以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施形態のみに限らず、本発明の概念に帰属する他の吸収性物品も包含するものである。
[実施形態1]
本発明の実施形態1に係る展開型使い捨ておむつ(いわゆるテープ型使い捨ておむつ)における正面側から見た斜視図を図1に示す。図1に示すおむつを展開し、肌当接面側から見た平面図を図2に示す。図2のIII−III線破断断面図を図3に示す。さらに、図1および図2に示す展開型使い捨ておむつを破断展開した分割状態を図4に示す。
本実施形態における展開型使い捨ておむつ(以下、単におむつと記述する場合がある)10は、前身頃領域10Fと、後身頃領域10Rと、これら前身頃領域10Fおよび後身頃領域10Rをつなぐ股下領域10Cとを有する。また、着用時に前身頃領域10Fと後身頃領域10Rとで着用者のウエストの部分を取り囲むウエスト周り開口部10Wが形成されている。同様に、前身頃領域10Fおよび後身頃領域10Rの下端部股下領域10Cとで着用者の両脚の太股部分を取り囲む左右一対の脚周り開口部10Lが形成されている。
おむつ10の着用時に前身頃領域10Fは、着用者の腹側に位置し、後身頃領域10Rは着用者の背側に位置する。そして、股下領域10Cは、着用者の股下を覆い、左右一対の脚周り開口部10Lに、着用者の脚がそれぞれ通された形となる。したがって、脚周り開口部10Lは、着用者の両脚の付け根から太ももあたりのいずれかに位置することとなる。
おむつ10を適正な向きで着用した際に、着用者の頭から股下への体の中心軸に沿う線を仮想線Pとして、必要に応じ、以下の説明で用いる。図1に示すように、仮想線Pは、おむつ10の中央部において腹側から背側に向かって、股下部分を通って延びるものである。具体的には、仮想線Pは、例えば、おむつ10のウエスト側を上、股下側を下とすると、おむつ10の表面に沿って、かつ上下方向に延びると共に、股下部分を経由して、背側においても上下方向に延びるものである。言い換えれば、この上下方向とは、着用者の頭から股下への体の中心軸に沿う方向であり、仮想線Pは、体の中心軸に沿って延びるものである。
おむつ10の外側に位置するカバーシート11の後身頃領域10Rの左右両端縁部には、着用時に前身頃領域10Fの左右両端縁部に重ね合わせてこれらをつなぎ、脚周り開口部10Lを形成し得る左右一対のファスニングテープ10Aが接合されている。このファスニングテープ10Aは、前身頃領域10Fのカバーシート11上に接合されたフロントパッチシート10Bに対して繰り返し剥離可能に接合される。また、カバーシート11の後身頃領域10Rの上端部には、カバーシート11の幅方向に沿って延在し、着用者に対してウエスト周りに適度な着用感を与えるための弾性シート10Dが接合されている。
図2ないし図4に示されるように、本実施形態におけるおむつ10は、着用者の肌側から見て、外側から順にカバーシート11と、液不透過性のバックシート(裏面シート)12と、親水性の薄いシートであるコアラップ(ティシュ)15で包まれた吸収体13(以下、単に吸収体13とも言う。)と、着用者の肌に触れるトップシート(表面シート)14とを順に重ねて接合したものである。
カバーシート11の股下領域10Cの左右両側には、それぞれ脚周り開口部10Lとなる半円弧状をなす一対の切欠き部11Aが形成されている。液不透過性のバックシート12は、このカバーシート11に接合され、先の吸収体13は、このバックシート12と液透過性のトップシート14との間に配され、この吸収体13を介してトップシート14がバックシート12に接合される。バックシート12の幅方向の左右両側縁部の中央付近には、脚周りギャザーを形成するための糸ゴム16がそれぞれ伸長状態で接合されている。
本実施形態における液透過性のトップシート14の幅方向の左右両側縁部には、立体ギャザーを形成する液不透過性(または疎水性)の一対のサイドシート18が備えられている。一対のサイドシート18は、外側端縁部がカバーシート11の一対の切欠き部11Aと同様の形状に形成され、着用時に吸収体13の左右両側縁部に沿って起立し、着用者が***した尿の横漏れを防止するための部材である。一対のサイドシート18のそれぞれには、その内側端縁部を吸収体13側に折り返して把持させる形で立体ギャザー伸縮材としての糸ゴム19が伸張状態で配置され、糸ゴム19が収縮した際に、着用者の肌当接方向に向かって立ち上がる。立体ギャザーは従来の使い捨ておむつに用いられている公知の構成を採用することができる。例えば、撥水性シートの層間に伸張状態の立体ギャザー伸縮材を挟み込んで固定することにより、形成することができる。図2に示されるように、サイドシート18は糸ゴム19の伸縮によって、長手方向に引き寄せられる。そして、図3に示されるように、内側端縁部が立ち上がった立体ギャザーとなる。
なお、本実施形態におけるおむつ10は、吸収体13が仮想線Pに沿って長くなるものであり、その長手方向は仮想線Pに平行である。そして、仮想線Pに対して直交する方向を幅方向とする。なお、おむつ10の長手方向と幅方向の比率は本実施形態に限定されない。着用者の体型に応じてこの比率は適宜変更されるものである。
次に本実施形態における吸収体部分の構造を説明する。
図5は、吸収体13およびトップシート14が位置する部分を、トップシート14側から見た部分上面図である。
トップシート14の下に位置する本実施形態の吸収体13は、主にパルプ(後述する図7および図8では符号29で表される)とSAP(後述する図7および図8では符号27で表される)とからなるものである。吸収体13は、前身頃、股下、後身頃にわたるように、細長い形状をしている。そして、前身頃部分M1、股下部分M2、後身頃部分M3に三区分されている。股下部分M2には、両脚の太股部分を取り囲む左右一対の脚周り開口部10Lに合わせて、円弧状をなす一対の切欠き部13Aが形成されている。なお、この切欠き部13Aは、吸収体13の大きさに応じて形成しなくてもよい。また、本実施形態の吸収体13は、切欠き部13Aが設けられており、中央部の幅が前後端に比べて狭い砂時計型のものであるが、本発明の吸収体の形状はこれに限らない。前身頃部分から後身頃部分を前後(上下)方向とし、それに直交する方向を左右方向とすると、例えば、前後(上下)端の角が丸く落とされているもの、前後(上下)に延びる楕円形のもの、円形のもの、前後(上下)左右の長さが同程度の矩形のものなど、さまざまな形状を含む。
また、吸収体13は、その形状を保持するために、例えば、端部同士が糊づけで接合された親水性の薄いシートであるコアラップ15で包まれている。コアラップ15で包まれた吸収体13は、バックシート12とトップシート14との間に配される。トップシート14は、コアラップ15で包まれた吸収体13を介してバックシート12に接合される。なお、本実施形態では、コアラップ15で包まれた吸収体13を用いているが、本発明における吸収体は、コアラップで包まれていなくてもよい。
そして、図5に示されるように、おむつ10は、トップシート14表面から吸収体13に向かって規則的なエンボス加工による圧縮を施した圧縮部形成領域(エンボスパターン形成領域)N1を有する。圧縮部形成領域N1には、圧縮し連続して形成された複数の凹部21で構成され、当該複数の凹部21が斜め格子状のパターンに配置された圧縮列22が複数配列し、延在している。複数の圧縮列22は、相互に交差している。また、圧縮部形成領域のうち、圧縮列22が形成されていない領域には、主に非圧縮の主吸収領域25が設けられている。なお、図5に示されるように、エンボスパターンは、吸収体13の両端には形成されていない。したがって、吸収体13は圧縮部形成領域(エンボスパターン形成領域)N1の両側に、圧縮部非形成領域(エンボスパターン非形成領域)N2が位置するものである。これは、エンボスパターンを伝って、体液が脚周り開口部10Lから漏れることを防ぐためである。
本実施形態では、エンボスパターンは、前身頃部分M1の上端部および後身頃部分M3の下端部まで形成されている。このように、エンボスパターンを上下端まで形成することにより、おむつ10の通気性が高まるとともに、吸収体13が折れ曲がりやすくなり着用者の体におむつ10がフィットするという効果が生じる。なお、本発明では、エンボスパターンは、吸収体13の前身頃部分M1の上端部および後身頃部分M3の下端部まで形成されない態様や、吸収体13の左右端まで形成される態様も許容するものである。
本実施形態における凹部21は、おむつ着用時に着用者の体の中心軸に沿う仮想線Pに対し、傾斜したものである。具体的には、凹部21は、仮想線Pに対し、所定角度αで、第1方向である図中右方向に傾斜した右向き凹部21aと、所定角度βで、第2方向である図中左方向に傾斜した左向き凹部21bとを含んで構成されている。そして、同方向に傾斜した凹部21は,格子1つの枡の対角線が長さL1で列を形成するように配置されており、それぞれ斜めに伸びる格子状となるエンボスパターンを形成している。本実施形態においては、所定角度αと所定角度βは同じ値としたが、両者は異なる値であってもよい。本実施形態では、複数の凹部21は、トップシート14側に、トップシート14、コアラップ15、吸収体13を共に圧縮して形成されている。本発明では、本実施形態のように吸収体13とトップシート14とを一緒にエンボス加工してもいいし、エンボス加工した後の吸収体13に対して、あとからトップシート14を添付してもよい。
図5に示されるように、右向き凹部21aが複数並ぶ列を第1圧縮列22aとし、左向き凹部21bが複数並ぶ列を第2圧縮列22bとする。これらの圧縮列22は、仮想線Pに対して凹部21の傾斜角度と同じ角度傾いた直線状となるものである。第1圧縮列22aは、互いに間隔S1をあけて平行に延在している。また、第2圧縮列22bは、互いに間隔S2をあけて平行に延在している。このように、第1圧縮列22aと第2圧縮列22bとを延在させて、斜め格子状のエンボスパターンを形成している。本実施形態では、第1圧縮列22aと第2圧縮列22bとが互いに交差することで、交差領域23が形成されている。本実施形態においては、間隔S1とS2は同じ値としたが、両者は異なる値であってもよい。
本発明では、圧縮列22の交差領域23を含む領域における吸収体13のパルプ量/SAP量の値は、当該交差領域23を含む領域以外の圧縮列22における吸収体13のパルプ量/SAP量の値よりも大きい。図6は、図5における円Q部分の圧縮列の一部を拡大した模式図である。図7は図6のVII−VII線による断面形状、図8は図6のVIII−VIII線による断面形状、をそれぞれ拡大した模式図である。図5および図6は、便宜的にサイドシート18を省略して描かれている。図7および図8では、吸収体13を構成するSAP27は略星型で表わされ、吸収体13を構成するパルプ29は糸状やドットで表わされる。
凹部21を形成するエンボス加工は、トップシート14と吸収体13との間に接着剤(例えば、ホットメルト)を介在させて、トップシート14表面からトップシート14と吸収体13とを共に圧縮するものである。凹部21は、エンボスロールに形成された所定の型によって、トップシート14の表面からトップシート14と吸収体13とを共に圧縮して形成されたものである。
そして、エンボスロールによる押圧において、凹部21の最も深い位置に圧力が集中し、吸収体13とトップシート14は強く圧縮される。この圧縮の際に、吸収体13のSAP27がパルプ29の繊維を包み込むように変形し、しっかりと絡み合い、両者が一体となった状態で薄い底部を形成する。このように、凹部21において吸収体13が強く圧縮されているとともに、吸収体13が薄い底部を形成することにより、凹部21の形状がくっきりと維持される。例えば、着用者が着座するなどして、吸収体13表面に着用者の体重による圧力が加わった際にも、この凹部21はへたることなく、その形状を維持する。そして、脚の様々な動きによって、おむつ10が強く引っ張られたりしても、SAP27がパルプ29の繊維を包み込むように変形し、凹部21はその形状を維持することができる。なお、本実施形態では、凹部21は、一段階構造となっているが、二段階以上の複数段階の構造としてもよい。複数段階の構造とすることで、エンボス加工の型において最下段の凹部に対応する突起を設けて、部分的に強く圧縮することにより、トップシート14と吸収体13とがしっかりと接合する箇所を作るとともに、製造時にトップシート14が破れるなどの不良発生を防ぐことができる。
本実施形態では、斜め格子状のエンボスパターンの凹部21は、凹部21にあわせた型が表面に形成されているエンボスロールを回転させながら押し当てることにより形成される。図5に示されるように、エンボスロールが回転しながら矢印W方向(前身頃部分M1から後身頃部分M3へ向かう方向)に進行すると、エンボスロールの進行方向Wに対して直交する方向に並ぶ凹部21部分は全て同時に押圧されることとなる。本実施形態では、エンボスロールの円周は、吸収体13の長手方向の長さに相当するように、エンボスロールの大きさが決定されているが、これに限るものではない。
本実施形態では、エンボスロールの進行方向Wは、おむつ10が完成した際に、先の仮想線Pとなる方向に平行である。上述したように、おむつ10のサイズに切断された吸収体13にトップシート14を積層し、トップシート14と吸収体13とをともにエンボスロールで圧縮する。切断は、おむつ10の前身頃、股下、後身頃にわたる長さで成されるため、エンボスロールの進行方向Wも仮想線Pと平行とすることにより、仮想線Pに対して傾斜した斜め格子状のエンボスパターンを形成できる。
エンボスロールを深く押圧して凹部21を形成するトップシート14がより伸ばされることになるため、トップシート14が破れてしまうおそれがある。ただし、単にエンボスロールを浅く押圧して凹部21を形成しただけでは、トップシート14と吸収体13との間の接着効果が弱まり、トップシート14が吸収体13からはがれやすくなってしまい、くっきりとしたエンボスパターンを形成することもできなくなってしまう。
そこで、本実施形態の凹部21は、隣接する右向き凹部21aと左向き凹部21b間の距離が短くなっていくと同時に、SAP量が低い交差領域23に入るため、トップシート14を強く張らず凹部21が形成される。これにより、押さえこむ吸収体13が少ないため、トップシート14が破れにくくなる。さらに、トップシート14および吸収体13の柔らかさを保ちつつ、トップシート14が吸収体13からはがれるのを防止することができる。
図7に示されるように、凹部21付近の断面形状は、開口端部が底部よりも広がっている。また、後述する図8の場合と異なり、圧搾されている圧縮列22aと圧搾されていない主吸収領域25とでは、吸収体13のパルプ量/SAP量の値が等しくなっている。ここで、符号13Dで表される部分は、吸収体13のうちパルプ量/SAP量の値が小さく(つまり、SAP量の割合が多く)、且つ、圧搾されている多SAP・圧搾部である。符号13Eで表される部分は、吸収体13のうちパルプ量/SAP量の値が小さく、且つ、圧搾されていない多SAP・非圧搾部である。すなわち、多SAP・圧搾部13Dは交差領域23以外の凹部21を表し、多SAP・非圧搾部13Eは主吸収領域25における吸収体13を表す。また、多SAP・圧搾部13Dおよび多SAP・非圧搾部13Eは、どちらも、交差領域23の吸収体13(後述する少SAP・圧搾部13F)と比較してパルプ量/SAP量の値が小さい領域である。
ここで、吸収体13は、上述したように、主にSAP27とパルプ29からなるものであり、密度は主にパルプ29の繊維密度が関与している。したがって、多SAP・圧搾部13Dはパルプ29が圧縮され、パルプ29間の隙間が少ない状態である一方、多SAP・非圧搾部13Eは、パルプ29間の隙間が多SAP・圧搾部13Dに比べて多い状態である。なお、本発明では、交差領域23における密度は、その領域以外の圧縮列が形成された領域の密度より低いことは勿論、当該密度より高いことや、当該密度と等しいことも許容するものである。
加えて、凹部21は、合成繊維であるトップシート14と主成分がパルプ29の吸収体13とを共に圧縮接合してフィルム状に形成されているので、凹部21の底面は、体液を吸収するまでは、圧縮列22の延在方向への体液が拡散することを促進する。
図8に示すように、圧縮列22aにおいて、交差領域23における吸収体13のパルプ量/SAP量の値は、交差領域23以外の凹部21が形成された領域における吸収体13(多SAP・圧搾部13D)のパルプ量/SAP量の値よりも大きくなっている。ここで、符号13Fで表される交差領域23は、吸収体13のうちパルプ量/SAP量の値が大きく(つまり、SAP量の割合が少なく)、且つ、圧搾されている少SAP・圧搾部である。すなわち、少SAP・圧搾部13Fは、交差領域23であって、交差領域23以外の凹部21と比較してパルプ量/SAP量の値が大きい領域を表す。
なお、吸収体13は、トップシート14に接するパルプ層を有し、交差領域23におけるパルプ層のパルプの坪量は、交差領域23以外の圧縮列22におけるパルプ層のパルプの坪量よりも高く形成することができる。また、交差領域23の吸収体13のSAPの坪量は、交差領域23以外の圧縮列22における吸収体13のSAPの坪量よりも低く形成することもできる。
このように、吸収体13の圧縮列22におけるパルプ量の割合を変化させ、交差領域23における吸収体13(少SAP・圧搾部13F)のパルプ量/SAP量の値を大きくすることにより、パルプ29でSAP27を覆うことができる。そのため、エンボス加工時に、SAP27がトップシート14に当たって交差領域23のトップシート14が破れるのを防止することができる。また、交差領域23においてSAP27がトップシート14に当たりにくくしたことにより、着用者の動きによって交差領域23で吸収体13が破れやすくなるのを防止することができる。さらに、上述のように、交差領域23のトップシート14を破れにくくしたため、エンボス加工時に吸収体13を深くプレスすることができ、くっきりとしたエンボスパターンを形成することができるようになる。くっきりとしたエンボスパターンを形成することで、おむつ10の折れ曲がりやすさおよび柔軟性を向上させることができる。なお、本発明では、交差領域23におけるパルプ層のパルプの坪量を、交差領域23以外の圧縮列22におけるパルプ層のパルプの坪量よりも高くしてもいいし、交差領域23の吸収体13のSAPの坪量は、交差領域23以外の圧縮列22における吸収体13のSAPの坪量よりも低くしてもいい。この構成によれば同様に、おむつ10の折れ曲がりやすさおよび柔軟性を向上させることができる。
本実施形態において、上述した「少SAP・圧搾部13F」は、例えば、吸収体13を金型で挟み込むことによりSAP27に衝撃を与えて、SAP27を飛び散らすことによって設けられる。
また、「少SAP・圧搾部13F」は、例えば、次の工程(1)から(6)によって形成される。吸収体 マッ ト(この工程の説明ではコアラップを含まない吸収性本体を表す)は、パルプと粉状のSAPと混ぜ合わせて、例えば、2つのフォーミングドラムのフィルタに向けて吹き付けて形成される。
(1)先ず、第1のフォーミングドラムによって、厚さが一定の吸収体マットを作成する。
(2)次に、第2のフォーミングドラムによって、「少SAP・圧搾部13F」に対応する部分にパルプ層が形成されるように、間欠的に(例えば図5に示す進行方向Wと平行な縦のストライプ状の)パルプ層だけを作成し、工程(1)で作成された吸収体マットに積層させる。
(3)その後、工程(2)にて積層された吸収体マットはコアラップ15により包まれ、コアラップ15と吸収体マットとがホットメルト等により接着されて、吸収体13が作成される。
(4)作成された吸収体13をおむつ一枚分の大きさに切断する。
(5)切断した吸収体13にトップシート14を積層する。
(6)トップシート14と吸収体13とを合わせてエンボスロールにより、上記パルプ層に交差領域23が配置されるように圧縮する。
本実施形態では、圧縮列22の交差領域23における吸収体13(少SAP・圧搾部13F)のパルプ量/SAP量の値は、当該交差領域23以外の圧縮列22における吸収体13(多SAP・圧搾部13D)のパルプ量/SAP量の値よりも大きくした。しかし、本発明では、交差領域23だけでなく、交差領域23の周辺を含んだ領域において、吸収体13のパルプ量/SAP量の値を大きくしてもよい。なお、「交差領域23の周辺」は、圧縮されている領域に限られず、圧縮されていない領域を含んでもよい。この「圧縮されている領域」は、例えば、圧縮列22と同じ程度まで圧縮されていない領域を指すものである。
従来、フィット性を高めるため、吸収体の肌当接面側に、おむつの前身頃から後身頃にわたる方向に対して傾斜して伸びる斜め格子状の圧縮溝であるエンボス加工を施したものがある。この圧縮溝自体は、圧縮されていない箇所に比べて低い位置にあるため、着用者の肌に直接触れないが、格子点近傍、すなわち格子の交差領域の周辺は、トップシートおよび吸収体が引っ張られて強く張った状態で固定されている。このため、吸収体内の粉末状のSAPがトップシートに当たる場合があった。そうすると、トップシートの肌当接面における格子の交差領域の周辺は、SAPのごつごつ感が手触りとして伝わってしまうなど、他の部分に比べて硬いものとなってしまう。
この格子の交差領域の周辺が着用者の肌に触れることにより、着用者に肌触りの硬さやごつごつした感触を与えてしまい、好ましくなかった。特におむつは、股間などのデリケートな肌部分に接するため、柔らかな肌触りが求められ、格子の交差部分の周辺が硬いと、肌に当たる感触は好ましくなかった。
図6を参照して説明すると、右向き凹部21aは、進行方向Wに対して右方向に傾斜し、左向き凹部21bは、左方向に傾斜することとなる。このため、進行方向Wにエンボスロールが進むにつれて、交差領域23に向かって隣接する右向き凹部21aと左向き凹部21b間の距離が短くなっていく。
凹部21を形成するエンボスロールの押圧の際、トップシート14は凹部21内に引き込まれるように引っ張られることになる。隣接する右向き凹部21aと左向き凹部21bは同時に押圧して形成されるので、その間に位置するトップシート14は左右から引っ張られることになる。つまり、図6において、矢印Aで示す引き込み力が左右同時に加わってトップシート14が引っ張られることになる。隣接する右向き凹部21aと左向き凹部21bの距離が短くなるほど、トップシート14の引き込み力Aの引っ張りに対する余裕部分が少なくなるため、トップシート14が強く張った状態となっていく。このため、吸収体13中のSAP27がトップシート14に当たり、トップシート14表面がごつごつとした手触りとなる。これは、着用者の肌に対して刺激となるため、好ましくない。
本発明の別の実施形態では、パルプ量/SAP量の値が大きい領域を交差領域23だけでなく、その周辺に設ける。この構成によれば、交差領域23の周辺が着用者の肌に触れることにより、SAP27のごつごつ感が手触りとして伝わってしまうために、着用者に肌触りの硬さやごつごつした感触を与えてしまうのを抑制することができる。その結果、交差領域23にて形成された角部において硬くならず手触りが良くなり、トップシート14の表面が滑らかな仕上がりとなって、着用者の使用感を向上させることができる。
次にエンボス加工によるエンボスパターンの実施形態について、説明する。
図5に示すように、本実施形態のエンボスパターンは、連続的に延在した凹部21を複数並べた格子形状であり、格子1つの枡の対角線L1の長さが42mm(4.2cm)となるように凹部21が配置されている。また、図6に示すように、圧縮列22の幅Q1は、3mmであり、2mm〜5mmが好ましい。また、図5および図6に示されるように、本実施形態のエンボスパターンは、第1圧縮列22aが間隔S1で平行に延在し、第2圧縮列22bが間隔S2で平行に延在している。そして、これら第1圧縮列22aと第2圧縮列22bとによって、斜め格子状となるエンボスパターンが形成される。本実施形態における格子の1辺の長さS1およびS2は等しく、29.7mmである。格子の間隔は、13.0mm以上54.0mm以下が好ましい。
ここで、吸収体13における凹部21の深さをD1、エンボス加工をする前の吸収体13とトップシート14との厚さ、すなわち、主吸収領域25における吸収体13とトップシート14からなる最大の厚みをD2、凹部21のおむつ10の厚みをD3、凹部21の吸収体13の厚みをD4とする。本実施形態では、凹部21の深さD1は7.8mmである。厚みD2は8.0mmであり、5.0mm〜20.0mmが好ましい。厚みD3は1.0mmであり、厚みD4は0.2mm〜0.6mmが好ましい。
そうすると、凹部21の深さD1は、厚みD2の42.5%〜97.5%程度である。このように、本実施形態における凹部21は、エンボスロールによる押圧において、吸収体13をバックシート12方向へ圧縮して凹部21が形成されている。
本実施形態の交差領域23における吸収体13(少SAP・圧搾部13F)のパルプ量/SAP量の値は、1.0であり、0.9〜1.1が好ましい。また、圧縮列22の交差領域23以外の領域における吸収体13(多SAP・圧搾部13D)のパルプ量/SAP量の値は、0.8であり、0.7〜0.9が好ましい。
このようなパルプ量の割合で吸収体13を形成することにより、交差領域23のSAP27をパルプ29で覆うことができる。したがって、格子状のエンボスパターンが形成された吸収体13の交差領域23を破れにくくして、着用者の使用感を向上させることができる。
各凹部21をこのような深さおよび間隔で形成することにより、体重が加わっても、その溝を維持することができるとともに、おむつの股下部の肌当接面において、柔らかい肌触りを維持することができる。したがって、斜め格子状のエンボスパターンにより、脚の様々な動きに対しておむつがよれるなど変形を抑制できるとともに、その肌触りを柔らかいものとすることができる。
[変形例]
本発明は、上述した実施形態に限られることなく、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、適宜の変更や変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、エンボス加工はエンボスロールを用いて行うものを説明したが、この方法に限らず、おむつの大きさに合わせた板状のエンボス板によって、おむつの大きさ単位でエンボスを押していくものなどでもよい。
加えて、吸収体13を親水性シートによってくるんだ後、トップシート14を配したものだけでなく、吸収体13の上に直接、トップシート14を配したものであってもよい。また、トップシート14と親水性シートとの間に、液拡散性を向上させる液拡散シートを設けてもよい。このシートにより、体液はより拡散しやすくなる。また、親水性シートは、吸収体13をくるむように取り付けられてもよいし、単に、吸収体13の端部をくるむことなく、表、裏に重ねて配置されたものであってもよい。
また、上記実施形態では、連続する溝である凹部21によって圧縮列22を形成しているが、不連続な(例えば間欠的な)溝によって圧縮列22を形成するようにしてもよい。なお、凹部21の形状は本実施形態に示した形状に限らず、四角形、円形、楕円形、三角形など様々な形状を取り得る。
上記実施形態に係る使い捨ておむつ10は、大人用、子供用のいずれにも適用可能である。また、上記実施形態では、展開型おむつ10(いわゆるテープ型おむつ)を例にして説明したが、パンツ型おむつにも適用可能であるのはいうまでもない。また、本発明の吸収性物品はおむつのみに特定されるものではなく、吸収パッドや尿漏れパッド等、他の一般的な各種吸収性物品全般に適用されるものである。例えば、図5に示されるように、吸収体13およびトップシート14部分の構造から、本発明は、吸収パッド等にも適用可能であり、おむつと同様の作用効果を有するものである。
上記実施形態では、吸収体13の片面のみをエンボス加工しているがこれに限られず、両面エンボス加工を採用しても良い。つまり、トップシート14側およびバックシート12側の両面からのエンボス加工によって、吸収体13の表面と裏面の両面に凹部21が形成させる。これにより、吸収体13の表と裏のうち、片方の表面だけに圧力を集中させないため、エンボス加工の際に深くプレスしなくても圧縮列22を明確に形成し、かつ、おむつ10のしなやかさを保つことができる。