JP6598150B2 - 単結晶SiC基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、単結晶SiC基板に関する。
半導体材料であるSiC(炭化珪素)は、現在広くデバイス用基板として使用されているSi(珪素)に比べてバンドギャップが広いことから、単結晶SiC基板を使用してパワーデバイス、高周波デバイス、高温動作デバイス等を作製する研究が行われている。
単結晶SiC基板は、例えば、昇華法を用いて製造された単結晶SiCインゴットから基板(となる部分)を切断し、切断された基板の表面を鏡面加工することによって形成される(例えば特許文献1参照)。
切断された基板には、そり、うねりや加工歪が存在しているため、例えばダイヤモンド砥粒を用いた研削加工を行ってこれらを軽減した上で、CMP(ケミカルメカニカルポリシング)により、基板の表面を鏡面化することが行われている。CMPの加工速度は小さいため、CMPを行う前の加工変質層の深さをできるだけ小さくすることが切望されている(例えば非特許文献1参照)。
SiC等の単結晶基板では、加工変質層の除去過程において、おもて面と裏面の残留応力バランスに基づくトワイマン効果により、基板が反り返る現象が起きる(例えば、非特許文献2参照。)。次工程へは、基板はCMPで鏡面化された状態で進められるため、このときの形状(例えば、基板の反り具合を示すパラメータであるSORIで評価される)が関心の対象となっている。
ところで、特許文献2では、フッ化水素酸を含む水溶液に浸漬しながら電解エッチングを行うことにより、非鏡面(裏面)の面粗度をほぼ維持したまま、非鏡面に残存する加工変質層の少なくとも一部を除去することにより、トワイマン効果による基板の反りを解消する技術が提案されている。この技術は、面粗度の大きい非鏡面には、通常、深い加工変質層が残存しており、鏡面加工された表面との間に残留応力の差異が生じ、基板が反り返ってしまうため、種々の不具合が生じるという問題の解決を目的としたものである。
特許文献2によれば、SiCワークを正極とし、白金を負極として電解を行うと、下記(1)、(2)式で示す反応が生じる。ここで、電解液にフッ化水素酸が添加されている場合、フッ化水素酸が、(1)、(2)式の反応で生成された二酸化珪素SiO2に作用して、これを電解液に溶解させて除去することによって、エッチングが進行することになる。
正極:SiC+4H2O→SiO2+CO2+8H++8e- (1)
負極:8H++8e-→4H2 (2)
特許第4499698号公報 特許第5560774号公報
貴堂高徳、堀田和利、河田研治、長屋正武、前田弘人、出口喜宏、松田祥伍、武田篤徳、高鍋隆一、中山智浩、加藤智久:SiC及び関連ワイドギャップ半導体研究会第21回講演予稿集、P.72−73 長屋正武、貴堂高徳、中山智浩、河田研治、加藤智久:先進パワー半導体分科会誌第1回講演会予稿集、P.86−87
単結晶SiC基板のおもて面は、次工程でエピタキシャル成長させるため、鏡面である必要があるが、裏面は、種々、ハンドリング等の観点から、面粗度の大きい面であることが好ましい。しかしながら、面粗度の大きい面は、通常加工変質層が深く、おもて面と裏面とで残留応力の差異が生じ、トワイマン効果により基板が反り返ってしまうため、種々の不具合が生じるという問題があった。その為、両面の加工状態が異なり、片面が鏡面であり裏面は鏡面でない単結晶SiC基板で反りを小さくすることは困難であり、特にトワイマン効果の影響が大きい基板の直径が大きい場合や基板が薄い場合に、反りの小さい基板を得ることは難しかった。
おもて面が鏡面で裏面が面粗度の大きい面の基板において、安全や廃棄物処理に対する配慮への負荷が小さい方法で、トワイマン効果による基板の反り返りを小さくすることができれば、実用化及び普及を大いに加速することができる。
従来の技術として、基板の加工変質層を除去して基板の片面の面粗度を大きい状態に維持したまま、トワイマン効果による単結晶SiC基板の形状を制御する技術が特許文献2に開示されている。
特許文献2においては、トワイマン効果による単結晶SiC基板の形状を制御する技術が開示されているが、取り扱いが難しいフッ化水素酸を使用した電解エッチングを行うため、CMPを行う場合以上に安全や廃棄物処理に慎重な配慮が必要になること、開示される基板と陰極の配置では加工変質層の均一な除去が困難であること、n型基板にしか適用できないことが、技術の実用化及び普及の大きな妨げとなっている。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、おもて面が鏡面をなし、裏面が大きい面粗度を有する単結晶SiC基板であって、取り扱いが難しいフッ化水素酸を使用することなく、n型基板、p型基板のいずれであっても、安全や廃棄物処理に対する配慮への負担が小さい方法で、トワイマン効果による基板の反り返りを小さくすることによって得られる、単結晶SiC基板を提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、両面の加工状態が異なり、片面が鏡面であり、もう一方の片面のRaが1nm以上と大きい状態で反りが小さい単結晶SiC基板を得ることを第2の目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するためには、トワイマン効果に寄与する加工変質層を除去することが有効であると考え、特許文献2に開示される技術に関心をもった。ところが、この技術にはいくつか大きな欠点があることが分かった。最も大きな欠点は、生成する二酸化珪素を除去するためにフッ化水素酸が必要な点である。
特許文献2には、取り扱いの難しい化学薬品を使用しないため、環境への負荷も小さいとの記載があるが、周知の通り、フッ化水素酸は、触れると激しく体を腐食する性質を有しており、使用を避けたい薬品の代表格である。この薬品の取り扱いの難しさは、例えば、森田化学工業株式会社で作成された製品安全データシートに詳述されている。
また、特許文献2に記載される唯一の実施例で開示される電解エッチング条件では、3%フッ化水素酸としているが、これを廃棄しようとした場合、上記製品安全データシートには、廃棄上の注意として、本品の使用に当たっては、環境汚染防止に十分配慮しなくてはならない、消石灰スラリー溶液で中和処理(発熱注意)し、上澄み液は、pH5.8〜8.6、F:規制値以下として排水する(Fの規制値:海域以外の公共用水域では8mg/L、海域では15mg/L)(但し、地域条例で上乗せされた規制がある場合は、その値に従う)と記載されている通り、環境への負荷が大きいため、手間のかかる廃棄処理が必要になる。
また、特許文献2の図面により開示されるSiCワークと白金からなる負極との位置関係では、SiCワークの電解エッチングを受ける面において、位置ごとに負極との距離が異なっている。この場合、電解エッチングを行った際に、電解エッチングされる面の位置ごとに、加わる電界の大きさが異なってしまうため、面内で均一な電解エッチングを行うことは難しいものと推測される。
さらに、特許文献2では、鏡面に加工されたn型炭化珪素単結晶基板は、面内均一にエッチングすることができず、面粗度Raが3nmより大きい非鏡面として、加工変質層を導入することで、均一にエッチングできることが開示されている。つまり、特許文献2では、Raが3nm以上である場合に対応する加工変質層の深さ、すなわちCMPでの取り代として、数ミクロン以上が想定されている。加工変質層深さがサブミクロン、サブハーフミクロンである場合には、特許文献2で開示される技術は適用できないものと推測される。
なお、n型炭化珪素単結晶基板と同様の方法で、p型炭化珪素単結晶基板に対する上記電解エッチングを行うことができるかどうかは不明である。単結晶SiC半導体の場合、現在の主流はn型であるため、他の欠点に比べれば影響は幾分軽微であるとも言えるが、将来も視野に入れると、p型にも適用可能な技術が好ましい。
本発明者は、これまで単結晶SiC基板の加工に関する取組みで得た知見とともに、鋭意検討を行い、上記(1)の化学反応式で示される、いわゆる陽極酸化は、単結晶SiC基板の加工変質層に起因する残留応力除去に有効であると判断し、まず、電解質水溶液を、フッ化水素酸のような取り扱いが難しい薬品を含まないものとすることに想到した。二酸化珪素を溶解させる成分を含まない場合、電圧を印加したときに起きる反応は、電解エッチングには該当せず、上位概念ではあるが、陽極酸化と呼ばれる反応に該当する。この反応をより正確に表現すれば、生成物の溶解を伴わない陽極酸化である。この場合、生成物は溶解除去されないため、単結晶SiC基板表面に残存する。組成式的にはSiO・mSiC・nHOで示される非晶質の脆弱な不定形組成物として、単結晶SiC基板の陽極酸化された表面に、水素結合、あるいはファンデルワールス力に由来して、マクロ的形状としては膜状に付着する形で残存する。
従来の技術はフッ化水素酸を使用した電解エッチングであるため、このように陽極酸化での生成物が残存した場合に単結晶SiC基板の加工変質層に起因する残留応力除去に有効かどうかは全く分からず、本発明に何ら指針を与えるものではない。生成物の溶解を伴わない陽極酸化で、単結晶SiC基板の加工変質層に起因する残留応力を効果的に除去することは、本発明で初めてなし得たものである。本発明者は、さらに、鋭意検討を進め、陽極酸化させる面と陰極との間に、均一に電界を印加する手法に想到し、単結晶SiC基板に導電性があれば、n型基板の鏡面加工された面でもp型基板でも問題なく均一に陽極酸化できる手法に想到し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の手段を提供する。
[1]厚みが1mmよりも小さい円板状の単結晶SiC基板であって、一方の面が鏡面であり、他方の面のRaが1nmより大きい値であり、かつ、SORIが30μmより小さい値であることを特徴とする単結晶SiC基板。
[2]結晶の方位の指標となる、オリエンテーションフラットまたはノッチを有することを特徴とする[1]に記載の単結晶SiC基板。
これらの指標が形成された単結晶SiC基板を製造する場合であっても、その過程において、当該指標を形成することによる支障はなく、製造された単結晶SiC基板は、当該指標が形成されていることにより、後続の処理中の向きを正しく制御することができる等の利点を有している。
[3]直径が70mmより大きい値であることを特徴とする[1]または[2]のいずれかに記載の単結晶SiC基板。
[4]前記厚みが0.6mmより小さい値であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一つに記載の単結晶SiC基板。
[5]前記厚みが0.4mmより小さい値であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一つに記載の単結晶SiC基板。
[6]前記Raが10nmより大きい値であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一つに記載の単結晶SiC基板。
本発明によれば、おもて面が鏡面をなし、裏面が大きい面粗度を有する単結晶SiC基板であって、取り扱いが難しいフッ化水素酸を使用することなく、安全や廃棄物処理に対する配慮への負担が小さい方法で、トワイマン効果による基板の反り返りを小さくした単結晶SiC基板を得ることができる。
また、本発明によれば、n型基板、p型基板のいずれであっても、安全や廃棄物処理に慎重な配慮をすることなく、加工変質層を面内にわたって均一に除去することを実現した単結晶SiC基板を得ることができる。
また、本発明によれば、両面の加工状態が異なり、片面が鏡面であり、もう一方の片面のRaが1nm以上と大きい状態で反りが小さい単結晶SiC基板を得ることができる。
(a)本発明の実施例1における基板の形状を示す図である。 (b)本発明の比較例1における基板の形状を示す図である。 (a)本発明の実施例2における基板の形状を示す図である。 (b)本発明の比較例2における基板の形状を示す図である。 (a)、(b)本発明の実施例3における基板の光学顕微鏡写真である。
以下、本発明を適用した実施形態である単結晶SiC基板について、詳細に説明する。
本発明の単結晶SiC基板は、少なくとも片面が機械的に平坦に加工され、加工変質層が形成された導電性の単結晶SiC基板であって、容器に収容された電解質水溶液に、前記単結晶SiC基板の機械的加工をされた面のみを接液させ、前記単結晶SiC基板が陽極となり、距離が一定となるよう陰極を配置した上で、前記陽極と前記陰極との間に直流電圧を印加し、前記接液面を陽極酸化させ、前記加工変質層を除去することを特徴とする単結晶SiC基板の形状の制御方法により実現できる。
好ましくは、前記機械的加工が、ダイヤモンド砥粒を使用した加工を含むことを特徴とする単結晶SiC基板の形状の制御方法により実現できる。
さらに好ましくは、前記機械的加工が、ラップ、ポリッシュ、研削の少なくとも一つを含むことを特徴とする単結晶SiC基板の形状の制御方法により実現できる。
陽極酸化における駆動力となる電界は、単結晶SiC基板の片面を均一に陽極酸化させるために、面内において均一の強さで作用する平等電界である必要がある。平行平板コンデンサに応用されている通り、陽極と陰極が平行に配置された平板であり、両極間の距離に対して平板の面積が十分大きければ、両極間の電界は均一な平等電界となる。本発明においては、電圧を印加したときに均一な平等電界が得られる構成を採用する。逆に、電圧を印加したときに均一な平等電界が得ることが可能な構成であれば、方式はとくに限定されるものではない。
陽極酸化で使用する電解質水溶液は、その定義通り、電解質を溶解した水であれば、どのようなものであってもよい。また、本発明に寄与する電解質の量は、導電率を測定することによって把握可能である。導電率が大きいほど比抵抗が小さくなり、電流が流れやすくなる。一般的な水(上水道から得られる水)は、通常導電率が100〜300マイクロジーメンス/cm(10〜30ミリジーメンス/メートル)であり、これもまた電解質水溶液である。
電解質水溶液の導電率は、1ミリジーメンス/メートル(10マイクロジーメンス/センチメートル)以上、10ジーメンス/メートル(100ミリジーメンス/センチメートル)以下である。1ミリジーメンス/メートル(10マイクロジーメンス/センチメートル)未満では、本発明の陽極酸化に必要な電流が得られなくなる虞があるためであり、10ジーメンス/メートル(100ミリジーメンス/センチメートル)を超えると、大電流に対応する急速な反応によるストレスで、単結晶SiC基板が割れてしまう可能性が高いためである。
また、電解質水溶液の導電率は、1ミリジーメンス/メートル(10マイクロジーメンス/センチメートル)以上、1ジーメンス/メートル(10ミリジーメンス/センチメートル)以下であることが好ましい。1ジーメンス/メートル(10ミリジーメンス/センチメートル)を超えると、大電流に対応する急速な反応によるストレスで、単結晶SiC基板が割れてしまう虞があるためである。
また、電解質水溶液の導電率は1ミリジーメンス/メートル(10マイクロジーメンス/センチメートル)以上、100ミリジーメンス/メートル(1ミリジーメンス/センチメートル)以下であることがより好ましい。100ミリジーメンス/メートル(1ミリジーメンス/センチメートル)を超えると、大電流に対応する急速な反応によるストレスで、単結晶SiC基板が割れてしまう虞が残るためである。
本発明で使用する電解質水溶液のpHは、4以上、10以下である。この範囲を外れた場合、皮膚等に触れると有害である可能性が高く、安全面で問題があるためである。また、本発明で使用する電解質水溶液のpHは、5以上、9以下であることが好ましい。この範囲を外れた場合、皮膚等に触れると有害である虞があるためである。また、本発明で使用する電解質水溶液のpHは、5.8以上、8.6以下であることがより好ましい。この範囲を外れた場合、排水時にpH調整が必要になるためである。
以上説明した陽極酸化を利用して、単結晶SiC基板の形状の制御方法および製造方法について説明する。
[単結晶SiC基板の形状の制御方法]
本発明の単結晶SiC基板の形状の制御方法は、陽極酸化処理を行って、単結晶SiC基板の少なくとも片面における加工変質層を構成するSiCのうち、一部をSiOに変換(改質)させるとともに、残部を除去する工程(第1工程)と、陽極酸化処理後の単結晶SiC基板の形状を測定する工程(第2工程)と、を有している。
(第1工程)
まず、陽極酸化処理を行う単結晶SiC基板を準備する。陽極酸化する単結晶SiC基板の少なくとも片面は、CMP工程に進める前段階であるため、機械的加工により、平坦化されたものを用いる。
機械的な加工を行う単結晶SiC基板(基板)は、通常、インゴットから切断された段階では、凹凸を有しているため平坦ではなく、さらに、切断に起因する加工変質層を有している。上述の機械的加工は、凹凸をなくすことによって単結晶SiC基板を平坦化し、加工変質層の深さを低減する目的で行うものである。
本発明において、平坦に加工された基板とは、基板の端から2mmまでの領域を除いた加工面の高さばらつき、または基板の厚みばらつきが、10ミクロン以下である基板を意味している。ワックス等で固定して、片面ラップもしくは研削による片面だけを平坦にするための加工を行った場合には、平坦に加工された基板を厚みばらつきで定義することが不適切であるので、加工を受けた状態での加工面の高さばらつきで定義するものとする。両面とも基板を平坦にするための加工を行った場合には、基板の厚みばらつきで定義するものとする。
CMPの工程に進める前の工程は、例えば非特許文献2に記載されている通り、様々な加工プロセスの組合せによって、高効率で高品位、かつ安価に向けた検討がなされている。非特許文献2では、B4C砥粒を使用した両面ラッピングを行っているが、これは、あくまで中間加工であり、単結晶SiC基板を機械加工してCMPの工程に進められる程度に制御された加工変質層を有する状態とするには、さらに、微細なダイヤモンド砥粒を使用した加工を行う必要がある。微細なダイヤモンド砥粒を使用した加工としては、ラップ、ポリッシュ、研削という選択肢があり、最適なプロセスの組合せを選択して行う。
ラップ、ポリッシュ、研削は、広く使用される工作物の機械的加工方法の呼称であるが、その定義は普遍的なものではなく、例えば本発明におけるポリッシュのことを、ソフトラップ、あるいは研磨やソフト研磨と呼称する場合もある。そこで、本発明で使用するラップ、ポリッシュ、研削という用語を、以下のように定義する。
ラップとは、ラッピングとも呼ばれる工作物の機械的加工方法であり、片面ラップと両面ラップに大別される。片面ラップは、ラップ定盤と呼ばれる金属製の台上に工作物を配置し、ラップ定盤と工作物の下面との間に砥粒を挟み、工作物に対して上から圧力を加え、摺動させて行う加工方法である。両面ラップは、主に薄い基板状の工作物を加工対象とし、工作物より薄いキャリアと呼ばれる工作物保持用治具に設けられた穴に工作物を入れ、やはりラップ定盤と呼ばれる2枚の板状の金属製の台に挟むように配置し、さらに2枚のラップ定盤と工作物の両面間に砥粒を挟み、キャリアに保持された工作物に圧力を加え、ギア機構により公転、自転運動を与えることで摺動させて行う加工方法である。
片面ラップと両面ラップのいずれの場合においても、砥粒に加工液を加えて加工を行う湿式ラップと、ラップ定盤に砥粒を埋め込み、加工液を加えないで加工を行う乾式ラップとがある。湿式ラップの加工液には、油系のものと水系のものとがある。単結晶SiC基板を加工する場合においては、ダイヤモンドのような硬い砥粒と水系又は油系の加工液を使用した湿式ラップが一般的であり、片面ラップと両面ラップのいずれに対しても検討が進められている。
ポリッシュとは、上述のラップ定盤に研磨布、ポリッシャ、またはパッドと呼ばれる柔らかいシート状の工具を貼りつけて、上述の湿式ラップと同じ方法で加工を行う加工法である。単結晶SiC基板を加工する場合においては、主に、微細なダイヤモンド砥粒を分散させた水系の加工液を使用し、機械的加工における仕上げ加工として採用される加工方法である。やはり、片面ポリッシュと両面ポリッシュとが検討されている。
研削とは、高速回転する砥石を、ステージまたはテーブルと呼ばれる台に固定された工作物に接触させることによって、工作物表面を除去する機械的加工方法である。工作物を固定する方式が、真空チャックによる真空吸着である場合には、工作物を固定する台は、単に真空チャック、またはチャックと呼ばれる場合もある。台に固定された工作物は、加工面が均一に平坦化されるように、通常、工作物の形状に応じて回転運動または往復運動が与えられる。砥粒は砥石に固定されており、加工点における発熱が大きいため、通常、クーラントと呼ばれる水系の冷却液を供給して冷却しながら加工を行う。単結晶SiC基板を加工する場合においては、ダイヤモンド砥粒を結合材またはボンド材と呼ばれる樹脂や金属、あるいはガラス質の材料によって結着、固定して形成した砥石を使用する。
これらの機械的加工によって、平坦な面が得られ、その面粗度は主に加工で使用される砥粒の粒径に依存する。すなわち、粗い砥粒を使用した場合には面粗度は大きくなり、細かい砥粒を使用した場合には面粗度は小さくなる。
本発明において、加工変質層とは、機械的加工の結果、工作物表面に残る結晶歪を主体とする変質した領域であり、かつ、工作物が単結晶の平板状工作物である場合において、工作物の形状に影響を与えるものを意味している。特許文献2には、単結晶SiC基板のおもて面と裏面に残留する加工歪に差異が生じると、残留応力にも差異が出て、それを補償するように基板が反ってしまうという現象が起きることが記載されており、このことは、一般にトワイマン効果と呼ばれる。
加工変質層の存在は、例えば断面観察のための当該試料を作製し、断面を透過型電子顕微鏡で観察することによって確認することができる。ただし、おもて面と裏面の加工変質層に差異があっても、それが十分僅かであればトワイマン効果は生じない。本発明は、機械的加工による加工変質層を全て取り除くことが目的ではなく、トワイマン効果に寄与する加工変質層を除去することを目的としている。これは、同じ履歴をもつ二つの基板のうち、一方はおもて面と裏面に本発明を適用し、他方は、例えばCMPによりおもて面と裏面の加工歪を全て取り除き、両者の形状を比較することにより、トワイマン効果に寄与する加工変質層を除去できたか否かが確認可能となる。あるいは、例えばCMPによりおもて面と裏面の加工歪を全て取り除いた基板を準備して形状を測定しておき、例えば裏面を研削加工して加工変質層を導入し、この段階での形状を測定してトワイマン効果を確認しておき、裏面に対して本発明を適用して、各段階の形状を比較することによっても確認可能となる。
加工変質層と表面粗さの関係は、必ずしも一対一に対応するものではないが、加工変質層の量が多い、すなわちCMPで大きな取り代が必要になる加工面は、概ね粗くなる傾向にある。一つの基準として、機械的加工で得られた面の表面粗さRaの値が10nmを超える場合には、加工変質層の深さは数ミクロン以上であることが予想されるため、加工速度が小さいCMP工程に進めることは現実的でない。したがって、本発明の目的から、単結晶SiC基板の片面または両面の表面粗さRaの値は、10nm以下であることが必要であり、より加工変質層深さが小さいことが予想される5nm以下であることが好ましく、3nm以下であることがさらに好ましく、2nm以下であることが最も好ましい。
なお、単結晶SiC基板5としては、導電性を有するものであればよく、n型単結晶SiC基板、p型単結晶SiC基板のいずれであってもよい。
次に、容器に収容された電解質水溶液に、準備した単結晶SiC基板の一方の主面(片面)を接液させ、単結晶SiC基板の接液していない面(接液面以外の面)と陰極とを、直流電源装置を挟んで電気的に接続する。そして、直流電源装置を用いて、単結晶SiC基板と陰極との間に電圧を印加し、単結晶SiC基板の一方の主面に対して面内にわたって均一に陽極酸化処理を行う。単結晶SiC基板の両方の主面に加工変質層がある場合には、片面ずつ、各面内にわたって均一に陽極酸化処理を行う。陽極酸化処理の温度に関する制限は無く、室温で行うことができる。
なお、前記単結晶SiC基板の両面が機械的に平坦に加工され、一方の面が加工変質層の無い鏡面であり、他方の面が加工変質層を有する面である場合には、他方の面のみに対して陽極酸化処理を行う。陽極酸化処理前の他方の面の表面粗さRaは、0.7nm以上であるとする。
陽極酸化によって、加工変質層のうち、少なくとも一部はSiOに変換(改質)され、これと未反応のSiCと水溶液に含まれるHOが非晶質状に混ざり合った状態で存在し、水素結合、あるいはファンデルワールス力に由来して、バルク基板に付着し、残部は除去される。このバルク基板に付着している生成物は、反りの原因となる圧縮応力を有するものではないことが、本発明者によって確かめられている。加工変質層は、陽極酸化されて上記の生成物となることで、バルク基板と連続した結晶状態ではなくなるので、体積膨張による反りが解消されたと考えられる。
陽極酸化処理において、単結晶SiC基板と陰極との間に印加する電圧は、5V以上30V以下であることが好ましい。印加電圧が5V未満である場合、本発明の陽極酸化に必要な電流が得られなくなる虞があるためであり、印加電圧が30Vを超える場合、大電流に対応する急速な反応によるストレスで、単結晶SiC基板が割れてしまう可能性が高いためである。
また、当該印加電圧は、8V以上24V以下であることがさらに好ましい。印加電圧が8V未満である場合、陽極酸化に時間がかかり過ぎる虞があり、印加電圧が24Vを超える場合、大電流に対応する急速な反応によるストレスで、単結晶SiC基板が割れてしまう虞があるためである。
また、当該印加電圧は、12V以上20V以下であることが最も好ましい。印加電圧が12V未満である場合、陽極酸化に時間がかかる虞があり、印加電圧が20Vを超える場合、大電流に対応する急速な反応によるストレスで、単結晶SiC基板が割れてしまう虞が残るためである。
陽極酸化処理中の単結晶SiC基板の接液面と陰極との距離は、1mm以上100mm以下であることが好ましい。1mm未満では、大電流に対応する急速な反応によるストレスで、単結晶SiC基板5が割れてしまう可能性が高いためであり、100mmを超えると、本発明の陽極酸化に必要な電流が得られなくなる虞があるためである。
また、単結晶SiC基板の接液面と陰極との距離が3mm以上50mm以下であることがさらに好ましい。3mm未満では、大電流に対応する急速な反応によるストレスで、単結晶SiC基板5が割れてしまう虞があるためであり、50mmを超えると、陽極酸化に時間がかかり過ぎる虞があるためである。
また、単結晶SiC基板の接液面6と陰極との距離が5mm以上20mm以下であることが最も好ましい。5mm未満では、大電流に対応する急速な反応によるストレスで、単結晶SiC基板5が割れてしまう虞が残るためであり、20mmを超えると、陽極酸化に時間がかかる虞があるためである。
(第2工程)
続いて、陽極酸化処理後の単結晶SiC基板の形状(例えば、基板の反り具合を示すパラメータであるSORI)を測定する。測定する基板は、CMPが行われておらず、表面に改質した一部の加工変質層が残存しているが、上述した通り、この加工変質層による残留応力は除去されているため、CMPを行った場合と同等の反り状態になっている。したがって、ここでの測定結果から、CMP加工を行った場合の基板の反り状態を実現することが可能となる。つまり、CMPを行わないで、CMP後の単結晶SiC基板の形状を評価することもできる。
以上のように、本発明によれば、コスト、時間、労力、環境等、いずれの観点からみても負荷の大きい工程であるCMPを行うことなく、単結晶SiC基板の形状に影響を与える加工変質層に起因する残留応力を効果的に除去することができる。したがって、単結晶SiC基板の形状を、CMPを行った場合と同等の形状となるように、簡便、迅速、正確、安価、安全に制御することができる。
これにより、おもて面が鏡面をなし、裏面が大きい面粗度を有する単結晶SiC基板において、取り扱いが難しいフッ化水素酸を使用することなく、安全や廃棄物処理に対する配慮への負担が小さい方法で、トワイマン効果による基板の反り返りを小さくすることが可能となる。
また、本発明の効果は、単結晶SiC基板が、n型基板、p型基板のいずれであっても得ることができる。したがって、n型の単結晶SiC基板、p型の単結晶SiC基板のいずれにおいても、安全や廃棄物処理に慎重な配慮をすることなく、加工変質層を面内にわたって均一に除去することが可能となる。
[単結晶SiC基板の製造方法]
本発明の単結晶SiC基板の製造方法は、上述した第1工程の陽極酸化処理を行い、それに伴って生成した生成物(不純物)を除去する工程を有している。生成物の除去は、例えばフッ化水素酸を用いて行うことができる。なお、フッ化水素酸を用いた生成物除去は、基板をフッ化水素酸に浸漬して行う洗浄処理に相当するものであり、電解エッチングとは異なり、安全上の問題は存在しない。
これにより、トワイマン効果による基板の反り返りを小さくし、次工程において成膜処理を行うことが可能な状態とした単結晶SiC基板を得ることができる。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
(実施例1)
市販のas−slicedの状態の100mm径n型(0001)4H−SiC(4°オフ)単結晶基板を、株式会社東京精密製の研削装置HRG300にダイヤモンドホイールを装着して研削加工を行った。最終仕上げとして、Si面、C面ともに、#8000ダイヤモンドホイールを使用し、ホイール回転速度を1250rpm、ワーク回転速度を300rpm、ホイール送り速度を0.4μm/sとした研削条件にて、約10μm除去することで、鏡面に仕上げた。
表面粗さRaの値は、zygo社製の非接触表面形状測定機NewView7300を用いて測定したところ、Si面、C面とも約0.8nmであった。CorningTropel社製の平面度・平行度・高さ測定機FlatMaster MSP150 DLを用いてSi面を測定したところ、厚みは351.1μmで、SORIは95.0μmであった。
pH7.7、導電率25.7ミリジーメンス/メートル(0.257ミリジーメンス/センチメートル)、温度25℃の実験室上水を電解質水溶液とし、直流安定化電源AD−8723Dを使用して本発明の陽極酸化のための配線を行った。
基板のC面を電解質水溶液に静かに接液させ、15Vで1分間の電圧印加を行った。電流値は、約0.2Aから漸減して1分後には約0.15Aとなった。
陽極酸化されたC面は、生成物である組成式としてSiO・mSiC・nHOで示される非晶質の脆弱な不定形組成物に覆われた状態で、光による干渉色が認められた。
次に、同様の段取りで、Si面を陽極酸化し、基板を清浄にした。この状態で基板の形状をSi面で測定したところ、SORIの値は83.3μmであった。
陽極酸化試験は、準備から片付け、基板の形状測定を含めて30分かからずに終了した。陽極酸化終了後の容器内の水は、pHに変動が無く、また、透視度も問題無いため、そのまま排水できる状態であった。また、陽極酸化試験そのものにかけた費用は、直流安定化電源、容器他の調達で、2万円以下の金額であった。
(比較例1)
第1の実施例で使用した単結晶SiC基板と共通の基板IDを有するものを、第1の実施例と同様に、Si面、C面ともに、#8000ダイヤモンドホイールを使用し、ホイール回転速度を1250rpm、ワーク回転速度を300rpm、ホイール送り速度を0.4μm/sとした研削条件にて、約10ミクロン除去することで鏡面に仕上げた。なお、使用した単結晶SiC基板は、処理ロット、加工条件が同じであれば、CMP後の反り状態も同じになるものと考えてよい。
測定によるSi面の厚みは351.9μmで、SORIの値は103.2μmであった。不二越機械工業株式会社製のCMP装置RDP−500Tを使用し、コロイダルシリカ系のスラリーを用いて、C面、Si面の順に0.5ミクロンずつ除去するCMP加工を行った。ここでの0.5ミクロンという数値は、加工変質層の無い面が得られることが確認できている取り代に相当する。基板の形状をSi面で測定したところ、SORIの値は82.2μmであった。
図1(a)、(b)に、基板の形状を表す測定データを示す。図1(a)は、陽極酸化処理を伴った実施例1による基板の斜視図である。図1(b)は、CMP処理を伴った比較例1による基板の斜視図である。図1(a)、(b)の色の濃淡の分布は、基準面に対する厚さ方向の凹凸の分布を示している。
図1(a)では、基準面に対する表面の位置が、42.314μm、30.837μm、30.959μm、23.388μm、15.214μm、8.245μm、0.513μm、−6.898μm、−14.459μm、−22.441μm、−29.612μm、−37.184μm、−40.969μmにある場合について着目し、これらの位置ごとに色の濃淡の程度を分けて示している。
図1(b)では、基準面に対する表面の位置が、39.296μm、29.652μm、28.090μm、20.618μm、18.140μm、5.674μm、−1.748μm、−9.274μm、−16.743μm、−24.116μm、−31.687μm、−39.159μm、−42.895μmにある場合について着目し、これらの位置ごとに色の濃淡の程度を分けて示している。
実施例1、比較例1のいずれの基板も、外周部分に対して中央部分が盛り上がった形状をなしている。SORIの数値、凹凸の分布の比較から、実施例1の基板と比較例1の基板とは、反りや表面の凹凸などによる完全平面からのずれに関して、ほとんど同じ形状であることがわかる。これらの結果から、酸化珪素物を溶解しない陽極酸化でも、CMP加工後の反り状態を実現できることが分かる。
2つの基板は、いずれもas−slicedの状態で入手し、共通の基板IDをもつ同一インゴットであるが、両者がほとんど同じ形状であることから、同一切断ロットであると推認できる。
CMP加工は、準備から片付け、基板の形状評価を含めて8時間を要した。CMP装置から排出されるCMP工程排水は、そのまま排水できないため、ポリタンクに回収した。また、CMP装置が高額であるだけでなく、スラリーやパッド等の消耗材も高額であることから、イニシャルコスト、ランニングコスト双方とも高額である。
(実施例2)
市販の両鏡面加工された100mm径n型(0001)4H−SiC(4°オフ)単結晶基板を、#8000ダイヤモンドホイールを使用し、ホイール回転速度を1250rpm、ワーク回転速度を300rpm、ホイール送り速度を0.4μm/sとした研削条件にて、C面、Si面の順に、それぞれ約10ミクロンずつ除去した。基板のSi面で測定した厚みは333.8μmで、SORIの値は13.6μmであった。この基板を第1の実施例と同様に陽極酸化したところ、基板のSi面で測定したSORIの値は9.2μmであった。
(比較例2)
第2の実施例で使用した単結晶SiC基板と共通の基板IDを有するものを、第2の実施例と同様に、#8000ダイヤモンドホイールを使用し、ホイール回転速度を1250rpm、ワーク回転速度を300rpm、ホイール送り速度を0.4μ/sの研削条件にて、C面、Si面の順に、それぞれ約10μmずつ除去した。基板のSi面で測定した厚みは334.7μmで、SORIの値は14.4μmであった。この基板を第1の比較例と同様にCMP加工したところ、Si面で測定したSORIの値は9.3μmであった。
図2(a)、(b)に、基板の形状を表す測定データを示す。図2(a)は、陽極酸化処理を伴った実施例2による基板の斜視図である。図2(b)は、CMP処理を伴った比較例2による基板の斜視図である。図2(a)、(b)の色の濃淡の分布は、基準面に対する厚さ方向の凹凸の分布を示している。
図2(a)では、基準面に対する表面の位置が、42.314μm、30.837μm、30.959μm、23.388μm、15.214μm、8.245μm、0.513μm、−6.898μm、−14.459μm、−22.441μm、−29.612μm、−37.184μm、−40.969μmにある場合について着目し、これらの位置ごとに色の濃淡の程度を分けて示している。
図2(b)では、基準面に対する表面の位置が、39.296μm、29.652μm、28.090μm、20.618μm、18.140μm、5.674μm、−1.748μm、−9.274μm、−16.743μm、−24.116μm、−31.687μm、−39.159μm、−42.895μmにある場合について着目し、これらの位置ごとに色の濃淡の程度を分けて示している。
実施例2、比較例2のいずれの基板も、中央部分に対して対向する2つの端部が反り上がった形状をなしている。SORIの数値、凹凸の分布の比較から、実施例2の基板と比較例2の基板とは、反りや表面の凹凸などによる完全平面からのずれに関して、ほとんど同じ形状であることがわかる。これらの結果から、酸化珪素物を溶解しない陽極酸化でも、CMP加工後の反り状態を実現できることが分かる。
(実施例3)
Alをドープしたp型(0001)4H−SiC(4°オフ)単結晶基板の小片を準備し、電解質水溶液との接液面(Si面、C面)の一部を樹脂でマスキングすることで、陽極酸化が起こるか否かを確認するための試験を、実施例1と同様の手法で行った。
図3(a)、(b)は、それぞれ、陽極酸化処理後の基板のSi面、C面を光学顕微鏡で観察した結果を示している。Si面、C面とも、マスキングしなかった部位で干渉色が認められ、マスキングした部位では明瞭でない加工痕が顕在化している。この結果は、基板に加工変質層が残っており、マスキングしなかった部位では、その部分が優先的に陽極酸化されたことを意味している。この結果から、p型の基板でも問題なく陽極酸化できることが確認できた。
なお、実施例1で示したn型のSiC基板の場合と同様に、p型のSiC基板の場合でも上水を電解質水溶液として、4V、1分間の電圧追加を行った場合には、十分な電流が得られないことが明白であるので、十分な陽極酸化を行うことができない。また、導電率が200マイクロジーメンス/メートル(2マイクロジーメンス/センチメートル)の脱イオン水を電解質水溶液として、15V、1分間の電圧印加を行った場合にも、十分な電流が得られないので、十分な陽極酸化を行うことができない。
(実施例4)
市販の両鏡面加工された100mm径n型(0001)4H−SiC(4°オフ)単結晶基板のC面を、#4000ダイヤモンドホイールを使用し、ホイール回転速度を1250rpm、ワーク回転速度を300rpm、ホイール送り速度を1μm/sとした研削条件にて、基板の厚み方向に約8μm除去した。さらに、#8000ダイヤモンドホイールを使用し、ホイール回転速度を1250rpm、ワーク回転速度を300rpm、ホイール送り速度を0.4μm/sとした研削条件にて、基板の厚み方向に約8μm除去した。
研削加工前の基板のSi面で測定した厚みは355.7μmで、SORIの値は11.5μmであったが、研削加工後の基板のSi面で測定した厚みは339.4μmであり、SORIの値は53.5μmであった。基板の形状は、Si面側に凹むお椀型であり、C面を研削加工することにより、導入された加工変質層に起因するトワイマン効果による形状変化が認められた。
また、研削加工前の基板Si面の表面粗さRaの値は、0.355nm、C面の表面粗さRaの値は、0.433nmであったが、研削加工後の基板のC面の表面粗さRaの値は、0.945nmに増大していた。この基板のC面を第1の実施例と同様に陽極酸化したところ、基板のSi面で測定したSORIの値は11.0μmと、ほぼ研削加工前の値まで減少していた。
また、基板のC面の表面粗さRaの値は8.2nmに増大していた。陽極酸化した基板を室温の50%フッ化水素酸水溶液に1分間浸漬して、陽極酸化による生成物を除去した。その結果、基板のSi面で測定したSORIの値は11.9μmであり、陽極酸化後とほぼ変わらなかった。また、基板のC面の表面粗さRaの値は2.4nmであり、研削後、陽極酸化前の値より大きい値であった。この実施例においては、Si面が鏡面であり、C面が大きい面粗度を有する面であり、トワイマン効果の無い、SORIの値が小さい基板が得られた。
(第5の実施例)
市販の両鏡面加工された100mm径n型(0001)4H−SiC(4°オフ)単結晶基板C面を、#4000ダイヤモンドホイールを使用し、ホイール回転速度を1250rpm、ワーク回転速度を300rpm、ホイール送り速度を1μm/sとした研削条件にて約14μm除去した。
研削加工前の基板のSi面で測定した厚みは355.2μmであり、SORIの値は12.7μmであったが、研削加工後の基板Si面で測定した厚みは341.2μmであり、SORIの値は149.8μmであった。基板の形状は、Si面側に凹むお椀型であり、C面を研削加工することで導入された加工変質層に起因するトワイマン効果による形状変化が認められた。
また、研削加工前の基板のSi面の表面粗さRaの値は0.337nm、C面の表面粗さRaの値は0.490nmであったが、研削加工後の基板のC面の表面粗さRaの値は、10.0nmに増大していた。この基板のC面を第1の実施例と同様に陽極酸化したところ、基板Si面で測定したSORIの値は65.2μmと、かなり減少した。また、基板C面の表面粗さRaの値は11.4nmに増大していた。
さらに、この基板のC面に対し、実施例1と同様な陽極酸化を繰り返し行い、合計6回(6分間)の陽極酸化を行ったところ、基板のSi面で測定したSORIの値は26.4μmまで減少し、基板のC面の表面粗さRaの値は41.2nmに増大していた。合計6回陽極酸化した基板、を室温の50%フッ化水素酸水溶液に1分間浸漬して、陽極酸化による生成物を除去した。その結果、基板のSi面で測定したSORIの値は20.7μmであり、陽極酸化後よりもさらに少し小さくなった。また、基板のC面の表面粗さRaの値は16.2nmであり、研削後、陽極酸化前の値より大きい値であった。この実施例においては、Si面が鏡面であり、C面が大きい面粗度を有する面であり、トワイマン効果が軽減され、SORIの値がハンドリング上十分小さい基板が得られた。
コスト、時間、労力、環境等、いずれの観点からみても非常に負荷の大きい工程であるCMPを行うことなく、単結晶SiC基板の形状に影響を与える加工変質層に起因する残留応力を効果的に除去することができる。そのため、単結晶SiC基板の形状を、CMPを行わないで、簡便、迅速、正確、安価、安全に、CMP後と同等の形状となるように制御することが可能になり、工程の最適化や、継続的改善を図る取組み等を大いに加速することができる。

Claims (7)

  1. 単結晶SiC基板の形状を制御する方法であって、
    単結晶SiC基板は少なくとも片面が機械的加工により加工され、容器に入れた電解質水溶液に機械加工された片面のみを接液させ、
    前記単結晶SiC基板が陽極となり、前記単結晶SiC基板の接液面との距離が一定になるよう陰極を配置した上で、前記陽極と前記陰極との間に直流電圧を印加し、
    前記単結晶SiC基板の接液面を、生成物の溶解を伴わない状態で陽極酸化させ、前記生成物を当該単結晶SiC基板の表面に残存させる陽極酸化処理を行い、
    前記単結晶SiC基板の反り形状を、CMPを行うことなく制御することを特徴とする単結晶SiC基板の形状を制御する方法。
  2. 前記陽極酸化処理において、前記電解質水溶液を、フッ化水素酸を含まないものとすることを特徴とする請求項1に記載の単結晶SiC基板の形状を制御する方法。
  3. 前記機械的加工が、ラップ、ポリッシュ、研削の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載の単結晶SiC基板の形状を制御する方法。
  4. 前記電解質水溶液の導電率が1ミリジーメンス/メートル(10マイクロジーメンス/センチメートル)以上、10ジーメンス/メートル(100ミリジーメンス/センチメートル)以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の単結晶SiC基板の形状を制御する方法。
  5. 前記少なくとも片面が機械的加工により加工された単結晶SiC基板が、第1の面と第2の面の両方の面が機械的加工により加工された単結晶SiC基板であって、第1の面と第2の面の両方の面の表面粗さRaが10nm以下となるまで機械的加工を行い、片面ずつ両面を陽極酸化させ、両面の加工変質層を除去することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の単結晶SiC基板の形状を制御する方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の単結晶SiC基板の形状を制御する方法で製造することを特徴とする単結晶SiC基板の製造方法。
  7. 前記陽極酸化処理の後において、当該処理後の前記単結晶SiC基板のSORIを測定する工程を、更に有することを特徴とする請求項6に記載の単結晶SiC基板の製造方法。
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