以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。同一の部材を示す複数の図面同士においても、形状等を誇張するために、寸法比率等は互いに一致していないことがある。
<第1の実施形態>
(プリンタの全体構成)
図1を用いて、第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド2を含むカラーインクジェットプリンタ1(以下、プリンタ1と称する)について説明する。
プリンタ1は、記録媒体Pを搬送ローラ74aから搬送ローラ74bへと搬送することにより、記録媒体Pを液体吐出ヘッド2に対して相対的に移動させる。制御部76は、画像や文字のデータに基づいて、液体吐出ヘッド2を制御して、記録媒体Pに向けて液体を吐出させ、記録媒体Pに液滴を着弾させて、記録媒体Pに印刷を行なう。
本実施形態では、液体吐出ヘッド2はプリンタ1に対して固定されており、プリンタ1はいわゆるラインプリンタとなっている。記録装置の他の実施形態としては、いわゆるシリアルプリンタが挙げられる。
プリンタ1には、記録媒体Pとほぼ平行になるように平板状のヘッド搭載フレーム70が固定されている。ヘッド搭載フレーム70には20個の孔(不図示)が設けられており、20個の液体吐出ヘッド2がそれぞれの孔に搭載されている。5つの液体吐出ヘッド2は、1つのヘッド群72を構成しており、プリンタ1は、4つのヘッド群72を有している。
液体吐出ヘッド2は、図1(b)に示すように細長い長尺形状をなしている。1つのヘッド群72内において、3つの液体吐出ヘッド2は、記録媒体Pの搬送方向に交差する方向に沿って並んでおり、他の2つの液体吐出ヘッド2は搬送方向に沿ってずれた位置で、3つの液体吐出ヘッド2の間にそれぞれ一つずつ並んでいる。隣り合う液体吐出ヘッド2は、各液体吐出ヘッド2で印刷可能な範囲が、記録媒体Pの幅方向に繋がるように、あるいは端が重複するように配置されており、記録媒体Pの幅方向に隙間のない印刷が可能になっている。
4つのヘッド群72は、記録媒体Pの搬送方向に沿って配置されている。各液体吐出ヘッド2には、図示しない液体タンクからインクが供給される。1つのヘッド群72に属する液体吐出ヘッド2には、同じ色のインクが供給されるようになっており、4つのヘッド群で4色のインクを印刷している。各ヘッド群72から吐出されるインクの色は、例えば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。
なお、プリンタ1に搭載される液体吐出ヘッド2の個数は、単色で、1つの液体吐出ヘッド2で印刷可能な範囲を印刷するのなら1つでもよい。ヘッド群72に含まれる液体吐出ヘッド2の個数、あるいはヘッド群72の個数は、印刷する対象や印刷条件により適宜変更できる。例えば、さらに多色の印刷をするためにヘッド群72の個数を増やしてもよい。また、同色で印刷するヘッド群72を複数配置して、搬送方向に交互に印刷することで、印刷速度、すなわち搬送速度を速くすることができる。また、同色で印刷するヘッド群72を複数準備して、搬送方向と交差する方向にずらして配置して、記録媒体Pの幅方向の解像度を高くしてもよい。
さらに、色の付いたインクを印刷する以外に、記録媒体Pの表面処理をするために、コーティング剤などの液体を印刷してもよい。
プリンタ1は、記録媒体Pに印刷を行なう。記録媒体Pは、搬送ローラ74aに巻き取られた状態になっており、2つの搬送ローラ74cの間を通った後、ヘッド搭載フレーム70に搭載されている液体吐出ヘッド2の下側を通る。その後2つの搬送ローラ74dの間を通り、最終的に搬送ローラ74bに回収される。
記録媒体Pとしては、印刷用紙以外に、布などでもよい。また、プリンタ1を、記録媒体Pの代わりに搬送ベルトを搬送する形態にし、記録媒体は、ロール状のもの以外に、搬送ベルト上に置かれた、枚葉紙、裁断された布、木材、あるいはタイルなどであってもよい。さらに、液体吐出ヘッド2から導電性の粒子を含む液体を吐出するようにして、電子機器の配線パターンなどを印刷してもよい。またさらに、液体吐出ヘッド2から反応容器などに向けて所定量の液体の化学薬剤や、化学薬剤を含んだ液体を吐出させて、反応させるなどして、化学薬品を作製してもよい。
また、プリンタ1に、位置センサ、速度センサ、温度センサなどを取り付け、制御部76が、各センサからの情報から分かるプリンタ1各部の状態に応じて、プリンタ1の各部を制御してもよい。特に、液体吐出ヘッド2から吐出される液体の吐出特性(吐出量や吐出速度など)が外部の影響を受けるようであれば、液体吐出ヘッド2の温度や液体タンクの液体の温度、液体タンクの液体が液体吐出ヘッド2に加えている圧力に応じて、液体吐出ヘッド2において液体を吐出させる駆動信号を変えるようにしてもよい。
(液体吐出ヘッドの全体構成)
次に、図2〜10を用いて第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド2について説明する。なお、図5,6では図面を分かりやすくするために、他の部材の下方にあって破線で描くべき流路などを実線で描いている。また、図5(a)では、第2流路部材6の一部を透過して示しており、図5(b)では、第2流路部材6の全部を透過して示している。また、図9においては、従来の液体の流れを破線で示し、吐出ユニット15の液体の流れを実線で示し、第2個別流路14から供給された液体の流れを長破線で示している。
なお、図面には、第1方向D1、第2方向D2、第3方向D3、第4方向D4、第5方向D5、および第6方向D6を図示している。第1方向D1は、第1共通流路20および第2共通流路24の延びる方向の一方側であり、第4方向D4は、第1共通流路20および第2共通流路24の延びる方向の他方側である。第2方向D2は、第1統合流路22および第2統合流路26の延びる方向の一方側であり、第5方向D5は、第1統合流路22および第2統合流路26の延びる方向の他方側である。第3方向D3は、第1統合流路22および第2統合流路26の延びる方向に直交する方向の一方側であり、第6方向D6は、第1統合流路22および第2統合流路26の延びる方向に直交する方向の他方側である。
図2,3に示すように、液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2aと、筐体50と、放熱板52と、配線基板54と、押圧部材56と、弾性部材58と、信号伝達部60と、ドライバIC62とを備えている。なお、液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2aを備えていればよく、筐体50、放熱板52、配線基板54、押圧部材56、弾性部材58、信号伝達部60、およびドライバIC62は必ずしも備えていなくてもよい。
液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2aから信号伝達部60が引き出されており、信号伝達部60は、配線基板54に電気的に接続されている。信号伝達部60には、液体吐出ヘッド2の駆動を制御するドライバIC62が設けられている。ドライバIC62は、弾性部材58を介して押圧部材56により放熱板52に押圧されている。なお、配線基板54を支持する支持部材の図示は省略している。
放熱板52は、金属あるいは合金により形成することができ、ドライバIC62の熱を外部に放熱するために設けられている。放熱板52は、螺子あるいは接着剤により筐体50に接合されている。
筐体50は、ヘッド本体2aの上面に載置されており、筐体50と放熱板52とにより、液体吐出ヘッド2を構成する各部材を覆っている。筐体50は、第1開口50aと、第2開口50bと、第3開口50cと、断熱部50dとを備えている。第1開口50aは、第3方向D3および第6方向D6に対向するようにそれぞれ設けられている。放熱板52が第1開口50aに配置されることにより、第1開口50aは封止されている。第2開口50bは、下方に向けて開口しており、第2開口50bを介して配線基板54および押圧部材56が筐体50の内部に配置される。第3開口50cは、上方に向けて開口しており、配線基板54に設けられたコネクタ(不図示)が収容される。
断熱部50dは、第2方向D2から第5方向D5に延びるように設けられており、放熱板52とヘッド本体2aとの間に配置されている。それにより、放熱板52に放熱された熱が、ヘッド本体2aに伝わる可能性を低減することができる。筐体50は、金属、合金、あるいは樹脂により形成することができる。
図4(a)に示すように、ヘッド本体2aは、第2方向D2から第5方向D5に向けて長い平板形状をなしており、第1流路部材4と、第2流路部材6と、圧電アクチュエータ基板40とを有している。ヘッド本体2aは、第1流路部材4の上面に、圧電アクチュエータ基板40および第2流路部材6が設けられている。圧電アクチュエータ基板40は、図4(a)に示す破線の領域に載置される。圧電アクチュエータ基板40は、第1流路部材4に設けられた複数の加圧室10(図8参照)を加圧するために設けられており、複数の変位素子48(図8参照)を有している。
(流路部材の全体構成)
第1流路部材4は、内部に複数の流路が形成されており、第2流路部材6から供給された液体を、下面に設けられた吐出孔8(図8参照)まで導いている。第1流路部材4は、上面が加圧室面4−1となっており、加圧室面4−1に開口20a,24a,28c,28dが形成されている。開口20aは、複数設けられており、第2方向D2から第5方向D5に沿って配列されている。開口20aは、加圧室面4−1の第3方向D3における端部に配置されている。開口24aは、複数設けられており、第2方向D2から第5方向D5に沿って配列されている。開口24aは、加圧室面4−1の第6方向D6における端部に配置されている。開口28cは、開口20aよりも第2方向D2における外側および第5方向D5における外側に設けられている。開口28dは、開口24aよりも第2方向D2における外側および第5方向D5における外側に設けられている。
第2流路部材6は、内部に複数の流路が形成されており、液体タンクから供給された液体を第1流路部材4まで導いている。第2流路部材6は、第1流路部材4の加圧室面4−1の外周部上に設けられており、圧電アクチュエータ基板40の載置領域の外側にて、接着剤(不図示)を介して、第1流路部材4と接合されている。
(第2流路部材(統合流路))
第2流路部材6は、図4,5に示すように、貫通孔6aと、開口6b,6c,6d,22a,26aとが形成されている。貫通孔6aは、第2方向D2から第5方向D5に延びるように形成されており、圧電アクチュエータ基板40の載置領域よりも外側に配置されている。貫通孔6aには、信号伝達部60が挿通している。
開口6bは、第2流路部材6の上面に設けられており、第2流路部材の第2方向D2における端部に配置されている。開口6bは、液体タンクから第2流路部材6に液体を供給している。開口6cは、第2流路部材6の上面に設けられており、第2流路部材の第5方向D5における端部に配置されている。開口6cは、第2流路部材6から液体タンクに液体を回収している。開口6dは、第2流路部材6の下面に設けられており、開口6dにより形成された空間に圧電アクチュエータ基板40が配置されている。
開口22aは、第2流路部材6の下面に設けられており、第2方向D2から第5方向D5に向けて延びるように設けられている。開口22aは、第2流路部材6の第3方向D3における端部に形成され、貫通孔6aよりも第3方向D3側に設けられている。
開口22aは、開口6bと連通しており、開口22aが第1流路部材4により封止されることにより、第1統合流路22を形成している。第1統合流路22は、第2方向D2から第5方向D5に延びるように形成されており、第1流路部材4の開口20aおよび開口28cに液体を供給する。
開口26aは、第2流路部材6の下面に設けられており、第2方向D2から第5方向D5に向けて延びるように設けられている。開口26aは、第2流路部材6の第6方向D6における端部に形成され、貫通孔6aよりも第6方向D6側に設けられている。
開口26aは、開口6cと連通しており、開口26aが第1流路部材4により封止されることにより、第2統合流路26を形成している。第2統合流路26は、第2方向D2から第5方向D5に延びるように形成されており、第1流路部材4の開口24aおよび開口28dから液体を回収する。
以上の構成により、液体タンクから開口6bに供給された液体は、第1統合流路22に供給され、開口22aを介して第1共通流路20に流れ込み、第1流路部材4に液体が供給される。そして、第2共通流路24により回収された液体は、開口26aを介して第2統合流路26に流れ込み、開口6cを介して外部へ液体が回収される。なお、第2流路部材6は、必ずしも設けなくてもよい。
なお、液体の供給および回収は、適宜な手段によって実現されてよい。例えば、図3(a)において点線で示すように、プリンタ1は、第1統合流路22、第1流路部材4の流路および第2統合流路26を含む循環流路78と、第1統合流路22から第1流路部材4の流路を経由して第2統合流路26へ向かう流れを形成する流れ形成部79とを有していてよい。
流れ形成部79の構成は、適宜なものとされてよい。例えば、流れ形成部79は、ポンプを含み、開口6cからの吸引および/または開口6bへの吐出を行う。また、例えば、流れ形成部79は、開口6cから回収された液体を貯留する回収空間と、開口6bへ供給される液体を貯留する供給空間と、回収空間から供給空間へ液体を送出するポンプと、を有し、供給空間の液面を回収空間の液面よりも高くすることにより、第1統合流路22と第2統合流路26との間に圧力差を生じさせるものであってもよい。
循環流路78のうち第1流路部材4および第2流路部材6の外側に位置する部分、ならびに流れ形成部79は、液体吐出ヘッド2の一部であってもよいし、液体吐出ヘッド2の外部に設けられていてもよい。
(第1流路部材(共通流路および吐出ユニット))
図5〜8および図10に示すように、第1流路部材4は、複数のプレート4a〜4mが積層されて形成されており、積層方向に断面を見たときに、上側に設けられた加圧室面4−1と、下側に設けられた吐出孔面4−2とを有している。加圧室面4−1上には、圧電アクチュエータ基板40が載置されており、吐出孔面4−2に開口した吐出孔8から、液体が吐出される。複数のプレート4a〜4mは、金属、合金、あるいは樹脂により形成することができる。なお、第1流路部材4は、複数のプレート4a〜4mを積層せずに、樹脂により一体形成してもよい。
第1流路部材4は、複数の第1共通流路20と、複数の第2共通流路24と、複数の端部流路28と、複数の吐出ユニット15と、複数のダミー吐出ユニット17とが形成されている。
第1共通流路20は、第1方向D1から第4方向D4に延びるように設けられており、開口20aと連通するように形成されている。また、第1共通流路20は、第2方向D2から第5方向D5に複数配列されている。
第2共通流路24は、第4方向D4から第1方向D1に延びるように設けられており、開口24aと連通するように形成されている。また、第2共通流路24は、第2方向D2から第5方向D5に複数配列されており、隣り合う第1共通流路20同士の間に配置されている。そのため、第1共通流路20および第2共通流路24は、第2方向D2から第5方向D5に向けて、交互に配置されている。
第1流路部材4の第2共通流路24にダンパ30が形成されており、ダンパ30を介して、第2共通流路24と面した空間32が配置されている。ダンパ30は、第1ダンパ30aと、第2ダンパ30bとを有している。空間32は、第1空間32aと、第2空間32bとを有している。第1空間32aは、第1ダンパ30aを介して液体が流れる第2共通流路24の上方に設けられている。第2空間32bは、第2ダンパ30bを介して液体が流れる第2共通流路24の下方に設けられている。
第1ダンパ30aは、第2共通流路24の上方の略全域に形成されている。そのため、平面視すると、第1ダンパ30aは、第2共通流路24と同形状をなしている。また、第1空間32aは、第1ダンパ30aの上方の略全域に形成されている。そのため、平面視すると、第1空間32aは、第2共通流路24と同形状をなしている。
第2ダンパ30bは、第2共通流路24の下方の略全域に形成されている。そのため、平面視すると、第2ダンパ30bは、第2共通流路24と同形状をなしている。また、第2空間32bは、第2ダンパ30bの下方の略全域に形成されている。そのため、平面視すると、第2空間32bは、第2共通流路24と同形状をなしている。第1流路部材4は、第2共通流路24にダンパ30が設けられていることにより、第2共通流路24の圧力変動を緩和することができ、流体クロストークが生じ難くなる。
第1ダンパ30aおよび第1空間32aは、プレート4d,4eにハーフエッチングにより溝を形成し、溝同士が対向するように接合することにより形成することができる。この際、プレート4eのハーフエッチングにより残った残部が、第1ダンパ30aとなる。第2ダンパ30bおよび第2空間32bも同様に、プレート4k,4lにハーフエッチングにより溝を形成することで作製することができる。
端部流路28は、第1流路部材4の第2方向D2の端部、および第5方向D5の端部に形成されている。端部流路28は、幅広部28aと、狭窄部28bと、開口28c,28dとを有している。開口28cから供給された液体は、幅広部28a、狭窄部28b、幅広部28aおよび開口28dをこの順に流れることにより、端部流路28を流れることとなる。それにより、端部流路28に液体が存在するとともに、端部流路28を液体が流れることとなり、端部流路28の周囲に位置する第1流路部材4の温度が液体により均一化される。それゆえ、第1流路部材4は、第2方向D2の端部および第5方向D5の端部から放熱される可能性が低減することとなる。
(吐出ユニット)
図6,7を用いて、吐出ユニット15について説明する。吐出ユニット15は、吐出孔8と、加圧室10と、第1個別流路12と、第2個別流路14と、第3個別流路16とを有している。なお、液体吐出ヘッド2では、第1個別流路12および第2個別流路14から加圧室10へ液体を供給し、第3個別流路16が加圧室10から液体を回収している。なお、詳細は後述するが、第2個別流路14の流路抵抗は、第1個別流路12の流路抵抗よりも低くなっている。
吐出ユニット15は、隣り合う第1共通流路20と第2共通流路24との間に設けられており、第1流路部材4の平面方向にマトリクス状に形成されている。吐出ユニット15は、吐出ユニット列15aと、吐出ユニット行15bとを有している。吐出ユニット列15aでは、吐出ユニット15が第1方向D1から第4方向D4に向けて配列されている。吐出ユニット行15bでは、吐出ユニット15が第2方向D2から第5方向D5に向けて配列されている。
加圧室10は、加圧室列10cと、加圧室行10dとを有している。また、吐出孔8は、吐出孔列8aと、吐出孔行8bとを有している。吐出孔列8aおよび加圧室列10cも同様に、第1方向D1から第4方向D4に向けて配列されている。また、吐出孔行8bおよび加圧室行10dも同様に、第2方向D2から第5方向D5に向けて配列されている。
第1方向D1および第4方向D4と、第2方向D2および第5方向D5とが成す角度は直角からずれている。このため、第1方向D1に沿って配置されている吐出孔列8aに属する吐出孔8同士は、その直角からのずれの分、第2方向D2にずれて配置される。そして、吐出孔列8aが第2方向D2に並んで配置されるので、異なる吐出孔列8aに属する吐出孔8は、その分、第2方向D2にずれて配置される。これらが合わさって、第1流路部材4の吐出孔8は、第2方向D2に一定間隔で並んで配置されている。これにより、吐出した液体により形成される画素で所定の範囲を埋めるように印刷ができる。
図6において、吐出孔8を第3方向D3および第6方向D6に投影すると、仮想直線Rの範囲に32個の吐出孔8が投影され、仮想直線R内で各吐出孔8は360dpiの間隔に並ぶ。これにより、仮想直線Rに直交する方向に記録媒体Pを搬送して印刷すれば、360dpiの解像度で印刷できる。
ダミー吐出ユニット17は、最も第2方向D2側に位置する第1共通流路20と、最も第2方向D2側に位置する第2共通流路24との間に設けられている。また、ダミー吐出ユニット17は、最も第5方向D5側に位置する第1共通流路20と、最も第5方向D5側に位置する第2共通流路24との間にも設けられている。ダミー吐出ユニット17は、最も第2方向D2または第5方向D5側に位置する吐出ユニット列15aの吐出を安定させるために設けられている。
加圧室10は、図7,8に示すように、加圧室本体10aと部分流路10bとを有している。加圧室本体10aは、上方(吐出側とは反対側)に開口する開口10hを有している。加圧室本体10aの形状は、例えば、概ね、高さが比較的小さい柱体である。従って、以下において、平面視における加圧室本体10aの形状(平面形状)の説明は、開口10hまたは加圧室本体10aの下面の形状の説明でもある。なお、ここでは、エッチングの誤差(アンダーカット等)は無視している。加圧室本体10aは、平面視して、円形状をなしており、加圧室本体10aの下面の一部から下方に向けて部分流路10bが延びている。加圧室本体10aは、加圧室本体10a上に設けられた変位素子48から圧力を受けることにより、部分流路10b中の液体を加圧する。
加圧室本体10aは、略円板形状であり、平面形状は円形状をなしている。平面形状が円形状であることにより、変位量、および変位により生じる加圧室10の体積変化を大きくすることができる。部分流路10bは、直径が加圧室本体10aより小さい略円柱形状であり、平面形状は円形状である。また、部分流路10bは、加圧室面4−1から見たときに、加圧室本体10a内に収納されている。
なお、部分流路10bは、吐出孔8側に向かって断面積の小さくなる円錐状あるいは円錐台状であってもよい。それにより、第1共通流路20および第2共通流路24の幅を大きくでき、上述の圧力損失の差を小さくできる。
加圧室10は、第1共通流路20の両側に沿って配置されており、片側1列ずつ、合計2列の加圧室列10cを構成している。第1共通流路20とその両側に並んでいる加圧室10とは、第1個別流路12および第2個別流路14を介して接続されている。
また、加圧室10は、第2共通流路24の両側に沿って配置されており、片側1列ずつ、合計2列の加圧室列10cを構成している。第2共通流路24とその両側に並んでいる加圧室10とは、第3個別流路16を介して接続されている。
図7を用いて、第1個別流路12、第2個別流路14および第3個別流路16について説明する。
第1個別流路12は、第1共通流路20と加圧室本体10aとを接続している。第1個別流路12は、第1共通流路20の上面から上方へ向けて延びた後、第5方向D5に向けて延び、第4方向D4に向けて延びた後、再び上方へ向けて延びて加圧室本体10aの下面に接続されている。
第2個別流路14は、第1共通流路20と部分流路10bとを接続している。第2個別流路14は、第1共通流路20の下面から第5方向D5へ向けて延び、第1方向D1に向けて延びた後、部分流路10bの側面に接続されている。
第3個別流路16は、第2共通流路24と部分流路10bとを接続している。第3個別流路16は、第2共通流路24の側面から第2方向D2に向けて延び、第4方向D4に向けて延びた後、部分流路10bの側面に接続されている。
そして、第2個別流路14の流路抵抗は、第1個別流路12の流路抵抗よりも低くなっている。第2個別流路14の流路抵抗を、第1個別流路12の流路抵抗よりも低くするには、例えば、第2個別流路14が形成されるプレート4lの厚みを、第1個別流路12が形成されるプレート4cの厚みよりも厚くすればよい。また、平面視して、第2個別流路14の幅を、第1個別流路12の幅よりも広くしてもよい。また、平面視して、第2個別流路14の長さを、第1個別流路12の長さよりも短くしてもよい。
以上のような構成により、第1流路部材4では、開口20aを介して第1共通流路20に供給された液体は、第1個別流路12および第2個別流路14を介して加圧室10に流れ込み、一部の液体は吐出孔8から吐出される。そして、残りの液体は、加圧室10から、第3個別流路16を介して第2共通流路24に流れ込み、開口24aを介して、第1流路部材4から第2流路部材6に排出される。
(圧電アクチュエータ)
図7(c),8を用いて圧電アクチュエータ基板40について説明する。第1流路部材4の上面には、変位素子48を含む圧電アクチュエータ基板40が接合されており、各変位素子48が加圧室10上に位置するように配置されている。圧電アクチュエータ基板40は、加圧室10によって形成された加圧室群と略同一の形状の領域を占有している。また、各加圧室10の開口10hは、第1流路部材4の加圧室面4−1に圧電アクチュエータ基板40が接合されることで閉塞される。
圧電アクチュエータ基板40は、圧電体である2枚の圧電セラミック層40a、40bからなる積層構造を有している。これらの圧電セラミック層40a、40bは、例えば、それぞれ50μm以下、より具体的には20μm程度の厚さを有している。圧電セラミック層40a、40bのいずれの層も複数の加圧室10を跨ぐように延在している。
これらの圧電セラミック層40a、40bは、例えば、強誘電性を有する、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO3系、BaTiO3系、(BiNa)NbO3系、BiNaNb5O15系などのセラミックス材料からなる。なお、圧電セラミック層40bは、振動板として働いており、必ずしも圧電体である必要はなく、代わりに、圧電体でない他のセラミック層、金属板または樹脂板を用いてもよい。振動板は、第1流路部材4の一部を構成する部材に兼用されているかのような構成とされてもよい。例えば、振動板は、図示の例とは異なり、加圧室面4−1全体に亘る広さを有するとともに、開口20a,24a,28c,28dと対向する開口を有していてもよい。
なお、液体吐出ヘッド2において、第1流路部材4と圧電アクチュエータ基板40との境界は、製造工程等に関わらず、加圧室10の開口10hの位置を基準に判断されてよい。例えば、第1流路部材4と圧電アクチュエータ基板40とが接着される場合と、第1流路部材4と開口10hを塞ぐ振動板(またはそのうちの一部の層)とを接着したものと、圧電アクチュエータ基板40から振動板(または前記一部の層)を除いたものとが接着される場合とで、積層体における第1流路部材4および圧電アクチュエータ基板40の範囲は変わらない。
圧電アクチュエータ基板40には、共通電極42と、個別電極44と、接続電極46とが形成されている。共通電極42は、圧電セラミック層40aと圧電セラミック層40bとの間の領域に面方向の略全面にわたって形成されている。そして、個別電極44は、圧電アクチュエータ基板40の上面における加圧室10と対向する位置に配置されている。
圧電セラミック層40aの個別電極44と共通電極42とに挟まれている部分は、厚さ方向に分極されており、個別電極44に電圧を印加すると変位する、ユニモルフ構造の変位素子48となっている。そのため、圧電アクチュエータ基板40は、複数の変位素子48を有している。
共通電極42は、Ag−Pd系などの金属材料により形成することができ、共通電極42の厚さは2μm程度とすることができる。共通電極42は、圧電セラミック層40aを貫通して形成されたビアホールを介して圧電セラミック層40a上の共通電極用表面電極(不図示)と繋がっており、共通電極用表面電極を介して接地され、グランド電位に保持されている。
個別電極44は、Au系などの金属材料により形成されており、個別電極本体44aと、引出電極44bとを有している。図7(c)に示すように、平面透視において、個別電極本体44aは、加圧室本体10a(開口10h)に重なる部分であり、引出電極44bは、加圧室本体10aの外に位置する部分である。
個別電極本体44aは、中央部44aaと、中央部44aaから突出している接続部44abとを有している。中央部44aaは、個別電極本体44aの大部分を構成し、圧電セラミック層40aに対する電圧印加を担う部分である。接続部44abは、中央部44aaと引出電極44bとを接続する部分である。
中央部44aaは、平面視して、略円形状に形成されており、加圧室本体10aよりも小さく形成されている。別の観点では、中央部44aaの平面形状は、加圧室本体10aと概ね相似形である。接続部44abの平面形状は、例えば、加圧室本体10aの内側から外側へ一定の幅で直線状に延びる形状(長方形)である。
引出電極44bは、個別電極本体44aから引き出されている。引出電極44bの形状は、例えば、加圧室本体10aの加圧室本体10aから離れる方向へ一定の幅で直線状に延びる形状(長方形)である。引出電極44bおよび個別電極本体44aの接続部44abは、例えば、同一の幅で直線状につながっている。引出電極44bの個別電極本体44aとは反対側の端部上には接続電極46が形成されている。
接続電極46は、例えばガラスフリットを含む銀−パラジウムからなり、厚さが15μm程度で凸状に形成されている。接続電極46は、信号伝達部60に設けられた電極と電気的に接合されている。
液体吐出ヘッド2は、制御部76の制御により、ドライバIC62などを介して、個別電極44に供給される駆動信号に従って、変位素子48を変位させる。駆動方法としては、いわゆる引き打ち駆動を用いることができる。
(吐出ユニットの詳細および作用)
図9を用いて液体吐出ヘッド2の吐出ユニット15を詳細に説明する。
吐出ユニット15は、吐出孔8と、加圧室10と、第1個別流路12と、第2個別流路14と、第3個別流路16とを備えている。第1個別流路12および第2個別流路14は、第1共通流路20(図8参照)に接続されており、第3個別流路16は、第2共通流路24(図8参照)に接続されている。
第1個別流路12は、加圧室10のうち加圧室本体10aの第1方向D1側に接続されている。第2個別流路14は、加圧室10のうち部分流路10bの第4方向D4側に接続されている。第3個別流路16は、加圧室10のうち部分流路10bの第1方向D1側に接続されている。
第1個別流路12から供給された液体は、加圧室本体10aを通って部分流路10bを下方に向けて流れ、一部が吐出孔8から吐出される。吐出孔8から吐出されなかった液体は、第3個別流路16を介して、吐出ユニット15の外部に回収される。
第2個別流路14から供給された液体は、一部が吐出孔8から吐出される。吐出孔8から吐出されなかった液体は、部分流路10b内を上方へ向けて流れ、第3個別流路16を介して、吐出ユニット15の外部に回収される。
図9に示すように、第1個別流路12から供給された液体は、加圧室本体10a、および部分流路10bを流れて吐出孔8から吐出される。従来の吐出ユニットにおける液体の流れは破線で示すように、加圧室本体10aの中央部から吐出孔8に向けて一様に略直線状に流れている。
このような流れが生じると、加圧室10のうち、第2個別流路14が接続された部位と反対側に位置する領域80付近には液体が流れにくい構成となり、例えば、領域80付近に液体の滞留する領域が生じるおそれがある。
これに対して、吐出ユニット15では、第1個別流路12および第2個別流路14が加圧室10に接続されており、これらの流路から加圧室10に液体が供給される。
そのため、第1個別流路12から吐出孔8へ供給される液体の流れに対して、第2個別流路14から加圧室10へ供給された液体の流れを衝突させることができる。それにより、加圧室10から吐出孔8へ供給される液体の流れが、一様に略直線状に流れにくくなり、加圧室10内に液体が滞留する領域を生じにくくすることができる。
すなわち、加圧室10から吐出孔8へ供給される液体の流れにより生じた液体の滞留点の位置が、加圧室10から吐出孔8へ供給される液体の流れとの衝突により移動することになり、加圧室10内に液体の滞留する領域を生じにくくすることができる。
また、加圧室10が、加圧室本体10aおよび部分流路10bを有しており、第1個別流路12が加圧室本体10aに接続され、第2個別流路14が部分流路10bに接続されている。そのため、第1個別流路12が、加圧室10全体を流れるように液体を供給するとともに、第2個別流路14から供給された液体の流れにより、部分流路10bに液体の滞留する領域が生じにくくなる。
また、第3個別流路16は、部分流路10bに接続されている。そのため、第2個別流路14から第3個別流路16に向けて流れる液体の流れが、部分流路10bの内部を横断する構成となる。その結果、加圧室本体10aから吐出孔8へ供給される液体の流れを横切るように、第2個別流路14から第3個別流路16へ向けて流れる液体を流すことができる。それゆえ、さらに部分流路10b内に液体の滞留する領域が生じにくくなる。
(拡張室)
図7および図10に示すように、第1流路部材4は、加圧室本体10aを拡張するかのように形成された拡張室25を備えている。拡張室25は、加圧室10と同様に圧電アクチュエータ基板40側に開口している(開口25h(図10参照)を有している。)。拡張室25の形状は、例えば、概ね、柱体である。従って、以下において、平面視における拡張室25の形状(平面形状)の説明は、開口25hまたは拡張室25の下面の形状の説明でもある。なお、ここでは、エッチングの誤差(アンダーカット等)は無視している。拡張室25(開口25h)は、平面透視において、加圧室本体10a(開口10h)から突出して引出電極44bと重なっている。
このような拡張室25が形成されることによって、例えば、引出電極44bの直下においては、加圧室本体10aの内壁と圧電アクチュエータ基板40とが非接触となる、または接触が低減される。ここで、液体の吐出のために共通電極42と個別電極44とに電圧を印加すると、中央部44aaの直下だけでなく、引出電極44bの直下においても、圧電セラミック層40aに電圧が印加される。従って、本実施形態とは異なり、引出電極44bの直下において加圧室本体10aの内壁と圧電アクチュエータ基板40とが接触していると、例えば、圧電セラミック層40aの平面方向における収縮または伸長によって、加圧室本体10aの内壁が当該内壁の面する方向に振動するおそれがある。しかし、上記のように拡張室25によって加圧室本体10aの内壁と圧電アクチュエータ基板40とが非接触とされ、または接触が低減されていることから、そのような内壁の振動が低減される。その結果、例えば、加圧室本体10aの内壁の意図しない振動によって吐出特性が低下するおそれが低減される。
上記のような効果は、圧電セラミック層40aのうち引出電極44bと重なる部分が、個別電極本体44aと重なる部分と同様に分極されている場合に顕著となる。例えば、圧電アクチュエータ基板40またはヘッド本体2aを作製してから、個別電極44および共通電極42に電圧を印加することによって分極すると、圧電セラミック層40aは、引出電極44bの直下においても分極されることになる。なお、このような圧電アクチュエータ基板40またはヘッド本体2aを組み上げてからの分極は、圧電セラミック層40aが比較的薄い場合(例えば50μm以下)において行われることが多い。圧電セラミック層40aが比較的薄いと、分極処理によって生じる圧電セラミック層40aの変形がその後の製造工程に及ぼす影響が相対的に大きくなることからである。
なお、加圧室本体10aは、通常、円形、楕円形(数学上の楕円でなくてよい)、長円形(長方形の短辺を外側に膨らむ弧状とした形状)、菱形、平行四辺形など、一定の形状を有していることが多い。一方、拡張室25は、加圧室本体10aから「突出」している部分である。従って、第1流路部材4の上面に加圧室10内に通じる開口が開口している場合において、当該開口が、加圧室10の開口10hのみからなるものであるか、開口10hに加えて拡張室25の開口25hを含むものであるかは、通常、その開口の形状から簡単に判定できることが多い。また、加圧室10および拡張室25の機能に照らして、開口10hの面積は、開口25hの面積よりも明らかに大きいから、この点も判定の一助となる。また、開口に、突出している部分があっても、個別電極44(引出電極44b)との重なりが全くなければ、当該部分は拡張室25の開口25hではない。
第1流路部材4の上面に開口する開口が、突出している部分(拡張室25の開口25h)を有しているか否か判定が難しい場合は、例えば、以下のように、数学上の凸集合の考え方を用いて判定してもよい。
加圧室本体10aの平面形状は、例えば、数学上の凸である(凸集合からなる)ことが多い。確認的に記載すると、平面形状が凸であるとは、その平面形状に含まれる任意の2点を結ぶ線分上の任意の点が当該平面形状に含まれることをいう。このような形状としては、例えば、凸閉曲線を外縁とする形状または凸多角形が挙げられる。凸閉曲線を外縁とする形状としては、例えば、円形または楕円形が挙げられる。凸多角形としては、例えば、菱形または平行四辺形が挙げられる。その他、凸である形状としては、長円形、または凸多角形の角部を曲線で面取りした形状が挙げられる。
そして、加圧室本体10aから突出する拡張室25が設けられると、加圧室本体10aおよび拡張室25の全体としての平面形状は、数学上の凸でなくなる(非凸集合からなる)場合が多い。確認的に記載すると、平面形状が凸でない場合とは、平面形状に含まれる任意の2点を結ぶ線分上の任意の点が当該平面形状の外に位置し得ることをいう。なお、非凸集合の語は、否定的表現であるが、凹集合の語よりも一般的に用いられる。
従って、例えば、第1流路部材4の上面に開口する開口の平面形状が凸であれば、当該開口は、加圧室本体10aの開口10hのみからなると判定できる。また、第1流路部材4の上面に開口する開口の平面形状が非凸であれば、開口10hに加えて、拡張室25の開口25hを含み得ると判定することができる。また、非凸の場合においては、平面形状の外縁には外側に凹となる角部または湾曲部が形成されているから、その位置を境界として、加圧室本体10aおよび突出部分(拡張室25)を特定できる。なお、両者の境界は、必ずしも明確でなくてもよい。突出部分の存在が確認でき、当該突出部分と個別電極との重なりの有無を判定できればよい。
なお、以下の凸集合の考え方を利用した判定方法は、あくまで拡張室25の有無を簡単に判定できない場合のものである。従って、例えば、加圧室10の開口10hの形状は、必ずしも凸である必要はない。
上述のように、圧電アクチュエータ基板40は、引出電極44bの個別電極本体44aとは反対側の端部に対して圧電セラミック層40aとは反対側に重なっている接続電極46をさらに有している。そして、拡張室25の開口25hは、例えば、平面透視において接続電極46に対する重なりが接続電極46の面積(平面視にける面積)の半分未満である。
従って、例えば、平面透視において開口25hが接続電極46の全体に重なっている態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる。)に比較して、圧電アクチュエータ基板40は、接続電極46の直下における第1流路部材4との接触面積が大きい。これにより、例えば、圧電アクチュエータ基板40は、剛性に関して接続電極46の直下において補強される。その結果、例えば、信号伝達部60に設けられた電極と接続電極46とを接合するときに、接続電極46の直下において圧電アクチュエータ基板40が変形するおそれが低減される。ひいては、接合の精度が向上して、液体吐出ヘッド2の信頼性が向上する。
また、拡張室25が設けられる構成において、加圧室10の開口10hの平面形状は、例えば、円形である。
従って、例えば、圧電アクチュエータ基板40によって拡張室25内の液体が加圧され、拡張室25から加圧室本体10aへ圧力波が伝搬するとき、圧力波は、平面視において広い角度に亘って伝搬するから、分散され易い。その結果、例えば、拡張室25が液滴の吐出に及ぼす影響が緩和される。また、加圧室本体10aのいずれの位置から拡張室25が突出しても、拡張室25から加圧室本体10aへの圧力の伝搬態様は概ね一定である。その結果、例えば、複数の吐出ユニット15間で引出電極44bの位置が互いに相違している場合において、当該相違に起因する複数の吐出ユニット15間の吐出特性のばらつきが低減される。
また、拡張室25の吐出側の面には、部分流路10b、液体の供給のための流路(第1個別流路12または第2個別流路14)、および液体の回収のための流路(第3個別流路16)のいずれも開口していない。
従って、例えば、拡張室25の下面と部分流路10bまたは第1個別流路12とが接続されている態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる)に比較して、圧電アクチュエータ基板40が拡張室25に付与する圧力が加圧室10内の圧力または流れに及ぼす影響が低減される。その結果、例えば、吐出特性が向上する。
また、平面視において、部分流路10bの加圧室本体10aに対する開口位置(接続位置)は、加圧室本体10aに対して所定方向の一方側(第4方向D4側)へ偏心しており、拡張室25の開口25hは、例えば、加圧室10の開口10hの面積重心P1(図7(c))よりも前記一方側(第4方向D4側)の部分から突出している。
従って、拡張室25で生じた圧力波は、例えば、加圧室本体10aにおいて、第4方向D4側から面積重心P1側へ拡散しつつ伝搬し、続いて、面積重心P1から第1方向D1側へ集中しつつ伝搬する。そして、当該圧力波は、拡散する過程において部分流路10bへ回折して入り込む。その結果、例えば、圧力波が集中する過程において部分流路10bに入り込む態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる)に比較して、拡張室25の圧力が吐出に及ぼす影響を低減することができる。
なお、部分流路10bの加圧室本体10aへの開口が加圧室本体10aに対して偏心しているか否かは、例えば、両者の面積重心を基準に判定してよい。面積重心は、確認的に記載すると、そのまわりでの1次モーメントが0になる位置である。
また、平面視において、部分流路10bの加圧室本体10aに対する開口位置(接続位置)は、加圧室本体10aに対して所定方向の一方側(第4方向D4側)へ偏心しており、拡張室25の開口25hは、例えば、加圧室10の開口10hから前記所定方向(第4方向D4)に交差する方向へ突出している。
従って、加圧室本体10aの面積重心P1から部分流路10bへ入り込む圧力波と、拡張室25から加圧室本体10aへ伝搬する圧力波との進行方向がずれやすくなる。その結果、例えば、両者の進行方向が同一または逆である態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる)に比較して、加圧室本体10aの広い範囲に亘って定在波が生じるおそれが低減される。すなわち、意図しない比較的大きな圧力変動が生じるおそれが低減される。
また、拡張室25の、厚さ(吐出側からその反対側への大きさ)は、加圧室本体10aの厚さと同等である。
従って、例えば、加圧室本体10aの厚み全体に亘って、引出電極44bと重なる位置にある加圧室本体10aの内壁が拡張室25によって切り欠かれることになる。その結果、例えば、内壁の振動が加圧室本体10aの圧力に及ぼす影響がより確実に低減される。
平面透視において、引出電極44bのうち加圧室10の開口10hから少なくとも途中までの部分は、幅全体が拡張室25の開口25hに収まっている。
すなわち、加圧室本体10aの内壁のうち、平面透視において引出電極44bと重なる部分の全体が拡張室25によって切り欠かれる。従って、例えば、内壁の振動が加圧室本体10aの圧力に及ぼす影響がより確実に低減される。
なお、拡張室25の平面視における具体的な形状および位置は、引出電極44bの形状および位置等に応じて適宜に設定されてよい。図示の例では、拡張室25は、引出電極44bと同様に、一定の幅で直線状に延びる形状(概略長方形)とされており、その幅および長さは、引出電極44bよりも小さい。
なお、以上の実施形態において、圧電セラミック層40aは圧電体層の一例である。開口10hは加圧室開口の一例である。開口25hは拡張室開口の一例である。搬送ローラ74a〜74dは搬送部の一例である。
本開示の態様は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
加圧室に接続され、液体の供給または回収に供される流路の構成は、実施形態に例示したものに限定されない。例えば、図9において、第2個別流路14および/または第3個別流路16の部分流路10bから延びる方向が図示とは逆にされてもよい。また、例えば、第1個別流路12および第3個別流路16から加圧室10に液体が供給され、第2個別流路14から液体が回収されてもよい。第1個別流路12が液体の回収に利用されてもよい。また、3本の個別流路のうち1本が液体の供給に利用され、2本が液体の回収に利用されてもよい。個別流路は、3本設けられている必要はなく、例えば、液体の供給用の1本のみ(例えば第1個別流路12のみ)が設けられてもよいし、供給用の1本と回収用の1本との合計2本が設けられてもよい。
加圧室開口(開口10h)の形状、および個別電極本体の中央部(44aa)の形状は、円形に限定されない。例えば、実施形態の説明において凸である形状の例として列挙した種々の形状とされてよい。
拡張室開口(開口25h)の形状、および引出電極(44b)の形状も長方形に限定されない。例えば、引出電極は、直線状に延びるのではなく、曲線状に延びてもよい。このような引出電極の形状に応じて、拡張室開口も曲線状に延びてよい。また、例えば、引出電極は、その先端(個別電極本体とは反対側)に、幅が広くなるパッド状部分を有していてもよい。このような引出電極の形状において、拡張室開口は、パッド状部分と重なっていなくてもよいし、重なっていてもよい。
また、拡張室開口の形状は、引出電極の形状を反映したものでなくてもよい。例えば、長方形の引出電極が設けられている場合において、拡張室開口の形状は、加圧室側を中心側とする半円状であったり、加圧室側を底辺とする2等辺三角形であったりしてもよい。
また、拡張室開口は、実施形態において例示したように加圧室からの突出量が幅よりも大きくてもよいし、実施形態とは逆に、幅が突出量よりも大きくてもよい。拡張室の厚みは、加圧室本体の厚みと同等でなくてもよい。例えば、拡張室は、プレート4aの上面をハーフエッチングすることによって形成され、加圧室本体10aの厚みの概ね半分の厚みを有していてもよい。その場合、加圧室本体10aの意図しない振動による吐出特性の低下を抑えつつ、プレート4aの剛性の低下を抑えることができる。また、拡張室の幅は、引出電極の幅以上でなくてもよい。
圧電体アクチュエータ基板は、ユニモルフ型のものに限定されず、バイモルフ型のものであってもよい。
実施形態において説明した具体的な構成は、拡張室が設けられた全ての吐出ユニットについて成り立つ必要はない。例えば、拡張室と、その他の空間(加圧室本体、部分流路または個別流路)との位置関係は、全ての吐出ユニットについて成り立つ必要はない。一部の吐出ユニットにおいてのみ、特定の効果が奏されるだけでも、液体吐出ユニットの信頼性等は向上する。