JP6667896B2 - リボ核酸固定化担体及びそれを用いたリボ核酸の分離回収方法 - Google Patents

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Description

本発明は、リボ核酸固定化担体及びそれを用いたリボ核酸の分離回収方法に関し、特に、メソポーラスシリカ粒子をリボ核酸固定化用担体に用い、リボ核酸を含有する液からリボ核酸を吸着させてリボ核酸を選択的に分離・回収する方法に関する。
動物細胞や植物細胞の細胞破砕液中に存在する核酸(DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸))の抽出と精製には、主に、シリカ粒子などの無機物粒子が利用されている。
例えば、核酸(DNA及びRNA)を分離する吸着剤として、表面無修飾のシリカ粒子が用いられてきた。
この場合は、細胞破砕液や核酸溶解液中に、カオトロピック物質としての過塩素酸ナトリウムやグアニジンチオシアン酸などや、界面活性剤としてのポリエチレングリコールラウリルエーテル等を添加させることで、液体中に含まれる核酸を吸着部材に吸着させて、分離・回収する方法がいくつか報告されている(非特許文献1、特許文献1、2等)。
しかしこれらの方法は、例えば、カオトロピック物質;5moL/L、界面活性剤;1質量%のように、非常に高濃度のカオトロピック物質及び界面活性剤の混合を必要とするために、分離する核酸の構造安定性が保証されない。例えば、非特許論文2には、二本鎖DNAの溶液にカオトロピック物質を加えることで、二本鎖の熱安定性が減少することが報告されている。
また、これらの方法では、吸着部材としては、磁気シリカビーズ(特許文献1)やガラス繊維フィルター(特許文献2)が使用されており、これらの部材の比表面積は、最大でも100m/g以下程度であると考えられ、核酸分子を効率的に補足するための吸着部材には、比表面積をさらに大きくする必要がある。
また、今後は、細胞内に存在するメッセンジャーRNA、トランスファーRNA、リボソーマルRNAなどのRNA類を効率的に分離吸着して、細胞内で発生している疾病などの減少を解析する研究開発が活発化すると予想される。
そのために、DNAなどの他種の核酸のみならず、タンパク質や糖類などの生体高分子が混合する溶液から、効率的にリボ核酸のみを分離するカラム担体が必要となり、リボ核酸(RNA)を多量に、かつ選択的に分離可能な吸着担体が求められている。
RNAを選択的に分離精製する方法については、特許文献3に報告されている。該特許文献では、互いに連結するμmサイズの細孔(スルーポア)とnmサイズの細孔(メソポア)を有するシリカ骨格が絡み合った二重細孔構造のシリカゲルを使用することを一つの特徴としている。しかしながら、該特許文献においても上述と同様に、RNAを含有する溶液には、1M以上8M以下の高濃度のカオトロピック剤やエタノールなどの水溶性有機溶媒を含んでいることを特徴としている。
また、非特許文献3では、DNAからメッセンジャーRNAの転写時にポリアデニル化(ポリA鎖)が形成され、この特異的なポリA鎖をアフィニティ結合クロマトグラフィーとして利用して、細胞破砕液等からRNAを選択的に分離精製するカラムとして、担体表面リガンド:オリゴチミジン(オリゴdT)がセルロースビーズ表面に固定化されたクロマトカラムが報告されている。
しかしながら、オリゴdTを高密度で有機や無機担体の表面に修飾することは困難であり、かつ、非常に高コストな表面処理となるため、今後低コストで作成可能なRNA多量吸着担体の開発が必要となっている。
以上のとおり、これまでのシリカ粒子等を用いた核酸分離手法においては、核酸抽出液に様々な溶液を複雑に混合することで、核酸分離量やDNA/RNA選択吸着性の向上を試みる例が多数である。
一方、シリカ粒子の形状や比表面積、ナノ細孔性、表面修飾などシリカ粒子自身の検討をした例も幾つか報告されている(特許文献4〜7)。
例えば、特許文献4、5には、シリカ粒子の表面にアクセプター基を導入して、機能性物質を表層または内部に含む無孔性のシリカ粒子とすることが記載されている。
また、特許文献6には、メソポーラスシリカの細孔口に、可逆的に結合する官能基を導入して、細孔内に機能性物質を内包させることが記載されている。
さらに、特許文献7には、DNA合成能を有するDNA合成酵素がメソポーラスシリカの細孔に吸着・固定されているDNA合成酵素―シリカ系ナノ粒子空孔材料複合体に関して記載されており、該特許文献には、アミノ基で修飾したシリカ系空孔材料(中心細孔直径:6.2nm)はλ−DNA分子を吸着するが、未修飾のシリカ系空孔材料(中心細孔直径:7.2nm)はDNA分子の吸着が認められず、DNA合成酵素を選択的に固定化できる効果があることが記載されている(実施例5及び図5参照)。
しかしながら、これらの特許文献のいずれにも、リボ核酸の選択的吸着については何ら触れられていない。
特開2010−193814号公報 特開2011−67150号公報 特開2007−244375号公報 再表2007−142316号公報 再表2006−070582号公報 特開2004−26636号公報 特開2014−103924号公報
R. BOOM, C. J. A. SOL, M. M. M. SALIMANS, C. L. JANSEN, P. M. E.WERTHEIM-VAN DILLEN, and J. VAN DER NOORDAA, Rapid andSimple Method for Purification of Nucleic Acids, JOURNALOF CLINICAL MICROBIOLOGY, (1990), 495-503. Hamaguchi, K. and Geiduschek, E. P., The Effect of Electrolytes onthe Stability of the Deoxyribonucleate Helix1, J. Am. Chem. Soc., 84, 1329-1338(1962). JOHN A. BANTLE, IAN H. MAXWELL, AND WILLIAM E. HAHN, Specificity ofOligo (dT)-Cellulose Chromatography in the isolation of Polyadenylated RNA,ANALYTICAL BIOCHEMISTRY 72.413-427 (1976). WERNER STOBER, ARTHUR FINKand ERNST BOHN, Controlled Growth of Monodisperse Silica Spheres in the MicronSize Range, J. Colloid Interface Sci. 26, 62-69 (1968).
以上のとおり、安定的に核酸、特にRNAを分離吸着する担体として、カオトロピック物質や界面活性剤、アルコール類などを添加することなしに安定的に使用可能な材料であって、かつ、これまでの手法で用いられている吸着部材と比較して、吸着カラム担体当たりのリボ核酸の吸着量が多く、かつ、リボ核酸を選択的に吸着分離可能な材料が求められている。
本発明は、上記現状を鑑みてなされたものであり、種々の特性に優れ、かつ、これまでのカオトロピック剤などを使用する複雑な手法を必要とせずに簡単な吸着手法でリボ核酸を分離回収することが可能なリボ核酸固定用担体、及び該リボ核酸固定用担体を用いたリボ核酸の分離回収方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、メソ孔を持つアミノ化メソポーラスシリカ粒子が、種々の特性に優れ、核酸分離、特にリボ核酸分離回収用の担体として好適に用いることができるという知見を得た。さらに、検討した結果、該アミノ化メソポーラスシリカの粒子サイズ、細孔サイズ、及びアミノ化量をコントロールすることにより、デオキシリボ核酸及びリボ核酸を含有する液からリボ核酸を特異的に吸着させることができることが判明した。
本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]リボ核酸を選択的に吸着可能なメソ孔を有するアミノ化メソポーラスシリカ粒子からなることを特徴とするリボ核酸固定化用担体。
[2]前記アミノ化メソポーラスシリカが、アミノ基を有するシラン化合物とアミノ基を有しないシラン化合物の混合物からゾルゲル反応により形成されたものであることを特徴とする[1]に記載のリボ核酸固定化用担体。
[3]前記混合物中のアミノ基を有するシラン化合物とアミノ基を有しないシラン化合物の合計を100モル%としたとき、アミノ基を有するシラン化合物が5〜40モル%であることを特徴とする[2]に記載のリボ核酸固定化用担体。
[4]前記アミノ化メソポーラスシリカ粒子の細孔径が2〜20nmの範囲にあることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のリボ核酸固定化用担体。
[5]前記アミノ化メソポーラスシリカ粒子の粒子径が50nm〜300nmの範囲にあることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のリボ核酸固定化用担体。
[6]リボ核酸を含有する液から、カオトロピック剤を用いることなく、固定化用担体にリボ核酸を吸着させてリボ核酸を分離・回収する方法であって、該固体化担体としてアミノ化メソポーラスシリカ粒子を用いることを特徴とするリボ核酸の分離回収方法。
[7]前記アミノ化メソポーラスシリカの粒子径、細孔径、及びアミノ化量をコントロールすることにより、デオキシリボ核酸及びリボ核酸を含有する液からリボ核酸を特異的に吸着させることを特徴とする[6]に記載のリボ核酸の分離回収方法。
[8]前記アミノ化メソポーラスシリカがアミノ基を有するシラン化合物とアミノ基を有しないシラン化合物の混合物からゾルゲル反応により形成されるものであって、該混合物中のアミノ基を有するシラン化合物とアミノ基を有しないシラン化合の合計を100モル%としたとき、アミノ基を有するシラン化合が5〜40モル%であることを特徴とする[6]又は[7]に記載のリボ核酸の分離回収方法。
[9]前記アミノ化メソポーラスシリカ粒子の細孔径が2〜20nmの範囲にあることを特徴とする[6]〜[8]のいずれかに記載のリボ核酸の分離回収方法。
[10]前記アミノ化メソポーラスシリカ粒子の粒子径が50nm〜300nmの範囲にあることを特徴とする[6]〜[9]のいずれかに記載のリボ核酸の分離回収方法。
[11]水とメソ孔形成用有機化合物とを混合してミセルを形成し、ミセル含有液を調製する工程(1)と、
前工程で得られたミセル含有液に、アミノ基を有するシラン化合物及びアミノ基を有しないシラン化合物を混合したシリカ前駆体を添加する工程(2)と、
前記シリカ前駆体が添加された前記ミセル含有液をゾルゲル反応させて有機物―シリカ中間体を形成する工程(3)と、
前記有機物―シリカ中間体を洗浄する工程(4)と、
を備えることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のRNA固定化用担体の製造方法。
[12]前記シリカ前駆体におけるアミノ基を有するシラン化合物とアミノ基を有しないシラン化合の合計を100モル%としたとき、アミノ基を有するシラン化合が5〜40モル%であることを特徴とする[11]に記載のRNA固定化用担体の製造方法。
本発明によれば、アミノ化メソポーラスシリカ粒子をRNA固定化用担体として用いることにより、カオトロピック物質や界面活性剤、アルコール類などを添加することなしに安定的にRNAを吸着して、回収することが可能となる。また、本発明におけるRNA固定化用担体を、RNA分離吸着カラムとして使用する場合には、シリカの持つ高強度や耐薬品性、焼成による再生利用可能などの利点を持つ。
アミノ化メソポーラスシリカ粒子の製造方法の一例を示す図 本発明の一例を模式的に示す図 合成されたアミノ化メソポーラスシリカ粒子の種類図 各種条件下で合成したアミノ化メソポーラスシリカ粒子の走査電子顕微鏡(SEM)像 各種条件下で合成されたアミノ化メソポーラスシリカ粒子のフーリエ変換赤外分光光度(FT−IR)分析図 メソ孔有無によるシリカ粒子の核酸(DNA及びRNA)吸着に及ぼす影響を示す図 シリカの粒子サイズが、核酸(DNA及びRNA)吸着に及ぼす影響を示図 アミノ化メソポーラスシリカ粒子のアミノ基の量、及び細孔サイズが、核酸(DNA及びRNA)吸着に及ぼす影響を示す図 アミノ化メソポーラスシリカ粒子上への核酸(DNA及びRNA)の吸着前後による窒素吸脱着曲線と、細孔体積及び平均細孔径を示す図 アミノ化メソポーラスシリカ粒子による、DNA/RNA混合溶液からのRNA濃縮効果を示す図 アミノ化メソポーラスシリカ粒子への吸着・回収後のRNAのアガロース電気泳動図
本発明のリボ核酸固定化用担体は、リボ核酸を選択的に吸着可能なメソ孔を有するアミノ化メソポーラスシリカ粒子からなることを特徴とする。
また、本発明の方法は、該リボ核酸固定化用担体を用い、リボ核酸を含有する液から、カオトロピック剤を用いることなく、該固定化用担体にリボ核酸を吸着させてリボ核酸を分離・回収することを特徴とするものである。
最初に、本発明のRNA固定化担体及びその製造方法について詳しく説明する。
1.アミノ化メソポーラスシリカ粒子
本発明のアミノ化メソポーラスシリカ粒子は、RNAを多量に吸着し、かつ、構造の類似したDNAの吸着を最低限に抑えた選択的吸着特性を持つメソポーラスシリカ粒子である。
(1)核酸(DNA及びRNA)
本発明において、「核酸」とは、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)を意味する。核酸とは、分子中に核酸塩基、糖、リン酸基からなる鎖状の分子であり、通常、DNAは分子内水素結合により2本鎖を形成しているが、RNAは1本鎖で存在する。また中性条件下の水溶液中では、核酸は、リン酸基の影響で強い負電荷を持つ。
(2)吸着
本発明において、「吸着」とは化学的吸着を意味する。つまりアミノ化メソポーラスシリカ粒子に存在するアミノ基が持つ正電荷と核酸内にあるリン酸基が持つ負電荷の静電的相互作用について、吸着をしている。
(3)アミノ化メソポーラスシリカ粒子
本発明において、「アミノ化メソポーラスシリカ粒子」とは、その基本骨格にアミノ基を有するシラン化合物由来の構造を有するものであり、メソ領域(2〜50nm)にメソ孔を持つ粒子のことを意味する。
アミノ化メソポーラスシリカ粒子のBET法によるメソ孔サイズは、特に限定されないが、上述のように、2〜50nmであり、好ましくは、2〜20nmであり、さらに好ましくは、5〜10nmである。
アミノ化メソポーラスシリカ粒子に吸着されるリボ核酸の分子サイズが、5〜10nm程度である。つまり、メソ孔が5〜10nmであるシリカは、RNAのサイズと同程度となり、RNAが、メソ孔表面のアミノ基に効率的に吸着できるからである。
アミノ化メソポーラスシリカ粒子のSEM観察による粒子径は、特に限定されない。粒子径は、好ましくは50〜1000nmであり、より好ましくは、50〜500nmであり、さらに好ましくは50〜150nmである。この範囲内であると、粒子の分散性が高くなり、RNAの吸着性も上昇する。つまり、単位重量当たりのアミノ化メソポーラスシリカ粒子へのRNAの吸着量が上昇する。
アミノ化メソポーラスシリカ粒子のBET法による比表面積は、特に限定されないが、通常15〜1000m/gであり、好ましくは、50〜1000m/gであり、さらに好ましくは、100〜1000m/gである。この範囲内であると、単位重量当たりのアミノ化メソポーラスシリカ粒子へのRNAの吸着量が大きく上昇するためである。
また、アミノ化メソポーラスシリカ粒子のBET法による細孔体積量は、特に限定されないが、通常0.01〜2cm/gであり、好ましくは、0.1〜2m/gであり、さらに好ましくは、0.5〜2cm/gである。この範囲内であると、分子サイズの小さいRNAが、アミノ化メソポーラスシリカ粒子のメソ孔内での吸着量が上昇し、DNAとの選択的分離能が高くなるためである。
2.アミノ化メソポーラスシリカ粒子の製造方法
本発明のアミノ化メソポーラスシリカ粒子は、その基本骨格に、アミノ基を有するシラン化合物由来の構造を有するものである。
通常、アミノ基を有するメソポーラスシリカを得る方法としては、メソポーラスシリカを合成した後にアミノ基を導入する方法と、合成する際に同時にアミノ基を導入する方法とがあるが、本発明においては、後者の方法、具体的には、アミノ基を含有するシラン化合物とアミノ基を含有しないシラン化合物とを必要な比率で混合して、ゾルゲル反応を開始させ、SiO骨格内にアミノ基を含有させる方法が好ましく用いられる。
後述するとおり、本発明においては、アミノ化メソポーラスシリカの粒子径、細孔径、及びアミノ化量を最適化することにより、高い核酸選択的吸着特性(RNA/DNA値)を得ることができるが、前者の方法では、粒子径、細孔径、及びアミノ化量をコントロールすることが困難であるためである。
本発明のアミノ化メソポーラスシリカ粒子の製造方法は、水とメソ孔形成用有機化合物とを混合して、ミセルを形成し、ミセル含有液を調製する、ミセル含有液調製工程(1)と、前工程で得られたミセル含有液にシリカ前駆体を添加する、シリカ前駆体添加工程(2)と、前記シリカ前駆体が添加された前記ミセル含有液をゾルゲル反応させて有機物−シリカ中間体を形成する、中間体形成工程(3)と、有機物−シリカ中間体から有機物を洗浄除去して、メソ孔を形成する、洗浄工程(4)と、を備えることを特徴とする。
図1に、本発明のアミノ化メソポーラスシリカ粒子の好ましい製造方法の一例を示す。
以下、各工程について説明する。
(1)ミセル含有液調製工程
この工程はミセル含有液調整工程として、メソ孔形成用有機化合物を水溶液中に溶解分散させ、均一なミセルを形成させるものである。
メソ孔形成用有機化合物としては、有機化合物であれば特に限定されないが、界面活性剤が好ましい。
メソ孔形成のための有機化合物としては、例えば、塩化アルキルアンモニウムトリメチルや臭化アルキルアンモニウムトリメチル等のイオン性界面活性剤や、分子量6,000〜30,000を持つポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイド系のトリブロックコポリマー(P123、F108、F127など、アルドリッチ-シグマ社製)や、分子量1,000〜20,000を持つポリエチレングリコールモノセチルエーテル系の非イオン性界面活性剤(Brij30、Brij58など、アルドリッチ-シグマ社製)などが、利用可能である。有機化合物は、単独で、又は2種以上用いることができる。
これらの有機化合物の中でも、塩化アルキルアンモニウムトリメチルや臭化アルキルアンモニウムトリメチル等のイオン性界面活性剤が好ましい。
塩化アルキルアンモニウムトリメチルは、水溶液中で溶解性が高く、ミセルも形成されやすい。そのため、2〜5nmのメソ孔が比較的均一サイズで得られることが多い。
また、この工程では、必要に応じて、ミセルを膨潤させてメソ孔の孔径サイズを調節するための溶剤(有機膨潤剤)を混合する。
該溶剤としては、特に限定されないが、例えば、1,2-ジメチルベンゼン、1,3-ジメチルベンゼン、1,4-ジメチルベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,5-トリメチルベンゼン、1,3,4-トリメチルベンゼン、1,2,3-トリイソプロピルベンゼン、1,3,5-トリプロピルベンゼンなどのアルキル置換ベンゼン系の芳香族化合物や、ヘキサン、オクタン、デカン、ヘキサデカン等のアルカン系化合物が挙げられる。溶剤は、単独で、又は2種以上用いることができる。
これらの溶剤の中でも、1,3,5-トリメチルベンゼンが好適である。1,3,5-トリメチルベンゼンは、疎水性が高く分子構造が均一であるため、上述のトリブロックコポリマー(P123)などと混合が容易であり、メソ孔径サイズの調整がしやすい。
メソ孔形成用有機化合物と溶剤との混合比率は特に限定されない。メソ孔形成用有機化合物を100重量部とした場合に、溶剤は、通常10〜500重量部であり、好ましくは、10〜100重量部であり、さらに好ましくは10〜50重量部である。混合比率をこの範囲とすると、核酸のサイズ(4〜10nm)と同程度のメソ孔(3〜15nm)を形成やすいからである。
(2)シリカ前駆体添加工程
この工程は、アミノ化メソポーラスシリカ粒子を製造するために、前工程で作製したミセル含有液中にシリカ前駆体の添加を行うものである。
「シリカ前駆体」としては、アミノ基を有するシラン化合物(アミノ化シラン化合物)及びアミノ基を有しないシラン化合物を混合したものを用いるが、いずれのシラン化合物にも、メソポーラスシリカ粒子の骨格原料としてよく知られたシリコンアルコキシドを好適に用いることができる。
シリコンアルコキシドとしては、特に限定されないが、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n-プロピルエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどが用いられ、好ましくは、テトラメトキシシラン(TMOS)であり、より好ましくは、テトラエトキシシラン(TEOS)である。シリコンアルコキシドは、単独で、又は2種以上用いることができる。
アミノ基原料となる、シリコンアルコキシドに混合するアミノ化シリコンアルコキシドとしては、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン, N-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリエトキシシラ, (3-トリエトキシシリルプロピル-ジエチチレントリアミンなどが用いられ、好ましくは、3-アミノプロピルトリエトキシシランである。
アミノ化シリコンアルコキシドは、単独で、又は2種以上用いることができる。
「シリカ前駆体」である、アミノ基を有するシラン化合物(アミノ化シラン化合物)及びアミノ基を有しないシラン化合物の混合比率は特に限定されないが、アミノ基を有するシラン化合物とアミノ基を有しないシラン化合物の合計を100モル%としたとき、アミノ基を有するシラン化合が5〜40モル%、好ましくは5〜30モル%、さらに好ましくは5〜20モル%である。
混合比率をこの範囲にすると、合成されたアミノ化メソポーラス粒子への核酸、特にリボ核酸の吸着量が最大となるが、40モル%を超えると、アミノ化メソポースシリカ粒子の合成自体が困難となり、また、5モル%より少ない場合は、合成されたアミノ化メソポーラスシリカ粒子への核酸とくにリボ核酸の充分な吸着量が得られない。
また、混合比率の増加に伴い、リボ核酸(RNA)の吸着量は大きく変化しないが、デオキシリボ核酸(DNA)の吸着量は増加し、その結果、核酸選択的吸着特性(RNA/DNA値)はが低下する。したがって、核酸選択的吸着特性からすると、混合比率は、好ましくは5〜30モル%、より好ましくは5〜20モル%である。
なお、上記説明では、(1)ミセル含有液調製工程の後に、(2)シリカ前駆体添加工程を行うとしたが、これらの工程の順序、すなわち、メソ孔形成用有機化合物と溶剤とシリカ前駆体の混合順序は特に限定されない。
例えば、メソ孔形成用有機化合物と溶剤とを予め混合して、この混合溶液にシリカ前駆体を更に混合してもよいし、あるいは、メソ孔形成用有機化合物と溶剤とシリカ前駆体とを略同時に混合してもよい。
しかしながら、シリカ前駆体は、吸湿性および分解性も高いため、本製造方法では、メソ孔形成用有機化合物と溶剤とを予め混合して充分に攪拌をした後、この混合溶液にシリカ前駆体を更に混合することが好ましい。
(3)中間体形成工程
この工程は、前工程で得られたメソ孔形成用有機化合物とシリカ前駆体の混合液をゾルゲル反応させて有機物―シリカ中間体を形成する工程である。
すなわち、シリカ前駆体として用いたアミノ基を有するシラン化合物とアミノ基を有しないシランカ化物の混合物から、アミノ化シリカに変換する工程である。
本工程では、最初に、用いたシリカ前駆体のゾルゲル反応を促進させるために、酸あるいは塩基を、シリカ前駆体とメソ孔形成用有機化合物の混合溶液中に添加する必要がある。酸又は塩基の添加により、メソ孔形成用有機化合物が形成するミセルの周囲で、ゾル−ゲル反応を誘導し、水酸化シリコンが形成される。
酸あるいは塩基としては、特に限定されないが、例えば、酸として塩酸、硫酸、硝酸などがあり、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水などは上げられる。これらの溶剤の中でも、酸としては塩酸、塩基として水酸化ナトリウムが好適である。この2つは、ゾルゲル反応を促進させるのみでなく、目的物であるアミノ化メソポーラスシリカの合成収率を高くすることができる。
次に、前記のゾルゲル反応で形成された水酸化シリコンをシリカに変換するために、10℃〜70℃の温度条件下で、1〜48時間加熱する。好ましくは、室温(25℃付近)で12時間反応させる。この条件下で、溶液中の有機物との複合化が効率的に進行し、有機物−シリカ中間体が形成される。
(4)洗浄工程
この工程は、有機物を除去して、メソ孔を形成するために行う工程である。
通常のメソポーラスシリカ粒子の製造においては、焼成により、有機物の除去及びメソ孔の形成を行うのが一般的であるが、焼成によりシランに導入されたアミノ基が分解することを防止するために、本発明においては、洗浄により行うものである。
具体的には、前項(0037)で合成された有機物−シリカ中間体の有機物を除去するために、有機溶媒中で加熱還流し、目的物であるメソポーラスシリカ粒子を得るものである。
使用する有機溶媒としては特に限定されないが、メタノール、エタノール、n-プロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、N,N’-ジメチルアミドなどのアミド類などが用いられ、好ましくは、メタノール、エタノールであり、より好ましくは、エタノールである。エタノールは、メソ孔形成のための有機化合物であるイオン性界面活性剤やトリブロックコポリマーを十分に溶解させるために、有機物−シリカ中間体からの有機物の除去を効率的に行うことができる。
また加熱時間は、1〜48時間が好ましいが、より好ましくは48時間である。この条件下では、有機物−シリカ中間体からの有機物の溶解除去が、ほぼ100%達成されるためである。
上記方法によれば、細孔経2〜50nmを持ち、窒素吸脱着法による算出された比表面積と細孔体積が100〜1000m/g、0.5〜3.0cm/gを示し、粒子径が50〜300nm程度のアミノ化メソポーラスシリカ粒子を得ることができる。
3.RNAが吸着しているアミノ化メソポーラスシリカ粒子
本発明のリボ核酸(RNA)が吸着しているアミノ化メソポーラスシリカ粒子は、シリカ表面に存在するアミノ基に、RNAが静電相互作用で吸着されていることを特徴とする。
図2は、本発明に用いるリボ核酸固定用担体の模式図であり、平均細孔径2〜5nmサイズのメソ孔を持つメソポーラスシリカ粒子骨格中に、アミノ基を含有するアルキルシランを混合させて得られたシリカ粒子の表面にRNAが吸着した様子を模式的に示すものである。
「核酸」、「吸着」、「アミノ化メソポーラスシリカ粒子」については、上記1.の説明をそのまま適用できる。
次に、前述のRNA固体化用担体を用いた、RNAの分離・回収について、以下に記載する。
核酸(DNAあるいはRNA)をリン酸緩衝液、トリス緩衝液、酢酸緩衝液、HEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)、MOPS(2-Hydroxy-3- morpholino-1-propanesulfonic acid)緩衝液などの緩衝液中に溶解し、溶液中に合成したアミノ化メソポーラスシリカ粒子を混合する。その混合液を一晩室温で撹拌して、アミノ基の正電荷と核酸の負電荷を利用した静電的結合による、シリカ表面に核酸を吸着させる。その後、遠心分離によりシリカ−核酸複合体を回収する。核酸を溶解させる緩衝液としては、中性付近のリン酸緩衝液やトリス緩衝液が望ましい。特にトリス緩衝液が好適である。中性のトリス緩衝液は、溶解させた核酸の構造が最も安定となるからである。再度塩溶液中に懸濁して、アミノ基に結合した核酸分子を分離することができる。
核酸が吸着したアミノ化メソポーラスシリカ粒子からの核酸の回収は、以下の様に行う。
塩化ナトリウムや塩化カリウム、硫酸ナトリウムなどの塩を含む溶液中に、核酸吸着アミノ化メソポーラスシリカ粒子を懸濁する。1〜12時間室温で撹拌することで核酸を塩溶液中に回収することができる。この時に使用する塩溶液は、塩化ナトリウムや塩化カリウムが望ましい。その中で塩化ナトリウムが好適である。塩化ナトリウムは、安価でかつ、核酸の回収率を100%にすることができるからである。
回収したアミノ化メソポーラスシリカ粒子は、上述に記載した通りの手法により、再度、RNAの分離吸着剤として利用が可能である。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(実施例1:アミノ化メソポーラスシリカ粒子の合成)
エタノール(10mL)および蒸留水(76mL)の混合液中に、2.5gの塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを60℃中で1時間程度かけて十分に溶解させる。その後、室温で一晩混合させた。次に、トリエタノールアミンを2mL添加することで、溶液内を塩基性として、60℃で30分撹拌後すぐに、モル比11/2のテトラエトキシシラン/3−アミノプロピルトリエトキシシランの混合液を3分間程度かけて投入した。その後、50℃で20分および室温で12時間撹拌した。生成した沈殿物を6000回転30分の遠心で分取し、その沈殿を、蒸留水とエタノールで洗浄した。さらに沈殿物は、200mLのエタノール中に分散させ、12時間加熱還流を行い、有機テンプレートである塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを溶解除去した。アミノ化メソポーラスシリカ粒子分散液を、6000回転30分の遠心で分取し、室温で乾燥することで。目的物を完成させた。
また、メソ孔形成用有機化合物である塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを添加しない以外は、上記実施例と同様にして、メソ孔を持たないシリカ球状粒子(いわゆるStoberシリカ、非特許文献4参照)を合成した。
また、エタノール(10mL)および蒸留水(76mL)の混合液中に、2.5gの塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを60℃中で1時間程度かけて十分に溶解させた後、メソ孔の孔径サイズを調整するための溶剤(有機膨潤剤)として1,3,5-トリメチルベンゼン2.5gを加えた以外は、前記実施例に記載と同じ合成条件下において、細孔サイズを5nmに増加させたシリカ粒子を合成した。
さらに、前記実施例1において記載したメソポーラスシリカ粒子の合成法の条件下で、主に、エタノールと蒸留水の混合割合を変化させることにより、合成されるシリカ粒子の粒径サイズをコントロールして、粒子径が150nm及び300nmのシリカ粒子を合成した。
図3に、各種条件で合成したシリカ粒子の命名について記載する。
50nm粒子径(メソ孔なし)TEOS/アミノプロピル比=11/2(84.6%/15.4%モル比)をStoberとした。
また50nm粒子径(メソ孔あり)TEOS/アミノプロピル比=11/2(84.6%/15.4%モル比)をMCM-41c 11/2とし、そのシリカのアミノ基混合量を9/4(69.2%/30.8%モル比)、12/1(92.3%/7.7%モル比)と変化させたシリカを、それぞれMCM-41c 9/4、MCM-41c 12/1とした。
また、MCM-41c 12/1の細孔サイズを5mnに増加させたシリカをMCM-41c 12/1 5nmと命名した。
さらに、MCM-41c 11/2の粒子径を150nm、又は300nmに拡大したシリカを、それぞれMCM-41s 0.15,MCM-41s 0.30とした。
図4は、各種条件で合成したアミノ化メソポーラスシリカ粒子のSEM観察像を示す。
図4のSEM観察像より、合成されたメソポーラスシリカ粒子は球状で、粒径は50〜300nm程度であることがわかった。
得られたシリカ粒子について、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(日本分光製 JASCO MFT-2000 FT-IR spectrophotometer)を用いて分析した。
図5は、実施例で得られたアミノ化シリカ粒子のFT−IR図であり、いずれの粒子の場合も、シリカ由来のピーク(1100cm−1および3400cm−1)、アミノ基由来のピーク(1550cm−1)、及びプロピル基由来のピーク(2980cm−1付近)が観察され、全てのシリカ粒子にアミノプロピル鎖が含まれていることを示している。
(実施例2:各種アミノ化メソポーラスシリカ粒子への核酸の吸着)
各種アミノ化シリカ1.5mgを500μLの10mMトリス塩酸緩衝液pH7.0に十分に混合させた。そこに、核酸(DNA又はRNA:ともにシグマ-アルドリッチ社製)500μg/500μLの10mMトリス塩酸緩衝液pH7.0の溶液を加えて、6時間撹拌することで、アミノ化シリカ表面上に核酸を吸着させた。その後、12,000回転で10分間遠心することで、シリカを沈殿分離させ、上澄み溶液に残存する未吸着核酸の量を、紫外可視分光高度計(日本分光製V-560)を用い、波長260nmで測定した。
図6に、メソ孔有無によるシリカ粒子の核酸(DNA及びRNA)吸着に及ぼす影響についての結果を示す。
前記非特許文献1を参考に、過塩素酸ナトリウム(カオトロピック剤)を含む溶液中での核酸吸着量を測定した結果、Stoberシリカに対する吸着量は、DNAが約5μg/mg、RNAが約10μg/mgであった。
次にカオトロピック剤を含まない、トリス塩酸緩衝液中での核酸吸着を試みた結果、Stoberシリカに対する吸着量は、DNAが13.7μg/mgまで、RNAが63.2μg/mgまで、それぞれ吸着能力が増大することがわかった。
さらに、同様な粒子径50nmの、メソ孔(細孔径2.7nm)を有するシリカMCM-41c 11/2では、該シリカに対する吸着量は、DNAが54.1μg/mg、RNAが249.2μg/mgとなり、細孔の存在(表面積の増大)が、核酸の吸着量を約4倍に増加させることが判明した。
また、両アミノ化シリカの核酸選択的吸着特性は、RNA/DNA=4.6程度となり、大きな差は生じないこともわかった。
図7に、シリカの粒子径サイズが、核酸(DNAおよびRNA)吸着に及ぼす影響を記載する。
アミノ基のシリカ粒子に含有する量を一定(TEOS/アミノプロピル比=11/2)にし、粒子サイズを、50nmから150nm:MCM-41s 0.15及び300nm:MCM-41s 0.30に増大させた。その結果、DNAの吸着量に大きな変化は見られないが、RNAの吸着量が若干低下した。
この数値は、DNAとRNAの吸着量が細孔を持たないStoberシリカと比較すると、1.5〜2倍程度高い結果であるが、核酸選択的吸着特性は、粒子サイズ300nmのMCM-41s 0.30の場合、RNA/DNA=2.33となり、シリカMCM-41c 11/2の場合の4.61とでは、半分程度に減少することがわかった。
この結果から、DNAおよびRNAの両核酸に対して、アミノ化メソポーラスシリカ粒子は、粒径300nm程度まで高い吸着特性を示すが、核酸選択的吸着特性は、シリカ粒径50nm程度が最適であることがわかった。
さらに核酸吸着量の増加と核酸選択的吸着特性を改善するため、シリカ粒子内のアミノプロピル基の量と細孔サイズを変化させた。
図8に、アミノ化メソポーラスシリカ粒子のアミノ基の量、あるいは細孔サイズが、核酸(DNAおよびRNA)吸着に及ぼす影響を示す。
図8に示すとおり、アミノプロピル基の量を減少(MCM-41c 12/1)あるいは増加(MCM-41c 9/4)させた場合、前記のシリカ(MCM-41c 11/2)と比較して、いずれの場合も、同等の高いRNA吸着量(約280μg(RNA)/mgシリカ)であった。
また、アミノ基の含有量が低いMCM-41c 12/1の場合は、高いRNA吸着量を保持したまま、DNA吸着量が低下したため、核酸選択的吸着特性であるRNA/DNA値は11.08まで上昇することが明らかとなった。逆にアミノ基の含有量が多いシリカ(MCM-41c 9/4)の場合は、高いRNA吸着量を保持しているが、DNAの吸着量も大きく上昇した。その結果として、核酸選択的吸着特性が、大きく低下する(RNA/DNA=2.89)ことがわかった。
なお、図8には示していないが、アミノ基を有しないシリコンから構成されるメソポーラスシリカには、DNAもRNAも全く吸着しない結果(検出限界以下)となった。
次に、細孔径を2.7nmから5.3nmに増加させたところ(MCM-41c 12/1 5nm)、RNAの吸着量の変化はほとんど見られなかった(258μg(RNA)/mgシリカ)。しかし、DNAの吸着量が大きく上昇したため(99μg(DNA)/mgシリカ)、核酸選択的吸着特性は、若干低下する(RNA/DNA値=5.07)ことがわかった。
(実施例3:窒素吸着脱法による核酸吸着前後のアミノ化シリカの細孔構造評価)
前記のアミノ化シリカMCM-41c 12/1の高いRNAの選択的吸着特性(RNA/DNA値=11.08)の発現機構を明らかとするために、DNAおよびRNAそれぞれをアミノ化シリカMCM-41c 12/1に吸着させ、その細孔構造について窒素吸脱着法によって測定した。また解析結果より、比表面積、細孔体積、平均細孔径を算出した。
その結果を図9に示す。
核酸吸着前のアミノ化シリカの比表面積と細孔体積は、それぞれ、651m/g、1.28cm/gであった。RNA吸着後のシリカの場合には、162m/g、0.74cm/gとなり、両方の値とも大きく減少することがわかった。これは、RNA分子が、シリカの細孔内に吸着固定化されているためであることを示している。しかしDNA吸着の場合は、比表面積と細孔体積は、530m/g、1.27cm/gであり、上述の核酸吸着前と同等の値であった。この結果は、DNAのシリカ表面への吸着において、細孔内への進入はほとんどないと考えられる。
以上の通り、メソ孔を持つアミノ化シリカへの核酸の吸着様式は、DNAとRNAの場合では大きく異なることが判明した。
(実施例4:DNAとRNA混合溶液からのRNA濃縮効果)
酵母や細胞などに存在するDNAとRNAの質量比としては、通常RNAの方が多いとされている。そこで、実施例2において検討した結果得られた、高い核酸選択的吸着特性(RNA/DNA値=11.08)を示すアミノ化シリカであるMCM-41c 12/1を、RNA/DNA比を6/1とした溶液中に混合して、RNA濃縮効果について検討した。
最初にRNA/DNA=300μg/50μgの溶液を作成し、アミノ化シリカMCM-41c 12/1 1.5mgを核酸溶液中に投入した。その後、室温で6時間撹拌後、12,000回転10分間遠心することで、核酸吸着-シリカを回収した。その沈殿物に600mMの塩化ナトリウムを混合して、3時間室温で撹拌させた。再度、遠心分離によってシリカを除去して、上澄み溶液に残存する回収核酸の量を定量した。RNAとDNA混合溶液中のRNAの定量については、Promega社のQuantiFluor(登録商標)RNA systemを利用して行った。また、上記混合液中のDNAの定量は、Promega社のQuantiFluor(登録商標)dsDNA systemを使用した。
その結果を図10に示す。RNA/DNA=300μg/50μg(RNA/DNA=6.0)の溶液(Mixture)を、1.5mgアミノ化シリカMCM-41c 12/1に混合した後、遠心分離しシリカを分取した。上澄みに残存する核酸を定量したところ、148.4μgのRNAと4.0μgのDNAが(adsorption RNA/DNA=37.1)が残っていること、すなわち、151.6μgのRNAと56.0μgのDNAがシリカに吸着したことがわかった。
この結果、図8に示したアミノ化シリカ(MCM-41c 12/1)のRNA吸着量が(280μg(RNA)/mgシリカ)と比較すると、RNA吸着量が低下しており、DNAの溶液中の混合が、シリカとRNAの吸着にわずかに影響を与えていることが判明した。
次に上述の通り、分離した核酸吸着シリカを600mMの塩化ナトリウム溶液に再懸濁させ、吸着した核酸を溶出させた。その溶出量を定量した結果、70.8μgRNAと6.0μgDNAが分取できた。つまり、最終的に、RNA/DNA=300μg/50μg=6/1の溶液から、シリカ粒子を分離担体として、RNA/DNA=70.8μg/6μg=11.8/1までにRNAを選択的に濃縮することを達成した。
(実施例5:RNA吸着アミノ化シリカより溶出させたRNAの電気泳動評価)
アミノ化シリカに吸着させたRNAの切断や分解等が生じていないかについて、アガロースゲル電気泳動法により確認した。6%アガロース液から泳動用ゲルを作成した。ゲルローディングバッファーにRNAを溶解させ、アガロースゲルにローディングさせ、1×TAE bufferを泳動バッファーとして、100V,30分泳動した。その後、SYBR (登録商標) GreenI Nucleic Acid Gel Stain(バイオラッド)でRNAを染色し、紫外線照射下で泳動像を観察した。
図11に、アミノ化メソポーラスシリカ粒子への吸着・回収後のRNAのアガロース電気泳動図を示す。左レーンが吸着前のRNA標準品を、右レーンがRNA吸着・分離後回収したRNAを示す。図から判断できるように、回収したRNAは、標準RNAと同分子量に泳動像を示し、RNA分子の切断や分解は生じていないことが判断できる。
本発明により、核酸特にRNAを分離する場合に、RNAにダメージを与えるような溶媒等を使用することなく、迅速かつ安全に分離回収作業を行うことのできる担体を開発した。この方法で取得されたRNAは、その後のRT-PCRによる増幅やノザンブロッティングにより様々な解析に応用できる。この処方を利用することで、疾病やアレルギー分析など、RNAを利用するバイオテクノロジーの発展に大きく寄与するものと期待される。

Claims (6)

  1. カオトロピック剤を用いないリボ核酸の分離・回収用のリボ核酸固定化用担体であって、
    前記リボ核酸固定化用担体は、リボ核酸を選択的に吸着可能なメソ孔を有するアミノ化メソポーラスシリカ粒子からなり、
    前記アミノ化メソポーラスシリカが、アミノ基を有するシラン化合物とアミノ基を有しないシラン化合物の混合物から形成されたものであって、該記混合物中のアミノ基を有するシラン化合物とアミノ基を有しないシラン化合物の合計を100モル%としたとき、アミノ基を有するシラン化合物が5〜30モル%であり、
    前記アミノ化メソポーラスシリカ粒子の細孔径が2〜5nmの範囲にあることを特徴とするリボ核酸固定化用担体。
  2. 前記アミノ化メソポーラスシリカ粒子の粒子径が50nm〜300nmの範囲にあることを特徴とする請求項に記載のリボ核酸固定化用担体。
  3. リボ核酸を含有する液から、カオトロピック剤を用いることなく、固定化用担体にリボ核酸を吸着させてリボ核酸を分離・回収する方法であって、
    前記固体化用担体としてアミノ化メソポーラスシリカ粒子を用い、
    前記アミノ化メソポーラスシリカが、アミノ基を有するシラン化合物とアミノ基を有しないシラン化合物の混合物から形成されたものであって、該混合物中のアミノ基を有するシラン化合物とアミノ基を有しないシラン化合物の合計を100モル%としたとき、アミノ基を有するシラン化合物が5〜30モル%であり、
    前記アミノ化メソポーラスシリカ粒子の細孔径が2〜5nmの範囲にあることを特徴とするリボ核酸の分離回収方法。
  4. 前記アミノ化メソポーラスシリカの粒子径、細孔径、及びアミノ化量をコントロールすることにより、デオキシリボ核酸及びリボ核酸を含有する液からリボ核酸を特異的に吸着させることを特徴とする請求項に記載のリボ核酸の分離回収方法。
  5. 前記アミノ化メソポーラスシリカ粒子の粒子径が50nm〜300nmの範囲にあることを特徴とする請求項3又は4に記載のリボ核酸の分離回収方法。
  6. 水とメソ孔形成用有機化合物とを混合してミセルを形成し、ミセル含有液を調製する工程(1)と、
    前工程で得られたミセル含有液に、アミノ基を有するシラン化合物及びアミノ基を有しないシラン化合物を混合したシリカ前駆体を添加する工程(2)と、
    前記シリカ前駆体が添加された前記ミセル含有液をゾルゲル反応させて有機物−シリカ中間体を形成する工程(3)と、
    前記有機物―シリカ中間体を洗浄する工程(4)と、
    を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のリボ核酸固定化用担体の製造方法。
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