以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.回路装置の第1の構成例
図1に、本実施形態の回路装置の第1の構成例を示す。回路装置20は、物理量トランスデューサー12からの検出信号SDの検出処理を行う検出回路60と、検出回路60からの入力信号SA1をA/D変換するA/D変換部100と、を含む。なお、A/D変換部100は検出回路60の後段に設けられていればよく、検出回路60の出力信号がA/D変換部100に直接入力される必要はない。また回路装置20は、A/D変換部100の出力をデジタル処理する処理部110と、A/D変換のモードを切り替える切り替え制御部120と、を含む。
A/D変換部100は、第1のA/D変換回路102と第2のA/D変換回路104とを含む。第2のA/D変換回路104は、A/D変換方式、サンプリングレート、分解能及び入力ダイナミックレンジの少なくとも1つが第1のA/D変換回路102と異なる。そして、第1のモードでは、第1のA/D変換回路102がA/D変換部100の入力信号SA1をA/D変換し、第2のモードでは、第2のA/D変換回路104がA/D変換部100の入力信号SA1をA/D変換する。
具体的には、物理量トランスデューサー12は、種々の物理量(例えば角速度や角加速度、加速度、温度、圧力、磁気、或いはこれらに等価な物理量等)を検出して電気信号に変換する素子である。
A/D変換部100の入力信号SA1は、図1の構成例では検出回路60の出力信号である。但し、これに限定されるものではなく、例えば検出回路60とA/D変換部100の間に更に回路が設けられ、その回路の出力信号をA/D変換部100の入力信号SA1としてもよい。
第1のA/D変換回路102と第2のA/D変換回路104は、A/D変換方式、サンプリング周波数、分解能及び入力ダイナミックレンジのうち1つのみが異なってもよいし、複数が異なってもよいし、全てが異なってもよい。
A/D変換方式としては、例えばデルタシグマ変調型、逐次比較型、二重積分型、フラッシュ型、パイプライン型等を想定できる。サンプリング周波数は、A/D変換回路が入力信号をサンプリングする周波数である。A/D変換回路がA/D変換値を出力する周波数が同じであっても、サンプリング周波数が異なる場合がある。例えば逐次比較型では通常はサンプリング周波数と出力周波数は同じであり、デルタシグマ変調型ではサンプリング周波数は出力周波数よりも高い。分解能は、A/D変換値の1LSBに対応する物理量の大きさ、或いは、A/D変換値の1LSBに対応する入力信号の大きさである。或いは、A/D変換値のビット数を分解能と呼ぶ。入力ダイナミックレンジは、A/D変換される入力信号の範囲である。
第1のモードと第2のモードは、切り替え制御部120により切り替えられる。即ち、切り替え制御部120が、第1のモードを指示するモード制御信号MDSを出力した場合、A/D変換部100は第1のA/D変換回路102で入力信号をA/D変換し、切り替え制御部120が、第2のモードを指示するモード制御信号MDSを出力した場合、A/D変換部100は第2のA/D変換回路104で入力信号をA/D変換する。
以上のように、第1、第2のA/D変換回路102、104が設けられ、第1、第2のモードにおいて、それぞれ第1、第2のA/D変換回路102、104がA/D変換を行うことで、低消費電力化と高精度化を両立できる。即ち、第1、第2のA/D変換回路102、104は、A/D変換方式、サンプリングレート、分解能及び入力ダイナミックレンジの少なくとも1つが異なることで、消費電力とA/D変換の精度(例えば分解能、リニアリティ、S/N、時間分解能等)が異なる。そして、これらのA/D変換回路の切り替えにより、必要に応じて高精度なA/D変換と低消費電力なA/D変換を切り替えることが可能になる。
例えばジャイロセンサー(物理量トランスデューサー12が角速度センサー素子)では、角速度を積分して角度を得るため、角速度の誤差が積分されて角度の誤差が大きくなる。そのため、デルタシグマ変調型のA/D変換回路等を用いて高精度の角速度を取得することが望ましい。しかしながら、アプリケーションや環境、状況等によっては、高精度に測定する必要がなく消費電力を抑えること望ましい場合がある(例えば、角速度がゼロに近い状態が続く時間がある、角速度の変化が小さい時間がある等)。本実施形態では、このような場合に第2のモードに切り替えることで低消費電力化でき、アプリケーションや環境、状況等に応じて高精度な測定と低消費電力化を両立できる。
また本実施形態では、A/D変換部100は、A/D変換部100の入力ノードNA1と第1のA/D変換回路102の入力ノードNB1との間に設けられる第1のスイッチ素子SW1と、A/D変換部100の入力ノードNA1と第2のA/D変換回路104の入力ノードNB2との間に設けられる第2のスイッチ素子SW2と、を含む。
そして、第1のスイッチ素子SW1は、第1のモードにおいてオンになり、第2のスイッチ素子SW2は、第2のモードにおいてオンになる。
具体的には、第1、第2のスイッチ素子SW1、SW2は、例えばトランスファーゲート(P型トランジスターとN型トランジスターが並列接続されたもの)や、P型トランジスター、N型トランジスター等で構成される。また、ノードNA1、NB1、NB2は差動の入力ノードであってもよく、その場合には差動の入力ノードを構成する第1ノードと第2ノードの各々についてスイッチ素子が設けられる。
図2に、図1の回路装置20の動作タイミングチャートを示す。スイッチ素子SW1、SW2のチャートは、ハイレベルがスイッチ素子のオン、ローレベルがスイッチ素子のオフを示している。図2に示すように、モード制御信号MDSがローレベル(広義には第1論理レベル)の場合、第1のモードが設定され、第1のスイッチ素子SW1がオンになり、第2のスイッチ素子SW2がオフになる。一方、モード制御信号MDSがハイレベル(広義には第2論理レベル)の場合、第2のモードが設定され、第1のスイッチ素子SW1がオフになり、第2のスイッチ素子SW2が断続的に(間欠的に)オンになる。例えば第2のA/D変換回路104として逐次比較型A/D変換回路を採用した場合には、断続的なオンが可能になる。例えば1回のオン期間において1回のA/D変換を行う(1個のA/D変換値を出力する)。なお、第2のスイッチ素子SW2は、連続的にオンになってもよい。
第1のモードにおいてスイッチ素子SW2がオフしている期間では、第2のA/D変換回路104は動作ディスエーブル状態(動作停止状態)や低消費電力状態に設定される。第2のモードにおいてスイッチ素子SW1がオフしている期間では、第1のA/D変換回路102は動作ディスエーブル状態や低消費電力状態に設定される。動作ディスエーブル状態とは、A/D変換回路の内部動作が停止(例えばスイッチ素子やアンプ回路、ロジック回路等の動作が停止)した状態である。低消費電力状態は、A/D変換回路の内部回路の消費電力を低下させた(例えばアンプ回路のバイアス電流を停止又は低下させた)状態である。
以上のように、第1、第2のスイッチ素子SW1、SW2を設け、第1、第2のモードにおいて、それぞれ第1、第2のスイッチ素子SW1、SW2がオンになることで、第1のA/D変換回路102と第2のA/D変換回路104を切り替えることができ、高分解能モードと低消費電力モードの切り替えを実現できる。
また本実施形態では、第2のA/D変換回路104は、第1のA/D変換回路102よりも消費電力が小さいA/D変換回路である。また第2のモードは、低消費電力モードである。第1のモードでは、検出回路60からの信号が入力信号SA1として第1のA/D変換回路102に入力され、第2のモードでは、検出回路60からの信号が入力信号SA1として第2のA/D変換回路104に入力される。
消費電力が異なるA/D変換回路としては、例えばA/D変換方式が異なるA/D変換回路や、A/D変換方式が同一でサンプリング周波数が異なるA/D変換回路、デルタシグマ変調型A/D変換回路の次数等のように同一のA/D変換方式であっても内部構成が異なるA/D変換回路等が想定される。
以上のように、第1のA/D変換回路102よりも消費電力が小さい第2のA/D変換回路104を設けることで、第2のモードへの切り替えにより低消費電力なA/D変換を実現できる。
また本実施形態では、図2に示すように第2のモードにおいてスイッチ素子SW2が断続的にオフするが、そのスイッチ素子SW2がオフしている期間において第2のA/D変換回路104を動作ディスエーブル状態や低消費電力状態に設定する。これにより、第2のモードにおいて連続的に第2のA/D変換回路104がA/D変換を行う場合に比べて、更に第2のモードを低消費電力化することが可能である。
また本実施形態では、第1のA/D変換回路102は、デルタシグマ変調型のA/D変換回路であり、第2のA/D変換回路104は、逐次比較型のA/D変換回路である。
具体的には、デルタシグマ変調型のA/D変換回路は、入力信号をサンプリングするサンプリング回路と、サンプリング回路の出力と量子化器の出力との差分を出力する差分器と、差分器の出力を積分する積分器と、積分器の出力を量子化する量子化器と、量子化器の出力をD/A変換して差分器にフィードバックするD/A変換回路と、を含む。これは1ループ分の構成であり、2次以上の場合には、次数の分だけループをもつ。所望のサンプリング周波数(A/D変換値の出力周波数)よりも高い周波数でオーバーサンプリングし、量子化器の出力をデシメーションフィルタでダウンサンプリングすることで、A/D変換値を出力する。
逐次比較型のA/D変換回路は、入力信号をサンプリングするサンプリング回路と、サンプリング回路の出力とD/A変換回路の出力を比較する比較回路と、比較回路の出力でレジスター値を更新するレジスターと、レジスター値をD/A変換して比較回路に出力するD/A変換回路と、を含む。なお、サンプリング回路と比較回路とD/A変換回路は一体に(例えばスイッチドキャパシター回路等で)構成されてもよい。1回のサンプリングに対して、比較回路による比較とその結果によるレジスター値の更新をレジスター値のMSB側から1ビットずつ繰り返し行い、A/D変換値を出力する。
デルタシグマ変調型のA/D変換回路は、オーバーサンプリングにより高分解能化を実現しやすいが、一方でアンプ回路の数が多い(例えば積分器、D/A変換回路に含まれるアンプ回路。2次以上の場合、アンプの個数は例えば次数倍になる)こと、サンプリング周波数が高いことのため、低消費電力化が難しい。逐次比較型のA/D変換回路は、アンプ回路の数が少ない(例えば比較回路に含まれるアンプ回路)こと、サンプリング周波数が低いことのため、低消費電力化しやすいが、一方で、リニアリティ確保等の点から高分解能化が難しい。一例として、デルタシグマ変調型のA/D変換回路は、分解能が12〜24ビット、サンプリング周波数が100〜10MHzである。逐次比較型のA/D変換回路は、分解能が8〜16ビット、サンプリング周波数が10k〜1MHzである。
以上のように、第1のA/D変換回路102がデルタシグマ変調型のA/D変換回路であり、第2のA/D変換回路104が逐次比較型のA/D変換回路であることで、第1のモードでは第2のモードよりも分解能の高いA/D変換を行うことができ、第2のモードでは第1のモードよりも消費電力の低いA/D変換を行うことができる。
2.回路装置の第2の構成例
図3に、本実施形態の回路装置の第2の構成例を示す。回路装置20は、温度センサー18、検出回路60、A/D変換部100、処理部110、切り替え制御部120を含む。なお、既に説明した構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
A/D変換部100は、第1、第2のA/D変換回路102、104と、第1、第2のスイッチ素子SW1、SW2と、A/D変換部100の第2の入力ノードNA2と第2のA/D変換回路104の入力ノードNB2との間に設けられる第3のスイッチ素子SW3と、を含む。
そしてA/D変換部100には、入力信号として、検出回路60からの信号である第1の入力信号SA1と、第2の物理量トランスデューサーからの信号に基づく第2の入力信号SA2とが入力される。そして、第1のモードでは、第1の入力信号SA1が第1のA/D変換回路102に入力され、第2の入力信号SA2が第2のA/D変換回路104に入力される。第2のモードでは、第1の入力信号SA1と第2の入力信号SA2が時分割に第2のA/D変換回路104に入力される。
図4に、図2の回路装置20の動作タイミングチャートを示す。スイッチ素子SW1〜SW3のチャートは、ハイレベルがスイッチ素子のオン、ローレベルがスイッチ素子のオフを示している。図4に示すように、第1のモードでは、第1のスイッチ素子SW1がオンになり、第2のスイッチ素子SW2がオフになり、第3のスイッチ素子SW3が断続的にオンになる。第2のモードでは、第1のスイッチ素子SW1がオフになり、第2のスイッチ素子SW2と第3のスイッチ素子SW3が時分割にオンになる。即ち、第2、第3のスイッチ素子SW2、SW3は、第1、第2の入力信号SA1、SA2を順次に選択するマルチプレクサーを構成している。
第2のモードにおいて第2のA/D変換回路104は動作オン状態を維持する。或いは、第1、第2のスイッチ素子SW1、SW2が共にオフになる期間がある場合、その期間において第2のA/D変換回路104が動作ディスエーブル状態や低消費電力状態に設定されてもよい。
図1で説明したように第2のA/D変換回路104は逐次比較型のA/D変換回路である。逐次比較型のA/D変換回路は、過去のA/D変換値をループしないので、信号の入力からA/D変換値が得られるまでの時間がデルタシグマ変調型A/D変換回路に比べて短く、時分割動作に向いている。
以上のように、第2のモードにおいて第1の入力信号SA1と第2の入力信号SA2を時分割に第2のA/D変換回路104に入力することで、第1の入力信号SA1と第2の入力信号SA2を時分割にA/D変換できる。時分割にすることで、複数の入力がある場合であっても第2のA/D変換回路104を1個設けるだけでよく、回路の追加を最小限にしつつ第1のモードと第2のモードの切り替えを実現できる。
また本実施形態では、第1の物理量トランスデューサーは角速度センサー素子14であり、第2の物理量トランスデューサーは、温度センサー18である。
角速度センサー素子14は、角速度を検出する素子であり、例えば圧電型の振動片(例えば、後述するダブルT字型の振動片)や静電容量検出方式の振動片等である。温度センサー18は、温度に依存する信号を少なくとも発生する素子又は回路である。具体的には、温度に依存する信号と温度に依存しない基準信号を発生し、それらの信号を比較し、その比較により得られた信号を温度情報として出力する。温度センサー18は、例えばバンドギャップ回路と比較回路で実現できる。
温度センサー18で得られた温度情報は、角速度のゼロ点やゲインの温度依存性を補正するために用いられる。この温度情報は、補正に必要な分解能があれば足りるので、モードに関わらず温度センサー18の出力を逐次比較型の第2のA/D変換回路104でA/D変換する。一方、角速度センサー素子14の出力は、高分解能が必要な場合には第1のモードを選択してデルタシグマ変調型の第1のA/D変換回路102でA/D変換し、低分解能でよい場合には第2のモードを選択して逐次比較型の第2のA/D変換回路104でA/D変換する。
角速度センサー素子14からの検出信号を処理する検出回路60は、例えば図16に示すように、検出信号を増幅する増幅回路と、増幅回路からの信号を同期検波する同期検波回路と、同期検波回路からの信号をローパスフィルター処理するフィルター部90と、を含む。
なお図5に示すように、第2の物理量トランスデューサーは加速度センサー素子16であってもよい。第1のモードでは、第1のA/D変換回路102が角速度センサー素子14の出力をA/D変換するので高精度な角速度が得られる。一方、第2のモードでは、第2のA/D変換回路104が角速度センサー素子14の出力と加速度センサー素子16の出力を時分割にA/D変換し、第1のA/D変換回路102が動作ディスエーブル状態になるので、低消費電力でA/D変換できる。
3.回路装置の第3の構成例
図3に、本実施形態の回路装置の第3の構成例を示す。回路装置20は、温度センサー18、検出回路60、62、A/D変換部100、処理部110、切り替え制御部120を含む。なお、既に説明した構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
加速度センサー素子16は、加速度を検出する素子であり、例えば静電容量検出方式の素子やピエゾ抵抗方式の素子、熱検知方式の素子等である。加速度センサー素子16からの検出信号を検出処理する検出回路62は、例えば検出信号を増幅する増幅回路を含む。また、増幅回路からの信号を同期検波する同期検波回路を含んでもよい。
A/D変換部100は、第1、第2のA/D変換回路102、104と、A/D変換部100の第1の入力ノードNC1と第1のA/D変換回路102の入力ノードND1との間に設けられる第1のスイッチ素子SWC1と、A/D変換部100の第1〜第3の入力ノードNC1〜NC3と第2のA/D変換回路104の入力ノードND2との間に設けられる第2〜第4のスイッチ素子SWC2〜SWC4と、を含む。
そしてA/D変換部100には、入力信号として、検出回路60からの信号である第1の入力信号SC1と、検出回路62からの信号である第2の入力信号SC2と、温度センサー18からの信号である第3の入力信号SC3とが入力される。そして、第1のモードでは、第1の入力信号SC1が第1のA/D変換回路102に入力され、第2、第3の入力信号SC2、SC3が第2のA/D変換回路104に入力される。第2のモードでは、第1〜第3の入力信号SC1〜SC3が時分割に第2のA/D変換回路104に入力される。
図6に、図5の回路装置20の動作タイミングチャートを示す。スイッチ素子SWC1〜SWC4のチャートは、ハイレベルがスイッチ素子のオン、ローレベルがスイッチ素子のオフを示している。図6に示すように、第1のモードでは、第1のスイッチ素子SWC1がオンになり、第2のスイッチ素子SWC2がオフになり、第3、第4のスイッチ素子SWC3、SWC4が時分割にオンになる。このとき、第3のスイッチ素子SWC3がオン、第4のスイッチ素子SWC4がオン、第3、第4のスイッチ素子SWC3、SWC4が共にオフ、を時分割に繰り返す。第2のモードでは、第1のスイッチ素子SWC1がオフになり、第2〜第4のスイッチ素子SWC2〜SWC4が時分割にオンになる。即ち、第2〜第4のスイッチ素子SWC2〜SWC4は、第1〜第3の入力信号SC1〜SC3を順次に選択するマルチプレクサーを構成している。
第1のモードにおいて、第3、第4のスイッチ素子SWC3、SWC4が共にオフになっている期間では、第2のA/D変換回路104は動作ディスエーブル状態や低消費電力状態に設定される。第2のモードにおいて第2のA/D変換回路104は動作オン状態を維持する。或いは、第2〜第4のスイッチ素子SWC2〜SWC4が全てオフになる期間がある場合、その期間において第2のA/D変換回路104が動作ディスエーブル状態や低消費電力状態に設定されてもよい。
以上のように、1軸ジャイロセンサーと加速度センサーのコンボセンサーを構成した場合にも、第2のモードにおいて第2のA/D変換回路104が複数の信号を時分割にA/D変換することで、低消費電力化できる。また、1つの逐次比較型A/D変換回路で複数の信号をA/D変換できるので、信号数が増えても回路規模を抑えることができる。
4.回路装置の第4の構成例
図7に、本実施形態の回路装置の第4の構成例を示す。回路装置20は、温度センサー18、検出回路65、67、69、A/D変換部100、処理部110、切り替え制御部120を含む。なお、既に説明した構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
角速度センサー素子15、17、19は、直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)の角速度を検出するセンサー素子である。検出回路65、67、69は、それぞれ角速度センサー素子15、17、19からの検出信号を検出処理する。
A/D変換部100は、デルタシグマ変調型のA/D変換回路105、107、109(広義には、第1、第3、第4のA/D変換回路)と、逐次比較型のA/D変換回路103(広義には、第2のA/D変換回路)と、A/D変換部100の第1〜第3の入力ノードNE1〜NE3とデルタシグマ変調型のA/D変換回路105、107、109の入力ノードNF1〜NF3との間に設けられる第1〜第3のスイッチ素子SWE1〜SWE3と、A/D変換部100の第1〜第4の入力ノードNE1〜NE4と逐次比較型のA/D変換回路103の入力ノードNF4との間に設けられる第4〜第7のスイッチ素子SWE4〜SWE7と、を含む。
A/D変換部100には、入力信号として、検出回路65、67、69からの信号である第1〜第3の入力信号SE1〜SE3と、温度センサー18からの信号である第4の入力信号SE4とが入力される。そして、第1のモードでは、第1〜第3の入力信号SE1〜SE3がデルタシグマ変調型のA/D変換回路105、107、109に入力され、第4の入力信号SE4が逐次比較型のA/D変換回路103に入力される。第2のモードでは、第1〜第4の入力信号SE1〜SE4が時分割に逐次比較型のA/D変換回路103に入力される。
図8に、図7の回路装置20の動作タイミングチャートを示す。スイッチ素子SWE1〜SWE7のチャートは、ハイレベルがスイッチ素子のオン、ローレベルがスイッチ素子のオフを示している。図8に示すように、第1のモードでは、第1〜第3のスイッチ素子SWE1〜SWE3がオンになり、第4〜第6のスイッチ素子SWE4〜SWE6がオフになり、第7のスイッチ素子SWE7が断続的にオンになる。第2のモードでは、第1〜第3のスイッチ素子SWE1〜SWE3がオフになり、第4〜第7のスイッチ素子SWE4〜SWE7が時分割にオンになる。即ち、第4〜第7のスイッチ素子SWE4〜SWE7は、第1〜第4の入力信号SE1〜SE4を順次に選択するマルチプレクサーを構成している。
第1のモードにおいて、第7のスイッチ素子SWE7がオフになっている期間では、第2のA/D変換回路104は動作ディスエーブル状態や低消費電力状態に設定される。第2のモードにおいて第2のA/D変換回路104は動作オン状態を維持する。或いは、第4〜第7のスイッチ素子SWE4〜SWE7が全てオフになる期間がある場合、その期間において第2のA/D変換回路104が動作ディスエーブル状態や低消費電力状態に設定されてもよい。
以上のように、3軸ジャイロセンサーと加速度センサーのコンボセンサーを構成した場合にも、第2のモードにおいて第2のA/D変換回路104が複数の信号を時分割にA/D変換することで、低消費電力化できる。また、1つの逐次比較型A/D変換回路で複数の信号をA/D変換できるので、信号数が増えても回路規模を抑えることができる。
5.処理部
以下、処理部110の詳細について説明する。処理部110は、第1のモードでは、第1のA/D変換回路102のA/D変換値を第1の処理方式でデジタル処理し、第2のモードでは、第2のA/D変換回路104のA/D変換値を第2の処理方式でデジタル処理する。
即ち、切り替え制御部120が、第1のモードを指示するモード制御信号MDSを出力した場合、処理部110は第1の処理方式を選択し、切り替え制御部120が、第1のモードを指示するモード制御信号MDSを出力した場合、処理部110は第2の処理方式を選択する。
処理部110は、例えばDSP(Digital Signal Processor)等であり、例えばゲートアレイ等によるロジック回路で実現される。処理部110が行うデジタル処理は、例えばA/D変換値のフィルター処理、補正処理、変換処理等である。フィルター処理としては、例えばローパスフィルター処理やバンドパスフィルター処理等が想定される。補正処理としては、例えばオフセット補正やゲイン補正、温度特性の補正等が想定される。変換処理としては、例えばA/D変換値を物理量に変換する処理や、物理量に対するA/D変換値の特性を変換する処理、サンプリング周波数の変換等が想定される。第1、第2の処理方式は、例えば上記のデジタル処理の内容やパラメーターが異なる。例えば、第1の処理方式ではフィルター処理と補正処理を行い、第2の処理方式では補正処理、変換処理を行ってもよいし、或いは、第1、第2の処理方式で共にフィルター処理と補正処理を行い、各処理のパラメーターが異なってもよい。
図9に、処理部110の詳細な構成例を示す。なお以下では、物理量トランスデューサーが角速度センサー素子である場合(ジャイロセンサー)を例に説明する。
図9は、第1の処理方式と第2の処理方式でデジタルフィルター処理及びデジタル補正処理が異なる場合の処理部110の構成例である。なお、処理部110の構成は図9に限定されず、第1の処理方式と第2の処理方式でデジタルフィルター処理及びデジタル補正処理の少なくとも一方が異なっていればよい。
処理部110は、セレクター111、ゼロ点補正部112、ゲイン補正部113、デジタルフィルター114、補正係数選択部115、フィルター係数選択部116を含む。
セレクター111は、第1のモードでは第1のA/D変換回路102からのA/D変換値を選択し、第2のモードでは第2のA/D変換回路104からのA/D変換値を選択する。
補正係数選択部115は、第1のモードでは第1のゼロ点補正値と第1のゲイン補正値を選択し、第2のモードでは第2のゼロ点補正値と第2のゲイン補正値を選択する。例えば回路装置20は、第1、第2のゼロ点補正値と第1、第2のゲイン補正値を記憶する不図示の記憶部を含み、補正係数選択部115は、モードに応じて記憶部から補正値を読み出す。また第1、第2のゼロ点補正値と第1、第2のゲイン補正値は、それぞれ温度特性を有しており、補正係数選択部115は、温度センサーで測定された温度に応じて補正値を選択する。
ゼロ点補正部112は、セレクター111が選択したA/D変換値に対してゼロ点補正を行う。即ち、補正係数選択部115が選択したゼロ点補正値をA/D変換値に加算(又はA/D変換値から減算)する。
ゲイン補正部113は、セレクター111が選択したA/D変換値に対してゲイン補正を行う。即ち、補正係数選択部115が選択したゲイン補正値をA/D変換値に乗算する。
フィルター係数選択部116は、第1のモードでは第1のフィルター係数を選択し、第2のモードでは第2のフィルター係数を選択する。例えば回路装置20は、第1、第2のフィルター係数を記憶する不図示の記憶部を含み、フィルター係数選択部116は、モードに応じて記憶部からフィルター係数を読み出す。
デジタルフィルター114は、ゲイン補正部113の出力に対してフィルター処理を行う。即ち、フィルター係数選択部116が選択したフィルター係数でフィルター処理の特性を設定し、そのフィルター処理をゲイン補正部113の出力に対して行う。フィルター係数は、例えばデジタルフィルター114の伝達関数に含まれる係数であり、フィルター係数を変更することで伝達関数の周波数特性が変化する。例えばデジタルフィルター114はローパスフィルターであり、そのカットオフ周波数とサンプリング周波数の比がフィルター係数によって変化する。
さて、デルタシグマ変調型の第1のA/D変換回路102と逐次比較型の第2のA/D変換回路104ではA/D変換値の分解能(ビット数)が異なるので、ゼロ点補正値とゲイン補正値も異なる。即ち、A/D変換回路の入力側で同じオフセットや感度であっても、分解能の違いによってA/D変換値では異なるオフセットや感度になる(例えば1Vフルスケールを10ビット、12ビットでA/D変換した場合、それぞれ1mVは1LSB、4LSB)。
また、デジタルフィルター114の周波数特性は、サンプリング周波数を基準に決まっている。例えば、ローパスフィルターのカットオフ周波数はサンプリング周波数に対する比で定義されており、サンプリング周波数が倍になればカットオフ周波数も倍になる(比は変わらない)。
この点、本実施形態によれば、第1のモードと第2のモードでデジタル処理を切り替えるので、各モードで選択されるA/D変換回路に対応した処理方式のデジタル処理を行うことができる。即ち、A/D変換回路に応じて分解能が変わっても、それに応じたゼロ点補正やゲイン補正を行うことができる。また、A/D変換回路に応じてサンプリング周波数が変化しても、それに応じてカットオフ周波数とサンプリング周波数の比を変化させ、適切なカットオフ周波数を設定できる(例えば、モードに依らず同じカットオフ周波数に設定できる)。
6.回路装置の第5の構成例
図10に、本実施形態の回路装置の第5の構成例を示す。回路装置20は、検出回路60、A/D変換部100、処理部110、切り替え制御部120、レジスター部142、インターフェース部144を含む。なお、既に説明した構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
第1のモードと第2のモードは、インターフェース部144を介してレジスター部142に設定されたモード設定値に基づいて切り替えられる。
具体的には、インターフェース部144は回路装置20の外部の処理装置(例えばCPUやマイクロコンピューター等)との通信を行うものである。外部の処理装置は、インターフェース部144を介してレジスター部142にモード設定値を書き込み、切り替え制御部120は、そのモード設定値が指示するモードのモード制御信号MDSをA/D変換部100と処理部110に出力する。
以上の構成によれば、外部の処理装置がインターフェース部144を介してレジスター部142にモード設定値を設定することで、第1のモードと第2のモードを切り替えることができる。即ち、アプリケーションや環境、状況等に応じて、外部の処理装置が高分解能なA/D変換と低消費電力なA/D変換を切り替えることができる。
7.回路装置の第6の構成例
図11に、本実施形態の回路装置の第6の構成例を示す。回路装置20は、検出回路60、A/D変換部100、処理部110、切り替え制御部120を含む。なお、既に説明した構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
切り替え制御部120は、第1のモードにおいて、第1のA/D変換回路102のA/D変換値に基づく検出値により、第1のモードから第2のモードに切り替える。また切り替え制御部120は、第2のモードにおいて、第2のA/D変換回路104のA/D変換値に基づく検出値により、第2のモードから第1のモードに切り替える。
具体的には、第1のモードでは、処理部110が第1のA/D変換回路102のA/D変換値をデジタル処理して検出値(物理量)を取得し、切り替え制御部120が、その検出値に基づいて第1のモードから第2のモードに切り替えるか否かを判断する。第2のモードでは、処理部110が第2のA/D変換回路104のA/D変換値をデジタル処理して検出値(物理量)を取得し、切り替え制御部120が、その検出値に基づいて第2のモードから第1のモードに切り替えるか否かを判断する。
図12に、図11の回路装置の動作説明図を示す。図12では、物理量トランスデューサー12が角速度センサー素子である場合(ジャイロセンサー)を例にとって説明する。
第2のモードにおいて角速度(検出値)の絶対値が第1の閾値TH1を超えた場合、切り替え制御部120は、第2のモードから第1のモードに切り替える。例えば、所定の長さの期間内に複数回(図12の例では2回)、角速度の絶対値が第1の閾値TH1を超えた場合に、第2のモードから第1のモードに切り替える。
一方、第1のモードにおいて角速度の絶対値が第2の閾値TH2(TH2<TH1)より小さい場合、切り替え制御部120は、第1のモードから第2のモードに切り替える。例えば、所定の長さの期間内に継続して角速度の絶対値が第2の閾値TH2よりも小さい場合に(所定の長さの期間内に角速度の絶対値が第2の閾値TH2を超えなかった場合に)、第1のモードから第2のモードに切り替える。
以上のように、切り替え制御部120がA/D変換値に基づく検出値によりモードを切り替えることで、第1のモードと第2のモードを切り替えることができる。これにより、回路装置20が状況に応じて自動的に高分解能なA/D変換と低消費電力なA/D変換を切り替えることができる。例えば、ジャイロセンサーを搭載した装置の動きが大きく角速度が大きい場合には、デルタシグマ変調型の第1のA/D変換回路102により高精度な検出を行い、ジャイロセンサーを搭載した装置の動きが小さく角速度が小さい場合には、低消費電力な検出を行うことができる。動きが小さいときに低消費電力な検出で角速度をモニターすることで消費電力を節約しつつ、動きが大きくなったときに、高精度な検出に移行することができる。
8.回路装置の第7の構成例
図13に、本実施形態の回路装置の第7の構成例を示す。回路装置20は、バッファー回路43、検出回路60、第2のA/D変換回路104、スイッチ素子SW2P、SW2Nを含む。図13では、第1のA/D変換回路102、処理部110等の図示を省略した。なお、既に説明した構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
なお以下では物理量トランスデューサーが角速度センサー素子14である場合を例に説明するが、物理量トランスデューサーが加速度センサー素子である場合にバッファー回路43を設けてもよい。
スイッチ素子SW2P、SW2Nは、検出回路の出力を差動にした場合における図3のスイッチ素子SW2、図5のスイッチ素子SWC2、図7のスイッチ素子SWE4、SWE5、SWE6に対応する。即ち、第2のモードにおいて第2のA/D変換回路104の複数の入力を時分割に切り替えるマルチプレクサーのスイッチ素子に対応している。
検出回路60は、角速度センサー素子14からの差動の検出信号を増幅する増幅回路61と、増幅回路61からの差動信号を同期検波する同期検波回路81と、同期検波回路81からの差動信号をローパスフィルター処理するフィルター部90と、を含む。フィルター部90は、抵抗素子とキャパシターで構成されるパッシブローパスフィルターである。
バッファー回路43は、スイッチ素子SW2P、SW2Nの一端のノードNA1P、NA1Nと他端のノードNB2P、NB2Nとの間に設けられる。
このとき、図14に示すように、バッファー回路43は、第1期間TA1においてノードNA1P、NA1Nの信号(A/D変換部100の入力信号)をバッファリングしてノードNB2P、NB2Nに出力する。そして、第1期間TA1の終了タイミングea1よりも後に第2期間TA2の終了タイミングea2が設定される。
また、第2のA/D変換回路104は、第1期間TA1の終了タイミングea1よりも後で第2期間TA2の終了タイミングea2よりも前に、第2のA/D変換回路104の入力信号をサンプリングする。
また、第1期間TA1の開始タイミングsa1よりも後に、第2期間TA2の開始タイミングsa2が設定される。
さて、本実施形態ではスイッチ素子SW2P、SW2Nの前段にパッシブローパスフィルター(フィルター部90)が設けられている。そのため、その時定数(カットオフ周波数)と第2のA/D変換回路104のサンプリング周波数の関係によってはA/D変換値が不正確になるという課題がある。
具体的には、第2のA/D変換回路104の複数の入力信号を切り替える場合、その複数の入力信号の電圧が異なるので、入力信号の切り替えにともなって第2のA/D変換回路104の入力ノードNB2P、NB2Nの電圧も変化する。そのため、スイッチ素子SW2P、SW2Nをオンしたとき、パッシブローパスフィルターの出力は一旦、スイッチ切り替え前の入力ノードNB2P、NB2Nの電圧になり、その後に本来の検出回路60の出力に漸近する。この漸近の速さは、パッシブローパスフィルターの時定数で決まる。
パッシブローパスフィルターのカットオフ周波数は、角速度センサー素子14(振動片)の離調周波数の成分を低減できるように設定されたものであり、基本的には第2のA/D変換回路104のサンプリング周波数には関係しない。そのため、パッシブローパスフィルターのカットオフ周波数が、第2のA/D変換回路104の複数の入力信号を切り替える周波数よりも遅くなる場合がある。この場合、スイッチ素子SW2P、SW2Nがオンになってから本来の検出回路60の出力に十分漸近する前に、スイッチ素子SW2P、SW2Nがオフになってしまい、本来の検出回路60の出力が第2のA/D変換回路104に入力されない。
この点、本実施形態によれば、バッファー回路43がフィルター部90の出力をバッファリングして第2のA/D変換回路104の入力ノードNB2P、NB2Nを駆動する。これにより、スイッチ素子SW2P、SW2Nがオンになる際に素早く入力ノードNB2P、NB2Nをフィルター部90の出力と同じ電圧に駆動できる。これにより、パッシブローパスフィルターのような駆動能力が低い回路がスイッチ素子SW2P、SW2Nの前段にある場合であっても、正確なA/D変換値を得ることができる。
9.電子機器、ジャイロセンサー、回路装置の詳細な構成
図15に、本実施形態の回路装置20、この回路装置20を含むジャイロセンサー510(広義には物理量検出装置)、このジャイロセンサー510を含む電子機器500の詳細な構成例を示す。
なお回路装置20、電子機器500、ジャイロセンサー510は図15の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加したりするなどの種々の変形実施が可能である。また本実施形態の電子機器500としては、デジタルカメラ、ビデオカメラ、スマートフォン、携帯電話機、カーナビゲーションシステム、ロボット、生体情報検出装置、ゲーム機、時計、健康器具、或いは携帯型情報端末等の種々の機器を想定できる。また以下では、物理量トランスデューサー(角速度センサー素子)が圧電型の振動片(振動ジャイロ)であり、センサーがジャイロセンサーである場合を例にとり説明するが、本発明はこれに限定されない。例えばシリコン基板などから形成された静電容量検出方式の振動ジャイロや、角速度情報と等価な物理量や角速度情報以外の物理量を検出する物理量トランスデューサー等にも本発明は適用可能である。
電子機器500は、ジャイロセンサー510と処理部520を含む。またメモリー530、操作部540、表示部550を含むことができる。CPU、MPU等で実現される処理部520(外部の処理装置)は、ジャイロセンサー510等の制御や電子機器500の全体制御を行う。また処理部520は、ジャイロセンサー510により検出された角速度情報(広義には物理量)に基づいて処理を行う。例えば角速度情報に基づいて、手ぶれ補正、姿勢制御、GPS自律航法などのための処理を行う。メモリー530(ROM、RAM等)は、制御プログラムや各種データを記憶したり、ワーク領域やデータ格納領域として機能する。操作部540はユーザーが電子機器500を操作するためのものであり、表示部550は種々の情報をユーザーに表示する。
ジャイロセンサー510(物理量検出装置)は、振動片10と回路装置20を含む。振動片10(広義には物理量トランスデューサー、角速度センサー素子)は、水晶などの圧電材料の薄板から形成される圧電型振動片である。具体的には、振動片10は、Zカットの水晶基板により形成されたダブルT字型の振動片である。
回路装置20は、駆動回路30、検出回路60、制御部140を含む。なお、これらの構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加したりするなどの種々の変形実施が可能である。
駆動回路30は、駆動信号DQを出力して振動片10を駆動する。例えば振動片10からフィードバック信号DIを受け、これに対応する駆動信号DQを出力することで、振動片10を励振させる。検出回路60は、駆動信号DQにより駆動される振動片10から検出信号IQ1、IQ2(検出電流、電荷)を受け、検出信号IQ1、IQ2から、振動片10に印加された物理量に応じた所望信号(コリオリ力信号)を検出(抽出)する。
振動片10は、基部1と、連結腕2、3と、駆動腕4、5、6、7と、検出腕8、9を有する。矩形状の基部1に対して+Y軸方向、−Y軸方向に検出腕8、9が延出している。また基部1に対して−X軸方向、+X軸方向に連結腕2、3が延出している。そして連結腕2に対して+Y軸方向、−Y軸方向に駆動腕4、5が延出しており、連結腕3に対して+Y軸方向、−Y軸方向に駆動腕6、7が延出している。なおX軸、Y軸、Z軸は水晶の軸を示すものであり、各々、電気軸、機械軸、光学軸とも呼ばれる。
駆動回路30からの駆動信号DQは、駆動腕4、5の上面に設けられた駆動電極と、駆動腕6、7の側面に設けられた駆動電極に入力される。また駆動腕4、5の側面に設けられた駆動電極と、駆動腕6、7の上面に設けられた駆動電極からの信号が、フィードバック信号DIとして駆動回路30に入力される。また検出腕8、9の上面に設けられた検出電極からの信号が、検出信号IQ1、IQ2として検出回路60に入力される。なお検出腕8、9の側面に設けられたコモン電極は例えば接地される。
駆動回路30により交流の駆動信号DQが印加されると、駆動腕4、5、6、7は、逆圧電効果により矢印Aに示すような屈曲振動(励振振動)を行う。即ち、駆動腕4、6の先端が互いに接近と離間を繰り返し、駆動腕5、7の先端も互いに接近と離間を繰り返す屈曲振動を行う。このとき駆動腕4、5と駆動腕6、7とが、基部1の重心位置を通るY軸に対して線対称の振動を行っているので、基部1、連結腕2、3、検出腕8、9はほとんど振動しない。
この状態で、振動片10に対してZ軸を回転軸とした角速度が加わると(振動片10がZ軸回りで回転すると)、コリオリ力により駆動腕4、5、6、7は矢印Bに示すように振動する。即ち、矢印Aの方向とZ軸の方向とに直交する矢印Bの方向のコリオリ力が、駆動腕4、5、6、7に働くことで、矢印Bの方向の振動成分が発生する。この矢印Bの振動が連結腕2、3を介して基部1に伝わり、検出腕8、9が矢印Cの方向で屈曲振動を行う。この検出腕8、9の屈曲振動による圧電効果で発生した電荷信号が、検出信号IQ1、IQ2として検出回路60に入力される。ここで、駆動腕4、5、6、7の矢印Bの振動は、基部1の重心位置に対して周方向の振動であり、検出腕8、9の振動は、矢印Bとは周方向で反対向きの矢印Cの方向での振動である。検出信号IQ1、IQ2は、駆動信号DQに対して位相が90度だけずれた信号になる。
例えば、Z軸回りでの振動片10(ジャイロセンサー)の角速度をωとし、質量をmとし、振動速度をvとすると、コリオリ力はFc=2m・v・ωと表される。従って検出回路60が、コリオリ力に応じた信号である所望信号を検出することで、角速度ωを求めることができる。そして求められた角速度ωを用いることで、処理部520は、手振れ補正、姿勢制御、或いはGPS自律航法等のための種々の処理を行うことができる。
なお図15では、振動片10がダブルT字型である場合の例を示しているが、本実施形態の振動片10はこのような構造に限定されない。例えば音叉型、H型等であってもよい。また振動片10の圧電材料は、水晶以外のセラミックスやシリコン等の材料であってもよい。
図16に回路装置の駆動回路30、検出回路60の詳細な構成例を示す。
駆動回路30は、振動片10からのフィードバック信号DIが入力される増幅回路32と、自動ゲイン制御を行うゲイン制御回路40と、駆動信号DQを振動片10に出力する駆動信号出力回路50を含む。また同期信号SYCを検出回路60に出力する同期信号出力回路52を含む。なお、駆動回路30の構成は図16に限定されず、これらの構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加したりするなどの種々の変形実施が可能である。
増幅回路32(I/V変換回路)は、振動片10からのフィードバック信号DIを増幅する。例えば振動片10からの電流の信号DIを電圧の信号DVに変換して出力する。この増幅回路32は、演算増幅器、帰還抵抗素子、帰還キャパシターなどにより実現できる。
駆動信号出力回路50は、増幅回路32による増幅後の信号DVに基づいて、駆動信号DQを出力する。例えば駆動信号出力回路50が、矩形波(又は正弦波)の駆動信号を出力する場合には、駆動信号出力回路50はコンパレーター等により実現できる。
ゲイン制御回路40(AGC)は、駆動信号出力回路50に制御電圧DSを出力して、駆動信号DQの振幅を制御する。具体的には、ゲイン制御回路40は、信号DVを監視して、発振ループのゲインを制御する。例えば駆動回路30では、ジャイロセンサーの感度を一定に保つために、振動片10(駆動用振動片)に供給する駆動電圧の振幅を一定に保つ必要がある。このため、駆動振動系の発振ループ内に、ゲインを自動調整するためのゲイン制御回路40が設けられる。ゲイン制御回路40は、振動片10からのフィードバック信号DIの振幅(振動片の振動速度v)が一定になるように、ゲインを可変に自動調整する。このゲイン制御回路40は、増幅回路32の出力信号DVを全波整流する全波整流器や、全波整流器の出力信号の積分処理を行う積分器などにより実現できる。
同期信号出力回路52は、増幅回路32による増幅後の信号DVを受け、同期信号SYC(参照信号)を検出回路60に出力する。この同期信号出力回路52は、正弦波(交流)の信号DVの2値化処理を行って矩形波の同期信号SYCを生成するコンパレーターや、同期信号SYCの位相調整を行う位相調整回路(移相器)などにより実現できる。
また図16では図示していないが、A/D変換部100、処理部110、制御部140等のマスタークロックとなるクロック信号を生成するクロック信号生成回路が、回路装置20には設けられる。このクロック信号生成回路は、例えばCR発振回路などを利用してクロック信号を生成するが、本実施形態はこれに限定されるものではない。
検出回路60は、増幅回路61、同期検波回路81、フィルター部90を含む。増幅回路61は、振動片10からの第1、第2の検出信号IQ1、IQ2を受けて、電荷−電圧変換や差動の信号増幅やゲイン調整などを行う。同期検波回路81は、駆動回路30からの同期信号SYCに基づいて同期検波を行う。フィルター部90(ローパスフィルター)は、A/D変換部100の前置きフィルターとして機能する。またフィルター部90は、同期検波によっては除去しきれなかった不要信号を減衰する回路としても機能する。A/D変換部100は、同期検波後の信号のA/D変換を行う。処理部110はA/D変換部100からのデジタル信号に対してデジタルフィルター処理やデジタル補正処理などのデジタル信号処理を行う。デジタル補正処理としては、例えばゼロ点補正処理や感度補正処理などがある。
なお、例えば振動片10からの電荷信号(電流信号)である検出信号IQ1、IQ2は、電圧信号である駆動信号DQに対して位相が90度遅れる。また増幅回路61のQ/V変換回路等において位相が90度遅れる。このため、増幅回路61の出力信号は駆動信号DQに対して位相が180度遅れる。従って、例えば駆動信号DQ(DV)と同相の同期信号SYCを用いて同期検波することで、駆動信号DQに対して位相が90度遅れた不要信号等を除去できるようになる。
制御部140は、回路装置20の制御処理を行う。この制御部140は、ロジック回路(ゲートアレイ等)やプロセッサー等により実現できる。回路装置20での各種のスイッチ制御やモード設定等はこの制御部140により行われる。
10.移動体、電子機器
図17(A)に本実施形態の回路装置20を含む移動体の例を示す。本実施形態の回路装置20は、例えば、車、飛行機、バイク、自転車、或いは船舶等の種々の移動体に組み込むことができる。移動体は、例えばエンジンやモーター等の駆動機構、ハンドルや舵等の操舵機構、各種の電子機器を備えて、地上や空や海上を移動する機器・装置である。図17(A)は移動体の具体例としての自動車206を概略的に示している。自動車206には、振動片10と回路装置20を有するジャイロセンサー510(センサー)が組み込まれている。ジャイロセンサー510は車体207の姿勢を検出することができる。ジャイロセンサー510の検出信号は車体姿勢制御装置208に供給される。車体姿勢制御装置208は例えば車体207の姿勢に応じてサスペンションの硬軟を制御したり個々の車輪209のブレーキを制御したりすることができる。その他、こういった姿勢制御は二足歩行ロボットや航空機、ヘリコプター等の各種の移動体において利用されることができる。姿勢制御の実現にあたってジャイロセンサー510は組み込まれることができる。
図17(B)、図17(C)に示すように、本実施形態の回路装置はデジタルスチルカメラや生体情報検出装置(ウェアラブル健康機器。例えば脈拍計、歩数計、活動量計等)などの種々の電子機器に適用できる。例えばデジタルスチルカメラにおいてジャイロセンサーや加速度センサーを用いた手ぶれ補正等を行うことができる。また生体情報検出装置において、ジャイロセンサーや加速度センサーを用いて、ユーザーの体動を検出したり、運動状態を検出できる。また図17(D)に示すように、本実施形態の回路装置はロボットの可動部(アーム、関節)や本体部にも適用できる。ロボットは、移動体(走行・歩行ロボット)、電子機器(非走行・非歩行ロボット)のいずれも想定できる。走行・歩行ロボットの場合には、例えば自律走行に本実施形態の回路装置を利用できる。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語(物理量、物理量トランスデューサー、物理量検出装置等)と共に記載された用語(角速度、角速度センサー素子、ジャイロセンサー等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、回路装置や物理量検出装置や電子機器や移動体の構成、振動片の構造等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。