従来、集塵機能を備える不織布と基材よりも平均繊維径の小さな繊維を含む不織布とは、接着剤を用いて接着されている。例えば、基材と基材よりも平均繊維径の小さな繊維を含む不織布との積層体に、接着剤として熱可塑性樹脂を散布した後、上記集塵機能を備える不織布が積層される。
一方、平均繊維径の小さな繊維は、例えば、電界紡糸法により基材上に堆積される。つまり、平均繊維径の小さな繊維を含む不織布は、基材上に接着剤を介さずに積層される。電界紡糸法では、平均繊維径の小さな繊維の原料である樹脂(原料樹脂)を溶媒に溶解させた原料液に、高電圧を印加し、電荷をもった原料液をノズルから噴射することにより、平均繊維径の小さな繊維が生成される。平均繊維径の小さな繊維は、溶媒を含んだ状態で基材上に堆積するため、基材を構成する繊維と密着して、両者は接合される。
つまり、基材を構成する繊維(第1繊維)と平均繊維径の小さな繊維(第2繊維)とは、繊維同士の点接着によって接着されている。そのため、第2繊維は、基材から剥離し易い。第2繊維が基材から剥離すると、第2繊維に接着剤を介して接着する上記集塵機能を備える不織布(第2不織布)も、基材から剥離する。第2不織布の剥離を抑制するには、第1繊維と第2繊維とを接着剤を用いて接着すれば良いが、製造工程および製造コストが増加する。
そこで、本発明では、第2繊維を、基材の第2不織布に対向する主面側に、第1繊維との複合層として配置する。すなわち、第1繊維を含む基材層と第1繊維および第2繊維を含む複合層とを備える第1不織布の複合層と、第2不織布とを、接着剤により接合する。このとき、第2繊維は、上記のような不織布の状態ではなく、第1繊維同士の間隙に埋没して、第1繊維と接合している。そのため、第2繊維と第1繊維とは分離し難い。
さらに、本発明の第1実施形態では、第2繊維は、複合層に、第2繊維の密な領域と疎な領域とが、混在した状態で形成されるように配置されている。そのため、第1不織布の複合層に接着剤を塗布した後、第2不織布を積層する場合、第2不織布の少なくとも一部は、接着剤を介して直接的に(すなわち、第2繊維を介さずに)第1繊維に接着される。これにより、製造工程および製造コストを増加させることなく、第2不織布の剥離を抑制することができる。一方、第1不織布は、第2繊維の密な領域を備えるため、集塵効率の低下は抑制される。
また、本発明の第2実施形態では、粒子状の接着剤の少なくとも一部が、第1繊維に、第2繊維を介さずに直接に散布されている。すなわち、接着剤は、第2繊維と接触するドット状の第1ドット領域と、第2繊維と接触しないドット状の第2ドット領域とを含む。これにより、第2不織布の少なくとも一部は、接着剤を介して直接的に第1繊維に接着される。これにより、製造工程および製造コストを増加させることなく、第2不織布の剥離を抑制することができる。さらに、接着剤をドット状に配置することにより、圧力損失が低く抑えられる。
以下、本発明に係る積層不織布について、空気清浄機の濾材に適する形態として、具体的に説明するが、積層不織布の用途はこれに限定されるものではない。
本発明に係る積層不織布は、第1繊維および第2繊維を含む第1不織布と、第1不織布に積層され、第3繊維を含む第2不織布と、第1不織布と第2不織布との間に介在する接着剤と、を備える。
第1不織布は、第1繊維を含む基材層と、第1不織布の第2不織布に対向する主面側に配置され、第1繊維および第2繊維を含む複合層とを含む。基材層は、積層不織布の形状を保持する機能を有する。例えば、積層不織布をプリーツ加工する場合、基材層によってプリーツの形状は保持される。複合層は、集塵効果を発揮する。
このような第1不織布は、第1繊維を含む基材上に、例えば電界紡糸法を用いて第2繊維を堆積させることにより得ることができる。このとき、例えば、第2繊維の堆積量を少なくする。これにより、基材に堆積する第2繊維のほとんど(例えば、90質量%以上)は第1繊維同士の間隙に埋没して、上記複合層を形成する。そのため、第1繊維と第2繊維とが分離することが抑制される。また、複合層の第2繊維は、自己支持性を備える層を形成していない。そのため、第2繊維の一部が第1繊維から分離しても、他の第2繊維が連鎖的に分離するという事態は生じ難い。
以下、第1繊維を含む基材上に、電界紡糸法により第2繊維を堆積させて、第1不織布を作製する場合を例に挙げて説明する。
第1不織布(基材層と複合層との合計)の厚みT1は、圧力損失の観点から、50μm以上、500μm以下であることが好ましく、150μm以上、400μm以下であることがより好ましい。不織布の厚みTとは、例えば、不織布の任意の10箇所の厚みの平均値である(以下、同じ)。厚みとは、不織布の2つの主面の間の距離である。不織布の厚みTは、具体的には、不織布の断面を写真に取り、不織布の一方の主面上にある任意の1地点から他方の主面まで、一方の表面に対して垂直な線を引いたとき、この線上にある繊維のうち、最も離れた位置にある2本の繊維の外側(外法)の距離として求められる。他の任意の複数地点(例えば、9地点)についても同様にして不織布の厚みを算出し、これらを平均化した数値を、不織布の厚みTとする。上記厚みTの算出に際しては、二値化処理された画像を用いても良い。
複合層の厚みは、集塵効率の観点から、0.1μm以上、2μm以下であることが好ましく、0.5μm以上、1μm以下であることがより好ましい。言い換えれば、第2繊維は、第1不織布の厚み方向に、第1不織布の一方の主面から2μmまでの領域に配置されることが好ましく、第1不織布の一方の主面から1μmまでの領域に配置されることがより好ましい。
第1繊維の材質は特に限定されず、例えば、ガラス繊維、セルロース、アクリル樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド(PA)、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。なかでも、形状保持の観点から、第1繊維の材質はPETまたはセルロースが好ましい。第1繊維の平均繊維径D1は特に限定されず、例えば、1μm以上、40μm以下であっても良く、5μm以上、20μm以下であっても良い。
平均繊維径D1とは、第1繊維の直径の平均値である。第1繊維の直径とは、第1繊維の長さ方向に対して垂直な断面の直径である。そのような断面が円形でない場合には、最大径を直径と見なしてよい。また、基材の一方の主面の法線方向から見たときの、第1繊維の長さ方向に対して垂直な方向の幅を、第1繊維の直径と見なしても良い。平均繊維径D1は、例えば、基材に含まれる任意の10本の第1繊維の任意の箇所の直径の平均値である。後述する平均繊維径D3およびD2についても同じである。
基材は、例えば、スパンボンド法、乾式法(例えば、エアレイド法)、湿式法、メルトブロー法、ニードルパンチ法等により製造された不織布であり、その製造方法は特に限定されない。なかでも、基材として適する点で、基材は、湿式法により製造されることが好ましい。圧力損失の観点から、基材の単位面積当たりの質量は、10g/m2以上、80g/m2以下であることが好ましく、35g/m2以上、60g/m2以下であることがより好ましい。基材の厚みは、第1不織布の厚みT1と同程度であれば良い。
第2繊維は、第1繊維の平均繊維径D1よりも小さい平均繊維径D2を有する。これによって、ダストを捕捉する機能が発揮される。平均繊維径D2は、平均繊維径D1の1/5以下(D2≦D1/5)であることが好ましく、D2≦D1/10であることがより好ましい。また、平均繊維径D2は、平均繊維径D1の1/100以上であることが好ましい。平均繊維径D2がこの範囲であれば、圧力損失が抑制されるとともに集塵効率が高くなり易い。具体的には、平均繊維径D2は3μm以下である。平均繊維径D2は、1μm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。また、平均繊維径D2は50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。
第2繊維の単位面積当たりの平均の質量は、0.01g/m2以上、1.5g/m2以下であることが好ましく、0.01g/m2以上、0.5g/m2以下であることがより好ましく、0.03g/m2以上、0.1g/m2以下であることが特に好ましい。第2繊維の上記質量がこの範囲であると、複合層が形成され易い。また、第2繊維が上記の範囲で含まれると、圧力損失を抑制しながら、高い集塵効率を発揮し易い。なお、後述するように、積層不織布が、第2繊維が疎な領域と密な領域とを含む場合、上記平均の質量とは、これら領域の平均の質量をいう。
第2繊維の材質は特に限定されず、例えば、PA、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアリレート(PAR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、PP、PET、ポリウレタン(PU)等のポリマーが挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いても良い。なかでも、第2繊維を電界紡糸法により形成する場合、PESが好ましく用いられる。また、平均繊維径D2を細くし易い点で、PVDFが好ましく用いられる。
第1不織布の圧力損失は特に限定されない。なかでも、第1不織布の初期の圧力損失は、JISB9908形式1の規格に準拠した測定機を用いて測定した場合、1Pa以上、10Pa以下程度であることが好ましい。第1不織布の初期の圧力損失がこの範囲であれば、積層不織布全体の圧力損失も抑制される。
第2不織布は、比較的大きなダストを捕捉する機能を有するとともに、種々の外部負荷から第2繊維を保護する保護材として機能する。第2不織布は、第3繊維を含む。第3繊維の材質は特に限定されず、第1不織布と同じ材質が例示できる。なかでも、濾材に適する点で、PPが好ましい。第3繊維の平均繊維径D3は、特に限定されない。平均繊維径D3は、例えば、0.5μm以上、20μm以下であり、5μm以上、20μm以下である。
第2不織布の製造方法は特に限定されず、基材の製造方法として例示した方法が同じく例示できる。なかでも、濾材として適する繊維径の細い不織布が形成され易い点で、第2不織布は、メルトブロー法により製造されることが好ましい。
第2不織布の圧力損失も、特に限定されない。なかでも、第2不織布の初期の圧力損失は、上記と同様の条件で測定する場合、10Pa以上、50Pa以下程度であることが好ましい。第2不織布の初期の圧力損失がこの範囲であれば、積層不織布全体の圧力損失も抑制される。
第2不織布の厚みT2は、圧力損失の観点から、100μm以上、500μm以下であることが好ましく、150μm以上、400μm以下であることがより好ましい。第2不織布の単位面積当たりの質量は、圧力損失の観点から、10g/m2以上、50g/m2以下であることが好ましく、10g/m2以上、30g/m2以下であることがより好ましい。
(第1実施形態)
以下、本発明に係る第1実施形態を、図1および2を参照しながら具体的に説明する。図1は、本実施形態に係る積層不織布10Aの要部を模式的に示す断面図である。図2は、第1不織布1を複合層1b(換言すれば、第1不織布の第2不織布に対向する主面1A)の法線方向から見たときの、第1領域R1および第2領域R2の位置関係や形状の一例を模式的に示している。なお、図2では、便宜上、第1領域R1にハッチングを入れて示している。
本実施形態に係る積層不織布10Aは、第1繊維1Fから構成される基材層1aおよび第1繊維1Fおよび第2繊維2Fを含む複合層1bを含む第1不織布1と、第1不織布1に接着剤4を介して接着する第2不織布3とを備える。さらに、複合層1bは、第2繊維の密な領域R1と第2繊維の疎な領域R2とを有している。第2領域R2における第2繊維2Fの単位面積当たりの質量W2は、第1領域R1における第2繊維2Fの単位面積当たりの質量W1の60%未満である。
第1領域および第2領域は、互いに混在した状態で複合層1bに含まれる。混在しているとは、第1領域および第2領域がランダムに分布しているということである。なかでも、第1領域および第2領域は、複合層1b(積層不織布10A)の30cm四方の領域の中に混在した状態で含まれることが好ましく、20cm四方の領域の中に混在した状態で含まれることがより好ましい。このような小さな領域の中に、第1領域および第2領域が混在することにより、第2不織布3の剥離が抑制され易くなる。
ここで、第1領域および第2領域は、以下のようにして決定できる。例えば、30cm四方の積層不織布10Aを、10cm四方の9つのパーツに切り分ける。各パーツの質量を測定し、基材層1a(基材)、第2不織布3および接着剤4は、それぞれ均質であると仮定して、各パーツの第2繊維2Fの単位面積当たりの質量を算出する。第2繊維2Fの質量が最も重いパーツを、第1領域とする。第2繊維2Fの質量が、第1領域に含まれる第2繊維2Fの質量の60%未満であるパーツを、第2領域とする。各パーツのなかで、第2領域であると決定されるパーツは複数あっても良い。20cm四方の積層不織布10Aを用いて、同様に第1領域および第2領域を決定しても良い。この場合、積層不織布10Aを4つの10cm四方のパーツに切り分けて、第1領域および第2領域を決定すれば良い。
第2領域に含まれる第2繊維2Fの単位面積当たりの質量W2は、第1領域に含まれる第2繊維2Fの単位面積当たりの質量W1の55%未満であることが好ましく、50%未満であることがより好ましい。上記の方法により決定される第2領域が複数ある場合、質量W2は、第2領域とされるすべてのパーツに含まれる第2繊維2Fの単位面積当たりの質量の平均値とする。
質量W1は特に限定されない。なかでも、質量W1は0.1g/m2未満であることが好ましい。製造コストが低減されるとともに、圧力損失を低く抑えることができるためである。なお、集塵効率の観点から、質量W1は0.06g/m2以上であることが好ましい。
質量W2は、具体的には、0.06g/m2未満であることが好ましく、0.05g/m2未満であることがより好ましい。これにより、第2不織布3の剥離がさらに抑制される。質量W2は、0g/m2であっても良い。すなわち、複合層1bは、第2繊維2Fを含まない領域を備えていても良い。
第1領域R1および第2領域R2を備える複合層1bを形成する方法は、特に限定されない。例えば、第2繊維2Fを電界紡糸法により形成する場合、基材を一方向に移動させるとともに、第2繊維2Fの生成空間を連続的あるいは断続的に、上記移動方向と交わる方向(例えば、上記移動方向と90°に交わる方向)に揺動させながら、少量の第2繊維2Fを堆積させる。これにより、基材上に、図2に示すようなサーペンタイン型の第1領域R1、および、第1領域R1の周辺に第2領域R2を形成することができる。図中、矢印Lは基材の移動方向を示す。第1領域R1および第2領域R2の位置関係や形状は、これに限定されるものではない。このとき、基材の一方向への移動速度、および、揺動させる幅や速度、タイミング等を調整することにより、第1領域R1および第2領域R2の位置や割合を制御することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図3を参照しながら説明する。図3は、第2実施形態に係る積層不織布10Bの要部を模式的に示す上面図(a)および断面図(b)である。なお、図3(a)では、便宜上、第2不織布を省略している。
本実施形態に係る積層不織布10Bは、第1繊維1Fから構成される基材層1aおよび第1繊維1Fおよび第2繊維2Fを含む複合層1bを含む第1不織布1と、第1不織布1に接着剤4を介して接着する第2不織布3とを備える。このとき、接着剤4を、第1不織布1の複合層1b(主面1A)側から見た形状は、ドット状であり、接着剤4は、第2繊維2Fと接触する第1ドット領域A1と、第2繊維2Fと接触しない第2ドット領域A2とを含む。
各領域(各ドット)の最大径は特に限定されず、使用する接着剤の粒子の粒子径に応じて決定される。なかでも、接着性および圧力損失の観点から、各領域の最大径は、100〜1000μmであることが好ましく、200〜600μmであることがより好ましい。
第1ドット領域A1および第2ドット領域A2の数の合計に対する第2ドット領域A2の数の割合は、5%以上であることが好ましい。第2繊維2Fと接触しない第2ドット領域A2が5%以上含まれることにより、第1繊維1Fと第2不織布3とが直接的に接着されて、第2不織布3の剥離がさらに抑制される。各ドット領域を構成する接着剤4の粒子の個数は制限されず、1個であっても良いし、複数であっても良い。すなわち、複数の接着剤4の粒子が融着等によって結合して、ある領域を形成している場合、この領域は1つのドット領域であるとみなせば良い。
ここで、第2ドット領域A2の数の割合は、以下のようにして算出することができる。まず、30cm四方の積層不織布10Bを準備する。次いで、第2不織布3を、接着剤4が第2不織布3側に残らないように剥離する。接着剤を含む第1不織布1を10cm四方の9つのパーツに切り分ける。各パーツから、ドット状の接着剤4により形成される領域を任意に10か所ずつ選択して、その断面を写真に撮り、接着剤4と第2繊維2Fとが接着しているかどうかを確認する。第2繊維2Fと接触していない領域を第2ドット領域A2と決定し、選択した90箇所の領域に対する割合を算出する。
なお、第1繊維1Fと第2繊維2Fとは、その平均繊維径によって区別できる。第1繊維1Fの平均繊維径D1は、第2繊維2Fの平均繊維径D2よりも大きい(D1>D2)。平均繊維径D1は、使用する第1不織布1から予め算出することができるため、これよりも小さな平均繊維径を有する繊維を、第2繊維2Fであるとみなすことができる。
接着剤4をドット状に配置する方法は、特に限定されず、例えば、接着剤の粒子を、第1不織布1の複合層1b側から散布する方法が挙げられる。
接着剤4の粒子の平均粒径D50は特に限定されず、例えば、100μm以上、500μm以下であっても良く、100μm以上、400μm以下であっても良い。平均粒径D50とは、レーザー回折式の粒度分布測定装置により求められる体積粒度分布におけるメディアン径である(以下、同じ)。なお、接着剤4の散布後、加熱および必要に応じて加圧しながら第2不織布3が積層される。
接着剤4の種類は特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂を主成分とするホットメルト接着剤等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、PU、PET等のポリエステル、PA、ポリオレフィン(例えば、PP、PE)等が例示できる。接着剤4の付与量も特に限定されないが、接着性の観点から、0.5g/m2以上、15g/m2以下であることが好ましく、1g/m2以上、10g/m2以下であることがより好ましく、3g/m2以上、9g/m2以下であることが特に好ましい。
接着剤4の粒子の少なくとも一部を、複合層1bの第2繊維2Fに接触しないように散布する方法としては、例えば、上記のように、第1領域R1と第2領域R2とを備える複合層1bを含む第1不織布を用いる方法が挙げられる。これにより、第2領域R2に散布された接着剤4の少なくとも一部は、第1繊維1Fに直接的に接触するように配置される。
積層不織布10(10A、10B)は、例えば、(1)基材を準備する工程と、(2)基材を搬送ベルトに供給する工程と、(3)基材の一方の表面に、電界紡糸法により第2繊維を堆積させて複合層を形成する工程と、(4)複合層側に接着剤を散布する工程と、(5)接着剤が散布された後、複合層側に第2不織布を積層する工程と、を具備する製造方法により得ることができる。複合層を形成する工程(3)は、(3−1)第2繊維の生成空間において、第2繊維の原料液から静電気力により、少量の第2繊維を生成させる工程、(3−2)生成した第2繊維を、基材の表面に疎密が形成されるように堆積させる工程と、を含む。
上記のような積層不織布の製造方法は、例えば、ラインの上流から下流に基材を搬送し、搬送される基材の主面に複合層を形成した後、第2不織布を積層する製造システムにより実施することが可能である。このような製造システムは、例えば、(1)基材を搬送ベルトに供給する基材供給装置と、(2)原料液から静電気力により第2繊維を生成させる電界紡糸機構を有する複合層形成装置と、(3)複合層形成装置から送り出される第1不織布の上方から、接着剤を散布する接着剤散布装置と、(4)接着剤散布装置から送り出される第1不織布の上方から、第2不織布を積層する第2不織布積層装置を具備する。
以下、図4を参照しながら、積層不織布の製造方法およびこれを行う製造システムについて説明するが、以下のシステムおよび製造方法は、本発明を限定するものではない。図4は、積層不織布10の製造システムの一例の構成を概略的に示す図である。製造システム200は、積層不織布10を製造するための製造ラインを構成している。
まず、基材5を準備する。製造システム200では、基材5は、各搬送ロール11、31、41、51および搬送コンベア21により、製造ラインの上流から下流に搬送される。製造システム200の最上流には、ロール状に捲回された基材5を内部に収容した基材供給装置201が設けられている。供給装置201は、モータ13により第1供給リール12を回転させて、第1供給リール12に捲回された基材5を搬送ロール11に供給する。
基材5は、搬送ロール11により、電界紡糸ユニット202に搬送される。電界紡糸ユニット202が具備する電界紡糸機構は、装置内の上方に設置された第2繊維2Fの原料液を放出するための放出体23と、放出された原料液をプラスに帯電させる帯電手段(後述参照)と、放出体23と対向するように配置された基材5を上流側から下流側に搬送する搬送コンベア21と、を備えている。搬送コンベア21は、基材5とともに第2繊維2Fを収集するコレクタ部として機能する。なお、電界紡糸ユニット202の台数は、特に限定されるものではなく、1台でも2台以上でもよい。
電界紡糸ユニット202および/または放出体23が複数ある場合、電界紡糸ユニット202ごと、あるいは、放出体23ごとに、形成される第2繊維2Fの平均繊維径を変化させても良い。第2繊維2Fの平均繊維径は、後述する原料液の吐出圧力、印加電圧、原料液の濃度、放出体23と基材5との距離、温度、湿度などを調整することにより、変化させることができる。
放出体23の基材5の主面と対向する側には、原料液の放出口(図示せず)が複数箇所設けられている。放出体23の放出口と、基材5との距離は、製造システムの規模や所望の繊維径にもよるが、例えば、100〜600mmであればよい。放出体23は、電界紡糸ユニット202の上方に設置された、基材5の搬送方向と平行な第1支持体24から下方に延びる第2支持体25により、自身の長手方向が基材5の主面と平行になるように支持されている。第1支持体24は、放出体23を基材5の搬送方向とは垂直な方向に揺動させるように、可動であっても良い。
帯電手段は、放出体23に電圧を印加する電圧印加装置26と、搬送コンベア21と平行に設置された対電極27とで構成されている。対電極27は接地(グランド)されている。これにより、放出体23と対電極27との間には、電圧印加装置26により印加される電圧に応じた電位差(例えば20〜200kV)を設けることができる。なお、帯電手段の構成は、特に限定されない。例えば、対電極27はマイナスに帯電されていても良い。また、対電極27を設ける代わりに、搬送コンベア21のベルト部分を導体から構成してもよい。
放出体23は、導体で構成されており、長尺の形状を有し、その内部は中空になっている。中空部は原料液22を収容する収容部となる。原料液22は、放出体23の中空部と連通するポンプ28の圧力により、原料液タンク29から放出体23の中空に供給される。そして、原料液22は、ポンプ28の圧力により、放出口から基材5の主面に向かって放出される。放出された原料液22は、帯電した状態で放出体23と基材5との間の空間(生成空間)を移動中に静電爆発を起し、繊維状物(第2繊維2F)を生成する。生成した第2繊維2Fは基材5状に堆積し、複合層1bを形成する。
第2繊維2Fの堆積量は、0.01g/m2以上、1.5g/m2以下であることが好ましく、0.01g/m2以上、0.5g/m2以下であることがより好ましく、0.03g/m2以上、0.1g/m2以下であることが特に好ましい。第2繊維2Fの堆積量がこの範囲であると、第2繊維2Fが、基材5を構成する第1繊維の間に埋没され易くなる。第2繊維2Fの堆積量は、原料液の吐出圧力、印加電圧、原料液の濃度、基材5の搬送速度などを調整することにより、制御される。
原料液22に含まれる溶媒としては、原料樹脂の種類や製造条件に応じて、適切なものを選択すればよい。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド、ピリジン、水等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。なかでも、電界紡糸法に適している点、および、PESを含む第2繊維2Fを電界紡糸法により形成する場合、PESを溶解し易い点で、DMAcが好ましい。
原料液22には、無機質固体材料を添加してもよい。無機質固体材料としては、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、珪化物、弗化物、硫化物等を挙げることができる。なかでも、加工性などの観点から、酸化物を用いることが好ましい。酸化物としては、Al2O3、SiO2、TiO2、Li2O、Na2O、MgO、CaO、SrO、BaO、B2O3、P2O5、SnO2、ZrO2、K2O、Cs2O、ZnO、Sb2O3、As2O3、CeO2、V2O5、Cr2O3、MnO、Fe2O3、CoO、NiO、Y2O3、Lu2O3、Yb2O3、HfO2、Nb2O5等を例示することができる。これらは単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
原料液22における溶媒と原料樹脂との混合比率は、選定される溶媒の種類と原料樹脂の種類により異なる。原料液における溶媒の割合は、例えば、60質量%から95質量%である。
第2繊維2Fを形成する電界紡糸機構は、上記の構成に限定されない。所定の第2繊維2Fの生成空間において、原料液から静電気力により第2繊維2Fを生成させ、生成した第2繊維2Fを基材5の主面に堆積させることができる機構であれば、特に限定なく用いることができる。例えば、放出体23の長手方向に垂直な断面の形状は、上方から下方に向かって次第に小さくなる形状(V型ノズル)であってもよい。
複合層1bが形成された後、第1不織布1を、接着剤散布装置203に搬送する。接着剤散布装置203では、第1不織布の上方から、接着剤4の粒子が散布される。接着剤4の粒子は、例えば、スプレー法、自由落下等により散布される。
接着剤散布装置203は、例えば、接着剤散布装置203の上方に設置された接着剤4を収容する接着剤タンク32と、接着剤4を散布するための散布部材33とを備える散布装置34を具備する。
接着剤4が散布された後、第1不織布1に第2不織布3が積層される前に、加熱機器42を備える加熱装置204により、第2繊維2Fに含まれる溶媒の除去および接着剤4の溶融を行っても良い。加熱機器42は特に限定されず、公知のものを適宜選択すれば良い。加熱温度は、溶媒の沸点および接着剤4の融点に応じて適宜設定すれば良く、例えば、第1不織布1の表面が100〜200℃程度になるように、加熱すれば良い。
次いで、第1不織布1は、第2不織布積層装置205に搬送される。第2不織布積層装置205では、第1不織布1の上方から、第2不織布3が供給され、接着剤4を介して積層体に積層される。第2不織布3が長尺である場合、第1不織布1と同様に、第2不織布3は第2供給リール52に巻き取られていても良い。この場合、第2不織布3は、第2供給リール52から捲き出されながら、積層体に積層される。
第2不織布3を積層した後、積層不織布10を挟んで上下に配置された一対の加圧ロール53(53aおよび53b)により圧力を加えながら、積層不織布10を加圧して第1不織布1と第2不織布3とをさらに密着させても良い。
最後に、第2不織布積層装置205から積層不織布10を搬出し、ロール61を経由して、より下流側に配置されている回収装置206に搬送する。回収装置206は、例えば、搬送されてくる積層不織布10を捲き取る回収リール62を内蔵している。回収リール62はモータ63により回転駆動される。
[空気清浄機]
本発明に係る空気清浄機100は、図5に例示されるように、気体の吸い込み部101と、気体の吐き出し部102と、これらの間に配置される積層不織布10と、を備える。積層不織布10は、蛇腹状にプリーツ加工されて配置されても良い。積層不織布10は、大気中のダストを捕捉する濾材である。積層不織布10を備える空気清浄機は、長期間にわたって、圧力損失が小さく抑えられる。集塵効率の点で、積層不織布10は、第2不織布3が吸い込み部101側に位置するように、吸い込み部101と吐き出し部102との間に配置されることが好ましい。
空気清浄機100は、外部の大気を吸い込み部101から空気清浄機100内部に取り込む。取り込まれた大気に含まれるダストは、積層不織布10等を通過する間に捕捉され、清浄化された大気が吐き出し部102から外部に放出される。空気清浄機100は、さらに、吸い込み部101と積層不織布10との間に、大きな塵等を捕捉するプレフィルタ103等を備えても良い。また、積層不織布10と吐き出し部102との間に消臭フィルタ104や加湿フィルタ(図示せず)等が備えられても良い。
[実施例]
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
図3に示すような製造システムを用いて、搬送されるセルロースを主体とする基材(D1:15μm、単位面積当たりの質量:42g/m2)に第2繊維を堆積させて複合層を形成し、第1不織布(厚みT1:300μm)を得た。このとき、放出体を連続的に搬送方向とは垂直な方向に揺動させた。第2繊維の原料液としては、PESを20質量%含むDMAc溶液を用いた。D3は、273nmであった。
次いで、第1不織布の複合層側から、接着剤(ポリエステル系ホットメルト樹脂、融点:約100℃)の粒子を自由落下により散布した。接着剤の散布量は6g/m2であった。接着剤の粒子は、全粒子のうちの90体積%以上が180〜250μmの粒径を有していた。第1不織布の表面が158℃になるように加熱した後、複合層側から、第2不織布を積層した。第2不織布として、ポリプロピレン繊維を主体とするメルトブロー不織布(T2:165μm、D3:5μm、単位面積当たりの質量:18g/m2)を用いた。続いて、加圧ロールにより圧着して、積層不織布を得た。圧着の圧力は5kPaとした。
得られた積層不織布から30cm四方の試料を切り取り、プリーツ状に折り畳んだ(プリーツ幅:2.5cm)。次いで、積層不織布を拡布し、第2不織布側の表面を顕微鏡で確認したところ、第2不織布の浮き上がり(剥離)は確認されなかった。
さらに、上記試料を10cm四方の9つのパーツに切り分けて、それぞれの第2繊維の単位面積当たりの質量を算出し、第1領域および第2領域を決定した。第2領域は、9つのパーツのうち3個のパーツであった。第1領域における第2繊維の単位面積当たりの質量W1は0.089g/m2であり、3個の第2領域における第2繊維の単位面積当たりの平均の質量W2は0.048g/m2であった。
また、得られた各パーツから、第2不織布を、接着剤が第2不織布側に残らないように剥離した。各パーツから接着剤が付着したドット状の領域を任意に10か所ずつ選択して、その断面を写真に撮り、接着剤と第2繊維とが接着しているかどうかを確認した。選択した90箇所の領域のうち、第2繊維と接触していない領域(第2ドット領域)は6箇所であった。
別途、幅20mm×長さ200mmの積層不織布を準備した。積層不織布は、第1領域および第2領域が含まれるように裁断した。JISZ0237に準拠した方法により、第1不織布と第2不織布との間の剥離強度を測定した。剥離強度は、59mN/10mmであった。
[比較例1]
実施例1の4倍の数の放出体を備える電界紡糸ユニットを用いたこと、および、放出体を揺動させなかったこと以外は、実施例1と同様にして、積層不織布を得た。積層不織布において、基材と第2不織布との間には、第2繊維を含み、自己支持性を有する不織布(第3不織布)が形成されていた。
得られた積層不織布から30cm四方の試料を切り取った。実施例1と同様に、得られた試料をプリーツ状に折り畳んだ後、拡布して、第2不織布側の表面を顕微鏡で確認したところ、第2不織布の浮き上がり(剥離)が確認された。また、上記試料を10cm四方の9つのパーツに切り分けて、各パーツの第2繊維の単位面積当たりの質量を算出した。各パーツに含まれる第2繊維の最大の質量は0.296g/m2、最小の質量は0.260g/m2であり、第2領域は確認できなかった。さらに、実施例1と同様に、任意の90か所の接着剤のドット領域の断面を確認したところ、第2繊維と接触していない領域は確認できなかった。別途、実施例1と同様の方法により、剥離強度を測定したところ、27mN/10mmであった。