JP4038368B2 - アルミニウム合金溶接接合材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアルミニウム合金溶接接合材であって、溶接接合部 (溶接継手部とも言う) の強度と伸びとが優れたアルミニウム合金溶接接合材 (以下、アルミニウムを単にAlと言う) に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車などの輸送機のパネル類、フレーム類、メンバー類などの部材には、Al合金展伸材 (圧延板材、押出形材、鍛造材などの総称)やAl合金鋳造材(以下、展伸材や鋳造材を総称してAl合金材と言う) を種々組み合わせて溶接接合した構造材が用いられるようになっている。
【0003】
これら溶接継手乃至溶接継手部を有するAl合金溶接接合材においては、部材の形状や要求特性、あるいは要求製作コストなどに応じて、Al合金材同士の組み合わせ方が適宜選択される。即ち、同じ板材、形材、鍛造材、鋳造材の同士の組み合わせや、違うAl合金材同士の組み合わせが、溶接接合されるAl合金材同士の形状や厚みが違う場合を含めて、適宜選択される。
【0004】
前記Al合金溶接接合材の中でも、厚みの違う板材同士が接合された接合板材であるテーラードブランク材は、パネル、フレームなどの他の部材の製造過程で発生した種々の端材を再使用できる点や、要求強度や成形性などが部位により異なる部材を、素材の厚みや材質の調整で製作できる点などで利点が大きい。このため、鋼板のテーラードブランク材などは既に自動車などの輸送機で利用されている。
【0005】
これら成形される接合板材用Al合金としては、従来から溶接構造用Al合金として汎用されるAA乃至JIS 規格に規定される(AA 乃至JIS 規格を満足する)5000 系や、6063、6N01、6061などの6000系 (以下、AA乃至JIS は省略) 、7N01、7003などの7000系などのAl合金材がある。
【0006】
ただ、この接合板材用Al合金の中でも、熱処理型Al合金である6000系や7000系などのAl合金材は、溶体化処理および焼き入れ処理 (質別記号T4) と、その後の人工時効処理 (質別記号T6) や過時効処理 (質別記号T7) 、あるいは、熱間加工から冷却後の人工時効処理 (質別記号T5) などの調質処理によって、所定の強度を得る。一方、非熱処理型Al合金である5000系Al合金などは、冷間加工などの加工硬化によって所定の強度を得る。
【0007】
熱処理型Al合金は、前記T4〜T7などの調質処理によって優れた時効硬化性が得られる反面、逆に溶接時には、その接合性(接合強度)が低下するという問題がある。即ち、少なくともいずれかのAl合金材を熱処理型Al合金として溶接接合した場合、溶接時の加熱によって、溶接接合部の近傍乃至周囲に熱影響部 (以下、HAZ とも言う) が必然的に生成する。そして、このHAZ では前記熱影響によって材料が軟化し、他の定常部に比して硬度が著しく低くなる。
【0008】
溶接継手を有するAl合金接合材の場合、Al合金接合材としての強度は、この熱影響部によって律せられる。このため、熱影響部の硬度低下が生じると、Al合金溶接接合材の強度は大幅に低下することなる。
【0009】
図6 は、板厚の違う熱処理型の過剰Si型6000系Al合金板同士の溶接接合材を示す。図6 において、溶接接合材1 は、板厚t2の薄板2 と板厚t1の厚板3 とを、例えば溶接施工部5 からCO2 レーザーで突き合わせ溶接したものであり、差厚テーラードブランク材でもある。また、図6 において、4 は接合部、6 は薄板2 のHAZ 、7 は厚板3 のHAZ である。
【0010】
この溶接接合材1 の接合部4 を中心とするビッカース硬度(HV)分布硬度を図7 に示す。図7 において、溶接接合材1 の接合部4 や他の定常部に比して、薄板2 のHAZ6や厚板3 のHAZ7の硬度は、著しく低くなっている。
【0011】
また、この溶接接合材1 の薄板2 の母材 (定常部) とHAZ6の変形特性 (応力- ひずみ関係) を図8 に示す。この図8 において、前記図7 に示したHAZ の硬度分布低下からも分かる通り、薄板2 のHAZ6の継手強度σB -HAZ(MPa) は、定常部の継手強度σB (MPa) に比して、著しく低くなっている。したがって、溶接継手を有するAl合金溶接接合材の強度は、最も強度の低い薄板2 のHAZ6の継手強度σB -HAZによって律せられる。また、薄板2 のHAZ6が破断する応力が加わった時点での、定常部に生じる伸びδ' は素材の伸びδに大きく劣る。このため、溶接継手を有するAl合金溶接接合材の伸びも、HAZ6の存在により、著しく低下することとなる。
【0012】
更に、本発明者が知見したところによれば、厚板3 と薄板2 との板厚比(t1/t2) が大きくなるほど、継手強度と継手伸びの低下率が大きい。熱処理型Al合金板同士の溶接接合材1 の厚板3 と薄板2 との板厚比(t1/t2) が異なる素材を試験片中央部で溶接したJIS5号引張試験片 (標点間距離50mm) の溶接接合材1 の全伸び (εf 、%)の変化を図9 に斜線範囲で示す。この図9 の通り、横軸の厚板3 と薄板2 との板厚比(t1/t2) が大きくなるほど全伸びの低下率が大きい。そして、この傾向は、比較のために記載した、5000系などの非熱処理型Al合金板同士の溶接接合材の傾向に比較しても、低下率が著しい。また、この傾向は、全伸びと相関する継手強度においても同様である。
【0013】
したがって、これらの事実から、熱処理型Al合金を含むAl合金溶接接合材では、HAZ の硬度低下によって、継手強度と継手伸びの低下が著しく、この傾向は継手の厚みの差が大きいほど強くなることが分かる。
【0014】
この傾向は、特に溶接線が比較的長いか溶接点が連続する、アークなどの熱源を用いる溶融溶接方法、即ち、ティグ(TIG) 、ミグ(MIG) などの高速アーク溶接や、レーザー溶接、電子ビーム溶接、抵抗シーム溶接などで、溶接して継手を形成する際に顕著となる。
【0015】
更に、本発明者らが知見したところによれば、この傾向は、溶接接合部が比較的高温にならない接合方法である、摩擦攪拌接合(FSW) 方法においても生じる。非熱処理型の5000系のAl合金の場合には、FSW や溶融溶接方法において、前記溶接継手効率の著しい低下は生じない。
【0016】
このように、熱処理型のAl合金溶接接合材では、溶接の熱影響による強度の低下と伸び (破断伸び) の低下が生じる。このような場合、特にテーラードブランク材として、溶接継手部を含む板材をプレス成形などの成形加工する場合には、その伸びの低下により、成形時に加わった引張などの応力によって、前記HAZ で破断し、成形および製品化ができない。また、溶接後に成形加工を受けないAl合金溶接接合材でも、例えば、衝突などの応力負荷時の大きな変形を考慮すれば、前記破断伸びの低下を原因として、構造部材としての耐久性あるいはクラッシャブル性などの機能が発揮できないことにつながる。
【0017】
一方、従来から、Al合金溶接接合材のHAZ の軟化に対しては、溶接施工方法の側から、下記溶接条件などの種々の改善が行なわれてきた。
▲1▼特開平11-104860 号公報などに例示される通り、極力低入熱で溶接する、あるいは冷却しながら溶接接合する方法。
▲2▼溶接後の継手を焼き入れ焼き戻し処理する、あるいは特開平5-222498号公報軽金属溶接Vol37(1999)No.9 の397 〜405 頁などのように、時効硬化処理前の材料(T1 、T4材) を溶接後、時効硬化処理する、などの熱処理によって軟化を回復させる方法。
▲3▼溶接後にAl合金溶接接合材のHAZ の部分を含めて補強材を設置する方法。
▲4▼特開平11-104860 号公報などに開示された、溶接接合部が比較的高温にならない接合方法である、摩擦攪拌接合(FSW) で溶接する方法。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記▲1▼の低入熱で溶接する、あるいは冷却しながら溶接接合する方法では、溶接効率が著しく低下し、実用的ではない。また、低入熱化した場合、接合強度自体が低下する問題もある。
【0019】
また、前記▲2▼の溶接後の継手を熱処理する方法では、熱処理の付加に手間やコストがかかり生産性を阻害するとともに、他の継手定常部分の強度が高くなり、前記溶接接合材の成形加工性が低下したり、構造部材としての耐久性あるいはクラッシャブル性などの他の機能を却って低下させることにもつながる。
【0020】
前記▲3▼の補強材を設置する方法は、補強材をAl合金溶接接合材へ溶接する場合には、同じHAZ 軟化の問題を引き起こすため、接合方法や接合強度の確保という別の問題を生じる。また、接合強度の確保やHAZ 軟化によるAl合金溶接接合材の強度や伸びの低下を補う、などのためには、補強材が相当量必要となり、重量増加や部材点数の増加によるコストアップなどの問題を生じる。
【0021】
更に、前記▲4▼の摩擦攪拌接合(FSW) で溶接する方法でも、本発明者らが知見したところによれば、前記した通り、Si過剰型の6000系Al合金材などの熱処理型のAl合金材を用いた溶接接合材の場合には、溶接継手効率は、強度、伸び共にいずれも著しく低くなる傾向がある。
【0022】
したがい、前記溶接施工方法の側からの改善には限界があり、この熱処理型のAl合金材の溶接接合材において、薄肉側のHAZ における継手強度や伸びの低下が必然的に生じても、溶接接合材に引張などの応力が負荷された場合に、薄肉側のHAZ で破断しない技術が求められていた。
【0023】
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、継手強度と継手伸びとが優れた熱処理型Al合金の溶接接合材を提供しようとするものである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明Al合金溶接接合材の請求項1 の要旨は、熱処理型アルミニウム合金材同士、または熱処理型アルミニウム合金材と非熱処理型アルミニウム合金材との、厚みの違うアルミニウム合金材同士が溶接接合され、少なくとも薄肉側の前記熱処理型アルミニウム合金材側の溶接熱影響部に、厚肉部が溶接前に予め設けられていることである。
【0025】
本発明者らは、熱処理型のAl合金溶接接合材において、溶接継手の引張強さと伸びを律する前記溶接熱影響部(HAZ) を、溶接前に予め部分的に厚肉化しておけば、溶接接合材に引張などの応力が負荷された場合に、この肉厚効果により、継手強度や破断伸びが保証されることを知見した。即ち、HAZ の厚肉化によって、溶接接合材に引張応力が負荷された場合に、HAZ に発生する応力を定常継手領域に比して小さくできる。この結果、溶接時に、HAZ における強度や伸びの低下が必然的に生じても、HAZ での破断を防止し、定常継手域で破断するようにでき、継手強度や破断伸びを大きくできる。
【0026】
また、HAZ の厚肉化によって、より薄い元の肉厚に比して、溶接時の薄肉側のHAZ における継手強度や伸びの低下自体を抑制できる効果があることも知見した。
【0027】
これらの効果達成のために、好ましくは、前記厚肉部を前記Al合金材の製造時にAl合金材と一体に設ける。また、同じく効果達成のために Al合金溶接接合材の厚肉部の厚みが (定常部の厚み×定常部の引張強さ)/熱影響部の引張強さ以上とすることが好ましい。
【0028】
なお、本発明において、前記HAZ とは、HAZ の内で、少なくとも最も硬度が低下するHAZ 部分を含み、その硬度低下が溶接接合材の継手引張強さと伸びの低下に大きな影響を与えるHAZ 部分のことである。したがって、継手引張強さと伸びの低下に大きな影響を与えるHAZ の硬度低下の状況に応じて、最も硬度が低下するHAZ のみを厚肉化する場合から、その周辺のHAZ や母材部分を含めて厚肉化する場合まで、本発明では適宜選択される。
【0029】
また、溶接接合前の熱処理型Al合金材での溶接熱影響部とは、溶接された後で継手強度と伸びを律するHAZ となる、あるいは、該HAZ となることが想定される、溶接前のAl合金材の部位乃至領域のことである。
【0030】
本発明は以上のような効果を有するため、薄肉側のHAZ における継手強度や伸びの低下の問題が大きい、厚みの違うAl合金材同士が溶接接合されてなり、前記厚肉部を薄肉側の熱処理型アルミニウム合金材の溶接熱影響部分に少なくとも設けることが好ましい。また、例えばテーラードブランク材などのように Al合金溶接接合材がプレス成形されて使用される用途に適用することが好ましい。
【0031】
更に、溶接後に成形加工を受けないAl合金継手構造体でも、例えば、衝突などの大きな変形を考慮した構造部材としての耐久性あるいはクラッシャブル性などの機能を発揮することが重要な、バンパー補強材、サイドシル、センターピラー、ルーフサイドレール、ドアビームなどの、フレーム類に適用することが好ましい。また、薄肉側のHAZ における継手強度や伸びの低下の問題が大きい、AA乃至JIS 規格に規定される6000系乃至7000系のアルミニウム合金継手に適用することが好ましい。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明溶接接合材で用いるAl合金材 (母材Al合金) は、溶接接合材のいずれか一方のAl合金材が熱処理型Al合金材であるものとする。したがって、本発明溶接接合材の組み合わせとしては、熱処理型Al合金材同士の溶接接合材、熱処理型Al合金材と非熱処理型Al合金材との溶接接合材などがある。
【0033】
これらAl合金溶接接合材においては、前記した通り、部材の形状や要求特性、あるいは要求製作コストなどに応じて、Al合金材同士の組み合わせ方が適宜選択される。即ち、同じ板材、形材、鍛造材、鋳造材の同士の組み合わせや、違うAl合金材同士の組み合わせが、溶接接合されるAl合金材同士の形状や厚みが違う場合を含めて、適宜選択される。
【0034】
例えば、板材同士あるいは板材と他のAl合金材同士を溶接接合したAl合金構造材(接合板材)は、板材の部分を更に部材形状にプレス成形などで成形加工してフード、ドア、ルーフなどのパネル類に用いられる。また、前記フレーム類は、形材同士あるいは形材と他のAl合金材同士を溶接接合したAl合金構造材からなりバンパー補強材、サイドシル、センターピラー、ルーフサイドレール、ドアビームなどとして用いられる。また、サブフレームなどは、板材、形材、鍛造材、鋳造材などを適宜組み合わせて溶接接合したAl合金構造材からなる。
【0035】
以下に、図面を用いて、溶接熱影響部分(HAZ) に、溶接前に予め厚肉部を設けた実施態様を説明する。先ず、図1(a)、(b) 、(c) 、(d) はAl合金構造材であって、Al合金板同士の溶接接合材の側面図を示す。図1(a)の態様の溶接接合材1aは、板厚の違う薄板2aと厚板3aとを、溶接施工部5 で突き合わせ溶接したプレス成形用の差厚テーラードブランク材である。図1(a)において、薄板2aの、接合部4aの近傍で、溶接接合材の引張強さと伸びを律する (硬度が低くなる)HAZ6aに、断面矩形状の厚肉部8aをHAZ6a に沿って設けている。
【0036】
本発明では、溶接接合材の引張強さと伸びを律するHAZ を溶接前に予め厚肉化し、前記した通り、溶接接合材に引張などの応力が負荷された場合に、HAZ に発生する応力を定常継手領域に比して小さくできる。この結果、HAZ における強度や伸びの低下が必然的に生じても、HAZ での破断を防止し、定常継手域や構造材部分で破断するようにでき、継手強度や破断伸びを大きくできる。
【0037】
この主旨のためには、少なくとも、最も硬度が低くなるHAZ の部分に厚肉部を溶接前に予め設けること必須である。言い換えると、熱処理型Al合金材の溶接接合材の引張強さと伸びを律するHAZ に厚肉部を溶接前に予め設けることが必須である。なお、以下にHAZ として示す部分は溶接接合後、HAZ の最も硬度が低くなる部分であり、HAZ の部分全てを示すものでは、必ずしもない。
【0038】
ただ、本発明の溶接前に予め厚肉部を設ける範囲としては、最も硬度が低くなるHAZ 以外のHAZ 部分や、その他の構造材部分に渡って厚肉部を設けても良い。本発明の厚肉部は、前記した従来技術のように、溶接後に補強材を設置するのではなく、溶接前に予め、最も硬度が低くなるHAZ の部分にのみ最低厚肉部を設ける。このため、前記した通り、溶接時のHAZ における継手強度や伸びの低下自体を抑制できる効果がある。したがって、HAZ 軟化による強度低下を補うために、前記した補強材方式のような多量の補強材使用は必要ない。この結果、厚肉化部の範囲、大きさの選択や設計は、重量増加しない範囲で、比較的自由に選択できる利点もある。
【0039】
また、本発明では、差厚継手の場合に、薄肉側 (薄板側) のHAZ だけでなく、厚肉側 (厚板側) のHAZ に厚肉部を設けても良い。前記した図6 において、熱処理型Al合金材溶接接合材のHAZ における継手強度や伸びの低下は、薄板2 のみならず、厚板3 のHAZ7でも生じている。ただ、厚板3 のように肉厚が大きい場合、この肉厚効果により、溶接接合材に引張応力が負荷されても、HAZ7に発生する応力を定常継手領域に比して小さくできる。また、肉厚効果により、溶接時の薄肉側のHAZ における継手強度や伸びの低下自体を抑制できる。この結果、溶接接合材に引張応力が負荷された場合に破断するのは、主として、前記肉厚効果が発揮されない薄板2 側のHAZ6となる。したがって、厚肉側 (厚板側) のHAZ に厚肉部を設けて意味があるのは、この肉厚効果が発揮されにくい、接合するAl合金材同士の肉圧差が少ない場合の、厚肉側のHAZ である。
【0040】
図1(b)の態様の溶接接合材1bのみは参考例であり、同じ板厚の薄板2bと薄板3bとを、溶接施工部5 で突き合わせ溶接したプレス成形用の等厚テーラードブランク材である。図1(b)において、薄板2bと薄板3bの両方の、接合部4bの近傍である、HAZ6a 、6bに、断面矩形状の厚肉部8a、8bを、HAZ6a 、6bに沿って設けている。
【0041】
図1(c)の態様の溶接接合材1cは、板厚の違う薄板2cと厚板3cとを、溶接施工部5a、5bの2 箇所で重ね合わせ溶接した、プレス成形用の差厚テーラードブランク材である。図1(c)において、接合部4cの近傍である薄板2cのHAZ6c に断面矩形状の厚肉部8cをHAZ6c に沿って設けている。
【0042】
図1(d)の態様の溶接接合材1dは、板厚が違い、かつ端部をL 字状に折り曲げた薄板2dと厚板3dとを、薄板2dの前記折り曲げ部において、溶接施工部5a、5bの2 箇所で重ね合わせ溶接した溶接接合材である。図1(d)において、接合部4dの近傍である薄板2dのHAZ6d に断面矩形状の厚肉部8dをHAZ6d に沿って設けている。
【0043】
次に、図2(a)、(b) 、(c) 、(d) は、Al合金構造材における、Al合金板とAl合金形材同士の溶接接合材の側面図を示す。これらAl合金構造材がプレス成形される場合には、Al合金板側がプレス成形される。
【0044】
図2(a)の態様の溶接接合材1eは、肉厚の薄い矩形中空形材2eと、厚板3eとを、溶接施工部5a、5bの2 箇所で重ね合わせ溶接した接合材である。図2(a)の溶接接合材1eでは、矩形中空形材2e側の接合部4eの近傍である、HAZ6e 、6eの、中空形材2eの内側に、断面矩形状の厚肉部8e、8eをHAZ6e 、6eに沿って設けている。なお、厚肉部8e、8eはHAZ6e 、6eの中空形材2eの外側に設けても良い。
【0045】
図2(b)の態様の溶接接合材1fは、肉厚の薄い矩形中空形材2fと厚板3fとを、中空形材2fのフランジ部9 において、溶接施工部5a、5bの2 箇所で重ね合わせ溶接した溶接接合材である。図2(b)の溶接接合材1fでは、肉厚の薄い矩形中空形材2f側の接合部4fの近傍であるフランジ部9 のHAZ6f の上部に、断面矩形状の厚肉部8fをHAZ6f に沿って設けている。なお、厚肉部8fはフランジ部9 のHAZ6f の下部に設けても良い。
【0046】
図2(c)の態様の溶接接合材1gは、逆に肉厚の厚い矩形中空形材3gと薄板2gとを、中空形材3gの上部において、溶接施工部5a、5bの2 箇所で重ね合わせ溶接した溶接接合材である。図2(c)の溶接接合材1gでは、薄板2g側の接合部4gの近傍であるHAZ6g の上部に、断面矩形状の厚肉部8gをHAZ6g に沿って設けている。なお、厚肉部8gは薄板2gのHAZ6g の下部に設けても良い。
【0047】
図2(d)の態様の溶接接合材1hは、逆に肉厚の薄い矩形中空形材3hと、同じく板厚の薄い薄板2hとを、中空形材3hのフランジ部9 において、溶接施工部5a、5bの2 箇所で重ね合わせ溶接した溶接接合材である。図2(d)の溶接接合材1hでは、各々接合部4hの近傍である、中空形材3h側のHAZ6h 、6hの中空形材の内側に、薄板2h側のHAZ6i の上部に、それぞれ断面矩形状の厚肉部8h、8h、8iを、HAZ6h 、6h、HAZ6i に沿って設けている。なお、厚肉部8h、8hはHAZ6h 、6hの中空形材3hの外側に設けても良い。また、厚肉部8hは薄板2hのHAZ6i の下部に設けても良い。
【0048】
図3 に、プレス成形されずに用いられるAl合金構造材に厚肉部を設けた、他の本発明の態様を示す。前記図1 、2 の例では、プレス成形されるパネル用途であるため、軽量化の要求を満足するために、できるだけ厚肉部も小さくした例を示した。しかし、この図3 の例では、それなりの応力を負担する構造材の例を示し、厚肉部を比較的大きくしている。
【0049】
即ち、図3 の態様の溶接接合材1i自体は、前記図1(a)と同様、肉厚の薄い板材2iと厚板3iとを、溶接施工部5 で突き合わせ溶接した溶接接合材である。ただ、この図3 の態様の溶接接合材1iでは、継手強度を高めるため、溶接施工部5 の両材の板厚差による段差も埋めるように、肉厚の薄い板材2i側のHAZ6i を厚肉化している。このため、図3 の厚肉部8iは、板材2iに向かって傾斜する斜辺9 を有する、比較的大きな矩形形状 (台形断面形状) をしている。
【0050】
これら厚肉部は、厚肉部の肉厚効果によりAl合金材の伸びや肉厚減少を保証して、溶接接合材の引張応力負荷時の、HAZ での破断を防止する。したがって、厚肉部の設ける位置と厚みなどが重要となり、厚肉部の断面形状などは、設け易い形状を適宜選択すれば良い。また、厚肉部の長手方向は、前記した通り、HAZ に沿って設けるが、その効果を達成できるのであれば、長手方向に連続せずとも、断続的に設けても良い。更に、厚肉部を長手方向に分割して設けても良い。また、それなりの応力を負担する構造材用途では、継手強度を高めるために、前記図3 のように厚肉部を比較的大きくしても良い。
【0051】
以下に、本発明厚肉部の好ましい設け方を説明する。
図4 に図1(a)と同じ溶接接合材を示すように、溶接接合材への引張応力P が負荷された際の、HAZ での破断を防止するためには、好ましくは、薄板2 側のHAZ6の厚肉部8 の肉厚効果を、薄板2 の定常部と同じ肉厚効果以上とする。即ち、薄板2 側のHAZ6の厚肉部8 の板厚(t4)と引張強さ (σB4) との積、t4×σB4を、薄板2 の定常部の板厚(t1)と引張強さ (σB1) との積、t1×σB1以上とする。
言い換えると、本発明溶接接合材において、薄肉側のHAZ の厚肉部の厚みは (薄肉部の厚みt1×定常部の引張強さσB1)/熱影響部の引張強さσB4以上とすることが好ましい。
【0052】
なお、HAZ 部分の厚肉部は、1 個でなくとも、溶接接合材の長手方向や溶接接合 (溶接線) 方向に、2 個以上分割して設けても良い。また、HAZ 部分の前記長手方向や溶接接合方向を全て網羅せずとも、これらの方向で、継手強度や成形性が特に要求されるHAZ 部分のみに、部分的に厚肉部を設けても良い。
【0053】
このHAZ の厚肉部の厚みを、問題となる薄肉側の熱処理型Al合金材の調質状態 (引張強さと伸び) を考慮して、決定することが好ましい。前記薄肉側の熱処理型Al合金材がT4調質材の場合には、T5またはT6調質材と比較して、溶接熱影響による引張強さと伸びの低下が比較的小さいので、薄肉側の熱処理型Al合金材に設ける厚肉部の厚みを定常部の1/0.95以上で1/0.8 以下とするのが好ましい。
【0054】
一方、前記熱処理型Al合金材がT5またはT6調質材の場合には、溶接熱影響による引張強さと伸びの低下が比較的大きく、上記厚肉部の厚みを定常部の1/0.75以上で1/0.55以下と比較的大きくとるのが好ましい。
【0055】
更に、引張強さと伸びが最も低下するHAZ の位置は、図5 に前記図4 と同じ継手で示すように、通常の溶接施工条件の場合、概ね、溶接接合部中心から20〜25mm以内の範囲の領域に納まる。また、そのHAZ の幅も、概ね幅2 〜5mm の範囲に納まる。ただ、前記熱処理型Al合金材がT4調質材の場合には、溶接接合部中心から25mm以内の領域が部分的に強度低下する。また、前記熱処理型Al合金材がT5またはT6調質材の場合には、前記厚肉部を溶接接合部中心から20mm以内の領域が全体的に強度低下する。
【0056】
したがって、厚肉部を設ける位置については、前記熱処理型Al合金材がT4調質材の場合には、好ましくは、前記厚肉部を溶接接合部中心から25mm以内の領域( 部位) に幅2 〜5mm の範囲で、1 箇所以上設けることによって、引張強さと伸びを律するHAZ の位置を概ねカバーできる。
【0057】
また、前記熱処理型Al合金材がT5またはT6調質材の場合には、好ましくは、前記厚肉部を、溶接接合部中心から20mm以内の領域に全体的に設けることによって、引張強さと伸びを律するHAZ の位置を概ねカバーできる。
【0058】
厚肉部の設け方は、熱処理型Al合金材 (母材) に溶接前に予め設ける。溶接後に設けた場合、前記した通り、設け方によらず、溶接時のHAZ における継手強度や伸びの低下自体を抑制できる厚肉効果が発揮されない。
【0059】
板材において厚肉部を予め設ける場合、前記した溶接接合材の厚肉部設置位置 (部位) に対応した母材の部位が厚肉部となるよう、板材の圧延製造の際に異形圧延等して一体的に設けるか、機械加工等により厚肉部以外の (薄肉相当) 部分を研削するなどして一体的に設けることが好ましい。この他、圧延後の板材の所定位置に所定条件の厚肉部材を接着して設けることも可能であるが、板材と厚肉部材との接着強度を高める必要がある。
【0060】
形材、鋳鍛材、鋳造材の場合には、板材と同様に接着等で予め設けることも可能であるが、予め、厚肉部形状を含めた母材形状として設計し、押出、鍛造、鋳造の際に、簡便に一体的に形成することができる。
【0061】
本発明溶接接合材で用いる熱処理型Al合金材 (展伸材) は、AA乃至JIS 規格に規定され(AA 乃至JIS 規格を満足し) 、溶接構造用Al合金として汎用される、前記6000系、7000系などのAl合金材である。なお、熱処理型Al合金鋳造材としては、AA乃至JIS 規格に規定された(AA 乃至JIS 規格を満足する)Al-Cu-Si 系、Al-Cu-Mg-Si 系、Al-Mg-Si系などのAl合金である。また、前記6000系Al合金材の中でも、薄肉側のHAZ における継手強度や伸びの低下の問題が大きい、Si/Mg が1 以上の(Mg 含有量に対しSiが過剰に含有されている) 、6N01、6016、6111、6022などの、Si過剰型の6000系(Al-Mg-Si 系) Al合金に適用されて好ましい。
【0062】
本発明溶接接合材で用いる熱処理型、あるいは非熱処理型Al合金材自体は、溶解、鋳造、均質化熱処理、熱間加工 (圧延、押出、鍛造) 、必要により中間焼鈍、冷間加工 (圧延、鍛造) 等の常法工程により、板材や形材 (中空断面など断面形状が長さ方向のどの位置でも本質的に同一である形材) 、鍛造材、更には鋳造材として製造される。
【0063】
製造後の熱処理型Al合金材は、前記したT4、T5、T6などの調質処理によって、所定の強度などの特性を得、溶接接合材としての母材として用いられる。また、非熱処理型Al合金材は, 製造まま、あるいは焼鈍(O材) などの調質処理によって、所定の強度などの特性を得、溶接接合材としての母材として用いられる。
【0064】
本発明溶接接合材の溶接接合方法は、前記した溶接接合材HAZ の強度と伸びの低下が著しい、溶接線が長い、アークなどの熱源を用いる溶融溶接方法である、ティグ(TIG) 、ミグ(MIG) などの高速アーク溶接やレーザー溶接、電子ビーム溶接、抵抗シーム溶接などの溶接方法、あるいは摩擦攪拌接合(FSW) 方法を対象とする。
【0065】
また、これらの溶接接合方法における施工条件は常法の範囲で行う。但し、溶融溶接の場合には、5356などの5000系Al合金溶加材 (棒) や4047などの4000系Al合金溶加材を適用することが好ましい。この点、より低温の摩擦攪拌接合方法では、溶加材を用いずとも、差厚接合部の段差近傍の、HAZ を含む肉厚増加が容易である。
【0066】
本発明Al合金溶接接合材は、溶接接合後、具体的な構造材用途に応じて、曲げ加工やプレス成形などの成形加工され、または成形加工されずに、他の部材と組み合わされて、構造材として適宜設置され使用される。
【0067】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
表1 に示すような合金組成の過剰Si型6022Al合金板のT4調質材同士を各々用いて、前記図1(a)に示す形状で、厚肉部を有する溶接接合材 (テーラードブランク材) 1aを製作した。溶接接合材には、厚肉部以外の部分を薄肉化する機械加工により表3 に示す条件で、薄板側HAZ6a に厚肉部8aを予め一体的に設けた。接合部の溶接長さは700mm とし、表2 に示す各溶接方法および溶接条件で接合した。比較のために、前記厚肉部が無い以外は発明例と同じ条件とした6022Al合金T4調質板材同士の溶接接合材および5182Al合金O 調質板材同士の溶接接合材を製作した。
【0068】
なお、表3 には (後述する実施例2 の表5 にも) 各例が、薄肉側のHAZ の厚肉部の、前記したT4調質材の好ましい条件として、▲1▼厚肉部の厚みを (薄肉部の厚みt1×定常部の引張強さσB1)/熱影響部の引張強さσB4以上とする、▲2▼厚肉部の厚みを定常部の薄肉側Al合金材のT4調質に対応して定常部の1/0.95以上で1/0.8 以下とする、▲3▼溶接接合部中心から25mm以内の領域( 部位) に幅2 〜5mm の範囲で設ける、を満足する場合を〇、満足しない場合をーで示す。
【0069】
また、溶接接合材の接合部分の断面を100 倍の光学顕微鏡により観察し、目視できる溶接割れの他に、ミクロ的な溶接割れの有無を調査した。その結果、発明例、比較例ともに接合部の溶接割れは認められなかった。
【0070】
更に、溶接接合材の (溶接後の) 6022Al合金薄板2a側のHAZ6a と定常部の硬度を測定した。また、溶接接合材の継手強度 (σB ) と継手伸び (δ) をJIS Z 2241に従い測定した。更に、このようにして得た溶接接合材を自動車パネル材に適用することを想定してプレス成形試験し、成形性を評価した。これらの結果を表4 に示す。
【0071】
プレス成形品の条件は、製品部高さ35mm、長さ550mm 、幅450mm 、隅角部の曲率R100〜150mm の略角筒型形状とし、金型のドロービードやダイフェースの長さは前記成形品形状条件に適応させて設けた。そして、しわ押さえ力50tonf、使用潤滑油R-303 、成形速度20mm/ 分の条件でプレス成形を行った。
【0072】
そして、プレス成形品が溶接接合部を含めいずれの箇所も破断しておらず、良好に成形できた場合を〇とし、HAZ や溶接接合部は破断せずHAZ や溶接接合部の強度は良好であるものの定常部で破断したものを△、HAZ が破断した場合を×と評価した。
【0073】
表3 、4 から明らかな通り、前記▲1▼〜▲3▼の好ましい条件を全て満足する発明例No.1、2 、3 、8 、9 の溶接接合材は、溶接後の溶接接合材の薄板2a側のHAZ6a の硬度が、定常部の硬度に比して大きく低下しているにも関わらず、溶接接合材自体の継手引張強度 (σB ) と継手伸び (δ) および溶接接合材効率も100%と比較的高い。そして、プレス成形品がHAZ の割れを含めいずれの箇所も破断しておらず、プレス成形性が良好である。しかも、これらの結果は、溶接方法や溶加材条件の違いによらず得られている。
【0074】
また、HAZ の厚肉部の厚みが比較的薄く、前記▲1▼の好ましい条件を下限に満足していない (前記▲2▼、▲3▼の好ましい条件は満足している) 発明例No.4、5 の溶接接合材は、継手引張強度 (σB ) と溶接接合材効率は比較的高い。しかし、継手伸び (δ) が比較的低く、プレス成形品の定常部が破断しており、前記各発明例に比して、プレス成形性が劣る。したがって、プレス成形性向上の点で、HAZ の厚肉部の厚みを必要量厚くすること、および前記▲1▼厚肉部の厚みを (薄肉部の厚みt1×定常部の引張強さσB1)/熱影響部の引張強さσB4以上とする好ましい条件の重要性が分かる。
【0075】
一方、厚肉部の肉厚が比較的厚く、前記▲2▼の好ましい条件を上限に満足していない( ▲1▼、▲3▼の好ましい条件は満足している) 発明例No.6の溶接接合材も、前記発明例No.1、2 、3 、8 、9 と同様に、継手引張強度 (σB ) と継手伸び (δ) および溶接接合材効率も100%と比較的高く、プレス成形性が良好である。ただ、厚肉部の肉厚が比較的薄い前記発明例No.1、2 、3 、8 、9 でも、プレス成形性は良好であり、軽量化の観点からは、この発明例No.6ほどに厚肉部の肉厚を厚くせずとも、目的が達成できることが分かる。したがって、前記▲2▼の厚肉部の厚みを定常部の1/0.95以上で1/0.8 以下とする好ましい条件が、軽量化を損なわずにプレス成形性を向上させるために重要であることが分かる。
【0076】
更に、厚肉部の肉厚は比較的厚いものの、厚肉部の幅が比較的狭く、前記▲3▼の好ましい条件を下限に満足していない (前記▲1▼、▲2▼の好ましい条件は満足している) 発明例No.7の溶接接合材は、継手引張強度 (σB ) と継手伸び (δ) および溶接接合材効率が比較的低い。このため、プレス成形品の定常部が破断しており、前記各発明例に比して、プレス成形性が劣る。したがって、プレス成形性向上の点で、HAZ の厚肉部の幅を必要量厚くすること、および前記▲3▼の厚肉部を溶接接合部中心から25mm以内の領域( 部位) に幅2 〜5mm の範囲で設ける好ましい条件の下限の重要性が分かる。
【0077】
ただ、厚肉部の幅が比較的広く、前記▲3▼の好ましい条件を上限に満足していない (前記▲1▼、▲2▼の好ましい条件は満足している) 発明例No.10 の溶接接合材は、前記発明例No.1、2 、3 、8 、9 と同様に、継手引張強度 (σB ) と継手伸び (δ) および溶接接合材効率も100%と比較的高く、プレス成形性が良好である。ただ、軽量化の観点からは、この発明例No.10 ほどに厚肉部の幅を広くせずとも、目的が達成できることが分かる。したがって、前記▲3▼の好ましい条件の上限が、軽量化を損なわずに、プレス成形性を向上させるために重要であることが分かる。
【0078】
これに対し、厚肉部を設けていない比較例No.1〜4 では、非熱処理型の5182合金同士を用いた比較例No.4を除いて、溶接接合材自体の継手引張強度 (σB ) と継手伸び (δ) および溶接継手効率も発明例に比して低く、プレス成形でもHAZ の割れが生じ、発明例に比してプレス成形が劣っている。
【0079】
非熱処理型の5182合金同士を用いた比較例No.4の溶接接合材は、溶接後の溶接接合材の薄板2a側のHAZ6a の硬度や、溶接接合材自体の継手引張強度 (σB ) と継手伸び (δ) および溶接継手効率もあまり低下せず、HAZ での割れも生じずプレス成形性も良好である。
【0080】
これら実施例の結果から、熱処理型Al合金溶接接合材において、HAZ における強度や伸びの低下が必然的に生じても、HAZ の厚肉化によって、HAZ での破断を防止でき、継手強度や破断伸びおよび成形性を向上できる、本発明厚肉部やその好ましい条件の臨界的な意義が裏付けられる。また、前記非熱処理型の5182Al合金溶接接合材である比較例4 との比較において、前記HAZ における強度や伸びの低下の問題が、熱処理型Al合金溶接接合材特有の問題であることが分かる。
【0081】
【表1】
Figure 0004038368
【0082】
【表2】
Figure 0004038368
【0083】
【表3】
Figure 0004038368
【0084】
【表4】
Figure 0004038368
【0085】
(実施例2)
次に、実施例1 と同じ表1 に示した合金組成の過剰Si型6022Al合金板のT6調質材同士を各々用いて、前記図3 に示す形状で、傾斜面9 がある厚肉部8iを設けた溶接接合材1iを製作した。表5 に示す条件で、6022Al合金板材の薄板側HAZ に、薄肉部の機械的研削により厚肉部を予め一体的に設けた。なお、厚肉部の幅は、傾斜面9(水平方向の長さが5mm)を除く、平坦部のみの幅としている。また、接合部の溶接長さは30mmとし、表5 に示す各溶接方法および溶接条件で接合した。比較のために、厚肉部が無い以外は同じ条件とした6022Al合金T6調質板材同士の溶接接合材を製作した。
【0086】
なお、表5 には各例が、薄肉側Al合金材のT5またはT6調質材に対応して、薄肉側のHAZ の厚肉部の、▲1▼厚みを( 薄肉部の厚みt1×定常部の引張強さσB1)/熱影響部の引張強さσB4以上とする、▲2▼厚みを定常部の1/0.95以上で1/0.8 以下とする、▲3▼溶接接合部中心から20mm以内の領域に全体的に設ける、などの前記好ましい条件を満足する場合を〇、満足しない場合をーで示す。
【0087】
溶接後の各溶接接合材の接合部分の断面を100 倍の光学顕微鏡により観察し、目視できる溶接割れの他に、ミクロ的な溶接割れの有無を調査した結果、発明例、比較例ともに接合部の溶接割れは認められなかった。
【0088】
このようにして得た溶接接合材の (溶接後の) Al合金薄板2i側のHAZ6i と定常部の硬度を測定した。また、溶接接合材自体の継手強度 (σB ) をJIS Z 2241に従い測定した。これらの結果を表6 に示す。
【0089】
表5 、6 から明らかな通り、前記▲1▼〜▲3▼の好ましい条件を全て満足する発明例No. 11、12、13の溶接接合材は、溶接後の溶接接合材の薄板2i側のHAZ6i の硬度が定常部の硬度に比して大きく低下しているにも関わらず、溶接接合材自体の継手引張強度 (σB ) が350MPa以上、継手効率は100%と著しく高い。しかも、これらの結果は、溶接方法や溶加材条件の違いによらず得られている。
【0090】
また、HAZ の厚肉部の厚みが比較的薄く、前記▲1▼の好ましい条件を下限に満足していない (前記▲2▼、▲3▼の好ましい条件は満足している) 発明例No.14 、15の溶接接合材は、継手強度と継手効率が、発明例No. 11、12、13に比して低い。したがって、薄肉側Al合金材がT5またはT6調質材の場合に、継手強度と継手効率とを向上させる点で、HAZ の厚肉部の厚みを必要量厚くすること、および前記▲1▼厚肉部の厚みを( 薄肉部の厚みt1×定常部の引張強さσB1)/熱影響部の引張強さσB4以上とする好ましい条件の重要性が分かる。
【0091】
一方、厚肉部の肉厚が比較的厚く、前記▲2▼の好ましい条件を上限に満足していない( ▲1▼、▲3▼の好ましい条件は満足している) 発明例No.16 の溶接接合材も、前記発明例No.11 、12、13と同等に、継手強度と継手効率が高い。ただ、厚肉部の肉厚が比較的薄い前記発明例No.11 、12、13と性能が同等であるということは、軽量化の観点からは、この発明例No.6ほどに厚肉部の肉厚を厚くせずとも、目的が達成できることが分かる。したがって、前記▲2▼の厚肉部の厚みを定常部の1/0.95以上で1/0.8 以下とする好ましい条件が、軽量化を損なわずに継手強度と継手効率を向上させるために重要であることが分かる。
【0092】
更に、厚肉部の肉厚は比較的厚いものの、厚肉部の幅が比較的狭い (前記▲1▼、▲2▼の好ましい条件は満足している) 発明例No.17 の溶接接合材は、継手強度と継手効率が比較的低い。したがって、継手強度と継手効率向上の点で、HAZ の厚肉部の幅を必要量広くすることが分かる。
【0093】
ただ、厚肉部の幅が比較的広く、前記▲3▼の好ましい条件を上限に満足していない発明例No.18 は、前記発明例No.11 、12、13と同等に、継手強度と継手効率が高い。ただ、厚肉部の幅が比較的狭い前記発明例No.11 、12、13と性能が同等であるということは、軽量化の観点からは、この発明例No.18 ほどに厚肉部の幅を広くせずとも、目的が達成できることが分かる。したがって、軽量化の観点からは、前記▲3▼の厚肉部を溶接接合部中心から20mm以内の領域に全体的に設ける好ましい条件の重要性が分かる。
【0094】
これに対し、厚肉部を設けていない比較例No.5〜7 では、溶接接合材自体の継手引張強度 (σB ) と継手効率も発明例に比して著しく低い。
【0095】
これら実施例の結果から、熱処理型Al合金溶接接合材において、HAZ における強度や伸びの低下が必然的に生じても、HAZ の厚肉化によって、継手強度を向上できる、本発明厚肉部やその好ましい条件の意義が裏付けられる。
【0096】
【表5】
Figure 0004038368
【0097】
【表6】
Figure 0004038368
【0098】
【発明の効果】
本発明によれば、HAZ における硬度低下が生じても、溶接接合材の継手強度と伸びや、成形性に優れた熱処理型Al合金溶接接合材を提供することができる。したがって、熱処理型Al合金溶接接合材の自動車用途などへの拡大を図れる点で、工業的な価値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)、(b) 、(c) 、(d) は、各々本発明Al合金溶接接合材の1 実施態様を示す側面図である。
【図2】図2(a)、(b) 、(c) 、(d) は、各々本発明Al合金溶接接合材の他の実施態様を示す側面図である。
【図3】本発明Al合金溶接接合材の他の実施態様を示す側面図である。
【図4】本発明Al合金溶接接合材の厚肉部の設け方を示す側面図である。
【図5】本発明Al合金溶接接合材の厚肉部の設け方を示す側面図である。
【図6】 Al合金溶接接合材の熱影響部を示す側面図である。
【図7】 Al合金溶接接合材の熱影響部を含めたビッカース硬度(HV)分布を示す説明図である。
【図8】 Al合金溶接接合材の継手強度と継手伸びを示す説明図である。
【図9】 Al合金溶接接合材の継手伸びと肉厚との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
1:Al合金溶接接合材、2:Al合金材、3:Al合金材、4:接合部、5:溶接施工方向、6:熱影響部(HAZ)、7:熱影響部(HAZ)、8:厚肉部、9:フランジ部

Claims (2)

  1. 熱処理型アルミニウム合金材同士、または熱処理型アルミニウム合金材と非熱処理型アルミニウム合金材との、厚みの違うアルミニウム合金材同士が溶接接合され、少なくとも薄肉側の前記熱処理型アルミニウム合金材側の溶接熱影響部に、厚肉部が溶接前に予め設けられていることを特徴とするアルミニウム合金溶接接合材。
  2. 前記厚肉部の厚みが ( 定常部の厚み×定常部の引張強さ )/ 熱影響部の引張強さ以上である請求項1に記載のアルミニウム合金溶接接合材。
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