JP6620781B2 - ダストの溶融還元方法及び再利用方法 - Google Patents
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Description
そこで、本発明は、上記の課題に着目してなされたものであり、水分を含むダストを電気炉で溶融及び還元処理することができる、ダストの溶融還元処理方法及び再利用方法を提供することを目的としている。
本発明の一態様によれば、上記のダストの溶融還元方法を用いて、転炉で発生し、クロム酸化物と10質量%以上18質量%以下の水分とを含むダストを溶融及び還元し、その後、製造された溶鉄、または上記溶鉄を凝固させた鋳鉄を、高クロム鋼の鉄源及びクロム源として用いることを特徴とするダストの再利用方法が提供される。
図面を参照して、本発明の一実施形態に係るダストの溶融還元方法について説明する。本実施形態では、転炉でのステンレス鋼の吹錬処理により発生するダストを、電気炉1を用いて溶融及び還元処理する。
電気炉1は、処理容量が50tの慣用的な3相交流式の交流アーク炉であり、炉殻10と、炉蓋11と、3本の電極12と、バーナー13と、投入シュート14とを有する。炉殻10は、上端に開口部を有する容器であり、内部には耐火物が設けられる。炉殻10の底部は、中央部が端部に対して下側に凹んだ形状、つまり図1及び図2に示す断面視でアーチ状に下側に凹んだ形状を有する。また、炉殻10の底部には、アルゴンなどの攪拌用のガスを吹き込む複数の底吹きノズル100が設けられる。炉蓋11は、炉殻10の開口部を覆うように設けられ、炉殻10の開口部を開閉するように移動可能または回転可能に構成される。3本の電極12は、黒鉛電極であり、鉛直方向(図1の上下方向)に移動可能に設けられる。また、3本の電極12は、不図示の電源に接続され、電源から供給される三相交流電力によって、炉殻10内の原料との間にアークを発生させる。バーナー13は、補助燃焼装置であり、燃焼性のガスや原料、酸素ガス等を炉殻10内に噴射し、火炎を形成することで、炉殻10内の原料の溶解を促進する目的で用いられる。投入シュート14は、媒溶剤や還元剤、後述する造粒物等の副原料を貯蔵する不図示の副原料ホッパに接続され、副原料ホッパから切り出される副原料を炉殻10に投入する。また、投入シュート14は、副原料の投入位置を調整可能なように、炉殻10内の先端が移動可能に構成される。
溶融還元工程では、まず、アーク加熱を続けながら、投入シュート14から造粒物の投入を行う。この際、造粒物の水分を10質量%以上18質量%以下とする。また、溶融還元工程では、投入予定量の造粒物を、5t/h以上10t/h以下の投入速度で連続して投入する。さらに、溶鉄2の浴面にスラグ層3が形成される前までは、溶鉄2の浴面には造粒物を投入シュート14から直接投入しないようにすることが好ましい。さらに、図2に示すように、溶鉄2の浴面2aにスラグ層3が形成される前までは、電気炉の開口部10aの面積(図2下側の平面視における面積)に対する、浴面2aの面積(図2下側の平面視における面積)の比である面積比を30%以上64%以下とすることが好ましい。つまり、溶鉄2の浴面2aにスラグ層3が形成される前までは、投入シュート14による投入位置を調整し、炉殻10内側の浴面2aよりも外側の領域に造粒物を投入することが好ましい。これにより、造粒物の温度の上昇速度を緩和することができ、造粒物をより安全に溶鉄2へ添加することができる。さらに、スラグ層3が50mm程度の厚みで形成された後は、投入位置を浴面2aの領域として造粒物の投入を行ってもよい。スラグ層3が形成された状態では、造粒物が浴面2aへ直接投入されず、浴面2aに形成されたスラグ層3へ投入されることとなるため、造粒物の急激な温度上昇は抑制される。なお、この場合においても、造粒物の投入速度を、5t/h以上10t/h以下とする。
溶融還元工程の後、溶製されたクロム濃度の高い溶鉄2は、ステンレス鋼等の高クロム鋼を溶製する際の鉄源及びクロム源として再利用される。この再利用方法としては、例えば、溶製された溶鉄2を、高クロム鋼の溶製が行われる転炉等の精錬装置に、溶融した状態で移注することで再利用されてもよい。また、溶製された溶鉄2を凝固させて鋳鉄として、高クロム鋼の溶製が行われる転炉等の精錬装置にこの鋳鉄を添加することで再利用されてもよい。この場合、溶鉄2を大型の鋳型で凝固させた鋼塊を切断して用いてもよく、鋳銑機のような複数の金型で連続的に鋳造を行う設備で溶鉄2を凝固させて用いてもよい。
以上で、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態とともに種々の変形例を含む本発明の別の実施形態も明らかである。従って、特許請求の範囲に記載された発明の実施形態には、本明細書に記載したこれらの変形例を単独または組み合わせて含む実施形態も網羅すると解すべきである。
さらに、上記実施形態では、溶融還元処理に用いられるダストがクロム含有鋼を溶製する際に発生したものとしたが、本発明はかかる例に限定されない。ダストは、転炉等の精錬設備でクロム含有鋼を溶製する際に発生したものを含んでいればよく、一般鋼種等の他の鋼種を溶製する際に発生したダストが含まれていてもよい。
さらに、スクラップ溶解工程において、全てのスクラップを溶解してもよい。この場合、溶解した後の溶鉄2の浴面の面積比を30%以上64%以下とすることが好ましい。
さらに、溶融還元工程において、CaOを含む媒溶剤を炉殻10内に投入してもよい。しかし、媒溶剤を添加するとスラグの量が増加し、還元されるクロムが減少するため、媒溶剤の投入量をできるだけ少なくすることが好ましい。
さらに、上記実施形態では、還元剤としてフェロシリコンやAlドロスを用いるとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、SiやAlを含む還元剤として、AlまたはSiを含有する合金や、金属アルミニウム等が用いられてもよい。
(1)本発明の一態様に係るダストの溶融還元方法は、電気炉1内に装入されたスクラップを、アーク加熱によって溶解するスクラップ溶解工程と、スクラップ溶解工程の後、クロム含有鋼の溶製工程から発生したダストを転動造粒して製造される造粒物及び還元剤を電気炉1(炉殻10)内に投入し、造粒物の溶融を行い、還元処理を行う溶融還元工程と、を備え、溶融還元工程では、造粒物を10質量%以上18質量%以下の水分を含んだ状態で電気炉1に投入する。
上記(2)の構成によれば、処理容量が20t〜100t程度の一般的な電気炉1において、造粒物をより効率よく安全に投入することができるようになる。
(3)上記(1)または(2)の構成において、造粒物には、10mm以下の粒径のものが90質量%以上含まれる。
上記(3)の構成によれば、より安全に造粒物を添加することができる。
上記(3)の構成によれば、予め装入された造粒物は、スクラップの昇熱に合わせて昇熱され、乾燥あるいは溶融することになる。このため、溶融及び還元処理するダストの量を増加させることができる。また、予め装入された造粒物が溶融することで、スラグ層3がより早く形成されるため、溶融還元工程において造粒物の投入位置の調整が容易になる。
上記(4)の構成によれば、還元処理に要する時間を短くすることができる。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかの構成において、溶融還元工程では、溶鉄2の浴面2aにスラグ層3が形成されるまでの間、電気炉1の開口部10aの面積に対する、浴面2aの面積の比である面積比を30%以上64%以下とし、浴面2aの外側に造粒物を投入する。
上記(6)の構成によれば、スラグ層3が形成されるまでの間は、造粒物が投入シュート14から溶鉄2へ直接投入されなくなるため、造粒物の温度上昇が緩和され、より安全に造粒物を投入することができる。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかの構成において、電気炉として、交流アーク炉を用いる。
上記(7)の構成によれば、汎用的な交流アーク炉を用いるため、設備の改造等の必要がなく、安価にダストの溶融及び還元を行うことができる。
上記(6)の構成によれば、効率よく安全にダストを溶融及び還元できるため、高クロム鋼を安価に溶製することができる。
実施例では、予め、炉殻10内に、10tの軟鋼スクラップと、1.2tの造粒物と、0.45tの黒鉛(炭材)とを原料として装入した。造粒物の成分組成(質量%)及び水分(質量%)を表1に示す。なお、表1において、T.Feは酸化したFeを含むFeの総含有量、T.Crは酸化したCrを含むCrの総含有量をそれぞれ示す。
次いで、497分間にわたって溶融還元工程を行った。溶融還元工程では、はじめに、23tの造粒物を複数回に分けて溶鉄2に添加した。この際、添加時の投入速度が5t/h以上10t/h以下となるように調整を行い、スラグ層3が十分に形成される前までは、投入シュート14から浴面に造粒物を直接投入しないようにした。また、造粒物を添加する際に、700kgのフェロシリコンを2回に分けて投入した。造粒物の投入が完了した後、溶鉄2を撹拌させながら、750kgのAlドロスを2回に分けて投入し、さらに500kgのフェロシリコンを投入した。その後、溶鉄2をさらに撹拌させ、処理を完了させた。
10 炉殻
100 底吹きノズル
11 炉蓋
12 電極
13 バーナー
14 投入シュート
2 溶鉄
3 スラグ層
Claims (6)
- 電気炉内に装入されたスクラップを、アーク加熱によって溶解するスクラップ溶解工程と、
前記スクラップ溶解工程の後、クロム含有鋼の溶製工程から発生したダストを転動造粒して製造される造粒物及び還元剤を前記電気炉内に投入し、前記造粒物の溶融を行い、還元処理を行う溶融還元工程と、
を備え、
前記溶融還元工程では、前記造粒物を10質量%以上18質量%以下の水分を含んだ状態で前記電気炉に投入し、
前記溶融還元工程では、
前記造粒物を5t/h以上10t/h以下の投入速度で添加し、
溶鉄の浴面にスラグ層が形成されるまでの間、前記電気炉の開口部の面積に対する、前記浴面の面積の比である面積比を30%以上64%以下とし、前記浴面の外側に前記造粒物を投入することを特徴とするダストの溶融還元方法。 - 前記造粒物には、10mm以下の粒径のものが90質量%以上含まれることを特徴とする請求項1に記載のダストの溶融還元方法。
- 前記スクラップ溶解工程の前に、前記電気炉内に前記スクラップに加えて前記造粒物を予め装入することを特徴とする請求項1または2に記載のダストの溶融還元方法。
- 前記溶融還元工程では、前記電気炉の底部から撹拌ガスを吹き込み、溶鉄を撹拌しながら還元処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のダストの溶融還元方法。
- 前記電気炉として、交流アーク炉を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のダストの溶融還元方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のダストの溶融還元方法を用いて、転炉で発生し、クロム酸化物と10質量%以上18質量%以下の水分とを含むダストを溶融及び還元し、
その後、製造された溶鉄、または前記溶鉄を凝固させた鋳鉄を、高クロム鋼の鉄源及びクロム源として用いることを特徴とするダストの再利用方法。
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