JP6595270B2 - 食品改良剤 - Google Patents

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Description

本発明は、α−グルコシダーゼを用いて飲食品を改良する技術に関する。特に本発明は、α型のオリゴ糖類や多糖類に作用してα−1,2結合を有する糖質とα−1,3結合を有する糖質を生成するα−グルコシダーゼを用いて、飲食品の特性を改良する技術に関する。
飲食品の価値は、その品質によって大きく左右されるが、近年、飲食品に求められる品質は多様性を増している。飲食品の品質の中でも、食感は、食品の価値に大きな影響を及ぼす要因の1つである。また、近年、食品の健康機能に対する消費者の要求も大きくなっている。澱粉類を含む原料を加工して製造する飲食品においても、その食感や健康機能性等の品質に対する消費者の要求が大きくなっており、飲食品に含まれる澱粉の構造や糖の結合様式が、飲食品の品質に影響する主な要因として挙げられる。
澱粉は、α−1,4結合によってグルコースが直鎖状に結合したアミロースと、α−1,4結合が連なった直鎖の途中でα−1,6結合で分岐した構造を有するアミロペクチンとの混合物である。澱粉に水を加えて加熱すると糊化して、糊化澱粉と呼ばれる状態になる。しかし、糊化した澱粉を放置すると、水が分離してしまい、「澱粉の老化」と呼ばれる現象が生じる。米飯やパンなどの澱粉を含む食品の食感を、室温またはそれ以下の温度に放置しておくと、時間とともに固くなるが、これは、澱粉の老化が原因であると考えられている。
澱粉の老化を抑制する方法として酵素の使用が提案されている。澱粉に酵素を作用させることで、澱粉の構造を改良し、澱粉の老化を抑制することにより保存性を高めるなどの効果が得られる。糖転移活性を有するα−グルコシダーゼとして知られている、主に基質よりも重合度が1つ大きい糖質を生成するトランスグルコシダーゼ(アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)由来のα−グルコシダーゼ)を、例えば、米飯、米麺、パン、うどん、ポテトサラダ(特許文献1)、畜肉・水産加工食品(特許文献2)、改質澱粉(特許文献3)の製造に使用することが提案されている。また、清酒醸造に際して、α−アミラーゼ、上述したトランスグルコシダーゼおよび、酸性プロテアーゼを添加することにより、非発酵性オリゴ糖を主として含むことを特徴とするコクのある低アルコール清酒の製造方法が提案されている(特許文献4)。しかしながら、いずれも得られた飲食品の食感改良効果が低く、品質の良い食品を製造するには不十分であった。
また、α1,2結合を有する糖質については、還元力が弱くメイラード反応性が弱い、う蝕原性菌によって酸醗酵されないなどの機能性(非特許文献1)が報告されている。
α1,3結合を有する糖質に特徴的な機能としては、食塩を含む食品の”塩かど”を緩和し、低食塩下での嗜好性を改良する食品風味改良剤(特許文献5)や、食品用の色素退色防止効果(特許文献6)などの物性改良剤としての用途のほか、生理機能として、ラクトバチルス属由来の菌と併用することによりインターロイキン12の産生を誘導する免疫賦活効果(特許文献7)やニゲロオリゴ糖を与えることにより、病原菌に暴露された植物が、病原菌に対する自己免疫作用として、抗菌作用を有するファイトアレキシンを植物体内に誘導蓄積させる機能(特許文献8)などが報告されている。
WO2005/096839 WO2008/156126 WO2011/021372 特公昭62−10635号公報 特開平10−210949号公報 特開2000−189101号公報 特開平11−228425号公報 特開平10−36210号公報
西本友之他,日本応用糖質科学会2001年度大会講演要旨集,第48巻、413頁(2001年)
本発明の課題は、澱粉類を含む原料を加工して製造される飲食品について、その特性を改良する技術を提供することである。特に本発明においては、α型のオリゴ糖類およびα型の多糖類からなる群より選択される糖質に作用し、α−1,2結合およびα−1,3結合を有する糖質を生成するα−グルコシダーゼを使用することによって、飲食品の特性を改良する技術を提供することをその目的とする。
本発明者らは、アスペルギルス(Aspergillus)属に属するα−グルコシダーゼによってα−1,2結合およびα−1,3結合を有する糖質が生成されることを既に見出している(特開2011−177118号公報)。
本発明者らがさらに検討を進めたところ、α型のオリゴ糖類およびα型の多糖類からなる群より選択される糖質に作用し、α−1,2結合およびα−1,3結合を有する糖質を生成するα−グルコシダーゼを使用することによって、意外にも、飲食品の特性を大きく改良できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、これに限定されるものではないが、以下の態様を包含する。
本発明の一態様である食品改良剤は、α−グルコシダーゼを含む、澱粉含有原料を加工して製造される飲食品用の食品改良剤であって、前記α−グルコシダーゼが、α型のオリゴ糖類およびα型の多糖類からなる群より選択される糖質に作用し、α−1,2結合を有する糖質とα−1,3結合を有する糖質を生成するものである、飲食品用の食品改良剤である。
本発明は、米加工品の品質を改良するためのものであってもよく、小麦加工品の品質を改良するためのものであってもよく、大麦加工品の品質を改良するためのものであってもよく、いも類加工品の品質を改良するためのものであってもよい。
本発明において、前記α−グルコシダーゼをコードするアミノ酸配列が、配列番号1〜10のいずれかに記載されたアミノ酸配列と60%以上の同一性を有してもよい。
本発明において、前記α−グルコシダーゼをコードするアミノ酸配列が、
配列1:FQSQY、
配列2:LWIDMNEA、
配列3:EYDTHNLYG、
配列4:VGHWLGDN、
配列5:GEPFL、及び、
配列6:FYDWYTG、
からなる群より選択されるいずれか1以上の配列を含有してもよい。
本発明において、前記α−グルコシダーゼが、アスペルギルス(Aspergillus)属菌由来のα−グルコシダーゼであってもよい。
本発明の他の一態様は、α−グルコシダーゼを澱粉に作用させることを含む、澱粉含有原料を加工して製造される飲食品の改良方法であって、前記α−グルコシダーゼが、α型のオリゴ糖類およびα型の多糖類からなる群より選択される糖質に作用し、α−1,2結合を有する糖質とα−1,3結合を有する糖質を生成するものである、飲食品の改良方法である。
本発明の他の一態様は、
澱粉をα−グルコシダーゼで処理する工程、
処理した澱粉を加工食品に添加する工程、
を含む、加工食品の品質の改良方法であって、
α−グルコシダーゼがα型のオリゴ糖類およびα型の多糖類からなる群より選択される糖質に作用し、α1,2結合を有する糖質とα−1,3結合を有する糖質を生成する加工食品の品質の改良方法である。
本発明は、畜肉加工食品または水産加工食品の品質を改良するためのものであってもよい。
本発明に基づいて、α−1,2結合およびα−1,3結合を有する糖質を生成するα−グルコシダーゼを使用することによって、飲食品の特性を改良することが可能である。
図1は、実験例1−2で得られたアスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)ATCC10254株由来の精製酵素を用いて得られた反応生成物中の二,三糖類成分の組成を示すグラフである。 図2は、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)RIB40由来の翻訳伸長因子TEF1のプロモーター領域とともに、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)CBS513.88株由来α−グルコシダーゼ(Accession no. XP_001389510)遺伝子を組み込んだプラスミドベクターの構造を示す図である。 図3は、実験例2−1で行った糊化特性測定条件を示す図である。
澱粉を含む原料(澱粉含有原料)
本発明は、澱粉を含む原料を加工して製造する飲食品に関する。本発明において、澱粉とは、穀類やイモ類、豆類等の植物の組織中に存在する貯蔵物質であり、D-グルコースを構成体とする水に不溶性のグルカンである。澱粉は、鎖状分子のアミロースと、多岐に分岐したアミロペクチンから構成される。本発明の澱粉含有原料に含まれる澱粉は、特に限定されないが、グルコース重合度が100以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましい。
本発明において、澱粉を含有する原料としては、特に限定されないが、米、小麦、とうもろこし、大麦等の穀類、じゃがいも、さつまいも、キャッサバ等のイモ類、大豆、えんどう豆等の豆類、さらに、これらの原料から公知の方法で抽出した澱粉などがあげられる。公知の方法で抽出した澱粉の例としては、特に限定されないが、米澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ等が挙げられる。さらに、公知の方法で抽出した澱粉に、物理的処理または化学的処理を、単独または2種以上組合せて行った加工澱粉等が挙げられる。物理的に処理した加工澱粉の例としては、α化澱粉、湿熱処理澱粉等が挙げられ、化学的に処理した加工澱粉の例としては、ヒドロキシプロピル澱粉等のエーテル化誘導体、酢酸澱粉等のエステル化誘導体、リン酸架橋澱粉等の架橋誘導体等が挙げられる。
飲食品
本発明において、飲食品は、澱粉を含む原料を加工し製造するものであれば特に限定されないが、たとえば穀類加工品、イモ類加工品、豆類加工品等を挙げることができる。また、前記の公知の方法で抽出した澱粉を含有する原料を加工した飲食品も含まれる。穀類加工品の例としては、米加工品(米飯、もち、清酒、甘酒、米粉を原料とする和菓子等)、小麦加工品(パン、麺、中華饅頭や餃子の皮、ビザ生地、パイ生地、焼菓子、生菓子等)、大麦加工品(パン、ビール、ビール様飲料等)、コーン加工品(コーンミール、コーンフレーク、コーンウィスキー等)が挙げられるが、これらに限定されない。イモ類加工品の例としては、じゃがいも加工品(マッシュポテト、フライドポテト、ハッシュドポテト、ニョッキ、ポテトチップス等)、さつまいも加工品(スイートポテト、いもようかん等)が挙げられるが、これらに限定されない。また、本発明の飲食品には、公知の方法で抽出した澱粉に、本発明のα−グルコシダーゼを作用させた後、物理的処理または化学的処理を、単独または2種以上組合せて行った加工澱粉も含まれる。
α−グルコシダーゼ
本発明は、α型のオリゴ糖類、およびα型の多糖類からなる群より選択される糖質に作用し、α−1,2結合およびα−1,3結合を生成することのできるα−グルコシダーゼの使用等に関する。本発明は澱粉含有原料に含まれる澱粉そのものに直接的にα−グルコシダーゼを作用させて、原料中の澱粉の性質を変化させる。性質の変化した澱粉は、グルコース重合度が好ましくは100以上、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは10,000以上である。この性質が変化した澱粉を含む原料を用いて作製した飲食品は、性質を変化させていない澱粉を含む原料を用いて作製した飲食品よりも、飲食品としての品質が高い。例えば、本発明によれば、性質を変化させていない澱粉を含む原料を用いるよりも、より柔らかい食品を作製することができる。
本発明において、α型のオリゴ糖類とは、分子内にα−グルコシド結合を有する2糖〜9糖の糖質をいう。α型のオリゴ糖類の例としては、マルトース、コージビオース、ニゲロース、イソマルトース、トレハロース、マルトトリオース、パノース、イソマルトトリオース、マルトテトラオース、イソマルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース、α−サイクロデキストリン、β−サイクロデキストリン、γ−サイクロデキストリン等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において、α型の多糖類とは、分子内にα−グルコシド結合を有する10糖以上の糖質をいう。α型の多糖類の例としてはグリコーゲン、デキストラン、アミロース、可溶性澱粉等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明で使用するα−グルコシダーゼは、α−1,2結合およびα−1,3結合を有する糖質を生成することができる。α−1,2結合を有する糖質とは、分子内にα−1,2結合を有する糖質をいい、α−1,3結合を有する糖質とは、分子内にα−1,3結合を有する糖質をいう。糖質がα−1,2結合やα−1,3結合を有するかどうかは、たとえば、NMR分析法、メチル化分析法(Journal of Biochemistry 第55巻 第205項 1964年)等によって判断することができる。
本発明で使用するα−グルコシダーゼは、由来する生物を問わないが、
糸状菌(Absidia、Acremonium、Actinomadura、Alternaria、Aspergillus、Chaetomium、Coprinus、Coriolus、Geotrichum、Humicola、Monascus、Mortierella、Mucor、Nocardiopsis、Oidiodendron、Penicillium、Rhizomucor、Rhizopus、Trichoderma、Verticillium等)
担子菌(Coliolus、Corticium、Cyathus、Irpexs、Polyporus、Pycnoporus、Trametes等)、
細菌(Aeromonas、Agrobacterium、Alcaligenes、Agrobacterium、Alteromonas、Arthrobacter、Bacillus、Brevibacterium、Chromobacterium、Corynebacterium、Crypnohectria、Erwinia、Escherichia、Flavobacterium、Klebsiella、Lactobacillus、Lactococcus、Leuconostoc、Microbacterium、Micrococcus、Pimelobacter、Plesiomonas、Protaminobacter、Pseudomonas、Serratia、Streptococcus、Streptoverticillium、Sulfolobus、Thermus、Xanthomonas等)
放線菌(Actinomadura、Actinomyces、Actinoplanes、Amycolatopsis、Eupenicillium、Nocardiopsis、Streptomyces、Thermomonospora等)
酵母(Aureobasidium、Candida、Irpex、Kluyveromyces、Pycnoporus、Saccharomyces、Trichosporon等)など食品製造にて使用例のある株が望ましい。
本発明で使用するα−グルコシダーゼは、たとえばアスペルギルス(Aspergillus)属に属する糸状菌(以下、単にアスペルギルス属菌と表記する)から、α型のオリゴ糖類およびα型の多糖類からなる群より選択される糖質に作用し、α−1,2結合を有する糖質とα−1,3結合を有する糖質を生成する酵素として得ることができる。
本発明で使用するα−グルコシダーゼは、以下の酵素化学的性質をさらに有する酵素であることが好ましい。これにより、工業的に高温条件下や酸性条件下で飲食品を製造する場合でも、効率的に飲食品の品質を改良できる。
(1)温度安定性:pH4.0、30分間保持で、65℃では初期活性の90%以上の残存;
(2)pH安定性:4℃、24時間保持で、pH3.0〜5.5。
また、本発明で使用するα−グルコシダーゼは、以下の酵素化学的性質を有する酵素であってもよい:
(3)基質特異性:マルトース、ニゲロース、コージビオース、マルトオリゴ糖などα−グルコオリゴ糖および、アミロース、可溶性澱粉などのα−グルカンの非還元末端のαグルコシド結合を分解し、グルコースを遊離する。また、スクロースを分解する活性を有する;
(4)分子量:SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により、48,000ダルトンおよび59,000ダルトン;
(5)等電点:pI4.9〜5.5(中心値5.2);
(6)至適温度:pH4.0、10分間反応で、65℃;
(7)至適pH:50℃、10分間反応で、pH3.5。
本発明で使用するα−グルコシダーゼを得るためのアスペルギルス属菌としては、アスペルギルス・ソヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アキュレタス(Aspergillus aculeatus)に属する菌を好適に用いることができる。中でも、アスペルギルス・ニジュールATCC10254株、アスペルギルス・ニジュールNBRC4043株、アスペルギルス・ニジュールCBS513.88株、アスペルギルス・ニジュールATCC1015株、アスペルギルス・ニジュールNBRC4066株、アスペルギルス・オリゼーRIB40、アスペルギルス・ニデュランスATCC38163株、アスペルギルス・カワチIFO4308株、アスペルギルス・アキュレタスATCC16872株、アスペルギルス・ソヤNBRC4239株などが好適な菌株として挙げられる。
上記のアスペルギルス属菌を、液体培養および固体培養等の公知の培養方法を用いて培養し、その培養物から公知の方法によってα−グルコシダーゼ活性を有する酵素を採取することで、本発明で使用するα−グルコシダーゼを得ることができる。
本発明で使用するα−グルコシダーゼは、アスペルギルス・ニジュールCBS513.88株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.: XP_001389510、配列番号1)のアミノ酸配列、アスペルギルス・ニジュールATCC1015株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.:EHA26885、配列番号2)のアミノ酸配列、アスペルギルス・カワチIFO4308株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.:GAA87366、配列番号3)、配列番号4に記載の配列を有するα−グルコシダーゼ、アスペルギルス・ニジュールNBRC4066株由来のα−グルコシダーゼ(配列番号5)、アスペルギルス・ニデュランスATCC38163株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.:ABF50846、配列番号6)、アスペルギルス・オリゼーRIB40株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.:XP_001818060、配列番号7)、アスペルギルス・ニデュランスATCC38163株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.:ABF50883、配列番号8)、アスペルギルス・アキュレタスATCC16872株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.:Aacu16872_025147、配列番号9)、又は、アスペルギルス・ソヤNBRC4239株由来のα−グルコシダーゼ(配列番号10)を基準として、60%又は65%以上の同一性を有することが好ましく、70%又は75%以上の同一性を有することがより好ましく、80%、85%、90%以上又は95%以上の同一性を有することがさらに好ましく、アスペルギルス・ニジュールCBS513.88株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.: XP_001389510、配列番号1)のアミノ酸配列を基準として、60%以上の同一性を有することが最も好ましい。
本発明で使用するα−グルコシダーゼは、アミノ酸配列に、以下の配列1〜6からなる群より選択されるいずれか1以上の配列を含有することが好ましい。
配列1:FQSQY
配列2:LWIDMNEA
配列3:EYDTHNLYG
配列4:VGHWLGDN
配列5:GEPFL
配列6:FYDWYTG
2つのアミノ酸配列の同一性%は、視覚的検査および数学的計算によって決定することができる。また、コンピュータープログラムを用いて同一性%を決定することもできる。そのようなコンピュータープログラムとしては、例えば、BLAST、FASTA(Altschulら、 J. Mol. Biol., 215:403-410(1990))、及びClustalW(http://www.genome.jp/tools/clustalw/)等があげられ、デフォルトのパラメーターを用いることができる。また、BLASTプログラムによる同一性検索の各種条件(パラメーター)は、「Altschulら(Nucl. Acids. Res., 25, p.3389-3402, 1997)」に記載されたもので、米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)やDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから公的に入手することができる(BLASTマニュアル、Altschulら NCB/NLM/NIH Bethesda, MD 20894)。また、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX (ゼネティックス社製)、DNASIS Pro(日立ソフト社製)、Vector NTI(Infomax社製)等のプログラムを用いて決定することもできる。
複数のアミノ酸配列を並列させる特定のアラインメントスキームは、配列のうち、特定の短い領域のマッチングをも示すことができるため、用いた配列の全長配列間に有意な関係がない場合であっても、そのような領域において、特定の配列同一性が非常に高い領域を検出することもできる。さらに、BLASTアルゴリズムは、BLOSUM62アミノ酸スコア付けマトリックスを用いることができるが、選択パラメーターとしては、以下のものを用いることができる:(A)低い組成複雑性を有するクエリー配列のセグメント(WoottonおよびFederhenのSEGプログラム(Computers and Chemistry, 1993)により決定される;Wootton及びFederhen, 1996「配列データベースにおける組成編重領域の解析(Analysis of compositionally biased regions in sequence databases)」Methods Enzymol., 266: 544-71も参照されたい)、又は、短周期性の内部リピートからなるセグメント(ClaverieおよびStates(Computers and Chemistry, 1993)のXNUプログラムにより決定される)をマスクするためのフィルターを含むこと、および(B)データベース配列に対する適合を報告するための統計学的有意性の閾値、又はE−スコア(KarlinおよびAltschul, 1990)の統計学的モデルにしたがって、単に偶然により見出される適合の期待確率;ある適合に起因する統計学的有意差がE−スコア閾値より大きい場合、この適合は報告されない。
配列番号1〜10のいずれかで示されるアミノ酸配列と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質は、公知の手法によって適宜調製することができるが、たとえば配列番号1〜10のいずれかで示されるアミノ酸配列に1若しくは複数個(例えば1〜190個、1〜90個、1〜50個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、さらに好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個)のアミノ酸を欠失、置換若しくは付加して調製することができる。
上記のうち、置換は、好ましくは保存的置換である。保存的置換とは、特定のアミノ酸残基を類似の物理化学的特徴を有する残基で置き換えることであるが、もとの配列の構造に関する特徴を実質的に変化させなければいかなる置換であってもよく、例えば、置換アミノ酸が、もとの配列に存在するらせんを破壊したり、もとの配列を特徴付ける他の種類の二次構造を破壊したりしなければいかなる置換であってもよい。
保存的置換は、一般的には、生物学的合成や化学的ペプチド合成で導入されるが、好ましくは、化学的ペプチド合成による。この場合、置換基には、非天然アミノ酸残基が含まれていてもよく、ペプチド模倣体や、アミノ酸配列のうち、置換されていない領域が逆転している逆転型又は同領域が反転している反転型も含まれる。
以下に、アミノ酸残基を置換可能な残基ごとに分類して例示するが、置換可能なアミノ酸残基は以下に記載されているものに限定されるものではない。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニンおよびシクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸および2−アミノスベリン酸
C群:アスパラギンおよびグルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸および2,3−ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリンおよび4−ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニンおよびホモセリン
G群:フェニルアラニンおよびチロシン
非保存的置換の場合は、上記種類のうち、ある1つのメンバーと他の種類のメンバーとを交換することができるが、この場合は、本発明で使用するタンパク質の生物学的機能を保持するために、アミノ酸のヒドロパシー指数(ヒドロパシーアミノ酸指数)を考慮することが好ましい(Kyteら, J. Mol. Biol., 157:105-131(1982))。
また、非保存的置換の場合は、親水性に基づいてアミノ酸の置換を行うことができる。
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸およびその略語は、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature に従うか、又は、例えば、Immunology-A Synthesis(第2版, E.S. GolubおよびD.R. Gren監修, Sinauer Associates,マサチューセッツ州サンダーランド(1991))等に記載されているような、当業界で慣用されている略語に基づく。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示す。
D−アミノ酸等の上記のアミノ酸の立体異性体、α,α−二置換アミノ酸等の非天然アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸、およびその他の非慣用的なアミノ酸もまた、本発明で使用するタンパク質を構成する要素となりうる。
上述したように、配列番号1〜10のいずれかで表されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質は、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 3rd ed.」(Cold Spring Harbor Press (2001))、「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons (1987-1997)、「Kunkel (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 488-92、Kunkel (1988) Method. Enzymol. 85: 2763-6」等に記載の部位特異的変異誘発法等の方法に従って調製することができる。このようなアミノ酸の欠失、置換若しくは付加等の変異がなされた変異体の作製は、例えば、Kunkel法やGapped duplex法等の公知手法により、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばQuikChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて行うことができる。
なお、タンパク質のアミノ酸配列に、その活性を保持しつつ1又は複数個のアミノ酸の欠失、置換、若しくは付加を導入する方法としては、上記の部位特異的変異誘発法の他にも、遺伝子を変異源で処理する方法、および遺伝子を選択的に開裂して選択されたヌクレオチドを除去、置換若しくは付加した後に連結する方法があげられる。
なお、本明細書で用いるタンパク質の表記法は、標準的用法および当業界で慣用されている標記法に基づき、左方向はアミノ末端方向であり、そして右方向はカルボキシ末端方向である。
当業者であれば、当業界で公知の技術を用いて、本明細書に記載したα−グルコシダーゼの適当な変異体を設計し、作製することができる。例えば、本発明で使用するα−グルコシダーゼの生物学的活性にさほど重要でないと考えられる領域をターゲティングすることにより、本発明で使用するタンパク質の生物学的活性を損なうことなくその構造を変化させることができる。タンパク質分子中の適切な領域を同定することができる。また、類似のタンパク質間で保存されている残基および領域を同定することもできる。さらに、本発明で使用するタンパク質の生物学的活性又は構造に重要と考えられる領域中に、生物学的活性を損なわず、かつ、タンパク質のポリペプチド構造に悪影響を与えずに、保存的アミノ酸置換を導入することもできる。
また、配列番号1〜10のいずれかで示されるアミノ酸配列と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質は、α−グルコシダーゼ活性を有するアスペルギルス属菌等の微生物から単離してもよいし、公開されている配列データベース(たとえばNCBIデータベースhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を用いて配列番号1〜10のいずれかで示されるアミノ酸配列と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する微生物を検索し、その微生物から単離してもよい。また、後述するように、α−グルコシダーゼをコードする核酸をアスペルギルス属菌からクローニングし、その核酸をもとに、配列番号1〜10のいずれかで示されるアミノ酸配列と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質を得てもよい。さらに、後述するように、公開されている配列データベース(たとえばNCBIデータベースhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を用いて、α−グルコシダーゼをコードする核酸を検索し、その核酸をもとに、配列番号1〜10のいずれかで示されるアミノ酸配列と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質を得てもよい。
当業者であれば、本発明で使用するタンパク質の生物学的活性又は構造に重要であり、同タンパク質のペプチドと類似するペプチドの残基を同定し、この2つのペプチドのアミノ酸残基を比較して、本発明で使用するタンパク質と類似するタンパク質のどの残基が、生物学的活性又は構造に重要なアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基であるかを予測する、いわゆる、構造−機能研究を行うことができる。さらに、このように予測したアミノ酸残基の化学的に類似のアミノ酸置換を選択することにより、本発明で使用するタンパク質の生物学的活性が保持されている変異体を選択することもできる。また、当業者であれば、本タンパク質の変異体の三次元構造およびアミノ酸配列を解析することもできる。さらに、得られた解析結果から、タンパク質の三次元構造に関する、アミノ酸残基のアラインメントを予測することもできる。タンパク質表面上にあると予測されるアミノ酸残基は、他の分子との重要な相互作用に関与する可能性があるが、当業者であれば、上記したような解析結果に基づいて、このようなタンパク質表面上にあると予測されるアミノ酸残基を変化させないような変異体を作製することができる。さらに、当業者であれば、本発明で使用するタンパク質を構成する各々のアミノ酸残基のうち、一つのアミノ酸残基のみを置換するような変異体を作製することもできる。このような変異体を公知のアッセイ方法によりスクリーニングし、個々の変異体の情報を収集することができる。それにより、ある特定のアミノ酸残基が置換された変異体の生物学的活性が、本発明で使用するタンパク質の生物学的活性に比して低下する場合、そのような生物学的活性を呈さない場合、又は、本タンパク質の生物学的活性を阻害するような不適切な活性を生じるような場合を比較することにより、本発明で使用するタンパク質を構成する個々のアミノ酸残基の有用性を評価することができる。また、当業者であれば、このような日常的な実験から収集した情報に基づいて、単独で、又は他の突然変異と組み合わせて、本発明で使用するタンパク質の変異体としては望ましくないアミノ酸置換を容易に解析することができる。
アスペルギルス属菌の培養に際して用いられる培地の炭素源としては、例えば、グルコース、フルクトース、ショ糖、乳糖、澱粉、グリセリン、デキストリン、レシチン等が、単独で又は組み合わせて用いられ、また、窒素源としては、有機および無機の窒素源の何れもが利用可能であり、そのうち、有機窒素源としては、例えば、ペプトン、酵母エキス、大豆、きなこ、米ぬか、コーンスティープリカー、肉エキス、カゼイン、アミノ酸等が用いられ、一方、無機窒素源としては、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸二アンモニウム、塩化アンモニウム等が用いられることとなる。更に、そのような培地に添加される無機塩や微量栄養素としては、例えば、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、鉄、亜鉛、カルシウム、マンガンの塩類の他、ビタミン等を挙げることができる。また、上記の各種成分を含有する培地成分として小麦ふすま等の天然物を用いることも可能である。
アスペルギルス属菌の培養は、一般に10〜40℃の温度で行なわれるが、好ましくは25〜30℃の培養温度が有利に採用され、更に、培地pHは2.5〜8.0であれば良い。そして、必要な培養期間は、菌体濃度、培地pH、培地温度、培地の構成等によって異なるが、通常、3日〜9日程度であり、目的物であるα−グルコシダーゼが最大に達した頃に、その培養が停止される。
このようにして、アスペルギルス属菌を培養した後、本発明で使用するα−グルコシダーゼを回収する。本発明で使用するα−グルコシダーゼの活性は、培養物の菌体と培地の両方に認められ、公知の方法によって精製して利用することができる。一例として、培養液の処理物を濃縮した粗酵素液を、カラムクロマトグラフィー等に供してグルコシダーゼ活性の高い画分を回収することによって精製し、続いて、精製画分をNative-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(たとえばGEヘルスケア社製「PhastSystem」)に供して単一バンドを回収して精製することにより、単一の精製されたα−グルコシダーゼを得ることができる。
α−グルコシダーゼを用いた飲食品の改質
本発明は、上記のα−グルコシダーゼを用いて、澱粉を含む原料を加工して得られる飲食品の改良方法に関する。本発明によって澱粉の特性を変化させることにより、飲食品の食感や味質を改善することが可能となる。
本発明により得られた、特性が変化した澱粉は、グルコース重合度が好ましくは100以上、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは10,000以上であり、α−1,2結合とα−1,3結合を有することが好ましい。
本発明においては、目的又は効果を考慮して、澱粉を含む原料を加工する飲食品の製造のいずれの段階においてもα−グルコシダーゼを適用してよい。たとえば、飲食品の原料にα−グルコシダーゼを作用させたものを、それに続く製造又は加工の工程に供してよい。また、飲食品の中間製造物または中間加工品にα−グルコシダーゼを作用させたものを、それに続く製造又は加工の工程に供してもよい。さらに、飲食品の製造又は加工の最終段階でα−グルコシダーゼを添加して、飲食品が消費者の使用に供されるまでの間にα−グルコシダーゼが作用するようにしてもよい。
また、本発明においては、澱粉を含有する原料をα−グルコシダーゼで処理したものを加工食品に添加してもよい。加工食品は、原料に何らかの加工を施して得られる食品であれば特に制限はないが、例えば、畜肉加工食品、水産加工食品、乳加工食品、調味料等が挙げられる。
さらに本発明は、一つの態様において、上記α−グルコシダーゼを含む飲食品用の食品改良剤である。本発明の飲食品用の食品改良剤は上記α−グルコシダーゼを含んでおり、澱粉を含む原料から製造される飲食品の特性を向上させることができる。本発明の食品改良剤は、上記α−グルコシダーゼの効果を損なわない範囲で、賦形剤、保存剤、香味料、抗酸化剤、ビタミン類等の追加の成分を含むものであってよい。
本発明の食品改良剤は、上記α−グルコシダーゼを乾燥重量として1〜99%含むものであってよく、5%〜80%含むものであってよく、10%〜50%含むものであってよい。
本発明の食品改良剤は、調製後、必要に応じて殺菌処理を行った後、飲食品の食感や物性の改良剤として、種々の飲食品に使用することができる。
以下、実験例を示しつつ本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実験例に限定されるものではない。また、特に記載しない限り、本明細書において濃度などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
実験例1:α−1,2結合およびα−1,3結合を有する糖質を生成する酵素の取得
(実験例1−1)分析法
1)α−グルコシダーゼ活性の分析方法
マルトースを基質とした加水分解活性にて評価した。具体的には、70μLの試料に対して、5%マルトース水溶液を10μL、100mM酢酸緩衝液(pH4.0)を20μL加え、50℃で10分間反応させた後、沸騰浴で5分間処理することで反応を停止した。反応液中に生成したグルコース量をグルコースCIIテストワコー(和光純薬工業製)にて測定した。1分間に1μmolのマルトースを分解する酵素量を1Uと定義した。
2)二,三糖類成分の分析方法
試料中の二,三糖類成分中の、α−1,2、α−1,3、α−1,4、α−1,6結合を有するオリゴ糖の組成は、試料を以下の条件でアミノカラムによる分析に供して算出した。各ピークは、あらかじめ同条件で分析した標準糖の溶出時間と比較して同定した。
標準糖:
二糖類の標準糖は市販試薬を用い、三糖類の標準糖には市販試薬または以下の手法で得られる組成物を用いた。ニゲロトリオース、ニゲロシルグルコースはBiochimica et Biophysica Acta 第1700巻 189ページ 2004年に記載された手法に従い調製し標準糖とした。コージビオシルグルコースは特開2003−169665号公報に記載された手法に従い調製し標準糖とした。
HPLC測定条件 :
カラム: Unison UK-Amino 250×3mm (インタクト製)
カラム温度 : 50℃
溶媒グラディエント:
(実験例1−2)アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)ATCC10254株由来α−グルコシダーゼの製造・精製
特開2011−177118に記載のアスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)ATCC10254株由来のα−グルコシダーゼは以下のように調製した。
培地として、澱粉:2%、ペプトン:0.25%、酵母エキス:0.25%、大豆粉:1%、リン酸一カリウム:0.03%、硫酸マグネシウム:0.01%、塩化カルシウム:0.01%、及び塩化ナトリウム:0.01%を含み、pH6.5としたものを準備し、培地100mLを、500mL容の三角フラスコに入れて、蒸気滅菌した後、Aspergillus niger ATCC 10254株を植菌し、30℃の温度で3日間、振とう培養を行なった。
上記の種を滅菌水で80倍に希釈し、その10mLを500mLの三角フラスコ内に添加し、オートクレーブ滅菌した10gの小麦ふすまを入れて、水分が均一になるようによく攪拌した後、30℃で4日間、固体培養を行なった。培養終了後、100gの滅菌水で小麦ふすまを洗浄し、16,000×g、30分、4℃で遠心して不溶物を除いた培養液を得た。
得られた培養液を濃縮し、以下の4段階のクロマト分離を行った。
(A)陰イオン交換クロマトグラフィー(1回目):培養液を限外ろ過により20mM酢酸ナトリウム緩衝液pH5.5に置換し、0.2μmのフィルターを通過したものを酵素原液として用いた。分離樹脂はTOYOPEARL DEAE-650M(東ソー社製)を用い、樹脂量(以後CVと記載)は100mLとした。
初発の緩衝液として20mM 酢酸ナトリム緩衝液pH5.5を用いて、0→0.4M塩化ナトリウムの直線的濃度勾配(8CV)で溶出した。溶出液を、(実験例1−1)、1)の方法に従って分析し、マルトース分解活性を含む画分を回収した。
(B)陰イオン交換クロマトグラフィー(2回目):(A)の工程で得られた画分を、限外ろ過により(A)と同じ初発緩衝液に置換し、再度陰イオン交換樹脂による分離を行った。CV=25mL、0→0.25M 塩化ナトリウムの直線的濃度勾配(10CV)の直線的濃度勾配で溶出し、溶出液を、(実験例1−1)、1)の方法に従って分析し、マルトース分解活性を含む画分を回収した。
(C)ゲルろ過クロマトグラフィー:上記(B)の工程で得られた画分を、ゲルろ過クロマトグラフィーにより分画した。(B)の工程で得られた画分は限外ろ過によって0.2Mの塩化ナトリウムを含む20mM 酢酸緩衝液pH5.5 に置換すると同時に、1mLまで濃縮した。同じ緩衝液で平衡化したカラムに供して分画した。得られた画分を、(実験例1−1)、1)の方法に従って分析し、マルトース分解活性を含む画分を回収した。分画は、HiLoad 16/60 Superdex 200pg(GEヘルスケア・ジャパン社製)を2本と、HiLoad 16/60 Superdex 75pg(GEヘルスケア・ジャパン社製)1本を連結したカラムを用いた。
(D)等電点クロマトグラフィー(クロマトフォーカシング):上記(C)の工程で得られた画分を回収し、クロマトフォーカシングを行った。カラムはMonoP 5/200 GL(GEヘルスケア・ジャパン社製)を使用した。初発緩衝液は25mM ヒスチジン−塩酸緩衝液pH5.5、溶出緩衝液はPolybuffer74−塩酸緩衝液pH3.5(GEヘルスケア・ジャパン社製)を使用してpH5.5から3.5の勾配で溶出した。溶出液を、(実験例1−1)、1)の方法に従って分析し、マルトース分解活性を含む画分を回収した。得られた画分を、α‐グルコシダーゼの精製酵素とした。
(実験例1−3)アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)ATCC10254株由来α−グルコシダーゼによるマルトース転移物の分析
(実験例1−2)で得られたアスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)ATCC10254株由来の精製酵素0.5mL(0.9U/mL)を、45%マルトース1mLに作用させ、(最終濃度30%)、55℃で48時間反応後に、沸騰浴槽で10分間加熱し、酵素を失活させた。得られた反応生成物は(実験例1−1)、2)の方法に従って二,三糖類成分の組成を分析した。結果を図1に示す。反応生成物中にα−1,2結合およびα−1,3結合を有する糖質が認められた。
(実験例1−4)アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)NBRC4043株由来α−グルコシダーゼの製造・精製および、転移物の分析
特開2011−177118に記載のアスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)NBRC4043株を培養して得られた培養液よりα−グルコシダーゼの精製酵素を調製した。α−グルコシダーゼの精製方法は(実験例1−2)で行った精製方法と同様の方法で行った。得られた精製酵素を用いて、(実験例1−3)で行った分析方法と同様の方法でマルトースを基質とした場合の転移物を分析した。アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)NBRC4043株由来α−グルコシダーゼを用いて得た反応生成物には、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)ATCC10254株由来α−グルコシダーゼを用いて得た反応生成物と同様にα−1,2結合およびα−1,3結合を有する糖質が認められた。
(実験例1−5)アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)CBS513.88株由来α−グルコシダーゼ(Accession no. XP_001389510)を強発現する遺伝子組み換え株の作製
本発明者らは、特開2011−177118にて、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)ATCC10254株由来α−グルコシダーゼに以下のアミノ酸配列群(a)〜(e)が含まれていることを確認している。
配列(a):LLVEYQTDERLHVMIYDADEEVYQVPESVLPR、
配列(b):TWLPDDPYVYGLGEHSDPMR、
配列(c):IPLETMWTDIDYMDKR、
配列(d):VFTLDPQR、
配列(e):WASLGAFYTFYR
上記配列群を5つすべて有するα−グルコシダーゼとして、特開2011−177118に記載されている、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)CBS513.88株由来α−グルコシダーゼ(Accession no. XP_001389510)を強発現する遺伝子組み換え株を作製した。アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)CBS513.88株由来α−グルコシダーゼ(Accession no. XP_001389510)のアミノ酸配列をコードするDNAの開始コドンからターミネーターを含むように終始コドンの下流300bpまでを増幅させたPCR産物を、In Fusion HD Cloning Kit(クロンテック製)を用いて、高発現プロモーターとしてアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)RIB40由来の翻訳伸長因子TEF1のプロモーター領域とともに、制限酵素Kpn I、Hind IIIで消化したpPTR II(タカラバイオ製)に導入しプラスミドベクターを構築した。プラスミドの設計を図2に示す。そしてアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)ATCC38163株を宿主としてプロトプラスト−PEG法(Agricultural and Biological Chemistry 第51巻 2549ページ 1987年)を行い、遺伝子組み換え株を作製した。
(実験例1−6)アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)CBS513.88株由来α−グルコシダーゼ(Accession no. XP_001389510)の製造および、転移物の分析
(実験例1−5)で作製した遺伝子組み換え株を培養し、α−グルコシダーゼ溶液を調製した。2L容の三角フラスコに、炭素源をグリセロールに改変したツァペック ドックス培地1Lを入れて、蒸気滅菌した後、ピリチアミンを添加し、遺伝子組換え株を植菌し、37℃の温度で4日間、振とう培養を行なった。そして、ミラクロス(メルク・ミリポア社製)で集菌、蒸留水で洗浄し、水分をよく搾った。
得られた菌体のうち100gに、20mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を200mL加え、ヒスコトロン(日音医理科器械製作所社製)で20,000rpm、30秒間の破砕を5回繰り返した。そして10,000rpm、20分間遠心分離を行って上清を回収し、α−グルコシダーゼ溶液とした。取得した酵素は、(実験例1−3)で行った方法と同様の方法でマルトースを基質とした場合の転移物を分析した。その結果、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)CBS513.88株由来α−グルコシダーゼ(Accession no. XP_001389510)を用いて得た反応生成物には、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)ATCC10254株由来α−グルコシダーゼを用いて得た反応生成物と同様にα−1,2結合およびα−1,3結合を有する糖質が認められた。
(実験例1−7)アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)ATCC1015株および、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)IFO4308株由来のα−グルコシダーゼの製造および、転移物の分析
NCBIデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を用いて、上記アミノ酸配列群(a)〜(e)の5つすべてのアミノ酸配列を有するα−グルコシダーゼと推測される配列を検索した。その結果、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)ATCC1015株(α−グルコシダーゼのAccession no.:EHA26885)および、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)IFO4308株(α−グルコシダーゼのAccession no.:GAA87366)がアミノ酸配列群(a)〜(e)の5つをすべて有することが分かった。
アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)ATCC1015株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.:EHA26885、配列番号2)および、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)IFO4308株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.:GAA87366、配列番号3)の各アミノ酸配列をコードするDNAの開始コドンからターミネーターを含むように終始コドンの下流300bpまでを増幅させるためのプライマーを用いてPCRを行い、得られたPCR産物を用いて、(実験例1−5)で行った遺伝子組み換え株作製方法と同様の方法で遺伝子組み換え株を作製した。ATCC1015株由来のα−グルコシダーゼ遺伝子を導入して得られた遺伝子組換え株から抽出したmRNAを鋳型として、逆転写反応によってcDNAを合成した。このcDNAについてシークエンス解析を行い、cDNAの全長配列を決定した。さらに、前記cDNA配列からα−グルコシダーゼのアミノ酸配列を決定した。決定したアミノ酸配列を配列番号4に示す。このアミノ酸配列を、NCBIデータベースでアスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)ATCC1015株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.:EHA26885、配列番号2)のアミノ酸配列として公開されていたものと比較したところ、76残基長いアミノ酸配列となっていた。
(実験例1−6)で行った方法と同様の方法でα−グルコシダーゼ溶液を取得し、(実験例1−3)で行った分析方法と同様にマルトースを基質とした場合の転移物を分析した。その結果、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)ATCC1015株由来のα−グルコシダーゼ(配列番号4)および、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)IFO4308株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.:GAA87366)を用いて得た反応生成物には、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)ATCC10254株由来のα−グルコシダーゼを用いて得た反応生成物と同様にα−1,2結合およびα−1,3結合を有する糖質が認められた。
(実験例1−8)アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)NBRC4066株由来のα−グルコシダーゼの製造および、転移物の分析
(実験例1−7)で設計した、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)ATCC1015株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.:EHA26885)のアミノ酸配列をコードするDNAの開始コドンからターミネーターを含むように終始コドンの下流300bpまでを増幅させるためのプライマーを用いて、アスペルギルス属の分譲株から抽出したゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。得られたPCR産物を用いて遺伝子配列を決定した(配列番号11)。PCRによる増幅が認められた分譲株について、得られたPCR産物を用いて、(実験例1−5)で行った遺伝子組み換え株作製方法と同様の方法で遺伝子組み換え株を作製した。(実験例1−6)で行った方法と同様の方法でα−グルコシダーゼ溶液を取得し、(実験例1−3)で行った分析方法と同様の方法でマルトースを基質とした場合の転移物を分析した。その結果、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)NBRC4066株由来のα−グルコシダーゼによる反応生成物には、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)ATCC10254株由来のα−グルコシダーゼと同様にα−1,2結合およびα−1,3結合を有する糖質が認められた。また、このアスペルギルス・ニジュールNBRC4066株由来のα−グルコシダーゼ遺伝子を導入して得られた遺伝子組換え株から抽出したmRNAを鋳型として、逆転写反応によってcDNAを合成した。このcDNAについてシークエンス解析を行い、cDNAの全長配列を決定した(配列番号12)。さらに、前記cDNA配列からα−グルコシダーゼのアミノ酸配列を決定した。決定したアミノ酸配列を配列番号5に示す。アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)NBRC4066株のα−グルコシダーゼ(配列番号5)のアミノ酸配列は、上記アミノ酸配列群(a)〜(e)の5つをすべて有していた。
(実験例1−9)アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)ATCC38163株由来のα−グルコシダーゼの製造および、転移物の分析
NCBIデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を用いて、上記アミノ酸配列群(a)〜(e)から選択される1以上のアミノ酸配列を有する、α−グルコシダーゼと推測される配列を検索した。その結果、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)ATCC38163株(α−グルコシダーゼのAccession no.:ABF50846、配列番号6)が、アミノ酸配列(e)を有する、α−グルコシダーゼと推測される配列を持っていた。(実験例1−5)の手法に従って、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)ATCC38163株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.:ABF50846)のアミノ酸配列をコードするDNAの開始コドンからターミネーターを含むように終始コドンの下流300bpまでを増幅させたPCR産物を用いて、遺伝子組み換え株を作製した。
(実験例1−6)の方法に従ってα−グルコシダーゼ溶液を取得し、(実験例1−3)の方法に従ってマルトースを基質とした場合の転移物を分析した。その結果、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)ATCC38163株由来α−グルコシダーゼ(Accession no.:ABF50846)を用いて得た反応生成物には、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)ATCC10254株由来のα-グルコシダーゼを用いて得た反応生成物と同様にα−1,2結合およびα−1,3結合を有する糖質が認められた。
(実験例1−10)アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)RIB40株、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)ATCC38163株、アスペルギルス・アキュレタス(Aspergillus aculeatus)ATCC16872株由来のα−グルコシダーゼの製造および、転移物の分析
NCBIデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を用いて(実験例1−5)に記載した、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)CBS513.88株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.: XP_001389510)のアミノ酸配列と同一性の高い配列を検索した。CBS513.88株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.: XP_001389510)のアミノ酸配列と同一性の高い、α−グルコシダーゼと推測される配列をコードするDNAの開始コドンからターミネーターを含むように終始コドンの下流300bpまでを増幅させたPCR産物を用いて、(実験例1−5)で行った手法と同様の手法で遺伝子組み換え株を作製した。
(実験例1−6)の手法に従ってα−グルコシダーゼ溶液を取得し、(実験例1−3)で行った分析方法と同様の方法でマルトースを基質とした場合の転移物を分析した。その結果、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)RIB40株の由来α−グルコシダーゼ(Accession no.:XP_001818060、配列番号7)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)ATCC38163株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.:ABF50883、配列番号8)を用いて得た反応生成物には、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)ATCC10254株由来α−グルコシダーゼを用いて得た反応生成物と同様にα−1,2結合およびα−1,3結合を有する糖質が認められた。
また、Aspergillus Genome Database(http://www.Aspergillusgenome.org/)を用いて(実験例1−5)に記載した、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)CBS513.88株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.: XP_001389510)のアミノ酸配列と同一性の高い配列を検索した。CBS513.88株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.: XP_001389510)のアミノ酸配列と同一性の高い、α−グルコシダーゼと推測される配列をコードするDNAの開始コドンからターミネーターを含むように終始コドンの下流300bpまでを増幅させたPCR産物を用いて、(実験例1−5)で行った方法と同様の方法で遺伝子組み換え株を作製した。
(実験例1−6)で行った方法と同様の方法でα−グルコシダーゼ溶液を取得し、(実験例1−3)で行った方法と同様の方法でマルトースを基質とした場合の転移物を分析した。その結果、アスペルギルス・アキュレタス(Aspergillus aculeatus)ATCC16872株の由来α−グルコシダーゼ(Accession no.:Aacu16872_025147、配列番号9)を用いて得た反応生成物には、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)ATCC10254株由来α−グルコシダーゼを用いて得た反応生成物と同様にα−1,2結合およびα−1,3結合を有する糖質が認められた。
(実験例1−11)アスペルギルス・ソヤ(Aspergillus sojae)NBRC4239株由来のα−グルコシダーゼの製造および、転移物の分析
NCBIデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を用いて、アスペルギルス・ソヤ(Aspergillus sojae)由来のゲノムシーケンスを得た。ゲノムシーケンスよりα−グルコシダーゼと推定されるアミノ酸配列を定義し、(実験例1−5)に記載した、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)CBS513.88株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.: XP_001389510)のアミノ酸配列と同一性の高い配列を抽出した。抽出したアミノ酸配列をコードするDNAの開始コドンからターミネーターを含むように終始コドンの下流300bpまでを増幅させたPCR産物を用いて、(実験例1−5)で行った方法と同様の方法で遺伝子組み換え株を作製した。
(実験例1−6)で行った方法と同様の方法でα−グルコシダーゼ溶液を取得し、(実験例1−3)で行った方法と同様の方法でマルトースを基質とした場合の転移物を分析した。その結果、アスペルギルス・ソヤ(Aspergillus sojae)NBRC4239株由来α−グルコシダーゼ(配列番号10)を用いて得た反応生成物には、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)ATCC10254株由来α−グルコシダーゼを用いて得た反応生成物と同様にα−1,2結合およびα−1,3結合を有する糖質が認められた。
(実験例1−12)α−1,2結合とα−1,3結合を有する糖質を生成するα−グルコシダーゼのアミノ酸配列の比較
(実験例1−5)〜(実験例1−11)で精製したAspergillus niger、ATCC1015株由来のα−グルコシダーゼ(配列番号4)、NBRC4066株由来のα−グルコシダーゼ(配列番号5)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)IFO4308株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.:GAA87366)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)RIB40株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.:XP_001818060)、アスペルギルス・ソヤ(Aspergillus sojae)NBRC4239株由来のα−グルコシダーゼ(配列番号10)、アスペルギルス・アキュレタス(Aspergillus aculeatus)ATCC16872株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.:Aacu16872_025147)および、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)ATCC38163株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.:ABF50846、ABF50883)のアミノ酸配列について、ClustalW(http://www.genome.jp/tools/clustalw/)を用いて、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)CBS513.88株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.: XP_001389510)のアミノ酸配列と比較したところ、いずれも60%以上の同一性を示した。さらに、これらのα−グルコシダーゼは、共通して、以下のアミノ酸配列群1〜6を有することが分かった。
配列1:FQSQY、
配列2:LWIDMNEA、
配列3:EYDTHNLYG、
配列4:VGHWLGDN、
配列5:GEPFL、
配列6:FYDWYTG
(実験例1−13)その他のα−グルコシダーゼのアミノ酸配列との比較
主に基質よりも重合度が1つ大きいα−1,6結合を有する糖質を生成するアスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)CBS513.88株由来α−グルコシダーゼ(Accession no.:XP_001402053)のアミノ酸配列は、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)CBS 513.88株由来α−グルコシダーゼ(Accession no.: XP_001389510)のアミノ酸配列とClustalW(http://www.genome.jp/tools/clustalw/)を用いて比較すると同一性は36%であった。また、上記アミノ酸配列群1〜6を有していなかった。
また、本発明者らが見出した連続するα−1,6結合を有する糖質を生成するアスペルギルス・ソヤ(Aspergillus sojae)NBRC4239株由来のα−グルコシダーゼ(PCT/JP2014/077849)のアミノ酸配列は、アスペルギルス・ニジュール(Aspergillus niger)CBS 513.88株由来のα−グルコシダーゼ(Accession no.: XP_001389510)のアミノ酸配列とClustalW(http://www.genome.jp/tools/clustalw/)を用いて比較すると同一性は53%であった。また、アミノ酸配列群1〜6を有していなかった。
以上の実験例において行った、各α−グルコシダーゼの配列についての解析結果を、以下の表に示す。
実験例2:澱粉含有原料を加工した各種食品の調製
本実験例では、本発明にかかる飲食品用の食品改良剤を用いて澱粉含有原料を処理し、これにより得られた糖質を加工して製造した食品の特性を示す。
(実験例2−1)小麦澱粉
市販の小麦澱粉10gを原料とし、原料小麦澱粉1gに対して、0.2Uとなるよう酵素を添加した緩衝液(12mM リン酸緩衝液pH6.0)を20mL加え、25℃で24時間撹拌し、酵素反応を行った。反応終了後、反応液をろ過し、ろ物を100mLの水で洗浄後、乾燥させ、小麦澱粉を得た。
酵素として、(実験例1−2)で得たATCC10254株由来α−グルコシダーゼ、(実験例1−8)で得たNBRC4066株由来α−グルコシダーゼ(配列番号5)、(実験例1−11)で得たNBRC4239株由来α−グルコシダーゼ(配列番号10)を用いて作製した小麦澱粉をそれぞれ、実施例1、実施例2、実施例3とした。トランスグルコシダーゼL「アマノ」(天野エンザイム社製、以下TGLともいう。)を用いて作製した小麦澱粉を比較例1とした。また、酵素を添加しないこと以外は同様の条件で作製した小麦澱粉を参考例1とした。
作製した実施例1〜3、比較例1および参考例1の小麦澱粉の老化性を、RVA4500(Perten Instruments社製)を用いて評価した。各試料を、固形分6質量%になるよう水に懸濁して、図3に示す糊化特性測定条件で処理し、セットバック値(最終粘度と糊化後の最小粘度の差)を算出した。結果を下表に示す。
酵素無添加条件で作製した小麦澱粉(参考例1)に比べ、本発明の酵素を用いて作製した小麦澱粉(実施例1、2、3)およびTGLを用いて作製した小麦澱粉(比較例1)のセットバック値は小さい値であった。また、本酵素を用いて作製した小麦澱粉(実施例1、2、3)およびTGLを用いて作製した小麦澱粉(比較例1)のセットバック値を比較すると、本酵素で処理した小麦澱粉(実施例1、2、3)の方が小さい値を示した。このことから、本発明にかかる飲食品用の食品改良剤を用いることで、老化しにくい澱粉を得られることがわかる。
(実験例2−2)米飯
米飯の調製は、「応用糖質科学 第4巻 p.93−102 2014年」を参照して行った。市販の生米一粒(約20mg)に、原料生米1g当り25Uとなるよう酵素を添加した緩衝液(12mM リン酸緩衝液pH6.0)を70μL加え、常温で2時間浸漬した。米は10℃で1か月保存した米を用いた。その後、GeneAmp PCR System9700(Applied Biosystems社製)を使用して、下の表に示す条件で炊飯した。
酵素として、(実験例1−2)で得たATCC10254株由来α−グルコシダーゼ、(実験例1−8)で得たNBRC4066株由来α−グルコシダーゼ(配列番号5)、(実験例1−11)で得たNBRC4239株由来α−グルコシダーゼ(配列番号10)を使用して調製した米飯をそれぞれ、実施例4、実施例5、実施例6とし、TGLを使用して調製した米飯を比較例2とした。また、酵素を添加しないこと以外は同じ条件で調製した米飯を参考例2とした。
炊飯後、米飯の硬さを測定した。硬さの測定にはテクスチャーアナライザーTA.XT Plus(Stable Micro Systems社製、以下TAともいう。)を用い、直径20mmの円柱プランジャー、プランジャースピード2mm/s、ロードセル5kgの条件で90%圧縮による応力(N)を測定し、その値を米一粒の硬さとした。各サンプルについて10粒を測定し、その平均値を求めた。結果を下表に示す。
参考例2の米飯に比べ、実施例4〜6と比較例2の米飯は、硬さの値(N)が低く、柔らかかった。また、実施例4〜6と比較例2の米飯の比較では、実施例4〜6の方が柔らかかった。また、実施例4〜6の米飯は、喫食した際の風味も比較例2や参考例2と比較して高かった。
これらの結果より、本発明にかかる飲食品用の食品改良剤を用いることで、柔らかく好ましい食感の米飯を得られること、及び、喫食した際の風味の向上した米飯を得られることがわかる。
(実験例2−3)もち
もち米250gを洗米し、原料生米1g当り0.02Uとなるよう酵素を添加した緩衝液(12mM リン酸緩衝液pH6.0)を160mL加え、常温で30分間浸漬した。その後、ホームベーカリー SD−BMS102(Panasonic社製)のもちコースにて、もちを作製した。
酵素として、(実験例1−2)で得たATCC10254株由来α−グルコシダーゼ、(実験例1−8)で得たNBRC4066株由来α−グルコシダーゼ(配列番号5)、(実験例1−11)で得たNBRC4239株由来α−グルコシダーゼ(配列番号10)を使用して作製したもちをそれぞれ、実施例7、実施例8、実施例9とし、TGLを使用して作製したもちを比較例3とした。また、酵素を添加せずに作製したもちを参考例3とした。
作製したもちは、20gずつプラスチック製のシャーレに詰めて成形後、常温まで放冷したもの、およびその後4℃で24時間保存したものについて硬さを測定した。測定には、TAを用い、直径40mmの円柱プランジャー、プランジャースピード2mm/s、ロードセル5kgの条件で、放冷後のものは30%圧縮、1日保存したものは5%圧縮による応力(N)を測定し、その値をもちの硬さとした。各サンプルについて10点測定し、その平均値を求めた。結果を下表に示す。
放冷後において、参考例3に比べ、実施例7、8、9および比較例3は、硬さの値(N)が低く、柔らかかった。また、実施例7、8、9と比較例3を添加して作製したもちの比較では、本発明の酵素を添加した場合の方が柔らかい結果であった。また、4℃で24時間保存後においても同様に、実施例7、8、9は、参考例3および比較例3を添加して作製したもちよりも顕著に柔らかかった。また、本発明の酵素を用いて作製したもちは、いずれも、喫食した際の風味も向上していた。
これらの結果より、本発明にかかる飲食品用の食品改良剤を用いることで、作製直後も柔らかく、しかもその柔らかさが持続するもちを得られることがわかる。また、喫食した際の風味が向上したもちを得られることがわかる。
(実験例2−4)甘酒
乾燥米麹200gに、原料米麹1g当り1.5Uとなるよう酵素を添加した緩衝液(12mM リン酸緩衝液pH6.0)を800mL加え、50℃で6時間浸漬し、甘酒を得た。
酵素として、(実験例1−2)で得たATCC10254株由来α−グルコシダーゼ、(実験例1−8)で得たNBRC4066株由来α−グルコシダーゼ(配列番号5)、(実験例1−11)で得たNBRC4239株由来α−グルコシダーゼ(配列番号10)を用いて作製した甘酒をそれぞれ、実施例10、実施例11、実施例12とし、TGLを用いて作製した甘酒を比較例4とした。また、酵素を添加しないこと以外は同様の条件で作製した甘酒を参考例4とした。
得られた甘酒は、遠心分離により上清を回収し、液中の水溶性食物繊維含有量を酵素−HPLC法(AOAC 2001.03)により求めた。その結果を下表に示す。
得られた甘酒中の水溶性食物繊維含有量は、参考例4では0.8%、比較例4では0.9%であったが、実施例10〜12では、1.3〜1.4%と顕著に増加した。また、本発明の酵素を添加して作製した甘酒は、口あたりが向上していた。このことから、本発明にかかる飲食品用の食品改良剤を用いることで、水溶性食物繊維が増量した甘酒を得られること、及び、口あたりの向上した甘酒を得られることがわかる。
(実験例2−5)清酒の調製
さらに、清酒の仕込み工程に酵素を添加することを想定し、低温にて(実験例2−4)と同様の試験を行った。原料米麹1g当り1.5Uとなるように、乾燥米麹と酵素溶液を混合したものを、10℃で3週間保持した。その結果を下表に示す。
酵素として、(実験例1−2)で得たATCC10254株由来α−グルコシダーゼ、(実験例1−8)で得たNBRC4066株由来α−グルコシダーゼ(配列番号5)、(実験例1−11)で得たNBRC4239株由来α−グルコシダーゼ(配列番号10)を用いて作製した反応溶液をそれぞれ、実施例13、実施例14、実施例15とし、TGLを用いて作製した反応溶液を比較例5とした。また、酵素を用いないこと以外は同様の方法で作製した反応溶液を参考例5とした。その結果を下表に示す。
得られた反応溶液中の水溶性食物繊維含有量は、参考例5および、比較例5で0.5%であったが、実施例13、14、15では、1.1〜1.2%と顕著に増加した。
食物繊維は酵母により資化されないため、仕込み工程に本発明の酵素を添加することで、水溶性食物繊維が増量した清酒を得ることができる。
(実験例2−6)パン
下表に示す配合の製パン原料に対し、強力粉1g当り0.2Uとなるように酵素を水に添加し、ホームベーカリー SD−BH105(Panasonic社製)の食パン・早焼きコースにて、食パンを作製した。
(実験例1−2)で得たATCC10254株由来α−グルコシダーゼ、(実験例1−8)で得たNBRC4066株由来α−グルコシダーゼ(配列番号5)、(実験例1−11)で得たNBRC4239株由来α−グルコシダーゼ(配列番号10)を用いて作製したパンをそれぞれ、実施例16、実施例17、実施例18とし、TGLを用いて作製したパンを比較例6とした。また、酵素を用いないこと以外は同様の方法で作製したパンを参考例6とした。
作製した食パンは、室温まで放冷し、25℃で1日および2日保存したものを厚さ10mmにスライスし、クラム部分を33mm四方にカットして硬さを測定した。測定には、SUN RHEO METER COMPAC−100 II(SUN SCIENTIFIC社製)を用い、直径40mmのフラットプランジャー、架台スピード60mm/minの条件で、厚さ5mmまで圧縮したときの応力(N)を測定し、食パンの硬さとした。各サンプルについて10点測定し、その平均値を求めた。結果を下表に示す。
1日保存後は、参考例6及び比較例6に比べ、実施例16、17、18は、硬さの値(N)が低く、柔らかかった。また、2日保存後も、実施例16、17、18を添加した食パンは柔らかさを保っていた。また、本発明の酵素を添加して作製したパンは、喫食した際の風味も向上していた。このことから、本発明にかかる飲食品用の食品改良剤を用いることで、柔らかさが持続する食パンを得られること、また、喫食した際の風味が向上した食パンを得られることがわかる。
(実験例2−7)うどん
下表に示す配合の製麺原料に対し、中力粉1g当り2Uとなるように酵素を水に添加し、Noodle MakerHR2365/01(PHILIPS社製)にて2mm丸麺用製麺キャップを使用して製麺した。酵素として、(実験例1−2)で得たATCC10254株由来α−グルコシダーゼ、(実験例1−8)で得たNBRC4066株由来α−グルコシダーゼ(配列番号5)、(実験例1−11)で得たNBRC4239株由来α−グルコシダーゼ(配列番号10)を用いて作製したうどんをそれぞれ、実施例19、実施例20、実施例21とし、TGLを用いて作製したうどんを比較例7とした。また、酵素を添加せずに作製したうどんを参考例7とした。
作製したうどんは、茹でた後に冷水で締めたものを評価した。10人の被験者に試食してもらい、硬さ、弾力、粘りについて良いと答えた人数を下表に示す。
参考例7に比べ、実施例19、20、21および比較例7を用いて作製したうどんは、硬さ、弾力感、および粘りについて良好な評価となった。また、比較例7を比較すると、実施例19、20、21は、硬さ、弾力感、および粘り全てについて、より好ましい結果であった。また、本発明の酵素を添加して作製したうどんは、喫食した際の風味も向上していた。これらの結果から、本発明にかかる飲食品用の食品改良剤を用いることで、好ましい硬さで弾力感、粘りのある好ましい食感のうどんを得られること、及び、喫食した際の風味が向上したうどんを得られることがわかる。
(実験例2−8)大麦入りパン
下表に示す配合の製パン原料に対して、強力粉1g当り0.2Uとなるよう水に酵素を溶解し、添加ホームベーカリーSD−BH105の食パン・早焼きコースにて、大麦入り食パンを作製した。酵素として、(実験例1−2)で得たATCC10254株由来α−グルコシダーゼ、(実験例1−8)で得たNBRC4066株由来α−グルコシダーゼ(配列番号5)、(実験例1−11)で得たNBRC4239株由来α−グルコシダーゼ(配列番号10)を使用して作製したパンをそれぞれ、実施例22、実施例23、実施例24とし、TGLを使用して作製したパンを比較例8とした。また、酵素を使用しないこと以外は同じ条件で作製したパンを参考例8とした。
作製した大麦入り食パンは、室温まで放冷し、25℃で2日および3日保存したものを厚さ10mmにスライスし、クラム部分を33mm四方にカットして硬さを測定した。測定には、SUN RHEO METER COMPAC−100 IIを用い、直径40mmのフラットプランジャー、架台スピード60mm/minの条件で、厚さ5mmまで圧縮したときの応力(N)を測定し、大麦入り食パンの硬さとした。各サンプルについて10点測定し、その平均値を求めた。結果を下表に示す。
2日保存後において、参考例8および比較例8に比べ、実施例22〜24を添加して作製した大麦入り食パンは、硬さの値(N)が低く、柔らかかった。また、3日保存後においても、実施例22〜24は柔らかさを保っていた。また、本発明の酵素を添加して作製した大麦入り食パンは、喫食した際の風味も向上していた。このことから、本発明にかかる飲食品用の食品改良剤を用いることで、柔らかさが持続する大麦入り食パンを得ることができることがわかる。
(実験例2−9)ビール、ビール様飲料
麦芽200gに対して、麦芽1g当り1U又は5Uとなるよう酵素を添加した酵素溶液800mLを加え、50℃で1.5時間、更に60℃で1.5時間、その後80℃で15分間の加熱処理を行った。酵素として、(実験例1−2)で得たATCC10254株由来α−グルコシダーゼを用いたものを実施例25及び実施例26、(実験例1−8)で得たNBRC4066株由来α−グルコシダーゼ(配列番号5)を用いたものを実施例27及び実施例28、(実験例1−11)で得たNBRC4239株由来α−グルコシダーゼ(配列番号10)を用いたものを実施例29及び実施例30とし、TGLを用いたものを比較例8及び比較例9とした。また、コントロールとして酵素を用いないこと以外は同様の条件で処理したものを参考例8とした。加熱処理後、遠心分離にて上清を回収し、液中の水溶性食物繊維含有量を酵素-HPLC法(AOAC 2001.03)により求めた。その結果を下表に示す。
得られた反応溶液中の水溶性食物繊維含有量は、参考例8では1.3%、比較例8では1.5%、比較例9では1.7%であったが、実施例25、27、29では、2.6〜2.8%と大きく増加した。さらに、酵素を5U添加した、実施例26、28、30では、4.0〜4.3%とさらに顕著に増加した。このことから、本酵素を添加することによって、水溶性食物繊維が増量した麦芽糖化液を得られることがわかる。
ビールの製造では、前述の処理である糖化工程の後にビール酵母による醗酵工程がある。食物繊維はビール酵母により資化されないため、本発明の酵素の添加により、水溶性食物繊維を増量したビールを得ることができる。また、本発明の酵素を添加して作製した麦芽糖化液は、雑穀由来の雑味が低減したので、本発明の酵素を添加することで、雑味が低減した飲み心地の良いビールを得ることができる。
次に、さらに、原料の麦芽に大麦を混ぜ同様の試験を行った。麦芽20g、大麦180gに対して、麦芽と大麦を合わせた原料1g当り1Uのとなるよう酵素を添加した酵素溶液800mLを加え、50℃で1時間、更に60℃で1時間、その後80℃で10分間の加熱処理を行った。その結果を下表に示す。(実験例1−2)で得たATCC10254株由来α−グルコシダーゼ、(実験例1−8)で得たNBRC4066株由来α−グルコシダーゼ(配列番号5)、(実験例1−11)で得たNBRC4239株由来α−グルコシダーゼ(配列番号10)を用いて作製した反応溶液をそれぞれ、実施例31、実施例32、実施例33とし、TGLを用いて作製した反応溶液を比較例10とした。また、酵素を用いないこと以外は同じ条件で作製した反応溶液を参考例9とした。加熱処理後、遠心分離にて上清を回収し、液中の水溶性食物繊維含有量を酵素-HPLC法(AOAC 2001.03)により求めた。その結果を下表に示す。
得られた反応液中の水溶性食物繊維含有量は、参考例9で1.2%、比較例10では1.5%であったが、実施例31、32、33では2.2%〜2.4%と顕著に増加した。これらの結果から、本発明にかかる飲食品用の食品改良剤を用いることで、麦芽の配合率に関わらず水溶性食物繊維を増量できることがわかる。
(実験例2−10)マッシュポテト
じゃがいも1個を、皮をむいて1.5cmの厚さに切り、じゃがいも1g当り2Uとなるよう酵素を添加した緩衝液(12mM リン酸緩衝液pH6.0)を180mL加え、常温で2時間浸漬した。その後、じゃがいもを茹で、水を切ってマッシャ−でつぶしマッシュポテトを作製した。ATCC10254株由来α−グルコシダーゼ、NBRC4066株由来α−グルコシダーゼ(配列番号5)、NBRC4239株由来α−グルコシダーゼ(配列番号10)を添加して作製したマッシュポテトをそれぞれ、実施例34、実施例35、実施例36とし、TGLを添加して作製したマッシュポテトを比較例11とした。また、酵素を添加せずに作製したマッシュポテトを参考例10とした。
作製したマッシュポテトは、作製直後、およびその後25℃で2時間保存した後評価した。結果を下表に示す。なお、評価は10人の被験者に試食してもらい、しっとり感および柔らかさについて、酵素無添加で作製したマッシュポテトに対して良いと答えた人数をとした。
作製直後のマッシュポテトでは、参考例10に比べ、実施例34〜36および比較例11は、しっとり感および柔らかさについて良好な評価となった。また、実施例34〜36は、喫食した際の風味が参考例10及び比較例11と比べて向上していた。
2時間保存後のマッシュポテトでは、比較例11と比較して、実施例34〜36は良好な食感を持続しており、特に柔らかさについてより好ましい結果となった。また、実施例34〜36は、参考例10及び比較例11と比べて喫食した際の風味が向上していた。これらの結果より、本発明にかかる飲食品用の食品改良剤を用いることで、作製直後の食感及び風味が良く、さらに、良好な食感及び風味が維持されるマッシュポテトを得られることがわかる。
(実験例2−11)酵素処理澱粉を添加した食品
(実験例2−1)で作製した酵素処理澱粉を用いて、澱粉含有食品を製造した。具体的には、畜肉加工品として下表の配合ソーセージを常法によって作製した。
また水産加工品として下表の配合で蒲鉾を常法によって作製した。
得られたソーセージは、獣臭が抑えられた良好な風味であった。また、蒲鉾は、魚臭が抑えられた良好な風味であった。このことから、本発明にかかる飲食品用の食品改良剤を用いることで、良好な風味のソーセージ及び蒲鉾が得られることがわかる。なお、ソーセージ及び蒲鉾の作製において、澱粉含有食品の製造工程中に、本発明の飲食品用の食品改良剤を添加することによって、澱粉に酵素処理を行うこともできる。

Claims (9)

  1. 粉含有原料を加工して製造される飲食品用の食品改良剤であって、
    食品改良剤が、α型のオリゴ糖類およびα型の多糖類からなる群より選択される糖質に作用し、α−1,2結合を有する糖質とα−1,3結合を有する糖質を生成するα−グルコシダーゼを含有し、
    α−グルコシダーゼをコードするアミノ酸配列が、配列番号1〜10のいずれかに記載されたアミノ酸配列と90%以上の同一性を有しており、α−グルコシダーゼをコードするアミノ酸配列が、以下:
    ・配列1:FQSQY、
    ・配列2:LWIDMNEA、
    ・配列3:EYDTHNLYG、
    ・配列4:VGHWLGDN、
    ・配列5:GEPFL、および、
    ・配列6:FYDWYTG、
    からなる群より選択されるいずれか1以上の配列を含有する、上記食品改良剤。
  2. 小麦加工品、大麦加工品、いも類加工品または米加工品の品質を改良するための、請求項1に記載の食品改良剤。
  3. 前記α−グルコシダーゼが、アスペルギルス(Aspergillus)属菌由来のα−グルコシダーゼである、請求項1または2に記載の食品改良剤。
  4. α−グルコシダーゼを澱粉に作用させることを含む、澱粉含有原料を加工して製造される飲食品の改良方法であって、
    前記α−グルコシダーゼが、α型のオリゴ糖類およびα型の多糖類からなる群より選択される糖質に作用し、α−1,2結合を有する糖質とα−1,3結合を有する糖質を生成
    するものであり、
    α−グルコシダーゼをコードするアミノ酸配列が、配列番号1〜10のいずれかに記載されたアミノ酸配列と90%以上の同一性を有しており、α−グルコシダーゼをコードするアミノ酸配列が、以下:
    ・配列1:FQSQY、
    ・配列2:LWIDMNEA、
    ・配列3:EYDTHNLYG、
    ・配列4:VGHWLGDN、
    ・配列5:GEPFL、および、
    ・配列6:FYDWYTG、
    からなる群より選択されるいずれか1以上の配列を含有する、上記方法。
  5. 小麦加工品、大麦加工品、いも類加工品または米加工品の品質を改良するための、請求項4に記載の方法。
  6. 前記α−グルコシダーゼが、アスペルギルス(Aspergillus)属菌由来のα−グルコシダーゼである、請求項に記載の方法。
  7. 澱粉をα−グルコシダーゼで処理する工程、
    処理した澱粉を加工食品に添加する工程、
    を含む、加工食品の品質の改良方法であって、
    前記α−グルコシダーゼがα型のオリゴ糖類およびα型の多糖類からなる群より選択される糖質に作用し、α1,2結合を有する糖質とα−1,3結合を有する糖質を生成するものであり、
    α−グルコシダーゼをコードするアミノ酸配列が、配列番号1〜10のいずれかに記載されたアミノ酸配列と90%以上の同一性を有しており、α−グルコシダーゼをコードするアミノ酸配列が、以下:
    ・配列1:FQSQY、
    ・配列2:LWIDMNEA、
    ・配列3:EYDTHNLYG、
    ・配列4:VGHWLGDN、
    ・配列5:GEPFL、および、
    ・配列6:FYDWYTG、
    からなる群より選択されるいずれか1以上の配列を含有する、上記方法。
  8. 畜肉加工食品または水産加工食品の品質を改良するためのものである、請求項に記
    載の方法。
  9. 前記α−グルコシダーゼが、アスペルギルス(Aspergillus)属菌由来のα−グルコシ
    ダーゼである、請求項7または8に記載の方法。
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