つぎに、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による固体酸化物形燃料電池装置を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体酸化物形燃料電池装置(SOFC)を示す全体構成図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態による固体酸化物形燃料電池装置(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材7を介して金属製のモジュール容器8(以下では適宜「モジュールケース」と呼ぶ。)が内蔵されている。この密閉空間であるモジュールケース8の下方部分である発電室10には、燃料ガスと酸化剤ガス(以下では適宜「発電用空気」又は「空気」と呼ぶ。)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。この燃料電池セル集合体12は、8個の燃料電池セルスタック14(詳細は図11で後述する)を備え、この燃料電池セルスタック14は、各々が燃料電池セルを含む、16本の燃料電池セルユニット16(詳細は図12で後述する)から構成されている。この例では、燃料電池セル集合体12は、128本の燃料電池セルユニット16を有する。なお、ハウジング6は必須ではなく、断熱材7を保持するようなフレームを用いてもよい。燃料電池セル集合体12は、複数の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
燃料電池モジュール2のモジュールケース8の発電室10の上方には、燃焼部としての燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガス(オフガス)と残余の空気とが燃焼し、排気ガス(言い換えると燃焼ガス)を生成するようになっている。さらに、モジュールケース8は断熱材7により覆われており、燃料電池モジュール2内部の熱が、外気へ発散するのを抑制している。また、この燃焼室18の上方には、原燃料ガス(原料ガス)を改質する改質器120が配置され、残余ガスの燃焼熱によって改質器120を改質反応が可能な温度となるように加熱している。
さらに、ハウジング6内においてモジュールケース8の上方には、蒸発器140が断熱材7内に設けられている。蒸発器140は、供給された水と排気ガスとの間で熱交換を行うことによって、水を蒸発させて水蒸気を生成し、この水蒸気と原燃料ガスとの混合ガス(以下では「燃料ガス」と呼ぶこともある。)をモジュールケース8内の改質器120に供給する。
つぎに、補機ユニット4は、燃料電池モジュール2からの排気中に含まれる水分を結露させた水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26から供給される水の流量を調整する水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料を遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)と、電源喪失時において、燃料流量調整ユニット38から流出する燃料ガスを遮断するバルブ39を備えている。さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器120に供給される改質用空気を加熱する第1ヒータ46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒータ48とを備えている。これらの第1ヒータ46と第2ヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
なお、本実施形態では、装置の起動時に改質器120内において、部分酸化改質反応(POX)のみが生じるPOX工程から、部分酸化改質反応(POX)と水蒸気改質反応(SR)が混在したオートサーマル改質反応(ATR)が生じるATR工程を経て、水蒸気改質反応のみが生じるSR工程が行われるように構成してもよいし、POX工程を省略してATR工程からSR工程に移行されるように構成してもよいし、POX工程及びATR工程を省略してSR工程のみが行われるように構成してもよい。なお、SR工程のみが行われる構成では、改質用空気流量調整ユニット44は不要である。
つぎに、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
つぎに、図2〜図4を参照して、本発明の一実施形態による固体酸化物形燃料電池装置の燃料電池モジュールの構造について説明する。
図2は、本発明の一実施形態による固体酸化物形燃料電池装置の燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図3は、図2のIII−III線に沿った断面図であり、図4は、モジュールケース及び空気通路カバーの分解斜視図である。なお、図2、3ではハウジングは省略している。
図2及び図3に示すように、燃料電池モジュール2は、断熱材7で覆われたモジュールケース8の内部に設けられた燃料電池セル集合体12及び改質器120を有すると共に、モジュールケース8の外部で且つ断熱材7内に設けられた蒸発器140を有する。
まず、モジュールケース8は、図4に示すように、略矩形の天板8a,底板8c,これらの長手方向(図2の左右方向)に延びる辺同士を連結する対向する一対の側板8bからなる筒状体と、この筒状体の長手方向の両端部の2つの対向する開口部を塞ぎ、天板8a及び底板8cの幅方向(図3の左右方向)に延びる辺同士を連結する閉鎖側板8d,8eからなる。
モジュールケース8は、空気通路カバー160によって天板8a及び側板8bが覆われている。空気通路カバー160は、天板160aと、対向する一対の側板160bとを有する。天板160aの略中央部分には、排気管171を貫通させるための開口部167(図4参照)が設けられている。また、天板160aの閉鎖側板8d側の部分には、発電用空気導入管74が接続される開口部168(図4参照)が設けられている。天板160aと天板8aとの間、及び、側板160bと側板8bとの間は、所定の距離だけ離間した状態となっている。これにより、モジュールケース8の外側と断熱材7との間、具体的にはモジュールケース8の天板8a及び側板8bと、空気通路カバー160の天板160a及び側板160bとの間には、酸化剤ガス供給通路としての空気通路161a,161bが形成されている(図3参照)。
モジュールケース8の側板8bの下部には、複数の貫通孔である吹出口8fが設けられている(図4参照)。発電用空気は、空気通路カバー160の天板160aのうち、モジュールケース8の閉鎖側板8d側の略中央部に設けられた発電用空気導入管74から空気通路161a内に供給される(図2参照)。そして、発電用空気は、空気通路161a,161bを通って、吹出口8fから燃料電池セル集合体12に向けて発電室10内に噴射される(図3、図4参照)。
また、空気通路161a,161bの内部には、熱交換促進部材としてのプレートフィン162,163が設けられている(図3参照)。プレートフィン162は、モジュールケース8の天板8aと空気通路カバー160の天板160aの間で長手方向及び幅方向に延びるように水平方向に設けられ、プレートフィン163は、モジュールケース8の側板8bと空気通路カバー160の側板160bとの間であって、且つ、燃料電池セルユニット16よりも上方の位置に長手方向及び鉛直方向に延びるように設けられている。
空気通路161a,161bを流れる発電用空気は、特にプレートフィン162,163を通過する際に、これらプレートフィン162,163の内側のモジュールケース8内(具体的には天板8a,側板8bに沿って設けられた排気通路)を通過する排気ガスとの間で熱交換を行い、加熱されることとなる。このようなことから、空気通路161a,161bにおいてプレートフィン162,163が設けられた部分は、熱交換器(熱交換部)として機能する。
つぎに、蒸発器140は、モジュールケース8の天板8a上で水平方向に延びるように固定されている。そして、蒸発器140は、長手方向(図2の左右方向)の一側端側に、に排気管171及び混合ガス供給管112が接続され、長手方向の他側端側に排気ガス排出管82が接続され、排気管171により支持されている。また、蒸発器140とモジュールケース8との間には、これらの隙間を埋めるように断熱材7の一部分が配置されている(図2及び図3参照)。
具体的には、蒸発器140は、長手方向(図2の左右方向)の一側端側に、水及び原燃料ガス(改質用空気を含めてもよい)を供給する水供給配管62及び原料供給配管63と、排気ガスを排出するための排気ガス排出管82(図2参照)とが連結され、長手方向の他側端側に、排気管171の上端部が連結されている。排気管171は、空気通路カバー160の天板160aに形成された開口部167を貫通して下方へ延び、モジュールケース8の天板8a上に形成された排気口111に連結されている。排気口111は、モジュールケース8内の燃焼室18で生成された排気ガスをモジュールケース8の外へ排出する開口部であり、モジュールケース8の上面視略矩形の天板8aのほぼ中央部に形成されている。
図5は、図2に示す固体電解質形燃料電池装置の蒸発器を拡大断面図である。また、図6は、図2に示す固体電解質形燃料電池装置の蒸発器の天板及び燃焼触媒器を省略した状態の斜視図である。なお、図6には、水(水蒸気)及び燃料(原料ガス)の流れをそれぞれ実線及び一点鎖線で示す。
蒸発器140は、上面視で略矩形の箱状の蒸発器ケース141(図2、図3)を有している。この蒸発器ケース141は、第1の容器143と、第1の容器の143の下方に重ね合わされた第2の容器144と、第1の容器143の上部を塞ぐ天板142とにより構成されている。
天板142は、平板状の金属部材からなる。天板142の一方の端部の幅方向中央には原料供給配管63を接続するための開口部が形成され、一方の端部の幅方向一側部には水供給配管62を接続するための開口部が形成されている。
図5及び図6に示すように、第1の容器143は、底面143A1、143A2と、底面143A1、143A2の外周縁から上方に延びる側壁143Bと、側壁143Bの上端から水平方向外方に延びる鍔部143Cと、隔壁147と、を備える。
第1の容器143の底面143A1、143A2は、隔壁147により水供給配管62及び原料供給配管63側の第1の底面143A1と、混合ガス供給管112側の第2の底面143A2とに分割されている。第1の底面143A1は、後述するように蒸発室150の底面であり、排気ガスと水供給配管62から供給された水との間で熱交換するための蒸発面として機能する。第1の容器143の第1の底面143A1の上面は、表面粗さRaが1.5μm以上の粗面として形成されている。これにより、第1の容器143の底面143A1は親水性が高くなり、底面143A1上に供給された水は広範囲に拡がる。
第2の底面143A2の中央には混合室151の排出口として開口部が形成されており、この開口部には混合ガス供給管112の上端が接続されている。この混合ガス供給管112は、排気管171の内部を通過するように配置されており、一端が第1の容器143に形成された開口部に連結され、他端が改質器120の天面に形成された混合ガス供給口120aに連結されている。混合ガス供給管112は、排気管171内を通過してモジュールケース8内まで鉛直下方に延び、そこで略90°屈曲されて天板8aに沿って水平方向に延びた後、下方へ略90°屈曲されて改質器120に連結されている。
隔壁147は、第1の容器143の長手方向に延びる側壁143Bの間を短手方向に延びており、金属材料が上方に向けて突出することにより形成されている。隔壁147は、第1及び第2の底面143A1、143A2の縁から上方に平行に延びる一対の側壁147Bと、一対の側壁147Bの上端の間を結ぶ上面147Cと、を備える。また、隔壁147の上部の短手方向(隔壁147の延びる方向)の中央には凹部147Aが形成されている。
図5及び図6に示すように、隔壁147の上面147Cは平坦面として形成されており、鍔部143Cと面一に形成されている。また、凹部147Aの幅は、第1の底面143A1側が第2の底面143A2側よりも広くなっており、第2の底面143A2側に向かうにつれて徐々に狭くなっている。また、隔壁147の内側には、一対の側壁147Bと上面147Cとにより囲まれて空間147Dが形成されており、この空間147Dは下方に開口している。
第1の容器143は一枚の金属部材をプレス成形して構成されており、底面143A1、143A2と、側壁143Bと、鍔部143Cと、隔壁147とはひと続きの一体成型部材として構成されている。
第1の容器143と天板142とは、天板142の下面と、鍔部143Cの上面及び隔壁147の上面147Cが当接した状態で接合されている。天板142と、第1の容器143の第1の底面143A1、側壁143B、及び隔壁147とにより蒸発室150が区画されている。また、天板142と、第1の容器143の第2の底面143A2、側壁143B、及び隔壁147とにより混合室151が区画されている。そして、隔壁147の凹部147Aと天板142とにより区画され、蒸発器140の幅方向中央の上部に位置する連通路により、蒸発室150と混合室151とが連通している。
図7は、蒸発室の下流側端部(混合室側端部)を拡大して示す図である。同図に示すように、蒸発室150の下流側端部において、天板142には蒸発室150の幅方向に延びるように、断面L字形の漏水抑制部材190が蒸発室150の略全幅にわたって設けられている。漏水抑制部材190は天板142から下方に延びており、漏水抑制部材190の下縁と第1の容器143の第1の底面143A1との間に横方向に延びる隙間が形成されている。この漏水抑制部材190により、蒸発室150内は上流側の充填部192と、下流側の漏水抑制部191とに区画されている。充填部192の蒸発面として機能する第1の底面143A1の表面積は、漏水抑制部191の第1の底面143A1の表面積よりも広くなっている。
充填部192内には、複数の粒状の伝熱部材170が充填されている。本実施形態では、伝熱部材170として、粒径が1mm以上、かつ、5mm以下である球状のアルミナボールを用いている。なお、アルミナボールに代えて、セラミックビーズや、ジルコニアボールなどを用いてもよい。漏水抑制部材190は、伝熱部材170を充填部192内に保持するとともに、後述するように充填部192内の水を漏水抑制部191へ誘導する水誘導手段として機能する。
漏水抑制部191には、伝熱部材170が充填されていない。漏水抑制部191の入口191Aは、漏水抑制部191の底面を構成する第1の容器143の第1の底面143A1と、水誘導手段としての漏水抑制部材190の下端との間に形成されている。漏水抑制部191の入口191Aの高さは、伝熱部材170の粒径よりも小さくなっている。漏水抑制部191の出口である隔壁147の凹部147Aは、漏水抑制部191の一方の側壁である隔壁147の上方に位置している。
蒸発室150の第1の底面143A1及び側面には、粗面処理が施されている。粗面処理の方法としては、ブラスト処理や、エッジング、凹凸パターンをプレス転写する方法を用いることができる。この粗面処理は、少なくとも漏水抑制部191の内壁面に施されていることが好ましい。
混合室151には、仕切り部材152が配置されている。仕切り部材152は、同一断面で幅方向に延びる耐熱性を有する金属材料で形成された部材である。仕切り部材152は、上面152Aと、上面152Aの両側部から下方に平行に延びる一対の側壁部152Bと、一対の側壁部152Bの縁から外側に延びる一対の基部152Cと、を備える。蒸発室150側の側壁部152Bの幅方向両側部には横長の開口部152Dが形成されている。
仕切り部材152の長手方向長さは、混合室151の幅とほぼ等しい。仕切り部材152は、第1の容器143の第2の底面143A2に形成された混合ガス供給管112が接続された開口部(排出口)を覆うように蒸発室150内に配置されている。仕切り部材152は、基部152Cの下面が第1の容器143の第2の底面143A2と当接した状態で、基部152Cと第2の底面143A2とがスポット溶接されることにより、第1の容器143に固定されている。仕切り部材152の一対の側壁部152Bの側部と、第1の容器143の内壁との間は溶接されておらず、隙間が形成されている。また、仕切り部材152の上面152Aは第1の容器143の鍔部143Cと略等しい高さとなっている。
仕切り部材152が設けられることにより、蒸発室150内の空間は、隔壁147と仕切り部材152との間の第1の空間153Aと、仕切り部材152の一対の側壁部152Bの間の第2の空間153Bと、仕切り部材152と第1の容器143の側壁143Bとの間の第3の空間153Cとに分割されている。第1の空間153Aと第2の空間153Bとは、蒸発室150側の側壁部152Bに形成された開口部152Dを通じて連通している。また、第3の空間153Cは、仕切り部材152の一対の側壁部152Bの両側部と第1の容器143の内壁との間の隙間を介して、第1の空間153A及び第2の空間153Bと連通している。この隙間の面積は側壁部152Bに形成された開口部152Dの面積に比べて非常に小さいため、第1の空間153Aから第3の空間153Cへの圧力損失は、第1の空間153Aから第2の空間153Bまで(特に、第2の底面143A2の底面に形成された開口部まで)の圧力損失よりも高くなっている。なお、後述するように、第2の空間153Bは水蒸気と原料ガスとを混合する混合流路として機能し、第3の空間153Cは突沸緩衝空間として機能する。
第2の容器144は、底面144Aと、底面144Aの外周縁から上方に延びる側壁144Bと、側壁144Bの上端から水平方向外方に延びる鍔部144Cと、を備える。第2の容器144の底面144Aには、排気管171の上端が接続される開口部と、排気ガス排出管82が接続される開口部とが形成されている。
第2の容器144は、第1の容器143に下方から重ね合わされている。重ね合わされた状態において、第2の容器144の鍔部144Cの上面は、第1の容器143の鍔部143Cの下面に当接している。また、第2の容器144の側壁144Bの上部は、第1の容器143の側壁143Bと当接している。
第1の容器143の底面143A1、143A2と、第2の容器144の底面144Aとの間には、排気管171から排気ガス排出管82まで蒸発器140の長手方向に延びる排気室154が形成されている。なお、この排気室154は、隔壁147内の空間147Dと連通している。
排気室154内には、熱交換促進部材180が設けられている。図8は、排気室内に設けられた熱交換促進部材を示す斜視図である。図8に示すように、熱交換促進部材180は、平坦な基部180Aと、基部180Aの排気管171側に立設された保持部180Bと、基部180Aの排気ガス排出管82側から斜め上方に延びる傾斜部180Cと、傾斜部180Cの上端から水平に延びる水平部180Dと、水平部180Dの排気ガス排出管82側から下方に延びる立設部180Eと、を備える。熱交換促進部材180は、基部180Aの下面と、立設部180Eの下端とが、排気室154を構成する筐体である第2の容器144の平坦な底面144Aの上面に当接した状態で配置されている。熱交換促進部材180は、一枚の金属部材をプレス成形して製造されており、一部材で形成されている。
保持部180Bには、上下方向に延びる複数のスリット180B1が形成されている。保持部180Bの上端部は、第1の容器143の隔壁147の混合室151側の側壁143Bに当接している。
排気室154の上流側には、第1の容器143の下面と、保持部180Bと、基部180Aと、傾斜部180Cと、により触媒充填空間としての第一の排気ガス流路182が形成されている。また、排気室154の天面を構成する第1の容器143の下面と、水平部180Dの間には、第一の排気ガス流路182に連続して第二の排気ガス流路183が形成されている。
第一の排気ガス流路182には、粒状の燃焼触媒182Aが充填されている。燃焼触媒182Aは、排気室154の天面を構成する第1の容器143の下面と、熱交換促進部材180の基部180Aとの間に、保持部180Bと傾斜部180Cとに挟まれて保持されている。
水平部180Dと第2の容器144の平坦な底面144Aとの間には、空気層181が形成されている。この空気層181は断熱層として機能する。第二の排気ガス流路183の高さは空気層181の高さに比べて小さい。
第二の排気ガス流路183は、第一の排気ガス流路182に比べて流路の高さが狭められており、この領域が蒸発室150内に供給された水と、排気室154を流通する排気ガスとの熱交換が促進される熱交換促進領域として機能する。第二の排気ガス流路183内には、熱交換促進手段としてのプレートフィン155が設けられている。
図9(A)は排気ガス流路内に設けられたプレートフィンを示す斜視図であり、(B)は蒸発器におけるプレートフィンの近傍を拡大して示す図である。
プレートフィン155は、一枚の金属製プレートを加工して製造されている。プレートフィン155は、板状の本体部155Aと、下方に突出する第1の突出部155Bと、上方に突出する第2の突出部155Cとを有する。
また、第1の突出部155Bは、それぞれ、斜め下方に向かって延びる一対の傾斜部155B1と、一対の傾斜部155B1の下端部の間を結ぶ連結部155B2とにより構成される。そして、本体部155Aの第1の突出部155Bの上方に当たる位置に第1の通過穴155B3が形成されている。また、第1の突出部155Bの連結部155B2の下面には、円柱状の突起部155B4が形成されている。なお、この突起部155B4の面積は、第1及び第2の突出部155B、155Cの連結部155B2、155C2の面積よりも小さい。
第2の突出部155Cは、それぞれ、斜め上方に向かって延びる一対の傾斜部155C1と、一対の傾斜部155C1の上端部の間を結ぶ連結部155C2とにより構成される。そして、本体部155Aの第2の突出部155Cの下方に当たる位置には、第2の通過穴155C3が形成されている。
プレートフィン155は、第1の突出部155Bの突起部155B4が熱交換促進部材180の水平部180Dと当接し、第2の突出部155Cの連結部155C2が第1の容器143の底面143A1と当接している。これにより、プレートフィン155は、第1の容器143の底面143A1と熱的に接続され、プレートフィン155の熱交換促進部材180の水平部180Dへの熱抵抗が、第1の容器143の底面143A1との熱抵抗よりも大きくなっている。
このように第二の排気ガス流路183内にプレートフィン155が配置されることにより、第二の排気ガス流路183はプレートフィン155の本体部155Aにより上部空間183Aと、下部空間183Bとに分割される。そして、プレートフィン155の本体部155Aに形成された第1の通過穴155B3及び第2の通過穴155C3を通じて、上部空間183Aと、下部空間183Bとの間で第二の排気ガス流路183を流れる排気ガスが流通することができる。
さらに、蒸発器140はヒータ157を備える。図6に示すように、矩形状の蒸発器140の三辺の外周に沿うように設けられており、両端部は蒸発室150側に向かって延在している。図5に示すように、ヒータ157は第1の容器143の側壁143Bと、第2の容器144の側壁144Bとが重なり合った第1の重なり部158Aに側方から当接している。さらに、ヒータ157は、第1の容器143の鍔部143Cと、第2の容器144の鍔部144Cと、天板142とが重なり合った第2の重なり部158Bに下方から当接している。なお、ヒータ157は蒸発器140の全周に沿うように設けてもよい。
図5及び図6に示すように、水供給配管62及び原料供給配管63は図5の右側から水平に延び、蒸発器140の蒸発室150側の側縁を跨いでいる。そして、水供給配管62及び原料供給配管63は下方に向かって屈曲し、天板142に形成された開口を挿通し、蒸発室150室内に開口している。なお、水供給配管62は、蒸発室150側の端部の幅方向中央に開口しており、原料供給配管63は蒸発室150側の端部の蒸発室150の幅方向一側に開口している。
排気ガス排出管82は、排気室154の下流端部の幅方向一側に接続されている。蒸発器140に接続された排気ガス排出管82は下方に向かって延びており、下端が燃焼触媒器200に接続されている。燃焼触媒器200は横方向に延びる円筒状の部材であり、内部に円柱状の燃焼触媒206が設けられている。排気ガス排出管82は燃焼触媒器200の一端部に接続されており、燃焼触媒器200の他端部には排気ガス放出管202が接続されている。排気ガス放出管202は水平方向に蒸発器140から離間する方向に水平に延びている。燃焼触媒器200は蒸発器140と同様に断熱材7の内部に配置されている。
図2に示すように蒸発器140は排気ガス排出管82が接続された側の端部が上面視において、モジュールケース8の縁より外方まで延在している。そして、燃焼触媒器200はこの蒸発器140のモジュールケース8の縁より外方まで延在している部分の直下に位置している。また、燃焼触媒器200は、改質器120よりも上方に位置している。そして、燃焼触媒器200の排気ガス排出口は改質器120よりも高い位置に設けられており、排気ガス排出口に接続された排気ガス放出管202は、改質器120よりも高い位置を水平方向に延びている。
このような蒸発器140では、排気管171から供給された排気ガスは排気室154を流れ、排気ガス排出管82へと排出される。そして、水供給配管62から蒸発室150に供給された水は、底面143A1上を拡がりながら流れる。そして、底面143A1を介して排気ガスと水との間で熱交換が行われ、水が蒸発して水蒸気が生成される。蒸発室150で発生した水蒸気は、原料供給配管63から供給された原料ガスとともに混合室151に流れこみ、水蒸気と燃料ガスとが混合されて、混合ガス供給管112へと排出される。
また、排気ガス排出管82から排出された排気ガスは、燃焼触媒器200に供給される。燃焼触媒器200に供給された排気ガスは、燃焼触媒206の内部流路を通り、一酸化炭素等の有害ガス(未燃燃料)が酸化され、排気ガス放出管202へと排出される。
つぎに、図2及び図3に示すように、改質器120は、燃焼室18の上方でモジュールケース8の長手方向に沿って水平方向に延びるように配置され、モジュールケース8の天板8aとの間に排気ガス誘導部材130を介して所定距離隔てられた状態で、天板8aに対して固定されている。改質器120は、上面視で外形略矩形であるが、中央部に貫通孔120bが形成された環状構造体であり、上側ケース121と下側ケース122とが接合された筐体を有している。この貫通孔120bは、天板8aに形成された排気口111と上面視で重なるように位置し、好ましくは、貫通孔120bの中央位置に排気口111が形成される。
改質器120の長手方向の一端側(モジュールケース8の閉鎖側板8e側)では、上側ケース121に設けられた混合ガス供給口120aに混合ガス供給管112が連結されており、他端側(閉鎖側板8d側)では、燃料ガス供給管64が下側ケース122に、脱硫器36まで延びる水添脱硫器用水素取出管65が上側ケース121にそれぞれ連結されている。したがって、改質器120は、混合ガス供給管112から混合ガス(つまり水蒸気が混合された原燃料ガス(改質用空気を含めてもよい))を受け取り、内部で混合ガスを改質し、燃料ガス供給管64及び水添脱硫器用水素取出管65から改質後のガス(即ち、燃料ガス)を排出するように構成されている。
改質器120は、その内部空間が2つの仕切り板123a,123bによって3つの空間に仕切られることにより、改質器120内に、混合ガス供給管112からの混合ガスを受入れる混合ガス受入部120Aと、混合ガスを改質するための改質触媒(図示せず)が充填された改質部120Bと、改質部120Bを通過したガスを排出するガス排出部120Cと、が形成されている(図2参照)。改質部120Bは、仕切り板123a,123bに挟まれた空間であり、この空間に改質触媒が保持されている。混合ガス及び改質後の燃料ガスは、仕切り板123a,123bに設けられた複数の連通孔(スリット)を通って移動可能となっている。また、改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。
混合ガス受入部120Aには、蒸発器140から混合ガス供給管112を介して供給された混合ガスが混合ガス供給口120aを通して噴出される。この混合ガスは、混合ガス受入部120A内で拡張されて噴出速度が低下し、仕切り板123aを通過して改質部120Bに供給される。
改質部120Bでは、低速で移動する混合ガスが改質触媒により燃料ガスに改質され、この燃料ガスが仕切り板123bを通過してガス排出部120Cに供給される。
ガス排出部120Cでは、燃料ガスが燃料ガス供給管64、及び、水添脱硫器用水素取出管65へ排出される。
燃料ガス供給通路としての燃料ガス供給管64は、モジュールケース8内を閉鎖側板8dに沿って下方へ延び、底板8c付近で略90°屈曲されて水平方向に延びて、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内へ入り、更にマニホールド66内で逆側の閉鎖側板8e付近まで水平方向に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、燃料ガスがマニホールド66内に供給される。このマニホールド66の上方には、燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セルユニット16内に供給される。また、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
排気ガス誘導部材130は、改質器120と天板8aとの間でモジュールケース8の長手方向に沿って水平方向に延びるように配置されている。排気ガス誘導部材130は、上下方向に所定距離だけ離間された下部誘導板131及び上部誘導板132と、これらの長手方向の両端辺が取り付けられる連結板133,134とを備えている(図2,図3参照)。上部誘導板132は、幅方向の両端部が下方に向けて折り曲げられ、下部誘導板131に連結されている。連結板133,134は、上端部が天板8aに連結され、下端部が改質器120に連結されており、これにより、排気ガス誘導部材130及び改質器120を天板8aに固定している。
下部誘導板131は、幅方向(図3の左右方向)の中央部が下方に向けて突出する凸状段部131aが形成されている。一方、上部誘導板132は、下部誘導板131と同様に、幅方向の中央部が下方に向けて凹状となるように凹部132aが形成されている。凸状段部131aと凹部132aは、上下方向で並行して長手方向に延びている。混合ガス供給管112は、モジュールケース8内でこの凹部132a内を水平方向に延びた後、閉鎖側板8e付近で下方に向けて屈曲し、上部誘導板132及び下部誘導板131を貫通して、改質器120に連結されている。
排気ガス誘導部材130は、上部誘導板132、下部誘導板131、連結板133,134によって、断熱層として機能する内部空間であるガス溜135が形成されている。このガス溜135は、燃焼室18と流体連通している。すなわち、上部誘導板132、下部誘導板131、連結板133,134は、所定の隙間を形成するように連結されており、気密的には連結されていない。ガス溜135には、運転中に燃焼室18から排気ガスが流入したり、停止時に外部から空気が流入したりすることが可能となっているが、総じてガス溜135の内外間のガスの移動は緩やかである。
上部誘導板132は、天板8aと所定の上下方向距離を隔てて配置されており、上部誘導板132と天板8aとの間には、長手方向及び幅方向に沿って水平方向に延びる排気通路172が形成されている。この排気通路172は、モジュールケース8の天板8aを挟んで空気通路161aと並設されており、排気通路172内には、空気通路161a,161b内のプレートフィン162,163と同様なプレートフィン175が配置されている。このプレートフィン175は、プレートフィン162と上面視で略同一箇所に設けられており、天板8aを挟んで上下方向に対向している。空気通路161a及び排気通路172のうち、プレートフィン162,175が設けられた部分において、空気通路161aを流れる発電用空気と排気通路172を流れる排気ガスとの間で効率的な熱交換が行われて、排気ガスの熱により発電用空気が昇温されることとなる。
また、改質器120は、モジュールケース8の側板8bと所定の水平方向距離を隔てて配置されており、改質器120と側板8bとの間には、排気ガスを下方から上方へ通過させる排気通路173が形成されている。また、排気ガス誘導部材130も側板8bと所定の水平方向距離を隔てて配置されており、排気通路173は、排気ガス誘導部材130と側板8bとの間の通路を含んで天板8aまで延びている。排気通路173は、天板8aと側板8bとの角部に位置する排気ガス導入口172aで排気通路172と連通している。この排気ガス導入口172aは、モジュールケース8内で長手方向に延びている。
さらに、下部誘導板131は、改質器120の上側ケース121の天面から所定の上下方向距離を隔てて配置されており、下部誘導板131と上側ケース121との間、及び、改質器120の貫通孔120bは、貫通孔120bを下方から上方へ向けて通過した排気ガスを通過させる排気通路174を形成している。この排気通路174は、改質器120の上方で排気通路173と合流する。
つぎに、図10を参照して、燃料電池セルユニット16について説明する。
図10は、本発明の一実施形態による固体酸化物形燃料電池の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
図10に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の両端部にそれぞれ接続されたキャップである内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
燃料電池セル84の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路細管98が形成されている。
この燃料ガス流路細管98は、内側電極端子86の中心から燃料電池セル84の軸線方向に延びるように設けられた細長い細管である。このため、マニホールド66(図2参照)から、下側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98を通って燃料ガス流路88に流入する燃料ガスの流れには、所定の圧力損失が発生する。従って、下側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98は、流入側流路抵抗部として作用し、その流路抵抗は所定の値となるように設定されている。また、燃料ガス流路88から、上側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98を通って燃焼室18(図2参照)に流出する燃料ガスの流れにも所定の圧力損失が発生する。従って、上側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98は、流出側流路抵抗部として作用し、その流路抵抗は所定の値となるように設定されている。
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
つぎに、図11を参照して、燃料電池セルスタック14について説明する。
図11は、本発明の一実施形態による固体酸化物形燃料電池の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図11に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16は、8本ずつ2列に並べて配置されている。
各燃料電池セルユニット16は、下端側がセラミック製の長方形の下支持板68(図2参照)により支持され、上端側は、両端部の燃料電池セルユニット16が4本ずつ、概ね正方形の2枚の上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴がそれぞれ形成されている。
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極層92の外周面と電気的に接続される空気極用接続部102bとを接続するように一体的に形成されている。また、各燃料電池セルユニット16の外側電極層92(空気極)の外表面全体には、空気極側の電極として、銀製の薄膜が形成されている。この薄膜の表面に空気極用接続部102bが接触することにより、集電体102は空気極全体と電気的に接続される。
さらに、燃料電池セルスタック14の端(図6では左端の奥側)に位置する燃料電池セルユニット16の空気極には、2つの外部端子104がそれぞれ接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の内側電極端子86に接続され、上述したように、128本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
つぎに、図12及び図13を参照して、本発明の一実施形態による固体酸化物形燃料電池装置の燃料電池モジュール内のガスの流れについて説明する。
図12は、図2と同様の、本発明の一実施形態による固体酸化物形燃料電池装置の燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図13は、図3と同様の、図2のIII−III線に沿った断面図である。なお、図12及び図13は、それぞれ、図2及び図3中にガスの流れを示す矢印を新たに付加した図である。図中、実線矢印は燃料ガスの流れ、破線矢印は発電用空気の流れ、一点鎖線矢印は排気ガスの流れを示す。
図12及び図13に示すように、水及び原燃料ガス(原料ガス)は、蒸発器140の長手方向の一端側に連結された水供給配管62及び原料供給配管63から蒸発器140の上層に設けられた蒸発室150内に供給される。蒸発室150に供給された水は、第1の容器143の底面143A1の上面が粗面として形成されているため、広範囲に拡がる。また、第1の容器143の底面143A1の上面には、連続溝156が形成されているため、広範囲に拡がる。このようにして広範囲に広がった水は、蒸発器140の下層に設けられた排気室154を流れる排気ガスにより加熱され水蒸気となる。この際、蒸発室150内にはアルミナボール(伝熱部材)が充填されているため、排気室154からの熱がアルミナボールを介して水に伝達される。この水蒸気と、原料供給配管63から供給された原燃料ガスとが、蒸発室150内を下流方向に流れて行く。
ここで、特に、起動時や、負荷追従制御中などの蒸発器の熱状態が不安定である時には、蒸発室150内で水を十分に蒸発させることができない。このように蒸発せずに残った水は、毛細管現象により伝熱部材170の間の隙間を進行してしまう。図14(A)は、従来の漏水抑制部が設けられていない蒸発室における水の流れを示す鉛直断面図であり、同図(B)は、本実施形態の漏水抑制部が設けられた蒸発室における水の流れを示す鉛直断面図である。図14(A)に示すように、漏水抑制部が設けられていない場合には、水が蒸発室250内に充填された伝熱部材170の間の隙間を毛細管現象により進行し、隔壁247の凹部247Aに入り込んでしまう。このように、隔壁247の凹部247Aに入り込んだ水は、蒸発室250の下流側で急激に蒸発してしまう突沸現象を引き起こしてしまう。
これに対して、本実施形態では、図14(B)に示すように、充填部192内で蒸発せずに水が残り、この水が伝熱部材170の隙間を毛細管現象により進行しても、漏水抑制部材190に到達すると、この漏水抑制部材190の表面に沿って下方に誘導される。そして、下方に誘導された水は、入口191Aから漏水抑制部191内に流れこむ。漏水抑制部191内には伝熱部材が充填されていないため、漏水抑制部191に流れ込んだ水が毛細管現象により進行することはない。このため、漏水抑制部191に流れこんだ水が隔壁147の凹部147Aに入り込み、蒸発室150の下流側に水が流れこむことを防止できる。
図15は、蒸発室及び混合室内における水蒸気と原燃料ガスとの流れを示す斜視図である。蒸発室150内で発生した水蒸気と原燃料ガスとは、隔壁147の中央に形成された凹部147A内を通過して混合室151へと流入する。この際、凹部147Aが混合室151に向けて幅が狭くなっているため、凹部147Aを通過する際に水蒸気と原燃料ガスとが、より均一に混合される。なお、この際、隔壁147の内側の空間147Dに排気ガスが入り込むため、水蒸気と原燃料ガスが隔壁147によって加熱される。そして、凹部147Aから混合室151の第1の空間153A内に流入した水蒸気と原燃料ガスとは、幅方向両側に分かれて流れる。ここで、上述したように仕切り部材152と混合室151の内壁との間を介した第1の空間153Aから第3の空間153Cへの圧力損失は、開口部152Dを介した第1の空間153Aから第2の底面143A2の底面に形成された開口部までの圧力損失よりも高くなっているため、第1の空間153A内に流れこんだ水蒸気と原燃料ガスとは、図15に実線で示すように、仕切り部材152の開口部152Dを通って第2の空間153B内に流れこむ。水蒸気と原燃料ガスとは、このように第1の空間153A及び第2の空間153Bを流れる間に混合されて、混合ガス供給管112へと排出される。
なお、蒸発室150内において突沸現象が生じた場合には、蒸発室150内に急激に水蒸気が発生し、第1の空間153A内に流れる。そして、このように突沸現象が生じた場合には、一時的に蒸発室150及び混合室151の第1の空間153A内の気圧が高くなる。このように第1の空間153Aの気圧が高くなると、第1の空間153A内の水蒸気は仕切り部材152の側部と第1の容器143の内壁との間の隙間を介して第3の空間153Cへと流れこむ。これにより、突沸現象が生じた場合であっても、蒸発室150及び混合室151内の圧力の急激な上昇を抑えることができる。
また、図16は、第1の重なり部158A及び第2の重なり部158Bの近傍を拡大して示す断面図である。同図に示すように、蒸発器140の第1の重なり部158A及び第2の重なり部158Bと当接するように、ヒータ157が配置されている。このため、ヒータ157から熱が図中矢印で示すように、第1の重なり部158A及び第2の重なり部158Bを介して効果的に第1の容器143の底面143A2、第2の容器144の底面144A、及び天板142を加熱する。これにより、蒸発室150及び混合室151内の水蒸気及び原料ガスが加熱される。また、排気室154内の排気ガスも加熱され、この熱が第1の容器143の底面143A2を介して水蒸気及び原料ガスに伝達されるため、より効率良く、水蒸気及び原料ガスを加熱することができる。
混合ガス供給管112へと排出た混合ガス(燃料ガス)は、混合ガス供給管112を通って、モジュールケース8内の改質器120に供給される。混合ガス供給管112は、排気室154,排気管171,及び排気通路172の近傍を順に通過しているため、これらの通路を流れる排気ガスにより、混合ガス供給管112内の混合ガスは更に加熱される。
混合ガスは、改質器120内の混合ガス受入部120A内に流入し、ここから仕切り板123aを通過して改質部120Bに流入する。混合ガスは、改質部120Bにおいて改質されて燃料ガスとなる。こうして生成された燃料ガスは、仕切り板123bを通過して、ガス排出部120Cに流入する。
さらに、燃料ガスは、ガス排出部120Cから燃料ガス供給管64と水添脱硫器用水素取出管65とに分岐する。そして、燃料ガス供給管64に流入した燃料ガスは、燃料ガス供給管64の水平部64aに設けられた燃料供給孔64bからマニホールド66内に供給され、マニホールド66から各燃料電池セルユニット16内に供給される。
また、図12及び図13に示すように、発電用空気は、発電用空気導入管74から空気通路161aに供給される。発電用空気は、空気通路161a,161b内において、プレートフィン162,163を通過する際に、これらプレートフィン162,163の下部のモジュールケース8内に形成された排気通路172,173を通過する排気ガスとの間で効率的な熱交換を行い、加熱されることとなる。特に、排気通路172内には、空気通路161aのプレートフィン162に対応してプレートフィン175が設けられているので、発電用空気は、プレートフィン162とプレートフィン175とを介して、排気ガスとより効率的な熱交換を行う。この後、発電用空気は、モジュールケース8の側板8bの下部に設けられた複数の吹出口8fから燃料電池セル集合体12に向けて発電室10内に噴射される。
なお、本実施形態では、燃料電池セル集合体12の側方部位には排気通路が形成されていないため、この部位において発電用空気と排気ガスとの間の熱交換は抑制される。したがって、燃料電池セル集合体12の側方部位において、空気通路161b内の発電用空気に上下方向の温度勾配が生じ難くなっている。
また、発電室10内で発電に利用されなかった燃料ガスは、図12に示すように、燃焼室18で燃焼されて排気ガス(燃焼ガス)となり、モジュールケース8内を上昇していく。具体的には、排気ガスは、排気通路173と排気通路174とに分岐して、改質器120の外側面とモジュールケース8の側板8bとの間、及び、改質器120の貫通孔120bから改質器120と排気ガス誘導部材130との間をそれぞれ通過する。このとき、排気通路174を通過する排気ガスは、改質器120の貫通孔120bの上方に配置された凸状段部131aによって幅方向に二分され、排気ガス誘導部材130の下部に留まることなく排気通路173に向けて誘導され、排気通路173を流れる排気ガスに素早く合流される。
その後、排気ガスは、排気ガス導入口172aから排気通路172に流入する。排気通路172内では、排気ガスは、排気通路172を水平方向に流れていき、モジュールケース8の天板8aの中央に形成された排気口111から流出する。
なお、排気ガスが排気通路173を上方へ流れていく際に、空気通路161b内に設けられたプレートフィン163を介して、発電用空気と排気ガスとの間で熱交換が行われる。また、排気ガスが排気通路172を水平方向に流れていく際に、排気通路172内に設けられたプレートフィン175と、このプレートフィン175に対応して空気通路161a内に設けられたプレートフィン162とを介して、発電用空気と排気ガスとの間で効率的な熱交換が行われる。このようにして、排気ガスの熱により発電用空気が昇温される。
図17(A)は、本実施形態の固体酸化物形燃料電池装置における蒸発器の排気室内の排気ガスの流れを示す鉛直断面図である。図17(B)は、本発明の別の実施形態である傾斜面を有していない熱交換促進部材が設けられた蒸発器の排気室内の排気ガスの流れを示す鉛直断面図である。図17(C)は、従来技術である空気層が設けられていない蒸発器の排気室内の排気ガスの流れを示す鉛直断面図である。
図17(A)に示すように、排気口111から流出した排気ガスは、モジュールケース8の外部に設けられた排気管171を通過して蒸発器140の排気室154に流入する。排気室154に流入した排気ガスは、熱交換促進部材180の保持部180Bに形成されたスリット180B1を通過して、第一の排気ガス流路182に入り込む。第一の排気ガス流路182を排気ガスが流れると、第一の排気ガス流路182を流れる排気ガスに含まれる一酸化炭素などの未燃焼ガス(有害ガス)が燃焼触媒182Aと接触し、酸化される。そして、第一の排気ガス流路182を流れる排気ガスは、傾斜部180Cに沿って流れ、スムーズに第二の排気ガス流路183に流れこむ。第二の排気ガス流路183は第一の排気ガス流路182よりも高さが狭められているため、第二の排気ガス流路183を流れる排気ガスは高速で第二の排気ガス流路183を流れる。そして、第二の排気ガス流路183には、プレートフィン155が設けられているため、効率良く排気ガスの熱が蒸発室150内の水に伝えられる。なお、燃焼触媒182Aは未燃焼ガスと接触すると発熱する。この熱は、第1の容器143の第1の底面143Aや、熱交換促進部材180を介して第二の排気ガス流路183に伝わり、蒸発室150内の水を加熱することができる。
ここで、図17(C)に示すように、従来は排気ガス流路の下方に空気層が設けられていなかった。このため、排気ガス流路383を流れる排気ガスの熱が蒸発器を構成する筐体300を介して蒸発室の外部に放熱されてしまう。これに対して、本実施形態によれば、第二の排気ガス流路183の下方に空気層181が設けられているため、排気ガスの熱が外部へ放熱されるのを防止できる。
また、図17(B)に示すように、熱交換促進部材280の基部280Aと水平部280Dとの間が鉛直面280Cで形成されている場合には、鉛直面280Cと基部280Aとの角部の近傍のA部には排気ガスが到達しにくい。このため、鉛直面280Cと基部280Aとの角部の燃焼触媒を有効に活用することができない。これに対して、図17(A)に示す実施形態によれば、基部180Aと水平部180Dとの間に傾斜部180Cが設けられているため、第一の排気ガス流路182内の全ての燃焼触媒を有効に活用することができる。
また、排気室154を流れる排気ガスは、ヒータ157により加熱される。このヒータ157からの熱は、蒸発器140及び排気室154を介して燃焼触媒器200に伝達される。さらに、排気ガスは排気室154内でヒータ157により加熱され、加熱された排気ガスが燃焼触媒器200に流入する。このようにして、ヒータ157の熱が間接的に燃焼触媒器200に伝達され、燃焼触媒206を加熱することができる。
そして、排気室154を通過した排気ガスは、排気ガス排出管82に排出され、燃焼触媒器200に流入する。燃焼触媒器200に流入した排気ガスは、燃焼触媒206の貫通孔206Aを通過する。これにより排気ガスに含まれる一酸化炭素などの未燃焼ガス(有害ガス)が触媒と接触し、酸化される。そして、燃焼触媒器200を流通した排気ガスは排気ガス放出管202に排出される。
なお、上記実施形態では、漏水抑制部材190と、天板142とを別体として設けているが、本発明はこれに限られない。図18は、漏水抑制部材と天板とを一体とした構成の蒸発室の構成を示す鉛直断面図である。同図に示すように、本実施形態では、漏水抑制部材290は天板242から下方に延びるように一体に設けられている。このような構成によっても、蒸発室150を上流側の充填部192と漏水抑制部191とに分割することができる。
上記の実施形態によれば、以下の効果が奏される。
上記の実施形態によれば、供給された水が毛細管現象により伝熱部材192Aが充填された充填部192を蒸発することなく通過したとしても、漏水抑制部191には伝熱部材が充填されていないため、漏水抑制部191では毛細管現象による水の移動が起こらない。このため、漏水抑制部191により蒸発室150外への漏水が抑制されるため、水を確実に蒸発室150内で蒸発させ、突沸の発生を抑制することができる。
また、上記の実施形態によれば、水蒸気の出口である凹部147Aが漏水抑制部191の側壁上方に設けられているため、漏水抑制部191に到達した水が出口に向かうことを防止し、より確実に蒸発室150の下流に水が漏水するのを防止できる。
また、蒸発室150は熱を奪う要因となるため、モジュールケース8内の熱安定のためには、蒸発室150をモジュールケース8の外部に設けることが好ましい。しかしながら、蒸発室150をモジュールケース8の外部に設けると、排気ガスの熱量が低下してしまうため、より毛細管現象による蒸発室150の下流への漏水が起こりやすい。これに対して、上記の実施形態によれば、蒸発室150をモジュールケース8の外部に設けたとしても、漏水抑制部191により蒸発室150の下流への漏水を抑制することができる。これにより、蒸発室150の下流への漏水の抑制をしつつ、モジュールケース8内の熱安定を実現することができる。
また、上記の実施形態によれば、充填部192は、漏水抑制部191よりも蒸発面の表面積が広く形成されており、さらに、充填部192に伝熱部材192Aをより多く充填することができるため、充填部192での蒸発をより促進することができる。また、充填部192が広くなるため、水供給配管62から漏水抑制部191までの距離が大きくなり、漏水抑制部191まで到達するまでにより確実に水を蒸発させることができる。
また、上記の実施形態によれば、毛細管現象により伝熱部材192Aの間を通過した水は、漏水抑制部材190により確実に漏水抑制部191に誘導される。これにより、より確実に水の蒸発室150の下流への漏水を防止できるとともに、伝熱部材192Aの保持を実現できる。
また、上記の実施形態では、漏水抑制部材190は蒸発室150の天板142から下方に延びており、漏水抑制部191の入口191Aは、漏水抑制部191の底面と、漏水抑制部材190との間に形成されている。これにより、漏水抑制部材190まで到達した水は、漏水抑制部材190に沿って漏水抑制部191の底面に誘導され、より蒸発が促進される。また、漏水抑制部191の入口191Aが底部に形成され、出口である凹部147Aが上方に設けられているため、より確実に水の蒸発室150の下流への漏水を防止できる。
また、上記の実施形態によれば、漏水抑制部191の入口191Aの高さは、伝熱部材192Aの粒径よりも小さいため、充填部192に伝熱部材192Aを保持しつつ、漏水抑制部191に水を通過させることができる。
また、上記の実施形態では、伝熱部材192Aの粒径は、1mm以上、かつ、5mm以下である。伝熱部材192Aの粒径が1mm未満であると、充填部192の圧力損失が過大になり、スムーズな原燃料ガスの流通が妨げられる。また、伝熱部材192Aの粒径が5mmを超えると、伝熱部材192Aの熱容量が大きくなりすぎてしまい、効率のよい蒸発が妨げられる。これに対して、上記の実施形態によれば、充填部192の圧力損失が過大になることなく、効率のよい蒸発を実現できる。
また、上記の実施形態では、蒸発室150内における少なくとも漏水抑制部191の内壁面には、粗面処理が施されている。これにより、蒸発室150内における水との接触面積が大きくなるため、より効率良く水を蒸発させることができ、水の蒸発室150の下流への漏水を防止できる。
また、上記の実施形態では、水誘導手段としての漏水抑制部材190は、蒸発室150の天板142と同一部材で一体形成されている。上記実施形態によれば、蒸発室150で水誘導手段を構成することができるため、別途部材を用意する必要がなくなる。