複数の人工歯作製装置において加工ツールの交換のタイミングが重なった場合に、コンプレッサーは当該複数の人工歯作製装置に圧縮空気を供給する必要がある。しかしながら、コンプレッサーのタンク容量が小さいと、圧縮空気の量が不足し、人工歯作製装置は停止してしまう。これを回避するために、大型のコンプレッサーを用いることも考えられるが、コストが上昇してしまう。また、小規模事業所では、大型のコンプレッサーを配置するスペースを確保することが難しい問題もある。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、大型のコンプレッサーを新たに設けることなく、圧縮空気の不足により人工歯作製装置が停止することがない人工歯作製システムを提供することである。
本発明に係る人工歯作製システムは、被加工物を切削して人工歯を作製する人工歯作製システムであって、被加工物を切削する棒状の複数の加工ツールと、加工ツールの上部を把持し、圧縮空気が供給されることにより開く把持部を下端に備え、加工ツールを当該加工ツールの軸回りに回転させかつ3次元移動を行うスピンドルと、スピンドルの回転および移動と加工ツールの交換の際に把持部の開閉とを制御する制御部と、を有する複数の人工歯作製装置と、スピンドルが加工ツールを把持する際に圧縮空気をスピンドルに供給し、スピンドルが加工ツールを把持した後は圧縮空気の供給を停止するコンプレッサーと、複数の人工歯作製装置のうちいずれかの人工歯作製装置において加工ツールの交換が行われているか否かの認識を行う監視装置と、を備え、制御部は、当該制御部を備えた人工歯作製装置を除く他の人工歯作製装置において加工ツールの交換が行われていると監視装置により認識された場合に、当該人工歯作製装置において加工ツールの交換を行わないように構成されている。
本発明に係る人工歯作製システムにおいては、加工ツールの交換を行おうとする人工歯作製装置を除く他の人工歯作製装置において加工ツールの交換が行われていると監視装置により認識された場合に、前記加工ツールの交換を行おうとする人工歯作製装置は加工ツールの交換を行わない。これにより、複数の人工歯作製装置において同じタイミングで加工ツールの交換が行われないようにすることができる。それにより、大型のコンプレッサーを新たに設けることなく、圧縮空気の量が不足し、人工歯作製装置が停止してしまうという事態を防止することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、制御部は、他の人工歯作製装置において加工ツールの交換が現に行われている否かについて監視装置に問い合わせの通信を行い、監視装置は、問い合わせに応じて、他の人工歯作製装置において加工ツールの交換が現に行われていない場合に、加工ツールの交換を開始してもよい旨の第1通知を制御部に与えるように構成されている。
上記態様によれば、加工ツールの交換を行おうとする人工歯作製装置の制御部は、監視装置からの第1通知を待って当該加工ツールの交換を行うことができる。これにより、上記制御部は、他の人工歯作製装置において加工ツールの交換が行われていないこと、すなわち、当該人工歯作製装置において加工ツールの交換を行うことができるタイミングを知ることができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、制御部は、第1通知を受けて加工ツールの交換を行った後に、加工ツールの交換が終了した旨の第2通知を監視装置に与えるように構成されている。
上記態様によれば、加工ツールの交換が終了した人工歯作製装置の制御部により監視装置に第2通知が送信されるので、監視装置は上記加工ツールの交換が終了したことを知ることができる。これにより、監視装置は、他の人工歯作製装置からの問い合わせがあった場合に当該人工歯作製装置に第1通知を即時に与えることができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、監視装置は、他の人工歯作製装置から問い合わせがあった場合に、制御部から第2通知を受けた後に、他の人工歯作製装置に第1通知を与えるように構成されている。
上記態様によれば、監視装置は、加工ツールの交換が終了した人工歯作製装置から第2通知を受けた後、即時に他の人工歯作製装置の制御部に第1通知を与えることができる。これにより、加工ツールの交換を行おうとする他の人工歯作製装置は、上記人工歯作製装置において加工ツールの交換が終了した時点から長い時間を空けることなく、加工ツールの交換を行うことができる。したがって、処理時間の短縮を図ることができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、人工歯作製装置は、監視装置からのコマンドによってスピンドルの回転および移動を一時停止し、監視装置に問い合わせを行うように構成されている。
上記態様によれば、制御部は加工ツールの交換のタイミングを監視装置からのコマンドにより認識して問い合わせを行うことができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、制御部は、問い合わせを行って第1通知を受けた場合に、一時停止を解除して加工ツールの交換を行うように構成されている。
上記態様によれば、第1通知を受けた場合に、迅速に加工ツールの交換を開始することができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、加工ツールの交換は、コンプレッサーからスピンドルに圧縮空気が供給されてスピンドルの把持部を開く処理を含み、スピンドルに圧縮空気が供給されていないときのスピンドルの回転および移動の処理を含まない。
上記態様によれば、スピンドルに圧縮空気が供給されていないときの処理、例えば新たな加工ツールをスピンドルが把持し終わった後の、当該スピンドルの所定位置までの移動などの処理は、加工ツールの交換の処理には含まれない。これにより、スピンドルが新たな加工ツールを把持し終わった後であれば、すなわち圧縮空気の供給が既に終了していれば、監視装置は、加工ツールの交換が現に行われていないと判断することができる。これによって、監視装置は、他の人工歯作製装置からの問い合わせに応じて第1通知を迅速に与えることができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、複数の人工歯作製装置において加工ツールの交換を行う際に必要な圧縮空気の合計量は、コンプレッサーの容量よりも大きい。
上記態様によれば、複数の人工歯作製装置において同じタイミングで必要とされる圧縮空気の合計量がコンプレッサーの容量よりも大きい人工歯作製システムにおいて、大型のコンプレッサーを新たに設けることなく、圧縮空気の量が不足し、人工歯作製装置が停止してしまうという事態を防止することができる。
本発明によれば、大型のコンプレッサーを新たに設けることなく、圧縮空気の不足により人工歯作製装置が停止することがない人工歯作製システムを提供することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る人工歯作製システム100について説明する。図1に示すように、人工歯作製システム100は、複数の人工歯作製装置1と、監視装置101と、コンプレッサー102とを備えている。図1では、複数の人工歯作製装置1として、3つの人工歯作製装置1a,1b,1cを図示している。ただし、人工歯作製装置1は、複数であれば、2つでもよいし、4つ以上でもよい。人工歯作製装置1a,1b,1cの構成はそれぞれ同じである。
人工歯作製装置1aと監視装置101とはラインL1により接続されている。人工歯作製装置1bと監視装置101とはラインL2により接続されている。人工歯作製装置1cと監視装置101とはラインL3により接続されている。なお、ラインL1〜L3を用いた有線通信に限らず、無線による通信も可能である。人工歯作製装置1aとコンプレッサー102とは供給管P1により接続されている。人工歯作製装置1bとコンプレッサー102とは供給管P2により接続されている。人工歯作製装置1cとコンプレッサー102とは供給管P3により接続されている。監視装置101は、人工歯作製装置1を監視する。詳しくは、監視装置101は、人工歯作製装置1a,1b,1cのうちいずれかの人工歯作製装置において加工ツールの交換(以下、ツール交換と呼ぶことがある)が行われているか否かの検出を行う。そして、監視装置101は、人工歯作製装置1a,1b,1cにおいてツール交換が同じタイミングで行われないようにする。監視装置101は、人工歯作製装置1a,1b,1cのうちいずれかの人工歯作製装置においてツール交換が行われている場合には、当該監視装置101の図示しない記録部(例えばメモリやハードディスク等)のデータベースのフラグ領域にフラグを立てる、つまり「有」を記録する。一方、監視装置101は、人工歯作製装置1a,1b,1cのいずれの人工歯作製装置においてもツール交換が行われていない場合には、前記フラグ領域にフラグを立てない、つまり「無」を記録する。監視装置101は、所定のタイミングで人工歯作製装置1の制御部50にツール交換のコマンドを送る。この場合、例えば監視装置101は荒削りが終了して精密削りを行う際にツール交換のコマンドを送る。コンプレッサー102は人工歯作製装置1に圧縮空気を供給する。コンプレッサー102による人工歯作製装置1に対する圧縮空気の供給の制御は監視装置101により行われる。人工歯作製装置1aには供給管P1により圧縮空気が供給される。人工歯作製装置1bには供給管P2により圧縮空気が供給される。人工歯作製装置1cには供給管P3により圧縮空気が供給される。上記の圧縮空気はツール交換の際に必要となるものである。複数の人工歯作製装置1において同じタイミングでツール交換を行う際に必要な圧縮空気の合計量は、コンプレッサー102の容量よりも大きくなっている。
次に、人工歯作製装置1について説明する。図2に示すように、相互に直交する軸を、X軸、Y軸およびZ軸とし、本実施形態に係る人工歯作製装置1はX軸とY軸とで構成される平面に置かれるものとする。以下、左方および右方とは、図2のフロントカバー7に向かって人工歯作製装置1を見た場合の左方および右方である。また、図2のフロントカバー7に向かって人工歯作製装置1を見た場合に、当該人工歯作製装置1に近付く方を後方、遠ざかる方を前方とする。同図中の左方をL、右方をRとし、前方をF、後方をReとし、上方をU、下方をDとする。但し、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、人工歯作製装置1の設置態様を何ら限定するものではない。なお、圧縮空気を使ってツール交換を行うスピンドルを有する人工歯作製装置1であれば、当該人工歯作製装置1の形状は特に図2のものに限定されることはない。
図2に示すように、人工歯作製装置1は箱状に形成されている。詳しくは、人工歯作製装置1は、ベース部2、左外壁部3、右外壁部4、天面部5および後面部6を有するケース10と、フロントカバー7とを備えている。ケース10の前方は開口されている。左外壁部3は、ベース部2の左端において上方に延びている。右外壁部4は、ベース部2の右端において上方に延びている。後面部6は、ベース部2の後端において上方に延びている。後面部6は、左外壁部3の後端および右外壁部4の後端に接続されている。天面部5は、左外壁部3の上端、右外壁部4の上端および後面部6の上端に接続されている。ベース部2、左外壁部3、右外壁部4、天面部5、および後面部6によって、内部空間8が形成されている。この内部空間8は、図示しない被加工物である人工歯の材料に対して切削加工が行われる加工エリアとなっている。フロントカバー7は、左外壁部3の前端および右外壁部4の前端において上下方向にスライドする。人工歯作製装置1は、制御部50を備えている。制御部50は、公知のパーソナルコンピュータや汎用コンピュータなどに設けられるCPU(中央演算処理装置)により実現可能である。
図3に示すように、フロントカバー7が上方にスライドすることにより、内部空間8が外部空間と通ずるようになる。フロントカバー7には窓部7aが設けられている。作業者は窓部7aから内部空間8を視認することができる。
続いて、被加工物を保持する保持部および複数の加工ツールを収容するツールマガジンについて説明する。図4に示すように、内部空間8(図3参照)には、歯科材料である被加工物24を保持する保持部25、保持部25に連結された支持部31、および箱状に形成され、複数の加工ツール23を収容するツールマガジン32が設けられている。被加工物24は円板状に形成されている。被加工物24は、半円弧状に形成された保持部25により保持されている。保持部25の前部には図示しない第1回転軸が接続されており、当該保持部25の後部には図示しない第2回転軸が接続されている。前記第1回転軸は、保持部25の前方に設けられた駆動部27に接続されている。駆動部27は例えばモータである。駆動部27は、前記第1回転軸をX軸回りの方向T1に回転させる。このような構成において、駆動部27により前記第1回転軸が方向T1に回転すると、保持部25は方向T1に回転する。これにより、被加工物24を方向T1に回転させることができる。また、支持部31は図示しない駆動部により前後方向に移動する。これにより、被加工物24を保持部25を介して前後方向に移動させることができる。さらに、支持部31は図示しない駆動部によりY軸回りの方向T2に回転する。これにより、被加工物24を保持部25を介して方向T2に回転させることができる。
支持部31はL字状に形成されている。支持部31は、X軸方向に延びて形成された第1板部31aとY軸方向に延びて形成された第2板部31bとを備えている。支持部31の第2板部31bは、前記第2回転軸を支持している。支持部31の第1板部31aにはツールマガジン32が固定されている。ツールマガジン32の上面には、図示しない孔部が形成されており、当該孔部に加工ツール23が、当該加工ツール23の上部23a(図5参照)が露出された状態で挿通されている。なお、ツール交換の際に、後述のスピンドルにより加工ツール23の上部23aが把持されるようになっている。
次に、スピンドルについて説明する。内部空間8(図3参照)には、図5に示すように、スピンドル33が上下方向に延びるように設けられている。スピンドル33は、図示しない駆動部によって左右方向および上下方向に移動する。スピンドル33は、ハウジング60および加工ツール23の上部23aを把持する把持部61を備えている。加工ツール23の交換の際には、スピンドル33は現在把持している加工ツール23をツールマガジン32の所定位置に戻す。その後、スピンドル33は、新たに把持すべき加工ツール23の上部23aの真上に把持部61が位置するよう移動する。そして、スピンドル33は、把持部61を開いた状態で加工ツール23の上部23aに向かって下方に移動し当該把持部61を閉じることにより加工ツール23の上部23aを把持する。その後、スピンドル33は、切削加工を開始するため、被加工物24(図4参照)に向かって移動する。
図6に示すように、スピンドル33のハウジング60内には空間Rが設けられている。ハウジング60には、L字状に形成され、コンプレッサー102(図1参照)からの圧縮空気を空間Rに導く圧縮空気導入路62が設けられている。上記圧縮空気は、圧縮空気導入路62の導入口62aから導入され、当該圧縮空気導入路62を介して空間Rに供給される。ハウジング60の空間Rには、円筒状のシリンダ63が上下方向に移動可能に設けられている。シリンダ63の孔部に、上下方向に延びたスピンドル軸64が当該シリンダ63と同軸状に挿通されている。シリンダ63は、第1部分63aと当該第1部分63aよりも厚みが薄く、第1部分63aの内周面よりも外側に位置する内周面を有する第2部分63bとを含む。第1部分63aと第2部分63bとの境目に段部63cが形成されている。スピンドル軸64には、シリンダ63の第1部分63aの内周面と第2部分63bの内周面との間に位置するフランジ部64aが形成されている。シリンダ63の第2部分63bの下面には、2つのバネ65,66が接続されている。これにより、シリンダ63は上方向に付勢されている。なお、図6では加工ツール23を図示していない。
ハウジング60内には、空間Rの下方に上下方向に延びる挿入孔60aが形成されている。この挿入孔60aにスピンドル棒67が挿通されている。スピンドル棒67は、上下方向に移動可能になっている。スピンドル棒67は連結ピン69によりスピンドル軸64に連結されている。スピンドル軸64の下部には、スピンドル棒67の上部を収容する凹部64bが形成されている。スピンドル軸64の下面にバネ68が接続されている。これにより、スピンドル軸64は上方向に付勢されている。スピンドル棒67には、当該スピンドル棒67と同軸状に把持孔部67aが形成されている。この把持孔部67aに加工ツール23(図5参照)が挿入されるようになっている。把持孔部67aの周壁の下部には、下方に向かうほど大径となるテーパ部67bが形成されている。スピンドル棒67の下端には、加工ツール23を把持する爪状の把持部61が設けられている。把持部61には傾斜部61aが形成されている。把持部61の傾斜部61aの傾斜角度とテーパ部67bの傾斜角度とはほぼ等しい。把持部61の傾斜部61aがテーパ部67bに係合すると、当該把持部61の先端部が締め付けられる。それにより、加工ツール23が把持される。一方、スピンドル棒67が下方に移動して、把持部61の傾斜部61aがテーパ部67bに非係合となると、把持部61の先端部の上記締め付けが解除される。それにより、把持部61による加工ツール23の把持が解除される。このような構成において、コンプレッサー102(図1参照)からの圧縮空気が圧縮空気導入路62を介してハウジング60の空間Rに供給されると、シリンダ63はバネ65,66の付勢に抗して下方へ移動する。それにより、シリンダ63の段部63cがスピンドル軸64のフランジ部64aに接触するため、スピンドル軸64はバネ68の付勢に抗して下方へ移動する。そのため、連結ピン69によりスピンドル軸64に連結されたスピンドル棒67も下方へ移動する。これによって、上述の通り把持部61による加工ツール23の把持が解除される。また、新たな加工ツール23を把持する際には、圧縮空気の供給によりスピンドル棒67を下方に移動させて把持部61を開き、スピンドル33を下降させて把持孔部67aに加工ツール23を挿入する。この状態で圧縮空気の供給を停止すると、シリンダ63はバネ65,66の付勢により上方へ移動するため、スピンドル軸64もバネ68の付勢により上方へ移動する。したがって、スピンドル棒67は上方へ移動する。その結果、把持部61の傾斜部61aがテーパ部67bに係合することにより、上記新たな加工ツール23が把持部61に把持されることとなる。
続いて、ツール交換時の人工歯作製装置1における処理および監視装置101における処理について、フローチャートを参照しつつ説明する。本実施形態において、加工ツール23は、例えば荒削りが終了して精密削りを行う際などにスピンドル33によって交換される。なお、荒削りから精密削りに処理が移行する際には、径の大きい加工ツール23から径の小さい加工ツール23に交換される。ツール交換の処理には、スピンドル33に圧縮空気が供給されていないときの処理、例えば新たな加工ツール23をスピンドル33が把持し終わった後の、当該スピンドル33の所定位置への移動や回転などの処理は含まれない。
以下では、一例として、人工歯作製装置1a(図1参照)において加工ツール23によって所定の処理(例えば荒削り)が行われており、この状態から当該人工歯作製装置1aにおいて新たな加工ツール23に交換される場合について説明する。図7に示すように、最初に、人工歯作製装置1aの制御部50(図1参照)は、監視装置101(図1参照)からツール交換コマンドを受信したか否かを判別する(ステップS1)。ツール交換コマンドを受信していない場合には(ステップS1でNo)、制御部50はツール交換コマンドを受信するまで現在の処理を行う。
ツール交換コマンドを受信した場合(ステップS1でYes)、制御部50は、スピンドル33(図5参照)の回転および移動を一時停止させる(ステップS2)。そして、制御部50は、他の人工歯作製装置1において、すなわち人工歯作製装置1bまたは人工歯作製装置1c(それぞれ図1参照)においてツール交換が現に行われているか否かについて監視装置101(図1参照)に問い合わせの通信(以下、単に問い合わせと呼ぶ)を行う(ステップS3)。その後、監視装置101から、ツール交換を開始してもよい旨の第1通知があった場合には(ステップS4でYes)、制御部50は上記一時停止を解除し、ツール交換を開始する(ステップS5)。ステップS5のツール交換の処理では、スピンドル33に把持されている加工ツール33がツールマガジン32(図4参照)の元の位置に戻され、新たな加工ツール33がスピンドル33により把持される。監視装置101から上記第1通知がない場合には(ステップS4でNo)、制御部50は第1通知があるまで待機する。なお、第1通知がない場合とは、他の人工歯作製装置1bまたは人工歯作製装置1cにおいてツール交換が現に行われていることを意味する。
次に、ツール交換が終了した場合には(ステップS6でYes)、制御部50は、加工ツール23の交換が終了した旨を示す第2通知を監視装置101に送信する(ステップS7)。一方、ツール交換が終了していない場合には(ステップS6でNo)、制御部50はツール交換を継続する。制御部50は、監視装置101に第2通知を送信した後は、交換後の加工ツール23による切削加工を継続する(ステップS8)。
続いて、監視装置101のツール交換時の処理について説明する。図8に示すように、監視装置101は、人工歯作製装置1aから問い合わせを受信したか否かを判別する(ステップS21)。問い合わせを受信した場合には(ステップS21でYes)、上述のフラグ領域のフラグが「有」の状態であるか否かを判別する(ステップS22)。フラグが「有」の状態の場合(ステップS22でYes)、つまり人工歯作製装置1bまたは人工歯作製装置1cにおいてツール交換が行われている場合には、監視装置101は、ツール交換終了を示す上述の第2通知を人工歯作製装置1bまたは人工歯作製装置1cから受信したか否かを判別する(ステップS23)。第2通知を受信した場合には(ステップS23でYes)、監視装置101は、上述のフラグ領域のフラグを「無」に切り替える(ステップS24)。一方、第2通知を受信していない場合(ステップS23でNo)、監視装置101は、当該第2通知を受信するまで待機する。
ステップS24の処理の後、またはフラグが「有」の状態でない場合には(ステップS22でNo)、監視装置101は、人工歯作製装置1aに対してツール交換許可を示す第1通知を送信する(ステップS25)。その後、監視装置101は、フラグ領域のフラグを「有」に切り替える(ステップS26)。
次に、監視装置101は、人工歯作製装置1aから第2通知を受信したか否かを判別する(ステップS27)。第2通知を受信した場合には(ステップS27でYes)、監視装置101は、フラグ領域のフラグを「無」に切り替え、その後、ステップS21の処理に戻る。一方、第2通知を受信していない場合には(ステップS27でNo)、監視装置101は、人工歯作製装置1aから第2通知を受信するまで待機する。
以上のように、本実施形態によれば、加工ツール23の交換を行おうとする人工歯作製装置1(例えば人工歯作製装置1bまたは人工歯作製装置1c)を除く他の人工歯作製装置1(例えば人工歯作製装置1a)においてツール交換が行われていると監視装置101により認識された場合に、人工歯作製装置1bまたは人工歯作製装置1cはツール交換を行わない。これにより、複数の人工歯作製装置1において同じタイミングでツール交換が行われないようにすることができる。それにより、大型のコンプレッサーを新たに設けることなく、圧縮空気の量が不足し、人工歯作製装置1が停止してしまうという事態を防止することができる。
また、本実施形態によれば、監視装置101は、ツール交換を行おうとする人工歯作製装置1(例えば人工歯作製装置1bまたは人工歯作製装置1c)からの問い合わせに応じて、他の人工歯作製装置1(例えば人工歯作製装置1a)においてツール交換が現に行われていない場合に、ツール交換を開始してもよい旨の第1通知を、ツール交換を行おうとする人工歯作製装置1の制御部50に与える。それにより、ツール交換を行おうとする人工歯作製装置1の制御部50は、監視装置101からの第1通知を待ってツール交換を行うことができる。これにより、制御部50は、他の人工歯作製装置1においてツール交換が行われていないこと、すなわち、自身の人工歯作製装置1においてツール交換を行うことができるタイミングを知ることができる。
また、本実施形態によれば、ツール交換が終了した人工歯作製装置1(例えば人工歯作製装置1a)の制御部50によりツール交換が終了した旨の第2通知が監視装置101に送信されるので、監視装置101はツール交換が終了したことを知ることができる。これにより、監視装置101は待機することができる。すなわち、監視装置101は、他の人工歯作製装置1(例えば人工歯作製装置1bまたは人工歯作製装置1c)からの問い合わせがあった場合に当該人工歯作製装置1に第1通知を即時に与えることができる。
また、本実施形態によれば、監視装置101は、他の人工歯作製装置1(例えば人工歯作製装置1bまたは人工歯作製装置1c)から問い合わせがあった場合に、第2通知を受けた後に、他の人工歯作製装置1の制御部50に第1通知を与える。それにより、監視装置101は、第2通知を受けた後、即時に他の人工歯作製装置1の制御部50に第1通知を与えることができる。これにより、他の人工歯作製装置1は、別の人工歯作製装置1においてツール交換が終了した時点から長い時間を空けることなく、ツール交換を行うことができる。したがって、処理時間の短縮を図ることができる。
また、本実施形態によれば、制御部50は、監視装置101からツール交換のコマンドを受けると、スピンドル33の回転および移動を一時停止し、監視装置101に問い合わせを行う。これにより、制御部50はツール交換のタイミングを監視装置101からのコマンドにより認識して問い合わせを行うことができる。
また、本実施形態によれば、制御部50は、第1通知を受けると、一時停止を解除した後、ツール交換を行うためスピンドル33の把持部61の開閉動作を制御する。これにより、第1通知を受けた後、迅速にツール交換を行うことができる。
また、本実施形態によれば、スピンドル33に圧縮空気が供給されていないときの処理、例えば新たな加工ツール23をスピンドル33が把持し終わった後の、当該スピンドル33の所定位置までの移動などの処理は、ツール交換の処理には含まれない。これにより、スピンドル33が新たな加工ツール23を把持し終わった後であれば、すなわち圧縮空気の供給が既に終了していれば、監視装置101は、ツール交換が現に行われていないと判断することができる。これによって、監視装置101は、問い合わせに応じて、ツール交換を行おうとする人工歯作製装置1の制御部50に対して第1通知を迅速に与えることができる。
また、本実施形態によれば、複数の人工歯作製装置1において同じタイミングでツール交換を行う際に必要な圧縮空気の合計量は、コンプレッサー102の容量よりも大きい。これにより、複数の人工歯作製装置1において同じタイミングで必要とされる圧縮空気の合計量がコンプレッサー102の容量よりも大きい人工歯作製システム100において、大型のコンプレッサーを新たに設けることなく、圧縮空気の量が不足し、人工歯作製装置1が停止してしまうという事態を防止することができる。
なお、上記実施形態では、ツール交換を行おうとする人工歯作製装置1の制御部50が監視装置101に問い合わせを行うこととしたが、これに限定されるものではない。監視装置101が、ツール交換を行ってもよい旨の通知を自発的に人工歯作製装置1の制御部50に与えるようにしてもよい。ただし、この場合でも、監視装置101は同じタイミングでツール交換が重ならないように上記通知を与えるようにする。
また、上記実施形態では、加工ツール23の交換が終了した際にツール交換を終了した旨の第2通知を監視装置101に送信し、当該監視装置101はツール交換が終了したことを認識するようにしたが、これに限定されるものでない。監視装置101は、コンプレッサー102の人工歯作製装置1に対する圧縮空気の供給が終了したことを認識することで、ツール交換が終了したことを認識するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、制御部50は監視装置101からツール交換の指示を受けると、スピンドル33の回転および移動を一時停止し、監視装置101に上述の問い合わせを行うようにしたが、これに限定されるものではない。スピンドル33の上記一時停止と監視装置101への上記問い合わせとが同時であってもよい。
また、上記実施形態では、保持部25をXYZ座標系において3次元的に移動させることとしたが、これに限定されるものではない。保持部25を3次元的に移動させることができれば、例えば極座標系などを採用してもよい。
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではない。ここに示されかつ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。この開示は本発明の原理の実施形態を提供するものと見なされるべきである。それらの実施形態は、本発明をここに記載しかつ/又は図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、実施形態がここに記載されている。ここに記載した実施形態に限定されるものではない。本発明は、この開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ、改良及び/又は変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態に限定されるべきではない。