本発明に係る積層不織布は、第1繊維を含む第1不織布と、前記第1不織布に積層される第2繊維を含む第2不織布と、を備え、前記第1繊維の平均繊維径D1および前記第2繊維の平均繊維径D2は、D1<D2の関係を満たし、第2不織布の端面2Tに、前記第1不織布から延出し、前記第1繊維を含む第1突出部が形成されている。これにより、剥離不良の発生が抑制される。
前記第1突出部に含まれる前記第1繊維は、前記端面2Tにおいて、前記第2繊維と交絡していることが好ましい。これにより、積層不織布の端部の接合強度がさらに向上し、剥離不良の発生がさらに抑制される。
前記第1突出部は、前記第2不織布の前記第1不織布に対向しない主面2A上に延出していないことが好ましい。また、前記第1突出部の前記端面2Tから前記端面2Tに対して垂直な方向の高さは、前記第2不織布の他方の主面2Bから前記主面2Aに向かって、小さくなるように変化することが好ましい。これにより、積層不織布を重ねた場合のブロッキングが抑制される。
ブロッキングのさらなる抑制の観点から、前記第1突出部の前記主面2Aに最も近い端部a1から前記第2不織布の他方の主面2Bまでの、前記端面2Tに沿う最短距離d1minと、前記第2不織布の厚みd2と、前記主面2Aと前記端面2Tとの成す角度θ2とが、d1min≦(d2/sin(θ2))×1/2の関係を満たすことが好ましい。特に、前記最短距離d1minは、1〜100μmであることが好ましい。
前記端面2Tを含む前記積層不織布の端部における前記第2不織布と前記第1不織布との間の剥離強度Pt1と、前記積層不織布の中央部における前記第2不織布と前記第1不織布との間の剥離強度Pc1とは、Pt1≧Pc1の関係を満たすことが好ましい。これにより、剥離不良の発生がさらに抑制される。
前記第1不織布と前記第2不織布との間に接着剤を備える場合、前記端面2Tを含む前記積層不織布の端部において、単位面積当たりの前記接着剤が付着する面積の割合At1と、前記積層不織布の中央部において、単位面積当たりの前記接着剤が付着する面積の割合Ac1とは、At1≦Ac1の関係を満たすことが好ましい。積層不織布の剥離不良を抑制しながら、端部における圧力損失を小さくすることができるためである。
また、本発明に係る積層不織布は、第1繊維を含む第1不織布と、前記第1不織布に積層される第2繊維を含む第2不織布と、を備え、前記第1繊維の平均繊維径D1および前記第2繊維の平均繊維径D2は、D1<D2の関係を満たし、第1不織布の端面1Tに、前記第2不織布から延出し、前記第2繊維を含む第2突出部が形成されている。これにより、剥離不良の発生が抑制される。
前記第2突出部に含まれる前記第2繊維は、前記端面1Tにおいて、第1繊維と交絡していることが好ましい。これにより、積層不織布の端部の接合強度がさらに向上し、剥離不良の発生がさらに抑制される。
前記端面1Tを含む前記積層不織布の端部における前記第2不織布と前記第1不織布との間の剥離強度Pt2と、前記積層不織布の中央部における前記第2不織布と前記第1不織布との間の剥離強度Pc2とは、Pt2≧Pc2の関係を満たすことが好ましい。これにより、剥離不良の発生がさらに抑制される。
前記第1不織布と前記第2不織布との間に接着剤を備える場合、前記端面1Tを含む前記積層不織布の端部において、単位面積当たりの前記接着剤が付着する面積の割合At2と、前記積層不織布の中央部において、単位面積当たりの前記接着剤が付着する面積の割合Ac2とは、At2≦Ac2の関係を満たすことが好ましい。積層不織布の剥離不良を抑制しながら、端部における圧力損失を小さくすることができるためである。
前記第1不織布の前記第2不織布に対向しない主面1A側に、第3繊維を含む第3不織布を備え、前記第3不織布の引張り強度が、前記第2不織布の引張り強度よりも大きいことが好ましい。これにより、積層不織布の耐久性が向上する。
前記第2突出部が、前記端面1Tおよび前記第3不織布の端面3Tに形成されている場合、前記第3不織布の前記第1不織布に対向しない主面3B上に延出していないことが好ましい。また、前記第2突出部の前記端面3Tから前記端面3Tに対して垂直な方向の高さが、前記第1不織布の前記第2不織布に対向する主面1Bから前記主面3Bに向かって、小さくなるように変化することが好ましい。これにより、積層不織布を重ねた場合のブロッキングが抑制される。
ブロッキングのさらなる抑制の観点から、前記第2突出部の前記主面3Bに最も近い端部a2から前記主面3Bまでの、前記端面3Tに沿う最短距離d2minと、前記第3不織布の厚みd3と、前記主面3Bと前記端面3Tとの成す角度θ3とが、d2min ≧(d3/sin(θ3))×1/2の関係を満たすことが好ましい。
前記D1は、1μm未満であることが好ましい。これにより、集塵効率が向上する。
本発明に係る空気清浄機は、気体の吸い込み部と、前記気体の吐き出し部と、前記積層不織布と、を備え、前記積層不織布は、前記第2不織布が前記吸い込み部に対向するように、前記吸い込み部と前記吐き出し部との間に配置される。このような空気清浄機は、積層不織布の製造時の歩留まりが高く、また、積層不織布の耐用年数にも優れるため、イニシャルコストおよびランニングコストが低減される。
[第1実施形態]
以下、図1を参照しながら、本発明に係る積層不織布の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る積層不織布10の端部付近を模式的に示した断面図である。積層不織布10は、第1繊維1Fを含む第1不織布1と、第1不織布1の表面に積層され、第2繊維2Fを含む第2不織布2とを備えている。第1繊維1Fの平均繊維径D1および第2繊維2Fの平均繊維径D2は、D1<D2の関係を満たす。第1不織布1および第2不織布2は、例えば、接着剤により接合されていてもよい。
第2不織布2の端面2Tには、第1突出部P1が形成されている。第1突出部P1は、第1不織布1から延出しており、平均繊維径の小さな第1繊維1Fを含む。そのため、端面2Tを含む積層不織布10の端部では、第1不織布1および第2不織布2の対向する主面同士(主面1Bおよび2B)に加えて、第1突出部P1および端面2Tにおいても、第1不織布1と第2不織布2とが接合する。これにより、積層不織布の端部における剥離強度が向上し、剥離不良の発生が低減する。端面2Tは、その少なくとも一部が第1突出部P1により覆われていれば良い。なお、図1では、第2不織布2の端面2Tが、主面(2Aあるいは2B)に対して垂直である場合を示しているが、これに限定されない。例えば、主面2Aと端面2Tとの成す角度θ2は、75〜105°であり得る。
第1突出部P1に含まれる第1繊維1Fは、端面2T(端面2Tの近傍を含む)において、第2繊維2Fと交絡していることが好ましい。交絡とは、繊維が互いに絡まり合っていることをいう。第1繊維1Fと第2繊維2Fとが端面2T近傍で交絡していることにより、積層不織布の端部における剥離強度がさらに向上する。第1繊維1Fは、第2繊維2Fよりも平均繊維径が小さいため、第2繊維に絡まりやすい。なお、端面2Tの近傍とは、第1突出部P1側(第1突出部P1の内部)であっても良いし、第2不織布2側(第2不織布2の内部)であっても良い。
平均繊維径とは、例えば、10本の任意の繊維についてそれぞれ1箇所の直径を計測し、これらの平均値として求められる。繊維の直径とは、繊維の長さ方向に対して垂直な断面の直径である。そのような断面が円形でない場合には、最大径を直径と見なしてよい。また、不織布の主面の法線方向から見たときの、繊維の長さ方向に対して垂直な方向の幅を、繊維の直径と見なしても良い。
作製された積層不織布は、所定の形状に裁断された後、通常、重ねられて次の工程に供される。そのため、裁断された積層不織布同士のブロッキングを抑制する観点から、第2不織布2が積層不織布の最外層である場合には、第1突出部P1は、端面2Tにのみ形成されていることが好ましく、第2不織布2の第1不織布1に対向しない主面2A上には延出していないことが好ましい。
ブロッキングをさらに抑制する観点から、第2不織布の他方の主面2Bから第1突出部P1の主面2Aに最も近い端部a1までの、端面2Tに沿う(端面2T上の)最短距離d1minは、端面2Tの主面1Bと主面2Bとが接する辺に対して直交する方向の長さd2Tの1/2以下であることが好ましい。長さd2Tは、第2不織布の厚みd2および主面2Aと端面2Tとの成す角度θ2を用いて、d2T=d2/sin(θ2)で表わされる。つまり、最短距離d1minは、d1min≦(d2/sin(θ2))×1/2の関係を満たすことが好ましい。
剥離不良を抑制する観点からは、最短距離d1minは、長さd2T(=d2/sin(θ2))の1/100以上であることが好ましい。最短距離d1minとは、端面2T上における端部a1と主面2Bとを結ぶ最短距離である。ブロッキングおよび剥離不良をともに抑制する観点から、最短距離d1minは、具体的には1〜100μmであることが好ましく、2〜20μmであることがより好ましい。
第1突出部P1は、第1突出部P1の端面2Tから端面2Tに対して垂直な方向の高さd1hが、主面2Bから主面2Aに向かって、小さくなるように変化する形状であることが好ましい。言い換えれば、第1突出部P1は、主面2Aに向かって細くなるテーパ形状を有していることが好ましい。積層不織布同士のブロッキングを回避することが、さらに容易となるためである。高さd1hは、剥離不良を抑制する観点から、100nm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。また、ブロッキングをさらに回避し易い点で、高さd1hは、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることが好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。
端面2Tを含む積層不織布10の端部Rt1における第2不織布2と第1不織布1との間の剥離強度Pt1と、積層不織布10の中央部Rc1における第2不織布2と第1不織布1との間の剥離強度Pc1とは、Pt1≧Pc1の関係を満たすことが好ましい。積層不織布の端部Rt1の剥離強度を中央部Rc1以上とすることにより、剥離不良の発生がさらに回避し易くなる。特に、Pt1≧1.2×Pc1の関係を満たすことが好ましい。
端面2Tを含む積層不織布10の端部Rt1および中央部Rc1を、図2を参照しながら説明する。図2は、本発明に係る積層不織布の上面図である。端面2Tを含む積層不織布10の端部Rt1とは、例えば、積層不織布10の主面において、端面2Tからこれと対向する端面までの長さをW1、端面2Tと交わる端面同士の間の長さをW2とする場合、端面2TからW1の1/4の長さを有し、W2を幅とする領域である。積層不織布の中央部Rc1とは、領域Rt1の端面2Tとは反対の端部からW1の1/2を長さを有し、W2を幅とする領域である。
積層不織布の剥離強度は、例えば、JISZ0237に準拠した方法で行う。まず、積層不織布10の中心Cを含み、端面2Tに対して垂直な方向に所定の幅に裁断した試験片64を作成する。図3に示すように、第2不織布2が上方となるように試験板60に試験片64を置き、第1不織布1を固定する。次いで、試験片64の一端の第2不織布2のみを治具61に挟む。挟み込まれている第2不織布2が試験板60に対して常に90°の角度となるように、第1不織布1から第2不織布2を一定の速度で引きはがし、引き剥がしに必要な力を剥離強度として測定する。なお、測定を容易にするために、第1不織布1の第2不織布に対向しない主面1Aに、他の基材(例えば、後述する第3不織布等)を積層して、剥離強度を測定しても良い。
測定の結果は、引き剥がした距離をx軸、剥離強度をy軸とするグラフに表される。積層不織布の端部Rt1における剥離強度の平均値をPt1、中央部Rc1における剥離強度の平均値をPc1とする。なお、引き剥がし開始時点の剥離強度は安定していないため、端面2Tに対向する第2不織布の端面を治具61で挟んで試験を行うことが好ましい。
積層不織布10が、第1不織布1と第2不織布2との間に接着剤を備える場合、端面2Tを含む積層不織布10の端部Rt1において、単位面積当たりの前記接着剤が付着する面積(接着面積)の割合(接着割合)At1と、積層不織布10の中央部Rc1において、単位面積当たりの前記接着剤が付着する面積(接着面積)の割合(接着割合)Ac1とは、At1≦Ac1の関係を満たすことが好ましい。端部Rt1における接着割合を小さくすることにより、端部における圧力損失を小さくすることができる。本実施形態によれば、端部Rt1の接着剤による接着割合を小さくした場合であっても、端部における剥離強度が高められているため、剥離不良の発生は抑制される。接着割合At1と接着割合Ac1とは、At1<Ac1の関係を満たすことがより好ましく、特に、At1<0.9×Ac1の関係を満たすことが好ましい。
接着面積とは、例えば、主面2A側から積層不織布10を見たとき、第2不織布2を通して見える接着剤の合計の面積である。または、接着剤を介して接着された第1不織布1と第2不織布2とを剥離した場合に、それぞれの不織布に付着した接着剤の面積を合計して得られる各不織布における接着面積を、和して得られる接着剤の全体の面積である。なお、接着剤の有無は、例えばSEMなどの電子顕微鏡により判断できる。接着面積は、SEMの場合であれば、輝度に応じた画像処理を行うことにより、算出することができる。
接着剤が付着する面積は、中央部Rc1および端部Rt1についてそれぞれ算出する。このようにして中央部Rc1における接着面積を算出した後、これを中央部Rc1の全体の面積で除すことにより接着割合Ac1が求められる。端部Rt1における接着割合At1も同様に算出できる。
接着割合が大きいということは、接着剤が第1不織布1と第2不織布2との間により広がっているということである。そのため、接着割合が大きくなるほど接着強度は高くなる。一方で、通気性が低下するため、積層不織布の圧力損失が高まる。なお、接着強度や圧力損失は、接着剤の量よりも接着割合に影響を受けやすい。つまり、積層不織布の端部Rt1と中央部Rc1に単位面積当たり同じ量の接着剤を付与した場合であっても、圧着や加熱の条件によって、接着割合は領域ごとに異なり得る。例えば、中央部Rc1に比べて端部Rt1の加熱が十分に行われない場合には、接着割合が十分に大きくならず、端部Rt1から剥離が生じやすくなる。
第1不織布1の第2不織布2に対向しない主面1A側に、さらに、第2不織布の引張り強度よりも大きな引張り強度を有する第3繊維3Fを含む第3不織布3が積層されても良い。この場合、第3不織布3に含まれる第3繊維3Fは、第1繊維1Fとともに、第1突出部P1を形成し得る。第3不織布3については後述する。
[第2実施形態]
次に、図4を参照しながら、本発明に係る積層不織布の第2実施形態を説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る積層不織布11を模式的に示した断面図である。積層不織布11は、第1繊維1Fを含む第1不織布1と、第1不織布1の表面に積層され、第2繊維2Fを含む第2不織布2とを備えている。第1不織布1および第2不織布2は、例えば、接着剤により接合されていてもよい。
本実施形態では、第1不織布1の端面1Tに、第2突出部P2が形成されている。第2突出部P2は、第2不織布2から延出し、第2繊維2Fを含んでいる。そのため、端面1Tを含む積層不織布11の端部では、第1不織布1および第2不織布2の対向する主面同士(主面1Bおよび2B)に加えて、第2突出部P2および端面1Tにおいても、第1不織布1と第2不織布2とが接合する。これにより、積層不織布11の端部における剥離強度が向上し、剥離不良の発生が低減する。端面1Tは、その少なくとも一部が第2突出部P2により覆われていれば良い。なお、図4では、第1不織布1の端面1Tが、主面(1Aあるいは1B)に対して垂直である場合を示しているが、これに限定されない。例えば、主面1Aと端面1Tとの成す角度θ1は、75〜105°であり得る。
第2突出部P2に含まれる第2繊維2Fは、端面1Tの近傍において、第1繊維1Fと交絡していることが好ましい。第1繊維1Fと第2繊維2Fとが端面1T近傍で交絡していることにより、積層不織布の端部における剥離強度がさらに向上する。第1繊維1Fは、第2繊維2Fよりも平均繊維径が小さいため、第2繊維2Fに絡まりやすい。端面1Tの近傍とは、上記と同様に、第2突出部P2側(第2突出部P2の内部)であっても良いし、第1不織布1側(第1不織布1の内部)であっても良い。
端面1Tを含む積層不織布11の端部Rt2における第2不織布2と第1不織布1との間の剥離強度Pt2と、積層不織布11の中央部Rc2における第2不織布2と第1不織布1との間の剥離強度Pc2とは、Pt2≧Pc2の関係を満たすことが好ましい。積層不織布の端部Rt2の剥離強度を中央部Rc2以上とすることにより、剥離不良の発生がさらに回避し易くなる。特に、Pt2≧1.2×Pc2の関係を満たすことが好ましい。なお、端部Rt2および中央部Rc2は、端部Rt1および中央部Rc1と同様に定義できる。また、剥離強度の測定方法も上記と同様である。
第1不織布1の第2不織布2に対向しない主面1A側に、上記の第3不織布3が積層されても良い。この場合、第2不織布2の引張り強度S2は、第3不織布3の引張り強度S3よりも小さいことが好ましい。第2突出部P2の形成が容易となるためである。引張り強度は、例えば、JISL1096引張り強さ試験A法によって測定できる。また、せん断応力は、引張り強度の60〜80%であると考えられるため、引張り強度に替えて、せん断応力を測定し、比較しても良い。せん断応力は、例えば、各不織布をJISK7214に準拠した方法による打抜き試験を行うことにより、測定することができる。
第3不織布3が積層される場合、第2突出部P2は、第3不織布3の第1不織布1に対向しない主面3B上に延出していないことが好ましい。第3不織布3が積層不織布の最外層である場合、積層不織布同士のブロッキングを回避することが、容易となるためである。
第2突出部P2の主面3Bに最も近い端部a2は、第1不織布1の端面1T上にあっても良いし、第3不織布3の端面3T上にあっても良い。端部a2が第1不織布1の端面1T上にある場合、ブロッキングを抑制する観点から、主面1Aから端部a2までの、端面1Tに沿う(端面1T上の)最短距離dは、端面1Tの主面1Bと主面2Bとが接する辺に対して直交する方向の長さd1Tの1/2以上であることが好ましい。長さd1Tは、第1不織布の厚みd1と主面1Bと端面1Tとの成す角度θ1を用いて、d1T=d1/sin(θ1)で表わされる。つまり、最短距離dは、d≧(d1/sin(θ1))×1/2の関係を満たすことが好ましい。剥離不良を抑制する観点からは、最短距離dは、長さd1T(=d1/sin(θ1))の1/1.1以下であることが好ましい。最短距離dとは、端面1T上における端部a2と主面1Aとを結ぶ最短距離である。
端部a2が第3不織布3の端面3T上にある場合、ブロッキングを抑制する観点から、主面3Bから端部a2までの、端面3Tに沿う(端面3T上の)最短距離d2minは、端面3Tの主面1Aと主面3Aとが接する辺に対して直交する方向の長さd3Tの1/2以上であることが好ましい。長さd3Tは、第3不織布の厚みd3および主面3Aと端面3Tとの成す角度θ3を用いて、d3T=d3/sin(θ3)で表わされる。つまり、最短距離d2minは、d2min≧(d3/sin(θ3))×1/2の関係を満たすことが好ましい。
剥離不良を抑制する観点からは、最短距離d2minは、d3T(=d3/sin(θ3))の1/1.1以下であることが好ましい。最短距離d2minとは、端面3T上における端部a2と主面3Bとを結ぶ最短距離である。また、ブロッキングおよび剥離不良をともに抑制する観点から、最短距離d2minは、具体的には100〜454μmであることが好ましく、150〜350μmであることがより好ましい。
第2突出部P2の端面1Tあるいは端面3Tから当該端面(1Tまたは3T)に対して垂直な方向の高さd2hは、第1不織布1の第2不織布2に対向する主面1Bから主面3Bに向かって、小さくなるように変化することが好ましい。言い換えれば、第2突出部P2は、主面3Bに向かって細くなるテーパ形状を有していることが好ましい。積層不織布同士のブロッキングを回避することが、さらに容易となるためである。高さd2hは、剥離不良を抑制する観点から、1〜100μmであることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましい。
以下、各不織布および積層不織布の製造方法等について、詳細に説明する。
[第1不織布]
第1不織布は、粉塵を補足する機能を有する。第1不織布の目付は、0.1〜5g/m2であることが好ましく、0.2〜2g/m2であることがより好ましい。第1不織布の目付がこの範囲であると、圧力損失の増加を抑制しながら、高い集塵効率を維持し易い。なお、JISB9908形式1の規格に準拠した測定機を用いて測定したときの第1不織布の初期の圧力損失は、3〜30Pa程度であることが好ましい。
第1不織布の平均厚みは、圧力損失の観点から、1〜10μmであることが好ましい。平均厚みとは、例えば、不織布の任意の10箇所の厚みの平均値である。厚みとは、不織布の2つの主面の間の距離である。
第1不織布は、第1繊維1Fを含む。第1繊維1Fの材質は特に限定されず、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリウレタン、ナイロンなどのポリマーが挙げられる。なかでも、電界紡糸法に適したポリマーであることが好ましい。これらは、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いても良い。
第1繊維1Fの平均繊維径D1は、第2繊維2Fの平均繊維径D2よりも小さい。なかでも、D1は、D2の1/10以下(D1≦D2/10)であることが好ましく、D2の1/100以上であることが好ましい。第1繊維1Fを含む第1突出部P1と端面2Tとの接触面積、あるいは、第2繊維2Fを含む第2突出部P2と端面1Tとの接触面積が大きくなって、剥離強度がさらに向上されるためである。また、第1不織布の表面積が大きくなるため、集塵効率も向上する。
具体的には、平均繊維径D1は、1μm未満であることが好ましく、500nm未満であることがより好ましい。D1がこの範囲であれば、主面2A上に第1突出部P1が形成された場合であっても、ブロッキングが生じ難い。また、平均繊維径D1は、50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。
第1不織布は、平均繊維径(D4)が、D1<D4<D2の関係を満たす第4繊維4Fを含んでいても良い。この場合、第1繊維1Fは、第2繊維2Fと第4繊維4Fとの間に、より多く配置されることが好ましい。言い換えれば、第1繊維1Fの分布のピークが、第2繊維2Fと第4繊維4Fとの間にあることが好ましい。これにより、第1繊維1Fでは捕捉が難しい大きさの粉塵を、第4繊維4Fにより捕捉することが可能になる。そのため、第1繊維1Fの集塵の負荷が低減され、集塵効率がさらに向上する。
第4繊維4Fの平均繊維径D4は、500nm以上1000nm未満であることが好ましい。この場合、例えば、D1は100nm以上500nm未満であり、D2は1000nm以上であっても良い。なかでも、D4は、D2の1/2より小さい(D4<D2/2)ことが好ましく、D1の2倍より大きい(D4>2D1)であることが好ましい。第4繊維4Fの材質は特に限定されず、例えば、第1繊維で挙げたのと同じ材質を例示することができる。
第1不織布に含まれる第4繊維4Fの割合は、第1繊維1Fおよび第4繊維4Fの合計に対して、5〜80質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。第4繊維4Fの割合がこの範囲であれば、圧力損失の増加が抑制され易い。
第1不織布は、第1繊維および第4繊維の合計が全体の95質量%以上を占めていることが好ましい。つまり、第1不織布は、第1繊維1Fおよび第4繊維4F以外の繊維、例えば、第2繊維2Fや、第1繊維1F、第2繊維2Fおよび第4繊維4F以外の繊維を5質量%未満含んでいても良い。第1繊維1F、第2繊維2Fおよび第4繊維4F以外の繊維としては特に限定されず、適宜選択することができる。
[第2不織布]
第2不織布は、積層不織布10の形状を保持する基材あるいは保護材としての役割をもつ。例えば、積層不織布をプリーツ加工する場合、第2不織布は基材として、プリーツの形状を保持する。また、第2不織布は、保護層として、空気清浄機等に積層不織布10を組み付ける際の外部負荷から、第1不織布を保護する。
言い換えれば、第1実施形態における第1突出部P1は、基材としての第2不織布の端面に形成されていても良いし、保護材としての第2不織布の端面に形成されていても良い。保護材は、一般的に基材よりも柔軟性が高く、剥離し易い。そのため、第1突出部P1は、保護材としての第2不織布の端面に形成されていることが好ましい。また、第2実施形態における第2突出部P2は、柔軟性が高く、引張り強度の低い不織布によって形成され易い。これらの理由から、第2不織布は、保護材であることが好ましい。以下、第2不織布が保護材、第3不織布が基材である場合について説明するが、これに限定されるものではない。
第2不織布の初期の圧力損失は、JISB9908形式1の規格に準拠した測定機を用いて測定した場合、1〜10Pa程度であることが好ましい。第2不織布の初期の圧力損失がこの範囲であれば、積層不織布全体の圧力損失が抑制される。
第2不織布の平均厚みは、圧力損失の観点から、100〜200μmであることが好ましい。第2不織布の目付は、5〜50g/m2であることが好ましく、10〜30g/m2であることがより好ましい。
第2不織布は、第2繊維2Fを含む。第2繊維2Fの材質は特に限定されず、例えば、セルロース、ガラス繊維等が挙げられる。第2繊維の平均繊維径D2は、第1繊維の平均繊維径D1よりも大きい。平均繊維径D2は、例えば、0.5μm〜20μmであり、1〜10μmであることが好ましい。
第2不織布は、第2繊維2Fが全体の95質量%以上を占めていることが好ましい。つまり、第2不織布は、第2繊維以外の繊維を5質量%未満含んでいても良い。他の繊維としては特に限定されず、例えば、第1繊維1F、第3繊維3F、あるいは、第1繊維1F、第2繊維2Fおよび第3繊維3F以外の繊維である。
上記のとおり、保護材である第2不織布の引張り強度S2は、基材である第3不織布の引張り強度S3よりも小さくても良い。引張り強度S2は、例えば、0.1〜2mN、さらには、0.1〜1mNである。また、引張り強度S3は、例えば、0.2〜10mN、さらには、0.5〜5mNである。
[第3不織布]
積層不織布は、第1不織布の第2不織布に対向しない主面1A側に、基材として第3繊維3Fを含む第3不織布を備えていても良い。第3繊維3Fの材質は特に限定されず、例えば、第2繊維と同じ材質が例示できる。第3繊維3Fの平均繊維径D3は、第1不織布の損傷を抑制し、積層不織布の耐久性を向上させる点で、D1<D3の関係を満たすことが好ましい。具体的には、例えば、0.5μm〜20μmである。また、第3不織布の引張り強度を高める観点から、第2繊維2Fの平均繊維径に対して、D2<D3の関係を満たすことが好ましい。
第3不織布の初期の圧力損失は、JISB9908形式1の規格に準拠した測定機を用いて測定した場合、1〜10Pa程度であることが好ましい。第3不織布の初期の圧力損失がこの範囲であれば、積層不織布全体の圧力損失が抑制される。
第3不織布の平均厚みd3は、形状保持性および圧力損失の観点から、200〜500μmであることが好ましい。また、引張り強度を高める観点から、第2不織布よりも厚いことが好ましい(d3>d2)。第3不織布の目付は、10〜100g/m2であることが好ましく、20〜50g/m2であることがより好ましい。
[積層不織布の製造方法]
本発明に係る積層不織布は、例えば、電界紡糸法等により第3不織布の上に第1不織布を堆積させて積層体10aを作製した後、第2不織布を積層する。次いで、裁断装置を加熱しながら裁断することにより製造することができる。
[積層体10aの製造方法]
まず、電界紡糸法を用いた積層体10aの製造方法について、図5を参照しながら具体的に説明する。図5は、積層体10aの製造システム200の一例の構成を概略的に示す図である。なお、第1不織布と第3不織布とを積層させる方法は、これに限定されるものではない。
電界紡糸法では、ターゲットをグランドさせるかマイナスに帯電させ、そこにプラスの電圧に印加された第1繊維の原料を溶解した溶液(原料液)をノズルから噴射させる。ターゲットに到達する過程において原料液の溶媒は揮発し、ターゲットには、原料の繊維状物(第1繊維)が堆積し、第1不織布が形成される。ここでは、ターゲットとして第3不織布(基材)を用いる。この場合、第3不織布と第1不織布とは、接着剤等を用いて接着させることなく、接合され得る。
まず、第3不織布を準備する。第3不織布は、高分子やガラス繊維等を用いて、スパンボンド法、乾式法(例えば、エアレイド法)、湿式法、メルトブロー法などにより製造される。製造システム200では、第3不織布3は、製造ラインの上流から下流に搬送される。
製造システム200の最上流には、ロール状に捲回された第3不織布3を内部に収容した第3不織布供給装置20が設けられている。供給装置20は、モータ24により供給リール22を回転させて、供給リール22に捲回された第3不織布3を第1搬送コンベア21に供給する。
第3不織布3は、搬送コンベア21により、電界紡糸ユニット25に移送される。電界紡糸ユニット25が具備する電界紡糸機構は、装置内の上方に設置された原料液を放出するための放出体26と、放出された原料液をプラスに帯電させる帯電手段(後述参照)と、放出体26と対向するように配置された第3不織布3を上流側から下流側に搬送する第2搬送コンベア28と、を備えている。第2搬送コンベア28は、第3不織布3とともに第1繊維1Fを収集するコレクタ部として機能する。なお、電界紡糸ユニット25の台数は、図5では2台であるが、特に限定されるものではなく、1台でも3台以上でもよい。
放出体26の第3不織布3の主面と対向する側には、原料液の放出口(図示せず)が複数箇所設けられている。放出体26の放出口と、第3不織布3との距離は、製造システムの規模にもよるが、例えば、100〜600mmであればよい。放出体26は、電界紡糸ユニット25aおよび25bの上方に設置された、第3不織布3の搬送方向と平行な第1支持体41から下方に延びる第2支持体42により、自身の長手方向が第3不織布3の主面と平行になるように支持されている。
帯電手段は、放出体26に電圧を印加する電圧印加装置29と、第2搬送コンベア28(28a、28b)と平行に設置された対電極30とで構成されている。対電極30は接地(グランド)されている。これにより、放出体26と対電極30との間には、電圧印加装置29により印加される電圧に応じた電位差(例えば20〜200kV)を設けることができる。なお、帯電手段の構成は、特に限定されない。例えば、対電極30はマイナスに帯電されていても良い。また、対電極30を設ける代わりに、第2搬送コンベア28のベルト部分を導体から構成してもよい。
放出体26は、導体で構成されており、長尺の形状を有し、その内部は中空になっている。中空部は原料液32(32a、32b)を収容する収容部となる。原料液32は、放出体26の中空部と連通するポンプ33(33a、33b)の圧力により、原料液タンク34(34a、34b)から放出体26の中空に供給される。そして、原料液32は、ポンプ33の圧力により、放出口から第3不織布3の主面に向かって放出される。放出された原料液は、帯電した状態で放出体26と第2搬送コンベア28との間の空間を移動中に静電爆発を起し、繊維状物(第1繊維)を生成する。このようにして生成された第1繊維の平均繊維径は、例えば1μm未満である。
さらに第4繊維を堆積させる場合、例えば、電界紡糸ユニット25bを第4繊維を堆積させるために用いても良い。この場合、原料液タンク34bには、第4繊維の原料液32bを収容する。堆積させる繊維の平均繊維径は、原料液の吐出圧力、印加電圧、原料液の濃度、放出口と第3不織布3との距離、温度、湿度などを調整することにより、変化させることができる。第4繊維の平均繊維径D4がD1<D4<D2の関係を満たすように、吐出条件を設定すればよい。
第1繊維および/または第4繊維の原料液に含まれる溶媒としては、原料である高分子の種類に応じて、適切なものを選択すればよい。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホオキシド、ピリジン、水などを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
電界紡糸ユニット25から搬出された第3不織布3と第1不織布1との積層体10aは、搬送ローラ36を介して、より下流側に配置されている回収装置37に回収される。回収装置37は、搬送されてくる膜を捲き取る回収リール38を内蔵している。回収リール38はモータ39により回転駆動される。
[第2不織布の接合工程]
回収された積層体10aは、さらに、第2不織布を接合する工程に供される。第2不織布は、例えば、スパンボンド法、乾式法(例えば、エアレイド法)、湿式法、メルトブロー法などにより製造される。積層体10aと第2不織布2とは、例えば、接着剤による接着、加熱処理等により接合され、積層体10bが得られる。なかでも、初期の圧力損失を低減できる点で、積層体10aと第2不織布2とは、接着剤を用いて接着する方法が好ましい。本発明に係る積層不織布は、端部において、第1不織布と第2不織布との剥離強度に優れるため、接着剤の付与量を低減することができる。よって、初期の圧力損失をさらに低減することができる。
以下、接着剤を用いて積層体10aと第2不織布2とを接合し、積層体10bを作製する方法について、図6を参照しながら説明する。図6は、積層体10bの製造システム300の一例の構成を概略的に示す図である。
製造システム300の最上流には、ロール状に捲回された積層体10aを内部に収容した積層体供給装置43が設けられている。供給装置43は、モータ45により供給リール44を回転させて、供給リール44に捲回された積層体10aを搬送コンベア56に供給する。積層体10aは、第3不織布を搬送コンベア56に対向させて、第1不織布が上方を向くように、搬送コンベア56に供給される。
続いて、積層体10aは、搬送コンベア56により、接着剤散布ユニット46に移送される。なお、積層体10aは、作製された後、回収装置37および供給装置43を経ずに、電界紡糸ユニット25から次の接着剤散布ユニット46に移送されても良い。
接着剤散布ユニット46は、ユニット内の上方に設置された接着剤を収容する接着剤タンクと、接着剤を散布するためのスプレーとを備える散布装置47を具備する。スプレーから散布された粉末状の接着剤は、積層体10aの第1不織布に付着する。接着剤の散布量は特に限定されないが、例えば、0.5〜5g/m2である。
接着剤が散布された積層体10aは、加熱ユニット48に移送される。加熱ユニット48では、ヒータープレートなどの加熱装置49により、積層体10a上の接着剤を溶融する。このとき、積層体10aの搬送方向に平行な端面から一定の幅をもつ領域では、接着剤の溶融が不十分となる場合が生じる。これが、剥離不良の一因になり得る。加熱温度は、接着剤が溶融する温度であれば特に限定されない。加熱温度は、例えば、100〜200℃である。接着剤は特に限定されず、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド等を主成分とするホットメルト接着剤等が挙げられる。
第2不織布積層ユニット50では、積層体10aの上方から、第2不織布2が供給され、接着剤を介して積層体10aに積層される。続いて、搬送コンベア56を挟んで上下に配置された加圧ロール52aおよび52bにより圧力を加えながら、積層体10aと第2不織布2とを接合し、積層体10bが作製される。加圧ロールによる圧力は特に限定されないが、例えば、1〜50kPaである。第2不織布2は、供給リール51に捲回されており、積層体10aの搬送スピードに合わせて、積層体10aに供給される。
積層ユニット50から搬出された積層体10bは、より下流側に配置されている回収装置53に回収される。回収装置53は、搬送されてくる積層体10bを捲き取る回収リール54を内蔵している。回収リール54はモータ55により回転駆動される。
[裁断工程]
次いで、得られた積層体10bを所望の大きさおよび形状になるよう、長手方向および長手方向に対して垂直な方向に裁断する。このとき、例えば、裁断装置、特に積層体10bを裁断する刃を加熱しながら裁断することにより、第1突出部P1あるいは第2突出部P2が形成される。
裁断の方法は、特に限定されない。なかでも、第1突出部P1あるいは第2突出部P2が形成され易い点で、せん断(スリット加工)により裁断する方法が好ましい。せん断の方法は特に限定されず、回転式カッターまたはストレート型カッター等を用いて、スリッター機等により行うことができる。
積層体10bがせん断される様子を、図7Aおよび7Bに示す。せん断される積層体が、基材である第3不織布を含む場合には、第3不織布のせん断応力よりも大きなせん断荷重をかけて、せん断を行う。積層不織布において、基材のせん断応力が、最も高いと考えられるためである。言い換えれば、他の第1不織布および第2不織布のせん断応力は、第3不織布よりも小さい。せん断応力と引張り強度とは相関するため、第1不織布および第2不織布の引張り強度は、第3不織布よりも小さいと言える。そのため、第3不織布のせん断応力よりも大きなせん断荷重をかけてせん断を行うと、第1不織布および/または第2不織布は、第3不織布よりも大きく引っ張られながら、せん断される。このとき、裁断に用いる刃は加熱されているため、第1不織布および/または第2不織布の伸びはさらに大きくなる。
図7Aに示すように、積層体10bの第3不織布3側からカッターの上刃62を進入させて裁断(せん断)する場合、第1不織布および第2不織布は、上刃62の進入方向に引っ張られる。このとき、第1不織布に含まれる第1繊維が、せん断により形成された第2不織布の端面に付着する。上刃62は加熱されているため、端面付近の第1繊維および第2繊維は、柔軟性および粘弾性が増加している。そのため、上刃62が下刃63の位置まで侵入し、再び上昇しても、第1繊維が第2不織布の端面に付着した状態は維持され、第1突出部P1が形成される。ここで、上刃62は上下に可動し、下刃63は固定されているものとする。
第2不織布2側から上刃62を進入させてせん断する場合、図7Bに示すように、形成された第2不織布の端面が第1不織布の端面を覆うように引っ張られる。これにより、第2不織布に含まれる第2繊維が、せん断により形成された第1不織布の端面に付着する。上記と同様に、第1不織布の端面に付着した第2繊維によって、第2突出部P2が形成される。
積層体10bを回収装置53からそのまま裁断加工に供する場合、第2不織布が上刃62に対向するため、せん断は図7Bに示すように行われる。第3不織布側からせん断する場合(図7A参照)には、第3不織布が外層側になるように、回収装置53の回収リール54に捲回された積層体10bを捲き換えれば良い。せん断は、第2不織布側から行っても良いし、第3不織布側から行っても良い。せん断の方向は、第1突出部P1を形成させるか、第2突出部P2を形成させるかによって、適宜選択すればよい。いずれの場合であっても、柔軟性が高く剥離し易い第2不織布と、第1不織布との間の剥離強度は向上する。
積層体10bを裁断するための刃を加熱する方法は特に限定されず、ヒーター等の加熱装置を刃の近傍に配置して直接加熱しても良いし、加熱装置と刃との間に伝熱部材等を介在させ、これを介して加熱しても良い。加熱温度も特に限定されず、40〜80℃程度であれば良い。また、積層体10bに進入する刃(上刃)のみを加熱しても良いし、上刃および下刃の両方を加熱しても良い。
その他、裁断の条件は特に限定されず、上刃の挿入角度、積層体10bの搬送速度やテンション、湿度、回転式カッターの回転数等は、適宜設定することができる。
刃を加熱する方法に加えて、あるいは、刃を加熱する方法に替えて、積層体10bを裁断した後、裁断面を摩擦することによって突出部を形成させても良い。裁断面の摩擦は、例えば、裁断面にプレートあるいはローラ等を当てて、このプレートあるいはローラ等を裁断の方向と同じ方向に動かすことによって行うことができる。あるいは、裁断の際に、側面に凹凸を有するカッターを使用しても良い。第1繊維および/または第2繊維が凹凸に引っ掛かり、第1不織布および/または第2不織布がより大きく引っ張られることにより、突出部が形成される。
[空気清浄機]
本発明の空気清浄機100は、濾材として用いる積層不織布(10または11)と、気体の吸い込み部70と、気体の吐き出し部71とを備える。積層不織布は、保護材としての第2不織布2が吸い込み部70に対向するように、吸い込み部70と吐き出し部71との間に配置される(図8参照)。積層不織布は、蛇腹状にプリーツ加工されて配置されても良い。なお、図8では、内部構造を示すため、空気清浄機100の外装を一部切欠いて示している。
空気清浄機100は、外部の大気を吸い込み部70から空気清浄機100内部に取り込む。取り込まれた大気は、積層不織布等を通過する間に集塵され、清浄化された大気が吐き出し部71から再び外部に放出される。
空気清浄機100は、さらに、吸い込み部70と積層不織布(10または11)との間に、大きな塵等を捕捉するプレフィルター72等を備えても良い。また、積層不織布(10または11)と吐き出し部71との間に消臭フィルター73や加湿フィルター(図示せず)等が備えられても良い。
[実施例]
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[評価法]
(1)剥離強度
JISZ0237に準拠した方法により、第2不織布と第1不織布との間の剥離強度を測定した。試料として、せん断面を含むようにカットした積層不織布(幅20mm×長さ200mm)を用いた。端部Rtの剥離強度Ptを、中央部Rcの剥離強度Pcを1としたときの相対値として算出した。
[実施例1]
第3不織布としてポリエステルを主体とする基材(厚みd3:400μm、D3:18μm、目付:40g/m2、引張り強度S3:1.3mN)を用いて、図5に示すような製造システムにより、第3不織布に、第1繊維を含む第1不織布を積層し、積層体10aを得た。第1繊維の原料液としては、PESを20質量%含むDMAc溶液を用いた。D1は、293nmであり、第3不織布上には、第1繊維が0.9g/m2堆積していた。
次いで、図6に示すような製造システムにより、第1不織布上に、第2不織布としてポリプロピレンを主体とするメルトブロー不織布(厚みd2:165μm、D2:2μm、目付:18g/m2、引張り強度S2:0.9mN)を接着剤(ポリエステル系ホットメルト)を用いて接合し、圧着して積層体10bを得た。接着剤の散布量は2.2g/m2であった。加熱温度は158℃であり、圧着の圧力を5kPaとした。
得られた積層体10bを、上刃を42℃に加熱したスリッター機を用いて、第3不織布側から、長手方向(搬送方向)およびこれとは垂直な方向にせん断し、積層不織布10(100mm×300mm)を作製した。
得られた積層不織布10を主面に対して垂直な方向に裁断し、その断面を電子顕微鏡で確認した。第2不織布の端面には、第1繊維を含む第1突出部P1が形成されており、d1minは2.8μm、d1hは1.3μmであった。積層不織布10の端部Rt1の剥離強度Pt1は、中央部Rc1の剥離強度Pc1に対して、1.2倍であった。積層不織布11の中央部Rc1の接着割合Ac1は、端部Rt1の接着割合At1の1.2倍であった。
[実施例2]
実施例1と同様にして得られた積層体10bを、実施例1と同様にして、第2不織布側から、長手方向(搬送方向)およびこれとは垂直な方向にせん断し、積層不織布11(100mm×300mm)を作製した。
得られた積層不織布11を主面に対して垂直な方向に裁断し、その断面を電子顕微鏡で確認した。第1不織布の端面には、第2繊維を含む第2突出部P2が形成されており、d2minは349μm、d2hは2.9μmであった。積層不織布11の端部Rt2の剥離強度Pt2は、中央部Rc2の剥離強度Pc2に対して、1.4倍であった。積層不織布11の中央部Rc2の接着割合Ac2は、端部Rt2の接着割合At2の1.2倍であった。
[比較例1]
実施例1と同じ第3不織布に、ポリエステル繊維の短繊維(平均繊維径:4.4μm、長さ:1mm)をニードルパンチ法により交絡させた。次いで、実施例1と同じ第2不織布(メルトブロー不織布)を実施例1と同様にして接合し、積層体を得た。
得られた積層体を、スリッター機を用いて、第3不織布側から、長手方向(搬送方向)およびこれとは垂直な方向にせん断し、積層不織布(100mm×100mm)を作製した。なお、上刃の加熱は行わなかった。得られた積層不織布を主面に対して垂直な方向に裁断し、その断面を電子顕微鏡で確認したところ、突出部は形成されていなかった。積層不織布の端部Rtの剥離強度Ptは、中央部Rcの剥離強度Pcに対して、0.9倍であった。積層不織布の中央部Rcの接着割合Acは、端部Rtの接着割合Atの1.2倍であった。