JP6633363B2 - ボールペンチップ及び該ボールペンチップの製造方法並びに該ボールペンチップを具備した筆記具 - Google Patents
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Description
この従来技術では、転写ボールを被筆記面に押し付けた際の押圧力により、合成樹脂製のチップ本体が若干弾性変形するため、転写ボール及びチップ本体を硬質金属材料によって形成した一般的なボールペンチップに比べて、ソフトな筆記感触を得ることができる。
また、ボールペンチップの軸線を被筆記面に対し適度に傾斜させた通常の筆記姿勢にて筆記が行われた場合、転写ボールが被筆記面から受ける押圧力の径方向成分により、転写ボールを抱持するチップ本体前端側の周壁部が撓むおそれがある。
したがって、上記従来技術では、前述した寸法精度の低下や、チップ本体前端側の撓み等に起因して、転写ボールとチップ本体内面との隙間寸法に部分的な偏りが生じて、インク吐出量が不安定になるおそれがある。
硬質材からなる略筒状のチップ本体と、前記チップ本体内の前端側に回転自在に抱持された転写ボールと、前記転写ボールを前記チップ本体内で後方側から受けるとともに中心側にインク流通孔を有する環状の受体とを具備し、前記受体は、前記硬質材よりも軟らかい軟質材から形成され、前記チップ本体の内面に一体的に固定され、前記チップ本体の内周面には、前後部分に対し括れた形状の縮径部が設けられ、この縮径部の内周面に、前記受体が略筒状に固定され、前記受体の内周面には、インク誘導溝が設けられ、前記インク誘導溝は、前記受体を径外方向へ貫いて前記縮径部の内周面を凹ませるとともに、前記受体及び前記縮径部を前後方向へ貫通していることを特徴とするボールペンチップ。
また、他の発明としては、以下の構成を具備する。
硬質材からなる略筒状のチップ本体と、前記チップ本体内の前端側に回転自在に抱持された転写ボールと、前記転写ボールを前記チップ本体内で後方側から受けるとともに中心側にインク流通孔を有する環状の受体とを具備し、前記受体が前記硬質材よりも軟らかい軟質材から形成され前記チップ本体の内面に一体的に固定されているボールペンチップの製造方法であって、軸方向へ連続する軟質層と、該軟質層の外周を覆って軸方向へ連続する硬質層とを一体に具備する素材に対し、除去加工を施すことで、前記硬質層からなる前記チップ本体と、前記軟質層からなる前記受体とを形成するようにしたボールペンチップの製造方法。
ここで、前記「硬質材よりも軟らかい軟質材」とは、前記チップ本体の材質に相対し前記受体の材質が軟らかいものであることを意味する。したがって、前記構成には、前記チップ本体を金属材料により形成するとともに、前記受体を合成樹脂材料により形成した態様や、前記チップ本体を合成樹脂材料により形成するとともに、前記受体を前記チップ本体の合成樹脂材料よりも軟らかい合成樹脂材料により形成した態様、前記チップ本体を金属材料により形成するとともに、前記受体を前記チップ本体の金属材料よりも軟らかい金属材料により形成した態様や等を含む。
そして、前記構成によれば、軟質材からなる受体により転写ボールを受けるようにしているため、ソフトな筆記感触が得られる上、チップ本体における受体よりも前側の部分について、寸法精度の低下や変形を抑制することができ、ひいては、インクを良好に吐出させることができる。
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
なお、本明細書中、「前方」とは、ボールペンチップの先端方向を意味し、「後方」とは、その逆方向を意味する。また、「径外方向」とは、ボールペンチップの径方向において中心部から離れる方向を意味し、「径内方向」とは、その逆方向を意味する。
このチップ本体10内には、前側から順に、ボール抱持壁面11、縮径部12、先窄み孔13、大径孔14が形成され、これらの内部空間は前後方向に連通している。
そして、ボール抱持壁面11よりも後側には、括れた形状の縮径部12が設けられる。
大径孔14は、先窄み孔13の後端から後方へ連続する略円筒状に形成される。
前記軟質材には、例えば、POM(ポリアセタール)やPE(ポリエチレン)等の合成樹脂材料が用いられる。
この受体30は、後述する製造工程により、縮径部12の内周面に一体に形成される。この受体30の内周面は、後方から前方へインクを流通させるインク流通孔31として機能する。
各インク誘導溝10bは、受体30を前後方向へ貫通している。また、各インク誘導溝10bは、受体30を径外方向へ貫いている。このインク誘導溝10bの底部は、縮径部12内周面よりも径外方向へ凹んで位置する。図2中の二点鎖線は、インク誘導溝10bの底部の径方向位置を示す。
なお、インク誘導溝10bの他例としては、受体30を前後方向に貫通しておらずに、受体30の前側部分にのみに形成された溝とすることも可能である。
そして、これら二つの前端面12a,32は、略面一に接続されており、後方へ向かって縮径する略平坦な環状傾斜面を構成している。
そして、この環状傾斜面(前端面12a,32)、及び前記ボール抱持壁面11等によって、転写ボール20を回転自在に収容するボールハウス10aが構成される。
この転写ボール20の外径は、縮径部12の内径(換言すれば、受体30の外径)よりも大きく、且つボール抱持壁面11の内径よりも若干小さい径に設定される。
そして、転写ボール20の後半部側は、硬質材からなる縮径部12の前端面12aに接触せずに、軟質材からなる受体30の前端部に接触して受けられている。図示例について、より詳細に説明すれば、転写ボール20の後半部側は、前端面32とインク流通孔31とが交差する角部分に接触している。
チップ本体10は、中実円柱状の素材Aを除去加工することにより形成される。前記除去加工は、具体的には切削加工(研削加工や研磨加工を含む)とする。
素材Aは、軸方向へ連続する軟質層a1と、該軟質層a1の外周を覆って軸方向へ連続する硬質層a2とを一体に有する。
軟質層a1は、上述した軟質材(合成樹脂材料)から長尺円柱状に形成されている。また、硬質層a2は、上述した硬質材(金属)から長尺円筒状に形成されている。
この素材Aは、前記除去加工を行う前工程として、硬質層a2からなる円筒状部材a2の内部に、前記軟質材を注入して軟質層a1を一体成型することで形成される。
詳細に説明すれば、略長尺軸状の素材Aに対し、その後方側から、段階的に径を縮小した複数のドリルやリーマ等が挿入されることで、先窄み孔13及び大径孔14等が穿孔される。
さらに、前方から、より太いドリルが挿入されることで、ボール抱持壁面11、縮径部12の前端面12a、及び受体30の前端面32等が形成される(図4及び図5参照)。なお、図4中の二点鎖線はドリルを示す。
筆記具100は、ノック部140の押圧操作によりボールペンリフィール120前端のボールペンチップ1を軸筒110前端から突出させ、この突出状態を、クリップ111を軸筒中心側へ撓ませる操作により解除するようにした出没式のボールペンである。
ボールペンリフィール120は、インク収容管121の前端にボールペンチップ1を接続し、これらの内部にインクを充填してなる。
しかも、受体30以外の部分が硬質材料からなるため、ボール抱持壁面11及び内向き環状突起11aについて、寸法精度が比較的高く、且つ筆記圧を受けた際も変形を生じ難い。このため、インク漏れを生じ難いのは勿論、インク吐出量を安定させることができる。
その上、筆圧が強すぎて、転写ボール20が後退しすぎた場合には、該転写ボール20の後端側を受ける受体30(軟質材)が弾性変形し、転写ボール20の後端側が縮径部12の前端面12a(硬質材)に当接する。このため、転写ボール20の後退量を規制することができ、ひいては、転写ボール20の後退しすぎによりインク漏れが生じたり、受体30の前端面32がへたったり等するのを防ぐことができる。
さらに、筆圧が強すぎて転写ボール20が後退しすぎたまま筆記が行われると、チップ本体10の最前端部(内向き環状突起11aの外径側の角部分)が、紙面等の被筆記面に擦れてしまい、前記最前端部が摩耗したり、前記被筆記面が傷ついたり、摩擦抵抗によって筆感が低下したり等するおそれがあるが、本実施の形態では、このような問題も解消することができる。
さらに他例としては、前端面12aと前端面32のうちの一方又は双方を軸線に対し略直交する平坦面状に形成した態様や、前端面12aと前端面32のうちの一方又は双方を凹曲面状に形成した態様等とすることも可能である。
10:チップ本体(硬質材)
10a:ボールハウス
10b:インク誘導溝
11:ボール抱持壁面
11a:内向き環状突起
12:縮径部
12a:前端面(環状傾斜面)
20:転写ボール
30:受体(軟質材)
31:インク流通孔
32:前端面(環状傾斜面)
100:筆記具
A:素材
a1:軟質層
a2:円筒状部材
Claims (7)
- 硬質材からなる略筒状のチップ本体と、前記チップ本体内の前端側に回転自在に抱持された転写ボールと、前記転写ボールを前記チップ本体内で後方側から受けるとともに中心側にインク流通孔を有する環状の受体とを具備し、前記受体は、前記硬質材よりも軟らかい軟質材から形成され、前記チップ本体の内面に一体的に固定され、
前記チップ本体の内周面には、前後部分に対し括れた形状の縮径部が設けられ、この縮径部の内周面に、前記受体が略筒状に固定され、
前記受体の内周面には、インク誘導溝が設けられ、
前記インク誘導溝は、前記受体を径外方向へ貫いて前記縮径部の内周面を凹ませるとともに、前記受体及び前記縮径部を前後方向へ貫通していることを特徴とするボールペンチップ。 - 前記縮径部の前端面から前記受体の前端面にわたって、後方へ向かって縮径する環状傾斜面が形成されている請求項1記載のボールペンチップ。
- 前記転写ボールが、前記硬質材からなる前記縮径部の前端面に接触せずに、前記軟質材からなる前記受体の前端部に接触するようにした請求項2記載のボールペンチップ。
- 硬質材からなる略筒状のチップ本体と、前記チップ本体内の前端側に回転自在に抱持された転写ボールと、前記転写ボールを前記チップ本体内で後方側から受けるとともに中心側にインク流通孔を有する環状の受体とを具備し、前記受体が前記硬質材よりも軟らかい軟質材から形成され前記チップ本体の内面に一体的に固定されているボールペンチップの製造方法であって、
軸方向へ連続する軟質層と、該軟質層の外周を覆って軸方向へ連続する硬質層とを一体に具備する素材に対し、除去加工を施すことで、前記硬質層からなる前記チップ本体と、前記軟質層からなる前記受体とを形成するようにしたボールペンチップの製造方法。 - 前記除去加工を施す前工程として、前記硬質層からなる筒状部材の内部に前記軟質層を成型加工して、前記素材を形成するようにした請求項4記載の製造方法。
- 前記軟質層の中心側を除去加工して前記インク流通孔を形成する工程と、前記インク流通孔よりも前側となる部分を前記硬質層にいたるまで除去加工して前記受体の前端面を形成する工程とを含む請求項4又は5記載の製造方法。
- 請求項1乃至3何れか1項記載のボールペンチップを具備した筆記具。
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