JP6630028B1 - ピペット及び液体採取方法 - Google Patents

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Abstract

ピペットにおいて、キャピラリーは、長さ方向の両端である第1端及び第2端が開口している。圧力室は、第2端を介してキャピラリーの内部に通じている。駆動部は、圧力室の容積を変化させる。制御部は、圧力室の容積が増加して第1端から液体が吸引されるように駆動部を駆動させる第1信号を出力する。第1信号において、吸引信号は、圧力室の容積が、液体が吸引される前の容積から第1増加量で増加して第1吸引後容積になるように駆動部を駆動させる。ブレーキ信号は、吸引信号に続いて出力され、圧力室の容積が第1増加量よりも絶対値が小さい減少量で第1吸引後容積から減少するように駆動部を駆動させる。

Description

本開示は、ピペット及び液体採取方法に関する。
従来、ポンプ作用装置を駆動させてキャピラリー内部に負圧を生じさせてキャピラリー内に液体を吸引するピペットが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1のピペットは、ノズルキャップと、ノズルキャップに通じている容器と、容器の内面の一部を構成している静電アクチュエータとを有している。静電アクチュエータによって容器の内面の一部が撓み変形することによって、ノズルキャップから液体が吸引又は吐出される。そして、撓み量により液体の吸引量又は吐出量が規定される。
特開平07−213926号公報
本開示の一態様に係るピペットは、長さ方向の両端である第1端及び第2端が開口しているキャピラリーと、前記第2端を介して前記キャピラリーの内部に通じている圧力室と、前記圧力室の容積を変化させる駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、を有している。前記制御部は、前記圧力室の容積が増加して前記第1端から第1液体が吸引されるように前記駆動部を駆動させる第1信号を出力する。前記第1信号は、吸引信号と、ブレーキ信号とを含んでいる。前記吸引信号は、前記圧力室の容積が、前記第1液体が吸引される前の第1吸引前容積から第1増加量で増加して第1吸引後容積になるように前記駆動部を駆動させる。前記ブレーキ信号は、前記吸引信号に続いて出力され、前記圧力室の容積が前記第1増加量よりも絶対値が小さい減少量で前記第1吸引後容積から減少してブレーキ後容積になるように前記駆動部を駆動させる。
本開示の一態様に係る液体採取方法は、ピペットを用いる。前記ピペットは、長さ方向の両端である第1端及び第2端が開口しているキャピラリーと、前記第2端を介して前記キャピラリーの内部に通じている圧力室と、前記圧力室の容積を変化させる駆動部とを有している。前記液体採取方法は、接液ステップと、吸引ステップと、離液ステップと、ブレーキステップとを有している。前記接液ステップでは、前記第1端を液体に接触させる。前記吸引ステップでは、前記第1端を前記液体に接触させている状態で、前記駆動部によって前記圧力室の容積を増加させ、これにより、前記第1端から前記液体を前記キャピラリー内に吸引する。前記離液ステップでは、前記液体の一部が前記キャピラリー内に吸引された後、前記第1端を前記液体の残りから離す。前記ブレーキステップでは、前記吸引ステップの後、かつ前記離液ステップの前に、前記駆動部によって前記圧力室の容積を減少させる。
第1実施形態に係るピペットの具体例を模式的に示す断面図である。 図1のピペットの制御部が出力する信号における電圧の経時変化の一例を示す模式図である。 図3(a)、図3(b)、図3(c)、図3(d)及び図3(e)は図2の信号による作用を示す模式図である。 図2の信号のうちの一部の詳細を示す模式図である。 図5(a)、図5(b)、図5(c)、図5(d)、図5(e)及び図5(f)は図4の信号による作用を示す模式図である。 図6(a)及び図6(b)は図4の信号に含まれるブレーキ信号の設定方法の例を説明するための模式図である。 図1のピペットの制御ユニットの信号処理系に係る要部構成を示すブロック図である。 図1のピペットに係る処理の手順の一例を示すフローチャートである。 第2実施形態に係るピペットにおける制御ユニットの信号処理系に係る要部構成を示すブロック図である。 第3実施形態に係るピペットにおける駆動信号の一部を示す模式図である。 図11(a)及び図11(b)はブレーキ信号が吸引量のばらつきに及ぼす影響を示す図である。 ブレーキ信号の開始タイミングが吸引量に及ぼす影響を示す図である。 圧力室の初期容積が吸引量に及ぼす影響を示す図である。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。同一の部材を示す複数の図面同士においても、形状等を誇張するために、寸法比率等は互いに一致していないことがある。
第2実施形態以降においては、基本的に、既に説明された実施形態との相違部分についてのみ述べる。特に言及がない事項については、既に説明された実施形態と同様とされてよい。
<第1実施形態>
[ピペットの概要]
図1は、本開示の実施形態に係るピペット1の構成を模式的に示す断面図である。なお、図面には、便宜上、直交座標系xyを付している。+x側は、ピペット1によって液体を吸引する際に下方とされる側である。
ピペット1は、キャピラリー10と、キャピラリー10内の気圧を変化させるピペット本体20と、ピペット本体20の動作を制御する制御ユニット24と、を有している。キャピラリー10の+x側の先端(第1端11)が液体に触れた状態で、ピペット本体20によってキャピラリー10の後端(第2端12)からキャピラリー10内が排気(減圧)されることによって、液体がキャピラリー10内に吸引される。このとき、例えば、キャピラリー10からの排気量を調整することによって、液体の吸引量を調整することができる。
[キャピラリー]
キャピラリー10は、長さ方向(x方向)の両端である第1端11及び第2端12が開口した筒状の形状を有している。なお、「筒状の形状」とは、1方向に長く(該1方向の長さが他の方向の長さに比較して長く)、中空であり、且つ両端が開口した形状を意味するものであり、円筒形のみを意味するものではない。
キャピラリー10の概略形状は、種々の形状とされてよい。例えば、キャピラリー10の横断面(長さ方向に直交する断面。以下、同様。)において、内縁(キャピラリー10の内面)及び/又は外縁(キャピラリー10の外面)の形状は、円形、楕円、卵形又多角形等とされてよい。また、例えば、横断面(内縁及び/又は外縁)の形状及び/又は大きさは、キャピラリー10の全長に亘って一定であってもよいし、キャピラリー10の全長の少なくとも一部において長さ方向の位置によって異なっていてもよい。また、例えば、キャピラリー10の横断面において、内縁と外縁とは、互いに相似形であってもよいし、相似形でなくてもよい。また、例えば、キャピラリー10の内部空間(流路)の中心線は、第1端11から第2端12へ直線状に延びていてもよいし、少なくとも一部において曲がっていてもよい。なお、本実施形態の説明では、便宜上、キャピラリー10の横断面(内縁及び外縁)は、長さ方向のいずれの位置においても円形であり、また、横断面の形状及び大きさは、長さ方向において一定であるものとする。
キャピラリー10の寸法は、採取する液体の量及び/又はピペット本体20への取り付け方法等の種々の事情に応じて適宜に設定されてよい。例えば、キャピラリー10の内径は、0.01mm以上1.0mm以下とされてよい。また、例えば、キャピラリー10の外径は、0.02mm以上2.0mm以下とされてよい。また、例えば、キャピラリー10の長さは、10mm以上100mm以下とされてよい。
キャピラリー10の材料は、種々のものとされてよい。例えば、当該材料としては、ガラス、樹脂、セラミックス及び金属を挙げることができる。樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリテトラフルオロエチレンを挙げることができる。また、例えば、キャピラリー10は、長さ方向の一部と他部とが互いに異なる材料によって構成されていてもよいし、及び/又は径方向の一部と他部とが互いに異なる材料によって構成されていてもよい。また、例えば、キャピラリー10は、一体形成された一つの部材から構成されていてもよいし、2以上の部材が互いに固定されて構成されていてもよい。また、例えば、キャピラリー10は、一の材料からなる部材の表面の少なくとも一部に他の材料からなる膜が形成されることにより構成されていてもよい。また、例えば、キャピラリー10の少なくも一部(すなわち一部又は全部)は、透光性を有する材料(例えば樹脂又はガラス)によって構成されてよい。
キャピラリー10の表面の少なくとも一部(すなわち一部又は全部)は、撥水性を有していてよい。撥水性を有するとは、例えば、液体の接触角が90°以上であることをいう。なお、ピペットの吸引対象の液体が特定されない場合においては、水の接触角を用いて撥水性の有無が判定されてよい。撥水性を有している場合の接触角は適宜に設定されてよい。例えば、接触角は、90°以上95°以下(すなわち90°に近い値)であってもよいし、95°以上150°以下であってもよいし、150°超であってもよい。なお、150°超は、いわゆる超撥水性を有しているといえる大きさである。
キャピラリー10の表面のうち撥水性を有する領域は適宜に設定されてよい。例えば、撥水性を有する領域は、第1端11の端面(+x方向に面している面)、キャピラリー10の内面のうち+x側の一部及びキャピラリー10の外面の+x側の一部を含んでいる。換言すれば、撥水性を有する領域は、液体に接触する領域を含んでいる。液体に接触する領域が撥水性を有していることにより、例えば、液体の付着及び/又は意図していない移動のおそれが低減され、液体の採取量の精度が向上する。
キャピラリー10(一部又は全部)は、例えば、撥水性を有する材料からなることによって表面に撥水性を有していてもよい。また、例えば、キャピラリー10(一部又は全部)は、撥水性を有さない材料からなる部材の表面に撥水膜が形成されることによって表面に撥水性を有していてもよい。
撥水膜としては、種々のものが用いられてよく、例えば、シランカップリング剤により形成される撥水膜、金属アルコキシド含有撥水膜、シリコーン含有撥水膜及びフッ素含有撥水膜を挙げることができる。キャピラリー10の表面への撥水膜の形成方法としては、種々の方法が用いられてよく、例えば、ドライプロセス法が用いられてもよいし、ウェットプロセス法が用いられてもよい。ドライプロセス法としては、例えば、物理気相成長法及び化学気相成長法が挙げられる。前者としては、例えば、物理蒸着法及びスパッタリング法が挙げられる。後者としては、例えば、化学蒸着(CVD:chemical vapor deposition)法及び原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法が挙げられる。ウェットプロセス法としては、例えば、ゾルゲル法、ディップコーティング法、塗布法が挙げられる。
キャピラリー10は、例えば、使い捨てとされており、ピペット本体20に対して着脱可能とされている。着脱方法は、適宜な方法とされてよい。例えば、キャピラリー10は、ピペット本体20の孔に圧入されて固定されてもよいし、ピペット本体20に設けられた不図示の機構による締め付け又は係止によって固定されてもよい。ただし、キャピラリー10は、繰り返し使われるものとされてもよいし、さらには、ピペット本体20に着脱不可能に固定(例えば接着)されていてもよい。
[ピペット本体]
ピペット本体20は、キャピラリー10の内部に通じている圧力室21(空洞)を有している。そして、ピペット本体20は、この圧力室21の容積を増加させることによってキャピラリー10内の減圧(排気)を行い、圧力室21の容積を減少させることによってキャピラリー10内の増圧(給気)を行う。これにより、例えば、キャピラリー10による液体の吸引及び吐出等が実現される。このような動作を実現するピペット本体20の構成は、適宜なものとされてよい。以下では、その一例を示す。
ピペット本体20は、例えば、キャピラリー10の内部に通じている流路(圧力室21を含む)を構成している流路部材35と、圧力室21の容積を変化させるアクチュエータ40と、流路部材35の内部(流路)と外部との連通を許容及び禁止するバルブ23とを有している。
(流路部材)
流路部材35の概略の外形及び大きさは適宜な形状とされてよい。図示の例では、流路部材35の概略の外形は、キャピラリー10に直列な軸状(x方向の長さが他の方向の長さよりも長い形状)とされている。また、その大きさは、例えば、ユーザが摘まむ、又は握ることができる大きさ(例えば最大外径が50mm以下)とされている。
流路部材35の内部空間は、例えば、既述の圧力室21と、キャピラリー10と圧力室21とを繋ぐ連通流路27と、連通流路(別の観点では圧力室21)と外部とを繋ぐ開放流路28とを有している。
圧力室21の形状、位置及び大きさ等は適宜に設定されてよい。図示の例では、圧力室21は、流路部材35において側面に位置している。また、例えば、圧力室21の概略形状は、アクチュエータ40と重なる方向(y方向)を厚さ方向とする、概ね一定の厚さの薄型形状である。ここでの薄型形状は、y方向の長さがy方向に直交する各方向の最大長さよりも短い形状である。圧力室21の平面形状(y方向に見た形状)は、円形、楕円、矩形又は菱形等の適宜な形状とされてよい。圧力室21の厚さ(y方向)は、例えば、10μm以上5mm以下である。圧力室21の径(y方向に直交する各方向における最大長さ)は、例えば、2mm以上50mm以下である。
連通流路27及び開放流路28の形状、位置及び大きさ等も適宜に設定されてよい。例えば、流路部材35は、キャピラリー10からキャピラリー10の長さ方向(x方向)に延びている第1流路22と、第1流路22の中途から第1流路22に交差する方向に延びて圧力室21に至る第2流路26とを有している。そして、第1流路22のうちの、第2流路26との接続位置からキャピラリー10側の部分と、第2流路26とによって連通流路27が構成されている。このような流路構成によって、例えば、液体(例えばその飛沫)が圧力室21へ侵入し、アクチュエータ40に付着するおそれが低減される。ひいては、付着した液体に起因してアクチュエータ40の動作特性が変化するおそれが低減される。
また、第1流路22は、例えば、キャピラリー10とは反対側にて流路部材35の外部へ通じている。そして、第1流路22のうちの、第2流路26との接続位置からキャピラリー10とは反対側の部分によって、開放流路28が構成されている。従って、液体が圧力室21に侵入しないように液体を逃がすための流路が、圧力室21を外部へ開放するための開放流路28に兼用されており、空間効率が向上している。
第1流路22及び第2流路26の横断面の形状及び寸法とは適宜に設定されてよい。例えば、第1流路22及び第2流路26の横断面は、直径が0.05mm以上2mm以下の円形である。また、第1流路22及び第2流路26の内径は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。第1流路22及び/又は第2流路26の横断面の形状及び大きさは、長さ方向において一定であってもよいし、変化していてもよい。
流路部材35は、適宜な材料からなる適宜な形状の部材が組み合わされて構成されてよい。図示の例では、流路部材35は、互いに接合された第1パーツ30及び第2パーツ60を有している。第1パーツ30は、圧力室21となる貫通孔を有している。第2パーツ60は、第1流路22及び第2流路26を有している。圧力室21は、第1パーツ30、第2パーツ60及びアクチュエータ40によって囲まれた空間によって構成されている。なお、第1パーツ30及び第2パーツ60それぞれも、複数の部材の組み合わせによって構成されてよい。第1パーツ30及び第2パーツ60の材料は、例えば、金属、セラミック若しくは樹脂又はこれらのいずれかの組み合わせとされてよい。
(アクチュエータ)
アクチュエータ40は、例えば、圧力室21の内面の一つを構成している。具体的には、例えば、アクチュエータ40は、概略板状とされており、第1パーツ30の貫通孔を第2パーツ60とは反対側から塞ぐように第1パーツ30に接合され、連通流路27が開口する内面とは反対側の内面を構成している。そして、アクチュエータ40は、圧力室21側へ撓むことによって(換言すれば圧力室21の内面を内側へ変位させることによって)、圧力室21の容積を減少させる。逆に、アクチュエータ40は、圧力室21とは反対側に撓むことによって(換言すれば圧力室21の内面を外側へ変位させることによって)、圧力室21の容積を増加させる。
上記のような撓み変形を生じさせるアクチュエータ40の具体的構成は、適宜なものとされてよい。例えば、アクチュエータ40は、ユニモルフ型の圧電素子によって構成されている。より詳細には、例えば、アクチュエータ40は、積層された2枚の圧電セラミック層40a、40bを有している。また、アクチュエータ40は、圧電セラミック層40aを挟んで互いに対向している内部電極42及び表面電極44を有している。圧電セラミック層40aは、厚さ方向に分極されている。
そして、内部電極42及び表面電極44によって圧電セラミック層40aに分極方向と同一方向に電圧を印加すると、圧電セラミック層40aは平面方向において収縮する。一方、圧電セラミック層40bは、そのような収縮を生じない。その結果、圧電セラミック層40aは、圧電セラミック層40b側へ撓む。すなわち、アクチュエータ40は、圧力室21側へ撓む。上記とは逆向きの電圧を印加した場合は、アクチュエータ40は、圧力室21とは反対側へ撓む。
アクチュエータ40の形状及び大きさ等は適宜に設定されてよい。例えば、アクチュエータ40は、適宜な平面形状の平板状である。平面形状は、圧力室21の平面形状と相似であってもよいし、相似でなくてもよい。平面視(y方向に見て)における各方向の最大長さは、例えば、3mm以上100mm以下である。アクチュエータ40の厚さ(y方向)は、例えば、10μm以上2mm以下である。アクチュエータ40を構成する各種の部材の材料、寸法、形状及び導通方法等も適宜に設定されてよい。以下に一例を示す。
圧電セラミック層40a、40bの厚さは、例えば、10μm以上30μm以下とされてよい。圧電セラミック層40a、40bの材料は、例えば、強誘電性を有するセラミック材料とされてよい。このようなセラミック材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO系、KNaNbO系、BaTiO系及び(BiNa)NbO系、BiNaNb15系のものを挙げることができる。圧電セラミック層40bは、圧電体以外の材料で構成されていても構わない。
内部電極42は、例えば、圧電セラミック層40aと、圧電セラミック層40bとの間に位置しており、アクチュエータ40と略同じ大きさを有している。内部電極42の厚さは、例えば1μm以上3μm以下とされてよい。内部電極42は、例えば、圧電セラミック層40aを貫通する貫通電極48と、アクチュエータ40の表面に位置し、貫通電極48に接続されている接続電極46とによって外部から導通可能となっている。
表面電極44は、例えば、圧電セラミック層40aの圧電セラミック層40bとは反対側(圧力室21に対して外側)に位置しており、表面電極本体44aと引出電極44bとを有している。表面電極本体44aは、例えば、圧力室21と略等しい平面形状を有しており、圧力室21と厚さ方向に重なるように設けられている。引出電極44bは、表面電極本体44aから引き出されるように形成されている。表面電極44の厚さは、例えば0.1μm以上1μm以下とされてよい。
内部電極42、表面電極44、接続電極46及び貫通電極48の材料は、例えば、金属材料とされてよい。より具体的には、例えば、内部電極42及び貫通電極48の材料は、Ag−Pdとされてよい。表面電極44及び接続電極46の材料は、例えば、Auとされてよい。
なお、アクチュエータ40又はアクチュエータ40の一部(例えば表面電極本体44aに重なる部分)を駆動部50ということがある。アクチュエータは、ユニモルフ型の圧電素子に限定されない。例えば、アクチュエータは、バイモルフ型の圧電素子であってもよいし、静電アクチュエータであってもよい。
(バルブ)
バルブ23は、例えば、開放流路28が外部へ通じる位置に設けられている。バルブ23の開閉により、流路部材35の内部と外部との連通が許容又は禁止される。連通が禁止されている状態では、圧力室21の容積の変化によってキャピラリー10内の減圧及び増圧が行われる。一方、連通が許容されている状態では、圧力室21の容積を変化させても、キャピラリー10内の減圧及び増圧は行われない。この減圧又は増圧が行われない作用の利用例については後述する。
バルブ23は、例えば、外部から入力される信号に応じて開閉動作を行う。バルブ23としては、電磁式バルブ又は圧電式バルブなど、種々のバルブを用いることができる。バルブ23は、信号が入力されないことによって閉状態となり、信号が入力されることによって開状態となるものであってもよいし、信号が入力されないことによって開状態となり、信号が入力されることによって閉状態となるものであってもよいし、閉じるための信号と開くための信号とがそれぞれ入力されるものであってもよい。
[制御ユニット]
制御ユニット24は、アクチュエータ40及びバルブ23と電気的に接続されており、これらの動作を制御する。制御ユニット24は、例えば、演算及び信号の入出力を行う制御部25(図7)と、制御部25に接続された入力部71(図7)及び/又は出力部(不図示)とを有している。
制御部25は、例えば、電気信号をアクチュエータ40に与えてアクチュエータ40を変形させることにより、圧力室21の容積を変化させる。これにより、キャピラリー10への液体の吸引や、キャピラリー10からの液体の吐出などを行うことができる。圧力室21の容積が周期的に増減するようにアクチュエータ40を駆動させることにより、キャピラリー10内に吸引した液体を振動させて混合することもできる。
また、例えば、制御部25は、バルブ23に電気信号を与えることによりバルブ23を開閉する。第1流路22内に液体が流入してしまった場合に、バルブ23を開くことにより、液体をバルブ23から外部へ排出することができる。また、アクチュエータ40を変形させて液体を吸引した後に、バルブ23を開いて、その状態でアクチュエータ40の変形を元に戻し、バルブ23を閉じた後に再びアクチュエータ40を変形させることにより、多くの量の液体を吸引することができる。
制御部25は、種々の集積回路を用いて構成することができる。また、制御部25に接続される入力部71としては、例えば、ユーザの操作を受け付けるもの(スイッチ等)、及び/又は外部の機器からの信号を受け付けるもの(コネクタ等)を挙げることができる。また、制御部25に接続される出力部としては、例えば、ユーザに情報を提示するもの(表示装置等)、及び/又は外部の機器へ信号を出力するもの(コネクタ等)を挙げることができる。制御ユニット24は、ピペット本体20に固定的に設けられていてもよいし、ピペット本体20に対して相対移動可能に設けられていてもよいし、一部(例えばドライバ)がピペット本体20に固定的に設けられ、他の部分(例えばドライバに指令を出力する部分)がピペット本体20に対して相対移動可能に設けられていてもよい。
[ピペットの一連の動作]
ピペット1の動作の概要の一例について説明する。図2は、制御部25が出力する駆動信号SgA(Sg0〜Sg3)における電圧(信号レベル)の経時変化の一例を模式的に示すグラフである。図2において、横軸tは時間を示しており、縦軸Vは電圧を示している。図3(a)〜図3(e)は、図2の横軸に示されるいずれかの時点におけるキャピラリー10の状態を示す模式図である。
図2に示されているように、制御部25がアクチュエータ40へ出力する駆動信号SgAは、電圧が時間経過に対して変化して波形をなす。一方、アクチュエータ40は、印加された電圧に対応した変形量で撓む。ここでいう対応は、例えば、1対1対応であり、換言すれば、電圧に対して一意に変形量が規定される関係である(変形が飽和している状態は除く。)。従って、駆動信号SgAが入力されたアクチュエータ40は、圧力室21の容積が駆動信号SgAの電圧に対応した容積になるように駆動信号SgAの波形(電圧の時間経過に対する変化)に追随して圧力室21の容積を変化させる。
なお、駆動信号SgAの電圧の変化量と圧力室21の容積の変化量との関係は比例関係とは限らない。ただし、便宜上、比例又は比例に近い関係を想定して説明する。従って、図2は、駆動信号SgAの電圧の経時変化だけでなく、圧力室21の容積の経時変化を示していると捉えてもよい。
内部電極42及び表面電極44は、一方に基準電位が付与され、他方に駆動信号SgAが入力される。そして、図2の電圧は、基準電位と駆動信号SgAとの電位差を示している。換言すれば、駆動信号SgAは、不平衡信号である。ただし、駆動信号SgAは、内部電極42及び表面電極44の双方において電位を変化させ、その電位差が図2に示される電圧となっている平衡信号とされても構わない。なお、本実施形態では、駆動信号SgAが不平衡信号である場合を例に取るから、以下では、図2の電圧を駆動信号SgAの電位として説明することがある。
駆動信号SgAの電圧の上昇(電位の正側への変化)は、圧力室21の容積の増加に対応していてもよいし、圧力室21の容積の減少に対応していてもよい。換言すれば、内部電極42及び表面電極44のうち駆動信号SgAが付与される電極から基準電位が付与される電極への方向と、圧電セラミック層40aの分極方向とは、逆向きであってもよいし、同一の向きであってもよい。以下では、便宜上、逆向きを例に取る。換言すれば、駆動信号SgAの電位の上昇が圧力室21の容積の増加(すなわち液体の吸引)に対応している場合を例に取る。
下記では、ピペット1自体の動作だけでなく、ピペット1のユーザ又はピペット1を利用する(若しくは含む)装置が行う動作についても説明する。ここでは、ユーザがピペット1を操作する態様を例に取って説明する。ユーザのピペット1に対する操作は、適宜に装置のピペット1に対する操作に読み替えられてよい。例えば、ユーザによるピペット1の移動は、装置によるピペット1の移動とされてよいし、ユーザによるピペット1の不図示のスイッチに対する操作は、装置によるピペット1に対する指令信号の出力とされてよい。後述するブロック図及びフローチャート等の説明においても同様である。装置は、例えば、シーケンス制御によってユーザと同様の操作をピペットに対して行ってよい。
(時刻t0〜t1:接液等)
時刻t1以前において、制御部25は、ユーザの不図示のスイッチに対する操作に応じて初期信号Sg0をアクチュエータ40に出力する。初期信号Sg0は、一定の電位の信号である。これにより、圧力室21の容積は所定の初期容積に維持される。初期信号Sg0の電位は、基準電位であってもよいし、基準電位とは異なっていてもよい。本実施形態では、基準電位である場合を例に取る。なお、駆動信号SgAは、初期信号Sg0を含んでいなくてもよい。すなわち、時刻t1以前は、初期信号Sg0が出力される状態ではなく、駆動信号SgAが出力されない状態とされてもよい。バルブ23は、時刻t0以降において、特に言及がない限り、閉じられている。
ユーザは、時刻t1以前において、キャピラリー10の第1端11を第1液体L1に接触させる(接液ステップを行う。)。そして、ユーザは、ピペット1が有している不図示のスイッチに対する操作によって、ピペット1に第1液体L1の吸引を指示する。この指示の時刻は、図2の時刻t1に対応する。
(時刻t1〜t2:第1液体の吸引等)
制御部25は、第1液体L1の吸引が指示されると、圧力室21の容積が増加するように駆動部50を駆動させる第1信号Sg1を出力する。第1信号Sg1は、例えば、概略(後述するように詳細は異なる)、初期信号Sg0の電位から上昇し、その上昇後の電位を維持する信号である。これにより、図3(a)に示すように、第1液体L1は、キャピラリー10内に吸引され、キャピラリー10の第1端11付近に保持される。その吸引量は、例えば、概略、第1信号Sg1の電位の上昇量に対応している。換言すれば、当該電位の上昇量は、例えば、概略、吸引量の目標値に応じて設定されている。
ユーザは、第1液体L1の一部がキャピラリー10内に吸引されると、キャピラリー10を第1液体L1の残りから引き上げる(離液ステップを行う。)。次に、ユーザは、キャピラリー10の第1端11を第2液体L2に接触させる(接液ステップを行う。)。そして、ユーザは、ピペット1が有している不図示のスイッチに対する操作によって、ピペット1に第2液体L2の吸引を指示する。この指示の時刻は、図2の時刻t2に対応する。
(時刻t2〜t3:第2液体の吸引等)
制御部25は、第2液体L2の吸引が指示されると、圧力室21の容積が増加するように駆動部50を駆動させる第2信号Sg2を出力する。第2信号Sg2は、例えば、概略(後述するように詳細は異なる)、第1信号Sg1が維持していた電位から上昇し、その上昇後の電位を維持する信号である。これにより、図3(b)に示すように、第2液体L2は、キャピラリー10内に吸引され、キャピラリー10の第1端11付近に保持される。その吸引量は、例えば、概略、第2信号Sg2の電位の上昇量に対応している。換言すれば、当該電位の上昇量は、例えば、概略、吸引量の目標値に応じて設定されている。
ユーザは、第2液体L2の一部がキャピラリー10内に吸引されると、キャピラリー10を第2液体L2の残りから引き上げる(離液ステップを行う。)。そして、ユーザは、ピペット1が有している不図示のスイッチに対する操作によって、ピペット1に第1液体L1と第2液体L2との混合を指示する。この指示の時刻は、図2の時刻t3に対応する。
(時刻t3〜t4:エア吸引等)
制御部25は、第1液体L1と第2液体L2との混合が指示されると、これらを混合するための第3信号Sg3を出力する。第3信号Sg3は、例えば、エア吸引信号Sg31、復元信号Sg32及び混合信号Sg33を順に含んでいる。具体的には、以下のとおりである。
制御部25は、まず、圧力室21の容積が増加するように駆動部50を駆動させるエア吸引信号Sg31を出力する。エア吸引信号Sg31は、例えば、概略、第2信号Sg2が維持していた電位から上昇し、その上昇後の電位を維持する信号である。これにより、図3(c)に示すように、第1液体L1及び第2液体L2は、第2端12側へ移動して、キャピラリー10内の所定の位置に停止する。このときの移動量は、エア吸引信号Sg31の電位の上昇量に対応している。換言すれば、当該電位差は、移動量の目標値に応じて設定されている。
制御部25は、エア吸引信号Sg31の出力開始後、所定時間が経過したと判定すると、開放流路28を開くようにバルブ23を制御する。なお、この制御が、信号の出力及び信号の出力の停止のいずれによってなされてもよいことは既に述べたとおりである。所定時間は、エア吸引信号Sg31によって第1液体L1及び第2液体L2が目標位置まで移動するのに十分な時間とされる。
(時刻t4〜t5:圧力室の復元等)
制御部25は、バルブ23を開く制御を開始後、所定時間が経過したと判定すると(時刻t4)、圧力室21の容積が減少するように駆動部50を駆動させる復元信号Sg32を出力する。復元信号Sg32は、例えば、概略、エア吸引信号Sg31が維持していた電位から降下し、その降下後の電位を維持する信号である。復元信号Sg32によって、圧力室21の容積は減少するが、バルブ23が開かれていることから、キャピラリー10内のうちの第1液体L1及び第2液体L2よりも第2端12側の部分の増圧は行われない。ひいては、第1液体L1及び第2液体L2の位置は変化しない。
上記のバルブ23を開いてから時刻t4までの所定時間は、バルブ23を開くのに十分な時間とされる。復元信号Sg32の降下後の電位は、初期信号Sg0による電位に対して、及び/又は基準電位に対して、同一であってもよいし、高くてもよいし、低くてもよい。図示の例では、復元信号Sg32の降下後の電位は、初期信号Sg0による電位かつ基準電位と同一である。なお、この場合において、復元信号Sg32は、エア吸引信号Sg31を出力している状態から、出力を停止する状態へ遷移する過程に生じる立ち下がりの部分(信号として意図的に出力されたものではない部分)であってもよい。
その後、制御部25は、時刻t4から所定時間が経過したと判定すると、開放流路28を閉じるようにバルブ23を制御する。なお、この制御が、信号の出力及び信号の出力の停止のいずれによってなされてもよいことは既に述べたとおりである。時刻t4からの所定時間は、アクチュエータ40が復元信号Sg32の降下後の電位に対応する変位となるのに十分な時間とされる。
(時刻t5〜t6:混合等)
制御部25は、バルブ23を閉じる制御を開始後、所定時間が経過したと判定すると(時刻t5)、圧力室21の容積が増減を繰り返すように駆動部50を駆動させる混合信号Sg33を出力する。これにより、図3(d)において矢印で示すように、液体の第2端12側への移動と、液体の第1端11側への移動とが交互に繰り返される。ひいては、第1液体L1及び第2液体L2が攪拌され、図3(e)に示すように、両者が混合される(液体L3が生成される。)。繰り返しの回数は適宜に設定されてよい。
混合信号Sg33は、復元信号Sg32の降下後の電位から電位の上昇と下降とを繰り返す信号である。なお、混合信号Sg33は、電位の上昇から始まってもよいし(図示の例)、電位の下降から始まってもよく、また、電位の上昇で終了してもよいし、電位の下降で終了してもよい(図示の例)。電位の振幅は一定であってもよいし、変化してもよい。電位の上昇と下降とで、波形は時間軸tに直交する不図示の対称軸に関して線対称であってもよいし、非対称であってもよい。
その後、例えば、混合後の液体L3は、キャピラリー10内に保持された状態で光が照射されてその性質が調べられる。例えば、蛍光測定、散乱測定、吸光測定及び/又は分光測定が行われる。特に図示しないが、測定に先立って、時刻t3〜t4において任意の位置へ液体を移動させた動作と同様の動作により、測定に適した位置へ液体L3を移動させてもよい。また、混合された液体L3は、キャピラリー10内に保持されたまま測定に供されるのではなく、キャピラリー10から吐出されて種々の用途に利用されてもよい。
なお、図2では、駆動信号SgAの波形は、t0〜t4までは、矩形波等の複数の直線からなる波形とされている。また、駆動信号SgAの波形は、t4〜t6までは、正弦波等の曲線からなる波形とされている。ただし、t0〜t4までの波形の一部又は全部が曲線で構成されてもよいし、t4〜t6までの波形の一部又は全部が直線で構成されてもよい。また、波形は、図示とは異なる種々の波形(例えば、のこぎり歯又は三角波等)とされてもよい。
[ピペットの吸引動作]
図4は、第1液体L1の吸引に係る第1信号Sg1の詳細を示すための図であり、図2の一部(時刻t0〜t2)の拡大図に相当する。図5(a)〜図5(f)は、図2の横軸に示されるいずれかの時点におけるキャピラリー10の状態を示す模式図である。
第1信号Sg1は、吸引信号Sg11、ブレーキ信号Sg12及び付加吸引信号Sg13を順に含んでいる。具体的には、以下のとおりである。
(時刻t0〜t1:接液等)
既に述べたように、この期間においては、制御部25は、初期信号Sg0を出力する。また、図5(a)及び図5(b)に示すように、ユーザは、キャピラリー10の第1端11を第1液体L1に接触させる。そして、ユーザは、ピペット1が有している不図示のスイッチに対する操作によって、ピペット1に第1液体L1の吸引を指示する(時刻t1)。
(時刻t1〜t11:主吸引等)
制御部25は、第1液体L1の吸引が指示されると、圧力室21の容積が増加するように駆動部50を駆動させる吸引信号Sg11を出力する。吸引信号Sg11は、例えば、初期信号Sg0の電位V0から所定の電位V1まで上昇し、電位V1を維持する信号である。すなわち、吸引信号Sg11は、電位V0から電位V1まで上昇する上昇信号Sg111と、電位V1を維持する維持信号Sg112とを順に含んでいる。そして、上昇信号Sg111によって圧力室21の容積が増加することにより、図5(c)に示すように、第1液体L1は、キャピラリー10内に吸引される。
(時刻t11〜t12:ブレーキ等)
制御部25は、吸引信号Sg11の出力開始から所定時間(時間長さTp)が経過したと判定すると、圧力室21の容積が減少するように駆動部50を駆動させるブレーキ信号Sg12を出力する。ブレーキ信号Sg12は、例えば、吸引信号Sg11の電位V1から所定の電位V2まで降下し、電位V2を維持する信号である。すなわち、ブレーキ信号Sg12は、電位V1から電位V2まで降下する降下信号Sg121と、電位V2を維持する維持信号Sg122とを順に含んでいる。ブレーキ信号Sg12により、第1液体L1の計量の精度を向上させたり、及び/又は第1液体L1の微量吸引を行ったりすることができる。具体的には、以下のとおりである。
一般に、アクチュエータ40に付与される電位が電位V0から電位V1に変化すると、圧力室21の容積は、電位V0に対応する容積(第1吸引前容積)から電位V1に対応する容積(第1吸引後容積)へ、電位の変化にさほど遅れずに変化する。また、一般に、圧力室21の容積が第1吸引前容積から第1吸引後容積に変化(増加)すると、この容積変化にさほど遅れずに、その容積の増加量に応じた量(目標の吸引量)の第1液体L1がキャピラリー10内に流れ込み、かつ停止すると考えられている。また、このような考えの下、一般に、時刻t1で第1液体L1の吸引を開始してからキャピラリー10を第1液体L1から離すまでの時間は比較的短い(例えば0.5秒〜2秒)。
しかし、本願発明者の鋭意検討の結果、圧力室21の容積が電位V1に対応する容積になった後も、第1液体L1が比較的長い時間(例えば30秒)に亘ってキャピラリー10に流れ込む現象が生じることが分かった。このような現象が生じている結果、離液は、第1液体L1がキャピラリー10に流れ込んでいる最中に行われることになる。一方、第1液体L1の吸引を開始してから離液を行うまでの時間は、ユーザ間でばらつき、また、各ユーザにおいても、第1液体L1の吸引を行う度に変化する。その結果、離液までにキャピラリー10内に流れ込む第1液体L1の量にばらつきが生じる。すなわち、第1液体L1の吸引量にばらつきが生じる。
そこで、吸引信号Sg11に続いて、ブレーキ信号Sg12を駆動部50に出力し、圧力室21の容積を減少させる。これにより、キャピラリー10のうちの第1液体L1よりも第2端12側の気圧が増圧される。この増圧により、図5(d)において矢印で示すように、第1液体L1に対して第1端11側への力が加えられ、第1液体L1のキャピラリー10内への流れが抑制(停止含む)される。
その結果、例えば、時刻t1で第1液体L1の吸引を開始してから離液するまでの時間にばらつきが生じても、当該ばらつきに相当する時間内にキャピラリー10内に流れ込む第1液体L1の量は低減される。ひいては、離液までの時間のばらつきが吸引量(時刻t1から吸引した総量)に及ぼす影響が低減される。また、例えば、時刻t1で吸引信号Sg11の出力を開始してからブレーキ信号Sg12の出力を開始するまでの時間長さTpを短くすれば、吸引量を微量にすることができる。
なお、上記のように、圧力室21の容積が電位V1に対応する第1吸引後容積になった後も第1液体L1がキャピラリー10に流れ込む現象の要因としては、例えば、以下の2つのいずれか、又は組み合わせが挙げられる。一つの要因は、圧力室21の容積の増加量に応じた吸引量で液体が吸引された後も、液体の慣性力によって液体がキャピラリー10に流れ込むことである。もう一つの要因は、圧力室21の容積の変化は、さほどの時間遅れを生じることなく吸引信号Sg11に追随するのに対して、液体の吸引量は、圧力室21の容積の増加に対して時間遅れを生じつつ追随することである。
上記のように、ブレーキ信号Sg12は、吸引信号Sg11の出力開始に対して所定のタイミング(時間長さTp経過後)に出力が開始される。ここで、制御部25の内部的には、吸引信号Sg11の出力開始時刻以外の時刻を起点として計時が行われて、ブレーキ信号Sg12の出力を開始すべき時刻が到来したか否か判定されても構わない。例えば、吸引信号Sg11の上昇信号Sg111が傾きを有している(徐々に電位が上昇する)場合において、吸引信号Sg11の維持信号Sg112の出力開始時点が計時の起点とされても構わない。この場合も、ブレーキ信号Sg12は、吸引信号Sg11(上昇信号Sg111)の出力開始に対して所定のタイミングで出力が開始されているといえる。本実施形態の説明で言及する他の種々のタイミング(別の観点では時間経過の判定)についても同様である。
ユーザは、ブレーキ信号Sg12の維持信号Sg122が出力されている間に、キャピラリー10を第1液体L1から引き上げる。そして、ユーザは、ピペット1が有している不図示のスイッチに対する操作によって、ピペット1に付加吸引を指示する。この指示の時刻は、図4の時刻t12に対応する。
(時刻t12〜t2:付加吸引等)
制御部25は、付加吸引が指示されると、圧力室21の容積が増加するように駆動部50を駆動させる付加吸引信号Sg13を出力する。付加吸引信号Sg13は、例えば、ブレーキ信号Sg12の電位V2から所定の電位V3まで上昇し、電位V3を維持する信号である。すなわち、付加吸引信号Sg13は、電位V2から電位V3まで上昇する上昇信号Sg131と、電位V3を維持する維持信号Sg132とを順に含んでいる。
図5(e)に示すように、キャピラリー10の第1端11を離液したとき、第1端11の外側へ第1液体L1がはみ出していることがある。付加吸引信号Sg13を出力することによって、図5(f)に示すように、外側へはみ出していた第1液体L1をキャピラリー10内に吸引することができる。
電位V2から電位V3までの電位差dV3は、例えば、当該電位差dV3に相当する圧力室21の容積(体積)の増加量(付加増加量)が、第1端11を第1液体L1に接触させて第1端11から第1液体L1の一部を吸引した後に第1端11を第1液体L1の残りから引き上げたときに、第1液体L1の、第1端11から外側へはみ出す体積と等しくなるように設定されてよい。ここでいう等しいは、例えば、両者の体積の差が、第1端11から外側へはみ出す体積の±20%以内又は±10%以内とされてよい。
付加吸引信号Sg13の維持信号Sg132が出力されている間、既に述べたように、ユーザは、キャピラリー10を第2液体L2に接触させる。そして、ユーザは、ピペット1が有している不図示のスイッチに対する操作によって、ピペット1に第2液体L2の吸引を指示する(時刻t2)。これにより、維持信号Sg132に続いて、第2信号Sg2が出力される。
なお、図4では、第1信号Sg1の波形は、矩形波等の複数の直線からなる波形とされている。ただし、第1信号Sg1の波形の一部又は全部は曲線で構成されてもよい。また、第1信号Sg1の波形は、図示とは異なる種々の波形(例えば、のこぎり歯又は三角波等)とされてもよい。例えば、特に図示しないが、吸引信号Sg11の上昇信号Sg111、ブレーキ信号Sg12の降下信号Sg121及び/又は付加吸引信号Sg13の上昇信号Sg131は、直線的又は曲線的に徐々に電位を変化させてもよい。また、例えば、吸引信号Sg11を位相が0からπ/2まで変化する正弦波とし、ブレーキ信号Sg12を位相がπ/2からπ未満の所定値まで変化する正弦波としてもよい。別の観点では、吸引信号Sg11の維持信号Sg112は省略されてもよい。
第1信号Sg1について述べたが、第2信号Sg2も、第1信号Sg1と同様に、吸引信号、ブレーキ信号及び付加吸引信号を順に含んでよい。第2信号Sg2にとっては、第1信号Sg1の維持信号Sg132及び電位V3が、第1信号Sg1にとっての初期信号Sg0及び電位V0に相当する。なお、第1液体L1及び第2液体L2の吸引量等に応じて、各種の信号のパラメータの値が第1信号Sg1と第2信号Sg2とで相違していてよいことはもちろんである。
第1信号Sg1の各種のパラメータの値は、キャピラリー10の寸法及びアクチュエータ40の構成等に応じて適宜に設定されてよい。一例を以下に挙げる。電位差dV1は、2V以上7V以下である。電位差dV2は、1V以上5V以下(ただし、dV1未満)である。時間長さTpは、0.01秒以上1秒以下である。
[ブレーキ信号の電位]
ブレーキ信号Sg12における電位V1から電位V2への電位差dV2の値(絶対値。以下、同様。)が大きくされるとブレーキ力は強くなる。また、ブレーキ信号Sg12の降下信号Sg121の傾き(電位の変化率)が急峻にされると、ブレーキ力は強くなる。これらのブレーキ力に影響を及ぼすパラメータの値は、適宜に設定されてよい。以下では、吸引信号Sg11の波形に応じて電位差dV2の値を設定する方法を例示する。なお、電位差dV2は、別の観点では、圧力室21における、電位V1に対応する第1吸引後容積から電位V2に対応するブレーキ後容積への減少量の絶対値である。この電位差dV2の大きさは、例えば、吸引信号Sg11の波形に応じて設定されてよい。
図6(a)は、ブレーキ信号Sg12の電位差dV2の設定方法の一例を説明するための図であり、図5の一部に相当する。
この例では、実線及び2点鎖線によって互いに波形が異なる2種類の第1信号Sg1を示しているように、吸引信号Sg11の電位差dV1(別の観点では電位V0に対応する第1吸引前容積から電位V2に対応する第2吸引後容積までの第1増加量)の値が変化した場合を想定している。この場合において、電位差dV1が大きいほど、電位差dV2は大きくされてよい。例えば、電位差dV2は、電位差dV1に対して1未満の所定の比率を乗じた大きさとされてよい。所定の比率は、例えば、60%以上90%以下の値とされてよい。
例えば、電位差dV1が大きいほど、第1液体L1がキャピラリー10に流れ込むときの流速、及び/又は第1液体L1に付与される慣性力は大きくなる。従って、例えば、電位差dV1が大きいほど、電位差dV2を大きくすることによって、第1液体L1が想定以上にキャピラリー10に流れ込むおそれを低減することができる。
図6(b)は、ブレーキ信号Sg12の電位差dV2の設定方法の他の例を説明するための図であり、図5の一部に相当する。
この例では、実線及び2点鎖線によって互いに波形が異なる2種類の第1信号Sg1を示しているように、吸引信号Sg11(又は吸引信号Sg11のうちの維持信号Sg112)の時間長さTpの値が変化した場合を想定している。この場合において、時間長さTpが短いほど、電位差dV2は大きくされてよい。
例えば、時間長さTpが短いほど、キャピラリー10内に流れ込むときの流速、及び/又は第1液体L1に付与された慣性力は減じられていない。従って、例えば、時間長さTpが短いほど、電位差dV2を大きくすることによって、第1液体L1が想定以上にキャピラリー10に流れ込むおそれを低減することができる。
なお、電位差dV1及び時間長さTpの双方の値が変更された場合に、双方の値の変化に応じて、電位差dV2が大きく、又は小さくされてよいことはもちろんである。また、電位差dV2の値を変化させなくてもよいように、電位差dV1の値が大きくされたときに時間長さTpを長くするなど、電位差dV1の値と時間長さTpの値との調整が図られてもよい。
上記のような電位差dV2等の設定は、製造者、ユーザ及び制御部25のいずれによってなされてもよい。例えば、電位差dV2の設定に関しては、典型的なものとして、以下の(1)〜(3)の態様を挙げることができる。
(1) ピペット1において、電位差dV1及び時間長さTpの値は固定されている(ピペット1の製造者が設定する。)。すなわち、ピペット1は、ユーザが吸引量を変更することができない装置として製造・販売される。そして、製造者は、電位差dV1及び時間長さTpに応じて電位差dV2の値を設定する。
(2) ピペット1において、時間長さTpの値は固定されている。電位差dV1の値は、ユーザが入力部71を介して設定した吸引量の目標値に応じて制御部25が設定する。そして、制御部25は、設定された電位差dV1に応じて電位差dV2の値を設定する。
(3) ピペット1において、電位差dV1の値は固定されている。時間長さTpの値は、ユーザが入力部71を介して設定した吸引量の目標値に応じて制御部25が設定する。そして、制御部25は、設定された時間長さTpに応じて電位差dV2の値を設定する。
上記の(1)〜(3)の態様以外にも、種々の態様が可能である。例えば、ユーザが入力部71を介して直接に電位差dV1、時間長さTp及び/又は電位差dV2を設定可能であってもよい。また、例えば、入力部71を介して設定された吸引量の目標値に応じて、電位差dV1及び時間長さTpの双方が調整されてもよい。
吸引量の目標値に基づく電位差dV1及び/又は時間長さTpの値の特定(設定)は、例えば、計算式によって実現されてもよいし、これらを対応付けたマップが参照されることによって特定されてもよい。電位差dV1及び/又は時間長さTpの値に基づく電位差dV2の値の特定(設定)も同様である。なお、(2)の態様において、制御部25の内部的には、製造者によって設定された時間長さTpの値は、電位差dV1の値と同様に、定数ではなく変数として扱われていても構わない。(3)の態様における電位差dV1の値も同様である。
第1実施形態についての以下の説明では、上記(1)〜(3)の態様のうち、(2)の態様を例に取るものとする。
[ブロック図]
図7は、制御ユニット24の信号処理系に係る要部の構成を示すブロック図である。
制御部25は、例えば、記憶部72を含んでいる。記憶部72は、第1目標値D1、第2目標値D2及び時間長さTpの値を記憶している。第1目標値D1は、第1液体L1の吸引量の目標値であり、ユーザの入力部71に対する操作によって設定される。第2目標値D2は、第2液体L2の吸引量の目標値であり、ユーザの入力部71に対する操作によって設定される。時間長さTpの値は、例えば、ピペット1の製造者によって予め設定されている。なお、特に図示しないが、時間長さTpの値は、第1信号Sg1と第2信号Sg2とで別個のものとされていてもよい。
また、制御部25は、例えば、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置等を含んで構成されており、CPUがROM及び/又は外部記憶装置に記憶されているプログラムを実行することによって、図7に示している種々の機能部(73、74、75及び76)が構築される。例えば、以下の機能部が構築される。
第1信号設定部73は、記憶部72に記憶されている情報等に基づいて、第1信号Sg1の波形のパラメータの値(例えば、電位、電位の変化率及び/又は時間長さ等。以下、同様。)を設定する。例えば、dV1設定部73aは、第1目標値D1に基づいて吸引信号Sg11の電位差dV1の値を設定する。dV2設定部73bは、dV1設定部73aによって設定された電位差dV1に基づいてブレーキ信号Sg12の電位差dV2の値を設定する。
第2信号設定部74は、記憶部72に記憶されている情報等に基づいて、第2信号Sg2の波形のパラメータの値を設定する。例えば、図示は省略するが、第2信号設定部74は、第1信号設定部73と同様に、dV1設定部及びdV2設定部を有しており、第1目標値D1に代えて第2目標値D2を用いて、電位差dV1及び電位差dV2の値を設定する。また、例えば、第2信号設定部74は、第1信号設定部73が設定した第1信号Sg1の電位に基づいて第2信号Sg2の波形全体の電位の高さを調整する。
第3信号設定部75は、記憶部72に記憶されている情報等に基づいて、第3信号Sg3の波形のパラメータの値を設定する。例えば、第3信号設定部75は、第2信号設定部74が設定した第2信号Sg2の電位に基づいて、記憶部72に記憶されている第3信号Sg3の波形全体の電位の高さを調整する。第3信号設定部75は、第1目標値D1及び第2目標値D2に応じて振動の振幅を調整したりしてもよい。
信号制御部76は、上記の各種の信号設定部によって設定された波形のパラメータの値に基づいて、また、入力部71に対する入力(本実施形態ではユーザの操作)に基づいて、駆動信号SgAに含まれる各種の信号を生成・出力する。別の観点では、信号制御部76は、駆動信号SgAに含まれる各種の信号の出力開始、出力継続及び出力終了を制御する。
[フローチャート]
図8は、これまでに説明した動作を実現するために、ユーザ及び制御部25が行う処理の手順の一例を示すフローチャートである。紙面左側のステップSU0〜SU3は、ユーザが行う処理を示している。紙面右側のステップSC0〜SC4は制御部25が行う処理を示している。
ステップSU0では、ユーザは、ピペット1の不図示の電源スイッチをONするなど、吸引の準備を行う。一方、制御部25は、電源スイッチのON操作又は他の操作がなされると、初期信号Sg0の出力を開始する(ステップSC0)。
ステップSU1(ステップSU11〜SU14)では、ユーザは、第1液体L1を吸引するための操作をピペット1に対して行う。また、この操作に応じて、制御部25は、第1液体L1を吸引するための制御を行う(ステップSC1)。
具体的には、まず、ユーザは、キャピラリー10の第1端11を第1液体L1に対して接触させる(ステップSU11)。次に、ユーザは、入力部71に対する操作によって、ピペット1に第1液体L1の吸引を指示する(ステップSU12)。
一方、制御部25は、ステップSC0から初期信号Sg0の出力を継続している。また、ステップSC11では、制御部25は、入力部71からの信号に基づいて、第1液体L1の吸引が指示されたか否か判定する。そして、制御部25は、否定判定の場合は、初期信号Sg0の出力を継続し、肯定判定の場合は、ステップSC12に進む。
ステップSC12では、制御部25は、第1信号Sg1の吸引信号Sg11の出力を開始する。ステップSC13では、制御部25は、吸引信号Sg11の出力開始から時間長さTpが経過したか否か判定する。そして、制御部25は、否定判定の場合は、吸引信号Sg11の出力を継続し、肯定判定の場合は、ステップSC14に進む。ステップSC14では、制御部25は、第1信号Sg1のブレーキ信号Sg12の出力を開始する。
ユーザは、ステップSU12で吸引を指示する操作を入力部71に行った後、時間経過及び/又はキャピラリー10の目視に基づいて、第1液体L1の吸引(ステップSC11〜SC14)が完了したか否か判定する。そして、ユーザは、完了したと判定すると、キャピラリー10を第1液体L1から引き上げる(ステップSU13)。その後、ユーザは、図5(e)及び図5(f)に示した付加吸引を指示する操作を入力部71に対して行う(ステップSU14)。
一方、制御部25は、ステップSC14からブレーキ信号Sg12(維持信号Sg122)の出力を継続している。また、ステップSC15では、制御部25は、入力部71からの信号に基づいて、付加吸引が指示されたか否か判定する。そして、制御部25は、否定判定の場合は、ブレーキ信号Sg12の出力を継続し、肯定判定の場合は、ステップSC16に進む。ステップSC16では、制御部25は、第1信号Sg1の付加吸引信号Sg13の出力を開始する。
ユーザは、ステップSU14で付加吸引を指示する操作を入力部71に行った後、時間経過及び/又はキャピラリー10の目視に基づいて、第1液体L1の付加吸引(ステップSC16)が完了したか否か判定する。そして、ユーザは、完了したと判定すると、第2液体L2を吸引するための操作を行う(ステップSU2)。
第2液体L2を吸引するためのユーザによる操作(ステップSU2)、及びこの操作に対応する制御部25による制御(ステップSC2)は、基本的には、第1液体L1を吸引するためのユーザによる操作(ステップSU1)、及びこの操作に対応する制御部25による制御(SC1)と同様である。ただし、ステップSC1の開始時においては、初期信号Sg0の出力が継続されていたのに対して、ステップSC2の開始時においては、付加吸引信号Sg13の維持信号Sg132の出力が継続されている。
ステップSU3では、ユーザは、第1液体L1及び第2液体L2の混合を指示する操作を入力部71に対して行う。一方、制御部25は、ステップSC2から第2信号Sg2の付加吸引信号の維持信号(第1信号Sg1の付加吸引信号Sg13の維持信号Sg132を参照)の出力を継続している。また、ステップSC3では、制御部25は、入力部71からの信号に基づいて、混合が指示されたか否か判定する。そして、制御部25は、否定判定の場合は、第2信号Sg2の出力を継続し、肯定判定の場合は、ステップSC4に進む。ステップSC4では、制御部25は、第3信号Sg3を出力する。
以上のとおり、本実施形態に係るピペット1は、キャピラリー10と、圧力室21と、駆動部50と、制御部25とを有している。キャピラリー10は、長さ方向の両端である第1端11及び第2端12が開口している。圧力室21は、第2端12を介してキャピラリー10の内部に通じている。駆動部50は、圧力室21の容積を変化させる。制御部25は、圧力室21の容積が増加して第1端11から第1液体L1が吸引されるように駆動部50を駆動させる第1信号Sg1を出力する。第1信号Sg1は、吸引信号Sg11と、ブレーキ信号Sg12とを含んでいる。吸引信号Sg11は、圧力室21の容積が、第1液体が吸引される前の第1吸引前容積(電位V0に対応する容積)から第1増加量(電位差dV1に対応する増加量)で増加して第1吸引後容積(電位V1に対応する容積)になるように駆動部50を駆動させる。ブレーキ信号Sg12は、吸引信号Sg11に続いて出力され、圧力室21の容積が第1増加量(電位差dV1に対応する増加量)よりも絶対値が小さい減少量(電位差dV2に対応する減少量)で第1吸引後容積(電位V1に対応する容積)から減少してブレーキ後容積(電位V2に対応する容積)になるように駆動部50を駆動させる。
また、別の観点では、本実施形態に係る液体採取方法は、ピペット1を用いる。ピペット1は、長さ方向の両端である第1端11及び第2端12が開口しているキャピラリー10と、第2端12を介してキャピラリー10の内部に通じている圧力室21と、圧力室21の容積を変化させる駆動部50とを有している。そして、液体採取方法は、接液ステップと、吸引ステップと、離液ステップと、ブレーキステップとを有している。接液ステップ(SU11)は、第1端11を液体(第1液体L1)に接触させる。吸引ステップ(SC12)は、第1端11を第1液体L1に接触させている状態で、駆動部50によって圧力室21の容積を増加させ、これにより、第1端11から第1液体L1をキャピラリー10内に吸引する。離液ステップ(SU13)は、第1液体L1の一部がキャピラリー10内に吸引された後、第1端11を第1液体L1の残りから離す。ブレーキステップ(SC14)は、吸引ステップ(SC12)の後、かつ離液ステップ(SU13)の前に、駆動部50によって圧力室21の容積を減少させる。
従って、既述のように、第1液体L1のキャピラリー10内への流れ、とりわけ、圧力室21の容積が電位V1に対応する容積になった後における流れをブレーキ信号Sg12によって抑制することができる。その結果、例えば、離液のタイミングのばらつきが吸引量に及ぼす影響が低減され、ひいては、計量の精度が向上する。また、例えば、時間長さTpを短くすることによって、微量吸引が可能となる。なお、ブレーキ信号Sg12は、吸引信号Sg11に続いて出力されること、及びその電位差dV2が吸引信号Sg11の電位差dV1よりも小さいことから、液体を吸引したピペットを移動させた後に、液体をピペットから吐出させるための信号とは区別される。
また、本実施形態では、制御部25は、吸引信号Sg11による圧力室21の容積の第1増加量(電位差dV1に対応する増加量)が大きいほど、ブレーキ信号Sg12による圧力室21の容積の減少量(電位差dV2に対応する減少量)の絶対値が大きくなるように第1信号Sg1を生成する。
この場合、例えば、図6(a)を参照して説明したように、キャピラリー10内へ流れ込む第1液体L1の流速及び/又は慣性力が大きいほど、ブレーキ力を大きくすることができる。その結果、例えば、第1増加量が変化した場合においても、第1液体L1のキャピラリー10内への流れの抑制の効果を安定して得ることができる。
また、本実施形態では、ピペット1は、第1端11から第1液体L1を吸引する量の第1目標値D1を記憶する記憶部72を有している。制御部25は、第1目標値D1が大きいほど、圧力室21の容積の第1増加量(電位差dV1に対応する増加量)が大きくなるように第1信号Sg1を生成する。
この場合、例えば、第1液体L1の吸引量は、圧力室21の容積の第1増加量によって規定される。そして、ブレーキ信号は、離液のタイミングのばらつきに起因する吸引量のばらつきの低減に寄与する。
本実施形態では、第1信号Sg1は、圧力室21の容積が、ブレーキ後容積(電位V2に対応する容積)から付加増加量(電位差dV3に対応する増加量)で増加して第1完了容積(電位V3に対応する容積)になるように駆動部50を駆動させる付加吸引信号Sg13を含んでいる。付加増加量(電位差dV3に対応する増加量)は、第1端11を第1液体L1に接触させて第1端11から第1液体L1の一部を吸引した後に第1端11を第1液体L1の残りから引き上げたときに、第1液体L1の、第1端11から外側へはみ出す体積と等しい。
従って、図5(e)及び図5(f)を参照して説明したように、第1液体L1の第1端11からはみ出す体積を低減することができる。本実施形態では、ブレーキ信号Sg12によって第1液体L1のキャピラリー10内への流れを抑制していることから、その後に離液したときに、第1液体L1のキャピラリー10内への流れが抑制されていない態様に比較して、はみ出す体積が多くなるおそれがある。従って、付加吸引信号Sg13は、ブレーキ信号Sg12との組み合わせにおいて効果的である。そして、はみ出しが低減される結果、例えば、第1液体L1を吸引したピペット1を移動させている途中で、塵等が第1液体L1に接触するおそれが低減される。また、例えば、第1端11を第2液体L2に接触させたときに、第1液体L1のうち第1端11からはみ出していた部分が第2液体L2中に分散されてしまうおそれを低減することができる。
ピペット1は、ユーザによる操作入力及び外部機器による信号入力の少なくとも一方の入力を受け付ける入力部71を更に有している。吸引信号Sg11は、入力部71に対する第1入力(ステップSU12)をトリガとして出力が開始される(ステップSC11及びSC12)。ブレーキ信号Sg12は、吸引信号Sg11の出力開始に対して予め定められたタイミングで吸引信号Sg11に代えて出力される(ステップSC13及びSC14)。
従って、例えば、ユーザの不図示のスイッチに対する操作によってブレーキ信号Sg12を出力する態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる)に比較して、時間長さTpを短くしたり、その計時を高精度にしたりすることができる。その結果、吸引量の微量化及び/又はばらつきの低減の効果が向上する。
また、本実施形態では、ブレーキ信号Sg12は、入力部71に対する入力(ステップSU14)をトリガとして出力が停止される(ステップSC15及びSC16)。前記第1入力と上記の停止のための入力との間(ステップSU12とステップSU14との間)では、圧力室21の容積の増加(電位差dV1による増加)及び減少(電位差dV2による減少)は、それぞれ1回のみである。
従って、例えば、吸引信号Sg11及びブレーキ信号Sg12がなす波形は簡素である。その結果、例えば、波形と吸引量との関係の把握が容易である。ひいては、波形のパラメータの値の設定が容易である。
また、本実施形態では、第1信号Sg1は、圧力室21の容積がブレーキ後容積(電位V2に対応する容積)以上の第1完了容積(電位V3に対応する容積)を維持するように駆動部50を駆動させる第1待機信号(付加吸引信号Sg13の維持信号Sg132)を含んでいる。制御部25は、入力部71に対して前記第1入力(ステップSU12)よりも後に加えられる第2入力(ステップSU2。より詳細にはステップSU1のステップSU12と同様の操作)をトリガとして、付加吸引信号Sg13の維持信号Sg132に代えて、圧力室21の容積が第1完了容積(電位V3)から増加して第1端11から第2液体が吸引されるように駆動部50を駆動させる第2信号Sg2を出力する。
従って、例えば、第1液体L1を第1端11に保持した状態で、第2液体L2を第1端11から吸引することができる。また、上記のように、ブレーキ信号Sg12に付加吸引信号Sg13を組み合わせた場合においては、第1液体L1の第1端11からのはみ出しが低減され、ひいては、第1端11を第2液体L2に接液したときに第1液体L1が第2液体L2に拡散されてしまうおそれが低減される。その結果、例えば、第1液体L1と第2液体L2との混合比を正確にすることができる。また、例えば、貯留されている第2液体L2から繰り返し吸引を行う場合において、第2液体L2に第1液体L1が不純物として混入してしまうおそれが低減される。
また、本実施形態では、第2信号Sg2は、圧力室21の容積を第1完了容積(電位V3に対応する容積)よりも大きい第2完了容積(概略、図2の電位V4に相当する容積)に維持する第2待機信号(第1信号Sg1の維持信号Sg132を参照)を含んでいる。制御部25は、入力部71に対して前記第2入力(ステップSU2。より詳細にはステップSU1のステップSU12と同様の操作)よりも後に加えられる第3入力(ステップSU3)をトリガとして、第2信号Sg2に代えて、圧力室21の容積が、第2完了容積(電位V4)から増加し、その後、繰り返し増減するように駆動部50を駆動させる第3信号Sg3を出力する。
従って、例えば、ブレーキ信号Sg12を用いることによって正確に計量した第1液体L1を他の液体(第2液体L2)と混合することができる。
<第2実施形態>
図9は、第2実施形態に係るピペットが有している制御ユニット224の信号処理系に係る要部の構成を示すブロック図であり、図7に相当している。
第1実施形態の説明では、図6(a)及び図6(b)を参照して説明した(1)〜(3)の態様のうち、(2)の態様を例に取った。第2実施形態の説明では、(3)の態様を例に取っている。これに伴い、第2実施形態に係る制御部225のブロック図は、第1実施形態に係る制御部25のブロック図とは異なっている。
具体的には、まず、記憶部272は、ピペット1の製造者によって予め設定されている値として、時間長さTpの値ではなく、電位差dV1の値を記憶している。なお、特に図示しないが、電位差dV1の値は、第1信号Sg1と第2信号Sg2とで別個のものとされていてもよい。
また、第1信号設定部273は、第1実施形態のdV1設定部73aに代えて、Tp設定部273aを有している。Tp設定部273aは、第1目標値D1に基づいて時間長さTpを設定する。また、dV2設定部273bは、第1実施形態のdV2設定部73bとは異なり、Tp設定部273aによって設定された時間長さTpに基づいてブレーキ信号Sg12の電位差dV2の値を設定する。
第2信号設定部274の、第1実施形態の第2信号設定部74に対する相違部分は、基本的に、第1信号設定部273の第1実施形態の第1信号設定部273に対する相違部分と同様である。
以上のとおり、本実施形態では、図4に示したように、吸引信号Sg11は、圧力室21の容積が時間長さTpに亘って第1吸引後容積(電位V1に対応する容積)に維持されるように駆動部50を駆動させる維持信号Sg112を含んでいる。ブレーキ信号Sg12は、維持信号Sg112に続いて出力される。制御部225は、時間長さTpが短いほど、ブレーキ信号Sg12による圧力室21の容積の減少量(電位差dV2に対応する減少量)の絶対値が大きくなるように第1信号Sg1を生成する。
従って、例えば、図6(b)を参照して説明したように、ブレーキ信号Sg12が開始されるまでの時間が短いほど、ひいては、キャピラリー10内へ流れ込む第1液体L1の流速及び/又は慣性力が大きいほど、ブレーキ力を大きくすることができる。その結果、例えば、時間長さTpが変化した場合においても、第1液体L1のキャピラリー10内への流れの抑制の効果を安定して得ることができる。
また、本実施形態では、ピペット1は、第1端11から第1液体L1を吸引する量の第1目標値D1を記憶する記憶部272を有している。制御部225は、第1目標値D1が小さいほど、時間長さTpが短くなるように第1信号Sg1を生成する。
この場合、例えば、第1液体L1の吸引量は、第1液体L1のキャピラリー10内への流れ(特に圧力室21の容積が第1吸引後容積になった後の流れ)を許容する時間(時間長さTp)によって規定される。すなわち、新たな計量方法が提供される。この計量方法は、本来は誤差の要因となる、圧力室21の容積が第1吸引後容積になった後の流れを利用するものであり、画期的である。また、誤差の要因となる流れを計量に利用している原理から、吸引量のばらつきは抑制される。さらに、時間長さTpを短くすることによって、従来は不可能であった微量な吸引も可能になる。
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態に係るピペットの駆動信号SgAを示す図であり、図4に対応している。
第1実施形態では、初期信号Sg0の電位V0が基準電位(縦軸において0)である場合を例に取った。一方、本実施形態では、電位V0が基準電位よりも低い場合を例に取っている。
既に述べたように、実施形態の説明では、内部電極42及び表面電極44のうち駆動信号SgAが付与される電極から基準電位が付与される電極への方向と、圧電セラミック層40aの分極方向とは、逆向きである場合を例に取っている。換言すれば、駆動信号SgAの電位の上昇は、圧力室21の容積の増加に対応している。従って、本実施形態では、図10において紙面左上に模式的に示すように、初期信号Sg0の電位V0が基準電位よりも低いことにより、初期信号Sg0が出力されているとき、駆動部50は圧力室21側へ撓んでいる。そして、第1信号Sg1が出力されることによって電位が上昇すると、駆動部50の撓み変形は減少し、圧力室21の容積は増加していく。
基準電位と、駆動信号SgAの波形との相対関係は適宜に設定されてよい。別の観点では、電位V0の具体的な値は、適宜に設定されてよい。図示の例では、第2信号Sg2の最初の立ち上がりの途中で駆動信号SgAが基準電位をアップクロスする場合を例示している。ゼロアップクロスのとき、図10の紙面右側に模式的に示すように、駆動部50は基本的には撓み変形が生じていない状態である。そして、さらに駆動信号SgAの電位が上昇すると、特に図示しないが、駆動部50は、圧力室21とは反対側へ撓んでいく。
なお、図示の例とは異なり、駆動信号SgAは、第1信号Sg1の途中でゼロアップクロスしてもよいし、第2信号Sg2の途中でゼロアップクロスしてもよいし、第3信号Sg3のエア吸引信号Sg31の立ち上がりでゼロアップクロスしてもよい。また、これらの信号内でゼロダウンクロスが生じても構わない。また、特に図示しないが、第3信号Sg3の復元信号Sg32の下限の電位及び/又は混合信号Sg33の下限の電位は、基準電位よりも低い電位V0まで降下されてもよいし、基準電位までの降下であってもよい。
通常、電位V0が基準電位であるとき、駆動部50に撓み変形は生じていない。ひいては、駆動部50(圧力室21の内面)を内側へ撓ませる電位V0は、基準電位ではない。ただし、電位V0が基準電位であるときに、圧力室21の内面が撓んでいるような態様においては、圧力室21の内面を内側へ撓ませる電位V0は、基準電位であることもある。
以上のとおり、本実施形態では、駆動部50は、圧力室21の内面の一部を構成しており、前記内面の撓み変形によって圧力室21の容積を変化させる。制御部25(又は225)は、第1信号Sg1の出力前に、圧力室21の容積が第1吸引前容積(電位V0に対応する容積)になるように駆動部50を駆動させる初期信号Sg0を出力する。初期信号Sg0は、前記内面を圧力室21の内側へ向けて撓ませる信号である。
従って、例えば、第1実施形態に比較して、同一のステップ(例えば第1液体L1の吸引)を実行しているときの圧力室21の容積が減少する。その結果、例えば、吸引量のばらつきが低減される。その理由としては、例えば、圧力室21内の気体(例えば空気)は圧縮性流体であり、液体の吸引に影響を及ぼすところ、この気体の量が低減されることが挙げられる。
<実験>
[吸引量のばらつき]
既述のように、ブレーキ信号Sg12が出力されることによって、例えば、吸引量のばらつきが低減される。当該効果を実験により確認した。なお、以下において、「σ」は、標準偏差を示し、「CV」は変動係数を示す。
(実験1)
実際に実施形態に係るピペット1を用意し、第1信号Sg1の出力によって液体の吸引を行った。そして、ブレーキ信号Sg12の出力後、離液したとき(ステップSU13の後かつステップSU14の前)の液体の吸引量を測定した。また、比較例に係るピペットを用意し、同様の実験を行った。比較例に係るピペットでは、第1信号として、吸引信号Sg11のみが出力され(ブレーキ信号Sg12が出力されず)、離液後まで、吸引信号Sg11の維持信号Sg112が維持された。
上記のような吸引及び吸引量の測定を実施例に係るピペット及び比較例に係るピペットのそれぞれに関して10回行った。第1信号の出力開始から離液まで(ステップSU12からステップSU13まで)の時間は、10回の吸引及び測定間でばらつくように適宜に設定された。第1信号Sg1のパラメータの値は、電位V0=基準電位、電位V1=3.5V、電位V2=2.2V、時間長さTp=0.1秒とした。第1信号Sg1は、矩形波とした。
図11(a)は、実験結果を示す図である。この図の横軸において、CE1は比較例を示しており、E1は実施例を示している。縦軸は、吸引量VL(nl)を示している。そして、比較例及び実施例において測定された吸引量がプロットされている。
この図に示されているように、実施例のピペットの吸引量は、比較例のピペットの吸引量に比較して、ばらつきが小さくなっている。この結果から、ブレーキ信号Sg12の効果を確認できた。なお、吸引量の測定結果を示す数値を以下にしめす。
実施例の吸引量:
平均値=42.6nl、σ=3.2nl、CV=7.5%
比較例の吸引量:
平均値=60.7nl、σ=23.7nl、CV=39.0%
(実験2)
実験1と同様の条件により、第1液体L1の吸引だけでなく、第2液体L2の吸引まで行い、離液したとき(ステップSU2内において、ステップSU1のステップSU13に対応するステップを行ったとき)の液体の吸引量を測定した。なお、第2信号Sg2にとっては、第1信号Sg1の付加吸引信号Sg13の維持信号Sg132が、第1信号Sg1にとっての初期信号Sg0に相当する。それ以外は、第2信号Sg2の波形は、第1信号Sg1の波形と同様である。
図11(b)は、実験結果を示す、図11(a)と同様の図である。この図に示されているように、実施例のピペットの吸引量は、比較例のピペットの吸引量に比較して、ばらつきが小さくなっている。この結果から、ブレーキ信号Sg12の効果を確認できた。なお、吸引量の測定結果を示す数値を以下にしめす。
実施例の吸引量:
平均値=91.1nl、σ=13.9nl、CV=15.2%
比較例の吸引量:
平均値=119.8nl、σ=31.9nl、CV=26.6%
[時間長さTpによる吸引量の設定]
既述のように、ブレーキ信号Sg12を用いることによって、吸引信号Sg11の出力を開始してからブレーキ信号Sg12の出力を開始するまでの時間長さTpによって、吸引量を規定することができる。このことを実験によって確認した。
具体的には、実験1と概ね同様の条件により、実施例に係るピペットに関して、ブレーキ信号Sg12の出力後、離液したとき(ステップSU13の後かつステップSU14の前)の液体の吸引量を測定した。ただし、ここでは、時間長さTpを0.1秒、0.5秒又は1.0秒の3種のいずれかの値とした。そして、時間長さTpの各値について、10回の吸引及び測定を行った。
図12は、実験結果を示す図である。この図の横軸は、時間長さTpを示している。紙面左側の縦軸は、吸引量VL(nl)の平均値を示している。紙面右側の縦軸は、吸引量VLのσ(nl)を示している。円形のプロット(VLm)は、時間長さTpと吸引量の平均値との関係を示している。矩形のプロット(σ)は、時間長さTpとσとの関係を示している。
この図に示されているように、時間長さTpを長くするほど、吸引量VLが多くなっている。この結果から、例えば、時間長さTpによって吸引量を規定する新たな計量が可能であることを確認できた。また、時間長さTpを変化させても、ばらつきに大きな相違は生じないことを確認できた。
[圧力室の容積低減によるばらつき低減]
第3実施形態において説明したように、初期信号Sg0によって駆動部50が圧力室21側へ撓むように初期信号Sg0の電位V0を設定することによって、吸引量のばらつきを低減することができる。このことを実験によって確認した。
具体的には、実験1と概ね同様の条件により、実施例に係るピペットに関して、ブレーキ信号Sg12の出力後、離液したとき(ステップSU13の後かつステップSU14の前)の液体の吸引量を測定した。ただし、ここでは、電位V0を3種の異なる値に設定し、各値に関して、吸引及び吸引量の測定を10回行った。電位V0の3種の値は、圧力室21の容積の差異が15μl以下の範囲に収まる値とした。
図13は、実験結果を示す図である。この図の横軸は、初期信号Sg0が出力されているときの圧力室21の容積VP(μl)を示している。縦軸は、吸引量のCV(%)を示している。なお、圧力室21の容積VPについては、平均値を基準とした相対値で示している。この図に示されているように、容積VPを小さくするほど、吸引量のCVが小さくなっている。
なお、以上の実施形態において、圧力室21の、電位V0に対応する容積は第1吸引前容積の一例である。電位差dV1に対応する容積の変化量は第1増加量の一例である。電位V1に対応する容積は第1吸引後容積の一例である。電位V2に対応する容積はブレーキ後容積の一例である。電位差dV2に対応する容積の変化量は、第1吸引後容積からブレーキ後容積への減少量の一例である。電位V3に対応する容積は、第1完了容積の一例である。電位差dV3に対応する容積の変化量は付加増加量の一例である。ステップSU12の操作は第1入力の一例である。付加吸引信号Sg13の維持信号Sg132は第1待機信号の一例である。ステップSU2の操作(より詳細にはステップSU2内においてステップSU1のステップSU12に対応する操作)は第2入力の一例である。電位V4(より詳細には第2信号Sg2において第1信号Sg1の電位V3に対応する電位)に対応する容積は第2完了容積の一例である。第2信号Sg2(より詳細には第2信号Sg2において第1信号Sg1の付加吸引信号Sg13の維持信号Sg132に対応する信号)は第2待機信号の一例である。ステップSU3の操作(より詳細には時刻t3におけるピペット1に対する操作)は第3入力の一例である。ステップSC12は吸引ステップの一例である。ステップSC14はブレーキステップの一例である。
本開示に係る技術は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
上述した実施形態は、適宜に組み合わされてよい。例えば、制御部25は、ユーザが設定した吸引量の目標値(記憶部72に記憶されている目標値)に基づいて、第1信号Sg1の電位差dV1及び時間長さTpの双方の値を設定(変更)してもよい。そして、制御部25は、その電位差dV1及び時間長さTpに基づいて第2信号Sg2の波形を規定するパラメータ(例えば電位差dV2)の値を設定してもよい。
ピペットは、2液を混合することが可能なものに限定されない。例えば、ピペットは、1液を吸引して、当該1液を元の場所とは異なる場所へ吐出するためのものであってもよい。また、ピペットは、3液以上を吸引可能なものであってもよい。
第1信号Sg1は、付加吸引信号Sg13を含んでいなくてもよい。すなわち、ブレーキ信号Sg12の維持信号Sg122が出力されているときに、第1液体L1からの離液と第2液体L2への接液とがなされ、第2信号Sg2の出力が開始されてよい。別の観点では、第1信号Sg1のブレーキ信号Sg12の維持信号Sg122の電位V2から、第2信号Sg2が立ち上がってよい。なお、この場合、維持信号Sg122が第1待機信号の一例である。第1信号Sg1は、本実施形態とは異なり、吸引とブレーキとを繰り返して第1液体L1を吸引しても構わない。
第3信号Sg3は、復元信号Sg32を含んでなくてもよい。すなわち、エア吸引信号Sg31が出力されているときに、バルブ23の開閉を行なわずに、引き続いて混合信号Sg33が出力されるようにしてもよい。すなわち、圧力室21の復元を行なわなくてもよい。この場合、バルブ23を有していなくてもよい。
信号の出力開始又は出力停止(信号の切換えに伴うものを含む)のトリガは適宜に設定されてよい。例えば、エア吸引信号Sg31から復元信号Sg32への切換え、及び/又は復元信号Sg32から混合信号Sg33への切換えは、制御部25の計時による判定ではなく、入力部71に対する入力をトリガとして行われてもよい。また、例えば、制御部25は、第2液体L2の吸引を指示する入力の後(第2液体L2について付加吸引が行われる場合は付加吸引を指示する入力の後)、所定の時間が経過したと判定したときに、第3信号の出力を開始しても構わない。
1…ピペット、10…キャピラリー、11…第1端、12…第2端、21…圧力室、25…制御部、50…駆動部、Sg1…第1信号、Sg11…吸引信号、Sg12…ブレーキ信号。

Claims (11)

  1. 長さ方向の両端である第1端及び第2端が開口しているキャピラリーと、
    前記第2端を介して前記キャピラリーの内部に通じている圧力室と、
    前記圧力室の容積を変化させる駆動部と、
    前記駆動部を制御する制御部と、
    を有しており、
    前記制御部は、前記圧力室の容積が増加して前記第1端から第1液体が吸引されるように前記駆動部を駆動させる第1信号を出力し、
    前記第1信号は、
    前記圧力室の容積が、前記第1液体が吸引される前の第1吸引前容積から第1増加量で増加して第1吸引後容積になるように前記駆動部を駆動させる吸引信号と、
    前記吸引信号に続いて出力され、前記圧力室の容積が前記第1増加量よりも絶対値が小さい減少量で前記第1吸引後容積から減少してブレーキ後容積になるように前記駆動部を駆動させるブレーキ信号と、を含んでいる
    ピペット。
  2. 前記制御部は、前記第1増加量が大きいほど、前記減少量の絶対値が大きくなるように前記第1信号を生成する
    請求項1に記載のピペット。
  3. 前記吸引信号は、前記圧力室の容積が所定の時間長さに亘って前記第1吸引後容積に維持されるように前記駆動部を駆動させる維持信号を含んでおり、
    前記ブレーキ信号は、前記維持信号に続いて出力され、
    前記制御部は、前記時間長さが短いほど、前記減少量の絶対値が大きくなるように前記第1信号を生成する
    請求項1又は2に記載のピペット。
  4. 前記第1端から前記第1液体を吸引する量の目標値を記憶する記憶部を有しており、
    前記制御部は、前記目標値が大きいほど、前記第1増加量が大きくなるように前記第1信号を生成する
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のピペット。
  5. 前記第1端から前記第1液体を吸引する量の目標値を記憶する記憶部を有しており、
    前記吸引信号は、前記圧力室の容積が所定の時間長さに亘って前記第1吸引後容積に維持されるように前記駆動部を駆動させる維持信号を含んでおり、
    前記ブレーキ信号は、前記維持信号に続いて出力され、
    前記制御部は、前記目標値が小さいほど、前記時間長さが短くなるように前記第1信号を生成する
    請求項1〜4のいずれか1項に記載のピペット。
  6. 前記第1信号は、前記圧力室の容積が、前記ブレーキ後容積から付加増加量で増加して第1完了容積になるように前記駆動部を駆動させる付加吸引信号を含んでおり、
    前記付加増加量は、前記第1端を前記第1液体に接触させて前記第1端から前記第1液体の一部を吸引した後に前記第1端を前記第1液体の残りから引き上げたときに、前記第1液体の、前記第1端から外側へはみ出す体積と等しい
    請求項1〜5のいずれか1項に記載のピペット。
  7. ユーザによる操作入力及び外部機器による信号入力の少なくとも一方の入力を受け付ける入力部を更に有しており、
    前記吸引信号は、前記入力部に対する第1入力をトリガとして出力が開始され、
    前記ブレーキ信号は、前記吸引信号の出力開始に対して予め定められたタイミングで前記吸引信号に代えて出力される
    請求項1〜6のいずれか1項に記載のピペット。
  8. 前記第1信号は、前記圧力室の容積が前記ブレーキ後容積以上の第1完了容積を維持するように前記駆動部を駆動させる第1待機信号を含んでおり、
    前記制御部は、前記入力部に対して前記第1入力よりも後に加えられる第2入力をトリガとして、前記第1待機信号に代えて、前記圧力室の容積が前記第1完了容積から増加して前記第1端から第2液体が吸引されるように前記駆動部を駆動させる第2信号を出力する
    請求項7に記載のピペット。
  9. 前記第2信号は、前記圧力室の容積を前記第1完了容積よりも大きい第2完了容積に維持する第2待機信号を含んでおり、
    前記制御部は、前記入力部に対して前記第2入力よりも後に加えられる第3入力をトリガとして、前記第2信号に代えて、前記圧力室の容積が、前記第2完了容積から増加し、その後、繰り返し増減するように前記駆動部を駆動させる第3信号を出力する
    請求項8に記載のピペット。
  10. 前記駆動部は、前記圧力室の内面の一部を構成しており、前記内面の撓み変形によって前記圧力室の容積を変化させ、
    前記制御部は、前記第1信号の出力前に、前記圧力室の容積が前記第1吸引前容積になるように前記駆動部を駆動させる初期信号を出力し、
    前記初期信号は、前記内面を前記圧力室の内側へ向けて撓ませる信号である
    請求項1〜9のいずれか1項に記載のピペット。
  11. 長さ方向の両端である第1端及び第2端が開口しているキャピラリーと、前記第2端を介して前記キャピラリーの内部に通じている圧力室と、前記圧力室の容積を変化させる駆動部とを有しているピペットを用いた液体採取方法であって、
    前記第1端を液体に接触させる接液ステップと、
    前記第1端を前記液体に接触させている状態で、前記駆動部によって前記圧力室の容積を増加させ、これにより、前記第1端から前記液体を前記キャピラリー内に吸引する吸引ステップと、
    前記液体の一部が前記キャピラリー内に吸引された後、前記第1端を前記液体の残りから離す離液ステップと、
    前記吸引ステップの後、かつ前記離液ステップの前に、前記駆動部によって前記圧力室の容積を減少させるブレーキステップと、
    を有している液体採取方法。
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