JP6587104B2 - 導電性材及びその製造方法、ならびに生体電極 - Google Patents

導電性材及びその製造方法、ならびに生体電極 Download PDF

Info

Publication number
JP6587104B2
JP6587104B2 JP2016036496A JP2016036496A JP6587104B2 JP 6587104 B2 JP6587104 B2 JP 6587104B2 JP 2016036496 A JP2016036496 A JP 2016036496A JP 2016036496 A JP2016036496 A JP 2016036496A JP 6587104 B2 JP6587104 B2 JP 6587104B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pts
conductive material
electrode
substrate
pedot
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016036496A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017148452A (ja
Inventor
鳥光 慶一
慶一 鳥光
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tohoku University NUC
Original Assignee
Tohoku University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tohoku University NUC filed Critical Tohoku University NUC
Priority to JP2016036496A priority Critical patent/JP6587104B2/ja
Priority to PCT/JP2017/007280 priority patent/WO2017146247A1/ja
Publication of JP2017148452A publication Critical patent/JP2017148452A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6587104B2 publication Critical patent/JP6587104B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61BDIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
    • A61B5/00Measuring for diagnostic purposes; Identification of persons
    • A61B5/24Detecting, measuring or recording bioelectric or biomagnetic signals of the body or parts thereof
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61BDIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
    • A61B5/00Measuring for diagnostic purposes; Identification of persons
    • A61B5/24Detecting, measuring or recording bioelectric or biomagnetic signals of the body or parts thereof
    • A61B5/25Bioelectric electrodes therefor

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Medical Informatics (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Heart & Thoracic Surgery (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Surgery (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Measurement And Recording Of Electrical Phenomena And Electrical Characteristics Of The Living Body (AREA)

Description

本発明は、導電性材及びその製造方法、ならびに生体電極に関する。
医学と工学との融合分野である医工学分野において盛んに行われているものの一つとして、身体機能の代替デバイスの作製があり、そのためには、まず、生体の電位を正確に計測することが必要不可欠である。この生体電位の測定のうち、例えば、筋電位の計測では、筋肉外部からのアプローチだけでなく、内部から電位を測定することで、より正確に筋肉の働きを再現することが可能になると考えられる。
そこで、フレキシブルで筋肉の動きに追従が可能であり、筋肉の内部から電位を測定するための電極として使用可能なものとして、生体材料である絹(シルク)などの繊維に、導電性高分子をコーティングした導電性の繊維が、本発明者等によって開発されている(例えば、特許文献1、2又は非特許文献1参照)。
特許文献1及び非特許文献1に記載の導電性の繊維は、導電性高分子としてPEDOT−PSS(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)-polystyrenesulfonate)を用い、PEDOT−PSSを含む導電性の溶液に基材繊維を浸漬し、基材繊維を導電性の溶液から垂直に引き上げながら電極間で走行させて通電することにより、基材繊維に付着したPEDOT−PSSを電気化学的に重合固定する、いわゆる電解重合法を利用して製造されている。また、特許文献2に記載の導電性の繊維は、導電性高分子としてPEDOT−PSSを用い、PEDOT−PSSとバインダー樹脂とを混合した樹脂組成物を基材繊維に付着させ、乾燥、加温、加熱等により固化又は重合させることにより製造されている。
なお、PEDOT−PSSよりも導電性に優れた導電性高分子として、PEDOT−pTS(poly(3,4-ethylene-dioxythiophene)-p-toluenesulfonate)が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
国際公開WO2013/073673号 特開2014−108134号公報 特開2003−171874号公報
S. Tsukada, H. Nakashima, K. Torimitsu, "Conductive polymer combined silk fiber bundle for the bioelectrical signal recording", PLoS ONE, 2012, Vol.7, e33689-1-10 Seul Gi Kim, Jong-Won Yang, Jun-Taek Lee, Jin-Yeol Kim, "Highly conductive PEDOT:PTS films interfacially polymerized using electro spray deposition and enhanced by plasma doping", Japanese Journal of Applied Physics, 2014, 53, 035501-1-7
特許文献1、2及び非特許文献1に記載の導電性の繊維は、肌触りが良く、耐久性及び耐水性に優れ、柔軟性もあることから、筋肉の内部から電位を測定するための電極等として使用することができる。しかしながら、この従来の導電性の繊維は、基材繊維の表面に導電性高分子であるPEDOT−PSSがまばらに付着しているため、比較的抵抗値が高く、電極として使用したときにノイズが大きくなってしまうという課題があった。
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、基材の表面に導電性高分子が均一に付着し、より抵抗値が低い導電性材及びその製造方法、ならびに生体用電極を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る導電性材は、ナイロン繊維を材料とする基材、あるいは、セリシン若しくはフィブロインを被覆した合成繊維を材料とする基材に、PEDOT−pTSが付着していることを特徴とする。基材への付着は、基材の表面における付着と、基材の内部における付着と、これらの両者を含むものである。
上記基材の材料を総括すると、ナイロン繊維を除き、セリシン又はフィブロインが含まれている限り限定されるものではなく、本来的にこれらのタンパク質を本来的に含む絹であっても、事後的にこれらのタンパク質を付加したものであってもよい。
セリシン又はフィブロインを被覆する基材の材料としては、ポリアミド繊維(ナイロン繊維を含む)、ポリエステル繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリウレタン繊維、炭素繊維等の合成繊維;綿、麻、ジュート等の植物性繊維;上記の絹の他、羊毛、コラーゲン繊維等の動物性繊維;或いは、これらの混合繊維を広く用いることができる。染色を施した繊維であってもよい。なお、「被覆」は、外見上被覆成分で対象物の表面を覆う行為であり、その具体的な態様は問わないこととする。例えば、被覆成分の被覆対象物への「付着」、「含有」、「染み込み」のいずれの態様であってもよい。
セリシン、フィブロリン共に、公知の方法により絹(生糸)より得ることが可能であり、かつ、市販もなされている。セリシンは、生糸の外側をなすタンパク質成分であり、例えば、特開平11−131318号公報に開示された方法により、生糸から回収することが可能であり、かつ、市販もなされている(例えば、株式会社高原社等)。フィブロインは、生糸の芯部分をなすタンパク質成分であり、例えば、特開平6−70702号公報に開示された方法により、絹繊維をアルカリ溶液で溶解し、透析することにより得ることが可能であり、市販もなされている(シルクゲンGソルブルKE:一丸ファルコス株式会社)。これらのセリシン又はフィブロインは、基本的には被覆の対象(糸や布地を含む)を水溶液状のセリシン又はフィブロインに浸し、乾燥させた後、洗浄することで皮膜を形成加工させて作出することができる(特許文献3)。また、このような被覆の作業を外注して、所望のセリシンの被覆基材を得ることも可能である[例えば、株式会社アート(群馬県桐生市):http://art-silk.jp/]。
上記の「絹繊維」とは、「絹(シルク)又はこれを主体とする繊維」を意味するものである。絹繊維は、絹単体であってもよいが、必要に応じて他の繊維との混合繊維を用いることが可能である。ここで「他の繊維」とは、上記のセリシン又はフィブロインを被覆する対象として例示した、合成繊維、植物性繊維、絹以外の動物性繊維が挙げられる。また、絹は、通常の家蚕糸や野蚕糸、蜘蛛や蜂由来の天然絹の他、遺伝子組み換え技術を用いて得られる絹、例えば、蛍光タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ蚕から得られる「光る絹」等を用いることも可能である。
ナイロンは、アミド結合によって多数のモノマーが結合したポリマーである「ポリアミド」の一種であり、一般に脂肪族骨格を含むもので、元々はデュポン社(米国)の商標に由来する名称である。本明細書においては、この「ナイロン」の名称を発明の規定のために用いる。本発明において基材として用いることができるナイロンとしては、ナイロン6(モノマー:ε−カプロラクタム)、ナイロン11(モノマー:ウンデカンラクタム)、ナイロン12(モノマー:ラウリルラクタム)、ナイロン66(モノマー:ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸)、ナイロン610(モノマー:ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸)、ナイロン6T(モノマー:ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸)、ナイロン6I(モノマー:ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸)、ナイロン9T(モノマー:ノナンジアミンとテレフタル酸)、ナイロンM5T(ノナンジアミンとテレフタル酸)、ナイロン612(モノマー:カプロラクタムとラウリルラクタム)等が挙げられる。テトロン等の他の合成繊維は、本発明の製造方法の工程を施してもPEDOT−pTSが付着しづらいのに対して、ナイロン繊維の場合はPEDOT−pTSが容易に付着して、低減された電気抵抗を実現可能である。ナイロンと他の合成繊維との混合繊維も基材として用いることができるが、ナイロンのみのものが好ましい。また、ナイロンと絹繊維を組合せた繊維や、上記したナイロンにセリシン又はフィブロインを被覆した繊維は、基材の材料として好ましい。
上記基材は、「線状」又は「平面状」であることが好適である。線状とは、糸状、紐状、布若しくはリボン状の維管束等を意味するものであり、平面状とは、布状、膜状、フィルム状、又は、シート状等を意味するものである。これらの「線状」又は「平面状」の他、例えば、「ゲル状」の基材を用いることも可能である。線状基材の典型例として、糸が挙げられ、平面状基材の典型例として、織物(平織り、サテン織り等)が挙げられる。
本発明に係る導電性材の導電部分の電気抵抗値は、
(a) 基材が線状部材の場合は、好ましくは断面積約2.5x10−4cmにおいて50kΩ/cm以下、であり、特に好ましくは同20kΩ/cm以下である。
(b) 基材が平面状部材の場合を含む(a)以外の場合は、好ましくは50kΩ/cm以下、特に好ましくは20kΩ/cm以下である。
「導電部分」とは、基材において導電処理、具体的にはPEDOT-pTSの付着がなされている領域のことを意味するものである。例えば、基材の一部のみにPEDOT-pTSが付着している場合には、当該PEDOT-pTS付着領域が「導電部分」に該当する。
上記(a)について、後述する実施例に示すように、本発明の線状の導電性材の電気抵抗値は、線状長さ1cm当たりの電気抵抗値をテスターで検出した値である。断面積の約2.5x10−4cmは、標準的な太さの絹糸の断面積である。「約」とは、「2.5」の小数点第2位以降の数字は四捨五入されることを意味している。断面積は抵抗値と反比例するので、断面積に応じた抵抗値を容易に算出することができる。線状基材の断面積が増加すれば、それに応じてPEDOT−pTSの断面積も増加することが見込まれ、本発明の導電性材同士、又は、他の導電性材との比較検討が容易に可能であり、本発明における適切な電気抵抗値のパラメータである。1cmの長さが確保できない場合は、当該線状の導電性材の全導電領域における電気抵抗値を計測して、その電気抵抗値を1cm長と上記断面積に換算することにより比較をすることができる。
上記(b)について、基材の形状が線状以外の場合、典型的には織物等の平面状部材の場合には、単純に基材の断面積のみで判断することはできないが、一般的に総合的な導電断面積換算としては、一本の線状部材の断面積よりも大きくなる。よって、基材の形状が線状以外の場合には、導電部分における1cm長における電気抵抗値を求め、これを「1cm当たりの電気抵抗値(Ω又はkΩ/cm)」として、上記(a)の線状部材の好適範囲、及び、最適範囲を、本発明の導電性材の特徴として規定することができる。
後述する図10に示す実施例の1cm×1cmの絹布の当該電気抵抗値は、作出した10枚の電極素子の当該電気抵抗値は、いずれも1.6kΩ/cm未満であった。なお、線状基材と同様に1cmの長さが確保できない場合は、当該導電性材の導電領域における電気抵抗値を計測して、その電気抵抗値を1cm長に換算することにより比較をすることができる。
本発明に係る導電性材の製造方法は、下記の工程(1)及び(2)を含むことを特徴とする、導電性材の製造方法である。
(1) 酸化成分とpTS(p-toluenesulfonate)とを含むpTS溶液を、ナイロン繊維を材料とする基材、あるいは、セリシン若しくはフィブロインを被覆した合成繊維を材料とする基材、に付着させる付着工程。
(2) 付着工程(1)において酸化成分とpTSを付着させた基材に、さらにEDOT(3,4-ethylenedioxythiophene)を付着させて、当該基材においてPEDOT−pTS(poly(3,4-ethylene-dioxythiophene)-p-toluenesulfonate)を生成する重合反応を進行させて、当該基材にPEDOT−pTSの付着状態を形成する、重合工程。
付着工程(1)における酸化成分とpTSの付着は、pTS溶液に基材を浸漬させることにより行われ、又は、pTS溶液を基材に印刷することにより行われる、ことが好適である。
重合工程(2)において、EDOTの付着を行うと共に加熱を行って、PEDOT−pTSへの重合反応を促進させることが好適である。また重合工程(2)の後、さらに、PEDOT−pTSが付着した基材を洗浄及び乾燥させる工程を行うことが好適である。洗浄手段は水洗が好適であり、この場合の水は蒸留水又は脱イオン水を用いることがさらに好適である。乾燥手段は、恒温槽における乾燥、熱風若しくは温風による乾燥、天日による乾燥等が例示されるが、恒温槽における乾燥、熱風若しくは温風による乾燥が好適である。恒温槽における乾燥温度は50〜80℃が好ましく、特に好ましくは60〜70℃であり、熱風若しくは温風による乾燥による対象物の表面温度も50〜80℃が好ましく、特に好ましくは60〜70℃である。
pTSとEDOTは、共に市販品として提供されている。
本発明に係る導電性材の製造方法によれば、従来の電解重合法等を利用する場合と比べ、基材に、PEDOT−PSSよりも導電性に優れた導電性高分子であるPEDOT−pTSを均一にむらなく付着させることが可能であり、導電性材の電気抵抗値を著しく低下させることができる。このため、電極として使用したときにノイズを低減することが可能である。本発明に係る導電性材の製造方法により製造された導電性材の電気抵抗値は、上記した通りである。
従来の電解重合法等では、基材の表面にPEDOT−pTSをほとんど付着させることができず、導電性のものを得ることはできなかったが、本発明に係る導電性材の製造方法により、基材の表面にPEDOT−pTSを均一に付着させることができるようになった。このように、本発明に係る導電性材の製造方法は、本発明に係る導電性材を製造するのに適しており、導電性に優れ、より抵抗値が低い導電性材を製造することができる。
なお、導電性高分子としてPEDOT−PSSを使用する場合、本発明に係る導電性材の製造方法を利用しても、基材にPEDOT−PSSを均一にむらなく付着させることはできないため、従来の電解重合法等を利用して製造された導電性材よりも抵抗値を低下させることは困難である。
本発明に係る導電性材及び導電性材の製造方法で、基材は、酵素精錬(主にタンパク質分解酵素による)、酸精錬又はアルカリ精錬されていることが好ましい。
本発明に係る導電性材の製造方法で、前記加熱工程は、50〜100℃で10分〜60分間の加熱を行うことが好ましく、さらに好ましくは50〜80℃で10〜40分間、極めて好ましくは60〜80℃で10〜30分間である。この加熱工程により、基材の表面にPEDOT−pTSをより速くより密に付着させることができ、抵抗値をさらに低下させることができる。また、本発明に係る導電性材の製造方法で、前記酸化成分は遷移金属イオンであることが好ましい。具体的には、鉄、セリウム、又はモリブデンのイオン、特に第二鉄のイオンを含むことが好ましい。この場合、PEDOT−pTSを効率良く生成することができる。
本発明に係る生体電極は、本発明に係る導電性材を含むことを特徴とする。
当該生体電極の素子は、本発明に係わる導電性材であり、当該素子の形態としては、表面用電極、穿刺用電極等、が挙げられる。
表面用電極は、容積伝導により伝わって来る活動電位や脳波を皮膚の上や、直接筋肉や脳、その他の臓器の表面(以下、これらの表面を「体組織表面」ともいう)から電極の穿刺を伴わずに導出する電極であり、筋腹や頭部に貼り付けて使用する生体電極である。これを誘発電位導出用や治療用の刺激電極とすることもできる。
本発明の電極が表面用電極である場合、当該電極素子の体組織表面との接触可能面積は、0.0004〜100cmであることが好適であり、特に好適には0.0004〜25cmである。25cmを超える接触可能面積であっても表面用電極として用いることは可能であるが、「体組織表面と電極素子との接触面積を著しく少なくしても、活動電位又は誘発電位、さらに脳波を良好に導出することができる」、という本発明の電極の特徴を十分に活かすことにならない。接触可能面積が0.0004cmより狭いと、十分に活動電位又は誘発電位、さらに脳波を導出することが困難になる。ただし、今後筋電計測システムや脳波計測システムの性能が向上すれば、0.0004cmより狭い接触可能面積であっても表面用電極として良好に用いることができる可能性がある。
なお、「体組織表面との接触可能面積」とは、導電性材を表面用電極の電極素子として用いた場合に、体組織表面と接触し得る面積であり、例えば、電極素子が平面状の場合には、当該シート面の面積である。このような平面状の電極素子の場合には、特に0.25〜100cmが好適であり、さらに0.25〜25cmが好適である。電極素子が線状の場合には、当該線状電極素子の体表面との接触を予定する表面積の半分の面積(当該面積は、例えば線状材料の直径を一辺、体表面との接触を予定する長さを他の一辺とする「長方形の面積」として近似することができる)が体組織表面と接触し得る面積である。このような線状の電極素子の場合には、特に0.0004〜0.02cmが好適であり、さらに0.0004〜0.005cmが好適である。他の形状の場合であっても、現実的に体組織表面に接触し得る面積であり、当業者であれば容易に把握することが可能である。また、当該接触可能面積は、1個のまとまった電極素子である。例えば、1個の表面用電極の中に、複数個の電極素子同士が接触せずに設けられている場合には、各々の電極素子における面積である。
穿刺用電極は、文字通りに生体内に電極素子を穿刺により接触させて所望の生体シグナルを導出する電極であり、針電極やワイヤー電極を含むものである。これを誘発電位導出用や治療用の刺激電極とすることもできる。この態様の生体電極素子の生体組織との接触可能表面積は、好適には0.0004〜0.02cmであり、特に好適には0.0004〜0.002cmである。これは穿刺用電極として、従来に比べて非常に小さい表面積であるが、同時に良好な導電特性ゆえに優れた生体電極機能を発揮することができる。
本発明に係る導電性材は、抵抗値が低く、肌触りが良く、耐久性及び耐水性に優れ、柔軟性もあるため、生体電極として好適に使用することができる。特に、基材が、絹や絹糸などの生体材料を用いているので、生体用電極として好適に使用することができる。本発明に係る生体用電極は、例えば、筋肉の内部の電位測定用の電極や心電図測定用の電極などに使用することができる。後述する実施例に示すように、2個以上の電極素子を一つの担体(布等)上に配置した多点電極は、本発明の生体電極の好適な態様の一つである。
本発明によれば、基材の表面に導電性高分子が均一に付着し、より抵抗値が低い導電性材及びその製造方法、ならびに生体用電極を提供することができる。
本発明の実施の形態の導電性材の製造方法での、PEDOT−pTSの生成反応を示す化学反応式である。 本発明の実施の形態の導電性材の製造方法により、精錬方法が異なる基材(絹糸)を用いて製造した各導電性材の抵抗値を示すグラフである。 本発明の実施の形態の導電性材の製造方法により、(a)生糸、(b)石けん精錬糸、(c)ソーピング精錬糸、(d)リン酸精錬糸、(e)酵素精錬糸を用いて製造した各導電性材の電子顕微鏡写真である。 本発明の実施の形態の導電性材の製造方法(化学重合法)で製造された導電性材、及び、電解重合法を利用して製造された導電性材の抵抗値を示すグラフである。 (a)電解重合法を利用して製造された導電性材、(b)本発明の実施の形態の導電性材の製造方法(化学重合法)で製造された導電性材の電子顕微鏡写真である。 (a)カバーガラスの上で鶏胚の脳細胞を培養したときの通常光観察、(b)蛍光観察での顕微鏡写真、(c)本発明の実施の形態の導電性材の製造方法で使用するPEDOT−pTSを塗布したカバーガラスの上で鶏胚の脳細胞を培養したときの通常光観察、(d)蛍光観察での顕微鏡写真である。 本発明の実施の形態の導電性材を用いた、鶏胚の筋肉内部の電位測定を示す(a)測定状況の模式図、(b)筋肉内部の電位の測定結果のグラフである。 基材としてセリシン被覆布地を用いた本発明の導電性材の抵抗値を検討した結果を示す図面である。 基材としてナイロン布地を用いた本発明の導電性材における、特に耐洗浄性を検討した結果を示す図面である。 (a)本発明の実施の形態の導電性材を用いた多点表面電極の模式図、(b)当該多点表面電極を被験者において装着した模式図、(c)実際の皮膚表面における運動に伴う電位の測定結果のグラフである。 (a)本発明の実施の形態の導電性材を用いた脳波測定用の多点表面電極の模式図、(b)当該多点表面電極を鶏胚脳表面において装着した模式図、(c)実際の脳表面における脳波電位の測定結果のグラフである。
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態の導電性材及び導電性材の製造方法を示している。
本発明の実施の形態の導電性材は、基材にPEDOT−pTSが付着しており、以下に示す第1又は第2の本発明の実施の形態の導電性材の製造方法により製造される。
すなわち、第1の本発明の実施の形態の導電性材の製造方法では、まず、(1)有機溶媒性溶液に、酸化成分と、ドーパントとしてのpTSとを溶かし、その有機溶媒性溶液に基材の絹又は絹糸を浸漬させる。
pTSの溶媒となり得る有機溶媒は、pTSと酸化成分等を溶解することが可能であり、かつ、好適には水性溶媒との相溶性が良好であるものである。具体的には、炭素原子数が1〜6の1価の低級アルコール、具体的には、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、又は、ヘキサノールが挙げられる。これらの1価の低級アルコールを構成する炭素原子の骨格は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、1種のみならず2種以上を組み合わせてもよい。また、適宜水で希釈して用いてもよい。これらの中で、炭素原子数が1〜4の1価の低級アルコール、具体的には、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、又は、ブタノール、がpTS溶液の有機溶媒として好適である。
pTS溶液中に含有させる酸化成分は、pTSとEDOTを接触させた際のPEDOT−pTSへの重合反応を活性化させることが可能である限り特に限定されず、遷移元素、ハロゲン等が例示される。
遷移元素としては、鉄、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛等の第一遷移元素;モリブデン、銀、ジルコニウム、カドミウム等の第二遷移元素;セリウム、白金、金等の第三遷移元素が例示される。これらの中でも、鉄、亜鉛等の第一遷移元素を用いることが好適である。
pTS溶液中の酸化成分の含有量は、用いる酸化成分の種類によっても異なり、上記の重合反応を活性化できる量であれば、特に限定されない。例えば、本明細書の実施例で用いている第二鉄イオン(Fe3+)であれば、塩化第二鉄として、pTS溶液に対して1〜10質量%が好適であり、さらに好適には3〜7質量%である。この配合量が多すぎると重合反応の進行は速いが、後工程での鉄の除去が困難になり、少なすぎると重合反応の進行が遅くなる。
pTS溶液中のドーパントとして働くpTSの含有量は、当該溶液に対して0.1〜10質量%が好適であり、さらに好適には0.15〜7質量%、特に好適には1〜6質量%、最も好適には2〜5質量%である。
次に、(2)その溶液に、モノマーのEDOTを添加した後、50〜100℃で、好ましくは10分〜60分間、さらに好ましくは50〜80℃で10〜40分間、極めて好ましくは60〜80℃で10〜30分間の加熱を行う。加熱後、溶液から基材を取り出し、好ましくは水、さらに好適には蒸留水又は脱イオン水で洗浄した後、恒温槽、熱風若しくは温風、天日等により乾燥させる。EDOTは、常温で液体で水溶性であり、適宜水等の水性溶媒に希釈して用いることができる。
上記のpTS溶液とEDOTの使用量比は、容積比でpTS溶液:EDOT=10:1〜100:1、好適には20:1〜40:1である。
また、第2の本発明の実施の形態の導電性材の製造方法では、まず、(1)有機溶媒性溶液に、酸化成分と、ドーパントとしてのpTSとを溶かし、その有機溶媒性溶液を基材に印刷する。
pTSの溶媒となり得る有機溶媒は、pTSと酸化成分等を溶解することが可能であり、かつ、好適には水性溶媒との相溶性が良好であるものである。具体的には、炭素原子数が1〜6の1価の低級アルコール、具体的には、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、又は、ヘキサノールが挙げられる。これらの1価の低級アルコールを構成する炭素原子の骨格は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、1種のみならず2種以上を組み合わせてもよい。また、適宜水で希釈して用いてもよい。これらの中で、炭素原子数が1〜4の1価の低級アルコール、具体的には、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、又は、ブタノール、がpTS溶液の有機溶媒として好適である。
pTS溶液中に含有させる酸化成分は、pTSとEDOTを接触させた際のPEDOT−pTSへの重合反応を活性化させることが可能である限り特に限定されず、遷移元素のイオン、ハロゲン等が例示される。
遷移元素としては、鉄、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛等の第一遷移元素;モリブデン、銀、ジルコニウム、カドミウム等の第二遷移元素;セリウム、白金、金等の第三遷移元素が例示される。これらの中でも、鉄、亜鉛等の第一遷移元素を用いることが好適である。
pTS溶液中の酸化成分の含有量は、用いる酸化成分の種類によっても異なり、上記の重合反応を活性化できる量であれば、特に限定されない。例えば、本明細書の実施例で用いている第二鉄イオン(Fe3+)であれば、塩化第二鉄として、pTS溶液に対して1〜10質量%が好適であり、さらに好適には3〜7質量%である。この配合量が多すぎると重合反応の進行は速いが、後工程での鉄の除去が困難になり、少なすぎると重合反応の進行が遅くなる。
pTS溶液中のドーパントとして働くpTSの含有量は、当該溶液に対して0.1〜10質量%が好適であり、さらに好適には0.15〜7質量%、特に好適には1〜6質量%、最も好適には2〜5質量%である。
次に、(2)その溶液に、モノマーのEDOTを添加した後、50〜100℃で、好ましくは10分〜60分間、さらに好ましくは50〜80℃で10〜40分間、極めて好ましくは60〜80℃で10〜30分間の加熱を行う。加熱後、溶液から基材を取り出し、好ましくは水、さらに好適には蒸留水又は脱イオン水で洗浄した後、恒温槽、熱風若しくは温風、天日等により乾燥させる。EDOTは、常温で液体で水溶性であり、適宜水等の水性溶媒に希釈して用いることができる。
上記のpTS溶液とEDOTの使用量比は、容積比でpTS溶液:EDOT=10:1〜100:1、好適には20:1〜40:1である。
上記の第1及び第2の本発明の実施の形態で用いる、pTS溶液とEDOTの双方、又は、いずれか一方に、pTS−EDOT混合液の基材への付着性と、出来上がった導電性材の導電性を損なわない等、本発明の効果を量的又は質的に損なわない限り、必要に応じて他の成分を配合することができる。
例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール−ポリプレングリコールポリマー、エチレングリコール、ソルビトール、スフィンゴシン、フォスファチジルコリン等、好ましくは、グリセロール、ポリエチレングリコール−ポリプレングリコールポリマー、ソルビトール等が挙げられる。これらの成分を配合することにより、導電性材の濡れ特性を調整し、柔軟性を付与することによって、生体電極としての使用時における、生体組織、特に皮膚との親和性を向上させることができる。その他、界面活性剤、バインダー、天然多糖類、CMC(カルボキシメチルセルロース)等の増粘剤、乳化安定剤等が、他の成分として例示される。
上記の第1及び第2の本発明の実施の形態の導電性材の製造方法によるPEDOT−pTSの生成反応を、図1に示す。なお、基材は、絹又は絹糸を用いているが、これらに限定されるものではない。さらに上述のように酸化成分としてのFe3+は例示であり、これに限定されるものではない。
このように、本発明の導電性材は、本発明の製造方法によって好適に製造することができる。本発明の実施の形態の導電性材の製造方法は、加熱工程により、PEDOT−pTSの生成反応を加速させ、PEDOT−pTSの基材への重合を早めることができる。また、有機溶媒性溶液への浸漬又は印刷工程で、基材の任意の範囲を溶液に浸漬させたり、印刷などにより塗布したりすることにより、導電性を有する範囲を任意の形状に形成することができる。これにより、導電性を有する範囲が用途や使用環境に適した形状を有する導電性材を製造することができる。
また、本発明の実施の形態の導電性材の製造方法によれば、従来の電解重合法等を利用する場合と比べ、基材の表面に導電性高分子であるPEDOT−pTSを均一にむらなく付着させることができ、抵抗値を低下させることができる。また、従来の電解重合法等を利用する場合と比べて手間がかからず、容易に導電性材を製造することができる。本発明の実施の形態の導電性材の製造方法(化学重合法)のメリットであるこの容易さは、印刷や吹きつけなどの電解重合法では実現できない手法により繊維又はこれを材料とする基材の導電性化を実現することができる。
本発明の実施の形態の導電性材は、肌触りが良く、耐久性及び耐水性に優れ、柔軟性もあり、抵抗値が低く、生体適合性が高いため、例えば、ヘルスケア用のウェアラブル電極や、筋肉の内部や皮膚表面からの電位測定用の電極、心電図測定用の電極、脳波測定用の電極、臨床治療用の生体電極などに使用することができる。
以下に、本発明の実施の形態の導電性材の抵抗値や生体適合性等について試験を行い、その結果に基づいて評価・検討を行った。
[基材についての検討]
基材として絹糸(シルク糸)を用い、絹糸の精錬方法の違いにより、導電性材の抵抗値が変化するかどうかについて試験を行った。試験には、21中8本片で、168デニールの絹糸(断面積:約2.5×10−4cm)を用いた。また、試験に使用する絹糸は、生糸(未精錬:以下同様)、リン酸精錬糸(酸精錬)、ソーピング精錬糸(ソーピング精錬)、石けん精錬糸(アルカリ精錬)、酵素精錬糸(タンパク質分解酵素による精錬)の5種類とした。
5種類の絹糸を使用し、それぞれ以下に示す本発明の実施の形態の導電性材の製造方法により導電性材を製造した。具体的には、まず、遷移金属の鉄(III)イオンとpTSとを含むブタノール溶液(Heraeus社製「CLEVIOS C-B 40 V2」:p−トルエンスルホン酸鉄(III)として約4質量%である。「CLEVIOS」は登録商標)を6.3ml準備し、そこに絹糸を浸漬させた。次に、その溶液に、EDOT(Heraeus社製「CLEVIOS MV2」:EDOT約98.5質量%である。「CLEVIOS」は登録商標)を220μl添加した後、50〜100℃で、10分〜60分間の恒温槽における加熱を行った。加熱後、溶液から絹糸を取り出し、脱イオン水による洗浄を3回行い、次いで、70℃の恒温槽内で乾燥させた。上記の条件範囲のうち、70℃、20分間の加熱条件で調製した導電性材を下記の精錬方法別の試験において用いた。
各絹糸を用いて製造した導電性材の抵抗値を測定し、その結果を図2に示す。図2に示すように、酵素精錬糸で製造した導電性材が最も抵抗値が低く、リン酸精錬糸で製造した導電性材も抵抗値が低いことが確認された。電気抵抗値は、各々の糸の1cm長の電気抵抗値をテスターで計測した結果の値である(以下、同様である)。
精錬方法が異なる上記各絹糸の表面の電子顕微鏡写真を、図3に示す。図3に示すように、酵素精錬糸の表面が最も滑らかであり、リン酸精錬糸の表面も比較的滑らかであることがわかる。このことから、酵素精錬糸やリン酸精錬糸の表面状態の良さが、導電性材の抵抗値の低さの一因であると考えられる。すなわち、酵素精錬糸や酸精錬糸などの表面が滑らかな基材を使用して導電性材を製造することにより、基材の表面にPEDOT−pTSが密に付着し、抵抗値を低下させるものと考えられる。
[製造方法について]
以下は実施例の1つであり、本発明がこれに限定されるわけではない。
上記の「基材についての検討」において開示した、本発明の実施の形態の導電性材の製造方法(以下、「化学重合法」と呼ぶ)で製造された導電性材、及び、特許文献1や非特許文献1に記載の電解重合法を利用して製造された導電性材について比較を行った。なお、どちらの導電性材も、基材として上記の「基材についての検討」において用いた生糸を用いた。
電解重合法で製造された導電性材は、特許文献1及び非特許文献1に記載された方法で製造した。具体的には、まず、PEDOT−PSS溶液に質量比0.1%のEDOTを加えた混合溶液に、基材の生糸を一晩浸した。次に、その混合溶液に、参照電極のAg/AgCl電極と対極のPt電極とを浸し、生糸の中央部を混合溶液に浸したまま、作用電極に接続されたクリップで生糸の両端を挟んだ。ポテンショスタットを用いて、生糸の両端から重合電位(0.8V vs. Ag/AgCl)を印加し、総電荷が76.8μCに達するまで電解重合を行った。その後、混合溶液から生糸を引き上げて、70℃の恒温槽で乾燥させた。
化学重合法で製造された導電性材として、上記の「基材についての検討」において、70℃、20分間の加熱条件を、生糸に対して行って製造したものを用いた。
上記の化学重合法で製造された導電性材及び電解重合法で製造された導電性材の抵抗値を測定し、その結果を図4に示す。図4に示すように、化学重合法で製造された導電性材の方が、電解重合法で製造された導電性材よりも、抵抗値が約4桁低くなっていることが確認された。このように、化学重合法で製造された導電性材は、導電性に優れ、より抵抗値が低いため、これを電極として使用したときにノイズを低減することができ、より正確な測定を行うことができる。
上記の化学重合法で製造された導電性材及び電解重合法で製造された導電性材の電子顕微鏡写真を、図5に示す。図5(a)に示すように、電解重合法で製造された導電性材では、基材の表面の一部にPEDOT−PSSの付着が認められるのに対し、図5(b)に示すように、化学重合法で製造された導電性材では、基材の表面全体に、PEDOT−pTSが均一にむらなく付着していることが確認された。一般に、基材の表面を覆うPEDOTの表面積が大きいほど、導電性が高くなり、抵抗値が低下すると考えられるため、図5に示すPEDOTの付着の仕方の違いが抵抗値の差を生じているものと考えられる。
[生体適合性の検討]
本発明の実施の形態の導電性材の生体適合性を調べるための試験を行った。まず、カバーガラスの表面にPEDOT−pTSを滴下してスピンコートし、PEDOT−pTSの薄膜を形成したものを準備し、その上で鶏胚の脳細胞の初代培養を行った。培養では、まず、鶏胚の脳をトリプシン溶液中におよそ10分間浸し、10回程ピペッティングした後、300μlを35mm培養皿に移し、2%のB27supplement、0.074 mg/ml L−glutamine、25μM glutamate、20ng/ml NGFを含むNeurobasal mediumからなる培養液を2ml加えた。これを37℃のインキュベーターに入れて、24時間培養した。培養終了後、蛍光色素アクリジンオレンジ(5μg/ml)を用いて細胞を染色し、Arレーザーで励起することにより、生死判定を行った。細胞が死んでいる場合には、蛍光色素は排出されず、蛍光が観察される。なお、比較のため、PEDOT−pTSをスピンコートしていない、カバーガラスのみの場合についても、培養及び蛍光観察を行った。
その結果を、図6(a)〜(d)に示す。図6(a)及び(b)は、カバーガラスの上で鶏胚の脳細胞を培養したときの通常光観察、及び、同蛍光観察での顕微鏡写真であり、図6(c)及び(d)は、本発明の実施の形態の導電性材の製造方法で使用するPEDOT−pTSを塗布したカバーガラスの上で鶏胚の脳細胞を培養したときの通常光観察、及び、同蛍光観察での顕微鏡写真である。図6(b)に示すように、PEDOT−pTSをスピンコートしていないものでは、多くの蛍光が観察され、死細胞が多かったのに対し、図6(d)に示すように、PEDOT−pTSをスピンコートしたものでは、蛍光がほとんど観察されず、細胞が生きたまま培養されていることが確認された。この結果から、PEDOT−pTSが高い生体適合性を有しており、生体組織からの拒絶反応がほとんどないことがわかる。
次に、図7(a)に示すように、基材の絹糸の表面にPEDOT−pTSが付着した本発明の実施の形態の導電性材(上記の「基材についての検討」において、70℃、20分間の加熱条件を、生糸に対して行って製造したもの)を生体電極の素子として用いて、鶏胚の筋肉内部の電位測定を行った。その測定結果を、図7(b)に示す。図7(b)に示すように、刺激を与えて筋肉を運動させたとき、その運動に伴う電位変化を測定可能であることが確認された。
[セリシン被覆布地の基材としての検討]
(1)セリシン被覆布地の作出
セリシン被覆布地については、アート株式会社(群馬県桐生市)に委託して作出した。
布地基材は、六匁羽二重布地(齋栄織物(株))、ナイロン布地(東レ(株))、アセテート布地(アセチルセルロース・三菱レーヨン)、ポリエステル布地、レーヨン布地(セルロース・旭化成)、キュプラ布地(セルロース・旭化成ベンベルグ)である。
(2)セリシン被覆布地に対するPEDOT−pTSの付着工程
準備した各種のセリシン被覆布地(5cm×1cm)に対して、それぞれ以下に示す本発明の導電性材の製造方法の工程により導電性材を製造した。具体的には、まず、遷移金属の鉄(III)イオンとpTSとを含むブタノール溶液(Heraeus社製「CLEVIOS C-B 40 V2」:p−トルエンスルホン酸鉄(III)として約4質量%である。「CLEVIOS」は登録商標)を10ml準備し、そこに各セリシン被覆布地を浸漬させた。次に、その溶液に、EDOT(Heraeus社製「CLEVIOS MV2」:EDOT約98.5質量%である。「CLEVIOS」は登録商標)を310μl添加した後、70℃で、30分間の恒温槽における加熱を行った。加熱後、溶液からセリシン被覆布地を取り出し、脱イオン水による震盪洗浄を1時間程度2回行い、次いで、70℃の恒温槽内で乾燥させた。
上記のように製造した導電性材の抵抗値は、フラットクリップを用いて幅2cmの間隔でクリッピングすることで、ポテンショスタットにより電流計測を行い、1cm長当たりの抵抗値を算出した。その結果を図8に示す(縦軸の抵抗値の単位は、「Ω/cm」である)。図8に示すように、各種のセリシン被覆布地は、最大でも20kΩ/cm近傍であり、最低値は5.2kΩ/cm近傍であった。これにより、セリシン被覆布地は、本発明の導電性材の基材として好適であることが明らかになった。なお、六匁羽二重布地(絹)を用いたセリシン被覆布地の抵抗値が相対的に高いのは、当該布地の厚さが他と比べて非常に薄いためであると考えられる。
[ナイロンの基材としての検討]
合成繊維布地を基材として用いて作出したPEDOT−pTS付着布地(全て5cm×1cm)における耐洗浄性を評価するために、(1)ナイロン布地(東レ(株):ナイロン6、ナイロン66、又は、ナイロン610のいずれかであると推定されるが、この実施例の検証時点では不明である。ただし、これらいずれの種類のナイロンを用いても実質的に同一の結果が得られると予測される。)、(2)アセテート布地(アセチルセルロース・三菱レーヨン)、(3)ポリエステル布地、(4)絹布地(ダブルサテン)に対して、それぞれ以下に示す本発明の製造方法の工程により導電性材を製造した。具体的には、まず、遷移金属の鉄(III)イオンとpTSとを含むブタノール溶液(Heraeus社製「CLEVIOS C-B 40 V2」:p−トルエンスルホン酸鉄(III)として約4質量%である。「CLEVIOS」は登録商標)を10ml準備し、そこに各布地を浸漬させた。次に、その溶液に、EDOT(Heraeus社製「CLEVIOS MV2」:EDOT約98.5質量%である。「CLEVIOS」は登録商標)を310μl添加した後、70℃で、30分間の恒温槽における加熱を行った。加熱後、溶液から布地を取り出して(洗浄前の布地)、抵抗値を計測した。次いで、脱イオン水による震盪洗浄を1時間程度2回行い、さらに、70℃の恒温槽内で乾燥させて(洗浄後の布地)、電気抵抗値を計測した。
上記のように製造した導電性材の洗浄前と洗浄後のそれぞれの抵抗値は、フラットクリップを用いて幅2cmの間隔でクリッピングすることで、ポテンショスタットにより電流計測を行い、1cm長当たりの抵抗値を算出した。その結果を図9に示す(縦軸の抵抗値の単位は、「Ω/cm」である)。図9において、左側のバーが「洗浄前の抵抗値」を示しており、それぞれの布地について右側のバーが「洗浄後の抵抗値」を示している。洗浄前よりも、洗浄後の方が低抵抗値であったのは、ナイロン布地と絹布のみであった。最も良好な耐洗浄性が認められたのは絹繊維布地であったが、ナイロン布地も実用に十分な耐洗浄性を有していることが明らかになった。
[表面用多点電極の検討(1)]
この表面筋電測定の検討内容は、図10の略図と電位測定チャートにより示した。
1cm幅・10cm長のリボン状の絹布(タンパク質分解酵素による酵素精錬がなされた絹糸からなる平織りの絹織物)を基材として、上記の「基材についての検討」において開示した70℃、20分間の加熱条件の製造方法(化学重合法)を施して導電性材を製造し、さらに当該導電性材を1cm角(面積1cm)に裁断し、当該サイズの表面電極素子を10枚製造した。これらの10枚の平板状の導電性材の端と端の間の電気抵抗値をテスターで計測したところ、全て1.6kΩ未満であった。これらの表面電極素子の一つ一つに、同じく「基材についての検討」において、70℃、20分間の加熱条件を、生糸(未精錬)に対して行って製造した線状電極素子を、縫製により連結し、表面用多点電極の単位素子を作出した。当該単位素子の線状部分を、絶縁体として用いる絹布面(タンパク質分解酵素による酵素精錬がなされた絹糸からなる平織りの絹織物)に対して垂直方向から縫い針を用いて突き通して、さらに簡単な縫い付けを行った。布面の面積は、10cm角(面積100cm)で、当該単位素子を9個、それぞれを0.5cm間隔で等距離になるように縫い付けた。このようにして、表面用多点電極を作出した(図10(a))。
次に、この表面用多点電極を、その表面電極素子が露出している側と被験者の腕を接触させた状態で固定し、被験者の手の運動に伴う電位の変化を、市販のワイヤレス筋電計(ID3PAD:追坂電子製)を用いていて測定した(図10(b))。なお、計測に際し、当該表面用多点電極と皮膚との間には、ジェル等のインピーダンスを低減させるための物質は塗布せず、電極を直接皮膚に接触させた。
[表面用多点電極の検討(2)]
この表面脳波測定の検討内容は、図11の略図と電位測定チャートにより示した。
直径が0.2mmの絹糸(タンパク質分解酵素による酵素精錬がなされた絹糸)に対して、上記の「基材についての検討」において開示した70℃、20分間の加熱条件の製造方法(化学重合法)を施して、当該絹糸を基材とする線状電極素子を製造した。絶縁体として用いる20mm角(面積400mm)の絹布(タンパク質分解酵素による酵素精錬がなされた絹糸からなる平織りの絹織物)面に対して、当該線状電極素子を裏面の垂直方向から突き通して、さらに線長1mm分が布面表面に露出するように、前記突き通した線状電極素子の先端部分を布表面に対して再び突き通して、第1の線状電極素子として縫い込みを行い、次いで、前記第1の線状電極素子の縫い込み固定部分のごく近傍に、当該第1の線状電極素子の1mmの露出部分と直交するように、同様に縫い込み固定を行った。このように直交して縫い込み固定された2本の線状電極素子を1組の表面用多点電極の単位素子とした。上記のように、0.2mm幅の絹糸1mm分を2本であるから、当該組の電極面積は0.004cmである。上記20mm角の布面で、当該単位素子を9箇所、それぞれを5mm間隔で等距離になるように縫い付けた。このようにして、脳波測定用の表面用多点電極を作出した(図11(a))。
次に、この脳波測定用の表面用多点電極を、鶏胚(胚齢19日)の頭蓋骨を除去した脳の表面に、その電極面を接触させることにより、脳神経活動を市販のRZ5バイオアンプ(TDT社)を有線接続して測定した(図11(b))。なお、計測に際し、当該表面用多点電極と皮膚との間には、何らインピーダンスを低減させるための物質は塗布せず、電極を直接脳に接触させた。
このように、本発明の実施の形態の導電性材は、生体適合性に優れており、生体電極として十分に使用可能であるといえる。特に、基材が絹繊維を材料とするものである場合には、生体電極として好適に使用することができる。

Claims (14)

  1. ナイロン繊維を材料とする基材、あるいは、セリシン若しくはフィブロインを被覆した合成繊維を材料とする基材に、PEDOT−pTS(poly(3,4-ethylene-dioxythiophene)-p-toluenesulfonate)が付着していることを特徴とする、導電性材。
  2. 前記基材は、線状、又は、平面状、であることを特徴とする、請求項1記載の導電性材。
  3. 導電部分の電気抵抗値が、
    (1)基材が線状部材の場合は、断面積約2.5x10−4cmにおいて50kΩ/cm以下であり、
    (2)基材が平面状部材の場合を含む(1)以外の場合は、50kΩ/cm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の導電性材。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性材を含むことを特徴とする、生体電極。
  5. 前記生体電極が、表面用電極であり、かつ、平面状の電極素子の生体組織との接触可能面積は、0.25〜100cmであることを特徴とする、請求項4に記載の生体電極。
  6. 前記生体電極が、表面用電極であり、かつ、線状の電極素子の生体組織との接触可能面積は、0.0004〜0.002cmであることを特徴とする、請求項4に記載の生体電極。
  7. 前記生体電極が、穿刺用電極であり、かつ、電極素子の生体組織との接触可能面積は、0.0004〜0.002cmであることを特徴とする、請求項4に記載の生体電極。
  8. 前記生体電極が、多点電極であることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか1項に記載の生体電極。
  9. 下記の工程(1)及び(2)を含むことを特徴とする、導電性材の製造方法。
    (1) 酸化成分とpTS(p-toluenesulfonate)とを含むpTS溶液を、ナイロン繊維を材料とする基材、あるいは、セリシン若しくはフィブロインを被覆した合成繊維を材料とする基材、に付着させる付着工程;
    (2) 付着工程(1)において酸化成分とpTSを付着させた基材に、さらにEDOT(3,4-ethylenedioxythiophene)を付着させて、当該基材においてPEDOT−pTS(poly(3,4-ethylene-dioxythiophene)-p-toluenesulfonate)を生成する重合反応を進行させて、当該基材にPEDOT−pTSの付着状態を形成する、重合工程。
  10. 付着工程(1)における酸化成分とpTSの付着は、pTS溶液に基材を浸漬させることにより行われ、又は、pTS溶液を基材に印刷することにより行われる、ことを特徴とする、請求項9に記載の導電性材の製造方法。
  11. 重合工程(2)において、EDOTの付着を行うと共に加熱を行って、PEDOT−pTSへの重合反応を促進させることを特徴とする、請求項9又は10に記載の導電性材の製造方法。
  12. 前記加熱は、50〜100℃で、10分〜60分間の加熱であることを特徴とする、請求項11に記載の導電性材の製造方法。
  13. 重合工程(2)の後、さらに、PEDOT−pTSが付着した基材を洗浄及び乾燥させる工程を行うことを特徴とする、請求項9〜12のいずれか1項に記載の導電性材の製造方法。
  14. 前記酸化成分は、第二鉄イオンであることを特徴とする、請求項9〜13のいずれか1項に記載の導電性材の製造方法。
JP2016036496A 2016-02-28 2016-02-28 導電性材及びその製造方法、ならびに生体電極 Active JP6587104B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016036496A JP6587104B2 (ja) 2016-02-28 2016-02-28 導電性材及びその製造方法、ならびに生体電極
PCT/JP2017/007280 WO2017146247A1 (ja) 2016-02-28 2017-02-27 導電性材及びその製造方法、ならびに生体電極

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016036496A JP6587104B2 (ja) 2016-02-28 2016-02-28 導電性材及びその製造方法、ならびに生体電極

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017148452A JP2017148452A (ja) 2017-08-31
JP6587104B2 true JP6587104B2 (ja) 2019-10-09

Family

ID=59686335

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016036496A Active JP6587104B2 (ja) 2016-02-28 2016-02-28 導電性材及びその製造方法、ならびに生体電極

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP6587104B2 (ja)
WO (1) WO2017146247A1 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7502764B2 (ja) 2019-12-14 2024-06-19 ビヨンドエス株式会社 力覚表面、及びこれを有する荷重刺激のセンシングシステムとこれに用いるコンピュータプログラム、並びにこれらに関連する学習済みモデルと推測システム
JP7411537B2 (ja) 2020-01-22 2024-01-11 信越化学工業株式会社 生体電極組成物、生体電極、及び生体電極の製造方法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5308661B2 (ja) * 2005-02-10 2013-10-09 日本カーリット株式会社 色素増感型太陽電池用の触媒電極、及びそれを備えた色素増感型太陽電池
CN105726021B (zh) * 2011-11-17 2019-02-22 日本电信电话株式会社 生物体电极、体内嵌入型电极以及生物体信号测定装置

Also Published As

Publication number Publication date
WO2017146247A1 (ja) 2017-08-31
JP2017148452A (ja) 2017-08-31

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6292643B2 (ja) 導電性材およびその製造方法、ならびに生体電極
JP6835908B2 (ja) 生体電極
Jan et al. Layered carbon nanotube-polyelectrolyte electrodes outperform traditional neural interface materials
Tsukada et al. Conductive polymer combined silk fiber bundle for bioelectrical signal recording
Oh et al. Nanofiber web textile dry electrodes for long-term biopotential recording
CN103462602B (zh) 一种用于测试心电信号的纺织电极的制备方法
JP6587104B2 (ja) 導電性材及びその製造方法、ならびに生体電極
CN105233404B (zh) 一种应用于穿戴设备的电极制造方法
Benny Mattam et al. Conducting polymers: A versatile material for biomedical applications
Zhou et al. PPy/cotton fabric composite electrode for electrocardiogram monitoring
Sharma et al. Conducting Polymer Composites for Tissue Engineering Scaffolds

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160328

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20170225

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20171204

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20171206

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20171207

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20181003

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20181004

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190611

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190730

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20190731

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190827

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190828

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6587104

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250