以下、本発明を実施するための形態を、実施例により図面を参照しながら詳しく説明する。
[電源装置の構成]
図1(A)は、実施例1の二次側の同期整流回路を備えたスイッチング電源回路を有する電源装置の概略図を示している。商用電源等の交流電源11は、電源装置10と接続されている。交流電源11は、電源装置10の第一の電源ラインであるライブライン(LIVEと図示)と第二の電源ラインであるニュートラルライン(NEUTRALと図示)間に交流電圧を出力している。電源装置10は、一次整流平滑回路と、スイッチング電源回路12を備えている。一次整流平滑回路は、交流電源11から供給されている交流電圧を全波整流する全波整流手段であるブリッジダイオードBD1(以下、単にBD1とする)と、平滑手段である電解コンデンサC1とを有している。ブリッジダイオードBD1の整流後の低い側の電位をDCL、高い側の電位をDCHとする。
スイッチング電源回路12は、電解コンデンサC1に充電された一次側の電圧V1を変換し、絶縁された二次側へ出力電圧V2を出力する。本実施例では、スイッチング電源回路12は、例えば、第一の出力電圧である5Vを出力する。スイッチング電源回路12は、一次側の一次巻線P1と二次側の二次巻線S1を備えたトランスT1を有している。また、スイッチング電源回路12は、トランスT1の一次巻線P1の一次側の第一のスイッチング素子である電界効果トランジスタFET1(以下、単にFET1とする)を有し、FET1は一次巻線P1への電力の供給又は遮断を行う、スイッチング動作を行う。スイッチング電源回路12は、トランスT1の二次側の整流部である同期整流部105、同期整流部105へ電源を供給する供給手段である電源電圧供給部106、同期整流部105により整流された出力を平滑する平滑手段である平滑部107、を備えている。平滑部107は、電解コンデンサC8と、電解コンデンサC9と、コイルL1と、を有している。スイッチング電源回路12は、出力電圧V2のフィードバック手段であるフィードバック部101と、フィードバック部101の出力に応じてFET1を制御する一次側の第一の制御手段である制御部102を備えている。また、スイッチング電源回路12は、切替手段である状態切替部104を備えている。
トランスT1は、一次側に一次巻線P1及び一次巻線P2、二次側に二次巻線S1を備えた絶縁型トランスである。トランスT1の一次巻線P1は、一次側から二次側に電力供給を行うために、FET1によって電力制御を行う巻線である。トランスT1の一次巻線P2は、二次巻線S1が出力電圧V2を出力する際に生じるフライバック電圧をダイオードD1及びコンデンサC2で整流平滑し、制御部102に電源電圧を供給するために用いる。また、一次巻線P2は、図2で説明するFET1をオンする制御タイミングを検知するためにも用いられる。トランスT1の二次巻線S1は、端子A、端子B、端子Cの3つの出力端子を有している。二次巻線S1の両端には端子A及び端子Cが設けられており、端子Aは二次側の第二のスイッチング素子であるFET2と接続され、端子Cは二次側の平滑部107に接続されている。ダイオードD4はFET2のボディーダイオードである。二次巻線S1の一端である端子Aと二次巻線S1の他端である端子Cの間には、端子B(センタータップ)が設けられており、二次巻線S1は端子Bで、二次巻線S1aと二次巻線S1bに分割されている。
制御部102は、パルス周波数変調(以下、PFMとする)制御、パルス幅変調(以下、PWMとする)制御、又は擬似共振制御等の方式でFET1を制御し、一次巻線P1へ供給する電力制御を行っている。本実施例では、制御部102が擬似共振制御を用いてFET1を制御する方法について説明する。制御部102は、FET1のドレイン−ソース間に流れる電流を検知するため、抵抗R4に生じた電圧をIS端子で検知している。制御部102は、後述するFB端子の電圧に応じて、FET1のドレイン−ソース間に流れる電流を制御している。
制御部102のZCD端子では、スイッチング電源回路12の擬似共振動作のボトムを検知するため、抵抗R2を介してトランスT1の一次巻線P2に生じる電圧を検知している。ここで、疑似共振動作のボトムとは、FET1のドレイン−ソース間電圧が最小になるタイミングであり、図2で説明する。制御部102は、擬似共振動作のボトムを検知し、FET1のドレイン−ソース間電圧が最小になるタイミングでFET1をオン状態にさせる。これにより、FET1のスイッチングオンによる損失を低減させている。抵抗R3及びコンデンサC3は、制御部102によるボトム検知のタイミングを調整するための素子である。抵抗R1は、制御部102に起動電流を供給するために用いられる。起動電流とは、スイッチング電源回路12が動作して、一次巻線P2からコンデンサC2に電源電圧が充電されるまでの間、制御部102を動作させるための電流である。SK1は、FET1のスイッチング動作で発生するサージ電圧を吸収するための素子である。
同期整流部105は、二次巻線S1が出力電圧V2を出力するタイミングでFET2をオン状態にし、トランスT1の二次巻線S1の電圧を整流している。同期整流部105がFET2をオンするタイミングの制御は、第二の制御手段である同期整流制御部103によって行われる。同期整流制御部103の制御方法の一例として、例えば、特許文献1に記載の方法を用いることができる。同期整流制御部103は、ディスクリート回路又は半導体集積回路として一体形成された制御部である。
同期整流制御部103には、電源電圧として端子Dから、FET2のゲート駆動に用いられる電圧が供給され、端子Eからそれ以外の制御回路に用いる電圧が供給されている。端子Fはグランド(以下、GNDとする)に接地されており、端子HはFET2のドレイン−ソース間電圧を検知するために用いられる。端子GはFET2のゲート端子に接続されており、FET2のゲート駆動に用いられ、端子Dから供給された電源電圧によって動作する。同期整流制御部103の動作の概要については、図2で説明する。同期整流部105により整流された出力は、平滑部107を構成する電解コンデンサC8、電解コンデンサC9及びコイルL1によって平滑され、出力電圧V2として出力され、負荷13に供給される。
フィードバック部101は、出力電圧V2を所定の一定電圧に制御するために用いられる。出力電圧V2の電圧値は、シャントレギュレータIC3のリファレンス端子Rの基準電圧、抵抗R17及び抵抗R16によって設定される。そして、出力電圧V2が所定の電圧(ここでは5V)より高くなるとシャントレギュレータIC3によって、フォトカプラPC1の二次側ダイオードに流れる電流が増加する。その後、フォトカプラPC1の一次側トランジスタが動作し、コンデンサC5から電荷を放電する電流が増加するため、制御部102のFB端子の電圧が低下する。また、出力電圧V2が低下すると、フォトカプラPC1の二次側ダイオードの電流が低減し、制御部102からコンデンサC5に所定の充電電流が流れるため、制御部102のFB端子の電圧が上昇する。制御部102は、FB端子の電圧を検知することで、フィードバック制御を行っている。抵抗R15は電流制限抵抗である。なお、フィードバック部101は、出力電圧V2の代わりに、電解コンデンサC8の電圧(端子Cの電圧)を一定電圧に制御することで、間接的に出力電圧V2を所定の電圧に制御する方法を用いることもできる。
電源電圧供給部106は、同期整流部105が動作するために用いられる電源電圧Vcを供給している。トランスT1の二次巻線S1には、電圧が誘起される。本実施例では、トランスT1の端子Aから出力される第一の電圧であるフォワード電圧Vf1又はトランスT1の端子Bから出力される第二の電圧であるフォワード電圧Vf2のどちらか一方の端子から供給される電圧を、電源電圧Vcとして利用している。FET3の導通、遮断の状態は、後述する状態切替部104によって制御されている。電源電圧Vcにフォワード電圧Vf1又はフォワード電圧Vf2を利用する切り替え方法の詳細は、図2で説明する。
FET3がオン状態になると、トランスT1の端子AからダイオードD2、FET3を介してコンデンサC6に電源電圧Vcが充電される。ダイオードD2のカソード端子とGNDの間にはコンデンサC7が接続されている。ここで、フォワード電圧Vf1を電源電圧Vcとして利用する状態を、スイッチング電源回路12の第一の状態と定義する。また、FET3が遮断状態(オフ状態)になると、トランスT1の端子BからダイオードD3を介して、コンデンサC6に電源電圧Vcが充電される。ここで、フォワード電圧Vf2を電源電圧Vcとして利用する状態を、スイッチング電源回路12の第二の状態と定義する。また、抵抗R11は、FET3を駆動するために用いられるFET3のゲート−ソース間抵抗である。
ここで、出力電圧V2を同期整流部105の電源電圧として用いない理由について説明する。本実施例のスイッチング電源回路12では、出力電圧V2は5Vと低いため、例えば、ゲート駆動電圧が10VのFETをFET2に用いる場合、出力電圧V2(=5V)ではFET2をオン状態にする十分な電圧を供給できない。そのため、少なくともFET2のゲート駆動に用いられる電源電圧を供給する同期整流制御部103の端子Dには、電圧の高い電源電圧Vcを供給する必要がある。また、実施例3で説明するが、同期整流制御部103の端子Eに出力電圧V2を供給し、同期整流制御部103の端子Dに電源電圧Vcを供給する方法を用いることもできる。電源電圧供給部106は、少なくとも同期整流部105の、FET2のゲート駆動に用いられる電源電圧Vcの供給を行うことを特徴としている。
状態切替部104の回路動作を説明する。状態切替部104は、電源電圧Vcを9V以上に保ち、かつ同期整流部105の電源電圧Vcを低く抑えるため、前述したスイッチング電源回路12の第一の状態と第二の状態の切り替えを行っている。状態切替部104は、第一の状態(FET3のオン状態)において、電源電圧Vcが第一の閾値より高くなると、第二の状態(FET3のオフ状態)に遷移しても、電源電圧Vcを9V以上に保てることを検知する。そして、状態切替部104は、スイッチング電源回路12を第二の状態に遷移させる。ここで、第一の閾値を、例えば14.7Vとする。また、状態切替部104は、第二の状態において、電源電圧Vcが第二の閾値より低くなると、同期整流部105の電源電圧Vcが不足した状態であることを検知し、スイッチング電源回路12を第一の状態に遷移させる。ここで、第二の閾値を、第一の閾値より低い、例えば9Vとする(第二の閾値<第一の閾値)。状態切替部104の回路動作の詳細は後述する。なお、本実施例では、FET3のスイッチング回数を制限するために第一の閾値を第二の閾値より大きくし、ヒステリシス特性を設けている。しかし、図1(A)の抵抗R7及び、ダイオードD6を削除し第一の閾値と第二の閾値を一致させてもよい(第二の閾値=第一の閾値)。
状態切替部104は、第一の状態において、電源電圧Vcが第一の閾値より高くなると、第一の状態から第二の状態に切り替えを行う。第一の状態において、コンパレータIC4の出力端子はロー出力であり、FET3のゲート端子に入力されるFET3_off信号は、ロー状態である。このとき、FET3はオン状態となる。電源電圧Vcは、抵抗R5、R6、R7によって分圧され、コンパレータIC4の非反転入力端子に入力される。出力電圧V2は、抵抗R8、抵抗R9によって分圧され、基準電圧としてコンパレータIC4の反転入力端子に入力される。コンパレータIC4は、非反転入力端子と反転入力端子に入力された電圧を比較することで、電源電圧Vcが第一の閾値より高くなる状態の検知を行っている。第一の状態から第二の状態に切り替えを行うと、コンパレータIC4の出力端子はハイ出力になり、FET3_off信号はハイ状態になる。このとき、FET3はオフ状態となる。このように、コンパレータIC4は、電源電圧Vcの検知手段としても機能する。
また、状態切替部104は、第二の状態において、電源電圧Vcが第二の閾値(9V)より低くなると、第二の状態から第一の状態に切り替えを行う。第二の状態において、コンパレータIC4の出力端子はオープン出力であり、FET3_off信号はハイ状態である。このときFET3はオフ状態である。コンパレータIC4は、電源電圧Vcを抵抗R5、R6によって分圧された値がコンパレータIC4の非反転入力端子に入力され、出力電圧V2を抵抗R8と抵抗R9によって分圧した基準電圧と比較する。これにより、電源電圧Vcが第二の閾値より低くなる状態の検知を行っている。なお、抵抗R7及びダイオードD6によって、第一の閾値と第二の閾値を異なる値に設定しており、ヒステリシス特性を持たせた状態切り替えを行っている。第二の状態から第一の状態に切り替えを行うと、コンパレータIC4の出力端子はロー出力になり、FET3_off信号はロー状態になる。このとき、FET3はオン状態となる。抵抗R12は、FET3に流れる電流を制限するためのゲート抵抗である。
このように、状態切替部104は、電源電圧Vcの閾値を設定する機能を有している。状態切替部104は、出力電圧V2を抵抗R8と抵抗R9で分圧したコンパレータIC4の反転入力端子の電圧と、電源電圧Vcを抵抗R5と抵抗R6で分圧したコンパレータIC4の非反転入力端子の電圧とが一致した際の電源電圧Vcを第一の閾値とする。また、状態切替部104は、コンパレータIC4の反転入力端子の電圧と、電源電圧Vcを抵抗R5の抵抗値と、抵抗R6と抵抗R7の並列抵抗値とで分圧したコンパレータIC4の非反転入力端子の電圧とが一致した際の電源電圧Vcを第二の閾値とする。
[スイッチング電源回路の状態遷移]
図1(B)は、状態切替部104によるスイッチング電源回路12の状態遷移について説明する図である。図1(B)は状態切替部104による、スイッチング電源回路12の状態切り替え動作及び交流電源11の電圧と同期整流部105に供給される電源電圧Vcの関係を説明するためのグラフである。電源電圧Vcは、交流電源11の電圧実効値に比例する。図1(B)は、横軸に交流電源11の電圧実効値(Vrms)を示し、縦軸に電源電圧Vc(V)を示し、第一の状態を実線と●で、第二の状態を破線と○で、それぞれ示す。図1(B)では、トランスT1の一次巻線P1と二次巻線S1の巻線比を14対1(P1:S1=14:1)、トランスT1の一次巻線P1と二次巻線S1bの巻線比を28対1(P1:S1b=28:1)としている。また、図1(B)では、トランスT1の一次側の巻線と二次側の巻線間の結合率を100%、ダイオードD2、D3の順方向電圧を0.4Vとしている。図1(B)では、これらの値を用いて電源電圧Vcの理論値を算出している。実際には、電源電圧Vcは、トランスT1のリーケジインダクタンス、FET1の動作時に二次巻線S1、S1bに発生するサージ電圧、同期整流制御部103の消費電力、負荷13に流れる電流等の影響を受ける。ここでは、説明を簡易にするため、上述した理想的なモデルを用いて、状態切替部104が、電源電圧Vcを9V以上に制御する場合の切り替え動作について説明している。
まず、交流電源11の電圧が上昇した場合の切り替え動作について説明する。図1(B)の状態St1では、交流電源11の電圧が44Vrmsと低いため、スイッチング電源回路12は第一の状態になる。状態St1から、交流電源11の電圧が100Vrmsに上昇し、状態St2になると、状態切替部104は第一の閾値(14.7V)より電源電圧Vcが高い状態を検知する。状態切替部104は、スイッチング電源回路12を第一の状態から第二の状態に遷移させ、状態St2から状態St3に移行する。状態St3では、電源電圧Vcは9.7Vになる。
次に、交流電源11の電圧が低下した場合の切り替え動作について説明する。図1(B)の状態St4では、交流電源11の電圧が140Vrmsと高いため、スイッチング電源回路12は第二の状態になる。状態St4から、交流電源11の電圧が88Vrmsに低下し、状態St5になると、状態切替部104は第二の閾値(9V)より電源電圧Vcが低い状態を検知する。状態切替部104は、スイッチング電源回路12を第二の状態から第一の状態に遷移させ、状態St5から状態St6に移行する。状態St6では、電源電圧Vcは13.5Vになる。
[同期整流制御部の動作]
(第一の状態)
図2は同期整流制御部103の動作を示す図であり、図2(A)は第一の状態で電源電圧Vcにフォワード電圧Vf1を利用する方法を示し、図2(B)は第二の状態で電源電圧Vcにフォワード電圧Vf2を利用する方法を示す。図2(A)は第一の状態で電源電圧Vcにフォワード電圧Vf1を用いる方法を説明するため、(i)に端子Aの電圧波形を、(ii)にスイッチング電源回路12の簡略図を、それぞれ示している。(i)で、横軸は時間(秒(sec))、縦軸は電圧(V)を示す。説明を簡易にするため、図1(B)で説明した構成と同様の、理想的なモデルを用いて説明する。
まず、端子Aの電圧波形について説明する。t201のタイミングでFET1がオフ状態になると、トランスT1に蓄えられたエネルギーによって、二次巻線S1にフライバック電圧が発生する。そして、FET2のダイオードD4には順方向電流が流れるので、電解コンデンサC8に電荷の充電を開始する状態になる。言い換えれば、二次巻線S1から出力電圧V2が出力されている状態となる。ダイオードD4に順方向電流が流れると、端子Aの電圧が低下するため、同期整流制御部103は、端子Hにより端子Aの電圧を検知することで、ダイオードD4に順方向電流が流れている状態を検知する。同期整流制御部103は、ダイオードD4に順方向電流が流れるt201のタイミングでFET2をオン状態にする。
t202のタイミングは、トランスT1に蓄えられたエネルギーを全て放出した状態であり、FET2に電流が流れなくなるため、端子Aの電圧は約0Vになる。同期整流制御部103は、端子Aの電圧を検知することで、トランスT1に蓄えられたエネルギーが全て放出されたタイミングを検知し、t202のタイミングでFET2をオフ状態にする。
t202のタイミングから、トランスT1の一次巻線P1と、FET1のドレイン−ソース間容量による共振動作が生じる。t203のタイミングは、前述した制御部102のボトム検知によって検知されるタイミングであり、制御部102は、FET1をオン状態にする。t203のタイミングからt204のタイミングで、前述した制御部102がIS端子によって、FB端子の電圧に基づき設定された制御電流値を検知するまで、FET1をオン状態で保持する。FET1がオン状態(t203〜t204)で保持されている区間において、フォワード電圧Vf1及びフォワード電圧Vf2が生じ、電源電圧Vcとして利用することができる。
図2(A)の(ii)の簡略図に、第一の状態である、図1(B)の状態St2(状態St3に切り替わる前の状態)における、タイミングt203からタイミングt204までのスイッチング電源回路12の回路状態を示す。FET1がオン状態となっている場合、一次巻線P1に電圧V1が印加される。交流電源11の電圧実効値が定格電圧の100Vrmsの場合、電解コンデンサC1には交流電源11のピーク電圧が充電されるため、電圧V1は約141Vとなる。二次巻線S1には、一次巻線P1との巻線比(14対1)で定まるフォワード電圧Vf1として約10.1Vの電圧が生じる。第一の状態では、FET3がオン状態のため、電解コンデンサC8に充電された約5Vに、フォワード電圧Vf1である約10.1Vを加算した、端子Aのピーク電圧15.1Vが、ダイオードD2、FET3を介して、コンデンサC6に充電される。ダイオードD2で電圧が0.4V低下するため、第一の状態において、電源電圧Vcは14.7Vとなる。第一の状態のときの電源電圧Vcを電源電圧Vc1(=14.7V)とする。
(第二の状態)
図2(B)は第二の状態で電源電圧Vcにフォワード電圧Vf2を用いる方法を説明するため、(i)に端子Bの電圧波形を、(ii)にスイッチング電源回路12の簡略図を、それぞれ示している。タイミングt201からタイミングt204は、図2(A)の(i)と同様であり、説明を省略する。図2(A)の説明と同様に、t203のタイミングからt204のタイミングで、フォワード電圧Vf1及びフォワード電圧Vf2が生じ、電源電圧Vcとして利用することができる。
図2(B)の(ii)の簡略図に、タイミングt203からタイミングt204までのスイッチング電源回路12の回路状態を示す。電圧V1の約141Vに対して、二次巻線S1bには、一次巻線P1との巻線比(28対1)で定まるフォワード電圧Vf2として約5.1Vの電圧が生じる。第二の状態では、FET3がオフ状態のため、電解コンデンサC8に充電された約5Vに、フォワード電圧Vf2である約5.1Vを加算した、端子Bのピーク電圧10.1Vが、ダイオードD3を介して、コンデンサC6に充電される。ダイオードD3で電圧が0.4V低下するため、第二の状態において、電源電圧Vcは9.7Vとなる。第二の状態のときの電源電圧Vcを電源電圧Vc2(=9.7V)とする。
本実施例のスイッチング電源回路12は、交流電源11の電圧が高い場合には、第二の状態として電源電圧Vcを低く保ち、同期整流部105による消費電力を低減することができる。また、交流電源11の電圧が低い場合には、第一の状態とし、電源電圧Vcを高くし、同期整流部105の動作を継続できる。本実施例のスイッチング電源回路12は、前述したように、交流電源11の電圧、言い換えれば電源電圧Vcに応じて、第一の状態と第二の状態を最適に切り替える。これにより、電源装置10の定格電圧(例えば交流電源11の電圧実効値が110V〜120V)における、電源効率の改善と、電源装置10を動作可能な電圧下限値を下げることを、両立させることができる。
例えば、第一の状態と第二の状態の切り替えを行わない従来の二次側に同期整流回路を備えたスイッチング電源回路では次のような矛盾が生じていた。同期整流部105による消費電力を低減するために電源電圧Vcを低く設定すると、交流電源11の電圧が低い場合には電源電圧Vcが低下し、同期整流部105の動作を継続できなくなる場合がある。そして、電源装置10の重負荷状態において、同期整流部105が動作していない場合には、ダイオードD4が発熱等により故障してしまう場合がある。そのため、第一の状態と第二の状態の切り替えを行わない従来のスイッチング電源回路では、電源電圧Vcを高い電圧に設定しておく必要がある。このため、電源装置10の定格電圧(例えば交流電源11の電圧実効値が110V〜120V)における、電源効率も低下してしまう。
ところで、本実施例では、状態切替部104は、同期整流部105に供給される電源電圧Vcの検知結果に基づき、スイッチング電源回路12の状態切り替えを行っているが、次のようにしてもよい。例えば、図2に示す端子Aのピーク電圧や、端子Bのピーク電圧の検知結果に基づき、電源電圧Vcを推定することができる。そのため、トランスT1の端子A及び端子Bの電圧に基づき、スイッチング電源回路12の状態を切り替えることができる。本実施例で説明した方法は、スイッチング電源回路12の第一の状態と、第二の状態の切り替えを行う際の判断方法の一例である。
[電源効率]
図3は、スイッチング電源回路12を備えた電源装置10の電源効率の説明図である。図3は、電源装置10が負荷13に出力する電力と、電源装置10の電源効率を実測した例である。図3は、横軸に出力電力(W)、縦軸に電源効率(%)を示している。図3では、スイッチング電源回路12の状態ごとの電源効率を比較している。詳細には、ダイオードD4により整流した状態を一点鎖線と△で示す(ダイオード整流)。また、本実施例の第一の状態における同期整流部105により整流した状態を実線と●で示し(同期整流(第一の状態))、本実施例の第二の状態における同期整流部105により整流した状態を破線と○で示す(同期整流(第二の状態))。
図3の△で示したデータは、同期整流制御部103への電力供給を停止し、スイッチング電源回路12の二次側の整流手段として、ダイオードD4を用いた場合の電源装置10の電源効率を示している。整流手段としてダイオードD4を用いた場合、ダイオードD4の順電圧Vfによる損失が生じるため、特に電源装置10の重負荷状態(出力電力が大きい状態)において、図3の●や、図3の○で示した同期整流を用いた場合に比べて、電源効率が低下してしまう。なお、図3の△で示したデータは、ダイオードD4に一般的に順方向電圧の低いショットキー接合ダイオードを有している場合の効率を示している。このため、ダイオードD4が、一般的に順方向電圧の高いPN接合ダイオードの場合には、ダイオードの順電圧Vfによる損失が更に大きくなる。
一方で、電源装置10の軽負荷状態(出力電力が小さい状態)においては、ダイオードD4の順電圧Vfによる損失が低減し、相対的に同期整流部105による損失が大きくなるため、図3の●で示した同期整流を用いた場合に比べて、電源効率が改善できる。図3の●で示したデータはスイッチング電源回路12の二次側の整流手段として、第一の状態で同期整流部105を用いた場合について示している。電源装置10の重負荷状態における第一の状態で同期整流部105を用いた場合には、ダイオードD4の順電圧Vfによる損失を低減できるため、図3の△で示したダイオード整流を用いた場合に比べて電源効率が改善できる。一方、電源装置10の軽負荷状態においては、第一の状態で同期整流部105を用いた場合には、同期整流部105による損失が大きくなるため、図3の△で示したダイオード整流を用いた場合に比べて、電源効率が低下してしまう。電源効率が低下する要因は、電源電圧Vcが高いと、同期整流制御部103による消費電力や、FET2のゲート駆動による消費電力が大きくなってしまうためである。
図3の○で示したデータは、スイッチング電源回路12の二次側の整流手段として、第二の状態で同期整流部105を用いた場合について示している。電源装置10の重負荷状態においては、前述したように、第二の状態では同期整流部105による損失を低減できるため、図3の●で示した第一の状態で同期整流部105を用いた場合に比べて、更に電源効率を改善できる。電源装置10の軽負荷状態においても、前述したように、第二の状態に切り替えることにより同期整流部105による損失を低減できる。このため、電源が非常に軽負荷な状態(この例では、負荷13の消費電力が0.3Wの場合)においても、図3の△で示したダイオード整流を用いた場合に比べて、電源効率を改善できる。
本実施例のスイッチング電源回路12は、前述したように、交流電源11の電圧に応じて、第一の状態と第二の状態を最適に切り替えることを特徴としており、同期整流部105の電源電圧Vcを低く抑えることができる。そのため、同期整流部105による損失を低減することができ、電源装置10の軽負荷状態においても、同期整流部105による電源効率を改善する効果を得ることができる。以上、本実施例によれば、同期整流回路を動作させた状態で、電源装置の軽負荷状態の効率を改善することができる。
[電源装置の構成]
実施例2の電源装置40において、実施例1と同様の構成については同一符号を付けて説明を省略する。図4(A)に示す電源装置40のスイッチング電源回路42は、切替手段である状態切替部504の制御に、第三の制御手段として、マイクロコンピュータ等の制御回路、CPU507を用いている。CPU507は、フィードバック部501によって制御される出力電圧V2を5V又は第二の出力電圧である3Vに切り替える機能を有している。また、出力電圧V2から負荷13への電力供給経路に、ロードスイッチとして接続手段であるFET4を有している点が、実施例1の構成と異なる。なお、実施例1と同じ構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施例では、電源電圧Vcは抵抗R5、R6によって分圧され、CPU507に入力される。CPU507は、電源電圧Vcの検知手段としても機能する。また、FET3のゲート端子は、抵抗R7を介してCPU507に接続されている。CPU507がロー状態のFET3_off信号を出力すると、FET3はオン状態となり、ハイ状態のFET3_off信号を出力すると、FET3はオフ状態となる。なお、CPU507のFET3_off信号の駆動回路は省略して示している。
CPU507は、状態切替部504の制御と、電源装置40の制御を兼用しており、CPU507による制御の詳細は図5のフローチャートで説明する。CPU507は、負荷13を有する不図示の装置と通信を行い、電源装置40に対する電圧出力の要求に応じて電源装置40の状態を制御するために用いられる。フィードバック部501は、FET5及び抵抗R17によって、抵抗R18及び抵抗R19で定まる抵抗分圧を変更し、出力電圧V2の電圧値の切り替えを行っている。CPU507からFET5のゲート端子に出力されるSelect信号がハイ状態のときにFET5がオン状態となり、抵抗R19に抵抗R17が並列に接続されて、出力電圧V2は5Vになる。また、CPU507からFET5のゲート端子に出力されるSelect信号がロー状態のときにFET5がオフ状態となり、抵抗R17の接続が切断されて、出力電圧V2は3Vになる。
ロードスイッチとして用いられるFET4は、負荷13への電力供給を接続又は遮断するために用いられる。FET4は、ゲート端子が抵抗R13を介してCPU507に接続されており、CPU507によって制御されている。CPU507がFET4_off信号をハイ状態にすると、FET4がオフ状態となり、FET4_off信号をロー状態にすると、FET4がオン状態になる。なお、CPU507のFET4_off信号の駆動回路は省略して示している。ここで、FET4をオフ状態にし、負荷13への電力供給を遮断した状態をスイッチング電源回路42の出力停止状態、以降、第三の状態と定義する。
スイッチング電源回路42の第三の状態は、交流電源11の電圧が低下した場合に、スイッチング電源回路42の故障を防止するために用いられる。交流電源11の電圧が低下し、同期整流部105に十分な電圧を供給できない状態、例えば、本実施例では、電源電圧Vccが9Vから所定電圧低下した状態になると、同期整流部105が動作できなくなり、ダイオードD4による整流が行われる。ダイオードD4による整流が行われる際に、負荷13に大電力が供給されると、ダイオードD4が過剰に発熱し故障してしまうおそれがある。本実施例の状態切替部504は、交流電源11の電圧が低下し、同期整流部105に十分な電圧を供給できない状態を検知すると、FET4をオフ状態にして第三の状態とし、スイッチング電源回路42の故障を防止することを特徴としている。
図4(B)は、CPU507による、スイッチング電源回路42の状態切り替え動作及び、交流電源11の電圧実効値(Vrms)と同期整流部105に供給される電源電圧Vcの関係を説明するためのグラフである。図1(B)の説明と重複する説明は省略する。図4(B)は、横軸に交流電源11の電圧実効値(Vrms)を示す。また、図4(B)は、縦軸に電源電圧Vc(V)を示し、出力電圧V2が5Vのときの第一の状態を実線と●で、出力電圧V2が5Vのときの第二の状態を破線と○で、出力電圧V2が3Vのときの第一の状態を実線と□で、それぞれ示す。
(第一の状態と第二の状態の切り替え)
まず、スイッチング電源回路42の第一の状態と、第二の状態の切り替え方法について説明する。出力電圧V2を5Vに設定した状態における、第一の状態と第二の状態の切り替え方法は、図1(B)の説明と同様のため説明を省略する(St1→St2→St3、St4→St5→St6)。また、実施例1と同様に、第一の閾値は14.7V、第二の閾値は9Vである。CPU507がselect信号をハイ状態からロー状態にし、FET5がオン状態からオフ状態になると、出力電圧V2は、5Vから3Vに遷移する。出力電圧V2を5Vに設定した状態から3Vに設定した状態に遷移させると、電解コンデンサC8に充電された電圧が約5Vから約3Vに低下する。そのため、図2で説明したように、電源電圧Vcも、出力電圧V2に5Vを出力している状態に比べて、2V低下した状態(第二の状態では7.7V(=9.7V−2V))になる。
電源装置40では、定格電圧(例えば、交流電源11の電圧実効値が110V〜120Vの範囲)において第二の状態にすると、電源電圧Vcは9Vより低い電圧に低下してしまう。そのため、スイッチング電源回路42は、出力電圧V2が3Vに設定された場合には、常に第一の状態で動作しており、出力電圧V2が3Vの場合には、第一の状態を維持する。即ち、本実施例の状態切替部504は、出力電圧V2に基づき、第一の状態と第二の状態の切り替えを行うことを特徴としている。
また、出力電圧V2に基づき、第一の状態と第二の状態を切り替える方法の変形例として、次のような方法を用いることができる。例えば、出力電圧V2を5Vに設定した場合には、常に第二の状態で動作させる方法がある。また、例えば、出力電圧V2を3Vに設定した場合には、常に第一の状態で動作させ、出力電圧V2を5Vに設定した場合には、常に第二の状態で動作させる方法を用いることができる。
(第一の状態と第三の状態の切り替え)
次にスイッチング電源回路42の第一の状態と第三の状態の切り替え方法について説明する。第一の状態で、出力電圧V2に5Vを出力している状態において、交流電源11の電圧が低下し、状態St6から状態St1になると、第四の閾値より電源電圧Vcが低い状態が検知される。このとき、電源電圧Vcは9Vより低い電圧に低下し、更に電圧が低下すると、同期整流部105の動作を継続できなくなる状態となる。このため、状態切替部504は、FET4をオフ状態にして負荷13への電力供給を遮断し、第三の状態に移行する。
第三の状態、即ち、FET4がオフ状態で、かつ、出力電圧V2に5Vを出力している状態において、交流電源11の電圧が上昇し、状態St1から状態St7になると、第三の閾値より電源電圧Vcが高い状態が検知される。このとき、電源電圧Vcは9Vより高い電圧に上昇し、同期整流部105の動作できる状態となる。このため、状態切替部504は、FET4をオン状態にして負荷13への電力供給を再開し、第三の状態から第一の状態に移行する。
同様に、第一の状態で、出力電圧V2に3Vを出力している状態においては、交流電源11の電圧が低下し、状態St8から状態St9になると、第四の閾値よりも電源電圧Vcが低い状態が検知される。状態切替部504は、FET4をオフ状態として第三の状態に移行する。第三の状態で、FET4がオフ状態で、かつ、出力電圧V2に3Vを出力している状態において、交流電源11の電圧が上昇し、状態St9から状態St8になると、第三の閾値より電源電圧Vcが高い状態が検知される。状態切替部504は、FET4をオン状態にし、第三の状態から第一の状態に移行する。なお、第三の閾値と第四の閾値を異なる値、例えば第三の閾値を第四の閾値より大きく設定することで(第三の閾値>第四の閾値)、ヒステリシス特性を持たせた状態切り替えを行っている。また、閾値については、「第一の閾値≧第二の閾値>第三の閾値>第四の閾値」の関係を満たすように設定してもよい。
ところで、スイッチング電源回路42のように、出力電圧V2を切り替える機能(例えば、本実施例では5Vと3V)を有する場合には、電源電圧Vcの電圧は、交流電源11の電圧の変化に加え、出力電圧V2の変化の影響を受ける。この影響により、電源電圧Vcが変化する範囲が大きくなる。そのため、出力電圧V2を切り替える機能を有するスイッチング電源回路42において、第一の状態と第二の状態の切り替えを行い、電源電圧Vcを最適に制御する方法は有効である。
[電源装置の制御]
図5は、本実施例のCPU507による、電源装置40の制御シーケンスを説明するフローチャートである。交流電源11が電源装置40に接続され、電源装置40に電力供給される状態になると、CPU507は、ステップ(以下、Sという)501以降の制御を開始する。S501でCPU507は、電源装置40の初期状態では、FET3及びFET4をオフ状態にし、負荷13への電力供給を遮断する。FET3の状態にかかわらずFET4がオフ状態となっている状態を、電源装置40の出力停止状態と定義し、第三の状態とする。
S502でCPU507は、出力電圧V2に5Vを出力する要求があったか否かを判断し、出力電圧V2に5Vを出力する要求があったと判断した場合には、処理をS503に進める。S503でCPU507は、Select信号をハイ状態にし、出力電圧V2として5Vを出力する。S502でCPU507は、出力電圧V2に5Vを出力する要求がないと判断した場合には、処理をS504に進める。S504でCPU507は、Select信号をロー状態にし、出力電圧V2として3Vを出力し、処理をS505に進める。S505でCPU507は、負荷13に出力電圧V2を出力する要求があるか否かを判断する。S505でCPU507は、負荷13に出力電圧V2を出力する要求があると判断した場合には、処理をS506に進める。S506でCPU507は、FET3をオン状態にする。これは、後述するS507で、同期整流部105が動作可能か否かの判断を行うため、FET3をオン状態にして、電源電圧Vcを高い電圧(Vf1を利用する状態)にしている。
S505でCPU507は、負荷13に出力電圧V2を出力する要求がないと判断した場合には、処理をS502に戻す。このように、S502〜S505の処理を繰り返し行い、負荷13を有する不図示の装置から要求される出力電圧V2(出力電圧V2に5Vを出力する要求の有無)に変更がないかを監視しながら、S505で出力要求があるまで待機する。S507でCPU507は、電源電圧Vcが第三の閾値より大きいか否かを判断する。S507でCPU507は、電源電圧Vcが第三の閾値より大きいと判断した場合には、処理をS508に進める。S508でCPU507は、FET4をオン状態にし、負荷13に電力を供給する。S507でCPU507は、電源電圧Vcが第三の閾値以下であると判断した場合には、処理をS517に進める。S517でCPU507は、交流電源11の電圧が異常に低く(低電圧異常)、電源装置40が動作できないと判断し、状況を報知し、処理をS518に進める。例えば、電源装置40を搭載している装置が画像形成装置である場合、CPU507は、画像形成装置が有する不図示のディスプレイに、電圧が低下し画像形成装置が機能できない旨を表示させることにより、ユーザに報知する。S518でCPU507は、FET3及びFET4をオフ状態にし、電源装置40の出力停止状態(第三の状態)に遷移させ、制御を終了する。
S509でCPU507は、出力電圧V2に5Vを出力している状態か否かを判断し、5Vを出力している状態であると判断した場合には、処理をS510に進める。S509でCPU507は、出力電圧V2に5Vを出力していない状態(3Vを出力している状態)であると判断した場合には、処理をS513に進め、S513でFET3をオン状態とし、S506からの第一の状態を保持する。このように、本実施例では、出力電圧V2が3Vで、かつ、電源電圧Vcが第三の閾値より大きい場合には、常に第一の状態となる。
S510でCPU507は、電源装置40が第一の状態か否かを判断し、第一の状態であると判断した場合には、処理をS511に進める。S510でCPU507は、電源装置40が第一の状態ではないと判断した場合(電源装置40が第二の状態の場合)には、処理をS512に進める。S511でCPU507は、電源電圧Vcが第一の閾値より大きいか否かを判断し、電源電圧Vcが第一の閾値より大きいと判断した場合には、処理をS514に進める。S514でCPU507は、FET3をオフ状態とし、電源電圧Vcにフォワード電圧Vf2を利用した第二の状態に遷移し、処理をS516に進める。S511でCPU507は、電源電圧Vcが第一の閾値以下であると判断した場合には、処理をS513に進める。S513でCPU507は、FET3をオン状態のまま、第一の状態を保持し、処理をS515に進める。
S512でCPU507は、電源電圧Vcが第二の閾値より小さいか否かを判断する。S512でCPU507は、電源電圧Vcが第二の閾値より小さいと判断した場合には、処理をS513に進め、S513でFET3をオン状態とし、第一の状態に遷移し、処理をS515に進める。S512でCPU507は、電源電圧Vcが第二の閾値以上であると判断した場合には、処理をS514に進め、FET3をオフ状態のまま、第二の状態を保持し、処理をS516に進める。
S515でCPU507は、電源電圧Vcが第四の閾値より大きいか否かを判断する。S515でCPU507は、電源電圧Vcが第四の閾値より大きいと判断した場合には、処理をS516に進め、電源電圧Vcが第四の閾値以下であると判断した場合には、処理をS517に進める。この場合、S517でCPU507は、交流電源11の電圧が異常に低く、電源装置40が動作できないと判断し、状況を報知し、処理をS518に進める。
S516でCPU507は、負荷13への出力電圧V2を停止する要求があるか否かを判断する。S516でCPU507は、負荷13への出力電圧V2を停止する要求があると判断した場合、処理をS501に戻し、S501で電源装置40の出力停止状態(第三の状態)に遷移する。S516でCPU507は、負荷13への出力電圧V2を停止する要求がないと判断した場合、処理をS509に戻し、S509〜S516の処理を繰り返し行う。
ところで、本実施例のスイッチング電源回路42は、FET4をオフした第三の状態において、FET3をオフ状態にしている。これは、電源装置40の出力停止状態において、同期整流部105による消費電力を低減させるために行っている。交流電源11の電圧が低下した場合に、スイッチング電源回路42の故障を防止する目的のためには、FET4をオフした第三の状態において、FET3をオン状態にして制御してもよい。なお、本実施例では、第一〜第四の閾値は、例えばCPU507が有する不図示の不揮発性メモリに保存されている。
本実施例のスイッチング電源回路42は、前述したように、交流電源11の電圧に応じて、第一の状態、第二の状態及び、第三の状態を最適に切り替えることを特徴としており、同期整流部105の電源電圧Vcを低く抑えることができる。そのため、同期整流部105による損失を低減することができ、電源装置40の軽負荷状態においても、同期整流部105による電源効率を改善する効果を得ることができる。更に、本実施例のスイッチング電源回路42は、交流電源11の電圧が異常に低下した場合にも、スイッチング電源回路42の故障を防止できる。以上、本実施例によれば、同期整流回路を動作させた状態で、電源装置の軽負荷状態の効率を改善することができる。
[電源装置の構成]
実施例3の電源装置60を説明する。実施例1及び実施例2と同様の構成については同一符号を付けて説明を省略する。図6(A)に示す電源装置60の構成で、実施例2の構成と異なる点は、以下に示す第四の状態を備えているところにある。スイッチング電源回路62の状態切替部604は、FET4をオフ状態にした電源装置60の出力停止状態において、同期整流部605のFET2のスイッチング動作を停止する第四の状態を有している。FET2のスイッチング動作を停止するとは、即ち、FET2をオフ状態に保持することである。
その他の異なる点としては、交流電源11の電圧を検知する検知手段として、カレントトランスCT65を有し、状態切替部604は、交流電源11の電圧に基づき、スイッチング電源回路62の状態を切り替えている。また、トランスT6は一次側に一次巻線P1、P2、二次側に第一の二次巻線である二次巻線S1、第二の二次巻線である二次巻線S2を備えている。また、同期整流部605の同期整流制御部603は、FET2のスイッチング動作を停止するために用いる端子Sを有し、端子SはCPU507に接続されている。FET2のスイッチング動作を停止する機能を有する同期整流制御部603の一例として、例えば特許文献2に記載の方法を用いることができる。
また、電源電圧供給部606は、同期整流制御部603の端子D(FET2のゲート駆動に用いる電源電圧)のみに電源電圧Vcを供給しており、第一の状態と第二の状態で供給する電圧を切り替えている。同期整流制御部603の端子Eには、電圧の低い(本実施例では5V)出力電圧V2を電源電圧として供給することで、同期整流制御部603の消費電力を低減している。
状態切替部604のCPU507は、同期整流部605のスイッチング動作を停止させ、ダイオードD4による整流を行う状態に遷移させるStop信号を、同期整流制御部603の端子Sに出力している。CPU507がStop信号をハイ状態にすると、同期整流部105のスイッチング動作は停止する、即ち、FET2をオフ状態で保持する。CPU507がStop信号をロー状態にすると、同期整流部105が動作する(同期整流を行う)状態になる。FET4をオフ状態にした電源装置60の出力停止状態において、スイッチング電源回路62の負荷はおおよそ0になる。負荷が0の状態では、同期整流を行うよりも、ダイオードD4による整流を行う方が電源装置60の効率が良くなる場合がある。よって、本実施例では、電源装置60の出力停止状態の消費電力を低減するために、同期整流部105のFET2のスイッチング動作を停止させている。
CPU507には、FET66のゲート端子が接続されている。CPU507がFET66_on信号をハイ状態にすると、FET66がオン状態になり、フォトトライアックカプラSSR65の二次側発光ダイオードに抵抗R64を介して電流が流れる。フォトトライアックカプラSSR65の一次側トライアックに電流が流れる状態になると、交流電源11の電圧と抵抗R63で定まる電流が、カレントトランスCT65の一次巻線に流れる。カレントトランスCT65の二次巻線には、抵抗R64が接続されており、基準電圧Vrefに対して、抵抗R64に生じる電圧であるVac信号には、交流電源11の電圧に比例した波形が出力される。Vac信号はCPU507に入力され、CPU507は、Vac信号に基づき、交流電源11の電圧を検知することができる。なお、交流電源11の電圧を検知するタイミングを除いて、フォトトライアックカプラSSR65によって、カレントトランスCT65の一次側に流れる電流を遮断することで、抵抗R63による消費電力を低減している。
トランスT6は二次巻線S2の端子Bから第二の電圧である第三のフォワード電圧Vf3を出力している。二次巻線S2には、一次側の電圧V1に対して、トランスT6の一次巻線P1と二次巻線S2の巻線比である13対1(P1:S2=13:1)に応じた第三のフォワード電圧Vf3が出力される。ここで、第三のフォワード電圧Vf3は、フォワード電圧Vf1よりも大きな電圧となる(Vf3>Vf1)。しかし、図2(A)で説明したように、フォワード電圧Vf1を利用する第一の状態(Vc=Vc1)では、電解コンデンサC8に充電された電圧(ここでは5V)が加算された電圧が、同期整流部605の電源電圧Vcとして供給される(Vf1+5)。そのため、第三のフォワード電圧Vf3を利用する第二の状態(Vc=Vc3)では、同期整流部605の電源電圧Vcは第一の状態よりも低い電圧になる(Vc3<Vc1)。同期整流部605に供給される電源電圧Vcが高い状態がスイッチング電源回路62の第一の状態であり、同期整流部605に供給される電源電圧Vcが低い状態がスイッチング電源回路62の第二の状態である。
図6(B)は、CPU507による、スイッチング電源回路62の状態切り替え動作及び交流電源11の電圧と同期整流部605に供給される電源電圧Vcの関係を説明するためのグラフである。スイッチング電源回路62の第一の状態と第二の状態の切り替え方法は、図1(B)の説明と同様であり、説明を省略する(St1→St2→St3、St4→St5→St6)。また、第一の状態と第四の状態の切り替え方法は、図4(B)の出力電圧V2が5Vの場合の第一の状態と第三の状態の切り替え方法の説明と同様である(St6→St1、St1→St7)。また、図6(B)では、図4(B)の電源電圧Vcについての第一の閾値〜第四の閾値を、交流電源11の電圧実効値についての第一の閾値〜第四の閾値に変換している。
本実施例のスイッチング電源回路62は、図1(B)及び図4(B)で説明した、電源電圧Vcを直接検知する方法の代わりに、Vac信号によって交流電源11の電圧を検知することで、間接的に、電源電圧Vcを推定することができる。ただし、交流電源11の電圧を検知する方法は、電源電圧Vcを間接的に検知する方法の一例であり、例えば、電解コンデンサC1に充電された一次側電圧V1を検知することで、電源電圧Vcを推定する方法を用いることもできる。
CPU507は、状態切替部604の制御と、電源装置60の制御を兼用しており、CPU507による制御の詳細は図7のフローチャートで説明する。CPU507は、負荷13を有する不図示の装置と通信し、電源装置60に対する電圧出力の要求に応じて、電源装置60の状態を制御するために用いられる。
[電源装置の制御]
図7は本実施例のCPU507による、電源装置60の制御シーケンスを説明するフローチャートである。図5と同様の処理には同一のステップ番号を付けて説明を省略する。図5と図7で異なっているところは、出力電圧V2が5Vで固定されている点と、上述した第四の状態が追加されている点と、電源電圧Vcの電圧検知がVac信号(電圧Vacともいう)による交流電源11の電圧検知に置き換えられているところである。
S701でCPU507は、電源装置60の初期状態では、Stop信号をハイ状態として同期整流部105のスイッチング動作を停止し、FET4をオフ状態にして負荷13への電力供給を遮断する。この状態を電源装置60の出力停止状態である第四の状態と定義する。S703でCPU507は、Stop信号をロー状態として同期整流部105のスイッチング動作を開始し同期整流部105を動作させ、FET3をオン状態にする。S704でCPU507は、FET66_on信号をハイ状態にし、電圧Vacが第三の閾値より大きいか否かを判断する。S704でCPU507は、電圧Vacが第三の閾値より大きいと判断した場合には、S705でFET66_on信号を再びロー状態にした後、FET4をオン状態にする。S704でCPU507は、電圧Vacが第三の閾値以下であると判断した場合には、処理をS713進める。S713でCPU507は、FET66_on信号をロー状態にした後、図5のS517と同様の処理を行い、処理をS714に進める。S714でCPU507は、Stop信号をハイ状態にして同期整流部105のスイッチング動作を停止し、FET4をオフ状態にし、電源装置60の出力停止状態(第四の状態)に遷移して制御を終了する。
S510でCPU507は、電源装置60が第一の状態であると判断した場合には、処理をS707に進め、第一の状態でないと判断した場合(電源装置60が第二の状態の場合)には、処理をS708に進める。S707でCPU507は、FET66_on信号をハイ状態にし、電圧Vacが第一の閾値より大きいか否かを判断する。S707でCPU507は、電圧Vacが第一の閾値より大きいと判断した場合には、処理をS709に進める。S709でCPU507は、再びFET66_on信号をロー状態にし、図5のS514と同様にFET3をオフ状態とし、第二の状態に遷移し、処理をS712に進める。
S707でCPU507は、電圧Vacが第一の閾値以下であると判断した場合には、処理をS710に進める。S710でCPU507は、FET66_on信号をロー状態にし、図5のS513と同様にFET3をオン状態のまま、第一の状態を保持し、処理をS711に進める。
S708でCPU507は、FET66_on信号をハイ状態にし、電圧Vacが第二の閾値より小さいか否かを判断する。S708でCPU507は、電圧Vacが第二の閾値より小さいと判断した場合には、S710でFET66_on信号をロー状態にし、図5のS513と同様にFET3をオン状態とし、第一の状態に遷移し、処理をS711に進める。S708でCPU507は、電圧Vacが第二の閾値以上であると判断した場合には、処理をS709に進める。S709でCPU507は、FET66_on信号をロー状態にし、図5のS514と同様にFET3をオフ状態とし、第二の状態を保持し、処理をS712に進める。
S711でCPU507は、FET66_on信号をハイ状態にし、電圧Vacが第四の閾値より大きいか否かを判断する。S711でCPU507は、電圧Vacが第四の閾値より大きいと判断した場合には、処理をS712に進める。S712でCPU507は、再びFET66_on信号をロー状態にし、図5のS516と同様の判断を行い、出力電圧V2の停止要求があった場合には、処理をS701に戻し、出力電圧V2の停止要求がない場合には、処理をS510に戻す。S711でCPU507は、電圧Vacが第四の閾値以下であると判断した場合には、処理をS713に進める。
本実施例で説明したトランスT6のように、二次側に2以上の巻線を設けて、フォワード電圧Vf1と、フォワード電圧Vf3を出力してもよい。本実施例のトランスT6は、二次側に複数の巻線を設ける方法の一例である。例えば、端子Bからフォワード電圧Vf1を出力し、端子Aからフォワード電圧Vf3を出力するトランスを用いてもよい。また、二次側に3つの巻線を有するトランスを用いて、フォワード電圧Vf1及びフォワード電圧Vf3と電圧の異なる、第四のフォワード電圧(Vf4)を出力し、電源電圧Vcの切り替えを行ってもよい。同様に、トランスの二次巻線の数及び出力するフォワード電圧の数はそれ以上でもよい。
本実施例のスイッチング電源回路62は、前述したように、交流電源11の電圧に応じて、第一の状態、第二の状態及び第四の状態を最適に切り替えることを特徴としており、同期整流部105の電源電圧Vcを低く抑えることができる。そのため、同期整流部105による損失を低減することができ、電源装置60の軽負荷状態においても、同期整流部105による電源効率を改善する効果を得ることができる。更に、本実施例のスイッチング電源回路62は、電源装置60の出力停止状態(第四の状態)における電源効率を改善できる。
[他の実施例]
実施例1の図1で、状態切替部104に替えて、実施例2や実施例3のCPU507を有する状態切替部504、604を備える構成としてもよい。また、実施例1の図1で、FET4を設けて負荷13への電力供給の遮断をCPU507が制御する構成としてもよい。実施例2の図4で、状態切り替えの動作を、実施例1のコンパレータIC4が行う構成としてもよい。
以上、本実施例によれば、同期整流回路を動作させた状態で、電源装置の軽負荷状態の効率を改善することができる。
実施例1〜3で説明した電源装置は、例えば画像形成装置の低圧電源、即ちコントローラ(制御部)やモータ等の駆動部へ電力を供給する電源として適用可能である。以下に、実施例1〜3の電源装置が適用される画像形成装置の構成を説明する。
[画像形成装置の構成]
画像形成装置の一例として、レーザビームプリンタを例にあげて説明する。図8に電子写真方式のプリンタの一例であるレーザビームプリンタの概略構成を示す。レーザビームプリンタ300は、静電潜像が形成される像担持体としての感光ドラム311、感光ドラム311を一様に帯電する帯電部317(帯電手段)、感光ドラム311に形成された静電潜像をトナーで現像する現像部312(現像手段)を備えている。そして、感光ドラム311に現像されたトナー像をカセット316から供給された記録材としてのシート(不図示)に転写部318(転写手段)によって転写して、シートに転写したトナー像を定着器314で定着してトレイ315に排出する。この感光ドラム311、帯電部317、現像部312、転写部318が画像形成部である。また、レーザビームプリンタ300は、実施例1〜3で説明した電源装置400を備えている。なお、実施例1〜3の電源装置400を適用可能な画像形成装置は、図8に例示したものに限定されず、例えば複数の画像形成部を備える画像形成装置であってもよい。更に、感光ドラム311上のトナー像を中間転写ベルトに転写する一次転写部と、中間転写ベルト上のトナー像をシートに転写する二次転写部を備える画像形成装置であってもよい。
レーザビームプリンタ300は、画像形成部による画像形成動作や、シートの搬送動作を制御するコントローラ320を備えており、実施例1〜3に記載の電源装置400は、例えばコントローラ320に電力を供給する。また、実施例1〜3に記載の電源装置400は、感光ドラム311を回転するため又はシートを搬送する各種ローラ等を駆動するためのモータ等の駆動部に電力を供給する。即ち、実施例1〜3の負荷13は、コントローラ320や駆動部に相当する。本実施例の電源装置400を備える画像形成装置は、交流電源11の電圧に応じて、第一の状態〜第四の状態を切り替える構成である。更に、実施例2、3の電源装置が画像形成装置に搭載されている場合、コントローラ320がCPU507として機能することもできる。また、実施例2の電源装置が画像形成装置に搭載されている場合、CPU507は出力電圧V2を5V又は3Vにするように制御する。なお、コントローラ320とCPU507をそれぞれ備える構成としてもよい。
以上、本実施例によれば、同期整流回路を動作させた状態で、電源装置の軽負荷状態の効率を改善することができる。