JP6631333B2 - パワーモジュール用基板の製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、ヒートシンク接合前に金属層のろうシミを除去する解決手段を採用した。
ろうシミの主成分は銀であり、銀剥離液を用いて除去することができる。銀剥離剤としては市販の銀めっき剥離剤等を用いることができる。このろうシミの銀を銀剥離剤によって除去すると、その部分の表面の銀が除去された分、凹凸が生じて表面が粗くなる。このため、その上にヒートシンクをはんだ付けすることにより、はんだ層に対するアンカー効果が期待でき、金属層とヒートシンクとの強固な接合状態を維持することができる。
また、セラミックス基板の表面に金属層を形成する場合、銅又は銅合金からなる金属板を用意し、これをセラミックス基板の表面に積層してろう付けする。この場合、金属板は一般にプレスによる打ち抜きによって形成され、このため、金属板の一方の面の周縁部がだれ面に形成され、他方の面の周縁部にバリが生じ易い。そして、この金属板をセラミックス基板に積層する際にだれ面側をセラミックス基板に重ねると金属板が動きやすいため、バリが生じている面をセラミックス基板に重ねて接合すると強固な接合を得ることができる。しかしながら、接合時にはカーボン板の当て板によってセラミックス基板と金属板との積層体を挟み込んで荷重をかけると、金属板のだれ面の部分で当て板との間に隙間が形成され、この隙間に溶融したろう材が入り込んで金属層表面のろうシミとなる。
本発明の方法を用いることにより、金属層のだれ面における銀を除去してはんだを強固に接合することができ、打ち抜き成形した金属板とセラミックス基板との強固な接合と相俟って、長期的に信頼性の高いヒートシンク付きパワーモジュール用基板を製造することができる。
パワーモジュール用基板10は、図1に示すように、セラミックス基板11の一方の面に、回路層12が厚さ方向に積層された状態に接合され、セラミックス基板11の他方の面に金属層13が厚さ方向に積層された状態に接合されている。そして、金属層13にヒートシンク15が接合されることにより、図2に示すヒートシンク付きパワーモジュール用基板20が構成され、回路層12の表面にはんだ付けによって半導体素子31が搭載され、必要な配線、樹脂によるモールディングがなされることにより、パワーモジュールが構成される。
本実施形態のパワーモジュール用基板10の好ましい組合せ例としては、例えばセラミックス基板11が厚み0.32mmの窒化珪素、回路層12が厚み0.8mmの純銅板、金属層13が厚み0.8mmの純銅板で構成される。これら回路層12及び金属層13とセラミックス基板11とは銀チタン(Ag−Ti)系又は銀銅チタン(Ag−Cu−Ti)系等のろう材を用いた活性金属ろう付け法によって接合される。
この製造方法においては、まず、金属板、セラミックス基板を形成(金属板・セラミックス板形成工程)し、これらを積層状態に接合(接合工程)することによりパワーモジュール用基板10を作製し、金属層13の表面に付着した銀を除去(銀除去工程)した後、金属層13にヒートシンク15をはんだ付け(ヒートシンクはんだ付け工程)することによりヒートシンク付きパワーモジュール用基板20を作製する。
以下、この工程順に説明する。
銅又は銅合金からなる平板をプレス成形して、回路層12及び金属層13となる金属板17を打ち抜き加工する。この打ち抜き加工においては、プレスのパンチとダイとの間のクリアランスにより、図3に示すように、金属板17には、その一方の面(加工時にダイの成形孔に向いた面)の周縁部にだれ面17aが形成され、他方の面(成形時にパンチに押圧される面)の周縁部にバリ17bが生じ易い。
一方、セラミックス基板11は、複数個のパワーモジュール用基板10を形成できる大きさの平板を作製して、個々のパワーモジュール用基板10の大きさに分割できる溝を形成しておく。
そして、各セラミックス基板11の領域にそれぞれ金属板17を活性金属ろう材を介して積層する。このとき、図3に示すように金属板17のだれ面17aがセラミックス基板11との接合面とは反対側に配置されるように積層する。
この積層体Sを図5に示す加圧装置によって積層方向に加圧した状態とする。
この加圧装置110は、ベース板111と、ベース板111の上面の四隅に垂直に取り付けられたガイドポスト112と、これらガイドポスト112の上端部に固定された固定板113と、これらベース板111と固定板113との間で上下移動自在にガイドポスト112に支持された押圧板114と、固定板113と押圧板114との間に設けられて押圧板114を下方に付勢するばね等の付勢手段115とを備えている。
接合体を銀剥離液に浸漬させ、回路層12及び金属層13表面に付着した銀を除去する。ろう材の主成分は銀であるので、銀剥離液を用いる。
銀剥離液としては、例えば佐々木化学薬品株式会社製「エスバックAG−601」が用いられる。この「エスバックAG−601」は、酢酸及びキレート剤を主成分とした銀めっき剥離剤であり、過酸化水素水及び水とを配合した状態で用いられ、過酸化水素水で銀を酸化(イオン化)させて、キレート剤の作用で液中に円滑に溶かし出すことができる。
その好ましい配合比は、以下の通りである。
「エスバックAG−601」:1容量
35%過酸化水素水:5容量
水:4容量
この銀剥離液に接合体を適宜の時間浸漬すると、回路層12及び金属層13の周縁部に付着した銀が除去される。その結果、その周縁部が中央部分の表面に比べて粗い状態となり、回路層12及び金属層13の中央部分の表面の算術平均粗さRaが0.3μm以上0.9μm以下であるのに対して、周縁部の算術平均粗さRaが1.0μm以上5.0μm以下となる。
この場合、回路層12や金属層13の周縁部の表面粗さは、接合時のろうシミ状態に依存し、ろうシミ量が多いほど粗くなる。このため、ろうシミ量を制御すれば、銀除去工程後の表面粗さも制御することができ、金属板17とセラミックス基板11との接合面積から割り出される必要ろう材量に対する増加分を制御すればよい。
なお、この周縁部は、回路層12や金属層13の周縁からからの幅Lが0.05mm以上5mm以下の範囲である。なお、幅Lは回路層12や金属層13の周縁のダレ量によって制御することが可能である。
このようにして製造されたパワーモジュール用基板10の金属層13にヒートシンク15をはんだ付けすることにより、図2に示すヒートシンク付きパワーモジュール用基板20が形成される。このとき、ヒートシンク15は金属層13の全面にはんだ付けされる。したがって、先の銀除去工程で表面が粗くなった金属層13の周縁部にもはんだが付着して、表面の凹凸部分に侵入し、そのアンカー効果により金属層13とヒートシンク15とが強固に接合状態を維持することができる。図2において、符号18はそのはんだ接合層を示す。
そして、接合体を水酸化ナトリウム水溶液で処理した後、水洗し、硫酸と過酸化水素の混合水溶液で洗浄処理を行った。この洗浄処理の時間によって中央部分のRaを表1の範囲内に調製した。
その接合体を前述のようにして「エスバックAG−601」で作った25℃の銀剥離液に5分間浸漬した。
この金属層の表面に、ニッケルめっきされたアルミニウム製ヒートシンク(厚み5mm)をSn‐Ag系のはんだを用いてはんだ付けし、ヒートシンク付きパワーモジュール用基板を得た。
なお、比較例1については、銀剥離液の処理を行わなかった。
そして、得られたヒートシンク付きパワーモジュール用基板について、−40℃×5分と150℃×5分との間で繰り返す冷熱サイクルを2000サイクル実施し、試験前後の金属層とヒートシンクとの接合界面を超音波探傷装置を用いて撮影し、接合率=(接合面積−非接合面積)/接合面積を求めた。
評価結果を表1に示す。
実施形態では金属板、セラミックス基板接合工程後に銀除去工程によって金属層、回路層とも周縁部の銀を除去したが、本発明においては、銀除去工程は少なくとも金属層の周縁部に対して行われればよい。
11…セラミックス基板
12…回路層
13…金属層
15…ヒートシンク、
17…金属板
17a…だれ面
17b…バリ
18…はんだ接合層
20…ヒートシンク付きパワーモジュール用基板
31…半導体素子、
110…加圧装置
116…クッションシート
Claims (3)
- セラミックス基板に銅又は銅合金からなる金属板を銀を含有する活性金属ろう材により接合して金属層を形成した後、前記金属層の表面を銀剥離液に接触させて、前記金属層の周縁部に付着した銀を除去し、
前記金属層は、金属板を打ち抜き成形したものを前記セラミックス基板に積層して接合することにより形成されたものであり、打ち抜き成形時に生じるだれ面を前記セラミックス基板との接合面とは反対面に配置して前記金属板を前記セラミックス基板に接合することを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。 - 前記銀を除去した後の前記金属層の周縁部における算術平均粗さRaを1.0μm以上5.0μm以下とすることを特徴とする請求項1記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
- 請求項1又は2に記載のパワーモジュール用基板の製造方法によって製造されたパワーモジュール用基板の前記金属層の前記セラミックス基板とは反対面にヒートシンクをはんだ付けすることを特徴とするヒートシンク付きパワーモジュール用基板の製造方法。
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