以下、本発明に係る多段変速機の実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1〜図13は、本発明に係る一実施の形態の多段変速機を示す図である。
まず、構成を説明する。
図1において、自動車等の車両に搭載される多段変速機1は、前進9速、後進1速の変速段を有する。
多段変速機1は、エンジン2から回転(動力)が入力される入力軸3と、入力軸3に入力された回転をディファレンシャル装置51に出力する出力軸4と、入力軸3と出力軸4との間の動力伝達経路において平行に設置される変速入力軸5およびカウンタ軸6と、入力軸3と変速入力軸5およびカウンタ軸6との設置された遊星歯車機構7とを備えている。
遊星歯車機構7は、外歯歯車であるサンギヤ7Sと、サンギヤ7Sと同軸上に配置される内歯車であるリングギヤ7Rと、サンギヤ7Sおよびリングギヤ7Rの双方に噛み合う外歯歯車である複数のピニオンギヤ7Pを回転自在に支持し、サンギヤ7Sと同軸上に配置されたキャリア7Cとを有する。キャリア7Cは、ピニオンギヤ7Pの公転回転を出力する。
これらサンギヤ7S、リングギヤ7Rおよびキャリア7Cは、相対回転自在に設けられた本発明の3つの回転要素を構成する。
遊星歯車機構7は、変速入力軸5と同軸に設置されている。入力軸3は、キャリア7Cに連結されている。変速入力軸5にはサンギヤ7Sが固定されている。また、変速入力軸5には入力ギヤ8が相対回転自在に設置されており、入力ギヤ8は、遊星歯車機構7のリングギヤ7Rに連結されている。ここで、入力軸3は、エンジン2のクランク軸あるいは、クランク軸に連結された軸から構成されてもよい。
カウンタ軸6には入力ギヤ9が固定されており、入力ギヤ9は、入力ギヤ8に噛み合っている。
これにより、エンジン2の回転は、入力軸3からキャリア7Cおよびサンギヤ7Sを介して変速入力軸5に伝達されるとともに、キャリア7Cからリングギヤ7R、入力ギヤ8、9を介してカウンタ軸6に伝達され、変速入力軸5およびカウンタ軸6は、遊星歯車機構7の歯車比に応じた回転数で回転する。
本実施の形態の入力軸3は、本発明の入力軸を構成し、出力軸4は、本発明の出力軸を構成する。変速入力軸5は、本発明の第1の中間軸を構成し、カウンタ軸6は、本発明の第2の中間軸を構成する。入力ギヤ8は、本発明の第1の入力ギヤを構成し、入力ギヤ9は、本発明の第2の入力ギヤを構成する。
変速入力軸5にはエンジン2側から順に1速−9速入力ギヤ10、2速−8速入力ギヤ11、3速−7速入力ギヤ12、4速−6速入力ギヤ13が設けられている。
1速−9速入力ギヤ10および2速−8速入力ギヤ11は、変速入力軸5に固定されており、3速−7速入力ギヤ12および4速−6速入力ギヤ13は、変速入力軸5に相対回転自在に設けられている。
カウンタ軸6にはエンジン2側から順に1速−9速カウンタギヤ14、2速−8速カウンタギヤ15、3速−7速カウンタギヤ16、4速−6速カウンタギヤ17が設けられている。
1速−9速カウンタギヤ14は、カウンタ軸6に相対回転自在に設けられ、1速−9速入力ギヤ10に噛み合っている。2速−8速カウンタギヤ15は、カウンタ軸6に相対回転自在に設けられ、2速−8速入力ギヤ11に噛み合っている。
3速−7速カウンタギヤ16は、カウンタ軸6に固定されており、3速−7速入力ギヤ12に噛み合っている。4速−6速カウンタギヤ17は、カウンタ軸6に固定され、4速−6速入力ギヤ13に噛み合っている。
変速入力軸5には出力ギヤ21が相対回転自在に設けられている。カウンタ軸6には出力ギヤ22が固定されており、出力ギヤ22は、出力ギヤ21に噛み合っている。
出力軸4にはリバースギヤ26が相対回転自在に設けられており、リバースギヤ26は、出力ギヤ22に噛み合っている。
多段変速機1は、低速段側摩擦クラッチ31および高速段側摩擦クラッチ32を備えている。
低速段側摩擦クラッチ31は、変速入力軸5に相対回転自在に設けられたクラッチドラム33と、クラッチドラム33の内周部に設けられた複数の低速段側摩擦プレート33Aとを備えており、クラッチドラム33には出力ギヤ21が設けられている。
低速段側摩擦クラッチ31は、変速入力軸5と同軸で、かつ、変速入力軸5と相対回転自在に設けられたアイドラ軸34と、クラッチドラム33の径方向内方においてアイドラ軸34に固定されたクラッチドラム35と、クラッチドラム35の外周部において低速段側摩擦プレート33Aと交互に設けられた低速段側摩擦プレート35Aとを備えている。
低速段側摩擦クラッチ31のクラッチドラム35には出力ギヤ23が設けられており、出力ギヤ23は、出力ギヤ21と相対回転自在に設けられている。
出力軸4には出力ギヤ24が固定されており、出力ギヤ24は、出力ギヤ23に噛み合っている。これにより、出力ギヤ23の回転は、出力ギヤ24に伝達され、出力軸4が回転される。
本実施の形態の出力ギヤ22は、本発明の第1の出力ギヤを構成し、出力ギヤ21は、本発明の第2の出力ギヤを構成し、出力ギヤ23は、本発明の第3の出力ギヤを構成する。
高速段側摩擦クラッチ32は、クラッチドラム35の内方において変速入力軸5に固定されたクラッチドラム36と、クラッチドラム36の外周部に設けられた複数の高速段側摩擦プレート36Aとを備えている。
高速段側摩擦クラッチ32は、上述したアイドラ軸34およびクラッチドラム35と、クラッチドラム35の内周部において高速段側摩擦プレート36Aと交互に設けられた高速段側摩擦プレート35Bとを備えている。
本実施の形態のアイドラ軸34およびクラッチドラム35は、低速段側摩擦クラッチ31および高速段側摩擦クラッチ32を兼用している。
クラッチドラム33、35は、クラッチドラム36の径方向に重ねて設置されている。すなわち、本実施の形態の低速段側摩擦クラッチ31は、高速段側摩擦クラッチ32の径方向に重ねて設置されている。
低速段側摩擦クラッチ31および高速段側摩擦クラッチ32を構成するクラッチドラム33、35、36は、変速入力軸5の軸線方向において、出力ギヤ21と出力ギヤ23との間に設置されている。本実施の形態の高速段側摩擦クラッチ32は、本発明の第1の摩擦係合要素を構成し、低速段側摩擦クラッチ31は、本発明の第2の摩擦係合要素を構成する。
低速段側摩擦クラッチ31に油圧が供給されると、低速段側摩擦プレート33Aが低速段側摩擦プレート35Aに係合する。これにより、出力ギヤ21と出力ギヤ23とが一体で回転する。
このため、カウンタ軸6の出力ギヤ22から出力ギヤ21に回転が伝達され、出力ギヤ21から低速段側摩擦クラッチ31を介して出力ギヤ23に回転が伝達される。出力ギヤ23は、出力ギヤ24を介して出力軸4に回転を伝達する。このように低速段側摩擦クラッチ31は、カウンタ軸6の回転を出力軸4に伝達する。
出力軸4にはファイナルドライブギヤ27が固定されており、ファイナルドライブギヤ27は、ディファレンシャル装置51のファイナルドリブンギヤ51Aに噛み合っている。
これにより、カウンタ軸6から出力軸4に回転が伝達されると、出力軸4からファイナルドライブギヤ27およびファイナルドリブンギヤ51Aを経てディファレンシャル装置51に動力が伝達され、ディファレンシャル装置51から左右に延びるドライブシャフト52L、52Rを経て図示しない左右の駆動輪に回転が伝達される。
低速段側摩擦クラッチ31から油圧が開放されると、低速段側摩擦プレート33Aが低速段側摩擦プレート35Aから離間して、出力ギヤ21と出力ギヤ23とが相対回転する。これにより、カウンタ軸6から出力軸4に回転が伝達されない。
このように低速段側摩擦クラッチ31は、アクチュエータから供給される油圧によって出力ギヤ22を、出力ギヤ21を介して出力ギヤ23に連結または解除することにより、カウンタ軸6から出力軸4に回転を伝達または遮断する。
一方、高速段側摩擦クラッチ32に油圧が供給されると、高速段側摩擦プレート35Bが高速段側摩擦プレート36Aに係合する。これにより、変速入力軸5と出力ギヤ23とが一体で回転する。
このため、変速入力軸5から高速段側摩擦クラッチ32を介して出力ギヤ23に回転が伝達され、出力ギヤ23から出力ギヤ24を介して出力軸4に伝達される。すなわち、高速段側摩擦クラッチ32は、変速入力軸5の回転を出力軸4に伝達する。
このように変速入力軸5から出力軸4に回転が伝達されると、上述したようにディファレンシャル装置51からドライブシャフト52L、52Rを経て左右の駆動輪に回転が伝達される。
高速段側摩擦クラッチ32から油圧が開放されると、高速段側摩擦プレート35Bが高速段側摩擦プレート36Aから離間して、変速入力軸5と出力ギヤ23とが相対回転する。これにより、変速入力軸5から出力軸4に回転が伝達されない。
このように高速段側摩擦クラッチ32は、アクチュエータから供給される油圧によって変速入力軸5を出力ギヤ23に連結または解除することにより、変速入力軸5から出力軸4に回転を伝達または遮断する。なお、低速段側摩擦クラッチ31および高速段側摩擦クラッチ32は、油圧ではなく、空気等によって係合および遮断されてもよく、アクチュエータとしては、電磁ソレノイド等によって係合および遮断されてもよい。
多段変速機1は、3つのシフトスリーブ41〜43を備えている。シフトスリーブ41は、変速入力軸5の軸線方向に移動自在、かつ回転方向に一体で回転するように変速入力軸5に設けられている。
シフトスリーブ42は、カウンタ軸6の軸線方向に移動自在、かつ回転方向に一体で回転するようにカウンタ軸6に設けられている。
シフトスリーブ43は、出力軸4の軸線方向に移動自在、かつ回転方向に一体で回転するように出力軸4に設けられている。
シフトスリーブ41〜43は、変速段を1速〜9速あるいはリバースのいずれかに変速するときに、図示しないアクチュエータから油圧が作用することにより、それぞれ変速入力軸5、カウンタ軸6および出力軸4の軸線方向に移動する。
具体的には、シフトスリーブ41〜43は、図示しないアクチュエータによって駆動される。このアクチュエータは、運転者によって操作されるシフトレバーがドライブレンジにシフトされた状態あるいはリバースレンジにシフトされた状態において、予めスロットル開度と車速とをパラメータとして設定された変速マップに基づいて制御される。
シフトスリーブ41は、図1中、中立位置に移動すると、3速−7速入力ギヤ12と変速入力軸5とを非連結状態にし、4速−6速入力ギヤ13と変速入力軸5とを非連結状態にする。
シフトスリーブ41は、図1中、右方向に移動すると、3速−7速入力ギヤ12と変速入力軸5とを連結状態にし、図1中、左方向に移動すると、4速−6速入力ギヤ13と変速入力軸5とを連結状態にする。
3速−7速入力ギヤ12と変速入力軸5とが連結されると、3速−7速入力ギヤ12と3速−7速カウンタギヤ16との間で動力が伝達可能になる。4速−6速入力ギヤ13と変速入力軸5とが連結されると、4速−6速入力ギヤ13と4速−6速カウンタギヤ17との間で動力が伝達可能になる。
シフトスリーブ42は、図1中、中立位置に移動すると、1速−9速カウンタギヤ14とカウンタ軸6とを非連結状態にし、2速−8速カウンタギヤ15とカウンタ軸6とを非連結状態にする。
シフトスリーブ42は、図1中、右方向に移動すると、1速−9速カウンタギヤ14とカウンタ軸6とを連結状態にし、図1中、左方向に移動すると、2速−8速カウンタギヤ15とカウンタ軸6とを連結状態にする。
1速−9速カウンタギヤ14とカウンタ軸6とが連結されると、1速−9速カウンタギヤ14と1速−9速入力ギヤ10との間で動力が伝達可能になる。2速−8速カウンタギヤ15とカウンタ軸6とが連結されると、2速−8速カウンタギヤ15と2速−8速入力ギヤ11との間で動力が伝達可能になる。
シフトスリーブ43は、図1中、左方向に移動すると、リバースギヤ26出力軸4とを非連結状態にする。シフトスリーブ43は、図1中、右方向に移動すると、リバースギヤ26と出力軸4とを連結状態にする。
リバースギヤ26と出力軸4とが連結されると、出力ギヤ22とリバースギヤ26の間で動力が伝達可能になり、カウンタ軸6の回転が出力軸4に伝達される。これにより、車両の後進走行時において、出力軸4は、車両の前進走行時と反対方向に回転する。
このように本実施の形態の多段変速機1は、変速入力軸5とカウンタ軸6とに設置された、1速−9速入力ギヤ10および1速−9速カウンタギヤ14からなるギヤ列、2速−8速入力ギヤ11および2速−8速カウンタギヤ15からなるギヤ列、3速−7速入力ギヤ12、3速−7速カウンタギヤ16からなるギヤ列および4速−6速入力ギヤ13および4速−6速カウンタギヤ17からなるギヤ列、出力ギヤ22およびリバースギヤ26からなるギヤ列を有する。
これに加えて、上述した複数のギヤ列を選択し、選択されたギヤ列によって変速入力軸5とカウンタ軸6との間およびカウンタ軸6と出力軸4との間で変速を行うシフトスリーブ41〜43を有する。
本実施の形態の1速−9速入力ギヤ10および1速−9速カウンタギヤ14と、2速−8速入力ギヤ11および2速−8速カウンタギヤ15と、3速−7速入力ギヤ12、3速−7速カウンタギヤ16と、4速−6速入力ギヤ13および4速−6速カウンタギヤ17とは、それぞれ本発明のギヤ列を構成し、シフトスリーブ41〜43は、本発明の同期噛み合い機構を構成する。
そして、これらギヤ列およびシフトスリーブ41〜43は、本発明の変速機構を構成する。
本実施の形態の多段変速機1は、低速段側摩擦クラッチ31および高速段側摩擦クラッチ32の一方を選択して、変速入力軸5と出力軸4またはカウンタ軸6と出力軸4とを選択的に連結することにより、出力軸4を変速入力軸5およびカウンタ軸6に選択的に連結し、変速機構のギヤ列のそれぞれに対して2つの変速段を構成する。
ここで、2つの変速段は、1速−9速の変速段、2速−8速の変速段、3速−7速の変速段、4速−6速の変速段の4つの組合せである。
次に、図2の共線図、図3の各変速段で使用される低速段側摩擦クラッチ、高速段側摩擦クラッチおよびシフトスリーブの組合せ図、および図4〜図13に示す各変速段における動力伝達経路を示す図を用いて、多段変速機1の動作を説明する。
(変速段が1速の場合の動力伝達経路)
図3に示すように、変速段を1速にする場合には、シフトスリーブ42が1速−9速カウンタギヤ14側にシフトされ、低速段側摩擦クラッチ31が係合される。
なお、以後の説明において、油圧アクチュエータから供給される油圧によって低速段側摩擦プレート33A、35Aが係合することを低速段側摩擦クラッチ31が係合すると表現し、油圧アクチュエータの油圧が開放されることによって低速段側摩擦プレート33A、35Aが離間することを低速段側摩擦クラッチ31が開放すると表現する。
また、油圧アクチュエータから供給される油圧によって高速段側摩擦プレート35B、36Aが係合することを高速段側摩擦クラッチ32が係合すると表現し、油圧アクチュエータの油圧が開放されることによって高速段側摩擦プレート35B、36Aが離間することを高速段側摩擦クラッチ32が開放すると表現する。
図4において、変速段を1速にする場合には、シフトスリーブ41、43を中立位置に移動させ、シフトスリーブ42を図4中、右方向に移動させる。これにより、1速−9速カウンタギヤ14がカウンタ軸6に連結される。
さらに、高速段側摩擦クラッチ32が開放されるとともに、低速段側摩擦クラッチ31が係合される。これにより、変速入力軸5と出力ギヤ23とが非連結となり、出力ギヤ21と出力ギヤ23とが連結されて出力ギヤ21と出力ギヤ23とが一体で回転可能になる。
エンジン2から入力軸3に回転が伝達されると、この回転が入力軸3から遊星歯車機構7のキャリア7Cに入力される。キャリア7Cに入力された回転は、ピニオンギヤ7Pからサンギヤ7Sを介して変速入力軸5に伝達され、ピニオンギヤ7Pからリングギヤ7Rおよび入力ギヤ8、9を介してカウンタ軸6に伝達される。これにより、変速入力軸5およびカウンタ軸6が回転する。
エンジン2から変速入力軸5に伝達された回転は、1速−9速入力ギヤ10から1速−9速カウンタギヤ14を介してカウンタ軸6に伝達される。
低速段側摩擦クラッチ31が係合されているので、カウンタ軸6の回転が出力ギヤ22、21から低速段側摩擦クラッチ31を介して出力ギヤ23に伝達され、出力ギヤ23は、出力ギヤ24を介して出力軸4に回転を伝達する。
カウンタ軸6から出力軸4に回転が伝達されると、出力軸4からファイナルドライブギヤ27およびファイナルドリブンギヤ51Aを経てディファレンシャル装置51に回転が伝達され、ディファレンシャル装置51からドライブシャフト52L、52Rを経て駆動輪に回転が伝達される。
変速段が1速の場合には、シフトスリーブ42を1速側にシフトし、かつ、低速段側摩擦クラッチ31を係合することで、サンギヤ7Sとリングギヤ7Rが1速段のギヤ比に応じた回転差で回転し(図2参照)、変速入力軸5およびカウンタ軸6が1速段に応じたギヤ比で回転する。これにより、エンジン2の回転数が1速段に応じたギヤ比で変速される。
(変速段が2速の場合の動力伝達経路)
図3に示すように、変速段を2速にする場合には、シフトスリーブ42が2速−8速カウンタギヤ15側にシフトされ、低速段側摩擦クラッチ31が係合される。
図5において、変速段を2速にする場合には、シフトスリーブ41、43を中立位置に移動させ、シフトスリーブ42を図5中、左方向に移動させる。これにより、2速−8速カウンタギヤ15がカウンタ軸6に連結される。
さらに、高速段側摩擦クラッチ32が開放されるとともに、低速段側摩擦クラッチ31が係合され、変速入力軸5と出力ギヤ23とが非連結となり、出力ギヤ21と出力ギヤ23とが連結されて出力ギヤ21と出力ギヤ23とが一体で回転可能になる。
エンジン2から入力軸3に回転が伝達されると、この回転が遊星歯車機構7によって変速入力軸5およびカウンタ軸6に伝達され、遊星歯車機構7から変速入力軸5に伝達された回転は、2速−8速入力ギヤ11から2速−8速カウンタギヤ15を介してカウンタ軸6に伝達される。
カウンタ軸6の回転は、出力ギヤ22、21から低速段側摩擦クラッチ31を介して出力ギヤ23に伝達され、出力ギヤ23の回転は、出力ギヤ24を介して出力軸4に伝達される。これにより、出力軸4からファイナルドライブギヤ27およびファイナルドリブンギヤ51Aを経てディファレンシャル装置51に回転が伝達される。
変速段が2速の場合には、シフトスリーブ42を2速側にシフトし、かつ、低速段側摩擦クラッチ31を係合することで、サンギヤ7Sとリングギヤ7Rが2速段のギヤ比に応じた回転差で回転し(図2参照)、変速入力軸5およびカウンタ軸6が2速段に応じたギヤ比で回転する。これにより、エンジン2の回転数が2速段に応じたギヤ比で変速される。
(変速段が3速の場合の動力伝達経路)
図3に示すように、変速段を3速にする場合には、シフトスリーブ41が3速−7速入力ギヤ12側にシフトされ、低速段側摩擦クラッチ31が係合される。
図6において、変速段を3速にする場合には、シフトスリーブ42、43を中立位置に移動させ、シフトスリーブ41を図6中、右方向に移動させる。これにより、3速−7速入力ギヤ12が変速入力軸5に連結される。
さらに、高速段側摩擦クラッチ32が開放されるとともに、低速段側摩擦クラッチ31が係合される。これにより、変速入力軸5と出力ギヤ23とが非連結となり、出力ギヤ21と出力ギヤ23とが連結されて出力ギヤ21と出力ギヤ23とが一体で回転可能になる。
エンジン2から入力軸3に回転が伝達されると、この回転が遊星歯車機構7によって変速入力軸5およびカウンタ軸6に伝達され、遊星歯車機構7から変速入力軸5に伝達された回転は、3速−7速入力ギヤ12から3速−7速カウンタギヤ16を介してカウンタ軸6に伝達される。
カウンタ軸6の回転は、出力ギヤ22、21から低速段側摩擦クラッチ31を介して出力ギヤ23に伝達され、出力ギヤ23の回転は、出力ギヤ24を介して出力軸4に伝達される。これにより、出力軸4からファイナルドライブギヤ27およびファイナルドリブンギヤ51Aを経てディファレンシャル装置51に回転が伝達される。
変速段が3速の場合には、シフトスリーブ41を3速側にシフトし、かつ、低速段側摩擦クラッチ31を係合することで、サンギヤ7Sとリングギヤ7Rが3速段のギヤ比に応じた回転差で回転し(図2参照)、変速入力軸5およびカウンタ軸6が1速段に応じたギヤ比で回転する。これにより、エンジン2の回転数が3速段に応じたギヤ比で変速される。
(変速段が4速の場合の動力伝達経路)
図3に示すように、変速段を4速にする場合には、シフトスリーブ41が4速−6速入力ギヤ13側にシフトされ、低速段側摩擦クラッチ31が係合される。
図7において、変速段を4速にする場合には、シフトスリーブ42、43を中立位置に移動させ、シフトスリーブ41を図7中、左方向に移動させる。これにより、4速−6速入力ギヤ13が変速入力軸5に連結される。
さらに、高速段側摩擦クラッチ32が開放されるとともに、低速段側摩擦クラッチ31が係合される。これにより、変速入力軸5と出力ギヤ23とが非連結となり、出力ギヤ21と出力ギヤ23とが連結されて出力ギヤ21と出力ギヤ23とが一体で回転可能になる。
エンジン2から入力軸3に回転が伝達されると、この回転が遊星歯車機構7によって変速入力軸5およびカウンタ軸6に伝達され、遊星歯車機構7から変速入力軸5に伝達された回転は、4速−6速入力ギヤ13から4速−6速カウンタギヤ17を介してカウンタ軸6に伝達される。
カウンタ軸6の回転は、出力ギヤ22、21から低速段側摩擦クラッチ31を介して出力ギヤ23に伝達され、出力ギヤ23の回転は、出力ギヤ24を介して出力軸4に伝達される。これにより、出力軸4からファイナルドライブギヤ27およびファイナルドリブンギヤ51Aを経てディファレンシャル装置51に回転が伝達される。
変速段が4速の場合には、シフトスリーブ41を4速側にシフトし、かつ、低速段側摩擦クラッチ31を係合することで、サンギヤ7Sとリングギヤ7Rが4速段のギヤ比に応じた回転差で回転し(図2参照)、変速入力軸5およびカウンタ軸6が4速段に応じたギヤ比で回転する。これにより、エンジン2の回転数が4速段に応じたギヤ比で変速される。
(変速段が5速の場合の動力伝達経路)
図3に示すように、変速段を5速にする場合には、シフトスリーブ41〜43が中立位置にシフトされ、低速段側摩擦クラッチ31および高速段側摩擦クラッチ32が共に係合される。
図8において、変速段を5速にする場合には、シフトスリーブ41〜43を中立位置に移動させる。これにより、各変速段の入力ギヤ10〜13およびカウンタギヤ14〜17が変速入力軸5およびカウンタ軸6に連結されずに、変速入力軸5およびカウンタ軸6と相対回転する。
また、低速段側摩擦クラッチ31が係合されていることで、出力ギヤ21と出力ギヤ23とが連結されて一体で回転可能になり、高速段側摩擦クラッチ32が係合されることで変速入力軸5と出力ギヤ23とが連結されて一体で回転可能になる。
エンジン2から入力軸3に回転が伝達され、この回転が遊星歯車機構7によって変速入力軸5およびカウンタ軸6に伝達されると、カウンタ軸6の回転が出力ギヤ22、21から低速段側摩擦クラッチ31を介して出力ギヤ23に伝達される。
これに加えて、変速入力軸5の回転が高速段側摩擦クラッチ32を介して出力ギヤ23に伝達される。
出力ギヤ23の回転は、出力ギヤ24を介して出力軸4に伝達されることにより、出力軸4からファイナルドライブギヤ27およびファイナルドリブンギヤ51Aを経てディファレンシャル装置51に回転が伝達される。
変速段が5速の場合には、シフトスリーブ41〜43を中立位置にシフトし、かつ、低速段側摩擦クラッチ31および高速段側摩擦クラッチ32を係合することで、サンギヤ7Sとリングギヤ7Rが5速段のギヤ比に応じた回転差で回転し(図2参照)、変速入力軸5およびカウンタ軸6が5速段に応じたギヤ比で回転する。これにより、エンジン2の回転数が5速段に応じたギヤ比で変速される。
すなわち、変速段が5速の場合にはサンギヤ7Sとリングギヤ7Rが出力ギヤ21と出力ギヤ22の歯車比に応じて回転され、エンジン2の回転数が5速に応じたギヤ比で変速される。
(変速段が6速の場合の動力伝達経路)
図3に示すように、変速段を6速にする場合には、シフトスリーブ41が4速−6速入力ギヤ13側にシフトされ、高速段側摩擦クラッチ32が係合される。
図9において、変速段を6速にする場合には、シフトスリーブ42、43を中立位置に移動させ、シフトスリーブ41を図9中、左方向に移動させる。これにより、4速−6速入力ギヤ13が変速入力軸5に連結される。
さらに、低速段側摩擦クラッチ31が開放されるとともに、高速段側摩擦クラッチ32が係合される。これにより、出力ギヤ21と出力ギヤ23とが非連結となり、変速入力軸5と出力ギヤ23とが連結されて変速入力軸5と出力ギヤ23とが一体で回転可能になる。
エンジン2から入力軸3に回転が伝達されると、この回転が遊星歯車機構7によって変速入力軸5およびカウンタ軸6に伝達され、遊星歯車機構7からカウンタ軸6に伝達された回転は、4速−6速カウンタギヤ17から4速−6速入力ギヤ13を介して変速入力軸5に伝達される。
変速入力軸5の回転は、高速段側摩擦クラッチ32を介して出力ギヤ23に伝達され、出力ギヤ23の回転は、出力ギヤ24を介して出力軸4に伝達される。これにより、出力軸4からファイナルドライブギヤ27およびファイナルドリブンギヤ51Aを経てディファレンシャル装置51に回転が伝達される。
変速段が6速の場合には、シフトスリーブ41を6速側にシフトし、かつ、高速段側摩擦クラッチ32を係合することで、サンギヤ7Sとリングギヤ7Rが6速段のギヤ比に応じた回転差で回転し(図2参照)、変速入力軸5およびカウンタ軸6が6速段に応じたギヤ比で回転する。これにより、エンジン2の回転数が6速段に応じたギヤ比で変速される。
(変速段が7速の場合の動力伝達経路)
図3に示すように、変速段を7速にする場合には、シフトスリーブ41が3速−7速入力ギヤ12側にシフトされ、高速段側摩擦クラッチ32が係合される。
図10において、変速段を7速にする場合には、シフトスリーブ42、43を中立位置に移動させ、シフトスリーブ41を図10中、右方向に移動させる。これにより、3速−7速入力ギヤ12がカウンタ軸6に連結される。
さらに、低速段側摩擦クラッチ31が開放されるとともに、高速段側摩擦クラッチ32が係合される。これにより、出力ギヤ21と出力ギヤ23とが非連結となり、変速入力軸5と出力ギヤ23とが連結されて変速入力軸5と出力ギヤ23とが一体で回転可能になる。
エンジン2から入力軸3に回転が伝達されると、この回転が遊星歯車機構7によって変速入力軸5およびカウンタ軸6に伝達され、遊星歯車機構7からカウンタ軸6に伝達された回転は、3速−7速カウンタギヤ16から3速−7速入力ギヤ12を介して変速入力軸5に伝達される。
変速入力軸5の回転は、高速段側摩擦クラッチ32を介して出力ギヤ23に伝達され、出力ギヤ23の回転は、出力ギヤ24を介して出力軸4に伝達される。これにより、出力軸4からファイナルドライブギヤ27およびファイナルドリブンギヤ51Aを経てディファレンシャル装置51に回転が伝達される。
変速段が7速の場合には、シフトスリーブ41を7速側にシフトし、かつ、高速段側摩擦クラッチ32を係合することで、サンギヤ7Sとリングギヤ7Rが7速段のギヤ比に応じた回転差で回転し(図2参照)、変速入力軸5およびカウンタ軸6が7速段に応じたギヤ比で回転する。これにより、エンジン2の回転数が7速段に応じたギヤ比で変速される。
(変速段が8速の場合の動力伝達経路)
図3に示すように、変速段を8速にする場合には、シフトスリーブ42が2速−8速カウンタギヤ15側にシフトされ、高速段側摩擦クラッチ32が係合される。
図11において、変速段を8速にする場合には、シフトスリーブ41、43を中立位置に移動させ、シフトスリーブ42を図11中、左方向に移動させる。これにより、2速−8速カウンタギヤ15がカウンタ軸6に連結される。
さらに、低速段側摩擦クラッチ31が開放されるとともに、高速段側摩擦クラッチ32が係合される。これにより、出力ギヤ21と出力ギヤ23とが非連結となり、変速入力軸5と出力ギヤ23とが連結されて変速入力軸5と出力ギヤ23とが一体で回転可能になる。
エンジン2から入力軸3に回転が伝達されると、この回転が遊星歯車機構7によって変速入力軸5およびカウンタ軸6に伝達され、遊星歯車機構7からカウンタ軸6に伝達された回転は、2速−8速カウンタギヤ15から2速−8速入力ギヤ11を介して変速入力軸5に伝達される。
変速入力軸5の回転は、高速段側摩擦クラッチ32を介して出力ギヤ23に伝達され、出力ギヤ23の回転は、出力ギヤ24を介して出力軸4に伝達される。これにより、出力軸4からファイナルドライブギヤ27およびファイナルドリブンギヤ51Aを経てディファレンシャル装置51に回転が伝達される。
変速段が8速の場合には、シフトスリーブ42を8速側にシフトし、かつ、高速段側摩擦クラッチ32を係合することで、サンギヤ7Sとリングギヤ7Rが8速段のギヤ比に応じた回転差で回転し(図2参照)、変速入力軸5およびカウンタ軸6が8速段に応じたギヤ比で回転する。これにより、エンジン2の回転数が8速段に応じたギヤ比で変速される。
(変速段が9速の場合の動力伝達経路)
図3に示すように、変速段を9速にする場合には、シフトスリーブ42が1速−9速カウンタギヤ14側にシフトされ、高速段側摩擦クラッチ32が係合される。
図12において、変速段を9速にする場合には、シフトスリーブ41、43を中立位置に移動させ、シフトスリーブ42を図12中、右方向に移動させる。これにより、1速−9速カウンタギヤ14がカウンタ軸6に連結される。
さらに、低速段側摩擦クラッチ31が開放されるとともに、高速段側摩擦クラッチ32が係合される。これにより、出力ギヤ21と出力ギヤ23とが非連結となり、変速入力軸5と出力ギヤ23とが連結されて変速入力軸5と出力ギヤ23とが一体で回転可能になる。
エンジン2から入力軸3に回転が伝達されると、この回転が遊星歯車機構7によって変速入力軸5およびカウンタ軸6に伝達され、遊星歯車機構7からカウンタ軸6に伝達された回転は、1速−9速カウンタギヤ14から1速−9速入力ギヤ10を介して変速入力軸5に伝達される。
変速入力軸5の回転は、高速段側摩擦クラッチ32を介して出力ギヤ23に伝達され、出力ギヤ23の回転は、出力ギヤ24を介して出力軸4に伝達される。これにより、出力軸4からファイナルドライブギヤ27およびファイナルドリブンギヤ51Aを経てディファレンシャル装置51に回転が伝達される。
変速段が9速の場合には、シフトスリーブ42を9速側にシフトし、かつ、高速段側摩擦クラッチ32を係合することで、サンギヤ7Sとリングギヤ7Rが9速段のギヤ比に応じた回転差で回転し(図2参照)、変速入力軸5およびカウンタ軸6が9速段に応じたギヤ比で回転する。これにより、エンジン2の回転数が9速段に応じたギヤ比で変速される。
(変速段がリバースの場合の動力伝達経路)
図3に示すように、変速段をリバースにする場合には、シフトスリーブ43がリバースギヤ26側にシフトされ、高速段側摩擦クラッチ32が係合される。
図13において、変速段をリバースにする場合には、シフトスリーブ41、42を中立位置に移動させ、シフトスリーブ43を図13中、右方向に移動させる。これにより、リバースギヤ26が出力軸4に連結される。
さらに、低速段側摩擦クラッチ31が開放されるとともに、高速段側摩擦クラッチ32が係合される。これにより、出力ギヤ21と出力ギヤ23とが非連結となり、変速入力軸5と出力ギヤ23とが連結されて変速入力軸5と出力ギヤ23とが一体で回転可能になる。
エンジン2から入力軸3に回転が伝達されると、この回転が遊星歯車機構7によって変速入力軸5およびカウンタ軸6に伝達される。
本実施の形態の多段変速機1は、リバース時において、リバースギヤ26が出力軸4に連結されると、サンギヤ7Sが逆回転するように設計されている(図2のリバースの共線図参照)。
これにより、カウンタ軸6の回転が出力ギヤ22およびリバースギヤ26を介して出力軸4に伝達される。また、変速入力軸5が逆回転し、その回転が出力ギヤ23に伝達され、出力ギヤ23の回転は、出力ギヤ24を介して出力軸4に伝達される。これにより、出力軸4が車両の前進走行時に回転方向と逆方向に回転する。
このため、出力軸4からファイナルドライブギヤ27およびファイナルドリブンギヤ51Aを経てディファレンシャル装置51に逆方向の回転が伝達される。
変速段がリバースの場合には、シフトスリーブ43をリバースギヤ26側にシフトし、かつ、高速段側摩擦クラッチ32を係合することで、サンギヤ7Sとリングギヤ7Rがリバース段のギヤ比に応じた回転差で回転し(図2参照)、変速入力軸5およびカウンタ軸6がリバース段に応じたギヤ比で回転する。これにより、エンジン2の回転数がリバース段に応じたギヤ比で変速される。
このように本実施の形態の多段変速機1は、エンジン2から回転が入力される入力軸3と、入力軸3に入力された回転を出力する出力軸4と、入力軸3と出力軸4との間の動力伝達経路において平行に設置される変速入力軸5およびカウンタ軸6と、変速入力軸5とカウンタ軸6とに設置された1速−9速入力ギヤ10および1速−9速カウンタギヤ14からなるギヤ列、2速−8速入力ギヤ11および2速−8速カウンタギヤ15からなるギヤ列、3速−7速入力ギヤ12、3速−7速カウンタギヤ16からなるギヤ列および4速−6速入力ギヤ13および4速−6速カウンタギヤ17からなるギヤ列と、これらのギヤ列を選択し、選択されたギヤ列によって変速入力軸5とカウンタ軸6との間で変速を行うシフトスリーブ41〜43とを備えている。
さらに、本実施の形態の多段変速機1は、相対的に回転するサンギヤ7S、キャリア7Cおよびリングギヤ7Rを有し、入力軸3の回転をサンギヤ7Sおよびリングギヤ7Rによって変速入力軸5とカウンタ軸6とに伝達する遊星歯車機構7と、変速入力軸5とカウンタ軸6との間に設置され、変速入力軸5の回転を出力軸4に伝達する高速段側摩擦クラッチ32と、カウンタ軸6と出力軸4との間に設置され、カウンタ軸6の回転を出力軸4に伝達する低速段側摩擦クラッチ31要素とを備えている。
これに加えて、本実施の形態の多段変速機1は、変速入力軸5およびカウンタ軸6が、シフトスリーブ41、42によって選択されたギヤ列のギヤ比に応じた回転数で回転され、高速段側摩擦クラッチ32および低速段側摩擦クラッチ31の一方を選択して、変速入力軸5と出力軸4またはカウンタ軸6と出力軸4とを選択的に連結することにより、出力軸4を変速入力軸5またはカウンタ軸6に選択的に連結し、ギヤ列のそれぞれに対して1速と9速等のような2つの変速段を構成する。
すなわち、本実施の形態の多段変速機1によれば、遊星歯車機構7により入力軸3の回転を変速入力軸5とカウンタ軸6とに伝達し、かつ変速入力軸5とカウンタ軸6とを、シフトスリーブ41〜43によって選択されたギヤ列のギヤ比に応じた回転数で回転させることができる。
そして、高速段側摩擦クラッチ32と低速段側摩擦クラッチ31とを選択的に連結することで出力軸4を変速入力軸5またはカウンタ軸6に選択的に連結させ、ギヤ列に対してそれぞれ2つの変速段を構成することができる。
この結果、多段変速機1の軸長の増加や変速段の切換え要素の増加を抑制し、多段変速機1の簡素化および小型化を図りつつ変速段数を増加させることができる。
本実施の形態の多段変速機1では、ギヤ列の数をN個とした場合に、N段となる高速段側摩擦クラッチ32と低速段側摩擦クラッチ31との係合を切換えることで、高速段側摩擦クラッチ32の係合時にN段、低速段側摩擦クラッチ31の係合時にN段のギヤ比を選択でき、合計で2N段のギヤ比を選択できる。
これに加えて、高速段側摩擦クラッチ32と低速段側摩擦クラッチ31とを共に係合することで、1段のギヤ比を選択でき、合計で2N+1段のギヤ比を選択できる。
本実施の形態のギヤ列の数は、4組であるので、従来の多段変速機のように動力伝達経路を切換えるためにプラネタリギヤの切換えを行うための複数の摩擦係合要素やこの摩擦係合要素を駆動するアクチュエータを不要にして、合計で9段の変速段を成立させることができる。
また、本実施の形態の多段変速機1によれば、カウンタ軸6に固定された出力ギヤ22と、変速入力軸5に相対回転自在に設けられ、出力ギヤ22に噛み合う出力ギヤ21と、出力ギヤ21と同軸かつ、変速入力軸5と相対回転自在に設けられ、出力軸4に回転を伝達する出力ギヤ23とを備えている。
さらに、高速段側摩擦クラッチ32は、変速入力軸5を出力ギヤ23に連結または解除することにより、変速入力軸5から出力軸4に回転を伝達または遮断し、低速段側摩擦クラッチ31は、出力ギヤ22を、出力ギヤ21を介して出力ギヤ23に連結または解除することにより、カウンタ軸6から出力軸4に回転を伝達または遮断する。
これにより、変速入力軸5の回転とカウンタ軸6の回転とを共通の出力ギヤ23によって出力軸4に伝達でき、変速段の切換え要素の増加を抑制しつつ、変速段数を増加できる。この結果、多段変速機1をより効果的に簡素化および小型化できる。
また、本実施の形態の多段変速機1によれば、シフトスリーブ41〜43を中立位置にし、低速段側摩擦クラッチ31と高速段側摩擦クラッチ32とを同時に係合することにより、5速の変速段を成立させている。
これにより、出力ギヤ21〜23、低速段側摩擦クラッチ31および高速段側摩擦クラッチ32によって5速の変速段を容易に成立でき、変速に使用する要素の増加を抑制しつつ、多段変速機1の変速段数を増加させることができる。この結果、多段変速機1をより効果的に簡素化および小型化できる。
また、本実施の形態の多段変速機1によれば、低速段側摩擦クラッチ31が高速段側摩擦クラッチ32の径方向に重ねて設置されており、低速段側摩擦クラッチ31および高速段側摩擦クラッチ32が出力ギヤ22と出力ギヤ23との間に設置されている。
これにより、多段変速機1の軸長の増加を抑制しつつ、低速段側摩擦クラッチ31および高速段側摩擦クラッチ32を多段変速機1に追加でき、多段変速機1をより効果的に小型化できる。
また、本実施の形態の多段変速機1によれば、遊星歯車機構7が変速入力軸5と同軸に設置され、変速入力軸5に、遊星歯車機構7のリングギヤ7Rに連結される入力ギヤ8が相対回転自在に設置され、カウンタ軸6に、入力ギヤ8と噛み合う入力ギヤ9が固定されている。
これにより、径方向の寸法が大きい遊星歯車機構7を変速入力軸5と同軸に配置することにより、多段変速機1の径方向の寸法を縮小でき、多段変速機1の簡素化および小型化を図りつつ、多段変速機1の変速段数を増加できる。
なお、本実施の形態の多段変速機1によれば、車両に搭載されているが、これに限定されるものではなく、船舶、鉄道車両等に適用されてもよく、これらに限定されるものでもない。
本発明の実施の形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。