しかしながら、上記従来品は、仮止め状態のとき、第1部材及び第2部材からなるブレース支持金具が連結ボルトを中心に回転するため、作業者が比較的低い位置でブレースボルトの下端近傍位置を保持したままでブレースボルトの上端部分を第1部材と第2部材との間に差し込もうとすると、ブレース支持金具が姿勢変化してしまい、ブレースボルトの上端部分を差し込むことが難しい。そのため、作業者は、ブレース連結金具が取り付けられている高所位置まで登り、一方の手で第1部材と第2部材との間隔を広げ、他方の手でブレースボルトの上端部分を保持してブレースボルトを第1部材と第2部材との間に差し込む必要があり、ブレースボルトを仮止めする際の作業効率が低下するという問題がある。
また、上記従来品は、ブレース支持金具が連結ボルトを中心に回転変位可能な構成であるため、たとえ連結ボルトがきつく締め付けられているとしても、大規模地震発生時に過大な荷重がブレース支持金具に作用すると、ブレース支持金具が連結ボルトを中心に回転してしまう可能性がある。また、小規模地震が繰り返し発生した場合にも、連結ボルトが緩んでしまい、ブレース支持金具が容易に回転変位してしまう可能性がある。地震発生時にブレース支持金具が連結ボルトを中心に回転してしまうと、斜め補強材としての強度が低下するため、吊りボルトの変位量が大きくなり、吊りボルトの振れ止め効果を有効に発揮することができなくなるという問題がある。
また一般に、ブレースボルトの配設角度は、45°±15°の角度範囲内に収めることにより、斜め補強材として十分な強度を確保できることが知られている。しかし、上記従来品では、ブレース支持金具が連結ボルトを中心に360°回転可能であるため、ブレースボルトの配設角度を規制することができない。そのため、作業者が誤って上記角度範囲から外れた角度でブレースボルトを配置し、ブレース支持金具に連結してしまう可能性がある。そのような事態が発生すると、ブレースボルトの連結作業をやり直さなければならず、作業効率を低下させる要因となる。
さらに、上記従来品を用いて施工する際には、予めブレース連結金具の設置態様を図面化して施工業者に提出しなければならないことがある。そのような場合、上記従来品のようにブレース支持金具が角度変位する場合、ブレースボルトの配設角度に応じて固定金具に対するブレース支持金具の角度を調整しながら図面を作成しなければならず、図面作成時の作業効率が悪いという問題もある。
そこで本発明は、上記のような従来の課題を解決するためになされたものであり、作業者が比較的低い位置に居ながらブレースボルトの先端を簡単に差し込むことができ、しかも従来よりも強い強度で吊りボルトの振れ止め効果を発揮し、さらに作業者が誤って所定角度範囲から外れた角度でブレースボルトを配設してしまうことを未然に防止できるようにしたブレース連結金具を提供することを主たる目的とする。また、本発明は、仮に施工業者にブレース連結金具の設置態様を図面化して提出しなければならない場合であっても図面作成時の作業効率を従来よりも向上させることができるようにしたブレース連結金具を提供することを付加的な目的としている。
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、ブレース連結金具(1)であって、吊りボルト(110)を保持する保持部(2)と、前記保持部(2)から互いに略直角を成す角度で延設される一対の取付部(3,4)と、前記一対の取付部(3,4)のそれぞれに取り付けられる一対の固定部材(5,6)と、を有し、前記一対の固定部材(5,6)のそれぞれは、ボルト部材(7,8)によって前記取付部(3,4)に対して位置決めされた状態で取り付けられ、前記ボルト部材(7,8)が仮止め状態のときに前記取付部(3,4)との間にブレースボルト(120)を所定角度範囲内の任意の角度で挿通可能であり、前記ボルト部材(7,8)が締め付けられることにより、前記ブレースボルト(120)の挿通角度を保持した状態で前記取付部(3,4)との間に前記ブレースボルト(120)を挟み込んで固定することを特徴とする構成である。
第2に、本発明は、上記第1の構成を有するブレース連結金具(1)において、前記固定部材(5,6)は、第1のボルト部材(7)及び第2のボルト部材(8)によって取付部(3,4)に対して位置決めされた状態に取り付けられることを特徴とする構成である。
第3に、本発明は、上記第2の構成を有するブレース連結金具(1)において、前記固定部材(5,6)は、前記第1のボルト部材(7)と前記第2のボルト部材(8)の間に挿通される前記ブレースボルト(120)を前記取付部(3,4)との間に挟み込んで固定することを特徴とする構成である。
第4に、本発明は、上記第2又は第3の構成を有するブレース連結金具(1)において、前記固定部材(5,6)は、前記第1のボルト部材(7)を挿通可能な第1の孔(20a)と前記第2のボルト部材(8)を挿通可能な第2の孔(20b)とを有する平板部(20)と、前記平板部(20)の両端部に設けられる係止部(21,22)とを有し、前記第1及び第2のボルト部材(7,8)が締め付けられることにより、前記係止部(21,22)が前記ブレースボルト(120)の外周面に係止した状態で固定されることを特徴とする構成である。
第5に、本発明は、上記第4の構成を有するブレース連結金具(1)において、前記係止部(21,22)には、前記ブレースボルト(120)の挿通角度(θ)を前記所定角度範囲内に規制する規制部(23,24)が設けられることを特徴とする構成である。
第6に、本発明は、上記第4又は第5の構成を有するブレース連結金具(1)において、前記係止部(21,22)には、前記所定角度範囲内で前記ブレースボルト(120)を挿通可能な凹部(26)が設けられることを特徴とする構成である。
第7に、本発明は、上記第6の構成を有するブレース連結金具(1)において、前記凹部(26)の凹み量(H)は、前記ブレースボルト(120)の直径よりも小さいことを特徴とする構成である。
尚、上記において括弧内に示す符号は、単なる例示であり、上記符号によって本発明が限定されるものではない。
本発明のブレース連結金具によれば、作業者が比較的低い位置に居ながらブレースボルトの先端を簡単に差し込むことができ、しかも従来よりも強い強度で吊りボルトの振れ止め効果を有効に発揮し、さらに作業者が誤って所定角度範囲から外れた角度でブレースボルトを配設してしまうことを未然に防止することができるようになる。また、仮に施工業者にブレース連結金具の設置態様を図面化して提出しなければならない場合であっても、本発明のブレース連結金具には、ブレースボルトの配設角度に応じて姿勢が変化する部材が存在しないため、図面作成時の作業効率を従来よりも飛躍的に向上させることができるようになる。
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態であるブレース連結金具1を示す斜視図であり、(a)はブレース連結金具1を正面側から視た図を、(b)はブレース連結金具1を背面側から視た図を示している。図2は、ブレース連結金具1の各構成部材を分解した状態を正面側から視た斜視図である。図3は、ブレース連結金具1の各構成部材を分解した状態を背面側から視た斜視図である。さらに図4は、ブレース連結金具1の設置態様を示す側面図である。
まず図4に示すように、本実施形態のブレース連結金具1は、天井スラブなどの天井構造100から垂下する吊りボルト110と、一対の吊りボルト110間に斜め方向に配設されるブレースボルト120とを連結するための金具である。
吊りボルト110は、空気調和機などの天井吊り下げ物150を天井空間に吊り下げた状態で支持するボルトである。例えば天井構造100には、天井吊り下げ物150の四隅の位置に設けられている連結部151に接続可能なように4本の吊りボルト110が取り付けられる。それら4本の吊りボルト110は、それぞれの下端部において天井吊り下げ物150の四隅の連結部151に連結され、天井吊り下げ物150を所定の高さ位置で支持する。
ブレースボルト120は、それら4本の吊りボルト110のうち、互いに隣接する2本の吊りボルト110間において斜め方向に配設され、上端部が一方の吊りボルト110の上端近傍位置に連結され、下端部が他方の吊りボルト110の下端近傍位置に連結される。ブレースボルト120の配設角度は、天井構造100から天井吊り下げ物150の上面までの寸法に応じて適宜調整される。例えば、水平ラインを0°の基準とすると、天井構造100から天井吊り下げ物150の上面までの寸法が長くなれば、ブレースボルト120の配設角度が大きくなり、反対に、天井構造100から天井吊り下げ物150の上面までの寸法が短くなれば、ブレースボルト120の配設角度が小さくなる。ブレース連結金具1は、そのような多様な角度で配設されるブレースボルト120を吊りボルト110に連結することができる構造を有している。
2本の吊りボルト110の間には、2本のブレースボルト120が互いに交叉するように配置される。そのため、ブレース連結金具1は、1本の吊りボルト110の上部と下部との互いに異なる高さ位置となる2箇所に取り付けられ、それぞれの高さ位置でブレースボルト120を吊りボルト110に連結する。図4では、吊りボルト110の下部に取り付けられるブレース連結金具1をブレース連結金具1aとして示しており、吊りボルト110の上部に取り付けられるブレース連結金具1をブレース連結金具1bとして示している。ブレース連結金具1aとブレース連結金具1bとは、互いに上下を反転させた状態で使用される点を除き、同一の構成及び機能を有している。
次に、ブレース連結金具1について説明する。ブレース連結金具1は、図1、図2及び図3に示すように、吊りボルト110を保持する保持部2と、保持部2から互いに略直角を成す角度で延設される一対の取付部3,4と、それら一対の取付部3,4のそれぞれに取り付けられる一対の固定部材5,6とを有している。例えば、固定部材5は第1のボルト部材7と第2のボルト部材8とによって一方の取付部3に対して位置決めされた状態(取付部3に対して角度変位しない状態)に取り付けられる。また、固定部材6も同様に、第1のボルト部材7と第2のボルト部材8とによって他方の取付部4に対して位置決めされた状態(取付部3に対して角度変位しない状態)に取り付けられる。これら固定部材5,6は、ブレースボルト120を取付部3,4に対して固定するための部材である。
保持部2は、吊りボルト110と平行に配置される概略矩形状の縦板部10と、縦板部10の上部を90°折り曲げることによって形成され、吊りボルト110(ブレース連結金具1の背面側)に向かって水平方向に延設される第1保持板部11と、縦板部10の下部を第1保持板部11と同一方向に90°折り曲げることによって形成され、吊りボルト110(ブレース連結金具1の背面側)に向かって水平方向に延設される第2保持板部12とを有する。
縦板部10の略中央には、ボルト16の雄螺子と螺合する雌螺子が形成された螺子孔15が設けられる。この螺子孔15にはブレース連結金具1の正面側からボルト16を装着することが可能である。縦板部10は、そのボルト16を螺子孔15に螺合させた状態で保持し、ボルト16が締め付けられることにより、ボルト16の先端をブレース連結金具1の背面側に向かって螺合進行させることができる。
第1保持板部11は、略中央に吊りボルト110を挿通可能な挿通部13を有している。この挿通部13には、連通部14が設けられ、連通部14を介して挿通部13が第1保持板部11の側方に開放されている。そして挿通部13には、ボルト16の進行方向において吊りボルト110の外周面と係合するように形成された半円状の係合部が形成されている。この係合部は、ボルト16の軸線上に位置している。
第2保持板部12も第1保持板部11と同様の構成である。すなわち、第2保持板部12は、略中央に吊りボルト110を挿通可能な挿通部13を有している。この挿通部13にも連通部14が設けられ、連通部14を介して挿通部13が第2保持板部12の側方に開放されている。尚、第2保持板部12において連通部14が設けられている位置は、第1保持板部11において連通部14が設けられている位置と同じである。そして第2保持板部12の挿通部13にも、ボルト16の軸線上において吊りボルト110の外周面と係合するように形成された半円状の係合部が形成されている。
一対の取付部3,4は、保持部2を構成する縦板部10の左右両側からブレース連結金具1の背面側において互いに略直角を成す角度で延設される。これら取付部3,4は、いずれも吊りボルト110と平行に配置される金属板として形成される。そして取付部3には、第1のボルト部材7及び第2のボルト部材8を螺合させることが可能な2つの螺子孔3a,3bが設けられる。これら2つの螺子孔3a,3bの中心を結ぶラインは、鉛直方向に対して所定角度傾斜させた状態となっている。また取付部4にも、第1のボルト部材7及び第2のボルト部材8を螺合させることが可能な2つの螺子孔4a,4bが設けられる。これら2つの螺子孔3a,3bの中心を結ぶラインも、鉛直方向に対して所定角度傾斜させた状態となっている。ここで、縦板部10から螺子孔3aまでの距離と縦板部10から螺子孔4aまでの距離は互いに等しく、また縦板部10から螺子孔3bでの距離と縦板部10から螺子孔4bまでの距離は互いに等しくなるように形成される。また、螺子孔3a,3bの間隔は、ブレースボルト120の直径よりも大きく、第1のボルト部材7及び第2のボルト部材8が螺合した状態において第1のボルト部材7及び第2のボルト部材8の間に挿通したブレースボルト120を少なくとも所定角度範囲内で揺動させることができる程度の間隔として形成される。また、螺子孔4a,4bの間隔も同様である。
次に固定部材5,6について詳しく説明する。固定部材5,6は、取付部3,4との間にブレースボルト120を挟み込んだ状態で固定する。図5は、固定部材5,6の一構成例を示す図であり、(a)は固定部材5,6の斜視図を、(b)は断面図を示している。図5(a)に示すように、固定部材5,6は、長方形状の平板部20と、平板部20の短辺方向両端部から立設する係止部21,22とを有する。
平板部20は、その長手方向に沿って、第1のボルト部材7を挿通可能な第1の孔20aと、第2のボルト部材8を挿通可能な第2の孔20bとを有している。これら2つの孔20a,20bの間隔は、取付部3,4に形成される2つの螺子孔3a,3b(又は4a,4b)の間隔と同じである。固定部材5,6は、このような平板部20と取付部3,4との間にブレースボルト120を挟み込むように構成される。
係止部21,22は、ブレースボルト120の外周面に係止した状態でブレースボルト120を取付部3,4に押し付けた状態で固定するためのものである。例えば、係止部21,22は、固定部材5,6の側壁部として形成され、その長手方向中央にブレースボルト120を挿通するための凹部26が設けられ、その凹部26の両側にブレースボルト120の挿通角度を所定角度範囲内に規制する規制部23,24が設けられている。言い換えると、係止部21,22は、その中央にブレースボルト120を挿通可能な開放窓25を有しており、この開放窓25を介してブレースボルト120を第1のボルト部材7及び第2のボルト部材8の間に挿通することができるようになっている。また、図5(b)に示すように、開放窓25を構成する凹部26の凹み量Hは、ブレースボルト120の直径よりも小さく形成される。
上記のように構成される固定部材5,6は、図1乃至図3に示すように、一対の取付部3,4のそれぞれに対し、第1のボルト部材7及び第2のボルト部材8を用いて装着される。上述したように第1及び第2のボルト部材7,8を装着するための螺子孔3a,3b及び4a,4bは、いずれも鉛直方向に対して所定角度傾斜しているため、固定部材5,6は、一対の取付部3,4に対して所定角度傾斜した状態で取り付けられる。また、平板部20から立設する係止部21,22は、取付部3,4に向く状態で取り付けられる。したがって、固定部材5,6の係止部21,22に設けられる開放窓25は、取付部3,4との間にブレースボルト120を挿通可能な挿通空間を形成し、その挿通空間を斜め方向に開放した状態となる。
上記のように構成されるブレース連結金具1は、保持部2の第1保持板部11及び第2保持板部12のそれぞれに挿通部13に連通する連通部14が設けられているため、吊りボルト110の上端部が天井構造100に接続され、下端部に天井吊り下げ物150が既に取り付けられている場合であっても後付けで吊りボルト110に取り付けることができる。図6は、ブレース連結金具1を吊りボルト110に取り付ける際の施工手順を示す図である。作業者は、図6(a)の矢印F1で示すように、連通部14を介して吊りボルト110を挿通部13に導入する。このとき、吊りボルト110の先端を挿通部13に差し込む必要がないため、吊りボルト110の上端部が天井構造100に接続されていても良いし、また吊りボルト110の下端部に天井吊り下げ物150が取り付けられていても良い。そのため、作業者は、後施工で簡単に、図6(b)に示すような状態にブレース連結金具1を設置することができる。その後、作業者は、図6(c)に示すように、ボルト16を締め付けることにより、ボルト16の先端で吊りボルト110の雄螺子を押圧し、吊りボルト110を挿通部13の係合部に押し当てた状態で固定する。これにより、保持部2が吊りボルト110を保持する状態に固定され、ブレース連結金具1が吊りボルト110の所定高さ位置に取り付けられる。
ブレース連結金具1が吊りボルト110に取り付けられると、作業者は、一対の取付部3,4と固定部材5,6との間にブレースボルト120を取り付ける。図7は、取付部4と固定部材6との間にブレースボルト120を装着する例を示す図である。固定部材6を取付部4に取り付ける第1及び第2のボルト部材7,8を予め仮止め状態としておくことで、固定部材6を取付部4から離間させ、ブレースボルト120を挿通させる挿通空間を拡大させることができる。そのため、作業者は、挿通空間を拡大させた状態で、図7(a)に示すようにブレースボルト120の先端を取付部4と固定部材6との間の挿通空間へ挿入する。このとき、作業者は、ブレースボルト120の先端を2つのボルト部材7,8の間に挿入する。
上述したように、2つのボルト部材7,8はブレースボルト120を少なくとも所定角度範囲内で揺動させることができる間隔に設けられており、しかも固定部材6の規制部23,24もブレースボルト120の挿通角度を所定角度範囲内に規制する。そのため、作業者は、取付部4と固定部材6との間にブレースボルト120の先端を差し込むとき、所定角度範囲内においてブレースボルト120の角度を調整可能である。図7(b)は、固定部材6の平板部20を取り除いた状態を示す断面図である。例えば、水平ラインL1を0°の基準としたとき、固定部材6は、ブレースボルト120の取付角度θが45°±15°の範囲内となるように規制し、その範囲内であれば任意の角度でブレースボルト120を挿通可能としている。そのため、作業者は、ブレース連結金具1にブレースボルト120を連結する際に、誤って所定角度範囲内から外れた角度でブレースボルト120を配置してしまうことがない。つまり、ブレース連結金具1は、ブレースボルト120の取付角度θに関するフェイルセーフ機能を備えているのである。尚、図7では、取付部4と固定部材6との間にブレースボルト120を装着する例を示したが、取付部3と固定部材5との間にブレースボルト120を装着する場合も同様である。
また、固定部材5,6は、図7(a)に示すように、鉛直方向Zに対して所定角度α傾斜した状態で取付部3,4に装着される。このように固定部材5,6を所定角度α傾斜させることにより、ブレース連結金具1を角度αに応じて小型化できるという利点がある。例えば、角度αが0°に近づく程、固定部材5,6のサイズを大きくすることが必要となり、取付部3,4の鉛直方向の寸法が大きくなると共に、ブレース連結金具1の重量が増し、取り扱い難くなる。また、角度αが90°に近づく場合も同様に、固定部材5,6のサイズを大きくすることが必要となり、取付部3,4の水平方向の寸法も大きくなるので、上記と同様に取り扱い難くなる。そのため、本実施形態では、角度αを約38°に設定しており、固定部材5,6と取付部3,4の双方の小型化を図っている。ただし、角度αは、約38°に限定されるものではない。例えば、角度αを30°〜60°の範囲内に設定すれば、ブレース連結金具1の取り扱い易さを阻害しない程度の小型化と軽量化を実現することができる。
また本実施形態のブレース連結金具1は、2つのボルト部材7,8によって固定部材6が取付部4に位置決めされており、固定部材6が角度変位しない。そのため、作業者は、比較的低い位置に居ながら、ブレースボルト120の下端近傍位置を保持した状態でブレースボルト120の上端部分を吊りボルト110の上部に取り付けられたブレース連結金具1bの取付部3,4と固定部材5,6との間に容易に差し込むことができる。図8は、ブレースボルト120の先端を取付部3,4と固定部材5,6との間に差し込む例を示す図である。例えば作業者は、図8(a)に示すようにブレースボルト120の上端部分(先端)を固定部材5,6の開放窓25に接近させた後、図8(b)に示すようにブレースボルト120の先端を開放窓25に引っ掛けて矢印F2の方向へ移動させることにより、ブレースボルト120を差し込むための挿通空間を簡単に拡大させることができる。すなわち、固定部材5,6が取付部3,4に対して回転しないため、作業者は挿通空間を簡単に広げることができるのである。そして作業者は、図8(c)において矢印F3で示すように、拡大させた挿通空間にブレースボルト120を差し込むことにより、ブレースボルト120を取付部3,4と固定部材5,6との間に配置することができる。そして吊りボルト110の下部に取り付けられたブレース連結金具1aの取付部3,4と固定部材5,6との間にブレースボルト120の下端部分を差し込み、2つのボルト部材7,8を締め付けることでブレースボルト120を仮止めすることができる。その後、作業者は、吊りボルト110の上部に取り付けられたブレース連結金具1bの2つのボルト部材7,8を締め付けることにより、ブレースボルト120を2つの吊りボルト110間に連結した状態で固定する。したがって、本実施形態のブレース連結金具1は、作業者が比較的低い位置からでも吊りボルト110の上部に取り付けられているブレース連結金具1に対してブレースボルト120を差し込み易い構造となっており、従来よりも作業効率を向上させることができるという利点がある。
上記のように作業者は、取付部3,4と固定部材5,6の間にブレースボルト120を挿入した状態で2つのボルト部材7,8を締め付けることにより、ブレースボルト120を取付部3,4と固定部材5,6との間に挟み込まれた状態に固定する。このとき、固定部材5,6の凹部26がブレースボルト120の外周面に形成された螺子山を押しつぶすので、固定部材5,6とブレースボルト120とが互いに係合した状態となり、ブレースボルト120が角度変位することを防止することができる。つまり、固定部材5,6は、ボルト部材7,8が締め付けられることにより、ブレースボルト120の配設角度を保持した状態で取付部3,4との間にブレースボルト120を挟み込んで固定するのである。また、凹部26の凹み量Hがブレースボルト120の直径よりも小さいため、凹部26がブレースボルト120の外周面に係合するときには、規制部23,24の先端が取付部3,4には到達しておらず、凹部26がブレースボルト120の外周面を確実に押圧することができる。
このようなブレース連結金具1は、ブレースボルト120を取付部3,4に対して固定する固定部材5,6が取付部3,4に対して回転しないため、仮に大規模地震が発生した場合であってもブレースボルト120を強固に保持することができ、吊りボルト110の変位量を小さく抑えることができる。これを検証した強度試験について説明する。
図9は、ブレース連結金具1の強度試験を行ったときの構成を示す図である。強度試験では、天井吊り下げ物150の代わりに、4本の吊りボルト110の下端部を連結するフレーム材200を取り付け、そのフレーム材200に対し、壁面210に固定した油圧シリンダー211でX方向へ荷重をかけた。油圧シリンダー211とフレーム材200との間には、ロードセル(荷重計)212を配置し、油圧シリンダー211による荷重を計測した。また、油圧シリンダー211による荷重が作用する部分とは反対側のフレーム材200を支持している吊りボルト110aには、ワイヤー巻き取り式の変位計213を設置し、吊りボルト110aのX方向の変位を計測した。
図10は、強度試験の結果を示す図である。図10における実線T1は、本実施形態のブレース連結金具1を用いた場合の変位量を示しており、破線T2は、特許文献1の従来品を用いた場合の変位量を示している。図10に示すように、本実施形態のブレース連結金具1は、従来品と比較すると同一荷重が作用したときの吊りボルト110aの変位量が小さくなっている。つまり、本実施形態のブレース連結金具1は、固定部材5,6が取付部3,4に対して相対変位しないため、常に同じ姿勢でブレースボルト120を保持しているので、ブレースボルト120による斜め補強材としての強度を低下させず、吊りボルト110aの変位量が大きくなることを抑制しているのである。これに対し、従来品は、ブレース支持金具が連結ボルトを中心に回転してしまうため、荷重に応じてブレース支持金具の姿勢が変化してしまい、ブレースボルト120による斜め補強材としての強度を低下させてしまうことが原因で吊りボルト110aの変位量が大きくなっている。したがって、本実施形態のブレース連結金具1は、連結ボルトを中心に姿勢変化する従来品に比べて強度が高く、優れた振れ止め効果を発揮するのである。
さらに、本実施形態のブレース連結金具1は、取付部3,4に対する固定部材5,6の取り付け角度が変化しないため、図面化する際に角度調整などを行う必要がない。そのため、仮に施工業者にブレース連結金具1の設置態様を図面化して提出しなければならない場合であっても、図面作成時の作業効率を従来よりも飛躍的に向上させることができるという利点もある。
このように本実施形態のブレース連結金具1は、取付部3,4に対して固定部材5,6を位置決めした状態で取り付けると共に、取付部3,4と固定部材5,6との間にブレースボルト120を所定角度範囲内の任意の角度で設置できるようにしている。そのため、本実施形態のブレース連結金具1は、作業者が比較的低い位置に居ながらブレースボルト120の先端を簡単に差し込むことができ、しかも従来よりも強い強度で吊りボルト110の振れ止め効果を発揮し、さらに作業者が誤って所定角度範囲から外れた角度でブレースボルト120を配設してしまうことを未然に防止することができるものである。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態において説明したものに限定されるものではない。すなわち、本発明には、上記実施形態において説明したものに種々の変形例を適用したものの含まれる。
例えば、上記実施形態では、ブレースボルト120の配設角度を所定角度範囲内に抑えるために、第1及び第2のボルト部材7,8を所定の間隔で設置すると共に、固定部材5,6の係止部21,22の両端に規制部23,24を設けた構成を例示した。しかし、第1及び第2のボルト部材7,8を所定の間隔で設置することにより、ブレースボルト120の配設角度を所定角度範囲内に規制することができる場合には、係止部21,22の規制部23,24は特に必要ではない。また、係止部21,22の規制部23,24によってブレースボルト120の配設角度を所定角度範囲内に規制することができる場合には、第1及び第2のボルト部材7,8でブレースボルト120の配設角度を所定角度範囲内に規制する必要がない。したがって、ブレース連結金具1は、第1及び第2のボルト部材7,8による規制と、規制部23,24による規制とのいずれか一方だけを備えたものであっても構わない。
また、上記実施形態では、ブレースボルト120の取付角度θが45°±15°の範囲内となるように規制する場合を例示したが、この角度範囲は適宜設定可能であり、上述した範囲に限られるものではない。
また、上記実施形態では、保持部2の第1保持板部11及び第2保持板部12に対して挿通部13に連通する連通部14が設けられる例を説明した。しかし、これに限られるものではく、例えば図11に示すように挿通部13は、単なる丸孔として形成されるものであっても構わない。この場合、挿通部13の左右両側を縦板部10に接続することができるため、第1保持板部11及び第2保持板部12の取り付け強度を高くすることができるという利点がある。
また、上記実施形態では、2つのボルト部材7,8を用いて固定部材5,6を取付部3,4に取り付ける態様を例示した。しかし、固定部材5,6の取り付け態様は、必ずしも上述したものに限られない。例えば、取付部3,4の所定位置に予め係止孔を設けておき、その係止孔に対して係合する係止片を固定部材5,6の一端側に設けるようにしても良い。この場合、固定部材5,6の係止片を取付部3,4の係止孔に係止させた状態で、固定部材5,6の他端側にボルト部材を取り付ければ、固定部材5,6を取付部3,4に対して位置決めした状態に取り付けることができる。したがって、固定部材5,6を取付部3,4に対して位置決めした状態に取り付けるボルト部材は、少なくとも1つあれば良い。
また、上記実施形態では、ボルト部材7,8を取付部3,4に形成された螺子孔3a,3b,4a,4bに装着することにより、固定部材5,6を取付部3,4に取り付ける場合を例示した。つまり、上記実施形態では、固定部材5,6とボルト部材7,8とが別体として構成される場合を例示した。しかし、これに限られるものではなく、ボルト部材7,8は、固定部材5,6に対して一体形成されたものであっても構わない。図12は、固定部部材5,6に対してボルト部材7,8が一体形成された場合を例示している。例えば固定部材5,6は、12(a)に示すように、平板部20に対してボルト部材7,8が一体形成されたものであっても構わない。この場合、取付部3,4には、上述した螺子孔3a,3b,4a,4bの代わりにボルト部材7,8を挿通可能な孔3c,3d,4c,4dが形成される。そして図12(b)に示すように、固定部材5,6に設けられたボルト部材7,8が孔3c,3d,4c,4dに挿通され、そのボルト部材7,8の先端にナット9が装着されることにより、固定部材5,6が取付部3,4に取り付けられる。また、図13は、固定部材5,6がコ字状に折り曲げられたボルト部材によって構成される例を示している。図13に示す例の場合、コ字状に折り曲げられることによって互いに平行な2つの棒状体の先端にボルト部材7,8が形成される。このような固定部材7,8であっても、上述した作用効果を奏する点に何ら変わりはない。また、図14は、取付部3,4に対してボルト部材7,8が設けられる例を示している。図14に示すように取付部3,4からボルト部材7,8が立設している場合、固定部材5,6は、平板部20の孔20a,20bにそれらボルト部材7,8を挿通し、ボルト部材7,8の先端にナット9が装着されることによって取付部3,4に取り付けられる。この場合も、固定部材5,6は、取付部3,4に対して位置決めされた状態に取り付けられることになる。