<第1実施形態>
以下、図1〜図7を用いて、本発明の第1実施形態に係る建物の断熱耐火構造が適用された建物10の一例について説明する。
まず、本実施形態に係る建物10の全体構造について説明する。図7に示されるように、本実施形態に係る建物10は、基礎12上に複数個の下階側の建物ユニット14、16を据え付けた後に、当該下階側の建物ユニット14、16上に複数個の上階側の建物ユニット18、20を据え付けることにより構成されている。
次に、建物ユニット14を例にとって、当該建物ユニット14の躯体としての躯体フレーム22の構成について説明する。この躯体フレーム22は、図5に一部示されるように、四隅に立設された柱24と、柱24の上端部同士を連結する天井フレーム26と、柱24の下端部同士を連結する床フレーム28と、によって構成されている。天井フレーム26は、溝形鋼によって構成された天井大梁30と当該天井大梁30よりも短い天井大梁32とが矩形枠状に配置されると共に、天井大梁30の間に複数の図示しない天井小梁が所定の間隔で架け渡されることにより構成されている。また、床フレーム28も天井フレーム26と同様の構成とされており、溝形鋼で構成された床大梁34と当該床大梁34よりも短い床大梁36とが矩形枠状に配置されて構成されている。より詳しくは、床大梁34は、建物上方側に面する上側フランジ部34Aと、当該上側フランジ部34Aの屋外側の周縁部から建物下方側に延出されたウェブ部34Bと、を含んで構成されている。そして、天井フレーム26の建物下方側に、図示しない天井下地材及び天井材を含んで天井部が構成されている。
一方、図6に示されるように、天井大梁30及び床大梁34の屋外側には、外壁パネル38、40、42が建物10の外周面に沿って並べて取り付けられており、建物10の外壁44の一部を構成している。そして、外壁パネル38は、複数枚並べて配置されて外壁44の一般部を構成しており、外壁パネル40は、外壁44における建物ユニット14、16の連結部を構成しており、外壁パネル42は、外壁44における建物ユニット14の隅部を構成している。なお、外壁パネル40の構成については後述する。
まず、外壁44の一般部を構成する外壁パネル38の構成について説明する。図1及び図5に示されるように、外壁パネル38は、矩形枠状の外壁フレーム46と、矩形平板状の外壁材48と、を含んで構成されると共に、その幅方向を建物ユニット14の長手方向とされて配置されている。
外壁フレーム46は、建物高さ方向に延在する縦桟50、52、当該縦桟50、52の上端部に架け渡された横桟54及び当該縦桟50、52の下端部に架け渡された横桟56を含んで構成されている。詳しくは、縦桟50は、山形鋼(アングル)で構成されており、そのウェブ部50Aを外壁パネル38の幅方向外側とされると共に、そのフランジ部50Bを屋外側とされて配置されている。一方、縦桟52は、外壁パネル38の幅方向の中心線に対して縦桟50と対称な構成とされている。そして、縦桟50のフランジ部50B及び縦桟52のフランジ部52Aには、後述するように外壁材48が取り付けられている。
一方、横桟54は、溝形鋼で構成されると共に、そのウェブ部54Aを建物下方側とされて配置されている。そして、ウェブ部54Aにおける外壁パネル38の幅方向の一端部に縦桟50の上端部が、ウェブ部54Aの他端部に縦桟52の上端部が、それぞれ溶接等の接合手段によって接合されている。また、横桟54の屋外側のフランジ部54Bには、後述するように外壁材48が取り付けられている。
また、横桟54の屋内側のフランジ部54Cの屋外側の面には、外壁パネル38の幅方向の複数箇所に図示しないウエルドナットが設けられている。一方、天井大梁30のウェブ部30Aには、横桟54のウエルドナットに対応する図示しない挿通孔が形成されている。そして、天井大梁30のウェブ部30Aの屋内側から図示しないボルトが横桟54のウエルドナットに螺合されることで、外壁フレーム46の建物上方側が天井大梁30に固定されている。
一方、横桟56は、外壁パネル38の幅方向に延在しかつその板厚方向を建物上下方向とされた上壁部56Aと、当該上壁部56Aの屋外側の端部から建物下方側に延出された正面壁部56Bと、を含んで、断面L字状に形成されている。そして、上壁部56Aにおける外壁パネル38の幅方向の一端部に縦桟50の下端部が、上壁部56Aの他端部に縦桟52の下端部が、それぞれ溶接等の接合手段によって接合されている。なお、正面壁部56Bには、後述するように外壁材48が取り付けられている。
また、横桟56の上壁部56Aにおける外壁パネル38の幅方向の両端部には、床大梁34に面する縦壁部58Aを備えると共に断面L字状に形成されたブラケット58が、溶接等の接合手段によって接合されている。このブラケット58の縦壁部58Aには、図示しない挿通孔が形成されており、一方、床大梁34のウェブ部34Bには、当該挿通孔に対応するウエルドナット60が設けられている。そして、床大梁34のウェブ部34Bの屋外側からボルト62がウエルドナット60に螺合されることで、外壁フレーム46の建物下方側が床大梁34に固定されている。
上記構成の外壁フレーム46は、躯体フレーム22に取り付けられた状態において、一方の外壁フレーム46の縦桟50におけるウェブ部50Aと他方の外壁フレーム46の縦桟52におけるウェブ部52Bとが当接された状態となっている。また、この状態において、ウェブ部50Aの建物高さ方向の複数箇所に形成された図示しない挿通孔とウェブ部52Bの当該挿通孔に対応する図示しない挿通孔とが位置合わせされた状態となっている。そして、これらの挿通孔に図示しないボルトが挿通されると共に、当該ボルトに図示しないナットが螺合されることで、外壁フレーム46同士が連結されている。
また、外壁材48は、外壁フレーム46同士の境界部を覆う図示しない止水材を介して、縦桟50のフランジ部50B及び縦桟52のフランジ部52Aに当接されている。そして、タッピングビス64が外壁材48の屋外側から取り付けられて、当該外壁材48がフランジ部50B、52A、横桟54のフランジ部54B及び横桟56の正面壁部56Bに固定されることで、外壁パネル38が構成されている。
さらに、図4にも示されるように、それぞれの外壁フレーム46の内側には、外側断熱材66が嵌め込まれており、当該外側断熱材66は、一例として、XPS(押出発泡ポリスチレン)で矩形板状に構成されている。この外側断熱材66は、その外壁パネル38の幅方向両側の周縁部がそれぞれ外壁フレーム46の縦桟50、52の内周面に当接されている。また、外側断熱材66の建物上方側の周縁部は、横桟54のウェブ部54Aに当接されており、当該外側断熱材66の建物下方側の周縁部は、横桟56の上壁部56Aに当接されている。さらに、外側断熱材66の建物下方側の部分によって、床大梁34のウェブ部34Bにおける横桟56よりも建物上方側の部分の屋外側が覆われている。
なお、建物ユニット14の隅部に配置された外壁パネル42は、外壁パネル38と同様の構成とされているものの、当該外壁パネル42の図示しない外壁フレームを構成する横桟の長さが横桟54、56の長さよりも短い長さに設定されている。したがって、外壁パネル42を構成する外壁材68が外壁材48よりも幅狭とされると共に、外壁パネル42の外壁フレームの内側に配置される図示しない外側断熱材も外側断熱材66よりも幅狭とされている。
一方、図4及び図5に示されるように、建物10の内壁70は、建物ユニット14の長手方向に複数配置された内壁フレーム72のそれぞれに矩形平板状の石膏ボードで構成された内壁材74が取り付けられることで構成されている。内壁フレーム72は、建物高さ方向に延在する角柱状でかつ木製の一対の縦桟76と、建物ユニット14の長手方向に延在する角柱状でかつ木製の一対の横桟78と、を含んで矩形枠状に構成されている。より詳しくは、縦桟76及び横桟78の断面形状は、建物ユニット14の短手方向を長手方向とされた矩形状とされている。また、建物上方側の横桟78は、その両端部が縦桟76の上端部に図示しない釘等の固定手段によって固定されている。一方、建物下方側の横桟78は、その両端部が縦桟76の下端部に図示しない釘等の固定手段によって固定されている。
上記構成の内壁フレーム72は、その建物上方側が、建物上方側の横桟78に当該横桟78の建物下方側から図示しないタッピングビスが打ち込まれることで、建物10の天井部に留め付けられている。一方、内壁フレーム72の建物下方側は、後述するように、建物10の床部82に固定されている。そして、内壁フレーム72に屋内側から内壁材74が、図示しないネイル等の取付手段によって取り付けられると共に、当該内壁材74に図示しない内壁仕上げ用の内壁クロスが張られている。さらに、内壁フレーム72の屋外側には、XPS製とされると共に矩形板状に構成された内側断熱材80が配置されている。この内側断熱材80は、内壁フレーム72と外側断熱材66とに挟持された状態で配置されると共に、図示しない接着剤等によって内壁フレーム72や外側断熱材66に取り付けられている。
ここで、本実施形態では、一例として、建物10が準防火地域に建てることが可能な準耐火建築物とされており、当該建物10の床部82は、根太84と床板材86、88とを含んで、準耐火構造に対応した構成とされている。以下、本実施形態に係る建物10の断熱耐火構造の要部を構成する床部82の構成について詳細に説明する。
まず、図1及び図2を用いて根太84の構成について説明する。根太84は、建物高さ方向の寸法が異なる複数種類の根太で構成されており、本実施形態では、一例として、根太84が第1根太90と第2根太92とを含んで構成されている。第1根太90は、建物上方側に面しかつ床大梁34の長手方向(建物ユニット14の長手方向)に延在する上壁部90Aと、当該上壁部90Aの屋外側及び屋内側の周縁部から建物下方側に延出された一対の側壁部90Bと、を含んで構成されると共に、鋼製とされている。つまり、第1根太90は、平板状の鋼材が縦断面視で建物下方側が開放されたコ字状に屈曲されて形成されており、本実施形態では、一例として、第1根太90の建物高さ方向の寸法が側壁部90B同士の間隔の半分程度に設定されている。
また、第2根太92は、第1根太90と同様に、上壁部92Aと側壁部92Bとを含んで構成されると共に鋼製とされているものの、第1根太90と建物高さ方向の寸法が異なっている。具体的には、本実施形態では、一例として、第2根太92の建物高さ方向の寸法が側壁部92B同士の間隔と同程度とされており、換言すれば、第2根太92の建物高さ方向の寸法は、第1根太90の建物高さ方向の寸法の2倍程度となっている。そして、上記構成の第1根太90及び第2根太92は、溶接等の接合手段によって互いに接合されると共に、側壁部90B、92Bの先端部が床大梁34の上側フランジ部34Aの上面に溶接等の接合手段で接合されることで固定されている。さらに、根太84は、鋼材、すなわち不燃材料で構成されているため、準不燃材料以上の不燃性を有している。なお、ここでいう「準不燃材料以上の不燃性を有する」とは、換言すれば、不燃材料又は準不燃材料で構成されているということである。
一方、床板材86、88は、それぞれ矩形板状に構成されると共に、第1根太90の上壁部90Aに床板材86が、第2根太92の上壁部92Aに床板材88が、それぞれ建物ユニット14の長手方向に沿って所定枚数敷設されている。換言すれば、根太84は、床大梁34の上側フランジ部34Aと床板材86、88との間に介在された状態となっている。また、床板材86、88は、床板材86で構成される仕上げ面86Aと床板材88で構成される仕上げ面88Aとが同一平面上に配置されるように構成されている。つまり、床板材86と床板材88とは、各々異なる板厚に設定されており、具体的には、第2根太92に支持された床板材88の板厚は、第1根太90に支持された床板材86の板厚よりも小さく設定されている。そして、第2根太92及び床板材88は、床部82における耐力の必要とされない箇所に配置されており、一方、第1根太90及び床板材86は、床部82における耐力の必要とされる箇所に配置されている。また、床板材86、88は、内壁フレーム72の建物下方側の横桟78の建物上方側からタッピングビス94が打ち込まれることで、当該横桟78と共に根太84に留め付けられている。なお、床板材86、88の仕上げ面86A、88Aには、フローリング96(床仕上げ材)が敷設されている。
本実施形態では、上記のように根太84及び床板材86、88を構成することで、床部82の床面82Aの高さを維持しつつ、根太84の建物高さ方向の寸法に応じて床板材86、88の厚さを変更することが可能となっている。さらに、床板材86、88は、準不燃材料である木質系セメント板で構成されており、準耐火構造への対応が可能となっている。なお、床板材86、88の厚さは、準耐火構造への対応が可能な範囲内において、変更可能となっている。
また、上記構成の根太84では、当該根太84を木質系セメント板等の準不燃材料で構成する場合と比し、根太84の縦断面の外形寸法及び断面積に対して効率よく当該根太84の曲げ剛性を確保することが可能となる。これにより、床大梁34の上側フランジ部34Aにおける根太84の屋外側にスペース98を確保することが可能となり、スペース98に内側断熱材80の下部80Aが配置されている。つまり、第1根太90の屋外側の側壁部90B及び第2根太92の屋外側の側壁部92Bの屋外側は、内側断熱材80で覆われた状態となっている。なお、建物10の2階側の床部の構成も床部82の構成と同様の構成とされている。
また、スペース98は、図3及び図4に示されるように、躯体フレーム22を補強する間柱102の配置にも用いられている。詳しく説明すると、本実施形態では、建物10の下階側を構成する複数の建物ユニットが、それぞれの躯体フレーム22における屋内中央部に配置される柱24を撤去されて、当該建物10の下階側に図示しない大空間が形成されている。そして、本実施形態では、一例として、間柱102が外壁パネル40を構成する外壁フレーム46と外壁フレーム100との間に配置されている。なお、外壁フレーム100は、基本的に外壁フレーム46の構成と同様の構成とされているものの、当該外壁フレーム100を構成する図示しない横桟の長さが横桟54、56の長さよりも短い長さに設定されている。換言すれば、外壁フレーム100は外壁フレーム46よりも幅狭とされている。また、これに対応して外壁フレーム100の内側に配置されるXPS製の外側断熱材108も外側断熱材66よりも幅狭とされている。
次に、間柱102の構成について詳しく説明する。この間柱102は、床大梁34に取り付けられた下側取付部104と、建物高さ方向に延在する角パイプで構成された本体部106と、天井大梁30に取り付けられた図示しない上側取付部と、を含んで構成されると共に、鋼製とされている。
下側取付部104は、本体部106の下端部に接合された本体部側壁部104Aと、当該本体部側壁部104Aの屋外側の周縁部から建物下方側に延出された取付壁部104Bと、を含んで構成されており、その縦断面形状がL字状とされている。より詳しくは、本体部側壁部104Aは、床大梁34の上側フランジ部34Aに沿って配置されると共に、取付壁部104Bは、当該床大梁34のウェブ部34Bに沿って配置されている。また、取付壁部104Bには、建物ユニット14の長手方向の2箇所に図示しない挿通孔が形成されており、一方、床大梁34のウェブ部34Bの屋内側の面には、当該挿通孔に対応するウエルドナット110が設けられている。そして、取付壁部104Bの屋外側からボルト118が当該取付壁部104Bの挿通孔に挿通されると共に、ウエルドナット110に螺合されることで、下側取付部104が床大梁34に取り付けられている。
一方、上側取付部は、下側取付部104と同様の構成とされている。具体的には、上側取付部は、天井大梁30のウェブ部30Aに沿って配置された取付壁部と、天井大梁30の下側フランジ部30Bに沿って配置されると共に本体部106の上端部に接合された本体部側壁部と、を含んで構成されている。そして、上側取付部の取付壁部が、タッピングビス等の取付手段によって、天井大梁30のウェブ部30Aに屋外側から複数箇所で留め付けられることで、上側取付部が天井大梁30に取り付けられている。
本体部106は、平断面視で矩形枠状、より具体的には正方形枠状を成すと共に、建物高さ方向から見て、屋外側の半分程度が床大梁34のウェブ部34B及び天井大梁30のウェブ部30Aから屋外側に張り出している。この本体部106の幅(建物ユニット14の長手方向の長さ)は、上側取付部及び下側取付部104の建物ユニット14の長手方向の長さの半分程度に設定されている。そして、本体部106の上端部は、上側取付部の本体部側壁部の長手方向中央部に配置されると共に、当該本体部106の下端部は、下側取付部104の本体部側壁部104Aの長手方向中央部に配置されている。なお、本体部106と上側取付部及び下側取付部104との接合には、溶接等の接合手段が用いられている。
上記のように構成された間柱102は、躯体フレーム22に取り付けられた状態において、本体部106が床大梁34と当該床大梁34と建物高さ方向に対向して配置された天井大梁30とに架け渡されている。また、間柱102の本体部106は、外壁フレーム46の縦桟50と外壁フレーム100の縦桟52とに当接されている。そして、上記のように間柱102が配置されることで、間柱102の本体部106によって内側断熱材80が仕切られた状態となっている。なお、外壁パネル40を構成する外壁材112は、外壁材48よりも幅広に設定されている。
また、間柱102の配置箇所及び本数は上記に限らず、躯体フレーム22の補強が必要な箇所に適宜配置される。加えて、間柱102は、複数の建物ユニットで大空間を構成する場合に限らず、建物ユニットの梁のスパン長が長い場合にも補強が必要な箇所に適宜配置される。
さらに、床大梁34のウェブ部34B及び天井大梁30のウェブ部30Aにおける間柱102が配置された箇所には、それぞれXPS製の外側断熱材114が配置されている。この外側断熱材114は、その建物ユニット14の長手方向の長さが間柱102の本体部106の幅と同程度とされると共に、その建物高さ方向の長さがウェブ部34B及びウェブ部30Aの建物高さ方向の長さと同程度とされている。そして、外側断熱材114は、ウェブ部34B及びウェブ部30Aの屋外側の面にそれぞれ貼り付けられて、ウェブ部34B及びウェブ部30Aの屋外側を覆っている。
一方、間柱102の本体部106の屋外側には、XPS製とされると共に矩形平板状に構成された間柱断熱材116が配置されている。この間柱断熱材116は、その幅が本体部106の幅と同程度に設定されると共に、その建物高さ方向の長さが当該本体部106の建物高さ方向の長さと同程度とされており、当該間柱断熱材116によって本体部106の屋外側の側壁部106Aが覆われている。また、間柱断熱材116の下端部は、外側断熱材114に当接されており、換言すれば、間柱断熱材116は、外側断熱材114と連続して配置されている。
<本実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
本実施形態では、床大梁34が建物上方側に面する上側フランジ部34Aと、当該上側フランジ部34Aの屋外側の周縁部から建物下方側に延出されたウェブ部34Bと、を含んで構成されている。そして、床大梁34の上側フランジ部34Aの建物上方側には、準不燃材料以上の不燃性を有する床板材86、88が床大梁34の長手方向に沿って複数枚敷設されて建物10の床部82が構成されている。また、床板材86、88は、床大梁34の上側フランジ部34Aと当該床板材86、88との間に介在された根太84によって支持されており、当該根太84は準不燃材料以上の不燃性を有している。このため、建物10の床部82の耐火性能を確保することができる。一方、床大梁34のウェブ部34Bの屋外側は、外側断熱材66、108、114で覆われている。これにより、床大梁34による熱橋を抑制することができる。
ところで、準不燃材料以上の不燃性を有する材料で構成した床板材86、88と当該床板材86、88と同形状の木製の床板材とでは、床板材86、88の方が重くなる。このため、床板材86、88の形状を維持しつつ当該床板材86、88を準不燃材料以上の不燃性を有する材料で構成すると、建物10の床部82の重量が増加し、地震時等に各階に発生する慣性力が増加する。したがって、建物10の床部82の耐火性能を確保するにあたって、当該床部82の重量増加に対する対策も併せて行うことが好ましい。
ここで、本実施形態では、建物高さ方向の寸法が異なる第1根太90及び第2根太92を有しており、床板材86、88で構成される床部82の床面82Aの高さを維持しつつ、第1根太90及び第2根太92の建物高さ方向の寸法に応じて床板材86、88の厚さを変更することができる。このため、本実施形態では、床部82の各箇所に必要な耐力に応じて床板材86、88の厚さを調整することができ、その結果、床部82における耐力の必要とされない箇所において床板材88の厚さを薄くすることで、床部82の重量増加を抑制することができる。したがって、本実施形態では、床部82の断熱性能と耐火性能との両立を図ることができる。
また、本実施形態では、第1根太90及び第2根太92が、それぞれ床大梁34の長手方向に延在する上壁部と、当該上壁部の屋外側及び屋内側のそれぞれの周縁部から建物下方側に延出された一対の側壁部と、を含んで構成されると共に、鋼製とされている。このため、根太84を木質系セメント板等の準不燃材料で構成する場合と比し、当該根太84の不燃性能を向上させることができる。
しかし、根太84を鋼製にすると、当該根太84によって熱橋が生じることが考えられる。ここで、本実施形態では、根太84を上記構成とすることで、根太84を準不燃材料で構成する場合と比し、根太84の縦断面の外形寸法及び断面積に対して効率よく当該根太84の曲げ剛性を確保することができる。このため、根太84の側壁部同士の間隔を狭めて、床大梁34の上側フランジ部34Aにおける根太84の屋外側にスペース98を確保することができる。その結果、根太84の屋外側のスペース98に内側断熱材80を配置し、当該内側断熱材80で根太84の屋外側の側壁部を覆うことで、当該根太84によって熱橋が生じることを抑制することができる。したがって、本実施形態では、床部の断熱性能を確保しつつ、建物の床部の耐火性能の向上及び根太の周辺部の設計自由度の向上を図ることができる。
さらに、本実施形態では、建物10が複数の建物ユニットで構成されると共に、当該建物ユニット躯体フレーム22が床大梁34と当該床大梁34と建物高さ方向に対向して配置された天井大梁30とを含んで構成されている。そして、建物10の下階側を構成する建物ユニット14において、床大梁34の上側フランジ部34Aにおける根太84の屋外側のスペース98に間柱102が配置されており、当該間柱102は床大梁34と天井大梁30とに架け渡されている。このため、下階側の天井大梁30及び床大梁34が補強される。その結果、下階側を構成する建物ユニット14の梁のスパン長を長くしたり、下階側の複数の建物ユニットの柱24を一部撤去して大空間を構成しても、天井大梁30及び床大梁34に発生する撓みが大きくなることを抑制することができる。
また、本実施形態では、上述したように間柱102を配置することで、当該間柱102によって内側断熱材80が仕切られるものの、間柱102の屋外側が間柱断熱材116で覆われると共に、当該間柱断熱材116が外側断熱材114と連続して配置されている。このため、間柱102の屋外側に建物高さ方向に延びる断熱層(断熱ライン)を確保することができる。したがって、本実施形態では、種々の住宅プランに対応しつつ、建物10の断熱性を確保することができる。
加えて、本実施形態では、根太84が床大梁34の上側フランジ部34Aに溶接されているため、当該根太84を当該上側フランジ部34Aに位置決めした状態で、当該根太84に床板材86、88を配置することができる。その結果、本実施形態では、床板材86、88の根太84への取付作業を簡略化することができる。
さらに加えて、本実施形態では、床板材86、88が木質系セメント板で構成されているため、床板材86、88を軽量気泡コンクリート(ALC)で構成する場合と比し、床部82を軽量化することができる。その結果、本実施形態では、床板材86、88を軽量気泡コンクリートで構成する場合と比し、地震時等に各階に発生する慣性力を小さくすることができる。
<第2実施形態>
次に、図8及び図9を用いて、本発明の第2実施形態に係る建物の断熱耐火構造が適用された床部130の構成について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については、同一の番号を付してその説明を省略する。また、本実施形態は、参考例とする。
図8及び図9に示されるように、本実施形態では、根太132が木質系セメント板で構成されている点に特徴がある。具体的に説明すると、根太132は、建物ユニット14の長手方向に延在する角柱状とされた第1根太134と、当該第1根太134と同様に建物ユニット14の長手方向に延在する角柱状とされた第2根太136と、を含んで構成されている。より詳しくは、第1根太134の縦断面形状は、建物高さ方向の寸法が建物高さ方向に直交する方向の寸法の半分程度となるように設定されている。一方、第2根太136の縦断面形状は、建物高さ方向の寸法が建物高さ方向に直交する方向の寸法と同程度となるように設定されている。このため、本実施形態においても、床部130の床面130Aの高さを維持しつつ、根太132の建物高さ方向の寸法に応じて床板材86、88の厚さを変更することが可能となっている。
また、本実施形態では、根太132及び床板材86、88と内壁フレーム72の建物下方側の横桟78とが別個に取り付けられている。具体的には、根太132及び床板材86、88は、根太132の建物上方側からタッピングビス94が打ち込まれることで、床大梁34の上側フランジ部34Aに留め付けられている。また、図示はしていないが、本実施形態では、内壁フレーム72の建物下方側の横桟78は、根太132の取付箇所とは別の箇所で、床板材86、88と共にタッピングビス94で根太132に留め付けられている。
<本実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
本実施形態では、根太132が木質系セメント板で構成されている点を除き、上述した第1実施形態と同様の構成とされているため、根太84が鋼製とされていることによる作用並びに効果を除き、上述した第1実施形態と同様の作用並びに効果を奏する。なお、根太132は木質系セメント板で構成されているが、防火試験で準耐火構造に対応可能な防火性能を満たしていれば、本実施形態に係る床部130も準耐火構造への対応が可能である。
また、本実施形態では、根太132が木質系セメント板で構成されているため、根太132を切り欠く等して床大梁34の上側フランジ部34A上にスペースを確保することができる。このため、床大梁34の上側フランジ部34A上に間柱102等を追加して配置することができる。したがって、本実施形態では、建物10の耐火性能を確保しつつ、住宅プランの変更にも柔軟に対応することができる。さらに、根太132は、現地での追加工が可能であるため、施工工程の自由度も向上させることが可能である。
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、床板材86、88が木質系セメント板で構成されていたが、床板材86、88を不燃材料である軽量気泡コンクリート等のコンクリート部材で構成してもよい。また、このような構成とすることで、床板材86、88の重量は重くなるものの、床板材86、88の厚さを所定の厚さに設定することで、床部82を耐火構造に対応した構成とすることも可能となる。なお、上述した実施形態では、建物10を準防火地域に建てることを想定しているが、所定の階数及び床面積等を満たすことで、防火地域に建てることも可能である。
(2) また、上述した実施形態では、根太が建物高さ方向の寸法が異なる第1根太と第2根太とを含んで構成されていたが、これに限らない。すなわち、根太は、床部の各箇所に必要とされる耐力や、地震時等に各階に発生する慣性力を考慮して、建物高さ方向の寸法が異なる2種類以上の複数種類の根太で構成されていてもよい。
(3) さらに、上述した第1実施形態では、根太84が床大梁34に溶接されていたが、第2実施形態の根太132のようにタッピングビスで床大梁34の上側フランジ部34Aに留め付けられる構成としてもよい。