以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るクレーン10の側面図である。図2は、クレーン10の一部の側面図である。なお、以後、各図には、「上」、「下」、「前」および「後」の方向が示されているが、当該方向は、本発明に係るクレーン10の構造および組立方法を説明するために便宜上示すものであり、クレーン10の移動方向や使用態様などを限定するものではない。本実施形態では、クレーン10は、ジブが回動可能なラッフィングジブ構造を備えている。
クレーン10は、クレーン本体に相当する旋回体12と、この旋回体12を旋回可能に支持する走行体14と、ブーム16及びジブ18を含む起伏部材と、ブーム起伏用部材であるラチスマスト65と、箱マスト20と、を備える。また、旋回体12の後部には、クレーン10のバランスを調整するためのカウンタウエイト13が積載されており、旋回体12の後方には、カウンタウエイト72が更に配置されている。カウンタウエイト72は、クレーン10が重量物を吊り上げるために備えられるSHL(Super Heavy Lifting)用ウェイトとして、クレーン10のバランスを保つ機能を有する。また、旋回体12の前端部には、キャブ15が備えられている。キャブ15は、クレーン10の運転席に相当する。
図1に示されるブーム16は、いわゆるラチス型であり、基端側部材16Aと、一または複数(図例では2個)の中間部材16B,16Cと、先端側部材16Dとから構成される。具体的に、基端側部材16Aは、旋回体12の前部に起伏方向に回動可能となるように連結される。中間部材16B,16Cは、その順に基端側部材16Aの先端側に着脱可能に継ぎ足される。先端側部材16Dは中間部材16Cの先端側に着脱可能に継ぎ足され、この先端側部材16Dの先端部に、後述のようにジブ18を回動させるためのリアストラット21及びフロントストラット22が回動可能に連結される。ブーム16は、下端部に備えられたブームフット16Sを支点として旋回体12の軸支部12S(図3参照)に回動可能に軸支(支持)される。また、ブーム16の先端側部材16Dの先端部には、ジブ18を軸支するジブ軸支部164(図6)が配置される。更に、ブーム16は、ブーム基端部16P(図2)と、ブーム先端部16Q(図2)と、を備える。ブーム基端部16Pは、ブーム16の基端部であり、前述のブームフット16S(図1)を備える。ブーム先端部16Qは、ブーム16の先端部である。
ただし、本発明ではブームの具体的な構造は限定されない。例えば、当該ブームの中間部材の数は、上記とは異なるものでもよい。また、ブームは、単一の部材で構成されたものでもよい。
旋回体12上には左右一対のバックストップ23が設けられる。これらのバックストップ23は、ブーム16が図1に示される起立姿勢まで到達した時点で当該ブーム16の基端側部材16Aの左右両側部に当接する。この当接によって、ブーム16が強風等で後方に煽られることが規制される。
ジブ18も、その具体的な構造は限定されないが、図例ではラチス型の構造を有する。ジブ18は、ブーム16に回動可能に軸支される。なお、ジブ18の回動中心軸は、旋回体12に対するブーム16の回動中心軸(ブームフット16S)と平行な横軸になっている。
ラチスマスト65は、マスト基端部65Pおよびマスト先端部65Q(図2)を備える。マスト基端部65Pは、ラチスマスト65の基端部であり、ブーム16の後側の位置で旋回体12に回動可能に連結される。ラチスマスト65の回動軸であるマストフット65Sは、ブーム16の回動軸と平行でかつ当該ブーム16の回動軸のすぐ後方に位置している。すなわち、このマストフット65Sもブーム16の起伏方向と同方向に回動可能である。このようなマストの具体的な構造は限定されないが、図例ではラチス型の構造を有する。ラチスマスト65は、HL(Heavy Lifting)マストとして機能し、本発明のマスト
を構成する。
ラチスマスト65のマスト先端部65Qは、後記のブーム起伏用ロープ68および左右一対のガイライン67を介してブーム16のブーム先端部16Qに連結される。この連結によって、ラチスマスト65は、ブーム16の回動における支柱となる。
更に、クレーン10は、ガイライン67と、下部スプレッダ85(図2)と、上部スプレッダ80(図2)と、ブーム起伏用ウインチ66と、ブーム起伏用ロープ68と、を備える。
ガイライン67は、図1、図2の紙面と直交する左右方向に一対配置されている。ガイライン67の後端部(一端部)は、ラチスマスト65のマスト先端部65Q(図2)に回動可能に軸支されている。また、ガイライン67の前端部(他端部)が前記一端部よりもブーム16のブーム先端部16Q側(図2)に配置されるように、ガイライン67が延びている。なお、本発明に係るガイラインは、ガイリンク(金属製の板材)、ガイロープ、ガイワイヤ(金属製の線材)などを含む。
下部スプレッダ85は、マスト先端部65Qに対して所定の間隔をおいて配置され、ガイライン67を介してマスト先端部65Qに連結される(図2)。下部スプレッダ85は、シーブブロック68Bを備えている。シーブブロック68Bには、左右方向に延びる不図示の回転軸回りに複数のシーブが左右方向(幅方向)に配列されている。下部スプレッダ85は、本発明の第1スプレッダを構成する。また、シーブブロック68Bは、本発明の第1シーブを構成する。なお、他の実施形態において、上記の複数のシーブが備えられた回転軸は、上下方向に複数配列されてもよい。更に、シーブブロック68Bは、上下方向に延びる不図示の回転軸回りに複数のシーブが上下方向に配列されたものでもよい。この場合も、複数のシーブが備えられた回転軸は、左右方向に複数配列されてもよい。
上部スプレッダ80は、下部スプレッダ85よりもブーム先端部16Q側に間隔をおいて配置される。また、上部スプレッダ80は、後述のとおりブーム先端部16Qに着脱可能に接続される。上部スプレッダ80は、シーブブロック68Aを備えている。シーブブロック68Aには、複数のシーブが幅方向(左右方向)に配列されている。なお、本実施形態では、図2に示すように、マスト先端部65Qと下部スプレッダ85との距離が、ブーム先端部16Qと上部スプレッダ80との距離よりも長く設定されている。上部スプレッダ80は、本発明の第2スプレッダを構成する。また、シーブブロック68Aは、本発明の第2シーブを構成する。更に、上記の下部スプレッダ85、上部スプレッダ80およびガイライン67は、本発明の連結ユニットを構成する。連結ユニットは、ラチスマスト65のマスト先端部65Qとブーム16のブーム基端部16Pとを連結する。
ブーム起伏用ロープ68は、ブーム起伏用ウインチ66から引き出され、マスト先端部65Qのシーブ75(図3)に掛けられた後、シーブブロック68Aとシーブブロック68Bとの間で複数回掛け回される。なお、シーブブロック68Aおよびシーブブロック68Bに掛け回された後のブーム起伏用ロープ68の先端部は、ラチスマスト65の先端部に固定される。ブーム起伏用ロープ68について換言すれば、ブーム起伏用ロープ68は、前述の連結ユニットが伸縮可能となるように当該連結ユニットに掛け回される。
ブーム起伏用ウインチ66は、ラチスマスト65のマスト基端部65P側に配置される。ブーム起伏用ウインチ66は、ブーム起伏用ロープ68の巻き取りおよび繰り出しを行うことで下部スプレッダ85のシーブブロック68Bと上部スプレッダ80のシーブブロック68Aとの間の距離を変化させ、ブーム16をラチスマスト65に対して相対的に回動させながらブーム16を起伏させる。ブーム起伏用ウインチ66の巻き取り、繰り出し動作によって、シーブブロック68Aとシーブブロック68Bとの間の距離が変化する。なお、ブーム起伏用ウインチ66について換言すれば、ブーム起伏用ウインチ66は、前述の連結ユニットを伸縮させる。
箱マスト20は、基端及び回動端(先端)を有し、その基端がラチスマスト65の後側の位置で旋回体12に回動可能に連結される。箱マスト20は、断面視で矩形形状からなる。箱マスト20の回動軸は、ブーム16の回動軸と平行でかつラチスマスト65の回動軸とほぼ同じ位置に配置されている。すなわち、この箱マスト20はブーム16の起伏方向と同方向に回動可能である。箱マスト20は、本発明のサブマストを構成する。
更に、クレーン10は、ガイライン69と、マスト起伏用ロープ38と、マスト起伏用ウインチ30と、を備える。
ガイライン69は、図1、図2の紙面と直交する左右方向に一対配置されている。ガイライン69は、ラチスマスト65のマスト先端部65Q(図2)と箱マスト20の回動端部とを接続する。この接続は、ラチスマスト65の回動と箱マスト20の回動とを連携させる。ガイライン69は、本発明の接続部材を構成する。
マスト起伏用ロープ38は、旋回体12に配置され複数のシーブが幅方向に配列されたたシーブブロック42と、箱マスト20の回動端部に配置され複数のシーブが幅方向に配列されたシーブブロック40との間で複数回掛け回される。なお、ラチスマスト65および箱マスト20の回動は、主にクレーン10の組立分解時に行われ、クレーン10の使用時にはラチスマスト65および箱マスト20の位置(対地角)はほぼ固定されている。
マスト起伏用ウインチ30は、箱マスト20の基端部側に配置される。マスト起伏用ウインチ30は、マスト起伏用ロープ38の巻き取りおよび繰り出しを行う。マスト起伏用ウインチ30の巻き取り、繰り出し動作によって、箱マスト20の先端部のシーブブロック40と旋回体12の後端部のシーブブロック42との間の距離が変化し、旋回体12に対して箱マスト20およびラチスマスト65が一体的に回動しながら、ラチスマスト65が起伏する。
リアストラット21およびフロントストラット22は、ジブ18の後側の位置で、ブーム16の先端側に回動可能に軸支される。リアストラット21は、先端側部材16Dの先端からブーム起立側(図1では左側)に張り出す姿勢で保持される。この姿勢を保持する手段として、リアストラット21とブーム16との間に左右一対のバックストップ25及び左右一対のガイライン26が介在する。バックストップ25は、先端側部材16Dとリアストラット21の中間部位との間に介在し、リアストラット21を下から支える。ガイライン26はリアストラット21の先端部とブーム16の基端側部材16Aとを接続するように張設され、その張力によってリアストラット21の位置を規制する。
フロントストラット22は、ジブ18と連動して(一体的に)回動するようにこのジブ18に連結される。詳しくは、このフロントストラット22の先端部とジブ18の先端部とを結ぶように左右一対のジブ用ガイライン28が張設される。従って、このフロントストラット22の回動駆動によってジブ18も回動駆動される。なお、前述のリアストラット21は、図1に示すようにフロントストラット22の後側に配置され、フロントストラット22との間で略二等辺三角形形状を形成する。また、他の実施形態において、フロントストラット22およびリアストラット21は、ジブ18の基端部に回動可能に軸支されてもよい。更に、フロントストラット22がジブ18の基端部に軸支され、リアストラット21がブーム16の先端部(ブーム先端部16Q)に軸支されてもよい。
クレーン10には、前述のマスト起伏用ウインチ30およびブーム起伏用ウインチ66以外に、その他のウインチが搭載される。具体的には、ジブ18を起伏方向に回動させるためのジブ起伏用ウインチ32と、吊り荷の巻上げ及び巻下げを行うための主巻用ウインチ34及び補巻用ウインチ36とが搭載される。本実施形態に係るクレーン10では、ジブ起伏用ウインチ32、主巻用ウインチ34、及び補巻用ウインチ36がいずれもブーム16における基端側部材16Aに据え付けられる。クレーン10のウインチ30,66,32,34,36は旋回体12に搭載されていてもよい。
ジブ起伏用ウインチ32は、リアストラット21とフロントストラット22との間に掛け回されたジブ起伏用ロープ44の巻き取り及び繰り出しを行う。そして、この巻き取りや繰り出しによってフロントストラット22が回動するようにジブ起伏用ロープ44が配索される。具体的には、リアストラット21の長手方向中間部にはガイドシーブ46が設けられるとともに、リアストラット21の回動端部及びフロントストラット22の回動端部にそれぞれ複数のシーブが幅方向に配列されたシーブブロック47,48が設けられている。そして、ジブ起伏用ウインチ32から引き出されたジブ起伏用ロープ44がガイドシーブ46に掛けられ、かつ、シーブブロック47,48間に掛け渡される。従って、ジブ起伏用ウインチ32によるジブ起伏用ロープ44の巻き取りや繰り出しは、両シーブブロック47,48間の距離を変え、フロントストラット22さらにはこれと連動するジブ18を起伏方向に回動させる。
主巻用ウインチ34は、主巻ロープ50による吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。この主巻について、リアストラット21の基端近傍部位、フロントストラット22の基端近傍部位、及びジブ18の先端部にはそれぞれ主巻用ガイドシーブ52,53,54が回転可能に設けられ、さらに主巻用ガイドシーブ54に隣接する位置に複数の主巻用ポイントシーブ56が幅方向に配列された主巻用シーブブロックが設けられている。主巻用ウインチ34から引き出された主巻ロープ50が主巻用ガイドシーブ52,53,54に順に掛けられ、かつ、シーブブロックの主巻用ポイントシーブ56と、吊荷用の主フック57に設けられたシーブブロックのシーブ58との間に掛け渡される。従って、主巻用ウインチ34(巻き取り用ウインチ)が主巻ロープ50の巻き取りや繰り出しを行うと、両シーブ56,58間の距離が変わって、ジブ18の先端部から垂下された主巻ロープ50に連結された主フック57の巻上げ及び巻下げが行われる。ジブの先端部から主巻ロープ50および主フック57を垂下させることで、より高い位置に被吊り上げ物を吊り上げることができる。
同様にして、補巻用ウインチ36は、補巻ロープ60による吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。この補巻については、主巻用ガイドシーブ52,53,54とそれぞれ同軸に補巻用ガイドシーブ62,63,64が回転可能に設けられ、補巻用ガイドシーブ64に隣接する位置に不図示の補巻用ポイントシーブが回転可能に設けられている。補巻用ウインチ36から引き出された補巻ロープ60は、補巻用ガイドシーブ62,63,64に順に掛けられ、かつ、補巻用ポイントシーブから垂下される。従って、補巻用ウインチ36が補巻ロープ60の巻き取りや繰り出しを行うと、補巻ロープ60の末端に連結された図略の吊荷用の補フックが巻上げられ、または巻下げられる。
旋回体12の後方において地面に配置されたカウンタウエイト72は、ウエイトライン71によってラチスマスト65の回動端部に接続されている。
図3は、本実施形態に係るクレーン10において、ブーム16が旋回体12に装着される様子を示す側面図である。図4は、クレーン10において、ラチスマスト65のマスト先端部65Qから垂下されたガイライン67、下部スプレッダ85を示す正面図である。図5は、上部スプレッダ80およびブーム16に後記の吊り具90が接続された様子を示す正面図である。図6は、上部スプレッダ80がブーム16に接続された様子を示す上面図である。
以下に、本実施形態に係るクレーン10において、ブーム16を旋回体12に取り付けるブーム取付方法について説明する。図3を参照して、ブーム16の取付にあたって、予め、不図示の補助クレーンによってラチスマスト65が旋回体12に装着される。なお、箱マスト20およびマスト起伏用ウインチ30は、旋回体12に一体的に装着されている。ラチスマスト65のマスト基端部65Pが旋回体12に装着されると、箱マスト20の先端部とラチスマスト65のマスト先端部65Qとが、ガイライン69によって接続される。そして、作業者は、マスト起伏用ウインチ30によってマスト起伏用ロープ38の巻き上げ、繰り出しを行い、旋回体12に軸支されたラチスマスト65を回動させ、所定の対地角で起立させる(マスト準備工程)。
次に、作業者は、ブーム基端部16Pが旋回体12の軸支部12Sに対して水平方向に所定の間隔をおいて配置されるように、ブーム16を地面上に配置する(ブーム準備工程)。なお、本実施形態では、複数の中間部材を含むブーム16は、予め組み立てられている。
更に、作業者は、図3に示すように、ガイライン67と、ブーム起伏用ロープ68が掛け回された下部スプレッダ85および上部スプレッダ80とを、ラチスマスト65のマスト先端部65Qからを垂下させる(スプレッダ準備工程)。図4は、図3の矢印A方向に沿って、ラチスマスト65の上端側から垂下されたガイライン67および下部スプレッダ85を見た図に相当する。
図4を参照して、ラチスマスト65は、マストトップ65Tと、外フレーム65Aと、内フレーム65Bと、斜めフレーム65Cと、を備える。マストトップ65Tは、ラチスマスト65の頂部に相当し、左右方向に延びる角材からなる。外フレーム65Aは、ラチスマスト65の左右端部において上下および前後に延びる一対のフレーム部分であり、それぞれの外フレーム65Aは複数の主材パイプによって面状に形成されている。また、内フレーム65Bは、外フレーム65Aの内側に配置される一対のフレーム部分である。内フレーム65Bも、外フレーム65Aと同様に、上下および前後に延び、それぞれの内フレーム65Bは複数の主材パイプによって面状に形成されている。外フレーム65Aおよび内フレーム65Bの先端側は、マストトップ65Tに連結されている。換言すれば、ラチスマスト65のマスト先端部65Qは、ラチスマスト65の回動における軸方向(幅方向、左右方向)に間隔をおいて配置された複数のフレーム材(外フレーム65A、内フレーム65B)から構成されている。斜めフレーム65Cは、一対の外フレーム65Aの間において、内フレーム65Bよりも下方に配置される複数の斜め材である。
ラチスマスト65は、更に、それぞれ一対ずつ備えられたシーブ75と、支持ブラケット76と、リンク77と、を備える。シーブ75は、マストトップ65Tに一対備えられており、ラチスマスト65の最も先端側において、ブーム起伏用ロープ68が掛けられるシーブである。支持ブラケット76は、一対のシーブ75を挟むようにマストトップ65Tに備えられている。それぞれの支持ブラケット76は、一対の板材からなる。そして、これら一対の板材の間には、軸受部が形成されている。リンク77は、一対の支持ブラケット76にそれぞれ軸支されたアーム部材である。リンク77は、リンク支点部77Aと、リンク接続部77Bと、を備える。リンク支点部77Aは、図4のリンク77の上端部に相当し、支持ブラケット76の軸受部に回動可能に支持されている。この際、リンク支点部77Aは、ラチスマスト65の略中心軸付近に配置されている(図2)。リンク接続部77Bは、図4のリンク77の下端部に相当する。そして、リンク接続部77Bには、ガイライン67のガイライン第1接続部67Sが接続される。この結果、ガイライン67がラチスマスト65のマスト先端部65Qに回動可能に軸支される。また、図4に示すように、本実施形態では、ガイライン67のガイライン第1接続部67S(図4の上端部、図2では後端部)は、左右方向において隣接するラチスマスト65のフレーム材(外フレーム65A、内フレーム65B)同士の間に配置されている。また、図4に示すように、ガイライン67の一対のガイライン第2接続部67Tが、下部スプレッダ85の両端部に接続、固定される。
次に、作業者は、ブーム16を吊り上げるための吊り具90(図3)を準備する(吊り具準備工程)。そして、作業者は、図5に示すように、ラチスマスト65のマスト先端部65Qから垂下された上部スプレッダ80に吊り具90を接続する(接続工程)。この結果、ブーム起伏用ウインチ66(図3)によるブーム起伏用ロープ68の巻き取り動作に連動して吊り具90が上昇する。
吊り具90は、フレーム91と、吊りロープ92と、を備える。フレーム91は、左右方向に延びるように配置され、上部スプレッダ80の一対の上部スプレッダ接続部80Sに接続されている。また、吊りロープ92は、フレーム91の両端部に一対備えられている。フレーム91と吊りロープ92とは、公知のシャックルによって接続されている。
作業者は、吊り具90のフレーム91を上部スプレッダ80に接続した後、吊りロープ92をブーム16に接続する(接続工程)。この際、図5に示すように、一対の吊りロープ92は、ブーム16の後フレーム161の角部にそれぞれ接続される。なお、図3では、ブーム16における吊り具90の接続箇所が、被接続部16Tにて示されている。被接続部16Tは、ブーム16の重心Wよりもブーム基端部16P側に設定されている。なお、吊り具の構造は図5の吊り具90に限定されるものではなく、スリングなどを含め公知のものを使用することが可能である。
次に、作業者は、マスト先端部65Qから垂下されたガイライン67によってブーム16を支持しながら、ブーム起伏用ウインチ66の巻き取り動作によってブーム16のブーム基端部16P側を吊り上げ、ブーム基端部16Pのブームフット16Sが旋回体12の軸支部12Sに至るまで、ブーム16および旋回体12の少なくとも一方を水平方向に移動させる(移動工程)。この際、マスト起伏用ウインチ30がマスト起伏用ロープ38を巻き取ることで、ラチスマスト65が図3の矢印DA方向に回動されてもよく、また、旋回体12を含む走行体14が図3の矢印DB方向に移動されてもよい。更に、ブームフット16Sの位置合わせのために、旋回体12が旋回制御されてもよい。
更に、作業者は、不図示のピンをブームフット16Sおよび軸支部12Sに挿入することで、ブーム基端部16Pを旋回体12の軸支部12Sに固定する(固定工程)。なお、旋回体12からブーム16が取り外される際には、ブーム16が吊り上げられながら、上記と逆の手順が実行される。
旋回体12へのブーム16の取付が完了すると、吊り具90が上部スプレッダ80およびブーム16から取り外される。更に、上部スプレッダ80は、ブーム16のブーム先端部16Qに接続される。図6は、図2のブーム先端部16Qの周辺を、矢印C方向に沿って見た図である。ブーム16が略鉛直方向に沿うような姿勢とされた場合において、ブーム16は、後フレーム161と、第1前フレーム162と、第2前フレーム163と、を備える。後フレーム161は、ブーム16の後側部分において左右方向に延びるフレームである。第1前フレーム162および第2前フレーム163は、ブーム16の前側部分において左右方向に延びるフレームである。第2前フレーム163の前方には、ジブ18を回動可能に軸支するためのジブ軸支部164が配置されている。図6に示すように、ブーム16の取付作業に使用された上部スプレッダ80は、接続部95を介してブーム16の後フレーム161に接続される。接続部95は、一対の上部スプレッダ接続部80Sに接続される。
図11は、本発明の実施形態と比較される他のクレーン10Mにおいて、ラチスマスト65Zによってブーム16Zが吊り上げられる様子を示した側面図である。本実施形態と同様に、ラチスマスト65Zは、旋回体12Zに回動可能に支持されている。なお、図11では、説明のために、ラチスマスト65Zの対地角(長手方向に延びるラチスマスト65Zの中心線と水平線とがなす角度)が第1の対地角に配置された場合(10X)と、ラチスマスト65Zの対地角が第1の対地角よりも小さな第2の対地角に配置された場合(10Y)とが、部分的に重なって示されている。クレーン10Mは、本実施形態に係るクレーン10と比較して、下部スプレッダ85Z、上部スプレッダ80Z、ブーム起伏用ロープ68Zおよびガイライン67Zの配置において相違する。すなわち、下部スプレッダ85Zは、ラチスマスト65Zの先端部(回動端部)に回動可能に接続される。また、上部スプレッダ80Zは、クレーン10Mの使用状態において、下部スプレッダ85Zよりもブーム16Zの先端部側に間隔をおいて配置される。ブーム起伏用ロープ68Zは、上部スプレッダ80Zおよび下部スプレッダ85Zに備えられた不図示のシーブ間に掛け回される。ガイライン67Zは、上部スプレッダ80Zおよびブーム16Zの先端部を接続する。クレーン10Mにおいて、ブーム16Zが吊り上げられる場合、図11に示すように、ラチスマスト65Zの先端部から下部スプレッダ85Z、上部スプレッダ80Zおよびガイライン67が垂下される。ガイライン67Zの先端には不図示の吊り具が備えられ、ブーム16Zに接続される。
このようなクレーン10Mでは、ブーム16Zの重心Wよりも基端側(PX)を吊り上げるためには、ラチスマスト65Zの対地角が大きく設定される必要がある(図11の10X)。この場合、ラチスマスト65Zの先端部に軸支された下部スプレッダ85Zが、ラチスマスト65の先端部と干渉する。下部スプレッダ85Zは、図4の下部スプレッダ85と同様に左右方向に長く延びているため、図4の外フレーム65A、内フレーム65Bと干渉しやすい。この場合、クレーン10Mのブーム起伏用ロープ68Zや下部スプレッダ85Zが損傷する恐れがある。
一方、上記のような干渉を避けるために、ラチスマスト65Zの対地角を小さく設定した場合(図11の10Y)、ブーム16Zの重心Wよりも先端側(PY)を吊り上げることとなる。この場合、ブーム16Zの基端側が上昇せず、ブーム16の先端側が上昇しやすい。このため、ブーム16Zの取付が円滑に実施できない。この場合、ブーム16Zの重心Wの位置を先端側にずらすために、ブーム16の先端にアンカーウェイトを配置する必要が生じ、ブーム16Zの取付工程が複雑化・長期化してしまう。
一方、本実施形態では、図4に示すように、ラチスマスト65のマスト先端部65Qにはガイライン67が軸支されており、ブーム16の吊り上げ時に、下部スプレッダ85はマスト先端部65Qよりも下方に配置されている。このため、クレーン10の組立分解時に、ガイライン67およびブーム起伏用ロープ68がマスト先端部65Qから垂下された状態でラチスマスト65の姿勢が変化されても、ラチスマスト65のマスト先端部65Qと下部スプレッダ85および上部スプレッダ80とが干渉することが抑止される。また、各スプレッダ間に掛け回されたブーム起伏用ロープ68が損傷する恐れが解消される。そして、ラチスマスト65が鉛直方向に沿うような姿勢に近づくこと(対地角が90度に近づくような姿勢)ができるため、旋回体12に近い位置でブーム16を吊り上げることができる。
なお、本実施形態に係るガイライン67について付言すると、ガイライン67は、上部スプレッダ80がブーム先端部16Qに接続された状態において、マスト先端部65Qと下部スプレッダ85とを連結することでブーム16の起伏を可能する。また、ガイライン67は、上部スプレッダ80がブーム先端部16Qから脱離された状態において、ブーム起伏用ロープ68が掛け回された下部スプレッダ85および上部スプレッダ80を支持しながら、マスト先端部65Qから垂下される垂下姿勢をとることが可能とされる。そして、ガイライン67の上記の機能が満たされるように、ガイライン67のガイライン第1接続部67S(一端部)がマスト先端部65Qに回動可能に軸支され、ガイライン67のガイライン第2接続部67T(他端部)が下部スプレッダ85に接続される。
更に、本実施形態では、図4に示すように、ガイライン67のガイライン第1接続部67Sは左右方向において隣接する外フレーム65Aおよび内フレーム65Bの間に配置されている。このため、マスト先端部65Qとガイライン67とが強く干渉することが抑止される。なお、図4に示すように、外フレーム65Aと内フレーム65Bとの間には、空間部が上下方向に長く延びるように形成されている。このため、ブーム16の取付作業のうちラチスマスト65の準備工程やブーム16の移動工程において、ラチスマスト65が大きく回動されても、ガイライン第1接続部67S(図4)が外フレーム65Aと内フレーム65Bとの間に進入することができる。このため、作業者は、ラチスマスト65とガイライン67との干渉に気を取られることなく、ラチスマスト65の対地角を設定するとともに、ブーム16の吊り上げ、装着作業を進めることができる。このため、他の補助クレーンによってブーム16を吊り上げる場合と比較しても、ブーム16の吊り上げが効率的に実施可能とされる。
また、本実施形態では、クレーン10がもともと備えるブーム起伏用ロープ68およびマスト起伏用ウインチ30を利用して、クレーン10の組立時にラチスマスト65を回動させることができる。また、ラチスマスト65を回動させながら、ブーム16を吊り上げることができる。
以上、本発明の各実施形態に係るクレーン10、およびクレーン10におけるブーム16の取付方法について説明した。なお、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明に係るクレーンは、所定のブームおよびマストを備えるものであればよい。更に、本発明では、以下のような変形実施形態が可能である。
(1)上記の実施形態では、図2に示すように、上部スプレッダ80がブーム16のブーム先端部16Qに接続される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図7は、本発明の変形実施形態に係るクレーン10Aの側面図である。図8は、クレーン10Aにおいて、ブーム16が旋回体12に装着される様子を示す側面図である。図9は、クレーン10Aにおいて、ブーム16に吊り具90が接続された様子を示す正面図であり、図8の吊り具90がブーム16に接続された様子を矢印A方向に沿って見た図である。図10は、クレーン10Aにおいて、上部スプレッダ80および後記のガイライン96がブーム16に接続された様子を示す上面図であり、図7の矢印B方向に沿って見た図である。なお、本変形実施形態では、先の実施形態と比較して、クレーン10Aがガイライン96を備える点で主に相違するため、当該相違点を中心に説明し、共通する点の説明を省略する。なお、図7乃至図10において、先の実施形態に係るクレーン10と同様の構造、機能を備える部材については同じ符号を付している。
図7を参照して、クレーン10Aは、ガイライン96を備える。ガイライン96は、金属製の板材/線材やロープなどからなる。ガイライン96は、上部スプレッダ80とブーム16のブーム先端部16Qとを接続する。このような構成においても、図8に示すように、ブーム16の吊り上げ時には、ラチスマスト65のマスト先端部65Qに対向するようにガイライン67が配置される。このため、ラチスマスト65のマスト先端部65Qと下部スプレッダ85、上部スプレッダ80とが干渉することが抑止される。また、本変形実施形態に係るクレーン10Aにおいても、図4に示すように、隣接する外フレーム65Aと内フレーム65Bとの間に、ガイライン67が配置されることで、ラチスマスト65のマスト先端部65Qとガイライン67との干渉が抑止される。
更に、ブーム16の吊り上げ時には、図9に示すように、ガイライン96の下端部に吊り具90を装着することができる。また、図10に示すように、ブーム16の後フレーム161には、接続部95及びガイライン96を介して、上部スプレッダ80を接続することができる。なお、他の変形実施形態において、ガイライン96をブーム16の後フレーム161に直接接続してもよい。
なお、本変形実施形態に係るクレーン10Aでは、図7に示すように、上部スプレッダ80がブーム先端部16Qよりも後方に所定の間隔をおいた位置に配置される。このため、先の実施形態に係るクレーン10と比較して、ブーム起伏用ロープ68の全長を縮小することができる。
(2)また、上記の実施形態では、図1に示すようにクレーン10がジブ18を備える態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図7の変形実施形態に係るクレーン10Aに示すように、ブーム16のブーム先端部16Qから主巻ロープ50および主フック57が垂下され、所定の被吊り上げ物を吊り上げる態様でもよい。
(3)また、先の実施形態では、旋回体12に対するブーム16の取付に際して、予めブーム16が組み立てられ、ブーム16全体がラチスマスト65によって吊り上げられる態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、ブーム基端部16Pを含む基端側部材16A(図1)(ブーム16の構造体)が図3に示すような工程で吊り上げられてもよい。なお、このように、基端側部材16Aのみが吊り上げられる場合には、図3のブーム16の重心Wよりも、基端側部材16Aの重心位置は旋回体12に近い位置となる。この場合、ラチスマスト65のマスト先端部65Qにガイライン67が軸支され、ラチスマスト65が大きな対地角まで引き起こされる本発明の作用効果が一層発現される。換言すれば、図11に示すようなクレーン10Mでは、ラチスマスト65Zと下部スプレッダ85Zとが干渉するため、旋回体12Zに近い位置で、基端側部材16Aのみを安定して吊り上げることが困難となる。
基端側部材16Aが旋回体12に装着された後も、同様に、ラチスマスト65を利用して中間部材16B,16C、および先端側部材16Dを吊り上げ、ブーム16を順次組み立てることができる。
(4)また、上記の実施形態では、ラチスマスト65の外フレーム65Aおよび内フレーム65Bが、上下および前後に延びる一対のフレーム部分からなり、それぞれ複数の主材パイプによって面状に形成される態様にて説明した。この際、図4に示すように、ガイライン67のガイライン第1接続部67Sは、左右方向において隣接する外フレーム65Aおよび内フレーム65Bの間に配置され、図2に示すように、リンク支点部77Aは、ラチスマスト65の略中心軸付近に配置されている。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。リンク支点部77A(ガイライン第1接続部67S)は、ラチスマスト65の中心軸付近ではなく、外フレーム65Aおよび内フレーム65Bの前側の主材パイプ付近において、隣接する外フレーム65Aおよび内フレーム65Bの間に配置されるものでもよい。また、リンク支点部77A(ガイライン第1接続部67S)は、ラチスマスト65のうちブーム16側の面上に配置されてもよい。