに加え、溝が不要な機能要素との距離を短くすることで、光回路全体の小型化も実現できる。従来技術のような複数の導波路に渡って形成されていた大きな溝3(図1)は、溝によって解放される応力の分布による影響が広い領域に及んでいた。本発明では、必要最小限の開口部のサイズを持ち導波路毎に構成された溝を使用することで、溝によって解放される応力分布の影響を受ける領域自体が縮小される。したがって、光回路全体で、溝によって解放される応力分布の影響を受けない領域も最小化できる。光回路の異なる機能要素間で、溝と、薄膜素子を挿入する溝が無い隣接する導波路との距離を規定すれば、いずれの導波路を伝搬する光に対しても、偏波保持性を維持し偏波消光比が劣化することなしに、所望の偏波特性を得ることが可能となる。
本発明の溝を有する光導波路型デバイスでは、デジタルコヒーレント通信に用いられる光受信器を効果的に構成することができる。本発明の光導波路型デバイスは、少なくとも偏波ビームスプリッタ(PBS)、偏波ローテータ(偏波回転器)、および2つの90度ハイブリッドが、この順に縦続して、それぞれの間を光学的に接続する2つの折り返し導波路部を介して、概略S字状または逆S字状に配置されている。2つの90度ハイブリッドは、ミキサ回路を構成する。各構成要素内に含まれる導波路は、要素内においても要素間においても、概ね平行となるように配置されている。したがって、PBSにおける信号光の伝搬方向と、偏波ローテータにおける信号光の伝搬方向とは、平行で正反対となる。また、偏波ローテータにおける信号光の伝搬方向と、2つの90度ハイブリッドそれぞれにおける信号光および局発光(局部発振光)の伝搬方向も、平行で正反対となる。
PBSにおいては、平行に配置された2つの導波路の各々に、それぞれの導波路のみを横切る溝が形成されている。また、偏波ローテータにおいては、2本の導波路の内の一方の導波路のみに薄膜素子を挿入するための溝を形成し、他方の導波路は溝を持っていない。以下の検討では、偏波ローテータにおける一方の導波路の溝の端部から、溝のない隣接する導波路までの距離(後述する「溝―隣接導波路間距離d」)について、一定の基板サイズの条件下で、溝によって解放される基板水平方向の応力分布の影響と小型化の要請との両方を考慮した最適範囲を求める。最初に、本発明の光導波路型デバイスとして最も好適なデジタルコヒーレント光伝送用の光受信器の構成を以下に説明する。下の実施例では、シリコン基板上に形成した石英系材料の単一モード光導波路を使用した光導波路型デバイスを例として説明する。これは、この構成がPLCに現在広く利用されており集積化が容易であって、さらに石英系光ファイバとの整合性に優れ、低損失な光デバイスを提供できるためである。以下の説明において、導波路と記載したものはPLC回路上に形成された光導波路を意味するものとする。
図2は、本発明の光導波路型デバイスの実施例の構成を示す図である。図2の光導波路型デバイスは、PLCによって構成されたデジタルコヒーレント光伝送用の光受信器(光干渉回路)200である。光受信器200は、信号光入力導波路30、局発(局部発振)光の入力導波路32、干渉光の出力導波路33a、33b、信号光モニタ導波路34を備える。また、光受信器200は、信号光が伝搬する順に、VOA31、PBS21、偏波ローテータ22、および2つの90度ハイブリッド回路29a、29bを備える。PBS21および偏波ローテータ22は、薄膜素子である波長板を各々の導波路を横切るように各溝に挿入して実現される。
PBS21は、マッハ・ツェンダー干渉計の2つのアーム導波路23、24上にそれぞれ形成された溝25、26の中に、2つのλ/4波長板を互いの複屈折軸が直交するような向きで挿入して構成される。PBS21は、入力された信号光を2つの偏波に分離するよう動作する。また偏波ローテータ22は、2つの導波路28a、28bの内の一方の導波路28aに形成された溝27の中に、λ/2波長板を挿入して構成される。偏波ローテータ22は、PBS21の後段側に配置され、一方の光の偏波を90度回転させる。偏波ローテータ22において隣接して配置される溝のある導波路28aおよび溝の無い導波路28bとの距離は、溝27の端部から溝の無い導波路28bまでの距離35として後述する。
薄膜素子が挿入される溝25、26、27は、SiO2の深堀りエッチングのために最適化されたディープエッチング技術を使用して形成された。各々の機能に応じて挿入される波長板のサイズに応じて、溝のサイズを設計した。PBS21の溝25、26については、それぞれ長さを1mmとして、長さ0.75mmのλ/4波長板を挿入した。また、偏波ローテータ22の溝27についてはその長さを1.5mmとして、長さ1.0mmのλ/2波長板を挿入した。いずれの波長板も、組み立て時の作業の容易性を考慮して、最小でも概ね0.75mm程度の長さとしている。
図2では、導波路のレイアウトは概ね実際のデバイスのイメージに近いが、導波路に対する溝の幅や長さなどは実際の構成とは異なる点に留意されたい。実際の寸法関係で記載すると、溝および波長板などは視認できなくなるので、溝の幅、波長板の厚さを相対的に拡大して誇張して描いてある。
波長板として用いた薄膜素子はポリイミドフィルムで構成されており、厚さ10μm程度のものを使用した。挿入する薄膜素子の厚さに応じて、溝の幅は15〜30μm程度とした。溝内に挿入された薄膜素子を、石英ガラスに近い屈折率を持つ樹脂を溝内の薄膜素子との隙間に充填して、接着固定することにより、溝が横切る導波路の過剰損失を最小限に抑えた。溝の深さは100μm以上300μm以下とし、導波路部分のエッチング断面は基板面に対して垂直方向に垂直性を保ち、かつその表面は平滑である。薄膜素子は、組み立て時の扱いやすさを考慮して、基板表面よりも上方に500μm程度はみ出る高さを持つ。
本発明の光導波路型デバイスの溝を作製するディープエッチングプロセスは、導波路部分のSiO2に対して深堀りエッチングを行うのに最適化されたプロセスである。したがって、導波路部分以外のエッチング断面、特にSiO2の導波路部分を越えてシリコン基板部に達した溝のエッチング断面においては、基板面に対する厳密な垂直性は必ずしも必要ない。信号光に対して位相変化を生じさせるSiO2の導波路部分のエッチング断面で垂直性が確保されていれば、SiO2の溝で十分に薄膜素子を保持できる。したがって、溝の奥深くにあるシリコン基板のエッチング断面については垂直状態からやや外れていても許容できる。
再び図2を参照すれば、本発明の光導波路型デバイスでは、PBS21、偏波ローテータ22および90度ハイブリッド回路29の3種類の各機能要素が、この順に縦続して配置され、機能要素同士を接続するための折り返し導波路28a、28bを介して光学的に接続されている。すなわち、それぞれの機能要素同士の間は連続的になめらかに導波路で接続され、光導波路型デバイス全体を見たときに、概ねS字状または逆S字状となっている。本発明の光導波路型デバイスでは、基本原則として、折り返し曲線導波路の半径を放射損失が発生しない最小値(2mm)として、機能要素を互いにできる限り近接して配置することになる。図2に示したデジタルコヒーレント光伝送用の光受信器の光干渉回路では、各機能要素のいずれの導波路もその少なくとも一部は平行となるよう構成されている。3つの機能要素は、この平行な導波路方向(Y軸方向)に概ね垂直な方向(X軸方向)に並んで配置された構成となる。以下の説明では、3種類の機能要素が配置されるX軸方向、すなわち3種類の各機能要素に共通の導波路方向(Y軸)に垂直な方向を、機能要素の配置方向と呼ぶ。
以下では、図2のデジタルコヒーレント光伝送用の光受信器において、各機能要素がどのように光回路のチップ全体のサイズに影響を与えるかについて検討する。先にも述べたように、図2に示したレイアウトは概ね実際のデバイスのイメージに近いが、溝の幅、波長板の厚さを相対的に拡大して誇張して描いてある。各機能要素において、光回路を小型化する際の光学特性上の制限と、隣接する溝によって解放される基板水平方向の応力の分布の影響の問題と合わせて、さらに検討する。
2つの溝25、26を含むPBS21では、上述の通り、溝25および溝26の各長さが、PBS21全体のサイズを支配的に決定する。それぞれの溝に対応する2本のアーム導波路23、24に概ね垂直な方向で、2つの溝25、26の一部が相対して配置されている。マッハ・ツェンダー干渉計のアーム部分に相当する2本のアーム導波路23、24の間隔を500μm以下になるように近接させて配置することができる。これによって、図2のデジタルコヒーレント光伝送用の光受信器において、機能要素の配置方向(X軸)に関するサイズを最小にして、光受信器回路の全体のサイズを縮小することが可能である。従来技術で問題となった、溝の通過を避けるための光回路のレイアウト制限や、溝の通過を許容することによる望まない損失の発生を解消することができる。PBS21の場合は、2つの導波路のそれぞれに対して対称に溝が形成されるため、隣接する溝によって解放される基板水平方向の応力の分布は問題とならない。
偏波ローテータ22では、PBS21によって分離された一方の偏波の信号光が伝搬する導波路28a側のみに、薄膜素子が挿入される溝27が形成される。他方の偏波の信号光が伝搬する導波路28bは溝を持っていない。したがって、図2のデジタルコヒーレント光伝送用の光受信器において、偏波ローテータ22の機能要素の配置方向(X軸)に関するサイズは、溝27の長さに加えて、溝27の端部と、溝の無い隣接する導波路28bとの間の距離35によって決定される。以後簡単のため、偏波ローテータ22において導波路28aを横切る溝27の一端から、導波路28aに最も隣接し溝の無い導波路28bまでの距離35を、溝―隣接導波路間距離dと定義する。
溝―隣接導波路間距離35の最小値dminは、溝の無い導波路を伝搬する光の偏波状態が溝による応力解放によって変化してしまう問題を避けるため、PERの実測値に基づいて以下のように決定される。
図3は、溝の端部と隣接する導波路との距離と、PER劣化量の関係を示す図である。図2に示したように、一方の導波路28aに対して垂直よりやや傾けて(98°)構成した状態の溝27の端部から、隣接する溝の無い導波路28bまでの距離dを変えたときの、溝の無い導波路28bにおける偏波消光比(PER:Polarization-Extinction Ratio)の劣化量を示す。すなわち、溝が存在しない場合のPER値を基準としたPER劣化量(dB)を示している。同一基板上に溝と被測定導波路の複数のペアを作成した2サンプルについて実測した。
図3に示したように、溝―隣接導波路間距離35が概ね250μmまではPER劣化量は0であり、溝と導波路を100μmまで近接すると数dB以上のPER劣化が生じている。したがって、溝―隣接導波路間距離35の最小値dminを250μmとすれば、図2の偏波ローテータ22における消光比劣化を抑えて、溝の無い導波路の偏波保持性が損なわれることのない光回路を構成できる。
一方で、偏波ローテータ22における溝―隣接導波路間距離35の最大値dmaxは、図2のデジタルコヒーレント通信用光受信器の回路配列方向に並んだ3つの機能要素において、各要素内の各最小距離(サイズ)または機能要素間の最小距離から決定される。
溝―隣接導波路間距離35の最大値dmaxは、図2のデジタルコヒーレント光伝送用の光受信器を実際に作製するチップサイズに制限が無ければ、機能要素の配置方向(X軸方向)にも制限は無い。チップサイズに制限が無ければ回路レイアウトの自由度が高く、一般的に最大値を一意に決定することができない。しかしながら、本発明の光導波路型デバイスの薄膜素子のための溝は、光回路を小型化しようとする場合に最大の効果を発揮し、特に、図2に示したようなデジタルコヒーレント通信における光受信器へ適用するのが好ましい。
デジタルコヒーレント光伝送用の光受信器では、標準化団体(例えばOIF:The Optical Internetworking Forum))の仕様によって決定される形態・サイズのパッケージ内に収納するため、基板の最大サイズをいくつかの固定値に決定できる。各機能要素における最小値の合計値を累積的に求めれば、上述の基板サイズ固定値から、最小値の合計値を差し引いて、偏波ローテータ22における溝―隣接導波路間距離35の最大値dmaxが求められる。そこで以下では、図2のデジタルコヒーレント通信用光受信器の小型化を制限する要因となる、各機能要素における最小長さ、最小距離等をさらに検討して決定し、溝―隣接導波路間距離35の最大値dmaxを求めてみる。
図2に示したデジタルコヒーレント光伝送用の光受信器200おいて、偏波ローテータ22の溝27と隣接する導波路28bの溝―隣接導波路間距離35の最大値dmaxを制限する要因は、第1に、受信器200の最上部にある90度ハイブリッド回路29a、29bの各々の内側2本の導波路の交差部の構成にある。交差部で生じる損失を考慮して90度ハイブリッド回路の構成が決定される。
図4は、90度ハイブリッド回路における交差角度を説明する図である。90度ハイブリッド回路の交差角度とは、2つの光分岐手段と2つの光結合手段との間に配置された4本の導波路の内で、内側にある2本の導波路が交差する角度を言う。図4に示すように回路レイアウト上で、各々の導波路41、42において信号光または局発光が伝搬する方向をY軸とし、90度ハイブリッドの4本の導波路に垂直な方向をX軸(図2のX軸方向に対応)とする。X軸方向について90度ハイブリッド回路を最小とするのは、2本の導波路41、42がそれぞれ2つの円弧を連続的に接続するような形状を持ち、かつ、その円弧の接続点と2本の導波路の交点43が一致する場合である。図4では、交差部を中心として2本の導波路41、42がY軸と平行となるまでの部分を描いている。2本の導波路の接線のなす交差角度をΘ、2本の導波路の円弧部の半径をrとすると、交差する2つの導波路41、42の導波路間距離Gは次式で表される。
G= 2r×sin(Θ/4) 式(1)
式(1)は、1つの90度ハイブリッド回路のX軸方向の長さ、すなわち、図2において機能要素の配置(X軸)方向の長さを決定する指標となる。
図5は、90度ハイブリッド回路における交差角度と導波路間距離Gの関係を示した図である。ここで、導波路の円弧部の半径をrとして、現在のPLC回路で通常用いられる最小値である2mmを用いた。図5からわかるように、交差角度Θが大きくなるほど、90度ハイブリッド回路内の導波路間距離Gが大きくなる。90度ハイブリッド回路の小型化を考慮すれば、当然、交差角度として最大の90度を用いることはなく、できる限り交差角度を小さくすれば良い。実際には、交差角度に90度ハイブリッド回路の光学特性上から決定される最小値が存在し、これにより隣接する導波路間距離Gに上限値および下限値が決定される。
交差角度の適切な範囲は、図4の2本の導波路41、42の交差角度が小さくなると損失が増加する現象から規定される。一般的に、90度ハイブリッド回路の2本の導波路41、42の交差角度が浅くなりゼロに近づくと、一方の導波路の光信号が交差する他方導波路側に漏えいし、挿入損失の増加を招く。実際の回路においては、挿入損失は高次モード(放射モード)や結合モード(交差する導波路への漏えい)を励振することで発生する。高次モードや結合モードの励振状態は交差部(交差エッジ部)の形状にも大きく依存することから、ビーム伝搬法(BPM:beam propagation method)などの解析手法で定量的に予測することが難しく、実使用状態におけるテスト回路の測定結果から求めることが一般的である。
図6は、90度ハイブリッド回路における導波路交差角度Θと交差により生じる損失の関係を示す図である。図6より、交差角度Θを小さく(浅く)するに従って損失が増加し、損失が0.5dBとなる15°より交差角度Θが小さい領域では、急激に光損失が上昇することがわかる。交差角度Θが15°のときの2本の導波路41、42の導波路間距離Gは図5から概ね250μmである。一方、図6から、交差による損失が十分に小さく損失の減少量が飽和する、交差角度Θの最大値として50°を決定した。これ以上交差角を大きくしても損失は減少しないため、大きくする意味がないからである。図6において交差角度50°の場合の2本の導波路41、42の導波路間距離Gは、図5から870μmと求められる。したがって、90度ハイブリッド回路における内側の2本の導波路間距離Gは、250μmから870μmとなる。
図7は、本発明のデジタルコヒーレント光伝送用の光受信器おける機能要素に関連する最小値の定義を示した図である。1つの90度ハイブリッドは4本の導波路を含むため、上で求めた導波路間距離Gの最小値250μmを3倍した長さ750μmが、概ね90度ハイブリッドおけるX軸方向(図2の機能要素の配置方向)の最小値X1minとなる。したがって、2つの90度ハイブリッド29a、29bがX軸方向に並んだハイブリッド回路29のX軸方向の最小値は、X1min×2=1.5mmとなる。90度ハイブリッドの周辺部には、基板端部や隣接する機能要素との間である程度のマージンが必要となるが、次に述べる最小値X4minとX1minとの間の重複分をこのマージンに割り当てれば、90度ハイブリッド回路29においてX1min=×2=1.5mmの値は概ね妥当である。以下では、図7の定義に従って、さらに各機能要素に関連する最小値を求める。
図7を再び参照すると、90度ハイブリッド回路29の最小値X1minと一部重複し、溝―隣接導波路間距離35の最大値dmaxを決定する第2の要因は、偏波ローテータ22と、下側の90度ハイブリッド29bとを接続する導波路28bの折り返し部71の前後の部分の間隔X4minである。X4minは、導波路28bの曲率半径の2倍となる。先にも図4で交差部の導波路間距離Gを求めたときに述べたように、本発明ではPLC回路おいて一般的な曲率半径rの最小値2mmを使用する。したがって、rを2倍してX4min=4mmとなる。既に述べた90度ハイブリッド回路29の最小値X1minと、X4minは、一部が重複している。先に述べたように、この重複部分を90度ハイブリッドの周辺部等のためのマージンに割り当てることができる。尚、導波路の構造・材料によって、曲率半径rをさらに小さくできる場合には、X4min=2rとすれば良い。
X軸上で、溝―隣接導波路間距離35の最大値dmaxを決定する第3の要因は、偏波ローテータ22と、PBS21との間を接続する導波路28aの折り返し部72の前後の部分の間隔X3minである。ここでは図7に示したように、X3minを、溝27の上端部からPBS21の最近傍部の導波路28aまでの距離とする。X3minは、溝27の導波路28a上側へのはみ出し部分を除けば、X4minと同様に導波路28aの曲率半径rの最小値の2倍となる。ここでもPLC回路おいて一般的な曲率半径rの最小値2mmを使用する。したがって、rを2倍してX3min=4mmとなる。次に述べるPBS21に関する最小値X2minとX3minは、一部が重複しているが、この重複分は、溝27の導波路28a上側へのはみ出し部分に割り当てる。尚、導波路の構造・材料によって、曲率半径rをさらに小さくできる場合には、X3min=2rとすれば良い。
X軸上で、さらに溝―隣接導波路間距離35の最大値dmaxを決定する第4の要因は、PBS21のX軸上でのサイズであって、図7に示したように、PBS21の上側の導波路23と、溝26の下端部までの間隔X2minとなる。PBS21の2本の導波路間隔は、2つの溝25、26をX軸方向で重ねて一部が相対するように配置することで500μmまで近づけることができる。また、溝25、26は、それぞれ、溝内に挿入する波長板の取り扱いやすさを考慮すると最短で1mmの長さとなる。溝26は、2本のアーム導波路23、24の間の領域に入っているので、X2minは1〜1.5mmとなるが、前述のX2minとX3minの重複部分も加味して、X2minは1mmとした。尚、PBS21では両方の導波路にそれぞれ溝が挿入されるため、溝によって解放される応力の影響は、対称に相互の導波路に及ぶ。したがって、1つの溝と他方の導波路との距離は、偏波ローテータ22の最小値250μmよりもさらに近接させることができる。
上述のX軸方向についての各機能要素内または機能要素間の最小値X1min、X4min、X3min、X2minが求まれば、基板の長さX0からこれらの最小値の合計Xtotalを差し引いて、偏波ローテータ22における溝―隣接導波路間距離35の最大値dmaxを決定できる。
total=X1min×2+X4min+X3min+X2min 式(2)
max=X0−Xtotal 式(3)
式(3)に、X1min=1.5mm、X4min=4mm、X3min=4mm、X2min=1mmの各値を代入すると、溝―隣接導波路間距離35の最大値dmaxは、次式で求められる。
max=X0−10.5(mm) 式(4)
図2において、デジタルコヒーレント光伝送用の光受信器を作製する基板のX軸方向の長さX0は、OIF仕様(非特許文献2)のType1のパッケージでは長辺のサイズが27mm、Type2のパッケージでは16mmと規定されている。例えば、Type2パッケージのサイズに適合させて、Type2パッケージ内に図2の受信器200を収納する場合には、基板サイズX0を15mmとすると、偏波ローテータ22における溝―隣接導波路間距離35の取り得る最大値dmaxは、15−10.5=4.5mmとなる。この最大値dmaxは、本発明の構成の溝を利用して、上述の各機能要素内、機能要素間の最小値X1min、X4min、X3min、X2minが同時に生じた場合の値であり、本発明の溝とともに図2の機能要素の配置に従うデジタルコヒーレント光伝送用の光受信器200で成立する。結局、図3から求められた溝―隣接導波路間距離35の最小値と、式(4)を合わせると、機能要素の配置方向(X軸)に関して基板のサイズをX0(mm)としたとき、偏波ローテータ22における溝―隣接導波路間距離35すなわちdの範囲は以下の通りとなる。
0.25 < d < X0 −10.5 (mm) 式(5)
したがって本発明は、基板上に構成された光導波路型デバイスにおいて、2本のアーム導波路23、24と、前記2本のアーム導波路をそれぞれのみを横切るように構成され、λ/4波長板を挿入可能な2つの溝25、26とを有する偏波ビームスプリッタ(PBS)21であって、前記2本のアーム導波路に垂直な方向で前記2つの溝の一部が相対するよう配置された、PBSと、λ/2波長板を挿入できる溝27を備えた第1の導波路28aと、溝の無い第2の導波路28bとを有する偏波ローテータ22と、各々が、2つの光分岐器および2つの光結合器の間に4本の導波路を含み、前記4本の導波路の内側の2本が交差するよう構成された、2つの90度ハイブリッド29a、29bを有するミキサとを備え、前記PBS、前記偏波ローテータおよび前記ミキサは、この順に縦続して、それぞれの間を光学的に接続する2つの折り返し導波路部71、72を介して、概ねS字または逆S字状に配置されており、前記PBS、前記偏波ローテータおよび前記ミキサの各々の前記導波路は、少なくとも一部で相互に平行となるように構成されており、前記平行な方向をY軸、前記Y軸に垂直な方向をX軸とするとき、前記偏波ローテータにおいて、前記第1の導波路を横切る前記溝の前記第2の導波路側の端部と、前記第2の導波路との、X軸上の溝―導波路間間隔dは、0.25<d(mm)の範囲にあることを特徴とする光導波路型デバイスとして実施できる。
上述の検討では、偏波ローテータ22における溝27は、PBS側にある導波路28a上にあるものとして説明したが、90度ハイブリッド側にある導波路28b上に溝が形成され、導波路28aが溝の無い導波路として構成しても良い。この場合には、X3minとX4minを入れ替えて考えれば、図7で定義された機能要素の最小値に関する式(2)〜式(4)の関係が同様に成り立つ。
本発明の光導波路型デバイスでは光回路サイズが小さくなったことに伴って、導波路と薄膜を挿入する溝との境界面で発生する光反射が光受信器としての性能に影響を及ぼす可能性がある。光反射減衰量を十分抑制するため、図2に示したように、各溝25、26、27の導波路と溝の境界面の角度が98度となるように溝を構成した。溝の向きを直角よりも所定の角度を付けることで、PBS21では、隣り合う溝25、26を導波路に垂直な軸上で一部が相対するように配置し、各溝はそれぞれが横切る対応する導波路のみを横切るようにレイアウトできる。1つの溝は、1つの導波路のみを横切る様に構成される。言い換えると、本発明における溝は、対応する導波路のみを横切り、近接して配置されている他の導波路を横切らない。
本発明の光導波路型デバイスは、従来技術の光導波路設計技術を用いたままで、ディープエッチング技術を使用しながら溝の形状を変更するだけで、光回路のサイズの縮小を可能とする。光干渉回路の光学特性、すなわち挿入損失、PBSにおける偏波消光比、90度ハイブリッドにおける位相誤差、同相信号除去比などは、従来技術による光回路の場合と全く同等の性能を得ることが可能である。
上述のように、本発明の光導波路型デバイスでは、上述の特徴的な溝の構成を備えることによって、溝の構成に関する回路設計の柔軟性および光学的な性能上での大きな制約を解消し、光回路のサイズの大幅な小型化を実現する。さらに偏波ローテータにおいて、溝と、隣接する溝の無い導波路との間の距離を最小値dminの250μm以上とすることによって、PERの劣化が抑えられ、溝の無い導波路における偏波保持性が損なわれることもない。また本発明の光導波路型デバイスは、所定の基板長さX0の条件の下、偏波ローテータにおける、溝と、隣接する溝の無い導波路との間の距離の最大値dmaxの範囲内で、本発明に特有の溝を持つデジタルコヒーレント光伝送用の光受信器を構成できる。特定の回路配置の条件で、所定の大きさの基板上でPLC回路を用いて光受信器を実現するときの、薄膜素子を挿入する溝と隣接する導波路との間の距離の指標が与えられる。
上述の溝―導波路間間隔dの最大値dmaxの検討では、現時点のPLC回路で実施されている光導波路の円弧部の最小の曲率半径rの値を2mmと仮定して、最大値を決定した。しかしながら、光導波路の構成・材料によっては、将来的により小さい曲率半径を実現できる場合もある。その場合には、X軸方向についての各機能要素内または機能要素間の最小値X1min、X4min、X3minはこのより小さい曲率半径rの値に基づいて、変更され得る。したがって、そのような場合には、変更された最小値X1min、X4min、X3minによって、式(2)〜(4)を修正可能となり、溝―導波路間間隔dの最大値dmaxはさらに大きく設定できる。
上述の実施例では、シリコン基板上に構成された石英系ガラス導波路型デバイスを例として説明したが、本発明は、導波路を構成する他の材料、例えば高分子、半導体、シリコン、イオン拡散型のニオブ酸リチウムなどを用いた光導波路型デバイスに対しても適用可能である。SiO2以外の各々の導波路材料においても、基板の水平方向に対して垂直な深さ方向に選択比の高いディープエッチング技術を利用することは可能である。ディープエッチング技術を利用して、溝を必要とする導波路に対して、対応する溝を1対1に構成することで、溝の構成に関する回路設計の柔軟性および光学的な性能に対する制約を解消し、光回路の小型化を実現できる。本発明の光導波路型デバイスは、光干渉回路を含むデジタルコヒーレント光伝送に用いられる光送受信器に非常に有効である。
以上、詳細に説明してきたように、本発明の光導波路型デバイスにより、光波長板などの薄膜素子を挿入する溝を有する光干渉回路の小型化を実現することができる。
本発明は、一般的に通信システムに利用することができる。特に、光通信システムの光導波路型デバイスに利用できる。
1 基板
2 導波路層
3、25、26、27 溝
11、14、30、32 入力導波路
12、21 PBS
13、22 偏波ローテータ
15、31 VOA
16a、16b、29、29a、29b 90度ハイブリッド回路
17、34 信号光モニタ導波路
18a、18b、33a、33b 出力導波路
23、24 アーム導波路
28a、28b 導波路
35 溝―導波路間距離
71、72 折り返し導波路
100、200 光受信器

Claims (4)

  1. シリコン基板上に構成された石英系材料の光導波路型デバイスにおいて、
    2本のアーム導波路と、前記2本のアーム導波路をそれぞれのみを横切るように構成され、λ/4波長板を挿入可能な2つの溝とを有する偏波ビームスプリッタ(PBS)であって、前記2本のアーム導波路に対して垂直よりも傾けて、当該垂直より傾けた方向で前記2つの溝の一部が相対するよう配置された、PBSと、
    λ/2波長板を挿入できる溝を備えた第1の導波路と、溝の無い第2の導波路とを有する偏波ローテータと、
    各々が、2つの光分岐器および2つの光結合器の間に4本の導波路を含み、前記4本の導波路の内側の2本が交差するよう構成された、2つの90度ハイブリッドを有するミキサと
    を備え、
    前記PBS、前記偏波ローテータおよび前記ミキサは、この順に縦続して、それぞれの間を光学的に接続する2つの折り返し導波路部を介して、概ねS字または逆S字状に配置され、前記PBS、前記偏波ローテータおよび前記ミキサの各々の前記導波路は、少なくとも一部で相互に平行となるように構成されており、
    前記平行な方向をY軸、前記Y軸に垂直な方向をX軸とするとき、前記偏波ローテータにおいて、前記第1の導波路を横切る前記溝の前記第2の導波路側の端部と、前記第2の導波路との、X軸上の溝―導波路間間隔dは、
    0.25 < d (mm)
    の範囲にあることを特徴とする光導波路型デバイス。
  2. 前記シリコン基板のX軸方向の長さをX0
    前記90度ハイブリッドのX軸方向の長さの最小値をX1min
    前記90度ハイブリッドの前記偏波ローテータ側の一方と、前記偏波ローテータとの間を接続する前記第2の導波路の前記折り返し導波路部の、折り返しの両端部間のX軸方向の距離をX4min
    前記PBSの前記第1の導波路を横切る前記溝の前記第2の導波路側の前記端部と、前記PBSの出力側との間を接続する前記第1の導波路の前記折り返し導波路部の、折り返しの両端部間のX軸方向の距離をX3min
    前記PBSの前記偏波ローテータ側の前記アーム導波路から、もう一方のアーム導波路上を横切る前記溝の遠い端部までのX軸方向の距離をX2minとし、
    total=X1min×2+X4min+X3min+X2min
    とするとき、前記溝―導波路間間隔dは、0.25<d<X0−Xtotal(mm)の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の光導波路型デバイス。
  3. 前記シリコン基板のX軸方向の長さをX0とすると、前記溝―導波路間間隔dは、0.25<d <X0−10.5(mm)の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の光導波路型デバイス。
  4. 前記PBS、前記偏波ローテータおよび前記ミキサは、デジタルコヒーレント通信用光受信器の一部を構成することを特徴とする請求項1乃至いずれかに記載の光導波路型デバイス。
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