JP6613163B2 - 絶縁電線 - Google Patents

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Description

本発明は、絶縁電線に関する。
適用電圧が高い電気機器、例えば高電圧で使用されるモーター等では、電気機器を構成する絶縁電線に高電圧が印加され、その絶縁被膜表面で部分放電(コロナ放電)が発生し易くなる。コロナ放電の発生により、局部的な温度上昇、オゾンの発生、イオンの発生等が引き起こされると、早期に絶縁破壊を生じ、絶縁電線ひいては電気機器の寿命が短くなる。このため、適用電圧が高い電気機器に使用される絶縁電線には、優れた絶縁性、機械的強度等に加えてコロナ放電開始電圧の向上も求められる。
コロナ放電開始電圧を上げる工夫としては、絶縁被膜の低誘電率化が有効である。絶縁被膜の低誘電率化を実現するために、塗膜構成樹脂と、この塗膜構成樹脂の焼付温度よりも低い温度で分解する熱分解性樹脂とを含む絶縁ワニスにより加熱硬化膜(絶縁被膜)を形成する絶縁電線が提案されている(特開2012−224714号公報参照)。この絶縁電線は、上記熱分解性樹脂が塗膜構成樹脂の焼付時に熱分解してその部分が気孔となることを利用して加熱硬化膜内に気孔が形成されており、この気孔の形成により絶縁被膜の低誘電率化を実現している。
また、絶縁電線には、使用時に過電圧(サージ電圧)が一時的に加わることがある。サージ電圧が加わると絶縁層が放熱による加熱で劣化し製品寿命が短くなる。そのため、絶縁層に無機微粒子(シリカ)を含有させ耐サージ性を改善した絶縁電線が提案されている(特開2007−141507号公報参照)。
特開2012−224714号公報 特開2007−141507号公報
上述の従来の絶縁電線では、絶縁層に用いるシリカが樹脂中に分散させることが困難であり偏在しやすいため、耐サージ性の改善が不十分となるおそれがある。また、シリカを含むワニスは、シリカの沈降が起こりやすく取り扱いが困難であり、絶縁電線の製造性が低下するという不都合がある。
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、製造性を維持しつつ、耐サージ性に優れる絶縁電線を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体と、この導体の外周面に積層される1又は複数の絶縁層とを備える絶縁電線であって、上記絶縁層がシリコーンを含有する。
本発明の絶縁電線は、製造性を維持しつつ、耐サージ性に優れる。
本発明の一実施形態の絶縁電線の模式的断面図である。 図1とは異なる実施形態の絶縁電線の模式的断面図である。 図1及び図2とは異なる実施形態の絶縁電線の模式的断面図である。
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体と、この導体の外周面に積層される1又は複数の絶縁層とを備える絶縁電線であって、上記絶縁層がシリコーンを含有する。
当該絶縁電線は、絶縁層にシリコーンを含有し、このシリコーンが、サージ電圧が印可された際に放熱によりシリカに変性する。つまり、当該絶縁電線は、シリカと異なり絶縁層中に偏在しにくく、かつ放熱を経た後にシリカに変性するシリコーンを含むことで、製造性を維持しつつ、絶縁層の耐サージ性を均質に高め、製品寿命を著しく向上できる。なお、「シリコーン」とは、ケイ素原子と酸素原子とが結合したシロキサン結合の繰り返し構造を含む高分子を意味する。
上記絶縁層の少なくとも一層がマトリックスとこのマトリックス中に分散するシリコーンとを含有するとよい。このように絶縁層がマトリックス中にシリコーンを含有分散することで、容易かつ確実に耐サージ性を向上することができる。
上記絶縁層の少なくとも一層がシリコーンを主成分としてもよい。このように絶縁層がシリコーンを主成分とする層を含むことでも、容易かつ確実に耐サージ性を向上することができる。
上記絶縁層の少なくとも一層が複数の気孔とこの気孔の周縁部の外殻とを含有し、この外殻がシリコーンを主成分としてもよい。絶縁層がこのような気孔と外殻とを含有することで、絶縁層の誘電率を低下させつつ、耐サージ性を向上させることができる。また、絶縁層に含まれる気孔が外殻で囲まれることで、気孔同士が連通し難く粗大な気孔が生じ難いので、絶縁性及び耐溶剤性の低下を抑制しつつ誘電率を低減できる。
なお、「主成分」とは、最も多く含まれる成分を意味し、例えば50質量%以上含まれる成分を意味する。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る絶縁電線を説明する。
[第一実施形態]
図1の当該絶縁電線10は、線状の導体1と、この導体1の外周面に積層される1層の絶縁層2とを備える。この絶縁層2は、マトリックスとこのマトリックス中に分散するシリコーン3とを含有する。
<導体>
上記導体1は、例えば断面が円形状の丸線とされるが、断面が方形状の角線や、複数の素線を撚り合わせた撚り線であってもよい。
導体1の材質としては、導電率が高くかつ機械的強度が大きい金属が好ましい。このような金属としては、例えば銅、銅合金、アルミニウム、ニッケル、銀、軟鉄、鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。導体1は、これらの金属を線状に形成した材料や、このような線状の材料にさらに別の金属を被覆した多層構造のもの、例えばニッケル被覆銅線、銀被覆銅線、銅被覆アルミニウム線、銅被覆鋼線等を用いることができる。
導体1の平均断面積の下限としては、0.01mmが好ましく、0.1mmがより好ましい。一方、導体1の平均断面積の上限としては、10mmが好ましく、5mmがより好ましい。導体1の平均断面積が上記下限に満たないと、導体1に対する絶縁層2の体積が大きくなり、当該絶縁電線を用いて形成されるコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。逆に、導体1の平均断面積が上記上限を超えると、誘電率を十分に低下させるために絶縁層2を厚く形成しなければならず、当該絶縁電線が不必要に大径化するおそれがある。
<絶縁層>
上記絶縁層2は、図1に示すように、マトリックスとこのマトリックス中に分散するシリコーン3とを含有する。
絶縁層2の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、絶縁層2の平均厚さの上限としては、200μmが好ましく、100μmがより好ましい。絶縁層2の平均厚さが上記下限に満たない場合、絶縁層2に破れが生じ、導体1の絶縁が不十分となるおそれがある。逆に、絶縁層2の平均厚さが上記上限を超える場合、当該絶縁電線10を用いて形成されるコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。
絶縁層2のマトリックスは、シリコーン3以外の樹脂により形成される。
上記マトリックスの主成分(主ポリマー)としては、特に限定されないが、熱硬化性樹脂を使用する場合、例えばポリビニールホルマール、熱硬化ポリウレタン、熱硬化アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、熱硬化ポリエステル、熱硬化ポリエステルイミド、熱硬化ポリエステルアミドイミド、熱硬化ポリアミドイミド、ポリイミド等が使用できる。また、主ポリマーとして熱可塑性樹脂を使用する場合、例えばポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド等が使用できる。これらの中でも、絶縁層形成用のワニスを塗布し易くできると共に絶縁層2の強度及び耐熱性を向上させ易い点において、ポリイミドが好ましい。
シリコーン3は、粒子状であり、マトリックス中に分散している。シリコーン3の形状としては、球形でも扁平形状でもよい。
シリコーンとしては、例えばポリメチルシロキサン等のオルガノポリシロキサンなどが用いられる。
シリコーン3の平均粒子径の下限としては、特に限定はないが、0.1μmが好ましく、1μmがより好ましく、1.5μmがさらに好ましい。一方、シリコーン3の平均粒子径の上限としては、10μmが好ましく、8μmがより好ましく、6μmがさらに好ましい。シリコーン3の平均粒子径が上記下限より小さい場合、分散性が低下し、耐サージ性の向上効果が低下するおそれがある。逆に、シリコーン3の平均粒子径が上記上限を超える場合、絶縁層2の誘電率が上昇するおそれや機械的強度等が低下するおそれに加え、絶縁層2が不要に厚くなるおそれがある。なお、「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した粒度分布において、最も高い体積の含有割合を示す粒子径を意味する。
絶縁層2におけるシリコーン3の含有率は、絶縁電線の使用時に想定される過電圧(サージ電圧)や寿命時間によって任意に変更できるが、絶縁層2におけるシリコーン3の含有率の下限としては、マトリックス100質量部に対し、5質量部が好ましく、15質量部がより好ましく、20質量部がさらに好ましい。一方、絶縁層2におけるシリコーン3の含有率の上限としては、マトリックス100質量部に対し、60質量部が好ましく、50質量部がより好ましく、40質量部がさらに好ましい。シリコーン3の含有率が上記下限より小さい場合、耐サージ性の向上効果が不十分となるおそれがある。逆に、シリコーン3の含有率が上記上限を超える場合、絶縁層2の誘電率が上昇するおそれや機械的強度等が低下する。
絶縁層2におけるシリコーン3の絶縁層2全体における含有率の下限としては、3質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、15質量%がさらに好ましい。一方、絶縁層2におけるシリコーン3の絶縁層2全体における含有率の上限としては、50質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましい。シリコーン3の含有率が上記下限より小さい場合、耐サージ性の向上効果が不十分となるおそれがある。逆に、シリコーン3の含有率が上記上限を超える場合、絶縁層2の機械的強度等が低下するおそれに加え、絶縁層2が不要に厚くなるおそれがある。
また、絶縁層2を形成する樹脂組成物に硬化剤を含有させてもよい。硬化剤としては、チタン系硬化剤、イソシアネート系化合物、ブロックイソシアネート、尿素やメラミン化合物、アミノ樹脂、アセチレン誘導体、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などの脂環式酸無水物、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物等が例示される。これらの硬化剤は、使用する樹脂組成物が含有する主ポリマーの種類に応じて、適宜選択される。例えば、ポリアミドイミド系の場合、硬化剤として、イミダゾール、トリエチルアミン等が好ましく用いられる。
なお、上記チタン系硬化剤としては、テトラプロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラヘキシルチタネート等が例示される。上記イソシアネート系化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタンなどの炭素数5〜18の脂環式イソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、これらの変性物等が例示される。上記ブロックイソシアネートとしては、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート等が例示される。上記メラミン化合物としては、メチル化メラミン、ブチル化メラミン、メチロール化メラミン、ブチロール化メラミン等が例示される。上記アセチレン誘導体としては、エチニルアニリン、エチニルフタル酸無水物等が例示される。
<絶縁電線の製造方法>
次に、当該絶縁電線10の製造方法について説明する。当該絶縁電線10の製造方法は、上記絶縁層2を形成する樹脂を溶剤で希釈した樹脂組成物に、シリコーン3を分散させることで絶縁層形成用ワニスを調製する工程(ワニス調製工程)と、上記絶縁層形成用ワニスを上記導体1の外周面に塗布及び加熱する工程(ワニス塗布工程)とを備える。
(ワニス調製工程)
上記ワニス調製工程において、まず、絶縁層2のマトリックスを形成する樹脂(熱硬化性樹脂の場合は前駆体)を溶剤で希釈することにより、絶縁層2のマトリックスを形成する樹脂組成物を作成する。次に、この樹脂組成物にシリコーン3を分散させて絶縁層形成用ワニスを調製する。なお、樹脂組成物にシリコーン3を分散させるのではなく、樹脂を溶剤で希釈する際、同時にシリコーン3を混合することにより上記絶縁層形成用ワニスを調製してもよい。
希釈用溶剤としては、絶縁ワニスに従来より用いられている公知の有機溶剤を用いることができる。具体的には、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサエチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトンなどの極性有機溶媒をはじめ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、ジクロロメタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、クレゾール、クロルフェノールなどのフェノール類、ピリジンなどの第三級アミン類等が挙げられ、これらの有機溶媒はそれぞれ単独であるいは2種以上を混合して用いられる。
絶縁層形成用ワニスの樹脂固形分濃度の下限としては、15質量%が好ましく、20質量%がより好ましい。一方、絶縁層形成用ワニスの樹脂固形分濃度の上限としては、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。絶縁層形成用ワニスの樹脂固形分濃度が上記下限に満たない場合、1回のワニスの塗布で形成できる厚さが小さくなるため、所望の厚さの絶縁層2を形成するためのワニス塗布工程の繰り返し回数が多くなり、ワニス塗布工程の時間が長くなるおそれがある。逆に、絶縁層形成用ワニスの樹脂固形分濃度が上記上限を超える場合、ワニスが増粘することにより、ワニスの保存安定性が悪化するおそれがある。
(ワニス塗布工程)
上記ワニス塗布工程において、まず、上記ワニス調製工程で調製した絶縁層形成用ワニスを導体1の外周面に塗布した後、塗布ダイスにより導体1のワニスの塗布量の調節及び塗布されたワニス面の平滑化を行う。
上記塗布ダイスは開口部を有し、絶縁層形成用ワニスを塗布した導体1がこの開口部を通過することで余分なワニスが除去され、ワニスの塗布量が調整される。これにより、当該絶縁電線10は、絶縁層2の厚さが均一になり、均一な電気絶縁性が得られる。
次に、絶縁層形成用ワニスが塗布された導体1を焼付炉に通して絶縁層形成用ワニスを焼付けることで、導体1表面に絶縁層2を形成する。
導体1表面に積層される絶縁層2が所定の厚さとなるまで、上記ワニス塗布工程及び加熱工程を繰り返すことにより、当該絶縁電線10が得られる。
<利点>
当該絶縁電線10は、絶縁層2のマトリックス中に分散するシリコーン3が、サージ電圧が印可された際に放熱によりシリカに変性する。このシリカは、耐サージ性を向上し、サージ電圧による絶縁層2の劣化を抑制することができる。従って、当該絶縁電線10は、放熱を経た後にシリコーン3に由来するシリカが絶縁層2中に存在するため、製造性を維持しつつ、絶縁層2の耐サージ性を均質に高め、製品寿命を著しく向上できる。
なお、当該絶縁電線10において、絶縁層2は多層構造であってもよく、この場合絶縁層2の少なくとも1層がシリコーン3を含有すればよい。
[第二実施形態]
図2の当該絶縁電線20は、線状の導体1と、この導体1の外周面に積層される多層の絶縁層22とを備える。この絶縁層22は、内層22aと外層22bとを有する。導体1は、図1の絶縁電線10の導体1と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
<絶縁層>
上記絶縁層22は、図2に示すように、導体1の外周面に積層される内層22aとこの内層22aの外周面に積層され、最外層を形成する外層22bとを有する。
外層22bは、シリコーンを主成分とする。外層22bは、シリコーン以外に、他の絶縁性の樹脂や添加剤を含有してもよい。
外層22bにおけるシリコーンの含有率の下限としては、2質量%が好ましく、5質量%がさらに好ましい。一方、外層22bにおけるシリコーンの含有率の上限としては特に限定されず、通常100質量%である。シリコーンの含有率が上記下限より小さい場合、耐サージ性の向上効果が不十分となるおそれがある。
外層22bの平均厚さの下限としては、1μmが好ましく、3μmがより好ましい。一方、外層22bの平均厚さの上限としては、200μmが好ましく、100μmがより好ましい。外層22bの平均厚さが上記下限に満たない場合、耐サージ性の向上効果が不十分となるおそれがある。逆に、外層22bの平均厚さが上記上限を超える場合、絶縁層2の誘電率が上昇するおそれや、当該絶縁電線20を用いて形成されるコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。
内層22aは、絶縁性を有する樹脂組成物で形成される。この樹脂組成物としては、例えば図1の絶縁電線10の絶縁層2を形成する樹脂組成物と同様とすることができる。なお、内層22aを形成する樹脂組成物は、シリコーンを含有していてもしていなくてもよい。
内層22aの平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、内層22aの平均厚さの上限としては、200μmが好ましく、100μmがより好ましい。内層22aの平均厚さが上記下限に満たない場合、内層22aに破れが生じ、導体1の絶縁が不十分となるおそれがある。逆に、内層22aの平均厚さが上記上限を超える場合、当該絶縁電線20を用いて形成されるコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。
<絶縁電線の製造方法>
当該絶縁電線20は、上記内層22aを形成するための樹脂等を溶剤で希釈した樹脂組成物を上記導体1の外周面に塗布及び加熱する工程(内層ワニス塗布工程)と、上記外層22bを形成するための樹脂等を溶剤で希釈した樹脂組成物を上記内層22aの外周面に塗布及び加熱する工程(外層ワニス塗布工程)とを備える製造方法により得ることができる。
<利点>
当該絶縁電線20は、外層22bに含まれるシリコーンが、サージ電圧が印可された際に放熱によりシリカに変性する。従って、当該絶縁電線20は、一度放熱を経た後にシリコーンに由来するシリカが絶縁層22中に存在するため、製造性を維持しつつ、絶縁層22の耐サージ性を均質に高め、製品寿命を著しく向上できる。
なお、当該絶縁電線20において、絶縁層2は3層以上の多層構造であってもよく、またシリコーンを主成分とする層は最外層に限定されず、最内層や中間層であってもよい。
[第三実施形態]
図3の当該絶縁電線30は、線状の導体1と、この導体1の外周面に積層される1層の絶縁層32とを備える。この絶縁層32は、複数の気孔4とこの気孔の周縁部の外殻5とを含有する。導体1は、図1の絶縁電線10の導体1と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
<絶縁層>
上記絶縁層32は、図3に示すように、後述するコアシェル構造の中空形成粒子に由来する複数の気孔4とシリコーンを主成分とする外殻5とを含有する。
絶縁層32は、絶縁性を有する樹脂組成物、この樹脂組成物中に散在する気孔4、及び気孔4の周縁部の外殻5で形成される。この樹脂組成物としては、図1の絶縁電線10の絶縁層2を形成する樹脂組成物と同様とすることができる。なお、絶縁層32を形成する樹脂組成物は、シリコーンを含有していてもしていなくてもよい。
複数の気孔4は、図3に示すようにそれぞれ外殻5で被覆され、この外殻5はコアシェル構造の中空形成粒子のコアが除去されて中空となったシェルで構成される。つまり、外殻5はコアシェル構造の中空形成粒子のシェルに由来する。また、複数の外殻5のうち少なくとも一部は、欠損を有している。
複数の気孔4は、図3に示すように扁平球体であることが好ましい。また、気孔4の短軸が導体1表面と垂直方向に配向していると、外力が作用し易い上記垂直方向に気孔同士が当接し難くなるため、独立気孔がより維持され易い。そのため、短軸が導体1表面と垂直方向に配向している気孔4の割合が大きいほど好ましい。全気孔4の数に対する短軸が導体1表面と垂直方向に配向している気孔4の数の割合の下限としては、60%が好ましく、80%がより好ましい。短軸が導体1表面と垂直方向に配向している気孔4の割合が上記下限に満たないと、気孔同士で当接する気孔4が増加し、連続気孔の発生を十分に抑制できないおそれがある。
気孔4の短径及び長径を含む断面における長径に対する短径の長さの比の平均の下限としては、0.2が好ましく、0.3がより好ましい。一方、上記比の平均の上限としては、0.95が好ましく、0.9がより好ましい。上記比の平均が上記下限に満たないと、ワニス焼付時の厚さ方向の収縮量を大きくする必要があるため、当該絶縁電線30の可撓性が低下するおそれがある。逆に、上記比の平均が上記上限を超えると、気孔率を高くする場合に、外力が作用し易い絶縁層32の厚さ方向に気孔同士が当接し易くなり、気孔4の連通抑制効果が十分に得られないおそれがある。なお、上記比は、絶縁層形成用ワニスに含まれる樹脂組成物の焼付時の収縮により中空形成粒子に加わる圧力を変化させることで調節できる。この中空形成粒子に加わる圧力は、例えば上記樹脂組成物の主成分となる材料の種類、絶縁層32の厚さ、中空形成粒子の材料、焼付条件等により変化させることができる。
気孔4の長径の平均の下限としては、0.1μmが好ましく、1μmがより好ましい。一方、上記長径の平均の上限としては、10μmが好ましく、8μmがより好ましい。上記長径の平均が上記下限に満たないと、絶縁層32に所望の気孔率が得られないおそれがある。逆に、上記長径の平均が上記上限を超えると、絶縁層32内における気孔4の分布を均一にし難くなり、誘電率の分布に偏りが生じ易くなるおそれがある。
複数の気孔4の周縁部に存在する複数の外殻5は、少なくとも一部が欠損を有する。気孔4及び外殻5は、熱分解性樹脂を主成分とするコアと、この熱分解性樹脂より熱分解温度が高いシェルとを有する中空形成粒子に由来する。つまり、この中空形成粒子を含むワニスの焼付時にコアの主成分である熱分解性樹脂が熱分解によりガス化し、シェルを通過して飛散することにより気孔4及び外殻5が形成される。このとき、シェルにおける熱分解性樹脂の通過路が欠損として外殻5に存在する。この欠損の形状は、シェルの材質や形状によって変化するが、外殻5による気孔4の連通防止効果を高める観点から、亀裂、割れ目及び孔が好ましい。
なお、絶縁層32は、欠損のない外殻5を含んでいてもよい。コアの熱分解性樹脂のシェル外部への流出条件によってはシェル(外殻5)に欠損が形成されない場合もある。また、絶縁層32は、外殻5に被覆されない気孔4を含んでいてもよい。
外殻5の平均厚さは、後述する中空形成粒子のシェルの平均厚さと同じである。
絶縁層32の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、絶縁層32の平均厚さの上限としては、200μmが好ましく、100μmがより好ましい。絶縁層32の平均厚さが上記下限に満たない場合、絶縁層32に破れが生じ、導体1の絶縁が不十分となるおそれがある。逆に、絶縁層32の平均厚さが上記上限を超える場合、当該絶縁電線30を用いて形成されるコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。
絶縁層32の気孔率の下限としては、5体積%が好ましく、10体積%がより好ましい。一方、絶縁層32の気孔率の上限としては、80体積%が好ましく、50体積%がより好ましい。絶縁層32の気孔率が上記下限に満たないと、絶縁層32の誘電率が十分に低下せず、コロナ放電開始電圧を十分に向上できないおそれがある。逆に、絶縁層32の気孔率が上記上限を超えると、絶縁層32の機械的強度を維持できないおそれがある。ここで、「気孔率」とは、気孔を含む絶縁層の体積に対する気孔の容積の百分率を意味する。
絶縁層32と材質が同一でかつ気孔を含有しない層の誘電率に対する絶縁層32の誘電率の比の上限としては、95%であり、90%が好ましく、80%がより好ましい。上記誘電率の比が上記上限を超えると、コロナ放電開始電圧を十分に向上できないおそれがある。
<絶縁電線の製造方法>
次に、当該絶縁電線30の製造方法について説明する。当該絶縁電線30の製造方法は、上記絶縁層32を形成する樹脂を溶剤で希釈した樹脂組成物に、コアシェル構造の中空形成粒子を分散させることで絶縁層形成用ワニスを調製する工程(ワニス調製工程)、上記絶縁層形成用ワニスを上記導体1の外周面に塗布する工程(ワニス塗布工程)、及び加熱により上記中空形成粒子のコアを除去する工程(加熱工程)を備える。
(ワニス調製工程)
上記ワニス調製工程において、まず、絶縁層32を形成する樹脂を溶剤で希釈することにより、絶縁層32のマトリックスを形成する樹脂組成物を作成する。次に、この樹脂組成物に中空形成粒子を分散させて絶縁層形成用ワニスを調製する。なお、樹脂組成物に中空形成粒子を分散させるのではなく、樹脂を溶剤で希釈する際、同時に中空形成粒子を混合することにより上記絶縁層形成用ワニスを調製してもよい。
上記中空形成粒子は、熱分解性樹脂を主成分とするコアと、この熱分解性樹脂より熱分解温度が高いシェルとを有する。
コアの主成分に用いる熱分解性樹脂としては、例えば絶縁層を形成する樹脂の焼付温度よりも低い温度で熱分解する樹脂粒子が用いられる。絶縁層形成樹脂の焼付温度は、樹脂の種類に応じて適宜設定されるが、通常200℃以上600℃以下程度である。従って、中空形成粒子のコアに用いる熱分解性樹脂の熱分解温度の下限としては200℃が好ましく、上限としては400℃が好ましい。ここで、熱分解温度とは、空気雰囲気下で室温から10℃/分で昇温し、質量減少率が50%となるときの温度を意味する。熱分解温度は、例えば熱重量測定−示差熱分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社の「TG/DTA」)を用いて熱重量を測定することにより測定できる。
上記中空形成粒子のコアに用いる熱分解性樹脂としては、特に限定されないが、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの片方、両方の末端又は一部をアルキル化、(メタ)アクリレート化又はエポキシ化した化合物、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチルなどの炭素数1以上6以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体、ウレタンオリゴマー、ウレタンポリマー、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ε―カプロラクトン(メタ)アクリレートなどの変性(メタ)アクリレートの重合物、ポリ(メタ)アクリル酸、これらの架橋物、ポリスチレン、架橋ポリスチレン等が挙げられる。これらの中でも、絶縁層形成樹脂の焼付温度で熱分解し易く絶縁層2に気孔4を形成させ易い点において、炭素数1以上6以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体が好ましい。このような(メタ)アクリル酸エステルの重合体として、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)が挙げられる。
コアの形状は、球状が好ましい。コアの形状を球状とするために、例えば球状の熱分解性樹脂粒子をコアとして用いるとよい。球状の熱分解性樹脂粒子を用いる場合、この樹脂粒子の平均粒子径の下限としては、特に制限はないが、例えば0.1μmが好ましく、0.5μmがより好ましく、1μmがさらに好ましい。一方、上記樹脂粒子の平均粒子径の上限としては、15μmが好ましく、10μmがより好ましい。上記樹脂粒子の平均粒子径が上記下限に満たないと、この樹脂粒子をコアとする中空形成粒子が作製し難くなるおそれがある。逆に、上記樹脂粒子の平均粒子径が上記上限を超えると、この樹脂粒子をコアとする中空形成粒子が大きくなり過ぎるため、絶縁層32内における気孔4の分布が均一になり難くなり、誘電率の分布に偏りが生じ易くなるおそれがある。
シェルの主成分としては、シリコーンが用いられる。
シェルの平均厚さの下限としては、特に制限はないが、例えば0.01μmが好ましく、0.02μmがより好ましい。一方、シェルの平均厚さの上限としては、0.5μmが好ましく、0.4μmがより好ましい。シェルの平均厚さが上記下限に満たないと、気孔4の連通抑制効果が十分に得られないおそれがある。逆に、シェルの平均厚さが上記上限を超えると、気孔4の体積が小さくなり過ぎるため、絶縁層32の気孔率を所定以上に高められないおそれがある。なお、シェルは、1層で形成されてもよいし、複数の層で形成されてもよい。シェルが複数の層で形成される場合、複数の層の合計厚さの平均が、上記厚さの範囲内であればよい。
中空形成粒子のCV値(変動係数)の上限としては、30%が好ましく、20%がより好ましい。中空形成粒子のCV値が上記上限を超えると、絶縁層32にサイズが異なる複数の気孔4が含まれるようになるため、誘電率の分布に偏りが生じ易くなるおそれがある。なお、中空形成粒子のCV値の下限としては、特に制限はないが、例えば1%が好ましい。中空形成粒子のCV値が上記下限に満たないと、中空形成粒子のコストが高くなり過ぎるおそれがある。
なお、上記中空形成粒子は、コアを1個の熱分解性樹脂粒子で形成する構成としてもよいし、コアを複数の熱分解性樹脂粒子で形成し、シェルの樹脂がこれらの複数の熱分解性樹脂粒子を被覆する構成としてもよい。また、上記中空形成粒子の表面は、凹凸がなく滑らかであってもよいし、凹凸が形成されてもよい。
また、絶縁層形成用ワニスに、中空形成粒子に加えて、気孔形成のために熱分解性粒子等の気孔形成剤を混合してもよい。また、気孔形成のために、沸点の異なる希釈溶剤を組合せて上記絶縁層形成用ワニスを調製してもよい。気孔形成剤により形成された気孔や沸点の異なる希釈溶剤の組合せにより形成される気孔は、中空形成粒子に由来する気孔とは連通し難い。従って、このように外殻5に被覆されない気孔を含む場合でも、外殻5に被覆される気孔の存在により、絶縁層32に粗大な気孔が生じ難い。
(ワニス塗布工程)
上記ワニス塗布工程において、上記ワニス調製工程で調製した絶縁層形成用ワニスを導体1の外周面に塗布した後、塗布ダイスにより導体1のワニスの塗布量の調節及び塗布されたワニス面の平滑化を行う。
上記塗布ダイスは開口部を有し、絶縁層形成用ワニスを塗布した導体1がこの開口部を通過することで余分なワニスが除去され、ワニスの塗布量が調整される。これにより、当該絶縁電線は、絶縁層32の厚さが均一になり、均一な電気絶縁性が得られる。
(加熱工程)
次に、上記加熱工程において、絶縁層形成用ワニスが塗布された導体1を焼付炉に通して絶縁層形成用ワニスを焼付けることで、導体1表面に絶縁層32を形成する。焼付の際、絶縁層形成用ワニスに含まれる中空形成粒子のコアの熱分解性樹脂が熱分解によりガス化し、このガス化した熱分解性樹脂がシェルを通過して飛散する。このように、焼付時の加熱により、中空形成粒子のコアが除去される。その結果、絶縁層32中に中空形成粒子に由来する中空粒子(シェルのみの粒子)が形成され、この中空粒子による気孔4が絶縁層2内に形成される。このように、上記加熱工程は、絶縁層形成用ワニスの焼付工程を兼ねる。
導体1表面に積層される絶縁層32が所定の厚さとなるまで、上記ワニス塗布工程及び加熱工程を繰り返すことにより、当該絶縁電線30が得られる。
なお、上記加熱工程は、ワニス調製工程の前に行ってもよい。この場合、例えば恒温槽などを用いて上記中空形成粒子を加熱することにより、コアの熱分解性樹脂を熱分解によりガス化させ、コアが除去された中空形成粒子、すなわち中空粒子を得る。上記ワニス調製工程では、絶縁層32のマトリックスを形成する上記樹脂組成物に、中空粒子を分散させて絶縁層形成用ワニスを調製する。この絶縁層形成用ワニスの塗布及び焼付後も、上記コアが除去された中空形成粒子すなわち中空粒子の中空構造が維持されるので、この絶縁層形成用ワニスの塗布及び焼付により、中空粒子による気孔4を含む絶縁層32を形成できる。ただし、このようにワニス調製工程の前に加熱工程を行う場合、加熱工程とは別に絶縁層形成用ワニスを焼付ける工程をワニス塗布工程の後に行う。
このように、ワニス調製工程の前に加熱工程を行う場合、焼付時の加熱により中空形成粒子のコアを消失させる場合に比べて、より確実にコアを消失させ易い。そのため、より確実に絶縁層32に気孔を形成できると共に、熱分解性樹脂の分解ガスによる絶縁層32の発泡を抑制できる。
<利点>
当該絶縁電線30は、外殻5に含まれるシリコーンが、サージ電圧が印可された際に放熱によりシリカに変性する。従って、当該絶縁電線30は、一度放熱を経た後にシリコーンに由来するシリカが絶縁層32中に存在するため、製造性を維持しつつ、絶縁層32の耐サージ性を均質に高め、製品寿命を著しく向上できる。
また、当該絶縁電線30は、絶縁層32に含まれる気孔4が外殻5で囲まれており、外殻5が当接しても気孔4同士が連通し難いため、粗大な気孔が生じ難い。これにより、当該絶縁電線30は、絶縁性及び耐溶剤性の低下を抑制しつつ絶縁層32の気孔率を高められる。
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
上記各実施形態の構成は適宜組み合わせが可能である。例えば、上記第一実施形態又は第二実施形態の絶縁電線において、絶縁層の少なくとも一層が第三実施形態の気泡を有していてもよい。
上記第三実施形態において、1層の絶縁層が導体の外周面に積層される絶縁電線について説明したが、複数の絶縁層が導体の外周面に積層される絶縁電線としてもよい。つまり、図3の導体1と気孔4を含む絶縁層32との間に1又は複数の他の絶縁層が積層されてもよいし、図3の気孔4を含む絶縁層32の外周面に1又は複数の他の絶縁層が積層されてもよいし、図3の気孔4を含む絶縁層32の外周面及び内周面の両方に1又は複数の他の絶縁層が積層されてもよい。
また、例えば当該絶縁電線において、導体と絶縁層との間にプライマー処理層等のさらなる層が設けられてもよい。プライマー処理層は、層間の密着性を高めるために設けられる層であり、例えば公知の樹脂組成物により形成することができる。
導体と絶縁層との間にプライマー処理層を設ける場合、このプライマー処理層を形成する樹脂組成物は、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエステル及びフェノキシ樹脂の中の一種又は複数種の樹脂を含むとよい。また、プライマー処理層を形成する樹脂組成物は、密着向上剤等の添加剤を含んでもよい。このような樹脂組成物によって導体と絶縁層との間にプライマー処理層を形成することで、導体と絶縁層との間の密着性を向上することが可能であり、その結果、当該絶縁電線の可撓性や耐摩耗性、耐傷性、耐加工性などの特性を効果的に高めることができる。
また、プライマー処理層を形成する樹脂組成物は、上記樹脂と共に他の樹脂、例えばエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、メラミン樹脂等を含んでもよい。また、プライマー処理層を形成する樹脂組成物に含まれる各樹脂として、市販の液状組成物(絶縁ワニス)を使用してもよい。
プライマー処理層の平均厚さの下限としては、1μmが好ましく、2μmがより好ましい。一方、プライマー処理層の平均厚さの上限としては、30μmが好ましく、20μmがより好ましい。プライマー処理層の平均厚さが上記下限に満たないと、導体との十分な密着性を発揮できないおそれがある。逆に、プライマー処理層の平均厚さが上記上限を超えると、当該絶縁電線が不必要に大径化するおそれがある。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜5]
まず、銅を鋳造、延伸、伸線及び軟化し、断面が円形で平均径1mmの導体を得た。この導体の外周面に、ポリアミドイミドと表1に示すシリコーンフィラー(ポリメチルシルセスキオキサン粒子;ポリメチルトリメトキシシランの粉体)を含むワニスを塗布及び焼付して表1に示す平均厚さの絶縁層を被覆し、実施例1〜5の絶縁電線を得た。なお、実施例4、5の絶縁電線では、絶縁層を下層と上層との2層構造とし、下層又は上層の一方にのみシリコーンフィラーを含有させた。なお、表1におけるフィラーの含有量は、ポリアミドイミド100質量部に対する含有割合である。
[実施例6]
シリコーンフィラーの代わりにコアがPMMA、シェルがシリコーンの平均粒子径2μmの中空形成粒子を含有するワニスを用いたこと以外は実施例1〜3と同様にして、絶縁電線を得た。
[比較例1]
絶縁層形成用のワニスにシリコーンフィラーを含有させなかったこと以外は実施例1〜3と同様にして、絶縁電線を得た。
[比較例2]
シリコーンフィラーの代わりに表1に示すシリカフィラーを用いたこと以外は実施例1〜3と同様にして、絶縁電線を得た。
[評価]
実施例1〜5及び比較例1、2について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
<ワニス安定性>
実施例1〜5及び比較例2の絶縁層形成用ワニスを30日間25℃で保管した後、ワニスの外観を確認した。ワニスの上層と下層とで溶液の濃淡に差がない場合をA、沈降等の濃淡の差がある場合をBとした。
<可撓性>
JIS−C3216−3(2011)の5.1に規定の「巻付け試験」に準拠して実施例1〜5及び比較例1、2の絶縁電線を0%の伸張を行いながら同径の丸棒に沿って30回巻き付け、絶縁層に割れが生じなかったものをA、割れが生じたものをBとした。
<V−t特性(h)>
実施例1〜5及び比較例1、2の絶縁電線について、それぞれ同じ絶縁電線をペアでツイストしたサンプルに10kHz、1kVの正弦波電圧を印可し、短絡するまでの時間(最大100時間)を計測した。
Figure 0006613163
表1より、シリコーンを含有した絶縁層を備える実施例1〜6は、絶縁層がシリコーンを含有しない比較例1に対して、同等のBDVを有しつつ、V−t特性に優れる。また、シリカを絶縁層に含有させた比較例2では、V−t特性は高いものの、ワニスに沈降が発生しその取り扱いが困難となり、得られた絶縁電線の可撓性も不十分であった。これらから、シリコーンを絶縁層に含有させることで、製造性を維持しつつ、絶縁層の耐サージ性を均質に高め、製品寿命を著しく向上できることがわかる。
[シリカへの変性確認試験]
上記V−t特性試験後の実施例2の絶縁電線の絶縁層の白色粉末が析出した部分(試験片1)と、試験前の実施例2の絶縁電線の絶縁層(試験片2)とに対し、ULVAC PHI社製の「QuanteraSXM」を用いてXPS分析を行った。その結果(原子濃度)を表2に示す。
Figure 0006613163
表2に示すように、短絡が生じた絶縁電線(試験片1)では、試験前の絶縁層(試験片2)に比べてシリカ(SiO)が多く検出され、シリコーンがシリカに変性していることが確認された。
本発明に係る絶縁電線は、製造性を維持しつつ、耐サージ性に優れるので、コイルやモーター等を形成するために好適に利用することができる。
1 導体
2、22、32 絶縁層
3 シリコーン
4 気孔
5 外殻
10、20、30 絶縁電線
22a 内層
22b 外層

Claims (4)

  1. 線状の導体と、この導体の外周面に積層される1又は複数の絶縁層とを備える絶縁電線であって、
    上記絶縁層がシリコーンを含有し、
    上記絶縁層の少なくとも一層がシリコーンを主成分とし、
    上記導体と上記絶縁層との間にプライマー処理層が設けられている絶縁電線。
  2. 線状の導体と、この導体の外周面に積層される複数の絶縁層とを備える絶縁電線であって、
    上記絶縁層がシリコーンを含有し、
    上記複数の絶縁層における最外層及び中間層の少なくとも一層がシリコーンを主成分とする絶縁電線。
  3. 上記絶縁層の少なくとも一層がマトリックスとこのマトリックス中に分散するシリコーンとを含有する請求項1又は請求項2に記載の絶縁電線。
  4. 上記絶縁層の少なくとも一層が複数の気孔とこの気孔の周縁部の外殻とを含有し、この外殻がシリコーンを主成分とする請求項1又は請求項2に記載の絶縁電線。
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