JP6653678B2 - シール部材 - Google Patents

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Description

本発明は、摺動性を有するシール部材に関する。
ゴムは、自身のゴム弾性(反発力)によってシール性を確保できるため、シール部材に適している。この一方で、ゴムは、粘弾性的性質から摩擦係数が高いため、摺動性を有さない。したがって、相対的な摺動を伴う摺動部材間をゴムによって封止するためには、ゴムの摺動性を向上させる必要がある。
一般的に、ゴムの摺動性を向上させるために樹脂などの潤滑剤が利用される。例えば、ゴムの表面を潤滑剤で被覆することによってゴムの摺動性を向上させることができる(例えば、特許文献1参照)。また、ゴムに潤滑剤を分散させることによってゴムの摺動性を向上させる技術も存在する。
特開平07−227935号公報
フッ素系ゴムは、耐熱性、耐油性、耐薬品性に優れ、ニトリルゴムなどの他の合成ゴムとは一線を画す性能を有している。このため、フッ素系ゴムで形成されたシール部材は、様々な用途に利用することが可能である。そして、摺動部材間を封止するためのシール部材にもフッ素系ゴムを用いることが望まれる。
しかしながら、フッ素系ゴムは、他の合成ゴムとは異なり、一般的な潤滑剤に対する滑性が非常に高い。このため、フッ素系ゴムについて、上記のような潤滑剤を用いることによってゴムの摺動性を向上させる技術をそのまま適用することは困難である。
つまり、フッ素系ゴムの表面を潤滑剤で被覆したとしても、潤滑剤は、フッ素系ゴムの表面に良好に保持されないため、フッ素系ゴムの表面から剥離しやすい。また、フッ素系ゴムの摺動性を向上させるために充分な量の潤滑剤をフッ素系ゴムに分散させることは困難である。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、シール性と摺動性とを兼ね備えるリング状のシール部材を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るシール部材は、リング状に形成され、摺動面を有する。
上記シール部材は、100重量部のフッ素系ゴムと、0.5重量部以上50重量部以下の粒子状樹脂と、を含有する。
上記粒子状樹脂は、上記フッ素系ゴムに対して相溶性を有する相溶部と、上記フッ素系ゴムに対して滑性を有する滑性部と、を含む。
上記摺動面を加圧面として測定されるショアA硬度が80以上である。
上記摺動面に上記粒子状樹脂が存在していてもよい。
このシール部材では、フッ素系ゴムによってゴム弾性が得られるため、良好なシール性を実現することができる。
また、粒子状樹脂の滑性部の作用によってシール部材に高い摺動性を付与することができる。また、このシール部材では、粒子状樹脂の相溶部の作用によってシール部材の表面から粒子状樹脂が離脱しにくいため、高い耐久性を有する。
したがって、このシール部材は、シール性と摺動性とを兼ね備える。
上記フッ素系ゴムに上記粒子状樹脂が分散していてもよい。
この構成では、フッ素系ゴムに分散された粒子状樹脂の作用によって、摺動面が摩耗した場合にもシール部材の摺動性が確保される。
上記粒子状樹脂は、40重量%以上のシリコーンを含有していてもよい。
この構成により、シール部材の摺動性が更に向上する。
上記粒子状樹脂は、シリコーン−アクリル共重合体で形成されていてもよい。
この構成により、シール部材における高い摺動性が長期間維持される。
上記シール部材は、上記フッ素系ゴムに分散されたカーボンを更に含有していてもよい。
この構成により、適切な硬度のシール部材が得られる。
上記摺動面が摺動する相手材の表面粗さRzが、JIS B 0601−1982で、0.5z以上18.0z以下であってもよい。
上記摺動面の表面粗さRzが、JIS B 0601−1982で、0.5z以上10.0z以下であってもよい。
上記摺動面にパーティングラインが存在しないことが好ましい。
これらの構成のシール部材では、更に良好なシール性及び摺動性が得られる。
以上述べたように、本発明によれば、シール性と摺動性とを兼ね備えるリング状のシール部材を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るシール部材用組成物の断面を示す模式図である。 上記シール部材用組成物の粒子状樹脂の断面を示す模式図である。 成形時における上記シール部材用組成物の断面を示す模式図である。 成形時における上記シール部材用組成物の断面を示す模式図である。 上記シール部材用組成物を成形して得られるシール部材の部分断面を示す模式図である。 上記シール部材の摺動性試験の結果の一例を示すグラフである。 リング状に形成された上記シール部材の平面図である。 上記シール部材の図5AのA−A'線に沿った断面図である。 上記シール部材をシャフト及びハウジングに組み込む操作を示す断面図である。 上記シール部材がシャフト及びハウジングに組み込まれた状態を示す断面図である。 上記シール部材の赤外吸光分析の結果として得られた赤外線スペクトルの一例を示すグラフである。 上記シール部材の摺動性試験の結果の一例を示すグラフである。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
1.概略構成
図1は、本実施形態に係るシール部材用組成物10の部分断面を示す模式図である。シール部材用組成物10は、シール部材20(図3C、5A〜7参照)を製造するための原料として構成される。つまり、シール部材用組成物10を成形することによりシール部材20が得られる。
シール部材用組成物10は、未架橋のフッ素系ゴム成分11と、粒子状樹脂12と、を含有する。粒子状樹脂12は、粒子状(粉末状)であり、フッ素系ゴム成分11の中に均一に分散している。粒子状樹脂12は、シール部材用組成物10の潤滑成分として構成される。
図2は、粒子状樹脂12の断面を拡大して示す模式図である。なお、図1,2では、粒子状樹脂12が球状に示されているが、粒子状樹脂12の形状は任意に変更可能である。また、図1,2では、すべての粒子状樹脂12を同様の形状で示しているが、各粒子状樹脂12の形状は相互に異なっていてもよい。
粒子状樹脂12は、フッ素系ゴムに対して相溶性を有する相溶部12aと、フッ素系ゴムに対して滑性を有する滑性部12bと、を含む。なお、図2では、相溶部12aと滑性部12bとが一方向に分離した状態で示されているが、粒子状樹脂12はこのような構成に限定されない。
例えば、相溶部12a及び滑性部12bは、粒子状樹脂12の全体にわたって分布していてもよい。また、粒子状樹脂12は、滑性部12bの中に相溶部12aが分散した構成であっても、反対に相溶部12aの中に滑性部12bが分散した構成であってもよい。
ここで、滑性部12bのみで構成され、つまり相溶部12aを有さない粒子状樹脂を想定する。この粒子状樹脂は、フッ素系ゴム成分11に対して相溶性を有さず、つまりフッ素系ゴム成分11に対して滑性のみを有するため、フッ素系ゴム成分11から分離しようとする。
したがって、このような粒子状樹脂は、フッ素系ゴム成分11の中に分散させようとしても、フッ素系ゴム成分11の中に留まることができず、フッ素系ゴム成分11の外に弾き出されてしまう。このため、このような粒子状樹脂をフッ素系ゴム成分11の中に分散させることは困難である。
この点、本実施形態に係る粒子状樹脂12は、滑性部12bに加え、相溶部12aを有する。したがって、粒子状樹脂12は、相溶部12aの作用によってフッ素系ゴム成分11の中に留まることができる。このため、粒子状樹脂12は、フッ素系ゴム成分11の中に均一に分散させることが可能である。
なお、シール部材用組成物10の製造過程において、粒子状樹脂12をフッ素系ゴム成分11の中に分散させる前に、粒子状樹脂12に対して少量のフッ素系ゴム成分11を練り混んでおくことが好ましい。これにより、フッ素系ゴム成分11に対する粒子状樹脂12の分散性が更に向上する。
図3A〜3Cは、シール部材用組成物10を用いたシール部材20の製造方法を模式的に示す断面図である。シール部材用組成物10は任意の方法でシール部材20として成形される。シール部材用組成物10の成形方法としては、例えば、射出成形法や押出成形法やプレス成形法などが挙げられる。
図3Aは、金型Mにシール部材用組成物10が充填された状態を示している。粒子状樹脂12は、金型M内においてフッ素系ゴム成分11の中に均一に分散されている。金型Mの形状はシール部材20の形状に応じて決定され、シール部材用組成物10から任意の形状のシール部材20を製造することができる。
図3Bは、金型Mに充填されたシール部材用組成物10が加熱されている状態を示している。シール部材用組成物10を加熱することにより、フッ素系ゴム成分11の架橋(一次加硫)が進行する。これに伴い、フッ素系ゴム成分11の中に分散している粒子状樹脂12は、滑性部12bの作用によって表面に向けて移動する。
これにより、粒子状樹脂12の少なくとも一部がフッ素系ゴム成分11の表面に滲み出す。フッ素系ゴム成分11の表面に滲み出した粒子状樹脂12は、相互に結合して一体化することにより、フッ素系ゴム成分11を被覆する表層部23(図3C参照)を形成する。
フッ素系ゴム成分11の架橋が更に進行すると、粒子状樹脂12の移動が生じなくなる。フッ素系ゴム成分11の架橋が完了した後に、金型M内から成形体を取り出す。この成形体に、必要に応じて二次加硫を行うことにより、シール部材20が得られる。
図3Cは、シール部材用組成物10を成形することにより製造されたシール部材20を示している。シール部材20は、本体部22と、表層部23と、を具備する。本体部22は、シール部材20の形状を構成している。表層部23は、本体部22の表面を被覆している。
本体部22は、シール部材用組成物10に含まれるフッ素系ゴム成分11が架橋することにより生成されたフッ素系ゴム21を主成分として形成されている。また、本体部22では、架橋時にフッ素系ゴム成分11の表面に滲み出さずに残った粒子状樹脂12がフッ素系ゴム21に分散している。
フッ素系ゴム21は、耐熱性、耐油性、耐薬品性に優れる。このため、本体部22がフッ素系ゴム21を主成分として形成されたシール部材20は、耐熱性、耐油性、耐薬品性に優れる。したがって、シール部材20では、様々な用途において高い耐久性が得られる。
表層部23は、粒子状樹脂12が結合したものであるため、フッ素系ゴム21に対して相溶性を有する相溶部12aと、フッ素系ゴム21に対して滑性を有する滑性部12bと、を含む。表層部23は、典型的には、相溶部12aと滑性部12bとがその全体にわたって分布した構成を有する。
シール部材20の表面に形成された表層部23は、自己潤滑成分である滑性部12bの作用によって高い摺動性を有する。したがって、シール部材20では、表層部23が固体潤滑膜として機能することにより、フッ素系ゴム21のみでは得られない高い摺動性を得ることとができる。
また、表層部23は、相溶部12aの作用によって、表層部23を本体部22(フッ素系ゴム21)に対する高い付着力が得られる。これにより、表層部23は、本体部22から剥離しにくくなるため、高い耐久性を有する。したがって、シール部材20では、長期間にわたって高い摺動性が持続する。
更に、シール部材20では、成形時に粒子状樹脂12を滲み出させることで表層部23を形成するため、複雑な形状であっても容易に本体部22の表面の全領域に隙間なく表層部23を形成することができる。これにより、シール部材20では、より確実に高い摺動性が得られる。
加えて、シール部材20では、本体部22に粒子状樹脂12が分散しているため、本体部22の表面には粒子状樹脂12が存在している。したがって、シール部材20では、表層部23が摩耗し、本体部22が露出した場合であっても、摺動性を確保することができる。
なお、シール部材20では、表層部23による高い摺動性が得られれば充分である場合には、本体部22に粒子状樹脂12が分散していなくてもよい。つまり、シール部材用組成物10に含まれるすべての粒子状樹脂12が、シール部材20の表層部23を形成していてもよい。
また、シール部材20では、その表面に粒子状樹脂12が存在していればよく、粒子状樹脂12によって膜状の表層部23が形成されていることは必須ではない。つまり、シール部材20は、本体部22と表層部23とが明確に区別可能な構成を有していなくてもよい。
更に、シール部材20では、その表面に粒子状樹脂12を存在させられればよく、成形時に粒子状樹脂12を滲み出させる構成は必須ではない。この場合、シール部材20では、表面と内部とで粒子状樹脂12の濃度が同程度であっても、表面よりも内部の方が粒子状樹脂12の濃度が高くてもよい。
2.詳細構成
2.1 シール部材20
2.1.1 表層部23及び粒子状樹脂12
シール部材20の表層部23及び粒子状樹脂12を構成する樹脂は、フッ素系ゴム21に対して相溶性を有する相溶部12aと、フッ素系ゴム21に対して滑性を有する滑性部12bと、を含む樹脂であればよい。このような樹脂における相溶部12a及び滑性部12bの構成は、特定のものに限定されない。
一例として、表層部23及び粒子状樹脂12を構成する樹脂としては、良好な摺動性を有するとともに、表面エネルギーが低いシリコーンを主骨格とするシリコーン系樹脂を用いることができる。シリコーン系樹脂では、シリコーンの主骨格が、自己潤滑成分となり、滑性部12bとして機能する。
シリコーン系樹脂を構成するシリコーンとしては、特定の種類に限定されないが、具体例として、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーンなどが挙げられる。
また、シリコーン系樹脂では、相溶部12aとして機能する構成がシリコーンの主骨格に結合した構成とすることができる。相溶部12aとして機能する構成は、フッ素系ゴム21に対して相溶性を有するものであればよく、例えば、各種官能基や各種樹脂(例えばアクリル樹脂)を用いて実現可能である。
シリコーン系樹脂は、充分な滑性を得るために、40重量%以上のシリコーンを含むことが好ましい。これにより、表層部23において充分に高い摺動性を得ることができる。また、シール部材20の成形時に、充分な量の粒子状樹脂12が滲み出すことにより、表層部23が良好に形成される。
フッ素系ゴム21に対して相溶性が付与されたシリコーン系樹脂は、シール部材20の用途などに応じて、市販品から選択することも可能である。例えば、このようなシリコーン系樹脂は、日信化学工業株式会社製のシリコーン−アクリル共重合体であるシャリーヌ(登録商標)シリーズから選択可能である。
2.1.2 フッ素系ゴム21
シール部材20の本体部22を構成するフッ素系ゴム21は、フッ素原子を含むゴムであれば特定のものに限定されない。フッ素系ゴム21としては、例えば、ビニリデンフルオライドを主成分とするフッ化ビニリデン系フッ素ゴム(FKM)などを利用可能である。
より具体的に、二元系のフッ素系ゴム21としては、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ系、テトラフルオロエチレン−プロピレン系などを利用可能である。
三元系のフッ素系ゴム21としては、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系、ビニリデンフルオライド−パーフルオロアルキルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系、テトラフルオロエチレン−プロピレン−ビニリデンフルオライド系などを利用可能である。これらの三元系のフッ素系ゴム21は、一般的に耐寒性に優れる。
また、フッ素系ゴム21としては、単一の種類を用いる構成のほか、複数の種類を組み合わせて用いる構成とすることもできる。フッ素系ゴム21の重合度は、シール部材20の用途などに応じて、適切なシール性や摺動性が得られるように決定可能である。
2.1.3 添加剤
シール部材20の本体部22は、必要に応じて、フッ素系ゴム21及び粒子状樹脂12以外の添加剤を含んでいてもよい。例えば、一例として、本体部22は、硬度を増加させるための硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤としては、例えば、粉末状のカーボン(カーボンブラックなど)を用いることができる。
また、本体部22は、硬化剤以外にも、例えば、充填剤、補強材、顔料などの各種添加剤を含んでいてもよい。
2.2 シール部材用組成物10
2.2.1 フッ素系ゴム成分11及び粒子状樹脂12
シール部材用組成物10におけるフッ素系ゴム成分11及び粒子状樹脂12の構成は、シール部材20の構成に応じて決定される。シール部材用組成物10における粒子状樹脂12の含有量は、フッ素系ゴム成分11を100重量部として0.5重量部以上50重量部以下である。
粒子状樹脂12の含有量を0.5重量部以上とすることにより、成形時に充分な量の粒子状樹脂12が滲み出ることにより、良好な表層部23が形成される。また、粒子状樹脂12の含有量を50重量部以下に留めることにより、シール部材20においてフッ素系ゴム21の作用による良好なシール性が得られやすくなる。
また、これと同様の観点から、シール部材用組成物10における粒子状樹脂12の含有量は、フッ素系ゴム成分11を100重量部として1重量部以上20重量部以下であることが好ましい。これにより、更に良好な摺動性及びシール性を兼ね備えるシール部材20が得られる。
2.2.2 添加剤
シール部材用組成物10における添加剤も、シール部材20の構成に応じて決定される。つまり、シール部材用組成物10は、上記のような硬化剤を含んでいてもよい。また、シール部材用組成物10は、硬化剤以外にも、例えば、充填剤、補強材、顔料などの各種添加剤を含んでいてもよい。
また、シール部材用組成物10は、フッ素系ゴム成分11を架橋させるための架橋剤を予め含んでいてもよい。架橋剤としては、特定のものに限定されず、例えば、市販品の架橋剤から選択可能である。架橋剤の種類としては、例えば、ポリアミン架橋系、ポリオール架橋系、パーオキサイド架橋系などを利用可能である。
更に、シール部材用組成物10は、加工助剤を含んでいてもよい。加工助剤としては、例えば、ステアリン酸などの脂肪酸や、脂肪酸金属塩などが挙げられる。しかし、加工助剤は、フッ素系ゴム成分11の架橋時における粒子状樹脂12の移動を妨げ、つまり表層部23の形成を妨げる場合がある。
このような観点から、加工助剤の量は、少ないことが好ましく、具体的には、フッ素系ゴム成分11を100重量部として3重量部以下に留めることが好ましい。また、シール部材用組成物10は加工助剤を実質的に含まないことが更に好ましく、具体的に、加工助剤の量は0.1重量部以下に留めることが更に好ましい。
加えて、シール部材用組成物10は、必要に応じて、例えば、架橋助剤、遅延剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
3.実施例及び比較例
以下、本実施形態の実施例及び比較例について説明する。しかし、本発明は以下に説明する構成に限定されない。なお、以下に説明するいずれの実施例及び比較例においても同一のフッ素系ゴム成分11を用いている。
3.1 実施例1−1〜1−5,比較例1−1〜1−12
3.1.1 実施例1−1に係るサンプル
実施例1−1では、シール部材用組成物10の粒子状樹脂12として、日信化学工業株式会社製のシャリーヌ(登録商標)シリーズのうちシリコーンの含有量が70重量%のもの(潤滑剤1)を用いた。実施例1−1では、粒子状樹脂12の含有量を、フッ素系ゴム成分11を100重量部として20重量部とした。
実施例1−1では、上記の構成のシール部材用組成物10を混練りした後に、170℃で10分の条件での一次加硫によって外径20mmの球状に成形した。続いて、この球状の成形体に、230℃で4時間の条件での二次加硫を行った。これにより、シール部材20のサンプルを得た。
3.1.2 実施例1−2〜1−5に係るサンプル
実施例1−2〜1−5では、実施例1−1で用いたシール部材用組成物10と粒子状樹脂12の構成が異なるシール部材用組成物10を用いてシール部材20のサンプルを作製した。実施例1−2〜1−5におけるシール部材20のサンプルの作製条件は、実施例1−1と同様とした。
実施例1−2〜1−5では、粒子状樹脂12(潤滑剤1)の含有量が実施例1−1とは異なる。具体的に、100重量部のフッ素系ゴム成分11に対する粒子状樹脂12の含有量は、実施例1−2では10重量部とし、実施例1−3では5重量部とし、実施例1−4では1重量部とし、実施例1−5では0.5重量部とした。
3.1.3 比較例1−1〜1−12に係るサンプル
比較例1−1〜1−12では、本実施形態に係るシール部材用組成物10とは異なる構成のシール部材用組成物を用いてシール部材のサンプルを作製した。比較例1−1〜1−12におけるシール部材のサンプルの作製条件は、実施例1−1と同様とした。
比較例1−1,1−2では、粒子状樹脂12(潤滑剤1)の含有量が本実施形態より少ない。具体的に、比較例1−1では、100重量部のフッ素系ゴム成分11に対する粒子状樹脂12の含有量を0.1重量部とした。比較例1−2では、粒子状樹脂12の含有量が0重量部であり、つまり粒子状樹脂12を用いていない。
比較例1−3では、本実施形態の粒子状樹脂12に代えてシリコーンオイル(潤滑剤2)を用いた。ところが、シリコーンオイルは、フッ素系ゴム成分11に対する滑性が高いため、フッ素系ゴム成分11と混ざり合わずに分離してしまった。したがって、比較例1−3では、シール部材のサンプルが得られなかった。
比較例1−4〜1−12では、本実施形態の粒子状樹脂12とは異なる構成の潤滑剤を含むシール部材用組成物を用いてシール部材のサンプルを作製した。比較例1−4〜1−12で用いた潤滑剤は、相溶部12a及び滑性部12bの少なくとも一方を含まない点において粒子状樹脂12の構成とは異なる。
比較例1−4〜1−6ではそれぞれ、一般的な滑材である潤滑剤3〜5を用いた。比較例1−7〜1−12ではそれぞれ、滑性機能を有する一般的な加工助剤(離型剤など)である潤滑剤6〜11を用いた。具体的に、比較例1−4〜1−12で用いた潤滑剤3〜11は、以下に示すものである。
潤滑剤3:オレイン酸アミド(ライオン株式会社製「アーモスリップCP」)
潤滑剤4:テフロン(登録商標)パウダー
潤滑剤5:脂肪酸カルシウム塩を主体とした混合滑剤(エスアンドエスジャパン株式会社製「ストラクトールWB 16」)
潤滑剤6:脂肪酸亜鉛塩(川口工業株式会社製「エクストンL−2」)
潤滑剤7:脂肪酸金属塩と脂肪酸グリセリドの混合剤(川口工業株式会社製「エクストンL−7」)
潤滑剤8:ステアリン酸アルミニウム及びステアリン酸カルシウム
潤滑剤9:パラフィン系特殊ワックス(精工化学株式会社製「サンタイトS」)
潤滑剤10:メチルセルロース
潤滑剤11:ステアリルアミン(花王株式会社製「ファーミン80T」)
3.1.4 各サンプルの評価
実施例1−1〜1−5,比較例1−1,1−2,1−4〜1−12で得られたサンプルについて摺動性試験を行った。摺動させる相手材としては、硬質クロムメッキが施され、表面粗さRaが0.4μmの板材を用いた。この相手材で各サンプルを挟んで40%圧縮させた状態で摺動性試験を行った。
摺動性試験では、相手材で挟まれたサンプルを試験機(株式会社島津製作所製オートグラフ)に設置し、サンプルの中央部を相手材の表面に沿った方向に50mm/minの速度で押し込んだときの抵抗値(荷重)を測定した。これにより、例えば、図4に示すようなグラフが得られる。
図4は、摺動性試験の結果の一例を示すグラフである。図4には、実施例1−2に係るサンプル及び比較例1−2に係るサンプルについて得られた結果について示している。実施例1−2に係るサンプルでは、摺動開始後の抵抗値が比較例1−2に係るサンプルよりも低いことがわかる。
各サンプルの摺動性は、サンプルを10mm押し込んだときの抵抗値によって評価を行った。各サンプルの摺動性の評価基準は、以下に示すA〜Dとした。
A:抵抗値が40N以下である。
B:抵抗値が50N以下である。
C:抵抗値が70N以下である。
D:抵抗値が70Nを超える。
表1に、実施例1−1〜1−5,比較例1−1,1−2,1−4〜1−12に係るサンプルの摺動性の評価結果を示す。なお、シール部材のサンプルが得られなかった比較例1−3については摺動性の評価を行っていない。また、表1には、各サンプルについての各成分の含有量(重量部)が示されている。
Figure 0006653678
表1に示すように、100重量部のフッ素系ゴム成分11に対する粒子状樹脂12の含有量を0.5重量部以上とした実施例1−1〜1−5に係るサンプルではいずれも、抵抗値が70N以下となり、良好な摺動性が得られた。したがって、本実施形態のシール部材20において良好な摺動性が得られることが確認された。
また、100重量部のフッ素系ゴム成分11に対する粒子状樹脂12の含有量を1重量部以上とした実施例1−1〜1−4では、抵抗値が50N以下となり、より良好な摺動性が得られた。したがって、シール部材用組成物10における粒子状樹脂12の含有量を1重量部以上とすることが好ましい。
更に、100重量部のフッ素系ゴム成分11に対する粒子状樹脂12の含有量を5重量部以上とした実施例1−1〜1−3では、抵抗値が40N以下となり、特に良好な摺動性が得られた。したがって、シール部材用組成物10における粒子状樹脂12の含有量を5重量部以上とすることが特に好ましい。
この一方で、本実施形態の構成とは異なる比較例1−1,1−2,1−4〜1−12に係るサンプルではいずれも、抵抗値が70Nを超えており、良好な摺動性が得られなかった。したがって、本実施形態に係るシール部材20では、比較例に係るいずれのシール部材よりも高い摺動性が得られることが確認された。
3.2 実施例2−1〜2−9
実施例2−1〜2−9では、カーボンの含有量が異なるシール部材用組成物10を実施例1−1と同様の条件で成形して、シール部材20のサンプルを作製した。そして、各サンプルについて、上記の実施例1−1〜1−5,比較例1−1,1−2,1−4〜1−12と同様に、摺動性の評価を行った。
表2に、実施例2−1〜2−9に係るサンプルの摺動性の評価結果を示す。また、表2には、各サンプルについてのカーボン及び潤滑剤1の含有量(重量部)が示されている。なお、実施例2−1では、カーボンの含有量が0重量部であり、つまりカーボンを用いていない。
Figure 0006653678
表2に示すように、実施例2−1〜2−9に係るサンプルではいずれも、抵抗値が50N以下となり、良好な摺動性が得られた。また、カーボンの含有量を40重量部以上とした実施例2−5〜2−9では、抵抗値が40N以下となり、特に良好な摺動性が得られた。
4.シール部材20の構成例
4.1 概要
本実施形態に係るシール部材20の一例として、シール部材20が高硬度のシールリングとして構成される例について説明する。具体的に、本構成例に係るシール部材20では、摺動面となる表層部23の表面を加圧面として測定されるショアA硬度が80以上である。
つまり、シール部材20のショアA硬度が80以上となるように、シール部材用組成物10におけるカーボンの量などの組成が決定される。このようなシール部材用組成物10をリング状に成形することにより、高硬度のシール部材20が得られる。
高硬度のシール部材20は、例えば、油圧機器のオイルシールに好適に利用可能である。つまり、油圧機器では、高い油圧による変形や損傷に伴うシール性の低下を抑制するために、高硬度のシール部材20を利用することが有効である。また、シール部材20は、往復摺動する部材間のシールに特に適している。
高硬度のシール部材20を効果的に利用可能な油圧機器としては、往復摺動するシャフト及びハウジングによって構成されるプーリを有する無段変速機(CVT)が挙げられる。以下、図5A〜7を参照しながら、高硬度のシール部材20が無段変速機に用いられる例について説明する。
4.2 無段変速機用のシール部材20
図5Aは、無段変速機に用いられるシール部材20の平面図である。図5Bは、シール部材20の図5AのA−A'線に沿った断面図である。シール部材20は、中心軸Eを中心とするリング状に形成されている。また、シール部材20は、本体部22と、本体部22を被覆する表層部23と、を有する。
図6は、シャフト30及びハウジング40にシール部材20を組み込む操作を示す断面図である。シャフト30は、その全周にわたって設けられた溝部31を有する。また、ハウジング40には、シャフト30が挿通される挿通孔が設けられている。
シール部材20の内径は、シャフト30の溝部31の底面32の径よりもやや小さい。このため、シール部材20は、径方向にやや拡張させられた状態で、シャフト30の溝部31に嵌め込まれる。これにより、シール部材20の内周面がシャフト30の溝部31の底面32に密着する。
そして、シール部材20が溝部31に装着されたシャフト30が、ハウジング40に端面42側からに挿入される。シャフト30の溝部31に装着されたシール部材20の外径は、ハウジング40の内径よりもやや大きい。このため、シール部材20を径方向に圧縮変形させる必要がある。
ハウジング40には、端面42と内周面41とを接続する面取部43が設けられている。このため、シャフト30をハウジング40に端面42側から挿入していくと、やがてシール部材20がハウジング40の端面42まで到達し、シール部材20がハウジング40の面取部43に当接する。
この状態で、更にシャフト30に押圧力を加えて、そのままシャフト30をハウジング40に押し込む。これにより、シール部材20は、ハウジング40の面取部43から径方向内向きの押圧力を受けることにより径方向に圧縮変形しながらハウジング40内に向けて進入する。
そして、シール部材20がハウジング40の内周面41に到達し、更にシャフト30を所定位置まで押し込むことにより、シャフト30のハウジング40への挿入が完了する。このように、シャフト30をハウジング40に押し込む操作のみによって、シャフト30をハウジング40にスムーズに挿入することができる。
本実施形態では、シール部材20が表層部23で覆われているため、シャフト30をハウジング40に挿入する際におけるシール部材20とハウジング40との間の摺動抵抗が低減される。これにより、シャフト30のハウジング40への挿入が容易になる。
具体的に、フッ素系ゴム21のみで形成されたシール部材と比較して、シール部材20では、ハウジング40の面取部43を通過する際の摺動抵抗が30%以上低減された。また、シール部材20では、ハウジング40の内周面41に沿って摺動する際の摺動抵抗も30%以上低減された。
図7は、シール部材20がシャフト30及びハウジング40に組み込まれた状態を示す断面図である。図7に示すシール部材20は、シャフト30とハウジング40との間に挟まれて径方向に圧縮変形している。したがって、シール部材20には、径方向に拡張しようとする弾性力が発生している。
このため、シール部材20は、径方向に拡張しようとする弾性力によって、内周面をシャフト30の溝部31の底面32に押し付け、外周面をハウジング40の内周面41に押し付けている。これにより、シール部材20は、シャフト30とハウジング40との間を封止することができる。
シャフト30がハウジング40に対して往復摺動する際には、シール部材20の外周面がハウジング40の内周面41に対して接触を保ちながら摺動することにより、シャフト30とハウジング40との間のシール性が維持される。シール部材20では、本体部22がゴム弾性を有するため、高いシール性が得られる。
また、シール部材20では、ハウジング40に接触する摺動面である外周面が表層部23で構成されている。このため、シール部材20の外周面とハウジング40の内周面41との間の摺動抵抗が小さくなる。これにより、シャフト30がハウジング40に対して往復摺動する際の駆動損失が低減される。
なお、シール部材20では、成形時に形成され得るパーティングラインが、摺動面である外周面に存在しないことが好ましい。これにより、シール部材20の外周面とハウジング40の内周面41との間の摺動抵抗が更に小さくなる。なお、シール部材20の摺動面は、外周面に限定されず、内周面や側面であってもよい。
4.3 実施例
4.3.1 サンプルの作製
実施例に係るシール部材20のサンプルAと、フッ素系ゴム21のみでサンプルAと同様の形状に形成された比較例に係るシール部材のサンプルBと、を作製した。
図8は、サンプルAの表面の赤外吸光分析の結果として得られた赤外線スペクトルである。図8に示す赤外線スペクトルには、波数が1100cm−1付近の破線で囲んだ領域にシリコーンの吸光度のピークが見られる。これにより、サンプルAの表面に粒子状樹脂12が存在していることが確認された。
4.3.2 摺動性評価
サンプルA,Bについて摺動性評価を行った。摺動性評価には、内径が161mmのハウジング40と、これに対応するシャフト30と、を用いた。つまり、この摺動性評価では、ハウジング40を相手材とし、サンプルA,Bの外周面をハウジング40の内周面41に沿って摺動させる。
摺動性評価では、各サンプルを装着したシャフト30を、オイル中でハウジング40に対して摺動させる際の抵抗値(荷重)を測定した。オイルの温度は80℃とした。また、オイルの油圧は1〜6MPaの範囲で変化させ、1MPa、3MPa、6MPaにおける抵抗値を測定した。
図9は、抵抗値の測定結果を示すグラフである。図9の横軸は油圧(MPa)を示し、縦軸は抵抗値の相対値を示している。図9に示すように、いずれの油圧においても、実施例に係るシール部材20のサンプルの方が、比較例に係るシール部材のサンプルよりも30%以上低い抵抗値となった。
これにより、シール部材20では、表層部23の作用によって、摺動抵抗を大幅に低減できることが確認された。また、シール部材20では、高い油圧においても摺動抵抗を低減する効果が維持されることが確認された。これは、シール部材20のショアA硬度を80以上としていることによるものと考えられる。
4.3.3 表面粗さRzの検討
相手材の表面粗さRz、及びシール部材20の摺動面の表面粗さRzについて、特に優れた摺動性及びシール性が得られる条件の検討を行った。本実施形態では、表面粗さRzが、JIS規格(JIS B 0601−1982)に準拠して規定される。


(1)相手材の表面粗さRz
相手材として内周面41の表面粗さRzが異なるハウジング40を用意した。具体的に、相手材の表面粗さRzは、0.1z、0.5z、3.0z、6.0z、8.0z、13.0z、18.0z、24.0zとした。シール部材20の摺動面である外周面の表面粗さRzは6.0zとした。
各相手材に対するシール部材20の摺動性評価を行った。摺動性評価では、上記と同様に抵抗値を測定した。この結果、表面粗さRzが0.5z以上の相手材では特に低い抵抗値が得られた。このように、シール部材20では、相手材の表面粗さRzが大きくても優れた摺動性が得られることがわかる。
この一方で、表面粗さRzが0.1zの相手材では、抵抗値がやや高くなった。これは、相手材の表面が平滑過ぎるため、シール部材20の摺動面との間に油膜が形成されにくくなったためであると考えられる。この観点から、相手材の表面粗さRzは、0.5z以上であることが好ましい。
また、各相手材とシール部材20との間のシール性評価を行った。この結果、相手材の表面粗さRzが0.1zから13.0zまでの領域において、特に高いシール性が得られた。このように、シール部材20では、相手材の表面粗さRzが大きい領域まで、優れたシール性が得られることがわかる。
この一方で、表面粗さRzが18.0zの相手材ではシール性がやや低くなり、表面粗さRzが24.0zの相手材ではシール性が更にやや低くなった。この観点から、相手材の表面粗さRzは、18.0z以下であることが好ましく、13.0z以下であることが更に好ましい。
また、上記のとおり、シール部材20では、相手材の表面粗さRzが大きくても、優れた摺動性及びシール性が得られやすい。したがって、シール部材20を用いることにより、相手材を平滑化するための鏡面研磨などの処理の必要がなくなる。これにより、相手材の製造コストを低減することができる。
(2)シール部材20の摺動面の表面粗さRz
摺動面の表面粗さRzが異なるシール部材20を作製した。具体的に、シール部材20の摺動面の表面粗さRzは、0.1z、0.5z、1.0z、3.0z、6.0z、8.0z、10.0z、15.0zとした。相手材の表面粗さRzは6.0zとした。
相手材に対する各シール部材20の摺動性評価を行った。摺動性評価では、上記と同様に抵抗値を測定した。この結果、摺動面の表面粗さRzが0.5z以上のシール部材20では特に低い抵抗値が得られた。このように、シール部材20では、摺動面の表面粗さRzが大きくても優れた摺動性が得られることがわかる。
この一方で、摺動面の表面粗さRzが0.1zのシール部材20では、抵抗値がやや高くなった。これは、シール部材20の摺動面が平滑過ぎるため、相手材との間に油膜が形成されにくくなったためであると考えられる。この観点から、シール部材20の摺動面の表面粗さRzは、0.5z以上であることが好ましい。
また、相手材と各シール部材20との間のシール性評価を行った。この結果、シール部材20の摺動面の表面粗さRzが0.1zから8.0zまでの領域において、特に高いシール性が得られた。このように、シール部材20では、摺動面の表面粗さRzが大きい領域まで、優れたシール性が得られることがわかる。
この一方で、摺動面の表面粗さRzが10.0zのシール部材20ではシール性がやや低くなり、摺動面の表面粗さRzが15.0zのシール部材20ではシール性が更にやや低くなった。この観点から、シール部材20の摺動面の表面粗さRzは、10.0z以下であることが好ましく、8.0z以下であることが更に好ましい。
また、上記のとおり、シール部材20では、摺動面の表面粗さRzが大きくても、優れた摺動性及びシール性が得られやすい。したがって、シール部材20では、摺動面を平滑化するための鏡面研磨などの処理の必要がなくなる。これにより、シール部材20の製造コストを低減することができる。
4.4 高硬度のシール部材20の他の用途
シール部材20は、油圧機器以外にも、高硬度が要求される用途に非常に有用である。
例えば、シール部材20は、オイルシールではなく、ガスシールにも有効である。このため、シール部材20は、例えば、コンプレッサの回転軸のシールや、ガスバルブのシールや、ガスレギュレータのシールなどに好適に利用可能である。
また、シール部材20は、ガソリンなどの燃料のシールにも有効である。このため、シール部材20は、例えば、燃料の噴射ポンプなどに好適に利用可能である。
更に、シール部材20は、産業用ロボットといった装置においてダストシールや防滴シールとしても好適に利用可能である。
5.その他の実施形態
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
10…シール部材用組成物
11…フッ素系ゴム成分
12…粒子状樹脂
12a…相溶部
12b…滑性部
20…シール部材
21…フッ素系ゴム
22…本体部
23…表層部
30…シャフト
31…溝部
40…ハウジング
M…金型

Claims (7)

  1. リング状に形成され、摺動面を有するシール部材であって、
    100重量部のフッ素系ゴムと、1重量部以上20重量部以下の粒子状樹脂と、を含有し、
    前記粒子状樹脂は、前記フッ素系ゴムに対して相溶性を有するアクリル成分と、前記フッ素系ゴムに対して滑性を有するシリコーン成分と、を含むシリコーン−アクリル共重合体からなり、
    前記摺動面に前記粒子状樹脂が存在し、
    前記フッ素系ゴムに前記粒子状樹脂が分散し、
    前記摺動面を加圧面として測定されるショアA硬度が80以上である
    シール部材。
  2. 請求項1に記載のシール部材であって、
    前記粒子状樹脂は、40重量%以上のシリコーンを含有する
    シール部材。
  3. 請求項2に記載のシール部材であって、
    前記粒子状樹脂は、シリコーン−アクリル共重合体で形成されている
    シール部材。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載のシール部材であって、
    前記フッ素系ゴムに分散されたカーボンを更に含有する
    シール部材。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載のシール部材であって、
    前記摺動面が摺動する相手材の表面粗さRzが、JIS B 0601−1982で、0.5z以上18.0z以下である
    シール部材。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載のシール部材であって、
    前記摺動面の表面粗さRzが、JIS B 0601−1982で、0.5z以上10.0z以下である
    シール部材。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載のシール部材であって、
    前記摺動面にパーティングラインが存在しない
    シール部材。
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