以下に、本発明に係る農作業支援システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る農作業支援システムで用いるトラクタの側面図である。なお、以下の説明においては、前後、左右の方向基準は、トラクタ10の運転席21からみて、車体の走行方向を基準として、前後、左右の基準を規定している。本実施形態に係る農作業支援システム1で用いる作業車両の一例であるトラクタ10は、走行車体11の前部のボンネット12の内部にエンジン17を搭載し、このエンジン17の回転動力をミッションケース18内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪14及び後輪15に伝えるようにしている。これにより、走行車体11は、圃場や道路を走行することが可能になっている。エンジン17の後方に前輪14を操舵するハンドル20が装備され、さらに、その後方には運転席21が設置されている。走行車体11の後部には、ロプスフレーム25が走行車体11側から立設され、ロプスフレーム25上には背面視アーチ型のロプス(安全フレーム)26が装着支持されている。
ミッションケース18の後上部には油圧シリンダケース30が搭載され、このシリンダケース30の左右両側部には、油圧昇降機構の一部を構成するリフトアーム31が回動自在に枢支されている。シリンダケース30内に収容されている作業機昇降用油圧シリンダ32に作動油を供給するとリフトアーム31が上方に回動し、排出するとリフトアーム31は下降するようになっている。
走行車体11の後部にはトップリンク33と左右のロワリンク34からなる3点リンク機構を設け、同リンク機構に、対地作業を行う作業装置である耕耘装置40を連結している。この耕耘装置40は、コントロールレバー22を操作するとリフトア−ム31の上下動によりリフトロッド35を介して昇降するようになっている。
耕耘装置40には、左右方向における一側に、耕耘伝動機構を内設するチエンケース41が設けられている。トラクタ本体から突設するPTO(Power take−off)軸36の回転動力は、耕耘装置40が有するギヤボックス内の伝動機構に伝達され、さらに、チエンケース41内の耕耘伝動機構を経てロータリ軸43に伝達されるようになっている。ロータリ軸43には、円周上に多数の耕耘爪を有する耕耘ロータリ44が連結されており、耕耘ロータリ44は、ロータリ軸43を中心として、ロータリ軸43と共に回転可能になっている。
この耕耘ロータリ44は、上方側が耕耘カバー45に覆われており、耕耘カバー45の後端部には、リヤカバー46が上下回動自在に枢着支持されている。このリヤカバー46は、付勢手段である張圧ばね47によって、常時下方側に向けて張圧保持されるようになっている。また、耕耘装置40は、耕耘カバー45の上方にトップリンクマスト42が配設されており、トップリンクマスト42には、前側端部に3点リンク機構のトップリンク33が連結されている。
また、トラクタ10は、GPS(Global Positioning System)によってトラクタ10の位置情報を取得するGPS制御装置50を備えており、走行車体11には、GPS制御装置50を構成する受信アンテナ51が配設されている。この受信アンテナ51は、所定の時間的な間隔でGPS座標を取得することにより、地球上における作業位置情報を所定間隔で取得する位置情報取得装置として設けられている。この受信アンテナ51は、走行車体11の後部に配設されるロプス26の上端部に取り付けられている。
図2は、トラクタに代掻き装置を連結した場合の側面図である。また、トラクタ10は、耕耘装置40以外の作業装置を走行車体11に連結することが可能になっており、例えば、圃場で代掻き作業を行うことができる代掻き装置70を連結することが可能になっている。代掻き装置70は、トラクタ10の後部にリフトアーム31で昇降されるロアリンク34やトップリンク33等の昇降リンクを介して装着される。リフトアーム31によりロアリンク34やトップリンク33等が昇降されることで、代掻き装置70は、昇降される。この代掻き装置70は、エンジン17の駆動力を作業装置に向けて伝達するPTO軸36によって駆動力が伝達され、作動することが可能になっている。
また、代掻き装置70には、圃場情報取得手段であり、土壌の成分量を測定する成分量検知部材でもあるpHセンサ71が設けられている。このpHセンサ71は、代掻き装置70の左右側部に配設されており、水を張った圃場の土中に入り込ませることにより、水素イオン濃度を測定して土壌の酸性度を検出するセンサになっている。
このように構成されるトラクタ10は、走行車体11や耕耘装置40、代掻き装置70の作業情報を記憶したり表示したりする作業情報記憶装置であるタブレット端末装置300を備えており、タブレット端末装置300との間で無線通信をすることが可能になっている。このタブレット端末装置300は、タッチパネル301を有しており、各種の情報をタッチパネル301によって表示すると共に、作業者がタッチパネル301に対して入力操作を行うことにより、情報の入力や動作指示を行うことが可能になっている。また、タブレット端末装置300は、作業中のトラクタ10の位置情報を含むトラクタ10の作業情報を、データベース化して記憶し、作業情報及び地図データを表示可能に構成されている。即ち、タブレット端末装置300は、トラクタ10の作業情報や地図データ等を、タッチパネル301によって表示することが可能になっている。
図3は、図1に示すトラクタとタブレット端末装置の機能ブロック図である。本実施形態に係るトラクタ10は、電子制御によって各部を制御することが可能になっており、このため、トラクタ10には、各部を制御するコントローラ80が備えられている。このコントローラ80は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部や、RAM(Random Access Memory)等の記憶部、さらに入出力部が設けられており、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。記憶部には、トラクタ10を制御するコンピュータプログラムが格納されている。このコントローラ80は、モータ等のアクチュエータ類や、各部の情報を取得するセンサ類等が接続されている。
例えば、コントローラ80には、アクチュエータ類として、エンジン17や、ミッションケース18内の変速装置、耕耘装置40を昇降させる作業機昇降用油圧シリンダ32等が接続されている。また、コントローラ80に接続されるセンサ類としては、前輪14や後輪15の緩衝機構として走行車体11に備えられるサスペンションのストロークを検出するストロークセンサ65や、土壌の酸性度を検出するpHセンサ71等が接続されている。なお、pHセンサ71は、代掻き装置70が走行車体11に連結された際に、機械的に接続されると共に電気的にも接続されることにより、pHセンサ71は走行車体11に設けられるコントローラ80に電気的に接続されている。また、ストロークセンサ65は、サスペンションのストロークを検出することにより、圃場の深さを測定する深度検知部材として設けられており、圃場情報を取得する圃場情報取得手段の1つとして設けられている。即ち、ストロークセンサ65は、圃場情報として、圃場の深さを検出することが可能になっている。
また、コントローラ80には、GPS制御装置50も接続されており、受信アンテナ51で受信した位置情報は、コントローラ80で取得することが可能になっている。
また、トラクタ10は、ハンドル20を操作して、走行車体11を直進方向に維持することが可能な自動操舵装置60を備えており、自動操舵装置60も、コントローラ80に接続されている。この自動操舵装置60は、任意の回転力をハンドル20に付与することにより、ハンドル20を回転させる操舵モータ61と、ハンドル20の回転角度を検知するハンドルポテンショメータ62と、を有している。これらの操舵モータ61やハンドルポテンショメータ62は、ハンドル20の回転軸に対して回転力を付与したり、ハンドル20の回転軸の回転角度を検知したりすることにより、ハンドル20を操作したり、回転角度を検知したりすることが可能になっている。
また、トラクタ10は、タブレット端末装置300との間で無線通信を行うトラクタ通信部81を有している。トラクタ通信部81は、電波を用いた無線通信により、タブレット端末装置300との間で信号の送受信を行うことが可能になっており、これによりコントローラ80は、トラクタ通信部81を介して、タブレット端末装置300との間で信号の送受信を行うことが可能になっている。
また、タブレット端末装置300は、タッチパネル301と、端末通信部304と、記憶部303と、制御部302と、スピーカ305と、を有している。このうち、タッチパネル301は、タブレット端末装置300における情報の表示部と、タブレット端末装置300の入力部とを兼ねている。このため、タッチパネル301は、トラクタ10の作業情報や地図データ等の各種の情報を表示すると共に、作業者が指等でタッチパネル301に触れることにより、入力操作を行うことが可能になっている。
また、端末通信部304は、タブレット端末装置300側の通信部として設けられている。この端末通信部304は、電波を用いた無線通信により、トラクタ10との間で信号の送受信を行うことにより情報の送受信が可能になっており、即ち、トラクタ10が有するトラクタ通信部81との間で、信号の送受信を行うことが可能になっている。詳しくは、端末通信部304は、近距離無線接続によりトラクタ10との間で情報の送受信を行うことが可能になっており、近距離無線接続としては、例えば、Bluetooth(登録商標)が用いられる。これにより、トラクタ通信部81も、Bluetoothに対応しており、これにより、端末通信部304とトラクタ通信部81とは、無線通信が可能になっている。
また、記憶部303は、各種の情報を記憶しており、タブレット端末装置300を作動させるプログラムや、端末通信部304を介して取得した、作業中のトラクタ10の位置情報を含むトラクタ10の作業情報等の各種の情報を記憶することが可能になっている。
また、制御部302は、各種の演算処理を行うことが可能になっており、タッチパネル301、端末通信部304、記憶部303は、全て制御部302に接続され、制御部302との間で互いに信号の受け渡しを行うことが可能になっている。制御部302は、例えば、端末通信部304によって受信した情報に基づいて記憶部303にトラクタ10の作業情報を記憶させたり、タッチパネル301に対して、作業情報や地図データを表示させたりすることが可能になっている。
また、スピーカ305は、任意の音声を出すことが可能になっており、作業者に対して音声によって任意の報知を行う報知装置としても設けられている。
図4は、実施形態に係る農作業支援システムで用いる苗移植機の側面図である。図5は、図4に示す苗移植機の平面図である。本実施形態に係る農作業支援システム1では、作業装置として苗移植機100も用いられる。なお、以下の説明においては、前後、左右、上下の方向基準は、苗移植機100の運転席128からみて、車体の走行方向を基準として、前後、左右、上下の基準を規定している。本実施形態に係る農作業支援システム1で用いる作業車両の一例である苗移植機100の走行車体101は、左右一対の前輪104と、同様に左右一対の後輪105とを有しており、走行時には各車輪が駆動する四輪駆動車としている。これにより、走行車体101は、圃場や道路を走行することが可能になっている。また、走行車体101の後部には、苗植付部昇降機構140によって昇降可能な苗植付部150が備えられている。
この走行車体101は、車体の略中央に配置されたメインフレーム107と、このメインフレーム107の上に搭載されたエンジン110と、エンジン110の動力を駆動輪と苗植付部150とに伝える動力伝達装置115と、を備えている。つまり、この苗移植機100では、動力源であるエンジン110で発生した動力は、走行車体101を前進や後進させるために用いるのみでなく、苗植付部150を駆動させるためにも使用され、ディーゼル機関やガソリン機関等の熱機関が用いられる。
また、エンジン110は、走行車体101の左右方向における略中央で、且つ、作業者が乗車時に足を載せるフロアステップ126よりも上方に突出させた状態で配置されている。また、フロアステップ126は、走行車体101の前部とエンジン110の後部との間に渡って設けられてメインフレーム107上に取り付けられている。また、フロアステップ126の後方には、後輪105のフェンダを兼ねたリアステップ127が設けられている。このリアステップ127は、後方に向うに従って上方に向う方向に傾斜した傾斜面を有しており、エンジン110の左右それぞれの側方に配置されている。
エンジン110は、これらのフロアステップ126とリアステップ127とから上方に突出しており、これらのステップから突出している部分には、エンジン110を覆うエンジンカバー111が配設されている。即ち、エンジンカバー111は、フロアステップ126とリアステップ127とから上方に突出した状態で、エンジン110を覆っている。
また、走行車体101には、エンジンカバー111の上部に、作業者が搭乗する運転席128が設置されており、運転席128の前方で、且つ、走行車体101の前側中央部には、操縦部130が配設されている。この操縦部130は、フロアステップ126の床面から上方に突出した状態で配置されており、フロアステップ126の前部側を左右に分断している。
操縦部130の前部には、開閉可能なフロントカバー131が設けられている。また、操縦部130の上部には、操作装置を作動させる操作レバー等や計器類、ハンドル132が配設されている。このハンドル132は、作業者が前輪104を操舵操作することにより走行車体101を操舵する操舵部材として設けられており、操縦部130内の操作装置等を介して前輪104を転舵させることが可能になっている。また、操作レバーとしては、走行車体101の前後進と走行出力を切替操作する変速操作部材である変速レバー135と、走行車体101の走行速度を、走行する場所に応じた速度に切り替える副走行操作部材である副変速レバー138とが、機体右側と左側に配設されている。
また、フロアステップ126における操縦部130の左右それぞれの側方に位置する部分には、補給用の苗を載せておく予備苗載台165が配置されている。この予備苗載台165は、フロアステップ126の床面から突出した支持軸(鉛直軸)によって回動自在に支持されており、作業者の手、または電動モータ等の回動部材によって回動させることが可能になっている。
また、動力伝達装置115は、エンジン110から伝達される駆動力を無段変速する変速装置である油圧式無段変速機116と、この油圧式無段変速機116にエンジン110からの動力を伝えるベルト式動力伝達機構117と、を有している。このうち、油圧式無段変速機116は、HST(Hydro Static Transmission)と云われる静油圧式の変速装置として構成されている。このため、油圧式無段変速機116は、エンジン110からの動力で駆動する油圧ポンプによって油圧を発生させ、この油圧を油圧モータで機械的な力(回転力)に変換して出力する。これにより、油圧式無段変速機116は、エンジン110で発生する動力を、走行車体101を走行させる力に変換する。
その際に、油圧式無段変速機116は、回転力の方向や回転速度を変更して出力することにより、走行車体101の前後進及び走行速度を変更することができる。変速レバー135は、この油圧式無段変速機116の出力及び出力方向を変更することによって、走行車体101の前後進及び走行速度を操作することが可能になっており、即ち、変速レバー135は、油圧式無段変速機116の変速操作をすることが可能になっている。この油圧式無段変速機116は、エンジン110よりも前方で、且つ、フロアステップ126の床面よりも下方に配置されており、本実施形態に係る苗移植機100では、走行車体101の上面から見て、エンジン110の前方に配置されている。
さらに、動力伝達装置115は、ベルト式動力伝達機構117を介して油圧式無段変速機116に伝達され、油圧式無段変速機116で変速したエンジン110からの駆動力を各部に伝達する伝動装置であるミッションケース118を有している。このミッションケース118は、路上走行時や植付時等における走行車体101の作業速度を切り替える副変速機構(図示省略)を内設しており、メインフレーム107の前部に取り付けられている。副変速機構は、走行車体101の走行伝動を少なくとも圃場で作業を行う際の変速段である「作業速」と、路上走行をする際の変速段である「路上速」とに切り替えることが可能になっている。なお、副変速機構は、「作業速」と「路上速」以外に切り替えることができるように構成されていてもよく、また、「作業速」や「路上速」において、複数段に切り替えることができるように構成されていてもよい。
副変速レバー138は、ミッションケース118内の副変速機構を操作することにより、走行車体101の走行速度を切り替えることが可能になっており、即ち、「作業速」と「路上速」とを切り替えることが可能になっている。ミッションケース118は、ベルト式動力伝達機構117と油圧式無段変速機116とを介して伝達されたエンジン110からの出力を、当該ミッションケース118内の副変速機構で変速して、前輪104と後輪105への走行用動力と、苗植付部150への駆動用動力とに分けて出力可能になっている。
このうち、走行用動力は、一部が左右の前輪ファイナルケース121を介して前輪104に伝達可能になっており、残りが左右の後輪ギヤケース122を介して後輪105に伝達可能になっている。左右それぞれの前輪ファイナルケース121は、ミッションケース118の左右それぞれの側方に配設されており、左右の前輪104は、車軸を介して左右の前輪ファイナルケース121に連結されている。また、この前輪ファイナルケース121は、ハンドル132の操舵操作に応じて駆動し、前輪104を転舵させることが可能になっている。同様に、左右それぞれの後輪ギヤケース122には、車軸を介して左右の後輪105が連結されている。一方、駆動用動力は、走行車体101の後部に設けた植付クラッチ(図示省略)に伝達され、この植付クラッチの係合時に植付伝動軸(図示省略)によって苗植付部150へ伝達される。
また、走行車体101の後部に備えられる苗植付部150を昇降させる苗植付部昇降機構140は、昇降リンク装置141を有しており、苗植付部150は、この昇降リンク装置141を介して走行車体101に取り付けられている。この昇降リンク装置141は、走行車体101の後部と苗植付部150とを連結させる平行リンク機構142を備えている。この平行リンク機構142は、上リンクと下リンクとを有しており、これらのリンクが、メインフレーム107の後部端に立設した背面視門型のリンクベースフレーム143に回動自在に連結され、各リンクの他端側が苗植付部150に回動自在に連結されることにより、苗植付部150を昇降可能に走行車体101に連結している。
また、苗植付部昇降機構140は、油圧によって伸縮する油圧昇降シリンダ144を有しており、油圧昇降シリンダ144の伸縮動作によって、苗植付部150を昇降させることが可能になっている。苗植付部昇降機構140は、その昇降動作によって、苗植付部150を非作業位置まで上昇させたり、対地作業位置(対地植付位置)まで下降させたりすることが可能になっている。
また、苗植付部150は、圃場で対地作業を行う作業装置として設けられており、作業資材である苗を植え付ける範囲を、複数の区画、或いは複数の列で植え付けることができる。本実施形態に係る苗移植機100では、苗植付部150は、苗を6つの区画で植え付ける、いわゆる6条植の苗植付部150になっている。この苗植付部150は、苗植付装置160と、苗載置台151及びフロート147を備えている。このうち、苗載置台151は、複数条の苗を積載する苗載置部材として設けられており、走行車体101の左右方向において仕切られた植付条数分の苗載せ面152を有し、それぞれの苗載せ面152に土付きのマット状苗を載置することが可能になっている。
また、苗植付装置160は、苗載置台151に載置された苗を苗載置台151から取って圃場に植え付ける装置になっている。この苗植付装置160は、2条毎に1つずつ配設されており、回転可能なロータリケース163に、2条分の植込杆161を回転可能に備えている。即ち、複数の苗植付装置160は、それぞれ植付条が割り当てられている。このうち、ロータリケース163は、苗植付装置160に駆動力を供給する植付伝動ケース164に対して回転可能に連結されており、植付伝動ケース164は、エンジン110から苗植付部150に伝達された動力を、苗植付装置160に供給する。つまり、植付伝動ケース164には、2つのロータリケース163が、機体左右方向の両側に連結されており、苗植付部150は、この植付伝動ケース164を3つ備えている。
また、フロート147は、走行車体101の移動と共に、圃場面上を滑走して整地するものであり、走行車体101の左右方向における苗植付部150の中央に位置するセンターフロート148と、左右方向における苗植付部150の両側に位置するサイドフロート149と、を有している。
また、苗植付部150の下方側の位置における前側には、圃場の整地を行う整地用ロータ167が設けられている。この整地用ロータ167は、後輪ギヤケース122を介して伝達されるエンジン110からの出力によって回転可能に構成されている。また、苗移植機100には、圃場の情報を検出する圃場情報取得手段として、土壌の肥料濃度を検出する肥料濃度センサ230が設けられている。この肥料濃度センサ230は、左右の車輪に設けられており、例えば、前輪104に設けられている。肥料濃度センサ230は、前輪104の回転軸と外周部分との間の位置に、前輪104の外径よりも小さい外径で全周に亘って形成される電極板として設けられており、前輪104と共に回転可能になっている。肥料濃度センサ230の外径は、苗移植機100での圃場の走行時に前輪104が土壌に入り込んだ際に、肥料濃度センサ230の下端側の部分も土壌に入り込む程度の径になっている。このように設けられる肥料濃度センサ230は、土壌中に入り込んで、左右の肥料濃度センサ230間の通電量を検出することを介して、土壌の通電抵抗、または電気伝動度を検出する。これにより、肥料濃度センサ230は、土壌の肥料濃度を検出することが可能になっている。また、肥料濃度センサ230は、土壌の肥料濃度を検出することにより、土壌の成分量を測定する成分量検知部材としても設けられている。
また、苗植付部150の左右両側には、次の植付条に進行方向の目安になる線を形成する線引きマーカ168が備えられている。即ち、線引きマーカ168は、苗移植機100が圃場内における直進前進時に、圃場の畦際で転回した後に直進前進する際の目印を圃場上に線引きする。この線引きマーカ168は、マーカモータ169(図9参照)によって作動し、走行車体101が旋回するごとに、左右の線引きマーカ168が入れ替わって作動することができるように構成されている。この左右の線引きマーカ168の入れ替えは、マーカモータ169が接続されるコントローラ250(図9参照)によって行う。即ち、コントローラ250は、走行車体101の旋回時に、左右の線引きマーカ168を交互に作動状態と非作動状態とに切り替えるマーカ切替装置としても設けられている。なお、左右の線引きマーカ168の線引き作用部は、図4及び図5に示す通り、円盤の外周部に複数の突起体を設け、回転自在にロッド部に装着したものとすると、圃場面との接地抵抗により確実に圃場面に線を形成することができ、次の植え付け作業位置での直進作業が行い易くなり、作業能率が向上する。
また、走行車体101における運転席128の後方には、圃場で作業を行う作業装置である施肥装置170が搭載されている。この施肥装置170は、施肥装置170での作業に用いる作業資材である肥料を貯留する貯留ホッパ171と、貯留ホッパ171から供給される肥料を設定量ずつ繰り出す繰出し装置172と、繰出し装置172により繰り出される肥料を圃場に供給する施肥通路である施肥ホース174と、施肥ホース174に搬送風を供給することにより、施肥ホース174内の肥料を苗植付部150側に移送する起風装置であるブロア173と、を有している。さらに、施肥装置170は、苗植付部150の下方に配設されると共に、施肥ホース174によって肥料が移送される施肥ガイド175と、施肥ガイド175の前側に設けられると共に、施肥ホース174によって移送された肥料を、苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込む作溝器176と、を有している。
このうち、貯留ホッパ171には、当該貯留ホッパ171の内部を、貯留ホッパ171における肥料の投入口側から繰出し装置172にかけて仕切る仕切板187が設けられており、これにより、貯留ホッパ171は、成分の異なる複数の種類の肥料を貯留することが可能になっている。また、貯留ホッパ171と繰出し装置172との間には、貯留ホッパ171内のどの領域の肥料を繰出し装置172側に供給するかを切り替える切替装置である施肥セレクタ188が設けられている。この施肥セレクタ188は、貯留ホッパ171から繰出し装置172に投下される肥料を切り替える肥料切替シャッタ(図示省略)と、肥料切替シャッタを作動させる肥料切替モータ189(図9参照)と、を有して構成されている。これにより、施肥装置170は、複数の種類の肥料を貯留し、このうちの任意の肥料を圃場に供給することが可能になっている。
図6は、図4に示す施肥装置の前面図である。また、貯留ホッパ171は、下方に向けて開口して貯留ホッパ171内の肥料を繰出し装置172に供給するホッパ出口181を複数有しており、複数のホッパ出口181は、機体幅方向に複数が並んで形成されている。この貯留ホッパ171は、施肥フレーム180に支持されて走行車体101に設けられている。繰出し装置172は、貯留ホッパ171の下方に配設されており、各ホッパ出口181に対してロック部材182によって着脱可能に連結されている。
繰出し装置172の下方には、ブロア173で発生した風である搬送風の通路である施肥搬送風路178が配設されている。ブロア173は、貯留ホッパ171、或いは繰出し装置172の機体左右方向における一端側に配設されており、施肥搬送風路178は、繰出し装置172の下方における前方側の位置で機体左右方向に延在している。繰出し装置172は、機体左右方向においてホッパ出口181が配設される複数の位置で、施肥搬送風路178に連結されている。ブロア173で発生した搬送風は、この施肥搬送風路178によって機体左右方向に送られ、繰出し装置172から繰り出された肥料を施肥ホース174に搬送する。
これらのように構成される施肥装置170には、施肥量を調節する繰出調節機構185が設けられている。この繰出調節機構185は、施肥装置170での肥料の供給量を調節する施肥量調節部材である施肥量調節モータ186(図9参照)を有しており、圃場の肥料含有量や深さ等の条件に合わせて、コントローラ250(図9参照)によって施肥量調節モータ186の駆動制御を行うことにより、施肥量を調節することが可能になっている。詳しくは、繰出し装置172は、当該繰出し装置172が有する肥料の繰り出し部材(図示省略)が、エンジン110から伝達される駆動力によって回転することにより、貯留ホッパ171から供給される肥料を設定量ずつ繰り出すことが可能になっているが、繰出調節機構185は、その際の回転速度を調節することにより、施肥量を調節することができる。
図7は、苗植付部に設けられる薬剤散布装置の説明図である。苗植付部150の後方には、苗植付部150に積載された苗に対して、除菌剤や殺虫剤等の作業資材である薬剤を散布する作業装置である薬剤散布装置190が配設されている。この薬剤散布装置190は、植付条に対応して配設されており、所定条分の苗に薬剤を供給することが可能になっている。薬剤散布装置190は、植付伝動ケース164に連結される散布装置支持部材191によって支持されている。
このように散布装置支持部材191に支持される薬剤散布装置190は、除草剤や殺虫剤等の薬剤を貯留する薬剤ホッパ200と、苗植付部150に積載された苗に設定量ずつ薬剤を供給する薬剤供給装置201と、を備えている。このうち、薬剤供給装置201は、苗植付部150の機体後方側に配置された状態で、機体後側から機体前側に向かい、且つ、機体左右方向に薬剤を散布することにより、苗植付部150に積載された苗に対して薬剤を散布することが可能になっている。
また、薬剤供給装置201は、薬剤ホッパ200の機体下方側に配設されており、薬剤供給フレーム202と、定量シャッタ204と、を備えている。このうち、薬剤供給フレーム202は、薬剤供給装置201のフレームとして設けられており、薬剤ホッパ200の機体下方側に配設されている。定量シャッタ204は、間欠作動装置であるソレノイド203によって、設定間隔ごとに開閉動作して、薬剤ホッパ200内の薬剤を放出させる開閉部材として設けられており、薬剤供給フレーム202内の機体上部位置に配設されている。ソレノイド203は、このように定量シャッタ204を設定間隔ごとに開閉動作することにより、薬剤散布装置190での薬剤の散布量を調節する薬剤散布量調節機構として設けられている。
定量シャッタ204は、薬剤供給フレーム202に内設されており、薬剤供給フレーム202の機体下部側には、薬剤が放出される散布開口部207が形成されている。薬剤散布装置190は、これらのように構成されることにより、薬剤ホッパ200で貯留する薬剤を、苗植付部150に積載された苗に対して散布することが可能になっている。
また、本実施形態に係る苗移植機100は、GPS(Global Positioning System)によって苗移植機100の位置情報を取得するGPS制御装置220(図9参照)を備えており、走行車体101には、GPS制御装置220を構成する受信アンテナ221が配設されている。この受信アンテナ221は、所定の時間的な間隔でGPS座標を取得することにより、地球上における作業位置情報を所定間隔で取得する位置情報取得装置として設けられている。この受信アンテナ221は、予備苗載台165を支持する支柱である予備苗載台支柱166(図8参照)に連結されるアンテナフレーム224に取り付けられている。
図8は、図4のA−A矢視図である。アンテナフレーム224は、下側が開放された向きの門型の形状で形成されており、門型の2箇所の下端部が、左右の予備苗載台支柱166に連結されている。つまり、アンテナフレーム224は、機体左右方向に延びるフレーム水平部225と、フレーム水平部225の両端から下方に延びる2箇所のフレーム垂直部226と、を有しており、フレーム垂直部226の下端が、予備苗載台支柱166に連結されている。フレーム垂直部226と予備苗載台支柱166とは、軸方向が機体前後方向に延びる回動部228によって連結されており、これにより、フレーム垂直部226は、回動部228を中心として機体左右方向に回動自在に、予備苗載台支柱166に連結されている。
また、左右のフレーム垂直部226のうち、一方のフレーム垂直部226には、フレーム垂直部226が延びる方向に伸縮自在な伸縮シリンダ227が設けられている。この伸縮シリンダ227は、油圧によって全長が伸縮可能になっており、これにより、伸縮シリンダ227が設けられる側のフレーム垂直部226は、全長が伸縮することが可能になっている。また、受信アンテナ221は、フレーム水平部225に取り付けられており、詳しくは、フレーム水平部225の長さ方向における中央付近の位置で、フレーム水平部225の上面に取り付けられている。
このように構成される苗移植機100は、トラクタ10と同様に、タブレット端末装置300との間で無線通信を行うことが可能になっている。このため、タブレット端末装置300は、走行車体101や苗植付部150、施肥装置170の情報等の苗移植機100の作業情報や、肥料濃度センサ230で取得した圃場情報である肥料濃度等の圃場情報を記憶したり表示したりすることができる。
図9は、図4に示す苗移植機とタブレット端末装置の機能ブロック図である。本実施形態に係る農作業支援システム1で用いる苗移植機100は、電子制御によって各部を制御することが可能になっており、このため、苗移植機100には、各部を制御するコントローラ250が備えられている。このコントローラ250は、CPU等を有する処理部や、RAM等の記憶部、さらに入出力部が設けられており、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。記憶部には、苗移植機100を制御するコンピュータプログラムが格納されている。このコントローラ250は、モータ等のアクチュエータ類や、各部の情報を取得するセンサ類等が接続されている。
例えば、コントローラ250には、アクチュエータ類として、苗植付部150を昇降させる油圧昇降シリンダ144や、線引きマーカ168を作動させるマーカモータ169、施肥装置170の施肥量を調節する施肥量調節モータ186、供給する肥料を切り替える肥料切替モータ189、薬剤供給装置201での薬剤の供給量を調節するソレノイド203等が接続されている。また、コントローラ250に接続されるセンサ類としては、肥料濃度センサ230等が接続されている。
また、コントローラ250には、GPS制御装置220も接続されており、受信アンテナ221で受信した位置情報は、コントローラ250で取得することが可能になっている。また、この受信アンテナ221の向きは、コントローラ250によって伸縮シリンダ227を制御して伸縮シリンダ227を伸縮させることにより、向きを調整することができる。
また、苗移植機100は、ハンドル132を操作して、走行車体101を直進方向に維持することが可能な自動操舵装置210を備えており、自動操舵装置210も、コントローラ250に接続されている。この自動操舵装置210は、任意の回転力をハンドル132に付与することにより、ハンドル132を回転させる操舵モータ211と、ハンドル132の回転角度を検知するハンドルポテンショメータ212と、を有している。これらの操舵モータ211やハンドルポテンショメータ212は、ハンドル132の回転軸に対して回転力を付与したり、ハンドル132の回転軸の回転角度を検知したりすることにより、ハンドル132を操作したり、回転角度を検知したりすることが可能になっている。
また、苗移植機100は、タブレット端末装置300との間で無線通信を行う苗移植機通信部251を有している。苗移植機通信部251は、電波を用いた無線通信により、タブレット端末装置300との間で信号の送受信を行うことが可能になっており、これによりコントローラ250は、苗移植機通信部251を介して、タブレット端末装置300との間で信号の送受信を行うことが可能になっている。即ち、苗移植機通信部251は、電波を用いた無線通信により、タブレット端末装置300が有する端末通信部304との間で信号の送受信を行うことにより情報の送受信が可能になっている。詳しくは、苗移植機通信部251は、トラクタ10のコントローラ80が有するトラクタ通信部81と同様に、Bluetooth等の近距離無線接続により、タブレット端末装置300が有する端末通信部304との間で、情報の送受信を行うことが可能になっている。
図10は、実施形態に係る農作業支援システムにおいて圃場の水量を監視する機能についての機能ブロック図である。実施形態に係る農作業支援システム1は、作業情報を記憶したり配信したりするサーバー310を有している。このサーバー310は、各種の情報を記憶する記憶部311と、無線通信が可能なサーバー通信部312とを備えている。このうち、サーバー通信部312は、電波を用いた無線通信により、タブレット端末装置300の端末通信部304との間で信号の送受信を行うことが可能になっており、これにより、サーバー310は、複数のタブレット端末装置300との間で情報を通信することができる。
さらに、このサーバー310は、圃場の水量を調節する水量調節制御装置365との間で無線通信を行うことが可能になっている。この水量調節制御装置365は圃場に設置されており、水門の開度を調節することによって圃場の水量を調節するための制御装置になっている。
図11は、水量調節制御装置によって水量の調節が可能な圃場の平面図である。水量調節制御装置365によって水量が調節可能な圃場350は、圃場350に供給される水が流出する水路360が隣接しており、圃場350には、異なる位置に複数の水路360が隣接している。例えば、略矩形状の形状で形成されている圃場350では、水路360は、圃場350の4つの辺のうち、互い対向する2つの辺に隣接している。
これらの水路360のうち、一方の水路360と圃場350との間には、水路360の水を圃場350に流入させることによって、圃場350に用水を取り込む取水部である取水門351が配設されている。また、他方の水路360と圃場350との間には、圃場350の水を水路360に排水させることによって、圃場350の用水を排出する排水部である排水門356が配設されている。即ち、圃場350に隣接する2つの水路360のうち、一方の水路360は、圃場350に水を供給するための水路360になっており、他方の水路360は、圃場350内の水を排水するための水路360になっている。
また、取水門351と排水門356とは、取水門351や排水門356が設けられる2つの辺とは異なる2辺のうち、それぞれ異なる辺寄りの位置に配設されている。つまり、取水門351と排水門356とは、圃場350の形状である矩形の4つの角のうち、対角となる2つの角の近傍に配設されている。
図12は、水量調節制御装置によって水量の調節が可能な圃場の平面図であり、圃場の一側にのみに水門が配設される場合の説明図である。水門は、或いは、図12で示すとおり、圃場350の一側にのみ水路360が形成されている場所においては、取水門351と排水門356は圃場350の同じ側に配設される。このときは取水門351を水路360の上流側に配設し、排水門356を水路360の下流側に配設すると、水の流れに逆らわないので、水の取り込みや排出が円滑に行われる。
次に、これらの取水門351と排水門356とについて説明する。取水門351と排水門356とは、それぞれ同じような構成であるため、代表して取水門351を用いて説明する。図13は、図11、12のB−B断面図である。図14は、図13のC−C矢視図である。取水門351は、圃場350と水路360との間の位置で、上下に移動可能になっており、圃場350と水路360とは、取水門351の下方側の位置で連通する。このため、取水門351が上方に向かうに従って、圃場350と水路360との間の開度が大きくなり、下方に向かうに従って、圃場350と水路360との間の開度が小さくなり、最も下方に位置した際には、取水門351は、圃場350と水路360との間を閉じる。取水門351は、このように上下方向に移動することにより、圃場350と水路360との間の開度を調節することができ、これにより、水路360から圃場350に取り込まれる水の流量を調節することができる。
このように、上下方向に移動する取水門351は、第1開閉装置である第1モータ352によって、開閉可能になっており、第1モータ352で発生する動力によって上下方向に移動することにより、任意の位置で停止することができる。第1モータ352は、これにより取水門351の開度を調節可能になっている。
また、取水門351の近傍には、圃場350の水量を検出する第1水量センサ353が配設されている。この第1水量センサ353は、圃場350の水面上に浮くように構成されており、第1水量センサ353の上下方向における位置を検出することにより、圃場350の水面の高さを検出し、これにより取水門351の近傍における圃場350の水量を検出することが可能になっている。
排水門356も、取水門351と同様の構成になっており、第2開閉装置である第2モータ357によって開閉されることにより、圃場350から水路360に排水される水の量を調節することが可能になっている。また、排水門356の近傍には、圃場350の水量を検出する第2水量センサ358が配設されており、第2水量センサ358は、圃場350の水面の高さを検出することにより、排水門356の近傍における圃場350の水量を検出することが可能になっている。
これらの第1モータ352と第1水量センサ353、及び第2モータ357と第2水量センサ358は、水量調節制御装置365に接続され、水量調節制御装置365によって制御可能になっている。即ち、水量調節制御装置365は、第1水量センサ353と第2水量センサ358との検出値を取得することによって、圃場350の水量を取得し、取得した水量に応じて第1モータ352と第2モータ357を制御することにより、水路360から圃場350に水を取り込んだり、圃場350内の水を水路360に排水したりする。
具体的には、水量調節制御装置365は、第1水量センサ353での検出値と第2水量センサ358での検出値との平均値から、圃場350の水量を算出する。圃場350の水量を算出したら、算出した水量の過不足に合わせて、第1モータ352及び第2モータ357を作動させることによって取水門351や排水門356を開閉させ、圃場350の水量を調節する。これにより、水量調節制御装置365は、圃場350の水量を、所望の水量にする。
このようにして圃場350の水量を調節する水量調節制御装置365は、電波を用いた無線通信により、サーバー310のサーバー通信部312との間で信号の送受信を行うことが可能な水量調節通信部366を備えている。これにより、水量調節制御装置365は、サーバー310との間で情報を通信することができる。
本実施形態に係る農作業支援システム1は、以上のような構成からなり、以下、その作用について説明する。農作業支援システム1で用いるトラクタ10の運転時は、作業者はハンドル20を操作したり、コントロールレバー22等の各種レバーの操作を行ったり、ペダルの操作を行ったりすることにより、トラクタ10の走行や耕耘装置40の運転操作を行う。これらの運転時に用いる動力は、エンジン17が発生する回転動力が、ミッションケース118内の変速装置を介して前輪14や後輪15に伝達されたり、PTO軸36を介して耕耘装置40または代掻き装置70に伝達されたりすることにより、各部が作動する。
例えば、トラクタ10を用いて圃場350で耕耘作業を行う場合には、走行車体11に耕耘装置40を連結した状態で、エンジン17で発生した動力を、PTO軸36を介して耕耘装置40に伝達する。エンジン17からの動力が伝達された耕耘装置40は、この動力によってロータリ軸43が回転し、耕耘ロータ44が回転する。これにより、耕耘ロータ44の耕耘爪が、接地圃場面を耕耘する。トラクタ10での耕耘作業は、このように耕耘ロータ44を回転させながら圃場350内を走行することにより、走行した箇所を順次耕耘する。その際に、耕耘装置40は、コントロールレバー22を操作して作業機昇降用油圧シリンダ32を作動させることにより昇降させることが可能になっており、圃場350を耕耘する際の耕耘深さを調節することが可能になっている。
走行車体11に代掻き装置70を連結して代掻き作業を行う場合も同様に、エンジン17で発生した動力を、PTO軸36を介して代掻き装置70に伝達することにより、代掻き装置70を作動させ、代掻き作業を行うことが可能になっている。また、代掻き装置70によって圃場350で代掻き作業を行う際には、代掻き装置70に設けられたpHセンサ71で土壌酸性度を検出しながら作業を行う。pHセンサ71で検出した土壌酸性度は、コントローラ80を介してタブレット端末装置300に伝達され、タブレット端末装置300の記憶部303で記憶する。
また、トラクタ10は、圃場350で耕耘作業や代掻き作業等を行う際に、GPS制御装置50でトラクタ10の位置情報を取得しつつ、自動操舵装置60で操舵を行うことにより、直進しながら耕耘作業を行うことが可能になっている。詳しくは、トラクタ10は、GPSで使用される人工衛星からの信号をGPS制御装置50の受信アンテナ51で受信することにより、地球上におけるトラクタ10の位置情報を、所定の時間間隔ごとに取得する。
タブレット端末装置300には、圃場350内で効率良く作業を行うための走路である直進走路の情報が記憶されており、コントローラ80は、タブレット端末装置300に記憶されている直進走路の情報と、受信アンテナ51で取得した位置情報とを比較し、自動操舵装置60を制御する。
自動操舵装置60の制御は、受信アンテナ51で取得した位置情報が、タブレット端末装置300に記憶されている直進走路の情報に沿うように、ハンドルポテンショメータ62で操舵角を検知し、走行車体11の進行方向の変化を検知しながら、操舵モータ61を作動させて操舵を行う。これにより、走行車体11を、タブレット端末装置300に記憶されている直進走路に沿うようにアシストしながら走行させる。
これらのようにトラクタ10を走行させたり作業を行ったりする際には、タブレット端末装置300によって作業情報をタブレット端末装置300で記憶する。このタブレット端末装置300では、作業する圃場350の地図データを記憶すると共に、タッチパネル301で表示することが可能になっており、また、以前の作業情報、または手入力データに基づいて、場所ごとの情報を地図上に区別して表示することが可能になっている。これにより、タブレット端末装置300では、記憶した作業情報に基づいて、これから行う作業についての作業計画を行うことが可能になっている。作業計画では、作業を行う圃場350や作業日程、作業の内容を決める。
詳しくは、タブレット端末装置300は、作業情報については、トラクタ10に載置された状態でトラクタ10と通信を行うことにより、作業を行うトラクタ10の作業情報を記憶することが可能になっている。この作業情報は、例えば、作業日や走行距離、作業時間、燃料消費量や、作業装置である耕耘装置40での耕耘作業、代掻き装置70での代掻き作業に関する情報等が記憶される。これらの作業情報は、コントローラ80によって制御するエンジン17やミッションケース118内の変速装置の制御状態を、作業情報としてトラクタ通信部81によって端末通信部304に送信することにより、タブレット端末装置300で取得する。このようにトラクタ10の作業情報を取得したタブレット端末装置300は、作業情報を、記憶部303で記憶する。
このように、作業情報をタブレット端末装置300で記憶する際には、作業を行った際における位置情報も記憶する。この位置情報は、GPS制御装置50によって取得する。詳しくは、GPS制御装置50は、GPSで使用される人工衛星からの信号を受信アンテナ51で受信することにより、地球上におけるトラクタ10の位置情報を、所定の時間間隔ごとに取得する。コントローラ80は、作業情報をタブレット端末装置300に送信する際には、このように受信アンテナ51によって取得した位置情報を作業情報と関連付けて送信する。これにより、タブレット端末装置300は、トラクタ10の作業情報を記憶部303で記憶する際には、作業位置毎の作業情報を記憶する。
また、本実施形態に係る農作業支援システム1で用いる苗移植機100の運転時は、苗移植機100が有するエンジン110で発生する動力によって、走行車体101の走行と、苗載置台151に載置された苗の植え付け作業を行う。この植え付け作業は、回転軸が左右方向になる向きで苗植付装置160全体が回転しながら、植込杆161も回転することにより、苗載置台151に載置された苗を順次植込杆161で取り、取った苗を徐々に圃場350に植え付ける。その際に、苗載置台151を、苗載置台151に載置する1条分の機体左右方向の幅の範囲内で機体左右方向に往復移動させることにより、各苗植付装置160は、苗載置台151においてそれぞれの苗植付装置160に対応する部分から苗を取り出し、圃場350に植え付ける。即ち、各苗植付装置160は、苗載置台151の所定の条に対応する部分から苗を取り出して、所定の条に苗を植え付ける。植え付け作業時は、これらのように苗載置台151や苗植付装置160を作動させながら圃場350内を走行車体101で走行することにより、複数の列状に苗を植え付ける。
走行車体101の走行時には、エンジン110で発生した動力はベルト式動力伝達機構117に伝達され、ベルト式動力伝達機構117から油圧式無段変速機116に伝達されて、油圧式無段変速機116で所望の回転速度や回転方向、トルクに変換されて出力される。油圧式無段変速機116から出力された動力は、ミッションケース118に伝達され、路上走行時の走行速度に適した回転速度、または苗の植え付け時の走行速度に適した回転速度にミッションケース118内で変速されて、前輪104側や後輪105側に出力される。また、ミッションケース118から出力される動力の一部は、苗植付部150側にも伝達され、苗植付部150での植え付け作業にも用いられる。
これらのように、苗移植機100の運転を行う際には、変速レバー135や副変速レバー138等を操作することにより、走行車体101の速度を調節しながら、走行したり作業を行ったりする。例えば、変速レバー135を操作した際には、操作量に応じて油圧式無段変速機116の変速比が切り替えられ、油圧式無段変速機116からの出力が変更される。また、副変速レバー138は、「作業速」や「路上速」に切り替え操作を行うことが可能になっており、ミッションケース118内の副変速機構の変速段は、副変速レバー138の操作位置によって切り替えられる。
苗移植機100を用いて圃場350で作業を行う際には、苗移植機100の重量によって車輪が土壌に入り込む。特に、苗移植機100での作業時には、圃場350に水を張った状態での作業になるため、土壌は軟らかくなり、車輪は土壌に入り込み易くなる。これにより、前輪104に設けられる肥料濃度センサ230も下端側の部分が土壌に入り込む。土壌に入り込んだ肥料濃度センサ230は、土壌の通電抵抗を検出することにより、土壌の肥料濃度を検出し、検出結果は、コントローラ250に伝達される。コントローラ250は、この検出結果を取得することにより、土壌の肥料濃度を取得する。
また、苗移植機100は、圃場350で植え付け作業を行う際に、トラクタ10での圃場350での作業時と同様に、GPS制御装置220で苗移植機100の位置情報を取得しつつ、自動操舵装置210で操舵を行うことにより、直進しながら植え付け作業を行うことが可能になっている。詳しくは、苗移植機100は、GPSで使用される人工衛星からの信号をGPS制御装置220の受信アンテナ221で受信することにより、地球上における苗移植機100の位置情報を、所定の時間間隔ごとに取得する。
タブレット端末装置300には、圃場350内で効率良く植え付け作業を行うための走路である直進走路の情報が記憶されており、コントローラ250は、タブレット端末装置300に記憶されている直進走路の情報と、受信アンテナ221で取得した位置情報とを比較し、自動操舵装置210を制御する。
自動操舵装置210の制御は、受信アンテナ221で取得した位置情報が、タブレット端末装置300に記憶されている直進走路の情報に沿うように、ハンドルポテンショメータ212で操舵角を検知し、走行車体101の進行方向の変化を検知しながら、操舵モータ211を作動させて操舵を行う。これにより、走行車体101を、タブレット端末装置300に記憶されている直進走路に沿うようにアシストしながら走行させる。
これらのように苗移植機100を走行させたり作業を行ったりする際には、トラクタ10での圃場350での作業時と同様に、タブレット端末装置300によって作業情報をタブレット端末装置300で記憶する。このタブレット端末装置300では、作業する圃場350の地図データを記憶すると共に、タッチパネル301で表示することが可能になっており、また、以前の作業情報、または手入力データに基づいて、場所ごとの情報を地図上に区別して表示することが可能になっている。これにより、タブレット端末装置300では、記憶した作業情報に基づいて、これから行う作業についての作業計画を行うことが可能になっている。作業計画では、作業を行う圃場350や作業日程、作業の内容を決めたり、使用する苗や肥料等の作業資材の量を決めたりする。
詳しくは、タブレット端末装置300は、作業情報については、苗移植機100に載置された状態で苗移植機100と通信を行うことにより、作業を行う苗移植機100の作業情報を記憶することが可能になっている。この作業情報は、例えば、作業日や走行距離、作業時間、燃料消費量、苗植付部150での植え付け作業や、施肥装置170での施肥作業や、薬剤供給装置201での薬剤の供給に関する情報等が記憶される。即ち、タブレット端末装置300では、作業装置の運転状態に関する情報のみでなく、苗植付部150で植え付け作業を行う際における苗の植え付け間隔、植え付け深さ等の設定値や、施肥装置170で施肥作業を行う際における施肥量、圃場350に供給する肥料の種類或いは成分等の、作業装置の設定についての情報も記憶される。これらの作業情報は、コントローラ250によって制御する施肥量調節モータ186や、薬剤供給装置201が有するソレノイド203の制御状態を、作業情報として苗移植機通信部251によって端末通信部304に送信することにより、タブレット端末装置300で取得する。このように苗移植機100の作業情報を取得したタブレット端末装置300は、作業情報を、記憶部303で記憶する。
このように、作業情報をタブレット端末装置300で記憶する際には、作業を行った際における位置情報も記憶する。この位置情報は、GPS制御装置220によって取得する。詳しくは、GPS制御装置220は、GPSで使用される人工衛星からの信号を受信アンテナ221で受信することにより、地球上における苗移植機100の位置情報を、所定の時間間隔ごとに取得する。その際に、GPS制御装置220は、コントローラ250からの制御信号によって伸縮シリンダ227を適宜伸縮させることにより、受信アンテナ221の向きを、人工衛星からの信号を受信し易い向きにする。コントローラ250は、作業情報をタブレット端末装置300に送信する際には、このように受信アンテナ221によって取得した位置情報を作業情報と関連付けて送信する。これにより、タブレット端末装置300は、作業情報を記憶部303で記憶する際には、作業位置毎の作業情報を記憶する。
また、タブレット端末装置300で記憶する情報としては、トラクタ10や苗移植機100の作業情報のみでなく、圃場350の情報である圃場情報も記憶する。圃場情報としては、例えば、苗移植機100の肥料濃度センサ230で検出し、コントローラ250で取得した肥料濃度を記憶する。肥料濃度を記憶する際には、まず、コントローラ250で肥料濃度を取得する際に、肥料濃度センサ230での検出結果を取得すると共に、その検出結果を取得した位置情報を、GPS制御装置220より取得する。コントローラ250は、肥料濃度センサ230で検出した肥料濃度と、GPS制御装置220によって取得した位置情報を関連付けてタブレット端末装置300に送信する。これにより、タブレット端末装置300は、圃場350における位置ごとの肥料濃度を記憶部303で記憶する。このように、タブレット端末装置300で圃場情報を記憶する際には、圃場350における位置ごとの情報を記憶する。換言すると、タブレット端末装置300は、圃場350における位置ごとに、肥料濃度センサ230で検知した土壌の成分量を記憶する。
同様に、トラクタ10の走行車体11に代掻き装置70を連結して代掻き作業を行っている際に、pHセンサ71で検出した土壌酸性度も、圃場情報として、GPS制御装置50で検出した位置情報と共にタブレット端末装置300で記憶する。
また、トラクタ10による圃場350での作業時には、走行車体11のサスペンションは、圃場350の起伏や硬さによって伸縮する。トラクタ10に設けられるストロークセンサ65は、このサスペンションの伸縮量を検出することにより、圃場350の深さを検出する。つまり、圃場350は、耕しておらず硬い土である耕盤と、耕盤を覆い、耕されている土である表土とが積層されて構成されているが、サスペンションの伸縮量は、圃場350の起伏のみでなく、この表土の厚さによって変化する。
具体的には、表土が厚い部分では、走行車体11で走行した場合における表土への車輪の沈み込み量が大きくなるので、サスペンションの伸縮量は大きくなる。反対に、表土が薄い部分では車輪の沈み込み量が小さくなるので、サスペンションの伸縮量は小さくなる。ストロークセンサ65は、このように表土の厚さによって伸縮量が異なるサスペンションの伸縮量を検出することにより、表土の厚さ、即ち圃場350の深さを検出する。タブレット端末装置300は、トラクタ10での作業時にストロークセンサ65で検知した圃場350の深度を、GPS制御装置50で検出した位置情報と共に記憶部303で記憶することにより、圃場350の深度を、圃場情報として位置毎に記憶する。また、タブレット端末装置300で圃場350を記憶する際には、当該圃場350の全体平均の深度を算出し、平均深度も合わせて記憶する。
また、タブレット端末装置300は、圃場350への苗の植付け時または播種時の施肥量や、収穫作業日及び収量を、圃場作業情報として記憶する。これらの圃場作業情報は、苗移植機100やその他の作業装置で作業を行っている際における作業情報を、作業装置とタブレット端末装置300との間で通信を行うことにより、タブレット端末装置300で自動的に取得したり、作業者がタッチパネル301に対して入力操作したりすることによって記憶する。
タブレット端末装置300は、これらのように記憶した過去の作業情報に基づいて、これから行う作業についての作業計画を行う。この作業計画では、トラクタ10や苗移植機100の作業情報や圃場情報と、位置情報とを紐付けした作業マップを作成することにより行い、圃場で作業を行う際において、栽培作物を適切に栽培するのに必要な肥料の量等の各調整値を、過去の情報に基づいて計画するものになっている。このようにタブレット端末装置300で作業計画を行う際には、タブレット端末装置300への入力操作により、作業者が望む情報についての作業計画を行う。例えば、作物や肥料及び薬剤の種類についての情報、作物の収穫量についての情報、作業装置の設定についての情報のうちいずれかをタブレット端末装置300が有するタッチパネル301への入力操作によって選択する。
情報の選択を行ったら、タブレット端末装置300は、作業者が選択した情報と、記憶部303で記憶している情報とに基づいて作業計画を作成する。この作業計画では、その時点での作物の最適な栽培開始時期、追肥や水量管理等の栽培途中作業の時期、作物の収穫開始時期、作物の栽培に使用する肥料や薬剤の種類及び量のうちの、少なくともいずれかを含む作業計画を作成する。作業者は、このように作成された作業計画に基づいて作業を行うことにより、作物の種類や肥料の種類等に関わらず、適切な作業を行うことが可能になる。
作業計画を行ったタブレット端末装置300は、作業計画に沿って作業を行う際に、作業者が選択した情報に基づき、適切な施肥量等の所望の情報をタッチパネル301で表示して作業者に作業を促したり、タブレット端末装置300と作業車両との間での通信を介して作業装置を自動制御したりすることにより、作業計画に沿った作業を行わせることが可能になっている。
これらのようにしてタブレット端末装置300で作業計画を行う際には、例えば、苗移植機100での作業時に、肥料濃度センサ230で検出して取得した圃場350の肥料濃度に関する圃場情報を用いて、作業マップを作成し、当該圃場350で刈り取りまで行って、その後にトラクタ10で作業をする際における基準として用いる。即ち、トラクタ10で作業を行う際に、タブレット端末装置300に記憶された肥料濃度に合わせて、耕耘装置40の作業位置や動作を変更する。
例えば、圃場350において、肥料濃度が所定値よりも高い箇所では、耕耘装置40の作業高さを上げることによって、表層部のみの対地作業を行わせ、圃場350の表層部のみを耕耘させる。反対に、圃場350において、肥料濃度が所定値よりも低い箇所では、耕耘装置40の作業高さを下げることによって、表層部から深層部に亘って対地作業を行わせ、圃場350の表層部のみでなく深層部も含んで耕耘させる。これらのように、耕耘装置40の作業位置や動作の変更は、タブレット端末装置300からトラクタ10のコントローラ80に向けて制御信号を送信し、コントローラ80を介して作業機昇降用油圧シリンダ32の制御を行うことにより、圃場350の肥料濃度に応じて自動的に調整する。
なお、肥料濃度に応じて動作を変更する際には、これ以外の手法で行ってもよい。例えば、肥料濃度が所定値よりも高い箇所では、耕耘装置40の回転数を下げるか、走行車体11の走行速度を早くすることによって、耕耘作業時に、表層部の土が深層部の土に混ざらないようにしてもよい。反対に、肥料濃度が所定値よりも低い箇所では、耕耘装置40の回転数を上げるか、走行車体11の走行速度を遅くして、表層部の土と深層部の土とがよく混ざるようにしてもよい。さらに、耕耘装置40の作業位置や動作の変更は、コントローラ80を介した自動調節以外の手法で行ってもよい。例えば、タブレット端末装置300は、耕耘装置40の高さや回転数、走行車体11の走行速度の値を、記憶部303に記憶されている肥料濃度に基づいて圃場350の位置ごとに算出し、タッチパネル301で表示することにより、作業者が表示に基づいてトラクタ10を適宜操作することにより、動作の変更を行ってもよい。
また、タブレット端末装置300を用いた作業計画では、タブレット端末装置300は、当該タブレット端末装置300で記憶した、施肥量や収穫作業日等の圃場作業情報と、肥料濃度センサ230で検知した肥料濃度、及びpHセンサ71で検知した土壌酸性度である土壌の成分量とを比較することにより、最適な肥料濃度及び土壌酸性度を算出する。つまり、タブレット端末装置300は、土壌の酸性度を、苗の植付け作業時に記録しておいたものと、コンバイン(図示省略)で収穫した日と、それで得られた収穫量とに基づいて、収穫量が、その圃場350における理論値であるか否かを判定する。この判定により、収穫量が理論値に達している場合には、土壌の成分量は良好であると判定し、収穫量が理論値に達していない場合には、土壌の成分量は良好ではないと判定をする。これらのように、検出した土壌の酸性度と、その酸性度に対する判定を行ったら、判定についてのデータも記憶し、圃場350での次回の作業や、土壌改良の作業をするときに、圃場350に対してどのような作業をすれば良いかを計算する。これにより、収穫量を理論値にするための最適な肥料濃度及び土壌酸性度を算出する。
タブレット端末装置300は、これらのように算出した肥料濃度と土壌酸性度とに基づいて、施肥量調節モータ186の操作量と施肥セレクタ188の操作量とを、タッチパネル301で表示する。作業者は、タッチパネル301で表示されたこれらの操作量を視認して施肥量調節モータ186や施肥セレクタ188を操作することにより、施肥装置170で施肥を行う際における施肥量や、圃場350に供給する肥料の種類、即ち肥料の成分を切り替える。施肥装置170は、これらのように施肥量や肥料の成分を調節することにより、タブレット端末装置300で記憶された土壌の成分量に基づいて、土壌の成分量を、栽培作物の適正成分量にすることのできる成分の肥料を供給することができる。
なお、このように施肥量や、圃場350に供給する肥料を切り替える際には、タブレット端末装置300の操作により、施肥量調節モータ186と施肥セレクタ188を自動制御してもよい。つまり、タブレット端末装置300とコントローラ250とで通信を行うことにより、施肥量調節モータ186や施肥セレクタ188を、所望の操作量になるようにコントローラ250を介して作動させてもよい。
また、タブレット端末装置300を用いた作業計画によって施肥の調整を行う際には、施肥を行う圃場350で栽培する栽培作物も考慮して肥料の供給量や種類を求め、栽培作物に応じた施肥を行うことができるようにする。具体的には、タブレット端末装置300は、苗移植機100やトラクタ10での作業時に、圃場作業情報として施肥装置170での施肥量と、肥料濃度センサ230やpHセンサ71で検知した土壌の成分量と、圃場350での栽培作物と、を記憶する。栽培作物は、圃場350での作業時に作業者がタッチパネル301に対して入力操作をすることにより、タブレット端末装置300に入力し、記憶部303で記憶させる。
タブレット端末装置300は、これらのように当該タブレット端末装置300に記憶された施肥量や、土壌の成分量、及び栽培作物から、栽培作物を適切に栽培させるために肥料の追加が必要な時期や、追加量及び肥料の種類を算出し、タッチパネル301で表示する。作業者は、タッチパネル301で表示されたこれらの情報を視認し、表示された情報に基づいて施肥装置170によって施肥作業を行うことにより、任意の栽培作物を栽培するのに適した施肥を行う。
また、タブレット端末装置300を用いた作業計画では、作業情報や圃場情報、圃場作業情報がタブレット端末装置300に記憶されている圃場350において次工程で作業を行う作業車両は、タブレット端末装置300で記憶された位置毎の圃場350の深度に基づいて、作業装置等の動作を調節するようにする。つまり、深度を検出したトラクタ10の次工程で作業を行う作業車両が、苗移植機100である場合には、タブレット端末装置300で記憶された位置毎の圃場350の深度に基づき、苗植付部150の昇降操作、肥料供給量の増減、苗の移植作業高さまたは種子の播種作業高さの上下調節、苗植付部150の自動昇降機構の作業条件の設定、圃場350の深度による苗移植機100での作業困難箇所のうち、少なくともいずれか1つを、タブレット端末装置300のタッチパネル301で通知する。
つまり、苗植付部昇降機構140によって苗植付部150を昇降させる際における昇降量や、施肥装置170で施肥を行う際における肥料の供給量、苗植付部150による苗の移植作業高さの調節量、種子の播種作業高さの調節量、苗植付部150を自動昇降機構で昇降させる場合における昇降に関する条件の設定、表土が厚すぎることに起因して車輪が沈み込み易くなっている位置のうち、少なくともいずれか1つをタッチパネル301で表示することにより、作業者に通知する。この場合における、自動昇降機構での昇降に関する条件の設定は、フロート147の上下動に対して苗植付部昇降機構140を作動させる際における油圧感度の設定になっている。タッチパネル301の表示を視認した作業者は、表示に基づいて苗植付部150の操作を行ったり、作業困難箇所を避けるように苗移植機100の運転操作を行ったりすることにより、圃場350の深さに関わらず適切な植付作業を行うことが可能になる。
なお、このように圃場350の深さに基づいて、苗植付部150を昇降させたり、苗植付部150の自動昇降機構の作業条件の設定の変更を行ったり、作業困難箇所を避けて作業を行ったりする際には、これらを自動制御によって行ってもよい。つまり、タブレット端末装置300とコントローラ250とで通信を行うことにより、苗植付部昇降機構140を、所望の操作量になるようにコントローラ250を介して作動させたり、作業困難箇所を避けて苗移植機100が走行する動作を自動操舵装置210が行うようにコントローラ250を介して自動操舵装置210の制御を行ったりしてもよい。
また、タブレット端末装置300を用いた作業計画では、耕耘装置40等の作業装置での対地作業を行う際に、圃場350に張る水の影響を考慮した作業を行うことができるように計画を行う。つまり、取水門351や排水門356の付近は水の流れが大きいため、圃場350の土は水と共に流れ易くなっている。このため、耕耘装置40の耕耘ロータリ44で土壌を掻き混ぜ過ぎたり、代掻き装置70での代掻きを強く行ったりすると、作業車両での走行が困難になる深さの部分を作り易くなる。従って、このような部分では、耕耘装置40や代掻き装置70での作業時における深さが、浅くなるように作業計画を行う。
この作業計画を行う際には、タブレット端末装置300は、圃場350の取水門351と排水門356の位置座標を記憶部303で記憶する。これらの取水門351と排水門356の位置座標は、タブレット端末装置300が地図データより取得してもよく、タッチパネル301への入力操作によって作業者が入力してもよい。
取水門351と排水門356の位置座標をタブレット端末装置300で記憶している圃場350で作業を行うトラクタ10の位置座標が、取水門351及び排水門356の位置座標であるときは、耕耘装置40や代掻き装置70での対地作業が、土壌の浅い範囲で行われるようにする。具体的には、耕耘装置40や代掻き装置70の作業高さを高くしたり、耕耘装置40の回転数を下げたり、耕耘装置40または代掻き装置70での作業時における走行車体11の走行速度を速くする。これらは、作業装置の操作量や、走行速度をタッチパネル301で表示することにより、表示された操作量や走行速度に応じて作業者が操作を行ってもよく、耕耘装置40や代掻き装置70の制御や、走行速度の調節を、コントローラ80を介してタブレット端末装置300によって行ってもよい。
なお、トラクタ10の位置座標は、厳密に取水門351や排水門356の位置座標でなくてもよい。これらの制御を行うか否かの判断をするための位置として、取水門351や排水門356からの位置を設定し、取水門351または排水門356からのトラクタ10の位置が、予め設定される設定範囲内となる位置座標であるときは、これらの制御を行ってもよい。これらのように、取水門351や排水門356の近傍では、耕耘装置40や代掻き装置70の作業が強く行われないようにすることにより、水と共に土が流れ易くなっている取水門351や排水門356の近傍では、作業装置で土壌の深い所まで混ぜ込んでしまわないようにする。
また、タブレット端末装置300で作業計画を行う際には、圃場350の水量も考慮して計画する。圃場350の水量も考慮して作業計画を行うために、タブレット端末装置300は、第1水量センサ353での検出値と、第2水量センサ358での検出値との平均値から、圃場350の水量を算出する。これらの第1水量センサ353や第2水量センサ358での検出値は、サーバー310を介してタブレット端末装置300で取得する。
詳しくは、第1水量センサ353や第2水量センサ358での検出結果は、水量調節制御装置365に伝達され、水量調節制御装置365で取得する。水量調節制御装置365は、水量調節通信部366と、サーバー310が有するサーバー通信部312との間で無線通信を行うことにより、第1水量センサ353や第2水量センサ358での検出値を取得し、記憶部311で記憶する。タブレット端末装置300は、端末通信部304とサーバー通信部312との間で無線通信を行うことにより、サーバー310の記憶部311で記憶している第1水量センサ353や第2水量センサ358での検出値を取得し、記憶部303で記憶する。これにより、タブレット端末装置300は第1水量センサ353や第2水量センサ358での検出値を取得する。
また、取水門351と排水門356とは、排水門356での排水性を確保するために、排水門356は取水門351よりも低い位置に設置されているため、第1水量センサ353と第2水量センサ358とで検出する水量は、それぞれ異なっている。このため、圃場350の水量を検出する際には、第1水量センサ353での検出値と、第2水量センサ358での検出値との平均値を求めることにより、圃場350の平均の水量を算出する。このように算出した水量は、記憶部303で記憶する。
タブレット端末装置300は、このように記憶した水量から、圃場350に対して肥料の追加が必要な時期と、肥料の追加量、及び肥料の種類を算出して、タッチパネル301で表示する。詳しくは、タブレット端末装置300は、代掻き作業を行うために圃場350に水を入れた時から、当該圃場350で稲が育って圃場350から水を抜くまでの水量の変化を継続的に取得し、圃場350に供給した肥料が水と共に流出し難く、また、消費されずに余ってしまう肥料が少なくなる施肥のタイミングと量を、肥料の種類ごとに算出する。同じ圃場350で次回同じ稲の栽培を行う際には、水量に基づいてタブレット端末装置300で算出した施肥の時期や肥料の量、肥料の種類で施肥を行うことにより、圃場350に水を張っている期間において、適切な施肥を行うことが可能になる。
以上の実施形態に係る農作業支援システム1では、タブレット端末装置300は、肥料濃度センサ230で取得した圃場350の肥料濃度に合わせて、耕耘装置40の作業位置や動作を変更するため、例えば圃場350における肥料濃度が高い場所では、表層部の土が深層部の土に混ざらない作業を行わせることによって、肥料成分の多い深層部の土を維持することができる。これにより、作物を植え付ける際に供給する肥料の量を減少させることができる。反対に、肥料濃度が低い場所では、表層部の土と深層部の土を混ぜ合わせる作業を行わせることにより、肥料成分の少ない表層部の土と肥料成分が比較的多い深層部の土を混ぜ合わせることができる。これにより、深度に関わらず肥料濃度が安定し、肥料を供給する際に過不足が生じ難くさせることができる。この結果、圃場350での作業を、圃場350の肥料濃度に関わらず適切な作業にすることができる。
また、タブレット端末装置300は、肥料濃度センサ230やpHセンサ71で検知した土壌の成分量を記憶し、施肥装置170は、タブレット端末装置300で記憶された土壌の成分量に基づいて、土壌の成分量を栽培作物の適正成分量にすることのできる成分の肥料を供給するため、土壌の成分量が、栽培作物の生育に適した成分量となるように、対応する成分の肥料を供給することができる。これにより、作物を生育に適さない土壌で栽培することを防止できるので、作物の成長を安定させることができると共に、品質を向上させることができる。この結果、圃場350の肥料濃度に関わらず、より確実に圃場350での作業を適切な作業にすることができる。
また、タブレット端末装置300は、トラクタ10での作業時にストロークセンサ65で検知した圃場350の深度を、GPS制御装置50で検出する位置毎に記憶し、次工程で作業を行う苗移植機100等の作業車両は、タブレット端末装置300で記憶された位置毎の圃場350の深度に基づき、作業車両の設定を変更する通知を出すことにより、作業者が適切なタイミングで作業条件の切替操作を行うことができる。これにより、作業能率や作業精度が向上すると共に、作業が困難な箇所を避けて作業を行うことができるので、作業が中断されることを防止することができる。また、記憶された圃場350の深度に基づき、作業車両の設定が自動制御されるようにした際には、作業者が操作しなくても適切なタイミングで作業条件の切替操作を行えるので、作業者の労力を軽減することができる。これらの結果、より確実に圃場350で適切な作業を行うことができる。
また、代掻き装置70が連結されるトラクタ10の位置座標が、取水門351及び排水門356の位置座標であるときや、これらからの位置が設定範囲内となる位置座標であるときは、耕耘装置40や代掻き装置70の作業高さを高くする、或いは耕耘装置40の回転数を下げる、または、これらの作業装置での作業時における走行車体11の走行速度を速くすることにより、土壌の深い所まで混ぜ込まないようにすることができる。つまり、水の出入りで土が流され易い取水門351及び排水門356の周辺では、耕耘や代掻きを浅く行うことにより、土を流され難い硬さに留めることができる。これにより、取水門351や排水門356の周辺が他の箇所より大幅に深くなることに起因して、後工程の作業時に作業が困難な箇所になることを防止することができる。また、取水門351及び排水門356の周辺では、耕耘や代掻きを浅く行うことにより、肥料成分を含む土が大量に圃場350の外に流出することを防止できるので、栽培時に供給する肥料の使用量を減少させることができると共に、河川の汚染を防止することができる。
また、タブレット端末装置300は、施肥量や収穫作業日等の圃場作業情報と、肥料濃度センサ230やpHセンサ71で検知した土壌の成分量とを比較することにより、最適な肥料濃度及び土壌酸性度を算出し、算出した肥料濃度と土壌酸性度とに基づいて、施肥量調節モータ186の操作量と施肥セレクタ188の操作量とをタッチパネル301で表示したり、これらを自動制御したりすることにより、施肥量、収穫日及び収量に基づいて、供給する肥料の量、及び成分を変更することができる。これにより、次回の栽培作物を、より良い条件で栽培することができるので、成長を安定させることができると共に、収量の増加を図ることができる。また、圃場350内における肥料濃度の低い位置や、酸性度が不適切である箇所に、対応する肥料を供給することができるので、圃場350全体の肥料の供給量を増やしたり、酸性度を変更する肥料を供給したりすることなく、土壌の成分量を適切なものにすることができる。これにより、肥料の使用量を削減することができる。
また、タブレット端末装置300に記憶された施肥量、土壌の成分量及び栽培作物から、肥料の追加が必要な時期、追加量及び肥料の種類を算出し、タッチパネル301で表示するため、作物が使用する肥料が不足する時期の発生を防止することができる。これにより、作物の生育が安定し、品質が向上すると共に、計画的な作業が可能になる。また、これらを算出することにより、余分な肥料を供給することを防止できるので、肥料過多による品質低下を防止することができると共に、余った肥料で雑草が育つことを防止することができる。これにより、除草作業に要する薬剤使用量の低減や、作業労力の軽減を図ることができる。
また、タブレット端末装置300は、第1水量センサ353と第2水量センサ358の検出値に基づいて算出した圃場350の水量から、圃場350に対して肥料の追加が必要な時期と、肥料の追加量、及び肥料の種類を算出してタッチパネル301で表示するため、次回の作業時に水の出入りで余分な肥料成分を排出したり、肥料成分の過度の流出を防止したりすることができる。これにより、圃場350に供給する肥料の量を減少することができると共に、河川の汚染を防止することができる。
〔変形例〕
なお、実施形態に係る農作業支援システム1に用いられる苗移植機100では、施肥装置170は、圃場350に対して、予め設定されている高さから肥料を供給するように構成されているが、苗移植機100は、圃場350に対する肥料の供給高さを変更できるように構成されていてもよい。図15は、実施形態に係る農作業支援システムに用いられる苗移植機の変形例であり、肥料ダクトの説明図であり、肥料ダクトの平面図である。図16は、図15に示す肥料ダクトの側面図である。施肥装置170が、ペースト状の肥料を供給するものである場合には、フロート147の近傍に、施肥装置170から供給される肥料を土中に案内する肥料案内部材である肥料ダクト320を設け、肥料ダクト320における肥料の供給口である吐出口321を、土の中に臨ませるようにして肥料を供給するようにしてもよい。また、このように肥料ダクト320を用いて肥料を供給する場合は、吐出口321の高さを変更することにより、圃場350に対する肥料の供給高さを変更できるようにしてもよい。
吐出口321の高さを変更できるようにする際には、例えば、肥料ダクト320は略前後方向に延在させると共に、左右方向に延びる回動軸322に肥料ダクト320の前端を連結させ、回動軸322を中心として回動自在に肥料ダクト320を設ける。この場合、吐出口321の後端に位置させる。このように、肥料ダクト320の回動中心である回動軸322は、肥料ダクト320の回動用の動力源であり、肥料ダクト320での肥料の供給深さを変更する回動アクチュエータである肥料ダクト回動モータ325で発生する動力によって回動するようにする。
詳しくは、肥料ダクト回動モータ325で発生する動力は、肥料ダクト回動モータ325の出力軸に設けられるピニオンギヤに、出力側のギヤとして設けられる扇状のギヤを噛み合わせることにより構成される肥料ダクト回動ギヤ326によって取り出すようにする。さらに、肥料ダクト回動ギヤ326における扇状のギヤと、回動軸322とを肥料ダクト回動ワイヤ327によって連結することにより、肥料ダクト回動モータ325で発生した動力を、肥料ダクト回動ギヤ326と肥料ダクト回動ワイヤ327とによって回動軸322に伝達することができるようにする。これにより、肥料ダクト回動モータ325で発生する動力によって回動軸322を回動させることができ、回動軸322を中心として肥料ダクト320を回動させることにより、吐出口321の上下位置が変更可能になる。
また、回動軸322の近傍には、肥料ダクト320の回動角度を検知するポテンショメータ323を設け、肥料ダクト320の回動角度を検知できるようにする。このポテンショメータ323と、肥料ダクト回動モータ325は、共にコントローラ250に電気的に接続する。これにより、ポテンショメータ323での検出結果をコントローラ250で取得しながら、肥料ダクト回動モータ325を作動させることができ、肥料ダクト320の回動角度を、所望の回動角度にすることができる。
このように回動することにより、肥料の供給高さを変更可能な肥料ダクト320によって肥料を供給する際には、肥料の供給高さも考慮した作業計画を行ってもよい。このように作業計画を行う際には、タブレット端末装置300は、肥料ダクト320での肥料の供給深さを、GPS制御装置220で検出する位置毎に記憶する。さらに、タブレット端末装置300に記憶された作物の収量から、適切な肥料の供給深さ、肥料の追加が必要な時期、肥料の追加量、及び肥料の種類、除草剤や殺虫剤の散布が必要な時期、及び除草剤と殺虫剤の種類を算出する。例えば、前回の作物の収穫量から、より適切な土壌成分にするための肥料の供給深さを算出したり、肥料を追加する時期を算出したりする。また、これから栽培する作物における、病気になり易い時期に基づいて、肥料の供給や、除草剤、殺虫剤の散布が必要な時期等を算出する。
これらを算出したタブレット端末装置300は、算出した肥料供給深さに基づいて、肥料ダクト回動モータ325と、施肥装置170が有する施肥量調節モータ186と、薬剤散布装置190が有するソレノイド203の操作量とをタッチパネル301で表示する。例えば、肥料ダクト320の回動角度等をタッチパネル301で表示し、肥料ダクト320を回動させるための操作を行うことを、作業者に促す。
このようにタッチパネル301に表示された操作量を作業者が視認し、表示された操作量で各部を操作することにより、作物の成長段階に適した位置に肥料を供給することができる。これにより、作物の生育を安定させることができると共に、肥料を追加する回数を削減することができ、肥料の消費量を削減することができる。また、肥料の追加時期、追加量及び種類を算出することにより、作物が使用する肥料が不足する時期の発生を防止することができるので、作物の生育を安定させることができ、品質を向上させることができると共に、計画的な作業を可能にすることができる。また、余分な肥料を供給することを防止することができるので、肥料過多による品質低下を防止できると共に、余った肥料で雑草が育つことを防止でき、除草作業に要する薬剤使用量の低減や、作業労力の軽減を図ることができる。
また、薬剤の供給量を変更することにより、薬剤の過不足の発生を防止することができるので、薬剤不足により雑草が繁茂して栽培作物が生育不良を起こすことや、病害虫が発生して枯れることを防止でき、作物の生育や収穫量を安定させることができる。また、薬剤が過剰供給され、栽培作物まで枯れることや、水や土壌が汚染されることを防止することができる。
なお、算出した肥料供給深さに基づいて、施肥や薬剤散布を調節する際には、タブレット端末装置300の操作により、施肥量調節モータ186と、ソレノイド203とを、自動制御してもよい。つまり、タブレット端末装置300とコントローラ250との間で無線通信を行うことにより、コントローラ250を介して、これらの自動制御を行ってもよい。
また、実施形態に係る農作業支援システム1では、トラクタ10に連結する代掻き装置70に、成分量検知部材としてpHセンサ71を設けているが、成分量検知部材としては、pHセンサ71以外を設けてもよい。代掻き装置70には、例えば、実施形態において苗移植機100の車輪に設けられている肥料濃度センサ230を、代掻き装置70の後端に配設される接地ローラに設けてもよい。これにより、代掻き装置70による代掻きの前後での肥料濃度の変化、即ち、肥沃度の変化を、より正確に検出することができる。
また、実施形態に係る農作業支援システム1では、圃場350の深さ、即ち、表土の厚さを、トラクタ10に設けられるストロークセンサ65によって検出しているが、圃場350の深さは、ストロークセンサ65以外によって検出してもよい。例えば、トラクタ10に、超音波センサ(図示省略)を設け、この超音波センサによって圃場350の深さを検出してもよい。この場合、超音波センサは、下方に向けて超音波を発し、反射波を検出することにより、超音波センサからの距離を検出することができるように設ける。このように設けられる超音波センサから発せられた超音波は、比較的軟らかい表土は通過し易く、硬い耕盤で反射し易くなっている。このため、耕盤で反射した反射波を検出することにより、耕盤までの距離を検出することができ、圃場350の深さを検出することができる。圃場350の深さを検出する深度検知部材は、これらのように、耕盤までの距離を検出することができるものであれば、その手段は問わない。
また、実施形態に係る農作業支援システム1では、第1水量センサ353と第2水量センサ358との検出値から算出した水量に基づいて追肥の時期等を算出しているが、追肥の時期等は、これ以外に基づいて算出してもよい。追肥の時期等は、例えば、圃場350における排水門356の近傍にpHセンサまたは肥料濃度センサを設け、pHセンサで検出した土壌の酸性度、または肥料濃度センサで検出した肥料濃度に基づいて追肥の時期等を算出してもよい。つまり、圃場350において、他の部分よりも高さが低い排水門356には、肥料成分が溜まり易いため、この部分の土壌の成分を検出することにより、圃場350全体の肥料の過不足を推測することができる。このように、排水門356の近傍の土壌の成分を検出することにより、圃場350全体の肥料の過不足を推測することができるため、排水門356の近傍の土壌の成分に基づいて、追肥の時期等を算出してもよい。
また、実施形態に係る農作業支援システム1では、圃場350の取水は、取水門351を開くことにより行っているが、圃場350の取水は、ポンプを用いて行ってもよい。この場合、排水門356側には、流量計を設けて水の排水量を測定し、ポンプでの取水量と、排水門356側の排水量との差を算出して、その差に応じて排水門356の開閉を調節してもよい。つまり、取水量に対する排水量が多い場合には、排水時に水のみでなく、土砂も多く排出されている可能性が高いため、この場合は、排水を一旦止めるなどして土砂の流出を防ぎ、土砂と共に流出する肥料の流出を防ぐようにしてもよい。