本発明の水性ウレタン樹脂は、ポリイソシアネート(IP)と、活性水素化合物(HP)との反応生成物である。
ポリイソシアネート(IP)としては、例えば、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体などが挙げられる。
ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m−、p−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’−、2,4’−または2,2’−ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’−トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート)、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプエート、ドデカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
また、脂肪族ポリイソシアネートには、脂環族ポリイソシアネートが含まれる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’−、2,4’−または2,2’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、これらのTrans,Trans−体、Trans,Cis−体、Cis,Cis−体、もしくはその混合物))(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物)(H6XDI)などの脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
これらポリイソシアネート単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート単量体の多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、後述する低分子量ポリオール(1価アルコールまたは2価アルコール)との反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と後述する低分子量ポリオール(3価アルコール)との反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体とジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(上記したポリイソシアネート単量体の脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
さらに、ポリイソシアネート誘導体として、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)なども挙げられる。
これらポリイソシアネート誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリイソシアネート(IP)として、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート(脂環族ポリイソシアネートを含む。)が挙げられ、より好ましくは、脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。なお、これらは単量体であっても誘導体であってもよく、好ましくは、単量体である。
ポリイソシアネート(IP)が脂肪族ポリイソシアネート(脂環族ポリイソシアネートを含む。)を含有していれば、耐食性、硬度、耐溶剤性、耐酸・アルカリ性などの各種物性に優れるコーティング層を得ることができる。とりわけ、ポリイソシアネート(IP)が脂肪族ポリイソシアネート(脂環族ポリイソシアネートを含む。)であれば、硬度に優れるコーティング層を得ることができる。また、ポリイソシアネート(IP)が脂環族ポリイソシアネートであれば、比較的高温(150℃以上)で焼き付けた場合に、耐酸・アルカリ性に優れるコーティング層を得ることができる。
本願の目的を損なわない範囲であれば、分子量の調節や反応性制御などの目的で、上記ポリイソシアネート(IP)は、モノイソシアネートを含んでいてもよい。
また、ポリイソシアネート(IP)の1分子あたりの好ましいイソシアネート基数は、1.5以上、さらに好ましくは、2以上である。また、好ましい上限値は、6、より好ましくは、4、さらに好ましくは、3である。
より具体的には、ポリイソシアネート(IP)として、好ましくは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)が挙げられ、より好ましくは、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)が挙げられる。
活性水素化合物(HP)の代表例としては、ヘテロ原子と水素とを含む官能基を有する化合物が挙げられる。より具体的には、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、ポリシラノール、ポリカルボン酸、ポリスルフォン酸などの公知の活性水素化合物が挙げられる。活性水素化合物(HP)として、好ましくは、ポリオール、ポリアミンが挙げられる。
本発明において、活性水素化合物(HP)は、以下の(H1)〜(H4)の化合物を必須とする。具体的には、活性水素化合物(HP)は、ポリオレフィンポリオール(H1)と、低分子量ポリオール(H2)と、親水性基および水酸基を併有する化合物(H3)と、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物(H4)とを、必須成分として含有している。
ポリオレフィンポリオール(H1)は、水酸基を2つ以上有し、分子量(数平均分子量)は600以上である。分子量(数平均分子量)の好ましい上限値は、10000である。
ポリオレフィンポリオール(H1)は、本願の目的を逸脱しない限りにおいて、水酸基以外の活性水素基を有していてもよい。水酸基以外の活性水素基の割合は、水酸基に対して、好ましくは、5モル%以下、より好ましくは、1モル%以下、さらに好ましくは、0.1モル%以下である。最も好ましいのは、水酸基以外の活性水素基として、後述の親水性基−水酸基併有化合物(H3)における親水性基(後述)を有さない態様である。
また、ポリオレフィンポリオール(H1)は、本願の目的を逸脱しない限りにおいて、ポリオレフィンポリオール(H1)以外の高分子量ポリオール(ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオールなど)を含有していてもよい。ポリオレフィンポリオール(H1)以外の高分子量ポリオールの割合は、具体的には、ポリオレフィンポリオール(H1)に対して、5モル%以下、より好ましくは、1モル%以下、さらに好ましくは、0.1モル%以下である。最も好ましいのは、ポリオレフィンポリオール(H1)以外の高分子量ポリオールを含有しない態様である。
このようなポリオレフィンポリオール(H1)であれば、ポリオレフィンポリオール(H1)が本願請求項の規定を満たさない場合に比べ、耐食性、硬度、耐溶剤性、耐酸・アルカリ性の全ての物性に優れるコーティング層を得ることができ、とりわけ、耐酸・アルカリ性に優れるコーティング層を得ることができる。また、ポリオレフィンポリオール(H1)は分子量が高いので、コーティング層がしなやかで、割れが発生し難い傾向がある。とりわけ、ポリオレフィン部分がガラス転移温度の低い構造であれば、この傾向が強い。
ポリオレフィンポリオール(H1)は、主鎖に炭化水素骨格を有し、かつ、2つ以上の水酸基を有するポリオールであって、具体的には、例えば、ポリブタジエンポリオール、部分ケン価エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
これらポリオレフィンポリオール(H1)は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリオレフィンポリオール(H1)として、好ましくは、ポリブタジエンポリオールが挙げられる。
ポリオレフィンポリオール(H1)の数平均分子量は、600以上、好ましくは、800以上、より好ましくは、1000以上、さらに好ましくは、1500以上であり、例えば、10000以下、好ましくは、8000以下、より好ましくは、5000以下、さらに好ましくは、3000以下である。
なお、ポリオレフィンポリオールの数平均分子量は、商品のカタログ値の他、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、蒸気圧式分子量測定法(VPO)などの常法による測定や、平均官能基数と水酸基価から公知の計算値で決定することができる。
ポリオレフィンポリオール(H1)は、本願の目的に反しない範囲で、一分子に水酸基が1個含まれる、所謂、ポリオレフィンモノオールが含まれていてもよい。
上記のポリオレフィンモノオールも含めたポリオレフィンポリオール(H1)の平均官能基数は、好ましくは、1.5以上、より好ましくは、2以上であり、例えば、4以下、好ましくは、3以下、さらに好ましくは、2.5以下である。平均官能基数として、とりわけ好ましくは、2以上2.5以下である。
ポリオレフィンポリオール(H1)の官能基数は、ポリオレフィンポリオール(H1)の水酸基数であって、具体的には、1分子当たりの活性な水酸基の数である。
そして、ポリオレフィンポリオール(H1)の平均官能基数は、ポリオレフィンポリオール(H1)1分子当たりの活性な水酸基の平均値である。つまり、異なる官能基数を有するポリオレフィンポリオール(H1)が混合(併用)される場合は、そのポリオレフィンポリオール(H1)の混合物の分子数に対する混合物の活性な水酸基の数の割合を示した数値が、ポリオレフィンポリオール(H1)の平均官能基数である。
また、ポリオレフィンポリオール(H1)の水酸基価は、例えば、10mgKOH/g以上、好ましくは、15mgKOH/g以上、より好ましくは、20mgKOH/g以上、さらに好ましくは、30mgKOH/g以上、とりわけ好ましくは、40mgKOH/g以上であり、例えば、190mgKOH/g以下、好ましくは、140mgKOH/g以下、より好ましくは、120mgKOH/g以下、さらに好ましくは、100mgKOH/g以下、さらに好ましくは、60mgKOH/g以下である。
ポリオレフィンポリオール(H1)の水酸基価(単位:mgKOH/g)は、JIS K 1557−1(2007年)のA法またはB法に準拠するアセチル化法またはフタル化法などから求めることができる。
そして、ポリオレフィンポリオール(H1)の平均水酸基価(単位:mgKOH/g)は、ポリオレフィンポリオール(H1)が単独使用される場合には、そのポリオレフィンポリオール(H1)の水酸基価と同一である。一方、ポリオレフィンポリオール(H1)の平均水酸基価は、ポリオレフィンポリオール(H1)が2種以上併用される場合には、それらの質量平均値である。
ポリオレフィンポリオール(H1)の含有割合は、活性水素化合物(HP)の総量に対して、例えば、30質量%以上、好ましくは、40質量%以上であり、例えば、70質量%以下、好ましくは、60質量%以下、より好ましくは、50質量%以下である。
低分子量ポリオール(H2)は、水酸基を2つ以上有する分子量60以上600未満の化合物である。なお、低分子量ポリオール(H2)は、水酸基を有する。
また、低分子量ポリオール(H2)は、本発明の目的を損なわない範囲で、水酸基以外の活性水素基を有していてもよい。水酸基以外の活性水素基の割合は、水酸基に対して、好ましくは、5モル%以下、より好ましくは、1モル%以下、さらに好ましくは、0.1モル%以下である。最も好ましいのは、水酸基以外の活性水素基として、後述の親水性基−水酸基併有化合物(H3)における親水性基(後述)を有さない態様である。
低分子量ポリオール(H2)としては、炭素環(芳香環、脂環、不飽和炭素環)を含有する低分子量ポリオール(以下、炭素環含有低分子量ポリオール)と、炭素環を含有しない低分子量ポリオール(以下、炭素環不含有低分子量ポリオール)とが挙げられる。
炭素環含有低分子量ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールAなどの芳香環含有低分子量ポリオール、例えば、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールAなどの脂環含有低分子量ポリオール、さらには、それらのアルキレンオキサイド付加体などが挙げられる。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−、1,3−、1,4−および2,3−ブチレンオキサイドなどが挙げられる。これらアルキレンオキサイドは、単独使用または2種類以上併用することができる。アルキレンオキサイドとして、好ましくは、プロピレンオキサイドが挙げられる。なお、アルキレンオキサイドが2種類以上併用される場合には、ブロックまたはランダムのいずれの付加形式であってもよい。
炭素環含有低分子量ポリオールのアルキレンオキサイド付加体として、具体的には、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体などが挙げられ、好ましくは、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体が挙げられる。
炭素環含有低分子量ポリオールのアルキレンオキサイド付加体において、アルキレンオキサイドの平均付加モル数は、低分子量ポリオール(H2)の数平均分子量が600以上にならない限り、特に制限されない。好ましい下限値は1モル、より好ましくは2モルであり、好ましい上限値は6モル、好ましくは4モルである。とりわけ好ましい範囲は、2.0モル以上2.5モル以下である。
炭素環不含有低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,2−トリメチルペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、アルカン(C7〜20)ジオール、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコール、さらには、それらのアルキレンオキサイド付加体などが挙げられる。
アルキレンオキサイドとしては、上記したアルキレンオキサイドが挙げられる。アルキレンオキサイドは、単独使用または2種類以上併用することができる。なお、アルキレンオキサイドが2種類以上併用される場合には、ブロックまたはランダムのいずれの付加形式であってもよい。
これら低分子量ポリオール(H2)は、単独使用または2種類以上併用することができる。
低分子量ポリオール(H2)として、好ましくは、炭素環含有ポリオールが挙げられ、より好ましくは、芳香環含有低分子量ポリオールが挙げられ、より好ましくは、芳香環含有低分子量ポリオールのアルキレンオキサイド付加体が挙げられる。
低分子量ポリオール(H2)が炭素環含有ポリオールであれば、耐食性、硬度、耐溶剤性、耐酸・アルカリ性の全ての物性、とりわけ、硬度および耐酸・アルカリ性に優れるコーティング層を得ることができ、さらに、芳香環含有低分子量ポリオール(好ましくは、芳香環含有低分子量ポリオールのアルキレンオキサイド付加体)であれば、耐酸・アルカリ性により一層優れるコーティング層を得ることができる。
低分子量ポリオール(H2)の分子量(数平均分子量)は、例えば、60以上、好ましくは、100以上、より好ましくは、150以上であり、600未満、好ましくは、500未満、より好ましくは、400未満、さらに好ましくは、380未満である。
低分子量ポリオール(H2)の分子量(数平均分子量)が600を超過することは、官能基濃度の低下や、ポリイソシアネート(IP)との反応速度の低下を意味する。そのため、官能基由来の凝集力に起因する硬度や弾性率の低下につながる場合がある。
なお、分子量は、低分子量ポリオール(H2)の構造式から算出される。また、低分子量ポリオール(H2)が2種類以上併用される場合には、それらの平均分子量は、各低分子量ポリオール(H2)の構造式および仕込み重量より算出される。
また、ポリオレフィンポリオール(H1)の数平均分子量と、低分子量ポリオール(H2)の分子量との差は、例えば、300以上、好ましくは、500以上、より好ましくは、1000以上、さらに好ましくは、1500以上であり、例えば、9000以下、好ましくは、5000以下、より好ましくは、3000以下である。
ポリオレフィンポリオール(H1)の数平均分子量と、低分子量ポリオール(H2)の分子量との差が上記の範囲外であると、コーティング層のしなやかさ、強度、硬度および弾性率のバランスが低下する場合がある。
低分子量ポリオール(H2)は、本願の目的の範囲内であれば、低分子量モノオールが含まれていてもよい。
低分子量ポリオール(H2)の平均官能基数は、好ましくは、1.5以上、より好ましくは、2以上であり、例えば、8以下、好ましくは、6以下、より好ましくは、4以下、さらに好ましくは、3以下である。平均官能基数として、とりわけ好ましくは、2である。
また、低分子量ポリオール(H2)の水酸基価は、例えば、190mgKOH/gを超過、好ましくは、230mgKOH/gを超過、より好ましくは、280mgKOH/gを超過、さらに好ましくは、290mgKOH/g以上、さらに好ましくは、300mgKOH/g以上であり、例えば、2000mgKOH/g以下、好ましくは、1000mgKOH/g以下、より好ましくは、800mgKOH/g以下、さらに好ましくは、500mgKOH/g以下である。
このような低分子量ポリオール(H2)が活性水素化合物(HP)に含有されていれば、耐食性、硬度、耐溶剤性、耐酸・アルカリ性の全ての物性に優れるコーティング層を得ることができ、とりわけ、耐酸・アルカリ性に優れるコーティング層を得ることができる。
低分子量ポリオール(H2)の含有割合は、活性水素化合物(HP)の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
親水性基および水酸基を併有する化合物(H3)(以下、親水性基−水酸基併有化合物とする。)は、ノニオン性基またはイオン性基から選択される親水性基と、水酸基とを1分子中に含有(併有)する化合物であって、具体的には、例えば、ノニオン性基を含有する水酸基含有化合物、イオン性基を含有する水酸基含有化合物が挙げられる。
ノニオン性基を含有する水酸基含有化合物としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールなどが挙げられる。
イオン性基を含有する水酸基含有化合物は、例えば、カルボン酸などのアニオン性基や、4級アミンなどのカチオン性基と、2つ以上の水酸基とを併有する化合物であって、好ましくは、アニオン性基と2つ以上の水酸基とを併有する化合物(アニオン性基を含有する水酸基含有化合物)が挙げられる。アニオン性基を含有する水酸基含有化合物を用いれば、比較的短時間の焼き付け処理でも、耐食性、硬度、耐溶剤性、耐酸・アルカリ性などの各種物性に優れるコーティング層を得ることができる。
アニオン性基を含有する水酸基含有化合物として、好ましくは、カルボン酸と2つ以上の水酸基とを併有する化合物が挙げられ、具体的には、カルボキシ基含有ポリオールが挙げられる。カルボキシ基含有ポリオールとしては、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸(別名:ジメチロールプロピオン酸)、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸などのポリヒドロキシアルカン酸などのカルボキシ基含有ジオールなどが挙げられ、好ましくは、2,2−ジメチロールプロピオン酸が挙げられる。
これら親水性基−水酸基併有化合物(H3)は、単独使用または併用することができる。
親水性基−水酸基併有化合物(H3)として、好ましくは、イオン性基を含有する水酸基含有化合物、より好ましくは、アニオン性基を含有する水酸基含有化合物、さらに好ましくは、カルボキシ基含有ポリオールが挙げられ、とりわけ好ましくは、ポリヒドロキシアルカン酸が挙げられる。
親水性基−水酸基併有化合物(H3)の含有割合は、好ましくは、水性ウレタン樹脂の酸価が後述する範囲になるように、適宜設定される。具体的には、親水性基含有活性水素成分の含有割合は、活性水素化合物(HP)の総量に対して、例えば、4質量%以上、好ましくは、6質量%以上であり、例えば、25質量%以下、好ましくは、22質量%以下である。
親水性基−水酸基併有化合物(H3)は、本願の目的の範囲内であれば、水酸基が一分子あたり1個の化合物、所謂モノオール化合物が含まれていても良い。
親水性基−水酸基併有化合物(H3)の平均官能基数は、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2以上であり、例えば、4以下、さらに好ましくは、3以下である。
第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物(H4)は、第1級アミノ基、第2級アミノ基およびアルコキシシリル基を、それぞれ1つ以上有する化合物である。本発明の水性ウレタン樹脂では、この成分(H4)により、アミノ基とイソシアネート基とが反応して尿素結合を形成することがある。また、後述する塗膜の焼き付けなどでは、水によるシリル架橋反応によりSi−O−Siの構造単位を形成することがある。
第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物(H4)として、具体的には、例えば、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(別名:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(別名:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(別名:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン)、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(別名:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン)などが挙げられる。
これら第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物(H4)は、単独使用または2種類以上併用することができる。
第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物(H4)が活性水素化合物(HP)に含有されていれば、耐食性、硬度、耐溶剤性、耐酸・アルカリ性の全ての物性に優れ、とりわけ、耐食性、耐溶剤性および耐酸性に優れるコーティング層を得ることができる。
第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物(H4)の含有割合は、活性水素化合物(HP)の総量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、7.5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上であり、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、16質量%以下である。
また、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物(H4)として、好ましくは、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランが挙げられ、耐食性、耐溶剤性の向上を図る観点から、さらに好ましくは、それらの併用が挙げられる。
N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシランと、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランとが併用される場合、それらの総量100質量部に対して、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシランが、例えば、40質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、50質量%を超過し、例えば、70質量部以下、好ましくは、60質量部以下である。また、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランが、例えば、30質量部以上、好ましくは、40質量部以上であり、例えば、60質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、50質量%未満である。
第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物(H4)の一分子あたりの好ましいアミノ基の数は、好ましくは、1.5以上、さらに好ましくは、2以上である。一方、好ましい上限値は、6、より好ましくは4、更に好ましくは3である。
また、活性水素化合物(HP)は、好ましくは、耐アルカリ性の向上を図る観点から、さらに、アミノアルコール(H5)を含んでいてもよい。
このような場合において、活性水素化合物(HP)は、ポリオレフィンポリオール(H1)と、低分子量ポリオール(H2)と、親水性基および水酸基を併有する化合物(H3)と、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物(H4)とを含むことを特徴とする。好ましくは、ポリオレフィンポリオール(H1)と、低分子量ポリオール(H2)と、親水性基および水酸基を併有する化合物(H3)と、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物(H4)と、アミノアルコール(H5)とを含むことを特徴とする。
アミノアルコール(H5)は、第1級アミノ基または第2級アミノ基と、水酸基とを、それぞれ1つ以上有する化合物であって、例えば、2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノール(別名:N−(2−アミノエチル)エタノールアミン)、2−((2−アミノエチル)アミノ)−1−メチルプロパノール(別名:N−(2−アミノエチル)イソプロパノールアミン)などが挙げられる。
これらアミノアルコール(H5)は、単独使用または2種類以上併用することができる。
アミノアルコール(H5)として、好ましくは、N−(2−アミノエチル)エタノールアミンが挙げられる。
本発明において、アミノアルコール(H5)の一分子あたりのアミノ基数は、好ましくは、1.5以上、より好ましくは、2以上である。一方その上限値は、好ましくは、4、さらに好ましくは、3である。
本発明において、アミノアルコール(H5)が用いられる好ましい態様は、いわゆる鎖伸長反応を安定的に進行させるための成分としての使用である。
なお、本願において、アミノアルコール(H5)の水酸基は、活性水素基とは見なさないものとする。これは、例えば、上記の鎖伸長反応の際に顕著であるが、圧倒的にアミノ基の方がイソシアネート基との反応性が高い場合が多いためである。
アミノアルコール(H5)を用いる場合の含有割合は、活性水素化合物(HP)の総量に対して、例えば、3質量%以上、好ましくは、4質量%以上、より好ましくは、5質量%以上であり、例えば、12質量%以下、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは、8質量%以下である。
また、アミノアルコール(H5)を用いる場合の含有割合は、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物(H4)100質量部に対して、例えば、40質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、55質量部以上であり、例えば、150質量部以下、好ましくは、100質量部以下、より好ましくは、95質量部以下である。
なお、水性ウレタン樹脂の原料は、好ましくは、ブロック剤やブロックイソシアネートなどを含んでいない。すなわち、水性ウレタン樹脂の原料は、好ましくは、ポリイソシアネート(IP)(ブロックイソシアネートを除く。)と、活性水素化合物(HP)(ブロック剤を除く。)を含む。
そして、水性ウレタン樹脂は、上記のポリイソシアネート(IP)と、上記の活性水素化合物(HP)とを、例えば、ワンショット法、プレポリマー法などの公知の方法により反応させることによって、得ることができる。
ワンショット法では、例えば、ポリイソシアネート(IP)および活性水素化合物(HP)を、活性水素化合物(HP)中の活性水素基(水酸基、アミノ基、メルカプト基)の総量に対するポリイソシアネート(IP)のイソシアネート基の総量の当量比(NCO/活性水素基)が、例えば、1未満となるように処方(混合)し、バルク重合、溶液重合などの公知の重合方法により重合反応させた後、水分散させる。これにより、遊離(未反応)の活性水素基を含有する水性ウレタン樹脂の水分散液を得ることができる。
バルク重合では、例えば、窒素雰囲気下、上記成分を配合して、反応温度75〜85℃で、1〜20時間程度反応させる。
溶液重合では、例えば、窒素雰囲気下、有機溶媒に、上記成分を配合して、反応温度20〜80℃で、1〜20時間程度反応させる。
有機溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性で、かつ、親水性に富む、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリルなどが挙げられる。
また、上記重合では、必要に応じて、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などのウレタン化触媒を添加してもよく、また、得られる水性ウレタン樹脂から未反応ポリイソシアネート(IP)や、必要により配合される有機溶媒を、例えば、蒸留や抽出などの公知の方法により、除去することもできる。
ワンショット法では、好ましくは、溶液重合により水性ウレタン樹脂を製造し、得られた水性ウレタン樹脂の溶液(有機溶媒に対する溶液)を水分散させた後、有機溶媒を除去する。これにより、水性ウレタン樹脂の水分散液が得られる。
プレポリマー法では、まず、ポリイソシアネート(IP)と、ポリオレフィンポリオール(H1)と、低分子量ポリオール(H2)および親水性基−水酸基併有化合物(H3)とを反応させ、プレポリマーを得る。
この反応では、上記成分を、水酸基に対するイソシアネート基の当量比(NCO/OH)において、1を越える割合、好ましくは、1.1〜10、さらに好ましくは、1.2〜2の割合で配合する。そして、バルク重合や溶液重合などの公知の重合方法、好ましくは、反応性および粘度の調整がより容易な溶液重合によって、上記成分を反応させる。
また、上記重合では、必要に応じて、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などのウレタン化触媒を添加してもよく、また、得られるプレポリマーから未反応のポリイソシアネート(IP)や、必要により配合される有機溶媒を、例えば、蒸留や抽出などの公知の方法により、除去することもできる。
このようにして得られるプレポリマーは、主として分子末端にイソシアネート基を有する構造であろう。(以後、本願では、このようなプレポリマーをイソシアネート基末端プレポリマーと言うことがある。)
また、例えば、アニオン性基が含まれている場合には、好ましくは、中和剤を添加して中和し、アニオン性基の塩を形成させる。
中和剤としては、慣用の塩基、例えば、有機塩基(例えば、第3級アミン類(トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの炭素数1〜4のトリアルキルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン、モルホリンなどの複素環式アミンなど))、無機塩基(アンモニア、アルカリ金属水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど))が挙げられる。これらの塩基は、単独使用または2種類以上併用できる。
中和剤は、アニオン性基1当量あたり、0.4当量以上、好ましくは、0.6当量以上の割合で添加し、また、例えば、1.2当量以下、好ましくは、1当量以下の割合で添加する。
このようにして得られるイソシアネート基末端プレポリマーは、通常、その分子末端に、2つ以上の遊離のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーであると考えられ、そのイソシアネート基の含有量(溶剤を除いた固形分換算のイソシアネート基含量)が、例えば、4質量%以上、好ましくは、4.5質量%以上、より好ましくは、4.8質量%以上であり、また、例えば、6質量%以下、好ましくは、5.7質量%以下、より好ましくは、5.5質量%以下である。
また、イソシアネート基末端プレポリマーの平均官能基(イソシアネート基)数は、例えば、1.5以上、好ましくは、1.8以上、より好ましくは、2以上であり、また、例えば、3以下、好ましくは、2.5以下である。
次いで、この方法では、イソシアネート基末端プレポリマーと、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物(H4)(さらに、必要によりアミノアルコール(H5))とを、水中で反応させて分散させる。
なお、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物(H4)(さらに、必要によりアミノアルコール(H5))は、鎖伸長剤として用いられる。
イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させるには、例えば、まず、水中にイソシアネート基末端プレポリマーを添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長する。
イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させるには、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、水100〜1000質量部の割合において、水を攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーを添加する。
その後、鎖伸長剤を、イソシアネート基末端プレポリマーが水分散された水中に、攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤の活性水素基(アミノ基)の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0.6〜1.2、好ましくは、0.7〜1.1、より好ましくは、0.8〜1.05の割合となるように、滴下する。
鎖伸長剤は、滴下することでイソシアネート基末端プレポリマーと反応させ、滴下終了後は、さらに撹拌しつつ、例えば、常温にて反応を完結させる。反応完結までの反応時間は、例えば、0.1時間以上であり、また、例えば、10時間以下である。
これによって、水性ウレタン樹脂の水分散液を得ることができる。
なお、上記とは逆に、イソシアネート基末端プレポリマー中に水を添加することにより、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長することもできる。
また、これらの方法では、必要に応じて、有機溶媒や水を除去することができ、さらには、水を添加して固形分濃度(樹脂濃度)を調整することもできる。
水分散液の固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、45質量%以下である。
また、水分散液のpHは、例えば、7以上、好ましくは、8以上であり、例えば、10以下、好ましくは、9以下である。
また、水分散液の25℃における粘度は、固形分濃度が30質量%程度に調整された場合において、例えば、1500mPa・s(25℃)以下、好ましくは、1000mPa・s(25℃)以下、さらに好ましくは、500mPa・s(25℃)以下であり、通常、5mPa・s(25℃)以上である。
なお、粘度は、BM型粘度計(ローターNo.2)により測定される。
また、水分散液中の水性ウレタン樹脂の平均粒子径は、例えば、5nm以上、好ましくは、10nm以上であり、例えば、500nm以下、好ましくは、200nm以下である。
なお、平均粒子径は、コールターカウンターN5により測定される。
そして、このようにして得られる水性ウレタン樹脂は、ポリイソシアネート(IP)由来の構造単位(I)と、活性水素化合物(HP)由来の構造単位(H)とを含む構造である。
ポリイソシアネート(IP)由来の構造単位(I)とは、本発明で規定するポリイソシアネート(IP)のイソシアネート基を除いた構造を含む構造単位である。例えば、ポリイソシアネート(IP)と活性水素化合物(HP)とが重付加反応した場合、その反応物は上記のポリイソシアネート(IP)由来の構造単位(I)を含むことを意味する。上記の重付加反応で、未反応のポリイソシアネート(IP)が残存する場合、この未反応ポリイソシアネートもポリイソシアネート(IP)由来の構造単位とみなされる。
活性水素化合物(HP)由来の構造単位(H)とは、本発明で規定する活性水素化合物(HP)の活性水素基を除いた構造を含む構造単位である。例えば、ポリイソシアネート(IP)と活性水素化合物(HP)との重付加反応した場合、その反応物は上記の活性水素化合物(HP)由来の構造単位(H)を含むことを意味する。上記の重付加反応で、未反応の活性水素化合物(HP)が残存する場合、この未反応活性水素化合物も活性水素化合物(HP)由来の構造単位とみなされる。
また、ポリイソシアネート(IP)のイソシアネート基と、活性水素化合物(HP)の活性水素基とは、重付加反応するため、それらにより形成されるウレタン結合およびウレア結合、さらには、アロファネート結合およびビウレット結合は、本願においては、構造単位(I)と構造単位(H)とが共有する構造であるとみなされる。
水性ウレタン樹脂において、ポリイソシアネート(IP)由来の構造単位(I)と、活性水素化合物(HP)由来の構造単位(H)との官能基の当量比(HS)/(IS)は、例えば、0.1以上、3以下である。好ましい下限値は、0.3、より好ましくは、0.4、さらに好ましくは、0.5である。また、好ましい上限値は、2.5、より好ましくは、2、さらに好ましくは、1.5である。
なお、ポリイソシアネート(IP)由来の構造単位(I)と、活性水素化合物(HP)由来の構造単位(H)との官能基の当量比(HS)/(IS)とは、構造単位(I)の元となるポリイソシアネート(IP)が有している官能基、すなわち、イソシアネート基に対する、構造単位(H)の元となる活性水素化合物が有している官能基、すなわち、水酸基、アミノ基、メルカプト基などの活性水素基の当量比(HS)/(IS)である。
ポリイソシアネート(IP)と活性水素化合物(HP)とは重付加反応するため、当量比(HS)/(IS)は、化学量論的に1であるが、本発明においては、上記した範囲にあるものが含まれる。
また、これら構造単位(I)および構造単位(H)は、例えば、ウレタン結合、尿素結合などの、ポリイソシアネート(IP)と活性水素化合物(HP)とが反応して形成する典型的な構造を含んでいる。本発明の目的を損なわない範囲内で、ポリイソシアネート(IP)や活性水素化合物(HP)の未反応物が存在する場合もある。この場合は当然ながらイソシアネート基、水酸基やアミノ基などの活性水素基の構造を含んでいる。また水分散体の場合に顕著であるが、イソシアネート基が水と反応するカルバミン酸構造や、カルバミン酸構造が脱炭酸反応して形成されるアミノ基構造が含まれることもある。また、アミノ基構造がイソシアネート構造単位を有する化合物と反応し、尿素結合単位を形成することもある。なお、このような反応は、条件によっては水伸長反応と称される。
上記のポリイソシアネート(IP)や活性水素化合物(HP)の未反応物の割合は、好ましくは、本発明の水性ウレタン樹脂の5質量%以下であり、より好ましくは、3質量%以下であり、さらに好ましくは、1質量%以下である。
また、ポリイソシアネート(IP)が複数反応して形成する、イソシアヌレート構造、アロファネート構造や、尿素結合とポリイソシアネート(IP)との反応で形成されるビウレット構造などを含んでいても構わない。
ただし、ポリイソシアネート(IP)が複数反応して形成する構造単位(イソシアヌレート構造、アロファネート構造、ビウレット構造など)は、好ましくは、ポリイソシアネート(IP)と活性水素化合物(HP)とが反応して形成する構造単位(ウレタン結合、尿素結合など)と、ポリイソシアネート(IP)が複数反応して形成する構造単位(イソシアヌレート構造、アロファネート構造、ビウレット構造など)との総和に対して、10質量%以下、より好ましくは、5質量%以下、さらに好ましくは、2質量%以下、とりわけ好ましくは、0質量%である。
また、活性水素化合物(HP)は、上記(H1)〜(H4)を必須とするが、本願の目的を損なわない範囲であれば、他の公知の活性水素化合物が含まれていても構わない。このような化合物の、活性水素化合物(HP)の総量に対する割合は、10質量%以下、より好ましくは、5質量%以下である。
また、アニオン性基を含有する水酸基含有化合物が用いられる場合には、水性ウレタン樹脂の酸価は、例えば、10mgKOH/g以上、好ましくは、14mgKOH/g以上、より好ましくは、20mgKOH/g以上であり、例えば、60mgKOH/g以下、好ましくは、41mgKOH/g以下、より好ましくは、35mgKOH/g以下である。
酸価が上記範囲であれば、比較的短時間の焼き付け処理でも、耐食性、硬度、耐溶剤性、耐酸・アルカリ性などの各種物性に優れるコーティング層を得ることができる。
なお、酸価は、常法による測定値を用いることができる。その他、水性ウレタン樹脂中に占めるカルボン酸の含有量から計算により求めることもできる。なお、カルボン酸の含有量は、水性ウレタン樹脂の原料およびその仕込み量から計算により求めることができる。
また、水性ウレタン樹脂におけるケイ素原子の含有量(Si量)は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上であり、例えば、2.0質量%以下、好ましくは、1.0質量%以下である。
なお、ケイ素原子の含有量(Si量)は、水性ウレタン樹脂の原料およびその仕込み量から計算により求めることができる。
また、本発明の水性ウレタン樹脂や、その水性ウレタン樹脂から形成されるコーティング層などは、溶媒に不溶解となることがあるので、その組成をNMR法などで直接分析することが困難な場合がある。このような場合は、溶媒に溶解可能となるまで徹底的に加熱アルカリ分解し、その後、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、マススペクトル法、NMR法などの手法を単独で、あるいはそれらの適宜組み合わせで、分解後の成分(断片)分析から組成情報を得ることも可能である。
そして、このような水性ウレタン樹脂は、比較的短時間の焼き付け処理でも、耐食性、硬度、耐溶剤性、耐酸・アルカリ性などの各種物性に優れるコーティング層を得ることができる。
また、上記の水性ウレタン樹脂の製造方法によれば、コーティング剤に好適な水性ウレタン樹脂を製造することができる。
そのため、水性ウレタン樹脂は、各種塗料などのコーティング剤として用いることができ、とりわけ、防錆処理剤として、好適に用いられる。
本発明の防錆処理剤は、上記した水性ウレタン樹脂を含んでいる。
より具体的には、防錆処理剤は、上記した水性ウレタン樹脂の水分散液を含んでおり、必要により、さらに、添加剤を含むことができる。
添加剤としては、例えば、成膜助剤、レベリング剤(界面活性剤など)が挙げられる。
成膜助剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートなどのアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテルなどのエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−メチルカプロラクタムなどが挙げられる。
これら成膜助剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
成膜助剤として、好ましくは、エーテル類などが挙げられる。
成膜助剤の配合割合は、水性ウレタン樹脂の固形分(樹脂成分)100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、80質量部以上であり、例えば、200質量部以下、好ましくは、150質量部以下である。
また、レベリング剤の配合割合は、水性ウレタン樹脂の固形分(樹脂成分)100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.2質量部以上であり、例えば、1質量部以下、好ましくは、0.5質量部以下である。
また、添加剤としては、上記のほか、さらに、水性アクリル樹脂、水性ウレタン樹脂、水性ポリオレフィン樹脂、水性ポリエステル樹脂、硬化剤(水分散イソシアネート、カルボジイミド、水性エポキシ樹脂など)、シランカップリング剤、アルコキシシラン化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤など)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、分散安定剤、着色剤(顔料、染料など)、フィラー、コロイダルシリカ、無機粒子、無機酸化物粒子、結晶核剤、消泡剤、造膜助剤、増粘剤、分散剤、皮張り防止剤などが挙げられる。これらの配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
なお、添加剤は、イソシアネート基末端プレポリマーに配合してもよく、また、水性ウレタン樹脂に配合してもよく、さらには、水性ウレタン樹脂の水分散液に配合してもよい。
さらに、必要に応じて、水を添加して、防錆処理剤の固形分濃度(樹脂および添加剤の総濃度)を調整することもできる。
防錆処理剤の固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、13質量%以上、より好ましくは、15質量%以上であり、また、例えば、40質量%以下、好ましくは、35質量%以下、より好ましくは、30質量%以下である。
そして、このような防錆処理剤は、上記の水性ウレタン樹脂を含むため、比較的短時間の焼き付け処理でも、耐食性、硬度、耐溶剤性、耐酸・アルカリ性などの各種物性に優れるコーティング層を得ることができる。
そのため、防錆処理剤は、各種産業分野における金属材料に、好適に用いられる。より具体的には、防錆処理剤は、例えば、自動車分野、土木分野、建築分野、鋼製製品分野などにおける、例えば、金属製品、金属部品などの金属材料のコーティングに、好適に用いられる。
金属材料としては、例えば、圧延鋼板、鋳物、亜鉛系メッキ鋼板、アルミ系メッキ鋼板、錫系メッキ鋼板、クロム系メッキ鋼板、鉛系メッキ鋼板、黄銅、ダクタイル鋳鉄などが挙げられる。その他、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ベリリウム、チタニウム、マグネシウム、ステンレスおよびその合金などからなる金属材料などが挙げられる。なお、金属は、必要に応じて、リン酸塩、クロム酸塩、薄膜有機皮膜などにより表面処理されていてもよい。
防錆処理剤により金属材料をコーティングするには、例えば、防錆処理剤を被塗物(金属材料)に塗布し、焼き付け処理(加熱処理)する。
塗布方法としては、特に制限されず、例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ディッピング法などの公知のコーティング方法が挙げられる。
塗布量は、特に制限されないが、焼き付け処理後のコーティング層の厚みが後述する範囲になるように、適宜設定される。
焼き付け条件は、特に制限されないが、作業性の向上、省エネルギー化および低コスト化を図る観点から、好ましくは、処理時間を比較的短時間(30分未満)にする。処理時間として、具体的には、例えば、30分未満、好ましくは、20分以下、より好ましくは、15分以下であり、例えば、5分以上、好ましくは、10分以上である。
また、焼き付け温度が、例えば、80℃以上、好ましくは、100℃以上であり、例えば、180℃未満、好ましくは、170℃以下、より好ましくは、160℃以下、さらに好ましくは、140℃以下である。
これにより、被塗物(金属材料)の表面に、水性ウレタン樹脂からなるコーティング層を形成することができる。
コーティング層の厚みは、例えば、1g/m2以上、好ましくは、3g/m2以上、より好ましくは、5g/m2以上であり、また、例えば、100g/m2以下、好ましくは、50g/m2以下、より好ましくは、30g/m2以下である。
このようなコーティング層は、上記の防錆処理剤により形成されているため、比較的短時間の焼き付け処理でも、耐食性、硬度、耐溶剤性、耐酸・アルカリ性などの各種物性に優れる。
なお、コーティング層の形成において、処理時間および処理温度は、上記に限定されず、例えば、処理時間を比較的長時間(例えば、30分以上1時間以下)にすることもでき、また、温度を比較的高温(例えば、180℃以上200℃以下)にすることもできる。このような処理条件で得られたコーティング層も、耐食性、硬度、耐溶剤性、耐酸・アルカリ性などの各種物性に優れる。
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
各実施例において採用される測定方法を下記する。
<酸価>
水性ウレタン樹脂中に占めるカルボン酸の含有量から計算により求めた。また、カルボン酸の含有量は、水性ウレタン樹脂の原料およびその仕込み量から計算により求めた。
<ケイ素原子の含有量(Si量)>
水性ウレタン樹脂の原料およびその仕込み量から計算により求めた。
<粘度>
BM型粘度計(ローターNo.2)により25℃で測定した。
<平均粒子径>
コールターカウンターN5を用いて測定した。
(原料成分)
1.ポリイソシアネート(IP)
(1)H12MDI:4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)
(2)IPDI:イソホロンジイソシアネート
(3)HDI:1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート
(4)TDI:トリレンジイソシアネート(2,4−TDI/2,6−TDI=80/20(モル比))
2.高分子量ポリオール
(1)R−45HT:ポリオレフィンポリオール(H1)、出光興産製 Poly bd 水酸基末端液状ポリブタジエン(水酸基価45.4mgKOH/g、数平均分子量2800)
(2)R−15HT:ポリオレフィンポリオール(H1)、出光興産製 Poly bd 水酸基末端液状ポリブタジエン(水酸基価102.2mgKOH/g、数平均分子量1200)
(3)UH−200:宇部興産製 ETERNACOLL ポリカーボネートジオール(水酸基価56.1mgKOH/g、数平均分子量2000)
3.低分子量ポリオール(H2)
(1)CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール
(2)BPX−11:ADEKA製 ポリエーテルポリオール、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体、プロピレンオキサイドの平均付加モル数:2(水酸基価315mgKOH/g、数平均分子量356)
(3)TEG:トリエチレングリコール
4.親水性基−水酸基併有化合物(H3)
(1)DMPA:ジメチロールプロピオン酸(分子量134)
5.ブロック剤
(1)MEK−O:メチルエチルエトンオキシム
6.溶剤
(1)MEK:メチルエチルケトン
7.ウレタン化触媒
(1)スタノクト:オクチル酸第一スズ(スズ系ウレタン化触媒)、エービーアイコーポレーション製
8.中和剤
(1)TEA:トリエチルアミン
9.鎖伸長剤
・アミノアルコール
(1)A−EA:日本乳化剤製 アミノアルコールEA(N−(2−アミノエチル)エタノールアミン)(分子量104)
・ポリアミン
(1)HYD・1水和物:ヒドラジン・1水和物
・第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物
(1)KBM−602:信越化学工業製 N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(分子量206、Si含有量13.6%)
(2)KBM−603:信越化学工業製 N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(分子量222、Si含有量12.6%)
10.レベリング剤
(1)BYK−348:水系用シリコン系界面活性剤、ビックケミー製
(水性ウレタン樹脂の製造)
実施例1
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管および温度計を備えた4つ口フラスコに、H12MDI 128.3質量部と、R−45HT 59.5質量部、BPX−11 33.1質量部、DMPA 1.3質量部およびMEK(溶剤) 110.7質量部とを仕込み、窒素雰囲気下、70℃に昇温し、1時間撹拌した。原料および反応生成物が溶剤に溶解していることを確認した後、スタノクト 0.03質量部を加え、窒素雰囲気下、80℃においてさらに4時間撹拌し、反応液が所定のイソシアネート含有量(5.1質量%)に達したことを確認した。次いで、反応液を40℃以下まで冷却した後、TEA 16.1質量部を添加して中和させ、イソシアネート基末端プレポリマーのMEK溶液(a)を得た。
次に、10℃のイオン交換水 832.1質量部に、上記反応により得られたイソシアネート基末端プレポリマーのMEK溶液(a)396.0質量部をホモディスパー撹拌下に連続滴下させ水分散させた後、イオン交換水 82.3質量部にKBM−602 19.8質量部、および、KBM−603 21.3質量部を溶解させたアミン水溶液を滴下して鎖伸長反応させ、さらに、50℃の減圧下でMEKおよび水を除去することにより、酸価 29.7mgKOH/g、Si量 1.80%、固形分 30.2%、pH 8.4、25℃粘度 100mPa・s、平均粒子径 50nmの水性ウレタン樹脂の水分散液(実施例1)を得た。
なお、得られた水性ウレタン樹脂は、ポリイソシアネート由来の構造単位(I)と活性水素化合物由来の構造単位(H)とを含み、構造単位(I)と構造単位(H)由来の官能基の当量比:(HS)/(IS)は、0.957であった。
実施例2〜11
表1に記載の配合処方に変更した以外は、実施例1と同様にして水性ウレタン樹脂の水分散液を得た。
比較例1
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管および温度計を備えた4つ口フラスコに、H12MDI 132.3質量部とR−45HT 67.8質量部、BPX−11 37.8質量部、DMPA 21.4質量部およびMEK 122.0質量部とを仕込み、窒素雰囲気下、70℃に昇温し、1時間撹拌した。原料および反応生成物が溶剤に溶解していることを確認した後、スタノクト 0.03質量部を加え、窒素雰囲気下、80℃においてさらに4時間撹拌し、反応液が所定のイソシアネート含有量(4.7質量%)に達したことを確認した。次いで、反応液を40℃以下まで冷却した後、ブロック剤であるMEK−O 9.4質量部を加え、80℃においてさらに1時間撹拌し、反応液が所定のイソシアネート含有量(3.4質量%)に達したことを確認した。次いで、反応液を40℃以下まで冷却した後、TEA 16.1質量部を添加して中和させ、ブロックイソシアネート基末端プレポリマーのMEK溶液(l)を得た。
次に、10℃のイオン交換水 801.7質量部に、上記反応により得られたブロックイソシアネート基末端プレポリマーのMEK溶液(l)406.8質量部をホモディスパー撹拌下に連続滴下させ水分散させたのち、イオン交換水 30.4質量部にアミノアルコールEA 15.2質量部を溶解させたアミン水溶液を滴下することで鎖伸長反応させ、さらに、50℃の減圧下でMEKおよび水を除去することにより、酸価 29.8mgKOH/g、潜在イソシアネート含有量 1.5%、固形分 29.9%、pH 8.5、25℃粘度 41mPa・s、平均粒子径 42nmの水性ウレタン樹脂の水分散液を得た。
比較例2
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管および温度計を備えた4つ口フラスコに、H12MDI 138.6質量部とR−45HT 71.7質量部、BPX−11 39.9質量部、DMPA 22.2質量部およびMEK 123.9質量部とを仕込み、窒素雰囲気下、70℃に昇温し、1時間撹拌した。原料および反応生成物が溶剤に溶解していることを確認した後、スタノクト 0.03質量部を加え、窒素雰囲気下、80℃においてさらに4時間撹拌し、反応液が所定のイソシアネート含有量(4.7質量%)に達したことを確認した。次いで、反応液を40℃以下まで冷却した後、TEA 16.7質量部を添加して中和させ、イソシアネート基末端プレポリマーのMEK溶液(m)を得た。
次に、10℃のイオン交換水 811.4質量部に、上記反応により得られたイソシアネート基末端プレポリマーのMEK溶液(m)413.0質量部をホモディスパー撹拌下に連続滴下させ水分散させたのち、イオン交換水 20.7質量部にHYD・1水和物 10.3質量部を溶解させたアミン水溶液を滴下することで鎖伸長反応させ、さらに、50℃の減圧下でMEKおよび水を除去することにより、酸価 31.0mgKOH/g、固形分 30.3%、pH 8.3、25℃粘度 45mPa・s、平均粒子径 60nmの水性ウレタン樹脂の水分散液を得た。
比較例3
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管および温度計を備えた4つ口フラスコに、H12MDI 133.6質量部とR−45HT 69.1質量部、BPX−11 38.5質量部、DMPA 21.4質量部およびMEK 119.5質量部とを仕込み、窒素雰囲気下、70℃に昇温し、1時間撹拌した。原料および反応生成物が溶剤に溶解していることを確認した後、スタノクト 0.03質量部を加え、窒素雰囲気下、80℃においてさらに4時間撹拌し、反応液が所定のイソシアネート含有量(4.7質量%)に達したことを確認した。次いで、反応液を40℃以下まで冷却した後、TEA 16.1質量部を添加して中和させ、イソシアネート基末端プレポリマーのMEK溶液(n)を得た。
次に、10℃のイオン交換水 790.6質量部に、上記反応により得られたイソシアネート基末端プレポリマーのMEK溶液(n)398.2質量部をホモディスパー撹拌下に連続滴下させ水分散させたのち、イオン交換水 41.5質量部にアミノアルコールEA 20.7質量部を溶解させたアミン水溶液を滴下することで鎖伸長反応させ、さらに、50℃の減圧下でMEKおよび水を除去することにより、酸価 29.8mgKOH/g、固形分 30.5%、pH 8.2、25℃粘度 53mPa・s、平均粒子径 76nmの水性ウレタン樹脂の水分散液を得た。
比較例4
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管および温度計を備えた4つ口フラスコに、H12MDI 135.3質量部とUH−200 57.2質量部、BPX−11 39.4質量部、DMPA 21.5質量部およびMEK 115.5質量部とを仕込み、窒素雰囲気下、70℃に昇温し、1時間撹拌した。原料および反応生成物が溶剤に溶解していることを確認した後、スタノクト 0.03質量部を加え、窒素雰囲気下、80℃においてさらに4時間撹拌し、反応液が所定のイソシアネート含有量(4.9質量%)に達したことを確認した。次いで、反応液を40℃以下まで冷却した後、TEA 16.2質量部を添加して中和反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーのMEK溶液(o)を得た。
次に、10℃のイオン交換水 806.9質量部に、上記反応により得られたイソシアネート基末端プレポリマーのMEK溶液(o)385.1質量部をホモディスパー撹拌下に連続滴下させ水分散させたのち、イオン交換水 59.8質量部にアミノアルコールEA 12.6質量部、KBM−602 8.3質量部、KBM−603 9.0質量部を溶解させたアミン水溶液を滴下することで鎖伸長反応させ、さらに50℃の減圧下でMEKおよび水を除去することにより、酸価 30.0mgKOH/g、Si量 0.76%、固形分 30.4%、pH 8.2、25℃粘度 27mPa・s、平均粒子径 37nmの水性ウレタン樹脂の水分散液を得た。
比較例5
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管および温度計を備えた4つ口フラスコに、H12MDI 121.4質量部とR−15HT 111.6質量部、DMPA 21.8質量部およびMEK 116.3質量部とを仕込み、窒素雰囲気下、70℃に昇温し、1時間撹拌した。原料および反応生成物が溶剤に溶解していることを確認した後、スタノクト 0.03質量部を加え、窒素雰囲気下、80℃においてさらに4時間撹拌し、反応液が所定のイソシアネート含有量(4.5質量%)に達したことを確認した。次いで、反応液を40℃以下まで冷却した後、TEA 16.5質量部を添加して中和反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーのMEK溶液(p)を得た。
次に、10℃のイオン交換水 811.9質量部に、上記反応により得られたイソシアネート基末端プレポリマーのMEK溶液(p)387.6質量部をホモディスパー撹拌下に連続滴下させ水分散させたのち、イオン交換水 56.5質量部にアミノアルコールEA 10.1質量部、KBM−602 8.8質量部、KBM−603 9.4質量部を溶解させたアミン水溶液を滴下することで鎖伸長反応させ、さらに50℃の減圧下でMEKおよび水を除去することにより、酸価 30.4mgKOH/g、Si量 0.79%、固形分 30.0%、pH 8.4、25℃粘度 168mPa・s、平均粒子径 63nmの水性ウレタン樹脂の水分散液を得た。
各実施例および各比較例の配合処方を表1に示す。なお、表1中の略号の詳細は上記の通りである。また、各反応において得られる水性ウレタン樹脂の構造単位(I)と構造単位(H)由来の官能基の当量比:(HS)/(IS)を、表1に併せて示す。
実施例12
実施例1で得た水性ウレタン樹脂の水分散液 30.0質量部に、成膜助剤としてブチルセロソルブ 9.0質量部を加え、さらに、レベリング剤としてイオン交換水を用いて希釈した10%BYK−348 0.3質量部を加え、固形分濃度(NV)が20質量%になるようにイオン交換水6.1質量部を混合することにより配合液を調製した。
上記で得られた配合液を100μmのアプリケーターを使用し、ガラス板およびリン酸亜鉛処理鋼板(JIS G3141(SPCC,SB) PB−N144)に塗布した後、140℃および160℃にて15分間焼き付け、評価用の塗膜とした。
なお、耐食性評価用の塗膜としては、上記で得られた配合液をNo.20のバーコーターにて塗布した後、140℃および160℃にて15分間焼き付けたものを用いた。
実施例13〜22および比較例6〜10
表2に記載の配合処方に変更した以外は、実施例12と同様の操作により、配合液を調製し、実施例12と同様の操作により、評価用の塗膜を形成した。
(評価)
各実施例および各比較例の塗膜を、以下の方法により評価した。その結果を、表2に示す。
(1)耐溶剤性
各実施例および各比較例で得られたガラス板上の塗膜について、イソプロピルアルコールにてラビング試験(割り箸の先端部にガーゼを付け、イソプロピルアルコールに浸したあと塗膜を擦る)を行い、往復200回を上限として、以下の基準で評価した。
◎:200回でも変化なし
○:200回で少し傷あり
△:200回で傷あり又は100以上200回未満で剥離
×:50以上100回未満で剥離
××:50回未満で剥離又は溶解
(2)耐酸性
各実施例および各比較例で得られたリン酸亜鉛処理鋼板上の塗膜について、5%酢酸水溶液を揮発しないようにカバーで覆い、24時間経過後の塗膜および試験板について、以下の基準で評価した。
◎:変化なし
○:少し痕あり
△:変色あり又はブリスターあり
×:錆あり
××:膨潤、剥がれあり
(3)耐アルカリ性
各実施例および各比較例で得られたリン酸亜鉛処理鋼板上の塗膜について、1%炭酸ナトリウム水溶液を揮発しないようにカバーで覆い、24時間経過後の塗膜および試験板について、以下の基準で評価した。
◎:変化なし
○:少し痕あり
△:変色あり又はブリスターあり
×:錆あり
××:膨潤、剥がれあり
(4)鉛筆硬度
各実施例および各比較例で得られたガラス板上の塗膜について、JIS K5600−5−4に準拠して鉛筆硬度を測定した。
(5)耐食性
各実施例および各比較例で得られたリン酸亜鉛処理鋼板上の塗膜について、塩水噴霧試験(JIS Z2371:35℃、5%食塩水)を行い、240時間後の塗膜および試験板について、以下の基準で評価した。
◎:変化なし
○:錆発生1%未満
△:錆発生1%以上5%未満
×:錆発生5%以上20%未満
××:錆発生20%以上
評価結果を、表2に示す。
(考察)
表2から明らかなように、各実施例の水性ウレタン樹脂の水分散液は、上記評価条件においては、いずれの試験においても良好な結果を示しており、防錆処理剤などに優れた効果が期待できる。
一方、比較例1(比較例6)のブロック剤を用いて得られた水性ウレタン樹脂の水分散液は、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物が用いられない条件であり耐溶剤、耐酸性ならびに耐食性が劣る結果である。これは、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物による反応(例えば架橋反応)の効果を示すものと考えられる。また、15分という比較的短い焼き付け時間では、ブロック剤が解離しにくく、再生イソシアネートの発生が乏しく、十分な架橋反応が進行しない可能性も考えられる。
また、比較例2(比較例7)および比較例3(比較例8)は、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物が用いられない条件であり、耐食性に劣る結果である。これは、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物による反応(例えば架橋反応)の効果を示すものと考えられる。
また、ポリオレフィンポリオールが用いられていない比較例4(比較例9)、および、低分子量ポリオールが用いられていない比較例5(比較例10)は、いずれも、耐酸性および耐アルカリ性が劣る結果となっており、140℃および15分という比較的低温かつ比較的短時間の焼き付け条件ではその影響が顕著である。