以下に本発明の幾つかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
1.シート製造装置
本実施形態のシート製造装置は、繊維と複合体とを、大気中で混合する混合部と、前記混合部で混合された混合物を堆積し、加熱してシートを成形する成形部と、を備え、前記複合体は、表面の少なくとも一部が無機微粒子により被覆された樹脂粒子であり、前記複合体の平均帯電量の絶対値は、40μC/g以上であることを特徴とする。
1.1. 構成
まず、本実施形態に係るシート製造装置の一例について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るシート製造装置100を模式的に示す図である。
シート製造装置100は、図1に示すように、供給部10と、製造部102と、制御部140と、を備える。製造部102は、シートを製造する。製造部102は、粗砕部12と、解繊部20と、分級部30と、選別部40と、第1ウェブ形成部45と、混合部50
と、堆積部60と、第2ウェブ形成部70と、シート形成部80と、切断部90と、を有している。
供給部10は、粗砕部12に原料を供給する。供給部10は、例えば、粗砕部12に原料を連続的に投入するための自動投入部である。供給部10によって供給される原料は、例えば、古紙やパルプシートなどの繊維を含むものである。
粗砕部12は、供給部10によって供給された原料を、空気中で裁断して細片にする。細片の形状や大きさは、例えば、数cm角の細片である。図示の例では、粗砕部12は、粗砕刃14を有し、粗砕刃14によって、投入された原料を裁断することができる。粗砕部12としては、例えば、シュレッダーを用いる。粗砕部12によって裁断された原料は、ホッパー1で受けてから管2を介して、解繊部20に移送(搬送)される。
解繊部20は、粗砕部12によって裁断された原料を解繊する。ここで、「解繊する」とは、複数の繊維が結着されてなる原料(被解繊物)を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。解繊部20は、原料に付着した樹脂粒やインク、トナー、にじみ防止剤等の物質を、繊維から分離させる機能をも有する。
解繊部20を通過したものを「解繊物」という。「解繊物」には、解きほぐされた解繊物繊維の他に、繊維を解きほぐす際に繊維から分離した樹脂(複数の繊維同士を結着させるための樹脂)粒や、インク、トナーなどの色剤や、にじみ防止材、紙力増強剤等の添加剤を含んでいる場合もある。解きほぐされた解繊物の形状は、ひも(string)状や平ひも(ribbon)状である。解きほぐされた解繊物は、他の解きほぐされた繊維と絡み合っていない状態(独立した状態)で存在してもよいし、他の解きほぐされた解繊物と絡み合って塊状となった状態(いわゆる「ダマ」を形成している状態)で存在してもよい。
解繊部20は、大気中(空気中)において乾式で解繊を行う。具体的には、解繊部20としては、インペラーミルを用いる。解繊部20は、原料を吸引し、解繊物を排出するような気流を発生させる機能を有している。これにより、解繊部20は、自ら発生する気流によって、導入口22から、原料を気流と共に吸引し、解繊処理して、排出口24へと搬送することができる。解繊部20を通過した解繊物は、管3を介して、分級部30に移送される。
分級部30は、解繊部20を通過した解繊物を分級する。具体的には、分級部30は、解繊物の中で比較的小さいものや密度の低いもの(樹脂粒や色剤や添加剤など)を分離して除去する。これにより、解繊物の中で比較的大きいもしくは密度の高いものである繊維の占める割合を高めることができる。
分級部30としては、気流式分級機を用いる。気流式分級機は、旋回気流を発生させ、分級されるもののサイズと密度とにより受ける遠心力の差によって分離するものであり、気流の速度および遠心力の調整によって、分級点を調整することができる。具体的には、分級部30としては、サイクロン、エルボージェット、エディクラシファイヤーなどを用いる。特に図示のようなサイクロンは、構造が簡便であるため、分級部30として好適に用いることができる。
分級部30は、例えば、導入口31と、導入口31が接続された円筒部32と、円筒部32の下方に位置し円筒部32と連続している逆円錐部33と、逆円錐部33の下部中央に設けられている下部排出口34と、円筒部32上部中央に設けられている上部排出口35と、を有している。
分級部30において、導入口31から導入された解繊物をのせた気流は、円筒部32で円周運動に変わる。これにより、導入された解繊物には遠心力がかかり、分級部30は、解繊物のうちで樹脂粒やインク粒よりも大きく密度の高い繊維(第1分級物)と、解繊物のうちで繊維よりも小さく密度の低い樹脂粒や色剤や添加剤など(第2分級物)と、に分離することができる。第1分級物は、下部排出口34から排出され、管4を介して、選別部40に導入される。一方、第2分級物は、上部排出口35から管5を介して受け部36に排出される。
選別部40は、分級部30を通過した第1分級物(解繊部20により解繊された解繊物)を導入口42から導入し、繊維の長さによって選別する。選別部40としては、例えば、篩(ふるい)を用いる。選別部40は、網(フィルター、スクリーン)を有し、第1分級物に含まれる、網の目開きの大きさより小さい繊維または粒子(網を通過するもの、第1選別物)と、網の目開きの大きさより大きい繊維や未解繊片やダマ(網を通過しないもの、第2選別物)と、を分けることができる。例えば、第1選別物は、ホッパー6で受けてから管7を介して、混合部50に移送される。第2選別物は、排出口44から管8を介して、解繊部20に戻される。具体的には、選別部40は、モーターによって回転することができる円筒の篩である。選別部40の網は、例えば、金網、切れ目が入った金属板を引き延ばしたエキスパンドメタル、金属板にプレス機等で穴を形成したパンチングメタルを用いる。
第1ウェブ形成部45は、選別部40を通過した第1選別物を、混合部50に搬送する。第1ウェブ形成部45は、メッシュベルト46と、張架ローラー47と、吸引部(サクション機構)48と、を含む。
吸引部48は、選別部40の開口(網の開口)を通過して空気中に分散された第1選別物をメッシュベルト46上に吸引することができる。第1選別物は、移動するメッシュベルト46上に堆積し、ウェブVを形成する。メッシュベルト46、張架ローラー47および吸引部48の基本的な構成は、後述する第2ウェブ形成部70のメッシュベルト72、張架ローラー74およびサクション機構76と同様である。
ウェブVは、選別部40および第1ウェブ形成部45を経ることにより、空気を多く含み柔らかくふくらんだ状態に形成される。メッシュベルト46に堆積されたウェブVは、管7へ投入され、混合部50へと搬送される。
混合部50は、選別部40を通過した第1選別物(第1ウェブ形成部45により搬送された第1選別物)と、樹脂を含む添加物と、を混合する。混合部50は、添加物を供給する添加物供給部52と、選別物と添加物とを搬送する管54と、ブロアー56と、を有している。図示の例では、添加物は、添加物供給部52からホッパー9を介して管54に供給される。管54は、管7と連続している。
混合部50では、ブロアー56によって気流を発生させ、管54中において、第1選別物と添加物とを混合させながら、搬送することができる。なお、第1選別物と添加物とを混合させる機構は、特に限定されず、高速回転する羽根により攪拌するものであってもよいし、V型ミキサーのように容器の回転を利用するものであってもよい。
添加物供給部52としては、図1に示すようなスクリューフィーダーや、図示せぬディスクフィーダーなどを用いる。添加物供給部52から供給される添加物は、複数の繊維を結着させるための樹脂を含む。樹脂が供給された時点では、複数の繊維は結着されていない。樹脂は、シート形成部80を通過する際に溶融して、複数の繊維を結着させる。
添加物供給部52から供給される樹脂は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であり、例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、などである。これらの樹脂は、単独または適宜混合して用いてもよい。添加物供給部52から供給される添加物は、繊維状であってもよく、粉末状であってもよい。
なお、添加物供給部52から供給される添加物には、繊維を結着させる樹脂の他、製造されるシートの種類に応じて、繊維を着色するための着色剤や、繊維の凝集を防止するための凝集抑制剤、繊維等が燃えにくくするための難燃剤が含まれていてもよい。混合部50を通過した混合物(第1分級物と添加物との混合物)は、管54を介して、堆積部60に移送される。
堆積部60は、混合部50を通過した混合物を導入口62から導入し、絡み合った解繊物(繊維)をほぐして、空気中で分散させながら降らせる。さらに、堆積部60は、添加物供給部52から供給される添加物の樹脂が繊維状である場合、絡み合った樹脂をほぐす。これにより、堆積部60は、第2ウェブ形成部70に、混合物を均一性よく堆積させることができる。
堆積部60としては、回転する円筒の篩を用いる。堆積部60は、網を有し、混合部50を通過した混合物に含まれる、網の目開きの大きさより小さい繊維または粒子(網を通過するもの)を降らせる。堆積部60の構成は、例えば、選別部40の構成と同じである。
なお、堆積部60の「篩」は、特定の対象物を選別する機能を有していなくてもよい。すなわち、堆積部60として用いられる「篩」とは、網を備えたもの、という意味であり、堆積部60は、堆積部60に導入された混合物の全てを降らしてもよい。
第2ウェブ形成部70は、堆積部60を通過した通過物を堆積して、ウェブWを形成する。第2ウェブ形成部70は、例えば、メッシュベルト72と、張架ローラー74と、サクション機構76と、を有している。
メッシュベルト72は、移動しながら、堆積部60の開口(網の開口)を通過した通過物を堆積する。メッシュベルト72は、張架ローラー74によって張架され、通過物を通しにくく空気を通す構成となっている。メッシュベルト72は、張架ローラー74が自転することによって移動する。メッシュベルト72が連続的に移動しながら、堆積部60を通過した通過物が連続的に降り積もることにより、メッシュベルト72上にウェブWが形成される。メッシュベルト72は、例えば、金属製、樹脂製、布製、あるいは不織布等である。
サクション機構76は、メッシュベルト72の下方(堆積部60側とは反対側)に設けられている。サクション機構76は、下方に向く気流(堆積部60からメッシュベルト72に向く気流)を発生させることができる。サクション機構76によって、堆積部60により空気中に分散された混合物をメッシュベルト72上に吸引することができる。これにより、堆積部60からの排出速度を大きくすることができる。さらに、サクション機構76によって、混合物の落下経路にダウンフローを形成することができ、落下中に解繊物や添加物が絡み合うことを防ぐことができる。
以上のように、堆積部60および第2ウェブ形成部70(ウェブ形成工程)を経ることにより、空気を多く含み柔らかくふくらんだ状態のウェブWが形成される。メッシュベルト72に堆積されたウェブWは、シート形成部80へと搬送される。
なお、図示の例では、ウェブWを調湿する調湿部78が設けられている。調湿部78は、ウェブWに対して水や水蒸気を添加して、ウェブWと水との量比を調節することができる。
シート形成部80は、メッシュベルト72に堆積したウェブWを加圧加熱してシートSを成形する。シート形成部80では、ウェブWにおいて混ぜ合された解繊物および添加物の混合物に、熱を加えることにより、混合物中の複数の繊維を、互いに添加物(樹脂)を介して結着することができる。
シート形成部80としては、例えば、加熱ローラー(ヒーターローラー)、熱プレス成形機、ホットプレート、温風ブロアー、赤外線加熱器、フラッシュ定着器を用いる。図示の例では、シート形成部80は、第1結着部82と第2結着部84とを備え、結着部82,84がそれぞれ一対の加熱ローラー86を備えている。結着部82,84を加熱ローラー86として構成したことにより、結着部82,84を板状のプレス装置(平板プレス装置)として構成した場合に比べて、ウェブWを連続的に搬送しながらシートSを成形することができる。なお、加熱ローラー86の数は、特に限定されない。
切断部90は、シート形成部80によって成形されたシートSを切断する。図示の例では、切断部90は、シートSの搬送方向と交差する方向にシートSを切断する第1切断部92と、搬送方向に平行な方向にシートSを切断する第2切断部94と、を有している。第2切断部94は、例えば、第1切断部92を通過したシートSを切断する。
以上により、所定のサイズの単票のシートSが成形される。切断された単票のシートSは、排出部96へと排出される。
1.2.繊維
本実施形態のシート製造装置100において、原料としては、特に限定されず、広範な繊維材料を用いることができる。繊維としては、天然繊維(動物繊維、植物繊維)、化学繊維(有機繊維、無機繊維、有機無機複合繊維)などが挙げられ、更に詳しくは、セルロース、絹、羊毛、綿、***、ケナフ、亜麻、ラミー、黄麻、マニラ麻、サイザル麻、針葉樹、広葉樹等からなる繊維や、レーヨン、リヨセル、キュプラ、ビニロン、アクリル、ナイロン、アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリイミド、炭素、ガラス、金属からなる繊維が挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、適宜混合して用いてもよいし、精製などを行った再生繊維として用いてもよい。原料としては、例えば、古紙、古布等が挙げられるが、これらの繊維の少なくとも1種を含んでいればよい。また、繊維は、乾燥されていてもよいし、水、有機溶剤等の液体が含有又は含浸されていてもよい。また、各種の表面処理がされていてもよい。また、繊維の材質は、純物質であってもよいし、不純物、添加物及びその他の成分など、複数の成分を含む材質であってもよい。
このように本実施形態のシート製造装置100は、多様な種の原料を使用しうるが、これらの中でもセルロース繊維を含む古紙やパルプシート等は、セルロースが比較的親水性が高く帯電しにくいため、後述する複合体による複合体と繊維との付着性の向上効果が他の繊維の場合に比較してより顕著となる。
本実施形態で使用される繊維は、独立した1本の繊維としたときに、その平均的な直径
(断面が円でない場合には長手方向に垂直な方向の長さのうち、最大のもの、又は、断面の面積と等しい面積を有する円を仮定したときの当該円の直径(円相当径))が、平均で、1μm以上1000μm以下、好ましくは、2μm以上500μm以下、より好ましくは3μm以上200μm以下である。
本実施形態のシート製造装置100で使用する繊維の長さは、特に限定されないが、独立した1本の繊維で、その繊維の長手方向に沿った長さは、1μm以上5mm以下、好ましくは、2μm以上3mm以下、より好ましくは3μm以上2mm以下である。繊維の長さが短い場合は、複合体と結着しにくいため、シートの強度が不足する場合があるが、上記範囲であれば十分な強度のシートを得ることができる。
また、繊維の平均の長さは、長さ−長さ加重平均繊維長として、20μm以上3600μm以下、好ましくは200μm以上2700μm以下、より好ましくは300μm以上2300μm以下である。さらに、繊維の長さは、ばらつき(分布)を有してもよく、独立した1本の繊維の長さについて、100以上のn数で得られる分布において、正規分布を仮定した場合に、σが1μm以上1100μm以下、好ましくは1μm以上900μm以下、より好ましくは1μm以上600μm以下であってもよい。
繊維の太さ、長さは、各種の光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡、ファイバーテスター等により測定することができる。また顕微鏡観察の場合には、必要に応じて観察試料の前処理を適宜施すことにより、断面観察、独立した1本の繊維の両端を必要に応じて破断しないように引張った状態での観察を行うことが可能である。
本実施形態のシート製造装置100では、繊維の原料は、解繊部20によって解繊され、分級部30及び選別部40を経て第1選別物として混合部50へと搬送される。なお、選別部40のメッシュベルト46及び吸引部(サクション機構)48によって、ウェブVに対して分級部30の機能(解繊物からの樹脂粒やインク粒の除去)を果たせる場合には、分級部30は省略してもよい。その場合には、解繊部20によって解繊された解繊物は、選別部40に導入される。
1.3.複合体
添加物供給部52から供給される添加物は、複数の繊維を結着させるための樹脂を含む。樹脂が供給された時点では、複数の繊維は結着されていない。樹脂は、シート形成部80を通過する際に溶融して、複数の繊維を結着させる。
本実施形態では、添加物供給部52から供給される添加物は、樹脂粒子の表面の少なくとも一部が無機微粒子で覆われた複合体(粒子)である。複合体は、単独または適宜他の物質と混合して用いてもよい。
本実施形態の複合体は、添加物供給部52から供給され、混合部50、堆積部60を通過する際に、摩擦帯電作用を受ける。そして、帯電した複合体は、繊維に付着するとともに、繊維とともにメッシュベルト72に堆積され、ウェブWとなった状態においても繊維に付着(静電的に吸着)する。
本実施形態の複合体の平均帯電量の絶対値は、40μC/g以上である。複合体の平均帯電量の絶対値は、高いほど複合体を繊維に対して強く又は多く付着させることができるため、好ましくは60μC/g以上、より好ましくは70μC/g以上、さらに好ましくは80μC/g以上、特に好ましくは85μC/g以上である。
係る複合体の帯電量は、複合体同士を摩擦帯電させて測定することができる。帯電量の
測定は、例えば、標準キャリアと称する粉体と複合体とを空気中で撹拌(混合)し、その粉体の帯電量を測定することにより行うことができる。標準キャリアとしては、例えば、日本画像学会から購入可能(正帯電極性又は負帯電極性トナー用標準キャリア、「P−01又はN−01」として入手可能)な、フェライトコアを表面処理した球形キャリアで、正帯電極性トナー用又は負帯電極性トナー用の標準キャリア、パウダーテック株式会社から入手可能なフェライトキャリア等を用いることができる。
より具体的には、複合体の平均帯電量の絶対値は、例えば、次のようにして求めることができる。上記キャリアを80質量%、複合体を20質量%の混合粉体を、アクリル製の容器に投入し、60秒間100rpmで容器をボールミル架台に載せて容器を回転させ、キャリアと複合体(粉体)の混合を行う。混合を行った複合体とキャリアとの混合物について吸引式小型帯電量測定装置(例えば、トレック社製Modl210HS−2)により測定することで、平均帯電量の絶対値[|μC/g|]を求めることができる。
複合体の平均帯電量の絶対値が、40μC/g以上であることで、帯電した複合体は、繊維に付着するとともに、繊維とともにメッシュベルト72に堆積され、ウェブWとなった状態においても繊維に付着(静電的に吸着)することができる。このような本実施形態の複合体は、次項以下に説明する構造、材質等により実現される。
複合体の粒子の粒径(体積基準の平均粒子径)は、50μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは25μm以下、特に好ましくは20μm以下である。平均粒子径が小さいと、複合体に働く重力が小さくなるため自重による繊維間からの脱離を抑制することができ、また、空気抵抗が小さくなるため、サクション機構76等によって生じる空気流(風)による繊維間からの脱離や、機械的振動による脱離を抑制することができる。また、複合体が上記の粒径範囲であれば、40μC/g以上の平均帯電量により、十分に繊維から脱離しにくくすることができる。
なお、メッシュベルト72の目開きは適宜設定し得るが、複合体が繊維に付着しているため、複合体の粒子径がメッシュベルト72の目開き(物体が通過する孔の大きさ)よりも小さい場合でも、メッシュベルト72を通過することが抑制される。すなわち、本実施形態の複合体は、複合体の粒子径がメッシュベルト72の目開きよりも小さい場合にさらに顕著な効果が得られる。
なお、複合体の粒子の平均粒子径の下限は、特に限定されず、例えば、10μmであり、粉砕等の手法で粉体化できる範囲で任意である。また、複合体の粒子の平均粒子径は、分布を有してもよく、樹脂と無機微粒子とが一体であるかぎり、上述の繊維間からの脱離抑制効果を得ることができる。
複合体の粒子の体積平均粒子径は、例えば、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)が挙げられる。
複合体は、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、有機溶剤、界面活性剤、防黴剤・防腐剤、酸化防止剤・紫外線吸収剤、酸素吸収剤等が挙げられる。
1.3.1.複合体の構造
複合体は、樹脂粒子の表面の少なくとも一部を無機微粒子が覆う状態となっており、複合体から樹脂粒子又は無機微粒子が、シート製造装置100内において、及び/又は、ウ
ェブW中やシートS中において、バラバラになり難い(分かれにくい)状態である。すなわち、樹脂粒子の表面の少なくとも一部を無機微粒子が覆う状態とは、樹脂と無機微粒子とが混練された状態、樹脂粒子の表面に無機微粒子が付着又は接着されている状態、樹脂粒子の表面に無機微粒子が構造的(機械的)に固定されている状態、樹脂粒子と無機微粒子とが静電気力、及びファンデルワールス力等により凝集している状態、の少なくとも一つの状態にあることを指す。また、樹脂粒子の表面の少なくとも一部を無機微粒子が覆う状態とは、無機微粒子が樹脂粒子に内包されている状態でも無機微粒子が樹脂に付着している状態でもよい。さらにそれらの状態が同時に存在する状態でもよい。なお、本明細書では、樹脂粒子の表面の少なくとも一部を無機微粒子が覆う状態のことを、樹脂及び無機微粒子を一体に有した状態ということがある。
図2は、樹脂及び無機微粒子を一体に有した複合体の断面について、幾つかの態様を模式的に示している。樹脂及びワックスを一体に有した複合体の具体的な態様の例としては、例えば、図2(a)に示すように、樹脂reに、無機微粒子inが混練されて分散した状態でありかつ少なくとも一部の無機微粒子inが複合体coの表面に露出している複合体coが挙げられる。
さらに、図2(b)に示すように、樹脂reの表面を被覆するように無機微粒子inが配置されてもよい。すなわち、樹脂及びワックスを一体に有した複合体の具体的な態様の例として、図2(b)に示すように、樹脂reの表面に無機微粒子inが埋め込まれ、接着され、及び/又は付着された複合体coが挙げられる。この例における両成分の接着及び/又は付着は、静電気力、ファンデルワールス力等に基づいてもよい。
図2に示す複合体coの構造では、無機微粒子inは、樹脂reの粒子の表面の一部を覆っているが、樹脂reの粒子の表面の全部を覆ってもよいし、樹脂reの粒子の表面を多重に覆ってもよい。また、図2(a)に示すような構造と図2(b)に示すような構造が組み合わされた構造であってもよい。
また、図2の例では、複合体の外形形状及び無機微粒子の外形形状は、いずれも模式的に球形に近いものを示したが、複合体及び無機微粒子の外形形状は特に限定されず、円盤状、針状、不定形等の形状であってもよい。しかし、複合体の形状は、できるだけ球形に近いほうが混合部50において繊維と繊維との間に配置されやすいためより好ましい。
また、図2に示したいずれの構造の複合体も、混合部50における混合時に樹脂と無機微粒子とに分かれにくい。なお、本願においては、複合体において、樹脂と無機微粒子とに分かれないという場合には、粉体全体の複合体粒子の個数に対して、全て分かれないのが望ましいが、実際に全てを分かれない状態にするのは難しい。そのため、分かれない状態は、粉体全体の複合体粒子の個数に対して平均して70%以上の個数の複合体粒子が樹脂と無機微粒子とに分かれていないことを指す。
図2(a)、図2(b)に示すような複合体coの構造は、いずれも、例えば、電子顕微鏡等の構造解析手法などの、各種の分析手段により確認することができる。また、樹脂粒子に無機微粒子がコーティングされたか否かは、例えば、安息角を測定することにより評価することができる。安息角の測定は、例えば、JIS R 9301−2−2:1999の「アルミナ粉末?第2部:物性測定方法−2:安息角」の方法に準じて測定するこ
とができる。無機微粒子がコーティングされていない樹脂粒子に対して、無機微粒子がコーティングされた複合体では、安息角が小さくなることから確認することができる。
1.3.2.複合体の機能
樹脂及び無機微粒子を一体に有した複合体の幾つかの態様を例示したが、いずれの態様
であっても、シート製造装置100内で各種の処理を受ける際や、ウェブWやシートSに成形された際に、樹脂と無機微粒子とが分離しにくく、かつ、繊維に吸着した複合体が繊維から脱離しにくい。
無機微粒子は、樹脂粒子の表面に配置された場合、無機微粒子がない場合に比較して、樹脂粒子(複合体)の帯電量を向上させる機能を有する。無機微粒子としては、各種使用しうるが、本実施形態のシート製造装置100では、水を使用しない又はほとんど使用しないため、複合体の表面に配置される(コーティング(被覆)等でもよい。)種のものを使用することが好ましい。
無機微粒子は、複合体の帯電性を高めることにより、当該複合体と繊維との間に吸着力(付着力)を生じさせる。そのため、シート製造装置100の第2ウェブ形成部70のメッシュベルト72上にウェブWとして堆積された際に、複合体を繊維間から脱離しにくくさせることができる。これにより、シート製造装置100によって製造されるシートSの機械的強度を所定のものにしやすくすることができる。すなわち、本実施形態の複合体は、繊維間に配置された際、繊維に対して十分な付着力(静電的な結合力)を有するので繊維間から脱離しにくい。このような効果が得られる原因については、無機微粒子が樹脂粒子の表面に配置されることで、より摩擦帯電しやすく、混合部50において、複合体が繊維と大気中で混合されることにより、摩擦により静電気が生じ、繊維に対して複合体(樹脂)を付着させる作用があるためと考えられる。
1.3.3.複合体の材質
複合体の成分である樹脂(樹脂粒子の成分)の種類としては、既に述べたが、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であり、例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、などである。これらの樹脂は、単独または適宜混合して用いてもよい。
より詳しくは、複合体の成分である樹脂(樹脂粒子の成分)の種類としては、天然樹脂、合成樹脂のいずれでもよく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。本実施形態のシート製造装置100においては、複合体を構成する樹脂は、常温で固体である方が好ましく、シート形成部80における熱によって繊維を結着することに鑑みれば熱可塑性樹脂がより好ましい。
天然樹脂としては、ロジン、ダンマル、マスチック、コーパル、琥珀、シェラック、麒麟血、サンダラック、コロホニウムなどが挙げられ、これらを単独又は適宜混合したものが挙げられ、また、これらは適宜変性されていてもよい。
合成樹脂のうち熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。
また、合成樹脂のうち熱可塑性樹脂としては、AS樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、などが挙げられる。
また、共重合体化や変性を行ってもよく、このような樹脂の系統としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂等が挙げられる。
一方、無機微粒子としては、無機物からなる微粒子が挙げられ、これを樹脂粒子(複合体)の表面に配置することで、非常に優れた帯電効果を得ることができる。
無機微粒子の材質の具体例としては、シリカ(酸化シリコン)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、炭酸カルシウムを挙げることができる。また、樹脂粒子の表面に配置される無機微粒子は、一種類であっても複数種類であってもよい。
無機微粒子の体積基準の平均(一次)粒子径(体積平均粒子径)は、特に限定されないが、1nm以上100nm以下、好ましくは2nm以上80nm以下、より好ましくは5nm以上50nm以下、さらに好ましくは10nm以上40nm以下である。無機微粒子は、いわゆるナノパーティクルの範疇に近く、粒子径が小さいことから、一次粒子となっていることが一般的であるが、一次粒子の複数が結合して高次の粒子となっていてもよい。本実施形態の無機微粒子は、粒径が小さく、重量あたりの表面積の割合が大きく、これに伴い摩擦帯電する際の表面も大きい。そのため、無機微粒子の粒子径が上記範囲内であれば、良好な帯電効果を得ることができる。また、無機微粒子の粒子径が上記範囲内であれば、複合体の表面に良好にコーティングを行うことができ、この点においても、安定して十分な帯電効果を付与することができる。
無機微粒子の平均(一次)粒子径は、例えばBET法等により求めた比表面積と密度との関係から定法に従って測定することができる。
複合体における無機微粒子の含有量は、複合体100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下とすれば、上記効果を得ることができ、該効果をさらに高め、及び/又は、無機微粒子を有効に利用する(無機微粒子が多すぎると添加量が増大しても帯電量が増大しにくくなる)などの観点から、複合体100質量%に対して、好ましくは0.05質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上4質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上3質量%以下とすることが好ましい。
無機微粒子を複合体の表面に配置(コーティング)する方法としては、特に限定されず、上述した溶融混練等によって複合体を形成する際に樹脂とともに無機微粒子を配合してもよい。しかし、このようにすると、無機微粒子の多くが複合体の内部に配置されるため、無機微粒子の添加量に対する帯電効果が小さくなる。無機微粒子はその帯電発生メカニズムからして、複合体のできるだけ表面に配置されることがより好ましい。複合体の表面に無機微粒子を配置する態様としては、コーティング、被覆等が挙げられるが、必ずしも複合体の表面全体を覆っていなくてもよい。また、被覆率は、100%を越えてもよいが、およそ300%以上となると、複合体と繊維とを結着する作用が損なわれる場合があるため、状況に応じて適宜な被覆率を選択する。
無機微粒子を複合体の表面へ配置する方法としては、種々の方法が考えられるが、両者を単に混ぜ合せ静電気力やファンデルワールス力によって表面に付着させるだけでも効果を奏することができるが、脱落する懸念は残る。そのため、複合体と無機微粒子を高速回転するミキサーに投入し均一混合する方法が好ましい。このような装置としては公知のものが使用でき、FMミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどを用いて行う
ことができる。このような方法により複合体の表面に無機微粒子の粒子を配置することができる。このような方法によって配置された無機微粒子は、少なくとも一部が複合体の表面に食込むような状態又はめり込んだ状態で配置される場合があり、複合体から無機微粒子がより脱落しにくくでき、安定して帯電効果を奏することができる。またこのような方法を用いると、水分をほとんど又は全く含まない系において、容易に上記配置を実現することができる。また、複合体に食い込まない無機微粒子が存在しても、このような効果を十分に得ることができる。なお、無機微粒子が複合体の表面に食込むような状態又はめり込んだ状態は、各種の電子顕微鏡により確認することができる。
複合体表面における無機微粒子が被覆する割合(面積比:本明細書ではこれを被覆率と称する場合がある。)は、20%以上100%以下とすれば、十分な帯電効果を得ることができる。被覆率は、FMミキサー等の装置への仕込みによって調節することができる。さらに無機微粒子、複合体の比表面積が既知であれば、仕込み時の各成分の質量(重量)によって調節することもできる。また、被覆率は、各種の電子顕微鏡により測定することもできる。なお、無機微粒子が、複合体から脱落しにくい態様で配置された場合には、無機微粒子は、複合体に一体に有されているということができる。
また、無機微粒子は、表面改質されていてもよい。具体的には、無機微粒子の表面をシラン化合物により化学的に処理することによりその表面を改質し、これを使用してもよい。このようなシラン化合物としては、トリメチルシラン、ジメチルシラン、トリエチルシラン、トリイソプロピルシラン、トリイソブチルシラン等のアルキルシラン類、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等を挙げることができる。
複合体は無機微粒子を有するため、複合体が繊維に対して静電的に付着しやすく、繊維からの脱落、並びに、ウェブ及びシートからの脱落を生じにくくすることができる。また、複合体と繊維とを空気流や、ミキサーによる撹拌により非常に良好に混ぜ合せることができる。その理由としては、無機微粒子を複合体の表面に配置した場合、複合体が静電気を帯びやすくなる傾向があることが挙げられ、その静電気により複合体が繊維に対して付着しやすくなる。また、その静電気により繊維に付着した複合体は、機械的な衝撃等が生じた場合においても、繊維から容易に脱離しなくなる。そのため、繊維と複合体との混合以外の特段の手段を用いずとも、速やかに混合され、脱落も十分に抑制される。また、混合物となった後は繊維への複合体の付着は安定しており、複合体の脱離現象はみられない。
複合体粒子は、樹脂単独の粒子である場合よりも、静電気力により、強く繊維に付着するようになるものと考えられる。また、この無機微粒子の効果は樹脂粒子が顔料を含んでいる場合においても損なわれないことが分かっている。さらに、一般に静電気は湿度が高いと蓄積しにくいが、例えば、繊維がセルロースである場合に多少の水分が含まれていても、複合体の繊維への付着力は無機微粒子の存在により向上する。
1.3.5.その他の成分
なお、複合体には、繊維を着色するための着色剤や、繊維等が燃えにくくするための難燃剤が含まれていてもよいと述べたが、これらの少なくとも一種を含む場合には、樹脂にこれらを溶融混練により配合することで、より容易に得ることができる。また、無機微粒子は、このような樹脂の粉体を形成した後に、樹脂の粉体と無機微粒子の粉体とを高速ミキサー等により混合することにより配合することができる。
混合部50において、上述の繊維と複合体とが混ぜ合されるが、それらの混合比率は、製造されるシートSの強度、用途等により適宜調節されることができる。製造されるシー
トSがコピー用紙等の事務用途であれば、繊維に対する複合体の割合は、5質量%以上70質量%以下であり、混合部50において良好な混合を得る観点、及び混合物をシート状に成形した場合に、重力によって複合体がさらに脱離しにくくする観点からは、5質量%以上50質量%以下が好ましい。
1.4.混合部
本実施形態のシート製造装置100に備えられる混合部50は、繊維と、複合体と、を混ぜ合せる機能を有する。混合部50では、少なくとも繊維及び複合体が混ぜ合される。混合部50においては、繊維及び複合体以外の成分が混ぜ合されてもよい。本明細書において「繊維と複合体とを混ぜ合せる」とは、一定容積の空間(系)内で、繊維と繊維との間に複合体を位置させることと定義する。
本実施形態の混合部50における混ぜ合せの処理は、気流中に繊維及び複合体を導入して気流中で相互に拡散させる方法(乾式)であり、流体力学的な混合処理となっている。混合における「乾式」とは、水中ではなく空気中で混合させる状態をいう。すなわち、混合部50は、乾燥状態で機能してもよいし、不純物として存在する液体又は意図的に添加される液体が存在する状態で機能してもよい。液体を意図的に添加する場合には、後の工程において、係る液体を加熱等により除去するためのエネルギーや時間が大きくなりすぎない程度に添加することが好ましい。なお、係る方法の場合には、管54等の中の気流は、乱流であるほうが混ぜ合せの効率がよくなることがあるためより好ましい。
混合部50の処理能力は、繊維(繊維材)及び複合体を混ぜ合せることができる限り、特に限定されず、シート製造装置100の製造能力(スループット)に応じて適宜設計、調節することができる。混合部50の処理能力の調節は、管54内の繊維及び複合体を移送するための気体の流量や、材料の導入量、移送量等を変化させることにより行うことができる。
混合部50によって混ぜ合された混合物は、シート成形部等、他の構成によってさらに混ぜ合されてもよい。また、図1の例では、混合部50は、管54に設けられたブロアー56を有しているが、さらに図示せぬブロアーを有してもよい。
ブロアーは、繊維と複合体とを混合させる機構であり、回転する羽根を有する回転部を有している。係る羽根が回転することにより、繊維及び/又は複合体が羽根によって摩擦されたり羽根に衝突したりする。また、係る羽根が回転することにより、羽根によって形成される気流によって、繊維と繊維、繊維と複合体、及び/又は、複合体と複合体が衝突したり相互に摩擦されたりする。
このような衝突や摩擦により、少なくとも複合体が帯電し(静電気を帯び)、複合体が繊維に付着するための付着力(静電気力)が生じると考えられる。このような付着力の強さは、繊維及び複合体の性状や、ブロアーの構造(回転する羽根の形状等)にも依存する。図1に示すようにブロアー56が一つ設けられた場合でも、十分な付着力を得ることができるが、さらに他のブロアーを添加物供給部52の下流側に設けることにより、より強い付着力を得ることができる場合がある。増設するブロアーの数は、特に限定されない。また、複数のブロアーを設ける場合には、よい送風力の大きいブロアーと、より撹拌力(帯電させる能力)の大きいブロアーとを設けるなど、ブロアーごとに主たる機能を分担させるようにしてもよい。このようにすれば、繊維への複合体の付着力をより高めることができる場合があり、ウェブWを成形する際に繊維間からの複合体の脱離をさらに抑制することができる。
1.5.作用効果
本実施形態のシート製造装置100は、混合部50において繊維に混合される複合体が、樹脂粒子の表面の少なくとも一部を無機微粒子が覆ったものであるため、ウェブが形成される際、複合体が繊維間から脱離しにくい。そして、シート形成部80において複合体と繊維とを結着するので、樹脂の分散性が良好で、強度等の均一性の良好なシートを製造することができる。
本実施形態のシート製造装置100で使用する複合体は繊維との付着力が非常に優れている。無機微粒子が樹脂に一体に添加されることにより、無機微粒子の持つ静電気を帯びやすい性質により、複合体粒子は静電気を帯びやすくなり、結果として複合体の電荷量が高くなり、繊維への付着力が向上する。
また、本実施形態のシート製造装置は、第2ウェブ形成部70に、ウェブWを形成するメッシュベルト72とサクション機構76とを有しており、当該サクション機構76は、メッシュベルト72を介して堆積部60によって吐出された混合物を吸引する吸引部ということができる。このような吸引部がメッシュベルトを介して堆積物を吸引することで、複合体が繊維から脱離する可能性が高まるが、本実施形態のシート製造装置によれば、吸引部を有しているにもかかわらず、複合体が繊維から脱離することを十分に抑制できる。
2.シート製造方法
本実施形態のシート製造方法は、繊維と、樹脂と無機微粒子とを一体にした複合体と、を空気中で混合する工程と、前記繊維と、前記複合体と、を混合した混合物を堆積し、加熱して成形する工程と、を含む。繊維、樹脂、無機微粒子、及び複合体は、上述のシート製造装置の項で述べたと同様であるため、詳細な説明を省略する。
本実施形態のシート製造方法は、原料としてのパルプシートや古紙などを空気中で切断する工程、原料を空気中で繊維状に解きほぐす解繊工程、解繊された解繊物から不純物(トナーや紙力増強剤)や解繊によって短くなった繊維(短繊維)を空気中で分級する分級工程、解繊物から長い繊維(長繊維)や十分に解繊されなかった未解繊片を空気中で選別する選別工程、混合物を空気中で分散させながら降らせる分散工程、降ってきた混合物を空気中で堆積してウェブの形状等に成形する成形工程、必要に応じてシートを乾燥させる乾燥工程、形成されたシートをロール状に巻取る巻取工程、形成されたシートを裁断する裁断工程、及び製造されたシートを包装する包装工程からなる群より選択される少なくとも1つの工程を含んでもよい。これらの工程の詳細は上述のシート製造装置の項で述べたと同様であるため、詳細な説明を省略する。
3.シート
本実施形態のシート製造装置100、又はシート製造方法によって製造されるシートSは、少なくとも上述の繊維を原料とし、シート状にしたものを主に指す。しかしシート状ものに限定されず、ボード状、ウェブ状、又は凹凸を有する形状であってもよい。本明細書におけるシートとは、紙と不織布に分類できる。紙は、例えば、パルプや古紙を原料としシート状に成形した態様などを含み、筆記や印刷を目的とした記録紙や、壁紙、包装紙、色紙、画用紙、ケント紙などを含む。不織布は、紙より厚いものや低強度のものであり、一般的な不織布、繊維ボード、ティッシュペーパー、キッチンペーパー、クリーナー、フィルター、液体吸収材、吸音体、緩衝材、マットなどを含む。
なお、不織布の場合には、繊維と繊維との間の間隔が広い(シートの密度が小さい)。これに対して紙は、繊維と繊維との間の間隔が狭い(シートの密度が大きい)。そのため、本実施形態のシート製造装置100、又はシート製造方法によって製造されるシートSが紙であるほうが、複合体の繊維からの脱離抑制や、シートとしたときの強度の均一性等の作用、機能をより顕著に発現することができる。
4.収容容器
本実施形態の収容容器は、繊維と混ぜて用いられ、樹脂と無機微粒子とを一体にした、上述の複合体を収容する。
本実施形態の複合体は、フィーダーや弁の開閉により、混合部50に供給される。本実施形態の複合体は、外観として粉体の状態で供給される。そのため、例えば、複合体が製造された後、直接混合部50に管等を通じて供給されるように装置を構成することもできる。しかし、装置の設置場所によっては、複合体は商品として流通経路に乗ることが考えられ、複合体を製造した後に移送や保存が行われる場合がある。
本実施形態の収容容器は、複合体を収容する収容室を有しており、該収容室内に複合体を収容することができる。すなわち、本実施形態の収容容器は、複合体のカートリッジということができ、複合体を容易に運搬、保管することができる。
収容容器の形状は、特に限定されず、シート製造装置100に適合するカートリッジの形状とすることができる。収容容器は、例えば、一般的な高分子材料によって形成することができる。また、収容容器は、箱状の堅牢な形態であっても、フィルム(袋)状のフレキシブルな形態であってもよい。収容容器を構成する材質は、収容される複合体の材質に比較して、ガラス転移温度や融点の高い材料で構成されることが好ましい。
複合体を収容する収容室は、複合体を収容して保持することができれば、特に限定されない。収容室は、フィルム、成形体等により形成されることができる。収容室がフィルムで形成される場合には、収容容器は、収容室を形成するフィルムを収容するような成形体(筐体)を含んで形成されてもよい。また、収容室は、比較的堅牢な成形体によって形成されてもよい。
収容室を形成するフィルムや成形体は、高分子、金属の蒸着膜等で構成され、多層構造であってもよい。収容容器がフィルムや成形体などの複数の部材で形成される場合には、溶着部分や接着部分が形成されてもよい。また、収容される複合体(粉体)が大気との接触により変質等の影響を受ける場合には、フィルムや成形体は、気体透過率の小さい材質で形成されることが好ましい。収容室を形成するフィルムや成形体の材質のうち、収容される複合体に接する部分の材質は、複合体に対して安定であることが好ましい。
収容室の形状及び容積は、特に限定されない。収容室には、複合体が収容されるが、複合体とともに、これに対して不活性な固体や気体が収容されてもよい。収容室に収容される複合体の体積も特に限定されない。
収容室は、収容室内部と収容容器の外部とを連通し、複合体を収容容器の外部に取出すことのできる流通口を有してもよい。また、収容室は、流通口以外の他の流通路が形成されてもよい。このような他の流通路としては、例えば、開放弁等により構成されてもよい。収容室に開放弁を設ける場合には、開放弁の配置される位置は特に限定されないが、移送、運搬、使用の際の通常の姿勢において重力の作用する方向に対して反対側に配置されると、収容室内に圧力等が生じた場合に当該圧力を大気に開放する際に複合体を排出しにくいため好ましい場合がある。
5.その他の事項
本実施形態のシート製造装置、シート製造方法は、上述の通り、水を全く又はわずかにしか使用しないものであるが、必要に応じて、噴霧等により、調湿等を目的として適宜水を添加してシートを製造することもできる。
このような場合の水としては、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水又は超純水を用いることが好ましい。特にこれらの水を紫外線照射又は過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
本明細書において、「均一」との文言は、均一な分散や混合という場合には、2種以上又は2相以上の成分を定義できる物体において、1つの成分の他の成分に対する相対的な存在位置が、系全体において一様、又は系の各部分において互いに同一若しくは実質的に等しいことを指す。また、着色の均一性や色調の均一性は、シートを平面視したときに色の濃淡がなく、一様な濃度であることを指す。
本明細書において、「均一」「同じ」「等間隔」など、密度、距離、寸法などが等しいことを意味する言葉を用いている。これらは、等しいことが望ましいが、完全に等しくすることは難しいため、誤差やばらつきなどの累積で値が等しくならずにずれるのも含むものとする。
6.実験例
以下に実験例を示し、本発明をさらに説明するが、本発明は以下の例によってなんら限定されるものではない。
6.1.複合体の作製
(1)スチレンマレイン酸樹脂(Tg:74℃、分子量6600):1.5kg
(2)ポリエステル樹脂(Tg:56℃、分子量10000):8.0kg
(3)銅フタロシアニン顔料(PigmentGreen36):0.5kg
上記の材料をホッパー内で混合した後、二軸混練押出機に投入し90℃〜135℃にて溶融混練を行った。ダイスで押し出してストランドとし、約5mm長にカットしてペレットを得た。
上で得られたペレットを、ハイスピードミルにて30秒処理を行いペレットを粗粉砕し顆粒状にした後、ジェットミルに投入し1μm〜40μmの粒径範囲の粉体を得た。
ジェットミルにより得られた粉体を分級装置により体積基準平均粒径が12μm、粒径範囲5μm〜23μmの粒子から構成される粉体の樹脂粒子(A1)を得た。
6.2.実験例1
(1)樹脂粒子(A1):100g
(2)無機微粒子(M1):1.5g
上記の材料を卓上ブレンダーに投入し、翼端速度30m/sで80秒間撹拌を行うことにより、樹脂粒子(A1)の表面に無機微粒子(M1)をコーティングした。コーティングの有無はSEMにより粒子表面を観察して確認した。更に安息角の変化によっても確認を行った。これはコーティング(無機微粒子による被覆)が形成されると安息角が減少することから判定した。無機微粒子(M1)は、表面をアルキルシランにより疎水化処理された体積一次粒径が14nmである二酸化チタンを用いた。
6.3.実験例2
表面をトリメチルシランにより改質した、体積基準一次粒径12nmの二酸化ケイ素の微粒子を無機微粒子(M2)とする。実験例1において用いた無機微粒子(M1)の代わりに無機微粒子(M2)を用いた以外は、実験例1と同様とした。
6.4.実験例3
表面をトリメチルシランにより改質した、体積基準一次粒径20nmの二酸化ケイ素の微粒子を無機微粒子(M3)とする。実験例1において用いた無機微粒子(M1)の代わりに無機微粒子(M3)を用いた以外は、実験例1と同様とした。
6.5.実験例4
表面をトリメチルシランにより改質した、体積基準一次粒径20nmの二酸化ケイ素の微粒子を無機微粒子(M4)とする。実験例1において用いた無機微粒子(M1)の代わりに無機微粒子(M4)を用いた以外は、実験例1と同様とした。
6.6.実験例5
表面に何もコーティングしない樹脂粒子(A1)とした。
6.7.帯電量の測定
(1)標準キャリアN−01(日本画像学会より入手):4.85g
(2)各実験例の粉体(複合体又は樹脂粒子):0.15g
上記を計量しアクリル製の容器に投入し、180秒間100rpm1で容器をボールミ
ル架台に載せて容器を回転させ、キャリアと粒子(粉体)の混合を行った。混合を行った粉体とキャリアの混合物について吸引式小型帯電量測定装置(トレック社製、Model210HS−2)により平均帯電量の絶対値[|μC/g|]を求め、表1に記載した。
6.8.繊維に対する粒子の保持率の評価
(1)針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP):16g
(2)複合体粒子(実験例1〜4)又は樹脂粒子(実験例5):4g
(3)粒子含有率:4g/(16g+4g)=20質量%
上記質量を秤量して520mm×600mm×0.030mmの透明のポリエチレンの袋に入れ、エアーガンで空気を吹き込んで、パルプと複合体又は樹脂粒子を空気流で撹拌しパルプ及び複合体又はパルプ及び樹脂粒子の混合物(各実験例の粉体)を混合した。
各実験例の混合体をそれぞれ5.0g取り出し、140メッシュの標準篩に静かにピンセットで均等に広げた。その後、篩の上側に同じ篩をかぶせて吸引装置にセットした。図3に吸引装置200の概略図を示す。用いた吸引装置200は、自作したものであり、図3に示すような構成で、篩210をセットする漏斗型の漏斗部220、排気装置230、排気フィルター240からなるものである。この装置において、何も載っていない篩210を設置した場合に、篩210の網面の風速が25±1m/sとなるように排気装置230の排気速度を調節した。尚、この風速条件を満たすのであれば、装置の形態は必ずしも図3のようなものでなくともよい。吸引装置200に、各混合体が篩210によって挟まれた状態で篩210をセットし30秒間吸引を行ったのち、残った各混合体の質量を測定したときの値をX(g)とした。
ここで、粒子保持率RV(%)は、
RV=(5×0.2−(5−X))/(5×0.2)×100=(X−4)×100
なる式に従い算出される。粒子保持率が高いほど、パルプの繊維間に混合体が多く保持されていることを示し、RV=100%であれば、吸引によって混合体の粒子が篩210を通過しない、理想的な状態といえる。各実験例の粒子保持率を表1に記載した。
なお、各実験例においては篩210に挟む混合体の重量を5.0gとしたが、この質量は試験効率等から適宜調節してもよい。ただし、測定で使用する各篩210において、篩面を全面覆うことができる体積の混合体を挟むこととする。この条件を満たす混合体の質量が選択された場合、得られるRVの値は混合体の質量に依存しない傾向を有する。
6.9.評価結果
各実験例について、試料の性状と粒子保持率を表1にまとめた。
上記表1の通り、樹脂粒子の無機微粒子によるコーティング状態を変えることにより、得られた粉体の帯電量を制御することができることが判明した。また、帯電量を制御することにより、パルプ繊維に対する粒子保持率を制御できることも分かった。そして粒子(複合体)の帯電量が大きいほど、粒子保持率は高い傾向があり、粒子保持率が高いということは、複合体の樹脂粒子がしっかりとパルプ繊維(セルロース)に付着し、容易に脱離しない状態であると考えられる。
さらに表1から、平均帯電量の絶対値が40μC/g以上であると、粒子保持率が約80%以上となることから、実際のシート製造において支障がないレベルとなっていることが分かった。また平均帯電量の絶対値が80μC/g以上であると、粒子保持率は95%以上となり、樹脂粒子(複合体)の繊維からの脱離は非常に少なくなり更に良好であることが分かった。
実験例1〜4のような範囲の帯電量を有する複合体であると、乾式でシートを製造する際に、樹脂成分が繊維から脱離しにくく、その結果、設計通りの強靭なシートを製造することが可能であることが分かった。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施
形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。