以下、本発明の実施の形態について図1〜図16を参照して説明する。
<第1実施形態>
まず、図1〜図7を参照して、本発明の第1実施形態に係る紫外線照射装置100(100A)について説明する。
<紫外線照射装置>
図1および図2は、本実施形態の紫外線照射装置100(100A)の概要を示す図である。図1および図2は、所定の空間S(例えば、室内などの区画された空間)内に紫外線照射装置100を取り付けた状態を示す概略図であり、図1(A)、同図(D)が有人の状態における紫外線照射装置100の状態を示す側面概要図であり、図1(B)、同図(C)が無人の状態における紫外線照射装置100の状態を示す側面概要図である。また図2(A)が有人の状態における紫外線照射装置100の状態を示す図1(A)、同図(D)に対応する上面概要図であり、図2(B)および同図(C)が無人の状態における紫外線照射装置100の状態を示す上面概要図である。図2(B)は図1(B)に対応し、図2(C)は図1(C)に対応している。また、図3は、紫外線照射装置100の駆動制御を行う回路構成の一例を示すブロック図である。
なお、本図及び以降の各図において、一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。また、本図及び以降の各図において、部材の大きさ、形状、厚み等を適宜誇張して表現する。
図1および図2を参照して、本実施形態の紫外線照射装置100は、紫外線発光手段101と、遮断手段105と、を有し、遮断手段105により紫外線の遮断状態と、非遮断状態とを切替可能に構成される。一例として本実施形態の紫外線照射装置100は、所定の空間(殺菌対象領域)S内の基材B(例えば、壁面、パネル材、板材などなど)に取り付けられ、紫外線の非遮断状態では、当該空間S内に紫外線(便宜上同図に破線で示す)を照射して空間S内の空間、設備等を殺菌する。
ここで、本実施形態における方向の定義として、図1および図2に示す第一の方向Hは水平方向、第二の方向Vは鉛直方向、第三の方向Dは水平方向および鉛直方向に垂直な方向とする。例えば、空間Sが室内であり、紫外線照射装置100がある壁面(基材B)に取り付けられる場合、第一の方向Hは壁面の幅方向であり、第二の方向Vは、壁面の高さ方向であり、第三の方向Dは床面と平行に壁面から前方に突出する厚み方向である。
まず、本実施形態の説明における殺菌対象の「菌」とは、主に人体(動物)に有害な菌(細菌、微生物類、ウィルスの細胞)の総称であり、紫外線による「殺菌」とは、光エネルギーにより菌のデオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid、以下「DNA」)そのものに作用することで、菌をそれ以上増殖させない不活化な状態にすることと定義し、滅菌10−6未満の処理をいうものとする。
本実施形態の空間(殺菌対象領域)Sは、特定の、あるいは不特定の一または複数の人間が存在し得る領域であり、例えば、壁や仕切りなどで区画された所定の空間をいうが、仕切り等は必須ではない。空間Sの一例を挙げると、医療施設や複合商業施設等の建物内の空間(室内)や、屋外に設けられたテント、ブース内の空間、さらには屋外の所定領域の空間をいう。
紫外線発光手段101は、所定の主波長の紫外線(UV:ultraviolet)を出力可能な手段である。より詳細には、紫外線(紫外光)の内の短波長(近紫外線)、特にUVC領域の波長の光エネルギーを出力可能であり、この光エネルギーによって菌(細菌)のデオキシリボ核酸(DNA)を直接破壊することで菌を不活化する能力を有するUV光源を有している。
本実施形態の紫外線発光手段101は例えば、壁面、パネル材、板材などの面状の基材Bの表面に、上記のUV光源が少なくとも基材Bの面に略垂直な第三の方向D(図示の破線の方向)に紫外光を出力(出射)可能となるように複数設けられており、それぞれは所定間隔で離間して配置されている。
UV光源は、例えば直管型の低圧水銀ランプ(低圧UVランプ)LPであり、点灯中の内部圧力(水銀蒸気圧)が100Pa以下の水銀蒸気中のアーク放電の発光を利用する放電ランプ(金属蒸気放電ランプ)である。低圧水銀ランプ(低圧UVランプ)LPの主波長は、例えば、250nm〜260nmであり、好適には253nm〜255nmであり、より好適には、253.5nm〜254nm(例えば、253.7nm)である。
また、低圧水銀ランプLPは、紫外線の少なくとも出射方向前方にオゾンの生成を阻害する阻害手段(不図示)が設けられる。阻害手段は、例えば、200nm以下の波長をカットするオゾンレス石英ガラスで構成された低圧水銀ランプLPのランプバルブである。紫外線の波長のうち波長184.9nmの遠紫外線は、空気中の酸素と反応し、オゾンを発生する。本実施形態の低圧水銀ランプLPは、阻害手段(石英ガラスのランプバルブ)を透過させることによって出射する紫外線のうちオゾンを生成する184.9nmの波長をカットしている。
また、低圧水銀ランプLPの周囲またその近傍には、紫外線の照射方向を所定方向に集光させる集光手段(不図示)を設けても良い。集光手段は例えばリフレクター、スクリーンまたはレンズなど、光の絞込み(集束)機能を有する部材である。
なお本実施形態の紫外線発光手段101は、出力波長が、紫外光の内の短波長のUVC領域の光エネルギーで、細菌のDNAを直接破壊することで細菌類を不活化する能力を有するUV光源であればよく、例えば、低圧水銀ランプLPに代えて、LED(light emitting diode)のUVランプであってもよい。
水銀灯以外の紫外線を出力することが出来る光源として代表的なものに水銀レスで紫外領域のエネルギーを得ることが可能なUV−LEDがある。このUV−LEDの中でUVC領域からUVB領域、特に260nmから285nmに輝線を持ち単一波長を得ることが出来るUV−LED光源は、発光効率がよく照度低下がし難い特性と長寿命化が図られており、殺菌波長領域であるUVC領域のエネルギー出力にも合致している。すなわち、UV−LED光源においても高い殺菌効果が得られることから、本発明の実施形態として殺菌波長領域の光エネルギーを出力する光源として、低圧水銀ランプLPに変えてUV−LEDを用いても良い。そして、UV−LEDの場合は、線光源となるように個々のUV−LEDを線状に配置してもよいし、面光源となるように個々のUV−LEDをマトリクス状に配置してもよい。
紫外線発光手段101は、空間Sへの紫外線の照射面積がなるべく大きくなるよう、十分な面積を確保することが望ましく、例えば、殺菌処理を行う空間Sの壁面の大部分(ほぼ全面)を覆うようにするとよい。また、低圧水銀ランプやUV−LEDなどのUVランプLPは、基材B上に偏りなく(なるべく均一、均等に)配置することが望ましい。
遮断手段105は、その少なくとも一部が紫外線発光手段101に対向配置されて紫外線発光手段101が出力した人体に有害な紫外線の少なくとも一部を遮断する。具体的に、本実施形態の遮断手段105は、少なくとも殺菌波長領域(UVC領域)の紫外線を遮断し、より具体的には、例えば、UVC領域およびUVB領域(人体への許容基準値以外の波長領域)の紫外線を遮断する(以下、本実施形態において単に「UVC領域の(波長の)紫外線を遮断する」と記載している遮断手段105含め、全ての遮断手段105において同様)。また、本実施形態の遮断手段105は、例えばカバー手段103に含まれる。
一例として、カバー手段103は、図1(A)に示すように、少なくとも殺菌波長領域(UVC領域)のエネルギーの紫外線を透過可能な透明部材(ガラスや樹脂など)であって、これに殺菌波長領域(UVC領域)の紫外線を遮断する例えば、少なくともUVC領域の波長)をカットする板状のパネルまたはフィルター(遮断手段105)を重畳するように設けた手段である。あるいは、カバー手段103は、殺菌波長領域(UVC領域)の紫外線を遮断するUVカット材料(遮断手段105)を含むガラス等の透明部材(例えば、UVカットガラス)である。
本実施形態の紫外線照射装置100の紫外線発光手段101は、通常の運転時(作動時、電源投入後)には、連続して紫外線を前方(紫外線出射方向)に照射する。そして、カバー手段103は、紫外線発光手段101が発光(出力)する紫外線のうち、少なくとも殺菌波長領域(UVC領域)の波長について、カバー手段103よりも前方(紫外線出射方向)への出射を遮断する遮断状態と、カバー手段103よりも前方に出射する非遮断状態とを切替可能に構成されている。
このカバー手段103による遮断状態と非遮断状態の切替は、遮断手段105を紫外線発光手段101に対して相対的に移動させることでUVC領域の波長を有する紫外線の遮断状態と非遮断状態とを切り替える。以下、「遮断手段105(カバー手段103)によって遮断(カット)する紫外線」とは、少なくとも殺菌波長領域(UVC領域)の波長の紫外線、より具体的にはUVC領域の波長と、UVB領域の波長のうち人体に有害な波長の紫外線を意味するものとする。
具体的に、カバー手段103がUVC領域の波長の紫外線を透過するものであり、これにUVC領域の波長の紫外線を遮断する遮断手段(UVカットフィルムなど)105が設けられている場合、遮断状態では、同図(A)に示すように、カバー手段103と遮断手段105を紫外線発光手段101の前方(紫外線の出射方向)に配置して、紫外線がカバー手段103を透過して前方(空間S)に照射されることを遮断する。
一方、非遮断状態では、同図(B)に示すように、少なくとも遮断手段105を紫外線発光手段101の前方から退避させるように紫外線発光手段101に対して相対的に移動させ、紫外線がカバー手段103を透過して前方(空間S)に照射されることを許容する。
また、カバー手段103がUVC領域の波長の紫外線をカットする(遮断手段105を含む)UVカットガラス等の場合、遮断状態では、同図(A)に示すように、カバー手段103(遮断手段105)を紫外線発光手段101の前方(紫外線の出射方向)に配置して、紫外線がカバー手段103を透過して前方(空間S)に照射されることを遮断する。
一方、非遮断状態では、同図(C)に示すように、カバー手段103の少なくとも一部を紫外線発光手段101の前方から退避させるように紫外線発光手段101に対して相対的に移動させ、紫外線が空間Sに照射されることを許容する。
このように、本実施形態の紫外線照射装置100は、紫外線発光手段101によって紫外線を出力した状態で、遮断手段105によって、遮断状態と非遮断状態を切り替え可能に構成されている。このような構成により、短時間で効率的に空間Sの殺菌が行える。
UVランプLPは、そのオン(点灯)、オフ(消灯)によって殺菌処理の作動と非作動を切り替える。しかしながら、UVランプLPがオフ(消灯)の状態から、十分な殺菌能力を得るための出力に達するまでには所定の時間が必要であり、この時間はオフの状態が長いほど長くなる。
具体的には、UVランプLPが特に低圧水銀ランプである場合、UVランプLPを使用する点灯(温度)環境にも依るが、一例として、前回UVランプLPをオフ(消灯)した状態から数十分程度経過している場合は、UVランプLPのオン(点灯)後、十分な殺菌能力が得られる出力(ピーク出力)に達するまでに1分程度要し、前回UVランプLPをオフ(消灯)した状態から24時間程度経過している場合は、UVランプLPのオン(点灯)後、十分な殺菌能力が得られる出力(ピーク出力)に達するまでに2分〜3分程度要し、UVランプLPが完全に冷却しているの場合(例えば、前回UVランプLPをオフ(消灯)した状態から数時間〜24時間以上が経過している場合など)には、UVランプLPのオン(点灯)後、十分な殺菌能力が得られる出力(ピーク出力)に達するまでに5分程度の時間を要する。
また、UVランプLPの発光効率は、内部に封入された水銀(蒸発温度48℃)の蒸気圧に依存するので、蒸気圧が安定しない環境あるいは、高温環境下などでは所定の出力になるまでの時間にばらつきが出るなど出力特性が安定しない問題もある。
つまり、殺菌処理を行わない期間に紫外線発光手段101をオフ(消灯)してしまうと、殺菌処理を行いたい場合、所定の出力に達するまでに時間を要したり、その時間にばらつきが生じることになる。具体的には、例えば、病院等においては(感染力の強い)ウィルスに感染した患者を診察室または手術室等で診察・処置した後に別の患者が同じ空間を利用する際、当該別の患者や医師等病院スタッフへの二次感染を防止するために患者の処置が終了する毎に当該空間の殺菌が望まれる。しかしながら、紫外線光源灯による殺菌の開始に時間が掛かる(時間が安定しない)と、次の患者が入室するまでの待機時間も長くなるなどの問題がある。
そこで本実施形態では、空間Sの殺菌処理を行う前から(例えば、空間Sの使用開始前などから)予め紫外線発光手段101の発光を開始しておき(図1(A))、殺菌処理が必要ない場合(有人の場合など殺菌が行えない場合)には、カバー手段103(遮断手段105)によって人体に有害な紫外線を遮断する(図1(A))。そして、殺菌処理が必要な場合にカバー手段103(遮断手段105)を開放するなどして瞬時に遮断状態から非遮断状態に切り替える(同図(B),同図(C))。この場合、紫外線発光手段101はオン(点灯)から十分な時間が経過しており、殺菌処理に十分な出力が得られている。また、紫外線発光手段101は、例えば壁面と同程度などの大きな面積にUVランプLPが(万遍なく)配置されている。このため、カバー手段103(遮断手段105)を開放すると即座に、室内S全体に直接的に紫外線を照射することができる。
なお、UVランプがUV−LEDの場合は、ランプ点灯時即座に出力100%に至らせることができるため、低水銀ランプとは異なる即時点灯、即時消灯の制御が行える。
ここで、図1(D)を参照して、カバー手段103は、少なくとも一部が紫外線発光手段101に対向配置され、好適には少なくとも一部に開口を有するように構成すると好適である。例えば、カバー手段103は図2に示すように上面視においてコの字状となるように、前面カバー部103Fとこれに連続する側面カバー部103Sとを有する。より具体的には、紫外線発光手段101は、空間S内の或る略鉛直面(例えば、床面に略垂直な面)内に配置され、前面カバー部103Fは、紫外線発光手段101と第三の方向Dにおける所定の距離D1で離間し、これとは異なる略鉛直面内に対向配置される。紫外線発光手段101と前面カバー部103Fの距離D1は、紫外線発光手段101の発熱によって生じる空気の自然対流が可能(必要十分)な程度であり、一例として100mm〜200mm程度である。
側面カバー部103Sは、前面カバー部103Fと一体的に紫外線発光手段101を覆うように、前面カバー部103Fの第一の方向(幅方向)Hにおける両端部に連続して設けられる。
また、カバー手段103は、図1における第二方向(高さ(鉛直)方向)Vの上端および下端は開口が設けられて開放端となっている。
このような構成により、紫外線発光手段101と、カバー手段103とによって区画された領域(カバー手段103と紫外線発光手段101との間の領域)は、空気の流路107が形成される。そして、紫外線照射装置100は空間S内の空気を取り込んで紫外線を照射して殺菌し排出することで、殺菌後の正常な空気を空間S内で循環させることができる。
つまり、カバー手段103(前面カバー部103Fと側面カバー部103S)は、紫外線発光手段101とともに略直方体形状を成し、その上端部と下端部が開放されて空気の流路107を形成している。そして、紫外線照射装置100は、運転(作動時)には、連続して紫外線発光手段101から紫外線を発光している。
カバー手段103と紫外線発光手段101で区画された流路107が形成されている状態(カバー手段103で紫外線発光手段101が覆われている状態)では、その下端側から流入した空気に紫外線が照射され、流路107の上端側から流出可能となっている。そして、流路107内の空気は、紫外線発光手段101からの発光で熱せられて上昇する。紫外線発光手段101と前面カバー部103Fの距離D1は、紫外線発光手段101の発熱によって生じる空気の自然対流が可能な程度(自然対流を阻害しない程度、自然対流に必要十分な程度)であるため、自然対流によって、室内の(汚染された)空気が流路107の下端から流路107に進入し、紫外線発光手段101によって殺菌された空気が流路107の上端から室内Sに流出する。
このようにして、紫外線照射装置100は、別途の人為的、機械的な空気循環用の駆動手段を用いることなく、清浄な空気を循環させることができる。以下、紫外線照射装置100によって取り込んだ空気を殺菌し自然対流によって放出させることで清浄な空気を循環させる当該処理を「循環殺菌」と称する。
なお、カバー手段103は、常時紫外線発光手段101を覆う構成とし、遮断手段105の開閉によって遮断状態と非遮断状態を切り替えるようにすれば、紫外線の遮断状態であっても非遮断状態であっても循環殺菌が行える。
一方、カバー手段103の開閉によって紫外線の遮断状態と非遮断状態を切り替える構成の場合は、遮断状態の場合に循環殺菌が行える。
なお図1及び図2ではカバー手段103を例示しているが、本実施形態の遮断手段105は、例えばパネル状で、紫外線発光手段101の前面のみに移動(開閉)可能に吊り下げられるなどし、その開閉によって紫外線の遮断状態と非遮断状態を切替可能な構成であってもよい。この場合、カバー手段103は(遮断手段105と一体的なパネル状に)設けられても良いし、カバー手段103が設けられなくても良い。
図1および図2を参照して紫外線照射装置100の具体的な動作例ついて説明する。一例として、遮断手段105は、前面カバー部103Fの面方向に沿って、紫外線発光手段101の前面を覆う状態(図1(A),図1(D)、図2(A))と開放する状態(図1(B)、図1(C)、図2(B),図2(C))とに移動(開閉)可能に構成されているとする。
つまり、図1(A)、同図(D),図2(A)に示すように紫外線発光手段101を覆うように遮断手段105を移動(閉鎖)させると、紫外線発光手段101から出力された紫外線(殺菌波長領域(UVC領域)の光エネルギーの紫外線、破線で示す)はカバー手段103(前面カバー部103F)を透過せず、前方(室内S)へも進行(到達)しない遮断状態となる。
一方、図1(B)、同図(C)、図2(B)または図2(C)に示すように、紫外線発光手段101が現れるように遮断手段105を移動(開放)させると、紫外線発光手段101から出力された紫外線(殺菌波長領域(UVC領域)の光エネルギーの紫外線)が(カバー手段103(前面カバー部103F)を透過して)前方(室内S)へ進行(到達)する非遮断状態となる。
ここで、図1(B),図2(B)に示す構成では、カバー手段103は紫外線発光手段101に対して固定され(相対的に移動せず)紫外線の透過が可能であるとする。一方、遮断手段105は、紫外線発光手段101のみならず、カバー手段103に対しても相対的に移動可能に構成されることにより遮断状態と非遮断状態の切替が可能となっている。
この場合、図1(A)(図1(D)も同様)、図2(A)に示すように、紫外線発光手段101を覆うように遮断手段105閉鎖させると、紫外線発光手段101から出力された紫外線は前面カバー部103Fを透過せず、前方(紫外線の出射方向、室内S)へも進行(到達)しない遮断状態となる。
一方、図1(B)、図2(B)に示すように遮断手段105を開放することにより、紫外線発光手段101から出力された紫外線がカバー手段103(前面カバー部103F)を透過して前方(紫外線の出射方向、室内S)へ進行(到達)する。
しかしながらこれに限らず、図1(C)、図2(C)に示すように、カバー手段103(前面カバー部103F)と遮断手段105が一体的に設けられて、カバー手段103(前面カバー部103F)自体が遮断手段105を兼ねる構成によってであってもよい。具体的には、カバー手段103の少なくとも前面カバー部103Fに重畳して一体的に例えばパネル状の遮断手段105が設けられる構成であってもよいし、カバー手段103の少なくとも前面カバー部103Fの内部に例えばパネル状の遮断手段105が設けられ(内蔵され)る構成であってもよい。あるいは、前面カバー部103Fの材料に紫外線カット材などの遮断手段105が含有(混在)され、あるいは塗布される構成であってもよい。この場合、前面カバー部103F(遮断手段105)が、紫外線発光手段101の前面を覆う状態と開放する状態とに移動(開閉)可能に構成される。
そして、図1(A)、図2(A)に示すように紫外線発光手段101を覆うように前面カバー部103F(遮断手段105)を移動(閉鎖)させると、紫外線発光手段101から出力された紫外線は前面カバー部103Fを透過せず、前方(室内S)へも進行(到達)しない遮断状態となる。
一方図1(C)、図2(C)に示すように、紫外線発光手段101が現れるように前面カバー部103F(遮断手段105)を移動(開放)させると、紫外線発光手段101から出力された紫外線が前方(室内S)へ進行(到達)する非遮断状態となる。
駆動制御手段109は、例えば、駆動電源と制御ユニットなどであり、紫外線発光手段101による紫外線の照射/非照射の制御、および遮断手段105(カバー手段103)による紫外線の遮断状態と非遮断状態の切替の制御等を行う。また、駆動制御手段109には運転制御ブレーカーや点灯制御タイマーその他、駆動制御に関わるセンサおよび当該センサからの信号の処理手段なども含む。
駆動電源は、空間Sの電源等と接続し、複数の低圧水銀ランプLPを同期させ、あるいはそれぞれを個別に効率よく点灯/消灯させる。また制御ユニットは、CPU、RAM、及びROM等から構成される制御回路を含み、各種制御を実行する。CPUは、いわゆる中央演算処理装置であり、低圧水銀ランプLPの点灯/消灯の制御プログラムを含む各種プログラムが実行されて各種機能を実現する。RAMは、CPUの作業領域として使用される。ROMは、CPUで実行される基本OSやプログラムを記憶する。
殺菌が可能な程度の(UVC領域の波長の)紫外線照射は、一般的には人体に有害である。本実施形態の紫外線照射装置100は、空間Sが有人の場合には、図1(A)、図1(D)および、図2(A)に示すように、遮断手段105によって紫外線を遮断して、有害な紫外線が室内S(有人の領域)に進行(到達)することを防止する。
一方、空間Sが無人の場合には、図1(B)、図1(C),図2(B)または同図(C)に示すように、遮断手段105を開放し、紫外線を非遮断状態として空間Sに照射し、空間S全体の殺菌処理を行う。この殺菌処理では、空間Sに存在する家具や壁、床および天井などの物(物体)のみならず、空間S内の空気も殺菌可能である。
なお、紫外線の遮断状態および非遮断状態のいずれであっても、カバー手段103と紫外線発光手段101によって流路107が形成されていれば、流路107内の空気の殺菌処理と自然対流による清浄な空気(殺菌された空気)の循環(循環殺菌)が可能である。
つまり、図1(A),同図(B),同図(D)および図2(A)、同図(B)に示すように、カバー手段103(少なくとも前面カバー部103Fが紫外線を透過可能である)が常時、紫外線発光手段101を覆う構成では、空間S内が無人で遮断手段105を開放した非遮断状態であっても、流路107は形成されているため、空間Sに直接紫外線を照射することで、空間Sの空気を殺菌することができ、また流路107内の空気を殺菌し、空間Sに清浄な空気を循環させることができる。そして、空間S内が有人の場合などに遮断手段105を閉鎖した遮断状態の場合には、空間Sへの紫外線の照射は遮断するものの、流路107内の空気を殺菌し、空間Sに清浄な空気を循環させることができる。
一方、図1(C)、図2(C)に示すように、カバー手段103が遮断手段105を兼用する構成では、空間S内が無人で遮断手段105を開放した非遮断状態では流路107は形成されないが、空間Sに直接紫外線を照射することで、空間Sの空気を殺菌することができる。そして、空間S内が有人の場合などに遮断手段105(前面カバー部103F)を閉鎖した遮断状態の場合には、空間Sへの紫外線の照射は遮断するものの、流路107内の空気を殺菌し、空間Sに清浄な空気を循環させることができる。
このように本実施形態の紫外線照射装置100は、遮断手段105の開放によって空間Sが無人の場合には紫外線発光手段101から空間Sへの紫外線を瞬時に非遮断状態とし、直接、空間Sに紫外線を広範囲に照射して(また、流路107を介して殺菌後の空気を循環させて)空間S内を効率よく殺菌処理することができる。
また、空間Sが有人の場合には、遮断手段105の閉鎖によって紫外線発光手段101から空間Sへの紫外線を(発光は維持したまま)遮断状態とし、人体への紫外線の影響を避けつつも、流路107を介して殺菌後の空気を循環させて、空間S内を安全に殺菌処理することができる。つまり、紫外線の遮断状態であっても、流路107に吸入された空気が、紫外線発光手段101により殺菌されるとともに、発熱により温度上昇し、自然対流で上部から流出することで清浄な空気を循環させることができる(循環殺菌が可能である)。また、機械的・人為的な空気の循環手段を用いないため、空間S(室内など)の使用中(作業中)であっても、気流を乱すことなく、持続的に空気を殺菌し、空間S内の菌数を減らすことができる。
図3は、本発明の実施形態にかかる紫外線照射装置100の駆動制御手段109に含まれる回路の一例を示すブロック図である。この例では、一例として6本のUVランプ(例えば、低圧水銀ランプ)LP1〜LP6を発光させる場合を例示しているが、この数に限らない。
紫外線照射装置100は、空間Sの電源(例えば、家庭用及び商業用電源)から電気を供給できるAC電源プラグを付帯させており、安定化電源部200に電源を供給できる回路構成を備えている。安定化電源部200は、UVランプLP1〜LP6を常時安定的に点灯させることのできる安定器EB1〜EB6からなり、安定器EB1〜EB6にはそれぞれUVランプLP1〜LP6が接続されている。また、UVランプLP1〜LP6に最適なケーブルコネクター類で結線が配設され、効率よく供給電源を安定器EB1〜EB6に供給できる回路構成となっている。
また、駆動制御手段109は、複数のUVランプLPの点灯/消灯を(1灯毎)個別に制御可能としてもよい。これにより、複数のUVランプLPを例えば順次点灯させ、または円を描くように回転させ、あるいは個別にランダムで点灯させるなど、任意に設定した方法で点灯、点滅、消灯させることができる。このようにすることで、紫外線照射時に空間Sに対して影(非照射の部分)が生じないよう、すなわち満遍なく紫外線を照射可能(紫外線を遮る影を極小化することが可能)となる。
<紫外線照射による菌の不活化処理>
ここで、図4および図5を参照して紫外線照射による菌の不活化について説明する。
光放射の内380nmより短い波長のエネルギーは紫外放射とされ、物質や生物に対して様々な作用を及ぼすことが知られている。光の特徴は短波長になるほどエネルギー(kJ/mol)が強まり、特に紫外線のUVC領域(100nm〜280nm)になると生物の核酸分子やたんぱく質を分解することが可能となる。
一方、炭素同士の単結合は、230nmより長波長では吸収されず、化学変化が得られないとされ、核酸の変化は核酸に含まれる二重結合への光子の吸収が必要である。微生物の不活化の原理としては、260nmの波長をピークにした光エネルギーが、生物の細胞核内の遺伝情報を司るDNAとリボ拡散(ribonucleic acid、以下「RNA」)の塩基に吸収される事で、チミン等が二量体化し、細胞***の際にそれ以上の複製を行えなくなることで起こる。
このようなことから、紫外線短波長UVC領域の出力が可能な紫外線(UV)ランプが、食品や医療産業用途を中心に衛生管理を向上するための殺菌(菌、ウィルスの細胞の不活化)を効率よく行えるエネルギーとして、食品やパッケージ・フイルム、水処理及び空間の浮遊菌・落下菌の殺菌処理等の分野に於いて幅広く利用されている。
本実施形態の紫外線発光手段101は、UVC領域のエネルギーを出力することのできる紫外線ランプの一例として、放電管の中に水銀を含有させた水銀ランプ(低圧水銀ランプLP)を用いる。
図4は、紫外線によるDNAの不活化の状態を示す図であり、同図(A)が低圧水銀ランプLPの出力波長(分光エネルギー)分布にDNAの紫外線(UV)吸収曲線を重ねた図である。UV吸収曲線とはUV波長260nmにおけるDNAの吸収率(分光感度)を100とした場合のUV波長に応じたDNAのUV吸収率の相対値であり、同図(A)の縦軸がUV吸収率の相対値であり、横軸がUV波長である。また、同図(B)はDNAのUV吸収曲線(実線)とUVによる殺菌作用曲線(破線)である。殺菌作用曲線とはUV波長260nmにおけるDNAの殺菌(不活化)率を100とした場合のUV波長に応じたDNAの殺菌率の相対値であり、同図(B)の縦軸が殺菌率の相対値であり、横軸がUV波長[nm]である。
同図(A)に示すように、低圧水銀ランプLPでは、放電管内で電子を水銀に衝突されるときに放射される輝線253.7nmを主波長として得ることが出来る。そして、生物のDNA(RNAも同様)に吸収されるスペクトルは260nmを中心とした波長領域に跨っている。また、既に述べたように、紫外放射による殺菌作用はDNAに損傷を与えることによって生じるが、同図(B)に示すように、その殺菌効果を示す殺菌作用曲線は、DNAのUV吸収曲線とほぼ一致する。これはDNA内に連続してあるピリミジン基が、この波長領域の光を吸収をすることで二量体化して遺伝コードが損なわれ、細胞が分化性能を失い不活化するものである。
つまり、低圧水銀ランプLPから出力するエネルギー253.7nmを対象菌に効率良く照射することで高度な消毒(細胞の不活化)処理を行うことが可能となる。
なお、この253.7nmの光エネルギーを発光管ガラス内壁に塗布した蛍光体に当て可視光に変換し、照明として利用するのが蛍光灯であるが、殺菌灯の場合は紫外線の短波長を効率良く透過することの出来るUV透過ガラスと更に透過性の高い石英ガラスが用いられる。同種の水銀灯に高輝度が得られ街路灯として主に用いられる高圧水銀灯(時に産業利用として中圧水銀灯と呼ばれる)があるが同時に熱線を多く発する。このため、本実施形態では、熱線を抑えることができるとともに、253.7nmの波長を効率良くえることが可能な低圧水銀ランプLPを紫外線発光手段101の光源として採用する。
また、184.9nmのUV波長は酸素と反応してオゾンを生成し、部材の劣化や人体への悪影響を与える恐れがある。このため、低圧水銀ランプLPから空気中に照射された紫外線にオゾンの生成を阻害するため、本実施形態の低圧水銀ランプLPは、184.9nmの波長をカットすることのできる阻害手段を備える。具体的には当該阻害手段は、石英ガラスのランプバルブである。
UVによる菌の殺菌(不活化)処理は、光が規定量当たらないと処理が行えないデメリットがある反面、薬剤や熱等の殺菌処理方法で問題となる耐性菌は生じさせないため、どの様な菌に対しても効果的な処理が行えるメリットがある。
なお、同図(A)では、低圧水銀ランプLPは310nm以上の波長も僅かに出力しているが、いずれの波長もDNAの吸収率は5%程度以下であるため、殺菌作用の観点においては略無視できる。
ここで、菌の不活化(紫外線による殺菌作用)に必要なUV照射量は、菌(細胞)のDNAに与えられる殺菌波長帯の光エネルギーの積算光量(積算照射量、露光量)[J/cm2](以下の式1)で決定する。
積算光量[J/cm2]=UV照度[W/cm2]×照射時間[sec] (式1)
UVの放射強度(UV強度)は一定の面積あたりのUV照度で表す。単位としてはW/m2を用いるが、単位が大きくなるため実用的には、mW/cm2やμW/cm2を使用する。このUVの放射強度(UV照度)に照射時間(例えば、秒数sec)を掛けた値が積算光量(露光量)[J/cm2(mJ/cm2、μJ/cm2)]となる。
紫外線による殺菌処理は、全ての菌に対して有効であるが、菌種によって紫外線の耐性(感受性)が異なるため、殺菌対象の菌毎にそれぞれ殺菌処理の指標に基づき必要な紫外線照射量を定める。
図5は、菌の種類毎に267nm〜287nmのUVを照射した場合に99.9%以上不活化するために必要な積算光量の一例を示す表(出典:国際照明学会(IES)ライティングハンドブック)である。
同図を参照して、例えば、インフルエンザウイルスを99.9%以上殺菌するために必要な積算光量は10500[μJ/cm2]であり、食品の殺菌基準指標である枯草菌芽胞を99.9%以上殺菌するために必要な積算光量は33200[μJ/cm2]である。つまり、これらの指標値に基づき、殺菌対象の菌に応じて低圧水銀ランプLPの積算光量が設定される。
<遮断手段の切替方法>
次に、図6および図7を参照して遮断手段105の切替方法について説明する。図6および図7は、遮断手段105の切替方法の一例を示す概要図であり、紫外線発光手段101と遮断手段105部分を抜き出しして示す斜視図である。なお、既に述べているように遮断手段105は、カバー手段103とは別体であってもよいし、カバー手段103と一体的であってもよい。またカバー手段103は設けなくても良く、流路107が形成されなくてもよい。
図6に示すように、本実施形態の紫外線照射装置100は、紫外線発光手段101に対して遮断手段105を相対的に移動(退避)させて、紫外線の遮断状態(同図(A))と、非遮断状態(同図(B))とを切替可能に構成されている。遮断手段105は、紫外光(少なくともUVC領域の波長)をカットし、可視光を透過する手段である。この例では、遮断手段105を1枚のパネル状に形成した場合を示している。
すなわち、同図(A)に示すように、遮断手段105を閉止して紫外線発光手段101の前面を覆うようにした場合は、紫外光(少なくともUVC領域の波長の光)は遮断手段105によって遮断されるがそれ以外の光(人体への影響が少ない紫外光(UVC領域(一部のUVB領域)以外の波長の光)は遮断手段105を透過する。
一方、同図(B)に示すように、遮断手段105を開放して(退避させて)紫外線発光手段101の前面が露出する(現れる)ようにした場合は、紫外光(少なくともUVC領域の波長の光)が前方に放射される。
図7は、遮断手段105による遮断状態と非遮断状態の切り替えの他の例を示す斜視図である。遮断手段105は、図6に示すような1枚のパネル状に限らず、複数に分割されて個々に移動可能なパーツ105Pの組合せで構成されてもよい。パーツ105Pは、例えば紫外線発光手段101に対して、同図(B)に示すような平行(スライド)移動や、同図(C)に示す回動(揺動)などが可能に構成される。
具体的には、同図(B)に示すように、遮断手段105を鉛直方向(高さ方向)Vに複数に分割し、これらの鉛直方向に帯状のパーツ105Pを水平方向(幅方向)Hにスライド可能とする。この場合、同図(A)に示す遮断状態では紫外線発光手段101の前面を覆い、非遮断状態では、同図(B)に示すように、幅方向Hにスライドして引き戸(障子)状に左右に開放することができる。左右にスライドするパーツ105Pはそれぞれ1枚であってもよいが、左右それぞれを複数枚に分割することで開放状態であっても遮断手段105をコンパクトに重ねることができる。
また、同図(C)に示すように、遮断手段105を水平方向(幅方向)Hに複数に分割し、これらの水平方向に帯状のパーツ105Pの角度を変化可能とする。複数のパーツ105Pは例えば、幅方向に沿って設定された(仮想の)回転軸を中心にブラインド状(グレーティング状)に回動(揺動)可能とする。この場合、同図(A)に示す遮断状態では紫外線発光手段101の前面を覆い、非遮断状態では、同図(C)に示すように、回動させることで隙間を生じさせ開放することができる。
本実施形態では、遮断手段105の開放時には紫外線を遮ることなく広範囲に照射することが望ましい。この場合同図(C)のようなブラインド状の場合は紫外線の一部がパーツ105Pによって遮られる恐れもあるため、同図(B)に示すように照射方向の前方が全開する構成が望ましい。
なお、この例に限らず例えば、遮断手段105をカーテン状に構成し、開閉可能としてもよい。
なお、遮断手段105の移動(開閉)の切替は、例えば、切替手段150などによって自動で制御するようにしてもよいし、手動で制御するようにしてもよい。
また、図1および図2の実施形態では、紫外線照射装置100(100A)が壁面に設置(固定)された例を示したが、紫外線照射装置100(100A)は空間Sの一部(壁面等)に固定されず、移動可能に構成されてもよい。
<第2実施形態>
図8を参照して、本発明の第2実施形態の紫外線照射装置100(100B)について説明する。図8(A)は外観斜視図であり、同図(B)は上面図である。
第2実施形態の紫外線照射装置100(100B)は、紫外線発光手段101と、カバー手段103とを有する。
紫外線発光手段101は、上記第1実施形態と同様であるので説明は省略する。また、カバー手段103は、紫外線発光手段101が発光する紫外線の少なくとも一部(UVC領域の波長)を、前方に照射されることを遮断するとともに、紫外線発光手段101との間で空気の流路107を形成するように紫外線発光手段101に対向配置される。すなわち、カバー手段103はこれと一体的に構成された紫外線の遮断手段105を含んでいる。
第2実施形態のカバー手段103および遮断手段105はいずれも、紫外線発光手段101と一体的に移動可能に設けられ、紫外線発光手段101に対して相対的な移動はしない(開閉しない)が、これ以外の構成は第1実施形態と同様である。つまり、紫外線発光手段101は、通常の動作時には常時発光を継続しており、遮断手段105(カバー手段103)の開閉によって紫外線の非遮断状態と遮断状態とを切り替える。
第2実施形態に係る紫外線照射装置100(100B)では、常時、カバー手段103と紫外線発光手段101による空気の流路107が形成されており、その流路107の一端(下端)側から流入した空気に紫外線を照射して殺菌処理を行い、殺菌後の空気を流路107の他端(上端)側から流出可能に構成されている。
また、この例の紫外線照射装置100Bは、空間S(例えば、室内)の壁などに(移動不可に)固定されるものではなく、紫外線発光手段101とカバー手段103とをユニット化し、一体的に移動可能に構成される。
例えば、同図に示すように紫外線照射装置100Bは、外周に支持枠121が設けられ、下端部には脚部123が設けられる。脚部123は、紫外線照射装置100Bを床面等に自立可能に支持するとともに、床面によって下端側の流路107(空気の流入口IN)が塞がれることを防止する(流路107の下端側からの空気の流入を許容する)ために設けられるものであり、図示の形状に限らない。
さらに脚部123には、移動を容易にするためキャスター125などを設けると好ましい。また、脚部123またはキャスター125には、固定/可動切り替えできるロック機構(不図示)を設けると良い。
このように第2実施形態の紫外線照射装置100Bは、自立および移動が可能な間仕切り型(衝立型、パーティション型)に構成されている。これにより例えば、通常有人であることが想定される任意の空間S(特に、除菌装置等が整備されていない空間Sなど)に、必要に応じて配置し、また、適宜移動させることができる。これにより、例えば当該空間を短時間無人の状態にして遮断手段105を開放し、空間S内に瞬時且つ広範囲に紫外線を照射して殺菌することができる。また、空間Sの空気を流入口INから取り込み、流路107にて殺菌して流出口OUTから排出することができるつまり、有人の空間Sにおいて、常時、殺菌後の清浄な空気を循環させることができる。
特に、紫外線発光手段101とカバー手段103とが一体的に移動可能(可搬型)であるので、任意のタイミング、レイアウトで容易に設置および撤去が可能であり、間仕切りとしても使用できる。
したがって例えば、複数人が収容される室内(空間S)などにおいて任意のタイミングで空気を清浄したい場合などや、病院、仮設テントその他の施設などで感染力の強い患者が存在する場合など、適宜、設置し、また不用の際には容易に撤去することができる。
なお、可搬型であれば、図示の構成に限らず、例えば、床面等への据え置き型や、天井や壁などからの吊り下げ(掛け下げ)型などであってもよい。
さらに、同図(B)の上面図に示すように、紫外線発光手段101はパネル(板)状の基材Bの両面に低圧水銀ランプLPを配置し、当該紫外線発光手段101を覆うように両面にカバー手段103を設けるとよい。すなわち、基材Bの第一の面Sf1に複数のUVランプLPを設け、第一の面Sf1に対向してこれを覆うように第一のカバー手段1031を配置する。また基材Bの第二の面Sf2に複数の低圧水銀ランプLPを設け、第二の面Sf2に対向してこれを覆うように第二のカバー手段1032を配置する。
なお、基材Bの第一の面Sf1と第2の面Sf2にそれぞれUVランプLPを配置するのではなく、枠状の基材Bに第一の面Sf1と第2の面Sf2に共用のUVランプLPを配置する構成であってもよい。例えば、枠状の基材Bにはしご状に複数のUVランプLPを掛け渡す構成であれば、それぞれのUVランプLPを基材Bの第一の面Sf1と第2の面Sf2で共用することができる。
このようにすることで、非遮断状態では基材Bの第一の面Sf1側および第二の面Sf2側のいずれからも紫外線を照射することができる。また遮断状態では、基材Bの第一の面Sf1側および第二の面Sf2側のいずれにも、空気の流路107が形成される。
従って、例えば、図示のように間仕切りを兼ねて空間S(室内)の壁などから離れた位置に紫外線照射装置100Bを配置した場合であっても、効率的に紫外線照射による殺菌および、空気の循環殺菌を行なうことができる。
なお、第2実施形態においてカバー手段103を設けず、遮断手段105のみを紫外線発光手段101の前面に対向配置する構成であってもよい。この場合、流路107は形成されないが、必要時に遮断手段105を開放することによって、空間Sに向けて瞬時且つ広範囲に紫外線を照射することができる。
<第3実施形態>
図9を参照して、本発明の第3実施形態の紫外線照射装置100(100C)について説明する。図9は、第3実施形態の紫外線照射装置100(100C)を室内(空間S)に設置した場合の、装置の側面を示す概要図である。
第3実施形態の紫外線照射装置100(100C)は、紫外線発光手段101と、カバー手段103と、変換手段131とを有する。
紫外線発光手段101は、上記第1実施形態と同様であるので説明は省略する。また、カバー手段103は、紫外線発光手段101との間で空気の流路107を形成するように紫外線発光手段101に対向配置される。また、一例として第1実施形態と同様にカバー手段103は紫外線発光手段101が発光する紫外線の少なくとも一部(UVC領域の波長)を遮断する遮断手段105を含んでいる。
一例として、第2実施形態のカバー手段103はいずれも、紫外線発光手段101と一体的に設けられ、紫外線発光手段101に対して相対的な移動はしない(開閉しない)。
すなわち、第3実施形態に係る紫外線照射装置100(100C)は、第2実施形態の紫外線照射装置100Bと同様、常時、カバー手段103と紫外線発光手段101による空気の流路107が形成されており、その流路107の一端(下端)側から流入した空気に紫外線を照射して殺菌処理を行い、殺菌後の空気を流路107の他端(上端)側から流出可能に構成されている。
そして第3実施形態の紫外線照射装置100Cはこれに加えて、変換手段131を有している。変換手段131は、紫外線発光手段101が出力する光の波長を変換する手段であり、具体的には、紫外光を可視光に変換する手段、あるいは、少なくとも殺菌領域(UVC波長領域)の光エネルギーは全てカットすると同時に表面には可視光のみを透過させる手段である。
具体的には、変換手段131は例えば、蛍光体を付着または含有する手段であり、蛍光体とは、より詳細には例えば、紫外線を可視光に変換することのできる経時安定性に富んだ材料であるハロりん酸カルシウムや希土類蛍光体等の類の材料である。変換手段131は例えば、主に蛍光灯バルブ内面のコート材料として用いられるように、均一且つ隙間なくコーティングできるように当該蛍光体材料を塗布液として分散させて板材に塗布(コーティングした)フィルターなどが採用できる。
また、変換手段131は、遮断手段105を兼用してもよく、その場合には、例えば、少なくとも殺菌領域(UVC波長領域)の光エネルギー(人体に有害な紫外線波長領域である400nm以下の光エネルギー)は全てカットするUVカットフィルターの表面に蛍光体が塗布、または当該UVカットフィルターに蛍光体が含有されたフィルター(可視光変換フィルター)などが採用できる。変換手段131が遮断手段105を兼用する場合、カバー手段103に遮断手段105が含まれなくても良い。一方、変換手段131が、紫外線の400nm以下の光エネルギーをカットするには十分でない場合、カバー手段103は、上述の遮断手段105を含む構成とする。
また、カバー手段103は既に述べているように、可視光を透過可能な透明部材であり、変換手段131を透過した可視光は、カバー手段103も透過し、空間S内の照明として利用することができる。
本実施形態では一例として、変換手段131の一例して、紫外線の光を可視光に変換するための材料がコーティングされた可視光変換フィルターを採用する。また、遮断手段105は、カバー手段103に含まれる構成とする。
紫外線発光手段101から出力される紫外線は、この変換手段131に接触し透過することで、可視光のみを透過させることができる。また、人体に有害な紫外線波長領域の光エネルギーは全て遮断手段105によりカットされ、カバー手段103からは、可視光のみとして放射させることができる。つまり紫外線照射装置100を、照明、あるいは、光る壁として機能させることができ、室内であっても違和感がなく、インテリア性の高い、明るい作業環境を提供できる。
変換手段131はその有効状態と無効状態を切り替え可能に構成される。例えば、室内Sが有人の場合には、同図(A)に示すように変換手段131を紫外線発光手段101の紫外線の発光方向(前方)に配置し(紫外線発光手段101の前方を変換手段131で覆い)、空間Sに可視光(大破線で示す)を照射するようにする。
一方、室内Sが無人などの場合には、同図(B)に示すように変換手段131を紫外線発光手段101の紫外線の発光方向(前方)から退避させる(紫外線発光手段101の前方を開放する)などし、空間Sへの可視光の照射を停止する。この例では、カバー手段103は常時、紫外線発光手段101の前方を覆っており、変換手段131の退避によって可視光の照射が停止された場合であっても、人体に有害な紫外線はカバー手段103(遮断手段105)により遮断され、空間Sには照射されない。
なお、遮断手段105がカバー手段103に含まれず、変換手段131と遮断手段105とを兼用する場合には、同図(B)に示す変換手段131の無効状態(退避させた状態)では、空間Sに有害な紫外線が照射されることになるので、例えば人感センサーなどを設けて、有人を検知した場合に紫外線発光手段101の発光を停止するなどするとよい。既に述べているように、紫外線発光手段101は通常の運転では常時UVランプLPを点灯状態とし、遮断手段105によって空間Sへの紫外線の遮断状態と非遮断状態を切り替え可能としているが、人感センサーなどで有人を検知した場合には安全性を最優先してUVランプLPを消灯するように構成する。
この変換手段131の開閉の切替方法は、図6および図7等、第1実施形態で説明した遮断手段105の開閉の切替方法と同様の構成を採用することができる。また、開閉の切替をすることなく変換手段131を常時、紫外線発光手段101の前面に配置して、紫外線発光手段101の発光中は常に紫外線を可視光に変換するように構成してもよい。
なお、変換手段131の開閉の切替は、例えば、切替手段(不図示)などによって自動で制御するようにしてもよいし、手動で制御するようにしてもよい。
このように、第3実施形態に係る紫外線照射装置100Cは、カバー手段103と紫外線発光手段101で構成される流路内の空気を殺菌し、自然対流によって空気の取り込み、殺菌、放出を繰り返して循環殺菌を行いながら、変換手段131を介して室内(空間S)内へ、人体にとって無害化した可視光を照射する平面状の照明装置としても利用することができる。
この例では、図9に示すように、紫外線照射装置100Cを室内の壁面等に移動不可に固定した場合を示しているが、これに限らず、第2実施形態と同様に、紫外線発光手段101とカバー手段103とが一体的に移動可能に構成された可搬型に構成されてもよい。可搬型の構成については、第2実施形態と同様であるので説明は省略する。
<第4実施形態>
図10を参照して、本発明の第4実施形態の紫外線照射装置100(100D)について説明する。図10は、第4実施形態の紫外線照射装置100(100D)を室内(空間S)に設置した場合の、装置の側面を示す概要図である。
第4実施形態の紫外線照射装置100(100D)は、紫外線発光手段101と、カバー手段103と、変換手段131を有し、紫外線の遮断状態と非遮断状態を切替可能であるとともに、遮断状態においは変換手段131が有効となるように構成されている。
紫外線発光手段101は、上記第1実施形態と同様であるので説明は省略する。また、カバー手段103と変換手段131は、第3実施形態と同様とし、ここでは一例としてカバー手段103が遮断手段105を兼用するものとする。すなわち、カバー手段103は可視光を透過可能で且つ紫外線発光手段101が発光する紫外線の少なくとも一部(少なくとも殺菌領域(UVC領域)の波長の光エネルギー)を遮断可能に構成され、変換手段131は、紫外光を可視光に変換する。
また、これに限らず、変換手段131が遮断手段105を兼用するものであってもよい。つまり、カバー手段103は可視光を透過可能に構成され、変換手段131は、紫外線発光手段101が発光する紫外線の少なくとも一部(少なくとも殺菌領域(UVC領域)の波長の光エネルギー)を遮断するとともに、紫外光を可視光に変換するものであってもよい。
遮断手段105と変換手段131は、例えば、カバー手段103と一体的に構成されている。一方、カバー手段103は、紫外線発光手段101に対して相対的に移動可能に構成され、カバー手段103の有効状態と無効状態とに状態の変化が可能である。
同図(A)は、カバー手段103が有効状態、すなわち紫外線の遮断状態を示している。この例では、カバー手段103が紫外線発光手段101の前面を覆うように閉鎖した状態であり、紫外線発光手段101が発光した紫外線(少なくともUVC領域の波長の光)を変換手段131によって紫外光を可視光に変換し、また、人体に有効な紫外線は遮断手段105によって遮断する。
一方、同図(B)はカバー手段103の無効状態、すなわち紫外線の非遮断状態を示す図である。この場合、カバー手段103が紫外線発光手段101の前面を開放(前面から退避)するなどして紫外線発光手段101が現れた状態であり、紫外線発光手段101が発光した紫外線(少なくともUVC領域の波長の光)が前方(室内S)に照射される。
この場合のカバー手段103を開閉させる切替方法は、第1実施形態の図6、図7等に示した遮断手段105の開閉の切替方法と同様の構成が採用できる。
また、変換手段131が遮断手段105を兼用する構成とし、カバー手段103は紫外線発光手段101に一体的に固定されて常時これを覆う構成として、変換手段131がカバー手段103(紫外線発光手段101)に対して相対的に移動可能に構成されて開閉可能となってもよい。
その場合、カバー手段103による紫外線の遮断状態では、変換手段131(遮断手段105)が紫外線発光手段101の前面を覆うように閉鎖した状態であり、紫外線発光手段101が発光した紫外線(少なくともUVC領域の波長の光)を変換手段131によって遮断するとともに、人体に有害な紫外光を可視光に変換し、カバー手段103を介して可視光が室内(空間S)に照射される。
一方、カバー手段103による紫外線の非遮断状態では、変換手段131が紫外線発光手段101の前面を開放(前面から退避)するなどし、紫外線発光手段101が発光した紫外線(少なくともUVC領域の波長の光)がカバー手段103を介して前方(室内S)に照射される。
このように、第4実施形態の紫外線照射装置100Dでは、無人の場合には空間Sに紫外線を直接照射して効率的な殺菌を行なう。一方、有人の場合には変換手段131またはカバー手段103によって紫外線発光手段101が発光する紫外線を遮断するとともに、変換手段131によって紫外線(紫外光)を可視光に変換し、照明として利用することができる。
なお、図10では、カバー手段103と紫外線発光手段101が離間して流路107が形成された状態を示している。この場合、同図(A)に示す紫外線の遮断状態において、流路107を介して循環殺菌も可能である。
一方、第4実施形態では、カバー手段103と紫外線発光手段101とを近接(当接)させて流路107(自然対流が可能な程度の流路)が形成されない構成であってもよい。
また、図10では、紫外線照射装置100Dを空間S(室内)の壁面等に固定した状態を示しているが、これに限らず、第2実施形態のように紫外線発光手段101とカバー手段103とは、一体的に移動可能な可搬型としてもよい。
以上説明した第1実施形態〜第4実施形態の紫外線照射装置100の構成は、適宜組合わせて実施することができる。
以下、上述の第1実施形態〜第4実施形態を適宜組合わせた紫外線照射装置100の具体例について説明する。
<紫外線照射装置の例1>
図11および図12は、本実施形態の紫外線照射装置100を室内(空間S)の壁面に設けた場合の一例を示す概要図である。図11(A)が正面図、図11(B)が遮断状態の斜視図であり、図12が非遮断状態の斜視図である。
図11(A)に示すように、この例の紫外線照射装置100は室内(空間S)の一つの壁面全体に配置されており、例えば、紫外線発光手段101、カバー手段103、上方ルーファ111A、下方ルーファ111B、人感センサー113、不図示の駆動制御手段を有する。
紫外線発光手段101の光源は、例えば、殺菌波長領域の光エネルギーの紫外線(UVC波長領域の紫外線)を照射することが可能なランプバルブ付きUVランプLPである。より具体的に、UVランプLPは、細胞のDNA吸収感度が最も高い波長帯である250nmから285nm領域の光エネルギーを出力する低圧水銀ランプやUV−LEDである。低圧水銀ランプのバルブには、その出力主波長である253.7nmを高効率に透過する石英ガラスを代表としたUV高透過ガラスを用いる。UV−LEDを採用する場合は、殺菌効果が高い265nm若しくは285nm等の出力が高効率に得られる素子が複数連ねて幅広い方向に光放出が可能な一体形状としたUV−LEDユニット式ランプを用いる。
紫外線発光手段101は壁面に埋め込まれるように設けられ、紫外線発光手段101から所定距離D1で離間した前方に、カバー手段103(前面カバー部103F)が配置されている。前面カバー部103Fは例えば、紫外線発光手段101を覆う引き戸(障子)型に設けられる。この例では、2台の紫外線照射装置100を並べて配置しており、それぞれの紫外線照射装置100に、2枚の引き戸型のカバー手段103が設けられている。カバー手段103(前面カバー部103F)は紫外線発光手段101に対して相対的に幅方向H(図示の左右方向)にスライド移動可能に構成される。
なお、紫外線照射装置100は、カバー手段103と紫外線発光手段101とで空気の流路107が構成されればよく、この例の側面カバー部103Sは壁面と兼用されていてもよい。
また、この例ではカバー手段103と変換手段131とが一体的に設けられ、変換手段131は遮断手段105を兼用する。すなわち、カバー手段103の開閉に伴って一体的に、変換手段131および遮断手段105が開閉可能となるように構成されている。
変換手段は131は、例えば、紫外線(少なくともUVC領域の波長、人体に有害な紫外線波長領域である400nm以下の光エネルギーの波長)をカットするとともに、紫外線(紫外光)を可視光へ変換する板状のフィルターであり、例えば、UVカットフィルターの裏面(紫外線発光手段101から発光された紫外線が照射される面)に、当該紫外線の光を可視光に変換するための材料(蛍光塗料)をコーティングした可視光変換フィルターである。
カバー手段(前面カバー部103F)は、可視光を透過可能に構成されており、紫外線発光手段101から出力される紫外線は、変換手段131に接触し透過することで、人体に有害な紫外線波長領域である400nm以下の光エネルギーは全てこのフィルター板でカットされると同時に可視光に変換され、カバー手段103からは、可視光のみとして前方(室内)に照射される。
つまり紫外線照射装置100を、照明、あるいは、光る壁として機能させることができ、室内であっても違和感がなく、インテリア性の高い、明るい作業環境を提供できる。なお、遮断手段105と変換手段131は別体に構成されていてもよい。
この場合、紫外線の遮断状態では、同図(A)の左側に示すように、2枚の引き戸型のカバー手段103(および変換手段131)が閉鎖されて紫外線発光手段101の前方を覆い、紫外線発光手段101が露出しない状態となる。これにより、紫外線発光手段101からの発光は継続した状態で、空間S(室内)への紫外線の照射が遮断される。
一方、紫外線の非遮断状態では、同図(A)の右側に示すように、引き戸型のカバー手段103(および変換手段131)の一方を他方に重ねるように開放されて紫外線発光手段101が露出した状態となる。
なおこの例では、非遮断状態であっても2枚に重ねられたカバー手段103が紫外線発光手段101の一部の前方を覆った状態を示しているが、非遮断状態では紫外線発光手段101の略全面が露出可能としてもよい。例えば、当該紫外線照射装置100の幅方向Hの両外側(の壁面内など)にカバー手段103の収納領域を設けたり、カバー手段103を折り畳み可能にするなどによって、紫外線発光手段101の略全面を露出させることができる。
前面カバー部103Fの下端部と床面の間には空気の流入口INが開口しており、その前面に下方ルーファ111Bが配置される。同様に、前面カバー部103Fの上端部と天井の間には空気の流出口OUTが開口しており、その前面に上方ルーファ111Aが配置される。上方ルーファ111Aと下方ルーファ111Bはそれぞれに各ルーファ(羽部)の角度を変更(調節)可能に構成されえていると好適である。
なお、この例において上方ルーファ111Aと下方ルーファ111Bを設けず、空気の流入口INおよび流出口OUTのみが設けられる構成であってもよい。
人感センサー113は、常時、室内が有人であるか無人であるかを検知し、検知結果を駆動制御手段109に送信する。また、図示は省略するが、紫外線照射装置100は、電源、紫外線発光手段101の点灯/消灯(任意のUVランプLPの選択的な点灯/消灯)の制御、紫外線の照射強度制御、カバー手段103の開閉制御などの信号を手動で入力可能なコントローラ(不図示)を有している。
駆動制御手段109は、人感センサー113および、紫外線照射装置100のコントローラからの信号に基づき、電源、紫外線発光手段101の点灯/消灯の制御、紫外線の照射強度制御、カバー手段103および/または遮蔽手段105の開閉制御などを行う。既に述べているように、紫外線発光手段101は通常の運転では常時UVランプLPを点灯状態とし、遮断手段105によって空間Sへの紫外線の遮断状態と非遮断状態を切り替え可能としている。しかしながら、駆動制御手段109は、人感センサー113などで有人を検知した場合には安全性を最優先してUVランプLPを消灯(および/又は紫外線の照射強度を低下する、あるいは、遮断手段105を閉鎖する)ように構成する。
この紫外線照射装置100は、同図(A)左側、同図(B)に示す遮断状態では、紫外線発光手段101からの発光は継続するものの、カバー手段103(遮断手段105)によって人体に有害な紫外線の空間Sへの照射は遮断される。同時に、室内空気を下方ルーファ111Bから流路107に取り込み、紫外線発光手段101によって光エネルギーを照射して当該空気を殺菌処理する。流路107内の空気は、紫外線発光手段101の熱により昇温されてこれにより自然対流が生じ、上方ルーファ111Aから無菌化された空気として室内へ還流され、これが繰り返される(循環殺菌される)。
さらに、カバー手段103(前面カバー部103F)に設けられた変換手段131によって、紫外線発光手段101から出力される紫外線波長の少なくとも一部(殺菌波長)がカットされるともに可視光に変換される。これにより、紫外線照射装置100の外部(室内)から見た場合には、カバー手段103(前面カバー部103F)の表面全体が可視光を発する照明として利用できる。
一方、図12に示すように、紫外線照射装置100の非遮断状態では、カバー手段103(変換手段131)の開放によって紫外線発光手段101から殺菌波長領域の光エネルギーの紫外線が殺菌に有効なピーク出力の状態で前方(室内)に瞬時且つ広範囲に照射される。これにより、UVランプLPからの殺菌効果の高い光エネルギーを室内の浮遊菌や落下菌の付着している箇所に対して瞬時に直接照射して効率よく殺菌浄化することができる。
紫外線発光手段101から出力される殺菌波長領域の光エネルギーは人体に有害であるため、人感センサー113によって有人と無人を検知する。例えば、同図(B)に示すように、非遮断状態において人感センサー113が有人を検知した場合には、駆動制御手段109によって紫外線発光手段101の発光あるいは、紫外線照射装置100の運転を停止する。あるいは、非遮断状態において人感センサー113が有人を検知した場合には、駆動制御手段109によってカバー手段103で紫外線発光手段101を覆う遮断状態に移行する。これにより、人体に有害な紫外線が照射されることを回避できる。
また、カバー手段103は手動で開閉が可能であってもよく、その場合カバー手段103の開閉を検知する開閉検知センサーを設けるとよい。開閉検知センサーは例えば人感センサー113に連動し、開閉検知センサがカバー手段103の開放を検知した場合、人感センサー113の検知信号が駆動制御手段109に送信され、紫外線発光手段101の出力を停止する(消灯する)とよい。
このような紫外線照射装置100によれば、室内が何らかの菌で汚染された可能性がある場合、又は必要時に非遮断状態とすることにより、紫外線発光手段101から、全方位へ、照射の影を発生させることなく、大量の紫外線を直接的に照射することができる。したがって、例えば、数分程度の時間で、菌の生存率(生存菌数/初発菌数)を10分の1(菌の死滅率を例えば99.9%)にすることができる。また、菌が(再び)増殖する以前に繰り返し殺菌することで、室内を汚染前の清潔領域に戻すことができ、感染抑制に高い効果が得られる。
なお、カバー手段103を紫外線発光手段101の前方に移動不可に固定され、変換手段131を引き戸型に構成し、カバー手段103と紫外線発光手段101に対して相対的にスライド移動可能としてもよい。この場合、遮断状態であっても非遮断状態であっても流路107が形成されるので、常時、循環殺菌を行なうことができる。
また、カバー手段103(前面カバー部103F)あるいは変換手段131は、上下にスライド移動したり、図6および図7に示すような分割されたパーツ105Pの移動によって開閉を切り替える構成であってもよい。
さらに、駆動制御手段109のUVランプ点灯回路上には点灯制御タイマーを組み込むとよい。これにより、任意で設定した時間運転を行ったり、任意のUVランプLPを選択的に点灯/消灯させたり、あるいは所定時間運転後(殺菌処理後)に無人となった場合には電源を停止するなど、運転の自動化が可能となり、必要な場所で必要な時間に紫外線による室内空間の殺菌、および照明として利用することができる。
このように、この例の紫外線照射装置100は、変換手段131(カバー手段103)を閉鎖した状態(遮断状態)で当該紫外線照射装置100内の流路107に於いて空気の自然対流によって循環殺菌を行いながら、変換手段131を介して室内(空間S)に対して人体にとって無害化した可視光を照射する平面状の照明とすることができる。
また、変換手段131を開放した状態(非遮断状態)では紫外線発光手段101が発光する紫外線を直接、室内(空間S)に向けて照射することができ、空気及び落下菌などを全体的に照らすことで室内(空間S)全体を対象とした空間殺菌を行うことができる。
更に、通常の運転(作動)状態では、遮断状態であっても紫外線発光手段101は、UVランプLPの点灯を継続しているが、人感センサー113による有人/無人の検知を常時行い、非遮断状態において紫外線が直接的に照射されている領域に人が立ち入った場合には、人体に有害な紫外線が人体に照射される前に自動的にUVランプLPを消灯し、紫外線の照射を停止することができる。
また、変換手段(可視光変換フィルター)131の表面には、例えば、意匠性に富むデザイン(絵や模様)を施したフィルターを積層させるなどしてもよい。これにより、医療看護施設や商業施設等において空間殺菌を行いながら、同時に癒しやレジャー性をもたらす照明装置を提供することもできる。
<紫外線照射装置の例2>
図13および図14は、本実施形態の紫外線照射装置100を自立・可搬型に構成した場合の一例を示す概要図である。図13(A)は遮断状態の斜視図、同図(B)および同図(C)は非遮断状態の斜視図である。また図14(A)は変形例を示す正面図、同図(B)は上面図である。
図13(A)に示すように、この例の紫外線照射装置100は室内(空間S)において紫外線発光手段101とカバー手段103とが一体的に移動可能(可搬)であるとともに自立可能な間仕切り型(衝立型)に構成され、例えば、紫外線発光手段101、カバー手段103、人感センサー113、脚部123、キャスター125などを有する。カバー手段103は遮断手段105を含んでいるが、変換手段131を備えていても良い。また、変換手段131が遮断手段105を兼用するものであってもよい。
この紫外線照射装置100は、同図(A)に示す遮断状態では、カバー手段103によって人体に有害な紫外線は遮断される。同時に、室内空気をカバー手段103の下端部の空気の流入口INから流路107に取り込み、紫外線発光手段101によって光エネルギーを照射して当該空気を殺菌処理する。流路107内の空気は、紫外線発光手段101の熱により昇温されてこれにより自然対流が生じ、カバー手段103の上端部の流出口OUTから無菌化された空気として室内へ還流され、これが繰り返される(循環殺菌される)。
さらに、カバー手段103(前面カバー部103F)に変換手段131が設けられている場合には、紫外線発光手段101から出力される紫外線波長が可視光に変換される。これにより、紫外線照射装置100の外部(室内)から見た場合には、カバー手段103(前面カバー部103F)の表面全体が可視光を発する照明として利用できる。
一方、図12に示すように、紫外線照射装置100の非遮断状態では、カバー手段103が幅方向Hの左右にスライド移動して、紫外線発光手段101が露出する。これにより、紫外線発光手段101から殺菌波長領域の光エネルギーの紫外線が前方(室内)に照射される。UVランプLPからの殺菌効果の高い光エネルギーを室内の浮遊菌や落下菌の付着している箇所に対して直接照射して効率よく殺菌浄化することができる。
なお、非遮断状態において紫外線発光手段101が直接的に露出する構成ではなく、カバー手段103は紫外線発光手段101に固定されてこれを覆い、遮断手段105(変換手段131)が紫外線発光手段101およびカバー手段103に対して相対的に左右(または上下)にスライド移動する構成であってもよい。また、遮断状態と非遮断状態との切替方法(カバー手段103(遮断手段105、変換手段131)の移動方法)については図示のものに限らず、上記に説明した種々の態様を採用できる。
また、この場合も人感センサ113を備え、有人と無人を検知するとよい。例えば、同図(C)に示すように、非遮断状態において人感センサー113が有人を検知した場合には、駆動制御手段109によって紫外線発光手段101の発光を停止(消灯)する。あるいは、非遮断状態において人感センサー113が有人を検知した場合には、駆動制御手段109によってカバー手段103で紫外線発光手段101を覆う遮断状態に移行する。これにより、人体に有害な紫外線が照射されることを回避できる。
また、カバー手段103は手動で開閉が可能であってもよく、その場合カバー手段103の開閉を検知する開閉検知センサを設けるとよい。つまり、開閉検知センサがカバー手段103の開放を検知した場合、当該信号が駆動制御手段109に送信され、紫外線発光手段101の出力を停止する(消灯する)とよい。
これ以外に、紫外線照射装置100の例1(図11、図12)と同様の構成を備えていても良い。
このように、自立・可搬型の衝立状の構成とすることにより、コンパクトで、任意の場所に容易に設置または撤去可能な紫外線照射装置100を提供できる。
図14は、図13の紫外線照射装置100の変形例を示す図であり、図14(A)が正面図、同図(B)が上面図である。本発明の紫外線照射装置100は、流路107内において空気の自然対流を利用して清浄な空気を循環させるものである。従って、同図(A)に示すように、線状に配置する(あるいは直管型の)UVランプLPは、長手方向が略鉛直方向(高さ方向)Vに向くように配置するとよい。これにより、流路107内の空気の上昇をより促すことができる。なお、このUVランプLPの配置は、この例(自立型の紫外線照射装置100)に限らず、本実施形態で説明した全ての紫外線照射装置100に適用可能である。
また、特に自立型(図13)の紫外線照射装置100の場合には、図14(B)に示すように、その両面に紫外線発光手段101およびカバー手段103を設けるとよい。具体的には、紫外線発光手段101はパネル(板)状の基材Bの両面(第一の面Sf1、第二の面Sf2)にそれぞれ複数のUVランプLPを配置(あるいは、第一の面Sf1と第二の面Sf2で共用するように配置)し、当該紫外線発光手段101を覆うように両面(第一の面Sf1、第二の面Sf2)にカバー手段103を設ける。
これにより、非遮断状態では基材Bの第一の面Sf1側および第二の面Sf2側のいずれからも紫外線を照射することができる。また、遮断状態では、第一の面Sf1側および第二の面Sf2側のいずれにも空気の流路107が形成される。従って、間仕切りを兼ねて空間S(室内)の壁などから離れた位置に紫外線照射装置100Bを配置した場合であっても、効率的に紫外線による殺菌、および空気の循環殺菌を行なうことができ、また両面を照明手段としても利用できる。
このように、この例の紫外線照射装置100によれば、装置の下部に駆動輪(キャスター125)を配置し、自由に移動させることの出来る自立型の衝立として空間Sを区切るユニットとすることで、医療看護室等を想定した場合に於いて、同部屋への同時入居者同士のプライバシーを守りながら、空気を循環殺菌すると共に照明としても用いることもできる。
また、その場合、室内の菌やウィルスが発生している懸念箇所近くに当該紫外線照射装置100を移動させ、カバー手段103(変換手段131)を左右(または上下)に移動させて紫外線発光手段101を露出させることで、瞬時且つ広範囲に被照射対象箇所に対してUVランプLPからの光を直接、満遍なく照射し、殺菌処理を行うことができる。
また、人感センサー113による有人/無人の検知を常時行い、非遮断状態において紫外線が直接的に照射されている領域に人が立ち入った場合には、人体に有害な紫外線が人体に照射される前に自動的に紫外線の照射を停止(UVランプLPを消灯)等することができる。
<紫外線照射装置の例3>
図15は、自立式の紫外線照射装置100の他の例を示す図である。この例も間仕切り型(衝立型)の紫外線照射装置100であり、図15は遮断状態の紫外線照射装置100を示す斜視図である。
図15(A)に示すように、紫外線照射装置100(100E)は、基材B(枠体)の両面(第一の面Sf1,第二の面Sf2)にそれぞれ、遮断手段105および変換手段131を兼用するカバー手段103が備えられている。
基材(枠体)の上端部および下端部には、それぞれ空気の流入口IN,流出口OUTが配置され、カバー手段103と枠体の基材B(紫外線発光手段101)で区画された領域に、空気の流路107が形成される。
これにより遮断状態では、流入口INから空気を吸い込み、紫外線を照射して殺菌し、流出口OUTから排出させる。またこれを繰り返し、循環殺菌が行なえる。さらにカバー手段103を透過させることによって、人体に有害なエネルギー領域の紫外線はカットしつつ、紫外線照射装置100の外部(室内)から見た場合には、カバー手段103(前面カバー部103F)の表面全体が可視光を発する照明として利用できる。
基材Bには、駆動制御手段109の一部として、運転制御ブレーカー109Aや点灯制御タイマー109Bなどが設けられる。
この例の紫外線照射装置100(100E)は、同図(B)に示すように、中空の基材B(枠体)の内側に、複数のUVランプLPを固定した紫外線発光手段101を有し、その両面(第一の面Sf1,第二の面Sf2)にそれぞれ、遮断手段105および変換手段131を兼用するカバー手段103が備えられている。つまり、一つの(共通の)紫外線発光手段101の両面側に、カバー手段103が備えられている。
両面のカバー手段103は、例えば、基材Bの両端部に設けた係合部161に着脱可能に固定されており、例えば、カバー手段103を幅方向(左右)にスライドさせることで係合部161から離脱させ、紫外線発光手段101とは分離して取り外し可能に構成される。
<紫外線照射装置の例4>
図16は、紫外線照射装置100の他の例を概念的に示す側面図である。
上述の紫外線照射装置100においては、遮断手段105および、変換手段131の少なくとも一方は、物理的な部材を紫外線発光手段101に対して相対的に移動させて遮断状態と非遮断状態とを切り替える構成について示した。しかしこれに限らず、物理化学的な材料を電気制御するなどして遮断状態と非遮断状態とを切り替える構成であってもよい。
例えば、同図に示すように、基材Bに殺菌領域の紫外線の光源LPを配置した紫外線発光手段101の前面に、紫外線の透過・非透過を(所定のパターンで)選択可能な選択手段171を配置する。選択手段171は例えば、液晶パネルのように電極、偏光板(層)、配光層、液晶、などを組合せた電子(電気)的シャッターである。
また、選択手段171の前方には、遮断手段105の材料を選択的に(所定のパターン)で配置した切替手段173Aや、変換手段131の材料を選択的に(所定のパターン)で配置した切替手段173Bを配置する。
そして選択手段171を電気(電子)制御することによって、紫外線の遮断状態と非遮断状態、または照明光源としてのオン、オフの制御を行うようにしてもよい。
以上、本発明の紫外線照射装置100では、紫外線発光手段101が通常の運転時には(常時)紫外線を照射しており、有人の場合などには遮断手段105(それを含むカバー手段102)の移動(開閉)によって、有人領域への紫外線の非遮断状態と遮断状態とを切り替える。
従来の紫外線照射による殺菌装置では、人体への安全配慮のため配光性を重視し、UV照射エリアを部屋の部分箇所に限定しており、未照射エリアを生じさせ、部屋全般への殺菌処理が不完全となる恐れがあった。また、有人の場合には紫外線の照射を停止(UVランプの消灯)し、必要時にUVランプを点灯する制御を行っていた。この場合、殺菌処理に必要なエネルギーが出力されるまでには所定の時間を要するため、殺菌が必要な場合に瞬時に対応することができず、殺菌対象空間への人体の立ち入りの制限時間が長くなる(例えば、診察室等の殺菌の場合、患者の入室待機時間が長くなる)など、運用面において不十分であった。
これに対し、本発明の紫外線照射装置100によれば、通常の運転時においては紫外線発光手段101からの出力(UVランプの点灯)は維持しつつ、殺菌処理を行う場合には、紫外線遮断面の有効紫外線遮蔽面積をごく短時間で極小化し、殺菌対象領域(空間S)の可能な限り広い面積に、影を極小にして全面照射し、短時間で空間Sの菌数を許容規格内に低減することできる。
つまり、殺菌処理を行う場合には、紫外線の照射領域を、例えば無人の領域などに限定することなく対象領域(空間S)に対して全面的に一括して照射することができ、また、殺菌処理に有効なエネルギーのピーク出力の状態で瞬時に照射することができる。このような構成により、空間S(室内等)の感染源を短時間で効率よく、処理することできる。より詳細には、使用する空間Sにおいてその許容菌数を超えた場合、迅速にその空間Sの菌数を許容菌数以内に低下させることができる。また、使用する空間Sに混入してはならない菌種が混入した可能性がある場合、迅速にその菌種を殺菌することができる。
具体的には、多数のUVランプLPが、基材Bの広い面に設けられて通常の運転時には多数点灯して殺菌処理に効果的なピーク出力が維持されている。そして、有人の場合には、当該紫外線を全面的に遮断手段105(カバー手段103)によってカバーすることで、室内Sに照射されない遮断状態としている。そして、殺菌処理が必要時になった場合には、瞬間的に遮断手段105を開放することで、空間Sに対して殺菌波長の紫外線を全面照射(ほとんどのUVランプLPが露出した状態での照射)し、短時間(1〜2分間)で一括的に菌を死滅させることができる。この殺菌処理により菌(感染源)が死滅した後は、(特に殺菌処理を継続しなくても)清浄な状態が1〜2時間は継続可能である。
これに加えて、カバー手段103と紫外線発光手段101で流路107を形成することにより有人の場合であっても、流路107を通過する空気に紫外線を照射して殺菌するとともに、自然対流によって、清浄な空気を上昇気流として天井付近まで、動力なくゆっくりと上昇させて排出することができる。これにより、空間S(部屋)の層流を大きく乱すことなく、清浄な空気が空間Sに下降流として行き渡る。このため、菌の温床となる粒子などが溜まりにくく、空間S内の作業者(術者等)から発塵、発生する菌に相当する程度の菌であれば、菌数低下させることができ、全面照射による殺菌処理を行っていない場合にも、菌数抑制効果が得られる。
また、例えば、図8や図13等に示した移動可能な紫外線照射装置100の場合、図11等に示した壁面固定型の紫外線照射装置100よりも照射面積は小さくなるが、設置位置を適宜変更して殺菌処理を行うことにより、紫外線の非照射領域を容易かつ瞬時に低減することができる。
また、殺菌処理を行う場合の待機時間(UVランプLPが殺菌処理に有効な出力となるまでの待機時間)を低減させることができるので、特に殺菌処理を頻繁に行う場合、具体的には患者の診断や治療、手術、処置など、医療機関における手術室、処置室などの菌数抑制作業に対する資源投入、回転率の低下を極小化することができる。
以上説明した本実施形態の紫外線照射装置100は、一般家庭や会社等に限らず、特に、感染が多く引き起こされる可能性のある施設、例えば病院や看護施設、複合商業施設、空港や駅の待合をする部屋や廊下などあるいはまた食品を扱う工場など感染予防が必須な施設等に用いることで安全且つ効果的な浮遊菌、落下菌、ウィルスの抑制や殺菌処理が行え、感染を未然に防止することができる。また、これと同時に、有人領域に於いては、変換手段131を介して意匠を凝らした照明として用いることができ、癒し空間を創出しながら空気循環殺菌が行える環境の向上と保全を両立したシステムとして幅広い活用を見込むことができる。
なお、上記の例では、紫外線発光手段101が略鉛直面に設けられる場合を例に説明したが、傾斜面や水平面に設ける構成であってもよい。つまり、空気の流入口IN,流出口OUTとなる開口は、紫外線照射装置100の鉛直方向Vの上下に限らず、左右に設けられていてもよい。紫外線発光手段101を水平面に設ける場合、空間S内の空気の取り込みおよび殺菌後の空気の排出を促す気流制御手段(サーキュレータなど)を設けてもよい。
尚、本発明の紫外線照射装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。